(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】山留め構造体、軸力伝達装置及び山留め構造体の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
E02D17/04 B
(21)【出願番号】P 2018136173
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一範
(72)【発明者】
【氏名】倉本 真美
(72)【発明者】
【氏名】小川 伸也
(72)【発明者】
【氏名】今井 均
(72)【発明者】
【氏名】榎波 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】大石 亜友美
(72)【発明者】
【氏名】土田 克美
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 光洋
(72)【発明者】
【氏名】有冨 敏也
(72)【発明者】
【氏名】松山 積夫
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148099(JP,A)
【文献】特開2009-035997(JP,A)
【文献】特開平06-306866(JP,A)
【文献】特開平05-005315(JP,A)
【文献】特開平07-317065(JP,A)
【文献】特開平09-059985(JP,A)
【文献】特開2017-223043(JP,A)
【文献】特開2017-137688(JP,A)
【文献】特開2000-120069(JP,A)
【文献】特開2015-038289(JP,A)
【文献】特開2020-111981(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221181(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105804091(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
E02D 17/00-17/20
E02B 3/04-3/14
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、
前記腹起しに作用する軸力
であってその断面積で許容できない軸力を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、
前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前
記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達する
ことを特徴とする山留め構造体。
【請求項2】
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする請求項1に記載の山留め構造体。
【請求項3】
山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、
前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、
前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする山留め構造体。
【請求項4】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項5】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、
前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項6】
前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項7】
前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられる
ことを特徴とする請求項6に記載の山留め構造体。
【請求項8】
前記軸力伝達装置は、前記腹起しの下側に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の山留め構造体。
【請求項9】
前記下側に設けられる軸力受け部材は、前記腹起しを載置することが可能である
ことを特徴とする請求項8に記載の山留め構造体。
【請求項10】
山留め構造体の腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、
前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達する
ことを特徴とする軸力伝達装置。
【請求項11】
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されない
ことを特徴とする請求項10に記載の軸力伝達装置。
【請求項12】
山留め構造体の腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、
前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、
前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、
前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されない
ことを特徴とする軸力伝達装置。
