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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】光電界センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20221110BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G02F1/035
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221760
(22)【出願日】2019-12-07
(65)【公開番号】P2021092405
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 良和
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-184772(JP,A)
【文献】特開2017-15576(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004536(WO,A1)
【文献】特開2014-215140(JP,A)
【文献】特開2000-321313(JP,A)
【文献】特開2000-230955(JP,A)
【文献】特開平11-202010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
G01R 15/24
G02F 1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナとを有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導く入力光ファイバと、
前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサにおいて、
前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変換手段は、前記位相変調光をシングルモード光ファイバに入力し、該シングルモード光ファイバの分散特性を利用して前記位相変調光を前記高周波信号により強度変調された強度変調光に変換する手段であることを特徴とする光電界センサ。
【請求項2】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナとを有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導く入力光ファイバと、
前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサにおいて、
前記変換手段は、前記光源からの出力光の一部と、前記位相変調光を干渉させる手段を有することを特徴とする光電界センサ。
【請求項3】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナとを有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導く入力光ファイバと、
前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサにおいて、
前記変換手段は、前記位相変調光を分割し、その分割された2つの位相変調光に位相差を与えて干渉させる手段を有することを特徴とする光電界センサ。
【請求項4】
複数の光電界センサヘッドと、合波器と、分波器とを有し、
前記光源は波長が異なる複数の光波を出力する光源であって、
前記複数の光電界センサヘッドの前記光導波路にはそれぞれ異なる波長の光波を入力し、前記複数の光電界センサヘッドからの出力光を前記合波器により合波し、該合波器の出力を前記変換手段に入力し、前記変換手段からの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換器に入力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電界センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電界センサヘッドを用いて、電磁波などの電界を光信号に変換し、その場の電界を検出する光電界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
EMC分野における電磁波ノイズの検出やイミュニティ試験等における電磁波強度の測定、放送用又は通信用の送信アンテナから放出される電磁波の監視等において、電磁波の電界強度や位相を任意の場所で正確に測定することが必要とされる。従来、このような目的で、光ファイバにより入力された入力光の強度をその場の電界強度に応じて変調して光ファイバにより出力する光電界センサヘッドと、その出力光を電気信号に変換するO/E変換器とを用い、そのO/E変換された電気信号により、その場の電界を測定する光電界センサが使用されている。主として誘電体材料で構成され、電波周波数での応答が可能な広帯域特性を有する光電界センサヘッドを測定箇所に設置し、それと光源およびO/E変換器などの測定機器との間を光ファイバで接続することにより、測定する電磁波や電磁ノイズ、落雷などによる誘導の影響を受けないで、電磁波の強度や位相特性を正確に測定することができるという特徴がある。
