(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】車両のハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/06 20140101AFI20221110BHJP
E05B 85/12 20140101ALI20221110BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
E05B79/06 A
E05B85/12 B
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2018157517
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】山野 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-77460(JP,A)
【文献】特開2000-87602(JP,A)
【文献】特開2002-89090(JP,A)
【文献】特開2003-193708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 79/06
E05B 85/12
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材が連結されるハンドルケースと、
前記ハンドルケースの車体パネルへの連結部を隠すキャップと、を有し、
前記ハンドルケースに設けられた爪受け開口に、前記キャップに設けられた係合爪を係合させることにより、前記ハンドルケースに前記キャップが装着される車両のハンドル装置において、
前記係合爪は、
前記キャップの裏面側から前記ハンドルケースに向かって延出して、前記キャップの短手方向に沿った押圧力に応じて弾性変形する脚部と、
前記脚部の先端側に設けられ、前記キャップの長手方向に突出する爪部と、を有し、
前記爪受け開口は、
前記キャップの長手方向に沿って開口し、前記爪部を挿通可能な開口幅を備える第1開口部と、
前記キャップの短手方向に沿って前記第1開口部に連続し、前記第1開口部よりも小さな開口幅を備える第2開口部と、
を有する車両のハンドル装置。
【請求項2】
前記係合爪は、
前記押圧力に応じて、前記爪部が前記第1開口部に進入する位置まで弾性変形する第1状態と、
前記爪部が前記第1開口部を通り抜けた状態で前記押圧力が解除されることで弾性復帰して、前記第2開口部の開口領域に位置する第2状態と、
を有する請求項1記載の車両のハンドル装置。
【請求項3】
前記係合爪及び前記爪受け開口の少なくとも一方は、
前記係合爪の頂部が前記爪受け開口の開口周縁に突き当てられた場合に、前記押圧力に対応する分力を発生させる傾斜形状を備える
請求項1又は2記載の車両のハンドル装置。
【請求項4】
前記爪受け開口
の前記第2開口部は、
前記キャップの短手方向にそれぞれ延在し、前記係合爪が挿通された状態において当該係合爪の両側に対峙する一対の開口縁部を有し、
前記キャップの非変形状態においては、前記係合爪が前記一対の開口縁部のうち一方の開口縁部に当接することで、前記係合爪と係合し、
前記キャップが長手方向に沿って変形した状態においては、前記キャップの変形により傾倒した前記係合爪が前記一対の開口縁部にそれぞれ当接することで、前記係合爪と係合する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両のハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のドアを開放操作するための車両のハンドル装置が知られている。ハンドル装置は、例えばサイドドアに設けられている。サイドドアには、車体に係合してサイドドアを閉塞状態に保持するドアロック装置が設けられ、ドアロック装置は、ケーブル装置を介してハンドル装置と接続されている。操作者によってハンドル装置が操作されると、操作者の操作力はケーブル装置を介してドアロック装置へと伝達され、これによりドアロック装置が操作される。
【0003】
ハンドル装置は、操作者が操作するハンドルと、ハンドルが連結されるハンドルケースと、キャップとを備えている。キャップは、ハンドルケースの底面に装着され、ハンドルケースの車体パネル(ドアインナーパネル)への連結部を隠す役割を担っている。キャップは、キャップ本体と、当該キャップ本体の裏面に起立した係合爪とで構成されている。そして、ハンドルケースに対するキャップの装着は、ハンドルケースの底面に穿孔された爪受け開口に対して、係合爪を係合させることにより行われる。
