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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】流体発電システム及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
   F03B 9/00 20060101AFI20221110BHJP
   F03B 13/26 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F03B9/00
F03B13/26
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022004723
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511216204
【氏名又は名称】東福 憲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100101926
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 孝和
(72)【発明者】
【氏名】東福 憲郎
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第6894556(JP,B1)
【文献】特表2020-507714(JP,A)
【文献】特開2007-32638(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138322(WO,A1)
【文献】特許第6731561(JP,B1)
【文献】特開2008-14154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 9/00
F03B 13/26
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する流体駆動装置と、当該流体駆動装置の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、これら流体駆動装置と発電装置とを流体上で保持するための浮体装置とを備えた流体発電システムであって、
上記流体駆動装置は、
水平な回転中心軸を中心に回転可能な第1の回転体と、
上記第1の回転体と横並びで且つその回転中心軸が上記第1の回転体の回転中心軸と平行な第2の回転体と、
上記第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、
各抵抗部材が流体圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、
その回転中心軸が上記第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、上記第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ上記浮体装置上に固定された支持体により上下動自在に支持された複数の補助回転体と
を備え、
上記発電装置は、
上記流体駆動装置の出力軸の回転力を発電機の回転軸で受けて発電動作を行うものであり、
上記浮体装置は、
上記支持体が取り付けられ且つ上記流体駆動装置と発電装置とが上記支持体に組み付けられた浮体具と、
流されないように上記浮体具を所定位置に維持するための1つ以上の係留具と
を備え、
上記流体駆動装置は、上記支持体を介して上記浮体具の外部上方に配設され、
上記浮体装置の浮体具は、流体を注入又は排出することで、浮体具全体を流体内に沈み又は浮上可能な空洞体である、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
上記浮体装置の係留具は、一方の端が上記浮体具に連結された線状部材と、当該線状部材の他方の自由端に取り付けられた固定部材とでなる、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
所定の断面形状を有した線状溝を、上記第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体の周面に設けると共に、当該線状溝の断面形状と同形状の断面形状を有して当該線状溝と嵌合可能な線状突起を、上記無端ベルトの内面に設けた、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の流体発電システムにおいて、
上記第1の回転体及び第2の回転体の周面に設けられた上記線状溝を、同形の列状の穴に設定すると共に、上記無端ベルトの内面に設けられた線状突起を、上記列状の穴の断面形状と同形状の断面形状を有して上記列状の穴と嵌合可能な列状の突起物に設定した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
流体圧を受けるための受圧面部を有する複数の第2の抵抗部材が円周面に所定の間隔で立設され、上記第2の回転体と1体に回転可能で且つその回転中心軸を上記出力軸とする第3の回転体を設けた、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
流体圧を受けるための受圧面部を有する複数の第3の抵抗部材が円周面に所定間隔で立設された第4の回転体を、上記流体駆動装置における第1の回転体の回転中心軸又は第2の回転体の回転中心軸の少なくとも一方の端部側に連結した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項7】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
上記第1の抵抗部材を、可撓性素材で形成された上記受圧面部と、当該受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項8】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
複数の上記第1の抵抗部材を、上記受圧面部が交互に逆向きになるように、上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の流体発電システムにおいて、
上記各第1の抵抗部材を、断面略半円弧状の上記受圧面部と、当該受圧面部が上記無端ベルトの長さ方向を向くように、当該受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させる支持部材とで形成した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項10】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
第1の抵抗部材を、互いに背中合わせに接合された1対の上記受圧面部と、これら1対の受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の流体発電システムにおいて、
上記各第1の抵抗部材を、それぞれが断面略半円弧状の1対の上記受圧面部と、当該1対の受圧面部が上記無端ベルトの長さ方向を向くように、当該1対の受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させる上記支持部材とで形成し、
上記各第1の抵抗部材における1対の受圧面部のそれぞれが互いに逆向きになるように、当該1対の受圧面部を背中合わせに接合した、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項12】
請求項1に記載の流体発電システムにおいて、
上記流体駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた、
ことを特徴とする流体発電システム。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の流体発電システムを流体上に設置するための流体発電システムの設置構造であって、
上記複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされて、上記無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲するように設定されており、
そして、第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置し且つ上記湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が当該流体内に完没するように、浮体装置の浮体具が流体上又は流体中に配置され且つ当該浮体具が上記係留具によって当該配置位置に固定されている、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項14】
請求項13に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項15】
請求項13に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項16】
請求項13に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記流体駆動装置のうち流体面の上方にある装置部分を少なくとも周囲から囲み且つ流体内に完没している装置部分を両側からのみ囲む防護カバーを設けた、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項17】
請求項16に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記防護カバーは、上記流体駆動装置を上方から覆う上面部を有する、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して発電効率を高めることができる流体発電システム及びその設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇に加えて地球温暖化等の地球環境問題が深刻化していることから、自然エネルギを利用した発電装置、及び発電方法が注目されている。特に、CO2の排出権問題やRPS(Renewable Portfolio Standard)制度の導入により、今後さらにその重要性が増すことが予想される。
【0003】
例えば、自然エネルギ源である太陽光を利用する太陽光発電装置は、その設置が容易であるとともに発電コストも比較的安いことから、住宅や農業ハウスの屋根発電からメガソーラー発電所のような大規模設備迄その普及が急速に進んでいる。
【0004】
また、従来の固定式の太陽光発電装置に加えて、設置工事等が不要であり、運搬や設置場所の変更を容易に行える携帯型の太陽光発電装置も注目されている。例えば特許文献1には、電源のない野外等の任意の場所に設置して利用することができる携帯型の太陽光発電装置が開示されている。
【0005】
