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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】重力式濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20221110BHJP
   C02F 3/02 20060101ALI20221110BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20221110BHJP
   B01D 29/62 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B01D23/02 Z
C02F3/02 Z
B01D23/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018173460
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044479
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】大矢知 裕行
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055282(JP,A)
【文献】特開平06-312193(JP,A)
【文献】特開平09-215986(JP,A)
【文献】特開2001-009488(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0046076(KR,A)
【文献】国際公開第2015/072513(WO,A1)
【文献】特開2007-237053(JP,A)
【文献】特表2013-508140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
C02F 3/02-3/10
C02F 9/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を下向流によって濾過処理する重力式濾過装置であって、
被処理水の導入部が上部に設けられ、被処理水の取出部が下部に設けられた処理槽と、
前記処理槽の前記導入部の下方に設けられた、微生物が担持された生物浄化層と、
前記生物浄化層の下方に配置され、前記生物浄化層を支持すると共に、前記生物浄化層を通過した処理水を下方に透過させる支持層と、
前記支持層を通過した被処理水中の不溶成分を捕捉して分離するセラミックス濾過体が配置された濾過層とを備えており、
前記セラミックス濾過体は、上端面に設けられた被処理水の導入口と、該導入口から上下方向に伸びる流路と、該流路を仕切る濾過壁とを有し、
前記処理槽の前記取出部は、前記濾過層の外周に配置されており、
前記被処理水は、前記処理槽の導入部から、前記生物浄化層、前記支持層、前記セラミックス濾過体の導入口、前記流路、前記濾過壁を通過し、前記取出部から取出されるように構成されていることを特徴とする重力式濾過装置。
【請求項2】
前記セラミックス濾過体は、上下方向に伸びる柱状をなし、その内部に多数の前記流路が並列して上下に伸びるように形成されており、前記流路の上端が開口して前記導入口をなしており、前記流路を囲むセラミックス壁が前記濾過壁をなしている請求項1記載の重力式濾過装置。
【請求項3】
前記濾過層の前記セラミックス濾過体の外側空間に、逆洗水を導入する逆洗水導入部が設けられ、前記濾過層の下方には、逆洗用下方空間が設けられ、該逆洗用下方空間には、開閉弁を有する逆洗水取出部が設けられており、前記セラミックス濾過体の前記流路の下端には、前記逆洗用下方空間に連通する導出口が形成されている、請求項1又は2記載の重力式濾過装置。
【請求項4】
前記濾過は、前記セラミックス濾過体を複数有し、前記セラミックス濾過体の周囲であって、複数の前記セラミックス濾過体どうしの空隙には、粒状物が充填されている請求項1~3のいずれか1つに記載の重力式濾過装置。
【請求項5】
前記濾過層には、複数の支持孔が形成されてハニカム構造をなしたコンクリート製の濾過体支持部が設けられており、各前記支持孔に前記セラミック濾過体が挿入されて支持されている請求項1~3のいずれか1つに記載の重力式濾過装置。
