(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】FMCWレーダ目標検出装置及びFMCWレーダ目標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20221110BHJP
G01S 7/35 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S7/35
(21)【出願番号】P 2018144882
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小林 一幸
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014812(JP,A)
【文献】特開2011-012960(JP,A)
【文献】特開2000-227471(JP,A)
【文献】特開2001-083238(JP,A)
【文献】特開平09-178854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045819(US,A1)
【文献】特開2018-059825(JP,A)
【文献】特開2018-116028(JP,A)
【文献】特開2014-153216(JP,A)
【文献】特開2017-227622(JP,A)
【文献】特開2016-224024(JP,A)
【文献】特開2011-232053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)レーダ受信信号を複数帯域に分割する帯域分割部と、
各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該
各帯域
のみを含
み当該各帯域以外の他帯域を含まない信号と、
の間のパルス圧縮に基づいて、当該
各帯域において目標
の距離に対応する反射時間を検出する目標検出部と、
各帯域における目標検出結果がコヒーレント加算可能となるように、各帯域における目標検出結果に各遅延を施したうえで、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算
し、反射時間に対応する目標の距離を検出するコヒーレント加算部と、
を備えることを特徴とするFMCWレーダ目標検出装置。
【請求項2】
FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)レーダ受信信号を複数帯域に分割する帯域分割部と、
各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該
各帯域
のみを含
み当該各帯域以外の他帯域を含まない信号と、
の間のビート周波数に基づいて、当該
各帯域において目標
の距離に対応する反射時間を検出する目標検出部と、
各帯域における目標検出結果がコヒーレント加算可能となるように、各帯域における目標検出結果に各遅延を施したうえで、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算
し、反射時間に対応する目標の距離を検出するコヒーレント加算部と、
を備えることを特徴とするFMCWレーダ目標検出装置。
【請求項3】
当該各帯域における目標の距離に対応する反射時間では、当該各帯域のみを含む信号は送信されておらず、当該各帯域以外の他帯域を含む信号が送信されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のFMCWレーダ目標検出装置。
【請求項4】
FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)レーダ受信信号を複数帯域に分割する帯域分割ステップと、
各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該
各帯域
のみを含
み当該各帯域以外の他帯域を含まない信号と、
の間のパルス圧縮に基づいて、当該
各帯域において目標
の距離に対応する反射時間を検出する目標検出ステップと、
各帯域における目標検出結果がコヒーレント加算可能となるように、各帯域における目標検出結果に各遅延を施したうえで、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算
し、反射時間に対応する目標の距離を検出するコヒーレント加算ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのFMCWレーダ目標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FMCW(Frequency-Modulation Continuous-Wave)レーダにおいて、目標検出の性能向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
FMCWレーダでは、パルスレーダと比べて、周波数チャープ信号を連続的及び周期的に送信及び受信することにより、送信電力を低減することができる。そして、FMCWレーダでは、受信信号と送信信号との間のビート検出を実行することにより、レーダと目標との間の距離を検出することができる(例えば、特許文献1等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のFMCWレーダでは、送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがあるため、遠距離での受信感度が低減し、目標検出の距離範囲が低減することがある。そして、従来のFMCWレーダでは、送信側から受信側への回り込み干渉又は近距離でのレーダ反射により受信機が飽和することがあるため、受信信号と送信信号との間のビート検出により高調波の偽像が発生し、目標検出の検出精度が低減することがある。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、FMCWレーダにおいて、目標検出の距離範囲を延伸するとともに、目標検出の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、FMCWレーダ受信信号を複数帯域に分割したうえで、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、に基づいて、当該帯域において目標を検出することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、FMCWレーダ受信信号を複数帯域に分割する帯域分割部と、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、に基づいて、当該帯域において目標を検出する目標検出部と、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算するコヒーレント加算部と、を備えることを特徴とするFMCWレーダ目標検出装置である。
