(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】超音波流量計および超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20221110BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20221110BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/66 101
G01F1/00 F
(21)【出願番号】P 2018165742
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224685(JP,A)
【文献】特開2014-92469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0010756(US,A1)
【文献】特開2006-242658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01P 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器
と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送
受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受
信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超
音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された超音波流
量計において、
前記第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第2の超音波送受信器から
出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミングを
ゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方
向のゼロクロス時刻の候補として取得するように構成された順方向ゼロクロス時刻候補取
得部と、
前記第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第1の超音波送受信器から
出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミングを
ゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方
向のゼロクロス時刻の候補として取得するように構成された逆方向ゼロクロス時刻候補取
得部と、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時
刻の候補と前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向のゼロ
クロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との差を今回の伝播時間差の候補として求めるよ
うに構成された伝播時間差候補算出部と、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時
刻の候補と前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向のゼロ
クロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との和を今回の伝播時間和の候補として求めるよ
うに構成された伝播時間和候補算出部と、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と前記逆方向のゼロクロス時刻の前回の確
定値との差を前回の伝播時間差として求めるように構成された前回の伝播時間差算出部と
、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と前記逆方向のゼロクロス時刻の前回の確
定値との和を前回の伝播時間和として求めるように構成された前回の伝播時間和算出部と
、
前記伝播時間差候補算出部によって求められた今回の伝播時間差の候補の全てについて
、前記前回の伝播時間差算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分を求め
るように構成された伝播時間差変化分算出部と、
前記伝播時間和候補算出部によって求められた今回の伝播時間和の候補の全てについて
、前記前回の伝播時間和算出部によって求められた前回の伝播時間和からの変化分を求め
るように構成された伝播時間和変化分算出部と、
前記伝播時間差変化分算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分と前記
伝播時間和変化分算出部によって求められた前回の伝播時間和からの変化分とに基づいて
、前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時
刻の候補および前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向の
ゼロクロス時刻の候補の中から、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼ
ロクロス時刻を確定するように構成されたゼロクロス時刻確定部と
を備えることを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
請求項1に記載された超音波流量計において、
前記ゼロクロス時刻確定部は、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補および前記今回の逆方向のゼロクロス時刻の
候補の中から、前記前回の伝播時間差からの変化分と前記前回の伝播時間和からの変化分
が最も小さい組み合わせを、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼロク
ロス時刻として確定する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項3】
請求項1に記載された超音波流量計において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
iを今回を示す番号、jを候補を示す番号として、前記今回の順方向のゼロクロス時刻
の候補をZ1ijとして抽出し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
iを今回を示す番号、kを候補を示す番号として、前記逆方向のゼロクロス時刻の候補
をZ2ikとして抽出し、
前記伝播時間差候補算出部は、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1
ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差を今回の伝播時間差の候補αijk
として求め、
前記伝播時間和候補算出部は、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ij
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和を今回の伝播時間和の候補βijkと
して求め、
前記前回の伝播時間差算出部は、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの差を前回の伝播時間差αi-1として求め、
前記前回の伝播時間和算出部は、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの和を前回の伝播時間和βi-1として求め、
前記伝播時間差変化分算出部は、
前記今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて前記前回の伝播時間差αi-1からの変
化分をΔαijkとして求め、
前記伝播時間和変化分算出部は、
前記
今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて前記前回の伝播時間和βi-1からの変
化分をΔβijkとして求め、
前記ゼロクロス時刻確定部は、
前記伝播時間差変化分算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分Δαij
kの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、この組み合わせから求められるk-
j=dを第1の条件とし、前記伝播時間和変化分算出部によって求められた前回の伝播時
間和からの変化分Δβijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、この組み合
わせから求められるj+k=aを第2の条件とし、この第1の条件と第2の条件の両方の
条件を満たすjとkを求め、この求められたjとkとで示される前記順方向のゼロクロス
時刻の候補Z1ijおよび前記逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikを、今回の順方向のゼ
ロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
請求項1に記載された超音波流量計において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
iを今回を示す番号、jを候補を示す番号として、前記今回の順方向のゼロクロス時刻
の候補をZ1ijとして抽出し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
iを今回を示す番号、kを候補を示す番号として、前記逆方向のゼロクロス時刻の候補
をZ2ikとして抽出し、
前記伝播時間差候補算出部は、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1
ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差を今回の伝播時間差の候補αijk
として求め、
前記伝播時間和候補算出部は、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ij
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和を今回の伝播時間和の候補βijkと
して求め、
