(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】集塵装置およびこれを備える加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20221110BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20221110BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23C9/00 Z
B23Q11/08 E
(21)【出願番号】P 2018117574
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507117027
【氏名又は名称】ナカオテクニカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】石崎 敏明
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099368(US,A1)
【文献】特開平07-328839(JP,A)
【文献】特開2017-087383(JP,A)
【文献】特開昭53-125684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23C 9/00
B23Q 11/08
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転し、前記回転軸に平行な面に刃を有する工具によりワークを加工する加工装置に用いられる集塵装置であって、
前記工具を内部に収容可能なカバーと、
前記工具の前記回転軸に平行な軸を中心として前記カバーを旋回させる旋回装置と、
吸引口から空気を吸引する吸引装置と、を備え、
前記カバーは、前記カバーの内外を貫通し、前記ワークの加工屑の取り入れ口となるとともに、前記工具の前記回転軸に直交する方向において前記工具の一部がカバーの外側に突き出される開口部と、前記カバーの旋回の際、前記吸引口に沿ってスライドするスライド部と、を備え、
前記スライド部は、その内外を貫通し、前記吸引口にスライドする範囲内において常に前記カバーの内部を前記吸引口に接続させる接続口を備え、
前記スライド部の外面に設けられ、前記接続口のうち外部に露出する部分を遮蔽し、前記カバーとともに旋回する遮蔽部を備え、
前記遮蔽部は、掛け部と、ベルトと、ガイド部と、を備え、
前記ベルトは、前記掛け部に掛けられており、互いに対面する一対の対面部を有し、
一方の前記対面部は、前記カバーの旋回方向において前記吸引口を境にして一方側の前記接続口の外側で前記カバーに連結し、前記ガイド部により前記スライド部に沿わされて、前記吸引口を境にして一方側の外部に露出する前記接続
口を遮蔽し、
他方の前記対面部は、前記カバーの旋回方向において前記吸引口を境にして他方側の前記接続口の外側で前記カバーに連結し、前記ガイド部により前記スライド部に沿わされて、前記吸引口を境にして他方側の外部に露出する前記接続
口を遮蔽することを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
制御部を備え、
前記制御部は、前記工具で前記ワークを加工する際、前記開口部の法線方向が、前記ワークに対する前記工具の接線方向に直交するように前記カバーの旋回を制御することを特徴とする請求項1記載の集塵装置。
【請求項3】
前記接続口が、前記スライド部に複数備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の集塵装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の集塵装置と、
加工部と、
ワークを固定するための固定装置と、を備え、
前記加工部は、回転装置と、工具と、を備え、
前記回転装置は、前記工具を回転軸を中心に回転させるものであり、
前記工具は、前記回転軸に平行な面に刃を備え、前記カバーの内部に収容され、前記工具の前記回転軸に直交する方向においてその一部が前記カバーの前記開口部から外側に突き出ており、