【請求項6】
前記被処理水の沈殿槽の下流側に配置される請求項1~5のいずれか1つに記載の重力式濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、上水や下水等における被処理水を濾過処理するための、重力式濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場等では、例えば、次のようにして、処理すべき被処理水が処理される。すなわち、処理場に取水された被処理水は、沈砂池で砂や土が沈殿されて除去された後、着水井から薬品混和地に送られ、凝集剤等の薬品と混ぜられて、懸濁物質等が凝集される。その後、被処理水は、フロック形成池に送られて攪拌され、塊状のフロックが形成される。次いで、被処理水は、沈澱池に送られフロックが沈殿された後、濾過処理される。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、原水に凝集剤を添加して急速撹拌槽においてマイクロフロックを形成し(凝集工程)、反応槽においてエアレーション撹拌を行ってフロックを粗大化し(フロック化工程)、沈殿槽において粗大フロックを沈降分離して上澄水を槽外設置された分離膜に送水し、同分離膜が、クロスフローろ過を行って処理水を取り出すようにした、凝集-膜ろ過方法が記載されている。また、上記分離膜として、モノリス型のセラミック濾過膜を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-226285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような被処理水の処理方法や、特許文献1に記載の凝集-膜ろ過方法では、いずれも濾過処理の過程において、懸濁物質を凝集させる工程、及び、それをフロック化させる工程があるため、処理の効率が良くなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、凝集及びフロック化工程を行わなくても、被処理水の濾過処理を効率良く行うことができる、重力式濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、被処理水を下向流によって濾過処理する重力式濾過装置であって、被処理水の導入部が上部に設けられ、被処理水の取出部が下部に設けられた処理槽と、前記処理槽の前記導入部の下方に設けられた、微生物が担持された生物浄化層と、前記生物浄化層の下方に配置され、前記生物浄化層を支持すると共に、前記生物浄化層を通過した処理水を下方に透過させる支持層と、前記支持層を通過した被処理水中の不溶成分を捕捉して分離するセラミックス濾過体が配置された濾過層とを備えており、前記セラミックス濾過体は、上端面に設けられた被処理水の導入口と、該導入口から上下方向に伸びる流路と、該流路を仕切る濾過壁とを有し、前記処理槽の前記取出部は、前記濾過層の外周に配置されており、前記被処理水は、前記処理槽の導入部から、前記生物浄化層、前記支持層、前記セラミックス濾過体の導入口、前記流路、前記濾過壁を通過し、前記取出部から取出されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
上記発明によれば、被処理水は、処理槽の導入部から、生物浄化層を通って、含有される有機物等が微生物によって分解される。次いで、支持層を通って、セラミックス濾過体の導入口から流路を通り、濾過壁を通過して不溶成分を除去され、セラミックス濾過体の外側に流出する。こうして、含有する有機物等の成分や、不溶成分を除去されて清浄化された被処理水は、濾過層の外周に配置された取出部から取出される。したがって、この重力式濾過装置においては、凝集及びフロック化工程を行わなくても、被処理水の濾過処理を効率良く行うことができる。
【0009】
本発明の重力式濾過装置においては、前記セラミックス濾過体は、上下方向に伸びる柱状をなし、その内部に多数の前記流路が並列して上下に伸びるように形成されており、前記流路の上端が開口して前記導入口をなしており、前記流路を囲むセラミックス壁が前記濾過壁をなしていることが好ましい。
