(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20221110BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 101
A41D13/005 108
(21)【出願番号】P 2018077020
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-02-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 学
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和博
(72)【発明者】
【氏名】原 奈都美
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 信義
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025784(WO,A1)
【文献】特開2008-240214(JP,A)
【文献】登録実用新案第3118697(JP,U)
【文献】登録実用新案第3144098(JP,U)
【文献】特開2006-152452(JP,A)
【文献】特許第6159047(JP,B1)
【文献】実開昭58-105410(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002
A41D13/005
A41D27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風装置を着脱可能に構成された衣服であって、
前記送風装置の一部を挿通可能に設けられた取付け孔を有する表地を少なくとも含み、着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された本体部と、
少なくとも前記表地の内側で前記本体部に取り付けられ、前記身体の少なくとも一部を覆うように構成された断熱材とを備え、
前記衣服は、前記断熱材が前記本体部から取り外し可能に構成されており、
前記本体部は、前記表地の内面側に取り付けられた裏地と、前記表地と前記裏地の間に形成された内部空間とを含み、
前記内部空間は、前記送風装置が前記衣服に装着された場合、前記取付け孔に一部が挿通された前記送風装置によって送出された外気が流動可能に構成されており、
前記断熱材は、前記内部空間に配置され、
前記裏地は、少なくとも、前記表地のうち後身頃の前記内面を覆っており、
前記断熱材は、前記内部空間にフィットするように構成されて
おり、
前記本体部は、前記内部空間と外部とを連通させる開口部を備え、
前記開口部は、開閉可能に構成されていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
送風装置を着脱可能に構成された衣服であって、
前記送風装置の一部を挿通可能に設けられた取付け孔を有する表地を少なくとも含み、着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された本体部と、
少なくとも前記表地の内側で前記本体部に取り付けられ、前記身体の少なくとも一部を覆うように構成された断熱材とを備え、
前記衣服は、前記断熱材が前記本体部から取り外し可能に構成されており、
前記本体部は、前記表地の内面側に取り付けられた裏地と、前記表地と前記裏地の間に形成された内部空間とを含み、
前記内部空間は、前記送風装置が前記衣服に装着された場合、前記取付け孔に一部が挿通された前記送風装置によって送出された外気が流動可能に構成されており、
前記断熱材は、前記内部空間に配置され、
前記本体部は、前記内部空間と外部とを連通させる開口部を備え、
前記開口部は、開閉可能に構成されていることを特徴とする衣服。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の衣服であって、
前記断熱材は、前記取付け孔を覆うように前記本体部に取り付け可能であることを特徴とする衣服。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1つに記載の衣服であって、
前記本体部および前記断熱材のうち少なくとも一方は、発熱体を着脱可能に構成されていることを特徴とする衣服。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1つに記載の衣服であって、
前記本体部および前記断熱材の少なくとも一方は、前記断熱材を前記本体部に対して所定位置で保持するように構成された位置決め部を備えたことを特徴とする衣服。
【請求項6】
請求項
5に記載の衣服であって、
前記位置決め部は、前記断熱材に設けられ、前記取付け孔に係合することで前記断熱材を前記本体部に対して前記所定位置で保持するように構成されていることを特徴とする衣服。
【請求項7】
送風装置を着脱可能に構成された衣服であって、
前記送風装置の一部を挿通可能に設けられた取付け孔を有する表地を少なくとも含み、着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された本体部と、
少なくとも前記表地の内側で前記本体部に取り付けられ、前記身体の少なくとも一部を覆うように構成された断熱材とを備え、
前記衣服は、前記断熱材が前記本体部から取り外し可能に構成されており、
前記本体部は、前記表地の内面側に取り付けられた裏地と、前記表地と前記裏地の間に形成された内部空間とを含み、
