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特許7174498電気化学素子ユニット、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池ユニットおよび固体酸化物形電解セルユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電気化学素子ユニット、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池ユニットおよび固体酸化物形電解セルユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1286 20160101AFI20221110BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20221110BHJP
   H01M 8/2418 20160101ALI20221110BHJP
   H01M 8/2428 20160101ALI20221110BHJP
   H01M 8/2432 20160101ALI20221110BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20221110BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221110BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221110BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221110BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20221110BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20221110BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20221110BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20221110BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALN20221110BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221110BHJP
【FI】
H01M8/1286
H01M8/1226
H01M8/2418
H01M8/2428
H01M8/2432
H01M8/0258
H01M8/00 Z
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/19
C25B9/60
C25B9/63
C25B9/77
H01M8/0612
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021190502
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2018506007の分割
【原出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2022028859
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2016056239
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】越後 満秋
(72)【発明者】
【氏名】大西 久男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 修
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8546041(US,B2)
【文献】特開2004-303508(JP,A)
【文献】特開2005-158297(JP,A)
【文献】特開2003-323901(JP,A)
【文献】特開2013-077450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/12
H01M 8/02
C25B 1/00
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの金属基板と、接続部材とを少なくとも有する電気化学素子ユニットであって、
前記金属基板の表側に複数の電気化学反応部を有し、
前記金属基板は、前記金属基板の表側と裏側との間での気体の通流を許容する気体通流許容領域を有し、
前記電気化学反応部は、電極層と、電解質層と、対極電極層とを少なくとも有し、前記金属基板の表側に配置されており、
少なくとも前記電極層と前記対極電極層との間に、前記電解質層が配置されており、
前記接続部材が、その表側の面に形成される第1気体流路を有し、
前記電極層前記接続部材の第1気体流路と前記気体通流許容領域との間を通流する気体と接触し、
前記対極電極層が、前記電極層が接触する気体とは異なる気体と少なくとも接触するように構成される電気化学素子ユニット
【請求項2】
前記接続部材が、気体透過性を有さない請求項1に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項3】
前記接続部材が、導電性を有する請求項1又は2に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項4】
前記金属基板は、互いに離間した複数の前記気体通流許容領域を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット
【請求項5】
前記電極層が、少なくとも個々の前記気体通流許容領域を覆って配置される請求項4に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項6】
前記電解質層が、少なくとも個々の前記気体通流許容領域もしくは前記気体通流許容領域に設けられた前記電極層を覆って配置される請求項4又は5に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項7】
前記電解質層は、ガスタイトな層である請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項8】
前記電解質層は、前記電極層が接触する気体と前記対極電極層が接触する気体とを区分する請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項9】
前記複数の電気化学反応部が、互いに離間して形成される請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット。
【請求項10】
前記金属基板の表側における、少なくとも前記金属基板と前記電極層とが接触する領域に、金属酸化物被膜が形成されている請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット
【請求項11】
前記金属基板の表側における、少なくとも前記電極層、前記電解質層及び前記対極電極層のいずれにも覆われていない領域に、金属酸化物被膜が形成されている請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット
【請求項12】
前記金属酸化物被膜が、少なくとも前記金属基板に含まれる金属元素を含有する酸化物である請求項10または11に記載の電気化学素子ユニット
【請求項13】
複数の前記電気化学反応部が電気的に並列に接続されている請求項1~12のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニット複数集合した状態で配置される電気化学モジュール。
【請求項15】
前記接続部材は、その裏側の面に形成される第2気体流路を有し、
一つの前記電気化学素子ユニットの前記第2気体流路を通流する気体が、隣接する他の一つの前記電気化学素子ユニットの前記対極電極層と接触するように配置される請求項14に記載の電気化学モジュール。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニットもしくは請求項14または15に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子ユニットまたは前記電気化学モジュールに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部を有する電気化学装置。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニットもしくは請求項14または15に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子ユニットまたは前記電気化学モジュールから電力を取り出すインバータを有する電気化学装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するエネルギーシステム。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニットを備え、前記電気化学素子ユニットで発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池ユニット。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学素子ユニットを備え、前記電気化学素子ユニットで電解反応を生じさせる固体酸化物形電解セルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子ユニット、電気化学モジュール、電気化学装置エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池ユニットおよび固体酸化物形電解セルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体酸化物形燃料電池(以下「SOFC」と記す。)は、主としてセラミックス材料を支持基板とする構造にて開発が進められている。そしてSOFCの性能を向上させるために、一つの支持基板の上に複数の発電体を並べて配置したSOFCの開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、例えば、セラミックスであるCSZ(カルシア安定化ジルコニア)の多孔質材料からなる平板状の焼成体を支持基板とし、その一つの支持基板の上に、燃料極・固体電解質膜・反応防止膜・空気極から成る積層体(発電体)が複数配置された「横縞型」と呼ばれるSOFCが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-38696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高価で割れやすいセラミックスを支持基板とする場合、ある程度の強度をもたせるためには、支持基板の厚さをかなり厚くする必要が生じるため、高コストになり、サイズや重量も大きくなってしまうという課題がある。また、セラミックスの支持基板を用いて、一つの支持基板上に複数の発電体を並べて配置するような細かい加工を行うことは難しく、加工コストも高くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学素子ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学素子ユニットの特徴構成は、
一つの金属基板と、接続部材とを少なくとも有する電気化学素子ユニットであって、
前記金属基板の表側に複数の電気化学反応部を有し、
前記金属基板は、前記金属基板の表側と裏側との間での気体の通流を許容する気体通流許容領域を有し、
前記電気化学反応部は、電極層と、電解質層と、対極電極層とを少なくとも有し、前記金属基板の表側に配置されており、
少なくとも前記電極層と前記対極電極層との間に、前記電解質層が配置されており、
前記接続部材が、その表側の面に形成される第1気体流路を有し、
前記電極層前記接続部材の第1気体流路と前記気体通流許容領域との間を通流する気体と接触し、
前記対極電極層が、前記電極層が接触する気体とは異なる気体と少なくとも接触するように構成される点にある。
【0008】
上記の特徴構成によれば、薄くても十分な強度を有する金属基板の上に、複数の電気化学反応部を配置するから、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学素子ユニットを得ることができる。
尚、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記接続部材が、気体透過性を有さない点にある。
また、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記接続部材が、導電性を有する点にある。
【0009】
本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記金属基板は、互いに離間した複数の前記気体通流許容領域を有する点にある。
また、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記電極層が、少なくとも個々の前記気体通流許容領域を覆って配置される点にある。
また、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記電解質層が、少なくとも個々の前記気体通流許容領域もしくは前記気体通流許容領域に設けられた前記電極層を覆って配置される点にある。
【0010】
上記の特徴構成によれば、金属基板の上に複数の電気化学素子ユニットを並べて配置する場合でも、ガスタイトな電解質層によりガスのシールを行うことができるため、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学素子ユニットを得ることができる。すなわち、電解質層が少なくとも個々の気体通流許容領域もしくは前記気体通流許容領域に設けられた電極層を覆って配置されることにより、金属基板の裏側から気体通流許容領域を通流して電極層に供給された気体が、金属基板の表側に漏れ出ることを抑制でき、電気化学素子ユニットとしての性能・信頼性を高めることができ好適である。
尚、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記電解質層は、ガスタイトな層である点にある。
また、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記電解質層は、前記電極層が接触する気体と前記対極電極層が接触する気体とを区分する点にある。
更に、本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記複数の電気化学反応部が、互いに離間して形成される点にある。
【0011】
本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記金属基板の表側における、少なくとも前記金属基板と前記電極層とが接触する領域に、金属酸化物被膜が形成されている点にある。
【0012】
上記の特徴構成によれば、金属酸化物被膜により金属基板からCr等の成分が電極層へ拡散することを抑制できるので、電気化学反応部の性能低下を抑制し、電気化学反応部の性能を高めることができる。
【0013】
本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記金属基板の表側における、少なくとも前記電極層、前記電解質層及び前記対極電極層のいずれにも覆われていない領域に、金属酸化物被膜が形成されている点にある。
【0014】
上記の特徴構成によれば、金属基板から酸化Cr等の成分が蒸発して対局電極層等と反応して高抵抗成分が生成することを金属酸化物被膜により抑制できるので、電気化学反応部の性能低下を抑制し、電気化学反応部の性能を高めることができる。
【0015】
本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、前記金属酸化物被膜が、少なくとも前記金属基板に含まれる金属元素を含有する酸化物である点にある。
【0016】