【請求項13】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項12のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項14】
前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、
前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項13のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項15】
前記軸力受け部材は、前記腹起しの下側に設けられ、前記腹起しを載置することが可能である
ことを特徴とする請求項10乃至請求項14のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置。
【請求項16】
山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、
前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、
前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、
を備え、
前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させる
ことを特徴とする山留め構造体の設置方法。
【請求項17】
山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、
前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、
前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、
を備え、
前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させ、
前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていない
ことを特徴とする山留め構造体の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下掘削の際に周囲の地盤の崩壊を防ぐために採用される山留め壁と腹起しとを備えた山留め構造体、腹起しに作用する軸力を伝達する軸力伝達装置及び山留め構造体の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に構造物などを構築するために地下掘削を行う際には、周囲の地盤の崩壊を防ぐために山留め構造体が採用される。山留め構造体は、山留め壁と腹起しとを備えている。腹起しには、曲げと共に軸力が作用する。特に、隅角部を備える山留め構造体では、隅角部を境として一方側の腹起しには山留め壁を介して作用する側圧が作用し、その側圧が、コーナー部の火打ちを介して他方側の腹起しにも伝達されるため、他方側の腹起しに作用する軸力が大きくなる。
【0003】
この軸力の作用によって、座屈に対しても配慮することになり、腹起しの断面積を増加させることとなり、例えば、汎用材をダブルにするなどして断面積を確保する対応がなされる。また、腹起しを抑える切梁を用いる場合には、切梁によって腹起しを抑える箇所を増やすなどの対応がなされる。
【0004】
コーナー部の火打ちから伝達される腹起しの長手方向の軸力に関するものとして、特許文献1がある。特許文献1は、両コーナー間の火打ちと火打ちとの間において、圧縮用つなぎ材を別途腹起しの内面に設けて、圧縮用つなぎ材の両端と火打ち受けピースとを突合せてボルト締めし、コーナー部の火打ちから伝達される腹起しの長手方向の軸力を圧縮用つなぎ材でも負担させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸力に配慮して、腹起しの断面積を確保するために、規格化された汎用材を腹起しとしてダブルにすることが良く行われる。しかしながら、これはオーバースペックになることも多い。また、汎用材を水平方向にダブルに配置すると、その分平面視における開口面積が少なくなることになり、掘削作業、材料搬入作業、躯体構築作業などのスペースが制限されることになる。他方、汎用材を上下方向にダブルに配置すると、その分切梁との接合面を大きくとらなければならない。さらに、腹起しをダブルにするとブラケットも大きくなるため、その分の余掘り量も大きくなる。
【0007】
軸力に配慮して、切梁によって腹起しを抑える箇所を増やすことも良く行われる。しかしながら、これは切梁の本数が増えることになり、その分平面視における開口面積が少なくなり、掘削作業、材料搬入作業、躯体構築作業などのスペースが制限されることになる。
特許文献1のように圧縮用つなぎ材を別途腹起しの内面に設けることも、腹起しを水平にダブルに配置するのと同様に、圧縮用つなぎ材の分だけ平面視における開口面積が少なくなるので、作業のスペースが制限されることになる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、平面視における開口面積の減少を抑制しつつ、腹起しに作用する軸力によって腹起しの断面積を増加させることを抑える山留め構造体、軸力伝達装置を提供すること及び山留め構造体の設置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達することを特徴とする山留め構造体である。
請求項2に係る発明は、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていないことを特徴とする請求項1に記載の山留め構造体である。