【0008】
また、本開示は、FMCWレーダ受信信号を複数帯域に分割する帯域分割ステップと、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、に基づいて、当該帯域において目標を検出する目標検出ステップと、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算するコヒーレント加算ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのFMCWレーダ目標検出プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、「各」帯域において目標を検出するときには、「他」帯域において送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがあっても、「各」帯域において遠距離での受信感度が低減しないため、目標検出の距離範囲を延伸することができる。
【0010】
また、本開示は、前記目標検出部は、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、の間のパルス圧縮に基づいて、当該帯域において目標を検出することを特徴とするFMCWレーダ目標検出装置である。
【0011】
この構成によれば、「各」帯域において目標を検出するときには、「各」帯域において送信側から受信側への回り込み干渉又は近距離でのレーダ反射により受信機が飽和することがあっても、「各」帯域において受信信号と送信信号との間のパルス圧縮により高調波の偽像が発生しないため、目標検出の検出精度を向上させることができる。そして、上述したように、「各」帯域において目標を検出するときには、「各」帯域において遠距離での受信感度が低減しないため、目標検出の検出精度をさらに向上させることができる。
【0012】
また、本開示は、前記目標検出部は、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、の間のビート検出に基づいて、当該帯域において目標を検出することを特徴とするFMCWレーダ目標検出装置である。
【0013】
この構成によれば、「各」帯域において目標を検出するときには、「各」帯域において送信側から受信側への回り込み干渉又は近距離でのレーダ反射により受信機が飽和することがあるため、「各」帯域において受信信号と送信信号との間のビート検出により高調波の偽像が発生し、目標検出の検出精度が低減することが考えられる。とはいえ、上述したように、「各」帯域において目標を検出するときには、「各」帯域において遠距離での受信感度が低減しないため、目標検出の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本開示は、FMCWレーダにおいて、目標検出の距離範囲を延伸するとともに、目標検出の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態のFMCWレーダ目標検出装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の手順を示す図である。
【
図3】第1実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の信号を示す図である。
【
図4】第2実施形態のFMCWレーダ目標検出装置の構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の手順を示す図である。
【
図6】第2実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態のFMCWレーダ目標検出装置の構成を
図1に示す。FMCWレーダ目標検出装置R1は、チャープ発生部1、分配部2、ミキサ部3、局部発振部4、増幅部5、送信アンテナ6、受信アンテナ7、増幅部8、ミキサ部9、帯域分割部10、目標検出部11、コヒーレント加算部12及び距離変換部13から構成される。帯域分割部10、目標検出部11、コヒーレント加算部12及び距離変換部13は、
図2に示したプログラムをコンピュータにインストールすることにより実現される。
【0018】
送信時には、チャープ発生部1は、周波数チャープ信号を発生させ、分配部2は、周波数チャープ信号を送信側と受信側とに分配し、ミキサ部3は、局部発振部4を用いて、送信信号をアップコンバートし、増幅部5は、送信信号を増幅し、送信アンテナ6は、空間中への照射信号を送信する。受信時には、受信アンテナ7は、目標Tからの反射信号を受信し、増幅部8は、受信信号を増幅し、ミキサ部9は、局部発振部4を用いて、受信信号をダウンコンバートする。帯域分割部10、目標検出部11、コヒーレント加算部12及び距離変換部13については、
図2及び
図3を用いて詳述する。
【0019】
第1実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の手順を
図2に示す。第1実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の信号を
図3に示す。アップコンバート前及びダウンコンバート後の周波数チャープ信号は、帯域f
0~f
5及び周期5Tを有する。FMCWレーダ送信信号は、時刻(n-1)Tから時刻nTまでの間に、周波数f
n-1から周波数f
nへとリニアチャープする。ただし、nは、1から5までの自然数である。
【0020】
帯域分割部10は、FMCWレーダ受信信号を複数帯域に分割する(ステップS1、S2)。帯域分割部10は、バンドパスフィルタ101-1、101-2、101-3、101-4、101-5及びこれらの前段の分配部から構成される。
【0021】
前段の分配部は、FMCWレーダ受信信号を第1~5分岐に分配する(ステップS1)。バンドパスフィルタ101-nは、各第n分岐のFMCWレーダ受信信号のうちの各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ受信信号を抽出する(ステップS2)。
