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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】グリッパーモジュール及びグリッパー
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20221110BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20221110BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20221110BHJP
   G02B 21/32 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B25J15/08 C
G03B17/56 A
G02B7/04 E
G02B21/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018145317
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019104
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】713013504
【氏名又は名称】株式会社ミクロブ
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秦 良彰
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-078324(JP,A)
【文献】特開2008-188725(JP,A)
【文献】特開2017-135936(JP,A)
【文献】特開2010-049181(JP,A)
【文献】特開2011-211827(JP,A)
【文献】特開2015-196208(JP,A)
【文献】特開2012-086334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
G03B 17/56
G02B 7/04
G02B 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム駆動用圧電素子の振動によって開閉する把持アームを有するグリッパーと、
前記グリッパーの前記把持アームの作業領域を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の光軸が前記作業領域を通るように位置決めして、前記グリッパーと前記撮像装置とが取り付けられる台座部材と、を備え、
前記グリッパーは、前記アーム駆動用圧電素子の両端に一対のアーム駆動軸を固定したアーム駆動用振動ユニットと、前記一対のアーム駆動軸に摩擦係合して前記アーム駆動軸の軸方向に移動する一対の前記把持アームとを備えている、グリッパーモジュール。
【請求項2】
アーム駆動用圧電素子の振動によって開閉する把持アームを有するグリッパーであって、
前記アーム駆動用圧電素子の一端又は両端に1本又は一対のアーム駆動軸を固定したアーム駆動用振動ユニットと、前記アーム駆動軸に摩擦係合して前記アーム駆動軸の軸方向に移動する1つ又は一対の前記把持アームとを備え、
前記アーム駆動用振動ユニットを支持する支持部材に前記アーム駆動用振動ユニットの両端部それぞれが固着している、グリッパー。
【請求項3】
アーム駆動用圧電素子の振動によって開閉する把持アームを有するグリッパーであって、
前記アーム駆動用圧電素子の両端に一対のアーム駆動軸を固定したアーム駆動用振動ユニットと、前記一対のアーム駆動軸に摩擦係合して前記アーム駆動軸の軸方向に移動する一対の前記把持アームとを備え、
前記アーム駆動用振動ユニットを支持する支持部材に前記アーム駆動用圧電素子が固着している、グリッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパーモジュール及びグリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小部品のピックアップや組み立て、細胞操作などにマイクログリッパー装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。マイクログリッパー装置は、微小な把持対象物を把持するために、開閉可能な複数本の把持アームを備えている。また、把持対象物が微小なため、マイクログリッパー装置による作業は、カメラを介してディスプレイに出力された画像を参照して行われることが多い。
【0003】
一方、電気エネルギーを機械的仕事に変換する装置として、圧電素子を利用した駆動装置がある。本出願人は、ガイド部材と拘束部材とで支持された駆動軸の一端に圧電素子を取り付け、当該圧電素子を伸縮させることで駆動軸を軸方向に移動させる駆動装置を提案している(特許文献2参照)。このような駆動装置では、鋸波の単一パルス又は連続パルスを圧電素子に電圧印加し、駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体と、駆動軸との接触面の状態を固着状態(スティック)と滑り状態(スリップ)とに変化させて、駆動軸と移動体又は支持体とを相対移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-342846号公報
【文献】特開2015-128360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のマイクログリッパー装置では、マイクログリッパーは、把持アームが電磁駆動方式で開閉動作するように構成されているので、構造が複雑であり、小型化及び軽量化が困難であるという問題があった。また、マイクログリッパーの把持アームの先端部周辺を撮像するカメラは、マイクログリッパーを支持する部材とは別の部材に支持されているので、マイクログリッパー装置の大型化及び重量化を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グリッパーモジュール小型化及び軽量化を実現することを技術的課題としている。
【0007】
本発明のグリッパーモジュールは、アーム駆動用圧電素子の振動によって開閉する把持アームを有するグリッパーと、前記グリッパーの前記把持アームの作業領域を撮像する撮像装置と、前記撮像装置の光軸が前記作業領域を通るように位置決めして、前記グリッパーと前記撮像装置とが取り付けられる台座部材と、を備えているものである。
【0008】
本発明のグリッパーモジュールによれば、グリッパーの把持アームをアーム駆動用圧電素子の振動によって開閉するようにしたので、グリッパーの構成を簡素化でき、グリッパーの小型化及び軽量化を実現できる。さらに、グリッパーと撮像装置とを同一の台座部材に取り付けるようにしたので、グリッパーと撮像装置とをコンパクトに配置でき、グリッパーモジュールの小型化及び軽量化を実現できる。
【0009】
また、本発明のグリッパーモジュールによれば、グリッパーと撮像装置とを1つの台座部材に組み付けてモジュール化することで、移動機構を有する様々なロボットにグリッパー及び撮像装置を組み込むことが容易になる。また、本発明のグリッパーモジュールでは、撮像装置が取得した画像を見ながら、グリッパーの把持アーム位置を調整できる。そして、撮像装置の光軸とグリッパーの把持アーム位置とを調整済みのグリッパーモジュールを準備しておくことで、ロボットへのグリッパー及び撮像装置の取付けを迅速かつ容易に行える。また、本発明のグリッパーモジュールは、グリッパーモジュールの小型化及び軽量化を実現できることで、駆動力が小さい小型のロボットへの装着が可能になる。また、撮像装置のレンズの光軸が把持アームの作業領域を通っているので、レンズの収差の影響が小さい画像領域にて把持アームの作業領域を観察でき、把持アームによる把持作業の容易性及び正確性が向上する。なお、「把持アームの作業領域」とは、開閉動作する一対の把持アームが開いた状態での把持アーム先端部同士の間の領域を意味する。
【0010】
本発明のグリッパーモジュールにおいて、前記撮像装置は、レンズ駆動用圧電素子の振動によってレンズを前記光軸に沿って移動させるレンズ駆動装置と、前記レンズを通過した光を受光する撮像素子と、を備えているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、レンズ駆動用圧電素子の振動によってレンズを移動させるようにしたので、レンズ駆動装置の構成を簡素化でき、レンズ駆動装置の小型化及び軽量化を実現できる。そして、撮像装置の小型化及び軽量化、ひいてはグリッパーモジュールの小型化及び軽量化を実現できる。
【0012】
さらに、前記レンズ駆動装置は、前記レンズ駆動用圧電素子の一端にレンズ駆動軸を固定した軸状のレンズ駆動用振動ユニットと、前記レンズを支持するとともに前記レンズ駆動軸に摩擦係合して前記レンズ駆動軸の軸方向に移動するレンズ支持体と、前記レンズ駆動用振動ユニットの両端を支持する一対の支持片を有する支持ケースと、を備え、前記レンズ駆動軸の端面が一方の前記支持片に固着されているようにしてもよい。
【0013】
このような態様によれば、支持ケースの一対の支持片のうちレンズ駆動用振動ユニットのレンズ駆動軸の端面が固着される支持片(一方の支持片)の厚みを薄くでき、レンズ駆動装置の小型化及び軽量化、ひいては撮像装置の小型化及び軽量化を実現できる。これにより、グリッパーと撮像装置とをよりコンパクトに配置でき、グリッパーモジュールのより一層な小型化及び軽量化を実現できる。
【0014】
なお、支持ケースの他方の支持片には、レンズ駆動用圧電素子の端面が固着される構造や、レンズ駆動用圧電素子の端面及び側面が固着される構造、又はレンズ駆動用圧電素子の側面が固着される構造にしてもよい。例えば、レンズ駆動用振動ユニットの両端面(レンズ駆動軸の端面とレンズ駆動用圧電素子の端面)が両支持片に固着されるようにすれば、両支持片の厚みをそれぞれ薄くでき、レンズ駆動装置のさらなる小型化及び軽量化を実現できる。
【0015】
また、本発明のグリッパーモジュールにおいて、前記グリッパーは、前記アーム駆動用圧電素子の両端に一対のアーム駆動軸を固定したアーム駆動用振動ユニットと、前記一対のアーム駆動軸に摩擦係合して前記アーム駆動軸の軸方向に移動する一対の前記把持アームとを備えているようにしてもよい。
【0016】
このような態様によれば、1つのアーム駆動用圧電素子の駆動によって一対の把持アームの両方を移動させるので、把持アームの開閉動作を迅速に行えるグリッパーを簡素な構成で実現できる。
【0017】
参考例のグリッパー装置は、本発明のグリッパーモジュールと、前記グリッパーモジュールの前記台座部材を前記撮像装置の前記光軸に沿って直線移動させる直動機構とを備えているものである。
【0018】
