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特許7174486水素製造装置の運転方法及び水素製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】水素製造装置の運転方法及び水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20221110BHJP
   B01D 53/053 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C01B3/38
B01D53/053
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060428
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158356
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松尾 日向子
(72)【発明者】
【氏名】阿曽沼 飛昂
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕一郎
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000675(JP,A)
【文献】特開2011-230939(JP,A)
【文献】特表2008-524107(JP,A)
【文献】特表2003-531795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00- 3/58
B01D 53/04-53/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素成分を含む原料ガスを供給する原料ガス供給用の圧縮機、及び、加熱バーナにて改質用温度に加熱された状態で前記原料ガスを水蒸気改質処理して水素成分が多い改質ガスを生成する改質器を備えた改質処理部と、
前記改質ガスから前記水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成しかつ前記吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔を備えた圧力変動吸着部と、
前記製品ガスを回収する製品ガスタンクと、
前記オフガスを燃焼用燃料として前記加熱バーナに供給するオフガス供給路と、が設けられ、
前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行するように構成された水素製造装置の運転方法であって、
前記改質処理部から前記圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、前記圧力変動吸着部については、前記吸着塔の前記吸着剤を、前記吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、前記改質処理部については、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記改質処理部に充填した前記製品ガスを、返送ラインを通して前記圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転を行い、
前記待機運転を停止して前記製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造し、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が前記設定値以上になると、前記製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行う水素製造装置の運転方法。
【請求項2】
前記製品ガス製造運転を停止する際に、前記加熱バーナにて前記改質器を加熱しかつ前記水蒸気を前記改質器に供給する状態を継続した状態で、前記原料ガスに代えて前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記改質ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する水蒸気パージ処理、及び、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記製品ガスを、前記吸着塔に供給する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行う請求項1に記載の水素製造装置の運転方法。
【請求項3】
前記圧力変動吸着運転が、前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを生成する吸着工程、前記吸着塔の内部ガスを排出する減圧工程、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔の前記吸着剤を再生する再生工程、前記吸着塔の内部に前記製品ガスを供給する昇圧工程を含む運転サイクルを、複数の前記吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行わせるものであり、
前記初期運転処理において、前記圧縮機にて前記原料ガスを供給する供給量に対する前記運転サイクルを行う時間を、前記製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくする請求項1又は2に記載の水素製造装置の運転方法。
【請求項4】
水素成分を含む原料ガスを供給する原料ガス供給用の圧縮機、及び、加熱バーナにて改質用温度に加熱された状態で前記原料ガスを水蒸気改質処理して水素成分が多い改質ガスを生成する改質器を備えた改質処理部と、
前記改質ガスから前記水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成しかつ前記吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔を備えた圧力変動吸着部と、
前記製品ガスを回収する製品ガスタンクと、
前記オフガスを燃焼用燃料として前記加熱バーナに供給するオフガス供給路と、
運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行するように構成された水素製造装置であって、
前記運転制御部が、前記改質処理部から前記圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、前記圧力変動吸着部については、前記吸着塔の前記吸着剤を、前記吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、前記改質処理部については、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記改質処理部に充填した前記製品ガスを、返送ラインを通して前記圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転を行い、且つ、
前記待機運転を停止して前記製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造し、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が前記設定値以上になると、前記製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行う水素製造装置。
【請求項5】
前記運転制御部が、前記製品ガス製造運転を停止する際に、前記加熱バーナにて前記改質器を加熱しかつ前記水蒸気を前記改質器に供給する状態を継続した状態で、前記原料ガスに代えて前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記改質ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する水蒸気パージ処理、及び、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記製品ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行う請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記圧力変動吸着運転が、前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを生成する吸着工程、前記吸着塔の内部ガスを排出する減圧工程、前記吸着塔の前記吸着剤を再生する再生工程、前記吸着塔の内部に前記製品ガスを供給する昇圧工程を含む運転サイクルを、複数の前記吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行わせるものであり、