請求項3に係る発明は、山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていないことを特徴とする山留め構造体である。
請求項4に係る発明は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の山留め構造体である。
請求項5に係る発明は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の山留め構造体である。
請求項6に係る発明は、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の山留め構造体である。
請求項7に係る発明は、前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられることを特徴とする請求項6に記載の山留め構造体である。
請求項8に係る発明は、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの下側に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の山留め構造体である。
請求項9に係る発明は、前記下側に設けられる軸力受け部材は、前記腹起しを載置することが可能であることを特徴とする請求項8に記載の山留め構造体である。
請求項10に係る発明は、山留め構造体の腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記軸力を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達することを特徴とする軸力伝達装置である。
請求項11に係る発明は、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されないことを特徴とする請求項10に記載の軸力伝達装置である。
請求項12に係る発明は、山留め構造体の腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達し、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されないことを特徴とする軸力伝達装置である。
請求項13前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能であることを特徴とする請求項10乃至請求項12のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置である。
請求項14に係る発明は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることを特徴とする請求項10乃至請求項13のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置である。
請求項15に係る発明は、前記軸力受け部材は、前記腹起しの下側に設けられ、前記腹起しを載置することが可能であることを特徴とする請求項10乃至請求項14のうちいずれか1項に記載の軸力伝達装置である。
請求項16に係る発明は、山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、を備え、前記腹起しに作用する軸力であってその断面積で許容できない軸力を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させることを特徴とする山留め構造体の設置方法である。
請求項17に係る発明は、山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、を備え、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させ、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていないことを特徴とする山留め構造体の設置方法である。
また、別発明として以下のものでも良い。
手段1は、山留め壁と、腹起しとを備えた山留め構造体であって、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記山留め壁に伝達する軸力伝達装置を備えており、前記軸力伝達装置は、前記腹起しに設けられた軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられた軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達することを特徴とする山留め構造体である。
【0010】
手段2は、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていないことを特徴とする手段1に記載の山留め構造体である。
【0011】
手段3は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能であることを特徴とする手段1又は手段2に記載の山留め構造体である。
【0012】
手段4は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることを特徴とする手段1乃至手段3のうちいずれか1つに記載の山留め構造体である。
【0013】
手段5は、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられることを特徴とする手段1乃至手段4のうちいずれか1つに記載の山留め構造体である。
【0014】