参考例のグリッパー装置によれば、本発明のグリッパーモジュールを備えているので、グリッパー装置全体の小型化及び軽量化を実現できるとともに、グリッパーモジュールの撮像装置で把持対象物を撮像しながら、グリッパーモジュールを移動させて、グリッパーの把持アームの先端部を把持対象物に位置合わせできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、グリッパーモジュール小型化及び軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】グリッパー装置の構成を示す概略斜視図である。
図2】同グリッパー装置の制御系を示す概略構成図である。
図3】同グリッパー装置における伸縮駆動装置の構成を示す概略図である。
図4】同グリッパー装置におけるグリッパーモジュール周辺を側面視で示す拡大概念図であり、(A)は近距離視野の撮像状態を示し、(B)は遠距離視野の撮像状態を示す。
図5】同グリッパーモジュールの、(A)は正面図、(B)は背面図である。
図6】同グリッパーモジュールの、(A)は左側面図、(B)は右側から見た縦断面図である。
図7】同グリッパーモジュールの底面図である。
図8】同グリッパーモジュールにおけるグリッパーを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図9】同グリッパーの内部を説明するための平面図である。
図10】(A),(B)は、それぞれグリッパーの変形例を示す平面図である。
図11】アーム駆動用振動ユニットと把持アームの摩擦係合構造を説明するための概略図であり、(A)は分離斜視図、(B)は組み立てた状態の斜視図である。
図12】グリッパーの変形例の外観を示すもので、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
図13】同グリッパーの内部構成を示すもので、(A)が左側面図であり、(B)が右側面図である。
図14】同グリッパーの内部構成を示す斜視図である。
図15】同グリッパーの動作状態を示すもので、(A)がA-A断面図であり、(B)が平面図である。
図16】同グリッパーのアーム駆動用振動ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図17】同グリッパーの構成を示す分解斜視図である。
図18】同グリッパーの動作の説明図であり、(A)は把持アームを開いた状態を示し、(B)は把持アーム同士を当接させた状態を示し、(C)は把持アームを限界まで閉じた状態を示す。
図19】撮像装置の撮像領域とグリッパーの把持アームの位置関係を説明するための図であり、(A-1),(A-2)は双方の把持アーム220が可動な態様を示し、(B-1),(B-2)は一方の把持アームが固定された態様を示す。
図20】グリッパーモジュールにグリッパーと2つの撮像装置を設けたときのレイアウト例を示す図であり、(A),(B)は第1配置例の側方視と底面視の配置図、(C),(D)は第2配置例の側方視と底面視の配置図、(E)は第3配置例の底面視配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のグリッパーモジュール及びグリッパー装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、グリッパー装置の構成を示す概略斜視図である。図2は、同グリッパー装置の制御系を示す概略構成図である。図3は、同グリッパー装置における伸縮駆動装置の構成を示す概略図である。図4は、グリッパーモジュール周辺を右側から見て示す拡大概念図である。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「前後」「上下」など)を用いるが、これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のグリッパー装置1000は、グリッパーモジュール100を直交3軸方向に移動させる3軸操作用駆動装置500を備えている。グリッパーモジュール100は、3軸操作用駆動装置500の3軸移動可能な出力部材502に着脱可能に取り付けられている。
【0023】
図4及び図6にも示すように、グリッパーモジュール100は、アーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉する一対の把持アーム220を有するグリッパー200と、グリッパー200の把持アーム220の作業領域(把持アーム220が把持対象物を把持する位置)を撮像する撮像装置300と、グリッパー200と撮像装置300とが取り付けられる台座部材400とを備えている。
【0024】
台座部材400は、前後長手の直方体の前面が斜め下向きに傾斜した略台形柱の形態を有する。グリッパー200は、台座部材400の台座前面部401に取り付けられ、左右一対の把持アーム220が斜め下向きに延伸している。撮像装置300は、台座部材400の下部に設けられた台座切欠き凹部402に取り付けられている。撮像装置300のレンズ301の光軸Lは、上下方向に沿っており、把持アーム220の作業領域を通るように位置決めされている。このように、撮像装置300の光軸Lとグリッパー200の把持アーム220の延伸方向が交差するように、把持アーム220を斜め下向きに延伸させることで、グリッパー200と撮像装置300とをコンパクトに配置できるとともに、把持アーム220の長さをなるべく短くして把持アーム220の強度を確保できる。また、把持アーム220が斜め下向きに延伸していることで、グリッパー200の下方(把持アーム220の基端部の下方)に空間が形成されるので、把持アーム220の先端部(把持対象物を把持する部位)以外の部位が把持対象物に衝突しないようにでき、グリッパー装置1000の操作性が向上する。なお、台座部材400は、台座上面部403の後寄り部位が3軸操作用駆動装置500の出力部材502の下面に連結されており、出力部材502の上方から捩じ込まれるモジュール固定用ねじ410にて、出力部材502に固定されている。
【0025】
本実施形態のグリッパーモジュール100では、グリッパー200の把持アーム220をアーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉するようにしたので、グリッパー200の構成を簡素化でき、グリッパー200の小型化及び軽量化を実現できる。そして、グリッパー200と撮像装置300とを同一の台座部材400に取り付けるようにしたので、グリッパー200と撮像装置300とをコンパクトに配置でき、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化を実現できる。これにより、駆動力が小さい小型のロボットへの装着が可能になるという効果も奏する。
【0026】
また、グリッパーモジュール100によれば、グリッパー200と撮像装置300とを1つの台座部材400に組み付けてモジュール化することで、移動機構を有する様々なロボット(本実施形態では3軸操作用駆動装置500)にグリッパー200及び撮像装置300を組み込むことが容易になる。また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300が取得した画像を見ながら、グリッパー200の把持アーム220の位置を調整できる。そして、撮像装置300の光軸Lとグリッパー200の把持アーム220の位置とを調整済みのグリッパーモジュール100を準備しておくことで、ロボット(例えば3軸操作用駆動装置500)へのグリッパー200及び撮像装置300の取付けを迅速かつ容易に行える。
【0027】
また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300のレンズ301の光軸Lが把持アーム220の作業領域を通っているので、レンズ301の収差の影響が小さい画像領域にて把持アームの作業領域を観察でき、把持アーム220による把持作業の容易性及び正確性が向上する。
【0028】
図1図3に示すように、3軸操作用駆動装置500は、台座550上に一端が固定されて立設された上下方向(Z軸方向)用の伸縮駆動装置501Aと、伸縮駆動装置501Aの出力側となる他端に固定された左右方向(Y軸方向)用の伸縮駆動装置501Bと、伸縮駆動装置501Bの出力側に固定された前後方向(X軸方向)用の伸縮駆動装置501Cと、伸縮駆動装置501Cの出力側に固定された出力部材502とを備える。伸縮駆動装置501A~501Cはそれぞれ同一の構成を有しており、移動体ユニット503の駆動軸504を筐体505に対して軸方向にスライドさせて伸縮する。
【0029】
伸縮駆動装置501Aは、駆動軸504の軸方向が上下方向に沿って配置され、台座550に筐体505の下端が固定されて、台座550より立設しており、筐体505の上端側より移動体ユニット503を上下に摺動することで、伸縮駆動装置501B,501Cを介して接続された出力部材502を上下方向に移動させる。すなわち、伸縮駆動装置501Aは、出力部材502に固定されたグリッパーモジュール100を撮像装置300の光軸Lに沿って移動させる。これにより、撮像装置300で把持対象物を撮像しながら、グリッパーモジュール100を上下移動させて、グリッパー200の把持アーム220の先端部を把持対象物に位置合わせできる。
【0030】
伸縮駆動装置501Bは、伸縮駆動装置501Aにおける移動体ユニット503上端の出力側に筐体505の出力側(右側)が固定され、台座550に対して左右方向に水平に配置されており、筐体505の右端より移動体ユニット503を左右に摺動することで、伸縮駆動装置501Cを介して接続された出力部材502を左右方向に移動させる。伸縮駆動装置501Cは、伸縮駆動装置501Bにおける移動体ユニット503上端の出力側に筐体505の出力側(前側)が固定され、台座550に対して前後方向に水平に配置されており、筐体505の前端より移動体ユニット503を前後に摺動することで、移動体ユニット503前端に接続された出力部材502を前後方向に移動させる。
【0031】
次いで、伸縮駆動装置501A~501Cの概略構成について、図3を参照して以下に説明する。以下では、伸縮駆動装置501A~501Cを単に伸縮駆動装置501とする。伸縮駆動装置501は、移動体ユニット503と、移動体ユニット503を支持する支持ユニット506と、電気信号を機械的な振動に変換する圧電素子507とを備える。圧電素子507の振動により移動体ユニット503が支持ユニット506に対して相対的に移動する。伸縮駆動コントローラ508は、圧電素子507に鋸歯状波の駆動パルスを供給して、駆動軸504を軸方向に振動させる。
【0032】
移動体ユニット503は、軸状の構成を有し、駆動軸504の一端に圧電素子507が固定される一方で、駆動軸504の他端に出力部材502が固定されている。そして、移動体ユニット503は、駆動軸504の他端に固定された出力部材502が筒状の筐体505の外部に配置されるようにして、筐体505内に配置されるとともに、駆動軸504が軸方向(スライド方向)にのみ自由度を有するように筐体505内で支持ユニット506に支持される。出力部材502は、筐体505の延長方向(軸方向)外側で、移動体ユニット503のスライド動作に従い、駆動軸504の軸方向に沿って移動する。