上記の特徴構成によれば、金属基板上に電極層などの電気化学反応部を形成する工程で金属基板表面を酸化させて金属酸化物被膜を併せて形成可能となるため、金属酸化物被膜を別途形成する工程を省く事ができ、材料コスト・加工コストを低減することができる。
【0024】
本発明に係る電気化学素子ユニットの別の特徴構成は、複数の前記電気化学反応部が電気的に並列に接続されている点にある。
【0025】
上記の特徴構成によれば、複数の電気化学反応部が電気的に並列に接続されていることにより、電気化学素子ユニットから外部への電気的接続のための構造を簡便化することができる。加えて、電気化学反応部が燃料電池として動作する場合、電気的に並列に接続されていることで、電気化学反応部で生じる電流を足し合わせて電気化学素子ユニットから出力することができるので、一つの電気化学素子ユニットの出力電流を高めることができ好適である。
なお、一つの前記電気化学反応部の前記電極層と、他の前記電気化学反応部の前記電極層とを電気的に接続することで、複数の前記電気化学反応部を電気的に並列に接続することができる。
【0026】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池ユニットの特徴構成は、上述の電気化学素子ユニットを備え、前記電気化学素子ユニットで発電反応を生じさせる点にある。
また、上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形電解セルユニットの特徴構成は、上述の電気化学素子ユニットを備え、前記電気化学素子ユニットで電解反応を生じさせる点にある。
【0027】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、上述の電気化学素子ユニットが複数集合した状態で配置される点にある。
【0028】
上記の特徴構成によれば、上述の電気化学素子ユニットが複数集合した状態で配置されるので、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学モジュールを得ることができる。
尚、本発明に係る電気化学モジュールの別の特徴構成は、前記接続部材は、その裏側の面に形成される第2気体流路を有し、
一つの前記電気化学素子ユニットの前記第2気体流路を通流する気体が、隣接する他の一つの前記電気化学素子ユニットの前記対極電極層と接触するように配置される点にある。
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上述の電気化学素子ユニットまたは電気化学モジュールと、前記電気化学素子ユニットまたは前記電気化学モジュールに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部を有する点にある。
【0030】
上記の特徴構成によれば、電気化学素子ユニットまたは電気化学モジュールを有し電気化学モジュールに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部を有するので、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用い、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子ユニットまたは電気化学モジュールから電力を取り出すことができ、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学素子ユニットまたは電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
【0031】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学装置の別の特徴構成は、前記電気化学素子ユニットまたは前記電気化学モジュールと、前記電気化学素子ユニットまたは前記電気化学モジュールから電力を取り出すインバータを有する点にある。
【0032】
上記の特徴構成によれば、電気化学素子ユニットまたは電気化学モジュールから電力を取り出す高効率な電気化学装置を実現することができる。
【0033】
上記目的を達成するための本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、上述の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有する点にある。
【0034】
上記の特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、耐久性・信頼性および性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。なお、電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電気化学素子の構造を示す正面図、断面図および積層構造を示す上面図
図2】電気化学素子の構造を示す正面図、断面図および積層構造を示す上面図
図3】電気化学素子の構造を示す正面図、断面図および積層構造を示す上面図
図4】電気化学素子の構造を示す正面図、断面図および積層構造を示す上面図
図5】電気化学素子の構造を示す斜視図
図6】電気化学素子の構造を示す斜視図
図7】電気化学モジュールの構成を示す概略図
図8】電気化学モジュールの構成を示す概略図
図9】電気化学モジュールの構成を示す概略図
図10】電気化学装置およびエネルギーシステムの構成を示す概略図
図11】電気化学素子の構造を示す断面図
図12】電気化学素子の構造を示す断面図
図13】電気化学素子の構造を示す断面図
図14】電気化学素子の構造を示す断面図
図15】電気化学素子の構造を示す断面図
図16】電気化学素子の構造を示す断面図
図17】電気化学素子の構造を示す断面図
図18】電気化学素子の構造を示す断面図
図19】電気化学素子の構造を示す断面図
図20】電気化学素子の構造を示す断面図
図21】電気化学素子の構造を示す断面図
図22】電気化学素子の構造を示す断面図
図23】電気化学素子の構造を示す断面図
図24】電気化学素子の構造を示す断面図
図25】電気化学素子の構造を示す断面図
図26】電気化学モジュールの構造を示す断面図
図27】電気化学素子の構造を示す正面図および断面図
図28】電気化学素子の構造を示す上面図
図29】金属基板の構造を示す断面図
図30】電気化学素子の構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係る電気化学素子について図1に基づいて説明する。電気化学素子Qは、金属基板1と、複数の電気化学反応部Rとを有する。金属基板1は、金属基板1の表側4と裏側5との間での気体の通流を許容する気体通流許容領域Pを有する。電気化学反応部Rは、電極層Aと、電解質層Bと、対極電極層Cとを少なくとも有し、金属基板1の表側4に配置されている。電極層Aと対極電極層Cとの間の一部に、電解質層Bが配置されており、電極層Aに、気体通流許容領域Pを通流した気体が供給される。
【0037】
本実施形態では、長方形の金属基板1の表面上に、金属基板1の長辺に沿って5つの電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1、第2電気化学反応部R2、第3電気化学反応部R3、第4電気化学反応部R4および第5電気化学反応部R5)が配置される。
【0038】
また本実施形態では、電気化学反応部Rは金属基板1の表面に3つの層を形成して構成される。金属基板1に接する第1層には電極層A、電解質層Bおよび絶縁層Dが含まれる。第1層の上側の第2層には電解質層B、絶縁層Dおよび導通層Eが含まれる。そして第2層の上側すなわち最上層の第3層には対極電極層Cが含まれる。
【0039】
以下、金属基板1と電気化学反応部Rの構成について説明し、その次に複数の前記電気化学反応部Rの配置および詳細構造と、電気化学素子Qが燃料電池として動作する場合について説明する。
【0040】
なお図1の上段は、電気化学素子Qをその長手方向に垂直な方向から見た正面図である。図1の中段は、上段と同じ方向から見た電気化学素子Qの断面図である。図1の下段は、金属基板1の表側4から電気化学素子Qを見た上面図である。そして以下、長方形の金属基板1の長手方向を単に「長手方向」といい、長方形の金属基板1の短手方向を単に「短手方向」という場合がある。
【0041】
図1の下段の上面図では、電気化学素子Qの層状構造の説明のため、第1層、第2層および第3層の一部を取り除いた状態が示されている。図1の下段の上面図における各層除去の位置を示す線(太線)が、図1の上段の正面図に示されている。詳しくは、第2電気化学反応部R2の中央から第3電気化学反応部R3の中央までは、上側の第3層(対極電極層C)を取り除いた状態が示されている。第3電気化学反応部R3の中央から第4電気化学反応部R4の中央までは、第3層と第2層(電解質層B、絶縁層Dおよび導通層E)を取り除いた状態が示されている。第4電気化学反応部R4の中央から第5電気化学反応部R5の中央までは、第3層、第2層および第1層(電極層A、電解質層B、絶縁層D)を取り除いた状態が示されている。
【0042】
<金属基板>
金属基板1は、金属製の長方形の平板である。金属基板1には、表側4と裏側5とを貫通して複数の貫通孔2が形成されている。この貫通孔2を通じて金属基板1の表側4と裏側5との間で気体の通流が可能となっている。本実施形態では、複数の貫通孔2が、金属基板1の長辺と短辺とに平行な格子の交点位置に形成されている。なお、金属基板1は、支持体として電気化学素子を形成するのに充分な強度を有すれば良く、例えば、0.1mm~2mm程度、好ましくは0.1mm~1mm程度、より好ましくは0.1mm~0.5mm程度の厚みのものを用いることができる。また、金属基板1には、焼結金属や発泡金属等を用いることもできる。
【0043】
そして5つの電気化学反応部Rに対応する位置に、複数の貫通孔2が集まった領域である気体通流許容領域Pが5つ(第1気体通流許容領域P1、第2気体通流許容領域P2、第3気体通流許容領域P3、第4気体通流許容領域P4、第5気体通流許容領域P5)が形成されている。すなわち本実施形態では、気体通流許容領域Pは貫通孔2により構成されている。5つの気体通流許容領域Pは、長手方向に互いに離間して形成されている。気体通流許容領域Pの間は、金属基板1の表側4と裏側5との間で気体の通流が禁止される領域(気体通流禁止領域)である。
【0044】
金属基板1の表面には、絶縁被膜3(金属酸化物被膜)が形成されている。絶縁被膜3は、電気化学反応部Rの電極層Aと金属基板1との間を絶縁し、それにより隣接する電気化学反応部Rの電極層Aの間の絶縁を実現している。したがって絶縁被膜3は、金属基板1の少なくとも表側に形成されていればよいし、少なくとも金属基板1と電極層Aとが接触する領域に形成されていればよい。本実施形態では、金属基板1の全面にわたって絶縁被膜3が形成されている。なお本実施形態では後述の通り、電気化学素子Qと外部との電気的接続のために、第1電気化学反応部R1に隣接して導通層Eが形成されている。この導通層Eと金属基板1とが接触する領域にも絶縁被膜3が形成されていると好適である。
【0045】
絶縁被膜3の抵抗値としては、1kΩ・cm2程度以上あればよく、10kΩ・cm2程度以上あれば、電気化学素子Qを燃料電池として動作させた場合でも十分な起電力と電流量を確保でき好適である。
【0046】
絶縁被膜3は種々の手法により形成されうるが、金属基板1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。なおCrを含む合金をSOFCのセル間接続部材として用いる場合、Crの飛散を抑制するためにセル間接続部材の表面に酸化皮膜を形成して拡散防止膜とする場合がある。その場合、拡散防止膜での電圧降下を低減するために、拡散防止膜は可及的薄く形成して抵抗値を低くする。本実施形態の絶縁被膜3は拡散防止膜とは異なり、上述の通り金属基板1と電極層Aとの間を絶縁して、これにより電気化学反応部Rの電極層Aの間を絶縁するために、抵抗値が高くなるよう形成される。なお絶縁被膜3は、金属酸化物の被膜である点で共通するから、拡散防止膜としての機能(例えばCr飛散の抑制)を併せて有することができる。
また、絶縁被膜3は、金属基板1の表面に、絶縁性の高いシリカやアルミナ、2~12族元素酸化物などを含む酸化物被膜をスパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。
【0047】
金属基板1の材料としては、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた金属材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。例えば、Crを15重量%~25重量%程度含むFe-Cr系合金材料の場合、その上に形成する電極層Aや電解質層Bの材料と熱膨張率が近くなり、信頼性・耐久性に優れた電気化学素子を得ることができるため好ましい。また、Crを70重量%以上含むCrリッチなCr-Fe系合金を用いることもできる。更に、Ni-Cr-Al系やFe-Cr-Al系の合金等も用いることができる。本実施形態では、SiとAlのうち少なくとも一方が含有されている材料が好適に用いられる。この場合、大気雰囲気下や酸素分圧を制御した雰囲気下にて金属基板1を熱処理することにより、適切な抵抗値を有する絶縁被膜3を金属基板1の表面に好適に形成することができる。例えば、金属基板1の材料として、SiとAlのうち少なくとも一方が1重量%~5重量%程度含有されている金属材料を用いると、焼成処理によって、その表面に容易に絶縁被膜3を形成することができるため好ましい。また、SiとAlおよび2~12族元素のうち少なくとも一方が3重量%~5重量%程度含有されている金属材料を用いると、焼成処理によって、その表面に更に容易に絶縁被膜3を形成することができるためより好ましい。
【0048】
<筒状ガス流通部>
本実施形態では、金属基板1にU字部材11と蓋部12とが接合されて、筒状ガス流通部10を形成している。U字部材11は、長手方向に直交する断面がU字状の部材である。金属基板1の長辺とU字部材11の長辺(U字の2つの頂点に対応する辺)とが接合され、形成された筒の一方の端部が蓋部12で塞がれている。これにより、内部に内部空間22を有し全体として平板あるいは平棒状の筒状ガス流通部10が構成されている。金属基板1は、筒状ガス流通部10の中心軸に対して平行に配置される。
【0049】
蓋部12には孔(気体流出口13)が複数形成されている。そして筒状ガス流通部10の蓋部12と反対側の端部は開放され、もって気体流入口21が形成されている。これにより電気化学素子Qの動作時には、筒状ガス流通部10の開放された端部から流入した気体は、筒状ガス流通部10の内部空間22を通流し、金属基板1の気体通流許容領域Pを通流して表側4に到達し、電極層Aに供給される。残余の気体は、蓋部12の気体流出口13から流出する。
【0050】
U字部材11と蓋部12の材料としては、金属基板1と同じ材料を用いると、筒状ガス流通部10全体で熱膨張係数等の物性が統一されるため好適である。また金属基板1をはじめとする筒状ガス流通部10の材料にフェライト系ステンレス鋼を用いた場合、電気化学反応部Rにて材料に用いられるYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近くなる。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子Qがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0051】
なお筒状ガス流通部10の材料としては、熱伝導率が3Wm-1-1を上回る材料を用いることが好ましく、10Wm-1-1を上回る材料であればさらに好ましい。例えばステンレス鋼であれば熱伝導率が15~30Wm-1-1程度であるため、筒状ガス流通部10の材料として好適である。
【0052】
また、筒状ガス流通部10の材料としては、脆性破壊を起こさない高靱性材料である事がさらに望ましい。セラミックス材料などと比較して金属材料は高靱性であり、筒状ガス流通部10の材料として好適である。
【0053】
なお筒状ガス流通部10において、金属基板1の気体通流許容領域Pを除く部位は、筒状ガス流通部10の内部空間22から外側へ気体が通流できないように構成すると好適である。そのため、気体通流許容領域Pを除く筒状ガス流通部10の部位は、結晶性の金属などの気体を透過しない材料で形成すると好適である。一方で、金属基板1の気体通流許容領域Pは、上述した貫通孔2に換えて、多孔質金属の板などにより形成することも可能である。
