(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】流下式製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/25 20180101AFI20221110BHJP
F25C 1/22 20180101ALI20221110BHJP
F25C 1/12 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F25C1/25 Z
F25C1/22 301B
F25C1/12 Z
F25C1/25 A
(21)【出願番号】P 2018133508
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】山岡 清史
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-025496(JP,A)
【文献】特開昭57-087579(JP,A)
【文献】特開2000-028241(JP,A)
【文献】特表2014-505232(JP,A)
【文献】米国特許第06122927(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/25
F25C 1/22
F25C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器(EP)を一対の製氷板(16,16)で挟んでなる製氷部(15)を複数列立設した製氷ユニット(14)と、
前記製氷部(15)の上方に配設され、各製氷板(16)に供給した製氷水または除氷水を製氷面に流下させる散水部(20)と、
前記製氷部(15)の下方に配設され、前記製氷板(16,16)から落下する未氷結の製氷水または除氷水を回収して貯留する製氷水タンク(18)と、
前記製氷部(15)の斜め下方に配設され、前記製氷板(16,16)から落下する氷塊(17)を回収する貯氷庫(12)と、
前記製氷水タンク(18)と前記製氷板(16,16)の下方との間に配設され、該製氷板(16,16)から落下する氷塊(17)を前記貯氷庫(12)へ案内すると共に、該製氷板(16,16)から落下する水は該製氷水タンク(18)へ落下させる氷案内部(28)と、
前記製氷部(15)の下方と前記氷案内部(28)との間に配設され、前記製氷板(16,16)から落下する氷塊(17)を該氷案内部(28)へ偏向させると共に、
該製氷板(16,16)から落下する水を前記氷案内部(28)へ流して水カーテン(36)を形成するデフレクタ(34)とからなる流下式製氷機において、
前記デフレクタ(34)の部位で、かつ前記製氷板(16,16)
の幅方向の端側に位置している領域に突出リブ(40)が形成されている
ことを特徴とする流下式製氷機。
【請求項2】
前記突出リブ(40)は、前記製氷板(16,16)から落下する水が集中する経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越えられない高さに設定した分流リブ(40a)である請求項1記載の流下式製氷機。
【請求項3】
前記突出リブ(40)は、前記製氷板(16,16)から落下する水の流量が多い経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さに設定した止水リブ(40b)である請求項1記載の流下式製氷機。
【請求項4】
前記突出リブ(40)は、前記製氷板(16,16)から落下する水が集中する経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さに設定した案内リブ(40c)である請求項1記載の流下式製氷機。
【請求項5】
蒸発器(EP)を一対の製氷板(16,16)で挟んでなる製氷部(15)を複数列立設した製氷ユニット(14)と、
前記製氷部(15)の上方に配設され、各製氷板(16)に供給した製氷水または除氷水を製氷面に流下させる散水部(20)と、
前記製氷部(15)の下方に配設され、前記製氷板(16,16)から落下する未氷結の製氷水または除氷水を回収して貯留する製氷水タンク(18)と、
前記製氷部(15)の斜め下方に配設され、前記製氷板(16,16)から落下する氷塊(17)を回収する貯氷庫(12)と、
前記製氷水タンク(18)と前記製氷板(16,16)の下方との間に配設され、該製氷板(16,16)から落下する氷塊(17)を前記貯氷庫(12)へ案内すると共に、該製氷板(16,16)から落下する水は該製氷水タンク(18)へ落下させる氷案内部(28)と、
