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特許7174459身体関節の安定化および/またはスポーツ用品の支持のための器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】身体関節の安定化および/またはスポーツ用品の支持のための器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20221110BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20221110BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20221110BHJP
   F16F 9/53 20060101ALI20221110BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20221110BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61F5/01 N
F16F9/19
F16F9/34
F16F9/53
F16F9/50
F16K1/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021532345
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019083856
(87)【国際公開番号】W WO2020115227
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】102018131457.4
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519399969
【氏名又は名称】ベターガードス テクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッヒラー,ヴィンツェンツ
(72)【発明者】
【氏名】スタンパ,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ブッシンガー,オスカー
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0304057(US,A1)
【文献】実開昭54-110918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
F16F 9/19
F16F 9/34
F16F 9/53
F16F 9/50
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体関節を安定化するため、および/または、スポーツ用品を支持するための装置(1)であり、
収容部(20)であって、充填媒体(30)が充填される収容部(20)と、
前記充填媒体(30)と相互作用するための第1部材(40)であって、前記収容部(20)に変位可能に配置される第1部材(40)と、
前記第1部材(40)に外力を伝達するための力伝達体(50)と、
前記収容部(20)に変位可能に配置される、前記充填媒体(30)と相互作用するための第2部材(60)と、
を包含し、
前記第2部材が結合要素(70)によって前記第1部材(40)に弾性的に結合され、
前記第2部材(60)および/または前記第1部材(40)が、前記充填媒体(30)が流通しうる少なくとも一つの通路開口部(64)を有し、
前記第1部材(40)がバルブ部材を形成して前記第2部材(60)がバルブ座部を形成し、前記通路開口部(64)での前記充填媒体(30)の流通がバルブ位置に応じて許容または防止されうるという結果を伴う、
装置において、
前記第2部材が、前記第1部材との相対変位方向で前記第1部材と重複する、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記第2部材が前記相対変位方向に少なくとも一つの突出部を包含し、前記第1部材および前記第2部材の互いに関する相対変位とは無関係に前記突出部が前記相対変位方向に関して前記第1部材と重複することを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第1部材および/または前記第2部材が、前記二つの部材の間の相対変位距離を制限するため、それぞれ他の部材に関して少なくとも一つの切除部を有することを特徴とする、求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記第1部材を前記相対変位方向に案内するため、前記相対変位方向に延在する少なくとも一つの案内面を前記第2部材が有することを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第部材の前記突出部が、前記第1部材が少なくとも部分的に収容される収容空間を画定し、前記相対変位方向における前記第1部材および前記第2部材の互いに対する前記相対変位距離を前記収容空間が制限することを特徴とする、請求項に記載の装置(1)。
