(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
E03D11/08
(21)【出願番号】P 2018152216
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 嵩正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓真
(72)【発明者】
【氏名】米津 直人
(72)【発明者】
【氏名】中川 舞子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀和
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105006(JP,A)
【文献】特開2017-227079(JP,A)
【文献】特開2017-066828(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143029(WO,A1)
【文献】特開2016-089542(JP,A)
【文献】特開2005-098005(JP,A)
【文献】特開2016-188575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉢状の汚物受け面を有する便鉢部と、
前記便鉢部の上端側部分を形成するリム部と、
前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流を形成する吐水部と、を備え、
前記リム部の内周面は、前記便鉢部の側面部に設けられる第1面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの少なくとも一方の面部に設けられる第2面領域と、を有し、
前記第1面領域及び前記第2面領域のそれぞれには、前記便鉢部の上端内縁部から前記汚物受け面の外周端部までオーバーハング面が形成されることなく連続する連続面が設けられ、
前記第2面領域の鉛直面に対する傾斜角度は、前記第1面領域の鉛直面に対する傾斜角度より緩やかであ
り、
前記吐水部は、前記第1面領域に形成される開口部を通して前記便鉢部内に洗浄水を吐き出し
、
前記開口部は、平面視にて、前記便鉢部の内面部分の最大前後寸法を四等分する三つの等分線のうちの最も後側の後側等分線よりも後方には形成されない水洗大便器。
【請求項2】
前記リム部の内周面には、前記開口部以外の箇所にて、前記便鉢部の全周に亘る範囲で前記連続面が設けられる請求項
1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記第2面領域には、前記一方の面部に設けられる一方側第2面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの他方の面部に設けられる他方側第2面領域と、が含まれる請求項1から
2のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項4】
鉢状の汚物受け面を有する便鉢部と、
前記便鉢部の上端側部分を形成するリム部と、
前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流を形成する吐水部と、を備え、
前記リム部の内周面は、前記便鉢部の側面部に設けられる第1面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの少なくとも一方の面部に設けられる第2面領域と、を有し、
前記第1面領域及び前記第2面領域のそれぞれには、前記便鉢部の上端内縁部から前記汚物受け面の外周端部までオーバーハング面が形成されることなく連続する連続面が設けられ、
前記第2面領域の鉛直面に対する傾斜角度は、前記第1面領域の鉛直面に対する傾斜角度より緩やかであ
り、
前記吐水部は、前記第1面領域に形成される開口部を通して前記便鉢部内に洗浄水を吐き出し
、
前記第2面領域には、前記一方の面部に設けられる一方側第2面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの他方の面部に設けられる他方側第2面領域と、が含まれ
、
前記旋回流は、前記一方側第2面領域を経由してから前記他方側第2面領域を経由し、
前記他方側第2面領域は、前記一方側第2面領域より鉛直面に対する傾斜角度が緩やかであ
る水洗大便器。
【請求項5】
前記洗浄水を棚面で受けて前記旋回流の旋回方向に導く導水路を備え、
前記棚面の内周端部は、実質的に左右対称の位置に設けられる請求項1から
4のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記洗浄水を棚面で受けて前記旋回流の旋回方向に導くための導水路を備え、
前記棚面は、前記一方の面部に設けられる前記便鉢部の前端又は後端より前記旋回方向にて前記第2面領域に接続される請求項1から
5のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記汚物受け面は、前記便鉢部の前面部に設けられる凹曲面部を有し、
前記凹曲面部は、少なくとも前記便鉢部の左右中央部において、前記汚物受け面の下端縁部から前記汚物受け面の外周端部まで連続する請求項
6に記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記リム部の内周面には、単数の前記開口部のみが形成される請求項1から7のいずれかに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リム部の内周面にオーバーハング面のない連続面を設けた水洗大便器が提案されている(特許文献1参照)。連続面は、オーバーハング面が形成されることなく、便鉢部の上端内縁部から汚物受け面の外周端部まで連続する面をいう。拭き掃除し難いオーバーハング面がリム部の内周面に形成されないため、良好な清掃性を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リム部の連続面の掃除の手間を軽減する観点から、その上下方向での洗浄水による洗浄範囲の広範囲化が求められることがある。特許文献1の開示技術は、このような観点から特段の工夫を講じたものではなく、改良の余地があった。
【0005】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、リム部の連続面の洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明の第1態様は水洗大便器である。第1態様の水洗大便器は、鉢状の汚物受け面を有する便鉢部と、前記便鉢部の上端側部分を形成するリム部と、前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流を形成する吐水部と、を備え、前記リム部の内周面は、前記便鉢部の側面部に設けられる第1面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの少なくとも一方の面部に設けられる第2面領域と、を有し、前記第1面領域及び前記第2面領域のそれぞれには、前記便鉢部の上端内縁部から前記汚物受け面の外周端部までオーバーハング面が形成されることなく連続する連続面が設けられ、前記第2面領域の鉛直面に対する傾斜角度は、前記第1面領域より鉛直面に対する傾斜角度より緩やかである。