手段6は、前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられることを特徴とする手段5に記載の山留め構造体である。
【0015】
手段7は、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの下側に設けられることを特徴とする手段1乃至手段6のうちいずれか1つに記載の山留め構造体である。
【0016】
手段8は、前記下側に設けられる軸力受け部材は、前記腹起しを載置することが可能であることを特徴とする手段7に記載の山留め構造体である。
【0017】
手段9は、山留め構造体の腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を山留め壁に伝達する軸力伝達装置であって、前記腹起しに設けられる軸力伝達部材と、前記山留め壁に設けられる軸力受け部材とを備えており、前記軸力伝達部材は、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記軸力受け部材に伝達し、前記軸力受け部材は、前記軸力伝達部材から伝達された軸力を受けるとともに、受けた軸力を前記山留め壁に伝達することを特徴とする軸力伝達装置である。
【0018】
手段10は、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接し、固着されないことを特徴とする手段9に記載の軸力伝達装置である。
【0019】
手段11は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能であることを特徴とする手段9又は手段10に記載の軸力伝達装置である。
【0020】
手段12は、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることを特徴とする手段9乃至手段11のうちいずれか1つに記載の軸力伝達装置である。
【0021】
手段13は、前記軸力受け部材は、前記腹起しの下側に設けられ、前記腹起しを載置することが可能であることを特徴とする手段9乃至手段12のうちいずれか1つに記載の軸力伝達装置である。
【0022】
手段14は、山留め壁と腹起しとを備える山留め構造体の設置方法であって、前記腹起しに軸力伝達部材を設ける工程と、前記山留め壁に軸力受け部材を設ける工程と、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とを当接させる工程と、を備え、前記腹起しに作用する軸力の少なくとも一部を前記腹起しから前記山留め壁に伝達させることを特徴とする山留め構造体の設置方法である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1乃至8に係る構成により、平面視における開口面積の減少を抑制しつつ、腹起しに作用する軸力によって腹起しの断面積を増加させることを抑える山留め構造体を提供することができる。請求項9乃至13に係る構成により、平面視における開口面積の減少を抑制しつつ、腹起しに作用する軸力によって腹起しの断面積を増加させることを抑える軸力伝達装置を提供することができる。請求項14に係る構成により、平面視における開口面積の減少を抑制しつつ、腹起しに作用する軸力によって腹起しの断面積を増加させることを抑える山留め構造体の設置方法を提供することができる。
【0024】
加えて、前記軸力伝達部材と前記軸力受け部材とは当接しており、固着されていないことにより、受ける軸力方向の反対方向に対して腹起しは山留め壁に拘束されないようになるので、受ける軸力と反対方向の力などの予定しない力や曲げが腹起しに作用したとしても従来同様に安定する。
【0025】
加えて、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して設けることが可能であることにより、腹起しを設置した後、軸力受け部材に軸力を伝達させるために軸力伝達部材を取付けることが容易に行うことができる。
【0026】
加えて、前記軸力伝達部材は、前記腹起しと連結される取付部材と、前記取付部材と連結されるとともに前記軸力受け部材に当接する軸力伝達部材本体とを備えており、前記取付部材と前記軸力伝達部材本体とは着脱自在であって前記腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能であることにより、腹起しを設置した後、軸力受け部材に軸力を伝達させるために軸力伝達部材、特に軸力伝達部材本体を取付けることが容易に行うことができる。
【0027】
加えて、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられることにより、軸力伝達装置を容易に設置することができる。
【0028】
加えて、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの上側に設けられ、前記軸力受け部材は、前記腹起しの上方に間隔を空けて設けられることにより、腹起しと山留め壁との間に設ける裏込め部材を設置することができる。
【0029】
加えて、前記軸力伝達装置は、前記腹起しの下側に設けられることにより、腹起しと山留め壁との間に設ける裏込め部材を容易に設置することができる。また、腹起しの上側にも下側にも軸力伝達装置を設けることができ、より大きな軸力に対応できる。
【0030】
加えて、前記下側に設けられる軸力受け部材は、前記腹起しを載置することが可能であることにより、ブラケット材と兼用することができるので、別途設けるブラケット材を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施形態の山留め構造体の平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-X断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は