【0054】
<電気化学反応部>
本実施形態に係る電気化学反応部Rは、電極層Aと、電解質層Bと、対極電極層Cと、中間層とを有する。
【0055】
<電極層>
電極層Aは、金属基板1の表側4の表面、すなわち絶縁被膜3の上に、膜の状態で形成される。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。
電極層Aの材料としては、例えばNiO-酸化セリウム(セリア)を主成分とするもの、Ni-酸化セリウム(セリア)を主成分とするもの、NiO-ジルコニアを主成分とするもの、Ni-ジルコニアを主成分とするもの、CuO-酸化セリウム(セリア)を主成分とするもの、Cu-酸化セリウム(セリア)を主成分とするものなどの複合材を用いることができる。なお、酸化セリウム(セリア)、ジルコニア等あるいはこれらに異種元素をドープした固溶体を複合材の骨材と呼ぶ。電極層Aは、気体透過性を具備するように形成される。例えば、電極層Aの表面および内部に微細な複数の細孔を有するように構成される。
【0056】
電極層Aは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)や、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域での使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な電極層Aが得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0057】
<電解質層>
電解質層Bは、電極層Aと対極電極層Cとの間に膜状で設けられる。その膜厚は、例えば、1μm~50μm程度、好ましくは1μm~20μm程度、より好ましくは2μm~10μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な電解質層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電解質性能を確保することが可能となる。
電解質層Bの材料としては、種々のジルコニア系材料、酸化セリウム系材料、種々のペロブスカイト系複合酸化物等の酸化物イオンや水素イオンを伝導可能な固体電解質材料を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層Bをジルコニア系セラミックスにすると、電気化学素子Qの稼働時の温度をセリア系セラミックスに比べて高くすることができ、非常に高効率な電気化学素子Qを構成することができる。
【0058】
電解質層Bは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)や、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、緻密で気密性の高い電解質層Bが得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0059】
電解質層Bは、気密性を保つために緻密に構成される。なお、電解質層Bに、相対密度が90%以上である層が含まれることが好ましい。また、相対密度が95%以上である層が含まれることがより好ましく、更には、相対密度が98%以上である層が含まれることが好ましい。このように、相対密度を高くすることで電解質層Bを緻密なものとすることができる。なお、ここで相対密度とは、電解質材料の理論密度に対して実際に形成された電解質層Bの密度の割合を表す。
【0060】
<対極電極層>
対極電極層Cは、電解質層Bの上に膜状で設けられる。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な対極電極性能を確保することが可能となる。
対極電極層Cの材料としては、例えば、LSCF(La-Sr-Co-Fe系酸化物)、LSC(La-Sr-Co系酸化物)、LSM(La-Sr-Mn系酸化物)、SSC(Sm-Sr-Co系酸化物)、SDC(Ce-Sm系酸化物)等の複合酸化物を用いることができる。なお対極電極層Cは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な対極電極層Cが得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0061】
<中間層>
なお、電極層Aと電解質層Bとの間に中間層が膜の状態で形成されていてもよい。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な中間層性能を確保することが可能となる。
中間層の材料としては、例えば、酸化セリウム系材料やジルコニア系材料等を用いることができる。中間層を電極層Aと電解質層Bとの間に導入することにより、電気化学反応部Rの性能や信頼性、耐久性を向上できる。なお中間層は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な中間層が得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0062】
また電解質層Bと対極電極層Cとの間に、中間層が膜の状態で形成されていてもよい。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な中間層性能を確保することが可能となる。
中間層の材料としては、例えば、酸化セリウム系材料やジルコニア系材料等を用いることができる。中間層を電解質層Bと対極電極層Cとの間に導入することにより、対極電極層Cの構成材料と電解質層Bの構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学反応部Rの性能の長期安定性を向上できる。なお中間層は、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な中間層が得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0063】
以上説明した中間層は、一方だけ、あるいは両方を設けることが可能である。すなわち、電極層A、電解質層B、中間層、対極電極層Cをこの順で積層した構成も可能である。電極層A、中間層、電解質層B、対極電極層Cをこの順で積層した構成も可能である。電極層A、中間層、電解質層B、中間層、対極電極層Cをこの順で積層した構成も可能である。
【0064】
<電気化学反応部Rでの電気化学反応>
以上の様に構成された電気化学反応部Rは、気体の供給を受け、電気化学反応を生じさせる。
【0065】
電気化学反応部Rが燃料電池として動作する場合のうち、電解質として酸化物イオン導電体を用いる場合は、電極層Aに例えば水素ガスを含む燃料が供給され、対極電極層Cに酸素を含むガスが供給される。そうすると、対極電極層Cにおいて酸素分子O2が電子e-と反応して酸素イオン(酸化物イオン)O2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層Bを通って電極層Aへ移動する。電極層Aにおいては、水素分子H2が酸素イオンO2-と反応し、水H2Oと電子e-が生成される。電解質として水素イオン導電体を用いる場合は、電極層Aにおいては、水素分子H2が電子e-を放出してプロトン(水素イオン)Hが生成される。その水素イオンHが電解質層Bを通って対極電極層Cへ移動する。対極電極層Cにおいて酸素分子O2が水素イオンHと反応して、電子e-を消費して水H2Oが生成される。
以上の反応により、電極層Aと対極電極層Cとの間に起電力が発生し、発電が行われる。
【0066】
電気化学反応部Rが電解セルとして動作する場合のうち、電解質として酸化物イオン導電体を用いる場合は、電極層Aと対極電極層Cとの間に電圧が印加されると、電極層Aにおいて水分子H2Oが電子e-を受け取って水素分子H2と酸素イオン(酸化物イオン)O2-を生成する。酸素イオンO2-は電解質層Bを通って対極電極層Cへ移動する。対極電極層Cにおいて酸素イオンO2-が電子を放出して酸素分子O2となる。電解質として水素イオン導電体を用いる場合は、対極電極層Cにおいて水H2Oから酸素分子O2と水素イオンHが生成し電子e-を放出する。水素イオンHは電解質層Bを通って電極層Aへ移動し、電極層Aにおいては、水素イオンHが電子e-と反応し水素分子H2が生成される。
以上の反応により、水分子H2Oが水素H2と酸素O2とに電気分解される。
【0067】
<電気化学反応部の電気的接続>
【0068】
以下の説明では、第1電気化学反応部R1の電極層A、電解質層Bおよび対極電極層Cを、第1電極層A1、第1電解質層B1、第1対極電極層C1という。第2電気化学反応部R2の電極層A、電解質層Bおよび対極電極層Cを、第2電極層A2、第2電解質層B2、第2対極電極層C2という。第3以降の電気化学反応部Rについても同様である。
【0069】
本実施形態では、複数の電気化学反応部Rが電気的に直列に接続されている。そして一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの対極電極層Cとが電気的に接続されている。
【0070】
図1の中段の断面図に基づいて、第1電気化学反応部R1と第2電気化学反応部R2との接続について説明する。第1層および第2層において、第1電気化学反応部R1と第2電気化学反応部R2との間に、絶縁層Dと導通層Eが形成されている。これら絶縁層Dおよび導通層Eにより、第1電気化学反応部R1と第2電気化学反応部R2との間の直列接続が実現されている。
【0071】
絶縁層Dは、例えばアルミナ等の絶縁性の金属酸化物により構成することができる。本実施形態では、絶縁層Dは緻密に形成され、気体透過性を抑制したガスタイトな状態で形成される。
【0072】
導通層Eは、インターコネクタとも呼ばれるが、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)やSrTiO3(ストロンチウムチタネイト)等の導電性を有する金属酸化物により構成することができる。本実施形態では、導通層Eは緻密に形成され、気体透過性を抑制したガスタイトな状態で形成される。
【0073】
第1層において、第1電極層A1と第2電極層A2との間に絶縁層Dが形成されている。第2層において、第1電解質層B1と第2電解質層B2との間に、絶縁層Dと導通層Eとが形成されている。第2層の絶縁層Dは、第1層の絶縁層と第1電極層A1との両方に跨って形成されている。導通層Eは、第1層の絶縁層と第2電極層A2との両方に跨って形成されている。第3層において、第1対極電極層C1は、第1電解質層B1の上から、第2層の絶縁層Dを越えて、導通層Eまで跨って形成されている。すなわち第2層の導通層Eは、第1対極電極層C1と第2電極層A2との両方に接触し、電気的に接続されている。
【0074】
以上の構成により、第1電極層A1と第2電極層A2との間は、絶縁層Dの存在により絶縁される。そして第1対極電極層C1と第2電極層A2との間は、導通層Eの存在により電気的に接続される。
【0075】
電気化学反応部Rが燃料電池として動作する場合、上述の通り、電極層Aと対極電極層Cとの間に起電力が生じる。そうすると、第1対極電極層C1と第2電極層A2とが電気的に接続されていることにより、第1電気化学反応部R1の起電力と第2電気化学反応部R2の起電力とが足し合わされた起電力が、第1電極層A1と第2対極電極層C2との間に生じることとなる。つまりこの場合、第1電気化学反応部R1と第2電気化学反応部R2とが電気的に直列に接続されているといえる。
【0076】
図1の中段の断面図に示される通り、第2対極電極層C2と第3電極層A3との間も導通層Eにより接続されている。第3対極電極層C3と第4電極層A4との間も導通層Eにより接続されている。第4対極電極層C4と第5電極層A5との間も導通層Eにより接続されている。すなわち、第2電気化学反応部R2から第5電気化学反応部R5までの各電気化学反応部Rも、同様に電気的に直列に接続されている。
【0077】
電気的に直列に接続された電気化学反応部Rの両端には、電気化学素子Qの外部と電気的に接続するための構成が配置される。本実施形態では、第5電気化学反応部R5の第5対極電極層C5に、集電部材26が接続される。そして第1電気化学反応部R1の第1電極層A1に、導通層Eが接続され、その導通層Eの上に集電部材26が接続される。
【0078】
集電部材26には、導電性と気体透過性とを有する部材が用いられる。例えば、耐酸化コーティングを施した金属箔を用いたエキスパンドメタルや金属メッシュ、フェルト様部材が用いられる。
【0079】
以上の様に構成した電気化学素子Qを燃料電池として動作させると、両端の集電部材26の間に起電力が生じる。そして集電部材26を外部の負荷等に接続すると、図1の中段の断面図に示されるように、第1電気化学反応部R1側の集電部材26から第5電気化学反応部R5の集電部材26に向けて、矢印Iで示される様に電流が流れる。すなわち、直列に接続された5つの燃料電池(電気化学反応部R)が、外部に電力を供給する。
【0080】
なお本実施形態に係る電気化学素子Qを、上述した電解セルとして動作させる場合、一対の集電部材26の間に電圧を印加する。そうすると、各電気化学反応部Rの電極層Aと対極電極層Cとが上述の通り接続されていることから、各電気化学反応部Rに電圧が印加され、電解反応が進行することになる。すなわちこの場合も、5つの電解セルが直列に接続されて動作するとみなすことができ、電気化学反応部Rが電気的に直列に接続されているといえる。
【0081】
<電気化学素子における気体の封止>
電気化学素子Qでは、金属基板1の気体通流許容領域Pを通流した気体が電極層Aに供給されるが、その気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことを抑制する必要がある。そのため本実施形態に係る電気化学素子Qは、気体を封止するための以下の構造を有する。
【0082】
本実施形態では、第1電極層A1が第1気体通流許容領域P1を覆って形成されている。その他の第2電極層A2~第5電極層A5についても同様に、各々、第2気体通流許容領域P2~第5気体通流許容領域P5を覆って形成されている。すなわち電極層Aは、気体通流許容領域Pよりも大きな領域に、気体通流許容領域Pを覆って設けられている。この場合、電極層Aをガスタイトな層で覆えば、気体の漏出を抑制できることになる。
【0083】
以下第3電気化学反応部R3に注目して説明する。第3電極層A3は、第3電解質層B3と、絶縁層Dと、導通層Eとによって覆われている。第3電解質層B3は、少なくとも第3気体通流許容領域P3に設けられた第3電極層A3を覆って配置されている。
【0084】
詳しくは、短手方向において第3電解質層B3が第3電極層A3よりも広い幅に渡って形成されている。第3電極層A3は、第3電極層A3が存在する領域では第3電極層A3の上、すなわち第2層に配置される。第3電極層A3が存在しない領域(第3電極層A3の短手方向の両側の領域)では、第3電解質層B3は金属基板1の上、すなわち第1層に配置される。第1層の第3電解質層B3と第2層の第3電解質層B3とは、連続した層として形成されており、両者の接続部位からの気体漏洩は抑止されている。
【0085】
第3電極層A3の長手方向の両端は、絶縁層Dおよび導通層Eによって覆われている。第2層の絶縁層Dと導通層Eとは、短手方向に細長く延び、第3電極層A3が存在しない領域(第3電極層A3の短手方向の両側の領域)では、第1層の絶縁層Dと導通層Eとにそれぞれ接続される。第1層の絶縁層Dと第2層の絶縁層D、および第1層の導通層Eと第2層の導通層Eとは、連続した層として形成されており、両者の接続部位からの気体漏洩は抑止されている。
【0086】
以上述べた通り、第3電極層A3は、第3電解質層B3と、絶縁層Dと、導通層Eとによって覆われている。電解質層B、絶縁層Dおよび導通層Eはいずれも気体透過性の小さいガスタイトな層であるから、以上の構成により、第3電極層A3に供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0087】
以上、第3電気化学反応部R3に注目して説明したが、第2電気化学反応部R2、第4電気化学反応部R4および第5電気化学反応部R5についても同様である。また第1電気化学反応部R1については、長手方向の一方は導通層Eのみにより覆われているが、同様に気体の漏出は抑制されている。
【0088】
