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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20221110BHJP
   A47L 9/04 20060101ALI20221110BHJP
   A47L 9/00 20060101ALI20221110BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221110BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/28 L
A47L9/04 A
A47L9/28 P
A47L9/00 102Z
G05D1/02 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017101946
(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公開番号】P2018196512
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-03-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩太
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 裕樹
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-045463(JP,A)
【文献】特開2014-113488(JP,A)
【文献】特開平07-051207(JP,A)
【文献】特開2003-079551(JP,A)
【文献】特開2014-079513(JP,A)
【文献】特開2010-035981(JP,A)
【文献】特開2004-355208(JP,A)
【文献】特許第6062200(JP,B2)
【文献】特許第5805841(JP,B1)
【文献】特開平08-016241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
A47L 9/04
A47L 9/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
この本体ケースを走行可能とする駆動部と、
被掃除面を撮像可能な撮像手段と、
回転により被掃除面の塵埃を掻き出す回転清掃体を有する掃除部と、
前記回転清掃体の回転を制御する回転制御手段と、
給電用の電池と、
自己位置を推定する自己位置推定手段と、
この自己位置推定手段による自己位置の推定に基づき掃除領域の地図を作成するマッピング手段と、
前記撮像手段により撮像した画像中の線、線の交差点、または、角を含む特定形状に基づいて被掃除面の種類を判定する判定手段と、
前記マッピング手段により作成した地図と前記判定手段により判定した被掃除面の種類とに基づき、前記回転清掃体により掃除される前記被掃除面の種類に応じた前記本体ケースの走行の向きを含む前記掃除領域の走行経路を設定する設定手段と、
前記駆動部の駆動を制御することで前記設定手段により設定された前記走行経路に沿って前記本体ケースを自律走行させる走行制御手段とを具備し
前記判定手段は、前記線どうしの幅、前記交差点の間隔、または、前記角の間隔に応じて前記被掃除面の種類を判定する
ことを特徴とした電気掃除機
【請求項2】
前記マッピング手段は、前記特定形状の位置を地図に記憶する
ことを特徴とした請求項記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記設定手段は、前記線に沿って走行経路を設定する
ことを特徴とした請求項または記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記判定手段は、前記特定形状の分布に基づいて前記被掃除面の種類を判定する
ことを特徴とした請求項ないしいずれか一記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記判定手段は、複数の前記特定形状に基づいて前記被掃除面の種類を判定する
ことを特徴とした請求項ないしいずれか一記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記設定手段は、前記判定手段により前記被掃除面が畳であると判定した場合、前記特定形状の分布に基づいて推定される畳の配置に基づき、この畳の目に沿って少なくとも一部の走行経路を設定する
ことを特徴とした請求項ないしいずれか一記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記設定手段は、前記特定形状である線の幅に基づいて畳上の走行経路を設定する
ことを特徴とした請求項記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記回転制御手段は、前記設定手段により設定された走行経路に畳の目に対して逆らって走行する箇所がある場合に、前記回転清掃体の回転力を低下させる
ことを特徴とした請求項または記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記設定手段は、前記判定手段により前記被掃除面がフローリングであると判定した場合、前記特定形状の分布に基づいて溝に沿って走行経路を設定する
ことを特徴とした請求項ないしいずれか一記載の電気掃除機。
【請求項10】
前記設定手段は、前記判定手段により前記被掃除面が敷物類と判定された場合、前記特定形状の分布に基づいて推定される前記敷物類の領域内を往復走行する走行経路を設定する
ことを特徴とした請求項ないしいずれか一記載の電気掃除機。
【請求項11】
前記自己位置推定手段は、前記特定形状の検出に基づき自己位置を補正する
ことを特徴とした請求項ないし10いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項12】
前記判定手段により判定した前記被掃除面の種類に応じて前記掃除部の動作を変化させる掃除制御手段を具備した
ことを特徴とした請求項1ないし11いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項13】
前記走行経路または走行軌跡を報知する報知手段を具備した
ことを特徴とした請求項1ないし12いずれか一記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律走行可能な電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被掃除面上を自律走行しながら掃除をする、いわゆる自律走行型の電気掃除機(掃除ロボット)が知られている。このような電気掃除機として、障害物を検出するだけでなく、例えばカメラを搭載し、掃除領域の大きさや形状を地図として作成して、自己位置を推定する技術と併用することで効率よく自律走行させるものがある。
【0003】
