(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20221110BHJP
【FI】
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2018065797
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳哉
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104481(WO,A1)
【文献】特開2015-006141(JP,A)
【文献】特開2015-084751(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104651174(CN,A)
【文献】おすすめのオレンジリキュールと美味しい飲み方 | リキュール専門ページ | ピントル,Wayback machineアーカイブ,2016年10月27日,https://web.archive.org/web/20161027210004/http://food-drink.pintoru.com/liqueur/orange-liqueur/,[検索日2022.01.23]
【文献】ワイン・クーラー 詳細情報 カクテルレシピ - Liqueur&Cocktail - サントリー,Wayback machineアーカイブ,2016年12月29日,https://web.archive.org/web/20161229053435/http://cocktailrecipe.suntory.co.jp:80/wnb/cocktail/recipe/wine_cooler,[検索日2022.01.23]
【文献】日本食品標準成分表(七訂)第2章7果実類,2015年,https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365343_1-0207r2_1.pdf,[検索日2022.01.23]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB2の含有量が0.0001
~0.01w/v
%である飲料であって、
果皮エキスを含有するアルコール飲料。
【請求項2】
前記果皮エキスの含有量が0.02~0.15w/v%である請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
アルコール度数が10%以下である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記果皮エキスの由来となる果実が柑橘類果実である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
発泡性である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
ビタミンB2の含有量が0.0001
~0.01w/v
%であるアルコール飲料の製造方法であって、
果皮エキスを含有させる工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
ビタミンB2の含有量が0.0001
~0.01w/v
%であるアルコール飲料の不快臭と刺激臭を抑制するとともに味をまろやかにする香味向上方法であって、
前記アルコール飲料に果皮エキスを含有させるアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲用者の多様な嗜好に応えるべく、様々な香味のアルコール飲料やその製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコール飲料又はアルコールテイスト飲料であって、アセスルファムカリウムの含有量(A)が0.005~0.60g/Lであり、そして、単糖類、二糖類及びオリゴ糖の含有量の合計(B)が0.01~32g/Lである飲料が記載されている。
そして、特許文献1には、甘味の質、特に嗜好性を改善することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているようなアルコール飲料は、一般的に、香味を楽しんだり、その香味によって心身を高揚させたりするための嗜好品と認識されている。したがって、アルコール飲料に健康的なイメージを有する消費者は少なかった。
【0006】
本発明者は、アルコール飲料にビタミンB2を含有させることを検討したが、この場合、アルコールの香味とビタミンB2の香味とが相まって、飲料を飲んでいる際に強い不快臭と刺激臭とを感じてしまうことが確認された。また、アルコールのトゲトゲした香味がビタミンB2の香味によって増強されることで味にまろやかさがなくなり、非常に飲み難くなってしまうことが確認された。
【0007】
そこで、本発明は、不快臭と刺激臭とが抑制されているとともに味がまろやかなアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アルコール飲料にビタミンB2を含有させた場合に発生する不快臭と刺激臭とを抑制させるとともに、味をまろやかにするため、様々な物質に焦点をあてて数多くの実験を行った。その結果、果皮エキスが前記した課題を解決できることを見出し、本発明を創出した。
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)ビタミンB2の含有量が0.0001~0.01w/v%である飲料であって、果皮エキスを含有するアルコール飲料。
(2)前記果皮エキスの含有量が0.02~0.15w/v%である前記1に記載のアルコール飲料。
(3)アルコール度数が10%以下である前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
(4)前記果皮エキスの由来となる果実が柑橘類果実である前記1から前記3のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(5)発泡性である前記1から前記4のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(6)ビタミンB2の含有量が0.0001~0.01w/v%であるアルコール飲料の製造方法であって、果皮エキスを含有させる工程を含むアルコール飲料の製造方法。
(7)ビタミンB2の含有量が0.0001~0.01w/v%であるアルコール飲料の不快臭と刺激臭を抑制するとともに味をまろやかにする香味向上方法であって、前記アルコール飲料に果皮エキスを含有させるアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアルコール飲料は、ビタミンB2だけでなく果皮エキスを含有していることから、不快臭と刺激臭とが抑制されているとともに味がまろやかになっている。
【0011】