【請求項6】
開口バルブ位置において前記第2部材に対する、好ましくは前記第2部材における前記充填媒体(30)の流通を可能にするため、前記通路開口部(64)に流体接続される中断部または複数の中断部を前記突出部が包含することを特徴とする、請求項2、3または5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記第2部材および/または前記第1部材が前記収容部(20)の空洞を第1室と第2室とに分割することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
開口バルブ位置における前記第1室と前記第2室との間での前記充填媒体(30)の流通を前記通路開口部(64)が提供できることを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記第1部材が前記第2部材との接触状態にある装置の開始位置において、前記結合要素(70)が前記第1部材と前記第2部材との間で予荷重を受けることを特徴とする、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填媒体が充填される収容部と、充填媒体と相互作用する第1部材であって収容部に変位可能に配置される第1部材と、第1部材へ外力を伝達するための手段とを包含する装置である、身体関節を安定化するため、またはスポーツ用品を支持するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
適応動作制約を可能にする装置によって身体関節、筋肉、そして腱を安定化する処置は周知である。逆行動作を受けるスポーツ用品に適応動作制約装置を設けることも周知である。
【0003】
このような装置の適応挙動は、とりわけ、互いに対する動作を行う二つの部材により達成され、部材の間には充填媒体が設けられる。これに関して、装置の一部材は、充填媒体が充填される収容部を形成できる。他の部材は、収容部に動作可能に配置される引抜部材を形成しうる。二つの部材が互いに対する動作を行うと、収容部と引抜部材との間の領域で充填媒体が流通できる。充填媒体の流速は、収容部および引抜部材の相対変位方向に垂直な断面積に大きく依存する。充填媒体の流通に利用可能なこの断面積は水力直径とも呼ばれ、力の外部作用の際には装置の反応挙動にとって極めて重要である。このように、水力直径の選択は、装置が外力を相殺するための抵抗を確立することを可能にする。装置は、ユーザの身体の二つの箇所の間、または互いに対する動作を行いうるスポーツ用品の二つの要素の間に固定されうる。
【0004】
生理学的な力、つまり身体部位または安定化される対応の部品にとって重要ではない力が、ユーザの身体の二つの箇所を介して装置へ導入される場合には、収容部と引抜部材との対応の相対動作と、ゆえに安定される身体部位の動作とは、装置の水力直径に従って許容される。
【0005】
対照的に、非生理学的な力、つまり身体部位または安定化される対応の部品にとって重要である力が装置へ導入される場合には、引抜部材と収容部との間の相対動作は、水力直径による非常に高い力の消費のみにより可能である。
【0006】
特許文献1は、作用力の強度に応じて適応挙動を可能にする、身体関節を安定化するための装置を開示している。
【0007】
この装置は、充填媒体が充填される収容部と、充填媒体と相互作用するための第1部材であって収容部に変位可能に配置される第1部材と、第1部材に外力を伝達するための力伝達手段とを包含する。充填媒体と相互作用するための第2部材が収容部に変位可能に配置され、第2部材は結合要素によって第1部材に弾性的に結合される。第2部材は、充填媒体が流通できる通路開口部も有する。第2部材の通路開口部では、第1部材と第2部材とが互いに離間しているという条件で、充填媒体が流通できる充填媒体のための水力直径が得られる。
【0008】
このケースで、第1部材はバルブ部材を形成して第2部材はバルブ座部を形成し、通路開口部での媒体の流通がバルブ位置に応じて許容または防止されうるという結果を伴う。