【0022】
目標検出部11は、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、の間のパルス圧縮に基づいて、当該帯域において目標Tを検出する(ステップS3、S4)。目標検出部11は、パルス圧縮部111-1、111-2、111-3、111-4、111-5から構成される。
【0023】
パルス圧縮部111-nは、FMCWレーダ送信信号のうちの各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ送信信号を抽出する(ステップS3)。そして、パルス圧縮部111-nは、各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ受信信号と、各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ送信信号と、の間のパルス圧縮を実行する(ステップS4)。
【0024】
すると、各帯域fn-1~fnのパルス圧縮結果として、時刻(n-1)Tでの送信開始から時間1.5T、2.5T後に、2個の目標Tによるピークが検出されている。そして、時刻(n-1)Tでの送信開始から時間1.5T、2.5T後では、各帯域fn-1~fnのFMCWレーダ送信信号は送信されておらず、他帯域fn~fn+1、fn+1~fn+2(ただし、f6=f1、f7=f2である。)のFMCWレーダ送信信号が送信されている。
【0025】
ここで、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがないため、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しない。そして、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「他」帯域において送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがあっても、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しない。よって、目標検出の距離範囲を延伸することができる。
【0026】
さらに、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて送信側から受信側への回り込み干渉又は近距離での他のレーダ反射により受信側の増幅部8が飽和することがあっても、「各」帯域fn-1~fnにおいて受信信号と送信信号との間のパルス圧縮により高調波の偽像が発生しない。よって、目標検出の検出精度を向上させることができる。そして、上述したように、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しないため、目標検出の検出精度をさらに向上させることができる。
【0027】
コヒーレント加算部12は、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算する(ステップS5、S6)。コヒーレント加算部12は、遅延部121-1、121-2、121-3、121-4、121-5及び加算部122から構成される。
【0028】
遅延部121-nは、各第n分岐のパルス圧縮結果に各遅延(5-n)Tを施す(ステップS5)。加算部122は、各遅延(5-n)Tを施されたパルス圧縮結果をコヒーレント加算する(ステップS6)。すると、コヒーレント加算されたパルス圧縮結果として、送信開始から時間1.5T、2.5T後に、2個の目標Tによる強度の高いピークが検出されている。距離変換部13は、コヒーレント加算されたパルス圧縮結果において、電磁波の伝搬速度に基づいて、時間を距離に変数変換する(ステップS7)。
【0029】
第1実施形態では、送信アンテナ6と受信アンテナ7とは、別個のアンテナである。変形例として、回り込み干渉が発生しにくいことから、送信アンテナ6と受信アンテナ7とは、共用のアンテナでもよい。第1実施形態では、パルスレーダと比べて、送信電力を低減している。変形例として、回り込み干渉及び高調波の偽像が発生しにくいことから、パルスレーダと比べて、送信電力を増加してもよい。なお、第1実施形態は、従来のFMCWレーダをそのまま流用したり、従来のFMCWレーダに新たに追加することができる。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態のFMCWレーダ目標検出装置の構成を
図4に示す。FMCWレーダ目標検出装置R2は、チャープ発生部21、分配部22、ミキサ部23、局部発振部24、増幅部25、送信アンテナ26、受信アンテナ27、増幅部28、ミキサ部29、帯域分割部30、目標検出部31、コヒーレント加算部32及び距離変換部33から構成される。帯域分割部30、目標検出部31、コヒーレント加算部32及び距離変換部33は、
図5に示したプログラムをコンピュータにインストールすることにより実現される。
【0031】
チャープ発生部21、分配部22、ミキサ部23、局部発振部24、増幅部25、送信アンテナ26、受信アンテナ27、増幅部28及びミキサ部29については、チャープ発生部1、分配部2、ミキサ部3、局部発振部4、増幅部5、送信アンテナ6、受信アンテナ7、増幅部8及びミキサ部9と同様である。帯域分割部30、目標検出部31、コヒーレント加算部32及び距離変換部33については、
図5及び
図6を用いて詳述する。
【0032】
第2実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の手順を
図5に示す。第2実施形態のFMCWレーダ目標検出処理の信号を
図6に示す。アップコンバート前及びダウンコンバート後の周波数チャープ信号は、帯域f
0~f
5及び周期5Tを有する。FMCWレーダ送信信号は、時刻(n-1)Tから時刻nTまでの間に、周波数f
n-1から周波数f
nへとリニアチャープする。ただし、nは、1から5までの自然数である。
【0033】
帯域分割部30は、FMCWレーダ受信信号を複数帯域に分割する(ステップS11、S12)。帯域分割部30は、バンドパスフィルタ301-1、301-2、301-3、301-4、301-5及びこれらの前段の分配部から構成される。
【0034】