前記加工部および前記固定装置が、前記工具の前記回転軸と直交する方向に相対移動可能であることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置およびこれを備える加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを切削する切削装置に対して設けられ、切削により発生した切削屑を吸引装置の吸引力で集屑カバーおよびホースを通して回収する切削屑回収装置が開示されている。この切削屑回収装置の集塵カバーは、上側の開口が閉じた半円筒形であって側周端の一端にはワークの加工の際、ワークに接触する接触部が備えられている。
【0003】
しかしながら、上記切削屑回収装置は、集塵カバーの底が開口しているため、切削屑が集塵カバーの底から脱落し、ワークおよび切削装置のハウジング内に切削屑が付着てしまう可能性がある。その結果、ワークの製品としての品質の低下を招き、ワークおよび切削装置のハウジング内を清掃する手間が生じてしまう。また、接触部がワークに接触するため、接触部がワークを傷つけてしまう可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ワークの加工において発生する加工屑を確実に集塵することができる集塵装置およびこれを備える加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
集塵装置は、回転軸を中心に回転し、回転軸に平行な面に刃を有する工具によりワークを加工する加工装置に用いられるものであって、工具を内部に収容可能なカバーと、工具の回転軸に平行な軸を中心としてカバーを旋回させる旋回装置と、吸引口から空気を吸引する吸引装置と、を備えている。カバーは、カバーの内外を貫通し、ワークの加工屑の取り入れ口となるとともに、工具の回転軸に直交する方向において工具の一部がカバーの外側に突き出される開口部と、カバーの旋回の際、吸引口に沿ってスライドするスライド部と、を備えている。スライド部は、その内外を貫通し、吸引口にスライドする範囲内において常にカバーの内部を吸引口に接続させる接続口を備えている。
【0007】
集塵装置は、スライド部の外面に設けられ、接続口のうち外部に露出する部分を遮蔽し、カバーとともに旋回する遮蔽部を備えるものであってもよい。
【0008】
集塵装置は、遮蔽部が、掛け部と、ベルトと、ガイド部と、を備えるものであってもよい。ベルトは、掛け部に掛けられており、互いに対面する一対の対面部を有している。一方の対面部は、カバーの旋回方向において吸引口を境にして一方側の接続口の外側でカバーに連結し、ガイド部によりスライド部に沿わされて、吸引口を境にして一方側の外部に露出する接続口を遮蔽する。他方の対面部は、カバーの旋回方向において吸引口を境にして他方側の接続口の外側でカバーに連結し、ガイド部によりスライド部に沿わされて、吸引口を境にして他方側の外部に露出する接続口を遮蔽する。
【0009】
集塵装置は、制御部を備えるものであってもよい。制御部は、工具でワークを加工する際、開口部の法線方向が、ワークに対する工具の接線方向に直交するようにカバーの旋回を制御する。
【0010】
集塵装置は、接続口が、スライド部に複数備えられるものであってもよい。接続口が、カバーの旋回方向においてスライド部に複数備えられる場合、旋回方向において隣り合う接続口の間隔は、カバーの旋回方向における吸引口の長さより短くなる。
【0011】
加工装置は、上記集塵装置と、加工部と、ワークを固定するための固定装置と、を備えている。加工部は、回転装置と、工具と、を備えている。回転装置は、工具を回転軸を中心に回転させるものである。工具は、回転軸に平行な面に刃を備え、カバーの内部に収容され、工具の回転軸に直交する方向においてその一部がカバーの開口部から外側に突き出ている。加工部および固定装置は、工具の回転軸と直交する方向に相対移動可能となっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の集塵装置および加工装置によると、ワークの加工において発生する加工屑を確実に集塵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】遮蔽部のベルトを除いた集塵装置および加工部を示す側面図である。
【
図13】吸引口と接続口の位置関係を示す正面図である。
【
図14】カバーを旋回させた場合の吸引口と接続口の位置関係を示す正面図である。
【
図15】カバーが旋回した状態の集塵装置を示す平面図である。
【
図16】ワークを加工する状況を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図面において、X方向は前後方向に対応し、Y方向は左右方向に対応し、Z方向は上下方向に対応する。