しかしながら、この構成の場合、床面の種類を考慮した走行がなされていないため、例えば畳の目に逆らって走行したり、フローリングの溝の細かい塵埃が取れなかったりすることが懸念される。
【0004】
この点、例えば床面の種類を選択するスイッチを備え、畳モードを選択したときに畳の敷き方から目の方向を検出して走行方向に基づいて自律走行するものや、高度で複雑な画像解析を用いて畳の配置を検出し、走行経路を設定するものなどがある。
【0005】
ただし、床面の種類は畳だけでなく、フローリングや絨毯などもあり、それぞれに好ましい走行経路が異なることから、床面の種類を自動的に、かつ、容易に判別し、これら種類に応じた走行経路を適切に設定することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-319485号公報
【文献】特開2014-79515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被掃除面の種類に応じて効率よく掃除できる電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電気掃除機は、本体ケースと、駆動部と、撮像手段と、掃除部と、回転制御手段と、給電用の電池と、自己位置推定手段と、マッピング手段と、判定手段と、設定手段と、走行制御手段とを有する。駆動部は、本体ケースを走行可能とする。撮像手段は、被掃除面を撮像可能である。掃除部は、回転により被掃除面の塵埃を掻き出す回転清掃体を有する。回転制御手段は、回転清掃体の回転を制御する。自己位置推定手段は、自己位置を推定する。マッピング手段は、自己位置推定手段による自己位置の推定に基づき掃除領域の地図を作成する。判定手段は、撮像手段により撮像した画像中の線、線の交差点、または、角を含む特定形状に基づいて被掃除面の種類を判定する。設定手段は、マッピング手段により作成した地図と判定手段により判定した被掃除面の種類とに基づき、回転清掃体により掃除される被掃除面の種類に応じた本体ケースの走行の向きを含む掃除領域の走行経路を設定する。走行制御手段は、駆動部の駆動を制御することで設定手段により設定された走行経路に沿って本体ケースを自律走行させる。判定手段は、線どうしの幅、交差点の間隔、または、角の間隔に応じて被掃除面の種類を判定する
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の電気掃除機を示すブロック図である。
図2】同上電気掃除機を示す斜視図である。
図3】同上電気掃除機を下方から示す平面図である。
図4】同上電気掃除機の周囲検出センサによる物体の三次元座標の計算方法を模式的に示す説明図である。
図5】(a)は一方の撮像手段により撮像した画像の一例を模式的に示す説明図、(b)は他方の撮像手段により撮像した画像の一例を模式的に示す説明図、(c)は(a)および(b)の画像に基づく視差画像の一例を示す説明図である。
図6】同上電気掃除機の撮像手段により撮像された画像中の特定形状の例を示す説明図である。
図7】(a)は第1の被掃除面としての畳を示す斜視図、(b)は第2の被掃除面としてのフローリングを示す斜視図、(c)は第3の被掃除面としての敷物類を示す斜視図である。
図8】(a)は畳の配置の一例を示す説明図、(b)は畳の配置の他の例を示す説明図である。
図9】(a)は四畳半間の掃除領域での畳の配置の一例を示す説明図、(b)は六畳間での畳の配置の一例を示す説明図、(c)は八畳間での畳の配置の一例を示す説明図である。
図10】(a)は図9(a)に対応する走行経路を示す説明図、(b)は図9(b)に対応する走行経路を示す説明図、(c)は図9(c)に対応する走行経路を示す説明図である。
図11】(a)は畳における走行経路中の折り返し位置の一例を拡大して示す説明図、(b)は畳における走行経路中の折り返し位置の他の例を拡大して示す説明図である。
図12】同上電気掃除機の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図5において、11は自律走行体としての電気掃除機である。そして、この電気掃除機11は、本実施形態において、走行面としての被掃除面である床面上を自律走行(自走)しつつ床面を掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナ(掃除ロボット)である。なお、この電気掃除機11は、例えばこの電気掃除機11の充電用の基地部となる基地装置としての図示しない充電装置(充電台)とともに自律走行体装置としての電気掃除装置(電気掃除システム)を構成することもできる。
【0012】
この電気掃除機11は、中空状の本体ケース20を備えている。また、この電気掃除機11は、駆動部である駆動輪21を備えている。さらに、この電気掃除機11は、塵埃を掃除する掃除部22を備えている。また、この電気掃除機11は、センサ部23を備えている。さらに、この電気掃除機11は、撮像部24を備えている。また、この電気掃除機11は、通信部25を備えている。さらに、この電気掃除機11は、コントローラである制御手段としての制御部26を備えている。また、この電気掃除機11は、画像を表示する表示手段としての表示部を備えていてもよい。そして、この電気掃除機11は、給電用の電池である二次電池を備えていてもよい。また、この電気掃除機11は、例えば有線、あるいは無線によりネットワークを介して通信する情報送信手段としてのデータ通信手段である通信部を備えていてもよい。さらに、この電気掃除機11は、外部装置や使用者との間で信号が入出力される入出力部を備えていてもよい。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向に沿った方向を前後方向(図2に示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
【0013】
本体ケース20は、例えば合成樹脂などにより形成されている。この本体ケース20は、例えば扁平な円柱状(円盤状)などに形成されていてもよい。また、この本体ケース20には、集塵口である吸込口31などが床面に対向する下部などに設けられていてもよい。
【0014】
駆動輪21は、電気掃除機11(本体ケース20)を床面上で前進方向および後退方向に走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものである。本実施形態では、この駆動輪21は、例えば本体ケース20の左右に一対設けられている。この駆動輪21は、駆動手段としてのモータ33により駆動される。なお、この駆動輪21に代えて、駆動部としての無限軌道などを用いることもできる。
【0015】
モータ33は、駆動輪21に対応して配置されている。したがって、本実施形態では、このモータ33は、例えば左右一対設けられている。そして、このモータ33は、各駆動輪21を独立して駆動させることが可能となっている。
【0016】