前記内部空間は、前記送風装置が前記衣服に装着された場合、前記取付け孔に一部が挿通された前記送風装置によって送出された外気が流動可能に構成されており、
前記断熱材は、前記内部空間に配置され、
前記裏地は、少なくとも、前記表地のうち後身頃の前記内面を覆っており、
前記断熱材は、前記内部空間にフィットするように構成されており、
前記本体部および前記断熱材の少なくとも一方は、前記断熱材を前記本体部に対して所定位置で保持するように構成された位置決め部を備え、
前記位置決め部は、前記断熱材に設けられ、前記取付け孔に係合することで前記断熱材を前記本体部に対して前記所定位置で保持するように構成されており、
前記位置決め部は、前記取付け孔を通して、前記表地の外側に、物品を収容可能に配置されるポケットとして構成されていることを特徴とする衣服。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか1つに記載の衣服であって、
前記本体部および前記断熱材の少なくとも一方に着脱可能に構成されたポケットを少なくとも1つ備えたことを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置が着脱可能な衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
送風装置が着脱可能な衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような衣服では、送風装置によって衣服内に外気が送出されることで、衣服の着用者の身体を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている衣服は、着用者に対し、高温環境下における着用時の快適性を提供することができる。一方で、低温環境下における着用時の快適性に関しては考慮されておらず、着用に適した環境が限られている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、様々な環境下で着用時の快適性を提供可能な衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様として、送風装置を着脱可能に構成された衣服が提供される。この衣服は、本体部と断熱材とを備えている。本体部は、表地を少なくとも含み、着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成されている。表地は、送風装置の一部を挿通可能に設けられた取付け孔を有する。断熱材は、少なくとも表地の内側で本体部に取り付けられ、着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成されている。そして、衣服は、断熱材が本体部から取り外し可能に構成されている。
【0007】
本態様の衣服は、高温環境下では、断熱材を取り外し、送風装置を本体部に取り付けて、着用者の身体の冷却に用いることができる。これに加え、低温環境下では、断熱材を本体部に取り付けて、防寒着として利用することが可能となる。つまり、高温環境下のみならず、低温環境下での着用時の快適性も提供することができる。
【0008】
本発明の一態様において、断熱材は、取付け孔を覆うように本体部に取り付け可能であってもよい。本体部に断熱材を取り付けて防寒着として利用する場合、送風装置は本体部から取り外した方が衣服を軽量化できるため、また、動きやすさを向上できるため、好ましい。本態様によれば、送風装置が取り外された場合、断熱材によって取付け孔が覆われるため、取付け孔を通過した冷気が着用者の身体に当たることを防止することができる。
【0009】
本発明の一態様において、本体部および断熱材のうち少なくとも一方は、発熱体を着脱可能に構成されていてもよい。本態様によれば、断熱材による断熱(保温)機能のみならず、必要に応じて発熱体による暖房機能を衣服に付加することができる。よって、例えば、断熱材による防寒のみでは不十分な場合に、本体部または断熱材に取り付けた発熱体によって、着用者の身体を効率的に暖めることが可能となる。これにより、低温環境下における快適性を一層向上させることができる。
【0010】
本発明の一態様において、本体部および断熱材のうち少なくとも一方は、断熱材を本体部に対して所定位置で保持するように構成された位置決め部を備えていてもよい。本態様によれば、位置決め部によって断熱材を本体部に対して位置決めし、断熱材を本体部に取り付けたときの両者の位置関係を安定化することができるため、着用時の快適性を向上させることができる。
【0011】
本発明の一態様において、位置決め部は、断熱材に設けられ、取付け孔に係合することで断熱材を本体部に対して所定位置で保持するように構成されていてもよい。本態様によれば、本体部に設けられた取付け孔を利用して、断熱材を本体部に対して簡便に位置決めし、位置関係を安定化させることができる。
【0012】
本発明の一態様において、位置決め部は、取付け孔を通して、表地の外側に、物品を収容可能に配置されるポケットとして構成されていてもよい。本態様によれば、ポケットを、本体部に対する位置決めに加え、物品の収容に利用することが可能となる。また、取付け孔にポケットを通すことで、取付け孔の目隠し機能も発揮することができる。なお、本態様におけるポケットは、断熱材に縫合等の方法で固定されていてもよいし、断熱材に着脱可能に構成されていてもよい。
【0013】
