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特許7174592インクジェットヘッドのキャッピング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドのキャッピング装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018203515
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020069667
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255538(JP,A)
【文献】特開2009-226722(JP,A)
【文献】特開2011-255620(JP,A)
【文献】特開2006-192608(JP,A)
【文献】特開2008-143071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルプレートに並んだ複数のノズルから金属ナノインクを吐出するインクジェットヘッドをキャッピングするキャップユニットを備え、
前記キャップユニットは、
基台と、
前記基台上に交換可能に配置される平状のキャップ材と、
前記基台上で前記キャップ材を取り囲むように設けられた弾性体と、
前記弾性体に前記ノズルプレートが密接することにより形成され、前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間が前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルから吐出された金属ナノインクで満たされることにより、前記キャップユニットのキャッピングが行われる密閉空間部とを備え
前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間を満たした金属ナノインクを、前記キャップユニットのキャッピングがオフされた後において、前記キャップ材上で吸引して除去する吸引部と、
前記キャップ材上の前記金属ナノインクが除去された後において、前記キャップ材を前記キャップユニットから回収する回収部とを備えるインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項2】
ノズルプレートに並んだ複数のノズルから金属ナノインクを吐出するインクジェットヘッドをキャッピングするキャップユニットを備え、
前記キャップユニットは、
基台と、
前記基台上に交換可能に配置される平状のキャップ材と、
前記基台上で前記キャップ材を取り囲むように設けられた弾性体と、
前記弾性体に前記ノズルプレートが密接することにより形成され、前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間が前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルから吐出された金属ナノインクで満たされることにより、前記キャップユニットのキャッピングが行われる密閉空間部とを備え、
前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間を満たした金属ナノインクを、前記キャップユニットのキャッピングがオフされた後において、前記キャップ材上でワイピングして除去するワイプ部と、
前記キャップ材上の前記金属ナノインクが除去された後において、前記キャップ材を前
記キャップユニットから回収する回収部を備えるインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項3】
ノズルプレートに並んだ複数のノズルから金属ナノインクを吐出するインクジェットヘッドをキャッピングするキャップユニットを備え、
前記キャップユニットは、
基台と、
前記基台上に交換可能に配置される平状のキャップ材と、
前記基台上で前記キャップ材を取り囲むように設けられた弾性体と、
前記弾性体に前記ノズルプレートが密接することにより形成され、前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間が前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルから吐出された金属ナノインクで満たされることにより、前記キャップユニットのキャッピングが行われる密閉空間部とを備え、
前記基台上に配置された前記キャップ材を前記キャップ材の交換品と交換する交換部と、
前記キャップ材の前記交換品が蓄えられるストック部とを備えるインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間を満たした金属ナノインクを、前記キャップユニットのキャッピングがオフされた後において、前記キャップ材上で吸引して除去する吸引部を備える請求項3に記載のインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間を満たした金属ナノインクを、前記キャップユニットのキャッピングがオフされた後において、前記キャップ材上でワイピングして除去するワイプ部を備える請求項3に記載のインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項6】
