(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】半導体部品用の応力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/18 20060101AFI20221110BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01L1/18 A
H01L29/84 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018149619
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ガスパール・イブロ
(72)【発明者】
【氏名】ヘールト・ファン・デル・プラス
(72)【発明者】
【氏名】ステファーン・ファン・ハイレンブルック
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0282930(US,A1)
【文献】特開昭56-064472(JP,A)
【文献】特開平06-207948(JP,A)
【文献】特開2004-340858(JP,A)
【文献】特開平06-130083(JP,A)
【文献】特表2013-543982(JP,A)
【文献】特開昭60-154574(JP,A)
【文献】特開昭63-089282(JP,A)
【文献】特開2000-162056(JP,A)
【文献】国際公開第02/44655(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059486(US,A1)
【文献】特開2004-053603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/18,1/22,5/162,9/00,
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部品における応力をモニタ及び/又は測定する
ために前記半導体部品に組み込まれたセンサであって、前記部品は
ピエゾ半導体材料で形成される基板(50)を備え、前記基板は平面状の主
面を備えており、
前記半導体材料による少なくとも1つの傾斜面(102,102’)であって、前記基板の主面に対して斜めの傾斜角度によって規定される傾斜面と、
前記傾斜面の少なくとも一部の上に延びる少なくとも1つの直線状の抵抗パス(101,102,103)と、
前記抵抗パスの電気抵抗を測定して、測定結果から前記基板の主面に平行でない面におけるせん断応力の評価を導出可能に、傾斜した抵抗パスに通電するための複数のコンタクト(A,B)及び端子と
を備えたセンサ。
【請求項2】
前記主
面に対して相補的な傾斜角度を有する少なくとも1
ペアの傾斜
面(111,112)を備え、
前記傾斜面と交差する第1の面内に存在する少なくとも1
ペアの抵抗パ
ス(R1,R2)であって、第1の抵抗パスは第1の傾斜面上にあり、第2の抵抗パスは第2の傾斜面上にある抵抗パスのペアを備え、
傾斜した抵抗パスのペアも、前記主
面に対して相補的な傾斜角度を有し、
前記抵抗パスのペアによって規定される前記第1の面におけるせん断応力を測定するように構成された
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
2
ペアの前記傾斜
面と2
ペアの傾斜した抵抗パ
ス(2,3;4,5)とを備え、
第1及び第2の面におけるせん断応力を測定するように構成され、
当該面は、2つの互いに平行でない
面である
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1及び第2の面は、2つの互いに直交する面(xz、yz)である
請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記基板(50)の主
面の平面に平行であり、傾斜した抵抗パス近傍に配置された複数の平面抵抗パス(15~18)と、
前記平面抵抗パスの電気抵抗を測定して、測定結果から追加の1つ又は複数の応力の評価を導出可能に、前記平面抵抗パスに通電するための複数のコンタクト(20~23)及び端子とをさらに備える
請求項1~
4のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項6】
1つ又は複数の傾斜面は、1つ又は複数のキャビティ(1,101,110)の傾斜した側壁であって、前記キャビティは、前記基板の主
面又は前記基板の別の面(122)に対して開いており、及び/又は
前記傾斜面は、前記基板の主
面又は前記基板の別の面(122)から外方に延びる3次元形状(1’,101’)の傾斜した側壁である
請求項1~
5のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項7】
4壁のピラミッド若しくは4壁のピラミッドの錐台の形状を有するキャビティ(1)又は3D形状(1’)であって、
矩形若しくは方形の基部と、
中央に配置された先端領域(11)と、
前記基部の4端と前記先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜した壁であって、2
ペアの傾斜
面を形成し、各ペアの面は前記基板の主面に対して相補的な傾斜角度を有する4つの壁と、
前記基部の隅と前記先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜したリブとを備えるキャビティ又は3D形状と、
4つの電気的なコンタクト(6,7,8,9)と、
4つの傾斜面上にそれぞれある4つの傾斜した抵抗パスであって、前記先端領域(11)と前記4つの電気的なコンタクトとの間に延び、対向する面上のパスは、前記基板の主
面に対して相補的な傾斜角度を有する抵抗パスとを備える
請求項
6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記先端領域(11)に配置された第5の電気的なコンタクト(10)を備え、
4つの抵抗パス(2,3,4,5)がそれぞれ4つのコンタクト(6,7,8,9)と前記第5の電気的なコンタクト(10)との間に延びる
請求項
7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記4つの傾斜した抵抗パスは、前記先端領域(11)において併合され、
前記キャビティ又は3D形状の対向する壁上の傾斜した抵抗パスは、電気抵抗に関して合致する
請求項
7に記載のセンサ。
【請求項10】
半導体部品における応力をモニタ及び/又は測定するセンサであって、前記部品は半導体材料で形成される基板(50)を備え、前記基板は平面状の主面を備えており、
前記半導体材料による少なくとも1つの傾斜面(102,102’)であって、前記基板の主面に対して斜めの傾斜角度によって規定される傾斜面と、
前記傾斜面の少なくとも一部の上に延びる少なくとも1つの直線状の抵抗パス(101,102,103)と、
前記抵抗パスの電気抵抗を測定して、測定結果から前記基板の主面に平行でない面におけるせん断応力の評価を導出可能に、傾斜した抵抗パスに通電するための複数のコンタクト(A,B)及び端子と
を備え、
1つ又は複数の傾斜面は、1つ又は複数のキャビティ(1,101,110)の傾斜した側壁であって、前記キャビティは、前記基板の主面又は前記基板の別の面(122)に対して開いており、及び/又は
前記傾斜面は、前記基板の主面又は前記基板の別の面(122)から外方に延びる3次元形状(1’,101’)の傾斜した側壁であり、
4壁のピラミッド若しくは4壁のピラミッドの錐台の形状を有するキャビティ(1)又は3D形状(1’)であって、
矩形若しくは方形の基部と、
中央に配置された先端領域(11)と、
前記基部の4端と前記先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜した壁であって、2ペアの傾斜面を形成し、各ペアの面は前記基板の主面に対して相補的な傾斜角度を有する4つの壁と、
前記基部の隅と前記先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜したリブとを備えるキャビティ又は3D形状と、
4つの電気的なコンタクト(6,7,8,9)と、
4つの傾斜面上にそれぞれある4つの傾斜した抵抗パスであって、前記先端領域(11)と前記4つの電気的なコンタクトとの間に延び、対向する面上のパスは、前記基板の主面に対して相補的な傾斜角度を有する抵抗パスとを備え、
前記キャビティ又は3D形状の近傍における2つの平面抵抗パス(15,17)であって、前記基板の主面の平面における直交線に沿って在る2つの平面パスと、
各平面抵抗パスの始端および終端にある電気的なコンタクト(23,22,20)と、前記コンタクトに通電するための端子と、