上述した本実施形態に係る電気化学反応部Rの構造は、次のようにして形成することができる。まず第1層の電極層A、絶縁層Dおよび導通層Eを、図1下段の上面図に示す平面形状にて金属基板1の上に形成する。次に第2層の電解質層B、絶縁層Dおよび導通層Eを、図1下段の上面図に示す平面形状にて、すなわち第1層よりも短手方向に広い幅にて、金属基板1および第1層の上に形成する。これにより電極層Aが電解質層B、絶縁層Dおよび導通層Eによって覆われる。そして第3層の対極電極層Cを、第2層の上に形成する。
【0089】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る電気化学素子Qを図2に示す。なお以下の第2~第10実施形態、及び、他の実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0090】
この電気化学素子Qでは、貫通孔2が金属基板1の長手方向に沿って連続して形成されている。すなわち、気体通流許容領域Pが一繋がりの領域として形成されている。そして本実施形態においても、気体通流許容領域Pに設けられた電極層Aは、電解質層B、絶縁層Dおよび導通層Eによって覆われている。したがって、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る電気化学素子Qを図3に示す。本実施形態では、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0092】
金属基板1の表面のうち少なくとも電極層Aと接する部分には、絶縁被膜に換えて、拡散防止膜6(金属酸化物被膜)が形成されている。拡散防止膜6は、金属基板1からのCrの飛散を抑制するために設けられる。拡散防止膜6は、絶縁被膜と異なり導電性を有し、電気化学反応部Rの電極層Aと金属基板1との導通を抑制しないよう、低い抵抗値となるように構成される。
なお、金属基板1の表面のうち電極層と電解質層・対極電極層のいずれにも覆われていない領域を覆う金属酸化物被膜は、金属基板1から酸化Cr等の成分が蒸発することを抑制する機能を有していればよく、絶縁被膜であっても導電性を有する拡散防止膜であってもよい。
【0093】
拡散防止膜6の抵抗値としては、0.1Ω・cm2程度以下であればよく、0.05Ω・cm2程度以下であれば、電気化学素子Qを燃料電池として動作させた場合でも十分な起電力と電流量を確保でき好適である。
【0094】
金属基板1の材料としては、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた金属材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。例えば、Crを15重量%~25重量%程度含むFe-Cr系合金材料の場合、その上に形成する電極層Aや電解質層Bの材料と熱膨張率が近くなり、信頼性・耐久性に優れた電気化学素子を得ることができるため好ましい。また、Crを70重量%以上含むCrリッチなCr-Fe系合金を用いることもできる。更に、Ni-Cr-Al系やFe-Cr-Al系の合金等も用いることができる。拡散防止膜6は種々の手法により形成されうるが、金属基板1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。その場合、酸素分圧を低く制御した雰囲気下や、不活性ガスあるいは水素雰囲気下にて金属基板1を熱処理することにより、適切な厚さおよび抵抗値を有する拡散防止膜6を金属基板1の表面に好適に形成することができる。特に、金属基板1に、Crを15重量%~25重量%程度含むFe-Cr系合金材料を用いると、焼成処理によって、その表面に容易に酸化クロムを主成分とする拡散防止膜を形成することができるため好ましい。また、拡散防止膜6は、金属基板1の表面に、スパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、拡散防止膜6は導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
【0095】
本実施形態では第1実施形態と同様に、金属基板1に5つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第5気体通流許容領域P5)が、互いに離間して形成されている。そして5つの電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1~第5電気化学反応部R5)が、互いに離間して形成されている。
【0096】
詳しくは、まず5つの電極層A(第1電極層A1~第5電極層A5)が、各々の気体通流許容領域Pより大きな領域に、各気体通流許容領域Pを覆って形成されている。5つの電極層Aは、互いに離間して形成されている。そして5つの電解質層B(第1電解質層B1~第5電解質層B5)が、各々の電極層Aより大きな領域に、各電極層Aを覆って形成されている。5つの電解質層Bは、互いに離間して形成されている。5つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第5対極電極層C5)が、各々の電解質層Bの上に形成されている。
【0097】
各々の気体通流許容領域Pが電極層Aで覆われ、各々の電極層Aが電解質層Bで覆われることにより、気体通流許容領域Pから電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。すなわち本実施形態では、金属基板1は、互いに離間した複数の気体通流許容領域Pを有しており、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pに設けられた前記電極層Aを覆って配置される
【0098】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。第1実施形態および第2実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aと対極電極層Cとが電気的に接続されて、電気化学反応部Rが直列に接続された。本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0099】
本実施形態に係る電気化学素子Qを燃料電池として動作させる場合、気体通流許容領域Pを通流した水素が電極層Aに供給され、対極電極層Cに酸素が供給され、電極層Aと対極電極層Cとの間に起電力が生じる。第1電極層A1~第5電極層A5は金属基板1により電気的に接続されているから、同じ電位となる。そして第1対極電極層C1~第5対極電極層C5に取り付けられた集電部材(図示なし)と、金属基板1(あるいは筒状ガス流通部10)とが外部に接続され、外部に起電力・電流が取り出される。すなわち、並列に接続された5つの燃料電池(電気化学反応部R)が、外部に電力を供給する。
【0100】
本実施形態に係る電気化学素子Qを電解セルとして動作させる場合、気体通流許容領域Pを通流した水(水蒸気)が電極層Aに供給され、第1対極電極層C1~第5対極電極層C5に取り付けられた集電部材(図示なし)と、金属基板1(あるいは筒状ガス流通部10)との間に電圧を印加する。そうすると、第1電極層A1~第5電極層A5は金属基板1により電気的に接続されているから、各電気化学反応部Rに電圧が印加され、電解反応が進行することになる。すなわちこの場合も、5つの電解セルが並列に接続されて動作するとみなすことができ、電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
【0101】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る電気化学素子Qを図4に示す。この電気化学素子Qでは、第2実施形態と同様に、貫通孔2が金属基板1の長手方向に沿って連続して形成されている。すなわち、気体通流許容領域Pが一繋がりの領域として形成されている。金属基板1の表面には、拡散防止膜6が形成されている。
【0102】
金属基板1の表側4に、5つの電極層A(第1電極層A1~第5電極層A5)が形成されている。5つの電極層Aは、互いに離間して形成されている。そしてその上に、電解質層Bが、気体通流許容領域Pよりも大きな領域に、気体通流許容領域Pを覆って形成されている。本実施形態では電解質層Bは、一繋がりの層として、第1層と第2層にわたって、そして金属基板1の表側4のほぼ全体に形成されている。5つの電極層Aは、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。そして電解質層Bの上の、電極層Aに対応する領域に、5つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第5対極電極層C5)が形成されている。
【0103】
5つの電極層Aおよび5つの対極電極層Cが互いに離間して形成されていることから、対向する電極層Aと対極電極層Cと、これらに挟まれた電解質層Bとによって、電気化学反応が生じ得る。つまり第1電極層A1と第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分である第1電解質層B1とによって、第1電気化学反応部R1が形成されている。同様に第2電極層A2~第5電極層A5と、第2対極電極層C2~第5対極電極層C5と、これらに挟まれた部分である第2電解質層B2~第5電解質層B5によって、第2電気化学反応部R2~第5電気化学反応部R5が形成されている。すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0104】
そして第3実施形態と同様に、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。したがって、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
<第5実施形態>
上述の実施形態では、複数の電気化学反応部Rが、長方形の金属基板1の長手方向に沿って1列で設けられていた。これを改変し、複数の電気化学反応部Rを複数の列に並べて形成することも可能である。
【0105】
第5実施形態に係る電気化学素子Qを図5に示す。本実施形態では、金属基板1に5つの電気化学反応部Rを、2列に並べて配置する例が示されている。詳しくは、図5の手前側の列に、集電部材26と導通層E、第1電気化学反応部R1および第2電気化学反応部R2がこの順に配置され、図5の奥側の列に、第5電気化学反応部R5、第4電気化学反応部R4および第3電気化学反応部R3がこの順に配置されている。
【0106】
金属基板1の表面には、絶縁被膜3(金属酸化物被膜)が形成されている。図示を省略しているが、金属基板1には、表側4と裏側5とを貫通する複数の貫通孔2が形成され、5つの電気化学反応部Rに対応する位置に、複数の貫通孔2が集まった領域である気体通流許容領域Pが5つ形成されている。なお第2実施形態のように、金属基板1の全体にわたって気体通流許容領域Pを形成することも可能である。ただしその場合は、気体通流許容領域Pを導通層Eおよび電解質層Bの形成された領域の内側に収まるように形成して、金属基板1の裏側5からの気体が対極電極層Cの側(金属基板1の表側4)に漏れ出すことを抑制する必要がある。
【0107】
なお図5には金属基板1と電気化学反応部Rとを示しているが、第1実施形態と同様に、金属基板1にU字部材11と蓋部12とを取り付けて筒状ガス流通部10を形成することも可能である。
【0108】
本実施形態では第1実施形態や第2実施形態と同様に、第1電気化学反応部R1~第5電気化学反応部R5が電気的に直列に接続されて、一対の集電部材26に接続されている。すなわち、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの対極電極層Cとが電気的に接続されている。各電気化学反応部Rの構造、すなわち電極層A、電解質層B、対極電極層C、絶縁層Dおよび導通層Eの配置および位置関係は、第1実施形態と同様に形成される。
<第6実施形態>
第6実施形態に係る電気化学素子Qを図6に示す。本実施形態では、金属基板1に4つの電気化学反応部Rを、2列に並べて配置する例が示されている。詳しくは、図6の手前側の列に、第1電気化学反応部R1および第2電気化学反応部R2がこの順に配置され、図6の奥側の列に、第4電気化学反応部R4および第3電気化学反応部R3がこの順に配置されている。
【0109】
金属基板1の表面には、拡散防止膜6(金属酸化物被膜)が形成されている。図示を省略しているが、金属基板1には、表側4と裏側5とを貫通して複数の貫通孔2が形成され、4つの電気化学反応部Rに対応する位置に、複数の貫通孔2が集まった領域である気体通流許容領域Pが4つ形成されている。なお第4実施形態のように、金属基板1の全体にわたって気体通流許容領域Pを形成することも可能である。ただしその場合は、気体通流許容領域Pを導通層Eおよび電解質層Bの形成された領域の内側に収まるように形成して、金属基板1の裏側5からの気体が対極電極層Cの側(金属基板1の表側4)に漏れ出すことを抑制する必要がある。
【0110】
本実施形態では第3実施形態や第4実施形態と同様に、第1電気化学反応部R1~第4電気化学反応部R4が電気的に並列に接続されている。すなわち、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続されている。各電気化学反応部Rの構造、すなわち電極層A、電解質層B、対極電極層Cの配置および位置関係は、第4実施形態と同様に形成される。
【0111】
なお図6には金属基板1と電気化学反応部Rとを示しているが、第1実施形態と同様に、金属基板1にU字部材11と蓋部12とを取り付けて筒状ガス流通部10を形成することも可能である。
【0112】
<第7実施形態>
図7に、電気化学モジュールMの構成を示す。電気化学モジュールMは、上述した電気化学素子Qが複数積層した状態で配置されるモジュールである。第7実施形態に係る電気化学モジュールMには、複数の電気化学反応部Rが電気的に直列に接続されている電気化学素子Q、すなわち第1実施形態、第2実施形態および第5実施形態に係る電気化学素子Qが用いられる。
【0113】
電気化学モジュールMは、ガスマニホールド17と、5つの電気化学素子Qとを有する。電気化学素子Qの筒状ガス流通部10の気体流入口21が、ガスマニホールド17の内部空間と連通するように、電気化学素子Qがガスマニホールド17に接続される。本実施形態では、5つの電気化学素子Qが、電気化学反応部Rを一方(図7の右側)に向ける姿勢にて積層され、ガスマニホールド17に取り付けられている。
【0114】
本実施形態では複数の電気化学反応部Rが電気的に直列に接続されている電気化学素子Qを用いるところ、電気化学反応部Rと金属基板1、すなわち筒状ガス流通部10との間は絶縁されている。したがって、筒状ガス流通部10のガスマニホールド17への取付に際しては絶縁を行う必要が無いため、溶接等の簡易で強固な方法により取付を行うことができる。
【0115】
電気化学モジュールMの電気化学素子Qは、互いに電気的に接続される。本実施形態では、各電気化学素子Qの第1電気化学反応部R1に接続された集電部材26が、互いに電気的に接続され、外部と接続される。そして各電気化学素子Qの第5電気化学反応部R5に接続された集電部材26が、互いに電気的に接続され、外部と接続される。以上のように接続されることで、直列に接続された5つの電気化学反応部Rが5組、並列に接続される。
【0116】
電気化学モジュールMを燃料電池として動作させる場合は、ガスマニホールド17の内部に水素を供給し、電気化学素子Qの周囲に酸素を供給する。そうすると各電気化学反応部Rにて燃料電池としての反応が進行し、起電力・電流が発生する。発生した電力は、集電部材26から電気化学モジュールMの外部に取り出される。
【0117】
<第8実施形態>
図8に、電気化学モジュールMの他の実施形態を示す。第8実施形態に係る電気化学モジュールMには、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている電気化学素子Q、すなわち第3実施形態、第4実施形態および第6実施形態に係る電気化学素子Qが用いられる。
【0118】
第7実施形態と同様に、電気化学素子Qの筒状ガス流通部10の気体流入口21が、ガスマニホールド17の内部空間と連通するように、電気化学素子Qがガスマニホールド17に接続される。本実施形態では、5つの電気化学素子Qが、電気化学反応部Rを一方(図7の右側)に向ける姿勢にて積層され、ガスマニホールド17に取り付けられている。そして電気化学素子Qの間に集電部材26が配置され、電気化学反応部Rと、電気化学素子Qの筒状ガス流通部10の背面14とを電気的に接続している。これにより、並列に接続された5つの電気化学反応部Rが5組、直列に接続される。
【0119】
