(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】自動車用のFMCWレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
G01S 13/931 20200101AFI20221110BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S13/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018095959
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】10 2017 209 628.4
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100175743
【氏名又は名称】田渕 周作
(72)【発明者】
【氏名】ブッデンディック,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】シュロッサー,マルクス
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-047052(JP,A)
【文献】特開2004-085452(JP,A)
【文献】特開2016-109675(JP,A)
【文献】特開2005-249623(JP,A)
【文献】特表2008-514936(JP,A)
【文献】特開2014-062804(JP,A)
【文献】特開2009-092410(JP,A)
【文献】特開2002-006032(JP,A)
【文献】特開平11-153668(JP,A)
【文献】特開2010-008104(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0118653(KR,A)
【文献】特開平04-315083(JP,A)
【文献】特開平06-347545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)用のFMCWレーダセンサであって、様々な変調パターンを伴う変調シーケンス(S1~S5)の周期的に繰り返される連続を有する、周波数変調された送信信号を生成するように構成された高周波発振器(18)と、受信したレーダエコーをFMCW原理に従って評価するための評価装置(26)と有している形式のものにおいて、
前記変調シーケンス(S1~S5)の連続が、変調シーケンスの第1のグループ(S1~S4)と変調シーケンスの第2のグループ(S5)を含んでおり、前記変調シーケンスの第2のグループ(S5)の継続時間は、前記変調シーケンスの第1のグループ(S1~S4)の継続時間よりも長く、また前記変調シーケンスの第2のグループ(S5)の周波数偏移
がゼロであって、前記評価装置(26)は、前記変調シーケンスの第2のグループ(S5)中に、静止している対象物(16)によって受信されるレーダエコーを用いて、前記自動車(10)の固有速度(v)の測定を行うように構成されていることを特徴とする、自動車用のFMCWレーダセンサにおいて、
前記評価装置(26)は、動く対象物の信号を、静止している対象物(16)によって受信された信号から分離するために、
方位角について角度分析を行うように構成されている、
角度分解型のFMCWレーダセンサ。
【請求項2】
前記評価装置(26)が、前記変調シーケンスの第2のグループ(S5)中に、地面クラッター信号を評価するように構成されている、請求項
1に記載の角度分解型のFMCWレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のFMCWレーダセンサであって、様々な変調パターンを伴う変調シーケンスの周期的に繰り返される連続を有する、周波数変調された送信信号を生成するように構成された高周波発振器と、受信したレーダエコーをFMCW原理に従って評価するための評価装置とを有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
FMCWレーダセンサは、自動車において、特に先行車両の間隔および相対速度を測定するために使用される。従って、このようなレーダセンサは標準的な形式で車両の前方に組み込まれていて、レーダ放射線を概ね車両の前後方向に放射する。この場合、レーダ放射線は、方位角でもまた仰角でも、限定された開度だけを有している。
【0003】