前記初期運転処理において、前記圧縮機にて前記原料ガスを供給する供給量に対する前記運転サイクルを行う時間を、前記製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくする請求項4又は5に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素成分を含む原料ガスを供給する原料ガス供給用の圧縮機、及び、加熱バーナにて改質用温度に加熱された状態で前記原料ガスを水蒸気改質処理して水素成分が多い改質ガスを生成する改質器を備えた改質処理部と、前記改質ガスから前記水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成しかつ前記吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔を備えた圧力変動吸着部と、前記製品ガスを回収する製品ガスタンクと、前記オフガスを燃焼用燃料として前記加熱バーナに供給するオフガス供給路と、が設けられ、前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行するように構成された水素製造装置の運転方法、及び、前記製品ガス製造運転を実行する運転制御部が設けられた水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる水素製造装置は、改質部によって、天然ガスやナフサ等の炭化水素系ガスである原料ガスを水蒸気改質処理により水素成分が多い改質ガスに改質し、圧力変動吸着部によって、水素成分及び水素成分以外の吸着対象成分を含む改質ガスから吸着対象成分を吸着剤に吸着することにより、水素濃度の高い製品ガスを製造するものである。
【0003】
圧力変動吸着部から排出されるオフガスには、可燃成分が含まれているから、圧力変動吸着部から排出されるオフガスを、改質器を加熱する加熱バーナに供給して、燃料ガスとして燃焼させることが行われている。
【0004】
かかる水素製造装置の運転方法の従来例として、製品ガス製造運転を停止する際に、改質処理部から圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、圧力変動吸着部については、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、改質処理部については、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナによる改質器の加熱を継続する状態で、改質処理部に充填した製品ガスを、改質処理部から排出されると返送ラインを通して圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転を行うことによって、製品ガス製造運転の再開に備えるものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ちなみに、特許文献1においては、製品ガス製造運転を停止する際に、上記待機運転の前に、改質処理部から圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、加熱バーナにて改質器を加熱しかつ水蒸気を改質器に供給する状態を継続した状態で、原料ガスに代えて製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機にて改質器に供給し、且つ、改質処理部からの改質ガスを、外部に廃棄する水蒸気パージ処理、及び、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナによる改質器の加熱を継続する状態で、製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機にて改質器に供給し、且つ、改質処理部からの製品ガスを、外部に廃棄する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行ない、その後、待機運転を行うことが記載されている。
【0006】
特許文献1においては、詳細な説明は省略されているが、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、従来一般に行われている如く、製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機にて供給して昇圧する昇圧処理を行い、昇圧処理が終了すると、製品ガスに代えて原料ガスを圧縮機にて供給する原料導入処理を行い、当該原料導入処理により改質ガスが適正に生成される状態になると、圧力変動吸着部への改質ガスの供給を開始して、圧力変動吸着運転により製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する純度出し処理を実行し、その後、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスを製品ガスタンクに回収する製品ガス製造運転を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の水素製造装置の運転方法においては、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際に、昇圧処理、原料導入処理、純度出し処理を順次実行することになるから、製品ガス製造運転が開始されるまでに、製品ガスが消費され、また、原料ガスが無駄に消費される不都合があり、しかも、製品ガス製造運転が開始されるまでの時間が長くなる不都合があり、改善が望まれるものであった。
【0009】
つまり、製品ガスが昇圧処理にて消費されることになる。
ちなみに、特許文献1においては、待機運転を行う際に、製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機に供給して、改質処理部を循環する製品ガスの圧力を上昇させているため、昇圧工程において消費される製品ガスの消費量は減少することになるものの、待機運転において製品ガスを消費することになるため、結果的に、製品ガスの消費量が多い。
【0010】
また、原料導入処理においては、水素成分を含む改質ガスが順次生成されるものとなるにも拘わらず、例えば、原料導入処理において生成される改質ガスを、改質器を加熱する加熱バーナに供給して燃焼させる等、改質ガスを製品ガスの製造に使用しないことになる結果、原料導入処理において原料ガスが無駄に消費されるものであった。
【0011】
さらには、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際に、昇圧処理、原料導入処理、純度出し処理を順次実行することになるから、製品ガス製造運転が開始されるまでの時間が長くなるものであった。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、製品ガスの消費を抑制し且つ原料ガスの無駄な消費を抑制しながら製品ガス製造運転を開始でき、しかも、製品ガス製造運転を開始するまでの時間の短縮化を図ることができる水素製造装置の運転方法及びその運転方法を実行する水素製造装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の水素製造装置の運転方法は、水素成分を含む原料ガスを供給する原料ガス供給用の圧縮機、及び、加熱バーナにて改質用温度に加熱された状態で前記原料ガスを水蒸気改質処理して水素成分が多い改質ガスを生成する改質器を備えた改質処理部と、
前記改質ガスから前記水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成しかつ前記吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔を備えた圧力変動吸着部と、
前記製品ガスを回収する製品ガスタンクと、
前記オフガスを燃焼用燃料として前記加熱バーナに供給するオフガス供給路と、が設けられ、
前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行するように構成されたものであって、その特徴構成は、