【0009】
第1部材に作用する外力は、結合要素によって第2部材に伝達されうる。対応して、この目的のために結合要素によって第1部材が充填媒体を通して第2部材を押す、および/または、引くことが可能である。
【0010】
これに関して、第1部材に外力が作用する時には生理学的速度の領域で第2部材に力を伝達するように結合要素が構成され、第2部材が充填媒体を通して第1部材とともに動作しうるという結果を伴う。
【0011】
第1部材および結合要素によって第2部材に作用する力が装置の重要な相対変位速度、つまり非生理学的速度をもたらす場合には、結合要素が圧迫され、その結果、第1部材が第2部材の方へ動く。その結果、二つの部材により形成されるバルブが閉止されるまで水力直径が減少する。
【0012】
充填媒体が流通できる水力直径が利用可能でなくなった場合には、第1部材と第2部材とは充填媒体内でそれ以上は動かない。装置は閉塞される。
【0013】
動作の完全な閉塞までの反応時間が比較的短いことがやはり必要であり、この閉塞のケースでは上に記載された装置は限界に達することが分かっている。
【0014】
通路開口部が充分に閉止されることを上に記載の装置が必ずしも保証できないことも分かっている。これは装置の挙動の不規則性をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許出願公開第3238670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
周知の先行技術を始点として、身体関節を安定化するため、またはスポーツ用品を支持するための改良装置を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
身体関節を安定化するため、またはスポーツ用品を支持するための、請求項1の特徴を有する装置により、目的が達成される。有利な改善は従属請求項から明白になる。
【0018】
対応して、提案されるのは、身体関節を安定化するため、またはスポーツ用品を支持するための装置であり、この装置は、収容部であって充填媒体が充填される収容部と、充填媒体と相互作用するための第1部材であって前記収容部に変位可能に配置される第1部材と、前記第1部材へ外力を伝達するための力伝達部材と、前記収容部に変位可能に配置される、前記充填媒体と相互作用するための第2部材とを包含し、前記第2部材は結合要素によって前記第1部材に弾性的に結合され、前記第2部材および/または前記第1部材は、前記充填媒体が流通する少なくとも一つの通路開口部を有し、前記第1部材がバルブ部材を形成して前記第2部材がバルブ座部を形成し、前記通路開口部での前記充填媒体の流通がバルブ位置に応じて許容または防止されうるという結果を伴う。本発明によれば、前記第2部材は前記第1部材に関する相対変位方向において前記第1部材と重複する。
【0019】
相対変位方向における第1部材と第2部材との重複は、力の外部作用のために二つの部材が互いに対する動作を行う時にこれらを案内することを可能にする。その結果、二つの部材の接触の結果、通路開口部が閉塞され、通路開口部が完全に閉止される可能性が高くなる。これは、装置の均一な挙動に寄与する。
【0020】
相対変位方向は、力の外部作用および/または結合要素により第1部材と第2部材とが互いに対する動作を行う方向を指す。
【0021】
好適な改善において、前記第2部材は前記相対変位方向に少なくとも一つの突出部を包含し、前記第1部材および前記第2部材の互いに関する相対変位とは無関係に、前記突出部は前記相対変位方向に関して前記第1部材と重複する。
【0022】
その結果、接点、つまり第2部材での第1部材の案内部を常に設けることが可能である。結果的に、装置と特に第1および第2部材とに外力が作用しない開始位置に装置が置かれた時と、第1部材が第2部材に支承されてプロセス中に通路開口部を閉止する閉塞位置に装置が置かれた時の両方で、第2部材の突出部と第1部材との重複が生じる。
【0023】
さらに好適な実施形態では、相対変位方向に第1部材を案内するため、第2部材は、相対変位方向に延在する少なくとも一つの表面を有する。案内面は第1部材と当接し、変位行程全体で、つまり装置の開始位置と閉塞位置との間で、第1部材と接触する。
【0024】
一改善において、前記第1部材および/または前記第2部材は、前記二つの部材の間の相対変位距離を制限するため、それぞれ他の部材に関して少なくとも一つの切除部を有する。第1部材と第2部材との間の相対変位距離は、装置の反応時間に直接的に影響する。適切な相対変位距離の選択により、結合要素に加えて、装置の反応時間についてのさらに可能な設定が得られる。