変調パターンは、FMCWレーダにおいて一般的に周波数ランプによって形成され、この周波数ランプにおいて送信信号の周波数が一次関数的に上昇または下降する。対象物によって受信されたレーダエコーは、アンテナから放射された最新の送信信号の成分と混合される。
【0004】
このような形式で中間周波数信号が得られ、この中間周波数信号の周波数は、送信された信号の周波数と受信された信号の周波数との間の差に等しい。周波数変調に基づいて、この中間周波数信号は、信号到達時間およびひいては対象物の間隔に依存する。ドップラー効果に基づいて、信号は速度に依存する成分も有している。間隔成分と速度成分との間の曖昧さは、勾配の異なる複数のランプによって測定が実施されることによって、解決される。
【0005】
特許文献1によれば、ランプ状の変調パターンに追加して別の変調パターンも存在する、冒頭に述べた形式のレーダセンサが公知である。これは、時間マルチプレックスにより様々な測定モードで測定を行うことを可能にするか、またはそれぞれの使用された測定モードを最新の交通状況およびそれから得られる需要に的確に適合させることを可能にする。
【0006】
運転者支援システムおよび特に高自動化された運転のためのシステムにおいては、一般的に車両の固有速度を正確に知る必要もある。固有速度は原則的に、ESPシステムの構成部分であるホイール回転数センサの信号を用いて決定されるが、この測定は常に所定の校正エラーを有している。何故ならば、精確なホイール直径は知られていないからである。しかも、ホイール回転数センサは、回転数の低下につれて次第に不正確に作業する。
【0007】
ホイール回転数センサを校正するためだけに、固有速度をFMCWレーダセンサによって測定することが公知である。このために、予め事前に行われた測定に基づいて定置の対象物として確実に識別されている対象物の相対速度が測定される。
【0008】
しかしながら、適切な定置の対象物はすべての状況において提供可能ではない、という欠点がある。
【0009】
特許文献2によれば、走行方向で斜めに道路表面に向けられたドップラーレーダを用いて、車両の固有速度を測定することが公知である。しかしながら、ドップラーレーダによって得られた相対速度は、固有速度vによって直接に与えられるのではなく、関数v*cos(α)によって与えられるのであり、この式中、αは、レーダ放射線と道路表面とが形成する角度である。
【0010】
非特許文献1には、ドップラーレーダが記載されており、このドップラーレーダの開度は、レーダ放射線の一部が道路表面に対して平行にも伝播する程度に大きいので、測定信号はα=0の極端な場合も含んでいる。α=0の極端な場合に相当するドップラー周波数における出力分布は急激な低下を含んでおり、このような急激な低下は、ゼロとは異なる角度αのための修正が行われることなしに、固有速度の測定を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ドイツ連邦共和国特許公開第102004024706号明細書
【文献】ドイツ連邦共和国特許公開第19860633号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】“Weber, Moedl, Hackner; A Novel Signal Processing Approach for Microwave Doppler Speed Sensing, 2002 IEEE MTT-S Digest, Seiten 2233 bis 2235”(ウェバー、モエドゥル、ハックナー;マイクロ波ドップラー速度感知のための新規な信号処理アプローチ、2002年 IEEE MTT-Sダイジェスト、第2233頁~2235頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、車両の固有速度の簡単かつ正確な決定を可能にするFMCWレーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、冒頭に述べた形式のFMCWレーダセンサにおいて、変調シーケンスの連続が、変調シーケンスの特別なクラスを含んでおり、この特別なクラスの継続時間は、このクラスに所属しないそれぞれ別の変調シーケンスの継続時間よりも長く、またこの特別なクラスの周波数偏移は、それぞれ別の変調シーケンスの周波数偏移よりも小さく、評価装置は、特別なクラスに所属する変調シーケンス中に、道路表面によって受信されるレーダエコーを用いて、車両の固有速度の測定を行うように構成されていることによって、解決される。
【0015】