本発明の一態様において、本体部は、表地の内面側に取り付けられた裏地と、表地と裏地の間に形成された内部空間とを含んでいてもよい。内部空間は、送風装置が衣服に装着された場合、取付け孔に一部が挿通された送風装置によって送出された外気が流動可能に構成されていてもよい。そして、断熱材は、内部空間に配置されてもよい。本態様によれば、高温環境下では、送風装置から送出された外気を内部空間で流動させることで着用者の身体を冷却する一方、低温環境下では、内部空間を利用して断熱材を本体部に取り付けることが可能となる。
【0014】
本発明の一態様において、本体部は、内部空間と外部とを連通させる開口部を備えていてもよい。更に、開口部は、開閉可能に構成されていてもよい。本態様によれば、高温環境下では、開口部を開放することで、送風装置によって内部空間へ送出され、開口部から流出する外気によって、着用者の身体の特定の部位を選択的に冷却することが可能となる。また、低温環境下では、開口部を閉じることで、暖められた空気が内部空間から逃げるのをできるだけ抑制し、断熱性(保温性)の低下を防止することができる。
【0015】
本発明の一態様において、衣服は、本体部および断熱材の少なくとも一方に着脱可能に構成されたポケットを少なくとも1つ備えていてもよい。本態様によれば、ポケットを必要に応じて衣服に付加し、物品の収容等に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本体部にファンユニットが取り付けられ、断熱ライナが取り外された状態の上着を背面側からみた説明図である。
【
図2】前を開いた状態の
図1の上着を前側からみた説明図である。
【
図3】
図1の上着とファンユニットの断面を示す説明図である。
【
図4】本体部に断熱ライナが取り付けられた状態の上着を背面からみた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る衣服の一例として、上着1を例示する。
【0018】
まず、上着1の概略構成について説明する。
図1および
図2に示す本実施形態の上着1は、通気衣服、空調衣服、冷却衣服などとも称される衣服の一例であって、送風を行うファンユニット8を着脱可能に構成されている。
【0019】
図1および
図2に示すように、上着1は、表地2と裏地3とを含む本体部10を備えている。高温環境下では、上着1にファンユニット8が取り付けられ、着用者が上着1を着用した状態でファンユニット8による送風が行われる。ファンユニット8の吸気口から吸い込まれた外気は、排気口を介して表地2と裏地3の間に送出され、表地2と裏地3の間に形成された内部空間15(
図3参照)内を流動する。これにより裏地3が膨らみ、着用者の身体(肌着を着用した状態を含む)に接触して、汗を吸収する。そして、内部空間15を流動する外気がこの汗を蒸発させることで熱を奪い、着用者に冷感を与えるものである。また、外気は、裏地3を通して内部空間15から流出し、身体全体の放熱を促進することによっても着用者に冷感を与える。
【0020】
また、
図4に示すように、上着1は、本体部10に着脱可能な断熱ライナ4を備えている。断熱ライナ4が本体部10に取り付けられることで、本実施形態の上着1は防寒着として機能する。このように、本実施形態の上着1は、高温環境下において着用者の身体の冷却に利用されるのみならず、低温環境下で着用者の身体の保温にも利用可能に構成されている。
【0021】
以下、上着1の詳細構成について説明する。
【0022】
まず、本体部10について説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態では、上着1は、前開きの長袖の上衣として構成されており、表地2は、後身頃21と、スライドファスナで接続可能な左身頃と右身頃とからなる前身頃23と、袖25とを含む。
【0023】
図1および
図3に示すように、後身頃21は、2つのファンユニット8を着脱可能に構成されている。より詳細には、後身頃21は、下部(詳細には、着用時に着用者の腰上部を覆う部分)の2箇所に、ファンユニット8用の取付け孔211を有する。なお、取付け孔211は、ファンユニット8の一部を挿通可能に構成されている。より詳細には、取付け孔211は、ファンユニット8のハウジング84の筒状部841の径と概ね同径に形成されている。ファンユニット8は、筒状部841が取付け孔211に挿通された状態で、表地2に固定される。以下、取付け孔211の周縁部を、ファン取付け部212ともいう。なお、ファン取付け部212は、ファンユニット8を安定して固定可能とするために、補強材によって補強されていることが好ましい。
【0024】
また、
図4に示すように、後身頃21は、物品を収容可能な機能ポケット6を着脱可能に構成されている。本実施形態の機能ポケット6は、矩形状の袋として構成されている。機能ポケット6の一面の四隅には、スナップボタン61が固定されている。一方、後身頃21の外面(着用時に外部空間に臨む面、着用者の身体と反対側に配置される面)には、スナップボタン61に係合可能なスナップボタン62が固定されている。より詳細には、4つのスナップボタン62が、各取付け孔211の周囲に配置されている。機能ポケット6は、スナップボタン61、62の係合により、後身頃21の外面に取り付け可能とされている。
【0025】
図2に示すように、裏地3は、表地2の内面側に取り付けられている。より詳細には、表地2の後身頃21および前身頃23全体を覆うように、裏地3の縁部30の大部分が表地2に縫い付けられている。