【0007】
第1態様によれば、第1面領域と第2面領域とで傾斜角度を同じにする場合と比べ、第2面領域で遠心力を受けた洗浄水が広い上下範囲に届き易くなる。これに伴い、その第2面領域の連続面での洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる。
【0008】
前述の課題を解決するための本発明の他の態様は水洗大便器である。他の態様の水洗大便器は、鉢状の汚物受け面を有する便鉢部と、前記便鉢部の上端側部分を形成するリム部と、前記便鉢部内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流を形成する吐水部と、を備え、前記リム部の内周面は、平面視において、第1範囲内の曲率半径の曲面状をなす第1面領域と、前記第1範囲の曲率半径より大きい曲率半径の曲面状をなす第2面領域と、を有し、前記第1面領域及び前記第2面領域のそれぞれには、前記便鉢部の上端内縁部から前記汚物受け面の外周端部までオーバーハング面が形成されることなく連続する連続面が設けられ、前記第2面領域の鉛直面に対する傾斜角度は、前記第1面領域の鉛直面に対する傾斜角度より緩やかである。
【0009】
この態様によれば、第1面領域と第2面領域とで傾斜角度を同じにする場合と比べ、第2面領域で遠心力を受けた洗浄水が広い上下範囲に届き易くなる。これに伴い、その第2面領域の連続面での洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の便器装置を機能ブロックと併せて示す説明図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)のそれぞれは、
図6のI-I、II-II、III-IIIの断面図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)のそれぞれは、
図6のIV-IV、V-Vの断面図である。
【
図9】第1実施形態の水洗大便器内での洗浄水の流れ方を示す図である。
【
図10】第1実施形態の水洗大便器を左上側の後方から見た図である。
【
図11】第1実施形態の水洗大便器の一部を左側から見た断面図である。
【
図15】第2実施形態の水洗大便器の一部を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1実施形態の水洗大便器10(以下、単に大便器10という)を用いた便器装置12の概要を説明する。
図1は、便器装置12を機能ブロックと併せて示す説明図である。
図1は、大便器10の平面図でもある。
図2は、
図1のA-A断面図であり、
図3は、
図1のB-B断面図である。
【0013】
以下、大便器10の前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zを用いて説明する。これら方向軸は直交座標系を構成し、大便器10に取り付けられる便座(不図示)に通常の姿勢で座る着座者の向きに対応する。前後方向X、左右方向Yは水平方向、上下方向Zは鉛直方向である。
【0014】
便器装置12は、大便器10の他に、大便器10に洗浄水を供給する洗浄水供給装置14を備える。洗浄水供給装置14は、たとえば、貯水タンクを用いて構成されるが、フラッシュバルブ等を用いて構成されてもよい。
【0015】
本実施形態の大便器10は洋風大便器である。本実施形態の大便器10は陶器を素材とするが、樹脂等を素材としてもよい。大便器10は、便鉢部16と、便鉢部16の底部に接続される便器排水路18と、を備える。大便器10の上面部には、局部洗浄装置等の機械装置(不図示)の一部が収まる凹部20が形成される。便器排水路18は、便鉢部16内から下水側水路に排出される汚物や水の通り道となる。
【0016】
便鉢部16は、汚物を受けるための鉢状の汚物受け面24と、便鉢部16の上端側部分を形成するリム部26とを有する。リム部26の内周面は、便鉢部16の上端内縁部16aから汚物受け面24の外周端部24aまでの範囲に設けられる。以下、便鉢部16の周方向、径方向を用いて説明する。「周方向」は、平面視において、便鉢部16の上端内縁部16aの中心Cp周りを回る方向をいい、「径方向」は、その中心Cpを通る鉛直線に直交する方向をいう。
【0017】
便鉢部16は、汚物受け面24の下端縁部24bから下方に窪む溜水部28を有する。溜水部28は、便鉢部16の底部を形成するとともに有底状をなす。溜水部28の底部には便器排水路18の入口18aが開口する。溜水部28には封水の一部となる溜水(不図示)が溜められる。
【0018】
図4は、大便器10の他の平面図である。リム部26の内周面は、平面視において、前端を含む前側領域30Fと、後端を含む後側領域30Bと、前側領域30Fと後側領域30Bを繋ぐ左右の中間領域30Sとを有する。前側領域30Fは、平面視において、第1範囲R1内の曲率半径の曲面状をなし、後側領域30Bは、第2範囲R2内の曲率半径の曲面状をなす。中間領域30Sは、第1範囲R1や第2範囲R2の曲率半径より大きい第3範囲R3内の曲率半径の曲面状をなす。たとえば、第1範囲R1は70mm~120mm、第2範囲R2は100mm~130mm、第3範囲R3は200mm~530mmである。このようにリム部26の内周面は、平面視において、前側領域30Fと後側領域30Bでの曲率半径が中間領域30Sでの曲率半径より小さいオーバル状をなす。なお、第1範囲R1と第2範囲R2は、第3範囲R3より小さい曲率半径であればよく、それらの間での大小関係は問わない。
【0019】
以下、便鉢部16を四つに区分して説明する。詳しくは、便鉢部16の左右両側に設けられる一対の側面部22R、22Lと、便鉢部16の前側に設けられる前面部22Fと、便鉢部16の後側に設けられる後面部22Bとに便鉢部16を区分する。一対の側面部22R、22Lには、左右一方側となる右側の右側面部22Rと、左右他方側となる左側の左側面部22Lとが含まれる。
【0020】
これらは、次の等分線Lb1~Lb3と左右中心線Lcにより区分される。等分線Lb1~Lb3には、平面視にて、便鉢部16の内面部分の最大前後寸法Laを四等分する三つの等分線Lb1~Lb3のうち、最も前側の前側等分線Lb1と、最も後側の後側等分線Lb3が含まれる。左右中心線Lcは、平面視にて、便鉢部16の内面部分の最大左右寸法を二等分する等分線をいう。等分線Lb1~Lb3は左右方向Yに沿って延び、左右中心線Lcは前後方向Xに沿って延びる。
【0021】
一対の側面部22R、22Lは、前側等分線Lb1と後側等分線Lb3の間にあり、前面部22Fは、前側等分線Lb1より前側にあり、後面部22Bは、後側等分線Lb3より後側にある。右側面部22Rは、左右中心線Lcより右側にあり、左側面部22Lは、左右中心線Lcより左側にある。
【0022】
図1~
図3を参照する。リム部26の内周面には開口部32が形成される。本実施形態の開口部32は便鉢部16の左右一方側の側面部(右側面部22R)のみに形成され、左右他方側の側面部(左側面部22L)や、前面部22F及び後面部22Bには形成されない。
【0023】