前記前回の伝播時間差算出部は、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの差を前回の伝播時間差αi-1として求め、
前記前回の伝播時間和算出部は、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの和を前回の伝播時間和βi-1として求め、
前記伝播時間差変化分算出部は、
前記今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて前記前回の伝播時間差αi-1からの変
化分をΔαijkとして求め、
前記伝播時間和変化分算出部は、
前記
今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて前記前回の伝播時間和βi-1からの変
化分をΔβijkとして求め、
前記ゼロクロス時刻確定部は、
前記伝播時間差変化分算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分Δαij
kについてk-jが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるk-jを
dとし、前記伝播時間和変化分算出部によって求められた前回の伝播時間和からの変化分
Δβijkについてj+kが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるj
+kをaとし、k-j=d、j+k=aの両方の条件を満たすjとkを求め、この求めら
れたjとkとで示される前記順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび前記逆方向のゼ
ロクロス時刻の候補Z2ikを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロ
クロス時刻Z2iとして確定する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載された超音波流量計において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
前記第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第2の超音波送受信器から
出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号が1周期毎にゼロクロスするタ
イミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを
今回の順方向のゼロクロス時刻の候補として取得し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
前記第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第1の超音波送受信器から
出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号が1周期毎にゼロクロスするタ
イミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを
今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補として取得する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載された超音波流量計において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
前記第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第2の超音波送受信器から
出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号が半周期毎にゼロクロスするタ
イミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを
今回の順方向のゼロクロス時刻の候補として取得し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得部は、
前記第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第1の超音波送受信器から
出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号が半周期毎にゼロクロスするタ
イミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを
今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補として取得する
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載された超音波流量計において、
前記ゼロクロス時刻確定部は、
前記確定した今回の順方向のゼロクロス時刻とこのゼロクロス時刻に連なる複数の順方
向のゼロクロス時刻の候補との平均を求め、この平均を今回の順方向の伝播時間の算出に
際して用いる順方向のゼロクロス時刻とし、
前記確定した今回の逆方向のゼロクロス時刻とこのゼロクロス時刻に連なる複数の逆方
向のゼロクロス時刻の候補との平均を求め、この平均を今回の逆方向の伝播時間の算出に
際して用いる逆方向のゼロクロス時刻とする
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項8】
測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器
と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送
受信器と前記第2の超音波送受信器との間で前記流体を介して超音波信号を両方向で送受
信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた前記両方向における前記超
音波信号の伝播時間差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計におけるゼロ
クロス時刻の確定方法であって、
前記第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第2の超音波送受信器から
出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミングを
ゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方
向のゼロクロス時刻の候補として取得する順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップと、
前記第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した前記第1の超音波送受信器から
出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設
定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミングを
ゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方
向のゼロクロス時刻の候補として取得する逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップと、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順方向のゼロク
ロス時刻の候補と前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の
逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロ
ス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との差を今回の伝播時間差の候補と
して求める伝播時間差候補算出ステップと、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順方向のゼロク
ロス時刻の候補と前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の
逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロ
ス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との和を今回の伝播時間和の候補と
して求める伝播時間和候補算出ステップと、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と前記逆方向のゼロクロス時刻の前回の確
定値との差を前回の伝播時間差として求める前回の伝播時間差算出ステップと、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と前記逆方向のゼロクロス時刻の前回の確
定値との和を前回の伝播時間和として求める前回の伝播時間和算出ステップと、
前記伝播時間差候補算出ステップによって求められた今回の伝播時間差の候補の全てに
ついて、前記前回の伝播時間差算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの
変化分を求める伝播時間差変化分算出ステップと、
前記伝播時間和候補算出ステップによって求められた今回の伝播時間和の候補の全てに
ついて、前記前回の伝播時間和算出ステップによって求められた前回の伝播時間和からの
変化分を求める伝播時間和変化分算出ステップと、
前記伝播時間差変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの変化分
と前記伝播時間和変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間和からの変化分
とに基づいて、前記順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順
方向のゼロクロス時刻の候補および前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって
取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補の中から、今回の順方向のゼロクロス時
刻および今回の逆方向のゼロクロス時刻を確定するゼロクロス時刻確定ステップと
を備えることを特徴とする超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法。
