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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】光レセプタクル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20221110BHJP
   G02B 6/36 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019033937
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020140003
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000243342
【氏名又は名称】本多通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】大井 茂弘
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】大久保 靖明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直英
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-502814(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0143931(KR,A)
【文献】特開2017-212252(JP,A)
【文献】特開2006-242997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-27,6/30-6/34,6/42-6/43
G02B 6/24,6/255,6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルールの先端に軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を有する光プラグと接続される光レセプタクルにおいて、
前記フェルールが挿入される挿入孔を有する受け部を備え、
前記挿入孔は、前記フェルールの前記先端が押し付けられる底面を有し、
前記底面は、前記フェルールの前記傾斜面の傾斜に沿って傾斜した傾斜部と、前記フェルールの前記先端のうち最先端の部分に当接しないよう回避する溝部とを有し、
前記フェルールの前記傾斜面が前記傾斜部に当接することにより、前記フェルールの前記先端に加わる応力が分散される、
光レセプタクル。
【請求項2】
前記傾斜部は、錐状である、
請求項の光レセプタクル。
【請求項3】
前記傾斜部は、複数の平面を有し、
前記複数の平面は、互いに異なる方向に傾斜している、
請求項1又は2の光レセプタクル。
【請求項4】
前記底面は、軸方向に対して垂直な平面を有し、
前記平面は、前記フェルールの前記先端が軸方向に対して垂直である第二の光プラグと接続された場合に、前記フェルールの前記先端に当接する、
請求項1乃至いずれかの光レセプタクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバに接続された光プラグに接続される光レセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの先端面が軸方向に対して垂直であると、光ファイバを通過した光が先端面で反射して送信側に戻り、発光素子の発光状態が不安定になるので、伝送信号の品質が劣化する。
これを防ぐため、光ファイバの先端面を軸方向に対して斜めに傾斜させ、先端面で反射した光が送信側に戻るのを防止することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-294585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック製の光ファイバにおいて、先端面を軸方向に対して斜めにするため、光ファイバを光プラグに固定したのち、光ファイバを保持したフェルールの先端から露出した光ファイバの先端を斜めに切断することが考えられる。この加工を容易にするため、フェルールの先端に、軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を設けることが考えられる。
一方、伝送損失を抑えるため、光ファイバの先端は、光レセプクルに設けられた光学系の焦点位置によって定まる所定の位置に配置される。これを確実にするため、光プラグを光レセプタクルに接続するとき、フェルールを先端方向へ向けて付勢し、光レセプタクルに押し付ける。
しかし、フェルールの先端に傾斜面を設けると、フェルールの最先端の部分に応力が集中して、変形したり破損したりする可能性があり、その結果、光レセプタクルに対するフェルールの位置がずれ、伝送損失が大きくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
光レセプタクルは、フェルールの先端に軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面を有する光プラグと接続される。光レセプタクルは、前記フェルールが挿入される挿入孔を有する受け部を備える。前記挿入孔は、前記フェルールの前記先端が押し付けられる底面を有する。前記底面は、前記フェルールの前記傾斜面の傾斜に沿って傾斜した傾斜部を有する。前記フェルールの前記傾斜面が前記傾斜部に当接することにより、前記フェルールの前記先端に加わる応力が分散される。
前記底面は、前記フェルールの前記先端のうち最先端の部分に当接しないよう回避する溝部を更に有してもよい。
前記傾斜部は、錐状であってもよい。