前記キャビティ又は3D形状の周りに配置された4つの追加の電気的なコンタクト(30,31,32,33)であって、前記キャビティ又は3D形状の4隅の各々に配置された隅のコンタクトと、前記隅のコンタクトに通電するための端子と、
4つの傾斜した抵抗パス(26,27,28,29)であって、各々が前記各隅のコンタクトと前記キャビティ又は3D形状の先端領域(11)との間で、前記キャビティ又は3D形状のリブの1つに沿って在る抵抗パスとをさらに備え
る
センサ。
【請求項11】
2つの追加の平面抵抗パス(16,18)を、各追加の平面パスの始端および終端にあるコンタクト(20,21,22)と共に備え、
2つの追加の平面パス(16,18)は、2つの直交する平面パス(15,17)にそれぞれ平行に在り、
前記2つの追加の平面パスは、それぞれの直交する平面パスに対して前記キャビティ(1)又は3D形状(1’)の対向する辺上に在り、
平行な平面抵抗パスの各ペアは、電気抵抗に関して合致する
請求項
10に記載のセンサ。
【請求項12】
平行な抵抗パスの2つのペアは、矩形の側端を形成し、4つのコンタクトが前記矩形の隅に配置される
請求項
11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記キャビティ又は3D形状の近傍における2つの平面抵抗パス(15,17)であって、前記基板の主面の平面における直交線に沿って在る2つの平面パスと、
各平面抵抗パスの始端および終端にある電気的なコンタクト(23,22,20)と、前記コンタクトに通電するための端子と、
第1のキャビティ又は3D形状(1,1’)と同じ形状を有する第2のキャビティ(25)又は3D形状であって、第1のキャビティ(1)又は3D形状に近接して配置される第2のキャビティ又は3D形状と、
前記第2のキャビティ又は3D形状の周りに配置された4つのコンタクト(30,31,32,33)であって、前記第2のキャビティ又は3D形状の4隅に配置された隅のコンタクトと、前記隅のコンタクトに通電可能にする端子と、
4つの傾斜した抵抗パス(26,27,28,29)であって、それぞれの隅のコンタクトと、前記第2のキャビティ又は3D形状の先端領域との間において、各パスが前記第2のキャビティ又は3D形状のリブに沿って在る抵抗パス(26,27,28,29)とを備える
請求項
10~
12のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項14】
前記基板の材料は、結晶半導体材料であり、
前記傾斜角度は、当該材料の結晶構造によって規定される
請求項1~
13のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項15】
前記傾斜面における
部分的な領域、及び該当する場合には前記基板の主面又は平行な面における
部分的な領域におけるドーパント要素の注入によって得られる複数の抵抗パスを備え、
第1の分極型のドーパントの注入によって形成される抵抗パスを、前記第1の分極型とは反対の第2の分極型のドーパントの注入によって形成される抵抗パスと共に備える
請求項1~
14のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項16】
応力センサであって、請求項1~
15のいずれか1項に記載のセンサ
を備える半導体部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路チップなどの半導体部品に集積される応力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的応力は、集積回路及び他の半導体部品の動作に有害となり得る。パッケージングで生じる応力は、トランジスタ及び回路の性能に顕著に影響することが知られている。同様に、TSVなどの3D相互接続は、ウエハの活性領域に応力を生じさせることが知られている。このため、応力テンソルの応力成分に関して応力を評価する必要がある。応力テンソルは、3つの垂直成分σxx,σyy及びσzzと3つのせん断成分σxz,σyz及びσxyとから成り、IC又は他の部品が製造される半導体ウエハの平面に対応するxy平面による直交方向x,y及びzに関して規定される。
【0003】
パッケージで生じる応力を検知するための良く知られた手法は、拡散抵抗器又はトランジスタにおけるピエゾ抵抗効果に基づく。この原理によって設けられるピエゾ抵抗応力センサの一例は、非特許文献1に詳述されるロゼットセンサである。異なる方向に沿って配向された相補型の拡散抵抗器の抵抗におけるシフトが、活物質に存在する応力を推定するためにモニタされる。計測中における温度の変動による影響を補償するために、これらの抵抗のシフトは、抵抗器における温度の影響を相殺するように1つを他から差し引かなければならない。しかしながら、この種のセンサには、3つの問題がある。第1に、この種のセンサは、ウエハの(100)面上で面外せん断応力成分に感度を持たない。当該面は、CMOS技術において一般的に採用されるものである。第2に、σzzに対する抵抗器の感度は、(100)面上で平面回転する際に変化せず、このためその寄与は、温度からのものと定常的に相殺される。第3に、また温度補償を行う必要があることから、温度補償差分(σxx-σyy)のみが抽出でき、2成分σxx及びσyyが個別に抽出できない。
【0004】
残りの係数(σxz,σyz,σzz及び(σxx+σyy))を決定するための1つの手法は、(111)面にロゼットセンサを設けることである。この場合、変形されたピエゾ抵抗行列には、配向依存の係数がより多くある。このため、応力によって異なる方向に配向された抵抗の変動は、応力成分が抽出できるような、独立した線形方程式群を抵抗する可能性を有する。しかしながら、面内の抵抗行列は対称であり、3つしか独立な成分を有していない。抵抗器についての何れの面内回転も、これら3つの係数の組み合わせにしかできない。このため、単極性のロゼットセンサから抽出できるのは最大で3つの独立方程式となり、且つ、温度補償のために1つは必然的に失われる。何れの場合も、(111)面に基づく全てのセンサは、ウエハ面が(100)面に沿って配向された従来のCMOS技術では、処理できない。
【0005】
論文に報告された別の解決策は、非特許文献2,3で説明されるように、(100)配向のウエハ上で非平面電流を生成することである。これらのセンサ設計においては、電流が、(STIダイオードと同様に)シャロートレンチアイソレーションの下に強制され、非平面的となる。この原理は、σzzと面外のせん断応力σxz及びσyzとの双方を検出するために用いることができる。しかしながら、σzz,σxz及びσyzの抽出は、非常に挑戦的なことである。実際、(スペーサ下の)電流の軌跡の大部分は、垂直でない。結果として、非特許文献2において説明されるように全ての他成分からσzzを分離するためには、構造が、異なるSTI幅で繰り返すものでなければならない。非特許文献3において用いられる疑似ホールセンサでは、σxz(STIの側壁上で垂直な電流)とσxy(STI下で水平な電流)との寄与の間で分離する手段は提供されない。
【0006】
V溝応力センサは、センサを製造するためにMEMS分野で用いられる周知の技術である。特に、チップ上で外力によってかかる圧力を検出する膜センサを設けるためにも用いられている。しかしながら、この場合にV溝応力センサは、単に機械的な構造を設けるために用いられる。結果として得られる傾斜面の電気的特性は、開発されていない。例えば特許文献1においては、ピエゾ抵抗センサが、傾斜面自体ではなく、膜の上に載置されている。さらには、自由膜又は内部キャビティを用いるピエゾ抵抗センサの全ては、(該センサで検出することが意図される)外部応力に敏感であるため、パッケージングで生じる応力を正確に検出することには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Suhling and Jaeger, "Silicon piezoresistive stress sensors and their application in electronic packaging", IEEE Sensors Journal, vol. 1, no. 1, pp. 14-30, June 2001
【文献】Lemke et al, "Towards piezo-resistive CMOS sensors for out-of-plane stress", Proceedings, IEEE 22nd International Conference on Micro Electro Mechanical Systems, March 2009
【文献】Baumann et al, "Piezoresistive CMOS sensors for out-of-plane shear stress", Proceedings IEEE Sensors Conference, 2009.
