(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20221110BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221110BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20221110BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20221110BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20221110BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20221110BHJP
【FI】
H01M50/262 Z
H01M50/262 S
H01M50/209
H01M50/296
H01M50/505
H01M50/50 101
H01M50/289
(21)【出願番号】P 2018194913
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福家 正剛
(72)【発明者】
【氏名】千田 浩二
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056087(JP,A)
【文献】特開2016-018766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0215998(US,A1)
【文献】中国実用新案第207587795(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01M 50/209
H01M 50/296
H01M 50/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置された複数の電池セルと、該複数の電池セルの
各々を積層方向の両側から保持する複数のセルホルダと、前記複数の電池セルの前記積層方向の両端に
一対の前記セルホルダを介して配置されたプレートと、前記積層方向の両端の前記電池セルの外部端子に接続された端バスバーと、該端バスバーの前記外部端子と反対の端部を締結する締結部と、を備え、
前記プレートは、前記締結部を前記プレートに嵌合させて固定する嵌合部を有
し、
前記締結部の前記電池セルに対向する端面が前記セルホルダに当接することを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
積層配置された複数の電池セルと、該複数の電池セルの積層方向の両端に配置されたプレートと、前記積層方向の両端の前記電池セルの外部端子に接続された端バスバーと、該端バスバーの前記外部端子と反対の端部を締結する締結部と、を備え、
前記プレートは、前記締結部を前記プレートに嵌合させて固定する嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記プレートの前記端バスバーに対向する端面に開口して前記締結部の端部を露出させる凹部であ
り、前記プレートの前記端面と反対の方向を向く係合面を有し、
前記締結部は、前記端バスバーの締結方向に直交する方向に突出して前記嵌合部の前記係合面に係合する係合凸部を有することを特徴とす
る電池モジュール。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記プレートの前記積層方向を向く側面に開口し、前記締結部を前記電池セルの前記積層方向に嵌合させる凹部であることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記嵌合部は、前記プレートの前記電池セルに対向する側面に開口することを特徴とする請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記締結部と前記端バスバーの締結方向において前記係合面に対向する対向面を有し、
前記締結部は、前記係合凸部から前記締結方向に突出する突起を有し、前記嵌合部の前記係合面と前記対向面との間に圧入されて前記突起が前記締結方向に変形することを特徴とする請求項
2に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記締結部は、前記積層方向に突出して設けられ前記プレートの前記側面に開口する前記嵌合部の前記開口に配置される複数のリブを有することを特徴とする請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記締結部は、前記端バスバーを貫通する第1ネジと、該第1ネジに締結される第2ネジとを有することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記第2ネジは、前記締結部の本体部と一体に設けられたナットであり