図2(A)のY-Y断面図、(B)は
図2(A)のZ-Z断面図である。
【
図4】
図3(A)において裏込め部材を設けたことを示す説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-X断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-X断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は
図6(A)のY-Y断面図、(B)は(A)において裏込め部材を設けたことを示す説明図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態の山留め構造体に設けられた軸力伝達装置の説明図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0033】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明に係る第1の実施形態について、図面の
図1乃至
図4と共に説明する。
図1は、本発明に係る山留め構造体の第1の実施形態を示した平面図である。
図1では、山留め構造体1の隅角部が含まれる部分を示している。
【0034】
山留め構造体1は、山留め壁2を備えている。山留め壁2は、芯材3とソイルセメント4を有する、いわゆるソイルセメント地中壁である。また、山留め構造体1は、腹起し5、切梁6、火打ち7を備えている。
【0035】
山留め構造体1の山留め壁2には、非掘削部からの土水圧などの側圧が作用し、これを腹起し5でも支持することになる。隅角部では、一方側(例えば
図1の紙面上下方向に設置された側)の腹起し5に作用した側圧が隅角部に設けられた火打ち7を介して、隅角部を境とした他方側(例えば
図1の紙面左右方向に設置された側)の腹起し5に軸力として作用することになる。
図1では、その腹起し5に作用する軸力Fを矢印で示している。
【0036】
この腹起し5に作用する軸力Fに対応するために、山留め構造体1は、軸力伝達装置10を備えている。軸力伝達装置10は、腹起しに作用する軸力を山留め壁2に伝達するもので、本実施形態では、
図1に示すように紙面左右方向の腹起し5に二箇所、紙面上下方向の腹起し5に二箇所設けられている。軸力伝達装置10は、隅角部に設けられた火打ち7から直近の切梁6までの間に設けられている。これはこの部分での座屈に配慮するからである。
【0037】
図2(A)は、
図1において紙面左右方向の腹起し5に設置された軸力伝達装置10のうちの一つを示す平面図である。
図2(A)に示すように、腹起し5に作用する軸力Fは紙面右側から左側に向って作用する。
図2(B)は、
図2(A)のX-X断面図である。
図3(A)は、
図2(A)のY-Y断面図である。
図3(B)は、
図2(A)のZ-Z断面図である。
【0038】
図1以外の図において、山留め壁のソイルセメントは図示を省略している。腹起し5は、芯材3に取付けられたブラケット8上に載置されている。芯材3と腹起し5との間には、両者の間に隙間が生じても山留め壁から作用する力を腹起しに伝達させるための裏込め材9が設けられている。裏込め材9は矩形状であって、
図3(B)に示すようにフック部9aが設けられ、腹起し5の芯材3側のフランジ上端に係合して裏込め材9を設けることができるようになっている。
図2及び
図3において、軸力伝達装置10の軸力受け部材12が設けられる芯材3と腹起し5との裏込め材9(
図2(A)において紙面左側から二番目のもの)は、図示を省略している。
【0039】
軸力伝達装置10は、腹起し5に紙面において右側から左側に作用する軸力Fを芯材3(山留め壁)に伝達するものである。軸力伝達装置10は、腹起し5の上側に設けられており、軸力伝達部材11と軸力受け部材12とを備えている。軸力伝達部材11は、腹起し5に設けられ、軸力伝達部材本体11aと取付部材11bとを備えている。軸力受け部材12は、芯材3(山留め壁)に設けられ、第一軸力受け部材12aと第二軸力受け部材12bとを備えている。
【0040】
軸力伝達部材本体11aは、
図2(A)、
図2(B)及び
図3(A)に示すように、断面L型のアングル材で構成され、
図2(A)及び
図2(B)における紙面左側の端部は、芯材3に設けられた軸力受け部材12に接しているだけで、溶接などで固定されていない。軸力伝達部材本体11aは、第一軸力受け部材12aと第二軸力受け部材12bの双方に接している。軸力伝達部材本体11aは、アングル材の下辺で取付部材11bとボルトBによって三箇所で連結されている。
【0041】
取付部材11bは、
図2(A)、
図2(B)及び
図3(A)に示すように、断面C型のチャンネル材で構成され、上片が軸力伝達部材本体11aのアングル材の下辺とボルトBによって三箇所で連結されている。また、取付部材11bのチャンネル材の上片と下辺とをつなぐ立設片の下部が、腹起し5の芯材3側のフランジとボルトBによって三箇所で連結されている。
【0042】
第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bは、
図2(A)、
図2(B)及び
図3(A)に示すように、それぞれ断面C型のチャンネル材で構成され、
図2(B)における紙面右側の垂下片に軸力伝達部材本体11aの端部が当接している。第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bは、芯材3側の端部が芯材3の腹起し5側のフランジに溶接にて取り付けられている。第一軸力受け部材12aは、第二軸力受け部材12bの上方に設けられている。