リム部26の内周面には、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうちの一方の面部22Xにおいて、便鉢部16の上端内縁部16aから汚物受け面24の外周端部24aまでオーバーハング面が形成されることなく連続する連続面40が設けられる。本明細書でのオーバーハング面とは、鉛直面に対する傾斜角度が60°以上となる下向きの面であって、吐水口44(後述する)とは異なる箇所に形成される面をいう。ここでの「一方の面部22X」とは、本実施形態では便鉢部16の前面部22Fをいう。この一方の面部22Xには、便鉢部16の前後方向Xの一端部16bとなる便鉢部16の前端部が設けられる。
【0024】
本実施形態の連続面40は、開口部32以外の箇所にて、便鉢部16の全周に亘る範囲でリム部26の内周面に設けられる。詳しくは、連続面40は、便鉢部16の前面部22F、後面部22B及び左側面部22Lの全部の周方向範囲に設けられる。連続面40は、開口部32以外の箇所にて、便鉢部16の右側面部22Rの全部の周方向範囲に設けられる。
【0025】
本実施形態の連続面40は、便鉢部16の上端内縁部16aから下方に向かうにつれて、徐々に径方向内側に延びるように設けられる。これにより、下方に向かう途中で径方向外側に延びる箇所が設けられる場合と比べ、連続面40に付いた汚れを目視により把握し易くなり、清掃作業の容易化を図れる。同様の観点から、連続面40は、便鉢部16の上端内縁部16aから実質的に鉛直下方に向かって延びるように設けられてもよい。この他にも、連続面40は、下方に向かうにつれて径方向内側に延びる部位と、実質的に鉛直下方に向かって延びる部位との組み合わせでもよい。本明細書での「実質的」とは、言及している条件を厳密に満たす場合に限らず、寸法公差や製造誤差等の誤差の分だけ位置がずれる場合も含まれる。
【0026】
大便器10は、便鉢部16内に洗浄水を吐き出すことによって旋回流Fa(後述の
図9参照)を形成する吐水部42を備える。吐水部42は、便鉢部16の開口部32を通して便鉢部16内に洗浄水を吐き出す。本実施形態の吐水部42は開口部32の奥側に設けられ、平面視にて外部に露出しない位置に設けられる。旋回流Faは、便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)に設けられる便鉢部16の前後方向Xの一端部16bを経由してから、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうち他方の面部に設けられる便鉢部16の他端部16cを経由する。本実施形態での他端部16cは便鉢部16の後端部である。
【0027】
大便器10は、
図2に示すように、便器排水路18の下流側に向けて洗浄水を吐き出すジェット吐水口41を備える。本実施形態のジェット吐水口41は大便器10に取り付けられるジェットノズル43の先端部に形成される。
【0028】
図5は、
図1の一部を示す平面断面図である。
図5(a)は、後述の
図6のC-C断面図、
図5(b)は、
図6のD-D断面図である。吐水部42は、リム部26の内周面に開口する吐水口44と、洗浄水供給装置14から供給された洗浄水を吐水口44に導く通水路46とを有する。本実施形態の吐水口44は、前方に向けて開放しており、便鉢部16内に旋回流Faの旋回方向Dtとなる周方向の一方側(
図5の紙面で反時計回り方向)に向けて洗浄水を吐き出す。
【0029】
図6は、
図2の一部の拡大図である。
図7(a)~
図7(c)のそれぞれは、
図6のI-I、II-II、III-IIIの断面図である。
図8(a)、
図8(b)のそれぞれは、
図6のIV-IV、V-Vの断面図である。
【0030】
図5~
図8に示すように、大便器10は、吐水部42が吐き出す洗浄水を旋回方向Dtに導く導水路48を備える。導水路48は、洗浄水を受ける棚面50とリム部26の内周面とが構成する。棚面50は、汚物受け面24の外周側部分に設けられる。本実施形態の棚面50は、棚面50の内周端部を構成する凸曲面部52と、その凸曲面部52より外周側に設けられる平坦面部54と、棚面50の外周端部を構成する曲面部58とを有する。棚面50は、その凸曲面部52を介して棚面50より下方に位置する汚物受け面24の凹曲面部56に連なる。平坦面部54の鉛直断面は、その凹曲面部56の上端部より緩やかな勾配となるように形成される。
【0031】
本実施形態の棚面50は、
図1に示すように、便鉢部16の後面部22Bから一対の側面部22R、22Lのそれぞれを介して前面部22Fまでの範囲で連続するように形成される。本実施形態の棚面50は、一対の側面部22R、22Lや後面部22Bにて周方向の全範囲に亘り形成され、前面部22Fにて周方向の一部の範囲で形成される。
【0032】
図5~
図8に示すように、本実施形態の導水路48の一部は、平面視において、吐水口44から旋回流Faの旋回方向Dtに延びるとともに、開口部32を通り抜けるように形成される。本実施形態の棚面50は、吐水口44の底面に滑らかに連なるように形成される。
【0033】
曲面部58は、導水路48の下側内隅部を構成するとともに凹曲面状をなす。曲面部58は、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって順に、第1定区間60、増加区間62、第2定区間64、減少区間66、第3定区間68を有する。曲面部58は、第1定区間60から第3定区間68までの範囲で鉛直断面での曲率半径が滑らかに変化するように設けられる。これは、この範囲で曲率半径が急激に変化して段差部が形成されないことを意味する。
【0034】
第1定区間60は、吐水口44に連なり、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって、第1曲率半径Raで実質的に一定の曲率半径に形成される。
【0035】
増加区間62は、第1定区間60に連なり、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって、第1曲率半径Raから第2曲率半径Rbに曲率半径が連続的に増加するように形成される。
【0036】
第2定区間64は、増加区間62と減少区間66を連ね、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって、第2曲率半径Rbで実質的に一定の曲率半径に形成される。
【0037】
減少区間66は、第3定区間68に連なり、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって、第2曲率半径Rbから第3曲率半径Rcに曲率半径が連続的に減少するように形成される。
【0038】
第3定区間68は、旋回流Faの旋回方向Dtに向かって、第3曲率変形Rcで実質的に一定の曲率半径に形成される。第3曲率半径Rcは、第3定区間68と左右対称の位置に設けられる曲面部58の一部58a(
図1参照)と実質的に同じ曲率半径に設定される。
【0039】
図5に示すように、増加区間62は、吐水部42から便鉢部16の前後方向Xの一端部16b(前端部)に至る洗浄水経路70(
図1参照)上に設けられる上方誘導部72を構成する。ここでの洗浄水経路70とは、吐水部42から吐き出された洗浄水が便鉢部16内を伝う経路をいう。この上方誘導部72は、詳細を後述するように、吐水部42が吐き出す洗浄水の少なくとも一部を上方に誘導する。
【0040】
増加区間62は、便鉢部16の側面部22Rに設けられる内方誘導部74を構成する。この内方誘導部74は、詳細を後述するように、自らと衝突した洗浄水の一部を径方向内側に誘導する。