具体的には、電気的に接続した多数のシート状、又はフィルム状の太陽光発電シートを収納ケース内に引き伸ばし自在に収納した状態で持ち運び可能とし、使用者は任意の場所にて収納ケースから太陽光発電シートを引き出すことで、電源のない野外においても太陽光を効率的に利用して発電することで電気機器を利用することが可能となっている。
【0006】
また、風力や水力といった流体を作業体として駆動装置を駆動させることで発電機を発電させる流体駆動装置も数多く提案されている。例えば特許文献2には、河川や農業用水路等の水路に設置して、自然エネルギ源としての水を利用する水力発電装置が開示されている。
【0007】
具体的には、対向配置された2枚の円盤部と、円盤部の中心軸部から放射状に等間隔で取り付けられたパドル部からなる本体部を備え、水中のパドル部が水流圧を受けることにより、パドル部が接続される水軸が得られる回転力を利用して発電装置を駆動する構成となっている。
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の太陽光発電装置においては、発電量が天候や日射量に左右されてしまい、特に晴れた日の昼間の日射量が比較的大きな時間帯でしか安定的な発電ができないという問題がある。
【0009】
一方、上記した特許文献2に開示の水力発電装置が設置される河川や農業用水路等では、季節ごとに所定の流量が維持されるように水量調整がされるため、継続的に一定の流量を確保ずることが可能である。そのため、太陽光発電装置のように日射量等の外部要因により発電量が不安定となることがなく、1年を通して安定的な発電が可能である。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示の水力発電装置は、その直径が最大で約1,4m程度と大型であり、例えば水深の浅い河川や、流速の遅い河川に設置した場合に、パドル部が水車を回転させるだけの十分な水圧を受けることができず、目論見通りの発電量が得られないことが凝念される。
【0011】
そこで、近年、特許文献3及び特許文献4に示すように、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して、天候や日射量に左右されることなく、高発電効率と大きな発電量を安定的に得ることができる流体発電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2006-86203号公報
【文献】特開2012-92750号公報
【文献】特許第6731561号公報
【文献】特許第6894556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した特許文献3及び特許文献4で提案されている流体発電システムでは、支持体を水底に固定する構造であるため、水深の浅い水上で使用する場合には、流体発電システムを建設するコストや時間はさほどかからない。
しかしながら、これらの流体発電システムでは、水深の深い洋上で使用する場合に、システムを建設するための莫大なコストや時間がかかる。さらに、洋上では、満潮や干潮の現象によって、海面の位置が上下する。このため、安定した電力量を得るには、システムの高さを満潮や干潮の都度調整しなければならず、メイテナンス作業が面倒であるという問題がある。
【0014】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上で使用する場合においても、システムの建設コストの低減とメイテナンス作業の負担軽減とを図ることができる流体発電システム及びその設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、第1の発明は、流体圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する流体駆動装置と、当該流体駆動装置の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、これら流体駆動装置と発電装置とを流体上で保持するための浮体装置とを備えた流体発電システムであって、流体駆動装置は、第1の回転体と、第1の回転体と所定間隔を保ち且つその回転中心軸が第1の回転体の回転中心軸と平行な第2の回転体と、第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、各抵抗部材が流体圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、その回転中心軸が第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ上記浮体装置上に固定された支持体により上下動自在に支持された複数の補助回転体とを備え、発電装置は、流体駆動装置の出力軸の回転力を発電機の回転軸で受けて発電動作を行うものであり、浮体装置は、支持体が取り付けられ且つ流体駆動装置と発電装置とが支持体に組み付けられた浮体具と、流されないように浮体具を所定位置に維持するための1つ以上の係留具とを備える構成とした。
かかる構成により、浮体装置の浮体具を流体上に浮かべ、浮体具を係留具によって所望の深さ位置に固定することができる。つまり、流体駆動装置と発電装置とを浮体装置を介して流体上の所定位置に固定することができる。
このとき、流体駆動装置における複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置決めすることで、無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分を、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲するように設定することができる。そして、流体駆動装置と発電装置との支持体への組み付け高さを予め設定しておくことで、第1の回転体及び第2の回転体を流体面の上方に位置させると共に、湾曲した下側の無端ベルト部分にある複数の第1の抵抗部材を流体内に完没させることができる。
これにより、流体内に完没した複数の第1の抵抗部材が、流体中で流体圧を受けると、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、流体圧方向に回転し、その回転力が流体駆動装置の出力軸に出力される。すると、この回転力は、発電装置における発電機の回転軸に伝達され、発電機による発電動作が行われる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に係る流体発電システムにおいて、浮体装置の浮体具は、流体を注入及び排出可能な空洞体である構成とした。
かかる構成により、流体を浮体具内に注入又は排出することで、浮体具を流体内の所望の深さに位置させることができる。また、流体を浮体具内に注入することで、流体発電システム全体の重心位置を低くすることができ、この結果、流体に浮いている流体発電システム全体が安定した状態にすることができる。
【0017】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に係る流体発電システムにおいて、浮体装置の係留具は、一方の端が浮体具に連結された線状部材と、当該線状部材の他方の自由端に取り付けられた固定部材とでなる構成とした。
【0018】
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、所定の断面形状を有した線状溝を、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体の周面に設けると共に、当該線状溝の断面形状と同形状の断面形状を有して当該線状溝と嵌合可能な線状突起を、無端ベルトの内面に設けた構成とする。
かかる構成により、第1の抵抗部材が流体圧を受けると、線状溝が線状突起に嵌合した状態で、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体と無端ベルトとが一体に回転する。つまり、無端ベルトを第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体に巻き付けただけの構成であると、流体の流れ方向によって、無端ベルトが横ずれして、第1の回転体等から外れてしまうおそれがある。しかし、この発明では、無端ベルトが、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体に巻き付けられているだけでなく、その線状突起が第1の回転体等の線状溝に嵌合しているので、無端ベルトは、どのような方向の流体圧を受けても、第1の回転体等から外れることはない。
【0019】
第5の発明は、第4の発明に係る流体発電システムにおいて、第1の回転体及び第2の回転体の周面に設けられた線状溝を、同形の列状の穴に設定すると共に、無端ベルトの内面に設けられた線状突起を、列状の穴の断面形状と同形状の断面形状を有して列状の穴と嵌合可能な列状の突起物に設定した構成とする。
【0020】
第6の発明は、第1の発明ないし第5の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、流体圧を受けるための受圧面部を有する複数の第2の抵抗部材が円周面に所定の間隔で立設され、第2の回転体と1体に回転可能で且つその回転中心軸を出力軸とする第3の回転体を設けた構成とする。
かかる構成により、第1の回転体と第2の回転体とが、流体圧方向に回転すると、第3の回転体も回転し、大きな回転エネルギが第2の回転体と第3の回転体とによって生成され、この回転エネルギに対応した回転力が流体駆動装置の出力軸に出力される。
すると、この大きな回転力は、発電機の回転軸に伝達され、発電機による発電動作が行われる。
このように、この発明では、第2の回転体と第3の回転体とによって生成された大きな回転エネルギを発電装置に直接伝達する構成であるので、回転効率が向上し、その分、発電機による発電量も増大する。
【0021】
第7の発明は、第1の発明ないし第6の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、流体圧を受けるための受圧面部を有する複数の第3の抵抗部材が円周面に所定間隔で立設された第4の回転体を、流体駆動装置における第1の回転体の回転中心軸又は第2の回転体の回転中心軸の少なくとも一方の端部側に連結した構成とする。
かかる構成により、第3の抵抗部材が流体圧を受けて、第4の回転体が回転するので、その回転力が、第4の回転体が連結されている第1又は第2の回転体に加わる。この増加した回転力は、第2の回転体、第3の回転体を通じて、発電機に伝達されるので、発電量のさらなる増大を図ることができる。
【0022】
第8の発明は、第1の発明ないし第7の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、第1の抵抗部材を、可撓性素材で形成された受圧面部と、当該受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した構成とする。
かかる構成により、第1の抵抗部材は、流れに対向する受圧面部で流体圧を受けて、第1の回転体及び第2の回転体を回転させる。そして、流体の流れ方向が変わった場合には、可撓性素材で形成された受圧面部が流れ方向に撓む。この結果、受圧面部が流れに対向するように変化し、流体圧を受けて、第1の回転体及び第2の回転体を回転させる。