前記製氷水タンク(18)の製氷水を製氷水ポンプ(PM)により前記散水部(20)へ循環供給する水供給管(21)とからなる流下式製氷機において、
前記水供給管(21)から分岐されて前記氷案内部(28)の斜め上方に水平に配設され、前記製氷水タンク(18)からの製氷水を多数の通孔(42a)を介して噴出させて該氷案内部(28)の上方に水カーテン(36)を形成する分流パイプ(42)を設けた
ことを特徴とする流下式製氷機。
【請求項6】
除氷運転中は、前記複数列の製氷部(15)の内で前記分流パイプ(42)に最も近い側の列の製氷部(15)への除氷水の供給を停止する請求項5記載の流下式製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流下式製氷機に関し、更に詳しくは、流下式製氷機の製氷板から落下した水が氷案内部で跳ねて飛翔し、その飛翔水が貯氷庫へ飛び込んで庫内の氷塊群を再氷結させてしまう不具合を解決した発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大量の氷塊を自動的に製造する製氷機が、レストランや喫茶店等の各種施設で広く使用されている。この製氷機は、求められる氷の形状に対応する製氷構造の差により、例えばクローズドセル式、オーガ式、流下式等の機種が存在する。本発明は、製氷板の上方から製氷水を流下供給することで、冷却された製氷板の表面に多数の氷塊を成長させる流下式製氷機の改良に関するものである。そこで、流下式製氷機の概略構成を先に説明する。
【0003】
図16に示す流下式製氷機10は、氷塊17を製造する製氷ユニット14と、この製氷ユニット14を冷却する冷凍回路30とを備え、前記製氷ユニット14で形成されて落下した氷塊17は、隣接配置された貯氷庫12に貯留される。前記製氷ユニット14は、縦方向に対向配置した一対の製氷板(製氷部)16,16と、両製氷板16,16の下方に設けられて製氷水を貯留すると共に、両製氷板16,16から流下する未氷結の製氷水(未氷結水という)や除氷水を回収する製氷水タンク18とを備えている。前記製氷板16,16は、前記冷凍回路30から導出した蒸発器EPを両製氷板の間に密着配置している。更に製氷ユニット14の上方には、各製氷板16の表面(製氷面)へ製氷水タンク18からの製氷水を供給する散水部(製氷水供給手段)20と、該製氷板16の製氷面と反対側の面(裏面)に除氷水を供給する除氷水供給手段24とが配設されている。なお、本明細書の図面に示す製氷ユニット14では、一対の製氷板16,16からなる製氷部15が所要間隔で3列立設されており、右側列の製氷部15の製氷板16,16は、他の製氷部15における製氷板16,16よりも下方寸法が短くなっている。
【0004】
前記製氷水タンク18は上部が開口しており、その上部開口は各製氷部15を構成する製氷板16,16の直下に位置している。そして両製氷板16,16から流下する未氷結水および除氷水は前記製氷水タンク18に回収貯留されて、製氷運転時に製氷水として使用される。また、製氷水タンク18の上方には、除氷運転に際して両製氷板16,16から落下した氷を貯氷庫12に案内する氷案内部28が配置されている。この氷案内部28の各傾斜面には、
図11~
図16に示すように多数のスリット28aが開設されているので、該氷案内部28に落下した未氷結水と除氷水とはスリット28aを介して製氷水タンク18に回収される。また、前記製氷板16,16から落下した氷塊17は氷案内部28に衝突して偏向され、前記貯氷庫12に向けて放出される。
【0005】
前記散水部20は、夫々の製氷部15における製氷板16,16の上方に設けられ、製氷面に製氷水を散布し得る製氷水散水器22と、水供給管21を介して該製氷水散水器22に製氷水タンク18から製氷水を圧送する製氷水ポンプPMとから構成される。この散水部20は、製氷運転時に製氷水ポンプPMが駆動されると、製氷水タンク18からの製氷水を製氷水散水器22を介して各製氷板16(の製氷面)に散布供給する。また除氷運転時には、製氷水ポンプPMを停止して製氷部15への製氷水の供給を停止する。前記除氷水供給手段24は、製氷水散水器22の下方に位置すると共に両製氷板16,16の間の上部に位置して、各製氷板16の裏面に除氷水を散布する除氷水散水器26と、外部水源に接続する給水管25に介挿した給水弁WVとから構成される。この除氷水供給手段24は、除氷運転に給水弁WVを開放することで、除氷水散水器26から除氷水を各製氷板16の裏面に供給し、また製氷運転時は給水弁WVが閉じられて製氷部15への除氷水の供給を停止する。
