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  • 特許-溶解炉 図1
  • 特許-溶解炉 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】溶解炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/04 20060101AFI20221110BHJP
   F27B 3/10 20060101ALI20221110BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F27B3/04
F27B3/10
F27D13/00 D
F27D13/00 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022545873
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019266
【審査請求日】2022-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522298738
【氏名又は名称】株式会社ダイキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】西 典男
(72)【発明者】
【氏名】西川 直久
(72)【発明者】
【氏名】山下 直未
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-282484(JP,A)
【文献】特開2015-34665(JP,A)
【文献】特開昭59-200185(JP,A)
【文献】実開昭61-205399(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00- 3/28
F27D 13/00
C22B 21/00-21/06
B22D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に予熱室(12b)が設けられた予熱塔(12)と、その予熱塔(12)の下部に連設された溶解室(14)と、上記の予熱塔(12)に隣接し下部が上記の溶解室(14)に連通する燃焼室(16)と、その燃焼室(16)内に取付けられ、上記の溶解室(14)に投入された被溶解材を加熱溶解する燃焼バーナー(18)とを含む溶解炉において、
上記の予熱塔(12)を形成する耐火材からなる炉体の内部に設けられ、上記の予熱室(12b)上部と上記の燃焼室(16)とを連通する排ガス分岐管(20),
上記の予熱塔(12)の炉体内上部に設けられ、上記の予熱室(12b)を囲繞する熱交換用ループ管道(22),
上記の熱交換用ループ管道(22)に外気を導入する外気導入手段(24),および
上記の熱交換用ループ管道(22)と上記の排ガス分岐管(20)とを連通接続する連結ノズル(26)であって、上記の排ガス分岐管(20)側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が上記の排ガス分岐管(20)の燃料室(16)側の開口に向けられた連結ノズル(26)を具備する、ことを特徴とする溶解炉。
【請求項2】
請求項1の溶解炉において、
前記の予熱室(12b)内に、前記の排ガス分岐管(20)の上流端が開口された壁面との間に隙間(g)を空けて、筒状スリーブ体からなる被溶解材保持部材(28)が取着される、ことを特徴とする溶解炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムなどの非鉄金属の溶解に用いられる溶解炉に関し、特に、原料予熱塔を有する溶解炉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の溶解炉には、従来では、下記の特許文献1(日本国・特公平02-053708号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
予熱塔を備える非鉄金属溶解炉において、前記予熱塔の下部に溶解室を設け、前記予熱塔に隣接し下部が前記溶解室に連通しかつ燃焼ガスをつくるバーナを上部炉体に取付けた燃焼室を設ける。そして、前記予熱塔からの原料予熱排ガスの一部を前記燃焼室に循環させる排ガス分岐管を設けられている。
【0003】