掃除部22は、例えば床面や壁面などの被掃除部の塵埃を除去するものである。この掃除部22は、例えば床面上の塵埃を吸込口31から集めて捕集したり、壁面を拭き掃除したりする機能を有している。この掃除部22は、吸込口31から空気とともに塵埃を吸い込む電動送風機35と、吸込口31に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ36およびこの回転ブラシ36を回転駆動させるブラシモータ37と、本体ケース20の前側などの両側に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き集める旋回清掃部としての補助掃除手段(補助掃除部)であるサイドブラシ38およびこのサイドブラシ38を駆動させるサイドブラシモータ39との少なくともいずれかを備えていてもよい。また、この掃除部22は、吸込口31と連通して塵埃を溜める集塵部40を備えていてもよい。
【0017】
センサ部23は、電気掃除機11(本体ケース20)の走行をサポートする各種の情報をセンシングするものである。より具体的に、このセンサ部23は、例えば床面の凹凸状態(段差)や、走行の障害となる壁あるいは障害物、床面の塵埃量などをセンシングするものである。このセンサ部23としては、例えば赤外線センサや超音波センサなどが用いられる。
【0018】
撮像部24は、撮像手段(撮像部本体)としてのカメラ51を備えている。また、この撮像部24は、検出補助手段(検出補助部)としてのランプ53を備えていてもよい。
【0019】
カメラ51は、電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向である前方を、それぞれ所定の水平画角(例えば105°など)でデジタルの画像を所定時間毎、例えば数十ミリ秒毎などの微小時間毎、あるいは数秒毎などに撮像するデジタルカメラである。すなわち、このカメラ51は、電気掃除機11(本体ケース20)の前方の床面ないし壁面に亘る領域を撮像するものである。このカメラ51は、単数でも複数でもよい。本実施形態では、カメラ51は、左右一対設けられている。すなわち、このカメラ51は、左右に離間されて本体ケース20の前部に配置されている。また、これらカメラ51,51は、互いの撮像範囲(視野)が重なっている。そのため、これらカメラ51,51により撮像される画像は、その撮像領域が左右方向にラップしている。なお、カメラ51により撮像する画像は、例えば可視光領域のカラー画像や白黒画像でもよいし、赤外線画像でもよい。
【0020】
ランプ53は、カメラ51の撮像範囲を照明することで撮像に必要となる明るさを得るものである。このランプ53は、本実施形態では、カメラ51,51の中間位置に配置され、各カメラ51に対応して設けられている。このランプ53は、例えばLEDなどが用いられる。
【0021】
通信部25は、例えば掃除領域内などに配置された中継手段(中継部)としてのホームゲートウェイ(ルータ)との間で有線通信あるいはWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線通信を用いて通信(送受信)することにより、インターネットなどの(外部)ネットワークを介して、データ格納手段(データ格納部)としての汎用のサーバや、外部装置などと有線あるいは無線通信可能となっている。この通信部25としては、例えば無線LANデバイスが好適に用いられる。なお、例えば通信部25にアクセスポイント機能を搭載し、ホームゲートウェイを介さずに外部装置と直接無線通信をするようにしてもよい。また、例えば通信部25にウェブサーバ機能を付加してもよい。
【0022】
制御部26は、例えば制御手段本体(制御部本体)であるCPUやROMおよびRAMなどを備えるマイコンが用いられる。この制御部26は、駆動輪21(モータ33)を駆動させる走行制御手段である走行制御部61を備えている。また、この制御部26は、掃除部22と電気的に接続される掃除制御手段である掃除制御部62を備えている。さらに、この制御部26は、センサ部23と電気的に接続されるセンサ制御手段であるセンサ接続部63を備えている。また、この制御部26は、撮像部24と電気的に接続される判定手段である判定部64を備えている。さらに、この制御部26は、マッピング手段(マッピング部)である地図作成部65を備えている。すなわち、この制御部26は、掃除部22、センサ部23、撮像部24、通信部25などと電気的に接続されている。また、この制御部26は、電気掃除機11(本体ケース20)の走行経路を設定する設定手段としての経路設定部66を備えている。さらに、この制御部26は、通信部25と電気的に接続される通信制御部67を備えている。また、電気掃除機11が表示手段を備える場合、この表示手段と電気的に接続される表示制御部を備えていてもよい。さらに、この制御部26は、二次電池と電気的に接続されている。なお、この制御部26は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリなどを備えていてもよい。また、この制御部26は、二次電池の充電を制御する充電制御部を備えていてもよい。さらに、これら走行制御部61、掃除制御部62、センサ接続部63、判定部64、地図作成部65、経路設定部66、通信制御部67、表示制御部、充電制御部は、本実施形態においてそれぞれ制御部26に設けているが、それぞれ制御部26と別個でもよいし、これらのうちの任意のものを組み合わせて制御部26と一体、あるいは制御部26と別個に一体としてもよい。
【0023】
走行制御部61は、モータ33の駆動を制御する、すなわち、モータ33に流れる電流の大きさおよび向きを制御することにより、モータ33を正転、あるいは逆転させることで、モータ33の駆動を制御し、モータ33の駆動を制御することで駆動輪21の駆動を制御するものである。この走行制御部61は、経路設定部66により設定された走行経路に沿って電気掃除機11(本体ケース20)を走行させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御するように構成されている。
【0024】
掃除制御部62は、掃除部22の電動送風機35、ブラシモータ37およびサイドブラシモータ39の駆動を制御する、すなわち、電動送風機35、ブラシモータ37、および、サイドブラシモータ39の通電量をそれぞれ別個に制御することで、これら電動送風機35、ブラシモータ37(回転ブラシ36)、および、サイドブラシモータ39(サイドブラシ38)の駆動を制御する。すなわち、この掃除制御部62は、電動送風機35の駆動を制御する電動送風機制御手段(電動送風機制御部)の機能と、回転ブラシ36(ブラシモータ37)の回転を制御する回転制御手段(回転制御部)の機能と、サイドブラシ38(サイドブラシモータ39)の駆動を制御する補助回転制御手段(補助回転制御部)の機能との少なくともいずれかを備えている。
【0025】
センサ接続部63は、センサ部23による検出結果を取得するものである。
【0026】