【0010】
上記態様によれば、セラミック濾過体が、上下方向に伸びる柱状をなし、その内部に多数の流路が並列して上下に伸びるように形成されているので、被処理水が通過する濾過壁の表面積を大きくとって、濾過効率を高めることができる。
【0011】
本発明の重力式濾過装置においては、前記濾過層の前記セラミックス濾過体の外側空間に、逆洗水を導入する逆洗水導入部が設けられ、前記濾過層の下方には、逆洗用下方空間が設けられ、該逆洗用下方空間には、開閉弁を有する逆洗水取出部が設けられており、前記セラミックス濾過体の前記流路の下端には、前記逆洗用下方空間に連通する導出口が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様によれば、通常運転時には、開閉弁を閉じておくことにより、逆洗用下方空間が被処理水で充満するため、セラミックス濾過体の流路に流入した被処理水は、逆洗用下方空間に流入できなくなり、濾過壁を通過して、濾過層の外周に配置された取出部から取出される。
【0013】
一方、セラミックス濾過体の濾過壁や流路内壁に不溶成分が堆積した場合には、目詰まりを防止するために逆洗を行う必要がある。この逆洗時には、開閉弁を開いて、濾過層の外周の逆洗水導入部から逆洗水を流入させ、前記濾過層に配置された前記セラミックス濾過体の外周から、濾過壁を通過させて逆洗水を流路内に流入させる。この逆洗水は、流路内壁に堆積した不溶成分を剥がして、セラミックス濾過体の流路の下端の導出口から、前記不溶成分と共に逆洗用下方空間に流入し、逆洗水取出部から取出される。この逆洗水は、必要に応じて被処理水の供給側に戻すことができる。なお、濾過層の外周に配置された取出部を、逆洗水導入部として利用することもできる。
【0014】
本発明の重力式濾過装置においては、前記濾過は、前記セラミックス濾過体を複数有し、前記セラミックス濾過体の周囲であって、複数の前記セラミックス濾過体どうしの空隙には、粒状物が充填されていることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、セラミック濾過体の周囲であって、複数のセラミック濾過体どうしの空隙に、粒状物が充填されているので、各セラミック濾過体により濾過処理された被処理水の流動を妨げないようにしつつ、複数のセラミック濾過体を並列した状態に支持させやすくすることができる。
【0016】
本発明の重力式濾過装置においては、前記濾過層には、複数の支持孔が形成されてハニカム構造をなしたコンクリート製の濾過体支持部が設けられており、各前記支持孔に前記セラミック濾過体が挿入されて支持されていることが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、セラミック濾過体は、複数の支持孔が形成されてハニカム構造をなしたコンクリート製の濾過体支持部の支持孔に挿入されて支持されているので、複数のセラミック濾過体を並列した状態で倒れないように確実に支持することができると共に、ハニカム構造によって、各セラミック濾過体により濾過処理された被処理水の流動を妨げないようにすることができる。
【0018】
本発明の重力式濾過装置は、前記被処理水の沈殿槽の下流側に配置されることが好ましい。上記態様によれば、この重力式濾過装置は、沈殿槽の下流側に配置されるので、比較的大きな不溶成分が沈殿槽により沈殿除去された被処理水を、更に重力式濾過装置によって濾過処理することができ、濁度が高い被処理水であっても、効率よく濾過処理することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理水は、処理槽の導入部から生物浄化層を通って、有機物等が微生物によって分解された後、支持層を通って、セラミックス濾過体の導入口から流路を通り、濾過壁を通過して不溶成分を除去され、セラミックス濾過体の外側に流出することで、取出部から取出されるので、凝集及びフロック化工程を行わなくても、被処理水の濾過処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る重力式濾過装置の一実施形態を示す断面説明図である。
図2】同重力式濾過装置を適用した、浄水処理構造を示す説明図である。