【0025】
切除部は、第1部材と第2部材とが重複するばかりでなく少なくとも部分的に後部係合するという事実に寄与する。二つの部材の切除部は異なる形で設けられうる。例えば相対変位方向に関して最も外側にある第2部材の重複部分の点に切除部が配置されうる。代替例として、第1部材と第2部材の両方がそれぞれ切除部を有し、切除部は装置の開始位置における第1部材および第2部材の開始位置を規定する。
【0026】
好適な改善において、第2部材の突出部は、第1部材が少なくとも部分的に収容される収容空間を画定し、前記収容空間は、前記相対変位方向における前記第1部材および前記第2部材の互いに対する前記相対変位距離を制限する。収容空間は、第1部材と第2部材との間の案内による相対動作と、第1部材と第2部材との間の最大相対変位距離の制限の両方を提供することを可能にする。
【0027】
収容空間は一以上の開口部を有しうる。ゆえに第1部材は、例えば収容空間から一部が突出しうる。後者のケースで、第1部材の一部のみが収容空間に永久的に収容されるのに対して、第1部材の別の一部は、二つの部材の互いに対する相対変位位置に応じて収容空間から突出する。その結果、第1部材と第2部材との互いに対する案内部を設けることが可能である。
【0028】
さらに好適な実施形態において、突出部は一以上の凹部を包含し、開口バルブ位置において、好ましくは第2部材を通した第2部材に対する充填媒体の流通を可能にするため、凹部は通路開口部に流体接続される。その結果、充填媒体が収容部の内側で第1部材と特に第2部材とに対して流通できる状態が、第1部材が第2部材の通路開口部を閉塞するまで維持されうる。
【0029】
少なくとも一つの凹部は、装着機能も実施しうる。このため、第1部材が凹部を通して第2部材の収容空間へ挿入されうるように凹部が構成されうる。
【0030】
さらに好適な改善によれば、前記第2部材および/または前記第1部材は前記収容部の空洞を第1室と第2室とに分割する。バルブ位置が開口である時に外力の作用のために第1部材と第2部材とが収容部内で動く場合に、充填媒体は第1室から第2室へ第2部材の通路開口部を流通しうる。
【0031】
さらに好適な構成では、前記第1部材が前記第2部材との接触状態にある装置の開始位置において、前記結合要素が前記第1部材と前記第2部材との間で予荷重を受ける。
【0032】
結合要素、例えばばねの予荷重を伴わずに設計される先行技術により周知の装置では、高いばね強度など比較的高い抵抗特性を備える結合要素は、比較的長い閉止距離をもたらす。後者は装置の挙動の再現性に悪影響を与えうる。
【0033】
結合要素の予荷重の欠如は、比較的低い力がすでに作用している時に第1部材が第2部材の方へ動くことにもつながり、その結果、通路開口部への作動媒体の潜在的流路もすでに縮小されている。これは、比較的低い外力が第1および/または第2部材に作用している時に、装置の不正確で再現性のない挙動をもたらす。
【0034】
結合要素の予荷重は、抵抗力の低い結合要素の使用を可能にする。そのケースで、比較的低い外力が作用して第1および第2部材の間に相対動作が生じない時には結合要素がまだ反応しないように、結合要素の予荷重が選択されうる。概して、結合要素の予荷重は、装置に作用している外力に関する反応閾値を上げることを可能にする。
【0035】
加えて、結合要素の予荷重は、第1部材と第2部材との間に短い相対変位距離を実現することを可能にする。言い換えると、第1部材と第2部材との間の最大行程が結合要素の予荷重により減少しうるのである。第1部材と第2部材との間の最大相対変位距離が短くなると、充分に高い装置の抵抗力が発生するまで反応距離とゆえに反応時間とを大きく減少させることが可能になる。最後に、結合要素の予荷重は装置の部品寸法にも影響し、こうして相対変位距離を短縮することにより装置の全長が減少しうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図についての以下の記載により、本発明の好適なさらなる実施形態がより詳しく説明される。
図1A】身体関節および/またはスポーツ用品を安定化するための装置の斜視図を概略的に示す。
図1B】開始状態での図1Aの装置の側方からの断面図を概略的に示す。
図2A】開始位置での図1Bによる装置の詳細の図を概略的に示す。
図2B】閉塞位置での図1Bによる装置の詳細の図を概略的に示す。
図3】第2部材の詳細の斜視図を概略的に示す。
図4A】第1および第2部材の詳細についての側方からの図を概略的に示す。