電気化学モジュールMを燃料電池として動作させる場合は、ガスマニホールド17の内部に水素を供給し、電気化学素子Qの周囲に酸素を供給する。そうすると各電気化学反応部Rにて燃料電池としての反応が進行し、起電力・電流が発生する。発生した電力は、積層された電気化学素子Qの両端から取り出される。すなわち、第1電気化学反応部R1の筒状ガス流通部10の背面14と、第5電気化学反応部R5の集電部材26とから、発生した電力が電気化学モジュールMの外部に取り出される。
【0120】
なお本実施形態では複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている電気化学素子Qを用いるところ、電気化学反応部Rと金属基板1、すなわち筒状ガス流通部10との間は絶縁されず、導通状態である。したがって筒状ガス流通部10のガスマニホールド17への取付に際しては、筒状ガス流通部10とガスマニホールド17との間を絶縁する必要がある。例えば、筒状ガス流通部10とガスマニホールド17とは、ガラスシール材により接合される。
【0121】
<第9実施形態>
図9に、電気化学モジュールMの他の実施形態を示す。第9実施形態に係る電気化学モジュールMには、図6に示される第6実施形態にかかる電気化学素子Q、すなわち複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている電気化学素子Qを好適に用いることができる。この電気化学素子Qを、セル間接続部材71を間に挟んで積層することで、電気化学モジュールMを構成する。
【0122】
セル間接続部材71は、導電性を有し、かつ気体透過性を有さない板状の部材であり、表面と裏面に、互いに直交する溝72が形成されている。セル間接続部材71はステンレス等の金属や、金属酸化物を用いることができる。
【0123】
図9に示すように、このセル間接続部材71を間に挟んで電気化学素子Qを積層すると、溝72を通じて気体を電気化学素子Qに供給することができる。詳しくは一方の溝72が第1気体流路72aとなり、電気化学素子Qの表側、すなわち対極電極層Cに気体を供給する。他方の溝72が第2気体流路72bとなり、電気化学素子Qの裏側、すなわち金属基板1の気体通流許容領域Pに気体を供給する。
【0124】
この電気化学モジュールMを燃料電池として動作させる場合は、第1気体流路72aに酸素を供給し、第2気体流路72bに水素を供給する。そうすると電気化学素子Qの各電気化学反応部Rにて燃料電池としての反応が進行し、起電力・電流が発生する。発生した電力は、積層された電気化学素子Qの両端のセル間接続部材71から、電気化学モジュールMの外部に取り出される。
【0125】
なお、本第9実施形態では、セル間接続部材71の表面と裏面に、互いに直交する溝72を形成したが、セル間接続部材71の表面と裏面に、互いに並行する溝72を形成することもできる。
【0126】
<第10実施形態>
以上説明した電気化学素子Qおよび電気化学モジュールMを用いて、電気化学装置YおよびエネルギーシステムZを構築することができる。
【0127】
<エネルギーシステム、電気化学装置>
図10には、エネルギーシステムZおよび電気化学装置Yの概要が示されている。
エネルギーシステムZは、電気化学装置Yと、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器53とを有する。
電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、脱硫器31と改質器34とを有し電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部と、電気化学モジュールMから電力を取り出すインバータ38とを有する。
【0128】
詳しくは電気化学装置Yは、脱硫器31、改質水タンク32、気化器33、改質器34、ブロア35、燃焼部36、インバータ38、制御部39、収納容器40および電気化学モジュールMを有する。
【0129】
脱硫器31は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器31を備えることにより、硫黄化合物による改質器34あるいは電気化学素子Qに対する悪影響を抑制することができる。気化器33は、改質水タンク32から供給される改質水から水蒸気を生成する。改質器34は、気化器33にて生成された水蒸気を用いて脱硫器31にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。
【0130】
電気化学モジュールMは、改質器34から供給された改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部36は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
【0131】
電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Qとガスマニホールド17とを有する。複数の電気化学素子Qは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Qの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。電気化学素子Qは、ガスマニホールド17を通じて供給される改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを電気化学反応させて発電する。
【0132】
インバータ38は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数にする。制御部39は電気化学装置YおよびエネルギーシステムZの運転を制御する。
【0133】
気化器33、改質器34、電気化学モジュールMおよび燃焼部36は、収納容器40内に収納される。そして改質器34は、燃焼部36での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
【0134】
原燃料は、昇圧ポンプ41の作動により原燃料供給路42を通して脱硫器31に供給される。改質水タンク32の改質水は、改質水ポンプ43の作動により改質水供給路44を通して気化器33に供給される。そして、原燃料供給路42は脱硫器31よりも下流側の部位で、改質水供給路44に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが収納容器40内に備えられた気化器33に供給される。
【0135】
改質水は気化器33にて気化され水蒸気となる。気化器33にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路45を通して改質器34に供給される。改質器34にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガス(還元性成分を有する第1気体)が生成される。改質器34にて生成された改質ガスは、改質ガス供給路46を通して電気化学モジュールMのガスマニホールド17に供給される。
【0136】
ガスマニホールド17に供給された改質ガスは、複数の電気化学素子Qに対して分配され、電気化学素子Qとガスマニホールド17との接続部である下端から電気化学素子Qに供給される。改質ガス中の主に水素(還元性成分)が、電気化学素子Qにて電気化学反応に使用される。反応に用いられなかった残余の水素ガスを含む反応排ガスが、電気化学素子Qの上端から燃焼部36に排出される。
【0137】
反応排ガスは燃焼部36で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出口50から収納容器40の外部に排出される。燃焼排ガス排出口50には燃焼触媒部51(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去する。燃焼排ガス排出口50から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路52により熱交換器53に送られる。
【0138】
熱交換器53は、燃焼部36における燃焼で生じた燃焼排ガスと、供給される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。すなわち熱交換器53は、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
【0139】
なお、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)排出される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。反応排ガスには、電気化学素子Qにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
【0140】
<第11実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図11に示す。本実施形態では、第4実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0141】
本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、4つの電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1~第4電気化学反応部R4)とを有して構成される。本実施形態の電気化学反応部Rは、電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。
【0142】
本実施形態の金属基板1の構成は、第3実施形態のものと同様である。つまり、金属基板1の材料は、第3実施形態に係る金属基板1と同様である。金属基板1の表面には、拡散防止膜6が形成されている。金属基板1に、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)が、互いに離間して形成されている。
【0143】
金属基板1の表側4に、4つの電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1~第4電気化学反応部R4)が形成されている。
【0144】
詳しくは、まず4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、各々の気体通流許容領域Pより大きな領域に、各気体通流許容領域Pを覆って形成されている。4つの電極層Aは、互いに離間して形成されている。
【0145】
4つの中間層F(第1中間層F1~第4中間層F4)が、各々の電極層Aより大きな領域に、各電極層Aを覆って形成されている。4つの中間層Fは、互いに離間して形成されている。
【0146】
4つの電解質層B(第1電解質層B1~第4電解質層B4)が、各々の電極層Aおよび中間層Fより大きな領域に、各電極層Aおよび中間層Fを覆って形成されている。4つの電解質層Bは、互いに離間して形成されている。
【0147】
4つの反応防止層G(第1反応防止層G1~第4反応防止層G4)が、各々の電解質層Bの上に形成されている。
【0148】
4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が、各々の反応防止層Gの上に形成されている。
【0149】
本実施形態では、電極層Aと電解質層Bとの間に中間層Fが膜の状態で形成されている。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。
【0150】
中間層Fの材料としては、例えば、酸化セリウム系材料やジルコニア系材料等を用いることができる。中間層Fを電極層Aと電解質層Bとの間に導入することにより、電気化学反応部Rの性能や信頼性、耐久性を向上できる。なお中間層Fは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な中間層Fが得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0151】
本実施形態では、電解質層Bと対極電極層Cとの間に、反応防止層Gが膜の状態で形成されている。その膜厚は、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは5μm~20μm程度とすることができる。このような膜厚にすることで、高価な材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。
反応防止層Gの材料としては、例えば、酸化セリウム系材料やジルコニア系材料等を用いることができる。反応防止層Gを電解質層Bと対極電極層Cとの間に導入することにより、対極電極層Cの構成材料と電解質層Bの構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学反応部Rの性能の長期安定性を向上できる。なお反応防止層Gは、低温焼成法(例えば1400℃等の高温域での焼成処理をせず、例えば1100℃程度以下の低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1400℃等の高温域での焼成を用いずに、例えば1100℃程度以下の低温域での処理によって、良好な反応防止層Gが得られる。そのため、金属基板1に高温加熱によるダメージを与えることを抑制でき、また、金属基板1と電極層Aとの間の高温加熱による元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Qを実現できるので好ましい。
【0152】
各々の気体通流許容領域Pが電極層Aで覆われ、各々の電極層A(および中間層F)が電解質層Bで覆われることにより、気体通流許容領域Pから電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。すなわち本実施形態では、金属基板1は、互いに離間した複数の気体通流許容領域Pを有しており、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pの全体を覆って配置される
【0153】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。すなわち本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0154】
<第12実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図12に示す。本実施形態では、第11実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0155】
第11実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第11実施形態と類似する。
【0156】
各々の気体通流許容領域Pが電極層Aで覆われ、各々の電極層Aが電解質層Bで覆われることにより、気体通流許容領域Pから電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。すなわち本実施形態では、金属基板1は、互いに離間した複数の気体通流許容領域Pを有しており、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pの全体を覆って配置される
【0157】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。すなわち本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0158】
<第13実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図13に示す。本実施形態では、第11実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0159】
第11実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rでは、電解質層Bが複数の電気化学反応部Rに渡って設けられている。電解質層Bを除く構成は、第11実施形態と類似する。
【0160】
詳しくは、電解質層Bは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および4つの中間層F(第1中間層F1~第4中間層F4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。そして電解質層Bの上の、電極層Aに対応する領域に、4つの反応防止層G(第1反応防止層G1~第4反応防止層G4)、および4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が形成されている。