図3】同重力式濾過装置の濾過層を構成するセラミックス濾過体の、一部を破断した状態の断面斜視図である。
図4】同重力式濾過装置の濾過層を構成する濾過体支持部、及び、同濾過体支持部により支持されたセラミックス濾過体を示す、斜視図である。
図5】同重力式濾過装置において、複数のセラミックス濾過体を支持するための、他構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る重力式濾過装置の、一実施形態について説明する。
【0022】
この重力式濾過装置は、被処理水を下向流(図1の矢印参照)によって濾過処理するものである。また、この重力式濾過装置は、主として、上水道の原水を浄水処理するための過程に設置されるものであるが、利用箇所は特に限定されない。
【0023】
図1に示すように、この実施形態の重力式濾過装置10(以下、単に「濾過装置10」ともいう)は、主として、処理槽20と、微生物が担持された生物浄化層30と、生物浄化層30の下方に配置された支持層35と、支持層35の下方に配置され、セラミックス濾過体50が配置された濾過層40と、セラミックス濾過体50の目詰まりを抑制するための、逆洗水による洗浄構造(逆洗水導入部、逆洗用下方空間R、及び逆洗水取出部70)とを有している。
【0024】
また、図2に示すように、この濾過装置10の上流側には、被処理水W中に含有された、砂や土、汚泥等の懸濁物質や、その他の固形物などの、比較的大きな不溶成分を沈殿して除去するための、沈殿槽1が設置されている。すなわち、この濾過装置10は、このような沈殿槽1の下流側に直接設置されている。また、沈殿槽1の底部側には、沈殿した不溶成分を、凹部2に掻き寄せるための、掻き寄せ機3が設置されている。
【0025】
前記処理槽20は、底壁21と、該底壁21の周縁から立設した側壁22とを有し、上方が開口した有底箱状をなしている。この処理槽20の上部、すなわち、上方の開口部に、被処理水Wを処理槽20内に導入するための、導入部23が設けられている。また、この処理槽20の内側には、上方から下方に向けて順に、生物浄化層30、支持層35、濾過層40が配置されている。言い換えると、濾過層40と、支持層35と、生物浄化層30とが、下方から上方に向けて積層された構造となっている。
【0026】
また、底壁21の上方には、所定距離をあけて底壁21と平行に配置された、隔壁24が設けられている。この隔壁24と、底壁21と、側壁22の下方部分とで囲まれた空間が、逆洗用下方空間Rをなしている。なお、この逆洗用下方空間Rは、前記濾過層40の下方に位置している。また、隔壁24には、セラミックス濾過体50の下端部を支持すると共に、セラミックス濾過体50の内部と逆洗用下方空間Rとを連通させる、開口孔24aが形成されている。すなわち、図1に示すように、開口孔24aの内径は、セラミックス濾過体50の下端部外径よりも小さく形成されており、開口孔24aの周縁部で、セラミック濾過体50を支持可能となっている。
【0027】
更に、処理槽20の下部には、濾過処理された被処理水Wを処理槽20から取出すための、取出部が設けられている。この実施形態では、処理槽20の側壁22の、濾過層40に整合する位置に設けた流通口25が取出部をなしている。この流通口25は、濾過層40に設けられた濾過体支持部60の外周の空隙Cを連通させる連通路62に連通するように形成されている。
【0028】
この流通口25が、本発明における「取出部」をなしている。また、この流通口25は、濾過層40のセラミックス濾過体50の外側空間に、逆洗水Bを導入するための、本発明における「逆洗水導入部」ともなっている。
【0029】
なお、上記構造をなした処理槽20は、例えば、コンクリートや、鋼等の金属材料、FRP等の樹脂材料、などから形成することができる。
【0030】
また、前記逆洗用下方空間Rには、開閉弁73を有する逆洗水取出部70が設けられている。すなわち、処理槽20の側壁22の下部側であって、前記逆洗用下方空間Rに整合する位置に、逆洗水Bを取出すための、逆洗水取出口71が形成されている。この逆洗水取出口71からは、重力式濾過装置10の下流側に、逆洗水Bを流通させるための、配管72が伸びている。この配管72の途中に、配管72の内部流路を開閉するための、開閉弁73が設けられている。