FMCWレーダセンサのレーダローブは、仰角方向に所定の広がりを有していて、道路表面に斜めに向けられたレーダ放射線も、また道路表面から離れる方向で斜め上方に向けられたレーダ放射線も含んでおり、さらに極端な場合として、道路表面に対して平行に伝播するレーダ放射線も含んでいる。これは、原則的には、レーダセンサの速度分解能が十分である限り、α=0の極端な場合における固有速度の測定を行う可能性を提供する。本発明によれば、高い速度分解能は、特に長い継続時間および特に小さい周波数偏移を有する特別な変調シーケンスが使用されることによって得られる。極端な場合、周波数偏移はゼロに等しいので、これは純粋なドップラーシーケンスに関するものであり、従って相対速度だけが測定され、間隔測定は行わない。より長い継続時間およびひいてはこの変調シーケンスのより長い測定時間に基づいて、相対速度測定の精度は著しく改善される。これは、道路の表面凹凸により形成されるレーダ散乱中心の相対速度を高い精度で測定することを可能にする。
【0016】
この場合、好適には、角度αが限界値ゼロに近づくにつれて、レーダローブは道路表面上の次第に大きくなる間隔領域を掠めて通り、これに対して他方では、コサイン関数はα=0において勾配ゼロを有しているので、測定されたドップラー周波数は相互の差が次第に小さくなることが分かった。これによって、最終的に車両の固有速度に相当するドップラー周波数において信号が急激に低下するまで、全体として信号密度の著しい増大が得られる。この効果は、レーダローブが、幅方向でも間隔が次第に大きくなるにつれて道路表面の次第に大きくなる部分を掠めて通り、一方ではレーダ放射線の方位角が(車両前後方向軸線に関連して)ほぼゼロであることによって、さらに高められる。車両前後方向軸線から離れて位置する散乱中心のためにも、相対速度の方位角依存性がコサイン関数によって記述されるので、所定の方位角範囲に亘る信号の累積和において、より強力な信号累積および信号密度の増大が行われ、それによってα=0における信号強度の急激な低下がさらに明瞭に検知され得る。
【0017】
本発明の好適な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0018】
好適な実施例では、「変調パターンの特別なクラス」は、唯一の変調パターンだけを有していて、このパターンは、一定の周波数を有する、つまり周波数偏移ゼロを有する送信信号が送信されることにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】車両の固有速度を測定するための、自動車の前方に組み込まれたFMCWレーダセンサの概略図である。
【
図3】
図2に示したレーダセンサの送信信号の周波数変調シーケンスの連続を示す図である。
【
図4】
図2に示したレーダセンサのドップラースペクトルにおける出力分布を示すヒストグラムの一例である。
【
図5】道路表面から得られる、
図4に示したドップラースペクトルと、非常にゆっくりと移動する対象物(例えば歩行者)の信号との重なりを示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて1実施例を詳しく説明する。
【0021】
図1には、自動車10のフロント部分が示されており、この自動車10は、バンパの後ろに組み込まれたFMCWレーダセンサ12を有している。レーダセンサはレーダローブ14を放射し、このレーダローブ14は車両10の走行方向で前方に向けられていて、ここでは誇張して粗く示された道路表面16に対して概ね平行で仰角に調整されている。レーダローブは、方位角でも仰角でも拡散するので、レーダ放射線の一部が車両10の前方で所定の間隔を保って道路表面16上にぶつかる。道路表面上の小さい表面凹凸が散乱中心を形成し、これらの散乱中心によってレーダエコーがレーダセンサに跳ね返される。この、道路表面16によって生ぜしめられたレーダエコー、いわゆる地面クラッターは、本発明に従って車両10の固有速度を測定するために使用される。追加的に、もちろん別の静止している対象物のレーダエコー、例えば道路に隣接する周辺建造物のレーダエコーが評価されてもよい。
【0022】
図2には、FMCWレーダセンサ12がブロック図として示されている。周波数制御可能な高周波発振器18は、混合器20を介してアンテナ22に達し、次いでレーダローブ14としてアンテナから放射される送信信号を生成する。道路表面16から、または車両の前方領域内の別の対象物から発生されたレーダエコーはアンテナ22によって受信され、混合器20内で、受信時点で高周波発振器18によって生成された送信信号の成分と混合される。従って、うなりによって中間周波数信号24が得られ、この中間周波数信号24は評価ユニット26でさらに評価される。