前記改質処理部から前記圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、前記圧力変動吸着部については、前記吸着塔の前記吸着剤を、前記吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、前記改質処理部については、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記改質処理部に充填した前記製品ガスを、返送ラインを通して前記圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転を行い、
前記待機運転を停止して前記製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造し、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が前記設定値以上になると、前記製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行う点にある。
【0014】
すなわち、製品ガス製造運転の開始に備えて待機する待機運転として、改質処理部から圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、圧力変動吸着部については、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、改質処理部については、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナによる改質器の加熱を継続する状態で、改質処理部に充填した製品ガスを、当該改質処理部を流動させ、かつ、当該改質処理部から排出されると返送ラインを通して圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転が行われることになる。
【0015】
そして、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行うことになる。
【0016】
つまり、待機運転が行われることによって、改質処理部については、加熱バーナによる改質器の加熱が継続されているため、直ちに、水蒸気改質処理を開始できる状態にあり、また、圧力変動吸着部については、吸着塔の吸着剤が吸着対象成分を脱着した状態に維持されているため、直ちに、圧力変動吸着運転を開始できる状態にある。
【0017】
そこで、待機運転が行われることに鑑みて、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を行うようにする。
そして、初期運転処理を行うことによって、製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行うようにすることになる。
【0018】
このように、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造するようにするものであるから、製品ガスの消費を抑制し且つ原料ガスの無駄な消費を抑制しながら製品ガス製造運転を開始できることになる。
また、製品ガス製造運転を開始するまでの時間を短縮させることができる。
【0019】
要するに、本発明の水素製造装置の運転方法の特徴構成によれば、製品ガスの消費を抑制し且つ原料ガスの無駄な消費を抑制しながら製品ガス製造運転を開始でき、しかも、製品ガス製造運転を開始するまでの時間の短縮化を図ることができる。
【0020】
本発明の水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成は、前記製品ガス製造運転を停止する際に、前記加熱バーナにて前記改質器を加熱しかつ前記水蒸気を前記改質器に供給する状態を継続した状態で、前記原料ガスに代えて前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記改質ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する水蒸気パージ処理、及び、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記製品ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行う点にある。
【0021】
すなわち、製品ガス製造運転を停止する際に、パージ運転として、水蒸気パージ処理及び製品ガスパージ処理が順次行われる。
したがって、このパージ運転に続いて、待機運転に移行できることになる。
【0022】
つまり、水蒸気処理においては、加熱バーナにて改質器を加熱しかつ水蒸気を改質器に供給する状態を継続した状態で、原料ガスに代えて製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機にて改質器に供給し、且つ、改質処理部からの改質ガスを、圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔に供給するものであるから、改質器等に残存する原料ガスを水蒸気改質処理して改質ガスを生成しながら、生成した改質ガスを、圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔に供給することによって、改質処理部からの改質ガスに含まれる水素成分の濃度が高いガスが製品ガスとして回収され、且つ、改質処理部からの改質ガスに含まれる水素成分の濃度が低いガス(吸着対象成分の濃度が高いガス)を、オフガスとして、改質器を加熱する加熱バーナに燃焼用燃料として供給するため、水蒸気パージ処理において、水素成分が外部に廃棄されることを抑制できる。
【0023】
また、製品ガスパージ処理においては、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナによる改質器の加熱を継続する状態で、製品ガスタンクからの製品ガスを圧縮機にて改質器に供給し、且つ、改質処理部からの製品ガスを、圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔に供給するものであるから、改質処理部からの製品ガスに含まれる水素成分の濃度が高いガスが製品ガスとして回収され、且つ、改質処理部からの製品ガスに含まれる水素成分の濃度が低いガス(吸着対象成分の濃度が高いガス)を、オフガスとして、改質器を加熱バーナに燃焼用燃料として供給するため、水蒸気パージ処理において、水素成分が外部に廃棄されることを抑制できる。
【0024】
そして、製品ガスパージ処理においては、製品ガスタンクからの製品ガスを、改質処理部における改質器等の内部に充填させるようにしながら、改質処理部からの製品ガスを吸着塔に流動させて、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態にすることができることになるから、その後、待機運転に適切に移行することができる。
【0025】
要するに、本発明の水素製造装置の運転方法の特徴構成によれば、多量の水素成分がパージ運転において外部に廃棄されること抑制でき、しかも、待機運転に適切に移行することができる。
【0026】
本発明の水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成は、前記圧力変動吸着運転が、前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを生成する吸着工程、前記吸着塔の内部ガスを排出する減圧工程、前記吸着塔の前記吸着剤を再生する再生工程、前記吸着塔の内部に前記製品ガスを供給する昇圧工程を含む運転サイクルを、複数の前記吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行わせるものであり、
前記初期運転処理において、前記初期運転処理において、前記圧縮機にて前記原料ガスを供給する供給量に対する前記運転サイクルを行う時間を、前記製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくする点にある。
【0027】
すなわち、圧力変動吸着運転として、吸着工程、再生工程、昇圧工程を含む運転サイクルが、複数の吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行われることになる。
【0028】
そして、運転サイクルを行う時間は、圧縮機にて原料ガスを供給する供給量が多くなるほど短くする関係に定められることになり、製品ガス製造運転においては、吸着工程において吸着剤が吸着対象成分を許容限度まで吸着する時間に応じて定められることになる。
【0029】