判定部64は、カメラ51により撮像された画像中から特徴点などを抽出することで、電気掃除機11(本体ケース20)の周囲に位置する物体(障害物など)の形状(物体の距離および高さなど)を検出および判定するように構成されている。例えば、この判定部64は、既知の方法を用いて、カメラ51により撮像した画像と、カメラ51間の距離とに基づいて物体(特徴点)の距離(深度)および三次元座標を計算するように構成されている。すなわち、この判定部64は、具体的に、カメラ51,51とこれらカメラ51,51により撮像された画像G1,G2の物体O(特徴点SP)との距離f(視差)、および、カメラ51,51間の距離lに基づく三角測量を応用し、カメラ51,51により撮像した各画像G1,G2中から同一位置を示す画素ドットを検出し、この画素ドットの上下方向、左右方向および前後方向の角度を計算して、これら角度とカメラ51,51間の距離lとからその位置のカメラ51からの距離および高さを計算するとともに物体O(特徴点SP)の三次元座標を算出するように構成されている(図4)。このため、この判定部64は、画像G1,G2に基づいて視差画像(距離画像)GLを作成するとともに、この視差画像GLに基づいて、撮像された物体Oの高さHおよび幅Wを検出することが可能となっている(図5(a)、図5(b)、図5(c))。なお、カメラ51が単数である場合には、判定部64は、電気掃除機11(本体ケース20)が移動したときに、対象物の座標の移動量から距離を計算することもできる。
【0027】
また、この判定部64は、例えばカメラ51により所定の画像範囲(例えば本体ケース20の幅および高さに対応して設定された画像範囲)中に撮像されている物体の距離を、予め設定された、あるいは可変設定された閾値である設定距離と比較し、この設定距離以下の距離(電気掃除機11(本体ケース20)からの距離)に位置する物体を障害物であると判定するように構成されている。したがって、この判定部64は、カメラ51により撮像された画像に基づいて電気掃除機11(本体ケース20)からの距離を算出した物体が障害物であるかどうかを判定する障害物判定部の機能を備えている。この障害物判定部の機能は、判定部64と一体にも受けられていてもよいし、判定部64と別個であってもよい。
【0028】
さらに、この判定部64は、床面の種類を判定する機能を備えている。より具体的に、この判定部64は、カメラ51により撮像した画像中の特定形状に基づいて床面の種類を判定する。この判定部64は、例えば床面上に位置する線LI、角CO、あるいは線の交差点CR(図6)などの特定形状を用い、床面の種類を判定する。より詳細に、この判定部64は、これら特定形状の分布と、特定形状の組み合わせとの少なくともいずれかに基づいて床面の種類を判定する。この判定部64により判定される床面としては、例えば第1の被掃除面(床面)としての畳T(図7(a))、第2の被掃除面(床面)としてのフローリングFL(図7(b))、第3の被掃除面(床面)としての絨毯、カーペットあるいはラグなどの敷物類RU(図7(c))、あるいは第4の被掃除面(床面)としてのそれら以外の床面などである。この判定部64による床面の判定の詳細については後述する。
【0029】
なお、この判定部64は、例えばカメラ51により撮像された生画像のレンズの歪み補正やノイズの除去、コントラスト調整、および画像中心の一致化などの一次画像処理をする画像補正機能を備えていてもよい。また、この判定部64は、カメラ51やランプ53の駆動を制御する撮像制御部の機能を備えていてもよい。
【0030】
地図作成部65は、カメラ51により撮像された画像に基づいて判定部64により検出された電気掃除機11(本体ケース20)の周囲の形状(障害物となる物体の距離および高さ)に基づき、掃除領域を走行可能であるかどうかを示す地図(マップ)を作成するものである。具体的に、この地図作成部65は、カメラ51により撮像された画像中の物体の特徴点の三次元座標に基づき、電気掃除機11の自己位置を推定するとともに、この自己位置の推定に基づき、判定部64により検出された掃除領域内に位置する物体(障害物)などの位置関係および高さを記す地図を作成する。すなわち、この地図作成部65は、電気掃除機11の自己位置を推定する自己位置推定手段(自己位置推定部)の機能を備えている。この地図作成部65には、既知のSLAM(simultaneous localization and mapping)技術を用いることができる。この地図作成部65により作成された地図は、地図作成部65に記憶されてもよいし、メモリ(記憶部)に記憶されてもよい。なお、この地図作成部65は、線や角、あるいは線の交差点などの床面の特定形状の位置を地図に記憶(マーキング)することもできる。
【0031】
経路設定部66は、地図作成部65により作成された地図に基づき、判定部64により判定された床面の種類に応じて電気掃除機11(本体ケース20)の走行経路を設定するものである。すなわち、この経路設定部66は、畳用の走行経路、フローリング用の走行経路、敷物類用の走行経路、および、その他床面用の走行経路を設定することが可能となっている。この経路設定部66は、掃除領域の地図が作成済みである場合、その地図にしたがって走行すればよく、地図が作成済みでない場合には、地図作成部65によって地図を作成しつつ走行経路を設定する。この経路設定部66による具体的な走行経路の設定は後述する。
【0032】
通信制御部67は、通信部25の動作を制御することにより、この通信部25を介して地図作成部65により作成された地図や、経路設定部66により設定された走行経路、あるいは電気掃除機11(本体ケース20)の走行軌跡などの各種情報を外部装置などに送信させるものである。この通信制御部67は、通信部25と一体に設けられていてもよい。
【0033】
表示制御部は、表示部の駆動を制御することにより、所定の情報を表示させるものである。この表示制御部は、表示部に一体に設けられていてもよい。
【0034】
そして、表示部は、例えばLCDやLEDなどが用いられる。この表示部は、例えば本体ケース20の上部表面など、電気掃除機11の外部から目視可能な位置に配置されていてもよい。なお、この表示部には、ユーザが直接指令などのデータを入力するタッチパネルなどの入力手段が一体的に設けられていてもよい。
【0035】
入出力部は、図示しないリモコンなどの外部装置から送信される制御コマンドや、本体ケース20に設けられたスイッチ、あるいはタッチパネルなどの入力手段から入力される制御コマンドを取得するとともに、例えば充電装置などに対して信号を送信するものである。この入出力部は、例えば充電装置などへと無線信号(赤外線信号)を送信する例えば赤外線発光素子などの図示しない送信手段(送信部)、および、充電装置やリモコンなどからの無線信号(赤外線信号)を受信する例えばフォトトランジスタなどの図示しない受信手段(受信部)などを備えている。
【0036】
二次電池は、掃除部22、センサ部23、撮像部24、通信部25および制御部26などに給電するものである。また、この二次電池は、例えば本体ケース20の下部などに露出する接続部としての充電端子71と電気的に接続されていてもよい。そして、これら充電端子71が充電装置側と電気的および機械的に接続されることで、充電装置を介して二次電池が充電されるように構成されていてもよい。
【0037】