かかる技術によれば、燃焼ガスの温度を安定させ、炉況安定と熱エネルギの節減を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平02-053708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術には次の問題がある。すなわち、排ガス分岐管の途中に設けられたファンで直接、原料予熱排ガスの一部を吸引して燃焼室内へと戻すようにしているが、かかる態様の場合、排ガス分岐管を通流する際に原料予熱排ガスが持つ顕熱の放散が著しく、熱回収による省エネ効果を極大化させることが非常に困難であるという問題があった。
それゆえに、本発明の主たる課題は、原料予熱排ガスが持つ顕熱の利用効率を極大化させることにより、予熱塔における被溶解材料(原料)の充填率が低い状態であっても、安定的な省エネルギー効果を発揮することができる溶解炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本発明は、例えば、図1及び2に示すように、溶解炉10を次のように構成した。
すなわち、内部に予熱室12bが設けられた予熱塔12と、その予熱塔12の下部に連設された溶解室14と、上記の予熱塔12に隣接し下部が上記の溶解室14に連通する燃焼室16と、その燃焼室16内に取付けられ、上記の溶解室14に投入された被溶解材を加熱溶解する燃焼バーナー18とを含む。上記の予熱塔12を形成する耐火材からなる炉体の内部には、上記の予熱室12b上部と上記の燃焼室16とを連通する排ガス分岐管20が設けられる。また、上記の予熱塔12の炉体内上部には、上記の予熱室12bを囲繞する熱交換用ループ管道22が設けられる。その熱交換用ループ管道22には、外気を導入する外気導入手段24が取着される。そして、上記の熱交換用ループ管道22と上記の排ガス分岐管20との間には、両者を連通接続する連結ノズル26であって、上記の排ガス分岐管20側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が上記の排ガス分岐管20の燃料室16側の開口に向けられた連結ノズル26が取り付けられる。
【0007】
本発明では、燃焼バーナー18による高温の燃焼炎でもって溶解室14の被溶解材料の溶解を行ない、その余熱を有する排ガスが原料予熱排ガスEとして予熱塔12内を上昇する。そこで、外気導入手段24を用いて熱交換用ループ管道22に外気を導入すると、その熱交換用ループ管道22内で予熱されている内気が連結ノズル26を介して排ガス分岐管20内へと供給されるが、この連結ノズル26は、排ガス分岐管20側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が排ガス分岐管20の燃料室16側の開口に向けられているので、ベンチュリー効果により速度の上昇した上記の内気が排ガス分岐管20の燃焼室16側の開口に向けて吐出される。そうすると、排ガス分岐管20の上流端となる予熱室12b側の開口では負圧が発生し、予熱室12b内の原料予熱排ガスEの一部が排ガス分岐管20内へと吸引されるようになる。そして、排ガス分岐管20内へと吸引された原料予熱排ガスEは、この排ガス分岐管20を通って燃焼室16へと戻されるが、当該排ガス分岐管20が予熱塔12の炉体内に設けられているので、原料予熱排ガスEの持つ潜熱が喪失するのを極小化させることができる。
【0008】
本発明においては、前記の予熱室12b内に、前記の排ガス分岐管20の上流端が開口された壁面との間に隙間gを空けて、筒状スリーブ体からなる被溶解材保持部材28を取着するのが好ましい。
この場合、予熱室12bを形成する炉体の耐久性を高めると共に、原料である被溶解材料に対する予熱効率をより向上させることができる。また、ベンチュリー効果により、隙間gを通って排ガス分岐管20の上流端となる予熱室12b壁面の開口へと向かう原料予熱排ガスEの流速が上昇する結果、排ガス分岐管20内を移動する原料予熱排ガスEの速度も上げることができ、排ガス分岐管20通流時における原料予熱排ガスEの潜熱喪失をより一層効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原料予熱排ガスが持つ顕熱の利用効率を極大化させることにより、予熱塔における被溶解材料(原料)の充填率が低い状態であっても、安定的な省エネルギー効果を発揮することが可能な溶解炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の溶解炉の要部を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A断面図のうち予熱塔を中心とした要部を示した図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態の溶解炉10を示す縦断面図である。この図が示すように、本実施形態の溶解炉10は、アルミ鋳造用の原料(被溶解材料)を溶解して得たアルミ溶湯を保持するいわゆる手許溶解炉であり、大略、予熱塔12と、溶解室14と、燃焼室16と、溶湯保持室30とを有する。