【0023】
高周波発振器18によって生成された送信信号の周波数は変調されていて、上昇するランプ28,30および下降するランプ32の連続を形成する。車両10の前方に間隔dを保って存在する、長時間の対象物、例えば先行する車両が位置測定されると、それぞれのランプ28~32の勾配および間隔dが、混合器20内で互いに混合される信号の周波数差を決定し、ひいては中間周波数信号24の周波数を決定する。先行する車両が自車10に対して相対的に移動する場合、周波数差はさらにドップラー偏移に依存しており、ドップラー偏移自体は相対速度に依存している。
【0024】
中間周波数信号24はまず時間信号としてサンプリングされ、デジタル化され、次いで例えば「高速フーリエ変換」によってフーリエスペクトルに変換される。このスペクトル内で、それぞれ位置測定された対象物は、対象物の間隔および相対速度に依存する所定の周波数における1つのピークの形で現れる。同じ対象物が、ランプ28上で一度位置測定され、次いで少し遅れてもう一度ランプ32上で位置測定される場合、これら2つのピークの周波数は加算されてよい。ランプ28と32とは、逆の勾配を有しているので、この場合、間隔に依存する成分は相殺され、相対速度に依存するドップラー成分だけが残る。それとは逆に、2つのピークの周波数を引き算すると、速度に依存する成分は互いに相殺され、対象物の間隔の決定を可能にする精確な間隔成分が得られる。一般的に、2つだけよりも多くの、勾配が異なる変調シーケンスまたはランプが用いられる。これによって、2つまたはそれ以上の対象物が存在する場合に、スペクトル内に含まれるピークの、当該の対象物に対する割当てが軽減される。
【0025】
図示の実施例では、下降するランプ34に、別の「変調シーケンス」36が続いており、この別の「変調シーケンス」36内では、周波数が実際に変調されておらず、一定である。
【0026】
従って、
図3に示された例では、変調パターンが周期的に繰り返される5つの変調シーケンスS1~S5の連続を有している。シーケンスS1~S4は、送信信号がランプ28~34に従って変調されるFMCWシーケンスである。このシーケンス中に、車両10の前方領域の対象物の間隔および相対速度が公知の形式で測定される。これに対して、変調シーケンスS5では周波数が一定であり、それによって、受信されたレーダエコーの周波数およびひいては中間周波数信号の周波数も間隔に依存しない。つまり、もっぱら相対速度の測定が行われる精確なドップラー周波数に関係している。この場合、長い測定時間に基づいて、相対速度は、シーケンスS1~S4でのFMCW測定におけるよりも著しく高度に分解され得る。
【0027】
車両10の前方領域内に別の対象物が存在しない場合、シーケンスS5でもっぱらいわゆる地面クラッター、つまり粗い道路表面16からの反射が測定される。この場合、測定されたドップラー周波数によって得られる相対速度は、レーダセンサ12から道路表面の当該ポイントまでの視線に沿った速度である。この視線が道路表面と(および相応に車両10の走行方向と)角度αを形成し、(走行方向で測定した)車両10の固有速度がvであれば、得られた角度αのための測定された相対速度vαが適用される:
vα = -v*cos(α)
【0028】
間隔依存性はこの相対速度信号において、角度α自体が間隔に依存している限りにおいてのみ含まれている。
【0029】
評価装置26の、少なくとも中間周波数信号24のスペクトルを分析するために用いられる部分は、デジタル式に作業する。これによって、中間周波数信号の離散的なスペクトルが分析される。それに応じて、周波数軸は、いわゆる周波数ビンの有限数に分割されていて、スペクトルは、例えば
図4に示されているように、それぞれの周波数ビンに割り当てられた出力を示す離散的関数(ヒストグラム)である。
【0030】
図4に、それぞれの空間方向から同じ大きさの出力が受信されると仮定して、(二次元で見た)コサイン効果に基づく出力分布を示す。水平軸線に、道路表面16上の散乱中心の測定された相対速度vα=-v*cos(α)と車両の固有速度vの商が示されている。これに従って、出力はvα/v=-1の時に最大に達する。より小さい(値的にはより大きい)相対速度のために、信号は急激にゼロに低下する。
【0031】