【0041】
本実施形態の増加区間62の少なくとも一部は、平面視において、開口部32の奥側かつ吐水口44の外側にて、吐水口44から延びる吐水口44の中心線Ldと交わる位置に設けられる。本実施形態の増加区間62は、便鉢部16の一対の側面部22R、22Lのうち、便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)に対して旋回方向Dtとは周方向の反対側(時計回り方向)に隣り合う便鉢部16の側面部22Rに設けられる。増加区間62は、吐水部42の吐水口44より下流側にて吐水口44の近傍に設けられる。ここでの「近傍」とは、吐水口44から20mm以内の範囲をいう。ここで説明した条件は、前述の上方誘導部72や内方誘導部74も同様に満たす。
【0042】
以上の便器装置12による洗浄方法を説明する。本実施形態の便器装置12は、水の落差を用いて汚物を押し流す洗い落とし式の洗浄方式によって汚物を排出する。洗浄水供給装置14は、所定の洗浄開始条件を満たすと、所定の水量の洗浄水を吐水部42に供給する。洗浄開始条件は、たとえば、レバー等の操作部材、または、リモートコントローラ、スマートフォン等の電気機器によって洗浄水供給装置14が洗浄開始操作を受けることである。
【0043】
図9は、洗浄水の流れ方を示す図である。本図では、洗浄水の流れ方向に矢印を付して示す。吐水部42は、洗浄水供給装置14から供給された洗浄水を便鉢部16内に吐き出す。吐水部42から吐き出された洗浄水は、便鉢部16内を旋回する旋回流Faを形成する。旋回流Faは、便鉢部16の前面部22F、左側面部22L及び後面部22Bを経由して右側面部22Rを前方に向かうように形成される。旋回流Faは、便鉢部16の側面部22R、22Lや後面部22Bを経由するときに、棚面50を伝うように形成される。旋回流Faは主流として形成される。本明細書での「主流」とは、洗浄水の一部が部分的に集まった状態で流れるすじ状の流れをいう。旋回流Faを形成する洗浄水の一部は便鉢部16内を旋回する途中に徐々に分流Fbに分かれ、その分流Fbは便鉢部16の底側に向けて流れ落ちる。
【0044】
便鉢部16の底部側に向かう水流Fb、Fg(水流Fgは後述する)は、便器排水路18の入口18aに汚物を押し込むような流れとなる。このような水流Fb、Fgによって、便鉢部16内の汚物が便器排水路18を通して排出される。
【0045】
図2を参照する。ジェット吐水口41は、洗浄水供給装置14から供給された洗浄水を便器排水路13内で下流側に向けて吐き出す。本実施形態のジェット吐水口41は、便器排水路18内で洗浄水が下流側に向けて流れている途中に洗浄水を吐き出す。ジェット吐水口41から吐き出された洗浄水は、便器排水路18内を下流側に向かう流れの水勢を増幅させる。
【0046】
図10、
図11は、洗浄水の流れ方を模式的に示す図である。
図10は、大便器10を左上側の後方から見た図であり、
図11は、大便器10の一部を左側から見た断面図である。
図10では、説明の便宜のため、
図1の左右中心線Lcが通る箇所に線Lc’を付す。また、
図10では、リム部26の内周面を伝う過程で洗浄水が届く領域の上辺に線Leを付す。
【0047】
吐水部42から吐き出された洗浄水の少なくとも一部は、上方誘導部72(導水路48の増加区間62)との衝突により上方に誘導されて第1誘導流Fcを形成する。このように上方誘導部72(導水路48の増加区間62)は、遠心力を用いることなく、洗浄水の少なくとも一部を上方に誘導する。第1誘導流Fcは、前述の旋回流Faの一部として形成される。本実施形態の第1誘導流Fcは、増加区間62により誘導されることで、汚物受け面24から離れるように跳ね上げられる。第1誘導流Fcは、前述の洗浄水経路70上において、リム部26の内周面を旋回方向Dtに伝いつつ、上向きに流れてから自重により下向きに流れるように形成される。本実施形態の第1誘導流Fcは、前述の洗浄水経路70で開口部32の外側にて最高点Phに達するように形成される。
【0048】
吐水部42から吐き出された洗浄水の一部は、内方誘導部74(導水路48の増加区間62)と衝突して拡散することによって、便鉢部16の径方向内側に誘導されて第2誘導流Fdを形成する。第2誘導流Fdは、棚面50から凹曲面部56に流れ落ちるように形成される。第2誘導流Fdは、便鉢部16内に形成される旋回流Faと合流する。これらの合流箇所Sa(
図9も参照)は、平面視にて、リム部26の内周面より径方向内側、つまり、オーバーハング面がない箇所となる。
【0049】
吐水部42から吐き出された洗浄水の一部は、導水路48の増加区間62(上方誘導部72及び内方誘導部74)により上方や径方向内側に誘導されることなく直進する直進流Feを形成する。直進流Feは、前述の旋回流Faの一部として形成される。本実施形態では、吐水部42から吐き出された洗浄水の一部が第1誘導流Fcを形成し、洗浄水の更に一部が第2誘導流Fdを形成し、洗浄水の残部が直進流Feを形成する。直進流Feは、前述の洗浄水経路70上にてリム部26の内周面を旋回方向Dtに伝わる。
【0050】
第1誘導流Fcや直進流Feは、前述の洗浄水経路70上にて便鉢部16の一端部16b(前端部)に向けて流れる。この経路を流れる過程で、直進流Feは、遠心力を受けて上向きの速度成分が付与されることで上向きに流れようとする。第1誘導流Fcは、下向きに流れる過程で、この上向きに流れようとする他の水流(直進流Fe)と合流することで、その上向きの流れを妨げようとする。第1誘導流Fcは、直進流Feと合流することで、直進流Feの上向きの速度成分の少なくとも一部を相殺することになる。これらの合流箇所の少なくとも一部は前述の洗浄水経路70上となる。第1誘導流Feは、他の水流(直進流Fe)と合流しつつ、その合流した他の水流とともに一方の面部22X(前面部22F)を伝う過程で遠心力により上向きに流れる。この後、第1誘導流Feは、便鉢部16の前後方向Xの一端部16bより旋回方向Dtにて、その合流した他の水流とともに下向きに流れて棚面50により受けられ、その棚面50上を旋回方向Dtに伝わる。
【0051】
第1誘導流Fcや直進流Feを形成する洗浄水は、前述の旋回流Faの一部として便鉢部16内を旋回したうえで、便鉢部16の右側面部22Rを前方に向かうように流れる。前述の第2誘導流Fdは、このように便鉢部16の右側面部22Rを前方に向かう旋回流Faと合流する。このように、第2誘導流Fdと合流する旋回流Faは、内方誘導部74により径方向内側に誘導されることなく流れた洗浄水の一部が形成する。旋回流Faと合流した第2誘導流Fdは、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうち、便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)にて、汚物受け面24の棚面50より下方で凹曲面部56の一部56aを経由しつつ、便鉢部16の溜水部28に向けて流れ落ちる水流Fgを形成する(
図9も参照)。
【0052】
本実施形態の大便器10は、以上の洗浄水の流れが形成されるように構成される。このように構成するうえで、大便器10の便鉢部16の形状、吐水部42から吐き出される洗浄水の流量、洗浄水を吐き出す方向等が定められる。洗浄水の流量は、たとえば、吐水部42の吐水口44や通水路46の断面形状に応じて定められる。ここでの「便鉢部16の形状」には、本実施形態では、前述の導水路48の増加区間62(上方誘導部72及び内方誘導部74)が含まれる。