つまり、この発明によれば、流体の流れの向きの変化に応じて、第1の抵抗部材の受圧面部の向きが変わるので、流体の流れの向きが変わった場合に、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0023】
第9の発明は、第1の発明ないし第7の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、複数の第1の抵抗部材を、受圧面部が交互に逆向きになるように、無端ベルトの表面に所定の間隔で立設した構成とする。
かかる構成により、流体の流れが変わっても、流れの方向に対向する受圧面部を有する第1の抵抗部材が、流体圧を捉えるので、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0024】
第10の発明は、第9の発明に係る流体発電システムにおいて、各第1の抵抗部材を、断面略半円弧状の受圧面部と、当該受圧面部が無端ベルトの長さ方向を向くように、当該受圧面部を無端ベルトの表面に起立させる支持部材とで形成した構成とする。
第1の抵抗部材の受圧面部が断面略半円弧状に形成されているので、受圧面部の凹面側で流体の流れを受ける場合、極めて大きな力を流体から受けることができる。しかし、流れが逆方向に変化した場合には、流体の流れを第1の抵抗部材の凸面側で受けることになり、流体から受けることができる力は激減する。
しかしながら、この発明は、断面略半円弧状の受圧面部が交互に逆向きになるように、複数の第1の抵抗部材が無端ベルトの表面に立設された構成になっているので、流体発電システムを1度設置すれば、流体の流れの方向が変わった場合においても、常に、流体の流れを受圧面部の凹面側で受けることができる。
【0025】
第11の発明は、第1の発明ないし第7の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、第1の抵抗部材を、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部と、これら1対の受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した構成とする。
かかる構成により、流体の流れが変わっても、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部のうち、流れの方向に対向する受圧面部が流体を捉えるので、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0026】
第12の発明は、第11の発明に係る流体発電システムにおいて、各第1の抵抗部材を、それぞれが断面略半円弧状の1対の受圧面部と、当該1対の受圧面部が無端ベルトの長さ方向を向くように、当該1対の受圧面部を無端ベルトの表面に起立させる支持部材とで形成し、各第1の抵抗部材における1対の受圧面部のそれぞれが互いに逆向きになるように、当該1対の受圧面部を背中合わせに接合した構成とする。
かかる構成により、この発明の流体発電システムを1度設置すれば、流れの方向が変わった場合においても、常に、流体の流れを受圧面部の凹面側で受けることができる。
【0027】
第13の発明は、第1の発明ないし第12の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、流体駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた構成とする。
かかる構成により、流体の流れ方向に変化がない場合には、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、例えば同一方向に設定することができる。そして、流体の流れ方向が逆転した場合には、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、逆方向に設定することができる。つまり、この発明によれば、流体発電システムの向きを流体の流れ方向に合わせて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0028】
第14の発明は、第1の発明ないし第13の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムを流体上に設置するための流体発電システムの設置構造であって、複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされて、無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲するように設定されており、そして、第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置し且つ湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が当該流体内に完没するように、浮体装置の浮体具が流体上又は流体中に配置され且つ当該浮体具が係留具によって当該配置位置に固定されている構成とした。
かかる構成により、流体内に完没した複数の第1の抵抗部材が、流体中で流体圧を受けると、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、流体圧方向に回転し、その回転力が流体駆動装置の出力軸に出力される。すると、この回転力が、発電装置における発電機の回転軸に伝達されて、発電機による発電動作が行われる。
また、第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置しているので、流体面上にある第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトの部分とが、流体による抵抗を受けない。この結果、第1の回転体と第2の回転体とが効率的に回転する。
なお、流体発電システムを洋上等、干潮及び満潮の現象がある場所に設置した場合には、満潮時に、第1及び第2の回転体と無端ベルトとが、海中に完没してしまうおそれがある。かかるおそれがある場所に設置する場合には、支持体の高さを通常よりも高く設定しておくことで、満潮時においても、第1及び第2の回転体と無端ベルトとが、海中に完没しないようすることができる。
また、このような場所に設置すると、潮汐の影響による海面の上下変動が起こるので、流体駆動装置や発電装置は海面変動の作用を受ける。しかし、浮体装置の浮体具が係留具によって固定されているので、浮体装置上の流体駆動装置や発電装置は、海面の上下変動に影響されない。つまり、流体駆動装置や発電装置は、海面の上下動や波浪等によって横揺れ等を起こすことはなく、配置位置に位置し続けることになる。
【0029】
第15の発明は、第14の発明に係る流体発電システムの設置構造において、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた構成とする。
かかる構成により、複数の第1の抵抗部材が、流体圧を効率的に確保することができ、この結果、極めて大きな電力を発電することができる。
すなわち、上記下方に位置する補助回転体よりも上流側に位置する複数の第1の抵抗部材が、流体圧を強く受ける。そして、上記下方に位置する補助回転体よりも下流側に位置する複数の第1の抵抗部材が受ける流体圧は、弱い。
しかし、この発明では、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置している。このため、ほぼ全ての第1の抵抗部材が強い流体圧を効率的に受けることができ、その結果、極めて大きな電力を発電することができる。
【0030】
第16の発明は、第14の発明に係る流体発電システムの設置構造において、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた構成とする。
かかる構成により、上記下方に位置させた補助回転体よりも上流に位置する複数の第1の抵抗部材が、流体圧を受けて、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトが回転することになる。したがって、例えば、流体が左から右に流れている場合、下方に位置している補助回転体よりも左側に位置する複数の第1の抵抗部材がその流体圧を受け、右側に位置する複数の第1の抵抗部材は流体圧をほとんど受けない。しかし、流体が、右から左に流れるように変化した場合、下方に位置している補助回転体よりも右側に位置する複数の第1の抵抗部材がその流体圧を受け、左側に位置する複数の第1の抵抗部材は流体圧をほとんど受けない。このとき、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されているので、補助回転体よりも左側に位置する第1の抵抗部材の数と補助回転体よりも右側に位置する第1の抵抗部材とは、ほぼ同数である。したがって、例えば、第8の発明ないし第12の発明のいずれかの第1の抵抗部材を適用することで、左方向からの流体圧によって得られる回転エネルギと右方向からの流体圧によって得られる回転エネルギとが、ほとんど同じになり、流体の方向が変化しても、常にほぼ同じ大きさの回転エネルギを得ることができる。
流体発電システムを、流体の流れ方向が変化しやすい場所に設置する場合には、第13の発明に用いられる回転方向変換器と、第8ないし第12の発明のいずれかに用いられる第1の抵抗部材を適用することが好ましい。
【0031】
第17の発明は、第14の発明ないし第16の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムの設置構造において、流体駆動装置のうち流体面の上方にある装置部分を少なくとも周囲から囲み且つ流体内に完没している装置部分を両側からのみ囲む防護カバーを設けた構成とする。
かかる構成により、暴風や増水等が生じ、波風が起こっても、防護カバーが、流体駆動装置を保護する。
【0032】
第18の発明は、第17の発明に係る流体発電システムの設置構造において、防護カバーは、流体駆動装置を上方から覆う上面部を有する構成とした。
かかる構成により、流体駆動装置が、防護カバーによって周囲だけでなく上方からも保護される。
【発明の効果】
【0033】
以上詳しく説明したように、この発明によれば、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上で使用する場合においても、システムの建設コストの低減とメイテナンス作業の負担軽減とを図ることができるという、優れた効果がある。
つまり、この発明の流体発電システムは、流体駆動装置と発電装置を浮体装置上に組み付ける構成である。したがって、流体発電システムを洋上等の水深が深い流体上に設置する場合には、流体発電システムを予め陸上やドッグで組み立てておく。そして、組み立てた流体発電システムをタグボート等によって、洋上の設置位置迄曳航して、洋上に降ろし、浮体装置の浮体具を係留具で固定するだけで、流体駆動装置と発電装置とを洋上に安定した姿勢で維持することができる。このため、流体発電システムを設置して建設するためのコストや時間を低減することができる。また、満潮や干潮の現象が起きる洋上に設置する場合には、流体駆動装置や発電装置を組み付ける支持体の高さを満潮時の流体面の高さに合わせて設定しておく。これにより、流体駆動装置や発電装置の高さを満潮や干潮の都度調整することなく、安定した電力量を得ることができるので、システムの維持管理が非常に容易である。