【0006】
図16に示す前記冷凍回路30は、圧縮機CM、凝縮器CDおよび減圧手段である膨張弁EVと、前記両製氷板16,16の間に密着配置した蒸発器EPとからなり、前記圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EVおよび蒸発器EPの順に冷媒配管(冷媒循環管路)31で連通接続して冷媒を配管中に循環させるようになっている。また冷凍回路30は、圧縮機CMから蒸発器EPに冷媒を直接導くバイパス管32と、このバイパス管32に介挿されたホットガス弁HVとからなるバイパス回路を備えている。そして冷凍回路30は、製氷運転に入ると、ホットガス弁HVを閉じると共にファンFMを駆動して凝縮器CDを冷却しながら圧縮機CMを駆動する。また、膨張手段EVを開放して冷媒を断熱膨張させることで、蒸発器EPにより各製氷板16を氷点下に冷却し、上方から供給される製氷水を製氷面に凍結させて氷塊17を形成する。なお冷凍回路30は、除氷運転に入ると、圧縮機CMを駆動したままファンFMを停止してホットガス弁HVを開放することで、蒸発器EPに供給されるホットガスにより製氷板16を加熱して除氷を促進する。
【0007】
前述した流下式製氷機の製氷運転に際しては、製氷水タンク18の製氷水を製氷水ポンプPMにより圧送して製氷水散水器22へ供給し、該製氷水散水器22から各製氷部15における製氷板16,16の製氷面に流下供給させる。供給された製氷水の一部は製氷板16,16の製氷面に凍結して氷塊17に成長し、氷結しなかった製氷水(未氷結水)は製氷板16,16を流れて落下し、前記氷案内部28のスリット28aを介して製氷水タンク18に回収されて再び循環に供される。しかし落下した未氷結水は、前記氷案内部28に衝突した際に一部が跳ね飛翔水として貯氷庫12へ飛び込む。この貯氷庫12へ飛び込んだ水(飛翔水)は、該貯氷庫12に貯留された氷塊群を濡らして氷塊を相互に固結(再氷結)させ、氷のアーチングを生じるに至る。また、未氷結水は製氷過程で充分に冷却されているので、飛翔水となって循環経路から外れてしまうことは不経済であり、また省エネルギーに逆行するものである。更に除氷運転に際しては、前記給水管25を経て前記除氷水散水器22から供給される除氷水が、製氷板16,16の裏面を流下して加温することで、該製氷板16,16の製氷面に凍結している氷塊17を融かし該氷塊17の離脱を促進させる。前記製氷板16,16の裏面を流下した除氷水も落下して、前記氷案内部28のスリット28aを経て製氷水タンク18に回収される。しかし、落下した除氷水が氷案内部28に衝突して一部が跳ねて飛翔し、飛翔水として貯氷庫12へ飛び込むという不都合を生じることは、前記未氷結水の場合と同じである。
【0008】
このため
図4~
図7に示すように、右側の列の製氷部15の下方でかつ製氷水タンク18の斜め上方に、緩く傾斜するデフレクタ34が設けてある。このデフレクタ34は、除氷運転により前記左側の列の製氷部15における製氷板16,16から落下する氷塊17を受けて前記氷案内部28へ偏向させると共に、該製氷板16,16から落下する未氷結水(製氷運転時)および除氷水(除氷運転時)を受けることで、
図5に示す水カーテン36を形成するものである。すなわち、前記デフレクタ34に落下衝突した水(未氷結水、除氷水)は、該デフレクタ34の横方向に沿って斜め下方へ流れることで、水膜状の前記水カーテン36を形成する。この水カーテン36の形成により、
図4に示す左2列の製氷部15,15から落下して氷案内部28で跳ねた飛翔水は、
図5に示すように該水カーテン36により捕捉され、前記氷案内部28のスリット28aを介して製氷水タンク18へ回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-249490号公報
【文献】特開2016-6376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(水カーテンを形成する際の課題)
この水カーテン36により飛翔水を捕捉するには、
図6に示す如く、該水カーテン36がデフレクタ34の横方向に沿って均一に形成されているのが、飛翔水の捕捉洩れがなく理想的である。しかし、前記デフレクタ34の横方向に均一で安定した水カーテン36が形成されるのは、落下する水(未氷結水、除氷水)の量が該デフレクタ34の横方向へ均一になっている場合である。しかし、