【0033】
図2に示すように、伸縮駆動装置501A~501Cには、それぞれ伸縮駆動コントローラ508が電気接続されている。また、グリッパーモジュール100のグリッパー200と撮像装置300のレンズ駆動装置310には、アーム駆動用圧電素子210とレンズ駆動用圧電素子311に鋸歯状波の駆動パルスを供給するモジュールコントローラ101が電気接続されている。
【0034】
これらのコントローラ101,508は、制御装置を構成するパーソナルコンピュータからなるPC1001に電気接続されている。また、グリッパーモジュール100の撮像装置300の撮像素子330は、PC1001に電気接続されている。PC1001は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)と制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含む記憶装置、入力インターフェース等を有している。PC1001は、コントローラ101,508を介して、グリッパー200及び伸縮駆動装置501A~501Cが所望の動作をするように制御する。
【0035】
PC1001は、撮像装置300の撮像素子330が取得した画像を表示装置としてのモニター1002に表示可能に構成されている。また、PC1001は、モジュールコントローラ101を介して、レンズ301を移動させるレンズ駆動装置310を駆動させて、撮像装置300の撮像素子330が取得する画像のピントが合うようにオートフォーカス制御する。これにより、図4(A)に示すように、グリッパー200の作業領域周辺の近距離視野Fsと、図4(B)に示すように、作業領域下方の遠距離視野Flとの間で、どのような高さ位置に把持対象物が位置する場合でも、把持対象物にピント合わせできる。
【0036】
グリッパー装置1000による把持対象物の把持動作の一例を説明すると、撮像装置300を作動させながら、3軸操作用駆動装置500の駆動によりグリッパーモジュール100を移動させて、遠距離視野Flにて把持対象物を探す。そして、見つけた把持対象物にピントを合わせながら、グリッパー200の把持アーム220の作業領域(近距離視野Fs)に把持対象物が位置するように、3軸操作用駆動装置500の駆動によってグリッパーモジュール100を移動させ、グリッパー200の把持アーム220を駆動させて把持対象物を把持する。
【0037】
以上のように、グリッパー装置1000は、小型化及び軽量化が可能なグリッパーモジュール100を備えているので、グリッパー装置1000全体の小型化及び軽量化を実現できる。また、グリッパー装置1000は、グリッパーモジュール100の台座部材400を撮像装置300の光軸Lに沿って直線移動させる直動機構としての伸縮駆動装置501Bを備えている。これにより、グリッパーモジュール100の撮像装置300で把持対象物を撮像しながら、グリッパーモジュール100を上下移動させて、グリッパー200の把持アーム220の先端部を把持対象物に位置合わせできる。
【0038】
次いで、図5図9も参照しながら、グリッパーモジュール100の構成について説明する。図6(B)において、グリッパー200の断面は、図8(A)のX-X位置に対応している。上述のように、グリッパーモジュール100は、グリッパー200と撮像装置300とが取り付けられる台座部材400とを備えている。
【0039】
台座部材400は、金属製又は樹脂製であり、略台形柱の形態を有し、台座前面部401が斜め下向きに傾斜している。台座部材400の下部には、台座部材400の下面、右側面及び後側面に開口する台座切欠き凹部402が形成されている。台座切欠き凹部402の左側は、台座部材400の左側面部において下方に延びるカバー面部404で閉塞されている。
【0040】
グリッパー200は、アーム駆動用圧電素子210の左右両端に左右のアーム駆動軸211を固定したアーム駆動用振動ユニット212と、左右のアーム駆動軸211に摩擦係合してアーム駆動軸211の軸方向に移動する左右の把持アーム220とを備えている。左右の把持アーム220は、アーム駆動用圧電素子210の振動によって、互いに離れる方向へ、又は互いに接近する方向へ移動されることで開閉動作する。
【0041】
図9に示すように、アーム駆動用振動ユニット212は、左右長手のグリッパー台板201に固定されている。アーム駆動用圧電素子210の一側面が、グリッパー台板201の中央部に突設された台板載置台201aに接着剤202aにて固着されている。また、左右のアーム駆動軸211の端面がグリッパー台板201の左右端部に突設された左右の台板支持片201bの先端面に接着剤202bにて固着されている。
【0042】
なお、左右のアーム駆動軸211の端面は、図10(A)に示すように、台板支持片201bに突合せ配置されて接着剤(図示省略)にて固着されてもよい。また、左右のアーム駆動軸211の端面は、グリッパー台板201に固着されていなくてもよく、例えば、図10(A)に示す構成において、アーム駆動軸211と台板支持片201bとが互いに接着されていない場合には、台板支持片201bは、アーム駆動軸211を保護する保護部材として機能する。この場合、アーム駆動軸211と台板支持片201bとの間に隙間が形成されるようにしてもよい。
【0043】
また、図10(B)に示すように、把持アーム220のアーム駆動軸211先端側(左右外側)への移動可能範囲を制限するストッパー部材227を設けてもよい。例えば、ストッパー部材227は、アーム駆動軸211の一側面(2つ以上の側面であってもよい)の先端寄り部位(アーム駆動用圧電素子210とは反対側の端部寄り部位)に付着された接着剤にて形成されている。ストッパー部材227により、把持アーム220の左右外側への移動が制限される。なお、把持アーム220のアーム駆動軸211基端側(左右内側)への移動可能範囲は、グリッパー台板201の台板載置台201aにて制限される。
【0044】
この変形例では、左右のアーム駆動軸211のそれぞれにストッパー部材227が設けられる一方、左右のアーム駆動軸211でストッパー部材227が設けられる左右方向位置が異なっている。これにより、左右の把持アーム220は、ストローク(移動可能範囲の左右方向長さ)が異なっている。
【0045】
左右の把持アーム220のストロークが異なっていることで、左右の把持アーム220が全開状態から閉じる動作をするときに、ストロークが短い方の把持アーム220が左右内側のストローク端(アーム駆動用圧電素子210側のストローク端)に到達し、ストロークが長い方の把持アーム220が遅れて左右内側のストローク端に到達する。このように、一方の把持アーム220を他方の把持アーム220に比べて左右内側のストローク端に先に到達させることで、左右の把持アーム220を閉じたときの把持アーム220の位置の再現性を向上できる。
【0046】
また、一方の把持アーム220を先に左右内側のストローク端に到達させることで、微小な把持対象物を把持する際に左右の把持アーム220が把持対象物を把持する位置を予測しやすくなり、左右の把持アーム220が把持対象物の把持を完了する前に把持対象物があまり移動しないようにできる。このように、把持操作完了前の把持対象物の変位を低減して、把持操作の再現性及び確実性(精度)を向上できる。
【0047】
また、把持対象物を所望の向きや位置に移動させるときに、ストロークが短い方の把持アーム220を左右内側のストローク端に到達させて把持対象物を移動させるようにすれば、他方の把持アーム220が把持対象物に接触する前に把持対象物の移動を完了できる。これにより、把持対象物の移動操作の再現性及び確実性(精度)を向上できる。
【0048】
左右の把持アーム220をともに左右内側のストローク端に位置させた状態で把持アーム220の先端部同士(フィンガー部材225の先端部同士)の間に隙間が形成されるように把持アーム220の形状及びストロークを設定した場合にも、左右の把持アーム220でストロークを互いに異ならせることで、上記と同様の効果が得られる。
【0049】
なお、左右のアーム駆動軸211のうち一方のアーム駆動軸211のみにストッパー部材227を設けることで、左右の把持アーム220のストロークを互いに異ならせることも可能である。また、アーム駆動軸211の基端寄り部位(アーム駆動用圧電素子210側の端部寄り部位)にストッパー部材を設けることによって、把持アーム220の左右内側のストローク端を設定することが可能である。また、左右の把持アーム220でストロークを互いに異ならせる構成は、図10(A)に示した構成に適用可能であることは言うまでもない。なお、把持アーム220のストローク端を決定するストッパー部材は、アーム駆動軸211に設ける構成に限らず、例えばグリッパー台板201又はグリッパーケース203に設けた突起部によって形成される構成など、把持アーム220に接触して把持アーム220の移動可能範囲を制限する構成であればよい。
【0050】
左右のアーム駆動軸211に摩擦係合する左右の把持アーム220は、アーム駆動軸211に接触させた状態となるアーム本体221のアーム本体基端部223に、弾性を有するアーム固定部材222を装着することで、アーム駆動軸211と摩擦係合している。左右の把持アーム220は、左右対称の構成を有している。図5図7等では、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222の周辺を簡略化して図示している。
【0051】
図11を参照しながら、把持アーム220とアーム駆動軸211との摩擦係合の具体的な構成例を説明する。なお、図11では、把持アーム220におけるアーム本体221のフィンガー取付部224を簡略化して図示するとともに、フィンガー部材225の図示を省略している。
【0052】
アーム本体221のアーム本体基端部223は、側面視で二股に分岐させたL字形状を有しており、一方が後方に延びた上側固定部223Aとなり、他方が下方に延びた前側固定部223Bとなる。アーム固定部材222は、例えば、側面視L字形状に屈曲された板状の摩擦バネなどの弾性体で構成され、アーム固定部材222の一端(後方上縁側)が、アーム本体基端部223の上側固定部223Aと連結される一方、アーム固定部材222の他端(下方前縁側)が、アーム本体基端部223の前側固定部223Bと連結される。
【0053】
アーム本体221は、アーム本体基端部223より前方に延設させたフィンガー取付部224を有している。フィンガー取付部224は、アーム本体基端部223の上側固定部223Aの左右一方の辺縁であって前側固定部223Bの前面から前方に向けて延設されている。アーム本体基端部223は、上側固定部223Aの後方縁に上側に突起させた上側係止部223Xを有する一方、前側固定部223Bの下方縁に前側に突起させた前側係止部223Yを有する。すなわち、アーム本体基端部223は、後方縁に側面視鈎状となる上側係止部223Xを有する上側固定部223Aと、下方縁に側面視鈎状となる前側係止部223Yを有する前側固定部223Bとを分岐させて構成されている。
【0054】