前記キャップ材上の前記金属ナノインクが除去された後において、前記キャップ材を前記キャップユニットから回収する回収部を備える請求項4又は請求項5に記載のインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項7】
前記基台上に配置された前記キャップ材を前記キャップ材の交換品と交換する交換部と、
前記キャップ材の前記交換品が蓄えられるストック部とを備える請求項1又は請求項2に記載のインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間の距離は、前記インクジェットヘッドの前記複数のノズルから吐出された金属ナノインクの表面張力が働く距離以下である請求項1乃至7のいずれか1つに記載のインクジェットヘッドのキャッピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットヘッドのキャッピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのキャッピング装置に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、インクを吐出するためのノズルを有した吐出ヘッドを備えてなるインクジェット装置の、非使用時における保守方法であって、前記吐出ヘッドのノズル形成面に前記ノズルを覆って粘着テープを貼着し、粘着テープを貼着した状態で該ノズルからインクを押し出して該ノズル内と前記粘着テープの貼着面との間をインクで満たすことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-326291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特徴は、上記特許文献1によれば、特に非使用状態が長期間続く場合のインクジェット装置の保守方法として、ノズル詰まりをより確実に防止することができるとされるが、金属ナノインクを吐出するインクジェットヘッドについて、更に好適に、ノズル詰まりを防止することが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、インクジェットヘッドが有する複数のノズルにおいて金属ナノインクの固化を防止することが可能なインクジェットヘッドのキャッピング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ノズルプレートに並んだ複数のノズルから金属ナノインクを吐出するインクジェットヘッドをキャッピングするキャップユニットを備え、キャップユニットは、基台と、基台上に交換可能に配置される平状のキャップ材と、基台上でキャップ材を取り囲むように設けられた弾性体と、弾性体にノズルプレートが密接することにより形成され、インクジェットヘッドとキャップ材との間がインクジェットヘッドの複数のノズルから吐出された金属ナノインクで満たされることにより、キャップユニットのキャッピングが行われる密閉空間部とを備え、前記インクジェットヘッドと前記キャップ材との間を満たした金属ナノインクを、前記キャップユニットのキャッピングがオフされた後において、前記キャップ材上で吸引して除去する吸引部と、前記キャップ材上の前記金属ナノインクが除去された後において、前記キャップ材を前記キャップユニットから回収する回収部とを備えるインクジェットヘッドのキャッピング装置を、開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、インクジェットヘッドのキャッピング装置は、インクジェットヘッドが有する複数のノズルにおいて金属ナノインクの固化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インクジェットヘッドのキャッピング装置と印刷装置を示す図である。
図2】制御装置を示すブロック図である。
図3】インクジェットヘッドのキャッピング装置の作動の流れを示すフローチャートである。
図4】インクジェットヘッドのキャッピング装置と印刷装置を示す図である。
図5】ストックユニットと着脱ヘッドが図4の線I-Iで切断された断面を示す図である。
図6】キャップユニットにおけるノズル領域の位置を示す平面図である。
図7】インクジェットヘッドのキャッピング装置と印刷装置を示す図である。
図8】キャップユニットと着脱ヘッドが図7の線II-IIで切断された断面を示す図である。
図9】キャップユニットと着脱ヘッドが図7の線II-IIで切断された断面を示す図である。
図10】インクジェットヘッドのキャッピング装置と印刷装置を示す図である。
図11】キャップユニットとインクジェットヘッドが図10の線III-IIIで切断された断面を示す図である。
図12】キャップユニットとインクジェットヘッドが図10の線III-IIIで切断された断面を示す図である。
図13】キャップユニットとインクジェットヘッドが図10の線III-IIIで切断された断面を示す図である。
図14】キャップユニットと着脱ヘッドが図7の線II-IIで切断された断面を示す図である。
図15】インクジェットヘッドのキャッピング装置と印刷装置を示す図である。
図16】キャップユニットとワイプロールユニットが図15の線IV-IVで切断された断面を示す図である。
図17】第1スライド供給装置を示す図である。