図3に示すように、表地2と裏地3の間には、内部空間15が形成されている。なお、裏地3のうち、表地2との接合部(縁部30)に囲まれた領域は、表地2のうち接合部に囲まれた領域よりも大きい。これにより、裏地3は、ファンユニット8による送風に伴って膨らみやすい構成を有する。
【0026】
図2に示すように、縁部30のうち、表地2に縫い付けられていない部分は、内部空間15と外部とを連通する開口部31を構成する。本実施形態では、開口部31は、スライドファスナ32により開閉可能とされている。なお、開口部31は、着用者の首筋、両脇の下から背中側の両腕の付け根までの部分、および胸部(特に、鳩尾およびその上部)に夫々対向する領域に設けられている。これらの領域は、着用者が特に冷感を得やすく、熱がこもった身体の冷却効果が高いとされる部位(例えば、皮膚のすぐ下に太い血管が通っている部位)に対応している。着用者は、スライドファスナ32の開き具合を調整することで、開口部31を介してこれらの部位に直接当たる外気の風速を調整することができる。
【0027】
裏地3のうち、後身頃21を覆う部分の下端部には、縁部30に沿って、直線状に切り込まれた開口部33が形成されている。開口部33は、スライドファスナ34により開閉可能とされている。ファンユニット8をファン取付け部212に着脱する場合には、スライドファスナ34が開けられ、開口部33を介して着脱作業が行われる。また、断熱ライナ4(
図5および
図6参照)を着脱する場合も、開口部33を介して着脱作業が行われる。一方、上着1の着用時には、スライドファスナ34は閉じられた状態とされる。これにより、腰の周囲で内部空間15から外気が漏れ出ることが防止される。
【0028】
裏地3のうち、右前身頃を覆う部分には、ポケット38が設けられている。ポケット38には、ファンユニット8の電源としての充電式のバッテリ95が装着されたバッテリホルダ96を収容可能である。更に、裏地3のうち、2つのファン取付け部212に対向する部分の下側には、開口部36が設けられている。開口部36には、夫々、ファンユニット8とバッテリホルダ96とを接続するためのケーブル91を挿通可能である。なお、本実施形態のバッテリホルダ96は、モータ82の駆動を制御するコントローラと、ファンユニット8(モータ82)の駆動開始および停止の指示、ファン83の風量(モータ82の回転数)の設定等を入力するための操作ボタンを備えている。バッテリ95は、各種の電動工具(スクリュードライバ、ハンマドリル等)の電源としても使用可能である。なお、バッテリホルダ96およびバッテリ95の構成は周知であるため、ここでの詳細な説明および図示は省略する。
【0029】
なお、本実施形態では、表地2と裏地3には、何れも化学繊維織物が採用されている。表地2には、内部空間15から外気が流出するのを抑制するために、通気度の低い生地が採用されている。また、表地2は、優れた耐水性および透湿性を有する。一方、裏地3の通気度は、表地2の通気度よりは高いものの、比較的低く設定されている。より詳細には、裏地3の通気度は、内部空間15に送出された外気の圧力を大気圧よりある程度高く維持でき、且つ、内部空間15の外気が裏地3を通過して緩やかに外部へ流出することが可能な程度に設定されている。また、裏地3は、優れた吸水性および速乾性を有する。
【0030】
更に、本体部10には、断熱ライナ4を本体部10に対して位置決めして保持するための構成が設けられている。より詳細には、表地2の後身頃21および前身頃23の内面(着用時に着用者の身体側に配置される面)には、裏地3との接合部に沿って、断熱ライナ4取付け用のスナップボタン46が10箇所に固定されている。
【0031】
以下、本体部10に着脱可能に構成された断熱ライナ4の詳細構成について説明する。本実施形態では、断熱ライナ4は、表地2と裏地3の間、つまり、内部空間15に配置される。そこで、断熱ライナ4は、内部空間15にフィットするように構成されている。より詳細には、
図5および
図6に示すように、断熱ライナ4は、表地2の後身頃21および前身頃23(
図2参照)に概ね対応する形状を有する。また、詳細な図示は省略するが、本実施形態では、断熱ライナ4は、断熱材としての中綿を、2枚の布地で挟み込み、これらを縫合することで形成されている。なお、本実施形態では、中綿として、ポリエステル綿が採用されている。以下、断熱ライナ4の2面のうち、裏地3に対向配置される面を前面41、表地2に対向配置される面を背面42という。
【0032】
図5に示すように、断熱ライナ4は、発熱体を備えたヒータ5を着脱可能に構成されている。本実施形態では、ヒータ5として、導電性の布地51と電極(図示略)とを有する矩形シート状のいわゆる布ヒータが採用されている。このような布ヒータの構成自体は周知であるため、ここでの説明は省略する。本実施形態では、断熱ライナ4の前面41とヒータ5の布地51の一面には、夫々、互いに係合可能なスナップボタン53、54が設けられている。より詳細には、ヒータ5の布地51の一面の四隅には、4つのスナップボタン54が配置されている。一方、断熱ライナ4の前面41のうち、後身頃に相当する部分には、6つのスナップボタン53が固定されている。6つのスナップボタン53は、上下方向に3つが並べられ、左右方向に2列で配置されている。これら6つのスナップボタン53のうち、上方の4つまたは下方の4つに対し、ヒータ5の4つのスナップボタン54が係合されることで、ヒータ5が断熱ライナ4に取り付けられる。つまり、本実施形態では、断熱ライナ4に対するヒータ5の取付け位置は、2箇所設定されている。
【0033】