図4B図4Aの第1および第2部材の背面図を概略的に示す。
図5A】第1および第2部材の代替実施形態の詳細の図を概略的に示す。
図5B】第1および第2部材の代替実施形態の詳細の図を概略的に示す。
図6】第1および第2部材の代替実施形態の詳細の図を概略的に示す。
図7A】第1および第2部材の代替実施形態の詳細の図を概略的に示す。
図7B図7Aの実施形態の詳細についての側方からの図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の文章では、図を参照して好適な例示的実施形態が記載される。図において、同じまたは類似であるか同じ効果を有する要素には異なる図でも同一の参照符号が付与され、これらの要素の反復的な説明は冗長性を回避するため一部省略される。
【0038】
スポーツ分野での使用について本装置の機能が以下に記載される。これに関して、互いに対する動作を行う部材の二つの点の動作を減衰するための装置が使用される。このような部材は例えば、本装置と結合されて屈曲動作を相殺できるスポーツシューズである。しかしながら、本装置は本書に記載された使用範囲に限定されない。ゆえに、対応の身体動作を減衰するために生物体の二つの身体部位の間にも配置されうる。代替例として、装置は他の日用品にも使用され、その意図は身体または物品の間で突然増加する力を減衰することである。
【0039】
図1Aは、身体関節および/またはスポーツ用品を安定化するための装置1の斜視図を示す。力伝達手段50が円筒形の収容部20から突出する。これに関して、収容部20は、ユーザの身体またはスポーツシューズなどのスポーツ用品の一点に締結されうる。装置20の外側に位置する力伝達手段50の端部は、身体の第2の点に締結されうる。身体の第1の点と身体の第2の点とは、互いに関する突然の相対動作を受けるという点で明確化される。方向Bは装置の動作方向を表す。代替例として、収容部は立方体の形も有しうる。
【0040】
図1Bは、開始状態にある装置1の断面図を示す。収容部20は、力伝達手段50が装置20の内部空間へ突出するための開口部22を有する。収容部20が締結される身体の点が、力伝達手段50が配置される身体の点に対する動作を行う場合に、力伝達手段50は収容部20に対する動作を行う。特に、力伝達手段50は、収容部20へさらに、または収容部20からさらに、動作方向Bに動きうる。
【0041】
装置1の収容部20はステンレス鋼から製造される。代替例として、収容部はプラスチックから製造されてもよい。とりわけ繊維強化プラスチックも使用されうる。代替例として、収容部はアルミニウムまたはマグネシウムなど他の金属から製造されてもよい。加えて、収容部はセラミックから製造されてもよい。力伝達手段50はワイヤ製のケーブルにより形成され、第1部材40から第2部材60の通路開口部64を通り、最後に収容部20の開口部22に延在する。代替例として、力伝達手段50はプラスチック製のロッド要素の形で設計されてもよい。さらに、力伝達手段は繊維の形で設計されてもよい。さらに、力伝達手段はアルミニウム、マグネシウム、またはステンレス鋼などの金属から製造されてもよい。
【0042】
装置20の内部空間24には充填媒体30が充填される。充填媒体30はシリコーンオイルなどのニュートン流体である。代替例として、ダイラタント流体も充填媒体として使用されうる。加えて、シアシックニングプラスチックも使用されうる。このケースで、プラスチックは粉末状で存在する。さらに、充填媒体として砂も使用されうる。
【0043】
加えて、装置20の内部空間24に配置されるのは、動作方向Bで収容部20に対して充填媒体30内で動作を行いうる第1部材40である。本実施形態では、第1部材40は力伝達手段50に単一体として接続される。代替例として、第1部材が力伝達領域で力伝達手段に結合され、力伝達手段を始点とする力が第1部材に伝達されうるという結果を伴う。
【0044】
第1部材40の断面は収容部20の断面より常に小さく、充填媒体30が第1部材40に対して動作方向Bに流通できるという結果を伴う。第1部材と収容部20との間の距離は水力直径を形成する。
【0045】
第1部材40はプラスチックから製造される。代替例として、第1部材は、アルミニウム、マグネシウム、または鋼などの金属からも製造されうる。
【0046】
加えて、収容部20の内部空間24に配置されるのは、動作方向Bで収容部20に対する動作を行いうる第2部材60である。
【0047】