充電装置は、例えば定電流回路などの充電回路を内蔵している。また、この充電装置には、二次電池の充電用の充電用端子が設けられている。この充電用端子は、充電回路と電気的に接続されており、充電装置に帰還した電気掃除機11の充電端子71と機械的および電気的に接続されるようになっている。
【0038】
外部装置は、建物の内部では例えばホームゲートウェイを介してネットワークに対して有線あるいは無線通信可能であるとともに、建物の外部ではネットワークに対して有線あるいは無線通信可能な、例えばPC(タブレット端末(タブレットPC))やスマートフォン(携帯電話)などの汎用のデバイスである。この外部装置は、画像を表示する表示機能を有していてもよい。
【0039】
次に、上記一実施形態の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0040】
まず、掃除の開始から終了までの概略を説明する。電気掃除機11は、掃除を開始すると、地図に基づいて走行しつつ床面を掃除し、必要に応じて地図を随時更新していく。掃除が終了すると、電気掃除機11は、充電装置へと帰還した後、待機状態、または二次電池の充電作業に移行する。
【0041】
上記の制御をより具体的に説明すると、電気掃除機11は、例えば予め設定された掃除開始時刻となったときや、リモコンまたは外部装置によって送信された掃除開始の制御コマンドを入出力部によって受信したときなどの適宜のタイミングから掃除を開始する。電気掃除機11は、充電装置に接続されている場合、走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御することで充電装置から所定距離直進して離脱する。また、充電装置に接続されていない場合には、その場から掃除を開始する。
【0042】
次いで、地図が作成済みである場合には、走行制御部61が駆動輪21(モータ33)を制御することで電気掃除機11(本体ケース20)を設定された走行経路に沿って自律走行させつつ、掃除制御部62が掃除部22を動作させて掃除領域の床面を掃除する。また、地図が作成済みでない場合には、走行制御部61が駆動輪21(モータ33)を制御することで電気掃除機11(本体ケース20)を所定の走行経路に沿って、あるいはランダムやジグザグ状などに走行させつつ掃除制御部62が掃除部22を動作させて掃除しながら、地図作成部65が地図を作成し、経路設定部66が走行経路を設定する(地図作成動作)。
【0043】
掃除部22では、例えば掃除制御部62により駆動された電動送風機35、回転ブラシ36(ブラシモータ37)、あるいはサイドブラシ38(サイドブラシモータ39)により床面の塵埃を、吸込口31を介して集塵部40へと捕集する。また、電気掃除機11は、自律走行の際、カメラ51により撮像された画像に基づき判定部64が予め記憶された地図に記されていない障害物などの物体の三次元座標を検出したり、地図に記されていない床面の特定形状を検出したり、センサ部23が地図に記されていない走行障害を検出したりすると、地図作成部65がそれぞれ地図に記憶していくこともできる。
【0044】
そして、設定された走行経路を完走すると掃除動作を終了し、電気掃除機11は、走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御して充電装置に帰還し、この充電装置と接続(充電端子71と充電用端子とを機械的および電気的に接続)して、この接続から所定時間後など、所定のタイミングで例えば充電動作や待機動作に移行する。
【0045】
上記の地図作成動作について、さらに詳細に説明する。
【0046】
走行制御部61では、掃除領域内を所定の走行経路に沿って、あるいはランダムやジグザグ状などに電気掃除機11を走行させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御しながら(探索走行)、カメラ51および判定部64やセンサ部23によって走行障害を検出したり床面の種類を判別したりして、これら走行障害や床面の種類を反映させた地図を地図作成部65により作成する。
【0047】
具体的に、電気掃除機11は、掃除を開始した後、探索走行を行いながら、カメラ51により撮像された画像に基づき判定部64が障害物を検出したと判定した場合、あるいはセンサ部23によって障害物、壁、あるいは段差などの走行障害を検出した場合には、地図作成部65において推定した電気掃除機11の自己位置に基づいて走行障害の位置を地図として記憶していく。このとき、カメラ51により撮像された画像に床面の特定形状が検出されると、この特定形状の位置も地図に記憶する。
【0048】
例えば、床面の特定形状として線を検出した場合、地図作成部65によりこの線を地図に記憶しつつ、走行制御部61がこの線に沿って電気掃除機11(本体ケース20)を走行させる。このように、電気掃除機11(本体ケース20)を線上で走行させることにより、例えば床面が畳である場合、仮に畳の目の方向が分かっていない状態であっても駆動輪21や回転ブラシ36によって畳を傷付けずに走行でき、床面がフローリングである場合、線として現れる溝に沿って走行でき、床面が敷物類である場合には、線として現れる敷物類とその下の床面との境目を走行できるので、それぞれ掃除効率を上げることができる。そして、線の走行中に例えばT字状などの交差点やL字状などの角を検出した場合には、その都度地図に記憶し、検出した線上をすべて走行した後、判定部64により床面の種類を判定する。すなわち、本実施形態では、判定部64により床面の種類を判定するまで走行制御部61が電気掃除機11(本体ケース20)を線に沿って走行させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御する。なお、判定部64による床面の種類の判定のタイミングは、線上の走行中でもよい。
【0049】
判定部64では、例えば角の検出個数および/または検出間隔に基づいて床面の種類を判定することもできるし、複数の特定形状(複数の特定形状の組み合わせ)に基づいて判定することもできる。これら複数の特定形状(複数の特定形状の組み合わせ)に基づいて床面の種類を判定する方法は多種多様であるが、例えば、判定部64は、線どうしの幅、交差点(T字)どうしの最小間隔、あるいは角の検出間隔に基づいて、床面の種類を判定することもできる。具体的に、判定部64は、例えば線どうしの幅が所定以下、例えば200mm以下である場合、床面がフローリングであると判断し、交差点の最小間隔が所定以上、例えば800mm以上である場合、床面が畳であると判断し、角の検出間隔が所定以上、例えば500mm以上である場合、床面が敷物類であると判定する。また、例えばフローリングの一部に絨毯などの敷物類がある場合においても、それぞれの条件が成立すれば、複数の床面の種類を判定することもできる。ここで、仮に床面の種類が判定できない場合には、床面がフローリング、畳、あるいは敷物類以外の、例えばタイル状の床面などである可能性が高いため、探索走行に戻り、カメラ51、判定部64、および、センサ部23などにより走行障害などを検出しつつ地図を作成しながら床面の特定形状の検出を続行する。
【0050】