【0012】
予熱塔12は、上部に材料投入口12aが設けられ、内部に予熱室12bが設けられた炉体の最上部に形成される部分である。ここで、炉体は、十分な強度を持った鋼板で形成された外枠(鋼殻)の内面に耐火煉瓦やキャスタブルなどの耐火材を肉厚に内張して形成される。この予熱塔12上端の材料投入口12aには、投入口開閉ダンパー12cが取り付けられており、その投入口開閉ダンパー12cの略中央部には予熱室12b内の圧力に応じて自動開閉する炉圧調整用ダンパー32が取り付けられている。そして、この予熱塔12下部には溶解室14が連設される。
【0013】
溶解室14は、後述する燃焼バーナー18の火炎によって材料投入口12aから投入された原料である被溶解材料を加熱溶解させるための部分で、その床面が傾斜床14aで形成されている。そして、この溶解室14の隣には、上記の予熱塔12に隣接し下部同士が当該溶解室14と連通するように燃焼室16が設けられる。
【0014】
燃焼室16は、その上部側に取着された燃焼バーナー18を作動させて高温の燃焼炎と燃焼排ガスとを作り出す部分である。この燃焼室16で作り出された燃焼炎および燃焼排ガスは、上述した溶解室14および予熱室12bへと与えられる。また、図示実施形態では、この燃焼室16と上述の溶解室14とが架台床34上に設置される。そして、この架台床34に隣接する位置に、溶湯連通部36を介して燃焼室16と連通する溶湯保持室30が設けられる。
【0015】
溶湯保持室30は加熱溶解された溶湯を使用するまで一定の温度にて保持するための場所である。この溶湯保持室30には、室内のアルミ溶湯が一定の温度を保持するように浸漬ヒーター(図示せず)が取り付けられており、溶湯連通部36から離間した位置に溶湯の汲出し口38が開口されている。なお、アルミ溶湯の保温方法は、上記の浸漬ヒーターを用いる方式に限定されるものではなく、液体・気体燃料による直火式加熱,気体燃料・電気による浸漬式加熱,電気による輻射式加熱など、如何なる保持加熱方式も適用することができる。
【0016】
以上のような各部を有する本発明の溶解炉10において、予熱塔12を形成する耐火材からなる炉体の内部には、上記の予熱室12b上部と上記の燃焼室16とを連通する排ガス分岐管20が設けられる。この排ガス分岐管20は、ステンレスなどからなる金属パイプを予熱塔12の炉体内に埋設することによって形成することができる。又、この排ガス分岐管20は、耐火材施工法によって耐火材構造の一部として形成することもできる。図示実施形態では、図2に示すように、燃焼室16の上部に位置する予熱塔12の炉体内に前後一対の排ガス分岐管20を設ける場合を示しているが、排ガス分岐管20の本数はこれに限定されるものではなく、1本でもよいし3本以上であってもよい。そして、この排ガス分岐管20より上の予熱塔12の炉体内上部には、熱交換用ループ管道22が設けられる。
【0017】
熱交換用ループ管道22は、後述する外気導入手段24によって供給される外気を炉体内に蓄積されている顕熱を用いて予熱するための部材である。本実施形態では、ステンレスなどからなる金属角パイプを矩形ループ状に形成すると共に、これが予熱室12bを囲繞するように予熱塔12炉体内の上部に埋設されて熱交換用ループ管道22が形成されている。そして、この熱交換用ループ管道22には、外気導入手段24が接続されると共に、上記の排ガス分岐管20との間に両者を連通接続する連結ノズル26が介装される。
【0018】
外気導入手段24は、熱交換用ループ管道22に外気を供給するためのもので、熱交換用ループ管道22に連通する外気導入ノズル24aとその外気導入ノズル24aに外気を送給するブロア24bとを備える。なお、このブロア24bは、燃焼バーナー18に付設されるバーナー燃焼用ブロア(図示せず)との共用も可能である。
【0019】
連結ノズル26は、熱交換用ループ管道22と排ガス分岐管20とを連通接続するためのノズルであり、排ガス分岐管20側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が排ガス分岐管20の燃料室16側の開口に向けられる。
【0020】
ここで、上記の外気導入ノズル24aと連結ノズル26との位置関係については、図2に示すように、外気導入ノズル24aから導入した外気が直接、連結ノズル26へは向かわず、熱交換用ループ管道22内を通流した後に連結ノズル26へと達するように配置するのが好ましい。
【0021】