前記第1ネジは、前記ナットに締結されるボルトであることを特徴とする請求項
7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記第1ネジは、前記締結部の本体部と一体に設けられたボルトであり、
前記第2ネジは、前記ボルトに締結されるナットであることを特徴とする請求項
7に記載の電池モジュール。
【請求項10】
外部接続用の配線に接続される端子を備え、
前記端子は、前記第1ネジを挿通させる貫通孔を有し、前記第1ネジと前記第2ネジの締結によって前記端バスバーに接続されることを特徴とする請求項
7に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記複数の電池セルの前記積層方向の一端から他端まで隣り合う前記電池セルの前記外部端子を順次接続する複数のバスバ
ーを備えることを特徴とする請求項
7に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の電池セルを備えた電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の蓄電池が積層される蓄電池群と、前記蓄電池群の積層方向両端に設けられ、該蓄電池群を一体に保持する一対のエンドプレートと、を備える蓄電モジュールに関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された発明は、作業全体の簡素化及び効率化を図ることができるとともに、電極端子の損傷を可及的に抑制することが可能な蓄電モジュールを提供することを目的としている(同文献、第0011段落等を参照)。
【0003】
上記目的を達成する手段として、特許文献1は、次の構成を特徴とする蓄電モジュールを開示している(同文献、請求項1等を参照)。蓄電モジュールは、複数の蓄電池が積層される蓄電池群と、この蓄電池群の積層方向両端に設けられ、この蓄電池群を一体に保持する一対のエンドプレートと、を備える。蓄電モジュールは、エンドプレートに設けられ、積層方向端部に配置される蓄電池の電極端子と出力ラインとを電気的に接続させる端子台を備える。端子台は、出力ラインが接続されるライン接続部を有するとともに、エンドプレートに対して複数個の固定点により固定される。
【0004】
この従来の発明によれば、蓄電池の電極端子と出力ラインとを電気的に接続させる端子台は、出力ラインが接続されるライン接続部を有するとともに、エンドプレートに対して複数個の固定点により固定されている。このため、ライン接続部に出力ラインをナット等により締め付け固定する際に、端子台が回転することがない(同文献、第0022段落等を参照)。
【0005】
したがって、端子台と出力ラインとの接続を、蓄電池の電極端子と前記端子台との接続の後に行っても、電極端子が損傷することを阻止することができる。これにより、メンテナンス等の作業全体の簡素化および効率化を容易に図ることが可能になるとともに、電極端子の損傷を可及的に抑制することができる(同文献、第0023段落等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の蓄電モジュールにおいて、端子台をエンドプレートに対して固定する複数個の固定点は、ねじ締結、かしめまたはピンと孔の嵌合のいずれか、あるいは、これらの組み合わせにより構成される(同文献、請求項3等を参照)。しかし、このような固定点は、蓄電モジュールの部品点数を増加させ、コストを増加させるおそれがある。また、蓄電モジュールの小型化および軽量化を阻害するおそれがある。
【0008】
本開示は、従来よりも部品点数を削減することができ、小型化および軽量化が可能な電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、積層配置された複数の電池セルと、該複数の電池セルの積層方向の両端に配置されたプレートと、前記積層方向の両端の前記電池セルの外部端子に接続された端バスバーと、該端バスバーの前記外部端子と反対の端部を締結する締結部と、を備え、前記プレートは、前記締結部を前記プレートに嵌合させて固定する嵌合部を有することを特徴とする電池モジュールである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の上記一態様によれば、従来よりも部品点数を削減することができ、小型化および軽量化が可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電池モジュールの斜視図。
【
図3】
図1に示す電池モジュールの締結部の近傍の拡大断面図。
【
図4】
図1に示す電池モジュールのプレートおよび締結部の側面図。