また、本実施形態では、ヒータ5は、コネクタとケーブルを介して、電源としての充電式のバッテリ57に接続される。断熱ライナ4の前面41には、ヒータ5の取付け位置に隣接して、バッテリ57を収容可能なポケット48が縫い付けられている。
【0034】
図6に示すように、断熱ライナ4の背面42には、その縁部に沿って、断熱ライナ4を本体部10へ取り付けるためのスナップボタン45が10箇所に固定されている。スナップボタン45は、表地2の内面に設けられたスナップボタン46(
図2参照)に係合可能であって、スナップボタン46に対応する位置に配置されている。スナップボタン45、46の係合によって、断熱ライナ4は本体部10(表地2)に対して位置決めされ、位置ずれしないように保持される。
【0035】
また、断熱ライナ4は、機能ポケット6を着脱可能に構成されている。より詳細には、断熱ライナ4の背面42には、4つのスナップボタン63が固定されている。本実施形態では、スナップボタン63は、断熱ライナ4が内部空間15内で本体部10に取り付けられた場合に、後身頃21の各取付け孔211(
図4参照)に対向する領域の上方に2つずつ配置されている。機能ポケット6は、スナップボタン61、63の係合により、断熱ライナ4の背面42に取り付け可能とされている。なお、機能ポケット6には4つのスナップボタン61が設けられているが、これらのうち上側の2つがスナップボタン63と係合される。つまり、機能ポケット6は上端部のみが断熱ライナ4に取り付けられる。
【0036】
以下、上着1に着脱可能に構成されたファンユニット8の構成について説明する。
図3に示すように、ファンユニット8は、本体部81と、本体部81とは別体として形成され、本体部81に着脱可能なリング部材89とを備えている。
【0037】
まず、本体部81について説明する。本体部81は、モータ82と、ファン83と、モータ82およびファン83を収容するハウジング84とを主体として構成されている。
【0038】
モータ82およびファン83は、ハウジング84内に同軸状に配置されている。なお、本実施形態では、モータ82として、ブラシを有する直流モータが採用されている。ファン83は、複数の羽根を備えた軸流ファンとして構成されている。ファン83は、モータ82の駆動に伴って、回転軸A1周りにモータシャフトと一体的に回転される。
【0039】
ハウジング84は、リング部材89が取り付けられる筒状部841と、吸気口を有する吸気部843と、吸気部843の周囲に設けられたフランジ部845と、排気口を有する排気部847とを含む。筒状部841は円筒状に形成された部分であって、モータ82およびファン83と同軸状に配置されている。詳細な図示は省略するが、筒状部841の外周面には、リング部材89の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部が形成されている。吸気部843は、筒状部841の2つの開口端のうちファン83の吸気側の端を覆うように配置されている。吸気口は、吸気部843を回転軸A1方向に貫通している。フランジ部845は、吸気部843の外周から径方向外側に突出するように設けられている。排気部847は、全体としては円形ドーム状に形成され、筒状部841の2つの開口端のうちファン83の排気側の端を覆うように配置されている。排気口は、排気部847を回転軸A1方向および回転軸A1に交差する方向に貫通している。
【0040】
次に、リング部材89について説明する。リング部材89は、筒状部891と、フランジ部893とを主体として構成されている。筒状部891は、本体部81の筒状部841の外周に着脱可能に構成された短尺状の円筒体として形成されている。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、筒状部891の内周面には、雌ネジ部が形成されている。筒状部841の外周面に形成された雄ネジ部に対してこの雌ネジ部が螺合されることで、リング部材89が本体部81に対して同軸状に取付けられる。フランジ部893は、筒状部841の軸方向における一端部から径方向外側に突出するように設けられている。フランジ部893の外径は、本体部81のフランジ部845の外径と概ね同一に設定されている。
【0041】
以下、上着1の使用態様について説明する。
【0042】
高温環境下では、
図1および
図2に示すように、上着1は、断熱ライナ4が本体部10から取り外され、ファンユニット8がファン取付け部212に装着された状態で使用される。断熱ライナ4が取り付けられていた場合(
図4参照)、着用者はまず、裏地3の下端部のスライドファスナ34を開け、スナップボタン45、46をはずして断熱ライナ4を表地2から取り外し、開口部33から取り出す。
【0043】
着用者は、更に、ファンユニット8をファン取付け部212に取り付ける。着用者は、まず、リング部材89を本体部81から取り外し、本体部81の排気部847側を上着1の取付け孔211に挿入する。これにより、フランジ部845の前側にファン取付け部212(表地2)が配置された状態となる。更に、開口部33を通してリング部材89を本体部81に取り付ける。具体的には、
図3に示すように、外側のフランジ部845と内側のフランジ部893によってファン取付け部212(表地2)が挟持される位置まで、リング部材89(筒状部891)を本体部81(筒状部841)に螺合させる。このようにしてファンユニット8が取付けられると、排気口は、裏地3に対向するように、表地2と裏地3の間に配置される。その後、着用者は、
図2に示すように、ファンユニット8に接続されたケーブル91を開口部36から裏地3の内側に引き出し、バッテリホルダ96に接続されたケーブル(図示略)に接続して、スライドファスナ34閉じる。