【請求項9】
請求項8に記載された超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法において、
前記ゼロクロス時刻確定ステップは、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補および前記今回の逆方向のゼロクロス時刻の
候補の中から、前記前回の伝播時間差からの変化分と前記前回の伝播時間和からの変化分
が最も小さい組み合わせを、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼロク
ロス時刻として確定する
ことを特徴とする超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法。
【請求項10】
請求項8に記載された超音波流量計ゼロクロス時刻の確定方法において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップは、
iを今回を示す番号、jを候補を示す番号として、前記今回の順方向のゼロクロス時刻
の候補をZ1ijとして抽出し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップは、
iを今回を示す番号、kを候補を示す番号として、前記逆方向のゼロクロス時刻の候補
をZ2ikとして抽出し、
前記伝播時間差候補算出ステップは、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1
ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差を今回の伝播時間差の候補αijk
として求め、
前記伝播時間和候補算出ステップは、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ij
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和を今回の伝播時間和の候補βijkと
して求め、
前記前回の伝播時間差算出ステップは、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの差を前回の伝播時間差αi-1として求め、
前記前回の伝播時間和算出ステップは、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの和を前回の伝播時間和βi-1として求め、
前記伝播時間差変化分算出ステップは、
前記今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて前記前回の伝播時間差αi-1からの変
化分をΔαijkとして求め、
前記伝播時間和変化分算出ステップは、
前記
今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて前記前回の伝播時間和βi-1からの変
化分をΔβijkとして求め、
前記ゼロクロス時刻確定ステップは、
前記伝播時間差変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの変化分
Δαijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、この組み合わせから求められ
るk-j=dを第1の条件とし、前記伝播時間和変化分算出ステップによって求められた
前回の伝播時間和からの変化分Δβijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め
、この組み合わせから求められるj+k=aを第2の条件とし、この第1の条件と第2の
条件の両方の条件を満たすjとkを求め、この求められたjとkとで示される前記順方向
のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび前記逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikを、今回
の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する
ことを特徴とする超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法。
【請求項11】
請求項8に記載された超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法において、
前記順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップは、
iを今回を示す番号、jを候補を示す番号として、前記今回の順方向のゼロクロス時刻
の候補をZ1ijとして抽出し、
前記逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップは、
iを今回を示す番号、kを候補を示す番号として、前記逆方向のゼロクロス時刻の候補
をZ2ikとして抽出し、
前記伝播時間差候補算出ステップは、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1
ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差を今回の伝播時間差の候補αijk
として求め、
前記伝播時間和候補算出ステップは、
前記今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと前記今回の逆方向のゼロクロス時刻
の候補Z2ikの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ij
と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和を今回の伝播時間和の候補βijkと
して求め、
前記前回の伝播時間差算出ステップは、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの差を前回の伝播時間差αi-1として求め、
前記前回の伝播時間和算出ステップは、
前記順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1iと前記逆方向のゼロクロス時刻の前
回の確定値Z2iとの和を前回の伝播時間和βi-1として求め、
前記伝播時間差変化分算出ステップは、
前記今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて前記前回の伝播時間差αi-1からの変
化分をΔαijkとして求め、
前記伝播時間和変化分算出ステップは、
前記
今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて前記前回の伝播時間和βi-1からの変
化分をΔβijkとして求め、
前記ゼロクロス時刻確定ステップは、
前記伝播時間差変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの変化分
Δαijkについてk-jが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるk
-jをdとし、前記伝播時間和変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間和
からの変化分Δβijkについてj+kが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が
最小となるj+kをaとし、k-j=d、j+k=aの両方の条件を満たすjとkを求め
、この求められたjとkとで示される前記順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび前
記逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび
逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する
ことを特徴とする超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計およびその超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体の流量を計測する流量計として、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計が用いられている。
【0003】
この超音波流量計では、
図25にその模式図を示すように、測定対象の流体が流れる配管1の上流側の外周面に第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2を配置し、下流側の外周面に第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3を配置し、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて流体の流速vを測定し、この測定した流速vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求めるようにする(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図25において、θは配管1の軸と超音波信号の伝播方向とのなす角である。第1の超音波送受信器2から発射されて第2の超音波送受信器3で受信される超音波信号(上流側から下流側へと伝播する超音波信号(順方向に伝播する超音波信号))の伝播時間t1(順方向伝播時間)は、下記(1)式のように表される。
t1=L/(c+vcosθ) ・・・・(1)
ここで、Lは超音波信号の伝播距離〔m〕、cは流体中の音速〔m/s〕である。超音波は流体の流れに乗って伝播するため、流れが速いほど短い時間で伝播する。
【0005】
同様に、第2の超音波送受信器3から発射されて第1の超音波送受信器2で受信される超音波信号(下流側から上流側へと伝播する超音波信号(逆方向に伝播する超音波信号))の伝播時間t2(逆方向伝播時間)は、下記(2)式のように表される。
t2=L/(c-vcosθ) ・・・・(2)
超音波は流体の流れに逆らって伝播するため、流れが速いほど長い時間をかけて伝播する。
【0006】
順方向伝播時間および逆方向伝播時間の逆数は以下のようになる。
1/t1=(c+vcosθ)/L ・・・・(3)
1/t2=(c-vcosθ)/L ・・・・(4)
【0007】
順方向伝播時間の逆数と逆方向伝播時間の逆数との和は以下のようになる。
1/t1+1/t2=2c/L=2/t0 ・・・・(5)
(5)式を変形すると、音速cを求める式が得られる。
c=(L/2)・(1/t1+1/t2)=L/t0 ・・・・(6)