【0034】
特に、第2の発明によれば、流体を浮体具内に注入又は排出することで、浮体具を流体内の所望の深さに位置させることができる。また、流体を浮体具内に注入することで、流体発電システム全体の重心位置を低くすることができ、この結果、流体に浮いている流体発電システム全体を安定化をはかることができる。
【0035】
また、第3の発明によれば、浮体装置の浮体具を係留具によって、容易に固定することができる。
【0036】
また、第4及び第5の発明によれば、無端ベルトが第1の回転体等から外れるという事態を予め防止することができる。
【0037】
また、第6及び第7の発明によれば、発電量のさらなる増大を図ることができる。
【0038】
また、第8ないし第13の発明及び第16の発明によれば、流体の流れの向きが変わった場合においても、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0039】
また、第15の発明によれば、流体圧を効率的に確保することができ、その結果、極めて大きな電力を発電することができる。
【0040】
さらに、第17及び第18の発明によれば、流体駆動装置を暴風や増水等から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】この発明の第1実施例に係る流体発電システムを示す斜視図である。
図2】流体発電システムの平面図である。
図3】流体発電システムの概略図である。
図4】第1の抵抗部材を示す斜視図である。
図5図4の矢視B-B断面図である。
図6】各補助回転体の取付状態を説明するための分解斜視図である。
図7】洋上に設置された流体発電システムの概略図である。
図8】干満に対応した深さ設定を説明するための概略図である。
図9】浮体装置の第1変形例を示す斜視図である。
図10】浮体装置の取付状態を示す概略図である。
図11】浮体装置の第2変形例の要部に係る浮体具を示す斜視図である。
図12】浮体装置の取付状態を示す概略図である。
図13】この発明の第2実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図13(a)は、第1の回転体及び第2の回転体を示し、図13(b)は、補助回転体を示し、図13(c)は、無端ベルトを示す。
図14】線状溝と線状突起とを示す断面図である。
図15】線状溝と線状突起の変形例を示す断面図であり、図15の(a)は、U字状の断面を示し、図15の(b)は、V字状の断面を示す。
図16】この発明の第3実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図16(a)は、第1の回転体及び第2の回転体を示し、図16(b)は、補助回転体を示し、図16(c)は、無端ベルトを示す。
図17】この発明の第4実施例に係る流体発電システムを示す斜視図である。
図18】第4実施例に係る流体発電システムの平面図である。
図19】この発明の第5実施例に係る流体発電システムを示す平面図である。
図20】第5実施例の変形例である。
図21】この発明の第6実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す模式図である。
図22】この実施例の作用及び効果を説明するための概略図である。
図23】この発明の第7実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す模式図である。
図24】この実施例の流体発電システムの設置構造に適用される第1の抵抗部材の概略断面図である。
図25】この実施例の設置構造に適用される回転方向変換器を示す平面図である。
図26】流体発電システムの設置構造が示す動作を説明するための模式図であり、図26の(a)は、流水方向が図の右方向の場合の動作を示し、図26の(b)は、流水方向が図の左方向の場合の動作を示す。
図27】第7実施例に適用された第1の抵抗部材の変形例を示す斜視図である。
図28】この発明の第8実施例に係る流体発電システムの設置構造の要部を示す模式図である。
図29】この発明の第9実施例に係る設置構造に適用される流体発電システムの要部を示す斜視図である。
図30】要部を示す模式図である。
図31】第9実施例に適用された第1の抵抗部材の変形例を示す斜視図である。
図32】変形例の分解斜視図である。
図33】変形例の第1の抵抗部材を一部破断して示す側面図である。
図34】この発明の第10実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す斜視図である。
図35】設置構造の概略断面図である。
図36】この発明の第11実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略断面図である。
図37】実施例に適用される流体発電システムの模式図である。
図38】流体発電システムの発電量の減少状態を示す模式図である。
図39】流体発電システムの発電量の増加状態を示す模式図である。
図40】流体発電システムの発電停止状態を示す模式図である。
図41】弛み防止機構を示す流体発電システムの模式図である。
図42】無端ベルトを示す斜視図である。
図43】弛み防止機構の動作状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0043】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る流体発電システムを示す斜視図であり、図2は、流体発電システムの平面図であり、図3は、流体発電システムの概略図である。
図1に示すように、この実施例の流体発電システム1は、流体駆動装置1Aと発電装置1Bと浮体装置5を備えている。
【0044】
流体駆動装置1Aは、流体圧に対応した回転力を出力するための装置であり、第2の回転体2Bのシャフト部21の延出部21b(図2参照)を出力軸としている。
この流体駆動装置1Aは、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと無端ベルト3Aと複数の第1の抵抗部材30と複数の補助回転体2C~2Hとを有しており、これらの部材は支持体10に組み付けられている。
【0045】
具体的には、図2にも示すように、支持体10において、同高さの支柱11A,12Aが無端ベルト3Aの長さ方向に立設されている。そして、支柱11B,12Bが、支柱11A,12Aと対向するように無端ベルト3Aの幅方向に立設されている。さらに、複数の支柱13A~18Aが、これら支柱11A,12Aの間に立設され、同数の支柱13B~18Bが、支柱13A~18Aに対向するように無端ベルト3Aの幅方向に立設されている。
【0046】
第1の回転体2Aは、回転中心軸としてのシャフト部20を有し、このシャフト部20の両端部が支柱11A,11Bの上端部に回転自在に取り付けられている。
第2の回転体2Bは、第1の回転体2Aと同形であり、第1の回転体2Aと同様に回転中心軸としてのシャフト部21を有している。そして、このシャフト部21の両端部が支柱12A,12Bの上端部に回転自在に取り付けられている。
つまり、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとは、シャフト部20,21を平行にした状態で一定の間隔を保っており、無端ベルト3Aは、このような第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとに巻き付けられている。
無端ベルト3Aは、幅広の帯状体であり、多層構造のゴム部材、合成樹脂、金属製チェーンベルト等で形成することができる。
【0047】
複数の第1の抵抗部材30は、この無端ベルト3Aの表面上に立設されている。
図4は、第1の抵抗部材を示す斜視図であり、図5は、図4の矢視B-B断面図である。
これらの図に示すように、各第1の抵抗部材30は、受圧面部31と、この受圧面部31を保持する支持部材32とによって構成されている。
受圧面部31は、流体圧を受けるための部分であり、断面弧状に凹んでいる。受圧面部31の長さは、無端ベルト3Aに余幅を残すように、無端ベルト3Aの幅よりも短く設定されている。受圧面部31の材質は任意であるが、この実施例では、凹状に湾曲された金属板を適用した。
支持部材32は、枠部32aと、この枠部32aの両端に形成された固定部32b,32bとを有している。枠部32aは、無端ベルト3Aの幅方向に沿って配置され、固定部32b,32bは、無端ベルト3Aにビス等により固定されている。
そして、受圧面部31が枠部32a内に嵌められ、その上端31aと下端31bとが、枠部32aに固着されている。
つまり、凹状の受圧面部31を無端ベルト3Aの長さ方向に向けた状態で、複数の第1の抵抗部材30が、一定間隔で無端ベルト3Aの表面に立設されている。
【0048】
図1において、複数の補助回転体2C~2Hは、後述する中心軸としてのシャフト部27c~27hを平行にした状態で、第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aの間に配設されている。そして、これらの補助回転体2C~2Hは、支持体10の支柱13A,13B~18A,18Bによって上下動自在に支持されている。
図6は、各補助回転体2C(2D~2H)の取付状態を説明するための分解斜視図である。
具体的には、図6に示すように、支柱の上端~下端に向かう長孔24が、支持体10の支柱13A,13B(14A,14B~18A,18B)のそれぞれに形成されている。そして、各補助回転体2C(2D~2H)のシャフト部27c(27d~27h)の両端部が、長孔24にそれぞれ回転自在に嵌め込まれている。
これにより、摘み23,23を、長孔24から外方に突出したシャフト部27c(27d~27h)の両端部に締め付けることで、各補助回転体2C(2D~2H)を所定高さに固定することとができる。
例えば、図3に示すように、補助回転体2C,2E,2Gを、それぞれ、支柱13A(13B),15A(15B),17A(17B)の最上位に固定して、補助回転体2C,2E,2Gを、無端ベルト3Aの上側部分の内面に圧接させる。そして、補助回転体2D,2F,2Hを、それぞれ、支柱14A(14B),16A(16B),18A(18B)の下側位置に固定して、補助回転体2D,2F,2Hを、無端ベルト3Aの下側部分の内面に圧接させることで、無端ベルト3Aの弛み等を防止することができる。
さらに、図に示すように、補助回転体2Fを最下位置に固定することで、無端ベルト3Aの下側部分を、略くの字状に湾曲させることができる。つまり、無端ベルト3Aの下側部分の長さを上側部分の長さよりも長くして、より多くの第1の抵抗部材30を、無端ベルト3Aの下側部分に配置させることができる。
【0049】