【0003】
通常、光電界センサは、電気光学効果を有する材料から作られた基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、光導波路と、その光導波路近傍に設置された変調電極とにより構成した光変調器と、アンテナとを備え、電磁波等の電界によりアンテナに誘起された電圧を変調電極に印加して光変調器を通過する光波の強度を変調することを動作原理としている。この場合、アンテナは基板上に一体として形成されるか、又は基板の外部に設置される。
【0004】
このような光電界センサの従来例としては、高周波数化に対応した光電界センサが特許文献1に、3軸方向の電界検出を可能にした光電界センサが特許文献2に記載されている。また、光電界センサを用いた電磁波の測定システムの例が特許文献3及び4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-352165号公報
【文献】特開2007-78633号公報
【文献】特開2014-2005号公報
【文献】特開2017-9445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、光電界センサヘッドを構成する光導波路型の光変調器としては、分岐干渉型光導波路に変調電極を設置したマッハツェンダ型光変調器が使用されている。しかし、この光変調器を光電界センサヘッドに使用する場合、変調電極への印加電圧が0のときの2つの位相シフト光導波路間の位相差、すなわちバイアス点を一定の範囲内に制御する必要があるため、光導波路の設計や製造条件の制御等を高精度に行う必要があり、また、上記のバイアス点の温度等の周囲環境による変動を小さくするためにも特別な工夫を必要としていた。このため、光電界センサヘッドの製造コストを低減することは容易ではなかった。光電界センサをEMC分野やアンテナ計測等のより広い分野に適用していくためには、そのコスト低減は重要な課題であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による光電界センサは、電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナとを有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導く入力光ファイバと、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く出力光ファイバと、を有し、前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定することを特徴とする。
【0009】
上記のように、本発明における光電界センサヘッドは、その場の電界によって、入力した光波を強度変調するのではなく、位相を変調して位相変調光として出力する。その後、出力光ファイバから戻ってきた位相変調光を変換手段により強度変調光に変換し、O/E変換器により電気信号に変換するものである。本発明のように、入力した光波を位相変調する場合は、電気光学効果を有する材料からなる基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、単なる直線状の光導波路を形成し、その光導波路に電界を印加するための変調電極を光導波路上、又は光導波路を挟んで設けることにより容易に実現できる。この場合は、従来のマッハツェンダ型光変調器のようなバイアス点はないので、光導波路形成においては特別な制御は必要なく、伝搬している光波に位相シフトを与えるだけであるので温度等の周囲環境による変動はほとんど生じない。このため、光電界センサヘッドの製造コストを従来に比べ大幅に低減可能である。また、アンテナを変調電極と同一の製造工程で基板上に形成すれば製造コストも低減できる。
【0010】
一方、本発明においては、光電界センサヘッドの出力光ファイバからの位相変調光を強度変調光に変換するための変換手段が必要となる。この変換手段は、位相変調光をそれと同じ波長成分を有する光波と干渉させる手段を構成することにより実現できる。
【0011】
なお、基板上に形成するアンテナは変調電極と一体化し、変調電極の一部にアンテナ機能を持たせてもよい。また、複数個の光電界センサヘッドを用いる場合、1つの基板上にそれぞれの光電界センサヘッドに対応する光導波路、変調電極及びアンテナをそれぞれ形成することも可能である。
【0012】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の光電界センサにおいて、前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変換手段は、前記位相変調光をシングルモード光ファイバに入力し、該シングルモード光ファイバの分散特性を利用して前記位相変調光を前記高周波信号により強度変調された強度変調光に変換する手段であることを特徴とする。