【0008】
同様に、順方向伝播時間の逆数と逆方向伝播時間の逆数との差は以下のようになる。
1/t1-1/t2=2vcosθ/L ・・・・(7)
(7)式を変形すると、流速vを求める式が得られる。
v=(L/2cosθ)・(1/t1-1/t2) ・・・・(8)
【0009】
流速が求められると、断面積Sをかけて体積流量を求めたり、さらに密度をかけて質量流量を求めたりすることができる。
【0010】
伝播時間そのものを精度良く求めることが難しくても、伝播時間差(順方向伝播時間と逆方向伝播時間との差)は、ゼロクロス時刻の差として精度良く求めることが可能である。ゼロクロス時刻については後述する。このような場合、以下の計算に従って流速vを求める。
【0011】
上記(1)式および(2)式より、
Δt=t2-t1=L/(c-vcosθ)-L/(c+vcosθ)=2vLcosθ/(c2-v2cos2θ)≒2vLcosθ/c2 ・・・・(9)
したがって、
v≒(c2/2Lcosθ)・(t2-t1)=(c2/2Lcosθ)・Δt ・・・・(10)
となる(伝播時間差法)。
【0012】
また、流速0の時の伝播時間をt0とすると、上記の(1)式もしくは(2)式から、
t0=L/c ・・・・(11)
となるので、
t1=L/(c+vcosθ)=L/c・(1/(1+vcosθ/c))≒L/c・(1-vcosθ/c)=L/c-vLcosθ/c2=t0-Δt/2 ・・・・(12)
t2=L/(c-vcosθ)=L/c・(1/(1-vcosθ/c))≒L/c・(1+vcosθ/c)=L/c+vLcosθ/c2=t0+Δt/2 ・・・・(13)
と書ける。
【0013】
上記の式(12),(13)より、
t0≒(t1+t2)/2 ・・・・(14)
となる。
上記の式(11),(14)より、
t1+t2≒2L/c ・・・・(15)
と書ける。
【0014】
図26(a)に、第2の超音波送受信器3から出力される受信信号(順方向の受信信号)の波形図(模式図)を示し、
図26(b)に、第1の超音波送受信器2から出力される受信信号(逆方向の受信信号)の波形図(模式図)を示す。
図27(a),(b)に、
図26(a),(b)に示した受信信号の横軸(時間軸)を拡大した図を示す。
図28に、順方向の受信信号と逆方向の受信信号を重ね合わせた波形図(模式図)を示す。
図29に、
図28に示した受信信号の横軸(時間軸)を拡大した図を示す。
【0015】
図25において、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3は、交互に一定時間パルス駆動される。これにより、第1の超音波送受信器2から発射されたパルス状の超音波信号(順方向の送信信号)が流体を介して第2の超音波送受信器3で受信され、第2の超音波送受信器3から発射されたパルス状の超音波信号(逆方向の送信信号)が流体を介して第1の超音波送受信器2で受信される。
【0016】
図30(a)に、超音波送受信器2,3から出力される送信信号を示し、
図30(b)に、超音波送受信器2,3から出力される受信信号を示す。なお、
図30(a)において、横軸は縮小して示している。また、
図30(a)において、tuは送信信号の周期を示している。
【0017】
パルス状の超音波信号を発射した後、最初のパルス状の超音波信号の受信タイミングtrでは、受信信号がまだ小さいため、ノイズなどの存在により現実には計測できない。そこで、受信タイミングtrから少し時間を経て、受信信号がある程度大きくなったところで、予め定められた閾値電圧(基準電圧)Vsを超えた次のゼロクロスするタイミングを目的とするゼロクロス時刻Zとし、このゼロクロス時刻Zを使って超音波信号の送信開始タイミングtsから受信タイミングtrまでの伝播時間t(=t1 or t2)を算出するということがよく行われている。
【0018】
ゼロクロス時刻Zは、受信タイミングtrに対して所定の時間dly遅れて存在すると考えられる。したがって、ゼロクロス時刻Zから所定の時間dlyを差し引くことにより、伝播時間tが求められる。
t=Z-dly ・・・・(16)
【0019】
なお、所定の時間dlyは、本来あるべき伝播時間(伝播経路長を音速で割って算出)と目的とするゼロクロス時刻Zとの差として、あらかじめ計算しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、このような超音波流量計では、流量の変動などにより受信信号の振幅に変化が生じることがあり、意図しないタイミングで受信信号が閾値電圧Vsを超えてしまったり、意図したタイミングで超えなかったりすることがある。
【0022】
これにより、超音波の1つもしくは複数周期ずれたゼロクロス時刻を目的とするゼロクロス時刻Zであると誤って判断してしまうことがある。誤ったゼロクロス時刻を用いると、超音波の周期(tu)の整数倍だけ誤った伝播時間が算出されることになる。
【0023】
例えば、
図30において、受信信号の振幅に変化が生じ、目的とするゼロクロス時刻Zに対し、1周期前のゼロクロス時刻Z’が目的のゼロクロス時刻Zと誤判断されたり、1周期後のゼロクロス時刻Z”が目的のゼロクロス時刻Zと誤判断されたりすることがある。
【0024】
この場合、正しいゼロクロス時刻Zから求めた伝播時間tは、t=Z-dlyとなるのに対し、誤ったゼロクロス時刻Z’から求めた伝播時間tは、t=Z’-dly=Z-tu-dly=t-tu≠tとなる。また、誤ったゼロクロス時刻Z”から求めた伝播時間tは、t=Z”-dly=Z+tu-dly=t+tu≠tとなる。
【0025】
このように、従来の超音波流量計では、受信信号の振幅が変化すると、誤ったゼロクロス時刻が目的のゼロクロス時刻として選択され、正しくない伝播時間が算出されることによって、誤った流量として計測されてしまうことがあった。
【0026】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、順方向/逆方向ともに、常に正しいゼロクロス時刻を選択して、正しい伝播時間を算出することが可能な超音波流量計および超音波流量計におけるゼロクロス時刻の確定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このような目的を達成するために本発明は、測定対象の流体が流れる配管(1)と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器(2)と、配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器(3)とを備え、第1の超音波送受信器と第2の超音波送受信器との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて、流体の流量を計測するように構成された超音波流量計(100)において、第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第2の超音波送受信器から出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補として取得するように構成された順方向ゼロクロス時刻候補取得部(41)と、第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第1の超音波送受信器から出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補として取得するように構成された逆方向ゼロクロス時刻候補取得部(42)と、順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との差を今回の伝播時間差の候補として求めるように構成された伝播時間差候補算出部(43)と、順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との和を今回の伝播時間和の候補として求めるように構成された伝播時間和候補算出部(44)と、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値との差を前回の伝播時間差として求めるように構成された前回の伝播時間差算出部(45)と、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値との和を前回の伝播時間和として求めるように構成された前回の伝播時間和算出部(46)と、伝播時間差候補算出部によって求められた今回の伝播時間差の候補の全てについて、前回の伝播時間差算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分を求めるように構成された伝播時間差変化分算出部(47)と、伝播時間和候補算出部によって求められた今回の伝播時間和の候補の全てについて、前回の伝播時間和算出部によって求められた前回の伝播時間和からの変化分を求めるように構成された伝播時間和変化分算出部(48)と、伝播時間差変化分算出部によって求められた前回の伝播時間差からの変化分と伝播時間和変化分算出部によって求められた前回の伝播時間和からの変化分とに基づいて、順方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補および逆方向ゼロクロス時刻候補取得部によって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補の中から、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼロクロス時刻を確定するように構成されたゼロクロス時刻確定部(49)とを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、測定対象の流体が流れる配管(1)と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器(2)と、配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器(3)とを備え、第1の超音波送受信器と第2の超音波送受信器との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて、流体の流量を計測するように構成された超音波流量計(100)におけるゼロクロス時刻の確定方法であって、第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第2の超音波送受信器から出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補として取得する順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップ(S101)と、第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