【
図5】
図4に示すプレートおよび締結部の分解斜視図。
【
図8】
図7に示す締結部のVIII-VIII線に沿う断面図。
【
図9】
図6に示す締結部の変形例に係る締結部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る電池モジュールの一実施形態を説明する。以下では、図面に表示したX軸、Y軸、Z軸の3軸から構成される直交座標系を用いて電池モジュールの各部を説明する場合がある。また、以下の説明において、上下、左右、前後などの方向は、図面に表示された構成を説明するための便宜的な方向であって、電池モジュールの使用時の方向を限定するものではない。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る電池モジュール100の斜視図である。
図2は、
図1に示す電池モジュール100の分解斜視図である。
図3は、
図1に示す電池モジュール100の締結部40の近傍の拡大断面図である。
【0014】
詳細については後述するが、本実施形態の電池モジュール100は、積層配置された複数の電池セル1と、その複数の電池セル1の積層方向D(Y軸方向)の両端に配置された一対のプレート30と、を備えている。また、電池モジュール100は、積層方向Dの両端に配置された電池セル1の外部端子1n,1pに接続された一対の端バスバー10Eと、その一対の端バスバー10Eの外部端子1n,1pと反対の端部を締結する一対の締結部40と、を備えている。プレート30は、締結部40をプレート30に嵌合させて固定する嵌合部33を有している。
【0015】
以下、本実施形態の電池モジュール100の構成をより詳細に説明する。以下では、説明を簡潔にするために、「電池セル1の積層方向D」を、単に「積層方向D」と表記する場合がある。前述のように、電池モジュール100は、複数の電池セル1と、一対のプレート30と、一対の端バスバー10Eと、一対の締結部40を備えている。さらに、本実施形態の電池モジュール100は、たとえば、複数のバスバー10と、複数のセルホルダ20と、一対のサイドプレート50と、絶縁カバー60と、カバー70と、一対のモジュール端子80N,80Pと、を備えている。
【0016】
電池セル1は、たとえば、扁平角形の形状を有するリチウムイオン二次電池である。すなわち、電池セル1を構成する容器は、Y軸方向の寸法である厚さ寸法が、X軸方向の寸法である幅寸法、およびZ軸方向の寸法である高さ寸法よりも小さい、薄型の直方体形状を有している。電池セル1は、高さ方向(Z軸方向)の一方の端面に外部端子1n,1pを有し、内部に巻回電極群、絶縁部材、集電板、電解液等が収容されている。
【0017】
外部端子1pは、たとえば、電池セル1の内部に収容された集電板を介して巻回電極群を構成する正極の電極に接続された正極の外部端子1pである。外部端子1nは、電池セル1の内部に収容された集電板を介して巻回電極群を構成する負極の電極に接続された負極の外部端子1nである。電池セル1を構成する容器は、たとえばアルミニウム合金などの金属製の容器であり、外部端子1n,1pは、絶縁部材によって金属製の容器に対して電気的に絶縁されている。また、電池セル1の金属製の容器の外面は、たとえば電気絶縁性を有する絶縁フィルムによって覆われている。
【0018】
バスバー10は、複数の電池セル1の積層方向Dの一端から他端まで隣り合う電池セル1の外部端子1n,1pを順次接続する板状の部材である。より具体的には、複数の電池セル1は、隣り合う一方の電池セル1の正極の外部端子1pと、他方の電池セル1の負極の外部端子1nとが、積層方向D(Y軸方向)に隣り合うように、交互に180°反転させて積層されている。
【0019】
バスバー10の一端は、積層方向Dに隣り合う二つの電池セル1のうち、一方の電池セル1の正極の外部端子1pに接続される。バスバー10の他端は、積層方向Dに隣り合う二つの電池セル1のうち、他方の電池セル1の負極の外部端子1nに接続される。バスバー10は、たとえば、溶接によって外部端子1n,1pに接合される。このように、複数のバスバー10によって、複数の電池セル1の積層方向Dの一端から他端まで隣り合う電池セル1の外部端子1n,1pを順次接続することで、複数の電池セル1が直列に接続されている。
【0020】
端バスバー10Eは、積層方向Dの両端の電池セル1の外部端子1n,1pに接続されている。より具体的には、一対の端バスバー10Eのうち、一方の端バスバー10Eの一端は、直列に接続された複数の電池セル1の積層方向Dの一端に配置された電池セル1の正極の外部端子1pに接続される。また、一対の端バスバー10Eのうち、他方の端バスバー10Eの一端は、直列に接続された複数の電池セル1の積層方向Dの他端に配置された電池セル1の負極の外部端子1nに接続される。端バスバー10Eは、バスバー10と同様に、たとえば、溶接によって電池セル1の外部端子1n,1pに接合される。