アーム固定部材222は、後側下方端から上方に向かって延びる後方板部222Aと、後方板部222Aの下方縁から前方に向かって延びる下方板部222Bとを有しており、後方板部222Aの上縁にL字状に屈曲させた上側係止部222Xが設けられる一方、下方板部222Bの前縁にL字状に屈曲させた前側係止部222Yが設けられる。アーム固定部材222は、後方板部222Aの上下中途部を前方に突設させるとともに、下方板部222Bの前後中途部を上方に突設させており、後方板部222Aと下方板部222Bとの連結部分が側面視でU字状に形成されている。また、上側係止部222Xが、後方板部222A上縁から前方に延びた後に下方へ屈曲させて構成されており、前側係止部222Yが、下方板部222B前縁から上方に延びた後に後方へ屈曲させて構成されている。
【0055】
アーム本体221は、アーム本体基端部223をアーム駆動軸211の外周面の一部に当接させるようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。このとき、アーム本体基端部223において、上側固定部223A下面がアーム駆動軸211上面に接触するとともに、アーム本体基端部223の前側固定部223B後面がアーム駆動軸211前面に接触する。すなわち、アーム本体221は、アーム本体基端部223がアーム駆動軸211の左右方向一部における上面及び前面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。また、上側固定部223A後縁がアーム駆動軸211後縁よりも後方に突出するとともに、前側固定部223B下縁がアーム駆動軸211下縁よりも下方に突出している。
【0056】
アーム固定部材222が、アーム本体基端部223で覆われたアーム駆動軸211における露出した外周面を覆うようにして、アーム本体221が取り付けられたアーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。このとき、アーム固定部材222は、後方板部222Aの突設部分前面をアーム駆動軸211後面に当接させるとともに、下方板部222Bの突設部分上面をアーム駆動軸211下面に当接させる。すなわち、アーム固定部材222は、アーム駆動軸211のアーム本体221のアーム本体基端部223で覆われた箇所の後面及び下面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。また、アーム固定部材222は、後方板部222A上縁をアーム固定部材222のアーム本体基端部223上面より上方へ突出させることで、上側係止部222Xをアーム本体基端部223の上側係止部223Xに係止させる一方、下方板部222B前縁をアーム固定部材222のアーム本体基端部223前面より前方へ突出させることで、前側係止部222Yをアーム本体基端部223の前側係止部223Yに係止させる。
【0057】
アーム本体221は、アーム本体基端部223両端における上側係止部223X及び前側係止部223Yに、アーム固定部材222両端の上側係止部222X及び前側係止部222Yが引っ掛けられて、アーム駆動軸211との2か所の接触部でアーム駆動軸211を押さえつけて、アーム駆動軸211との間で摩擦力を発生する。すなわち、アーム本体221は、アーム固定部材222によりアーム駆動軸211の方向に引き付けられ、アーム駆動軸211と接触している二つの面(上面及び前面)においてアーム駆動軸211との間で摩擦力を発生させる。このようにして、アーム本体221とアーム固定部材222を組み合わせた把持アーム220がアーム駆動用振動ユニット212に対して摩擦係合した状態となる。
【0058】
移動体となるアーム本体221のアーム本体基端部223が、アーム駆動用振動ユニット212の軸方向から視てアーム駆動用振動ユニット212の外周の一部を覆う形状、すなわち、アーム駆動用振動ユニット212の軸方向に対して垂直な面上でアーム駆動用振動ユニット212の外周の一部を覆う形状を有している。そして、アーム本体基端部223をアーム駆動用振動ユニット212の外周に沿わせるとともにアーム本体基端部223の両端を弾性体であるアーム固定部材222で連結させて、アーム本体221をアーム駆動用振動ユニット212に係合させている。すなわち、アーム本体221のアーム本体基端部223を、アーム駆動軸211の前側上方より覆い被せるようにして、アーム駆動軸211の前面及び上面に当接させて設置する。その後、アーム固定部材222を広げて、アーム駆動軸211の後側下方よりアーム本体基端部223の両端を挟み込むようにして、上側係止部223X及び前側係止部223Yそれぞれを上側係止部222X及び前側係止部222Yを係止させて、アーム駆動軸211に対して、アーム本体221のアーム本体基端部223を摩擦係合させる。
【0059】
このように、把持アーム220は、アーム本体221のアーム本体基端部223と弾性体となるアーム固定部材222とでアーム駆動軸211を挟むようにしてアーム駆動用振動ユニット212に設置されるため、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の組み込みが容易に行えるとともに、把持アーム220を適度な力でアーム駆動用振動ユニット212に摩擦係合できる。このとき、アーム固定部材222の弾性力を変更することで、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の摩擦力を変更できるものとしてもよいし、アーム固定部材222のアーム駆動軸211への接触面積を変更することで、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の摩擦力を変更できるものとしてもよい。
【0060】
また、把持アーム220は、アーム本体221のフィンガー取付部224を前方に延設させた構成を有しているが、アーム駆動軸211を四角柱状とするとともに、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222をL字状に構成することで、フィンガー取付部224による回転モーメントにより把持アーム220がアーム駆動用振動ユニット212に対して回転することを規制できる。すなわち、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222それぞれがアーム駆動軸211の外周面を押圧しながら当接することにより、アーム駆動軸211に対するアーム本体221の回転を防止できる。このとき、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222は、前側固定部223Bと後方板部222Aとでアーム駆動軸211の前後を狭持するとともに、上側固定部223Aと下方板部222Bとでアーム駆動軸211の上下を狭持することで、アーム駆動軸211に摩擦係合している。
【0061】
このようにして、把持アーム220はアーム駆動軸211に摩擦係合している。なお、把持アーム220をアーム駆動軸211に摩擦係合させる構成は、図11を参照して説明した構成に限定されず、アーム駆動用圧電素子210の振動によってスティック状態(固着状態)とスリップ状態(滑り状態)とを繰り返して把持アーム220がアーム駆動軸211に沿って移動する摩擦係合構造であればよい。
【0062】
図8図10等に戻ってグリッパー200の説明を続ける。把持アーム220のフィンガー取付部224の先端部に、板状のフィンガー部材225を保持するためのフィンガー取付溝224aが形成されている。フィンガー取付溝224aは、フィンガー取付部224の先端面、上面及び下面に開口している。フィンガー取付部224の先端部には、当該先端部の左右外側面からフィンガー取付溝224aに貫通するフィンガー固定用ねじ穴224bが形成されている。
【0063】
フィンガー取付溝224aにフィンガー部材225の基端部が差し込まれ、フィンガー固定用ねじ穴224bに左右外側から捩じ込まれるフィンガー固定用ねじ226によってフィンガー部材225の基端部がフィンガー取付溝224aの内壁面に押圧されることで、フィンガー部材225がアーム本体221に着脱可能に取り付けられている。フィンガー固定用ねじ226は例えば六角穴付き止めねじである。フィンガー部材225の先端側は、左右のフィンガー部材225の先端同士が互いに近づく方向へ向けて斜め内向きに延伸しており、フィンガー部材225の先端にて微小部品を把持しやすい構成になっている。
【0064】
アーム駆動用振動ユニット212及び把持アーム220の基端側は、グリッパー台板201に固着された略箱型のグリッパーケース203で覆われている。把持アーム220のアーム固定部材222とアーム本体221のアーム本体基端部223はグリッパーケース203内に配置され、アーム本体221のフィンガー取付部224はグリッパーケース203外に配置されている。グリッパーケース203の端面には、左右のアーム本体221が挿通される左右の把持アーム挿通穴203aが形成されている。把持アーム挿通穴203aは左右横長に形成されて、把持アーム220が左右方向に移動可能に構成されている。
【0065】
グリッパーケース203の上下両面の各中央部には、取付ねじ挿通穴203bがそれぞれ形成されている。取付ねじ挿通穴203bは、取付ねじ挿通穴203bに挿通されるグリッパー取付ねじ205がグリッパーケース203内の把持アーム220及びアーム駆動用振動ユニット212に干渉しない位置に設けられている。グリッパーケース203の左右側面に設けられた開口は、グリッパーケース203の左右側面及びグリッパー台板201の左右側面に貼り付けられた側面カバー204にて塞がれている。また、グリッパーケース203には、アーム駆動用圧電素子210に電気信号を供給する電気配線206をグリッパーケース203内から引き出すための配線挿通穴203cが形成されている。
【0066】
グリッパー200は、取付ねじ挿通穴203bに挿通されたグリッパー取付ねじ205が、台座部材400の台座前面部401に設けられたグリッパー取付ねじ穴405に捩じ込まれることで、台座部材400に着脱可能に取り付けられる。グリッパー200は、左右の把持アーム220が閉じた状態で把持アーム220のフィンガー部材225が台座部材400の下方に位置するように、斜め下向き姿勢で台座部材400に固着されている。
【0067】
次に、図4図7等を参照しながら、グリッパーモジュール100の撮像装置300について説明する。撮像装置300は、台座部材400の下部に設けられた台座切欠き凹部402内に取り付けられている。撮像装置300は、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってレンズ301を光軸Lに沿って上下方向に移動させるレンズ駆動装置310と、レンズ301を通過した光を受光する撮像素子330とを備えている。
【0068】