【0015】
実施形態の加工装置は、
図1に示すように、加工装置本体90と、集塵装置10と、加工部70と、固定装置80とを備えている。
【0016】
加工装置本体90は、
図1-
図4に示すように、加工部70および集塵装置10の各構成を支持または固定するものである。
【0017】
集塵装置10は、
図1-
図8に示すように、吸引装置20と、カバー30と、旋回装置40と、遮蔽部50と、制御部60とを備えている。
【0018】
吸引装置20は、空気を吸引する装置であり、
図1、
図2および
図4-
図8に示すように、集塵室21と、吸引駆動装置22と、吸引通路23と、連結通路26と、吸引部24と、連結部28とを備えている。
【0019】
集塵室21は、吸引した加工屑が集められる部屋である。集塵室21内には、空気の吸引を駆動する吸引駆動装置22が備えられている。吸引駆動装置22としては、例えばファンなどが用いられる。
【0020】
吸引通路23は、吸引される空気を集塵室21に流すための通路であり、
図4-
図7に示すように、吸引通路本体23aと入口部23bとを備えている。吸引通路本体23aは、前後方向に延びる略直方体状のものであって、中空となっており、加工装置本体90に支持されている。入口部23bは、筒状のものであり、その後端が吸引通路本体23aの前面に連結しており、その内部は、吸引通路本体23aの内部とつながっている。集塵室21および吸引通路23の内部は、管状の連結通路26を介してつながっている。
【0021】
吸引部24は、
図4-
図8に示すように、吸引部本体24aと、排出部24bと、スライドガイド部24cと、吸引口24dとを備えている。吸引部本体24aは、加工装置本体90に支持されており、中空のものであって、その前側の部分は後側の部分より左右方向の幅が狭くなっている。排出部24bは、筒状のものであって、その前端が吸引部本体24aの背面に連結し、その内部は、吸引部本体24aの内部とつながっている。吸引部本体24aの前面は、後述するカバー30のスライド部34の旋回をガイドするスライドガイド部24cとなっている。スライドガイド部24cは、上下方向から見て円弧状となっており、吸引部本体24aの側面より外側に突出している。スライドガイド部24cには、左右方向の中央において上下方向にわたって内外を貫通する吸引口24dが設けられている。吸引口24dは、前後方向から見て略矩形状となっており、吸引部本体24aの内部とつながっている。吸引部24の内部は、吸引口24dを介してカバー30の内部とつながっている。
【0022】
図4-
図7に示すように、吸引部24の排出部24bおよび吸引通路23の入口部23bは、筒状の連結部28内に挿入されており、吸引部24および吸引通路23の内部は、連結部28を介してつながっている。
【0023】
カバー30は、その内部に工具76を収容し、空気とともに加工屑を取り入むためのものである。カバー30は、旋回装置40により、支持されるとともに、工具76の回転軸と平行な軸を中心として旋回する。
【0024】
本実施形態では、カバー30は、
図1-
図12に示すように、開口壁31と、スライド部34と、一対の塞ぎ壁36,36とを備えている。開口壁31、スライド部34および一対の塞ぎ壁36,36よりカバー30の内部に空間が形成されている。カバー30の内部は、工具76を収容可能な大きさとなっている。カバー30は、スライド部34が吸引部24のスライドガイド部24cおよび吸引口24dに接するように、または近接するように配される。
【0025】
開口壁31は、
図5、
図6および
図10に示すように、略矩形状の板状の部材からなり、壁面が工具76の回転軸(上下方向)に平行となっている。開口壁31には、内外を貫通する略矩形状の開口部32が備えられている。カバー30の内外は、開口部32を介してつながっている。開口部32は、ワークWの加工屑の取り入れ口となるとともに、工具76の回転軸に直交する方向において工具76の一部をカバー30の外側に突き出すためのものである。開口部32の左右方向の長さ(開口部32の幅)は、後述する工具76のその方向における長さ(工具76の径)より長くなっている。また、開口壁31には、左右方向の中央で上下方向において内外を貫通する通し部33が設けられている。通し部33は、開口部32とつながっている。通し部33の左右方向の長さ(幅)は、後述する回転装置72の回転部本体74aの径以上の長さとなっている。