角度αが限界値0に近づくと、コサイン関数の勾配はますます小さくなり、その結果、様々な角度αのために得られた相対速度は互いにますます近似し、それによってレーダエコーは、増大する散乱中心数から同じ周波数ビンに低下する。その結果、周波数ビン毎の出力は、
図4に示されているように、限界値-1に近づくにつれて著しく増大する。従って、相対速度v
α/v=-1(α=0)における出力の急激な低下は特に顕著であり、スペクトル内で良好に検波される。好適には、このような形式で得られた、車両の固有速度vのための値は、車両のピッチングによっても間違えられることはない。何故ならば、急激な低下は、測定された相対速度v
αが値-vに達する箇所で常に発生されるからである。
【0032】
対象物または散乱中心はもちろん、側方のずれを有していてもよい。この場合も、対象物の相対速度は、レーダ放射線と車両の前方方向との間の角度のコサインに従ってのみ低下する。
【0033】
実際には、有限の測定時間は、スペクトル内に、有限の測定時間窓によって引き起こされる複数のサブピークの発生をもたらすことが知られている。このようなサブピークを適切な窓関数の選択によって最小化し、それによって、サブピークが不可避であるにも拘わらず、信号が急激に低下するジャンプ箇所が明確に検知可能に残ることが知られている。さらにこのケースでは、サブピークは、通常の変調シーケンスと比較して非常に長い測定時間に基づいていずれにしても弱く現れる。
【0034】
図4では理想的なケースが観察されている。何故ならば、車両10の前方領域内に動いている対象物は存在しておらず、従って変調シーケンスS5内に含まれる信号はもっぱら地面クラッターによって形成されるからである。別の対象物が車両10の前方領域内に存在する場合には、それぞれの対象物のためのスペクトルに、当該の対象物の相対速度に相当する周波数における追加的なピークが含まれ、スペクトルは全体的に
図4に従って、このピークと地面クラッター信号との重なりによって形成される。例えば先行車両または対向車両のように、位置測定された対象物が比較的早く移動する場合、この対象物のピークは-1m/sにおいてジャンプ箇所から十分遠く離れたところにあるので、このジャンプ箇所は常により明瞭に識別することができる。停止しているかまたはほぼ停止している対象物(例えば歩行者)においてのみ、
図5に示されているように、相応のピークが地面クラッターのジャンプ箇所と重なる。
【0035】
固有速度を測定するための、ここに記載された方法の精度および信頼性は、追加的な手段によって、例えば長い時間に亘る測定結果の追跡によって、さらに高めることができる。例えば、
図5に示したケースは、ゆっくりと動く対象物が走行方向でまさに自車の前に存在することを意味する。地面クラッター信号内のジャンプ箇所が、ゆっくりと動く対象物のピークがこのジャンプ箇所とまだ重なっていない、より早い時点で測定されれば、ゆっくりと動く対象物のピークの存在のもとで、実際の測定時にジャンプ箇所をどの箇所で探すべきかを知ることができ、また、
図5に示した信号の分析によって、ジャンプ箇所の既に前もって測定された位置を検証するだけでよいことを知ることができる。
【0036】
一般的に、自動車に搭載されたFMCWレーダセンサは角度分解型である。この場合、ゆっくりと動く対象物に由来するピークを地面クラッター信号から分離するか、またはより一般的にはすべての定置の対象物の信号から分離するために、角度分析を利用してもよい。地面クラッター信号のジャンプ箇所は、常に0°の方位角において最も顕著である。これに対して、ゆっくりと動く対象物に由来するピークは、0°の方位角において、存在し続けず、少なくともいつまでも存在しない。これは、例えばカーブ走行時に発生し得る一時的な状態だけであってよい。何故ならば、そうでなければ自車は対象物に衝突しているだろうからである。従って、推測された固有速度に相当する周波数ビンのために、明らかにゼロとは異なる方位角で測定される測定周期のための固有速度の評価が拒絶されることによって、ピークとの重なりは消去されてよい。
【0037】
同様に、ここに記載した固有速度測定の結果を、前記ESPデータによって調整することも、もちろん可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 自動車
12 FMCWレーダセンサ
14 レーダローブ
16 道路表面
18 高周波発振器
20 混合器
22 アンテナ
24 中間周波数信号
26 評価装置
28,30 上昇するランプ
32 下降するランプ
34 下降するランプ
36 変調シーケンス
d 間隔
S1~S5 変調シーケンス
v 車両10の固有速度
α 角度
vα 相対速度