【0044】
また、着用者は、首筋、両脇の下から背中側の両腕の付け根までの部分、および胸部のうち、内部空間15から流出する外気を直接当てて冷却したい部分に対応する開口部31のスライドファスナ32を、適宜開く。
【0045】
着用者がバッテリホルダ96の操作ボタン(図示略)を介して駆動開始指示を入力すると、ファンユニット8の駆動が開始される。ファンユニット8によって内部空間15に送出された外気は、裏地3を表地2から離れる方向(つまり、着用者の身体側)に膨らませる(
図3参照)。これにより、裏地3の少なくとも一部が着用者の身体に接触して汗を吸収し、表地2と裏地3の間で流動する外気がこの汗を蒸発させる。裏地3の身体に接触している部分では、効率的な熱交換が行われ、着用者は冷感を得ることができる。
【0046】
また、内部空間15に送出された外気は、スライドファスナ32が開かれた開口部31から流出し、着用者に冷感を与えるとともに、熱がこもった身体を効果的に冷却することができる。また、内部空間15内における外気の流動性が確保されることで、裏地3に吸収された汗を効果的に蒸発させることができる。更に、裏地3は、ある程度の外気の通過を許容する生地で構成されているため、裏地3のうち、着用者の身体に密着していない領域を通過する外気によって身体の放熱を促進することによっても着用者に冷感を与えることができる。
【0047】
一方、低温環境下では、
図4に示すように、上着1は、断熱ライナ4が本体部10に取り付けられた状態で使用される。更に、着用者がより暖かさを求める場合には、断熱ライナ4には、ヒータ5が取り付けられた状態で使用される(
図5参照)。なお、ファンユニット8は、必ずしも上着1から取り外される必要はないが、取り外された方が上着1の着用時の快適性を高めることができる。着用者は、裏地3の下端部のスライドファスナ34(
図2参照)を開け、開口部33を介してリング部材89(筒状部891)を取り外した後、取付け孔211に挿入された本体部81を外側から引き抜くことで、ファンユニット8を取り外せばよい。
【0048】
着用者は、開口部33を介して断熱ライナ4を内部空間15に挿入し、スナップボタン45、46を係合させることで、本体部10(表地2)に取り付ける。上述のように、断熱ライナ4は、後身頃21および前身頃23に概ね対応する形状に構成されているため、このとき、着用者は、断熱ライナ4を表地2に対して容易に位置合わせすることができる。表地2に取り付けられた断熱ライナ4は、2つの取付け孔211を内側から覆う。これにより、取付け孔211を通過した外部からの冷気が着用者の身体に当たることを防止することができる。なお、ヒータ5を使用する場合、着用者は、断熱ライナ4を内部空間15に挿入する前に、スナップボタン53、54を介してヒータ5を断熱ライナ4に取り付けておけばよい(
図5参照)。このとき、着用者は、2箇所あるヒータ5の取付け位置のうち、所望の一方を選択することができる。更に、高温環境下ではスライドファスナ32(
図2参照)が選択的に開けられる一方で、低温環境下ではこれが閉じられることで、開口部31から暖気が逃げるのを防止し、断熱効果を高めることができる。
【0049】
また、着用者は、
図6に示すように、スナップボタン61、63を介して機能ポケット6を断熱ライナ4の背面42に予め取り付けておくことで、機能ポケット6を、本体部10に対する断熱ライナ4の位置決めおよび保持に利用することができる。具体的には、着用者は、
図4に示すように、背面42に取り付けられた機能ポケット6の下部を、取付け孔211を通して外部へ引き出すことで、機能ポケット6を取付け孔211に係合させることができる。この場合、断熱ライナ4は、スナップボタン45、46を介して縁部において表地2に係合するのみならず、機能ポケット6および取付け孔211を介して縁部から離れた領域(後身頃に相当する領域)でも表地2に係合する。
【0050】
また、
図4に示すように、機能ポケット6を、断熱ライナ4ではなく、スナップボタン63を用いて表地2の後身頃21に取り付けることで、取付け孔211を外部から覆うことができる。これにより、取付け孔211を通して内部空間15から暖気が逃げるのを防止し、断熱効果を高めることができる。また、上着1の見栄えを向上させることができる。
【0051】
このように、断熱材としての中綿を備えた断熱ライナ4を取り付けることで、着用者は、上着1を防寒着として利用することができる。また、断熱ライナ4にヒータ5を取り付けた場合には、断熱ライナ4による断熱(保温)機能のみならず、発熱体による暖房機能を上着1に付加し、着用者の身体を効率的に暖めることが可能となる。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態の上着1は、ファンユニット8が装着された第1の態様(冷却機能が付加された態様)、断熱ライナ4のみが取り付けられた第2の態様(断熱、保温機能が付加された態様)、および、ヒータ5と共に断熱ライナ4が取り付けられた第3の態様(暖房機能が更に付加された態様)での使用が可能とされている。よって、高温環境下では、上着1を第1の態様で使用し、着用者の身体を冷却することができる。これに加え、低温環境下では、第2の態様または第3の態様で、上着1を防寒着として利用することが可能となる。このように、本実施形態の上着1は、高温環境下のみならず、低温環境下での着用時の快適性も提供することができる。また、着用者は、ファンユニット8の着脱、断熱ライナ4の着脱、ヒータ5の着脱によって、上着1を容易に所望の態様とすることができる。更に、開口部31をスライドファスナ32によって選択的に開閉することで、上着1が第1の態様で使用される場合には、着用者の身体の特定の部位を選択的に冷却し、第2または第3の態様で使用される場合には、断熱性(保温性)の低下を防止することができる。