【0053】
以上の大便器10の効果を説明する。大便器10は、洗浄水を上方に誘導する上方誘導部72を備える。よって、前述の洗浄水経路70上において、上方誘導部72により上方に誘導してから自重により下方に向かう第1誘導流Fcを形成できる。このため、このような第1誘導流Fcが形成されない場合と比べ、便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)を伝う水流の上向きの速度成分を低減できる。これに伴い、その一方の面部22X(前面部22F)からの洗浄水の飛び出しを抑制できる。
【0054】
第1誘導流Fcは、下向きに流れる過程で他の水流(直進流Fe)と合流しつつ、その他の水流とともに一方の面部22X(前面部F)を伝う過程で遠心力により上向きに流れる。よって、第1誘導流Fcが他の水流と合流しつつ上向きに流れない場合より、一方の面部22Xでの洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる。
【0055】
内方誘導部74により誘導された洗浄水は、平面視にてリム部26の内周面より径方向内側において、便鉢部16内に形成される旋回流Faと合流する。よって、内方誘導部74により誘導された洗浄水と旋回流Faが合流して水勢を増幅することで、便鉢部16の洗浄能力を増大できる。
【0056】
内方誘導部74は、洗浄水の一部を径方向内側に誘導するため、その洗浄水の全てを誘導する場合と比べ、旋回流Faと合流する洗浄水(第2誘導流Fd)の流量を低減でき、その旋回流Faとの合流により生じる飛沫を抑制できる。よって、オーバーハング面が形成されない箇所にて、内方誘導部74により誘導された洗浄水と旋回流Faが合流したとしても、その飛沫の便鉢部16外への飛び出しを抑制できる。
【0057】
内方誘導部74により形成される第2誘導流Fdと合流する旋回流Faは、吐水部42が吐き出した洗浄水の一部が形成する。よって、この旋回流Faを形成するために他の吐水部42を設けずともよくなる。これに伴い、大便器10に要する吐水部42の数を抑えられ、その分、良好な意匠性を得られる。
【0058】
内方誘導部74は、吐水部42の吐水口44より下流側にて吐水口44の近傍に設けられる。よって、吐水口44より下流側にて吐水口44から遠い箇所に内方誘導部74を設ける場合と比べ、第2誘導流Fdと旋回流Faの合流箇所を吐水口44に近づけられ、その分、第2誘導流Fdと合流するまでの間の旋回流Faの便鉢部16内での旋回距離を短くできる。かりに、便鉢部16内に供給される洗浄水の流量が少ない場合、第2誘導流Fdと旋回流Faの合流箇所が吐水口44から旋回流Faの旋回方向Dtに遠ざかるほど、旋回流Faの水勢が弱くなり、洗浄水により十分に洗浄できない領域が生じ易くなる。この点、本実施形態によれば、洗浄水の流量が少ない場合でも、便鉢部16内の広い範囲を洗浄できる。
【0059】
(A)吐水部42は、便鉢部16の側面部22Rに形成される開口部32を通して便鉢部16内に洗浄水を吐き出す。よって、便鉢部16の後面部22Bに開口部32を形成する場合と比べ、大便器10を正面側から見たときに、その開口部32を視認し難くなり、良好な意匠性を得られる。また、便鉢部16の後面部22Bに開口部32を形成する場合と比べ、大便器10の正面側から開口部32に手が届きやすくなり、良好な清掃性を得られる。
【0060】
洗浄水の飛び出しを抑制するため、便鉢部16の前面部22Fや後面部22Bに開口部32を形成する手段も考えられる。これにより、吐水部42から一方の面部22Aまでの旋回流Faの旋回距離を長くでき、その旋回流Faの水勢を弱めることで、その洗浄水の飛び出しを抑制できる。本実施形態によれば、このような手段を採ることなく、洗浄水の飛び出しを抑制できる。
【0061】
リム部26の内周面には、一方の面部22X(前面部22F)において、オーバーハング面のない連続面40が設けられる。よって、一方の面部22Xにオーバーハング面がなくとも、その連続面40を伝う洗浄水の飛び出しを抑制できる。
【0062】
リム部26の内周面には、開口部32以外の箇所にて、便鉢部16の全周に亘る範囲で連続面40が設けられる。よって、便鉢部16の周方向の広い範囲にて、拭き掃除で手の届き難いオーバーハング面が設けられないため、リム部26の内周面を拭き易くなる。
【0063】
上方誘導部72は、導水路48の曲面部58の増加区間62が構成する。よって、導水路48の底面(棚面50)に広範囲で凹凸を形成することなく上方誘導部72を構成でき、良好な意匠性を得られる。
【0064】
内方誘導部74は、導水路48の曲面部58の増加区間62が構成する。よって、導水路48の底面(棚面50)に広範囲で凹凸を形成することなく内方誘導部74を構成でき、良好な意匠性を得られる。
【0065】
曲面部58は、増加区間62より旋回流Faの旋回方向Dtに設けられる減少区間66を有する。よって、増加区間62より旋回方向Dtに設けられ、増加区間62の最大曲率半径より曲率半径の小さい他の区間(第3定区間68)と増加区間62とを減少区間66を介して滑らかに繋げられる。これに伴い、導水路48の曲面部58に増加区間62がある場合に、増加区間62と他の区間の間で目立つような段差面が形成されず、良好な意匠性を得られる。
【0066】
曲面部58は、増加区間62と減少区間66を連ねる第2定区間64を有する。よって、増加区間62と減少区間66により目立つような凸部が形成されず、良好な意匠性を得られる。
【0067】
次に、他の特徴を説明する。
図4を参照する。リム部26の内周面には、前側領域30Fと中間領域30Sの境界となる第1曲率変化点30aと、後側領域30Bと中間領域30Sの境界となる第2曲率変化点30bとが設けられる。
【0068】
図10を参照する。第1誘導流Fcの最高点Phは、リム部26の前側領域30Fと後側領域Bのうち、便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)に設けられる領域(前側領域30F)と、中間領域30Sの境界にある曲率変化点30aの近傍に設けられると好ましい。詳しくは、第1誘導流Fcの最高点Phは、平面視において、曲率変化点30aから前後方向Xで上流側(本例では前後方向Xの後側)に30mm、前後方向Xで下流側(本例では前後方向Xの前側)に15mmの範囲内にあるとより好ましい。これは、本発明者の実験的な知見に基づき設定している。これにより、曲率半径の小さい領域30Fを伝うことで大きい遠心力を受け始める前に第1誘導流Fcを下向きに流し易くなる。これに伴い、強い下向きの勢いを持って直進流Feと合流させ易くなり、その直進流Feや第1誘導流Fcを形成する洗浄水が便鉢部16の一方の面部22X(前面部22F)を流れるとき、洗浄水の飛び出しの抑制を効果的に図れる。
【0069】
図6~
図8に示すように、便鉢部16には、開口部32の奥側かつ吐水口44の外側にオーバーハング面76が設けられる。オーバーハング面76は、開口部32の上縁部を形成する。オーバーハング面76は、リム部26の内周面にて、その上側に向かう途中で径方向内側に延びるように設けられる。オーバーハング面76は、前述の洗浄水経路70上において、吐水部42から旋回方向Dtに向かう一部の範囲に設けられる。本実施形態の便鉢部16には開口部32の奥側にのみオーバーハング面76が設けられ、その外側ではオーバーハング面76が設けられない。