図7(a)に示すように、前記デフレクタ34へ落下する水量が均一でないと、安定した水カーテン36の形成が困難になることがある。例えば、デフレクタ34へ落下する水の量が多い場合は、
図7(b)に示すように、その箇所に部分的に水が集中する結果として、水カーテン36が横になびいてしまったり、
図7(c)に示すように、水が不規則に纏ってしまい該水カーテン36に切れ目が生じたりすることがある。このように水カーテン36が横方向へなびいたり、切れ目を生じたりすると、前述した飛翔水の部分的な捕捉洩れを生じてしまう。この飛翔水の捕捉洩れが発生すると、捕捉し損ねた飛翔水が貯氷庫12へ飛び込んで、該貯氷庫において前述した氷塊17の再氷結による氷のアーチングや、未氷結水の回収損失に繋がってしまう難点がある。
【0011】
(デフレクタを設ける場合の課題)
図6や
図16で説明したデフレクタ34は、製氷板16,16からの落下水(未氷結水、除氷水)を受けて水カーテン36を形成し、これにより飛翔水を捕捉し得るので、貯氷庫12における氷塊群の再氷結を防ぐと共に、未氷結水の有効回収ができて省エネルギーに資する利点を有している。しかし、その反面で、
図12に示す如く、前記氷案内部28と前記デフレクタ34との間の間隙S(落氷開口部という)はかなり狭いために、除氷運転時に製氷板16,16から氷塊17が一度に多量に落下すると、
図13に示すように前記落氷開口部Sに引っ掛り詰まってしまうことがある。このように落氷開口部Sで氷塊17が詰まると、貯氷庫12への氷放出ができなくなってしまう。しかも、この状態が続くと、
図14に示すように、氷案内部28上に氷塊17が次第に堆積して多重製氷となり、製氷板16,16を破損したり、円滑な製氷・除氷運転を阻害するに到る恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、
蒸発器を一対の製氷板で挟んでなる製氷部を複数列立設した製氷ユニットと、
前記製氷部の上方に配設され、各製氷板に供給した製氷水または除氷水を製氷面に流下させる散水部と、
前記製氷部の下方に配設され、前記製氷板から落下する未氷結の製氷水または除氷水を回収して貯留する製氷水タンクと、
前記製氷部の斜め下方に配設され、前記製氷板から落下する氷塊を回収する貯氷庫と、
前記製氷水タンクと前記製氷板の下方との間に配設され、該製氷板から落下する氷塊を前記貯氷庫へ案内すると共に、該製氷板から落下する水は該製氷水タンクへ落下させる氷案内部と、
前記製氷部の下方と前記氷案内部との間に配設され、前記製氷板から落下する氷塊を該氷案内部へ偏向させると共に、
該製氷板から落下する水を前記氷案内部へ流して水カーテンを形成するデフレクタとからなる流下式製氷機において、
前記デフレクタの部位で、かつ前記製氷板の幅方向の端側に位置している領域に突出リブが形成されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、各列の製氷部を構成する製氷板から落下する水(未氷結水、除氷水)がデフレクタ上の最も集中し易い部位に突出リブを形成することで、該デフレクタから流れる水を均一にすることができる。これにより、デフレクタに形成される水カーテンも均一で安定したものになり、飛翔水を捕捉し損ねることがない。
【0013】
請求項2に記載の発明では、前記突出リブは、前記製氷板から落下する水が集中する経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越えられない高さに設定した分流リブであることを要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明では、前記突出リブは、前記製氷板から落下する水の流量が多い経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さに設定した止水リブであることを要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明では、前記突出リブは、前記製氷板から落下する水が集中する経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さに設定した案内リブであることを要旨とする。
【0016】
前記別の課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項5に記載の発明は、
蒸発器を一対の製氷板で挟んでなる製氷部を複数列立設した製氷ユニットと、
前記製氷部の上方に配設され、各製氷板に供給した製氷水または除氷水を製氷面に流下させる散水部と、