【0004】
なお、例えば特許文献1には、インナーハンドルベース(ハンドルケース)をドアインナーパネルに対して組み付ける構造が開示されている。この構造は、爪有突起と爪無突起とを備え、両突起は並列的に設けられている。爪有突起及び爪無突起は、ドアインナーパネルに設けた取付孔に挿入されることにより、当該取付孔に対し、爪有突起の爪部が抜け止めされる。この抜け止めにより、インナーハンドルベース(ハンドルケース)をドアインナーパネルに対して位置決め及び抜け止めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両が経年的に使用されると高温環境下に晒される機会も多く、樹脂製のキャップ本体が熱変形を起こすという問題がある。この熱変形の影響を受けて係合爪が傾倒した場合には、係合爪と爪受け開口との間にクリアランスが発生し、キャップのがたつきが発生したり、低級音が発生したりするという問題がある。
【0007】
特許文献1に開示された手法によれば、位置決め及び抜け止めを行うことができるが、2つの突起を設ける必要があり、構造が複雑化してしまう虞がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャップのがたつき及び低級音の発生を抑制することができる車両のハンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、操作部材が連結されるハンドルケースと、ハンドルケースの車体パネルへの連結部を隠すキャップと、を有し、ハンドルケースに設けられた爪受け開口に、キャップに設けられた係合爪を係合させることにより、ハンドルケースにキャップが装着される車両のハンドル装置を提供する。この車両のハンドル装置において、係合爪は、キャップの裏面側からハンドルケースに向かって延出して、キャップの短手方向に沿った押圧力に応じて弾性変形する脚部と、脚部の先端側に設けられ、キャップの長手方向に突出する爪部と、を有する。一方、爪受け開口は、キャップの長手方向に沿って開口し、爪部を挿通可能な開口幅を備える第1開口部と、キャップの短手方向に沿って第1開口部に連続し、第1開口部よりも小さな開口幅を備える第2開口部と、を有する。
【0010】
ここで、本発明において、係合爪は、押圧力に応じて、爪部が第1開口部に進入する位置まで弾性変形する第1状態と、爪部が第1開口部を通り抜けた状態で押圧力が解除されることで弾性復帰して、第2開口部の開口領域に位置する第2状態と、を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明において、係合爪及び爪受け開口の少なくとも一方は、係合爪の頂部が爪受け開口の開口周縁に突き当てられた場合に、押圧力に対応する分力を発生させる傾斜形状を備えることが好ましい。
【0012】
また、爪受け開口の第2開口部は、キャップの短手方向にそれぞれ延在し、係合爪が挿通された状態において当該係合爪の両側に対峙する一対の開口縁部を有している。そして、爪受け開口は、キャップの非変形状態においては、係合爪が一対の開口縁部のうち一方の開口縁部に当接することで、係合爪と係合する。一方、爪受け開口は、キャップが長手方向に沿って変形した状態においては、キャップの変形により傾倒した係合爪が一対の開口縁部にそれぞれ当接することで、係合爪と係合する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャップのがたつき及び低級音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るインサイドドアハンドル装置を示す正面図
【
図2】本実施形態に係るインサイドドアハンドル装置の要部を示す背面図
【
図4】ハンドルケースの裏面側を拡大して示す斜視図
【
図5】係合爪及びこれに対応する爪受け開口の係合状態を説明する説明図
【
図7】第2開口部と係合爪との関係を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る車両のハンドル装置について、車両のサイドドアに適用されるインサイドドアハンドル装置1を例示して説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係るインサイドドアハンドル装置1を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係るインサイドドアハンドル装置1の要部を示す背面図である。