【0026】
スライド部34は、
図4-
図6および
図10-
図12に示すように、板状の部材からなり、上下方向から見て円弧状となっており、側端部のそれぞれが開口壁31の側端部のそれぞれに連結し、開口壁31とともにカバー30の旋回軸まわりに周壁を形成している。スライド部34は、カバー30の旋回の際、吸引部24の吸引口24dおよびスライドガイド部24cに沿ってスライドする。スライド部34が吸引口24dにスライドする範囲内において常にカバー30の内部を吸引口24dに接続させるために、スライド部34には、その内外を貫通する接続口35が備えられている。接続口35は、カバー30が旋回する方向においては、少なくともスライド部34が吸引口24dにスライドする範囲内に設けられる。また、接続口35は、工具76の回転軸と平行な方向(上下方向)においては、少なくともその方向において吸引口24dが存在する範囲内に設けられる。そのように設けられる接続口35であれば、接続口35はどのようなものであっても構わないが、本実施形態では、略矩形状の接続口35が、カバー30が旋回する方向および上下方向において、複数設けられている。
図13および
図14に示すように、カバー30が旋回する方向における接続口35の間隔L1は、カバー30がどの角度に旋回しても常に接続口35が吸引口24dに接続するように、カバー30の旋回方向における吸引口24dの長さL2(幅)より短くなっている。また、上下方向における複数の接続口35は、それぞれ上下方向において吸引口24dが存在する範囲内に設けられている。
【0027】
塞ぎ壁36は、
図3および
図5-
図9に示すように、板状の部材からなり、上下方向から見た開口壁31とスライド壁の外縁の形状と略同一の形状であって、円の一部を直線的に切り欠いた形状となっている。各塞ぎ壁36は、開口壁31およびスライド部34の上端または下端に連結している。各塞ぎ壁36には、その中央から前端にかけて、内外を貫通する貫通部37が設けられている。貫通部37は、開口壁31の通し部33とつながっている。貫通部37の左右方向の長さ(幅)は、後述する回転装置本体72aの径以上の長さとなっている。また、貫通部37の後端は上下方向から見て円弧状となっている。貫通部37により、後述する回転装置72の回転部74がカバー30内に通される。また、貫通部37および通し部33により、回転駆動装置72dの回転部74が開口壁31の前側からカバー30内に通すことができる。
【0028】
旋回装置40は、カバー30を旋回させるためのものであり、
図1、
図2、
図4および
図5に示すように、旋回部42と、旋回駆動装置44と、プーリ46と、ベルト48と、を備えている。旋回部42は、カバー30の旋回の軸となるものである。旋回部42は、管状のものであり、その内部に後述する回転装置72の回転部本体74aを通すため、その内径は回転部本体74aの外径以上の大きさとなっている。旋回部42は、軸が上下方向に平行となっており、軸を中心として旋回(回転)可能に軸受43を介して加工装置本体90に支持されている。旋回部42は、その軸が貫通部37の後端の円弧の中心と一致するようにその下端がカバー30の上側の塞ぎ部に連結している。
【0029】
旋回部42の後方には、プーリ46が備えられている。プーリ46は旋回駆動装置44によりに上下方向を軸として旋回(回転)可能に支持されている。旋回駆動装置44は、プーリ46の旋回(回転)を駆動するものであり、加工装置本体90に取り付けられている。旋回駆動装置44としては、モーターなどが用いられる。旋回部42とプーリ46には、ベルト48が架渡されている。ベルト48としてはタイミングベルトが用いられている。
【0030】
旋回駆動装置44により、プーリ46を旋回させると、ベルト48を介して旋回部42およびこれに連結するカバー30が旋回する。旋回部42およびこれに連結するカバー30は、本実施形態では、時計回りを基準として、+90°~-90°の範囲で左右に旋回する。
図15は、カバー30が+90°旋回した状態を表す。
【0031】
遮蔽部50は、接続口35のうち外部に露出する部分を遮蔽し、カバー30とともに旋回する。遮蔽部50は、
図1および
図6-
図8に示すように、一対の掛け部52,52と、ベルト54と、ガイド部58と、を備えている。
【0032】
一対の掛け部52,52は、
図1、
図3、
図4および