前記製氷部の下方に配設され、前記製氷板から落下する未氷結の製氷水または除氷水を回収して貯留する製氷水タンクと、
前記製氷部の斜め下方に配設され、前記製氷板から落下する氷塊を回収する貯氷庫と、
前記製氷水タンクと前記製氷板の下方との間に配設され、該製氷板から落下する氷塊を前記貯氷庫へ案内すると共に、該製氷板から落下する水は該製氷水タンクへ落下させる氷案内部と、
前記製氷水タンクの製氷水を製氷水ポンプにより前記散水部へ循環供給する水供給管とからなる流下式製氷機において、
前記水供給管から分岐されて前記氷案内部の斜め上方に水平に配設され、前記製氷水タンクからの製氷水を多数の通孔を介して噴出させて該氷案内部の上方に水カーテンを形成する分流パイプを設けたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、デフレクタの配設を廃止して、製氷運転中に製氷水タンクから水供給管を圧送される製氷水を分岐して、分流パイプにより水カーテンを形成することにしたものであるから、安定した水カーテンにより飛翔水を確実に捕捉することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、除氷運転中は、前記複数列の製氷部の内で前記分流パイプに最も近い側の列の製氷部への除氷水の供給を停止することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
デフレクタにより水カーテンを形成する構成の流下式製氷機によれば、デフレクタに落下する水の集中し易い部位に突出リブを形成したことにより、該デフレクタに形成される水カーテンが均一して安定したものになる。このため、製氷板から落下した水が氷案内部で跳ねた飛翔水は、水カーテンで有効に捕捉される。従って、飛翔水の飛び込みにより貯氷庫の氷塊群が再氷結することがない。
【0019】
また、デフレクタを設けていない流下式製氷機については、製氷水タンクの製氷水が分岐供給される分流パイプを設けたことにより、該分流パイプで水カーテンを形成できるため、製氷板からの落下水が氷案内部で跳ねた飛翔水は該水カーテンで有効に捕捉される。しかも、製氷板からの氷落下経路にデフレクタは存在しないため、氷案内部に落下した氷は円滑に貯氷庫へ案内される。すなわち、製氷板と氷案内部との間で氷詰まりを生ずることがなく、多重製氷により製氷板を損傷する等の不都合がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1に係るデフレクタの拡大斜視図である。
【
図2】
図1に示すデフレクタの変形例1の拡大斜視図である。
【
図3】
図1に示すデフレクタの変形例2の拡大斜視図である。
【
図4】流下式製氷機の除氷運転中における製氷ユニットの断面図である。
【
図5】
図4に示す製氷ユニットの下方に配設されている氷案内部とデフレクタとの拡大断面図である。
【
図6】
図5に示すデフレクタに落下した水が該デフレクタに沿って斜め下方に流れ、均一な水カーテンを形成している状態を示す斜視図である。
【
図7】(a)はデフレクタに落下する水が部分的に集中している状態を示す斜視図であり、(b)は(a)の部分拡大図であって、水カーテンが横になびいている状態を示し、(c)は(a)の部分拡大図であって、水カーテンに縦縞状の切れ目ができている状態を示している。
【
図8】本発明の実施例2において、氷案内部と分流パイプとの配置状態を示す概略斜視図である。
【
図9】
図8に示す分流パイプと氷案内部との配置状態を、
図8とは別の角度から観察した概略斜視図である。
【
図10】
図9に示す分流パイプから氷案内部に向けて水カーテンが形成されている状態を示す概略斜視図である。
【
図11】
図8に示す分流パイプを採用した流下式製氷機において、製氷運転中にある状態の断面図である。
【
図12】流下式製氷機における製氷ユニットの下方を拡大した断面図であって、氷案内部とデフレクタとの間隔(落氷開口部)が狭い状態を示している。
【
図13】流下式製氷機の除氷時に、
図12の構成では、製氷板から落下する氷塊が落氷開口部で詰まってしまう状態の説明図である。
【
図14】
図13の氷詰まりの状態が続くと、製氷ユニットで多重製氷を生じてしまうことを示す説明図である。
【
図15】(a)および(b)は、除氷運転時に分流パイプから水カーテンが形成されなくても、飛翔水が貯氷庫へ飛び込むのを防止し得る理由を説明した流下式製氷機の断面図である。
【