【0017】
インサイドドアハンドル装置1は、車両のサイドドアを車両室内側から開放操作する車両のハンドル装置である。インサイドドアハンドル装置1は、車体パネルを構成するドアインナーパネルの所要の位置に固定され、ドアインナーパネルの内側(車両室内側)を覆うドアトリムに設けられた開口部より、車両室内側に露出している。サイドドアには、ラッチ部を車体に対して係合してサイドドアを閉塞状態に維持するドアロック装置(図示せず)と、ドアロック装置とインサイドドアハンドル装置1とを接続するケーブル装置(図示せず)とが設けられている。
【0018】
インサイドドアハンドル装置1は、ハンドルケース10と、キャップ30と、ハンドル45と、ロックノブ50と、を主体に構成されている。
【0019】
ハンドルケース10は、ハンドル45及びロックノブ50を連結するとともに、ハンドル45を把持するための所要の空間を形成している。ハンドルケース10は、平板状の底壁部12と、当該底壁部12の全周を囲う周壁部13とで構成されている。ハンドルケース10の上下方向又は前後方向に沿う断面は、略U字形状に構成されている。ハンドルケース10及び底壁部12は、上下方向に比べて前後方向が長手となる横長形状を有している。
【0020】
底壁部12の中央には、内外を貫通する取付孔14が設けられている。この取付孔14にねじ等の締結部品を挿入し、ドアインナーパネルに締結することで、ハンドルケース10がドアインナーパネルに固定される。
【0021】
また、底壁部12の所要の位置には、4つの爪受け開口15~18が穿孔されている。底壁部12の上下方向の中間位置には、前後方向の後側に爪受け開口15が設けられ、前後方向の前側に爪受け開口16が設けられている。また、底壁部12の前後方向の中間位置には、上下方向の上側に爪受け開口17が設けられ、上下方向の下側に爪受け開口18が設けられている。
【0022】
周壁部13は、底壁部12の周縁から立ち上がり、車両室内側に向かって延出するフランジ形状を有している。周壁部13の先端側の形状は、ドアトリムに設けられた開口部の周縁形状に沿うように設定されており、ドアトリムと一体性を有するデザインとされている。
【0023】
ハンドルケース10の後側には、円柱状の軸ピン40が挿通されている。ハンドル45及びロックノブ50は、上下に配置され、軸ピン40によりそれぞれ軸支されている。
【0024】
キャップ30は、ハンドルケース10に着脱自在に取り付けられている。キャップ30は、ハンドルケース10の底面、具体的には、底壁部12の取付孔14を隠して意匠性を付与する化粧部材であり、底壁部12に対して平行又は略平行となるように、底壁部12に取り付けられている。
【0025】
キャップ30は、キャップ本体31と、4つの係合爪32~35とで構成されている。
【0026】
キャップ本体31は、ハンドルケース10の底壁部12を覆う平板状の部材である。キャップ本体31は、底壁部12と同様、前後方向が長手で上下方向が短手となる横長形状を有している。
【0027】
4つの係合爪32~35は、キャップ本体31の裏面に起立して、ハンドルケース10の底壁部12に向かって延出するように設けられている。キャップ本体31の上下方向の中間位置には、前後方向の後側に係合爪32が設けられ、前後方向の前側に係合爪33が設けられている。また、キャップ本体31の前後方向の中間位置には、上下方向の上側に係合爪34が設けられ、上下方向の下側に係合爪35が設けられている。4つの係合爪32~35の位置は、底壁部12に穿孔された4つの爪受け開口15~18の位置と対応している。
【0028】
個々の係合爪32~35は、対応する位置に設けられた爪受け開口15~18に挿入されると、爪受け開口15~18に対して係合し、これにより、キャップ30がハンドルケース10に装着される。4つの係合爪32~35のうち、前後方向に並んだ一対の係合爪32,33が、爪受け開口15,16の縁部に対して外側に突っ張ることで、前後方向におけるキャップ30の固定が行われる。同様に、上下方向に並んだ一対の係合爪34,35が、爪受け開口17,18の縁部に対して外側に突っ張ることで、上下方向におけるキャップ30の固定が行われる。
【0029】
ハンドル45は、サイドドアを開放するために操作者が操作を行う操作部材である。ハンドル45は、軸ピン40により回転自在に軸支されるベース部45aと、ベース部45aより車両前方に延在し、操作者が把持する操作部45bとで構成されている。ハンドル45は、ハンドルケース10内に収容される閉位置と、車両室内側の所定位置まで回動した開位置との範囲で回動する。