【0031】
更に、微生物が担持された前記生物浄化層30は、前記処理槽20の内側であって、前記導入部23の下方に設けられている。生物浄化槽30としては、当業界で公知のものが採用でき、その材質や構造について特に限定されないが、一般的には微生物が担持された担体が充填された層で構成されている。担体としては、例えば、プラスチックのパイプ、繊維状プラスチック、粒状活性炭、ゼオライト、珪砂、ろ過砂などが使用できる。被処理水Wを流通させることによって、これらの担体の表面に微生物が付着堆積して担持され、生物浄化槽30となる。そして、導入部23から処理槽20内に導入された、被処理水Wは、下向流によって生物浄化層30を下向きに通過する際に、被処理水Wに含有された有機物等が、微生物によって分解されるようになっている。
【0032】
また、前記支持層35は、前記処理槽20の内側であって、前記生物浄化層30の下方に配置され、生物浄化層30を支持すると共に、生物浄化層30を通過した処理水を下方に透過させるものとなっている。この実施形態の支持層35は、前記生物浄化層30の下方に配置された第1支持層36と、この第1支持層36の下方に配置された第2支持層38とから構成されている。
【0033】
前記第1支持層36は、例えば、砂等の、比較的小さい粒径の支持材からなり、生物浄化層30を通過した被処理水Wを、下向きに通過させる。一方、前記第2支持層38は、例えば、玉砂利や、軽石等の、比較的径が大きい支持材からなり、前記第1支持層36を支持する。更に、第2支持層38は、第1支持層36を通過した、被処理水Wを下方に向けて通過させるものでもある。
【0034】
なお、この実施形態の支持層35とは、第1支持層36及び第2支持層38からなる多層構造(二層構造)をなしているが、単層構造としたり、三層以上の多層構造としてもよく、特に限定はされない。
【0035】
前記濾過層40は、支持層35の下方、ここでは第2支持層38の下方に配置されるものであって、支持層35を通過した被処理水W中の不溶成分を捕捉して分離する、セラミックス濾過体50(以下、単に「濾過体50」ともいう)が配置されている。
【0036】
図3を併せて参照すると、この濾過体50は、上下方向に伸びる略円柱状をなしており、その上端面51に設けられた被処理水Wの導入口52と、この導入口52から上下方向に伸びる流路53と、この流路53を仕切る濾過壁54とを有している。なお、濾過体50の軸方向長さは、濾過層40に設けられた、後述する濾過体支持部60の高さ(上下方向に沿った長さ)よりも大きく形成されている。
【0037】
この実施形態では、図4に示すように、上記構成をなした濾過体50が、所定間隔を空けて、濾過層40の所定範囲(ここでは、ほぼ全域)に亘って互いに平行となるように、複数個並列して配置されている。なお、各濾過体50は垂直に立設した状態となっている(すなわち、濾過体50の軸方向が、処理槽20の上下方向に沿って配置される)。
【0038】
また、図3に示すように、濾過体50の内部には、多数の前記流路53が並列して上下に伸びるように形成されている。なお、この実施形態の流路53は、断面が略六角形状をなしている。そして、各流路53の上端が開口して、前記導入口52が形成されており、各流路53を囲むセラミックス壁が前記濾過壁54をなしている。すなわち、この実施形態における濾過体50は、いわゆるモノリス型をなしている。また、各流路53の下端も開口して、前記逆洗用下方空間Rに連通する、導出口55が形成されている。更に、濾過体50の上下方向所定位置には、濾過体50の径方向中央から外径方向に向けて、スリット状に切欠かれて伸びる、スリット状流出口57が複数形成されている。
【0039】
なお、この実施形態の濾過体50は、その内部に図示しない孔を無数に有する、多孔質セラミックスで形成されている。また、この実施形態における流路53は、その断面が六角形状をなしているが、丸穴や、三角孔、四角孔等をなしていてもよい。
【0040】