また、本実施形態の溶解炉10では、予熱室12b内に、排ガス分岐管20の上流端が開口された壁面との間に隙間gを空けて被溶解材保持部材28が取着されている。この被溶解材保持部材28は、ステンレスなどの耐熱性を有する金属からなり上下が開口した筒状スリーブ体で構成されており、必要に応じて設置される。なお、この被溶解材保持部材28は、排ガス分岐管20の壁面との間に隙間gを空けて設置されることから、その上端はフランジ形状にて形成されている。
【0022】
以上のように構成された溶解炉10を使用する際には、投入口開閉ダンパー12cを開操作して材料投入口12aよりアルミ溶湯の原料となる被溶解材料を投入する。そして、投入口開閉ダンパー12cを閉操作すると共に、燃焼バーナー18を点火して燃焼炎を発生させる。すると、溶解室14の被溶解材料がその燃焼炎によって加熱溶解し、傾斜床14aの床面を流下して燃焼室16から溶湯連通部36を経て溶湯保持室30にて保持される。また、燃焼バーナー18で発生する排ガスが原料予熱排ガスEとして予熱塔12内を上昇し、溶解室14の上部から予熱室12bに在庫されている被溶解材料を予熱する。
【0023】
本実施形態の溶解炉10によれば、上述したように、燃焼バーナー18による高温の燃焼炎でもって溶解室14の被溶解材料の溶解を行ない、その余熱を有する排ガスが原料予熱排ガスEとして予熱塔12内を上昇する。そこで、外気導入手段24を用いて熱交換用ループ管道22に導入された外気は、熱交換用ループ管道22を周回することで耐火材顕熱により予熱されながら連結ノズル26を介して排ガス分岐管20内へと供給されるが、この連結ノズル26は、排ガス分岐管20側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が排ガス分岐管20の燃料室16側の開口に向けられているので、ベンチュリー効果により速度の上昇した上記の予熱された外気(=熱交換用ループ管道22内の内気)が排ガス分岐管20の燃焼室16側の開口に向けて吐出される。そうすると、排ガス分岐管20の上流端となる予熱室12b側の開口では負圧が発生し、予熱室12b内の原料予熱排ガスEの一部が排ガス分岐管20内へと吸引されるようになる。そして、排ガス分岐管20内へと吸引された原料予熱排ガスEは、この排ガス分岐管20を通って燃焼室16へと戻されるが、当該排ガス分岐管20が予熱塔12の炉体内に設けられているので、原料予熱排ガスEの持つ潜熱が喪失するのを極小化させることができる。
【0024】
また、予熱室12b内に被溶解材保持部材28を取着しているので、隙間gを通って排ガス分岐管20の上流端となる予熱室12b壁面の開口へと向かう原料予熱排ガスEは、ベンチュリー効果によって、その流速が上昇し、排ガス分岐管20内を移動する原料予熱排ガスEの速度を上げることができる。その結果、排ガス分岐管20通流時における原料予熱排ガスEの潜熱喪失をより一層効果的に防止することができる。
【0025】
上述した実施形態では、外気導入手段24において、ブロア24b周辺の外気を熱交換用ループ管道22内に導入する場合を示したが、燃焼バーナー18として熱交換内蔵バーナー(排熱回収バーナー)を用い、熱回収された排ガスを外気導入手段24のブロア24bへ供給するようにしてもよい。又これに加え、或いはこれとは別に、炉頂から炉圧調整用ダンパー32を介して排出される燃焼廃ガス(原料予熱排ガスE)を捕捉してブロア24bへ供給することも可能である。そうすることにより、溶解炉10での使用エネルギー原単位を更に低減させることができる。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
10:溶解炉,12:予熱塔,12a:材料投入口,12b:予熱室,14:溶解室,16:燃焼室,18:燃焼バーナー,20:排ガス分岐管,22:熱交換用ループ管道,24:外気導入手段,26:連結ノズル,28:被溶解材保持部材,g:隙間.
【要約】
本発明の溶解炉は、内部に予熱室(12b)が設けられた予熱塔(12),溶解室(14),燃焼室(16)及び燃焼バーナー(18)を含む。予熱塔(12)を形成する耐火材からなる炉体の内部には、予熱室(12b)上部と燃焼室(16)とを連通する排ガス分岐管(20)が設けられる。また、予熱塔(12)の炉体内上部には、予熱室(12b)を囲繞する熱交換用ループ管道(22)が設けられる。その熱交換用ループ管道(22)には、外気を導入する外気導入手段(24)が取着される。そして、熱交換用ループ管道(22)と排ガス分岐管(20)との間には、両者を連通接続する連結ノズル(26)であって、排ガス分岐管(20)側に向けてその内径が縮小する漏斗状に形成されると共に、その最細径となった先端が排ガス分岐管(20)の燃料室(16)側の開口に向けられた連結ノズル(26)が取り付けられる。

図1
図2