【0030】
ハンドル45が閉位置の状態では、ドアロック装置のラッチ部は車体と係合した係合状態となるので、サイドドアは閉じた状態で維持される。一方、ハンドル45が閉位置から開位置まで回動操作されると、ベース部45aに連結された第1ケーブル装置が引っ張られる。第1ケーブル装置の端部に連結されたドアロック装置の可動点が操作され、ラッチ部と車体との係合状態が解除される。
【0031】
ロックノブ50は、サイドドアの開放を規制するために操作者が操作を行う操作部材である。ロックノブ50は、軸ピン40により回転自在に軸支されている。ロックノブ50は、ハンドルケース10内に収容される閉位置と、車両室内側の所定位置まで回動した開位置との範囲で回動する。
【0032】
ロックノブ50が閉位置の状態では、ドアロック装置はアンロック状態となるので、可動点への操作力の入力が有効となる。このため、ハンドル45の操作によりサイドドアの開放を自由に行うことができる。一方、ロックノブ50が閉位置から開位置まで回動操作されると、ロックノブ50に連結された第2ケーブル装置が引っ張られる。第2ケーブル装置の端部に連結されたドアロック装置が操作され、ドアロック装置はロック状態となり、第1ケーブル装置による可動点への操作力の入力が無効となる。ロック状態においては、ハンドル45によるドアロック装置への操作がキャンセルされるので、サイドドアの開放が規制される。
【0033】
つぎに、ハンドルケース10に対するキャップ30の係合構造について説明する。本実施形態に係る係合構造は、4つの係合爪32~35及び爪受け開口15~18のうち、前後方向の固定機能を担う係合爪32及びこれに対応する爪受け開口15に対して適用されている。ここで、
図3は、
図2に示すAA断面を示す説明図であり、
図4は、ハンドルケース10の裏面側を拡大して示す斜視図である。
図5は、係合爪32及びこれに対応する爪受け開口15の係合状態を説明する説明図である。
【0034】
係合爪32は、脚部32aと、爪部32bとで構成されている。
【0035】
脚部32aは、キャップ本体31の裏面側に起立する柱状の部材である。ハンドルケース10の底壁部12と平行する面を基準とした脚部32aの断面は、上下方向に短手で、前後方向に長手となる矩形形状とされている。このため、脚部32aは、断面形状の長手方向(前後方向)にかけて剛性が高い。一方で、脚部32aは、断面形状の短手方向(上下方向)にかけて剛性が低く、当該短手方向に沿って押圧力を加えることで、先端側を弾性変形(撓み変形)させることができる。
【0036】
爪部32bは、脚部32aの先端側に設けられており、前後方向の後側に向かって突出している。爪部32bは、爪受け開口15の縁部に接触することで、ハンドルケース10からキャップ30が外れることを規制している。
【0037】
爪受け開口15は、第1開口部15aと、第2開口部15bとで構成されている。この第1開口部15a及び第2開口部15bは互いに連なって一つの開口を構成しており、爪受け開口15は略L字形状を呈している。
【0038】
第1開口部15aは、係合爪32、具体的には、爪部32bの挿入を許容するための部位である。第1開口部15aは、前後方向(キャップ30の長手方向)に沿って開口し、キャップ30の長手方向に沿って長手となる横長の矩形形状を有している。キャップ30の長手方向を基準とする第1開口部15aの開口幅H1は、爪部32bが通過することができる寸法に設定されている。
【0039】
第2開口部15bは、係合爪32、具体的には、脚部32aの挿入を許容するための部位である。第2開口部15bは、上下方向(キャップ30の短手方向)に沿って第1開口部15aに連続しており、キャップ30の長手方向に沿って長手となる横長の矩形形状を有している。キャップ30の長手方向を基準とする第2開口部15bの開口幅H2は、第1開口部15aの開口幅H1よりも小さい寸法に設定されている。また、第2開口部15bの開口幅H2は、キャップ30の長手方向を基準とする脚部32aの部材幅H3よりも若干大きな寸法(例えば、H3+0.4mm)に設定されている。
【0040】
爪受け開口15に挿通された係合爪32は、第2開口部15bの開口領域に位置する。この場合、係合爪32は、第2開口部15bの開口縁部15b1,15b2によって挟まれた状態となる。第2開口部15bの開口幅H2は、脚部32aの部材幅H3よりも若干大きな寸法とされており、開口縁部15b1,15b2と係合爪32との間のクリアランスが極めて小さくなるように設定されている。