図6に示すように、カバー30と略同じ高さにあり、吸引通路23の後方において、カバー30の中心を境にして左右方向に間隔を保って配されている。各掛け部52は、円柱状の胴部52aと、胴部52aより径が小さく、胴部52aと同軸で胴部52aの上下の両端部にそれぞれ連結する円柱状の軸部52bとにより構成されている。掛け部52は、胴部52aおよび軸部52bの中心軸を上下方向に平行とし、その軸部52bを、加工装置本体90に連結する支持部材52cの貫通孔に通すことにより、上下方向を軸として回転可能に加工装置本体90に支持されている。掛け部52は、前後方向から見て、胴部52aの一部が、左右方向において、吸引通路23および吸引部24の外側に位置している。
【0033】
ベルト54は、
図1、
図3および
図6-
図8に示すように、その面を上下方向に平行にして、掛け部に掛けられている。ベルト54は、上下方向の長さ(幅)が、上下方向におけるスライド部34の接続口35の長さより長くなっている。ベルト54は、左右方向において互いに対面する一対の対面部54a,54aを有している。一対の対面部54a,54aは、上下方向から見て、吸引通路23および吸引部24の外側にあり、これらの側面に沿って延びている。一方の対面部54aは、カバー30の旋回方向において吸引口24dを境にして一方側の接続口35の外側でカバー30に連結し、ガイド部58によりスライド部34に沿わされて、吸引口24dを境にして一方側で外部に露出する接続口35を遮蔽する。また、他方の対面部54aは、カバー30の旋回方向において吸引口24dを境にして他方側の接続口35の外側でカバー30に連結し、ガイド部58によりスライド部34に沿わされて、吸引口24dを境にして他方側の外部に露出する接続
口を遮蔽する。より具体的には、ベルト54の左側の対面部54aは、掛け部52から吸引通路本体23aおよび吸引部本体24aの側面に沿って前後方向に延び、先端側がガイド部58を介して、スライド部34の外面うち吸引口24dより左側の部分に沿って吸引口24dより左側にある接続口35を覆い、その先端が、スライド部34の旋回方向において最も左側にある接続口35の外側で、スライド部34の外面に連結している。ベルト54の右側の対面部54aは、掛け部52から吸引通路本体23aの側面に沿って前後方向に延び、先端側がガイド部58を介して、スライド部34の外面うち吸引口24dより右側の部分に沿って接続口35を覆い、その先端が、スライド部34の旋回方向において最も右側にある接続口35の外側で、スライド部34の外面に連結している。
【0034】
ガイド部58は、
図1、
図4および
図6-
図8に示すように、吸引部24のスライドガイド部24cの背後において、ベルト54の各対面部54aに対し、外側から接するものと、その後方において内側から接するものとからなり、それぞれカバー30と略同じ高さに位置している。ガイド部58は、円柱状の胴部58aと、胴部58aより径が小さく、胴部58aと同軸で胴部58aの上下の両端部にそれぞれ連結する円柱状の軸部52bとにより構成されている。ガイド部58は、胴部58aおよび軸部52bの中心軸が上下方向に平行となっており、その軸部52bが、吸引部本体24aに連結する支持部材58cの貫通孔に通されており、上下方向を軸として回転可能に吸引部本体24aに支持されている。ガイド部58のうちベルト54の対面部54aの内側に接するものは、胴部58aの一部が、左右方向において吸引通路23および吸引部24より外側に位置している。ガイド部58をスライドガイド部24cの背後に備えることにより、カバー30のスライド部34周りにあるベルト54の対面部54aを、スライド部34の外面に当接させて沿わせることができる。
【0035】
ガイド部58は、少なくともベルト54の対面部54aの外側に接するものだけを備えるものであってもよいが、ベルト54の対面部54aの内側に接するものも併せて備えることにより、ベルト54の対面部54aが吸引通路23および吸引部24に干渉することを防止することができる。なお。掛け部52およびガイド部58は、上下方向に回転しないものであってもよい。
【0036】
遮蔽部50は、カバー30の旋回に伴ってベルト54が旋回(移動)し、スライド部34の接続口35のうち外部に露出する部分を常に覆う。
【0037】
制御部60は、旋回駆動装置44に接続し、旋回駆動装置44を制御する。制御部60は、後述する工具76でワークWを加工する際、カバー30の開口部32の法線方向Nが、ワークWに対する工具76の接線方向Tに略直交となるように旋回駆動装置44を制御する。