図16】流下式製氷機の製氷ユニットと冷凍回路とを示す概略断面図であって、製氷ユニットは製氷運転中である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図4~
図6を参照して説明したデフレクタ34により水カーテン36を形成する流下式製氷機10では、該水カーテン36が飛翔水を捕捉するために、該飛翔水が貯氷庫12に飛び込んで氷塊群を再氷結させる不都合がない点で優れている。しかしながら、この流下式製氷機10はデフレクタ34を必須の構成とするために、
図7で説明したように、製氷板16,16から落下する水がデフレクタに均一に落下せず、水が部分的に集中する部位を生じてしまうことがある。このときは、水カーテン36が横になびいたり(
図7(b)参照)、水カーテン36に縦縞状の切れ目ができてしまい(
図7(c)参照)、安定した水カーテン36が形成されない。
【実施例1】
【0022】
図1に示す実施例1の流下式製氷機10は、前述したデフレクタ34に落下した水の量を均一にさせることで、安定した水カーテン36を形成するようにしたものである。例えば、
図16に示す製氷運転中の流下式製氷機10では、製氷板16,16に散布された製氷水は該製氷板16,16を伝って落下する。しかし製氷板16,16の横方向における水の流れを観察すると、水の表面張力により各製氷板16の左右縦方向に製氷水が引き寄せられる結果として、各製氷板16の左側および右側から落下する水の量が中央付近よりも相対的に多くなる現象がみられる。このため、デフレクタ34へ落下する水は、全体的に該デフレクタ34の左側および右側に集中する傾向があり、このため
図7(b)に示すように水カーテン36が横になびいたり、
図7(c)に示すように水カーテン36に切れ目を生じたりしてしまう。
【0023】
そこで実施例1に係る本発明では、
図1に示すように、前記デフレクタ34の部位であって、前記製氷板16,16から落下する水(未氷結水、除氷水)が集中し易い領域に突出リブ40が形成されている。この突出リブにより、製氷板16,16からデフレクタ34への落下水に集中した部位があっても、前記落下水は全体として安定した流れが該デフレクタ34に確保される。この結果として、デフレクタ34から流れる水は均一になって、安定した水カーテン36が形成される。より具体的には、
図1に示すように、デフレクタ34における左側近傍または右側近傍であって、製氷板16,16から落下する水が集中し易い領域には、前記突出リブとして分流リブ40aが形成されている。この分流リブ40aの高さ寸法は、落下した水が乗り越えられない程度の高さ(例えば1.5mm)に設定するのが好ましい。
【0024】
(変形例1)
図2は、実施例1に係る突出リブ40の変形例1を示すもので、前記製氷板16,16から落下する水の流量が多い経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さ(例えば1.0mm)に設定した止水リブ40bが設けられている。
【0025】
(変形例2)
図3は、実施例1に係る突出リブ40の変形例2を示すもので、前記製氷板16,16から落下する水が集中する経路の上流に位置すると共に、前記水が乗り越え得る高さ(例えば1.0mm)に設定した案内リブ40cが設けられている。
【0026】
前記実施例1、変形例1および変形例2の何れにおいても、突出リブ40(40a,40b,40c)をデフレクタ34の何処に形成するかは、開発研究の過程で実際に試作を重ねて最良の部位を突き止めたものである。すなわち、突出リブ40を配設する数や、デフレクタ34を何れの個所に設けるかは水カーテン36を形成する上で重要であり、実施例1(および変形例1、変形例2)では最大公約数的に最も良好なデフレクタ上の個所を特定している。
【実施例2】
【0027】
図4や
図16に示した流下式製氷機10は、デフレクタ34を必須の構造とするものであった。しかし、前記デフレクタ34を設けることにより、前記課題の個所で述べた如く、氷案内部28と該デフレクタ34との間の落氷開口部Sの開口寸法が狭くなり、製氷板16,16から落下した氷が該落氷開口部Sに詰まってしまう。このため多重製氷を来して、前記製氷板16,16を損傷する恐れがあることは、
図12~
図14を参照して説明した通りである。そこで本発明の実施例2に係る流下式製氷機10では、
図11に示すように、前記デフレクタ34の配設に代えて、分流パイプ42を設けるようにしたものである。すなわち、