【0041】
また、
図4に示すように、係合爪32の頂部32a1は、角部が切除されて、傾斜形状に形成されている。一方、
図5に示すように、第1開口部15aの開口周縁のうち、爪部32bと対応する爪受け領域15a1は、角部が切除されて、傾斜形状に形成されている。
【0042】
加えて、
図3に示すように、底壁部12と対向する爪部32bの対向面32b1は、爪部32bの基端側から先端側にかけて傾斜する傾斜形状に設定されている。係合爪32は、この対向面32b1において、第2開口部15bの一方の開口縁部15b1と当接する。対向面32b1を傾斜形状とすることで、製造誤差又は位置ずれが生じた場合であっても、これを許容して、係合爪32と開口縁部15b1との当接状態を得ることができる。
【0043】
このような構成のインサイドドアハンドル装置1において、以下、ハンドルケース10に対するキャップ30の組付方法について説明する。
【0044】
まず、前後方向に固定を担う一対の係合爪32,33のうち、一方の係合爪33を、対応する爪受け開口16へと挿入する。つぎに、係合爪33を爪受け開口16の縁部に押し当てて、この点を中心に、キャップ30をハンドルケース10の底壁部12に向かって回動させる。
【0045】
キャップ30がハンドルケース10の底壁部12に接近すると、残余の係合爪32,34,35が、対応する爪受け開口15,17,18へと挿入される。これにより、4つの係合爪32~35が、対応する爪受け開口15~18に対してそれぞれ係合し、その結果、ハンドルケース10に対してキャップ30が装着される。
【0046】
ここで、
図6は、キャップ30の組付方法を示す説明図である。
図7は、第2開口部15bと係合爪32との関係を説明する説明図である。前後方向の固定を行う係合爪32においては、係合爪32の挿入時、係合爪32の頂部32a1が第1開口部15aの開口周縁における爪受け領域15a1に突き当たる。この場合、係合爪32の頂部32a1及び爪受け領域15a1の傾斜形状に従って、キャップ本体31の短手方向へと押圧する分力が係合爪32に作用する。この分力(押圧力)により、係合爪32の先端側が撓み変形すると、係合爪32が爪受け領域15a1を乗り越えて、係合爪32の爪部32bが第1開口部15aへと挿入される。
【0047】
係合爪32の挿入後、爪部32bが第1開口部15aを通り抜けると、第1開口部15aと爪部32bとの係合が外れることで、上述の押圧力が解除される。このため、係合爪32は、キャップ30の短手方向に沿って弾性復帰して、第2開口部15bの開口領域へと進入する。そして、係合爪32の脚部32aは、第2開口部15bにおける一対の開口縁部15b1,15b2によって両側から挟まれる。
【0048】
このような係合状態において、前後方向の固定を行う一対の係合爪32,33は、それぞれ爪受け開口15,16の縁部に対して外側に突っ張るような状態で当接する。このため、上述の係合爪32は、第2開口部15bの一対の開口縁部15b1,15b2のうち、外側に位置する一方の開口縁部15b1に当接される(
図7(a))。この当接状態により、第2開口部15bと係合爪32との係合状態を良好に維持することができる。
【0049】
一方で、車両が経年的に使用されると高温環境下に晒される機会が多くなり、キャップ30に熱変形が生じる場合がある。この熱変形は、キャップ30の長手方向において顕著に現れる。キャップ30が長手方向に変形した場合、キャップ本体31の裏面に設けられた係合爪32もキャップ30の長手方向に傾倒する。
【0050】
この点、本実施形態では、キャップ30の長手方向における第2開口部15b(開口縁部15b1,15b2)と係合爪32との間のクリアランスは小さな状態に設定されている。このため、係合爪32が傾倒したとしても、当該係合爪32は一対の開口縁部15b1,15b2によって傾倒が規制され、一対の開口縁部15b2にそれぞれ当接した状態となる(
図7(b))。したがって、第2開口部15bと係合爪32との間にクリアランスが生じることなく、むしろ、係合爪32が開口縁部15b1,15b2に対して積極的に当接する。この当接状態により、第2開口部15bと係合爪32との係合状態を良好に維持することができる。
【0051】