【0038】
上記集塵装置10は、吸引駆動装置22を駆動することにより、カバー30の開口部32から空気を吸引し、吸引された空気は、吸引部24、連結部28、吸引通路23、連結通路26の内部を通って、集塵室21に送られる。
【0039】
加工部70は、
図1-
図5に示すように、回転装置72と、工具76とを備えている。回転装置72は、工具76を回転させるためのものであり、一対のプーリ72a,72bと、ベルト72cと、回転駆動装置72dと、一対の回転部74,74と、を備えている。
【0040】
一対のプーリ72a,72bは、前後方向に間隔を保って同じ高さに配されている。後側のプーリ72aは回転駆動装置72dにより上下方向を軸として回転可能に支持されている。回転駆動装置72dは後側のプーリ72aを回転駆動するものであり、加工装置本体90に取り付けられている。回転駆動装置72dとしては、モーターなどが用いられる。前側のプーリ72bは、後述するように回転部74に連結して上下方向を軸として回転可能に加工装置本体90に支持されている。一対のプーリ72a,72bにはベルト72cが架け渡されている。ベルト72cには、タイミングベルトなどが用いられる。回転駆動装置72dは制御部60に接続しており、制御部60で回転駆動装置72dを制御することにより、工具76の回転が制御される。
【0041】
一対の回転部74,74は、上下方向において、同軸で対向している。各回転部74は、回転部本体74aと、工具固定部74bとを備えている。回転部本体74aは、円柱状のものである。工具固定部74bは、工具76を固定するためのものであり、回転部本体74aの一端に連結している。上側の回転部74は、回転部本体74aが旋回部42内、加工装置本体90の貫通孔(図示略)、貫通部37およびカバー30内に旋回軸と同軸で通されている。また、上側の回転部74は、回転部本体74aが加工装置本体90に軸受75により上下方向を軸として回転可能に支持され、回転部本体74aの上側の端部が回転装置72の前側のプーリ72bに連結し、回転部本体74aの下側の端部がカバー30内で工具固定部74bに連結している。下側の回転部74は、回転部本体74aが、貫通部37およびカバー30内に旋回軸と同軸で通されている。また、下側の回転部74は、回転部本体74aが、軸受75により上下方向を軸として回転可能に加工装置本体90に支持され、回転部本体74aの上側の端部がカバー30内で工具固定部74bに連結している。
【0042】
工具76は、ワークWを加工するためのものであり、回転部74の回転軸に平行な面に刃76bを備えている。
図1-
図8に示すように、本実施形態では、工具76として鉋胴が用いられている。具体的には、工具76は、円柱状の工具本体76aと、工具本体76aの側面(側周面)に設けられる刃76bとを備えている。刃76bは、上下方向に延びており、工具本体76aの側周面に複数備えられている。工具76は、カバー30の内部において、その軸を上下方向に平行にした状態で、上下の回転部74,74の工具固定部74bにより固定され、前後方向においてその一部がカバー30の開口部32から突き出ている。
【0043】
なお、回転装置72は、主軸がカバー30内に備えられるものであってもよい。この場合、カバー30の貫通部37は不要である。また、工具76は、エンドミルなど鉋胴以外のものであってもよい。
【0044】
固定装置80は、
図1に示すように、上下方向において対向する一対の固定部82,82を備え、一対の固定部82,82で上下方向からワークWを挟み込んでワークWを固定する。一対の固定部82,82は、それぞれ固定部本体84と、ワーク固定部86とを備えている。固定部本体84は柱状であり、軸が上下方向に平行となっている。ワーク固定部86は、ワークWに接する部分あり、固定部本体84の上端または下端に連結している。各固定部82は固定部昇降機構(図示略)により上下方向に昇降する。また、各固定部82は固定部回転機構(図示略)により上下方向を軸として回転(旋回)する。固定部昇降機構および固定部回転機構は制御部60に接続しており、制御部60で固定部昇降機構および固定部回転機構を制御することにより、固定部82の昇降および回転が制御される。
【0045】