レンズ駆動装置310は、レンズ駆動用圧電素子311の一端にレンズ駆動軸312を固定した軸状のレンズ駆動用振動ユニット313と、レンズ駆動軸312に摩擦係合してレンズ駆動軸312の軸方向に移動するレンズ支持体314と、レンズ駆動用振動ユニット313の両端を支持する一対の駆動軸支持片315及び圧電素子支持片316を有する支持ケース317と、を備えている。
【0069】
支持ケース317は、板状の駆動軸支持片315と圧電素子支持片316とを連結する板状の支持ベース318を備え、圧電素子支持片316を上側にするとともに駆動軸支持片315を下側にして配置される。駆動軸支持片315及び圧電素子支持片316は、支持ベース318の上下端部から同じ向き(本実施形態では右向き)に延出しており、支持ケース317は、コの字形(C字形)の形態を有する。レンズ駆動用振動ユニット313は、支持ベース318とは間隔を空けて、軸方向が上下方向に沿うようにして、駆動軸支持片315と圧電素子支持片316との間に配置されている。
【0070】
支持ケース317は、台座部材400の台座切欠き凹部402の左後ろ角部近傍に配置されており、圧電素子支持片316が台座切欠き凹部402の上壁面に接着剤(図示省略)で固着されることで、台座部材400に取り付けられている。本実施形態では、支持ケース317と台座部材400のカバー面部404との間に隙間が形成されている。
【0071】
また、レンズ駆動用振動ユニット313のレンズ駆動軸312の端面(下端面)は、駆動軸支持片315に突合せ配置されて接着剤(図示省略)にて固着されている。また、レンズ駆動用圧電素子311の端面(上端面)は、圧電素子支持片316に突合せ配置されて接着剤(図示省略)にて固着されている。このように、レンズ駆動用振動ユニット313の両端面を支持ケース317の一対の支持片315,316に固着することで、レンズ駆動用振動ユニット313の両端面を支持ケース317に確実に固着できる構成でありながら、支持片315,316の厚みを薄くでき、レンズ支持体314の可動範囲(上下ストローク)を確保しつつ、支持ケース317の長さ寸法(レンズ駆動用振動ユニット313の軸方向に沿った長さ寸法)を小さくでき、支持ケース317の小型化及び軽量化、ひいてはレンズ駆動装置310の小型化及び軽量化を実現できる。
【0072】
また、支持ケース317の駆動軸支持片315の厚みを薄することで、レンズ支持体314がレンズ駆動装置310下端部(駆動軸支持片315下面)の近傍まで移動できるので、レンズ支持体314の駆動軸支持片315側の可動範囲端(レンズ支持体314の可動範囲下限)に対するレンズ駆動装置310下端部の突出寸法が小さいコンパクトなレンズ駆動装置310を実現できる。
【0073】
なお、レンズ駆動軸312の端面が接着剤にて駆動軸支持片315に固着される構成においては、当該接着剤がレンズ駆動軸312の側面に回り込んでもよい。レンズ駆動用圧電素子311の端面が圧電素子支持片316に接着剤にて固着される構成においても同様である。
【0074】
また、レンズ駆動用振動ユニット313のレンズ駆動用圧電素子311側の端部は、支持ケース317の圧電素子支持片316に対して、本実施形態のようにレンズ駆動用圧電素子311の端面が固着されてもよいし、レンズ駆動用圧電素子311の端面及び側面が固着されてもよいし、レンズ駆動用圧電素子311の側面が固着されてもよい。
【0075】
図4図7に示すように、レンズ駆動装置310のレンズ支持体314は、レンズ駆動軸312に摩擦係合する支持体基材319と、支持体基材319に連結されたレンズ保持板320と、レンズ保持板320に設けられた光透過穴320aの周囲を囲って起立する筒状のレンズ鏡筒321とを備えている。レンズ301は、レンズ鏡筒321に位置決めして接着されている。レンズ保持板320とレンズ鏡筒321は、例えば金属製であり、遮光機能を有する。
【0076】
図4図7では、支持体基材319の構成を簡略化して図示しており、支持体基材319は、例えば、図11を参照して説明した把持アーム220とアーム駆動軸211との摩擦係合構造と同様の構造にて、レンズ駆動軸312に摩擦係合している。なお、レンズ支持体314をレンズ駆動軸312に摩擦係合させる構成は、図11を参照して説明した構成と同様の構成に限定されず、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってスティック状態(固着状態)とスリップ状態(滑り状態)とを繰り返してレンズ支持体314がレンズ駆動軸312に沿って移動する摩擦係合構造であればよい。
【0077】
一方、フレキシブル基板331に搭載された撮像素子330は遮光用の撮像素子ホルダー332に嵌め込まれており、撮像素子330は、フレキシブル基板331及び撮像素子ホルダー332を介して台座部材400の台座切欠き凹部402に取り付けられている。撮像素子330は、フレキシブル基板331の一端部に実装されており、フレキシブル基板331の当該一端部の撮像素子330実装面とは反対側の面には、補強用の裏打ち板333が貼り付けられている。板状の撮像素子ホルダー332の一側面(上面)には、撮像素子330、フレキシブル基板331及び裏打ち板333を収容する回路配置溝332aが形成されている。撮像素子ホルダー332は、回路配置溝332aを上向きにして、台座部材400の台座切欠き凹部402の前寄り部位(グリッパー200寄りの部位)に接着剤にて固定されている。
【0078】
撮像素子ホルダー332には、撮像素子330の位置に対応して、上下方向に貫通するレンズ配置穴334が形成されている。レンズ配置穴334は撮像素子330の下方に位置している。撮像素子ホルダー332の下方に配置されるレンズ保持板320は、光透過穴320aが撮像素子330及びレンズ配置穴334の下方に位置するように、配置されている。レンズ保持板320の光透過穴320aを囲ってレンズ保持板320の上面に起立して内部にレンズ301を保持する筒状のレンズ鏡筒321は、撮像素子ホルダー332のレンズ配置穴334内に、上下移動可能に配置されている。レンズ鏡筒321の外周面とレンズ配置穴334の内周面との間には、レンズ配置穴334内でのレンズ鏡筒321の位置及び角度の調整を可能にするとともに、レンズ鏡筒321の上下摺動を可能にするための隙間が形成されている。
【0079】
レンズ301を上下方向(光軸L方向)に移動させるレンズ駆動装置310は、上述のように、支持ケース317の圧電素子支持片316が台座切欠き凹部402の上壁面に接着剤にて固着されている。また、支持ケース317とカバー面部404及び撮像素子ホルダー332との間には隙間が形成されている。これにより、レンズ駆動装置310を台座部材400に組み付ける際に、支持ケース317の取付位置や取付角度を調整することで、レンズ301の平行偏心や傾き偏心を調整できる。
【0080】
撮像素子330には、下方から光透過穴320aを介してレンズ301に入射してレンズ301を透過した光が入射する。本実施形態では、レンズ301の周囲を覆うようにしてレンズ支持体314に支持されたレンズ鏡筒321が、レンズ301とレンズ配置穴334との間に配置されて、レンズ配置穴334とレンズ鏡筒321との間の隙間が小さくなっているので、撮像素子330への迷光を低減している。また、レンズ鏡筒321の外周壁と、撮像素子ホルダー332のレンズ配置穴334の内周壁とが対向する領域が、光軸L方向(上下方向)に長さをもっているので、撮像素子330への迷光を遮断しながら、レンズ301及びレンズ鏡筒321をレンズ配置穴334に対して上下移動させることができる。
【0081】
さらに、遮光性を有するレンズ保持板320は、撮像素子ホルダー332の下方に位置する部分が、平面視でレンズ配置穴334よりも大きく形成されて、レンズ配置穴334を覆っている。これにより、下方からレンズ配置穴334とレンズ鏡筒321との間の隙間へ向かう光がレンズ保持板320によって遮断されるので、レンズ配置穴334とレンズ鏡筒321との間に入射する光が低減され、撮像素子330への迷光がさらに低減される。なお、レンズ鏡筒321外周面とレンズ配置穴334内周面の少なくとも一方に、遮光線や反射防止膜(反射防止塗装膜)を形成することで、撮像素子330への迷光をさらに低減することが可能である。
【0082】
以上のように、グリッパーモジュール100によれば、グリッパー200の把持アーム220をアーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉するようにしたので、グリッパー200の構成を簡素化でき、グリッパー200の小型化及び軽量化を実現できる。さらに、グリッパー200と撮像装置300とを同一の台座部材に取り付けるようにしたので、グリッパー200と撮像装置300とをコンパクトに配置でき、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化を実現できる。
【0083】
また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300は、レンズ301と、レンズ301を支持するとともに移動させ得るレンズ駆動装置310と、撮像素子330を保持する撮像素子ホルダー332とを備えている。そして、レンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332は、個別に台座部材400に取り付けられている。これにより、モジュール化された撮像装置を台座部材400に取り付ける場合に比べて、グリッパーモジュール100において撮像装置300が占める領域を小さくでき、グリッパーモジュール100をよりコンパクトな構成にして、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化を実現できる。
【0084】
また、グリッパー200が取り付けられる台座部材400に、レンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332を個別に取り付けることで、グリッパー200に対するレンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332のレイアウトの自由度が向上する。そして、撮像素子ホルダー332に対してグリッパー200及びレンズ駆動装置310を近接配置することで、グリッパー200及び撮像装置300のコンパクトな配置が可能になり、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化に寄与する。なお、レンズ駆動装置310が把持アーム220の開閉動作を妨げない構成であれば、グリッパー200とレンズ駆動装置310とを近接配置することも可能である。
【0085】
次に、グリッパーの変形例について、図12図18を参照して説明する。このグリッパーでは、一対の把持アームのうち一方の把持アームが駆動することで、把持アームの開閉動作が行われる。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「前後」「上下」など)を用いる場合は、図中の矢印に示すように、図12(A)で紙面に直交する方向を平面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0086】