このように本実施形態のインサイドドアハンドル装置1において、キャップ30に設けられた係合爪32は、キャップ本体31の裏面側からハンドルケース10に向かって延出して、キャップ30の短手方向に沿った押圧力に応じて弾性変形する脚部32aと、脚部32aの先端側に設けられ、キャップ30の長手方向に突出する爪部32bと、を有している。一方、ハンドルケース10に設けられた爪受け開口15は、キャップ30の長手方向に沿って開口し、爪部32bを挿通可能な開口幅H1を備える第1開口部15aと、キャップ30の短手方向に沿って第1開口部15aに連続し、第1開口部15aよりも小さな開口幅H2を備える第2開口部15bと、を有している。
【0052】
この構成によれば、熱変形による係合爪32の傾倒方向とは直交する方向へと弾性変形させて、係合爪32を第1開口部15aから爪受け開口15へと挿入する構成としている。そのため、熱変形による係合爪32の傾倒方向について、係合爪32と爪受け開口15(第2開口部15b)とのクリアランスを狭く設定することができる。その結果、キャップ30が熱変形した状態になったとしても、キャップ30の長手方向に傾倒した係合爪32が一対の開口縁部15b1,15b2にそれぞれ当接することで、係合爪32と第2開口部15bとの係合状態が維持される。これにより、係合爪32と第2開口部15bとの間にクリアランスが生じることが抑制されるので、キャップ30のがたつき及び低級音の発生を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態において、係合爪32は、爪部32bが第1開口部15aに進入するように、キャップ30の短手方向に沿った押圧力に応じて弾性変形する第1状態と、爪部32bが第1開口部15aを通り抜けた状態で押圧力が開放されると、弾性復帰して、第2開口部15bの開口領域に位置する第2状態と、を有している。
【0054】
この構成によれば、熱変形による係合爪32の傾倒方向とは直交する方向へと弾性変形させて、係合爪32を爪受け開口15へと挿入する構成としている。そのため、熱変形による係合爪32の傾倒方向について、係合爪32と第2開口部15bとのクリアランスを狭く設定することができる。
【0055】
また、本実施形態において、係合爪32及び爪受け開口15は、係合爪32の頂部32a1が爪受け開口15の開口周縁(爪受け領域15a1)に突き当てられることで、押圧力に対応する分力を発生させる傾斜形状を備えている。
【0056】
この構成によれば、係合爪32の頂部32a1を爪受け開口15の開口周縁(爪受け領域15a1)に突き当てることで、その傾斜形状にしたがって、押圧力に対応する分力を発生させることができる。これにより、キャップ30をハンドルケース10へと組み付ける作業において、係合爪32を自動的に撓み変形させることができるので、係合爪32を爪受け開口15へとスムーズに進入させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、係合爪32及び爪受け開口15の両方が傾斜形状を備えているが、いずれか一方のみが傾斜形状を備える形態であってもよい。
【0058】
以上、本実施形態に係る車両のハンドル装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。上述した実施形態では、サイドドアに適用されるハンドル装置について説明したが、本発明に係る車両のハンドル装置として、バックドアといった様々な部位に適用することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両のハンドル装置は、インサイドドアハンドル装置に限らず、アウトサイドドアハンドル装置に適用してもよい。
【0060】
また、上述した説明では、4組の係合爪及び爪受け開口のうち、1組の係合爪及び爪受け開口に対して、本実施形態に係る係合構造を適用している。しかしながら、この係合構造は、残余の組の係合爪及び爪受け開口に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 インサイドドアハンドル装置
10 ハンドルケース
12 底壁部
13 周壁部
14 取付孔
15 爪受け開口
15a 第1開口部
15a1 爪受け領域
15b 第2開口部
15b1 開口縁部
15b2 開口縁部
16~18 爪受け開口
30 キャップ
31 キャップ本体
32 係合爪
32a 脚部
32a1 頂部
32b 爪部
32b1 対向面
33~35 係合爪
40 軸ピン
45 ハンドル
45a ベース部
45b 操作部
50 ロックノブ
H1 開口幅
H2 開口幅
H3 部材幅