そして、判定部64により床面の種類が判定できると、地図作成部65により床面の種類を地図に登録し、経路設定部66により走行経路を設定する。
【0051】
経路設定部66による走行経路の設定の具体例を説明する。例えば、床面が畳であると判定した場合と、床面がフローリングであると判定した場合と、床面が敷物類であると判定した場合とを例に挙げて説明する。
【0052】
床面が畳の場合、電気掃除機11(本体ケース20)は、畳の目に沿って走行することが好ましい。そこで、経路設定部66では、判定部64により床面の種類が畳であると判定した場合、特定形状の分布に基づいて推定される畳の配置に基づき、この畳の目に沿って走行経路を設定する。より詳細に、経路設定部66では、床面の種類が畳であると判定した場合、床面の種類を判定するまでに検出した地図上の特定形状の分布に基づいて畳の配置を推定し、畳の目に沿う走行経路を算出する。ここでは、図8(a)や図8(b)に示す、いわゆる四畳半の掃除領域での畳Tの配置を例に挙げて説明する。
【0053】
経路設定部66は、電気掃除機11(本体ケース20)が線上を走行しているときに検出した特定形状として、交差点や角の位置を地図上に配置している(図8(a)などに丸で示す位置P)。経路設定部66では、これらの位置どうしの間隔を算出する。そして、この間隔が所定以上、例えば1500mm以上の箇所があれば、経路設定部66では、そこが畳の長辺と判定できる。また、畳の寸法にはいくつか種類があるものの、畳の形状には大きな差異がなく、長辺と短辺との比は2:1となっている。また、畳の目(図8および図9に細線で示す)は、長辺間に短辺方向に沿って形成されている。そこで、畳の長辺の位置が判定できれば、図8(a)中に示す一畳分の畳T1~T4については容易に配置および目の方向を判定できる。一方で、畳T5のように、半畳分の畳については、隣接する畳の配置に基づいて配置を判定できる。すなわち、一般的に、日本の風習として畳の敷き方にはルールが存在し、半畳分の畳の目は、隣接する一畳分の畳の目と平行にならないように敷かれることが多い。また、畳を卍型に敷いたり、十字状に交差するように敷いたりすることは、不祝儀敷きといわれ、日本の風習として縁起が悪いものとされることから、通常このような畳の敷き方は避けられる傾向にある。したがって、これら畳の敷き方のルールを経路設定部66での畳の目の判定に採用することにより、半畳分の畳の配置およびその目の方向を効率的に判定できる。
【0054】
さらに、半畳分の畳T5が掃除領域の略中央に配置されている場合(図8(b))には、経路設定部66は、この畳T5の配置および目の方向の判定に線の幅を利用する。換言すれば、経路設定部66は、線の幅に基づいて畳上の走行経路を設定することもできる。すなわち、畳Tには、補強用の畳縁TBが長辺に沿って配置されているため、半畳分の畳T5が掃除領域の略中央に配置されている場合、この畳縁TBが隣接する畳T5どうしで重なることで、線の幅が2倍となる。そこで、この線の幅が2倍となる箇所を地図作成部65が地図に記憶しておくことで、経路設定部66において、この線の幅が2倍となる箇所の位置情報を利用して畳の目の方向を判定することが可能になる。また、例えば交差点や角が、例えば家具などの障害物によって満足に検出できない場合でも、線の幅を抽出することによって経路設定部66において畳の配置および目の方向を推定可能となる。
【0055】
これらの推定方法を用いることにより、経路設定部66は、図9(a)、図9(b)および図9(c)に示すように、掃除領域の大きさが異なる場合であっても、畳Tの配置を推定可能となる。すなわち、図9(a)、図9(b)および図9(c)の例では、破線で囲む領域Aの位置で畳縁TBが隣接して線の幅が2倍で検出される。
【0056】
そして、経路設定部66は、基本的に畳の目に沿ったジグザグ走行となるように走行経路を設定する。例えば、図9(a)、図9(b)および図9(c)に対応する走行経路RTの例を、図10(a)、図10(b)および図10(c)に示す。これら図10(a)、図10(b)および図10(c)においては、説明を明確にするために、走行経路RT中の折り返し箇所を畳Tの内側に設定したが、走行経路RT中の折り返し箇所は、畳Tの目に逆らわないように、畳縁TB上に設定してもよい(図11(a))。また、例えば隣接する畳の目の方向が異なっている場合(図11(b))には、走行経路RT中の折り返し箇所を隣接する畳Tにラップさせた位置としても、折り返し走行する際に畳Tの目に逆らうことを低減できる。
【0057】
次に、判定部64により床面の種類がフローリングであると判定した場合、経路設定部66は、特定形状の分布に基づいて溝GR(図7(b))に沿って走行経路を設定する。より詳細に、経路設定部66は、判定部64により床面の種類がフローリングであると判定した場合、隣接する特定形状である線に沿って走行し、その端部などの位置で折り返すように、すなわち線に沿ってジグザグ状に走行するように走行経路を設定する。この結果、線として検出されるフローリングの溝に入り込んだ塵埃を掃除部22によって効果的に掃除することが可能になる。
【0058】
また、判定部64により床面の種類が敷物類であると判定した場合、経路設定部66は、特定形状の分布に基づいて敷物類内の領域を推定する。より詳細に、経路設定部66は、判定部64により床面の種類が敷物類であると判定した場合、線として検出される床面との境目の情報、あるいは角として検出される四隅の位置などに基づいて敷物類内の領域を推定する。この推定は、敷物類の少なくとも2辺が分かれば可能となる。そして、経路設定部66では、敷物類の毛の奥の塵埃を掃除できるように、例えば同じ位置を往復走行できるように走行経路を設定することが好ましい。例えば、電気掃除機11(本体ケース20)が同一直線上を2往復走行し、隣の直線に移動し、この直線上をさらに2往復し…という動作を繰り返すように走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御することで、敷物類を効果的に掃除できる。
【0059】
さらに、掃除制御部62では、判定部64により判定した床面の種類に応じて掃除部22の動作を変化させることが好ましい。例えば床面が畳である場合、ジグザグ走行時に折り返す際には、掃除部22の駆動を低減(停止も含む)させることで、畳の目の傷付きをより効果的に抑制できる。特に、掃除制御部62では、経路設定部66により設定された走行経路に畳の目に対して逆らって走行する箇所がある場合、回転ブラシ36(ブラシモータ37)の回転力を低下(停止も含む)させることで、畳と接触する回転ブラシ36の回転に起因する畳の目の傷付きを効果的に抑制できる。
【0060】
また、例えば床面が敷物類である場合には、掃除制御部62が掃除部22の駆動力を増加させることで、敷物類を効率的に掃除できる。具体的に、掃除制御部62では、判定部64により判定された床面が敷物類である場合、電動送風機35の吸込力と、回転ブラシ36(ブラシモータ37)の回転力と、サイドブラシ38(サイドブラシモータ39)の回転力との少なくともいずれかを増加させることで、敷物類を念入りに掃除できる。このとき、走行制御部61では、電気掃除機11(本体ケース20)の走行速度を低下させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御することで、床面の各位置に対する掃除部22による掃除力を増加させて、より効果的に掃除できる。