第2部材60はプラスチックから製造される。代替例として、第2部材はアルミニウムなどの金属からも製造されうる。第2部材は、Oリング65を収容するための周溝部63を有する。第2部材60は、収容部20の内部空間24を第1室25と第2室27とに分割する。Oリング65は、第1室25と第2室27との間で第2部材60の外周面に沿って充填媒体30が流通するのを防止する。
【0048】
第1部材40は、弾性結合要素70によって第2部材60に結合される。図1Bに示されている弾性結合要素はばね72により形成され、ばねは、第1部材40のばね座部46に一端部で、第2部材60のばね座部68に他端部で装着される。第2部材60は第1部材40によってばね72に押圧されうる。これに関して、ばね72はプラスチックまたは金属から製造されうる。代替例として、弾性結合要素が弾性ポリマーまたはゴムの形で設計されてもよい。
【0049】
さらなる代替例において、第1部材と第2部材と弾性結合要素とは単一体として射出成形される。
【0050】
第2部材60は、充填媒体30が流通できる通路開口部64も包含する。結合要素を始点とする力に従って第2部材60が収容部20に対する動作を行うと、充填媒体30は第1室25と第2室27との間で第2部材60の通路開口部64を流通できる。通路開口部64は対応して、第2部材60の領域に充填媒体30の水力直径を規定する。
【0051】
図1Aおよび1Bに示されている装置1は、引張荷重、つまり収容部20が締結される身体の点と、力伝達手段50が締結される身体の点とが互いに離間することから生じる荷重を受ける。力伝達手段50が装置20から引き抜かれると、それとともに第1部材40も引き抜き、その結果、結合要素70によって第1部材が第2部材60を押圧する。力伝達手段50は、第1部材40から第2部材60の通路開口部64を通って最後には収容部20の開口部22に延在する。開口部22の領域に配置されているのは、収容部20の内部空間24を周囲に関して密封する密封インサート29であり、それゆえ収容部20の内部空間24に充填媒体30が保持されうる。
【0052】
図2Aおよび2Bは装置の詳細の図を示し、これを参照して第1部材40と第2部材60との相互作用がより詳細に記載される。第2部材60は、第1部材40に向かって延在してこれと重複する突出部61を有する。突出部61は第1部材40の後方に係合するように構成される。これに関して、突出部61は、第1部材40が部分的に収容される収容空間67を画定する。
【0053】
本実施形態によれば、第1部材40は段状構造を有する。ゆえに、第1部材40は、第2部材60の収容空間67に変位可能に収容される第1部分43と、第1部分43に関してテーパ状の直径を持つとともに動作方向Bの方向に収容空間から延出する第2部分44とを有する。突出部61は、第1部材40の第1部分43の後方に係合して第2部分44のための動作方向Bでの案内部を形成するように構成される。このようにして、第1部材は第2部材に関してセンタリングされ、第1部材40と第2部材60とが閉止バルブ位置を取る時には通路開口部64の閉止が常に確保されうるという結果を伴う。
【0054】
図3は、第2部材60の斜視図を示す。突出部61は第2部材60の軸線方向Aに連続する。突出部61はその端部領域で軸線に向かって内向きに湾曲し、その結果、第1部材の第1部分が後方に係合するための切除部が形成される。突出部61は、第1部材の第1部分を収容するための収容空間67を画定する。収容空間67は通路開口部64に隣接する。通路開口部64と反対に位置する収容空間67の端部で、突出部61の切除部は、第1部材の第2部分のための案内部69として機能する開口部を画定する。第1部材および第2部材の互いに対する相対変位方向において、第1部材の第2部分は収容空間67に対して部分的に退出/進入しうる。
【0055】
図4Aおよび4Bにも見られるように、第2部材60の長手軸線Aに関して、突出部61は複数の側面中断部を有する。これらは二つの役割を果たす。第一に、側面中断部により第1部材が第2部材60の収容空間67へ挿入されうる。突出部61は対応の可撓構成を有するので、第1部材が収容空間67に挿嵌されうる。第二に、図2Aおよび2Bに見られるように、中断部により充填媒体30の流路が第2室27と通路開口部64との間に設けられる。
【0056】
図2Aは、動作を減衰するための装置の開始位置を示す。第1部材40の第1部分43は、第2部材60の突出部61の切除部との接触状態にある。この開始位置は、装置の開口バルブ位置と呼ばれうる。
【0057】
図2Aに示されている装置1の開始位置で、ばね72は予荷重を受けている。ばね72の予荷重は、比較的低い外力が作用している時にはばね72がまだ反応せず、第1部材40と第2部材60との間に相対動作が生じないように選択される。概して、ばね72の予荷重により、装置1に作用する外力に関してより高い反応閾値が得られる。
