(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】インクボックス
(51)【国際特許分類】
B43L 25/00 20060101AFI20221110BHJP
B43M 99/00 20100101ALI20221110BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B43L25/00
B43M99/00 A
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2021072619
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】202020644807.X
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520332759
【氏名又は名称】段 軍鵬
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】段 軍鵬
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208306229(CN,U)
【文献】実開平01-061052(JP,U)
【文献】登録実用新案第3209571(JP,U)
【文献】特開平08-117009(JP,A)
【文献】実開昭59-129597(JP,U)
【文献】特表2016-517810(JP,A)
【文献】特開2000-139631(JP,A)
【文献】特開平11-299621(JP,A)
【文献】実開昭48-067839(JP,U)
【文献】特開2011-167312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L1/00-12/02、15/00-27/04
B43M1/00-99/00
B05C7/00-21/00
A45C1/00-15/08
A47F1/00-3/14、11/00-11/10
B44B1/00-11/04
B44C1/00-7/08
B44D2/00-7/00
B44F1/00-99/00
B65D35/44-35/54、39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体と、固定蓋と、可動蓋と、
仕切り板とを備え、前記固定蓋は前記ボックス本体の上部に固定連結され、前記可動蓋は前記ボックス本体又は前記固定蓋に可動的に連結されると共に隙間ばめされるインクボックスであって、前記ボックス本体内には
前記仕切り板で分けられた水溜めエリアとインク溜めエリアが設けられており、
前記水溜めエリアと前記インク溜めエリア内には、前記水溜めボックスと前記インク溜めボックスがそれぞれ設けられており、
前記水溜めボックスと前記インク溜めボックスには、いずれも密封蓋が設けられていることを特徴とするインクボックス。
【請求項2】
前記ボックス本体にはスロットが設けられ、前記固定蓋の底部には挿入部が設けられ、前記固定蓋はその底部の挿入部を介して前記ボックス本体におけるスロットに挿入され、前記固定蓋及び前記可動蓋は同心で接する弧面状であり、前記可動蓋には2つの回転軸が設けられ、前記ボックス本体又は前記固定蓋には2つの軸穴が設けられ、2つの回転軸は2つの軸穴内にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項1に記載のインクボックス。
【請求項3】
前記水溜めエリアと前記インク溜めエリアの前記ボックス本体には、いずれも下部開口部が設けられ、前記可動蓋には、各前記下部開口部に対応する上部開口部が設けられ、前記可動蓋が閉じられた後、対応する前記上部開口部と前記下部開口部は協働して筆保持穴を形成することを特徴とする請求項1に記載のインクボックス。
【請求項4】
前記可動蓋には、取っ手がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクボックス。
【請求項5】
前記可動蓋には係止部材が設けられ、前記ボックス本体には係止溝が設けられ、前記係止部材と前記係止溝とが互いに協働することを特徴とする請求項1に記載のインクボックス。
【請求項6】
前記可動蓋が開いた後、前記可動蓋を前記固定蓋に固定させる位置決め機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクボックス。