前段の分配部は、FMCWレーダ受信信号を第1~5分岐に分配する(ステップS11)。バンドパスフィルタ301-nは、各第n分岐のFMCWレーダ受信信号のうちの各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ受信信号を抽出する(ステップS12)。
【0035】
目標検出部31は、各帯域に分割されたFMCWレーダ受信信号と、FMCWレーダ送信信号のうちの当該帯域を含む信号と、の間のビート検出に基づいて、当該帯域において目標Tを検出する(ステップS13~S16)。目標検出部31は、ミキサ部311-1、311-2、311-3、311-4、311-5、FFT(高速フーリエ変換)部312-1、312-2、312-3、312-4、312-5及び時間変換部313-1、313-2、313-3、313-4、313-5から構成される。
【0036】
ミキサ部311-nは、FMCWレーダ送信信号のうちの各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ送信信号を抽出する(ステップS13)。そして、ミキサ部311-nは、各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ受信信号と、各帯域fn-1~fnを含むFMCWレーダ送信信号と、の間のミキシングを実行する(ステップS14)。FFT部312-nは、各第n分岐のミキシング結果にFFTを施し、ビート検出を実行する(ステップS15)。時間変換部313-nは、各第n分岐のビート検出結果において、周波数チャープ率に基づいて、周波数を時間に変数変換する(ステップS16)。
【0037】
すると、帯域fn-1~fnのビート検出結果として、時刻(n-1)Tでの送信開始から時間1.5T、2.5T後に、2個の目標Tによるピークが検出されており、時刻(n-1)Tでの送信開始から時間0.25mT(mは、自然数。)後に、近距離での他のレーダ反射から来る高調波の偽像によるピークが検出されている。そして、時刻(n-1)Tでの送信開始から時間1.5T、2.5T後では、各帯域fn-1~fnのFMCWレーダ送信信号は送信されておらず、他帯域fn~fn+1、fn+1~fn+2(ただし、f6=f1、f7=f2である。)のFMCWレーダ送信信号が送信されている。
【0038】
ここで、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがないため、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しない。そして、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「他」帯域において送信側から受信側への回り込み干渉が発生することがあっても、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しない。よって、目標検出の距離範囲を延伸することができる。
【0039】
ただし、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて送信側から受信側への回り込み干渉又は近距離での他のレーダ反射により受信側の増幅部28が飽和することがあるため、「各」帯域fn-1~fnにおいて受信信号と送信信号との間のビート検出により高調波の偽像が発生する。よって、目標検出の検出精度が低減することが考えられる。とはいえ、上述したように、「各」帯域fn-1~fnにおいて2個の目標Tを検出するときには、「各」帯域fn-1~fnにおいて遠距離での受信感度が低減しないため、目標検出の検出精度を向上させることができる。
【0040】
コヒーレント加算部32は、各帯域における目標検出結果をコヒーレント加算する(ステップS17、S18)。コヒーレント加算部32は、遅延部321-1、321-2、321-3、321-4、321-5及び加算部322から構成される。
【0041】
遅延部321-nは、各第n分岐のビート検出結果に各遅延(5-n)Tを施す(ステップS17)。加算部322は、各遅延(5-n)Tを施されたビート検出結果をコヒーレント加算する(ステップS18)。すると、コヒーレント加算されたビート検出結果として、送信開始から時間0.25mT後に、高調波の偽像による強度の低いピークが検出されるものの、送信開始から時間1.5T、2.5T後に、2個の目標Tによる強度の高いピークが検出されている。距離変換部33は、コヒーレント加算されたビート検出結果において、電磁波の伝搬速度に基づいて、時間を距離に変数変換する(ステップS19)。
【0042】
第2実施形態では、送信アンテナ26と受信アンテナ27とは、別個のアンテナである。変形例として、回り込み干渉が発生しにくいことから、送信アンテナ26と受信アンテナ27とは、共用のアンテナでもよい。第2実施形態では、パルスレーダと比べて、送信電力を低減している。変形例として、回り込み干渉が発生しにくいことから、パルスレーダと比べて、送信電力を増加してもよい。なお、第2実施形態は、従来のFMCWレーダをそのまま流用したり、従来のFMCWレーダに新たに追加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示のFMCWレーダ目標検出装置及びFMCWレーダ目標検出プログラムは、目標検出の距離範囲を延伸するとともに、目標検出の検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
R1、R2:FMCWレーダ目標検出装置
T:目標
1、21:チャープ発生部
2、22:分配部
3、23:ミキサ部
4、24:局部発振部
5、25:増幅部
6、26:送信アンテナ
7、27:受信アンテナ
8、28:増幅部
9、29:ミキサ部
10、30:帯域分割部
11、31:目標検出部
12、32:コヒーレント加算部
13、33:距離変換部
101-1、101-2、101-3、101-4、101-5、301-1、301-2、301-3、301-4、301-5:バンドパスフィルタ
111-1、111-2、111-3、111-4、111-5:パルス圧縮部
121-1、121-2、121-3、121-4、121-5、321-1、321-2、321-3、321-4、321-5:遅延部
122、322:加算部
311-1、311-2、311-3、311-4、311-5:ミキサ部
312-1、312-2、312-3、312-4、312-5:FFT部
313-1、313-2、313-3、313-4、313-5:時間変換部