【0021】
複数のセルホルダ20は、複数の電池セル1を、それぞれ、積層方向Dの両側から保持するように構成されている。セルホルダ20は、たとえばポリプロピレン(PP:Polypropylene)等の樹脂材料によって構成されている。セルホルダ20は、たとえば厚さ方向(Y軸方向)に積層された複数の電池セル1の隣り合う電池セル1の間に介在され、個々の電池セル1を積層方向Dの両側から挟み込むように保持している。
【0022】
一対のプレート30は、たとえば金属製の板状の部材である。一対のプレート30は、複数の電池セル1の積層方向Dの両端に配置された一対のセルホルダ20を介して、複数の電池セル1の両側に配置されたエンドプレートである。一対のプレート30は、一方の側面31が、積層方向Dの両端に配置されたセルホルダ20を介して、積層方向Dの両端に配置された電池セル1に対向している。プレート30は、締結部40をプレート30に嵌合させて固定する嵌合部33を有している。
【0023】
締結部40は、積層方向Dの両端に配置された電池セル1の外部端子1n,1pに接合された端バスバー10Eの外部端子1n,1pと反対の端部を締結する。締結部40による端バスバー10Eの締結方向FDは、たとえば、電池セル1の高さ方向(Z軸方向)である。ここで、締結方向FDとは、締結部40が端バスバー10Eを締結する方向である。以下では、説明を簡潔にするために、「端バスバー10Eの締結方向FD」を、単に「締結方向FD」と表記する場合がある。締結部40は、プレート30の嵌合部33に嵌合されて、プレート30に固定される。
【0024】
以下、本実施形態の電池モジュール100の特徴部分であるプレート30の嵌合部33と締結部40について、詳細に説明する。
図4は、
図1に示す電池モジュール100のプレート30および締結部40の側面図である。
図5は、
図4に示すプレート30および締結部40の分解斜視図である。
図6は、
図5に示す締結部40の拡大図である。
図7は、
図6に示す締結部40の側面図である。
図8は、
図7に示す締結部40のVIII-VIII線に沿う断面図である。前述のように、プレート30は、締結部40をプレート30の嵌合部33に嵌合させて固定する。
【0025】
本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、たとえば、プレート30の端バスバー10Eに対向する端面32に開口して締結部40の端部を露出させる凹部である。また、嵌合部33は、たとえば、プレート30の積層方向D(Y軸方向)を向く側面31に開口し、締結部40を電池セル1の積層方向Dに嵌合させる凹部である。より具体的には、嵌合部33は、たとえば、プレート30の電池セル1に対向する側面31に開口している。
【0026】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、たとえば、プレート30の端面32と反対の方向を向く係合面33aを有している。一方、締結部40は、たとえば、端バスバー10Eの締結方向FDに直交する方向(X軸方向)に突出して嵌合部33の係合面33aに係合する係合凸部41を有している。
【0027】
嵌合部33の係合面33aは、たとえば、締結方向FD(Z軸方向)に深さを有する凹状の嵌合部33の底部を、締結方向FDに直交する方向、たとえば電池セル1の幅方向(X軸方向)に拡張させることによって形成することができる。すなわち、係合面33aは、たとえば、凹状の嵌合部33の締結方向FDに平行な壁面を、締結方向FDに直交する方向に陥没させた凹状の部分の締結方向FDに直交する壁面である。
【0028】
締結部40の係合凸部41は、たとえば、締結方向FD(Z軸方向)に平行な締結部40の本体部43の外面から、締結方向FDに直交する方向、たとえば電池セル1の幅方向(X軸方向)に突出する凸部である。係合凸部41は、たとえば、電池セル1の積層方向D(Y軸方向)における締結部40の一端に設けられている。
図3に示すように、締結部40をプレート30の嵌合部33に嵌合させた状態で、係合凸部41の端面は、たとえば、プレート30の側面31に対して段差なく締結方向FDに隣り合う面一の状態になる。
【0029】
また、本実施形態の電池モジュール100では、プレート30の嵌合部33は、たとえば、締結部40と端バスバー10Eの締結方向FDにおいて、係合面33aに対向する対向面33bを有している。一方、締結部40は、係合凸部41から締結方向FDに突出する突起42を有し、嵌合部33の係合面33aと対向面33bとの間に圧入されて突起42が締結方向FDに変形するように構成されている。
【0030】