【請求項7】
前記筆保持穴の上下の位置には、相互にくっつくストッパーが設けられ、前記ストッパーは弾性材料から製造され、弾性材料は、シリカゲル、スポンジ又はゴムであることを特徴とする請求項3に記載のインクボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書道用品の分野に関し、具体的には、インクボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
筆は書道や絵画の愛好者に最もよく使われる道具の1つである。書道や絵画の練習や創作の過程で、書道や絵画の愛好者が途中で一定期間止まると、筆先の墨汁が乾いて固くなることが多く、再度使用する時には水に浸す必要がある。特に、毎日の練習では、書いた後に時間内に筆を洗う必要がある。そうしないと翌日には筆が固くなって使用できなくなる。特に、天候が乾燥している場合、筆の使用中にしばらく放置しただけで筆は筆先が乾いて固くなり、頻繁に筆を洗う必要があり、手間がかかり、多くの水が使われ、非常に不便である。筆を一定時間置いておくと乾いて固くなり、使用時に頻繁に筆を洗う必要があるという問題点を解決するために、本願発明の発明者は筆置きを考案し、既に特許された中国実用新案公告CN208306229Uを参照されたい。当該実用新案は、使い勝手が良く、保湿効果の高い筆置きを提供し、書道や絵画の愛好者が頻繁に筆を洗う必要があるという問題を良く解決したが、筆置きの使用は比較的限られており、スペースの使用効率も高くないため、この特許には一定の制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来のインクカートリッジや筆置きの機能が単一で、スペースの使用効率が低く、携帯が不便であるという技術的問題に対して、使用及び携帯が便利で、インクカートリッジ、筆洗い、保湿筆置き等の機能を兼ね備えたインクボックスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、本発明のインクボックスは、ボックス本体と、固定蓋と、可動蓋と、を備え、固定蓋はボックス本体の上部に固定連結され、可動蓋はボックス本体又は固定蓋に可動的に連結されると共に隙間ばめされ、ボックス本体内には水溜めエリアとインク溜めエリアが設けられている。
【0005】
好ましくは、ボックス本体にはスロットが設けられ、固定蓋の底部には挿入部が設けられ、固定蓋はその底部の挿入部を介してボックス本体におけるスロットに挿入され、固定蓋及び可動蓋は同心で接する弧面状であり、可動蓋には2つの回転軸が設けられ、ボックス本体又は固定蓋には2つの軸穴が設けられ、2つの回転軸は2つの軸穴内にそれぞれ位置している。
【0006】
好ましくは、水溜めエリアとインク溜めエリアのボックス本体には、いずれも下部開口部が設けられ、可動蓋には、各下部開口部に対応する上部開口部が設けられ、可動蓋が閉じられた後、対応する上部開口部と下部開口部は協働して筆保持穴を形成する。
【0007】
好ましくは、可動蓋には、取っ手がさらに設けられている。
【0008】
好ましくは、ボックス本体内には仕切り板が設けられ、ボックス本体内の空間は仕切り板によって水溜めエリアとインク溜めエリアに分けられる。
【0009】
好ましくは、水溜めエリアとインク溜めエリア内には、水溜めボックスとインク溜めボックスがそれぞれ設けられている。
【0010】
好ましくは、水溜めボックスとインク溜めボックスには、いずれも密封蓋が設けられている。
【0011】
好ましくは、可動蓋には係止部材が設けられ、ボックス本体には係止溝が設けられ、係止部材と係止溝とが互いに協働する。
【0012】
好ましくは、インクボックスには、位置決め機構がさらに設けられ、位置決め機構は、可動蓋が開いた後、可動蓋と固定蓋を固定する。
【0013】
好ましくは、位置決め機構は、可動蓋における係止部材と固定蓋における係止溝とを含み、可動蓋における係止部材と固定蓋における係止溝とが互いに協働する。
【0014】