第1の超音波送受信器から出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補として取得する逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップ(S102)と、順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との差を今回の伝播時間差の候補として求める伝播時間差候補算出ステップ(S103)と、順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との和を今回の伝播時間和の候補として求める伝播時間和候補算出ステップ(S104)と、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値との差を前回の伝播時間差として求める前回の伝播時間差算出ステップ(S105)と、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値との和を前回の伝播時間和として求める前回の伝播時間和算出ステップ(S106)と、伝播時間差候補算出ステップによって求められた今回の伝播時間差の候補の全てについて、前回の伝播時間差算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの変化分を求める伝播時間差変化分算出ステップ(S107)と、伝播時間和候補算出ステップによって求められた今回の伝播時間和の候補の全てについて、前回の伝播時間和算出ステップによって求められた前回の伝播時間和からの変化分を求める伝播時間和変化分算出ステップ(S108)と、伝播時間差変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間差からの変化分と伝播時間和変化分算出ステップによって求められた前回の伝播時間和からの変化分とに基づいて、順方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補および逆方向ゼロクロス時刻候補取得ステップによって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補の中から、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼロクロス時刻を確定するゼロクロス時刻確定ステップ(S109~S112)とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明では、第1の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第2の超音波送受信器(3)から出力される順方向の受信信号と閾値電圧(Vs)とを比較し、この順方向の受信信号が閾値電圧を超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするゼロクロス時刻(Z1)を複数回検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補(Z1ij)として取得する。また、第2の超音波送受信器からの超音波信号を受信した第1の超音波送受信器(2)から出力される逆方向の受信信号と閾値電圧(Vs)とを比較し、この逆方向の受信信号が閾値電圧を超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするゼロクロス時刻(Z2)を複数回検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補(Z2ik)として抽出する。
【0030】
そして、取得した今回の順方向のゼロクロス時刻の候補(Z1ij)と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補(Z2ik)との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との差(Z2ik-Z1ij)を今回の伝播時間差の候補(αijk)として求める。また、取得した今回の順方向のゼロクロス時刻の候補(Z1ij)と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補(Z2ik)との全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補と今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補との和(Z1ij+Z2ik)を今回の伝播時間和の候補(βijk)として求める。
【0031】
そして、前回の順方向のゼロクロス時刻の確定値(Z1i-1)と前回の逆方向のゼロクロス時刻の確定値(Z2i-1)との差(Z2i-1-Z1i-1)を前回の伝播時間差(αi-1)とし、今回の伝播時間差の候補(αijk)の全てについて、前回の伝播時間差(αi-1)からの変化分(Δαijk)を求める。また、前回の順方向のゼロクロス時刻の確定値(Z1i-1)と前回の逆方向のゼロクロス時刻の確定値(Z2i-1)との和(Z1i-1+Z2i-1)を前回の伝播時間和(βi-1)とし、今回の伝播時間和の候補(βijk)の全てについて、前回の伝播時間和(βi-1)からの変化分(Δβijk)を求める。
【0032】
そして、この求めた前回の伝播時間差からの変化分(Δαijk)と前回の伝播時間和からの変化分(Δβijk)とに基づいて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補(Z1ij)および今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補(Z2ik)の中から、今回の順方向のゼロクロス時刻(Z1i)および今回の逆方向のゼロクロス時刻(Z2i)を確定する。例えば、前回の伝播時間差からの変化分(Δαijk)と前回の伝播時間和からの変化分(Δβijk)が最も小さい組み合わせを、今回の順方向のゼロクロス時刻(Z1i)および逆方向のゼロクロス時刻(Z2i)として確定する。
【0033】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、前回の順方向のゼロクロス時刻の確定値と前回の逆方向のゼロクロス時刻の確定値との差を前回の伝播時間差とし、今回の伝播時間差の候補の全てについて前回の伝播時間差からの変化分を求め、前回の順方向のゼロクロス時刻の確定値と前回の逆方向のゼロクロス時刻の確定値との和を前回の伝播時間和とし、今回の伝播時間和の候補の全てについて前回の伝播時間和からの変化分を求め、この求めた前回の伝播時間差からの変化分と前回の伝播時間和からの変化分とに基づいて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補および今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補の中から、今回の順方向のゼロクロス時刻および今回の逆方向のゼロクロス時刻を確定するようにしたので、例えば、前回の伝播時間差からの変化分と前回の伝播時間和からの変化分が最も小さい組み合わせを、今回の順方向のゼロクロス時刻および逆方向のゼロクロス時刻として確定するようにして、順方向/逆方向ともに、常に正しいゼロクロス時刻を選択して、正しい伝播時間を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、今回(i番目)の順方向の伝播時間の候補t1ijおよびゼロクロス時刻の候補Z1ijを示す図である。
【
図2】
図2は、今回(i番目)の逆方向の伝播時間の候補t2ikおよびゼロクロス時刻の候補Z2iKを示す図である。
【
図3】
図3は、前回(i-1番目)の順方向のゼロクロス時刻の確定値Z1i-1および伝播時間の確定値t1i-1を示す図である。
【
図4】
図4は、前回(i-1番目)の逆方向のゼロクロス時刻の確定値Z2i-1および伝播時間の確定値t2i-1を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の要部を示す図である。
【
図6】
図6は、この超音波流量計における流量演算装置のハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図7】
図7は、この超音波流量計における流量演算装置のCPUが実行する処理動作の第1例(実施の形態1)を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、ゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1およびZ2i-1を例示する図である。
【
図10】
図10は、前回の伝播時間差αi-1および伝播時間和βi-1を例示する図である。
【
図11】
図11は、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijを例示する図である。
【
図12】
図12は、今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikを例示する図である。
【
図13】
図13は、今回の伝播時間差の候補αijkを例示する図である。
【
図14】
図14は、今回の伝播時間和の候補βijkを例示する図である。
【
図15】
図15は、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkを例示する図である。
【
図16】
図16は、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkを例示する図である。
【
図17】
図17は、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iの確定値を示す図である。
【
図18】
図18は、流量演算装置のCPUが実行する処理動作の第2例(実施の形態2)を説明するためのフローチャートである。
【
図20】
図20は、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkについてk-jが同じものの平均値を求めた例を示す図である。
【
図21】
図21は、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkについてj+kが同じものの平均値を求めた例を示す図である。
【
図22】
図22は、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iの確定値を示す図である。
【
図23】
図23は、流量演算装置の要部の機能ブロック図である。
【
図24】