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、ビタミンB2だけでなく果皮エキスを含有させる工程を含むことから、不快臭と刺激臭とが抑制されているとともに味がまろやかなアルコール飲料を製造することができる。
【0012】
本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、ビタミンB2を含有するアルコール飲料に果皮エキスを含有させることから、アルコール飲料の不快臭と刺激臭とを抑制するとともに味をまろやかにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、アルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0014】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、ビタミンB2と、果皮エキスと、を含有する。また、本実施形態に係るアルコール飲料は、発泡性であってもよい。
なお、本実施形態に係るアルコール飲料は、果皮エキスを含有することからフルーツテイストのアルコール飲料であり、特に限定されないものの、チューハイ、カクテル等が挙げられる。ここで、チューハイとは、複数種のアルコール原料、又は、1種以上のアルコール原料及び非アルコール原料を含む、発泡性を有するアルコール飲料である。アルコール原料としては、蒸留酒、醸造酒を用いることができる。非アルコール原料としては、例えば、水、炭酸水、果汁等が挙げられる。チューハイは、甘味料、添加成分等を含んでいてよい。チューハイは一般的にサワーと称されることもある。また、本明細書において、カクテルとは、発泡性を有しないほかは、チューハイと同義である。
以下、アルコール飲料を構成する各成分等について説明する。
【0015】
(ビタミンB2)
ビタミンB2とは、水溶性のビタミンに分類され、ビタミンB複合体の1つであって、リボフラビン(riboflavin)とも呼ばれる。
このビタミンB2は、身体の健康を保つための様々な働きを発揮するものの、アルコール飲料に含有させた場合、アルコールの香味とビタミンB2の香味とが相まって、不快臭と刺激臭とを発生させてしまう。また、ビタミンB2は、アルコール飲料に含有させた場合、アルコールのトゲトゲした香味を増強させてしまうことで味のまろやかさがなくなり、非常に飲み難くさせてしまう。
【0016】
ビタミンB2は、アルコール飲料に含有されていれば本発明の課題が明確に現れるため含有量は特に限定されないが、例えば、0.0001w/v%以上が好ましく、0.0003w/v%以上がより好ましく、0.0005w/v%以上がさらに好ましい。ビタミンB2の含有量が所定値以上であることによって、より課題が明確となる。
また、ビタミンB2の含有量の上限についても特に限定されないが、例えば、0.01w/v%以下が好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、0.0008w/v%以下がさらに好ましい。
【0017】
なお、アルコール飲料におけるビタミンB2の含有量は、高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0018】
(果皮エキス)
果皮エキスとは、果実の皮から得られるエキスである。そして、果皮エキスの由来となる果実は、特に限定されず、本発明の所望の効果が阻害されない範囲において、食用のものであれば、いずれの果実も使用できる。
例えば、果皮エキスの由来となる果実としては、柑橘類に属する果実(適宜「柑橘類果実」という)である、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、イヨカン、ウンシュウミカン、カボス、キシュウミカン、キノット、コウジ、サンボウカン、シトロン、ジャバラ、スダチ、ダイダイ、タチバナ、タンゴール、ナツミカン、ハッサク、ハナユズ、ヒュウガナツ、ヒラミレモン(シークヮーサー)、ブンタン、ポンカン(マンダリンオレンジ)、ユズ等や、これらの柑橘類果実以外にも、セイヨウリンゴ(いわゆるリンゴ)、エゾノコリンゴ、カイドウズミ、ハナカイドウ、イヌリンゴ(ヒメリンゴ)、マルバカイドウ、ノカイドウ、ズミ(コリンゴ、コナシ)、オオウラジロノキ、ブドウ、イチゴ、モモ、メロン、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、スモモ、キウイフルーツ、カシス、ブルーベリー、ラズベリー等が挙げられる。
なお、果皮エキスの由来となる果実は、飲料のフレッシュ感を増強させるという観点から、前記した柑橘類果実が好ましく、柑橘類果実の中でも酸味の強い香酸柑橘類果実(レモン、ライム、カボス、スダチ、ダイダイ、ヒラミレモン、ユズ等)がより好ましく、レモンが特に好ましい。
【0019】
この果皮エキスは、驚くべきことに、アルコールの香味とビタミンB2の香味とが相乗的に作用することで発生する不快臭と刺激臭とを抑制し、さらに、ビタミンB2によって増強されたアルコールのトゲトゲした香味をまろやかな香味とすることができる。
なお、果皮エキスは、例えば、果皮(粉砕物)について水抽出によって得られた抽出液を合成樹脂に吸着させ、吸着した成分についてアルコール(30%エタノール水溶液等)に溶出させて得られたエキスを使用することができる。そして、果皮エキスは、市販品を使用することもできる。
また、果皮エキスは、1種類の果実を原料としてもよいし、2種類以上の果実を原料としてもよい。
【0020】
果皮エキスの含有量は、0.02w/v%以上が好ましく、0.03w/v%以上がより好ましく、0.04w/v%以上がさらに好ましい。果皮エキスの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの香味とビタミンB2の香味とが相乗的に作用することで発生する不快臭と刺激臭とを抑制できるとともに、味がまろやかになる。
果皮エキスの含有量は、0.15w/v%以下が好ましく、0.12w/v%以下がより好ましく、0.10w/v%以下がさらに好ましい。果皮エキスの含有量が所定値以下であることによって、不快臭と刺激臭との抑制効果と味をまろやかにする効果とをしっかりと発揮させることができる。
【0021】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、発泡性でも非発泡性でもよいが、発泡性であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
【0022】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有している。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、ラム等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒、清酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記した様々な酒類に果実等を漬け込んだ浸漬酒を使用してもよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0023】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、1v/v%以上であるのが好ましく、3v/v%以上であるのがより好ましく、4v/v%以上であるのがさらに好ましい。アルコール度数が所定値以上であることによって、本発明の課題がより明確となる。