好ましくは、筆保持穴の上下には、相互にくっつくストッパーが設けられ、ストッパーは弾性材料から製造され、弾性材料は、シリカゲル、スポンジ又はゴムのいずれかである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、保湿筆置き、インクカートリッジ、及び筆洗い等の一般的に使用される様々な書道ツールの機能を兼ね備えることにより、筆の保湿機能を実現している。また、インクボックスのボックス本体に水溜めエリアを設け、水溜めエリア内にきれいな水を注入し、揮発した水蒸気がこの密閉空間で長期間一定の濃度を維持して、筆に潤いのある環境を提供することができる。さらに、筆の保湿機能を実現しながら、筆洗いとしても使用でき、構造が単純で、多機能で、省スペースで、使用及び携帯が便利で、繰り返し洗浄する必要がなく、時間と水を節約するというメリットがある。また、ボックス蓋の可動部を閉じる際に、筆保持穴の上下に設けられたストッパーが筆を放置するために使用され、球冠状のボックス蓋内の水蒸気が筆と切り欠きとの隙間から逃げるのを防ぎ、より良く保湿することができ、筆をおろして筆が改めて集まるようにすることができる。
【0016】
本発明は、本願の発明者の既に特許された実用新案である「筆置き」の機能が少ないという欠点を克服し、インクカートリッジと筆置きを巧妙に一体化することで、文机のスペースを節約しながら、筆の保湿と洗わないことを実現し、書道や絵画の愛好者を頻繁な筆洗浄から解放し、まさに「筆を取って書き、筆を置いて去る」という利便性を実現し、書道や絵画の愛好者の書道スキルを向上させるのに非常に役立つ。特に、本発明のインクボックスは、書道や絵画を学ぶ小学生に適しており、頻繁な筆洗浄の面倒から解放され、より多くの時間を節約して練習や絵画に集中することができる。また、筆を一時的に使用しない時は、1本又は複数本の筆を筆立てに置き、筆置き蓋の可動蓋を閉じ、水溜めボックス内の水蒸気を利用して保湿することができ、筆を置くと墨汁が乾きやすく、繰り返し洗浄する必要があるという問題を解決し、書道の愛好者のために適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図6】本発明の実施例2の開いた状態の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、実施例を参照しながらさらに説明する。
〈実施例1〉
【0019】
図1及び
図2に示すように、本発明のインクボックスは、ボックス本体1と、固定蓋10と、可動蓋7とを備えており、ボックス本体1は、上部が解放され下部が閉鎖された円筒形であり、固定蓋10及び可動蓋7は同心で接する弧面状であり、固定蓋10はボックス本体1に挿入されて固定的な連結を形成し、可動蓋7はその両端を介してボックス本体1(又は固定蓋10)と可動的に連結を形成する。従って、可動蓋7が上下に移動すると、インクボックスを開閉する目的を達成することができる。以下に、各部品及びその連結関係について詳しく説明する。
【0020】
図3に示すようなボックス本体にはスロット12が設けられ、
図4における固定蓋10の底部にはスロット12に対応する挿入部13が設けられ、固定蓋10はその底部の挿入部13を介してボックス本体1におけるスロット12に挿入され、縦方向を除く他の方向でボックス本体1と固定連結を形成する。
【0021】
ボックス本体1の直径方向に沿って、ボックス本体1には2つの対向する軸穴14(軸穴14は固定蓋10に設けられてもよい)が設けられ、
図5に示すような可動蓋7の両端には2つの対向する回転軸5が設けられ、この2つの対向する回転軸5はボックス本体1における対向する2つの軸穴14内にそれぞれ挿入されることで、可動蓋7がボックス本体1と可動的な連結を形成し、インクボックスを開閉することができる。
【0022】
可動蓋7及び固定蓋10は同心の1/4球体状であり、可動蓋7における2つの対向する回転軸5は、可動蓋7が閉じられる場合に固定蓋10との間に密閉空間を形成することができるように同心球の軸心線に設けられ、可動蓋7には、インクボックスの開閉を容易にするための取っ手9がさらに設けられている。
【0023】
ボックス本体1内にはS字型(直線状又は他の形状であってもよい)の仕切り板3が設けられ、仕切り板3はボックス本体1内の空間を水溜めエリア6とインク溜めエリア4に分けており、水溜めエリア6とインク溜めエリア4のボックス本体1には、いずれも下部開口部2が設けられ、下部開口部2の形状は半円形である。