これに対して、初期運転処理において、圧縮機にて原料ガスを供給する供給量に対する運転サイクルを行う時間を、製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくするものであるから、例えば、初期運転処理の初期において生成される改質ガスの水素成分の濃度が低いことにより、吸着塔の吸着剤が許容限度を超えて吸着対象成分を吸着することがあっても、運転サイクルを短時間で繰り返すことにより、再生工程の頻度を増加させて、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した適切な状態に迅速に戻すようにして、製品ガス製造運転に迅速に移行させるようにすることができる。
【0030】
要するに、本発明の水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成によれば、製品ガス製造運転により製品ガスを適切に製造する状態に迅速に移行させることができる。
【0031】
本発明の水素製造装置は、水素成分を含む原料ガスを供給する原料ガス供給用の圧縮機、及び、加熱バーナにて改質用温度に加熱された状態で前記原料ガスを水蒸気改質処理して水素成分が多い改質ガスを生成する改質器を備えた改質処理部と、
前記改質ガスから前記水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスを生成しかつ前記吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔を備えた圧力変動吸着部と、
前記製品ガスを回収する製品ガスタンクと、
前記オフガスを燃焼用燃料として前記加熱バーナに供給するオフガス供給路と、
運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行するように構成されたものであって、その特徴構成は、
前記運転制御部が、前記改質処理部から前記圧力変動吸着部へのガス供給ラインを遮断した状態で、前記圧力変動吸着部については、前記吸着塔の前記吸着剤を、前記吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、前記改質処理部については、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記改質処理部に充填した前記製品ガスを、返送ラインを通して前記圧縮機に戻す形態で循環させる待機運転を行い、且つ、
前記待機運転を停止して前記製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から前記原料ガス及び水蒸気を前記改質器に供給して前記改質ガスを生成し、前記改質処理部からの前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを製造し、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された前記製品ガスの前記水素成分の濃度が前記設定値以上になると、前記製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行う点にある。
【0032】
本発明の水素製造装置は、上記した水素製造装置の運転方法の特徴構成と同様な特徴構成を備えるものであるから、上記した水素製造装置の運転方法の特徴構成と同様な作用効果を奏するものである。
【0033】
すなわち、運転制御部が、製品ガス製造運転の開始に備えて待機する待機運転を行い、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際に、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を実行し、その後、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行うことになる。
【0034】
つまり、待機運転が行われることによって、改質処理部については、加熱バーナによる改質器の加熱が継続されているため、直ちに、水蒸気改質処理を開始できる状態にあり、また、圧力変動吸着部については、吸着塔の吸着剤が吸着対象成分を脱着した状態に維持されているため、直ちに、圧力変動吸着運転を開始できる状態にある。
【0035】
そこで、待機運転が行われることに鑑みて、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する初期運転処理を行うようにする。
そして、初期運転処理を行うことによって、製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスを前記製品ガスタンクに回収する前記製品ガス製造運転を行うようにすることになる。
【0036】
このように、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、開始直後から原料ガス及び水蒸気を改質器に供給して改質ガスを生成し、改質処理部からの改質ガスを吸着塔に供給して製品ガスを製造するようにするものであるから、製品ガスの消費を抑制し且つ原料ガスの無駄な消費を抑制しながら製品ガス製造運転を開始できることになる。
また、製品ガス製造運転を開始するまでの時間を短縮させることができる。
【0037】
要するに、本発明の水素製造装置の特徴構成によれば、製品ガス製造運転を開始するまでの時間製品ガスの消費を抑制し且つ原料ガスの無駄な消費を抑制しながら製品ガス製造運転を再開できる。
【0038】
本発明の水素製造装置の更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記製品ガス製造運転を停止する際に、前記加熱バーナにて前記改質器を加熱しかつ前記水蒸気を前記改質器に供給する状態を継続した状態で、前記原料ガスに代えて前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記改質ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する水蒸気パージ処理、及び、前記水蒸気の供給を停止しかつ前記加熱バーナによる前記改質器の加熱を継続する状態で、前記製品ガスタンクからの前記製品ガスを前記圧縮機にて前記改質器に供給し、且つ、前記改質処理部からの前記製品ガスを、前記圧力変動吸着運転を行う複数の前記吸着塔に供給する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行う点にある。
【0039】
本発明の水素製造装置の更なる特徴構成は、上記した水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成と同様な特徴構成を備えるものであるから、上記した水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成と同様な作用効果を奏するものである。
【0040】
すなわち、運転制御部が、製品ガス製造運転を停止する際に、パージ運転として、水蒸気パージ処理及び製品ガスパージ処理を順次行うことになる。
したがって、このパージ運転に続いて、待機運転に移行できることになる。
【0041】
つまり、水蒸気処理においては、改質器等に残存する原料ガスを水蒸気改質処理して改質ガスを生成しながら、生成した改質ガスを、圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔に供給することによって、改質処理部からの改質ガスに含まれる水素成分の濃度が高いガスが製品ガスとして回収され、且つ、改質処理部からの改質ガスに含まれる水素成分の濃度が低いガス(吸着対象成分の濃度が高いガス)を、オフガスとして、改質器を加熱バーナに燃焼用燃料として供給するため、水蒸気パージ処理において、水素成分が外部に廃棄されることを抑制できる。
【0042】
また、製品ガスパージ処理においては、改質処理部からの製品ガスに含まれる水素成分の濃度が高いガスが製品ガスとして回収され、且つ、改質処理部からの製品ガスに含まれる水素成分の濃度が低いガス(吸着対象成分の濃度が高いガス)を、オフガスとして、改質器を加熱バーナに燃焼用燃料として供給するため、水蒸気パージ処理において、水素成分が外部に廃棄されることを抑制できる。
【0043】
そして、製品ガスパージ処理においては、製品ガスタンクからの製品ガスを、改質処理部における改質器等の内部に充填させるようにしながら、改質処理部からの製品ガスを吸着塔に流動させて、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態にすることができることになるから、その後、待機運転に適切に移行することができる。
【0044】