加工部70を備える集塵装置10および固定部82は、前後方向および左右方向に相対移動可能となっている。本実施形態では、加工部70を備える集塵装置10が移動機構(図示略)により左右方向に移動し、固定装置80が固定部移動機構(図示略)により前後方向に移動する。移動機構および固定部移動機構は制御部60に接続しており、制御部60で移動機構および固定部移動機構を制御することにより、加工部70を備える集塵装置10および固定部82の移動が制御される。
【0046】
上記加工装置は、吸引駆動装置22を駆動させるとともに、回転駆動装置72dを駆動させることにより工具76を回転させ、集塵装置10および加工部70と、ワークWを固定した固定装置80とを前後方向および左右方向に相対移動させながら、工具76の側面の刃76bでワークWの側面を切削する。ワークWの加工の際、旋回駆動装置44を制御部60で制御することにより、カバー30は、
図16に示すように、開口部32の法線方向Nが、ワークWに対する工具76の接線方向Tに略直交するように旋回する。ワークWの加工により発生するワークWの加工屑は、カバー30の開口部32から吸引され、カバー30、吸引部24、連結部28、吸引通路23、連結通路26のそれぞれの内部を通って、集塵室21に運ばれる。
【0047】
上記加工装置は、上下方向から見てワークWの側面を曲線状に加工するなど、ワークWの側面を任意の形状に加工することができる。上記加工装置により加工されるワークWは、どのようなものであっても構わないが、例えば樹脂フィルムの積層体をワークWとすることができる。
【0048】
上記集塵装置10および加工装置は、ワークWの加工において発生する加工屑を確実にカバー30の開口部32から吸引することができるので、ワークWに加工屑が付着せず、ワークWの製品としての品質を高く維持することができ、またワークWを清掃する手間を省くことができる。また、上記集塵装置10および加工装置は、カバー30がワークWに接触しないので、ワークWを傷つけることがない。
【0049】
上記集塵装置10および加工装置は、カバー30とともに旋回し、接続口35のうち外部に露出する部分を遮蔽する旋回する遮蔽部50を備えることにより、外部に露出する接続口35から吸引した加工屑がカバー30の外側に飛散することを防止できるので、加工装置を清掃する手間を省くことができる。
【0050】
上記集塵装置10および加工装置は、制御部60を備え、工具76でワークWを加工する際、制御部60により、開口部32の法線方向NがワークWに対する工具76の接線方向Tに略直交するようにカバー30の旋回が制御されるので、ワークWを曲面状に加工するなどワークWを任意の形状に加工する場合であっても、確実に加工屑を集塵することができる。
【0051】
上記集塵装置10および加工装置は、接続口35を複数備えることにより、接続口35が一つの場合に比べ、カバー30の剛性や強度が向上する。また、接続口35をカバー30の旋回方向において複数備える場合において、旋回方向において隣り合う接続口35の間隔L1をカバー30の旋回方向における吸引口24dの長さL2より短くすることにより、カバー30がどの角度に旋回しても接続口35が吸引口24dに接続するので、カバー30がどの角度に旋回しても確実に加工屑を集塵することができる。
【0052】
本発明の集塵装置10および加工装置は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 集塵装置
20 吸引装置
21 集塵室
22 吸引駆動装置
23 吸引通路
23a 吸引通路本体
23b 入口部
24 吸引部
24a 吸引部本体
24b 排出部
24c スライドガイド部
24d 吸引口
26 連結通路
28 連結部
30 カバー
31 開口壁
32 開口部
33 通し部
34 スライド部
35 接続口
36 塞ぎ壁
37 貫通部
40 旋回装置
42 旋回部
43 軸受
44 旋回駆動装置
46 プーリ
48 ベルト
50 遮蔽部
52 掛け部
52a 胴部
52b 軸部
52c 支持部材
54 ベルト
54a 対面部
58 ガイド部
58a 胴部
58b 軸部
58c 支持部材
60 制御部
70 加工部
72 回転装置
72a,72b プーリ
72c ベルト
72d 回転駆動装置
74 回転部
74a 回転部本体
74b 工具固定部
75 軸受
76 工具
76a 工具本体
76b 刃
80 固定装置
82 固定部
84 固定部本体
86 ワーク固定部
90 加工装置本体
L1 接続口の間隔
L2 吸引口の長さ
N 法線方向
T 接線方向
W ワーク