一方、発電装置1Bは、図1及び図2に示すように、流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転力を受けて発電動作を行う装置である。この発電装置1Bは、流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転力を発電機6の回転軸60で受けて発電動作を行う。
この実施例では、流体駆動装置1Aの出力軸21bと発電機6の回転軸60とを、連結部材61によって直結した例を示しているが、ギア機構やベルト機構等を、出力軸21bと回転軸60との間に設けて、出力軸21bの回転を変化させて回転軸60に伝えるようにすることもできる。
【0050】
以上のように、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとが組み付けられた支持体10は、図1及び図3に示すように、浮体装置5の上に載置固定されている。
浮体装置5は、浮体具5Aと複数の係留具5Bとで構成されている。
浮体具5Aは、流体上に浮く物体であり、その形状や構造は任意である。この実施例では、空洞体としてのタンクを適用した。この浮体具5Aは、平面視略正方形で所定高さの直方体形状をなす。この浮体具5Aには、蓋50を取付及び取外可能な開口51が設けられている。これにより、流体を開口51を通じて浮体具5Aの空洞52内に注入したり、空洞52から外部に排出したりすることができる。
一方、係留具5Bは、浮体具5Aが流されないように、浮体具5Aを所定位置に維持固定するための器具である。
具体的には、係留具5Bは線状部材53と固定部材54とで構成されている。線状部材53の一方の端53aは浮体具5Aの下面角部に連結され、固定部材54は、この線状部材53の他方の自由端53bに取り付けられている。
このような線状部材53としては、チェーンやワイヤーが適用可能であり、固定部材54としては、鈎爪等の把駐力によって浮体具5Aを固定するアンカーや自重によって浮体具5Aを固定するシンカーが適用可能である。この実施例では、チェーンを線状部材53として適用し、アンカーを固定部材54として適用した。
【0051】
次に、この実施例の流体発電システム1を洋上に設置する方法について記載する。なお、この記載は、この発明の流体発電システムの設置構造を具体的に説明するものでもある。
図7は、洋上に設置された流体発電システムの概略図であり、図8は、干満に対応した深さ設定を説明するための概略図である。
まず、図7に示すように、流体駆動装置1Aの例えば補助回転体2Fを、他の補助回転体2C~2E,2G,2Hに比べて最も下方の位置に固定しておく。つまり、予め、陸上又はドッグで、無端ベルト3Aの下側部分が、海中の深さ方向に略くの字状に湾曲するように設定しておく。
【0052】
そして、流体駆動装置1Aの補助回転体2C~2Hの高さ設定をした流体発電システム1を、タグボート等によって、洋上の設置位置迄曳航して、洋上に降ろす。すると、浮体装置5の係留具5Bが海底B迄沈み込み、浮体具5Aが海面S上に浮く。
ここで、開口51を通じて、海水Wを浮体具5Aの空洞52内に注入する。
海水Wが空洞52内に注入される従い、浮体具5Aが海中に沈んでいき、流体駆動装置1Aも浮体具5Aと共に海中に沈んでいく。この流体駆動装置1Aが所望の深さ迄沈んだときに、浮体具5Aへの海水Wの注入を止める。具体的には、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bが海面Sの上方に位置し且つ湾曲した無端ベルト3Aの部分に位置する複数の第1の抵抗部材30が海中に完没するように、浮体具5Aの沈み込み深さを設定する。
【0053】
上記のように流体発電システム1を設置すると、海中に完没している複数の第1の抵抗部材30が、海水による流体圧を受けるので、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとが、反時計回りに回転する。このとき、上記したように、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bは、海面Sの上方に配置されているので、海面S上にある第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと無端ベルト3Aの部分とが、海水による抵抗を受けることなく回転する。
この回転は、出力軸21b(図2参照)を通じて発電機6の回転軸60に伝達され、発電機6による発電動作が行われる。
【0054】
ところで、流体発電システム1を洋上に設置すると、流体駆動装置1Aや発電装置1Bが海面変動や波浪等による影響を受けて横揺れ等を起こすおそれがある。しかし、この実施例の流体発電システム1では、海中に投げ込まれた固定部材54の把駐力と自重及び線状部材53の重さとによって浮体具5Aが所望の位置に動かないように固定されるので、流体駆動装置1Aや発電装置1Bが横揺れ等を起こすおそれはない。
特に、この実施例では、海水Wを浮体具5Aの空洞52に注入して、流体発電システム1全体の重心を低くしているので、流体発電システム1の姿勢が安定している。
【0055】
また、流体発電システム1を干満の差が大きな洋上に設置すると、干潮時には、浮体装置5の浮体具5Aが海面Sに浮いてしまい、満潮時には、流体駆動装置1Aの第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと無端ベルト3Aとが海中に没してしまうおそれがある。
このような洋上に設置する場合には、図8に示すように、干潮時の海面S1が、無端ベルト3Aの下側部分の位置に来るように、浮体具5Aに注入する海水Wの量を調整しておく。そして、満潮時の海面S2が、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bよりも下方に位置するように、支持体10の支柱11A,11B~18A,18Bの高さを通常よりも高く設定しておく。
かかる調整と設定により、干満時における不具合を防止することができる。
【0056】
(変形例1)
ここで、上記第1実施例で適用された浮体装置5の第1変形例について説明する。
図9は、浮体装置5の第1変形例を示す斜視図であり、図10は、浮体装置5の取付状態を示す概略図である。
図9に示すように、この変形例の浮体装置5は、流体駆動装置1Aの支持体10を取り付けるための取付口Cを有した浮体具5Aと複数の係留具5Bとで構成されている。
具体的には、1対の直方体状のタンク55が平行に並べられ、これら1対のタンク55の前端部と後端端部とが、1対の板体56でそれぞれ連結されている。そして、係留具5Bが、各タンク55の両端部に連結されている。
【0057】
取付口Cは、ロ字状の開口である。流体駆動装置1Aの支持体10をこの取付口C内に嵌め込んで、浮体具5Aに固定することで、流体駆動装置1Aや発電装置1Bを浮体具5A上に組み付けることができる。
詳しくは、図10の破線で示すように、浮体具5Aを洋上に浮かべたときに、無端ベルト3Aの湾曲した下側部分にある複数の第1の抵抗部材30のうち、できるだけ多くの第1の抵抗部材30が、浮体具5Aの取付口Cの内部に位置するように、支持体10を浮体具5Aに固定することが好ましい。
【0058】
(変形例2)
浮体装置5の第2変形例について説明する。
図11は、浮体装置5の第2変形例の要部に係る浮体具5Aを示す斜視図であり、図12は、浮体装置5の取付状態を示す概略図である。
これらの図に示すように、この変形例の浮体装置5に適用される浮体具5Aには、第1実施例の浮体具5Aの中央部をくり抜いて形成した取付口Cが設けられている。
上記第1変形例と同様に、流体駆動装置1Aの支持体10が、この取付口Cに嵌め込まれて浮体具5Aに固定された状態で、浮体具5Aが洋上に浮かべられる。この際、無端ベルト3Aの湾曲した下側部分が取付口Cを貫通して、最下位の湾曲部分が、浮体具5Aの下側に位置するように、支持体10を浮体具5Aに固定する。
【0059】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図13は、この発明の第2実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図13(a)は、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bを示し、図13(b)は、補助回転体2C~2Hを示し、図13(c)は、無端ベルト3Aを示す。また、図14は、線状溝と線状突起とを示す断面図である。
これらの図に示すように、この実施例の流体発電システムでは、1対の線状溝2aを第1及び第2の回転体2A,2Bに設け、1対の線状溝2bを補助回転体2C~2Hに設けると共に、1対の線状突起3aを無端ベルト3Aに設けた点が、上記第1実施例と異なる。
【0060】
具体的には、図13の(c)に示すように、1対の線状突起3aは、内周面に突設されている。各線状突起3aは、図14に示すように、断面コ字状に形成されている。
一方、図13の(a)に示すように、1対の線状溝2aは、第1の回転体2A(第2の回転体2B)の外周面であって且つ1対の線状突起3aの突設位置に対応した位置に凹設されている。また、1対の線状溝2bも、図13の(b)に示すように、各補助回転体2C(2D~2H)の外周面であって且つ1対の線状突起3aの突設位置に対応した位置に凹設されている。
図14に示すように、これらの線状溝2a,2bは、線状突起3aと同形状の断面コ字状に形成されている。
つまり、無端ベルト3Aを第1の回転体2A,第2の回転体2B,補助回転体2C~2Hとに巻き付けると、無端ベルト3Aの1対の線状突起3aが、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bの1対の線状溝2aと補助回転体2C~2Hの線状溝2bとに嵌合するように設定されている。
【0061】
なお、線状溝2a,2bは、第1の回転体2A(第2の回転体2B),補助回転体2C(2D~2H)の外周面に刻設することで形成することができる。しかし、大きめの溝をこれらの外周面に形成して、線状溝2a,2bを有した別体のリング状部材を、当該大きめの溝内に装着しすることでも形成することができる。また、線状突起3aは、無端ベルト3Aとは別体の部材で形成することもできる。
線状溝2a,2bや無端ベルト3Aをこのような部材で形成する場合には、部材として、部材同士が接触すると吸盤の働きをする合成ゴムや樹脂等を用いることが好ましい。
【0062】
以上のように、この実施例では、無端ベルト3Aを第1の回転体2A,第2の回転体2B,補助回転体2C~2Hとに巻き付けて、無端ベルト3Aの1対の線状突起3aを、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bの1対の線状溝2aと補助回転体2C~2Hの線状溝2bとに嵌合させた構成であるので、線状突起3aと線状溝2a,2bとの嵌合力が外力に対して働く。したがって、無端ベルト3Aが、流体圧を流れ方向だけでなく、横方向等から受けたとしても、横ずれを起こして第1の回転体2A等から外れることはない。
その他の構成作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0063】
(変形例3)
図15は、線状溝と線状突起の変形例を示す断面図であり、図15の(a)は、U字状の断面を示し、図15の(b)は、V字状の断面を示す。