【0013】
光波の位相がマイクロ波周波数等の高周波帯で変調されていれば、シングルモード光ファイバの分散特性を利用して強度変調光に変換することが可能である。波長分散により位相変調された光波成分と無変調の光波成分との間に遅延時間の違いにより半波長の位相差が生ずれば最大振幅の強度変調光が得られる。例えば、1km当たり波長分散が約17ps/nmであるシングルモード光ファイバを用いれば、変調周波数が30GHzである場合、上記の位相差を与えるシングルモード光ファイバの長さは4km程度である。本観点の発明を用いれば、変換手段として光分岐などの構成部品が不要となる。
【0014】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点の光電界センサにおいて、前記変換手段は、前記光源からの出力光の一部と、前記位相変調光を干渉させる手段を有することを特徴とする。位相変調光を強度変調光に変換する手段としては、位相変調光を同じ光源からの出力光の一部と干渉させるホモダイン検出光学系を構成する方法が最も一般的である。この場合、光電界センサにおいては、通常の光伝送システムとは異なり、変調された光波はその光源に近接して配置された検出機器に戻って来るので、容易にホモダイン検出光学系を構成可能である。例えば、光源からの光を光ファイバ分岐により2分岐して、一方を光電界センサヘッドに供給し、他方を光電界センサヘッドから戻る位相変調光と光ファイバ合波器等により干渉させることにより実現できる。
【0015】
第4の観点では、本発明は、前記第1の観点の光電界センサにおいて、前記変換手段は、前記位相変調光を分割し、その分割された2つの位相変調光に位相差を与えて干渉させる手段を有することを特徴とする。位相変調光を強度変調光に変換する手段としては、位相変調光を2分割して、それらの位相変調光に位相差を与えて干渉させてもよい。例えば、光電界センサヘッドから戻る位相変調光を光ファイバ分岐等により2分岐し、その分岐された光波間に位相差を与えて再び合流させればよい。この場合、与える位相差は変調周波数によって最適な値を選択すればよい。
【0016】
第5の観点では、本発明は、前記第1乃至第4の観点の光電界センサにおいて、複数の光電界センサヘッドと、合波器と、分波器とを有し、前記光源は波長が異なる複数の光波を出力する光源であって、前記複数の光電界センサヘッドの前記光導波路にはそれぞれ異なる波長の光波を入力し、前記複数の光電界センサヘッドからの出力光を前記合波器により合波し、該合波器の出力を前記変換手段に入力し、前記変換手段からの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換手段に入力することを特徴とする。
【0017】
複数の場所や電波の異なる偏波方向の電界を測定する場合、複数の光電界センサヘッドを配置する必要があるが、本観点の発明を用いれば、そのような場合でも検出系の構成を簡易化することが可能となる。複数の光電界センサヘッドにそれぞれ異なる波長の光波を供給し、それらから出力された位相変調光を合波して波長多重光として1つの変換手段に入力し、その出力を分波することにより、必要な変換手段の数を減らすことができる。この場合の光源の波長間隔は、使用する変換手段の動作波長範囲等を考慮して選択すればよい。なお、各光電界センサヘッドからの位相変調光を合波する合波器は、検出系の中に配置してもよく、又は、光電界センサヘッドの近くに合波器を配置し、1本の光ファイバで検出系まで導いてもよい。また、複数波長の光波の光電界センサヘッドへの供給は、各光源の出力光を合波器で合波して1本の光ファイバで光電界センサヘッドの近くまで導き、その後、分波して各光電界センサヘッドに供給してもよい。また、本観点の発明において、各光電界センサヘッドの出力にそれぞれ対応して複数のO/E変換器を備えてもよいが、O/E変換器の必要数を減らすために、各出力光をスイッチ等により順次切り替えて1つのO/E変換器に接続して検出してもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明により、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1に用いる光電界センサヘッドの第1の構成例を模式的に示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は部分的な断面図。
図2】本発明の実施例1の光電界センサを用いた測定システムのブロック構成図。
図3】光電界センサヘッドの第2の構成例を模式的に示す上面図。
図4】光電界センサヘッドの第3の構成例を模式的に示す上面図。
図5】本発明の実施例2の光電界センサのブロック構成図。
図6】本発明の実施例3の光電界センサのブロック構成図。