【文献】M. Doelle et al, "A novel stress sensor based on the transverse pseudo-Hall effect of MOSFETs", Micro Electro Mechanical Systems, 2003. MEMS-03 Kyoto. IEEE The Sixteenth Annual International Conference on, 2003, pp. 490-493.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、添付の特許請求の範囲に従ったセンサ及び半導体部品に関する。本発明のセンサは、集積回路チップなどの半導体部品に組み込まれるように構成される。該部品は半導体基板を含み、該基板は複数のチップが設けられる半導体ウエハから作製される。本発明に係る応力センサは、基板の主面に対して既知の斜めの傾斜角度を有する、半導体基板材料による1つ又は複数の傾斜面と、少なくとも傾斜面上の抵抗パスとを備える。好ましい実施形態によると、2つの傾斜面が、主面に対して相補的な傾斜角度において設けられる。抵抗パスのペアの1つ又は複数は、該面のペア上に設けられ、各ペアのパスの傾斜角度は、相補的に同等である。既知の傾斜角度により、傾斜した抵抗パスの抵抗の測定結果に基づき、面外応力成分を決定することができる。センサは、主面に対して開いたキャビティ又は主面上の3D形状と、キャビティ又は3D形状の傾斜した側壁上に複数の抵抗パスとを、上記抵抗パスを通電するための、複数のコンタクト及び端子と共に備えてもよい。好ましい実施形態によると、センサは、キャビティ又は3D形状の近傍における平面抵抗パスをさらに備え、これによって、面内せん断応力と共に垂直応力成分を決定可能である。
【0010】
本発明に係るセンサは、上記に引用した既存の手法と比較して技術的に簡単で信頼性のある、面外応力成分をモニタ及び/又は決定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、まず、半導体部品における応力をモニタ及び/又は測定するセンサに関する。該部品は半導体材料で形成される基板を備え、該基板は平面状の主面を備えている。本センサは、半導体材料による少なくとも1つの傾斜面であって、基板の主面に対して斜めの傾斜角度によって規定される傾斜面を備える。本センサは、傾斜面の少なくとも一部の上に延びる少なくとも1つの直線状の抵抗パスを備える。このため、直線状の抵抗パスは、基板の主面に対して斜めの傾斜角度に向けられている。該角度は、傾斜面の角度と同じ角度であってもよいし、或いは該角度と異なってもよい。好ましい実施形態によると、抵抗パスと主面との間の傾斜角度は、20°と70°との間である。本センサは、傾斜した抵抗パスに通電するための複数のコンタクト及び端子を備える。これにより、抵抗パスの電気抵抗を測定し、測定結果から基板の主面に平行でない面におけるせん断応力の評価を導出可能である。
【0012】
或る実施形態によると、本センサは、主面に対して相補的な傾斜角度を有する少なくとも1つの傾斜面のペアを備え、第1の面内に存在する少なくとも1つの抵抗パスのペアであって、第1の抵抗パスは第1の傾斜面上にあり、第2の抵抗パスは第2の傾斜面上にある抵抗パスのペアを備える。また、傾斜した抵抗パスのペアも、主面に対して相補的な傾斜角度を有する。本センサは、抵抗パスのペアによって規定される第1の面におけるせん断応力を測定するように構成される。
【0013】
本センサは、2つの上記傾斜面のペアと2つの傾斜した抵抗パスのペアとを備え、第1及び第2の面におけるせん断応力を測定するように構成される。当該面は、2つの互いに平行でない面であって、好適には2つの互いに直交する面である。
【0014】
或る実施形態によると、本センサは、さらに、基板の主面の平面に平行であり、傾斜した抵抗パス近傍に配置された複数の平面抵抗パスと、平面抵抗パスの電気抵抗を測定して、測定結果から追加の1つ又は複数の応力の評価を導出可能に、平面抵抗パスに通電するための複数のコンタクト及び端子とを備えてもよい。
【0015】
本発明の実施形態によると、1つ又は複数の傾斜面は、1つ又は複数のキャビティの傾斜した側壁であって、キャビティは、基板の主面又は基板の別の面に対して開いている。及び/又は、該傾斜面は、基板の主面又は基板の別の面から外方に延びる3次元形状の傾斜した側壁である。
【0016】
或る実施形態によると、本センサは、4壁のピラミッド若しくは4壁のピラミッドの錐台の形状を有するキャビティ又は3D形状を備える。これは、矩形又は方形の基部と、中央に配置された先端領域と、基部の4端と先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜した壁であって、2つの傾斜面のペアを形成し、各ペアの面は基板の主面に対して相補的な傾斜角度を有する4つの壁と、基部の隅と先端領域との間にそれぞれ延びる4つの傾斜したリブとを備える。本センサは、4つの電気的なコンタクトを備える。或る実施形態において、該コンタクトは、ピラミッドの基部の端部に沿って、好ましくは該端部の中央に並置される。後者の場合、4つのパスと基板の主面との間の傾斜角度は、ピラミッドの各々の傾斜面による傾斜角度と実質的に同一である。本センサは、4つの傾斜面上にそれぞれある4つの傾斜した抵抗パスであって、先端領域と4つの電気的なコンタクトとの間に延び、対向する面上のパスは、基板の主面に対して相補的な傾斜角度を有する抵抗パスを備える。
【0017】
上記の段落に記載されたセンサは、先端領域に配置された第5の電気的なコンタクト(10)をさらに備えてもよい。4つの抵抗パスは、それぞれ4つのコンタクトと第5の電気的なコンタクトとの間に延びる。これに代えて、4つの傾斜した抵抗パスは、先端領域において併合され、キャビティ又は3D形状の対向する壁上の傾斜した抵抗パスは、電気抵抗に関して合致する。
【0018】
上述したピラミッド状のキャビティ又は3D形状を備えるセンサは、さらに、キャビティ又は3D形状の近傍における2つの平面抵抗パスであって、基板の主面の平面における直交線に沿って在る2つの平面パスを備える。本センサは、各平面抵抗パスの始端および終端にある電気的なコンタクトと、コンタクトに通電するための端子とをさらに備える。本センサは、キャビティ又は3D形状の周りに配置された4つの追加の電気的なコンタクトであって、キャビティ又は3D形状の4隅の各々に配置された隅のコンタクトと、隅のコンタクトに通電するための端子とをさらに備える。本センサは、4つの傾斜した抵抗パスであって、各々が各隅のコンタクトとキャビティ又は3D形状の先端領域との間で、キャビティ又は3D形状のリブの1つに沿って在る抵抗パスをさらに備える。
【0019】
上記の段落に係るセンサは、さらに、2つの追加の平面抵抗パスを、各追加の平面パスの始端および終端にあるコンタクトと共に備える。2つの追加の平面パスは、2つの直交する平面パスにそれぞれ平行に在る。2つの追加の平面パスは、それぞれの直交する平面パスに対してキャビティ又は3D形状の対向する辺上に在る。平行な平面抵抗パスの各ペアは、電気抵抗に関して合致する。
【0020】
平行な抵抗パスの2つのペアは、矩形の側端を形成し、4つのコンタクトが矩形の隅に配置されてもよい。
【0021】