図18】第1スライド供給装置を示す図である。
図19】第2スライド供給装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0010】
図1に示されるように、インクジェットヘッドのメンテナンス装置1は、印刷装置100と並んで設けられている。インクジェットヘッドのメンテナンス装置1では、印刷装置100のインクジェットヘッド102に対して、キャッピングやワイピング等のメンテナンスが行われる。
【0011】
印刷装置100のインクジェットヘッド102は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって、複数のノズルから金属ナノインクを吐出する。金属ナノインクは、金属のナノ粒子が溶剤中に分散されたものである。印刷装置100は、上述したインクジェットヘッド102に加え、XYステージ104を有しており、例えば、基板が置かれたXYステージ104を駆動させながら、XYステージ104に置かれた基板に対して、インクジェットヘッド102から金属ナノインクを線状に吐出させる。これにより、印刷装置100は、3次元積層造形による回路パターンを基板上に印刷する。
【0012】
尚、以下の説明において、インクジェットヘッドのメンテナンス装置1と印刷装置100が並んだ方向をX軸方向と称し、X軸方向に対して図1の紙面上で直交する方向をY軸方向と称する。X軸方向及びY軸方向の両方に対して直交する方向、つまり、図1の紙面に対して直交する方向は、上下方向である。これらの点は、後述する図4図7図10、及び図15においても、同様である。また、インクジェットヘッドのメンテナンス装置1は、メンテナンス装置1と表記されることがある。
【0013】
メンテナンス装置1は、ヘッドスライド機構3及びキャップスライド機構5を有している。ヘッドスライド機構3は、第1ガイドレール10を有している。キャップスライド機構5は、第2ガイドレール12を有している。第1ガイドレール10は、メンテナンス装置1から印刷装置100に亘り、X軸に沿って設けられている。これに対して、第2ガイドレール12は、Y軸に沿って設けられており、第1ガイドレール10とはその下方において立体交差することによって、第1ガイドレール10と直交している。
【0014】
第1ガイドレール10では、インクジェットヘッド102と着脱ヘッド14がX軸方向に移動可能にされている。着脱ヘッド14の詳細な説明は後述する。第2ガイドレール12では、スライダ16がY軸方向に移動可能にされている。スライダ16には、キャップユニット18及びワイプユニット20が設けられている。
【0015】
キャップユニット18では、インクジェットヘッド102に対して、キャッピングのメンテナンスが行われる。キャップユニット18の詳細な説明は後述する。ワイプユニット20では、インクジェットヘッド102に対して、ワイピングのメンテナンスが行われる。ワイピングのメンテナンスでは、インクジェットヘッド102において複数のノズルが設けられた面が、ウエス等のワイパー(図示省略)によって拭き取られる。尚、ワイピングのメンテナンスを行うための構成は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
【0016】
メンテナンス装置1は、ワイプロールユニット22及びガラス板ユニット24を有している。ワイプロールユニット22は、第2ガイドレール12とはその上方において立体交差し、X軸方向に沿った状態で固定されている。これにより、ワイプロールユニット22の下方には、キャップユニット18が移動可能になる。ワイプロールユニット22の詳細な説明は後述する。
【0017】
ガラス板ユニット24は、第2ガイドレール12から印刷装置100に向かう側とは反対の側(以下、印刷装置100の反対側という)において、第1ガイドレール10に沿った状態で固定されている。これにより、ガラス板ユニット24の上方には、着脱ヘッド14が移動可能になる。ガラス板ユニット24は、図4に示されるように、ストックユニッ
ト24A及び回収ユニット24Bを有している。ストックユニット24A及び回収ユニット24Bの詳細な説明は後述する。
【0018】
図2に示されるように、メンテナンス装置1及び印刷装置100は、制御装置50に接続されている。制御装置50は、コントローラ52及び複数の駆動回路54を有している。コントローラ52は、コンピュータを主体とするものであって、CPU,ROM,RAM等を備えており、複数の駆動回路54に接続されている。
【0019】
複数の駆動回路54には、印刷装置100のインクジェットヘッド102及びXYステージ104が接続されている。これにより、印刷装置100の作動は、コントローラ52によって制御される。
【0020】
更に、複数の駆動回路54には、第1電磁モータ30、第2電磁モータ32、及び第3電磁モータ34が接続されている。第1電磁モータ30及び第2電磁モータ32は、ヘッドスライド機構3に備えられている。第1電磁モータ30が駆動すると、第1ガイドレール10において、インクジェットヘッド102がX軸方向の任意の位置に移動する。また、第2電磁モータ32が駆動すると、第1ガイドレール10において、着脱ヘッド14がX軸方向の任意の位置に移動する。これに対して、第3電磁モータ34は、キャップスライド機構5に備えられている。第3電磁モータ34が駆動すると、第2ガイドレール12において、スライダ16(つまり、キャップユニット18及びワイプユニット20)がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ヘッドスライド機構3及びキャップスライド機構5の各作動は、コントローラ52によって制御される。