【0053】
本実施形態では、表地2と裏地3の間に形成された内部空間15が、高温環境下では、ファンユニット8から送出された外気を流動させ、着用者の身体を冷却するために利用される一方、低温環境下では、断熱ライナ4を本体部10に取り付けるために利用されている。つまり、内部空間15が、各態様において異なる目的に有効活用されている。また、断熱ライナ4を内部空間15内に配置することで、断熱ライナ4を、本体部10から外れることなく確実に保持することができる。また、ヒータ5が断熱ライナ4に取り付けられた場合、ヒータ5が身体側に露出しないため、ヒータ5が断熱ライナ4から外れたり、コネクタがヒータ5から外れたりする可能性を低減することができる。
【0054】
更に、本実施形態では、断熱ライナ4は、スナップボタン45、46で本体部10に固定される。このように、スナップボタン45、46によって断熱ライナ4を本体部10に対して位置決めし、保持することで、両者の位置関係を安定化させることができる。具体的には、着用者の動作時に断熱ライナ4が内部空間15内で移動して一部の領域に偏ったりするのを防止することができる。これにより、上着1の着用時の快適性を向上させることができる。特に、本実施形態では、断熱ライナ4の背面42に取り付けられた機能ポケット6によっても、断熱ライナ4を本体部10に対して位置決めし、保持することができる。これにより、断熱ライナ4と本体部10との位置関係をより安定して維持することができる。また、機能ポケット6を、物品の収容や、取付け孔211の目隠しに利用することができる。
【0055】
また、本実施形態の機能ポケット6は、本体部10の複数の箇所に選択的に着脱可能とされている。このため、機能ポケット6は、物品の収容機能はもちろん、取り付けられる位置に応じて、上述の位置決め機能、取付け孔211の目隠し機能等、様々な機能を発揮することができる。
【0056】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。上着1は、本発明の「衣服」の一例である。ファンユニット8は、「送風装置」の一例である。本体部10、表地2、取付け孔211は、夫々、本発明の「本体部」、「表地」、「取付け孔」の一例である。断熱ライナ4(中綿)は、本発明の「断熱材」の一例である。ヒータ5は、本発明の「発熱体」の一例である。スナップボタン45、46および機能ポケット6の各々は、本発明の「位置決め部」の一例である。裏地3、内部空間15は、夫々、本発明の「裏地」、「内部空間」の一例である。開口部31は、本発明の「開口部」の一例である。機能ポケット6は、本発明の「ポケット」の一例である。
【0057】
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る衣服は、例示された上着1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す上着1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0058】
本発明に係る衣服は、必ずしも上着1のような前開きの長袖の上衣である必要はなく、例えば、フード付きの上衣、袖無しの上衣(ベスト)、上衣とズボンがつながった所謂つなぎ服、またはズボンとしても好適に実現することができる。なお、衣服の用途は特に限定されるものではなく、例えば、作業着、スポーツウェア、レジャーウェア、消防服、防護服、手術着等として実現されうる。
【0059】
本体部10は、必ずしも裏地3を備えている必要はなく、表地2のみで構成されていてもよい。この場合、断熱ライナ4は、表地2の内面に着脱可能に構成されていればよい。また、裏地3は、後身頃21の内面のみを覆うように取り付けられていてもよいし、後身頃21および前身頃23に加えて袖25の内面を覆うように取り付けられてもよい。裏地3の表地2に対する取付け方法は、縫合に限られず、接着剤による接着や超音波溶着等が採用されてもよい。本体部10が表地2と裏地3を備える場合、断熱ライナ4は、内部空間15内に配置されるのではなく、例えば、裏地3の前面(着用者の身体側に配置される面)に着脱可能であってもよい。また、表地2と裏地3の種類、通気度、開口部31の数、大きさ、配置位置、スライドファスナ32の有無等についても、適宜、変更が可能である。
【0060】
断熱ライナ4の大きさやその形状は、必ずしも上記実施形態の例に限られず、取り付けられる衣服に応じて、適宜変更が可能である。例えば、断熱ライナ4は、後身頃21のみに対応する形状とされてもよい。
【0061】
断熱ライナ4に用いられる断熱材として、ポリエステル綿以外の中綿や、羽毛等が採用されてもよい。中綿の場合、例えば、ナイロン等の他の化学繊維からなる綿(いわゆる化繊綿)、綿等の天然繊維からなる綿、またはこれらの混紡繊維からなる綿が採用可能である。更に、空気層を断熱材として好適に採用することができる。この場合、例えば、樹脂フィルムで形成され、逆止弁を有する袋体に空気を封入したものや、多数の気泡が封入された樹脂シートを、断熱ライナ4の代わりに内部空間15に配置することができる。このような空気層も、優れた断熱効果を発揮することができる。
【0062】