線状溝2a,2bと線状突起3aの断面形状は、任意である。したがって、上記実施例では、断面コ字状の線状溝2a,2bと線状突起3aとを例示したが、これに限定されない。
例えば、図15の(a)及び(b)に示すように、断面U字状のものや断面V字状のものも線状溝2a,2b及び線状突起3aとして適用することができる。
【0064】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図16は、この発明の第3実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図16(a)は、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bを示し、図16(b)は、補助回転体2C~2Hを示し、図16(c)は、無端ベルト3Aを示す。
これらの図に示すように、この実施例の流体発電システムでは、上記第2実施例に適用された線状溝2aの代わりに、列状の複数の穴2cを第1の回転体2A(第2の回転体2B)の外周面に設けた。また、線状突起3aの代わりに、列状の複数の突起物3bを無端ベルト3Aの内周面に設けた。そして、補助回転体2C(2D~2H)においては、上記第2実施例と同様に、1対の線状溝2bを、補助回転体2C(2D~2H)の外周面に設けている。
第1の回転体2A(第2の回転体2B)の穴2cの断面形状と無端ベルト3Aの突起物3bの断面形状は同形状に設定されており、突起物3bを穴2cに嵌合させると共に、補助回転体2C(2D~2H)の線状溝2bに嵌合させることで、無端ベルト3Aが第1の回転体2A等から外れるたりする事態を防止することができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0065】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図17は、この発明の第4実施例に係る流体発電システムを示す斜視図であり、図18は、第4実施例に係る流体発電システムの平面図である。
【0066】
これらの図に示すように、この実施例の流体発電システムは、第3の回転体4を第2の回転体2B側に追加設置した点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
【0067】
すなわち、第3の回転体4は、支持体10の支柱12Bの外側に配置され、第2の回転体2Bのシャフト部21に組り付けられている。これにより、第3の回転体4が、第2の回転体2Bと1体に回転するようになっている。そして、第3の回転体4から外方に延出したシャフト部21の延出部である出力軸21bが発電機6の回転軸60に連結されている。
また、複数の第2の抵抗部材40が、この第3の回転体4の円周面に一定間隔で立設されている。各第2の抵抗部材40は、平板状の部材であり、その両面が流体圧を受けるための受圧面部として機能する。
なお、第2の抵抗部材40の構造は、任意であり、平板状の部材ではなく、第1の抵抗部材30と同構造のものを第2の抵抗部材40として適用しても良い。
【0068】
第1及び第2の回転体2A,2Bが回転すると、第3の回転体4が第2の回転体2Bと一体に回転する。この結果、大きな回転エネルギがこれら第2の回転体2Bと第3の回転体4とによって生成される。
この回転エネルギは、出力軸21bを通じて、発電機6の回転軸60に伝達され、発電機6による発電動作が行われる。
このように、この実施例の流体発電システムでは、第2の回転体2Bと第3の回転体4とによって生成された大きな回転エネルギが発電装置1Bの発電機6に直接伝達するので、回転効率が向上し、その分、発電機6による発電量も増大する。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0069】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図19は、この発明の第5実施例に係る流体発電システムを示す平面図である。
図19に示すように、この実施例の流体発電システムは、流体駆動装置1Aに、第4の回転体4Aを追加設置した点が、上記第4実施例と異なる。
流体駆動装置1Aの第4の回転体4Aは、第4実施例における流体駆動装置1Aの第3の回転体4と同形であり、第2の抵抗部材40と同構造の第3の抵抗部材41が、第4の回転体4Aの周面に所定間隔で立設されている。
この第4の回転体4Aは、第2の回転体2Bのシャフト部21の一方端部21aに取り付けられている。具体的には、シャフト部21の一方端部21aを長めに設定して、第4の回転体4Aをこの一方端部21aに取り付けると共に、一方端部21aの先端部を支柱12Dで回転自在に支持した。
【0070】
この実施例の流体発電システムが、かかる構成をとっているので、第3の抵抗部材41が流体圧を受けて、第4の回転体4Aが回転する。これにより、第2の回転体2Bと第3の回転体4と第4の回転体4Aによって、極めて大きな回転エネルギが生成される。そして、この回転エネルギに対応した回転力が、流体駆動装置1Aの出力軸21bに出力され、発電機6の回転軸60に伝達される。
【0071】
なお、この実施例では、第4の回転体4Aを第2の回転体2Bのシャフト部21に連結した例を示したが、1つの第4の回転体4Aを、第2の回転体2Bのシャフト部21ではなく、第1の回転体2Aのシャフト部20の一方端部20a又は他方端部20bのいずれかを連結しても良い。又は、2つの第4の回転体4Aを、第2の回転体2Bのシャフト部21の一方端部21a,第1の回転体2Aのシャフト部20の一方端部20a又は他方端部20bのいずれか2つにそれぞれ連結しても良い。さらに、図20に示すように、3つの第4の回転体4Aを、第2の回転体2Bのシャフト部21の一方端部21a,第1の回転体2Aのシャフト部20の一方端部20a,他方端部20bの全てにそれぞれ連結しても良い。
その他の構成,作用及び効果は上記第1ないし第4実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0072】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図21は、この発明の第6実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す模式図である。
図21に示すように、この実施例の設置構造では、流体発電システム1において、最も下側に位置させる補助回転体を特定した点が、上記第1ないし第5実施例と異なる。
具体的には、補助回転体2C,2E,2Gを無端ベルト3Aの上側部分に接触させると共に、補助回転体2D,2Fを無端ベルト3Aの下側部分に接触させた。そして、最下流に位置する補助回転体2Hを、他の補助回転体2C~2Gよりも下側位置に固定して、流体発電システム全体を洋上に設置した。
【0073】
ここで、この実施例に係る流体発電システムの設置構造が示す作用及び効果について説明する。
図22は、この実施例の作用及び効果を説明するための概略図である。
図22に示すように、任意の補助回転体2Fを最下位に位置させた状態で、流体発電システムを設置した場合には、補助回転体2Fよりも上流側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L1内にある複数の第1の抵抗部材30)が受ける流体圧は非常に強い。これに対して、補助回転体2Fよりも下流側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L2内にある複数の第1の抵抗部材30)が受ける流体圧は、弱い。
したがって、この設置構造では、全ての第1の抵抗部材30が強い流体圧を効率的に受けているとは、言い難い。
【0074】
しかし、図21に示すように、この実施例の設置構造では、最下流に位置する補助回転体2Hを、他の補助回転体2C~2Gよりも下側位置に固定して設置した構造であるので、ほぼ全ての第1の抵抗部材30が強い流体圧を受けることになる。
つまり、この実施例の設置構造によれば、可能な限り多くの第1の抵抗部材30によって水流の力を得ることができ、この結果、水流による流体圧を効率的に確保することができ、極めて大きな電力を発電することができる。
その他の構成,作用及び効果は上記第1実施例ないし第5実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0075】
(実施例7)
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図23は、この発明の第7実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す模式図である。
図23に示すように、この実施例の設置構造では、複数の補助回転体2C~2Iのうち略中央に位置する補助回転体2Fを、他の補助回転体2C~2E,2G~2Iよりも下方に位置させた点が、上記実施例6と異なる。
【0076】
具体的には、奇数対の支柱13A(13B)~19A(19B)を支持体10に設け、奇数個の補助回転体2C~2Iを、支柱奇数対の支柱13A(13B)~19A(19B)に上下動自在に取り付けた。そして、中央の補助回転体2Fを、最下位に位置させて、支柱16A(16B)に固定した。また、補助回転体2C,2E,2G,2Iは、無端ベルト3Aの上側部分に接触させた状態で、支柱13A(13B),15A(15B),17A(17B)19A(19B)に固定し、補助回転体2D,2Hは、無端ベルト3Aの下側部分に接触させた状態で、支柱14A(14B),18A(18B)に固定した。
なお、この実施例では、理解を容易にするため、奇数個の補助回転体2C~2Iを、複数の補助回転体として適用した例を示すが、補助回転体の数は、奇数に限定されない。偶数の補助回転体を適用して、そのほぼ中央の補助回転体を最下位に位置決めした構造のものも、この実施例の設置構造として適用することができる。
【0077】
図24は、この実施例の流体発電システムの設置構造に適用される第1の抵抗部材の概略断面図である。
図24に示すように、この実施例に適用される第1の抵抗部材30は、可撓性素材で形成された受圧面部31Aと、受圧面部31Aを支持する支持部材32とで構成されている。
受圧面部31Aは、可撓性素材で形成されていればよく、布製、合成繊維製、合成樹脂性等、その種類は任意である。この実施例では、受圧面部31Aとして、布製のものを適用した。
流体圧が1点鎖線で示す矢印方向から実線で示す受圧面部31Aに加わると、受圧面部31Aは、流体圧により1点鎖線で示すように撓んで、ヨットの帆のように、流体圧を受ける。また、流体圧の方向が、2点鎖線で示す方向に変化すると、1点鎖線状態の受圧面部31Aが、2点鎖線で示すように、流体圧方向に撓み、ヨットの帆のように、流体圧を受ける。
【0078】
図25は、この実施例の設置構造に適用される回転方向変換器を示す平面図である。
図25に示すように、この実施例の設置構造では、回転方向変換器6Aが、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとの間に設けられている。