すなわち、締結部40は、たとえば、PP等の電気絶縁性を有する樹脂材料によって構成されている。より具体的には、締結部40は、少なくとも係合凸部41と突起42が樹脂材料によって構成されている。そして、締結部40を嵌合部33に嵌合させる前の状態で、締結部40の係合凸部41と突起42の締結方向FD(Z軸方向)の寸法は、プレート30の係合面33aと対向面33bとの間の同方向の寸法よりも大きい。これにより、係合凸部41は、たとえば金属製のプレート30の係合面33aと対向面33bとの間に圧入されると、締結方向FDに圧縮されて弾性変形および塑性変形する。
【0031】
また、本実施形態の電池モジュール100において、締結部40は、積層方向Dに突出して設けられた複数のリブ44を有している。複数のリブ44は、プレート30の側面31に開口する嵌合部33の開口に配置される。より詳細には、締結部40は、たとえば、円筒状の本体部43と、この本体部43から積層方向Dに平行に延びる複数の平板状のリブ44と、を備えている。係合凸部41、突起42、本体部43、およびリブ44は、たとえば、前述の樹脂材料によって一体に成形されている。
【0032】
複数のリブ44は、たとえば、電池セル1の幅方向(X軸方向)において、本体部43の両端部と中間部に設けられ、互いに平行に配置されている。本体部43の両端部のリブ44は、円筒状の本体部43の積層方向D(Y軸方向)に平行な接線方向に延び、本体部43の外周面に対して段差なく連なる面一の状態で設けられている。また、電池セル1の幅方向における本体部43の寸法は、嵌合部33の同方向における寸法とおおむね等しく、負の寸法公差を有している。
【0033】
また、本体部43の外周面と本体部43の両端部のリブ44とによって形成される本体部43のU字状の外形は、プレート30の端面32に設けられた嵌合部33のU字状の開口形状に対応している。すなわち、プレート30の嵌合部33は、締結部40の外形に対応する凹形状を有し、締結部40が嵌合部33にぴったりと嵌合するように構成されている。また、リブ44は、たとえば、締結方向FDにおける端バスバー10Eと反対側の端部に積層方向Dに突出する突出部44aを有している。なお、リブ44は、突出部44aを有しなくてもよい。
【0034】
突出部44aの先端部は、たとえば、電池セル1の高さ方向および締結方向FDに平行に設けられ、セルホルダ20に当接する。また、締結方向FDにおける端バスバー10Eと反対側の突出部44aの端部は、連結部47に連結されている。連結部47は、たとえば、係合凸部41と、本体部43の下端部と、リブ44の下端部に連結された平板状の部分である。連結部47は、たとえば、係合凸部41、突起42、本体部43、およびリブ44と同様の樹脂材料によって、これらの各部と一体に成形されている。また、連結部47の積層方向Dを向く端面は、係合凸部41およびリブ44の突出部44aと段差なく連なる面一な状態に形成され、セルホルダ20に当接する。
【0035】
また、本実施形態の電池モジュール100において、締結部40は、たとえば、
図3に示すように、端バスバー10Eを貫通する第1ネジ45と、その第1ネジ45に締結される第2ネジ46とを有している。より具体的には、第2ネジ46は、たとえば、締結部40の本体部43と一体に設けられたナットである。また、第1ネジ45は、たとえば、ナットである第2ネジ46に締結されるボルトである。第2ネジ46は、たとえば、インサート成形やアウトサート成形によって、本体部43に埋め込まれ、係合凸部41、突起42、本体部43、リブ44、および連結部47と一体に設けられている。
【0036】
また、本実施形態の電池モジュール100は、前述のように、
図3に示す外部接続用の配線に接続される端子81を備えている。端子81は、たとえば、導電性を有する金属製の板状の部材であるバスバーや、配線の先端部の円環状の丸端子であり、第1ネジ45を挿通させる貫通孔81aを有している。端子81は、締結部40の第1ネジ45と第2ネジ46の締結によって端バスバー10Eに接続され、電池モジュール100の外部端子であるモジュール端子80N,80Pを構成する。
【0037】
一対のサイドプレート50は、複数の電池セル1の幅方向(X軸方向)の両側に、セルホルダ20を介して配置されている。一対のサイドプレート50は、たとえば、おおむね矩形板状の金属製の部材であり、電池セル1の幅方向(X軸方向)の両側に互いに対向するように配置されている。一対のサイドプレート50は、たとえば、おおむね長方形であり、複数の電池セル1の積層方向Dが長辺方向すなわち長手方向とされ、複数の電池セル1の高さ方向(Z軸方向)が短辺方向すなわち短手方向とされている。
【0038】
一対のサイドプレート50は、長手方向の両端部が、たとえばリベットやボルトなどの締結部材によって一対のプレート30に締結されている。また、サイドプレート50は、長手方向の中央部が、たとえばリベットやボルトなどの締結部材によって、複数の電池セル1と複数の電池セル1との間にセルホルダ20を介して配置された図示を省略する中央のプレートに締結されている。