【0043】
図4に示すように、軸力受け部材12の第二軸力受け部材12bは、腹起し5の上方に間隔Sを空けて設けられている。このため、裏込め材9のフック部9aを腹起し5のフランジに係合するスペースも確保され、また、裏込め材9を設置する際の作業も行い易い。
【0044】
軸力伝達装置10の設置方法の一例を順に説明する。
腹起し5に取付部材11bを取り付ける。取付けは、腹起し5の芯材3側のフランジと取付部材11bの立設片とをボルトBで連結する。ボルトBを連結するためのボルト穴は、現地合わせをして適当な位置にガス穴で設けても良いし、予め設けておいても良い。
腹起し5に設けられた取付部材11bに軸力伝達部材本体11aを取付ける。取付けは、取付部材11bの上片と軸力伝達部材本体11aの下辺とをボルトBで連結する。ボルトBを連結するためのボルト穴は、現地合わせをして適当な位置にガス穴で設けても良いし、予め設けておいても良い。
【0045】
芯材3に第二軸力受け部材12bを取付ける。取付けは、芯材3の腹起し5側のフランジと第二軸力受け部材12bの芯材3側の端部とを溶接にて固着する。この固着の際に、第二軸力受け部材12bの
図2(B)の紙面右側の垂下片と軸力伝達部材本体11aの
図2(B)の紙面左側の端部とが接触するようにする。例えば、第二軸力受け部材12bと軸力伝達部材本体11aとをクランプで仮固定してから、芯材3に第二軸力受け部材12bを溶接する。
芯材3に第一軸力受け部材12aを取付ける。第一軸力受け部材12aも第二軸力受け部材12bと同様に取付ける。
【0046】
本実施形態の山留め構造体1の作用効果を説明する。
腹起し5に
図2(A)に示すように右側から左側に向けて軸力Fが作用すると、腹起し5に取付部材11bによって連結された軸力伝達部材本体11aが、第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bを押圧する。第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bは芯材3に固着されているので、芯材3は第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bを介して当該軸力を受けることになる。このようにして、腹起し5に作用する軸力Fが山留め壁に伝達される。
【0047】
このようにして、山留め壁に腹起し作用する軸力を負担させることで、腹起しに作用する軸力によって腹起しの断面積を増加させることを抑えることができる。したがって、平面視における開口面積の減少を抑制することもできる。
また、軸力伝達部材本体11aは、第一軸力受け部材12a及び第二軸力受け部材12bと当接しているだけで、固着されていない。このようにすることにより、作用する軸力方向の反対方向に対して腹起し5は山留め壁に拘束されないようになるので、作用する軸力と反対方向の力などの予定しない力や曲げが腹起しに作用したとしても従来同様に安定させることができる。
【0048】
軸力伝達装置10を腹起し5の上側に設けているので、軸力伝達部材11や軸力受け部材12を取付ける際にも腹起し5の上側で作業を行うことができ、作業が行い易い。また、軸力伝達装置10を腹起し5の上側に設けているので、腹起し5設置後には作用する軸力をいち早く山留め壁に負担させることになるので、当該腹起し5より下方の掘削(次段の腹起しまでの掘削ステップ)に早く移ることができるので、工程を短縮することができる。
【0049】
軸力受け部材12を第一軸力受け部材12aと第二軸力受け部材12bとで二部材としているので、取付の際に、一方が軸力伝達部材本体11aと接触しなかったとしても他方を接触させることで、溶接などによる施工誤差にも対応することができる。
さらに、ボルトBを取外すことで、軸力伝達部材11を容易に取外すことができるので、軸力伝達部材11を再び他の山留め構造体の軸力伝達装置に再使用することができる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について図面の
図5と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態も、第1の実施形態と同様に、腹起し5の上側に軸力伝達装置10に設けたものであるが、軸力伝達部材11のボルトBを通すボルト穴が第1の実施形態と異なっている。
【0051】
規格化された汎用品の腹起し5では、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、予めフランジにボルト穴5aが腹起しの長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。本実施形態では、取付部材11bの立設片に腹起し5のボルト穴5aの間隔の半分の間隔で、ボルト穴11b1が腹起しの長手方向に沿って設けられている。そして、腹起し5のボルト穴5aと取付部材11bの立設片のボルト穴11b1とにボルトBが通され締結される。このような構成にすることで、軸力伝達部材11を腹起し5から着脱自在とすることができる。また、腹起し5の長手方向に位置を調整して設けることが可能であるので、取付作業を行い易くなる。特に、先に軸力受け部材12を山留め壁に取付けた後に、軸力伝達部材11を取付けるようなケースでは、作業が行い易くなる。
【0052】
図5(A)及び