図12は、変形例のグリッパーの構成を示す平面図及び正面図であり、図13は、同グリッパーの構成を示す左右側面図である。図14は、同グリッパーの構成を示す斜視図であり、図15は、同グリッパーの動作を示す図である。図16及び図17は、同グリッパーの組立工程を説明するための分解斜視図である。図18は、グリッパーの動作を示す図である。なお、図12図17では、固定把持アーム25(図18参照)の図示は省略されている。
【0087】
図12図18に示すように、本例のグリッパー200Aは、アーム駆動軸12の一端にアーム駆動用圧電素子11を固定した軸状のアーム駆動用振動ユニット1と、アーム駆動用振動ユニット1に摩擦係合してアーム駆動用振動ユニット1の軸方向に移動する可動把持アーム2とを備える。そして、筐体3の底面31から立設された一対の支持片32A,32B上端に、可動把持アーム2が係合されたアーム駆動用振動ユニット1両端の下面が固着されることで、アーム駆動用振動ユニット1が筐体3に支持されている。
【0088】
グリッパー200Aは、アーム駆動用圧電素子11の一端にアーム駆動軸12の一端を固定したアーム駆動用振動ユニット1を、アーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12の互いに固定された端部とは反対側のニか所の端部で固定枠32に固定している。筐体3は、底面31の外周縁より立設させた固定枠32を有しており、この固定枠32の左右側壁部分が左右一対の支持片32A,32Bに相当する。そして、右側の支持片32Bにアーム駆動用圧電素子11の他端が固定される一方、左側の支持片32Aにアーム駆動軸12の他端が固定される。このとき、固定枠32に対してアーム駆動用振動ユニット1を一つの方向(上方向)から押し付けて接着剤33で接着するなどの方法で、アーム駆動用振動ユニット1が固定枠32へ固定される。また、アーム駆動用振動ユニット1のアーム駆動軸12には、可動把持アーム2が摩擦係合されており、アーム駆動軸12の軸方向に沿って可動把持アーム2が移動する。
【0089】
図18に示すように、グリッパー200Aは、可動把持アーム2におけるアーム本体21のアーム部24先端を内側(左側)に屈曲させるとともに、アーム部24先端部と対称となる先端部を有する固定把持アーム25を筐体3における固定枠32の後側壁32Dに突設させている。例えば、グリッパー200Aは、図1図7に示したグリッパーモジュール100に対して、グリッパー200に替えて、台座部材400の台座前面部401に接着剤等によって取り付けられる。このとき、グリッパー200Aは、可動把持アーム2のアーム部24及び固定把持アーム25が斜め下向きに延伸するようにして、傾斜姿勢で配置され、アーム部24及び固定把持アーム25の各先端部は、撮像装置300の下方に配置される。
【0090】
アーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12は、筐体3の固定枠32へ固定する前に前工程としてアーム駆動用圧電素子11の一端にアーム駆動軸12の一端を固定しアーム駆動用振動ユニット1として組み立てられている。アーム駆動用振動ユニット1を構成するアーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12は、接着剤により接着されるものとしてもよい。このとき、アーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12とを接着する接着剤として、熱伝導接着剤を使用することで、アーム駆動用圧電素子11の熱をアーム駆動軸12に伝達させてアーム駆動用圧電素子11の温度上昇を低減できるため、可動把持アーム2の移動速度を高速にできると共にアーム駆動用圧電素子11への電気信号のデューティ比を高めることができる。は、アーム駆動軸12に接触させた状態となるアーム本体21の基端部(係合部)23に、弾性を有するアーム固定部材22を装着することで、アーム駆動軸12と摩擦係合している。アーム本体21の基端部23は、側面視で二股に分岐させたL字形状を有しており、一方が後方に延びた上側固定部23Aとなり、他方が下方に延びた前側固定部23Bとなる。アーム固定部材22は、例えば、側面視L字形状に屈曲された板状の摩擦バネなどの弾性体で構成され、アーム固定部材22の一端(後方上縁側)が、基端部23の上側固定部23Aと連結される一方、アーム固定部材22の多端(下方前縁側)が、基端部23の前側固定部23Bと連結される。
【0091】
アーム本体21は、基端部23より前方に延設させたアーム部24を有しており、アーム部24は、基端部23の上側固定部23Aの左右一方の辺縁であって前側固定部23Bの前面から前方に向けて延設されている。アーム本体21の基端部23は、上側固定部23Aの後方縁に上側に突起させた上側係止部23Xを有する一方、前側固定部23Bの下方縁に前側に突起させた前側係止部23Yを有する。すなわち、アーム本体21の基端部23は、後方縁に側面視鈎状となる上側係止部23Xを有する上側固定部23Aと、下方縁に側面視鈎状となる前側係止部23Yを有する前側固定部23Bとを分岐させて構成されている。
【0092】
アーム固定部材22は、後側下方端から上方に向かって延びる後方板部22Aと、後方板部22Aの下方縁から前方に向かって延びる下方板部22Bとを有しており、後方板部22Aの上縁にL字状に屈曲させた上側係止部22Xが設けられる一方、下方板部22Bの前縁にL字状に屈曲させた前側係止部22Yが設けられる。アーム固定部材22は、後方板部22Aの上下中途部を前方に突設させるとともに、下方板部22Bの前後中途部を上方に突設させており、後方板部22Aと下方板部22Bとの連結部分が側面視でU字状に形成されている。また、上側係止部22Xが、後方板部22A上縁から前方に延びた後に下方へ屈曲させて構成されており、前側係止部22Yが、下方板部22B前縁から上方に延びた後に後方へ屈曲させて構成されている。
【0093】
アーム本体21は、基端部23をアーム駆動軸12の外周面の一部に当接させるようにして、アーム駆動用振動ユニット1に取り付けられる。このとき、アーム本体21の基端部23において、上側固定部23A下面がアーム駆動軸12上面に接触するとともに、基端部23の前側固定部23B後面がアーム駆動軸12前面に接触する。すなわち、アーム本体21は、基端部23がアーム駆動軸12の左右方向一部における上面及び前面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット1に取り付けられる。また、上側固定部23A後縁がアーム駆動軸12後縁よりも後方に突出するとともに、前側固定部23B下縁がアーム駆動軸12下縁よりも下方に突出している。
【0094】
アーム固定部材22が、基端部23で覆われたアーム駆動軸12における露出した外周面を覆うようにして、アーム本体21が取り付けられたアーム駆動用振動ユニット1に取り付けられる。このとき、アーム固定部材22は、後方板部22Aの突設部分前面をアーム駆動軸12後面に当接させるとともに、下方板部22Bの突設部分上面をアーム駆動軸12下面に当接させる。すなわち、アーム固定部材22は、アーム駆動軸12のアーム本体21の基端部23で覆われた箇所の後面及び下面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット1に取り付けられる。また、アーム固定部材22は、後方板部22A上縁をアーム固定部材22の基端部23上面より上方へ突出させることで、上側係止部22Xを基端部23の上側係止部23Xに係止させる一方、下方板部22B前縁をアーム固定部材22の基端部23前面より前方へ突出させることで、前側係止部22Yを基端部23の前側係止部23Yに係止させる。
【0095】
アーム本体21は、基端部23両端における上側係止部23X及び前側係止部23Yに、アーム固定部材22両端の上側係止部22X及び前側係止部22Yが引っ掛けられて、アーム駆動軸12との2か所の接触部でアーム駆動軸12を押さえつけて、アーム駆動軸12との間で摩擦力を発生する。すなわち、アーム本体21は、アーム固定部材22によりアーム駆動軸12の方向に引き付けられ、アーム駆動軸12と接触している二つの面(上面及び前面)においてアーム駆動軸12との間で摩擦力を発生させる。このようにして、アーム本体21とアーム固定部材22を組み合わせた可動把持アーム2がアーム駆動用振動ユニット1に対して摩擦係合した状態となる。
【0096】
移動体となるアーム本体21の基端部23が、アーム駆動用振動ユニット1の軸方向から視てアーム駆動用振動ユニット1の外周の一部を覆う形状、すなわち、アーム駆動用振動ユニット1の軸方向に対して垂直な面上でアーム駆動用振動ユニット1の外周の一部を覆う形状を有している。そして、基端部23をアーム駆動用振動ユニット1の外周に沿わせるとともに基端部23の両端を弾性体であるアーム固定部材22で連結させて、アーム本体21をアーム駆動用振動ユニット1に係合させている。すなわち、アーム本体21の基端部23を、アーム駆動軸12の前側上方より覆い被せるようにして、アーム駆動軸12の前面及び上面に当接させて設置する。その後、アーム固定部材22を広げて、アーム駆動軸12の後側下方より基端部23の両端を挟み込むようにして、上側係止部23X及び前側係止部23Yそれぞれを上側係止部22X及び前側係止部22Yを係止させて、アーム駆動軸12に対して、アーム本体21の基端部23を摩擦係合させる。
【0097】
このように、可動把持アーム2は、アーム本体21の基端部23と弾性体となるアーム固定部材22とでアーム駆動軸12を挟むようにしてアーム駆動用振動ユニット1に設置されるため、アーム駆動用振動ユニット1に対する可動把持アーム2の組み込みが容易に行えるとともに、可動把持アーム2を適度な力でアーム駆動用振動ユニット1に摩擦係合できる。このとき、アーム固定部材22の弾性力を変更することで、アーム駆動用振動ユニット1に対する可動把持アーム2の摩擦力を変更できるものとしてもよいし、アーム固定部材22のアーム駆動軸12への接触面積を変更することで、アーム駆動用振動ユニット1に対する可動把持アーム2の摩擦力を変更できるものとしてもよい。
【0098】
また、可動把持アーム2は、アーム本体21のアーム部24を前方に延設させた構成を有しているが、アーム駆動軸12を四角柱状とするとともに、アーム本体21の基端部23及びアーム固定部材22をL字状に構成することで、アーム部24による回転モーメントにより可動把持アーム2がアーム駆動用振動ユニット1に対して回転することを規制できる。すなわち、アーム本体21の基端部23及びアーム固定部材22それぞれがアーム駆動軸12の外周面を押圧しながら当接することにより、アーム駆動軸12に対するアーム本体21の回転を防止できる。このとき、アーム本体21の基端部23及びアーム固定部材22は、前側固定部23Bと後方板部22Aとでアーム駆動軸12の前後を狭持するとともに、上側固定部23Aと下方板部22Bとでアーム駆動軸12の上下を狭持することで、アーム駆動軸12に摩擦係合している。