図7】本発明の実施例4の光電界センサのブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の光電界センサを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1の光電界センサに用いる光電界センサヘッドの第1の構成例を模式的に示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)はA-A断面の拡大図である。
【0022】
図1において、光電界センサヘッド10は、電気光学効果を有する代表的な材料であるニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶からXカットで切り出して作られた基板11と、基板11の上面側にTi拡散によって作られた直線状の光導波路12と、光導波路12を挟んで配置された1対の帯状の電極からなる変調電極14と、変調電極14に接続され基板11上に配置されたアンテナ15とを有している。その場の電界によりアンテナ15に誘起される電圧信号により光導波路12に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成されている。すなわち、電波等の電界によりアンテナ15を構成するアンテナパッド15aとアンテナパッド15b間に電圧が誘起され、その電圧が変調電極14を構成する帯状電極14aと帯状電極14b間に印加されることにより、その間に配置された光導波路12の屈折率変化が生ずる。この結果、光導波路12を通過する光波の位相が変調される。なお、光導波路12を伝搬する光波はTEモードとなるように設定されている。
【0023】
光導波路12と変調電極14の間には、光導波路12を伝播する光波の一部が変調電極14に吸収されるのを防ぐため、バッファ層13が設置されている。バッファ層13は、主として二酸化ケイ素(SiO)膜等から作られ、その厚さは0.1~1.0μm程度である。変調電極14及びアンテナ15は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。光導波路12の幅Wは5~12μm程度、光導波路12の長さは10~40mm程度である。帯状電極14a及び14bの幅は5~20μm程度、その長さは5~30mm程度である。帯状電極14aと14bの間隔は10~50μm程度である。アンテナパッド15a及び15bの大きさは3~15mm程度が可能であり、その形状は矩形である必要はなく、電界により変調電極14に電圧を誘起できればよい。
【0024】
光導波路12の光入射端には入力光ファイバ16が接続され、光導波路12の光出射端には出力光ファイバ17が接続されている。入力光ファイバ16及び出力光ファイバ17の光導波路12との接続端部はフェルール等の補強部品内に挿入され、固定されている。入力光ファイバ16及び出力光ファイバ17の一部と基板11は、その場の電界への影響を防ぐため、樹脂やガラス等の絶縁体材料で構成したパッケージ18の中に収納されている。
【0025】
図2は、本発明の実施例1の光電界センサを用いた測定システムのブロック構成図である。図2において、本実施例の光電界センサ20は、光電界センサヘッド10と、入力光ファイバ16及び出力光ファイバ17、送受信部21により構成されている。送受信部21は、光電界センサヘッド10の光導波路12への入力光を供給する光源22と、光電界センサヘッド10から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、上記光源22の波長において分散特性を有するシングルモード光ファイバ23を備えている。さらに、上記の強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ20の出力端子26から出力する。出力された信号は処理装置27に送られ、光電界センサヘッドが配置された場の電波等の強度特性及び位相特性の解析、評価等が行われ、それらのデータの保存、表示、出力などが行われる。
【0026】
本実施例において、例えば、光源22の波長を1550nm、シングルモード光ファイバ23の波長分散を約17ps/nm/kmとすれば、変調周波数が30GHzである場合、強度変調光を得るためのシングルモード光ファイバ23の最適な長さは4km程度である。
【0027】
なお、光電界センサヘッド10の光導波路12にTEモードの伝搬光を供給する方法としては、入力光ファイバ16として偏光保存光ファイバを用いる方法や、光源22からの出射光を互いに直交する2つの偏波を合成した光波とし、光導波路12をTEモードのみ伝搬可能な光導波路とする方法等がある。
【0028】