図5(B)に示すように、軸力伝達部材本体11aの下片にもボルト穴11a1が腹起し5の長手方向に沿って6つ設けられている。これと同じ間隔で、取付部材11bの上片にもボルト穴11b2が腹起し5の長手方向に沿って5つ設けられている。そして、軸力伝達部材本体11aの下片のボルト穴11a1と取付部材11bの上片のボルト穴11b2とにボルトBが通され締結される。このように構成することで、軸力伝達部材本体11aを取付部材11bから着脱自在とすることができる。また、軸力伝達部材本体11aを軸力受け部材12に当接させるために腹起しの長手方向に位置を調整して連結可能とすることができ、軸力伝達部材本体を取付けることが容易となる。
【0053】
なお、本実施形態では、ボルト穴11a1、11b1、11b2は丸穴であったが、これに限られず、腹起し5の長手方向に長い長穴にしても良い。さらに位置合わせを容易に行うことができる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明に係る第3の実施形態について図面の
図6及び
図7と共に説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態とは異なり、軸力伝達装置10を腹起し5の下側に設けたものである。
【0055】
第3の実施形態のように軸力伝達装置10を腹起し5の下側に設けることで、腹起し5の上側に軸力伝達装置10が設けられない場合や上側と下側との双方に軸力伝達装置を設けてより大きな軸力に対応することができる。
また、第1の実施形態や第2の実施形態のように、腹起し5の上方に軸力受け部材が設置されないので、
図7(B)に示すように、裏込め材9を腹起し5の上方から簡単に設置することができる。
【0056】
〔第4の実施形態〕
以下、本発明に係る第4の実施形態について図面の
図8及び
図9と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
第4の実施形態では、第2の実施形態を更に変形させたもので、軸力受け部材に腹起しを載置して支持させたものである。すなわち、軸力受け部材をブラケット材と兼用させている。
【0057】
図8(A)、
図8(B)及び
図9に示すように、軸力受け部材13には、腹起し5が載置されており、軸力受け部材13が腹起し5を支持するようになっている。腹起し5を支持し、かつ、軸力も受けることになるので、これまでの実施形態と異なり、軸力受け部材13は、より強度が強いH型断面の部材としている。軸力受け部材13のフランジに軸力伝達部材11の軸力伝達部材本体11aの端部が接している。
【0058】
この軸力受け部材13は、ブラケットの機能も兼用するため、腹起し5を設置する前に芯材3に取付けられる。この場合には、軸力受け部材13が先に固定されてから、軸力伝達部材11が取り付けられることになるので、先に述べたような軸力伝達部材11を腹起し5の長手方向に位置を調整して連結できると非常に施工性が向上する。
【0059】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0060】
本実施形態では、山留め構造体の山留め壁はソイルセメント地中壁であったが、これに限らず、親杭横矢板、鋼矢板やコンクリート製地中壁であっても良い。親杭横矢板の場合は、軸力受け部材を親杭に取付けるようにしたり、コンクリート製地中壁の場合は、コンクリートに埋め込みアンカーを設けてこれに軸力受け部材を取付けるようにするなどして対応する。
【0061】
本実施形態の第一の実施形態では、軸力伝達装置10は腹起し5の隅角部に二箇所設けたが、これに限られない。負担させる軸力に応じて設置箇所を変化させれば良い。また、必要に応じて、従来のように腹起しをダブルにするなどしても軸力への対応が不足する場合に不足分に応じて、軸力伝達装置を設けるようにすれば良い。
【0062】
本実施形態では、軸力伝達装置10は隅角部に設けられた火打ち7から直近の切梁6の間に設けられたが、これに限られない。腹起しへ軸力が作用する箇所に応じて設ければ良い。また、隅角部の火打ちから伝達される軸力に対応するものにも限られず、軸力が作用するのであれば、火打ちの有無に限定されない。
【0063】
本実施形態において、軸力伝達装置10の軸力伝達部材11は、軸力伝達部材本体11aと取付部材11bとの二部材で構成していたが、これに限られず、一部材としても良い。
本実施形態において、軸力伝達装置10の軸力受け部材12は、第一軸力受け部材12aと第二軸力受け部材12bとの二部材で構成していたが、これに限られず、一部材としても良い。
【0064】
本実施形態では、軸力伝達部材11と軸力受け部材12とは接しており、固着されていないものであったが、固着しても良い。この場合には、腹起しに作用する軸力と反対方向の力などの予定しない力や曲げが腹起しに作用したとしても腹起しが山留め壁に拘束されることになるが、軸力伝達装置の設置後に軸力伝達部材と軸力受け部材との間に隙間が発生せず、より早く確実に山留め壁に軸力を伝達させることができる。
【0065】
本実施形態では、切梁があるもので説明したが、これに限られず、切梁が採用されないような比較的小さい開口面積などの山留め構造体に用いても良い。
【0066】
本実施形態では、山留め構造体及び山留め壁を、陸上で地下構造物を築造するための掘削に適用するもの、いわゆる土留め構造体及び土留め壁で説明したが、これに限られず、水中で、掘削部分を完全に締切り、土圧や水圧に抵抗させるときに使用するもの、いわゆる締切り工法に用いても良い。すなわち、本願発明の山留めには、土留め及び締切りが含まれる。
【0067】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 山留め構造体
2 山留め壁
3 芯材
4 ソイルセメント
5 腹起し
6 切梁
7 火打ち
8 ブラケット
9 裏込め材
10 軸力伝達装置
11 軸力伝達部材
11a 軸力伝達部材本体
11b 取付部材
12、13 軸力受け部材