【0070】
オーバーハング面76は、吐水部42から旋回方向Dtに向かうにつれて連続的に上向きに延びるように水平面に対して傾斜している。オーバーハング面76は、吐水部42から旋回方向Dtに向かうにつれて径寸法が小さくなるように形成される。オーバーハング面76は、上方誘導部72により形成される前述の第1誘導流Fcに上方から接触する位置に設けられる。
【0071】
これにより、洗浄水供給装置14からの洗浄水供給量が急激に増大してしまい、上方誘導部72により洗浄水が大きく上昇しようとした場合でも、オーバーハング面76により洗浄水の上昇を規制できる。これに伴い、洗浄水が便鉢部16の外部に飛び出す事態を避けられる。また、上方誘導部72により上方に誘導された洗浄水によりオーバーハング面76を洗浄できる利点もある。
【0072】
本実施形態のリム部26の内周面には、開口部32を形成するとともに開口部32より上方に設けられる上方面部78が設けられる。上方面部78は、オーバーハング面が形成されることなく、便鉢部16の上端内縁部16aから開口部32の上縁部まで連続している。上方面部78は、上方面部78と周方向両側に隣接するリム部26の内周面の一部分26aと滑らかに連なっている。ここでの滑らかに連なるとは、言及している二つの対象の間で凹凸が形成されることなく連なることをいう。
【0073】
図5を参照する。吐水部42の底面42aには、吐水口44より奥側から吐水口44にかけての範囲において、吐水口44に向かうにつれて下り傾斜となる勾配が設けられる。これにより、吐水部42の内部に残水が貯まり難くなり、良好な衛生性を得られる。
【0074】
(第2の工夫点)
図12は、
図1のE-E断面図であり、
図13は、
図1のF-F断面図である。
図2~
図4、
図12、
図13に示すように、リム部26の内周面は、便鉢部16の側面部22R、22Lに設けられる第1面領域90と、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうちの少なくとも一方に設けられる第2面領域92、94とを有する。第2面領域92、4の鉛直面Pvに対する傾斜角度θbは、第1面領域90より鉛直面Pvに対する傾斜角度θaより緩やかである。ここでの鉛直面Pvに対する傾斜角度とは、便鉢部16の中心Cpを通る鉛直断面での鉛直面Pvに対する鋭角での傾斜角度をいう。以下、説明の便宜から、第1面領域90を急斜面領域90といい、第2面領域92、94を緩斜面領域92、94という。
【0075】
緩斜面領域92、94には、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうちの一方の面部22Xとなる前面部22Fに設けられる前側緩斜面領域92(一方側緩斜面領域)と、それらのうちの他方の面部となる後面部22Bに設けられる後側緩斜面領域94(他方側緩斜面領域)とが含まれる。
【0076】
急斜面領域90は、便鉢部16の前後方向Xでの中間部を含む周方向範囲に設けられる。前側緩斜面領域92は、便鉢部16の一端部16b(前端部)を含む周方向範囲に設けられ、後側緩斜面領域94は、便鉢部16の前後方向Xの他端部16c(後端部)を含む周方向範囲に設けられる。前側緩斜面領域92は便鉢部16の前面部22Fの少なくとも大部分に設けられ、後側緩斜面領域94は便鉢部16の後面部22Bの少なくとも大部分に設けられる。本実施形態の前側緩斜面領域92は便鉢部16の前面部22Fの全域に設けられる。
【0077】
急斜面領域90と前側緩斜面領域92の境界となる前側境界部96は、側面視において、便鉢部16の前面部22Fと側面部22R、22Lの何れかにて、それらの境界寄りの端部に設けられる。本実施形態の前側境界部96は、側面部22R、22Lの前面部22F寄りの端部に設けられる。
【0078】
急斜面領域90と後側緩斜面領域94の境界となる後側境界部98は、側面視において、便鉢部16の側面部22R、22Lと後面部22Bの何れかにて、それらの境界寄りの端部に設けられる。本実施形態の後側境界部98は、後面部22Bの側面部22R、22L寄りの端部に設けられる。
【0079】
急斜面領域90には前述の開口部32が形成される。詳しくは、便鉢部16の右側面部22Rに設けられる急斜面領域90に開口部32が形成され、その左側面部22Lに設けられる急斜面領域90には開口部32が形成されない。また、緩斜面領域92、94には開口部32は形成されない。
【0080】
図12に示すように、前側緩斜面領域92は、便鉢部16の一端部16b(前端部)に設けられる第1最傾斜部92aと、第1最傾斜部92aと前側境界部96の間に設けられる第1角度変化部92bとを有する。第1最傾斜部92aは、前側緩斜面領域92のなかで傾斜角度が最も大きくなり、その周方向の全範囲で実質的に一定の傾斜角度となる。第1角度変化部92bは、前側境界部96から便鉢部16の一端部16b(前端部)に近づくにつれて、第1最傾斜部92aの傾斜角度に近づくように連続的に傾斜角度が変化する。
【0081】
図13に示すように、後側緩斜面領域94は、便鉢部16の他端部16c(後端部)に設けられる第2最傾斜部94aと、第2最傾斜部94aと、後側境界部98の間に設けられる第2角度変化部94bとを有する。第2最傾斜部94aは、後側緩斜面領域94のなかで傾斜角度が最も大きくなり、その周方向の全範囲で実質的に一定の傾斜角度となる。第2角度変化部94bは、後側境界部98から便鉢部16の他端部16c(後端部)に近づくにつれて、第2最傾斜部94aの傾斜角度に近づくように連続的に傾斜角度が変化する。
【0082】
急斜面領域90及び緩斜面領域92、94には前述の連続面40が設けられる。右側面部22Rに設けられる急斜面領域90には、開口部32以外の箇所にて、その全部の周方向範囲に連続面40が設けられる。左側面部22Lに設けられる急斜面領域90や、緩斜面領域92、94には、その全部の周方向範囲に連続面40が設けられる。
【0083】
本実施形態において、急斜面領域90は前述の中間領域30S、前側緩斜面領域92は前側領域30F、後側緩斜面領域94は後側領域30Rが構成する。急斜面領域90は、平面視において、第3範囲R3内の曲率半径の曲面状をなし、緩斜面領域92、94は、第3範囲R3の曲率半径より小さい曲率半径の曲面状をなすことになる。
【0084】
以上の工夫点による効果を説明する。
図14は、洗浄水Wに作用する遠心力Faの説明図である。本図では、リム部26の内周面の法線方向に沿った第1分力Fa1と、その内周面の面内方向に沿った第2分力Fa2とに分けて遠心力Faを示す。
【0085】
洗浄水にはリム部26の内周面に沿って流れるときに遠心力Faが作用する。この遠心力Faの第2分力Fa2の成分(=Fa×sinθ)は、リム部26の内周面の傾斜角度θが大きくなるほど増大する。これは、リム部26の内周面の傾斜角度θが大きくなるほど、洗浄水が遠心力Faを受けて広い上下範囲に届き易くなることを意味している。ここでの上下範囲とは、上下方向Zでの範囲をいう。
【0086】