図24は、半周期毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出するようにした例を示す図である。
【
図26】
図26は、超音波送受信器から出力される順方向および逆方向の受信信号の波形図(模式図)である。
【
図28】
図28は、順方向の受信信号と逆方向の受信信号を重ね合わせた波形図(模式図)である。
【
図30】
図30は、超音波送受信器から出力される送信信号および受信信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。先ず、実施の形態の説明に入る前に、本発明の原理について説明する。
【0037】
〔発明の原理〕
流体の成分、温度、流速は、それぞれ急激には変化しないと仮定することができる場合がある。例えば、流量計測部の前に配管があったり、バッファタンクがあったりすることで、流体の成分や温度や流速の変化は緩和され、計測間隔が十分短ければ、これらの物理量は緩やかに変化するとみなすことができる。また、流体中の音速も、流体の成分や温度、圧力などの関数とみなすことができるため、音速も計測間隔に対して急激には変化しないとみなすことができる。
【0038】
この「流体の音速(c)や流速(v)は急には変化しない」という仮定を使うことで、以下のようにして適切なゼロクロス時刻を選択することができる。
【0039】
前記の(15)式より、音速(c)が急には変化しないということから、伝播時間の和が急には変化しないとすることができる。
前記の(9)式より、音速(c)や流速(v)が急には変化しないということは、伝播時間の差が急には変化しないとすることができる。
したがって、「音速(c)や流速(v)が急には変化しない」ということは、伝播時間の差と和が急には変化しないとすることができる。
【0040】
順方向と逆方向の伝播時間をそれぞれt1、t2とする。伝播時間t1,t2は流量(流速)や温度(音速)の変化などにより時々刻々と変化する。伝播時間t1,t2は離散的に計測しているものとし、i番目に計測された伝播時間t1,t2をそれぞれt1i,t2iとする。また、順方向と逆方向のゼロクロス時刻をそれぞれZ1,Z2とし、i番目に取得されたゼロクロス時刻Z1,Z2をZ1i,Z2iとする。
【0041】
i番目に計測された伝播時間t1i,t2iには、計測されたゼロクロス時刻Z1i,Z2iに応じてそれぞれ複数の候補がある。また、ゼロクロス時刻Z1i,Z2iには、目的とするゼロクロス時刻Z1i,Z2iに対して、1周期の整数倍を加減算した複数の候補がある。
【0042】
ここで、伝播時間t1iの候補をt1ijとし、ゼロクロス時刻Z1iの候補をZ1ijとする(
図1参照)。また、伝播時間t2iの候補をt2ikとし、ゼロクロス時刻Z2iの候補をZ2ikとする(
図2参照)。また、目的とするゼロクロス時刻Z1i,Z2iをZ1it,Z2itとする。なお、j,kは候補を示す番号であり、この例では、jはj≧0の整数とし、kはk≧0の整数とする。
【0043】
この場合、t1ij,t2ikは、
t1ij=Z1ij-dly
t2ik=Z2ik-dly
と表すことができる。
【0044】
また、Z1ij,Z2ikは、
Z1ij=Z1it+tuj
Z2ij=Z2it+tuk
と表すことができる。
【0045】
i番目(今回)の伝播時間差t2i-t1iの候補をαijkとした場合、
αijk=t2ik-t1ij=Z2ik-Z1ij=Z2it-Z1it+(k-j)tu
とまとめることができる。
【0046】
また、i-1番目(前回)の順方向の伝播時間の確定値をt1i-1とし(
図3参照)、逆方向の伝播時間の確定値をt2i-1とし(
図4参照)、伝播時間差t2i-1-t1i-1をαi-1とした場合、
αi-1=t2i-1-t1i-1=Z2i-1-Z1i-1
と表される。
【0047】
ここで、今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて前回の伝播時間差αi-1からの変化分をΔαijk(Δαijk=αijk-αi-1)として求め、この前回の伝播時間差からの変化分Δαijkが最小となるようなjとkの組み合わせを求め、この組み合わせから求められるk-j=dを第1の条件とする。この段階で、k-j=dとなるjとkの組み合わせは複数の候補がある。
【0048】
同様に、i番目(今回)の伝播時間和t1i+t2iの候補をβijkとした場合、
βijk=t1ij+t2ik=Z1ij+Z2ik-2dly=Z1it+Z2it-2dly+(j+k)tu
とまとめることができる。
【0049】
また、i-1番目(前回)の順方向の伝播時間の確定値をt1i-1とし(
図3参照)、逆方向の伝播時間の確定値をt2i-1とし(
図4参照)、伝播時間差t1i-1+t2i-1をβi-1とした場合、
βi-1=t1i-1+t2i-1=Z1i-1+Z2i-1-2dly
と表される。
【0050】
ここで、今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて前回の伝播時間和βi-1からの変化分をΔβijk(Δβijk=βijk-βi-1)として求め、この前回の伝播時間差からの変化分Δβijkが最小となるようなjとkの組み合わせを求め、この組み合わせから求められるj+k=aを第2の条件とする。この段階で、j+k=aとなるjとkの組み合わせは複数の候補がある。
【0051】
そして、「k-j=d(第1の条件)」と「j+k=a(第2の条件)」の両方の条件を満たすjとkを求める。この場合、dとaが定まると、j=(a-d)/2、k=(a+d)/2により、jとkが一意的に定まる。
【0052】
そして、この求められたjとkとで示される順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2ikを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する。
【0053】
このようにすることによって、順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikの中から、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkと前回の伝播時間和からの変化分Δβijkが最も小さい組み合わせが、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定されるものとなる。これにより、順方向/逆方向ともに、常に正しいゼロクロス時刻Z1i,Z2iを選択して、正しい伝播時間t1,t2を算出することが可能となる。
【0054】
なお、本発明を実現するにあたっては、目的とするゼロクロス時刻の直前の波高に対して閾値電圧vsを十分低くしておき、受信信号の振幅の変動があっても目的とするゼロクロス時刻は確実に検出することができるようにする。
【0055】
この場合、閾値電圧vsが低いことから目的とするゼロクロス時刻よりも早いタイミングのゼロクロス時刻も検出してしまうことがあるため、これを除外するために上述したような方法で目的とするゼロクロス時刻を確定するようにする。
【0056】
〔実施の形態〕
図5に、本発明の実施の形態に係る超音波流量計100の要部を示す。同図において、
図25と同一符号は
図25を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0057】
この超音波流量計100において、第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2および第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3に対しては、「第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測工程を複数回実施し、これら計測工程毎に得られた両方向における超音波信号の伝播時間差に基づいて流体の流速vを測定し、この測定した流速vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求める流量演算装置4」が設けられている。
【0058】
流量演算装置4は、
図6に示すように、中央演算処理装置(CPU)4-1と、ランダムアクセスメモリ(RAM)4-2と、読み出し専用メモリ(ROM)4-3と、ハードディスクなどの記憶装置4-4と、入出力用のインタフェース4-5,4-6と、これらを接続する母線4-7とを備えている。
【0059】
この流量演算装置4には、本実施の形態特有のプログラムとして、流量演算プログラムがインストールされている。この流量演算プログラムは、例えばCD-ROMなどの記録媒体に記録された状態で提供され、この記録媒体から読み出されて記憶装置4-4に記録され、使用可能な状態として流量演算装置4にインストールされている。
【0060】
この流量演算装置4において、CPU4-1は、インタフェース4-5を介する入力情報を処理することで、RAM4-2やROM4-3、記憶装置4-4にアクセスしながら、流量演算装置4にインストールされている流量演算プログラムに従って動作する。以下、この流量演算プログラムに従ってCPU4-1が実行する処理動作の第1例(実施の形態1)について、
図7および
図8に分割して示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0061】
〔実施の形態1〕
CPU4-1は、インタフェース4-5を介し、第2の超音波送受信器3から出力される受信信号(
図1参照)を今回の順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧Vsを超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数回検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとして取得する(ステップS101)。この取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijは記憶装置4-4に格納される。
【0062】
なお、この例では、順方向の受信信号がプラス側からマイナス側へ移行するタイミング(ゼロ電位と交差するタイミング)をゼロクロスするタイミングとして、ゼロクロス時刻を検出するようにしている。すなわち、順方向の受信信号が閾値電圧Vsを超えた後、この順方向の受信信号が1周期(tu)毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとして取得するようにしている。
【0063】
次に、CPU4-1は、インタフェース4-5を介し、第1の超音波送受信器2から出力される受信信号(