【0061】
地図作成部65により地図が作成された後の掃除の際に、地図に記憶された走行障害の位置、特定形状の位置、あるいは床面の位置情報について、現在の自己位置と相違がある場合には、地図作成部65により自己位置を逐一補正することで、掃除領域における電気掃除機11の位置の積算誤差を排除して正確な位置を把握し、高精度に走行経路に沿って走行可能となる。すなわち、地図作成部65は、特定形状の検出に基づき電気掃除機11の自己位置を補正する。また、経路設定部66により設定された走行経路や電気掃除機11(本体ケース20)の走行軌跡は、ユーザに報知することもできる。この場合、例えば通信部25により、ホームゲートウェイを経由してネットワーク上のサーバなどに走行経路や走行軌跡を送信し、ユーザが保有するスマートフォンやPCなどの外部装置によってインターネットを通じてサーバにアクセスしたり、外部装置にメールによって報知したり、専用の外部装置によりモニタしたりすることができる。また、電気掃除機11の表示部などに表示することもできる。
【0062】
上記の動作および制御を、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。この制御は、概略として、特定形状を検出する検出フェーズ、床面の種類を判定し床面の種類などを地図に登録する判定フェーズ、判定した床面の種類に基づき走行経路を設定する設定フェーズ、および、この走行経路に沿って走行しつつ掃除をする掃除フェーズに分類される。
【0063】
<検出フェーズ>
まず、掃除が開始すると、電気掃除機11(本体ケース20)が通常走行、例えばランダム走行するように走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御する(ステップS1)。次いで、センサ部23、あるいはカメラ51により撮像された画像に基づいて判定部64が電気掃除機11(本体ケース20)の進行方向の所定距離以内に特定形状として線を検出したか否かを判定する(ステップS2)。このステップS2において、判定部64が線を検出しないと判定した場合には、電気掃除機11は掃除を終了するか否かを判定する(ステップS3)。そして、このステップS3において、掃除を終了すると判定した場合には、掃除を終了し(ステップS4)、例えば充電装置などに帰還する。また、このステップS3において、掃除を終了しないと判定した場合には、ステップS1に進む。
【0064】
ステップS2において、判定部64が線を検出したと判定した場合には、電気掃除機11(本体ケース20)が線上を走行するように走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御するとともに、地図作成部65が地図上にこの線の位置を記憶する(ステップS5)。
【0065】
次いで、判定部64は、特定形状として交差点(例えばT字状)を検出したか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6において、判定部64が交差点を検出したと判定した場合には、地図作成部65が地図上にこの交差点の位置を記憶する(ステップS7)。一方、ステップS6において、判定部64が交差点を検出しないと判定した場合には、そのままステップS8に進む。
【0066】
さらに、判定部64は、特定形状として角を検出したか否かを判断する(ステップS8)。このステップS8において、判定部64が角を検出したと判定した場合には、地図作成部65が地図上にこの角の位置を記憶する(ステップS9)。一方、ステップS8において、判定部64が角を検出しないと判定した場合には、そのままステップS10に進む。
【0067】
なお、ステップS6およびステップS7と、ステップS8およびステップS9とは、その順序を問わない。
【0068】
次いで、走行制御部61が、電気掃除機11(本体ケース20)が線上をすべて走行したか否かを判定する(ステップS10)。このステップS10において、線上をすべて走行していないと判定した場合には、ステップS6に進む。また、このステップS10において、線上をすべて走行したと判定した場合には、ステップS11に進む。
【0069】
<判定フェーズ>
経路設定部66は、検出した線の間隔が所定以下、例えば200mm以下であるか否かを判定する(ステップS11)。このステップS11において、線の間隔が所定(200mm)以下であると判定した場合、経路設定部66は、床面の種類がフローリングであると判定する(ステップS12)。また、このステップS11において、線の間隔が所定以下でない(所定より大きい)と判定した場合、経路設定部66は、検出した交差点の最小間隔が所定以上、例えば800mm以上であるか否かを判定する(ステップS13)。このステップS13において、交差点の最小間隔が所定(800mm)以上であると判定した場合、経路設定部66は、床面の種類が畳であると判定する(ステップS14)。また、このステップS13において、交差点の最小間隔が所定以上でない(所定未満である)と判定した場合、経路設定部66は、検出した角の間隔が所定、例えば500mm以上であるか否かを判定する(ステップS15)。このステップS15において、角の間隔が所定(500mm)以上であると判定した場合、経路設定部66は、床面の種類が敷物類であると判定する(ステップS16)。また、このステップS15において、角の間隔が所定以上でない(所定未満である)と判定した場合、経路設定部66は、床面の種類が、フローリング、畳、敷物類のいずれでもない、その他の床面であると判定し、ステップS1に進む。なお、これらステップS11およびステップS12と、ステップS13およびステップS14と、ステップS15およびステップS16とは、それらの順序を問わない。そして、ステップS12、ステップS14、ステップS16の後、地図作成部65は、判定した床面の種類を地図に記憶する(ステップS17)。
【0070】
<設定フェーズ>
ステップS17の後、経路設定部66は、判定した床面の種類に応じて走行経路を設定する(ステップS18)。
【0071】
<掃除フェーズ>
ステップS18の後、電気掃除機11は掃除を続行する(ステップS19)。このステップS19において、走行制御部61は、経路設定部66により設定された走行経路に沿って電気掃除機11(本体ケース20)を走行させるように駆動輪21(モータ33)の動作を制御する。また、掃除制御部62は、掃除部22を駆動させて床面を掃除する。このとき、掃除制御部62は、床面の種類に応じて掃除部22の動作を変化させることもできる。
【0072】
経路設定部66により設定された走行経路をすべて走行した後は、例えば掃除を終了し、充電装置に帰還するなど、所定の動作を行う。
【0073】