【0058】
加えて、ばねの予荷重は、第1部材40と第2部材60との間に短い相対変位距離を実現することを可能にする。言い換えると、第1部材40と第2部材60との間の最大行程が、ばね72の予荷重により減少されうる。第1部材40と第2部材60との間の最大相対変位距離が短いと、装置1の充分に高い抵抗力が発生するまでの反応距離ゆえに反応時間を著しく減少させることが可能になる。
【0059】
以下の文章では、図2Aおよび2Bを参照して装置の機能が記載される。第1部材40が第2部材60の方向に引っ張られるように力伝達手段50の生理学的速度の領域で力が作用する場合には、ばね72によって第2部材60も共に動く。第2部材60と充填媒体30との相互作用は、第2部材60に作用する抵抗力をもたらす。抵抗力は第2引抜部材60によりばね72に伝達される。ばね72が予荷重を受けていないとすると、即座に圧縮動作が開始されるだろう。しかしながら、本ケースでは、ばね72が予荷重を受け、これは第2部材60の収容空間67への第1部材40の配置に起因するものである。言い換えると、第2部材60の突出部61は第2部材60に関する予荷重開始位置に第1部材40を保持する。
【0060】
第2部材60に作用する抵抗力の閾値に達した時のみ予荷重ばね72が圧縮されるように、ばね72の強度が選択される。閾値を下回る抵抗力では、第1部材と第2部材との間に相対動作は生じない。閾値を上回る抵抗力で、ばねが圧縮を始め、その結果、図2Bに示されているように通路開口部64が完全に閉止されるまで第1部材40が第2部材の方に動く。この状態で、装置の水力直径はゼロである。結果的に、第1室25と第2室27との間を充填媒体30が流通するための水力直径が存在しなくなる。
【0061】
比較的低いばね強度を選択すると、ばねの予荷重との組み合わせで、装置の比較的急速な反応時間、つまり通路開口部64の急速な閉止を実現することが可能になる。第1室から第2室への充填媒体の流通は可能でなくなり、それゆえ二つの引抜部材40,60は収容部20に対する動作を行わなくなる。この状態で、装置1は身体の二つの点の間のさらなる動作の支持/減衰を許容しない。
【0062】
例えば、閾値は4.5Nであり、4.5Nから5Nへ抵抗力が急増するとシステムが即座に完全に閉止する。
【0063】
図5Aから7Bは、第1および第2部材の代替実施形態を示す。図5Aは、第1部材40を貫通する突出部61を備える第2部材60を示す。突出部61の端部に配置されているのは、例えば第1部材40との後部係合を可能にするフランジの形の切除部である。
【0064】
図5Bは、第1部材40の中を案内されてその後方に係合する突出部61を第2部材60が一つのみ有するという点で、図5Aと異なっている。
【0065】
図6は、第1部材40の後方に係合するように構成されるフック形状の突出部61を備える第2部材60を示す。このケースで突出部61は片側で第1部材40を迂回する。
【0066】
図7Aおよび7Bは、円筒形の第1部材40が少なくとも部分的に収容される円筒形の第2部材60を示す。第2部材60は、第1部材40の突出部を中で案内するために案内部69を形成する凹部を有する。図7Aおよび7Bは、第1部材40の側面突出部が凹部の第1端部と当接する、装置の開始状況を示す。図7Aは、上に記載された第1部材40がばね72によって開始位置に保持されることを示す。図7Bに示されているように、円筒形の第2部材60は、充填媒体が第1部材40を越えて第2部材60の通路開口部64に向かって流通するための水力直径を提供する側面凹部62を有する。
【0067】
図5Aから7Bによる実施形態の機能的原理は、上に記載された図2Aおよび2Bによる機能的原理と同じである。
【0068】
適用可能な場合に、例示的実施形態に図示されている個々の特徴はすべて、発明の範囲から逸脱することなく、互いに組み合わされうる、および/または、互いに置き換えられうる。
【符号の説明】
【0069】
1 装置
20 収容部
22 開口部
24 内部空間
25 第1室
26 内面
27 第2室
28 段部
29 密封インサート
30 充填媒体
40 第1部材
43 第1部分
44 第2部分
46 ばね座部
50 力伝達手段
60 第2部材
61 突出部
62 凹部
63 溝部
64 通路開口部
65 Oリング
66 案内突出部
67 収容空間
68 ばね座部
69 案内部
70 結合要素
72 ばね
A 軸線方向
B 動作方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6