図3は、本発明の光電界センサに適用可能な光電界センサヘッドの第2の構成例を模式的に示す上面図である。本構成例の光電界センサヘッド30においては、変調電極34は、光導波路12の長手方向に分割され互いに容量結合した4つの帯状電極34a、34b、34c、34dからなる分割電極により構成されている。アンテナ35は、帯状電極34aに接続されたアンテナパッド35aと帯状電極35dに接続されたアンテナパッド35bより構成されている。アンテナパッド35aに接続された帯状電極34aは帯状電極34bの前半部と光導波路12を挟んで対向し、帯状電極34bの後半部は帯状電極34aと光導波路12の同じ側に配置され、帯状電極34cの前半部と光導波路12を挟んで対向している。帯状電極34cの後半部は帯状電極34aと光導波路12の同じ側に配置され、帯状電極34dと光導波路12を挟んで対向している。これにより、帯状電極34aと34b、帯状電極34bと34c、帯状電極34cと34dは互いに容量結合して直列に配置されていることになる。
【0029】
一般的に、変調電極の光導波路に沿った長さを長くすると変調効率が高くなり、光電界センサヘッドにおける検出感度は大きくなる。しかし、変調電極の長さを長くすると電気容量は増加してしまう。電極容量が大きいと電気信号の周波数が高くなるにつれて等価的なインピーダンスが低下し、電極に印加される電圧が低下することにより変調効率が低下する。そこで、高周波の信号検出のためには、電極の容量はできるだけ小さいことが望ましい。この変調電極の長さと電気容量のトレードオフの関係を改善する有力な手段が、1つの変調電極を容量結合した複数の電極に分割した分割電極である。この分割電極を使用することにより、高効率、広帯域の特性を得ることができる。
【0030】
図4は、本発明の光電界センサに適用可能な光電界センサヘッドの第3の構成例を模式的に示す上面図である。本構成例の光電界センサヘッド40においては、変調電極44は、光導波路12の長手方向に沿って光導波路12を挟んで配置された帯状電極44aと44b、及び、それらの帯状電極の終端に配置された終端部46から構成されている。アンテナ45は、帯状電極44aの始端に接続されたアンテナパッド45aと帯状電極44bの始端に接続されたアンテナパッド45bとから構成されている。本構成の変調電極は、いくつかの構造を取ることができる。第1の構造では、検出電波の周波数帯において、変調電極44はマイクロ波導波路として機能し、アンテナ45と変調電極44はインピーダンス整合され、終端部46は反射が生じないような抵抗値で終端する構造である。第2の構造では、第1の構造にさらに加えて、変調電極44を伝搬するマイクロ波の速度が光導波路12を伝搬する光波とほぼ等しくなるような進行波型電極とする構造である。第2の構造は設計及び製造が複雑となるが、最も広帯域の位相変調特性を得ることができる。第3の構造は、終端部46を開放端、又は短絡端とすることにより、変調電極44を検出電波の周波数において共振させる共振電極とする構造である。この第3の構造では、狭帯域ではあるが、高効率の位相変調特性が得られ、最も高い検出感度を得ることができる。光電界センサの目的に応じて、上記の第1乃至第3のいずれかの構造を選択すればよい。
【実施例2】
【0031】
図5は、本発明の実施例2の光電界センサのブロック構成図である。図5において、本実施例の光電界センサ50は、実施例1と同様の光電界センサヘッド10と、入力光ファイバ16及び出力光ファイバ17、送受信部51により構成され、送受信部51は、実施例1と同様に、光電界センサヘッド10の光導波路12への入力光を供給する光源22と、強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ50の出力端子26から出力する。しかし、本実施例においては、光電界センサヘッド10から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、光源22からの出力光の一部と位相変調光を干渉させる手段を有している。
【0032】
具体的には、ハーフミラー等を用いたプリズム型の分岐器52と合波器53とを備え、分岐器52により、光源22からの出力光を入力光ファイバ16への出射光と参照光54とに分岐し、合波器53により、出力光ファイバ17より伝送された位相変調光と参照光54を干渉させることにより位相変調光を強度変調光に変換する。このように、位相変調された光波は光源22を含む送受信部51に戻って来るので、容易に本実施例のようなホモダイン検出光学系を構成可能である。なお、分岐器52、合波器53の代わりに光ファイバ型の分岐器、合波器を用いてもよい。
【実施例3】
【0033】
図6は、本発明の実施例3の光電界センサのブロック構成図である。図6において、本実施例の光電界センサ60は、実施例1と同様の光電界センサヘッド10と、入力光ファイバ16及び出力光ファイバ17、送受信部61により構成され、送受信部61は、実施例1と同様に、光電界センサヘッド10の光導波路12への入力光を供給する光源22と、強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ60の出力端子26から出力する。しかし、本実施例においては、光電界センサヘッド10から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、位相変調光を分割し、その分割された2つの位相変調光に位相差を与えて干渉させる手段を有している。
【0034】