断熱ライナ4を本体部10に対して位置決めし、保持するための構成は、スナップボタン45、46に限られない。例えば、上記実施形態のように、断熱ライナ4が内部空間15にフィットするように構成されている場合、断熱ライナ4は、スナップボタン45、46等の留め具(ファスナ)を用いることなく、表地2と裏地3の間で保持されるだけであってもよいし、上述のように、機能ポケット6と取付け孔211との係合のみによって保持されてもよい。更には、機能ポケット6に代えて、断熱ライナ4に縫合や接着等の方法で固定されたポケットが、取付け孔211に係合されてもよい。この場合も、ポケットは、取付け孔211を通して表地2の外側に配置されることで、位置決めのみならず、取付け孔211の目隠しや物品の収容に利用される。また、スナップボタン45、46以外の留め具(例えば、面ファスナ、スライドファスナ、フック、ボタン)が採用されてもよい。スナップボタン45、46や他の留め具が採用される場合、その数や配置位置は、上記実施形態の例に限られず、適宜変更されうる。
【0063】
ヒータ5は、上記実施形態で例示した布ヒータに限られず、例えば、面状発熱体(フィルムヒータ)等を好適に採用することができる。断熱ライナ4に発熱体が取り外し不能に組み込まれていてもよい。また、ヒータ5は、断熱ライナ4ではなく、本体部10(例えば、裏地3)に着脱可能であってもよい。なお、ヒータ5が断熱ライナ4または本体部10に着脱可能な場合、ヒータ5を取り外して断熱ライナ4または本体部10を洗濯することができるため、利便性が向上する。ヒータ5を断熱ライナ4または本体部10に取り付けるための構成は、スナップボタン53、54に限られず、その他の留め具(例えば面ファスナ、スライドファスナ、フック、ボタン)が採用されてもよい。
【0064】
機能ポケット6の数、大きさや形状、本体部10または断熱ライナ4における機能ポケット6の取付け可能位置、機能ポケット6を取り付けるための構成は、上記実施形態の例示に限られず、適宜変更されうる。例えば、機能ポケット6を取り付けるための構成は、ヒータ5を取り付けるための構成と同様に変更されうる。また、機能ポケット6は省略されてもよい。
【0065】
本発明に係る衣服におけるファンユニット8の取付け位置や取付け可能な数についても、上記実施形態の例示に限られず、適宜、変更が可能である。例えば、上着1は、後身頃21ではなく、前身頃23にファンユニット8の取付け孔211を有していてもよい。また、取付け孔211の数(つまり、取付け可能なファンユニット8の数)は、1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0066】
ファンユニット8の構成についても、適宜、変更されてよい。例えば、モータ82として、より小型で高出力なブラシレスモータが採用されてもよい。1つのハウジング84内に複数のファン83が収容された構成であってもよい。この場合、ファン83の数に対応して、モータ82も複数設けられていてもよい。
【0067】
また、ファンユニット8の表地2に対する取付け方法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、ハウジング84(筒状部841)およびリング部材89の一方に可撓性を有する係止片が設けられ、他方に係止片が係止可能な凹部が設けられていてもよい。この場合、リング部材89がハウジング84に対して回転軸A1方向に嵌め込まれ、係止片が凹部に係止することで、取付けが完了する。あるいは、ハウジング84(筒状部841)の外周面にL字状のガイド溝が設けられ、リング部材89の内周面にガイド溝に係合可能な突起が設けられていてもよい。この場合、突起がガイド溝内に配置された状態で、リング部材89がハウジング84に対して回転軸A1方向に嵌め込まれ、更に、周方向に回転されることで、取付けが完了する。
【0068】
なお、ファンユニット8は、上着1から取り外し可能であることから、他の用途に活用することができる。例えば、上着1が野外レジャー用のレジャーウェアとして用いられる場合、上着1から取り外したファンユニット8を、テントの換気用に活用することができる。この場合、上着1の取付け孔211と同様、テントに筒状部841と概ね同径の開口部を設け、開口部の周縁を補強材で補強することで、テントにファンユニット8を取り付けることが可能となる。なお、この場合も、バッテリ95からファンユニット8へ電力を供給すればよい。また、ファンユニット8は、野外での火起こしのための送風機や、ポータブル扇風機としても活用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:上着
10:本体部
15:内部空間
2:表地
21:後身頃
211:取付け孔
212:ファン取付け部
23:前身頃
25:袖
3:裏地
30:縁部
31:開口部
32:スライドファスナ
33:開口部
34:スライドファスナ
36:開口部
38:ポケット
4:断熱ライナ
41:前面
42:背面
45:スナップボタン
46:スナップボタン
48:ポケット
5:ヒータ
51:布地
53:スナップボタン
54:スナップボタン
57:バッテリ
6:機能ポケット
61:スナップボタン
62:スナップボタン
63:スナップボタン
8:ファンユニット
81:本体部
82:モータ
83:ファン
84:ハウジング
841:筒状部
843:吸気部
845:フランジ部
847:排気部
89:リング部材
891:筒状部
893:フランジ部
91:ケーブル
95:バッテリ
96:バッテリホルダ
A1:回転軸