アルコール飲料のアルコール度数は、10v/v%以下であるのが好ましく、9v/v%以下であるのがより好ましい。アルコール度数が所定値以下であることによって、より確実に味をまろやかとすることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0024】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記したビタミンB2、果皮エキス、アルコール、添加物は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、ビタミンB2だけでなく果皮エキスを含有していることから、不快臭と刺激臭とが抑制されているとともに味がまろやかになっている。
【0026】
[容器詰めアルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0027】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0028】
混合工程では、混合タンクに、水、ビタミンB2、果皮エキス、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、ビタミンB2、果皮エキス等の含有量、アルコール度数等が前記した所定範囲の量となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0029】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、チューブ式殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0030】
なお、混合工程及び後処理工程にて行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、ビタミンB2だけでなく果皮エキスを含有させる工程を含むことから、不快臭と刺激臭とが抑制されているとともに味がまろやかなアルコール飲料を製造することができる。
【0032】
(アルコール飲料の香味向上方法)
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、ビタミンB2を含有するアルコール飲料に果皮エキスを含有させることによって、不快臭と刺激臭を抑制するとともに味をまろやかにする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した内容と同じである。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、ビタミンB2を含有するアルコール飲料に果皮エキスを含有させることから、アルコール飲料の不快臭と刺激臭とを抑制するとともに味をまろやかにすることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0035】
[サンプルの準備]
表に示す量となるように、ビタミンB2、レモン果皮エキス、原料用アルコール、果糖ぶどう糖液糖、酸味料、炭酸水を混合してサンプルを準備した。
なお、各サンプル間において、果糖ぶどう糖液糖と酸味料との含有量は略同量となるように揃えた。また、各サンプルの20℃におけるガス圧は約2.3kg/cm2(スニフト無し)であった。
【0036】
前記したレモン果皮エキスは、次の方法で得られたものを使用した。
レモン果皮(粉砕物)について、蒸留水を抽出溶媒とした抽出処理を施し、固液分離処理を施してレモン抽出液を得た。そして、蒸留水で洗浄した合成樹脂にレモン抽出液を供し、合成樹脂に吸着した吸着成分を30%エタノール水溶液にて溶出させることで得られたレモン果皮エキスを使用した。
【0037】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル7名が下記評価基準に則って「不快臭と刺激臭」、「味のまろやかさ」、「飲料としての総合評価」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0038】
(不快臭と刺激臭:評価基準)
不快臭と刺激臭の評価については、「アルコールとビタミンB2に基づく不快臭と刺激臭を非常に強く感じる」場合を5点、「アルコールとビタミンB2に基づく不快臭と刺激臭を全く感じない」場合を1点として5段階で評価した。そして、不快臭と刺激臭の評価については、点数が低いほど低減(抑制)されており、好ましいと判断できる。
なお、不快臭と刺激臭については、サンプル1-1(3点)を基準として評価した。
【0039】
そして、「不快臭と刺激臭」について、具体的には、飲んでいる際に感じる香気を評価しており、詳細には、ビタミンB2由来の不快に感じる臭いやアルコールとビタミンB2による鼻を刺すような刺激的な臭いを確認し、両者の臭いの総量(合わせた臭いの強さ)で評価した。
【0040】
(味のまろやかさ:評価基準)
味のまろやかさの評価については、「味が非常にまろやかである」場合を5点、「味が全くまろやかではない」場合を1点として5段階で評価した。そして、味のまろやかさの評価については、点数が高いほど味がまろやかとなっており、好ましいと判断できる。
【0041】
(飲料としての総合評価:評価基準)
飲料としての総合評価については、「香味がレモンチューハイとして非常に良い(非常に適している)」場合を5点、「香味がレモンチューハイとして非常に悪い(全く適していない)」場合を1点として5段階で評価した。そして、飲料としての総合評価については、点数が高いほど好ましいと判断できる。
【0042】
表1~3に、各サンプルの配合を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
(結果の検討)
サンプル1-1、1-2の結果から、ビタミンB2を含有するアルコール飲料に果皮エキスが含有されることによって、不快臭と刺激臭が抑制されるとともに味がまろやかになることが確認できた。また、ビタミンB2を含有するアルコール飲料に果皮エキスが含有されることによって、総合評価も良くなることが確認できた。
【0047】
サンプル2-1~2-4の結果から、アルコール度数が所定範囲内であると、各効果(不快臭と刺激臭の抑制、味のまろやかさの向上)が十分に発揮されることが確認できた。
【0048】
サンプル3-1~3-5の結果から、レモン果皮エキスの含有量が所定範囲内であると、各効果(不快臭と刺激臭の抑制、味のまろやかさの向上)が十分に発揮されることが確認できた。また、レモン果皮エキスの含有量が所定範囲内であると、総合評価も良くなることが確認できた。