本実施形態の緩斜面領域92、94の傾斜角度θbは、急斜面領域90の傾斜角度θaより緩やかである。よって、急斜面領域90と緩斜面領域92、94とで傾斜角度を同じにする場合と比べ、便鉢部16の前面部22F又は後面部22Bに設けられた緩斜面領域92、94で遠心力を受けた洗浄水が広い上下範囲に届き易くなる。これに伴い、緩斜面領域92、94の連続面40での洗浄範囲を上下方向に広範囲化できる。
【0087】
このように上下方向での洗浄範囲を広くするために、この他にも、平面視でのリム部26の内周面の曲率半径を小さくする手段が考えられる。本実施形態によれば、このような手段をとる場合と比べ、便鉢部16の輪郭を大きく変えずに済む利点がある。
【0088】
特に、小便により汚れ易い便鉢部16の前面部22Fに設けられた連続面40での洗浄範囲を広範囲化できる。また、拭き掃除し難い便鉢部16の後面部22Bに設けられた連続面40での洗浄範囲を広範囲化できる。
【0089】
吐水部42は、急斜面領域90に形成される開口部32を通して便鉢部16内に洗浄水を吐き出す。よって、緩斜面領域92、94に開口部32を形成するよりも、平面視において開口部32が目立ち難くなり、良好な意匠性を得られる。また、この他にも、前述した(A)の効果も得られる。
【0090】
他の特徴を説明する。
図4を参照する。棚面50は、便鉢部16の前面部22F(一方の面部22X)や後面部22B(他方の面部)に設けられる便鉢部16の前端又は後端より旋回方向Dtにて前側緩斜面領域92に接続される。詳しくは、棚面50は、便鉢部16の前端より旋回方向Dtにて前側緩斜面領域92に接続され、便鉢部16の後端より旋回方向Dtにて後側緩斜面領域94に接続される。
【0091】
これにより、前側緩斜面領域92や後側緩斜面領域94を経由する過程で遠心力を受けて上昇してから下降する洗浄水を棚面50で受け易くなる。これに伴い、前側緩斜面領域92や後側緩斜面領域94を経由した洗浄水の多くを導水路48により遠くまで届かせられる。
【0092】
なお、棚面50は、便鉢部16の前面部22Fにおいて、その便鉢部16の前端より旋回流Faの旋回方向Dtとは反対側にて、前側緩斜面領域92に接続される。また、棚面50は、便鉢部16の後面部22Bにおいて、その全域において後側緩斜面領域94に接続される。
【0093】
汚物受け面24の凹曲面部56の一部は、便鉢部16の前面部22Fに設けられる。凹曲面部56は、少なくとも便鉢部16の左右中央部16dにおいて、汚物受け面24の下端縁部24bから汚物受け面24の外周端部24aまで連続する。凹曲面部56は、便鉢部16の左右中央部16dにおいて、棚面50を介さずに前側緩斜面領域92に連なることになる。棚面50は、便鉢部16の前面部22Fにて便鉢部16の左右中央部16dには設けられないとも捉えられる。
【0094】
かりに、便鉢部16の前面部22Fにて左右中央部16dに凸曲面状の棚面50の内周端部50a(凸曲面部52)が設けられると、その内周端部50aに小便が当たったときに飛沫が生じ易くなる。この点、本実施形態によれば、その左右中央部16dに凸曲面状の棚面50の内周端部が設けられない構造となるため、小便の飛沫を抑制できる。
【0095】
図1を参照する。便鉢部16は、前述の開口部32や開口部32の奥側部分を除く範囲において、実質的に左右対称の位置に設けられる。汚物受け面24は、棚面50の内周端部50aから汚物受け面24の下端縁部24bまでの範囲において、実質的に左右対称の位置に設けられるとも捉えられる。また、棚面50の内周端部50aは実質的に左右対称の位置に設けられるとも捉えられる。また、リム部26の内周面は、前述の開口部32を除く範囲において、実質的に左右対称の位置に設けられるとも捉えられる。
【0096】
大便器10でエッジとなる箇所は目視により位置を把握し易い。本実施形態では、このようなエッジとなる棚面50の内周端部50aが左右対称の位置に設けられる。よって、製造誤差等に起因して棚面50等の形状が左右で非対称となった場合、そのことを目視により判別し易くなり、検品作業の容易化を図れる。
【0097】
(第2の実施の形態)
図15は、第2実施形態の大便器10の一部を示す側面断面図である。第1実施形態の大便器10は、前側緩斜面領域92及び後側緩斜面領域94の傾斜角度θbが実質的に同じである。これに対して、本実施形態の大便器10は、前側緩斜面領域92及び後側緩斜面領域94の傾斜角度θbが異なる。詳しくは、後側緩斜面領域94は、前側緩斜面領域92より鉛直面に対する傾斜角度θbが緩やかとなる。本実施形態では、後側緩斜面領域94の第2最傾斜部94aの全域での傾斜角度が、前側緩斜面領域92の第1最傾斜部92aの傾斜角度より緩やかとなる。この理由を説明する。
【0098】
前述の通り、吐水部42が吐き出す洗浄水により形成される旋回流は、前側緩斜面領域92(一方側第2面領域)を経由してから後側緩斜面領域94(他方側第2面領域)を経由する。このため、後側緩斜面領域94を経由するとき、前側緩斜面領域92を経由するときより旋回流の水勢が弱くなり、遠心力を受けて広い上下範囲に届き難くなる。
【0099】
(B)この点、本実施形態によれば、弱い水勢の旋回流が後側緩斜面領域94を経由するときでも、その後側緩斜面領域94の広い上下範囲に洗浄水を届かせ易くできる。特に、このような目的を果たすため、吐水部42から吐き出される洗浄水を大流量化せずともよくなり、その大流量化に伴い前側緩斜面領域92から洗浄水が飛び出す事態を避けられる。
【0100】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。次に、各構成要素の変形例を説明する。
【0101】
便器装置12は、洗い落とし式以外の他の洗浄方式を用いて洗浄してもよい。この洗浄方式とは、たとえば、サイホン式等である。
【0102】
便鉢部16の開口部32は、側面部22R、22Lの他に、前面部22Fや後面部22Bに形成されていてもよい。開口部32は、急斜面領域90の他に、緩斜面領域92、94に形成されていてもよい。開口部32は便鉢部16に複数形成されていてもよい。
【0103】
便鉢部16の棚面50等は、実質的に左右対称の位置に設けられていなくともよい。
【0104】
リム部26の内周面には全周に亘る範囲でオーバーハング面が形成されていてもよい。リム部26の内周面では、便鉢部16の全周に亘る部位で傾斜角度を実質的に同じとしてもよい。
【0105】
連続面40は、前述のオーバーハング面が形成されていなければよい。この条件を満たすのであれば、連続面40は、少なくとも一部において、便鉢部16の上端内縁部16aから下方に向かうにつれて、徐々に径方向外側に延びるように設けられていてもよい。
【0106】
吐水部42の吐水口44は、リム部26の開口部32の奥側に形成される例を説明したが、その開口部32が吐水口44を構成していてもよい。この場合、リム部26の内周面にはオーバーハング面76が設けられていなくともよい。吐水部42により形成される旋回流Faの旋回方向Dtは時計回り方向でもよい。
【0107】
吐水部42により形成される旋回流Faが先に経由する便鉢部16の前後方向Xの一端部16bを便鉢部16の後端部とし、その旋回流Faが後で経由する便鉢部16の他端部16cを便鉢部16の前端部としてもよい。この場合、便鉢部16の一端部16bが設けられる一方の面部22Xは便鉢部16の後面部22Bとなり、便鉢部16の他端部16cが設けられる他方の面部は便鉢部16の前面部22Fとなる。
【0108】