要するに、本発明の水素製造装置の更なる特徴構成によれば、多量の水素成分がパージ運転において外部に廃棄されること抑制でき、しかも、待機運転に適切に移行することができる。
【0045】
本発明の水素製造装置の更なる特徴構成は、前記圧力変動吸着運転が、前記改質ガスを前記吸着塔に供給して前記製品ガスを生成する吸着工程、前記吸着塔の内部ガスを排出する減圧工程、前記吸着塔の前記吸着剤を再生する再生工程、前記吸着塔の内部に前記製品ガスを供給する昇圧工程を含む運転サイクルを、複数の前記吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行わせるものであり、
前記初期運転処理において、前記圧縮機にて前記原料ガスを供給する供給量に対する前記運転サイクルを行う時間を、前記製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくする点にある。
【0046】
本発明の水素製造装置の更なる特徴構成は、上記した水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成と同様な特徴構成を備えるものであるから、上記した水素製造装置の運転方法の更なる特徴構成と同様な作用効果を奏するものである。
【0047】
つまり、圧力変動吸着運転として、吸着工程、再生工程、昇圧工程を含む運転サイクルが、複数の吸着塔の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の前記吸着塔の夫々において繰り返し行われることになる。
【0048】
そして、運転サイクルを行う時間は、圧縮機にて原料ガスを供給する供給量が多くなるほど短くする関係に定められることになり、製品ガス製造運転においては、吸着工程において吸着剤が吸着対象成分を許容限度まで吸着する時間に応じて定められることになる。
【0049】
これに対して、初期運転処理において、圧縮機にて原料ガスを供給する供給量に対する運転サイクルを行う時間を、製品ガス製造運転を行うときの時間よりも少なくするものであるから、例えば、初期運転処理の初期において生成される改質ガスの水素成分の濃度が低いことにより、吸着塔の吸着剤が許容限度を超えて吸着対象成分を吸着することがあっても、運転サイクルを短時間で繰り返すことにより、再生工程の頻度を増加させて、吸着塔の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した適切な状態に迅速に戻すようにして、製品ガス製造運転に迅速に移行させるようにすることができる。
【0050】
要するに、本発明の水素製造装置の更なる特徴構成によれば、製品ガス製造運転により製品ガスを適切に製造する状態に迅速に移行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】水素製造装置を示す全体図である。
図2】圧力変動吸着部を示す概略図である。
図3】圧力変動吸着部の運転サイクルを示す図である。
図4】圧力変動吸着部の運転状態を示す説明図である。
図5】圧力変動吸着部の運転状態を示す説明図である。
図6】圧力変動吸着部の運転状態を示す説明図である。
図7】水蒸気パージ処理を示す図である。
図8】製品ガスパージ処理を示す図である。
図9】待機運転を示す図である。
図10】初期運転処理の昇圧処理を示す図である。
図11】初期運転処理の純度出し処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(水素製造装置の全体構成)
図1に示すように、水素製造装置には、天然ガスやナフサ等の炭化水素系ガスである原料ガスGを水素成分が多い改質ガスKに改質する改質処理部AKと、当該改質処理部AKからの改質ガスKから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスHを生成する吸着塔1を備えた圧力変動吸着部BSと、当該圧力変動吸着部BSにて生成された製品ガスHを回収する製品ガスタンクUと、圧力変動吸着部BSから排出されるオフガスを回収するオフガスタンクTと、改質処理部AK及び圧力変動吸着部BSの運転を制御する運転制御部Mが設けられている。
【0053】
原料ガスGは、水素成分以外に、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、及び、窒素を含むものであり、水素以外の吸着対象成分として、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、及び、窒素が、吸着塔1の吸着剤に吸着されることになる。
【0054】
(改質処理部の詳細)
改質処理部AKには、原料ガスGに水蒸気を混合する水蒸気混合部J、原料ガスGを水蒸気改質処理により水素成分が多い改質ガスKに改質する改質器としての改質反応管2、及び、当該改質反応管2を改質反応用温度(例えば、700℃)に加熱する加熱バーナNが備えられている。
【0055】
そして、オフガスタンクTに貯留されたオフガスを加熱バーナNに供給するオフガス供給路4が設けられ、また、送風機等の空気供給部5からの燃焼用空気を加熱バーナNに供給する空気供給路5aが設けられている。
また、原料ガスGを燃料ガスとして加熱バーナNに供給する補助燃料ガス路3が設けられている。
尚、オフガス供給路4には、当該オフガス供給路4を開閉するオフガス開閉弁4Aが設けられ、補助燃料ガス路3には、当該補助燃料ガス路3を開閉する燃料ガス弁3Aが設けられている。
【0056】
ガス導入ライン7Aを通して導入される原料ガスGを、送出ライン7Dを通して脱硫器6に送り出す圧縮機7が設けられ、脱硫器6にて脱硫処理した原料ガスGを水混合部8に搬送する混合部搬送ライン9が設けられている。
水混合部8は、脱硫処理後の原料ガスGと水供給部10から供給される水(純水)とを混合するように構成されている。
尚、ガス導入ライン7Aに対する原料ガスGの供給を断続する原料ガス供給弁Gaが設けられている。
【0057】
水混合部8にて水が混合された原料ガスGを蒸発用熱交換部11に向けて搬送する蒸発用搬送ライン12が設けられ、原料ガスGに混合された水が蒸発用熱交換部11にて加熱されて水蒸気となるように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、水蒸気混合部Jが、水混合部8及び蒸発用熱交換部11を主要部として構成される。
【0058】
そして、蒸発用熱交換部11にて水蒸気を含む状態(水蒸気が混合された状態)となるように加熱された原料ガスGが、反応管搬送ライン13にて改質反応管2に搬送されて、水蒸気改質処理により水素成分が多い改質ガスKに改質されるように構成されている。
つまり、改質反応管2の内部には、改質触媒が充填され、上述の如く、加熱バーナNにより改質反応用温度(例えば、700℃)に加熱されることにより、水蒸気改質処理により水素成分が多い改質ガスKに改質するように構成されている。
【0059】
ちなみに、本実施形態においては、加熱バーナNの燃焼ガスは、改質反応管2を加熱した後に、蒸発用熱交換部11に向けて流動して、蒸発用熱交換部11を加熱した後に、排ガス路14を通して排出されるように構成されている。
【0060】
改質反応管2からの改質ガスKをCO変成器15に搬送する変成器搬送ライン16が設けられ、改質ガスKに含まれている一酸化炭素がCO変成器15にて二酸化炭素に変成処理されるように構成されている。
そして、CO変成器15にて変成処理された改質ガスKが、改質ガス供給ライン17を通して圧力変動吸着部BSに供給されるように構成されている。
改質ガス供給ライン17には、余分な水分を改質ガスKから除去する水分離器18が設けられ、また、改質ガス供給ライン17における水分離器18の下流側箇所には、供給断続弁17Aが設けられている。
【0061】
また、水分離器18にて水分が除去された改質ガスKを、脱硫器6における脱硫処理用の水素ガスとして供給すべく、改質ガス供給ライン17を流動する改質ガスKを圧縮機7の上流側箇所、つまり、ガス導入ライン7Aに導くリサイクルガスライン19が設けられている。当該リサイクルガスライン19には、ライン開閉弁19Aが設けられている。
また、製品ガスタンクUとリサイクルガスライン19の途中箇所を接続する連通ラインLが設けられ、当該連通ラインLを開閉する連通開閉弁La、及び、当該連通ラインLの流路抵抗(開度)を調節する連通抵抗調節弁Lbが設けられている。
尚、連通抵抗調節弁Lbは、例えば、ニードルバルブを用いて構成される。
【0062】
(圧力変動吸着部の詳細)
本実施形態の圧力変動吸着部BSは、吸着塔1として、第1吸着塔A、第2吸着塔B、第3吸着塔Cを備えている。