【0039】
絶縁カバー60は、たとえばPP等の電気絶縁性を有する樹脂製の板状または枠状の部材であり、電池セル1の外部端子1n,1pが設けられた端面に対向して配置されている。絶縁カバー60は、複数の電池セル1の外部端子1n,1pの上端面を露出させる開口部と、隣り合う電池セル1の外部端子1n,1pの間および互いに隣接するバスバー10の間を絶縁する隔壁と、を有している。絶縁カバー60の隔壁は、たとえば、電池セル1の外部端子1n,1pおよびバスバー10の周囲を囲むように設けられている。絶縁カバー60には、図示を省略する各種の電気配線が配置される。
【0040】
カバー70は、たとえばPP等の電気絶縁性を有する樹脂製の板状の部材である。カバー70は、電池セル1の高さ方向(Z軸方向)において、電池セル1と反対側の端部に絶縁カバー60を覆うように配置されている。カバー70は、電池セル1の積層方向Dの両端のモジュール端子80N,80Pに対応する位置に、端子カバー70aを有している。
【0041】
モジュール端子80N,80Pは、電池モジュール100の外部端子である。モジュール端子80N,80Pは、たとえば、
図3に示すように、それぞれ、外部接続用の配線に接続される端子81を備えている。
【0042】
以下、本実施形態の電池モジュール100の作用について説明する。
【0043】
本実施形態の電池モジュール100は、たとえば、車両やその他の機器に搭載され、モジュール端子80N,80Pおよび配線を介して、外部の電気機器に接続される。これにより、電池モジュール100は、モジュール端子80N,80Pを介して外部の電気機器から供給された電力によって複数の電池セル1を充電することができる。また、電池モジュール100は、充電された複数の電池セル1からモジュール端子80N,80Pを介して外部の電気機器へ電力を供給することができる。
【0044】
前述のように、本実施形態の電池モジュール100は、積層配置された複数の電池セル1と、その複数の電池セル1の積層方向D(Y軸方向)の両端に配置された一対のプレート30と、を備えている。また、電池モジュール100は、積層方向Dの両端に配置された電池セル1の外部端子1n,1pに接続された一対の端バスバー10Eと、その一対の端バスバー10Eの外部端子1n,1pと反対の端部を締結する一対の締結部40と、を備えている。プレート30は、締結部40をプレート30に嵌合させて固定する嵌合部33を有している。
【0045】
この構成により、端バスバー10Eの端部を締結する締結部40を、ねじやピンなどの追加的な固定用の部材を使用することなく、プレート30に設けられた嵌合部33に嵌合させるだけで、プレート30に対して固定することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、前記従来の蓄電モジュールよりも部品点数を削減することができ、小型化および軽量化が可能な電池モジュール100を提供することができる。また、電池モジュール100の組み立てを容易にして、生産性を向上させることができる。さらに、締結部40の寸法精度が向上することにより、端バスバー10Eに接続された外部端子1p,1nに対する応力集中を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、プレート30の端バスバー10Eに対向する端面32に開口して締結部40の端部を露出させる凹部である。
【0047】
この構成により、プレート30に固定された締結部40の端バスバー10Eに対向する端部を、プレート30の端バスバー10Eに対向する端面32から露出させることができる。これにより、端バスバー10Eに対向する締結部40の端面に、端バスバー10Eを支持して締結することができる。したがって、少なくとも、端バスバー10Eに接する締結部40の本体部43やリブ44などの部分を、樹脂材料などの絶縁材料によって構成することで、締結部40を介してプレート30と端バスバー10Eとを電気的に絶縁した状態で、端バスバー10Eをプレート30に固定することができる。
【0048】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、プレート30の積層方向D(Y軸方向)を向く側面31に開口し、締結部40を電池セル1の積層方向Dに嵌合させる凹部である。
【0049】
この構成により、プレート30の嵌合部33に締結部40を固定するときに、締結部40を、積層方向Dからプレート30の側面31の開口に挿入し、嵌合部33に嵌合させて固定することができる。また、締結部40を嵌合部33に嵌合させて固定した状態で、締結部40の端バスバー10Eに対向する端部を、プレート30の端バスバー10Eに対向する端面32の開口から露出させることができる。