実施形態のように、旋回流Faが先に経由する便鉢部16の一端部が便鉢部16の前端部であり、その便鉢部16の一端部が設けられる一方の面部22Xが便鉢部16の前面部22Fである場合を考える。この場合、吐水部42は、たとえば、便鉢部16の前面部22F(一方の面部22X)に対して旋回方向Dtとは周方向の反対側に隣り合う側面部22Rや、その側面部22Rに隣り合う後面部22Bに設けられていればよい。
【0109】
旋回流Faが先に経由する便鉢部16の一端部が便鉢部16の後端部であり、その便鉢部16の一端部が設けられる一方の面部22Xが便鉢部16の後面部22Bである場合を考える。この場合、吐水部42は、たとえば、便鉢部16の後面部22B(一方の面部22X)に対して旋回方向Dtとは周方向の反対側に隣り合う側面部22Lや、その側面部22Lに隣り合う前面部22Fに設けられていればよい。
【0110】
(第1の工夫点)
上方誘導部72は、導水路48の増加区間62が構成する例を説明したが、その具体例は特に限定されない。上方誘導部72は、たとえば、吐水部42の通水路46の底面や導水路48の棚面50に形成される凸部でもよい。この他にも、それらに形成されるとともに旋回方向Dtに向かって上り勾配となる傾斜面でもよい。
【0111】
上方誘導部72は、吐水部42が吐き出した洗浄水の一部を上方に誘導する例を説明したが、その全部を上方に誘導してもよい。
【0112】
内方誘導部74は、導水路48の増加区間62が構成する例を説明したが、その具体例は特に限定されない。内方誘導部74は、たとえば、導水路48の棚面50に形成される凸部でもよい。
【0113】
上方誘導部72や内方誘導部74は、吐水口44の近傍とは異なる箇所に設けられてもよい。
【0114】
上方誘導部72と内方誘導部74のそれぞれは導水路48の同じ部位(増加区間62)が構成する例を説明したが、互いに別々の部位が構成してもよいし、いずれか一方がなくともよい。
【0115】
導水路48の増加区間62は、吐水部42の外側に形成される例を説明したが、吐水部42の内側に形成されてもよい。
【0116】
導水路48の増加区間62と他の区間68は減少区間66を介さずに段差面を介して繋がっていてもよい。
【0117】
水洗大便器10は、前述の第1誘導流Fcを形成するように構成されるうえで上方誘導部72を備える例を説明したが、その上方誘導部72を備えていなくともよい。
【0118】
(第2の工夫点)
第1面領域90は、鉛直面に対して傾斜した急斜面領域が構成する例を説明したが、鉛直面に対して実質的に平行な鉛直面領域が構成していてもよい。
【0119】
緩斜面領域92、94は、便鉢部16の前面部22F及び後面部22Bのうちの一方にのみ設けられていてもよい。
【0120】
旋回流Faが後側緩斜面領域94を経由してから前側緩斜面領域92を経由する場合を考える。この場合、前述の(B)の効果を得るうえでは、後側緩斜面領域94より前側緩斜面領域92の傾斜角度θbが緩やかであればよい。
【0121】
第1面領域90は、便鉢部16の側面部22Rに設けられ、第2面領域92、94は、便鉢部16の前面部22F、後面部22Bに設けられる例を説明した。この他にも、平面視において、第1面領域90を第3範囲内の曲率半径の曲面状とし、第2面領域92、94を第3範囲の曲率半径より小さい曲率半径の曲面状とし、これらを便鉢部16の前面部22等と無関係の位置に設けてもよい。これは、たとえば、平面視において、リム部26の内周面が矩形状を呈しており、その矩形の四辺の辺部が曲面状の第1面領域90となり、その四辺の角部が曲面状の第2面領域92、94となる場合を想定している。
【0122】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0123】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0124】
第2態様の水洗大便器は、第1態様において、前記吐水部は、前記第1面領域に形成される開口部を通して前記便鉢部内に洗浄水を吐き出してもよい。この態様によれば、第2面領域に開口部を形成するよりも、平面視において開口部が目立ち難くなり、良好な意匠性を得られる。
【0125】
第3態様の水洗大便器は、第2態様において、前記リム部の内周面には、前記開口部以外の箇所にて、前記便鉢部の全周に亘る範囲で前記連続面が設けられてもよい。この態様によれば、便鉢部の周方向の広い範囲にて、拭き掃除で手の届き難いオーバーハング面が設けられないため、リム部の内周面を拭き易くなる。
【0126】
第4態様の水洗大便器は、第1から第3態様のいずれかにおいて、前記第2面領域には、前記一方の面部に設けられる一方側第2面領域と、前記便鉢部の前面部及び後面部のうちの他方の面部に設けられる他方側第2面領域と、が含まれてもよい。この態様によれば、小便により汚れ易い便鉢部の前面部での洗浄範囲を広範囲化できる。また、拭き掃除し難い便鉢部の後面部での洗浄範囲を広範囲化できる。
【0127】
第5態様の水洗大便器は、第1から第4態様のいずれかにおいて、前記旋回流は、前記一方側第2面領域を経由してから前記他方側第2面領域を経由し、前記他方側第2面領域は、前記一方側第2面領域より鉛直面に対する傾斜角度が緩やかであってもよい。他方側第2面領域を旋回流が経由するとき、一方側第2面領域を経由するときより旋回流の水勢が弱くなる。この態様によれば、弱い水勢の旋回流が他方側第2面領域を経由するときでも、その他方側第2面領域の広い高さ範囲に洗浄水を届かせ易くできる。
【0128】
第6態様の水洗大便器は、第1から第5態様のいずれかにおいて、前記洗浄水を棚面で受けて前記旋回流の旋回方向に導くための導水路を備え、前記棚面の内周端部は、実質的に左右対称の位置に設けられてもよい。この態様によれば、製造誤差等に起因して棚面等の形状が左右で非対称となった場合、そのことを目視により判別し易くなり、検品作業の容易化を図れる。
【0129】
第7態様の水洗大便器は、第1から第6態様のいずれかにおいて、前記洗浄水を棚面で受けて前記旋回流の旋回方向に導くための導水路を備え、前記棚面は、前記一方の面部に設けられる前記便鉢部の前端又は後端より前記旋回方向にて前記第2面領域に接続されてもよい。この態様によれば、第2面領域を経由する過程で遠心力を受けて上昇してから下降する洗浄水を棚面で受け易くなる。これに伴い、第2面領域を経由した洗浄水の多くを導水路により遠くまで届かせられる。
【0130】
第8態様の水洗大便器は、第7態様において、前記汚物受け面は、前記便鉢部の前面部に設けられる凹曲面部を有し、前記凹曲面部は、少なくとも前記便鉢部の左右中央部において、前記汚物受け面の下端縁部から前記汚物受け面の外周端部まで連続してもよい。この態様によれば、便鉢部の左右中央部に凸曲面状の棚面の内周端部が設けられない構造となるため、小便の飛沫を抑制できる。
【符号の説明】
【0131】
10…水洗大便器、16…便鉢部、16a…上端内縁部、16b…一端部、16d…左右中央部、22B…後面部、22F…前面部、22L…左側面部、22R…右側面部、22X…一方の面部、24…汚物受け面、24a…外周端部、24b…下端縁部、26…リム部、32…開口部、40…連続面、42…吐水部、44…吐水口、48…導水路、50…棚面、50a…内周端部、56…凹曲面部、58…曲面部、62…増加区間、66…減少区間、70…洗浄水経路、72…上方誘導部、74…内方誘導部、76…オーバーハング面、90…第1面領域、92,94…第2面領域。