本センサは、キャビティ又は3D形状の近傍における2つの平面抵抗パスであって、基板の主面の平面における直交線に沿って在る2つの平面パスをさらに備えてもよい。本センサは、各平面抵抗パスの始端および終端にある電気的なコンタクトと、コンタクトに通電するための端子とをさらに備えてもよい。本センサは、第1のキャビティ又は3D形状と同じ形状を有する第2のキャビティ又は3D形状であって、第1のキャビティ又は3D形状に近接して配置される第2のキャビティ又は3D形状をさらに備えてもよい。本センサは、第2のキャビティ又は3D形状の周りに配置された4つのコンタクトであって、第2のキャビティ又は3D形状の4隅に配置された隅のコンタクトと、隅のコンタクトに通電可能にする端子とをさらに備えてもよい。本センサは、4つの傾斜した抵抗パスであって、それぞれの隅のコンタクトと、第2のキャビティ又は3D形状の先端領域との間において、各パスが第2のキャビティ又は3D形状のリブに沿って在る抵抗パスとをさらに備えてもよい。
【0022】
或る実施形態において、上記基板の材料は、結晶半導体材料である。上記の傾斜角度は、当該材料の結晶構造によって規定される。
【0023】
或る実施形態において、本センサは、傾斜面における偏狭の領域、及び該当する場合には基板の主面又は平行な面における偏狭の領域におけるドーパント要素の注入によって得られる複数の抵抗パスを備える。本センサは、第1の分極型のドーパントの注入によって形成される抵抗パスを、第1の分極型とは反対の第2の分極型のドーパントの注入によって形成される抵抗パスと共に備える。
【0024】
本センサは、同様に本発明に係る応力センサを備える半導体部品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】基板の主面に対して斜めの角度にある少なくとも1つの傾斜面を含み、傾斜面上に抵抗パスを備えた、本発明に係るセンサの原理を説明する図である。
【
図2】基板の主面に対して相補的な角度を有する傾斜面を備えた、より好ましいセンサの実施形態を説明する図である。
【
図3】基板に凹部が設けられた垂直側壁に傾斜面が形成された、別の実施形態を説明する図である。
【
図4】面外応力成分σ
xz及びσ
yzを測定できるようにする本発明の一実施形態に係る応力センサの平面図及び横断面図であり、(100)シリコンウエハに設けられたセンサについて、結晶軸およびセンサ軸の配向も示す。
【
図5】キャビティの底部にコンタクトが設けられていない場合の、
図4のセンサを示す図である。
【
図6a】
図5に係る応力センサにおいて面外の抵抗シフトを測定する方法を説明する図である。
【
図6b】
図5に係る応力センサにおいて面外の抵抗シフトを測定する方法を説明する図である。
【
図7】温度補償の方法において全ての応力成分を測定するように構成された本発明に係るセンサ設計の実施形態を説明する図である。
【
図8】
図6又は7に係るセンサにおいて抵抗シフトを測定する測定方法を示す図である。
【
図9】温度補償の方法において全ての応力成分を測定するように構成された本発明に係るコンパクトなセンサ設計を示す図である。
【
図10】本発明に係る他の可能なセンサ設計を示す図である。
【
図11】ピラミッド状キャビティの周りの分離した平面抵抗パスを備えた、本発明に係るセンサ設計を示す図である。
【
図12】基板から外方に延びる3Dピラミッドが設けられた、本発明に係るセンサを説明するための図である。
【
図13a】90°に配向した2つのV字状の溝の組を備えた、本発明に係るセンサの実施形態を示す図である。
【
図13b】90°に配向した2つのV字状の溝の組を備えた、本発明に係るセンサの実施形態を示す図である。
【
図14】偏長したピラミッドの形状におけるキャビティを備えた実施形態を示す図である。
【
図15】p型とn型の注入で規定された抵抗パスを備えた実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によると、応力センサは、平面状の主面を有する半導体基板の上に形成される。ここで、センサは、基板材料の傾斜面を少なくとも1つ備える。「傾斜」は、当該面が主面に対して斜めの角度に向いた平坦面であることを意味する。センサは、当該傾斜面の上に少なくとも1つの抵抗パスを備える。半導体材料は、好ましくはピエゾ抵抗性の材料であり、より好ましくはピエゾ抵抗性の結晶材料であり、例えばシリコン、ゲルマニウム又は化合物半導体(例えばGaAs)である。パスは、上記面による斜めの傾斜角度の結果として傾斜している。「抵抗パス」は、本明細書において、上記面の一部として1次元導体と同等であり、このため、電気抵抗が測定可能であることを特徴とする。「抵抗パス」が1次元的であることから、基板の主面に対して斜めの傾斜角度は、明確に規定される。このため、抵抗パスは、傾斜面に対して直線状である。あらゆる斜め(即ち90°と異なる)の傾斜角度も、抵抗パスと基板の主面との間に適用可能である。より好ましい実施形態によると、当該角度は、20°と70°との間である。
【0027】
図1(a)は、水平に向いた主面100を有する基板50を備え、主面に対する傾斜角度θで規定される1つの傾斜面102を有する溝101を備え、傾斜面上に3つの抵抗パス103~105を備えるセンサの実施形態を示す。1つのパスであって充分だが、様々な可能なパスの方向を説明するために3つが図示されている。
図1(b)は、同等な一実施形態を示す。本実施形態では、基板材料で形成される3D形状101’が基板50の主面100から外方に延びており、当該3D形状は、傾斜面上で3つの抵抗パス103’~105’を備えた1つの傾斜面102’を有する。パスの傾斜角度は、上記面の傾斜角度θと同じ(パス103及び103’)、又は当該角度θとは異なる(パス104/105及び104’/105’)。図示した実施形態において、パスは、第1及び第2のコンタクトA及びBの間に延びている(コンタクトは、後述するように、特定の実施形態においてパスの一側方にのみ設けられてもよい)。パス及びコンタクトは、既知の技術によって作製可能である。パスは、好ましくは傾斜面の偏狭の領域におけるドーパントの注入ステップにより作製される。コンタクトは、既知の半導体プロセス技術に従って形成される金属コンタクトであってもよい。
【0028】
コンタクトA及びBは、導入の節で引用した例のような、基板の主面上に抵抗パスを備える同様の圧力センサの技術分野において知られる何れかの方法において、センサにおける電子回路(図示せず)を介して、および当該回路に接続される端子の1つ又は複数を介して通電可能である。
図1(a)又は(b)に示すセンサは、傾斜した抵抗パスの存在により、従来技術のセンサとは異なるものになっている。コンタクト及び端子を介して、パスの抵抗が測定可能である。抵抗値における変化は、主面に直交する垂直面P1,P2,P3における面外せん断応力成分の変化に比例する。これらのパスの抵抗をモニタすることにより、センサは、基板において生じるせん断応力の面外成分における変化のモニタリングを実現することができる。特定の3次元座標系において規定される面外せん断応力成分の数値についての実際の測定は、本明細書において後述するように、追加のセンサ又は追加の抵抗パスを要する。
【0029】