図2に示すように、3つの吸着塔1の夫々の下部が、改質ガス供給ライン17に対して、第1供給弁20aを備えた第1供給用分岐路21a、第2供給弁20bを備えた第2供給用分岐路21b、第3供給弁20cを備えた第3供給用分岐路21cを介して接続されている。
【0063】
各吸着塔1には、水素成分以外の吸着対象成分を改質ガスKから吸着する吸着剤が装填充填されている。
尚、水素成分以外の吸着対象成分とは、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、窒素等であり、一酸化炭素及びメタンは、可燃成分である。
【0064】
また、3つの吸着塔1の夫々の上部が、製品タンクUに接続された製品ガス排出ライン22に対して、第1排出弁23aを備えた第1排出用分岐路22a、第2排出弁23bを備えた第2排出用分岐路22b、第3排出弁23cを備えた第3排出用分岐路22cを介して接続されている。
【0065】
図1に示すように、製品ガス排出ライン22には、製品ガス放出ラインQが分岐され、当該製品ガス放出ラインQを開閉する製品ガス放出弁Qaが設けられ、また、製品ガス排出ライン22における製品ガス放出ラインQの分岐箇所よりも下流側部分には、製品ガス排出ライン22を開閉する製品ガス弁22Aが設けられている。
尚、図2においては、製品ガス放出ラインQ、製品ガス放出弁Qa、及び、製品ガス弁22Aの記載を省略する。
【0066】
また、図2に示すように、3つの吸着塔1の夫々の上部が、均圧ライン24に対して、第1均圧弁25aを備えた第1均圧用分岐路24a、第2均圧弁25bを備えた第2均圧用分岐路24b、第3均圧弁25cを備えた第3均圧用分岐路24cを介して接続されている。
また、製品ガス排出ライン22を流動する製品ガスHを均圧ライン24に流動させる洗浄ライン26が設けられ、その洗浄ライン26には、洗浄弁27が配設されている。
【0067】
さらに、図2に示すように、3つの吸着塔1の夫々の下部が、オフガス排出ライン28に対して、第1オフガス弁29aを備えた第1オフガス用分岐路28a、第2オフガス弁29bを備えた第2オフガス用分岐路28b、第3オフガス弁29cを備えた第3オフガス用分岐路28cを介して接続され、オフガス排出ライン28が、オフガスタンクTに接続されている。
【0068】
圧力変動吸着部BSは、運転制御部Mによる運転制御により、3つの吸着塔1の夫々において、図3に示すように、吸着工程、均圧排出工程、減圧工程、再生工程としての洗浄工程、均圧受入工程、昇圧工程からなる運転サイクルを、運転位相を異ならせた状態で、繰り返し行うことによって、改質ガスKから水素ガス成分を高純度で含む製品ガスHを生成するように構成されている。
【0069】
つまり、運転サイクルとして、第1吸着塔Aが吸着工程を行う第1単位周期、第2吸着塔Bが吸着工程を行う第2単位周期、及び、第3吸着塔Cが吸着工程を行う第3単位周期を繰り返し実行するように構成されている。
【0070】
吸着工程は、改質ガスKを吸着塔1に供給して製品ガスHを生成する工程である。
均圧排出工程は、吸着工程を終了した吸着塔1の内部ガスを均圧ガスとして排出する工程である。
減圧工程は、均圧排出工程を終了した吸着塔1の内部ガスをオフガス排出ライン28に排出する工程である。
洗浄工程は、減圧工程を終了した吸着塔1の内部に製品ガスHを流動させて、吸着対象成分を脱着させた状態に吸着剤を再生する工程であり、洗浄ガスとして、吸着塔1を流動した製品ガスHがオフガス排出ライン28に排出される。
均圧受入工程は、洗浄工程を終了した吸着塔1に対して均圧排出工程にて排出される均圧ガスを受入れる工程である。
昇圧工程は、均圧受入工程を終了した吸着塔1の内部に製品ガスHを供給して昇圧する工程である。
【0071】
第1単位周期、第2単位周期、及び、第3単位周期は同様であるので、第1単位周期を代表にして、図4図6に基づいて説明を加える。
尚、図4図6においては、各種の流路部分のうちで実際にガスが流動している流路部分を太線で記載し、ガスが流動していない流路部分を細線で記載する。
したがって、太線で記載した流路部分に対応する弁類は開き状態にあり、細線で記載した流路部分に対応する弁類は閉じ状態にあることが明らかであるため、以下の説明においては、各流路部分に設けた弁類の開閉状態の説明は、代表的な弁類についての開閉のみを説明する。
【0072】
図4図6に示すように、第1吸着塔Aが吸着工程を行う第1単位周期においては、第1供給弁20a及び第1排出弁23aが開弁されて、改質ガスKに含まれる吸着対象成分を吸着する吸着工程が実行され、第1吸着塔Aからは製品ガスHが製品ガス排出ライン22に排出される。
【0073】
図4に示すように、第1単位周期の初期においては、第2吸着塔Bの第2均圧弁25b及び第3吸着塔Cの第3均圧弁25cが開弁されて、第3吸着塔Cの内部ガスを均圧ガスとして第2吸着塔Bに供給する均圧処理が行われることになる。
この均圧処理は、第3吸着塔Cにおいては、均圧排出工程に相当し、第2吸着塔Bにおいては、均圧受入工程に相当する。
【0074】
図5に示すように、第1単位周期の中期においては、第2吸着塔Bについては、第2均圧弁25bを閉じて、第2排出弁23bを開弁することにより、第1吸着塔Aから排出される製品ガスHを導入する昇圧工程が実行され、この昇圧工程が、第1単位周期の後期においても実行される(図6参照)。
【0075】
図5に示すように、第1単位周期の中期においては、第3吸着塔Cについては、第3均圧弁25cを閉じて、第3オフガス弁29cを開弁することにより、第3吸着塔Cの内部ガスをオフガス排出ライン28に排出する減圧工程が実行される。
その後、図6に示すように、第1単位周期の後期においては、第3オフガス弁29cを開弁したまま、第3均圧弁25c及び洗浄弁27を開弁して、洗浄ライン26から製品ガスHを流動させる洗浄工程が実行される。
【0076】
ちなみに、減圧工程及び洗浄工程においてオフガス排出ライン28に排出されたオフガスは、オフガスタンクTに回収された後、オフガス供給路4を通して、改質処理部AKの加熱バーナNに供給されることになる。
尚、オフガスには、可燃成分として、一酸化炭素、メタン及び水素が含まれることになる。
【0077】
以上の如く、圧力変動吸着部BSは、複数(3つ)の吸着塔1を用いて、改質ガスKから水素成分以外の吸着対象成分を吸着剤に吸着して製品ガスHを生成しかつ吸着対象成分をオフガスとして排出する圧力変動吸着運転を行うことになる。
そして、圧力変動吸着運転として、改質ガスKを吸着塔1に供給して製品ガスHを生成する吸着工程、吸着塔1の内部ガスを排出する減圧工程、吸着塔1の吸着剤を再生する再生工程としての洗浄工程、吸着塔1の内部に製品ガスHを供給する昇圧工程を含む運転サイクルを、複数の吸着塔1の運転位相を互いに異ならせた状態で、複数の吸着塔の1夫々において繰り返し行わせる運転が実行されるように構成されている。
【0078】
(運転制御の概要)
運転制御部Mが、原料ガスG及び水蒸気を改質反応管2に供給して改質ガスKを生成し、改質処理部AKからの改質ガスKを吸着塔1に供給して製品ガスを製造する製品ガス製造運転を実行することになる。
当該製品ガス製造運転においては、改質反応管2が加熱バーナNにて加熱され、且つ、圧力変動吸着部BSが圧力変動吸着運転を行うことになる。
【0079】
そして、運転制御部Mが、製品ガス製造運転を停止する際には、水蒸気パージ処理、及び、製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行い、その後、待機運転を行うことになる。
また、運転制御部Mが、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際には、初期運転処理を実行し、その後、製品ガス製造運転を開始するように構成されている。
【0080】
次に、図7図11に基づいて、水蒸気パージ処理、製品ガスパージ処理、待機運転、及び、初期運転処理について説明するが、図7図11においては、ガスが流動する流路を太線にて示し、ガスが流動しない流路を細線にて示す。したがって、ガスが流動する流路に関する弁類が開状態で、ガスが流動しない流路に関する弁類が閉じ状態であることが明らかであるため、弁類の開閉制御の説明は必要な部分についてのみ説明する。
【0081】
(水蒸気バージ処理の詳細)
水蒸気パージ処理は、図7に示すように、加熱バーナNにて改質反応管2を加熱しかつ水蒸気を改質反応管2に供給する状態を継続した状態で、原料ガスGに代えて製品ガスタンクUからの製品ガスHを圧縮機7にて改質反応管2に供給し、且つ、改質処理部AKからの改質ガスKを、圧力変動吸着運転を行う複数の吸着塔1に供給する処理である。
この水蒸気パージ処理は、圧力変動吸着部BSが第1単位周期、第2単位周期及び第3単位周期を含む運転サイクルを少なくとも1回行う程度継続される。
【0082】