【0161】
4つの電極層Aおよび4つの対極電極層Cが互いに離間して形成されていることから、対向する電極層Aと対極電極層Cと、これらに挟まれた電解質層Bとによって、電気化学反応が生じ得る。つまり第1電極層A1と第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、電解質層B、および第1反応防止層G1)とによって、第1電気化学反応部R1が形成されている。同様に第2電極層A2~第4電極層A4と、第2対極電極層C2~第4対極電極層C4と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2~第4中間層F4、電解質層B、および第2反応防止層G2~第4反応防止層G4)によって、第2電気化学反応部R2~第4電気化学反応部R4が形成されている。すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0162】
そして第3実施形態と同様に、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。したがって、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
【0163】
<第14実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図14に示す。本実施形態では、第13実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0164】
第13実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第13実施形態と類似する。
【0165】
各々の気体通流許容領域Pが電極層Aで覆われ、各々の電極層Aが電解質層Bで覆われることにより、気体通流許容領域Pから電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。すなわち本実施形態では、金属基板1は、互いに離間した複数の気体通流許容領域Pを有しており、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pの全体を覆って配置される
【0166】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。すなわち本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0167】
<第15実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図15に示す。本実施形態では、第11実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0168】
第11実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rでは、電解質層Bおよび反応防止層Gが、複数の電気化学反応部Rに渡って設けられている。電解質層Bと反応防止層Gとを除く構成は、第11実施形態と類似する。
【0169】
詳しくは、電解質層Bは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および4つの中間層F(第1中間層F1~第4中間層F4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0170】
反応防止層Gは、電解質層Bの上に、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および4つの中間層F(第1中間層F1~第4中間層F4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。そして反応防止層Gの上の、電極層Aに対応する領域に、4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が形成されている。
【0171】
4つの電極層Aおよび4つの対極電極層Cが互いに離間して形成されていることから、対向する電極層Aと対極電極層Cと、これらに挟まれた電解質層Bとによって、電気化学反応が生じ得る。つまり第1電極層A1と第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、電解質層B、反応防止層G)とによって、第1電気化学反応部R1が形成されている。同様に第2電極層A2~第4電極層A4と、第2対極電極層C2~第4対極電極層C4と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2~第4中間層F4、電解質層B、および反応防止層G)によって、第2電気化学反応部R2~第4電気化学反応部R4が形成されている。すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0172】
そして第3実施形態と同様に、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。したがって、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
【0173】
<第16実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図16に示す。本実施形態では、第15実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0174】
第15実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第15実施形態と類似する。
【0175】
各々の気体通流許容領域Pが電極層Aで覆われ、各々の電極層Aが電解質層Bで覆われることにより、気体通流許容領域Pから電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。すなわち本実施形態では、金属基板1は、互いに離間した複数の気体通流許容領域Pを有しており、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pの全体を覆って配置される
【0176】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。すなわち本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0177】
<第17実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図17に示す。本実施形態では、第11実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0178】
第11実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rでは、中間層F、電解質層Bおよび反応防止層Gが、複数の電気化学反応部Rに渡って設けられている。中間層F、電解質層Bおよび反応防止層Gを除く構成は、第11実施形態と類似する。
【0179】
詳しくは、中間層Fは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。そして電解質層Bは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および中間層Fの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0180】
反応防止層Gは、電解質層Bの上に、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および中間層Fの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。そして反応防止層Gの上の、電極層Aに対応する領域に、4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が形成されている。
【0181】
4つの電極層Aおよび4つの対極電極層Cが互いに離間して形成されていることから、対向する電極層Aと対極電極層Cと、これらに挟まれた電解質層Bとによって、電気化学反応が生じ得る。つまり第1電極層A1と第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(中間層F、電解質層B、反応防止層G)とによって、第1電気化学反応部R1が形成されている。同様に第2電極層A2~第4電極層A4と、第2対極電極層C2~第4対極電極層C4と、これらに挟まれた部分(中間層F、電解質層B、および反応防止層G)によって、第2電気化学反応部R2~第4電気化学反応部R4が形成されている。すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0182】
そして第3実施形態と同様に、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。したがって、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
【0183】
<第18実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図18に示す。本実施形態では、第11実施形態と同様に、一つの電気化学反応部Rの電極層Aと、他の電気化学反応部Rの電極層Aとが電気的に接続され、もって複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0184】
第11実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rでは、中間層Fおよび電解質層Bが、複数の電気化学反応部Rに渡って設けられている。中間層Fおよび電解質層Bを除く構成は、第11実施形態と類似する。
【0185】
詳しくは、中間層Fは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。そして電解質層Bは、4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)および中間層Fの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0186】
そして電解質層Bの上の、電極層Aに対応する領域に、4つの反応防止層G(第1反応防止層G1~第4反応防止層G4)、および4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が形成されている。
【0187】
4つの電極層Aおよび4つの対極電極層Cが互いに離間して形成されていることから、対向する電極層Aと対極電極層Cと、これらに挟まれた電解質層Bとによって、電気化学反応が生じ得る。つまり第1電極層A1と第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(中間層F、電解質層B、第1反応防止層G1)とによって、第1電気化学反応部R1が形成されている。同様に第2電極層A2~第4電極層A4と、第2対極電極層C2~第4対極電極層C4と、これらに挟まれた部分(中間層F、電解質層B、および第2反応防止層G2~第4反応防止層G4)によって、第2電気化学反応部R2~第4電気化学反応部R4が形成されている。すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0188】
そして第3実施形態と同様に、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。したがって、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されているといえる。
【0189】
<第19実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図19に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cが、電気化学反応部Rを構成している。
【0190】
本実施形態の金属基板1の構成は、第3実施形態のものと同様である。つまり、金属基板1の材料は、第3実施形態に係る金属基板1と同様である。金属基板1の表面には、拡散防止膜6が形成されている。金属基板1に、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)が、互いに離間して形成されている。
【0191】
4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)が、各々の気体通流許容領域Pより大きな領域に、各気体通流許容領域Pを覆って形成されている。4つの電極層Aは、互いに離間して形成されている。
【0192】
4つの中間層F(第1中間層F1~第4中間層F4)が、各々の電極層Aより大きな領域に、各電極層Aを覆って形成されている。4つの中間層Fは、互いに離間して形成されている。
【0193】
第1電解質層B1が、第1電極層A1および第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2)および2つの電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)が、第1電解質層B1によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0194】
第2電解質層B2が、第3電極層A3および第4電極層A4の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4)および2つの電極層A(第3電極層A3および第4電極層A4)が、第2電解質層B2によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0195】
第1反応防止層G1が、第1電解質層B1の上に、2つの電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)および2つの中間層F(第1中間層F1および第2中間層F2)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0196】
第2反応防止層G2が、第2電解質層B2の上に、2つの電極層A(第3電極層A3および第4電極層A4)および2つの中間層F(第3中間層F4および第4中間層F4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0197】
第1対極電極層C1が、第1反応防止層G1の上に、2つの電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)および2つの中間層F(第1中間層F1および第2中間層F2)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0198】
第2対極電極層C2が、第2反応防止層G2の上に、2つの電極層A(第3電極層A3および第4電極層A4)および2つの中間層F(第3中間層F4および第4中間層F4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0199】
本実施形態では、4つの電極層Aが互いに離間して形成されている。それら4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)と、電解質層Bと、対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1と、第1対極電極層C1の左半分と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第1電気化学反応部R1が構成されていると解釈される。
第2電極層A2と、第1対極電極層C1の右半分と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第2電気化学反応部R2が構成されていると解釈される。
第3電極層A3と、第2対極電極層C2の左半分と、これらに挟まれた部分(第3中間層F3、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第3電気化学反応部R3が構成されていると解釈される。