図2に示す実施形態によると、溝110が、主面100において設けられ、主面100に対して相補的な傾斜角度θ,180°-θを有した2つの傾斜面111及び112を有する。又、換言すると、2つの傾斜面は、主面100に直交する対称面113に対して対称に対向している。2つの抵抗パスR1,R2は、これらの傾斜面上でそれぞれ形成され、そのため抵抗パスは、主面に対して相補的な傾斜角度をも有している。抵抗パスR1,R2は、主面100に平行でない面において配置される。
図2の実施形態は、このような要件に該当した幾つかのペアR1,R2を含んでいる。2つの抵抗器は、同一平面上に配置される。図示した例において、この平面は、主面100と直交しているが、パスR1,R2は、主面と直交せず平行でもない平面に配置されてもよい。溝11の傾斜面上の代わりに、抵抗パスR1,R2は、基板材料で形成された3D形状であって、主面から外方に延びて、相補的な傾斜角度を有した側壁を有する3D形状の傾斜面上に形成されてもよい。
【0030】
上述した溝101,110は、基板の主面100に対して開いたキャビティの一例である。上述した3D形状101’は、当該主面上に直接、形成される。他の実施形態によると、溝が主面に平行でない面に対して開いて形成される、或いは3D形状が、このような面上に形成される。このような実施形態の一例は
図3に示されており、溝120が、基板50の主面100において形成される凹部121において形成される。これにより、溝120は、側壁面122に対して開いている。抵抗パスR1,R2は又、溝120の側壁を形成する傾斜面上に形成される。傾斜面は、主面100に対して相補的な傾斜角度θ,180°-θを有する。この場合、各面は、水平な対称面123に対して対称に対向することとなる。この場合に抵抗パスを作製する1つの方法では、ドープ酸化物(例えばPSG、ホスホシリケートガラス)を堆積してキャビティ120を充填し、次いで、抵抗パスとなる埋没パス近傍のドープ酸化物のみを維持するために充分なアンダーラップを特徴とする異方性エッチングにより、パターニングする。最後に、アニールにより、ドープ酸化物に含まれるドーパントを隣接するシリコンに移動させ、(例えばウェットエッチングで)残りのドープ酸化物を等方的に除去することができる。
【0031】
上述したように抵抗パスのペアR1,R2は、主面100に対して相補的な傾斜角度を明確に規定されており、2つのパスR1,R2によって規定される平面における面外せん断応力成分の数値を決定することができる。このことは、ピラミッド状キャビティ1のような特定の場合において実践されるが、数学理論は、上述したペアR1,R2の何れにおいても同一である。特定の実施形態によると、以下で説明するように、抵抗器R1,R2は合致する、即ちR1=R2である。
【0032】
図4は、本発明に係る応力センサの一実施形態を示しており、基板50の主面100に対して開いたピラミッド状のキャビティ1を備える。ピラミッド状キャビティ1は、好ましくは異方性エッチングプロセスによって作製される。当該プロセスは、予め規定された結晶方向を有する結晶半導体ウエハ50上で行われる。半導体分野において用いられる殆どのシリコンウエハは、シリコン結晶構造の(100)面において配向された平坦面を有する。この構成により、ウエハの矩形部分において、残りをハードマスク又はレジスト層で保護しておき、KOHベース等の異方性ウェットエッチングによってピラミッド状キャビティを作製できることが、従来技術にて知られている。エッチングプロセスは、結晶軸上に整列し、これによって、キャビティ壁にて明確に規定された傾斜角度を有するキャビティを形成する。キャビティは、ナノメートルオーダの大きさを有し、例えばピラミッドの基面の辺が略400nm長であってもよい。
【0033】
図4のセンサにおいて、抵抗パス2,3,4,5は、キャビティの傾斜壁上に形成される。これは、4つのパスの領域においてドーパントの注入ステップにより行われる。例えば、p型のドーパントが、パスを形成するために注入されてもよい。注入ステップは、既知の技術により行うことができる。抵抗パスは、キャビティの4つの端部の各々の中央に位置するコンタクト6,7,8,9から、キャビティの先端領域11における中央のコンタクト10までの間に延びる。好ましくは、コンタクト10は、上記の先端領域の平坦な部分の上に設けられる。即ち、倒立のピラミッドは、実際には、ピラミッドの錐台としても知られる平坦化したピラミッド、つまり先端部分が基面に平行な面に沿って切断されたピラミッドである。4つの抵抗パス2~5は、4つの抵抗器と等価であり、即ちxz面における2つの抵抗器R
x1及びR
x2と、yz面における2つの抵抗器R
y1及びR
y2とである。角度θは、既知である。対向する傾斜面は、基板50に垂直な面に対して対称であり、xz面とyz面との双方において等しい角度90°-θによって表される。結晶構造においてウェットエッチングにより設けられるキャビティの場合、角度θは、ピラミッドが形成される半導体材料の結晶軸面によって規定される。センサは、チップ内で回路を介してそれぞれのコンタクト6~10に接続される、チップの外部端子(図示せず)をさらに備える。これによってコンタクトの各々は個別に通電でき、例えば電圧源または接地に接続できる。一実施形態によると、一つの端子が、各コンタクトに設けられ、それぞれのコンタクトに個別に接続される。これに代えて、端子の個数は、コンタクトの個数よりも少なくてもよく、測定が時分割方式において行われてもよい。
【0034】
結晶基板材料の結晶軸に整列された座標系において、基板における応力テンソルと、応力成分の方向における規格化された抵抗シフトとの間の関係は、次式のとおりである。
【0035】
【0036】
規格化された抵抗シフトは、δRij=ΔRij/Rijであり、ここでΔRijは抵抗Rijの抵抗値における実際のシフトである。係数π11,π22及びπ44は、非特許文献1において説明された、基板材料における温度依存のピエゾ抵抗係数である。但し、これらの係数の値は、ドーピングのレベル及び温度に依存する。
【0037】
図4における軸x,y,zは通常、基板材料の結晶軸に整列されていない。x,y,zにて規定される抵抗シフト間の関係は、式(1)及び結晶軸に対する軸x、y、zの配向に基づいて決定できる。例えば、基板が、
図4内に示すように(100)シリコン基板である場合、ウエハの面における結晶軸は、[100]及び[010]方向に沿って配向される。キャビティは、これらの方向に従って設けられ、このことから
図4のx及びy方向は、[110]及び
【0038】
【0039】
応力が、
図4のセンサが設けられた基板にかかると、基板が理論的な「ゼロ応力」条件となったときに、抵抗R
x1及びR
x2は、値ΔR
x1及びΔR
x2にわたってシフトする。規格化されたシフト
δR
x1=ΔR
x1/R
x1、及びδR
x2=ΔR
x2/R
x2
と、xyz軸に沿ったシフトとの間の関係は、主軸の1つについての回転を特徴とするモール変換によって与えられる。これに加えて、抵抗シフトは、基板材料の温度係数αを介して可能な温度の増分ΔTに依存する。従って、次式が成立する。
δR
x1=δR
xx・cos
2θ+δR
zz・sin
2θ+δR
xz・sin2θ+α・ΔT
(2)
δR
x2=δR
xx・cos
2θ+δR
zz・sin
2θ-δR
xz・sin2θ+α・ΔT
(3)
式(2)及び(3)間の差分は、
δR
x1-δR
x2=2・δR
xz・sin2θ
(4)
となる。δR
xzはπ
44・σ
xzに等しいことから(式(1)より、又z軸が結晶軸に応じて配向されたときのxyzにおいて成立する)、π