説明を加えると、製品ガス製造運転を停止して水蒸気パージ処理を行う際には、加熱バーナNの燃焼が継続され、水供給部10からの水(純水)の供給が継続されて、水蒸気混合部Jからの水蒸気の供給が継続され、また、圧力変動吸着部BSの圧力変動吸着運転が継続される。
ちなみに、加熱バーナNには、オフガスが燃料ガスとして供給されることになるが、オフガスの量が不足する場合には、燃料ガス弁3Aを開いて、原料ガスGを燃料ガスとして供給することになる。
【0083】
そして、原料ガス供給弁Gaを閉じて原料ガスGの供給を停止した状態において、連通開閉弁Laを開いて、製品ガスタンクUからの製品ガスを、連通ラインL及びリサイクルガスライン19の一部を通して、ガス導入ライン7Aに流動させることになる。
ちなみに、連通抵抗調節弁Lbの抵抗により、連通ラインLを通して流動する製品ガスHの圧力が低下されて、圧縮機7の入口側の圧力が、例えば、0.25MPaG程度になり、かつ、圧縮機7の出口側の圧力が、例えば、0.75MPaG程度になる。
【0084】
したがって、水蒸気パージ処理においては、脱硫器6や改質反応管2等に残存する原料ガスGを水蒸気改質処理して改質ガスKを生成し、生成した改質ガスKを含む製品ガスHを、製品ガス製造運転と同様に、圧力変動吸着部BSに供給して、複数の吸着塔1にて圧力変動吸着運転を行ないながら、製品ガスHを生成する処理が行われることになる。
尚、図7においては、第1吸着塔Aが吸着工程を行い、第3吸着塔Cが減圧工程を行う状態を示す。
【0085】
(製品ガスパージ処理の詳細)
製品ガスパージ処理は、図8に示すように、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナNによる改質反応管2の加熱を継続する状態で、製品ガスタンクUからの製品ガスHを圧縮機7にて改質反応管2に供給し、且つ、改質処理部AKからの製品ガスHを吸着塔1に供給する処理である。
この製品ガスパージ処理は、圧力変動吸着部BSが第1単位周期、第2単位周期及び第3単位周期を含む運転サイクルを少なくとも1回以上行う程度継続される。
【0086】
説明を加えると、水蒸気パージ処理を停止して製品ガスパージ処理を行う際には、加熱バーナNの燃焼が継続され、水供給部10からの水(純水)の供給を停止して、水蒸気混合部Jからの水蒸気の供給が停止され、また、圧力変動吸着部BSの圧力変動吸着運転が継続される。
ちなみに、加熱バーナNには、燃料ガス弁3Aを開いて、原料ガス供給弁Gaを開いて原料ガスGを燃料ガスとして供給することになる。
【0087】
そして、水蒸気パージ処理に続いて、原料ガス供給弁Gaを閉じて原料ガスGの供給を停止し、且つ、連通開閉弁Laを開いて、製品ガスタンクUからの製品ガスを、連通ラインL及びリサイクルガスライン19の一部を通して、ガス導入ライン7Aに流動させることになる。
ちなみに、連通抵抗調節弁Lbの抵抗により、連通ラインLを通して流動する製品ガスHの圧力が低下されて、圧縮機7の入口側の圧力が、例えば、0.25MPaG程度になり、かつ、圧縮機7の出口側の圧力が、例えば、0.75MPaG程度になる。
【0088】
したがって、製品ガスパージ処理においては、脱硫器6、改質反応管2、CO変成器15等を通して製品ガスHを流動させ、改質処理部AKからの製品ガスHを、製品ガス製造運転と同様に、圧力変動吸着部BSに供給して、複数の吸着塔1にて圧力変動吸着運転を行ないながら、製品ガスHを生成する処理が行われることになる。
尚、図8においては、第1吸着塔Aが吸着工程を行い、第3吸着塔Cが減圧工程を行う状態を示す。
【0089】
そして、製品ガスパージ処理を実行することにより、製品ガスHが改質処理部AKに充填され、且つ、改質処理部AKが水蒸気改質処理を行う状態と同様な高温状態に維持されることになり、また、圧力変動吸着部BSの複数の吸着塔1の吸着剤が、製品ガスHに対して圧力変動吸着運転を行うことによって、吸着剤が吸着対象成分を吸着しない脱着状態に再生されることになる。
【0090】
(待機運転の詳細)
待機運転は、図9に示すように、改質処理部AKから圧力変動吸着部BSへのガス供給ラインとしての改質ガス供給ライン17を遮断した状態で、圧力変動吸着部BSについては、吸着塔1の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、改質処理部AKについては、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナNによる改質反応管2の加熱を継続する状態で、改質処理部AKに充填した製品ガスHを、当該改質処理部AKから排出されると、返送ラインとしてのリサイクルガスライン19を通して圧縮機7に戻す形態で循環させる運転である。
【0091】
説明を加えると、製品ガスパージ処理を停止して待機運転を行う際には、加熱バーナNの燃焼が継続され、水供給部10からの水(純水)の供給を停止して、水蒸気混合部Jからの水蒸気の供給が停止され、また、改質ガス供給ライン17の供給断続弁17Aを閉じて、改質ガス供給ライン17と3つの吸着塔1との連通が遮断される。
ちなみに、加熱バーナNには、燃料ガス弁3Aを開いて、原料ガス供給弁Gaを開いて原料ガスGを燃料ガスとして供給することになる。
【0092】
そして、改質ガス供給ライン17と3つの吸着塔1との連通を遮断することにより、改質処理部AKに充填されている製品ガスHが、リサイクルガスライン19を通して圧縮機7に戻る形態で循環されることになる。
尚、この循環状態においては、水蒸気パージ処理や製品ガスパージ処理よりも、流路抵抗が少ない状態で、改質処理部AKに充填されている製品ガスHが循環することになるので、圧縮機7の出口側の圧力が、0.75MPaGよりも低い圧力になる。
【0093】
さらに、圧力変動吸着部BSにおける第1供給弁20a、第2供給弁20b、及び、第3供給弁20cの夫々を閉じて、圧力変動吸着部BSの圧力変動吸着運転が停止される。
また、圧力変動吸着部BSの他の弁類、つまり、第1排出弁23a、第2排出弁23b、第3排出弁23c、第1均圧弁25a、第2均圧弁25b、第3均圧弁25c、第1オフガス弁29a、第2オフガス弁29b、第3オフガス弁29cを全て閉じ状態にして、圧力変動吸着部BSについては、吸着塔1の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持させることになる。
【0094】
したがって、待機運転においては、改質処理部AKに充填された製品ガスHが、脱硫器6、改質反応管2、CO変成器15等を通して循環流動され、且つ、改質処理部AKが水蒸気改質処理を行う状態と同様な高温状態に維持されることになる。
また、圧力変動吸着部BSについては、吸着塔1の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持されることになる。
【0095】
(初期運転処理の詳細)
初期運転処理は、待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する際の処理であって、開始直後から原料ガスG及び水蒸気を改質反応管2に供給して改質ガスKを生成し、改質処理部AKからの改質ガスKを吸着塔1に供給して製品ガスHを製造し、当該製造された製品ガスHの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスHを廃棄する処理である。
そして、初期運転処理を行うことにより、その後、当該製造された製品ガスHの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスHを製品ガスタンクUに回収する製品ガス製造運転に移行することになる。
【0096】
本実施形態においては、初期運転処理として、先ず、改質処理部AKの内部圧力や圧力変動吸着部BSにおける最初に改質ガスKを供給する吸着塔1を昇圧する昇圧処理が実行され、その後、圧力変動吸着部BSにおいて圧力変動運転を行いながら製品ガスHを製造し、当該製造された製品ガスHの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスHを廃棄する純度出し処理が実行されるように構成されている。
【0097】
説明を加えると、待機運転を停止して昇圧処理を行う際には、図10に示すように、加熱バーナNの燃焼が継続され、水供給部10からの水(純水)の供給を開始して、水蒸気混合部Jからの水蒸気の供給が開始される。
また、改質ガス供給ライン17の供給断続弁17が開かれることになる。
ちなみに、加熱バーナNには、燃料ガス弁3Aを開いて、原料ガスGを燃料ガスとして供給することになる。
【0098】