図2参照)を今回の逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が予め設定されている閾値電圧Vsを超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数回検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとして取得する(ステップS102)。この取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikは記憶装置4-4に格納される。
【0064】
なお、この例では、逆方向の受信信号がプラス側からマイナス側へ移行するタイミング(ゼロ電位と交差するタイミング)をゼロクロスするタイミングとして、ゼロクロス時刻を検出するようにしている。すなわち、逆方向の受信信号が閾値電圧Vsを超えた後、この逆方向の受信信号が1周期(tu)毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとして取得するようにしている。
【0065】
次に、CPU4-1は、ステップS101で取得した今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとステップS102で取得した今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差「Z2ik-Z1ij」を今回の伝播時間差の候補αijkとして求める(ステップS103)。
【0066】
また、CPU4-1は、ステップS101で取得した今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとステップS102で取得した今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和「Z1ij+Z2ik」を今回の伝播時間和の候補βijkとして求める(ステップS104)。
【0067】
また、CPU4-1は、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との差「Z2i-1-Z1i-1」を前回の伝播時間差αi-1として求め(ステップS105)、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との和「Z1i-1+Z1i-1」を前回の伝播時間和βi-1として求める(ステップS106)。
【0068】
そして、CPU4-1は、ステップS103で求めた今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて、ステップS105で求めた前回の伝播時間差αi-1からの変化分Δαijk(Δαijk=αijk-αi-1)を求める(ステップS107)。
【0069】
また、CPU4-1は、ステップS104で求めた今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて、ステップS106で求めた前回の伝播時間和βi-1からの変化分Δβijk(Δβijk=βijk-βi-1)を求める(ステップS108)。
【0070】
そして、CPU4-1は、ステップS107で求めた前回の伝播時間差からの変化分Δαijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、このjとkの組み合わせから求められるk-j=dを第1の条件として求める(ステップS109)。また、ステップS108で求めた前回の伝播時間和からの変化分Δβijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、このjとkの組み合わせから求められるj+k=aを第2の条件として求める(ステップS110)。
【0071】
そして、CPU4-1は、「k-j=d(第1の条件)」と「j+k=a(第2の条件)」の両方の条件を満たすjとkを求める(ステップS111)。すなわち、k-j=dとj+k=aとを連立させて解き、j=(a-d)/2、k=(a+d)/2としてjとkを求める。
【0072】
そして、CPU4-1は、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ijの中から、ステップS111で求めたjとkとで示される順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2ikを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する(ステップS112)。
【0073】
〔実施の形態1の具体例〕
次に、実施の形態1の具体例について説明する。なお、この実施の形態1の具体例において、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1は「229.17μs」、逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1は「229.91μs」であったとする(
図9参照)。
【0074】
この場合、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との差(前回の伝播時間差)αi-1は、Z2i-1-Z1i-1=074〔μs〕として求められ、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との和(前回の伝播時間和)βi-1は、Z1i-1+Z2i-1=459.08〔μs〕として求められる(
図10参照)。
【0075】
また、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとして、Z1i0が「225.37μs」、Z1i1が「227.28μs」、Z1i2が「229.23μs」として取得され(
図11参照)、今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとして、Z2i0が「228.00μs」、Z2i1が「229.93μs」、Z2i2が「231.82μs」として取得されたものとする(
図12参照)。
【0076】
この場合、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差「Z2ik-Z1ij」を今回の伝播時間差の候補αijkとして求めると、今回の伝播時間差の候補αijkは
図13に示すようになる。
【0077】
また、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和「Z1ij+Z2ik」を今回の伝播時間和の候補βijkとして求めると、今回の伝播時間和の候補βijkは
図14に示すようになる。
【0078】
そして、今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて、前回の伝播時間差αi-1からの変化分Δαijkを「αijk-αi-1」として求めると、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkは
図15に示すようになる。また、今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて、前回の伝播時間和βi-1からの変化分Δβijkを「βijk-βi-1」として求めると、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkは
図16に示すようになる。
【0079】
図15において、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせは、j=1,k=0である(図中斜線で示したセル)。このjとkの組み合わせからk-j=dを第1の条件として求める。この場合、j=1,k=0の組み合わせからd=-1が得られ、k-j=-1が第1の条件とされる。なお、d=-1となるjとkの組み合わせは、k=1,j=2もあり(図中網線で示すセル)、このjとkの組み合わせも候補となる。
【0080】
図16において、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせは、j=1,k=2である(図中斜線で示したセル)。このjとkの組み合わせからj+k=aを第2の条件として求める。この場合、j=1,k=2の組み合わせから、a=3が得られ、j+k=3が第2の条件とされる。なお、a=3となるjとkの組み合わせは、k=1,j=2もあり(図中網線で示すセル)、このjとkの組み合わせも候補となる。
【0081】
この実施の形態1の具体例において、ゼロクロス時刻の差と和の変化分がそれぞれ小さいとして求めた2つの条件は、「k-j=-1」(第1の条件)、「j+k=3」(第2の条件)となるので、両方の条件を満たすj,kとして、すなわち前回の伝播時間差からの変化分Δαijkと前回の伝播時間和からの変化分Δβijkが最も小さい組み合わせとして、j=2,k=1が求められる。
【0082】
これにより、その求められたj=2とk=1とで示される順方向のゼロクロス時刻の候補Z1i2および逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2i1が、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定される(
図17参照)。
【0083】
〔実施の形態2〕
次に、流量演算プログラムに従ってCPU4-1が実行する処理動作の第2例(実施の形態2)について、
図18および
図19に分割して示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0084】
図18および
図19に分割して示したフローチャートにおいて、ステップS201~S208の処理は、
図7および
図8に分割して示したフローチャートにおけるステップS101~S108の処理と同じであるので、その説明は省略する。なお、この実施の形態2では、ゼロクロス時刻の差と和の変化分について、平均を用いて一次元化して、最小値を算出するものとする。
【0085】
実施の形態2において、CPU4-1は、ステップS207で求めた前回の伝播時間差からの変化分Δαijkについて、k-jが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるk-j=dを第1の条件として求める(ステップS209)。また、ステップS208で求めた前回の伝播時間和からの変化分Δβijkについて、j+kが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるj+k=dを第2の条件として求める(ステップS210)。
【0086】
そして、CPU4-1は、「k-j=d(第1の条件)」と「j+k=a(第2の条件)」の両方の条件を満たすjとkを求める(ステップS211)。すなわち、k-j=dとj+k=aとを連立させて解き、j=(a-d)/2、k=(a+d)/2としてjとkを求める。