44は文献または先行するキャリブレーションから知られた値を用いるとして、δR
x1-δR
x2の測定は、面外応力成分σ
xzの値を直接、提供する。
σ
xz=δR
xz/π
44 なお、
δR
xz=(δR
x1-δR
x2)/(2・sin2θ)
(5)
同じ理由は、第2の面外成分σ
yzにも当てはまる。
σ
yz=δR
yz/π
44 なお、
δR
yz=(δR
y1-δR
y2)/(2・sin2θ)
(6)
【0040】
抵抗シフトの測定は、センサにおける中央のコンタクト10とそれぞれ側方のコンタクト6~9との間に既知の電圧を印加し、電流を測定することによって行える。このことは、理論的なゼロ応力条件に密接に近似するように基準条件を一旦、設定しておくことによって行える。このため、応力の測定は常に、基準条件に対して相対的な応力の測定となる。このような応力測定は、その後、テスト条件下で抵抗値の測定を伴う。値ΔRx1,ΔRx2,ΔRy1及びΔRy2は、測定された抵抗と、基準条件において得られた抵抗との間の差分として計算される。好ましくは、対向する傾斜した抵抗パスは、基準条件において合致する。即ち、基準条件においてRx1=Rx2=R0x及びRy1=Ry2=R0yとなる。この場合に、次式が成立する。
δRx1-δRx2=[(Rx1-Rx0)/Rx0]-[(Rx2-Rx0)/Rx0]=(1/Rx0)(Rx1-Rx2)
既知のRx0と組み合わせてRx1とRx2間の差分を測定することは、σxzを計算するために十分である。yz面における抵抗は又、好ましくは合致する。
【0041】
第2の実施形態を
図5に示す。本実施形態では、底部のコンタクトが省略され、抵抗パス2~5は、コンタクト6~9と、倒立ピラミッドの中央の先端領域11との間に延びる。ここで、抵抗パスは、導体2+3及び4+5の2ペアの間でノードを形成するように併合する。即ち、先端領域11は、2つの交差する導体パス2+3及び4+5の部分である。この場合、キャビティの形状は、ピラミッドの錐台であってもよいし、あるいは頂点を有する実際の倒立ピラミッドであってもよい。面外応力成分σ
xz及びσ
yzの測定は、
図5のセンサによって可能である。当該センサは、対向する傾斜した抵抗パスは、基準条件に合致する、即ちR
x1=R
x2=R
0x及びR
y1=R
y2=R
0yとなるように設けられる。
【0042】
本センサにおいてδR
x1-δR
x2を測定する方法の1つを
図6aに示す。このような測定の構成で測定される電圧V
rは、
【0043】
【数3】
である。合致させた条件より、応力ゼロのときにR
x1=R
x2=R
0xである。応力がかかると、抵抗R
x1及びR
x2の微小な変動が生じる。このため、R
x1はR
0x+ΔR
x1となり、R
x2はR
0x+ΔR
x2となる。応力によって生じる微小変動は、V
rの式の微分である。
【0044】
【数4】
R
x1(0)及びR
x2(0)をR
0xによって置換すると、次式が得られる。
【0045】
【0046】
【数6】
により、ΔV
rの測定からδR
x1-δR
x2を決定することができる。
図6bは、δR
x1-δR
x2を測定するための同様の構成を説明している。
【0047】
本発明に係る応力センサの更に好ましい実施形態は、温度補償の方法において、面外せん断応力成分σ
xz及びσ
yzだけでなく、これに加えて垂直応力成分σ
xx,σ
yy及びσ
zzを測定するように構成される。このような実施形態についての第1の可能な実現方法を
図7に示す。センサは、倒立ピラミッド状キャビティ1の近傍において追加の平面抵抗パス15~18を備える。用語「平面パス」は、該パスを「傾斜したパス」から区別し、その抵抗パスが基板50の主面100の平面に平行であることを示す。好ましくは、平面パスは、上述した主面100上に配置される。該パスは、例えば導入の節で参照した現在、知られた応力センサの製造方法など、当技術分野において既知の方法において、基板面100の定められた領域にドーパントを注入することによって得られる。各パスは、平面的な抵抗器と同等である。
図7の実施形態は、ピラミッドの対向する辺上に配置されて且つx方向に向いた平面抵抗器R
x1
f及びR
x2
fと、ピラミッドの対向する辺上に配置されて且つy方向に向いた平面抵抗器R
y1
f及びR
y2
fとにおいて、対称なレイアウトを有する。平面抵抗器は、好ましくは、R
x1
f=R
x2
f及びR
y1
f=R
y2
fというように合致する。4つの平面抵抗器は、4つのコンタクト20~23を介して通電可能である。即ち、平面抵抗器は、コンタクトが隅に配置された矩形を形成する。
図4~6に関して説明済みの傾斜した抵抗器は、平面抵抗器から区別するために、以下ではR
x1
g,R
x2
g,R
y1
g及びR
y2
gと記載する。傾斜した抵抗器は合致している、即ちR
x1
g=R
x2
g及びR
y1
g=R
y2
gである。本実施形態において、ピラミッドの底部のコンタクトは設けられていない(が、別の実施形態においては設けられてもよい)。
【0048】
これに加えて、第2のピラミッド状キャビティ25が、基板の応力状態が2つのキャビティ1及び25の配置において実質的に等しくなるように設けられてもよい。第2のキャビティ25は、ピラミッドのリブに沿って傾斜した抵抗パス26~29であって、抵抗器Ru1
g,Ru2
g,Rv1
g及びRv2
gと等価なものを有する。後者の抵抗器は、x及びyに対してz軸について45度回転した回転軸系uvzのuz面及びvz面に配置される。該抵抗器は、好ましくはRu1
g=Ru2
g及びRv1
g=Rv2
gというように合致する。コンタクト30~33は、キャビティ30~33の四隅に配置され、該コンタクトに個別に通電するための端子(図示せず)に接続される。これに加えて、好ましくは合致した平面抵抗パス35~38が、Ru1
f=Ru2
f及びRv1
f=Rv2
fというように4つの抵抗器とそれぞれ同等に、u方向及びv方向に沿って設けられる。4つのコンタクト39~42は、平面パス35~38が、4隅にコンタクト39~42を有する矩形を形成するように設けられる。
【0049】
このようなセンサの設計上で得られる抵抗の測定結果に基づいて、σ
xx,σ
yy及びσ
zzを解くための、3つの独立で温度補償された方程式を導出することができる。和R
x1
g+R
x2
gの規格化されたシフトは、δR
xx
gとして規定される。
δR
xx
g=(ΔR
x1
g+ΔR
x2
g)/(R
x1
g+R
x2
g)
(7)
傾斜した抵抗の合致により、上式は下記のように書き下すことができる。
δR
xx
g=R
x1
g/2+R
x2
g/2
(8)
式(2)及び(3)を考慮すると、上式はさらに下記のように書き下すことができる。
δR
xx
g=(1/2)・(δR
xx・cos
2θ+δR
zz・sin
2θ+α・ΔT)
(9)
δR
xx及びδR
yyは、ピエゾ抵抗行列に基づく応力成分の関数として表せる。この関係は、基板の結晶軸に対する第1のピラミッド1の向きに依存する。(100)シリコン基板の場合、x軸が[100]方向に向いていると(
図4参照)、上記の関係は下記のようになる。
【0050】
【0051】
上式を導出する方法の詳細については非特許文献1を又、参照する。式(10)及び(11)を式(9)に代入することにより、次式が得られる。
δRxx
g=Agσxx+Bgσyy+Cgσzz+α・ΔT
(12)