前記傾斜部は、複数の平面を有してもよい。前記複数の平面は、互いに異なる方向に傾斜していてもよい。
前記底面は、軸方向に対して垂直な平面を有してもよい。前記平面は、前記フェルールの前記先端が軸方向に対して垂直である第二の光プラグと接続された場合に、前記フェルールの前記先端に当接してもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記光レセプタクルによれば、前記フェルールの前記先端に加わる応力が分散されるので、前記フェルールの変形や破損を防ぐことができ、光レセプタクルに対するフェルールの位置がずれることによる伝送損失の増大を防ぐことができる。
前記溝部があれば、前記底面が前記フェルールの前記先端のうち最先端の部分に当接しないよう回避するので、最先端の部分の変形や破損を防ぐことができる。また、最先端の部分が、前記フェルールの位置決めに影響しないので、仮に最先端の部分が変形したり破損したりしたとしても、光レセプタクルに対するフェルールの位置がずれることによる伝送損失の増大を防ぐことができる。
軸方向に対して垂直な平面があれば、フェルールの先端が中心軸に対して垂直な光プラグを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光プラグ80の一例を示す図。
図2】光レセプタクル10の一例を示す正面図。
図3】前記光レセプタクル10を示すIII-III断面図。
図4】底面32の一例を示す斜視図。
図5】フェルール81が底面32に当接しているところを示す断面図。
図6】底面32の別の例を示す斜視図。
図7】底面32の別の例を示す斜視図。
図8】底面32の別の例を示す断面図。
図9】底面32の別の例を示す断面図。
図10】光レセプタクル20の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すとおり、光プラグ80は、光ファイバを保持するフェルール81を有する。フェルール81の先端は、概ね円柱状であり、中心を軸方向に貫通する貫通孔(不図示)を有する。フェルール81の先端には、軸方向に対して斜めに傾斜した傾斜面82が設けられている。前記貫通孔のなかに光ファイバを挿通し、傾斜面82から外側に露出した部分を切断することにより、前記光ファイバの先端を斜めに加工する。
【0009】
図2及び3に示すとおり、光レセプタクル10は、ハウジング11と、受け部12と、光学素子14と、レンズ15とを有する。
ハウジング11には、光プラグ80と嵌合する嵌合構造が設けられ、光プラグ80を光レセプタクル10に対して所定の位置に固定する。
受け部12には、光プラグ80のフェルール81が挿入される挿入孔13が設けられている。挿入孔13は、円筒状の側面31と、フェルール81の先端に当接する底面32とを有する。側面31は、フェルール81が挿入孔13に対して軸方向に自由に移動できるようにするため、フェルール81の外径よりもわずかに大きい内径を有する。底面32の中心には、光ファイバを通過する光が通る貫通孔33が設けられている。なお、光ファイバを通過する光を透過する透光材料で底面32を形成してもよく、その場合は、貫通孔33を設けなくてもよい。
光学素子14は、例えば発光素子であり、光学素子14から放射された光がレンズ15によって所定の焦点位置に焦点を結ぶ。あるいは、光学素子14は、受光素子であり、前記焦点位置から放射された光がレンズ15によって光学素子14に焦点を結ぶ。挿入孔13に挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端を前記焦点位置によって定まる所定の位置に合わせることにより、伝送損失を抑えることができる。
【0010】
図4に示すとおり、底面32には、傾斜部34が設けられている。傾斜部34は、挿入孔13の中心軸の上に頂点を有する円錐状である。傾斜部34の母線(頂点と底面の外周とを結ぶ直線)が中心軸との間になす角と、フェルール81の傾斜面82の法線(面に対して垂直な直線)が中心軸との間になる角との和は、直角である。すなわち、傾斜部34は、傾斜面82の傾斜に沿って傾斜している。
底面32には、更に、溝部35が設けられている。溝部35は、傾斜部34の外周に沿った環状であり、傾斜部34よりも窪んでいる。
【0011】
図5に示すとおり、光プラグ80を光レセプタクル10に接続すると、光プラグ80に設けられた付勢機構により、フェルール81が先端方向に付勢され、フェルール81の先端が底面32に押し付けられる。このとき、傾斜部34が傾斜面82の傾斜に沿って傾斜しているので、傾斜面82は、傾斜部34の母線に当接する。また、溝部35が傾斜部34よりも窪んでいるので、フェルール81の最先端の部分は、底面32から離れ、当接しない。したがって、フェルール81の先端に加わる応力は、傾斜部34の母線に沿って分散され、フェルール81の最先端の部分には加わらない。これにより、フェルール81の変形や破損を防ぐことができる。
光レセプタクル10に対するフェルール81の位置は、傾斜部34に当接する傾斜面82によって定まる。光レセプタクル10は、この状態でフェルール81に保持された光ファイバの先端が前記焦点位置によって定まる所定の位置にあるよう構成されている。フェルール81の先端が変形したり破損したりしなければ、光レセプタクル10に対するフェルール81の位置がずれることはない。仮に、フェルール81の最先端の部分が変形したり破損したりしたとしても、その部分は、フェルール81の位置決めとは関係ないので、フェルール81の位置がずれることはない。したがって、低い伝送損失を維持することができる。
【0012】
挿入孔13の側面31の内径は、フェルール81の外径よりもわずかに大きいので、厳密に言えば、フェルール81の中心軸は、挿入孔13の中心軸と一致しない。フェルール81は先端方向へ向けて付勢されているので、フェルール81の側面のうち、フェルール81の最先端の部分に対応する部分が、挿入孔13の側面31に当接する。したがって、フェルール81の中心軸は、挿入孔13の中心軸に対して放射方向に平行にずれるが、斜めに傾くことはない。したがって、中心軸の傾きに起因する伝送損失の増大を防ぐことができる。