図11に示す流下式製氷機10では、デフレクタ34の配設を廃止したので、製氷板16,16から落下した氷塊17が貯氷庫12へ案内される経路に前記落氷開口部Sが存在しなくなり、この部位で氷詰りを生ずることがなく、多重製氷に発展することもない。
【0028】
しかし、前記デフレクタ34を廃止したことにより、前述した飛翔水を捕捉する水カーテン36も形成されないことになる。このままでは、前記製氷水が跳ねて形成される飛翔水は貯氷庫12へ飛び込んで、庫内の氷塊群を再氷結させる不都合を生ずる。このため実施例2では、
図8に示すように分流パイプ42を設けて、該分流パイプ42により水カーテン36を形成して、前記飛翔水を該水カーテン36により捕捉するようにしたものである。すなわち、製氷水タンク18からの製氷水を製氷水ポンプPMで製氷水散水器22へ循環供給する水供給管21に関して、
図8に示す如く、該水供給管21から分岐させた分流パイプ42が、前記氷案内部28の斜め上方に水平に位置させてある。この分流パイプ42の横方向に沿った部位には、
図9に示すように、氷案内部28へ指向して多数の通孔42a(横長のスリット状通孔とするのが好ましい)が開設してある。
【0029】
このため、前記水供給管21を圧送されて分岐した製氷水の一部は、前記通孔42aから分流パイプ42の横方向に沿って噴出し、
図10に示すように、該氷案内部28に向け斜め下方へ弧状に流れる水カーテン36が形成される。従って、製氷運転中に前記製氷板16,16から落下する製氷水が氷案内部28で跳ねた飛翔水は、前記水カーテンにより確実に捕捉される。また、水カーテン36は分流パイプ42により形成されるので、製氷運転中は常に安定した水カーテン36が形成される。従って、飛翔水を水カーテン36が捕捉し損ねることもない。
【0030】
ところで実施例2の流下式製氷機10では、製氷運転中に分流パイプ42へ分岐した製氷水により水カーテン36を形成するものである。しかるに除氷運転時は、製氷水ポンプPMを停止するため製氷水の循環供給はなされず、従って前記分流パイプ42により水カーテン36を形成することができない。この除氷運転中は、前述したように外部水道水である除氷水が除氷水散水器26から各製氷部15における製氷板16,16へ供給される。このため、製氷板16,16から落下した除氷水は氷案内部28で跳ねて飛翔水となり、貯氷庫12へ飛び込んで氷塊群を再氷結させることになる。殊に、実施例2では前記デフレクタ34が配設されていないため、飛翔水が貯氷庫12へ容易に飛び込み易くなっている。
【0031】
そこで実施例2では、製氷板16,16からなる複数列の製氷部15の内で、前記分流パイプ42に最も近い側の製氷板16,16については、除氷運転中に除氷水の供給を停止することで水カーテンの必要性をなくした。すなわち、
図15(a)に示す流下式製氷機10において、製氷板16,16からなる3列の製氷部15に除氷水を供給すると、分流パイプ42に近接する右側列の製氷部15を伝った除氷水による飛翔水は、これを遮る水カーテン36が存在しないために、容易に貯氷庫12へ飛び込んでしまう。しかし、
図16において3列の製氷部15に配設される前記蒸発器EPは、冷凍回路30からのホットガスの入口側が右側列の製氷部15の上側になり、またホットガスの出口側が左側列の製氷部15の下側になっている。このため、製氷運転から除氷運転に切り換わると、
図16においてホットガス弁HVが開放し、ホットガスが右側列の製氷部15の上側に位置する蒸発器EPの入口から流入し、各列の製氷部15を加温しつつ流過して、左側列の製氷部15の下側に位置する蒸発器EPの出口から流出する。蒸発器EPを流れる前記ホットガスは、入口側では充分に高温であるから左側列の製氷板16,16への除氷水の供給は不要である。
【0032】
すなわち
図15(b)に示すように、右側列の製氷部15における製氷板16,16への除氷水の供給は停止しても差し支えない。このため、除氷運転中に右側列の製氷板16,16からの除氷水の落下はないので、これによる飛翔水もなくなり、水カーテンが形成されなくても問題はない。なお、真中の列および左側列の製氷部15では、蒸発器EPを流れるホットガスの熱エネルギーは徐々に低下するので、除氷のための加温の補助として各列の製氷部15への除氷水の供給は行われる。
【符号の説明】
【0033】
12 貯氷庫,14 製氷ユニット,15 製氷部,16 製氷板,17 氷塊,
18 製氷水タンク,20 散水部,21 水供給管,28 氷案内部,
34 デフレクタ,36 水カーテン,40 突出リブ,40a 分流リブ,
40b 止水リブ,40c 案内リブ,42 分流パイプ,42a 通孔,
EP 蒸発器,PM 製氷水ポンプ