対称性を理由として、δRyy
gは次式のように表される。
δRyy
g=Bgσxx+Agσyy+Cgσzz+α・ΔT
(13)
平面抵抗器の規格化されたシフトは、ピエゾ抵抗行列から直接、導出できる。
【0052】
【数8】
図7の実施形態において、抵抗R
xx
f及びR
yy
fは、好ましくは下記のように規定される。
R
xx
f=R
x1
f+R
x2
f,
R
yy
f=R
y1
f+R
y2
f
平行である平坦な抵抗器は合致することから(R
x1
f=R
x2
f及びR
y1
f=R
y2
f)、次式が成立する。
δR
xx
f=δR
x1
f/2+δR
x2
f/2
δR
yy
f=δR
y1
f/2+δR
y2
f/2
これに代えて、各方向において2つの平坦な抵抗器のうちの一方のみを考慮すると、例えば下記のようになる。
R
xx=R
x1
f
R
yy=R
y1
f
しかしながら実用上、応力と温度と抵抗パラメータは、定数ではなく、ウエハにわたり特定の勾配を有して変化し得る。本構造の中心に対して対象な2つの合致した抵抗の和を、2つのうちの一方を個別に測定することに代えて用いることにより、本構造の幾分かの不完全さを1次のオーダに相殺させることができる。
式(12)~(15)をまとめて、4つの方程式の系が形成される。
【0053】
【0054】
係数Af,Bf,Cf,Ag,Bg及びCgは、上述した式に基づいて計算できる。これに代えて、係数はキャリブレーションによって得ることもできる。既知のキャリブレーション技術が採用可能であり、予め規定された応力成分がかけられる。面内の垂直応力成分(σxx及びσyy)において、周知技術として四点曲げ工具を用いることができる。四点曲げ工具はせん断応力(σxy)しか生じないが、(z軸について回転した)回転ダイを用いて、センサの座標系において四点曲げ系が全成分(σxx,σyy及びσzz)を生じるようにすることができる(即ち、ここでx及びyはセンサ軸を表し、四点曲げ工具の軸ではない)。しかし、(σxx,σyy)からの寄与は、キャリブレーションの第1の組により決定でき、σxyに対する感度を抽出することができる。σzzについては、例えば非特許文献2に記載されたようなナノインデンターツールが使用できる。最後に、σxz及びσyzについては、マイクロバンプがセンサの頂上に処理でき、且つマイクロバンプのせん断試験がσxzとσyzの何れかに適用できる。
【0055】
式(16)の系における4×4行列は特異行列であり、この系は、1つ追加の式を用いない限り、解くことができない。以下の2つの等式は、系(16)から直接、導出される。
【0056】
【数10】
第3の等式は、第2のピラミッド25においてu方向及びv方向に向けられた抵抗器に基づいて得られる。R
u
gはR
u1
g+R
u2
gとして規定され、R
v
gはR
v1
g+R
v2
gとして規定される。対称性の理由により、和R
u
g+R
v
gは、下記の応力感度を有する。
δ(R
u
g+R
v
g)=δR
uv
g=Dg・(σ
xx+σ
yy)+E
g・σ
zz
(19)
再び対称性の理由により、且つR
u
f=R
u1
f+R
u2
f及びR
v
f=R
v1
f+R
v2
fにより、下記の関係が成立する。
δ(R
u
f+R
v
f)=δR
uv
f=Df・(σ
xx+σ
yy)+Ef・σ
zz
(20)
係数Dg,Eg,Df及びEfは、キャリブレーションによって決定でき、或いは計算でき、下記のようになる。
【0057】
【数11】
ここで、θ1は、z軸に対するピラミッド25のリブの端部の角度である(
図4参照)。
式(19)及び(20)間の差分は、下記のように得られる。
【0058】
【0059】
線形独立な式(17)、(18)及び(21)から、δR
xx
f,δR
xx
g,δR
yy
f,δR
yy
g,δR
uv
g及びδR
uv
fの測定後に、応力成分σ
xx,σ
yy及びσ
zzが算出できる。上記の抵抗シフトの測定は、R
yy
gを測定する例示的な場合について
図8に示すように、関連するコンタクトを電圧源に接続して結果との電流を測定することにより、各々の抵抗を測定することによって為される。δ値は、測定した値から、理論的なゼロ応力条件に近い基準条件において既知の抵抗値を減算することによって得られる。基準条件において既知の抵抗は、キャリブレーション測定から得られる。好適には、更なる合致によって測定を簡単にできる。例えば、好ましい実施形態によると、抵抗R
xx
g及びR
xx
fが合致される。即ち、基準条件においてR
xx
g=R
x1
g+R
x2
g=R
xx
f=R
x1
f+R
x2
f=R
x0である。この場合において、式(17)の左辺は、R
xx
f-R
xx
gの測定結果およびR
x0の知識から特定できる。
【0060】
さらに、
図7の実施形態は、矩形の隅に4つのコンタクトを有する矩形パターンにおいて配置される平面状の抵抗からσ
xyを測定することができる。これは、σ
xyを直接、測定する、疑似ホールセンサの既知の設計である。疑似ホールセンサは、例えば非特許文献4に記載されている。これにより、
図7のセンサは、応力テンソルの6成分の全てを測定することができる。
【0061】
図7において、抵抗パス35~38は、省略されてもよい。又、R
u1
f,R
u2
f,R
v1
f及びR
v2
fの値は、x及びyに対するu及びvの向きを考慮して、且つピエゾ抵抗行列を考慮して、R
x1
f,R
x2
f,R
y1
f及びR
y2
fから導出できる。この計算は、例えば上述した非特許文献1に説明されている。
【0062】
図9は、別の実施形態を示しており、単一のキャビティ1を備え、上述した、傾斜した抵抗パス2~5及び26~29が、キャビティの側壁に沿ってとリブに沿ってとの双方に形成され、8つのコンタクトがキャビティの周りに形成される。4つのコンタクト6~9はキャビティの端部の中央にあり、更なる4つのコンタクト30~33はキャビティの隅上にある。矩形領域に配置された4つの平面抵抗器15~18は、本実施形態において等しく存在する。u方向及びv方向における平面抵抗器R
u1
f,R
u2
f,R
v1
f及びR
v2
fの値は、x及びyに対するu及びvの既知の向きとピエゾ抵抗行列を考慮して、x方向及びy方向における平面抵抗器から計算可能である。これに代えて、u方向及びv方向に配置された更なる4つの平面抵抗器が、
図9の設計に追加することができ、R
u1
f,R
u2
f,R
v1
f及びR
v2
fの直接測定を可能にする。σ
xyは、疑似ホールセンサとしてx軸及びy軸に沿って配置された平面状の矩形を用いて得られる。この方法において、
図9のセンサは、6つの応力成分の全てを測定可能にする本発明に係るセンサの、よりコンパクトなバージョンである。
【0063】
図10は、他の実施形態を示しており、該実施形態は、x方向において1つの平面抵抗器R
x
fのみを備え、y方向において1つの平面抵抗器R
y
fのみを備えている。上述したように、ピラミッドの対向する辺上で合致した平面抵抗器の存在は、式(17),(18),(21)の系を決定するために要請されていない。このため、
図10のセンサは、応力成分σ
xz,σ
yz,σ
xx,σ
yy及びσ
zzを検知することができる。面内せん断応力σ
xyは、本センサによっては測定できない。
【0064】
図11は、σ