そして、前記被処理水Wは、図1の矢印に示すような下向流によって、処理槽20の上方から下方に向けて流通するようになっており、具体的に被処理水Wは、処理槽20の導入部23から、生物浄化層30、支持層35(ここでは第1支持層36及び第2支持層38)、セラミックス濾過体50の導入口52、流路53、濾過壁54を通過して、取出部(流通口25)から取出されるように構成されている。また、この実施形態における濾過体50においては、前記濾過壁54によって(特に濾過壁54の無数の孔)、被処理水Wの不溶成分を捕捉・除去して濾過可能とすると共に、同被処理水Wを通過させて、濾過体50の外周面(径方向外方に沿った周面)から流出させるようになっている。
【0041】
ところで、流路53の下端に形成された導出口55は、逆洗用下方空間R内に被処理水Wが充満した状態で、閉塞されるようになっている。そのため、この状態で、導入口52から被処理水Wが導入されると、被処理水Wは流路53を流通して、取出口(流通口25)から取出されることとなる。また、前記スリット状流出口57は、濾過体50の外周面から流出されにくい、濾過体50の径方向中央に位置する流路53から、被処理水Wを流出させやすくするものである(図3参照)。
【0042】
また、濾過層40には、複数の支持孔61が形成されて、ハニカム構造をなしたコンクリート製の濾過体支持部60(以下、単に「支持部60」ともいう)が設けられている。
【0043】
図4を併せて参照すると、前記支持孔61は、支持部60の上端面から下端面に至るまで、支持部60の上下方向に沿って伸びる、六角孔状をなしている。この六角孔状をなした支持孔61が、支持部60の縦方向及び横方向に複数個並列して形成されて、ハニカム状をなしている。また、各支持孔61の内部には、円柱状をなした濾過体50がそれぞれ挿入されている。その結果、支持孔61の内周と、濾過体50の外周との間に、空隙Cが形成されるようになっている。また、隣接する支持孔61,61に形成された空隙C,Cどうしは、連通路62(図1参照)によって互いに連通されている。
【0044】
更に図1に示すように、支持部60の、処理槽20の側壁22に近接する箇所には、本発明における「取出部」及び「逆洗水導入部」をなす前記流通口25が設けられている。この流通口25は、上記連通路62の1つに連通し、連通路62を介して、各濾過体50の外周に配置された隙間Cに連通するように構成されている。
【0045】
また、濾過体50は、前述したように、支持部60の高さよりも長いので、図1に示すように、支持部60の支持孔61に挿入した状態では、濾過体50の上端部が、支持孔61の上方開口から所定長さ突出すると共に、濾過体50の下端部が、隔壁24の開口孔24aに支持されて、濾過体50の導出口55が逆洗用下方空間Rと連通するようになっている。また、支持孔61の下端部内周と、濾過体50の下端部外周との間の隙間は、ゴム等からなる環状の第1シール部材S1により閉塞されている。その結果、支持孔61内周と濾過体50外周との間の空隙Cと、逆洗用下方空間Rとが、隙間なく区分けされて、逆洗用下方空間R内の被処理水Wや逆洗水Bが、前記空隙C内へと逆流することが防止されるようになっている。
【0046】
一方、支持部60の支持孔61の上端部内周と、濾過体50の上端部外周との間の隙間も、ゴム等からなる環状の第2シール部材S2により閉塞されている。この第2シール部材S2によって、支持孔61内周と濾過体50外周との間の空隙Cと、第2支持層38が配置される空間とが、隙間なく区分けされるようになっている。なお、濾過体50の支持は、その下端部が隔壁24の開口孔24aに支持されたものに限られない。例えば、第1シール部材S1及び第2シール部材S2による把持により、支持されたものであってもよい。
【0047】
また、支持孔61の上方開口から突出した、濾過体50の上端部外周には、略ハット状をなしたキャップ65が配置されている。このキャップ65は、支持層35等の上部荷重を支持し得る構造部材となっている。また、このキャップ65には、図示しない複数の流入孔が形成されている。なお、キャップ65に形成された流入孔は、第2支持層38の玉砂利等の支持材の外径よりも、小さい内径とされており、第2支持層38の支持材の流入が阻止されるようになっている。また、このキャップ65は配置しなくてもよく、本濾過装置10は、キャップ無しでも成り立つものであり、キャップは任意部材である。
【0048】