第4電極層A4と、第2対極電極層C2の右半分と、これらに挟まれた部分(第4中間層F4、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第4電気化学反応部R4が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0200】
また本実施形態では、2つの対極電極層Cが互いに離間して形成されている。それら2つの対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)と、電解質層Bと、電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1および第2電極層A2と、第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1および第2中間層F2、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第5電気化学反応部R5が構成されていると解釈される。
第3電極層A3および第4電極層A4と、第2対極電極層C2と、これらに挟まれた部分(第3中間層F3および第4中間層F4、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第6電気化学反応部R6が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0201】
本実施形態の第5電気化学反応部R5および第6電気化学反応部R6のように、一つ電気化学反応部Rに複数の気体通流許容領域Pが対応する場合がある。このような場合でも、電気化学反応部Rの電解質層Bが、個々の気体通流許容領域Pの全体を覆って配置される。これにより、金属基板1の裏側から気体通流許容領域Pを通流して電極層Aに供給された気体が、金属基板1の表側に漏れ出ることを抑制でき、電気化学素子としての性能・信頼性を高めることができる。具体的には、第5電気化学反応部R5の第1電解質層B1が、第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2の全体を覆って配置される。第6電気化学反応部R6の第2電解質層B2が、第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4の全体を覆って配置される。
【0202】
<第20実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図20に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。第19実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第19実施形態と類似する。
【0203】
第1電解質層B1が、第1電極層A1および第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2)および2つの電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)が、第1電解質層B1によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0204】
第2電解質層B2が、第3電極層A3および第4電極層A4の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4)および2つの電極層A(第3電極層A3および第4電極層A4)が、第2電解質層B2によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0205】
本実施形態では、4つの電極層Aが互いに離間して形成されている。それら4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)と、電解質層Bと、対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1と、第1対極電極層C1の左半分と、これらに挟まれた部分(第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第1電気化学反応部R1が構成されていると解釈される。
第2電極層A2と、第1対極電極層C1の右半分と、これらに挟まれた部分(第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第2電気化学反応部R2が構成されていると解釈される。
第3電極層A3と、第2対極電極層C2の左半分と、これらに挟まれた部分(第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第3電気化学反応部R3が構成されていると解釈される。
第4電極層A4と、第2対極電極層C2の右半分と、これらに挟まれた部分(第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第4電気化学反応部R4が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0206】
また本実施形態では、2つの対極電極層Cが互いに離間して形成されている。それら2つの対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)と、電解質層Bと、電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1および第2電極層A2と、第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第5電気化学反応部R5が構成されていると解釈される。
第3電極層A3および第4電極層A4と、第2対極電極層C2と、これらに挟まれた部分(第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第6電気化学反応部R6が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0207】
<第21実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図21に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cが、電気化学反応部Rを構成している。
【0208】
本実施形態に係る電気化学素子Qの構成は、第19実施形態と類似する。第19実施形態と異なる点は、中間層Fが複数の電極層Aの上に渡って設けられている点である。第1中間層F1が、第1電極層A1および第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。第2中間層F2が、第3電極層A3および第4電極層A4の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0209】
第1電解質層B1が、第1電極層A1および第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2)および2つの電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)が、第1電解質層B1によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0210】
第2電解質層B2が、第3電極層A3および第4電極層A4の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4)および2つの電極層A(第3電極層A3および第4電極層A4)が、第2電解質層B2によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0211】
本実施形態では、4つの電極層Aが互いに離間して形成されている。それら4つの電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)と、電解質層Bと、対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1と、第1対極電極層C1の左半分と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第1電気化学反応部R1が構成されていると解釈される。
第2電極層A2と、第1対極電極層C1の右半分と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第2電気化学反応部R2が構成されていると解釈される。
第3電極層A3と、第2対極電極層C2の左半分と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第3電気化学反応部R3が構成されていると解釈される。
第4電極層A4と、第2対極電極層C2の右半分と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第4電気化学反応部R4が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0212】
また本実施形態では、2つの対極電極層Cが互いに離間して形成されている。それら2つの対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)と、電解質層Bと、電極層A(第1電極層A1~第4電極層A4)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1および第2電極層A2と、第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第5電気化学反応部R5が構成されていると解釈される。
第3電極層A3および第4電極層A4と、第2対極電極層C2と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第6電気化学反応部R6が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0213】
<第22実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図22に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cが、電気化学反応部Rを構成している。
【0214】
本実施形態の金属基板1の構成は、第3実施形態のものと同様である。つまり、金属基板1の材料は、第3実施形態に係る金属基板1と同様である。金属基板1の表面には、拡散防止膜6が形成されている。金属基板1に、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)が、互いに離間して形成されている。
【0215】
電極層Aは、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0216】
中間層Fは、電極層Aの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0217】
電解質層Bは、電極層Aおよび中間層Fの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および電極層Aが、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0218】
反応防止層Gは、電解質層Bの上に、電極層Aおよび中間層Fの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。
【0219】
反応防止層Gの上の、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)に対応する領域に、4つの対極電極層C(第1対極電極層C1~第4対極電極層C4)が形成されている。
【0220】
本実施形態に係る電気化学素子Qでは、電極層Aと対極電極層Cとの間に電解質層Bが配置されているから、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)を通って電極層Aに供給された物質と、対極電極層Cに供給された物質との間で、電気化学反応が生じうる。したがって、電極層A、中間層F、電解質層B、および反応防止層Gにおける第1気体通流許容領域P1と第1対極電極層C1とによって挟まれた部分と、第1対極電極層C1とによって、第1電気化学反応部R1が形成されていると解釈される。
電極層A、中間層F、電解質層B、および反応防止層Gにおける第2気体通流許容領域P2と第2対極電極層C2とによって挟まれた部分と、第2対極電極層C2とによって、第2電気化学反応部R2が形成されていると解釈される。
電極層A、中間層F、電解質層B、および反応防止層Gにおける第3気体通流許容領域P3と第3対極電極層C3とによって挟まれた部分と、第3対極電極層C3とによって、第3電気化学反応部R3が形成されていると解釈される。
電極層A、中間層F、電解質層B、および反応防止層Gにおける第4気体通流許容領域P4と第4対極電極層C4とによって挟まれた部分と、第4対極電極層C4とによって、第4電気化学反応部R4が形成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0221】
本実施形態では上述の通り、金属基板1の表面に導電性を有する拡散防止膜6が形成されている。したがって、互いに離間して形成されている複数の電極層Aは、金属基板1を通じて電気的に接続されている。すなわち本実施形態では、隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0222】
<第23実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図23に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。第22実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第22実施形態と類似する。
【0223】
電解質層Bは、電極層Aの全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)および電極層Aが、電解質層Bによって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0224】
本実施形態では第22実施形態と同様に、金属基板1の表側4に、4つの電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1~第4電気化学反応部R4)が配置されている。そして隣接する電気化学反応部Rの電極層Aが金属基板1を通じて電気的に接続されることにより、複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている。
【0225】
<第24実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図24に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。電極層A、中間層F、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cが、電気化学反応部Rを構成している。
【0226】
本実施形態に係る電気化学素子Qの構成は、第19実施形態と類似する。第19実施形態と異なる点は、電極層Aおよび中間層Fが複数の気体通流許容領域Pの上に渡って設けられている点である。
第1電極層A1が、第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。第1中間層F1が、第1電極層A1の全体を覆う状態で設けられている。
第2電極層A2が、第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。第2中間層F2が、第2電極層A2の全体を覆う状態で設けられている。
【0227】
第1電解質層B1が、第1電極層A1の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2)および第1電極層A1が、第1電解質層B1によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0228】