そして、圧力変動吸着部BSの圧力変動吸着運転が停止されるものの、圧力変動吸着部BSにおける最初に改質ガスKを供給する吸着塔1、例えば、第1吸着塔Aにおける第1供給弁20aを開きかつ第1排出弁23aを閉じるようにする。
また、ライン開閉弁19Aにて、リサイクルガスライン19を閉じるようにする。ちなみに、リサイクルガスライン19を閉じることに代えて、例えば、開閉弁19Aを半開状態にする等により、リサイクルガスライン19の流路抵抗を増大させてもよい。
【0099】
したがって、改質処理部AKにおいて改質ガスKが生成され、その改質ガスKが、圧力変動吸着部BSにおける最初に改質ガスKを供給する吸着塔1、例えば、第1吸着塔Aに供給されることになり、且つ、当該第1吸着塔Aの第1排出弁23aが閉じられているので、改質処理部AKの内部圧及び最初に改質ガスKを供給される第1吸着塔Aの内部圧が、設定圧(例えば、0.75MPaG)に昇圧されることになる。
【0100】
改質処理部AKの内部圧及び最初に改質ガスKを供給される第1吸着塔Aの内部圧が、設定圧に昇圧されると、図11に示すように、純度出し処理が実行されることになる。
説明を加えると、純度出し処理を行う際には、製品ガス弁22Aを閉じ、かつ、製品ガス放出弁Qaを開いた状態で、圧力変動吸着部BSの圧力変動吸着運転が開始されることになる。
また、ライン開閉弁19Aを開いて、リサイクルガスライン19を開くようにする。
【0101】
したがって、改質処理部AKから圧力変動吸着部BSに改質ガスKが供給されると、圧力変動吸着運転により製品ガスHが製造され、製造された製品ガスHの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスHが製品ガス放出ラインQを通して廃棄されることになる。
【0102】
そして、当該製造された製品ガスHの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガス放出弁Qaを閉じて、製品ガス弁22Aを開いた状態にすることにより、製品ガスを製品ガスタンクUに回収する製品ガス製造運転に移行することになる。
【0103】
本実施形態においては、初期運転処理において、圧縮機7にて原料ガスGを供給する供給量を、製品ガス製造運転における最大供給量の40%とし、しかも、圧縮機7にて原料ガスGを供給する供給量に対する運転サイクルを行う時間を、製品ガス製造運転を行うときの時間よりも、例えば、20%程度少なくするように構成されている。
【0104】
ちなみに、図示は省略するが、吸着塔1の内部圧を検出する圧力センサが設けられて、昇圧処理において、吸着塔1の内部圧が設定圧(例えば、0.75MPaG)に昇圧された状態であることが検出されるように構成されている。
また、製品ガス排出ライン22における製品ガス放出ラインQの分岐箇所よりも上流側部分に、製品ガスHの水素成分の濃度を検出する濃度センサが設けられて、純度出し処理において、製品ガスHの水素成分の濃度が設定値以上であるか否かが検出されるように構成されている。
【0105】
さらに、改質反応管2の内部には、改質触媒の温度を検出する温度センサが設けられており、その検出温度が改質反応用温度(例えば、700℃)になるように、加熱バーナNの燃焼量が制御されることになる。
つまり、オフガス供給路4を通して供給される燃料ガスとしのオフガスの供給量や補助燃料ガス路3を通して供給される燃料ガスとしての原料ガスGの供給量を制御して、加熱バーナNの燃焼量が制御されることになり、燃料ガス供給量に合わせて、空気供給路5aを通して供給される空気量が調整されることになる。
【0106】
(本発明構成と従来構成との対比)
上記実施形態に記載した本発明構成と下記の従来構成とを対比すると、本発明構成は、停止運転時及び起動運転時に消費する原料ガスGの消費量及び製品ガスHの消費量を削減することができる。
【0107】
すなわち、従来構成は次の通りである。
製品ガス製造運転を停止する停止運転時には、先ず、改質処理部AKから圧力変動吸着部BSへの改質ガス供給ライン17を遮断した状態で、加熱バーナNにて改質反応管2を加熱しかつ水蒸気を改質反応管2に供給する状態を継続した状態で、原料ガスGに代えて製品ガスタンクUからの製品ガスHを圧縮機7にて脱硫器6を通して改質反応管2に供給し、且つ、改質処理部AKからの改質ガスKを、外部に廃棄する水蒸気パージ処理、及び、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナNによる改質反応管2の加熱を継続する状態で、製品ガスタンクUからの製品ガスHを圧縮機7にて脱硫器6を通して改質反応管2に供給し、且つ、改質処理部AKからの製品ガスを、外部に廃棄する製品ガスパージ処理を順次行うパージ運転を行う。
【0108】
その後、改質処理部AKから圧力変動吸着部BSへの改質ガス供給ライン17を遮断した状態で、圧力変動吸着部BSについては、吸着塔1の吸着剤を、吸着対象成分を脱着した状態に維持させ、且つ、改質処理部AKについては、水蒸気の供給を停止しかつ加熱バーナNによる改質反応器2の加熱を継続する状態で、改質処理部AKに充填した製品ガスHを、リサイクルガスライン19を通して圧縮機7に戻す形態で循環させる待機運転を行う。
【0109】
待機運転を停止して製品ガス製造運転を開始する起動運転時には、製品ガスタンクUからの製品ガスHを圧縮機7にて供給して昇圧する昇圧処理を行い、昇圧処理が終了すると、製品ガスHに代えて原料ガスGを圧縮機7にて供給する原料導入処理を行い、当該原料導入処理により改質ガスKが適正に生成される状態になると、圧力変動吸着部BSへの改質ガスの供給を開始して、圧力変動吸着運転により製品ガスを製造し、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値未満のときには、当該製品ガスを廃棄する純度出し処理を実行し、その後、当該製造された製品ガスの水素成分の濃度が設定値以上になると、製品ガスHを製品ガスタンクUに回収する製品ガス製造運転を行う。
【0110】
停止運転時において、従来構成では、原料ガスGを、例えば、7Nm、製品ガスHを、例えば、21Nm消費するのに対して、本発明構成では、原料ガスGの消費量が零となり、製品ガスHを、例えば、3Nm消費することになり、原料ガスGの消費量及び製品ガスHの消費量を削減することができる。
【0111】
起動運転時において、従来構成では、原料ガスGを、例えば、18Nm、製品ガスHを、例えば、19Nm消費するのに対して、本発明構成では、原料ガスGを、例えば、13Nm消費し、製品ガスの消費量が零となり、原料ガスGの消費量及び製品ガスHの消費量を削減することができる。
【0112】
〔別実施形態〕
次に、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態においては、圧力変動吸着部BSとして、3つの吸着塔1を備えるものを例示したが、本発明は、圧力変動吸着部BSを、2つ又は4つ以上の吸着塔1を備える形態に構成する場合にも適用できるものである。
【0113】
(2)上記実施形態では、再生工程として洗浄工程を行う形態に構成した圧力変動吸着部BSを例示したが、本発明は、圧力変動吸着部BSが、洗浄工程に代えて、真空ポンプにて吸着塔1の内部を吸引する吸引工程を再生工程として行う場合にも適用できるものである。
【0114】
(3)上記実施形態においては、水蒸気混合部Jが、原料ガスGに水を混合させた後に、混合させた水を蒸発用熱交換部11にて蒸発させるように構成される場合を例示したが、水蒸気混合部Jとしては、予め生成した水蒸気を原料ガスGに混合させる形態に構成して実施してもよい。
【0115】
(4)上記実施形態では、初期運転処理の昇圧処理において、改質処理部AKからの改質ガスKのみにて昇圧させる場合を例示したが、例えば、改質ガスKを最初に供給する吸着塔1に対して製品ガスHを供給しながら昇圧させる等、初期運転処理の具体構成は種々変更できる。
【0116】
(5)上記実施形態では、改質ガス供給ライン17に供給断続弁17Aを設けるようにしたが、圧力変動吸着部BSにおける第1供給弁20a、第2供給弁20b、及び、第3供給弁20cの夫々を閉じることによって、改質ガス供給ライン17と吸着塔1との連通を断続することにより、供給断続弁17Aを省略する形態で実施してもよい。
【0117】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 吸着塔
2 改質器
4 オフガス供給路
7 圧縮機
17 ガス供給ライン
19 返送ライン
A 改質処理部
B 圧力変動吸着部
G 原料ガス
H 製品ガス
K 改質ガス
M 運転制御部
N 加熱バーナ
U 製品ガスタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11