したがって、支持層35の第2支持層38を通過した被処理水Wは、前記第2シール部材S2によって、前記空隙C内への流入を阻止されつつ、キャップ65の図示しない流入孔を通過して、濾過体50の上端面51に設けられた導入口52(図3参照)へと流入するようになっている。
【0049】
上記のように、この実施形態においては、コンクリート製の濾過体支持部60の複数の支持孔61に、濾過体50をそれぞれ挿入配置することで、複数の濾過体50が垂直に立設して並列配置された状態に保持される(図1及び図4参照)。また、濾過体50の下端部が第1シール部材S1により支持され、同濾過体50の上端部が第2シール部材S2により支持されることで、濾過体50が、支持孔61内で傾いて倒れないように支持されて、垂直に立設した姿勢が維持されるようなっている(図1参照)。
【0050】
なお、複数の濾過体50の倒れを防止して並列状態を保持する構造としては、例えば、図5に示すような構造としてもよい。すなわち、図5に示す構造では、濾過体50の周囲であって、複数の濾過体50,50どうしの空隙に、例えば、石や、砂、砂利等の粒状物58が充填されている。この場合には、石や、砂、砂利等の粒状物の隙間が、前記隙間C及び連通路62と同じ役割をなす。
【0051】
次に、上記のような構造をなした、本発明の重力式濾過装置10による濾過処理工程、及び、その作用効果について説明する。
【0052】
図2に示すように、沈澱池1に導入された被処理水Wは、沈殿槽1内で、砂や土、汚泥等の懸濁物質や、その他の固形物などの、比較的大きな不溶成分が沈殿除去された後、処理槽20の上方の導入部23から処理槽20内に導入される。なお、逆洗水取出部70の開閉弁73は閉じておく。そして、被処理水Wは、処理槽20の上方から下方に向かう下向流によって、処理槽20内の生物浄化層30、支持層35、濾過層40を、順次流通する。
【0053】
図1に示すように、処理槽20に導入された被処理水Wは、初めに生物浄化層30を通過する。すると、被処理水Wに含有される有機物等が、生物浄化層30に担持された微生物によって分解される。次いで、被処理水Wは、支持層35を構成する、第1支持層36及び第2支持層38を通過する。
【0054】
その後、支持層35を通過した被処理水Wは、キャップ65の図示しない流入孔を通過して、濾過体50の上端面51に設けられた導入口52(図3参照)へと流入する。この場合、重力式濾過装置10の運転初期段階では、導入口52から流路53内に流入した被処理水Wは、下方へと流れて導出口55から流出して、逆洗用下方空間R内に充満する。それによって、導出口55は被処理水Wによって閉塞された状態となる。そのため、これ以降に、導入口52から流路53内に流入した被処理水Wは、逆洗用下方空間Rに流入できなくなる。その結果、被処理水Wは、濾過壁54を通過して、支持孔61内周と各濾過体50外周との間の空隙C内へと流出し、更に、支持部60の連通路62を通過して、取出部である流通口25から、処理槽20の外部へと取出されるようになっている。そして、上記のように、被処理水Wは、濾過体50の濾過壁54を通過するので、生物浄化層30では除去できなかった、被処理水W中の不溶成分が捕捉されて除去され、被処理水Wが清浄化される。
【0055】
なお、支持部60に設けられた、隣接する支持孔61,61に形成された空隙C,Cどうしは、連通孔62によって互いに連通されているので、例えば、濾過層40の中央に配置された濾過体50を通過する被処理水Wであっても、取出部である流通口25から、処理槽20の外部へと取出されることとなる。
【0056】
以上のように、この濾過装置10では、被処理水Wは、処理槽20の導入部23から生物浄化層30を通って、含有した有機物等が微生物によって分解された後、支持層35を通って、濾過体50の導入口52から流路53を通過し、更に濾過壁54を通過することで、不溶成分が除去されて、濾過体50の外側に流出する。こうして、有機物等の成分や不溶成分が除去されて清浄化された被処理水Wは、取出部(流通口25)から取出される。したがって、この濾過装置10においては、従来のように、凝集工程やフロック化工程を行わなくても、被処理水Wの濾過処理を効率良く行うことができる。また、この濾過装置10においては、従来の浄水処理場のように、薬品混和池やフロック形成池が不要となるので、被処理水Wの清浄化のためのコスト(装置設置のためのコストや、ランニングコスト等)を低減することができる。