図5に示すような可動蓋7には、この2つの下部開口部2に対応する2つの上部開口部8が設けられ、2つの上部開口部8の形状も同じ大きさの半円形であるため、可動蓋7の2つの上部開口部の位置はボックス本体1における2つの下部開口部の位置及び大きさにそれぞれ対応し、可動蓋7を閉じた後、上部開口部及び下部開口部が協働して円形の筆保持穴11を形成する。可動蓋7には、可動蓋7の開閉を容易にするための取っ手9がさらに設けられている。
【0024】
本発明は、使用時に、ボックス本体1内の水溜めエリア6内にきれいな水を注入し、インク溜めエリア4内に墨汁を注入すると、筆で書道や絵画の練習や創作ができ、非常に使いやすくて、インクボックスは通常のインクカートリッジと硯の役割を同時に果たすことができ、筆記の途中で短時間停止する必要がある場合、ボックス本体の下部開口部のいずれかに筆を置くと、インクボックスが筆置きとして機能することができる。もし長時間放置する必要がある場合、可動蓋7を閉じればよい。この場合、インクボックスは保湿筆置きとして機能することができ、戻った後には可動蓋を開いて書き続けることができる。本実施例のインクボックスは、構造が単純で、使い勝手がよく、多機能であるというメリットがあり、文机上に固定して置くのに適しており、頻繁に移動するのには不便である。
〈実施例2〉
【0025】
本実施例の構造は、実施例1と実質的に同じであり、同様な部分については繰り返さない。以下に、本実施例と実施例1との相違点について詳細に説明する。
【0026】
図6に示すように、本実施例のボックス本体1の水溜めエリアとインク溜めエリア内には、別々に取り出すことができる水溜めボックス15とインク溜めボックス16がそれぞれ設けられ、水溜めボックス15とインク溜めボックス16の形状は互いに組み合わせた一対の魚形(又は他の任意に合わせた2つの形状)であり、水溜めボックス15とインク溜めボックス16には、いずれも密封蓋17が設けられ、密封蓋17は係合又はねじ込み方式(他の一般的な連結方式)により水溜めボックス15及びインク溜めボックス16と連結され、インクボックスが揺れたりひっくり返したりしても、水溜めボックス15に格納された水とインク溜めボックス16に格納されたインクは漏れ出さない。インクボックスの使用時に、可動蓋7を押し開き、水溜めボックス15及びインク溜めボックス16上の密封蓋17を外すと、書道や絵画の練習ができ、とても便利で、その最大のメリットは、水溜めボックス15内の水とインク溜めボックス16内の墨汁が移動や揺れる場合にも流出しないことである。本実施例のインクボックスは、多機能で、使い勝手が良く、携帯しやすいというメリットがある。
【0027】
本実施例は、可動蓋7において、取っ手9の下方に係止部材19が設けられ、ボックス本体1の対応位置には係止溝20が設けられ、可動蓋7が閉じられと、可動蓋7における係止部材19がボックス本体1における係止溝20内に係合され、インクボックスがロックされて自発的に開くことがなく、携帯しやすい。また、使用する必要がある場合、可動蓋7を内側に押して係止部材19を係止溝20から解放してロックを解除し、次に取っ手9を上方に押し上げるとインクボックスを開くことができる。係止部材19と係止溝20が協働する設計は、実施例1でも適用可能である。
【0028】
また、本発明の実施例1及び2では、いずれも可動蓋7と固定蓋10に位置決め機構を設けることができ、可動蓋7が開かれると、可動蓋7を制限して固定することができ、筆が使用されている場合に可動蓋7が自動的に落下して閉じていますのを防ぐことができる。位置決め機構は、実施例2に記載の可動蓋7における係止部材19と固定蓋10上に対応して設けられた係止溝(図示せず)であってもよく、他の任意の一般的な位置制限形態であってもよい。インクボックスの全ての部品の材質は、ABSエンジニアリングプラスチック、ナイロン、又は金属材料のいずれか1つ又は2つを選んで使用してもよい。
【0029】
しかしながら、上記は本発明の具体的な実施例に過ぎない。本発明の実施の範囲はこれによって限定され得ない。従って、その同等の構成要素の交換や、本発明の特許の保護範囲による同等の変更及び修正は、依然として本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0030】
1 ボックス本体
2 下部開口部
3 仕切り板
4 インク溜めエリア
5 回転軸
6 水溜めエリア
7 可動蓋
8 上部開口部
9 取っ手
10 固定蓋
11 筆保持穴
12 スロット
13 挿入部
14 軸穴
15 水溜めボックス
16 インク溜めボックス
17 密封蓋
19 係止部材
20 係止溝