【0050】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、たとえば、プレート30の電池セル1に対向する側面31に開口している。
【0051】
この構成により、プレート30の嵌合部33に締結部40を嵌合させて固定した状態で、締結部40の電池セル1に対向する端面が、プレート30の電池セル1に対向する側面31に露出する。この状態で、複数の電池セル1をそれぞれセルホルダ20によって厚さ方向から保持して積層させ、複数の電池セル1の積層方向Dの両側に一対のプレート30を配置すると、締結部40の電池セル1に対向する端面が、セルホルダ20に当接するか微小な隙間を介して対向する。これにより、締結部40の積層方向Dの移動が規制され、締結部40がプレート30の嵌合部33から脱落するのを、より確実に防止することができる。
【0052】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、プレート30の端面32と反対の方向を向く係合面33aを有している。一方、締結部40は、たとえば、端バスバー10Eの締結方向FDに直交する方向に突出して嵌合部33の係合面33aに係合する係合凸部41を有している。
【0053】
この構成により、プレート30の嵌合部33に締結部40を嵌合させて固定した状態で、締結部40の端バスバー10E側の端部に、端バスバー10Eを向く締結方向FDの力が作用すると、締結部40の係合凸部41が嵌合部33の係合面33aに係合する。すると、嵌合部33の係合面33aから、締結部40の係合凸部41に、端バスバー10Eの反対を向く締結方向FDの反力が作用する。これにより、締結部40がプレート30の嵌合部33から締結方向FDに脱落するのを防止することができる。
【0054】
また、本実施形態の電池モジュール100において、プレート30の嵌合部33は、締結部40と端バスバー10Eの締結方向FDにおいて、係合面33aに対向する対向面33bを有している。一方、締結部40は、係合凸部41から締結方向FDに突出する突起42を有し、嵌合部33の係合面33aと対向面33bとの間に圧入されて突起42が締結方向FDに変形するように構成されている。
【0055】
この構成により、締結部40をプレート30の嵌合部33に嵌合させるときに、締結部40の係合凸部41が、嵌合部33の係合面33aと対向面33bとの間に圧入される。このとき、係合凸部41に設けられた突起42が、係合面33aと対向面33bとの間で圧縮されて変形する。これにより、締結部40の係合凸部41を、嵌合部33の係合面33aと対向面33bとの間に強固に嵌合させ、締結部40を嵌合部33により確実に固定することができる。
【0056】
また、本実施形態の電池モジュール100において、締結部40は、積層方向Dに突出して設けられプレート30の側面31に開口する嵌合部33の開口に配置される複数のリブ44を有している。
【0057】
この構成により、締結部40を複数のリブ44によって補強することができる。また、締結部40を嵌合部33に嵌合させるときに、締結部40の両端のリブ44を嵌合部33の壁面によって案内して、締結部40を嵌合部33に容易かつ確実に嵌合させることができる。さらに、リブ44の端バスバー10Eに対向する端部によって端バスバー10Eを支持し、端バスバー10Eを安定させることができ、端バスバー10Eから締結部40に作用するトルクを低減することができる。加えて、リブ44の突出部44aがセルホルダ20に当接することで、締結部40をプレート30の嵌合部33とセルホルダ20との間で保持することができ、締結部40の脱落をより確実に防止することができる。
【0058】
また、本実施形態の電池モジュール100において、締結部40は、端バスバー10Eを貫通する第1ネジ45と、その第1ネジ45に締結される第2ネジ46とを有している。
【0059】
この構成により、プレート30の嵌合部33に固定された締結部40の第1ネジ45に第2ネジ46を締結することで、締結部40に端バスバー10Eを締結することができる。これにより、積層方向Dの一端に配置された電池セル1の正極の外部端子1pに接合された端バスバー10Eの外部端子1pと反対側の端部を、ねじ締結によって締結部40に容易に締結することができる。同様に、積層方向Dの他端に配置された電池セル1の負極の外部端子1nに接合された端バスバー10Eの外部端子1nと反対側の端部を、ねじ締結によって締結部40に容易に締結することができる。
【0060】
また、本実施形態の電池モジュール100において、第2ネジ46は、締結部40の本体部43と一体に設けられたナットであり、第1ネジ45は、第2ネジ46に締結されるボルトである。
【0061】