【0057】
また、この実施形態の濾過装置10は、図2に示すように、沈殿槽1の下流側に配置されるようになっている、そのため、比較的大きな不溶成分が沈殿槽1により沈殿除去された被処理水Wを、更に重力式濾過装置10によって濾過処理することができ、濁度が高い被処理水Wであっても、効率よく濾過処理することができる。
【0058】
更に、この実施形態においては、図1図3等に示すように、濾過体50は、上下方向に伸びる柱状をなし、その内部に多数の流路53が並列して上下に伸びるように形成されており、各流路53の上端が開口して導入口52をなしており、各流路53を囲むセラミックス壁が濾過壁54をなしている。そのため、被処理水Wが通過する濾過壁54の表面積を大きくとって、濾過効率を高めることができる。
【0059】
また、この実施形態においては、図4に示すように、濾過層40には、複数の支持孔61が形成されてハニカム構造をなしたコンクリート製の濾過体支持部60が設けられており、各支持孔61に各濾過体50が挿入されて支持されている。そのため、複数の濾過体50を並列した状態で倒れないように確実に支持することができると共に、ハニカム構造によって、各濾過体50により濾過処理された被処理水Wの流動を妨げないようにすることができる。
【0060】
なお、図5に示すように、濾過体50の周囲であって、複数の濾過体50,50どうしの空隙に、粒状物58が充填されている場合には、各濾過体50により濾過処理された被処理水Wの流動を妨げないようにしつつ、複数の濾過体50を並列した状態に支持させやすくすることができる。
【0061】
ところで、上記のような濾過装置10を長期に亘って使用した場合には、濾過体50の流路53の内壁に不溶成分が堆積して、目詰まりが生じることがある。この目詰まりを解消するために、逆洗水導入部、逆洗用下方空間R、及び逆洗水取出部70を通して、逆洗水による洗浄がなされる。
【0062】
その際には、まず、逆洗水取出部70の開閉弁73を開く。それにより、逆洗用下方空間R内に充満した被処理水Wが、逆洗水取出口71から配管72の下流側へと流動可能となり、濾過体50の流路53の下端側の導出口55(図3参照)から流出可能となる。それと共に、濾過層40の外周の逆洗水導入部をなす流通口25から、逆洗水Bを、支持部60の連通路62を通して、支持孔61内周と各濾過体50外周との間の空隙C内へと流入させる。その後、逆洗水Bは、濾過体50の外周から濾過壁54を通過して流路53内に流入するので、流路53の内壁に堆積した不溶成分を剥がすことができる。更に逆洗水Bは、流路53の下端の導出口55から、不溶成分と共に逆洗用下方空間R内に流入し、逆洗水取出口71から取出されて、配管72の下流側へと流動する。このようにして、濾過体50の流路53の内壁に堆積した不溶成分を剥がすことで、その目詰まりを解消して、濾過体50の濾過処理性能を復活させることができる。なお、逆洗水取出口71から取出された逆洗水は、必要に応じて被処理水Wの供給側に戻すことができる。
【0063】
また、この実施形態においては、濾過層40の外周に配置された取出部である流通口25を、逆洗水導入部として利用することもできるので、逆洗水による洗浄構造を簡素化することができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 沈殿槽
2 凹部
3 掻き寄せ機
10 重力式濾過装置(濾過装置)
20 処理槽
21 底壁
22 側壁
23 導入部
24 隔壁
24a 開口孔
25 流通口
30 生物浄化層
35 支持層
36 第1支持層
38 第2支持層
40 濾過層
50 セラミックス濾過体(濾過体)
51 上端面
52 導入口
53 流路
54 濾過壁
55 導出口
57 スリット状流出口
58 粒状物
60 濾過体支持部(支持部)
61 支持孔
62 連通路
65 キャップ
70 逆洗水取出部
71 逆洗水取出口
72 配管
73 開閉弁
B 逆洗水
C 空隙
F 下向流
R 逆洗用下方空間
S1 第1シール部材
S2 第2シール部材
W 被処理水
図1
図2
図3
図4
図5