【0099】
上述のようにして、可動把持アーム2をアーム駆動軸12に挿入させるようにして摩擦係合したアーム駆動用振動ユニット1は、筐体3の固定枠32に対して一つの方向(上方向)から押し付けられて固定枠32上に載置される。このとき、可動把持アーム2が組み付けられたアーム駆動用振動ユニット1は、接着剤33による接着などで固定枠32上に固定される。すなわち、固定枠32の左右側壁となる支持片32A,32B上に、絶縁材料による接着剤33を塗布した後、可動把持アーム2が係合されたアーム駆動用振動ユニット1を筐体3の上方から下降させて、アーム駆動用振動ユニット1両端を支持片32A,32B上に載置させる。このとき、アーム駆動用振動ユニット1を上から押しつけることで、接着剤33によりアーム駆動用振動ユニット1を筐体3の固定枠32上に固着させる。これにより、筐体3の固定枠32に対してアーム駆動用振動ユニット1が極めて安定的に固定されると同時に、組み立て時にアーム駆動用振動ユニット1を筐体3に対して一つの方向(上方向)から設置させるだけでよいので、手動組み立て及び自動組み立てのいずれにおいても組立容易性を向上できる。また、接着剤33は、エポキシ、ウレタン、ゴム、シリコン、シアノアクリレート、ポリイミド系などの接着剤が使用可能であり、駆動装置の仕様や用途に応じて適宜選択できる。更に、接着剤33は、組立工程にあわせて、常温硬化型、熱硬化型、光硬化型などの各種より適宜選択されるものである。
【0100】
すなわち、可動把持アーム2を組み付けられたアーム駆動用振動ユニット1は、固定枠32の二辺の外周に沿って設けられた凸部となる支持片32A,32Bそれぞれに、アーム駆動軸12とアーム駆動用圧電素子11を乗せるようにして固定される。この固定枠32に対するアーム駆動用振動ユニット1の固定は、固定枠32における支持片32A,32Bに接着剤33を必要量塗布しておき、アーム駆動用振動ユニット1を位置決め治具により位置決めして、固定枠32に押し付けてアーム駆動軸12とアーム駆動用圧電素子11を固定枠32に接着固定する。このように固定枠32にアーム駆動用振動ユニット1を接着する際、固定枠32に対するアーム駆動用振動ユニット1の位置や姿勢を固定した状態で把持すればよく、固定枠32にアーム駆動用振動ユニット1を押しつけることに限定されるものではない。そして、接着剤33でアーム駆動用振動ユニット1を筐体3に組み付けることで、可動把持アーム2の運動軌跡、位置、及び姿勢に対して最適となる位置にアーム駆動用振動ユニット1の取り付け位置を調整できる。なお、固定枠32に対するアーム駆動用振動ユニット1の固定方法は、上述した接着による固定方法以外に、超音波溶着などによる固定方法を用いてもよい。
【0101】
筐体3は、底面31の外周縁より立設させた外周壁となる固定枠32を有しており、固定枠32のうちの左右側壁が、支持片32A、32Bとしてアーム駆動用振動ユニット1の左右両端を支持する。すなわち、アーム駆動用圧電素子11の一端が支持片32B上に接着剤33により固着される一方で、アーム駆動軸12の一端が支持片32B上に接着剤33により固着される。接着剤33の弾性係数は、筐体3を構成する材料(例えば、金属又は繊維強化樹脂など)の弾性係数よりも低い。従って、接着剤33が弾性を有する緩衝材として機能するため、アーム駆動用圧電素子11の一端が支持片32Aに対して、接着剤33の弾性による範囲内で変位可能であるとともに、アーム駆動軸12の一端が支持片32Aに対して変位可能となる。そのため、アーム駆動用振動ユニット1は、上下方向、左右方向、前後方向の3軸方向だけでなく、当該3軸に対する3回転方向についても、筐体3に対して変位できる自由度(6自由度)を有する。従って、筐体3に外力が加わっても接着剤33で吸収されることとなり、アーム駆動用振動ユニット1に対して外力への影響を抑制できるため、固定枠32に対して極めて安定的に固定されたアーム駆動用振動ユニット1上で、動く可動把持アーム2に、固定枠32に対して安定した精密な動作をさせることができる。
【0102】
筐体3は、固定枠32のうちの前側壁32C及び後側壁32Dの高さを、左右側壁となる支持片32A,32Bよりも高くなるように構成している。このとき、前側壁32C及び後側壁32Dの上端が、アーム駆動用振動ユニット1に係合された可動把持アーム2の上端(アーム固定部材22の上端)よりも高くなる。これにより、天井面41の左右側縁から下方に左右側壁42,43を垂設させたU字状(コ字状)のカバー4で、筐体3が覆われたとき、カバー4の天井面41下面と可動把持アーム2上端との間に間隙を設けて干渉を防ぐことができ、可動把持アーム2がアーム駆動用振動ユニット1に対して左右にスライド可能となる。
【0103】
筐体3上方からカバー4を被せたとき、カバー4は、天井面41の前縁側下面が筐体3の前側壁32C上端に当接するとともに、天井面41の後縁側下面が筐体3の後側壁32D上端に当接する。このとき、アーム駆動用振動ユニット1が固定された筐体3をカバー4で上方から覆うことで、筐体3の底面31とカバー4の天井面41とで上下が被覆された空間34の前後左右が、筐体3の前後側壁32C,32D及びカバー4の左右側壁42,43で囲まれる。そして、筐体3及びカバー4で囲まれた空間34内には、筐体3の支持片32A,32Bに固定支持されたアーム駆動用振動ユニット1が、可動把持アーム2がアーム駆動軸12に摩擦係合された状態で左右に延びるように配置されている。アーム駆動用振動ユニット1の左右幅は、筐体3の左右幅より短く構成されており、アーム駆動用振動ユニット1(アーム駆動用圧電素子11)の右端側面が支持片32Bの外側面(右側面)よりも内側(左側)に位置するとともに、アーム駆動用振動ユニット1(アーム駆動軸12)の左端側面が支持片32Aの外側面(左側面)よりも内側(右側)に位置している。これにより、アーム駆動用振動ユニット1による左右方向の振動や、上下方向又は前後方向を回転軸とする振動により、アーム駆動用振動ユニット1が筐体3やカバー4に干渉することを防止し、アーム駆動用振動ユニット1又は筐体3及びカバー4の破損を防止できる。
【0104】
筐体3は、前側壁32Cの一部を切り欠いたアーム用開口部32Eを有しており、アーム本体21のアーム部24を外部に突出させている。アーム用開口部32Eは、その左右幅が可動把持アーム2の左右移動幅より大きくなるように、前側壁32Cの上縁左側を切り欠いて構成されており、アーム用開口部32E上方及び左側方がカバー4の天井面41及び左側壁42により覆われている。また、筐体3は、後側壁32Dの一部を切り欠いたリード線用開口部(導入部)32Fを有しており、可動把持アーム2のアーム駆動用圧電素子11に接続されたリード線5がリード線用開口部32Fより外部に引き出される。リード線用開口部32Fは、後側壁32Dの上縁右側を切り欠いて構成されるとともに、アーム駆動用振動ユニット1右端側となるアーム駆動用圧電素子11に対向する位置に設けられ、リード線用開口部32F上方がカバー4の天井面41に覆われている。
【0105】
アーム駆動用振動ユニット1において、アーム駆動用振動ユニット1の軸方向に対して垂直となる断面が、アーム駆動用圧電素子11の方がアーム駆動軸12よりも大きい。本実施形態では、アーム駆動用圧電素子11の上下高さが、アーム駆動軸12の上下高さよりも高く、アーム駆動用圧電素子11上面がアーム駆動軸12上面よりも高い位置となっている。このとき、アーム駆動用圧電素子11下面とアーム駆動軸12下面とは、同一高さとなっている。これにより、アーム駆動軸12に摩擦係合している可動把持アーム2が右側に移動する際、アーム本体21の基端部23右側面が、アーム駆動用圧電素子11の左側面と当接することで、可動把持アーム2の右側変位が制限される。一方、左側の支持片32A上面にアーム駆動軸12下面が接着剤33を介して固着されている。これにより、アーム駆動軸12に摩擦係合している可動把持アーム2が左側に移動する際、アーム本体21の基端部23左側面が、筐体3の固定枠32(支持片32Aの右側面)と当接することで、可動把持アーム2の左側変位が制限される。
【0106】
なお、アーム駆動用振動ユニット1において、アーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12の上下高さを同一とし、前後幅を異なるものとしてもかまわない。すなわち、アーム駆動用圧電素子11の前後幅をアーム駆動軸12の前後幅よりも広くすることで、アーム本体21の基端部23右側面が、アーム駆動用圧電素子11の左側面と当接することで、可動把持アーム2の右側変位が制限される。すなわち、アーム駆動用圧電素子11の外周面(前後面及び上下面)の少なくとも一面が、アーム駆動軸12の外周面に対して突出するように構成して、アーム駆動用圧電素子11の突出部分の左側面にアーム本体21の基端部23右側面を当接させることで、可動把持アーム2の右側変位を制限できる。なお、アーム駆動用圧電素子11下面をアーム駆動軸12下面よりも下側に突出させた場合、アーム駆動軸12を固定する支持片32Aの高さを、アーム駆動用圧電素子11を固定する支持片32Bの高さより低くすることで、アーム駆動用振動ユニット1を筐体3の底面31に対して平行(水平)に設置できる。
【0107】
筐体3には、アーム駆動用圧電素子11と電気的に接続するリード線5を外部から導入するリード線用開口部(導入部)32Fを備えており、可動把持アーム2の移動方向に沿って、リード線用開口部32Fがアーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12との境界よりもアーム駆動用圧電素子11側に設けられている。アーム駆動用圧電素子11は、例えば、アーム駆動用振動ユニット1の軸方向(左右方向)に圧電材料が積層された積層型の圧電素子で構成されるとともに、その前後面に一対の電極を有している。そして、2本のリード線5それぞれが、アーム駆動用圧電素子11における前後一対の電極それぞれに半田又は導電接着剤などにより接続されており、アーム駆動用圧電素子11を駆動するための電圧波形が、2本のリード線5を介して外部の駆動回路から印加される。そして、固定枠32の後側壁32Dには、浅い切欠き部で構成されるリード線用開口部32Fが設けられており、このリード線用開口部32Fより、アーム駆動用圧電素子11に接続された2本のリード線5が外部に引き出される。
【0108】
筐体3の固定枠32において、後側壁32Dにおけるリード線用開口部32Fが、アーム駆動用圧電素子11の後面に対向する位置に設けられている。従って、アーム駆動用圧電素子11の前後面に設けられた電極とリード線用開口部32Fとの距離が短くなるため、アーム駆動用圧電素子11に接続される2本のリード線5を短くできる。また、リード線用開口部32Fをアーム駆動用圧電素子11上面より上方で開口させた構成とすることで、アーム駆動用圧電素子11に接続されたリード線5の屈曲箇所を少なくでき、リード線5の破損を防止できる。また、リード線用開口部32Fの左縁を、アーム駆動用振動ユニット1におけるアーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12との境界位置とすることで、可動把持アーム2の移動幅よりも外側(右側)にリード線5を配線できるため、可動把持アーム2とリード線5との接触を防止して、リード線5の破損や可動把持アーム2の移動に対する干渉を防止できる。