具体的には、光ファイバ分岐器62と光ファイバ合波器63とを備え、光ファイバ分岐器62により、出力光ファイバ17より伝送された位相変調光を2つに分岐し、その分岐された2つの出力をそれぞれシングルモード光ファイバからなる位相シフト光ファイバ64及び65を経由して、光ファイバ合波器63に入力し干渉させることにより位相変調光を強度変調光に変換する。本実施例において、例えば、シングルモード光ファイバの等価屈折率を1.5とすると、その光ファイバ中の光波の速度は2.0×10m/秒となり、位相変調の周波数を10GHzとすると、光ファイバ中の変調波の波長は2cmとなる。そこで、位相シフト光ファイバ64と65に上記の半波長分又はその奇数倍の長さ、すなわち1cm又はその奇数倍の長さの差を与えれば強度変調光を得ることができる。なお、光ファイバ分岐器62、光ファイバ合波器63の代わりに、プリズム型の分岐器、合波器を用いてもよく、さらには、合波器、分波器と位相シフト部分を一体化した分岐干渉型の光導波路部品として変換手段を構成してもよい。
【実施例4】
【0035】
図7は、本発明の実施例4の光電界センサのブロック構成図である。図7において、本実施例の光電界センサ70は、実施例1の光電界センサヘッド10と同様の3つの光電界センサヘッド10a、10b、10cと、それらの光電界センサヘッドへのそれぞれの入力光ファイバ16a、16b、16cと、それらの光電界センサヘッドからのそれぞれの出力光ファイバ17a、17b、17cと、送受信部71により構成されている。送受信部71は、光電界センサヘッド10a、10b、10cに、それぞれ異なる波長であるλ、λ、λ、の光波を供給するための3つの光源72a、72b、72cと、出力光ファイバ17a、17b、17cより伝送された3つの波長λ、λ、λ、の位相変調光を合波するためのWDMカップラ75を備えている。
【0036】
さらに、実施例1と同様に、位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、上記λ、λ、λの波長において分散特性を有するシングルモード光ファイバ76を備え、λ、λ、λの波長の強度変調光を分波するためのWDMカップラ77を備えている。分波された波長λ、λ、λの3つの強度変調光は、それぞれO/E変換器24a、24b、24cにより電気信号に変換され、アンプ25a、25b、25cにより増幅され、それぞれの検出信号は光電界センサ70の出力端子26a、26b、26cから出力する。これにより、光電界センサヘッド10a、10b、10cが置かれた場のそれぞれの電界が検出される。
【0037】
本実施例の光電界センサでは、光電界センサヘッドが配置された3つの場所の電界を同時に検出できる。また、3つの光電界センサヘッドのアンテナの向きが互いに直交するように配置すれば、電波等の電磁波の異なる偏波方向の電界を測定できる。また、本実施例の光電界センサでは、1つの変換手段を用いるので検出系の構成を簡易化することができる。使用する波長λ、λ、λの間隔は、使用するシングルモード光ファイバ76の分散特性により決定される動作波長範囲を考慮して選択すればよい。例えば、波長1550nmで波長分散が17ps/nm/kmであるシングルモード光ファイバを用いれば、変調周波数が30GHzである場合、シングルモード光ファイバの長さは4km程度とすれば、動作波長範囲は1530~1560nm程度が可能である。
【0038】
以上のように、本発明により、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサを得ることができる。
【0039】
本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。例えば、光電界センサヘッドの基板としてニオブ酸リチウム結晶のZカット基板を用いてもよく、その場合は変調電極を構成する帯状電極の一方は光導波路上に配置され、光伝搬モードはTMモードとなる。また、アンテナの形状、その基板上の配置方法、変調電極との接続方法等も目的に合わせて任意に設計可能である。
【符号の説明】
【0040】
10,10a,10b,10c 光電界センサヘッド
11 基板
12 光導波路
13 バッファ層
14,34,44 変調電極
14a,14b,34a,34b,34c,34d,44a,44b 帯状電極
15,35,45 アンテナ
15a,15b,35a,35b,45a,45b アンテナパッド
16,16a,16b,16c 入力光ファイバ
17,17a,17b,17c 出力光ファイバ
18 パッケージ
20,50,60,70 光電界センサ
21,51,61,71 送受信部
22,72a,72b,72c 光源
23,76 シングルモード光ファイバ
24,24a,24b,24c O/E変換器
25,25a,25b,25c アンプ
26,26a,26b,26c 出力端子
27 処理装置
52 分岐器
53 合波器
54 参照光
62 光ファイバ分岐器
63 光ファイバ合波器
64,65 位相シフト光ファイバ
75,77 WDMカップラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7