【0087】
そして、CPU4-1は、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ijの中から、ステップS211で求めたjとkとで示される順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2ikを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する(ステップS212)。
【0088】
〔実施の形態2の具体例〕
次に、実施の形態2の具体例について説明する。なお、実施の形態2の具体例においても、実施の形態1と同様にして、ステップS207において、
図15に示すような前回の伝播時間差からの変化分Δαijkが求められ、ステップS208において、
図16に示すような前回の伝播時間和からの変化分Δβijkが求められるものとする。
【0089】
実施の形態1では、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、このiとkとの組み合わせからk-j=dを第1の条件として求めるようにした。これに対して、実施の形態2では、前回の伝播時間差からの変化分Δαijkについて、k-jが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるk-j=dを第1の条件として求めるようにする(
図20参照)。
図20に示した例では、平均値の絶対値が最小となるのは、k-j=-1の場合である。したがって、k-j=-1が第1の条件とされる。
【0090】
また、実施の形態1では、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkの絶対値が最小となるjとkの組み合わせを求め、このiとkとの組み合わせからj+k=aを第2の条件として求めるようにした。これに対して、実施の形態2では、前回の伝播時間和からの変化分Δβijkについて、j+kが同じものの平均値を求め、その平均値の絶対値が最小となるj+k=aを第2の条件として求めるようにする(
図21参照)。
図21に示した例では、平均値の絶対値が最小となるのは、j+k=3の場合である。したがって、j+k=3が第2の条件とされる。
【0091】
この実施の形態2の具体例において、ゼロクロス時刻の差と和の変化分がそれぞれ小さいとして求めた2つの条件は、k-j=-1(第1の条件)、j+k=3(第2の条件)となるので、両方の条件を満たすj,kとして、すなわち前回の伝播時間差からの変化分Δαijkと前回の伝播時間和からの変化分Δβijkが最も小さい組み合わせとして、j=2,k=1が求められる。
【0092】
これにより、その求められたj=2とk=1とで示される順方向のゼロクロス時刻の候補Z1i2および逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2i1が、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定される(
図22参照)。
【0093】
図23に、超音波流量計100における流量演算装置4の要部の機能ブロック図を示す。この流量演算装置4は、CPU4-1の処理機能として、順方向ゼロクロス時刻候補取得部41と、逆方向ゼロクロス時刻候補取得部42と、伝播時間差候補算出部43と、伝播時間和候補算出部44と、前回の伝播時間差算出部45と、前回の伝播時間和算出部46と、伝播時間差変化分算出部47と、伝播時間和変化分算出部48と、ゼロクロス時刻確定部49とを備えている
【0094】
この流量演算装置4において、順方向ゼロクロス時刻候補取得部41は、第1の超音波送受信器2からの超音波信号を受信した第2の超音波送受信器3から出力される受信信号を順方向の受信信号として取り込み、この順方向の受信信号が閾値電圧Vsを超えた後、この順方向の受信信号がゼロクロスするタイミング(この例では、順方向の受信信号が1周期毎にゼロクロスするタイミング)をゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとして取得する。
【0095】
逆方向ゼロクロス時刻候補取得部42は、第2の超音波送受信器3からの超音波信号を受信した第1の超音波送受信器2から出力される受信信号を逆方向の受信信号として取り込み、この逆方向の受信信号が閾値電圧Vsを超えた後、この逆方向の受信信号がゼロクロスするタイミング(この例では、逆方向の受信信号が1周期毎にゼロクロスするタイミング)をゼロクロス時刻として複数検出し、この検出したゼロクロス時刻のそれぞれを今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとして取得する。
【0096】
伝播時間差候補算出部43は、順方向ゼロクロス時刻候補取得部41によって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと逆方向ゼロクロス時刻候補取得部42によって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの差「Z2ik-Z1ij」を今回の伝播時間差の候補αijkとして求める。
【0097】
伝播時間和候補算出部44は、順方向ゼロクロス時刻候補取得部41によって取得された今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと逆方向ゼロクロス時刻候補取得部42によって取得された今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの全ての組み合わせについて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijと今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの和「Z1ij+Z2ik」を今回の伝播時間和の候補βijkとして求める。
【0098】
前回の伝播時間差算出部45は、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との差を前回の伝播時間差αi-1として求め、前回の伝播時間和算出部46は、順方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1と逆方向のゼロクロス時刻の前回の確定値Z2i-1との和を前回の伝播時間和βi-1として求める。
【0099】
伝播時間差変化分算出部47は、伝播時間差候補算出部43によって求められた今回の伝播時間差の候補αijkの全てについて、前回の伝播時間差算出部45によって求められた前回の伝播時間差αi-1からの変化分Δαijk(Δαijk=αijk-αi-1)を求め、伝播時間和変化分算出部48は、伝播時間和候補算出部44によって求められた今回の伝播時間和の候補βijkの全てについて、前回の伝播時間和算出部46によって求められた前回の伝播時間和βi-1からの変化分Δβijk(Δβijk=βijk-βi-1)を求める。
【0100】
ゼロクロス時刻確定部49は、伝播時間差変化分算出部に47よって求められた前回の伝播時間差からの変化分Δαijkと伝播時間和変化分算出部48によって求められた前回の伝播時間和からの変化分Δβijkとに基づいて、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikの中から、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻Z2iを確定する。
【0101】
この場合、ゼロクロス時刻確定部49は、上述した実施の形態1や実施の形態2のようにして、今回の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikの中から、前回の伝播時間差からの変化分Δαijと前回の伝播時間和からの変化分Δβijが最も小さい組み合わせを、今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iおよび今回の逆方向のゼロクロス時刻Z2iとして確定する。この確定されたゼロクロス時刻Z1i,Z2iは、次回の伝播時間差の計測に際し、ゼロクロス時刻の前回の確定値Z1i-1,Z2i-1として用いられる。
【0102】
なお、上述した実施の形態では、順方向ゼロクロス時刻候補取得部41や逆方向ゼロクロス時刻候補取得部42において、順方向の受信信号や逆方向の受信信号が1周期(tu)毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出するようにしたが、半周期(tu/2)毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出するようにしてもよい(
図24参照)。
【0103】
半周期毎にゼロクロスするタイミングをゼロクロス時刻として検出するようにしても、上述した実施の形態と同様にして、順方向/逆方向ともに、常に正しいゼロクロス時刻Z1i,Z2iを選択して、正しい伝播時間t1,t2を算出することが可能となる。
【0104】
また、ゼロクロス時刻確定部49において、確定した今回の順方向のゼロクロス時刻Z1iとこのゼロクロス時刻Z1iに連なる複数の順方向のゼロクロス時刻の候補Z1ijとの平均を求め、この平均を今回の順方向の伝播時間t1の算出に際して用いる順方向のゼロクロス時刻とし、確定した今回の逆方向のゼロクロス時刻Z2iとこのゼロクロス時刻Z2iに連なる複数の逆方向のゼロクロス時刻の候補Z2ikとの平均を求め、この平均を今回の逆方向の伝播時間t2の算出に際して用いる逆方向のゼロクロス時刻とするようにしてもよい。このようにすることにより、特許文献1と同様にして、計測される伝播時間のばらつきを小さくすることができるようになる。
【0105】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0106】
1…配管、2…第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)、3…第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)、4…流量演算装置、4-1…中央演算処理装置(CPU)、4-2…ランダムアクセスメモリ(RAM)、4-3…専用メモリ(ROM)、4-4…記憶装置、4-5,4-6…インタフェース、4-7…母線、41…順方向ゼロクロス時刻候補取得部、42…逆方向ゼロクロス時刻候補取得部、43…伝播時間差候補算出部、44…伝播時間和候補算出部、45…前回の伝播時間差算出部、46…前回の伝播時間和算出部、47…伝播時間差変化分算出部、48…伝播時間和変化分算出部、49…ゼロクロス時刻確定部、100…超音波流量計。