【0109】
アーム駆動用圧電素子11は、変動する電圧波形が印加されることで、アーム駆動用振動ユニット1の軸方向に伸縮して、アーム駆動軸12の軸方向(長手方向)の振動を誘起させる。このアーム駆動用振動ユニット1における振動を、時間軸で非対称な周期となる振動とすることで、可動把持アーム2をアーム駆動軸12の軸方向に沿って移動させることができる。このとき、アーム駆動用圧電素子11には、のこぎり波、非対称三角波、非対称正弦波などといった、時間軸方向に非対称な周期の振動を有する電圧波形による電気信号が与えられる。なお、非対称三角波及び非対称正弦波による電圧波形は、時間軸方向に対称性を持つ三角波や正弦波を時間軸方向に歪ませることで非対称性を与えることで生成される。なお、アーム駆動用圧電素子11は、積層型の圧電素子に限定されるものではなく、バルク型の圧電素子としてもかまわない。また、アーム駆動用振動ユニット1において、アーム駆動用圧電素子11の代わりに、磁歪素子などの振動子をアーム駆動軸12に連結させる構成とし、当該振動子によりアーム駆動軸12への振動を励起させるものとしてもよい。
【0110】
図18は、グリッパー200Aの動作を示す図であり、可動把持アーム2の状態を明らかにするため、カバー4をはずした状態での平面図を示している。図18に示すように、上述のように、グリッパー200Aは、可動把持アーム2におけるアーム本体21のアーム部24先端を内側(左側)に屈曲させるとともに、アーム部24先端部と対称となる先端部を有する固定把持アーム25を筐体3における固定枠32の後側壁32Dに突設させている。グリッパーは、アーム駆動用振動ユニット1の振動により可動把持アーム2を左右に移動させることで、アーム部24先端と固定把持アーム25先端とを接離させる。図18(A)は、可動把持アーム2を最も左側に位置させて、アーム部24と固定把持アーム25とを開いた状態とし、この開いた状態から可動把持アーム2を右側に移動させることで、アーム部24先端を固定把持アーム25先端に近づけて、アーム部24と固定把持アーム25とを閉じていく。
【0111】
図18(B)に示すように、アーム部24先端と固定把持アーム25先端とが接触した状態となったとき、アーム本体21の基端部23は、アーム駆動用振動ユニット1のアーム駆動用圧電素子11の左端(アーム駆動用圧電素子11とアーム駆動軸12の境界)まで到達しておらず、可動把持アーム2は更に右側に移動可能な状態にある。
【0112】
アーム本体21は、アーム部24の左右方向の厚みを薄くして、アーム部24を撓ませることが可能に構成されており、図18(C)のように、アーム部24と固定把持アーム25とを接触させた状態のまま、更に可動把持アーム2を右側に移動できる。このように、アーム部24を可撓する構造とすることで、アーム部24の撓みによる弾性力がアーム部24と固定把持アーム25との把持力の強度を上げる。また、アーム部24を撓ませてアーム部24と固定把持アーム25とを閉じた状態とすることで、アーム部24と固定把持アーム25とを開く際に、アーム部24の撓みによる弾性力が作用し、アーム部24が固定把持アーム25から離れる方向に可動把持アーム2が円滑に移動する。更に、グリッパーとして組み立てた際に、固定把持アーム25先端とアーム本体21の先端との位置あわせが容易になる。このとき、アーム本体21の基端部23がアーム部24の撓みに応じて傾くようにしてもよい。なお、本例において、アーム本体21におけるアーム部24の左右幅を薄くすることで、アーム部24を撓ませる構造としたが、アーム本体21における基端部23を高剛性材料で構成する一方、アーム部24を可撓性材料で構成することで、アーム部24を撓ませることができるものとしても構わない。
【0113】
次に、図19を参照して、撮像装置300の撮像領域とグリッパー200の把持アームの位置関係について説明する。図19(A-1),(A-2)は双方の把持アーム220が可動な態様を示し、図19(B-1),(B-2)は一方の把持アーム25が固定され、他方の把持アーム2が可動な態様を示す。
【0114】
図19(A-1),(A-2)に示す態様は、図1図11を参照して説明したグリッパーモジュール100に対応する。把持対象物600を探す段階では、図19(A-1)に示すように、撮像装置300の画像取得領域350の外側に、左右の把持アーム220を待機させる。画像取得領域350の全体にオートフォーカス領域が設定されており、画像取得領域350に映る物体(把持対象物600)にピントが合わせられる。そして、発見した把持対象物600の高さ位置に把持アーム220の先端部が高さ合せされた後、図19(A-2)に示すように、左右の把持アーム220を閉じる方向へ移動させて、把持対象物600を把持する。これにより、把持対象物600の探索時及び把持アーム220の高さ位置合わせ時に、把持アーム220にピント合わせされることがなく、把持対象物600にピントを合わせた状態で効率よく作業を行える。
【0115】
なお、図19(A-1),(A-2)では、画像取得領域350の全体にオートフォーカス領域を設定しているが、画像取得領域350の中央部にオートフォーカス領域を設けてもよい。この場合、左右の把持アーム220をオートフォーカス領域の外側で、画像取得領域350内に待機させるようにしてもよい。
【0116】
図19(B-1),(B-2)に示す態様は、図12図18を参照して説明したグリッパー200Aを有するグリッパーモジュールに対応する。撮像装置300の画像取得領域350の中央部にオートフォーカス領域351が設定されており、固定把持アーム25の先端部は、オートフォーカス領域351の外側で画像取得領域350内に位置している。把持対象物600を探す段階では、図19(B-1)に示すように、画像取得領域350の外側に、可動把持アーム2を待機させ、オートフォーカス領域351に映る物体(把持対象物600)にピントが合わせられる。
【0117】
そして、発見した把持対象物600の高さ位置に把持アーム2,25の先端部が高さ合せされた後、図19(B-2)に示すように、オートフォーカス領域351を大きくし、アーム部24を閉じる方向へ(固定把持アーム25側へ)移動させて、把持対象物600を把持する。これにより、把持対象物600の探索時及び把持アームの高さ位置合わせ時に、把持アーム2,25にピント合わせされることがなく、把持対象物600にピントを合わせた状態で効率よく作業を行える。なお、オートフォーカス領域351の大きさは、把持対象物600の探索時(図19(B-1))と把持時(図19(B-2))とで同じであってもよい。
【0118】
また、図19(B-1),(B-2)に示す態様では、固定把持アーム25の先端部が画像取得領域350内に位置しているので、固定把持アーム25の先端部で把持対象物600を突いたり、動かしたり、回転させて向きを変えたりすることが可能である。
【0119】
また、グリッパーの把持アームに替えて、キャピラリー等の針状部材を装着し、撮像装置300が細胞等の穿刺対象物にピント合わせして取得する画像を見ながら、穿刺対象物に針状部材を穿刺する操作を行うことも可能である。
【0120】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態での材料、形状、配置、個数等は一例であり、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、本発明のグリッパーモジュールが取り付けられるグリッパー装置は、3軸操作用駆動装置以外にも、1軸操作用駆動装置や2軸操作用駆動装置であっても構わないし、回転動作を行う駆動装置と組み合わせたものとしても構わない。
【0121】
また、本発明のグリッパーモジュールにおいて、台座部材400にグリッパー200と2つの撮像装置300を取り付け、ステレオ画像を取得する構成であってもよい。この場合、例えば、図20(A),(B)に示すように、上記実施形態のグリッパーモジュール100の構成に、光軸Lが上下方向に沿った撮像装置300を挟んでグリッパー200とは反対側の位置に、グリッパー200の作業領域を斜めに通る光軸LAを有する第2の撮像装置300Aを追加した構成を挙げることができる。これにより、撮像装置300の取得画像を使用して把持対象物を探し、グリッパー200にて把持対象物を把持する際には撮像装置300と撮像装置300Aとのステレオ画像を見ながら把持作業を行える。この場合、撮像装置300,300Aのレンズ駆動装置310を、各撮像素子330に対して、把持アーム220の移動方向(開閉方向)に平行な方向に配置することで、グリッパー200と撮像装置300,300Aを互いに近接配置して当該グリッパーモジュールをコンパクトに構成できる。
【0122】
また、図20(C),(D)に示すように、把持アーム220が上下方向に延伸するようにしてグリッパー200を配置する一方、グリッパー200を挟んで、グリッパー200の作業領域を斜め上方から撮像する2つの撮像装置300,300を配置してもよい。この構成によれば、一方の撮像装置300の取得画像を使用して把持対象物を探し、グリッパー200にて把持対象物を把持する際には2つの撮像装置300のステレオ画像を見ながら把持作業を行える。この場合、図20(D)に示すように、各撮像装置300において、レンズ駆動装置310を、撮像素子330に対して、把持アーム220の移動方向(開閉方向)に平行な方向に配置することで、グリッパー200と2つの撮像装置300を互いに近接配置して当該グリッパーモジュールをコンパクトに構成できる。また、図20(E)に示すように、各撮像装置300において、レンズ駆動装置310を、撮像素子330に対してグリッパー200とは反対側に配置することでも、グリッパー200と2つの撮像装置300を互いに近接配置して当該グリッパーモジュールをコンパクトに構成できる。
【符号の説明】
【0123】
1 アーム駆動用振動ユニット
2 可動把持アーム
11 アーム駆動用圧電素子
12 アーム駆動軸
25 固定把持アーム
100 グリッパーモジュール
200,200A グリッパー
210 アーム駆動用圧電素子
211 アーム駆動軸
212 アーム駆動用振動ユニット
220 把持アーム
300 撮像装置
300A 第2の撮像装置
301 レンズ
310 レンズ駆動装置
311 レンズ駆動用圧電素子
312 レンズ駆動軸
313 レンズ駆動用振動ユニット
314 レンズ支持体
315 駆動軸支持片(一方の支持片)
316 圧電素子支持片(他方の支持片)
317 支持ケース
321 レンズ鏡筒
330 撮像素子
334 レンズ配置穴
400 台座部材
501B 伸縮駆動装置(直動機構)
1000 グリッパー装置
L,LA 光軸
図1
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