以上説明した一実施形態によれば、地図作成部65により作成した地図と判定部64により判定した床面の種類とに基づき経路設定部66によって走行経路を設定することで、床面の種類に応じた最適な走行経路を設定できるので、走行制御部61が駆動輪21(モータ33)の駆動を制御することで経路設定部66により設定された走行経路に沿って電気掃除機11(本体ケース20)を自律走行させることで、床面の種類に応じて効率よく掃除できる。すなわち、床面の種類を加味した走行経路とすることで、単に地図作成部65により作成した地図に基づいて走行経路を設定する場合と比較して、畳の目に逆らったり、フローリングの溝に入り込んだ塵埃が取れなかったり、敷物類の毛の奥に入り込んだ塵埃が取れなかったりするなどの課題を解決できる。
【0074】
カメラ51により撮像した画像中の特定形状に基づいて判定部64が床面の種類を判定することで、例えば駆動輪21を駆動するモータ33のトルクや床面の光の反射などによって床面の特徴をセンシングする場合と比較して、床面の種類を判定部64により高精度に、かつ、容易に判定するための有効な材料を検出できる。
【0075】
しかも、カメラ51は、掃除領域の地図を作成したり、走行障害を検出したりするための画像を撮像するものであるため、このカメラ51の画像を利用して床面の種類を判定することで、床面の種類を判定するための専用の撮像手段を別途備える必要がなく、電気掃除機11の構成を簡略化できる。
【0076】
地図作成部65が、特定形状の位置を地図に記憶することで、判定部64により床面の種類を判定する際に、この特定形状の配置や間隔などを容易に利用でき、床面の種類の判定精度を向上できる。
【0077】
特定形状として線を検出することで、例えば畳の縁、フローリングの溝、敷物類とその下部の床面との境目などを検出することが可能になる。したがって、床面の種類を判定部64により高精度に、かつ、容易に判定する際に有効な判定材料を検出できる。
【0078】
このとき、走行制御部61は、線に沿って電気掃除機11(本体ケース20)を走行させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御することで、床面の種類が判定できていない段階であっても、駆動輪21や回転ブラシ36によって特に畳などの床面を傷付けにくくなる。
【0079】
特定形状として線の交差点を検出することで、この交差点の位置や間隔に基づいて、例えば畳の角、フローリングの溝などを検出することが可能になる。したがって、床面の種類を判定部64により高精度に、かつ、容易に判定する際に有効な判断材料を検出できる。
【0080】
特定形状として角を検出することで、この角の位置や間隔に基づいて、例えば敷物類の角などを検出することが可能になる。したがって、床面の種類を判定部64により高精度に、かつ、容易に判定する際に有効な判断材料を検出できる。
【0081】
判定部64が特定形状の個数や検出間隔などの分布に基づいて床面の種類を判定することで、床面の種類を精度よく判定できる。
【0082】
判定部64が複数の特定形状に基づいて床面の種類を判定することで、これら複数の特定形状の検出を組み合わせることで、床面の種類を精度よく判定できる。
【0083】
判定部64により床面が畳であると判定した場合、経路設定部66が特定形状の分布に基づいて推定される畳の配置に基づき、この畳の目に沿って走行経路を設定することで、駆動輪21や回転ブラシ36によって畳を傷付けにくくなる。
【0084】
このとき、特定形状である線の幅に基づいて経路設定部66が畳上の走行経路を設定することで、畳縁の幅の違いに基づいて畳の配置や目の方向を効率的に推定でき、経路設定部66による走行経路の設定を効率化できる。
【0085】
そして、このようにカメラ51のより撮像した線、交差点、角などの特定形状に基づいて判定部64が床面の種類を判定するため、高度な画像処理を行うことなく容易に床面の種類を判定できる。
【0086】
経路設定部66により設定された走行経路に畳の目に対して逆らって走行する箇所がある場合に、掃除制御部62が回転ブラシ36(ブラシモータ37)の回転力を低下させることで、回転ブラシ36によって畳を傷付けるリスクを低減できる。
【0087】
判定部64により床面がフローリングであると判定した場合、経路設定部66が特定形状の分布に基づいて溝に沿って走行経路を設定することで、フローリングの溝に入り込んだ塵埃を効率よく掃除できる。
【0088】
判定部64により床面が敷物類と判定された場合、経路設定部66が特定形状の分布に基づいて推定される敷物類の領域内を往復走行する走行経路を設定することで、敷物類を念入りに掃除でき、毛の奥などに入り込んだ塵埃を、より確実に掃除できる。
【0089】
掃除制御部62が、判定部64により判定した床面の種類に応じて掃除部22の動作を変化させることで、例えば敷物類上を掃除する場合には掃除制御部62が掃除部22の掃除力(電動送風機35の吸込力、回転ブラシ36(ブラシモータ37)やサイドブラシ38(サイドブラシモータ39)の回転力)を増加させたり、走行制御部61が電気掃除機11(本体ケース20)の走行速度を低下させるように駆動輪21(モータ33)の駆動を制御したりするなど、床面の種類に応じた、より効率的な掃除が可能になる。
【0090】
特定形状の検出に基づき自己位置を補正することで、自己位置の積算誤差を排除でき、高精度に走行経路に沿って掃除できる。
【0091】
そして、例えば通信部25を用いて、電気掃除機11(本体ケース20)の走行経路または走行軌跡を報知することで、ユーザに掃除性能の認知と安心感とを与えることができる。
【0092】
なお、上記一実施形態において、自己位置推定手段の機能は、地図作成部(マッピング手段)65に一体に備えるものとしたが、地図作成部65とは別個に備えられていてもよい。
【0093】
また、電気掃除機11にカメラ51を備え、このカメラ51により撮像された画像に基づいて床面の種類を判定する構成としたが、例えば掃除領域の天井などに設置されたカメラと電気掃除機11との間で無線、あるいは有線などによってデータを送受信可能とすることで、この天井などに設置されたカメラにより撮像された画像に基づいて床面の種類を判定するようにしてもよい。
【0094】
さらに、電気掃除機11の走行経路または走行軌跡は、通信部25を介して外部装置に送信して外部装置に表示することで報知する構成としたが、例えば電気掃除機11の表示部を報知手段として、この表示部に直接表示することもできる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
11 電気掃除機
20 本体ケース
21 駆動部である駆動輪
22 掃除部
36 回転清掃体としての回転ブラシ
51 撮像手段としてのカメラ
61 走行制御手段である走行制御部
62 回転制御手段の機能を備える掃除制御手段である掃除制御部
64 判定手段である判定部
65 自己位置推定手段の機能を備えるマッピング手段としての地図作成部
66 設定手段としての経路設定部
CO 角
CR 交差点
FL フローリング
GR 溝
LI 線
RU 敷物類
RT 走行経路
T 畳
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12