xyを除く全ての応力成分を測定できる別の変形例を示している。平面抵抗パス15~18は、本実施形態において隣接した矩形を形成せずに、分離した抵抗パスを形成しており、それぞれ専用のコンタクトのペア20a/21a;20b/23b;21b/22b;23a/22aを有する。
【0065】
本発明は、ピラミッド状キャビティを含む実施形態に限定されない。
図12に示すように、同一の方程式は、基板50の表面から外方に延び、且つ基板の材料で形成される正のピラミッド1’から導出されてもよい。ピラミッド1’は、
図4に示したキャビティに対して「正」である。ピラミッドの側壁の傾斜の角度θは既知であること、及び抵抗パスが側壁に設けられることが重要であり、好ましくはピラミッド近傍において平面抵抗パスが組み合わせられる。正のピラミッドは、2つの直交方向において2つの隣接したV字状の溝をエッチングすることによって得られる。上述した実施形態の全てが、ピラミッド状キャビティ1及び25をこのような正のピラミッドに置き換えた場合に成立する。唯一の差異は、上述した方程式における角度θが、-θに置換されることである。
【0066】
他の実施形態を
図13aに示す。本センサは、2つの互いに直交するV字状の溝60及び61を備え、該溝の側壁に沿った抵抗パス2,3,4,5及び抵抗パスに通電するためのコンタクト6,7,8,9を備える。対応する抵抗も、
図13aに示す。さらに、コンタクトが溝の底部に存在してもよいが、
図13aに示す実施形態のように存在しない場合には、傾斜したパスが合致した抵抗R
x1=R
x2及びR
y1=R
y2を有する。角度θが既知であれば、本センサの設計は、面外せん断応力成分σ
xz及びσ
yzを決定する観点から
図5の設計と同等である。
図13aの2つの溝の代わりに、2つの互いに直交するプリズムであって、溝60及び61の横断面と一致する三角形の横断面を有し、基板から外方に延びるプリズムが、プリズムの傾斜した側壁上に抵抗パスを備えて、基板の表面上に設けられてもよい。
【0067】
図13bには、
図13aと同じ溝が示されているが、第1の溝はさらに、水平面(即ち、図の紙面)上に射影するとパス2及び3に対して45°に向いた、傾斜した抵抗パスを備える。傾斜した抵抗器のペア26,27及び28,29は、実際には、同じ参照番号で
図7及び9~11に示したパスと同等であり、概して、該パスはピラミッド状キャビティのリブに沿って向けられる。
図13bの設計に平面抵抗器を加えることにより、センサが、6つの応力成分の全てを測定可能に得ることができる。
【0068】
図14は、更に他の実施形態を示す。本発明に係るセンサは、倒立ピラミッドを偏長した形状における溝を備え、尖端の代わりに頂上にリブを有する。傾斜した抵抗パスは、側壁上で且つピラミッドの傾斜したリブに沿って設けられ、これは
図7の実施形態において同じ参照符号を付したように同様の方法にて行われる。又、後者の実施形態と同様に、平面抵抗パス15~18は、キャビティの近傍に設けられる。図示した実施形態において、ピラミッドの偏長した上側リブを含む領域70はシリサイド化され、該領域は実質的にゼロ抵抗を表す。これにより、尖端を有するピラミッドについて上述した全ての方程式を維持することができる。これに代えて、コンタクトが、偏長した上側リブにおける中央(即ち抵抗パス2及び3の共通領域)及び外端(抵抗パス29,5,27及び26,4,28)に設けられてもよい。又、
図14における倒立の偏長したピラミッド状キャビティと同等に、正の偏長したピラミッドが実現される。該ピラミッドは、側壁上で且つピラミッドの傾斜したリブに沿った抵抗パスを有する基板から外方に延びる。
【0069】
本発明のセンサは、xy面において異なる角度を有する複数のキャビティ又は同等の正の3D形状を備えてもよく、複数のキャビティ又は3D形状には、上述したように傾斜した抵抗パス及び平面抵抗パスが設けられてもよい。例えば、
図13及び
図14に示すような偏長した複数の溝が、紙面において互いに角度90°異なる長軸において設けられてもよい。温度補償の方法における垂直応力成分σ
xx,σ
yy及びσ
zzを決定できる独立した方程式を導出するために、追加の配向が求められてもよい。例えば、
図14のキャビティのリブに沿って抵抗パスが設けられる代わりに、第2の溝が第1の溝に対して45°に設けられてもよい。
【0070】
キャビティ、プリズム又はピラミッドの傾斜した側壁に対する傾斜した抵抗パスの配向は、上述した例に限定されない。
図4及び
図5の実施形態において、例えば、傾斜した抵抗パス2~5は、ピラミッドの基面の辺の中央と先端領域11との間に在る必要はない。他の実施形態によると、傾斜した抵抗パスは、キャビティの端部から底部ではなく、傾斜した側壁の部分に沿って在るのみである。このような変形例は、面外および他の応力成分を計算するための方程式の複雑さに影響し得るが、上述した一例の数学的手順は、まだ当業者の許容範囲内にある。本発明は、傾斜した抵抗パスの存在に関し、該パスの抵抗をセンサの応力条件に相関させられる方法において構成される。センサの精密なレイアウトは、以上のように特定される本発明の枠組みの範囲内で異なってもよい。
【0071】
上述した各実施形態において、抵抗パスは、一般にp型又はn型という2つの反対の分極型の一方のドーパント要素を基板の部分に注入することによって設けられる。式(1)に用いるピエゾ抵抗行列の係数は、n型とp型の抵抗器において異なる。理論的にはセンサの抵抗器の全てが同じ分極型の場合に全ての応力成分が検出できるが、実際には、p型とn型の抵抗器の組み合わせを用いることが好ましい。一方又は他方の分極型の係数が、より良く定義された方程式の組を導くためである。例えば、π
44係数がn型の抵抗器だと非常に小さく、式(5)及び(6)からのσ
xzの導出を不正確にし得ることから、傾斜した抵抗器R
xz及びR
yzは、p型シリコンにおいて設けられることが好ましい。一方で、式(17),(18),(21)の組は、n型の抵抗器に基づくことが好ましい。抵抗器の型(p又はn)の最適な選択において方程式を得るために、本発明のセンサは、上述した設計の何れか2つのバージョンを、一方はp型の抵抗器でもう一方はn型の抵抗器として備えてもよい。これに代えて、センサは、単一の設計において双方の分極型を含んでもよい。
図15は、全ての応力成分を決定するための後者の一例を示す。n型の抵抗器と共に平面状のp型は、単一のキャビティの周りに設けられ、好ましくはキャビティの対向する辺上に合致される。図中で、p型の抵抗パスは「+」符号で示され、n型の抵抗パスは「-」符号で示される。側壁上で傾斜した抵抗器はp型である一方、ピラミッドのリブに沿って傾斜した抵抗器はn型である。
【0072】
本発明は、図面および以上の記載により説明され且つ記載されたが、このような説明及び記載は、説明又は例示を目的としており、限定するものではない。開示した実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示及び添付の請求項の勘案から、特許請求の範囲の発明を実施する当業者によって理解され、影響され得る。特許請求の範囲において、文言「備える」は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数のものを排除しない。特定の手段が互いに異なる従属項において参照されるだけの事は、手段の組み合わせが有利に用いられ得ないことを意図していない。請求項における何れの参照符号も、限定的な意味合いで解釈されるべきはない。