【0013】
図6に示すとおり、傾斜部34の形状は、円錐状に限らず、角錐状であってもよい。すなわち、傾斜部34は、互いに異なる方向に傾斜した複数の平面を有する。なお、稜線の部分をR処理してもよい。
それぞれの平面の法線が中心軸との間になす角は、フェルール81の傾斜面82の法線が中心軸との間になす角と等しい。すなわち、傾斜部34は、傾斜面82の傾斜に沿って傾斜している。
傾斜部34が円錐状であれば、フェルール81の傾斜面82の向きに関わらず、傾斜面82がいずれかの母線に当接する。これに対し、傾斜部34が角錐状である場合は、傾斜面82の向きを、いずれかの平面に合わせる必要がある。そのためには、例えば、光プラグ80と光レセプタクル10との嵌合構造により、傾斜面82の向きを制限するよう構成する。あるいは、フェルール81が中心軸を中心としてある程度自由に回転できるよう構成してもよい。そうすれば、傾斜面82が自動的に回転して、向きを合わせることができる。
フェルール81の傾斜面82が傾斜部34のいずれかの平面全体に当接するので、当接する部分の面積が広くなり、応力が更に分散される。これにより、フェルール81の変形や破損を防ぐことができる。
【0014】
図7に示すとおり、傾斜部34の形状は、切妻屋根状であってもよい。すなわち、傾斜部34は、互いに異なる方向に傾斜した二つの平面を有する。なお、稜線の部分をR処理してもよい。
また、溝部35は、傾斜部34の周りを囲む環状ではなく、所定の方向にのみ設けてもよい。この例では、傾斜面82の向きが限られているので、溝部35は、そのときにフェルール81の最先端の部分が来る位置のみに設ければよい。傾斜部34が角錐状である場合も同様である。
【0015】
図8に示すとおり、図7の切妻屋根状の二つの平面のうちの一方のみを傾斜部34とし、他方は、中心軸に対して垂直な平面36としてもよい。
そうすれば、フェルール81の先端に傾斜面82が設けられた光プラグ80だけでなく、フェルール81の先端が中心軸に対して垂直な光プラグも、光レセプタクル10に接続することができる。その場合、フェルール81の先端の面が、平面36に当接する。
【0016】
また、傾斜部34が角錐状や切妻屋根状である場合において、それぞれの平面の法線が中心軸との間になす角が、互いに異なってもよい。あるいは、傾斜部34が円錐状である場合において、母線が中心軸との間になす角が、方向によって異なってもよい。
そうすれば、傾斜面82の角度が異なる複数種類の光プラグ80を、光レセプタクル10に接続することができる。
【0017】
図9に示すとおり、傾斜部34は、一つの平面だけを有してもよい。
【0018】
図10に示すとおり、光レセプタクル20は、ハウジング21と、受け部22とを有する。光レセプタクル20は、二つの光ファイバを接続するためのアダプタとして機能する。
ハウジング21には、光プラグ80と嵌合する嵌合構造が二つ設けられている。それぞれの嵌合構造に光プラグ80を嵌合させることにより、二つの光プラグ80を互いに対向する位置に固定する。
受け部22には、光プラグ80のフェルール81が挿入される二つの挿入孔23a,23bが設けられている。受け部22は、光プラグ80を通過する光を透過する透光材料で形成されている。なお、挿入孔23a,23bの底面以外の部分は、光プラグ80を通過する光を透過しない不透光材料で形成してもよい。
挿入孔23a,23bの形状は、光レセプタクル10の挿入孔13と同様である。ただし、貫通孔33の代わりに、有底穴33a,33bが設けられている。有底穴33a,33bの底面は、例えば、軸方向に対して垂直な平面である。
また、受け部22には、有底穴の先に凸部25a,25bが設けられている。凸部25a,25bは、例えば球面状であり、有底穴33a,33bの底面と協働して、レンズの役割を果たす。なお、所望のレンズとして機能するのであれば、有底穴33a,33bはなくてもよい。
挿入孔23aに挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端から放射された光は、凸部25a,25bによって、挿入孔23bに挿入されたフェルール81によって保持された光ファイバの先端に焦点を結ぶ。
なお、光レセプタクル10と同様、レンズ15を設けてもよく、その場合は、凸部25a,25bを設けなくてもよいし、有底穴33a,33bではなく貫通孔33を設けてもよい。貫通孔33を設ける場合は、光プラグ80を通過する光を透過しない不透光材料で受け部22を形成してもよい。
【0019】
すなわち、光レセプタクル20は、上述した光レセプタクル10を背中合わせに二つ結合したものであり、光学素子14を設ける代わりに、光学素子14の位置にもう一つの光ファイバの先端を配置することにより、二つの光ファイバを接続し、一方の光ファイバを通過した光を、他方の光ファイバに入射させる。
光レセプタクル20は、上述した光レセプタクル10と同様、フェルール81の位置がずれるのを防ぐことができるので、低い伝送損失を維持することができる。
【0020】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0021】
10,20 光レセプタクル、11,21 ハウジング、12,22 受け部、13,23a,23b 挿入孔、14 光学素子、15 レンズ、25a,25b 凸部、31 側面、32 底面、33 貫通孔、33a,33b 有底穴、34 傾斜部、35 溝部、36 平面、80 光プラグ、81 フェルール、82 傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10