【0021】
メンテナンス装置1は、上述したヘッドスライド機構3及びキャップスライド機構5に加えて、メンテナンス機構7を有している。メンテナンス機構7は、正負圧供給装置36、第1昇降装置38、第2昇降装置40、回転モータ42、スライド装置44、及び負圧供給装置46を有している。
【0022】
正負圧供給装置36は、着脱ヘッド14において、負圧と正圧を発生させる。これにより、着脱ヘッド14は、負圧によって物を吸着保持し、保持した物を正圧によって離脱する。更に、着脱ヘッド14は、負圧によって、金属ナノインク等の液体を吸引する。第1昇降装置38は、着脱ヘッド14に備えられている。第1昇降装置38は、着脱ヘッド14(に保持された物)の上下方向の位置を変更する。従って、着脱ヘッド14は、X軸方向を第2電磁モータ32で移動し、上下方向を第1昇降装置38で移動する。尚、着脱ヘッド14は、X軸方向及び上下方向を直交ロボットで移動してもよい。
【0023】
第2昇降装置40は、キャップユニット18に備えられている。第2昇降装置40は、キャップユニット18において、後述する基台66(図8参照)の上下方向の位置を変更する。
【0024】
回転モータ42及びスライド装置44は、ワイプロールユニット22に備えられている。回転モータ42が駆動すると、ワイプロールユニット22において、後述する不織布ロール70(図16参照)が回転する。スライド装置44は、ワイプロールユニット22において、不織布ロール70をX軸方向に沿って移動させる。負圧供給装置46は、キャップユニット18に備えられている。負圧供給装置46は、キャップユニット18の基台66において、負圧を発生させる。これにより、キャップユニット18では、基台66に置かれた物を負圧によって基台66に吸着固定し、その固定を負圧のオフによって解除する。
【0025】
正負圧供給装置36、第1昇降装置38、第2昇降装置40、回転モータ42、スライ
ド装置44、及び負圧供給装置46は、複数の駆動回路54に接続されている。これにより、メンテナンス機構7の作動(つまり、着脱ヘッド14、キャップユニット18、及びワイプロールユニット22の各作動)は、コントローラ52によって制御される。
【0026】
次に、メンテナンス装置1の作動の流れについて、図3に示すフローチャートを参照して説明する。図3のフローチャートで示された制御プログラムは、コントローラ52のROMに記憶されており、インクジェットヘッド102のメンテナンスが行われる際に、コントローラ52のCPUによって実行される。コントローラ52は、ガラス板の実装処理S10、密閉処理S12、吐出処理S14、保湿処理S16、吸引処理S18、及びガラス板の回収処理S20をそれらの記載順で実行する。尚、ガラス板の実装処理S10が行われる際には、図1に示されるように、キャップユニット18は、その上方にインクジェットヘッド102及び着脱ヘッド14が移動可能な位置にある。
【0027】
ガラス板の実装処理S10では、図4に示されるように、着脱ヘッド14が、ガラス板ユニット24のストックユニット24Aの上方に移動する。ストックユニット24Aでは、図5に示されるように、ストック台26において、3枚のガラス板60,62,64が積み重ねられた状態で置かれている。3枚のガラス板60,62,64は、同一のものであって、金属ナノインクに対して耐溶剤性がある。3枚のガラス板60,62,64には、例えば、スライドガラスが使用される。
【0028】
着脱ヘッド14は、3枚のガラス板60,62,64のうち、最も上に置かれたガラス板60まで下降して、ガラス板60を吸着保持する。更に、着脱ヘッド14は、ガラス板60を吸着保持した状態で上昇した後、図7に示されるように、キャップユニット18の上方に移動する。
【0029】
キャップユニット18は、図8に示されるように、基台66を有している。基台66の上面には、凸部66Aが設けられている。更に、凸部66Aの上面には、溝部66Bが設けられている。溝部66Bは、ガラス板60,62,64を嵌めることが可能な形状を有している。溝部66Bの略中央には、負圧供給路67が基台66を貫いて設けられている。負圧供給路67の下端は、負圧供給装置46に接続されている。これにより、負圧供給路67内は、負圧供給装置46によって負圧にされ得る。また、基台66の上面には、環状の弾性体68が固定されている。弾性体68は、凸部66Aから離れた状態で、凸部66Aの周囲を取り囲んでいる。弾性体68には、例えば、Oリングが使用される。尚、弾性体68は、金属ナノインクに対して耐溶剤性があれば、凸部66Aに接した状態で固定されてもよい。
【0030】
着脱ヘッド14は、キャップユニット18の上方に移動すると、図9に示されるように、ガラス板60を吸着保持した状態で、キャップユニット18まで下降し、吸着保持中のガラス板60を離脱する。これにより、ガラス板60は、着脱ヘッド14によって搬送され、キャップユニット18の溝部66Bに嵌められる。更に、キャップユニット18の負圧供給路67内が負圧にされることによって、ガラス板60がキャップユニット18の溝部66Bに嵌められた状態で基台66に吸着固定される。その後、着脱ヘッド14は、上昇すると共に、印刷装置100の反対側へ移動する。尚、弾性体68の上端は、キャップユニット18の溝部66Bに嵌められたガラス板60よりも上方にある。