この構成により、ボルトである締結部40の第1ネジ45を、端バスバー10Eの貫通孔に挿通させ、締結部40の本体部43と一体に設けられた第2ネジ46に締結することで、端バスバー10Eを締結部40に締結することができる。また、第2ネジ46を締結部40の本体部43と一体に設けることで、第2ネジ46を本体部43にしっかりと固定することができ、締結部40に端バスバー10Eを安定して締結することが可能になる。さらに、本体部43を樹脂材料などの絶縁材料によって構成することで、金属製の第2ネジ46を締結部40の周囲の部材から電気的に絶縁することができる。
【0062】
また、本実施形態の電池モジュール100は、前述のように、外部接続用の配線に接続される端子81を備えている。端子81は、締結部40の第1ネジ45を挿通させる貫通孔81aを有している。端子81は、締結部40の第1ネジ45と第2ネジ46の締結によって端バスバー10Eに接続される。
【0063】
この構成により、締結部40の第1ネジ45と第2ネジ46の締結によって、複数の電池セル1に接続された端バスバー10Eを端子81に接続することができる。これにより、電池モジュール100は、配線、端子81、およびモジュール端子80N,80Pを介して外部の電気機器から供給された電力によって、複数の電池モジュール100を充電することができる。また、電池モジュール100は、充電された複数の電池セル1からモジュール端子80N,80P、端子81、および配線を介して外部の電気機器に電力を供給することができる。
【0064】
また、本実施形態の電池モジュール100は、電池セル1を積層方向Dの両側から保持する複数のセルホルダ20と、複数の電池セル1の積層方向Dの一端から他端まで隣り合う電池セル1の外部端子1n,1pを順次接続する複数のバスバー10と、を備えている。
【0065】
この構成により、電池モジュール100は、複数の電池セル1を直列または直列および並列に接続して、端バスバー10Eを介して高い電圧を外部の電気機器に提供することができる。また、隣り合う電池セル1の間、および、積層方向Dの両端の電池セル1とプレート30との間を、セルホルダ20によって電気的に絶縁することができる。
【0066】
なお、本実施形態の電池モジュール100において、嵌合部33の構成は、
図4および
図5に示す構成に限定されない。たとえば、嵌合部33は、プレート30の積層方向Dを向く側面31に開口しなくてもよい。この場合、嵌合部33は、たとえば、端バスバー10Eに対向するプレート30の端面32に円形の開口を有し、開口の周方向に一以上の切欠きを有してもよい。この場合、締結部40は、嵌合部33の開口の切欠きに対応する位置に、端バスバー10Eの締結方向FDに直交する方向に突出する係合凸部を有することができる。
【0067】
このような構成により、嵌合部33の開口の切欠きと締結部40の係合凸部の位置を合わせて、締結部40を嵌合部33の開口から嵌合部33の内部へ、端バスバー10Eの締結方向FDに挿入することができる。その後、締結部40を端バスバー10Eの締結方向FDに平行なZ軸周りに回転させることで、締結部40の係合凸部と嵌合部33の開口の内側の係合面とを、端バスバー10Eの締結方向FDに係合させ、締結部40をプレート30の嵌合部33に嵌合させて固定することができる。
【0068】
また、嵌合部33は、プレート30の積層方向Dを向く側面31に開口せず、電池セル1の幅方向(X軸方向)を向くプレート30の側面34に開口していてもよい。この場合、嵌合部33に、締結部40を電池セル1の幅方向に挿入して嵌合させることができる。また、嵌合部33は、たとえば、プレート30の電池セル1と反対の側面35に開口していてもよい。この場合、たとえば、複数の電池セル1をセルホルダ20によって保持して積層させ、その両端に配置したプレート30にサイドプレート50を締結した後でも、嵌合部33に締結部40を電池セル1の積層方向Dから挿入して嵌合させることができる。
【0069】
図9は、
図6に示す締結部40の一変形例に係る締結部40Aの斜視図である。この変形例において、締結部40Aの第1ネジ45は、締結部40Aの本体部43と一体に設けられたボルトである。この場合、第1ネジ45に締結される第2ネジは、ボルトである第1ネジ45に締結されるナットである。前述の締結部40に代えて、この変形例に係る締結部40Aを備えた電池モジュールによっても、前述の電池モジュール100と同様の効果を奏することができる。
【0070】
以上、図面を用いて本開示に係る電池モジュールの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1 電池セル
1p 外部端子
1n 外部端子
10 バスバー
10E 端バスバー
20 セルホルダ
30 プレート
31 側面
32 端面
33 嵌合部
33a 係合面
33b 対向面
34 側面
35 側面
40 締結部
41 係合凸部
42 突起
44 リブ
45 第1ネジ
46 第2ネジ
81 端子
81a 貫通孔
100 電池モジュール
D 積層方向
FD 締結方向