具体的には、回転方向変換器6Aは、流体駆動装置1Aの出力軸21bと発電機6の回転軸60との間に設けられている。この回転方向変換器6Aは、流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転方向と発電機6の回転軸60の回転方向とを同一方向又は逆方向に手動で変換することができる。このような回転方向変換器6Aとして、全ての周知の変換器を適用することができるので、ここでは、記載を省略する。
【0079】
次に、この実施例の設置構造が示す作用及び効果について説明する。
図26は、流体発電システムの設置構造が示す動作を説明するための模式図であり、図26の(a)は、流水方向が図の右方向の場合の動作を示し、図26の(b)は、流水方向が図の左方向の場合の動作を示す。
【0080】
図26の(a)に示すように、流水方向が図の右方向である場合には、補助回転体2Fよりも左側(上流)に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L1内にある複数の第1の抵抗部材30)が流体圧を受けて、第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aが反時計回りに回転し、複数の第1の抵抗部材30全体も無端ベルト3Aと一体に反時計回りに回転する。
この場合には、補助回転体2Fよりも右側(下流)に位置する第1の抵抗部材30群は流体圧をほとんど受けない。したがって、この設置構造に適用された流体発電システムが得る回転エネルギは、補助回転体2Fよりも左側(上流)に位置する第1の抵抗部材30群に因る。
しかし、流水方向が図の左方向に変化した場合には、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群が流体圧を受けることとなる。
この場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31が流体圧を受ける向きと逆向きになるため、流水方向が変化した場合に得る回転エネルギは、非常に小さい。
【0081】
しかしながら、この設置構造における流体発電システムでは、図24に示したように、受圧面部31Aが可撓性素材で形成された第1の抵抗部材30を使用しているので、図26の(a)に示すように、流水方向が右方向の場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31Aが、右方に撓み、右方に撓んだ第1の抵抗部材30が流体圧を確実に受け取る。
そして、図26の(b)に示すように、流水方向が変化した場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31Aの向きが変化して、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L2内にある複数の第1の抵抗部材30)が流体圧を確実に受ける。
この場合には、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30群は流体圧をほとんど受けないので、この設置構造の流体発電システムが得る回転エネルギは、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群に因る。
【0082】
ところで、図23に示したように、この実施例では、中央の補助回転体2Fを補助回転体2C~2E,2G~2Iよりも下方に位置させているので、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30の数と補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30の数は、ほぼ同数である。
したがって、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30に因って得られる回転エネルギと補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30に因って得られる回転エネルギは、ほぼ同じである。
つまり、この実施例の設置構造によれば、流水方向が変化しても、常にほぼ同じ大きさの回転エネルギを得ることができる。
しかも、図25に示す回転方向変換器6Aを用いることで、第1の抵抗部材30が得た回転エネルギを発電機6によって常に電気に変換することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第6実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0083】
(変形例4)
次に、上記第7実施例に適用された第1の抵抗部材30の変形例について説明する。
図27は、第7実施例に適用された第1の抵抗部材30の変形例を示す斜視図である。
図27に示すように、この変形例の第1の抵抗部材30Dは、可撓性素材で形成された受圧面部31Aを枠部32aに取り付けた構造になっている。
この変形例の第1の抵抗部材30Dでは、枠状の受圧面取付部35が、枠部32aの内側に配置され、複数の接合部32gによって枠部32aに接合されている。そして、受圧面部31Aがこの枠状の受圧面取付部35に取り付けられている。
支持部材32は、枠部32aと長尺状の固定部32bと4つのストッパ34とで構成されている。そして、固定部32bが無端ベルト3Aに固定され、枠部32aがこの固定部32bに回転自在に取り付けられている。また、4つのストッパ34が無端ベルト3Aの縁部であって枠部32aの両側にそれぞれ取り付けられている。
【0084】
具体的には、枠部32aは、脚部32d,32dを枠部32aの両下端に有している。固定部32bは、無端ベルト3Aの幅方向を向くように配設されており、回転軸32b1がこの固定部32bに回転自在に挿通されている。そして、枠部32aの脚部32d,32dが、この回転軸32b1の両側の露出部分に固着されている。
つまり、枠部32aは、固定部32bの回転軸32b1を中心に回転できるようになっている。
4つのストッパ34は、このような枠部32aの両側にそれぞれ配設されている。各ストッパ34は、開口34aを枠部32aの脚部32d側に向けた状態で、無端ベルト3Aの縁部に固定されている。
枠部32aには、先端部がストッパ34に挿入可能な4本の補助脚部32eが設けられている。すなわち、1対の補助脚部32e,32eが、枠部32aの側部であって且つ接合部32gとの接合位置の近傍両側に逆向き状態で突設されている。各補助脚部32eは、接合部32gとの接合位置近傍からストッパ34側に向かって傾斜し、その先端部をストッパ34の開口34a内に位置させている。
なお、各補助脚部32eの長さは、枠部32aが無端ベルト3Aに対して垂直状態のときに、補助脚部32eの先端が無端ベルト3Aから上方に所定高さ浮いた状態になるような長さに設定されている。
【0085】
(実施例8)
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図28は、この発明の第8実施例に係る流体発電システムの設置構造の要部を示す模式図である。
この実施例の設置構造に適用される流体発電システムでは、第1の抵抗部材30の取付構造が上記第7実施例と異なる。
【0086】
図28に示すように、この実施例の設置構造の流体発電システムでは、複数の第1の抵抗部材30が、交互に逆向きになるように、無端ベルト3Aの表面に一定の間隔で立設されている。具体的には、受圧面部31が逆向きになるように、複数の第1の抵抗部材30が交互に配置されている。
これにより、実線矢印で示す方向の流体圧を、補助回転体2Fよりも左側に位置し且つ左向きの受圧面部31を有した第1の抵抗部材30が受け、2点鎖線矢印で示す方向の流体圧を、補助回転体2Fよりも右側に位置し且つ右向きの受圧面部31を有した第1の抵抗部材30が受けることができる。
【0087】
この実施例における第1の抵抗部材30が、上記のように配設されているので、流れが変化するような場所で使用する場合においても、上記第7実施例と同様に、流体発電システム全体の向きを流水方向の変化に合わせて変えることなく、動作を継続させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第7実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0088】
(実施例9)
次に、この発明の第9実施例について説明する。
図29は、この発明の第9実施例に係る設置構造に適用される流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図30は、要部を示す模式図である。
この実施例の設置構造に適用される流体発電システムでは、流体駆動装置1Aにおける第1の抵抗部材30’の構造が上記第7及び第8実施例と異なる。
【0089】
図29に示すように、この実施例の第1の抵抗部材30’は、上記第1実施例で適用された第1の抵抗部材30と同構造の抵抗部材30A,30Bを背中合わせで接合した構造になっている。具体的には、図左向きの抵抗部材30Aの受圧面部31と図右向きの抵抗部材30Bの受圧面部31とが中間部材33を介して背中合わせに接合されている。
【0090】
この実施例に適用される第1の抵抗部材30’が、上記のような構造になっているので、図30に示すように、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30’において、実線矢印で示す流体圧を、この第1の抵抗部材30’の左側の抵抗部材30Bで受けるできる。
そして、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30’において、2点鎖線矢印で示す流体圧を、右側の抵抗部材30Aで受けるできる。
これにより、流れが変化するような場所で使用する場合においても、流体発電システム全体の向きを流水方向の変化に合わせて変えることなく、動作を継続させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第7及び第8実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0091】
(変形例5)
さらに、上記第9実施例に適用された第1の抵抗部材30’の変形例について説明する。
図31は、第9実施例に適用された第1の抵抗部材30’の変形例を示す斜視図であり、図32は、本変形例の分解斜視図であり、図33は、本変形例の第1の抵抗部材を一部破断して示す側面図である。
図31図33に示すように、この変形例の第1の抵抗部材30Eは、受圧面部31B,31Cを、枠部32aの両側に取り付けた構造になっている。
具体的には、受圧面部31Bの裏面を、枠部32aの一方面の複数の接合部32fと補強部32cとに接合する。そして、受圧面部31Cを、この受圧面部31Bと背中合わせにした状態で、その裏面を、枠部32aの他方面に突設された複数の接合部32f’と補強部32cとに接合した。
【0092】
(実施例10)
次に、この発明の第10実施例について説明する。
図34は、この発明の第10実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す斜視図であり、図35は、設置構造の概略断面図である。