第2電解質層B2が、第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4)および第2電極層A2が、第2電解質層B2によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0229】
本実施形態に係る電気化学素子Qでは、電極層Aと対極電極層Cとの間に電解質層Bが配置されているから、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)を通って電極層Aに供給された物質と、対極電極層Cに供給された物質との間で、電気化学反応が生じうる。したがって、第1気体通流許容領域P1の上側の電極層Aの部分、中間層Fの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第1電気化学反応部R1が形成されていると解釈される。
第2気体通流許容領域P2の上側の電極層Aの部分、中間層Fの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第2電気化学反応部R2が形成されていると解釈される。
第3気体通流許容領域P3の上側の電極層Aの部分、中間層Fの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第3電気化学反応部R3が形成されていると解釈される。
第4気体通流許容領域P4の上側の電極層Aの部分、中間層Fの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第4電気化学反応部R4が形成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0230】
また本実施形態では、2つの対極電極層Cが互いに離間して形成されている。それら2つの対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)と、電解質層B(第1電解質層B1および第2電解質層B2)と、電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1と、第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1中間層F1、第1電解質層B1、第1反応防止層G1)とによって、第5電気化学反応部R5が構成されていると解釈される。
第2電極層A2と、第2対極電極層C2と、これらに挟まれた部分(第2中間層F2、第2電解質層B2、第2反応防止層G2)とによって、第6電気化学反応部R6が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0231】
<第25実施形態>
本実施形態に係る電気化学素子Qを図25に示す。本実施形態に係る電気化学素子Qは、金属基板1と、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。第19実施形態と異なり、本実施形態に係る電気化学反応部Rには、中間層Fが設けられていない。すなわち電気化学反応部Rは、電極層A、電解質層B、反応防止層G、および対極電極層Cを有して構成される。中間層Fを除く構成は、第24実施形態と類似する。
【0232】
第1電解質層B1が、第1電極層A1の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1および第2気体通流許容領域P2)および第1電極層A1が、第1電解質層B1によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0233】
第2電解質層B2が、第2電極層A2の全体を覆う状態で、一繋がりの層として形成されている。2つの気体通流許容領域P(第3気体通流許容領域P3および第4気体通流許容領域P4)および第2電極層A2が、第2電解質層B2によって覆われている。これにより、電極層Aに供給された気体が対極電極層Cの側に漏れ出すことが抑制されている。
【0234】
本実施形態に係る電気化学素子Qでは、電極層Aと対極電極層Cとの間に電解質層Bが配置されているから、4つの気体通流許容領域P(第1気体通流許容領域P1~第4気体通流許容領域P4)を通って電極層Aに供給された物質と、対極電極層Cに供給された物質との間で、電気化学反応が生じうる。したがって、第1気体通流許容領域P1の上側の電極層Aの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第1電気化学反応部R1が形成されていると解釈される。
第2気体通流許容領域P2の上側の電極層Aの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第2電気化学反応部R2が形成されていると解釈される。
第3気体通流許容領域P3の上側の電極層Aの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第3電気化学反応部R3が形成されていると解釈される。
第4気体通流許容領域P4の上側の電極層Aの部分、電解質層Bの部分、反応防止層Gの部分および対極電極層Cの部分によって、第4電気化学反応部R4が形成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0235】
また本実施形態では、2つの対極電極層Cが互いに離間して形成されている。それら2つの対極電極層C(第1対極電極層C1および第2対極電極層C2)と、電解質層B(第1電解質層B1および第2電解質層B2)と、電極層A(第1電極層A1および第2電極層A2)とによって、電気化学反応が生じうる。したがって、第1電極層A1と、第1対極電極層C1と、これらに挟まれた部分(第1電解質層B1および第1反応防止層G1)とによって、第5電気化学反応部R5が構成されていると解釈される。
第2電極層A2と、第2対極電極層C2と、これらに挟まれた部分(第2電解質層B2および第2反応防止層G2)とによって、第6電気化学反応部R6が構成されていると解釈される。
すなわち本実施形態では、金属基板1の表側4に、複数の電気化学反応部Rが配置されている。
【0236】
<第26実施形態>
本実施形態に係る電気化学モジュールMを図26に示す。本実施形態に係る電気化学モジュールMは、電気化学モジュールMは、上述した電気化学素子Qが複数積層した状態で配置されるモジュールである。第26実施形態に係る電気化学モジュールMには、第11実施形態~第25実施形態に係る電気化学素子Q、すなわち複数の電気化学反応部Rが電気的に並列に接続されている電気化学素子Qが用いられる。
【0237】
電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Q(Q1、Q2等)と、複数の集電板S(S1、S2等)とを有して構成される。本実施形態では、電気化学素子Qは第11実施形態と同様の構成を有するものとして説明する。
【0238】
本実施形態では、電気化学素子Qの対極電極層Cの上に、集電層Hが設けられている。集電層Hとしては、導電性に優れたセラミックペーストや、金属フェルト材料等が用いられる。
【0239】
集電板Sは、波状に形成された金属製の板である。集電板Sの材料としては、上述の金属基板1と同様のものを用いることができる。また集電板Sの表面に、金属基板1と同様の拡散防止膜を形成すると、Cr飛散を抑制することができ好適である。以上の様に構成される集電板Sは、プレス成形などにより低コストで製造することが可能である。なお集電板Sは、表側と裏側との間で気体が通流できないよう、気体を透過しない材料で構成される。
【0240】
図26に示すように、電気化学素子Qと集電板Sとが交互に積層して配置される。集電板Sの波形の上側の頂点が、金属基板1の裏側5に、電気的に導通した状態で接合される。この接合は例えば、導電性に優れたセラミックスペースト等を塗布して集電板Sを金属基板1に向けて付勢して行う。また例えば、溶接やろう付けにより行う。
【0241】
集電板Sの波形の下側の頂点が、電気化学素子Qの集電層Hに、電気的に導通した状態で接合される。この接合は例えば、上述した集電層Hのセラミックペーストの焼結や、金属フェルトへの集電板Sの付勢により行う。
【0242】
以上の構成により、例えば集電板Sは、電気化学素子Q1の金属基板1と、電気化学素子Q2の集電層Hとを電気的に接続する。そうすると、電気化学素子Q1の電極層Aと、電気化学素子Q2の対極電極層Cとが電気的に接続されることになる。つまり、電気化学素子Q1の電気化学反応部Rと、電気化学素子Q2の電気化学反応部Rとが、電気的に直列に接続されることになる。
【0243】
図26に示す形態で複数の電気化学素子Qと複数の集電板Sとが積層されると、集電板Sが、一つの電気化学素子Qの金属基板1と、下側に配置された電気化学素子Qの集電層Hとが電気的に接続されることになる。そうすると、一つの電気化学素子Qの電極層Aと、その下側の電気化学素子Qの対極電極層Cとが電気的に接続されることになる。つまり本実施形態に係る電気化学モジュールMでは、集電板Sによって、複数の電気化学素子Qの電気化学反応部Rが電気的に直列に接続される。
【0244】
上述の通り電気化学素子Qでは、金属基板1の表側4に複数の電気化学反応部Rが配置される。そしてそれら複数の電気化学反応部R(第1電気化学反応部R1~第4電気化学反応部R4)は、電気的に並列に接続される。そうすると、本実施形態に係る電気化学モジュールMでは、各々の電気化学素子Qで電気化学反応部Rが電気的に並列に接続され、それら電気化学反応部Rが集電板Sによって、電気的に直列に接続される。
【0245】
<他の実施形態>
(1)上述の第1実施形態及び第2実施形態では、金属基板1の表面に絶縁被膜を形成したが、筒状ガス流通部10を形成するU字部材11や蓋部12などの電気化学素子Qや電気化学モジュールMの形成に関連して金属基板1以外に用いる部材に金属材料を使用する場合、必要に応じて、そのような金属材料の表面に絶縁被膜や拡散防止膜を形成して用いることもできる。
【0246】
(2)上述の実施形態では、金属基板1と電解質層Bとの間に電極層Aを配置し、電解質層Bからみて金属基板1と反対側に対極電極層Cを配置した。電極層Aと対極電極層Cとを逆に配置する構成も可能である。つまり、金属基板1と電解質層Bとの間に対極電極層Cを配置し、電解質層Bからみて金属基板1と反対側に電極層Aを配置する構成も可能である。この場合、電気化学素子Qへの気体の供給についても変更する必要がある。例えば電気化学素子Qを燃料電池として動作させる場合、金属基板1の気体通流許容領域Pを通じて対極電極層Cに酸素を供給し、電気化学素子Qの周囲から電極層Aに水素を供給する。
【0247】
(3)上述の実施形態では、金属基板1に5つ(または4つ)の電気化学反応部Rを設けた。電気化学反応部Rの数はこれに限らず、2つ以上であればよい。
【0248】
(4)上述の実施形態では、金属基板1に1列または2列の電気化学反応部Rを設けた。電気化学反応部Rの列の数はこれに限らず、3列以上であってもよい。
【0249】
(5)上述の第7実施形態では、直列に接続された複数の電気化学反応部Rが並列に接続される形態を示したが、直列に接続された複数の電気化学反応部Rを直列に接続するように構成してもよい。また、直列に接続された複数の電気化学反応部Rが直列接続と並列接続が併存するように構成してもよい。
【0250】
(6)上述の第8実施形態では、並列に接続された複数の電気化学反応部Rが直列に接続される形態を示したが、並列に接続された複数の電気化学反応部Rを並列に接続するように構成してもよい。また、並列に接続された複数の電気化学反応部Rが直列接続と並列接続が併存するように構成してもよい。
【0251】
(7)一つの電気化学素子Qに、電気化学反応部Rの直列接続と並列接続が併存してもよい。例えば、金属基板1に4行4列の電気化学反応部Rを形成し、一つの行内の4つの電気化学反応部Rを直列接続し、行の両端の電気化学反応部Rを並列に接続して、電気化学素子Qを構成してもよい。なお、上述の(5)や(6)の形態にこのような直列接続と並列接続が併存する複数の電気化学反応部Rを適用してもよい。
【0252】
(8)上述の実施形態では、平板型の電気化学素子および電気化学モジュールについて示したが、本発明の電気化学素子および電気化学モジュールは円筒型や円盤型に適用してもよい。
【0253】
(9)上述の第1および第2実施形態では、金属基板1にU字部材11と蓋部12とが接合されて、筒状ガス流通部10が形成される電気化学素子の形態を示したが、複数の金属基板1を用いて、筒状ガス流通部10を形成してもよい。図27および図28に、2数の金属基板1に2枚の側面接合部材15と蓋部12を接合して、筒状ガス流通部10を形成した例を示した。側面接合部材15は、矩形状の部材である。2枚の金属基板1の長辺と2枚の側面部材15の各長辺とが接合され、形成された筒の一方の端部が蓋部12で塞がれている。これにより、内部に内部空間22を有し全体として平板あるいは平棒状の筒状ガス流通部10が構成されている。金属基板1は、筒状ガス流通部10の中心軸に対して平行に配置され、電気化学素子の両面に電気化学反応部が備えられている。
この電気化学素子Qを用いて、上述の第7実施形態に示したのと同様な電気化学モジュールMを構成することが可能である。
【0254】
(10)上述の実施形態では、金属基板1の表側4と裏側5とを貫通して形成される貫通孔2は、表側4と裏側5の間で気体の通流が可能となるように連通していればよく、その配置は、図1~4に示されるように長辺と短辺とに平行な格子の交点位置に形成されていることに限定されず、図1~4、11~26に示されるように金属基板1の板面に対して直交する円状孔には限定されない。貫通孔2の径は一定でなくとも良く、テーパー状でもよい。また貫通孔2は屈曲していても良い。
【0255】
(11)上述の実施形態では、気体通流禁止領域は、貫通孔を形成しない領域を設けることにより構成する例が示されているが、一旦貫通孔を形成した後、貫通孔の少なくとも一部を閉塞することにより構成しても良い。貫通孔の閉塞方法としては、貫通孔内に気密性材料を充填する方法や、図29に示すように金属基板の一面に貫通孔を形成していない閉塞材料16を接合あるいは当接する方法などによっても構成することができる。
【0256】
(12)上述の第1,3,11~26実施例では、気体通流許容領域Pが電極層Aにより覆われるように配置されているが、図30(単一の電気化学反応部のみを図示)に示すように、電解質層Bが、少なくとも気体通流許容領域Pもしくは気体通流許容領域Pに設けられた電極層Aを覆って配置されればよい。これにより、金属基板の裏側から気体通流許容領域を通流して電極層に供給された気体が、金属基板の表側に漏れ出ることを抑制でき、電気化学素子としての性能・信頼性を高めることができる。
【0257】
(13)上述の実施形態では、電気化学モジュールMにおいて電気化学素子Qが複数積層した状態、すなわち複数集合した状態で配置される例を説明した。電気化学モジュールMとしては、電気化学素子Qが積層しない状態で集合した形態も可能である。
【0258】
(14)電気化学素子を次のように構成してもよい。電気化学素子は、金属基板と、複数の電気化学反応部とを有し、前記金属基板は、前記金属基板の表側と裏側との間での気体の通流を許容する気体通流許容領域を有し、前記電気化学反応部は、電極層と、電解質層と、対極電極層とを少なくとも有し、前記金属基板の表側に配置されており、前記電解質層は、前記電極層と前記対極電極層との間に配置されており、前記電極層に、前記気体通流許容領域を通流した気体が供給される。
【0259】
(15)さらに電気化学素子が次の構成を有してもよい。前記金属基板は、互いに離間した複数の前記気体通流許容領域を有しており、前記電気化学反応部の前記電解質層が、個々の前記気体通流許容領域の全体を覆って配置される。
【0260】
(16)さらに電気化学素子が次の構成を有してもよい。前記金属酸化物被膜が、前記金属基板に含まれる金属元素の酸化物である。
【0261】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0262】
1 :金属基板
3 :絶縁被膜(金属酸化物被膜)
4 :表側
5 :裏側
6 :拡散防止膜(金属酸化物被膜)
A :電極層
B :電解質層
C :対極電極層
M :電気化学モジュール
N :気体通流禁止領域
P :気体通流許容領域
Q :電気化学素子
R :電気化学反応部
Y :電気化学装置
Z :エネルギーシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30