図34に示すように、この実施例では、防護カバー7が流体駆動装置1Aに取り付けられている。
【0093】
防護カバー7は、上下に開口した枠状体である。この防護カバー7の上半部7Aは、海面S(図35参照)の上方にある装置部分を周囲から囲んでいる。具体的には、上半部7Aが、複数の第1の抵抗部材30のいずれにも接触しない状態で配置され、そして、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと補助回転体2C,2E,2Gと無端ベルト3Aの上側部分にある複数の第1の抵抗部材30とで構成される装置部分を周囲から囲んでいる。
また、この防護カバー7の下半部7Bは、海水内に完没している装置部分を両側からのみ囲んでいる。具体的には、下半部7Bの前後に開口71,72が設けられている。そして、下半部7Bの両側部が、海水内に完没している補助回転体2D,2F,2Hと無端ベルト3Aの下側部分にある複数の第1の抵抗部材30とで構成される装置部分を両側から囲んでいる。
これにより、図35の矢印で示すように、海水が、上流側の開口71から防護カバー7内に流れ込み、完没している第1の抵抗部材30に流体圧を加えて、無端ベルト3Aを回転させた後、下流側あの開口72から流出する。
この実施例の設置構造がかかる構成をとることにより、暴風や増水等が生じ、波風が起こったとしても、防護カバー7が、流体駆動装置1A全体をこれらから保護する。
その他の構成、作用及び効果は、上記第6及び第1ないし第9実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0094】
(実施例11)
次に、この発明の第9実施例について説明する。
図36は、この発明の第11実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略断面図である。
図36に示すように、この実施例の設置構造では、防護カバー7が上面部70を有している点が、上記第10実施例と異なる。
具体的には、ドーム状の上面部70を防護カバー7の上縁7b上に形成した。これにより、防護カバー7の上開口は、上面部70によって完全に塞がれるので、流体駆動装置1Aは、防護カバー7によって周囲と上方から覆われ、波風から完全に保護される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第10実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0095】
(実施例12)
次に、この発明の第12実施例について説明する。
この実施例では、流体発電システムの発電量を調整する方法を例示する。
図37は、この実施例に適用される流体発電システムの模式図である。
図37に示すように、この実施例の流体発電システムにおいては、支柱13A’(13B’)~18A’(18B’)が、上記第1実施例の流体発電システムの支柱13A(13B)~18A(18B)よりも長く設定されている。
具体的には、無端ベルト3Aの下側部分を水平にした位置(二点鎖線の位置)から最下位の補助回転体2F迄の距離をD1とし、無端ベルト3Aの水平な上側部分から各支柱13A’(13B’)(14A’(14B’)~18A’(18B’))の上端(一点鎖線の位置)迄の距離をD2とすると、距離D2が距離D1以上になるように設定する。
【0096】
図38は、流体発電システムの発電量の減少状態を示す模式図である。
図37に示す状態では、無端ベルト3Aの下側部分にあるほとんどの第1の抵抗部材30が海面S下に完没しているので、流体発電システムが作り出す発電量は極めて大きい。
この状態から、補助回転体2C~2H全体を支柱13A’(13B’)~18A’(18B’)に沿って上昇させていくと、海中にある第1の抵抗部材30のうち、第1及び第2の回転体2A,2Bに近い第1の抵抗部材30から海面S上に引き上げられていく。そして、第1の抵抗部材30が海面S上に引き上げられるに従って、流体圧を受ける第1の抵抗部材30の数が減少していく。このため、流体発電システムが作り出す発電量は、補助回転体2C~2H全体の上昇に伴って、ゆっくり減少していく。
そして、図38に示すように、最下位の補助回転体2Fが海面S上にくる迄,補助回転体2C~2Hを上昇させることで、海中に完没する第1の抵抗部材30の数が1つになり、流体発電システムによる発電量がほぼ最小量に減少する。
【0097】
図39は、流体発電システムの発電量の増加状態を示す模式図である。
図38に示した状態迄、流体発電システムの発電量を減少させた後、発電量を増加させる場合には、この状態から、補助回転体2C~2H全体を下降させていく。すると、海上にある第1の抵抗部材30が海中に順次完没していく。そして、第1の抵抗部材30が海中に完没していくに従って、流体圧を受ける第1の抵抗部材30の数が増加していく。このため、流体発電システムが作り出す発電量は、補助回転体2C~2H全体の下降に伴って、増加していく。
そして、図39に示すように、補助回転体2C~2Hを下降させて、海中に完没する第1の抵抗部材30の数を増加させることにより、流体発電システムによる発電量を所望量に迄増加させることができる。
【0098】
通常、流体発電システムの発電量は、海流の速度変化に対応させて調整することができる。しかし、この実施例によれば、上記したように、補助回転体2C~2H全体を上昇,下降させるだけで、海流の変化なしにその発電量の調整を行うことができる。
【0099】
図40は、流体発電システムの発電停止状態を示す模式図である。
この流体発電システムの発電動作を停止させる場合には、図40に示すように、補助回転体2C~2H全体を最上位迄上昇させる。
これにより、無端ベルト3Aの下側部分は水平になり、全ての第1の抵抗部材30が海面Sから離脱し、最終的に流体発電システムの発電動作が停止する。
【0100】
図41は、弛み防止機構を示す流体発電システムの模式図であり、図42は、無端ベルト3Aを示す斜視図である。
ところで、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとの間の距離が短い場合は、補助回転体2C~2Hを最上位迄上昇させると、無端ベルト3Aの下側部分は水平になる可能性が高い。しかし、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとの間の距離が長い場合は、図41に示すように、無端ベルト3Aの下側部分が下方に弛んで、水平にならない可能性が高い。このため、一部の第1の抵抗部材30が海中に完没し、発電動作が停止しないおそれがある。
このような場合には、図41に示す磁石36と図42に示す磁性体3eとでなる弛み防止機構を備えるのが好ましい。
【0101】
具体的には、複数の磁石36を無端ベルト3Aの下側部分を水平にした位置(図37の二点鎖線の位置)の上方近傍に配置すると共に、金属板等の磁性体3eを無端ベルト3Aの内面に取り付けて、弛み防止機構を形成した。
なお、上記磁石36は、電磁石でも永久磁石でもよいが、この実施例では、磁石36として電磁石を適用した。
【0102】
図43は、弛み防止機構の動作状態を示す模式図である。
補助回転体2C~2H全体を最上位迄上昇させたときに、図41に示したように、無端ベルト3Aの下側部分が下方に弛んでいる場合には、弛み防止機構を駆動させる。即ち、図示しない電源を磁石36に通電する。これにより、無端ベルト3Aが持ち上げられて、磁性体3eが磁石36に吸着される。この結果、図43に示すように、無端ベルト3Aの下側部分が水平に保持され、流体発電システムの発電動作が停止する。
【0103】
図41に示したように、持ち上げられた無端ベルト3Aに弛みが生じて、発電動作が停止するか否かは、第1及び第2の回転体2A,2Bとの距離間だけでなく、第1の抵抗部材30が取り付けられた無端ベルト3Aの重量や第1及び第2の回転体2A,2Bと海面Sとの水位差等との関係等に左右され、確実に想定することはできない。
しかし、弛み防止機構を設けることにより、流体発電システムの発電動作を確実に停止させることができる。
【0104】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例や変形例係る流体発電システム及びその設置構造では、浮体装置5の浮体具として、流体を注入及び排出可能なタンク状の空洞体を例示したが、浮体具の形状や構造は、これらに限定されるものではない。浮体具は、流体駆動装置と発電装置とが組み付けられた支持体を取り付け可能であり、且つこれら流体駆動装置と発電装置を流体上で保持可能な形状及び構造を有するものであれば良く、その形状や構造は任意である。
【符号の説明】
【0105】
1…流体発電システム、 1A…流体駆動置、 1B…発電装置、 2A…第1の回転体、 2B…第2の回転体、 2C~2I…補助回転体、 2a,2b…線状溝、 2c…穴、 3A…無端ベルト、 3a…線状突起、 3b…突起物、 3e…磁性体、 4…第3の回転体、 4A…第4の回転体、 5…浮体装置、 5A…浮体具、 5B…係留具、 6…発電機、 6A…回転方向変換器、 7…防護カバー、 7A…上半部、 7B…下半部、 7b…上縁、 10…支持体、 11A~19A,11B~19B,13A’~18A’,13B’~18B’…支柱、 20,21,27c~27h…シャフト部、 21b…出力軸、 23…摘み、 24…長孔、 30,30’,30D,30E…第1の抵抗部材、 30A,30B…抵抗部材、 31,31A~31C…受圧面部、 32…支持部材、 32a…枠部、 32b,60…回転軸、 32b…固定部、 32c…補強部、 32d…脚部、 32e…補助脚部、 32f,32f’,32g…接合部、 33…中間部材、 34…ストッパ、 34a,51,71,72…開口、 35…受圧面取付部、 36…磁石、 40…第2の抵抗部材、 41…第3の抵抗部材、 52…空洞、 53…線状部材、 53b…自由端、 54…固定部材、 55…タンク、 56…板体、 61…連結部材、 70…上面部、 B…海底、 C…取付口、 S,S1,S2…海面、 W…海水。
【要約】
【課題】流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上で使用する場合においても、システムの建設コストの低減とメイテナンス作業の負担軽減とを図ることができる流体発電システム及びその設置構造を提供する。
【解決手段】流体発電システム1は流体駆動装置1Aと発電装置1Bと浮体装置5を備える。流体駆動装置1Aは第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aと第1の抵抗部材30と補助回転体2C~2Hとを有する。これらは支持体10に組み付けられている。発電装置1Bは流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転力を発電機6の回転軸60で受けて発電動作を行う。浮体装置5は浮体具5Aと係留具5Bとで構成される。浮体具5Aは流体上に浮く物体であり、係留具5Bは浮体具5Aを所定位置に維持固定する。
【選択図】図1
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