【0031】
密閉処理S12では、図10に示されるように、インクジェットヘッド102がキャップユニット18の上方に移動する。その後、図11に示されるように、キャップユニット18の基台66がインクジェットヘッド102まで上昇する。インクジェットヘッド102は、ノズルプレート106を有している。ノズルプレート106には、複数のノズルが設けられたノズル領域108が設けられている。キャップユニット18の基台66がイン
クジェットヘッド102まで上昇すると、キャップユニット18の弾性体68の上端が、ノズルプレート106に密接する。これにより、インクジェットヘッド102では、ノズルプレート106のうち、複数のノズルが設けられたノズル領域108が、キャップユニット18のガラス板60と上下方向で対向した状態になる。
【0032】
更に、キャップユニット18では、基台66、弾性体68、及びノズルプレート106によって、密閉空間部110が形成される。密閉空間部110では、ノズルプレート106とガラス板60の間112が、所定距離L以下とされる。従って、ノズルプレート106とガラス板60は接してもよい。これにより、ノズルプレート106とガラス板60の間112では、金属ナノインクの表面張力が働くことが可能である。
【0033】
図6は、キャップユニット18におけるノズル領域108の位置を示す平面図である。図6に示されるように、複数のノズル114が設けられたノズル領域108は、上下方向で視ると、キャップユニット18のガラス板60内にある。そのため、ノズルプレート106とガラス板60が接した場合には、ノズルプレート106のうち、少なくともノズル領域108がガラス板60上に位置する。
【0034】
吐出処理S14では、図12に示されるように、所定量の金属ナノインク116が、インクジェットヘッド102(の複数のノズル114)からキャップユニット18のガラス板60に向けて吐出される。これにより、図13に示されるように、密閉空間部110において、ノズルプレート106(の全てのノズル114)とガラス板60の間112が、金属ナノインク116で満たされた状態になる。
【0035】
尚、金属ナノインク116が吐出されるタイミングは、密閉空間部110が形成される以前、つまり、キャップユニット18の弾性体68の上端とノズルプレート106が密接する以前であってもよい。また、金属ナノインク116の吐出は、金属ナノインク116の捨て打ちであるフラッシングで行ってもよいし、インクジェットヘッド102の内圧を通常時よりも上昇させることによって、複数のノズル114から金属ナノインク116を強制的に吐出させるパージで行ってもよい。また、ノズルプレート106とガラス板60の間112を満たすための金属ナノインクは、複数のノズル114とは別個に用意されたノズルによって吐出されてもよい。
【0036】
保湿処理S16では、ノズルプレート106(の全てのノズル114)とガラス板60の間112が金属ナノインク116で満たされた状態(つまり、図13に示された状態)が維持される。これにより、キャップユニット18では、インクジェットヘッド102に対するキャッピングのメンテナンス(以下、キャップユニット18のキャッピングという)が行われる。
【0037】
吸引処理S18では、キャップユニット18の基台66が下降する。これにより、キャップユニット18のキャッピングがオフされる。基台66が下降する際、キャップユニット18のガラス板60には、金属ナノインク116の表面張力によって、ガラス板60をノズルプレート106に吸着させる力が発生する。しかしながら、その力は、負圧供給路67内の負圧によって発生する、ガラス板60を基台66に吸着固定させる力よりも弱い。そのため、キャップユニット18のガラス板60は、基台66の溝部66Bに嵌められた状態のままで基台66と共に下降する。
【0038】
更に、インクジェットヘッド102が、印刷装置100に向かう側へ移動する。その後、着脱ヘッド14が、キャップユニット18の上方に移動すると共に、キャップユニット18まで下降する。これにより、着脱ヘッド14は、図14に示されるように、キャップユニット18のガラス板60に対して僅かな隙間を設けた状態にされる。更に、着脱ヘッ
ド14は、ガラス板60を吸着保持する際の負圧よりも弱い負圧によって、ガラス板60上の金属ナノインク116を吸引する。これにより、ガラス板60上の金属ナノインク116が除去される。
【0039】
尚、着脱ヘッド14は、ガラス板60上の金属ナノインク116を吸引することが可能であれば、ガラス板60に接した状態にされてもよい。また、金属ナノインク116の吸引は、その後に行われるガラス板60の回収において、ガラス板60から金属ナノインク116が垂れない程度に行われればよい。従って、着脱ヘッド14は、ガラス板60上の全ての金属ナノインク116を吸引しなくてもよい。
【0040】
更に、ガラス板60上の金属ナノインク116の除去は、上述した着脱ヘッド14に代えて、ワイプロールユニット22で行ってもよい。そのような場合の吸引処理S18では、キャップユニット18の基台66が下降することによって、キャップユニット18のキャッピングがオフされると、図15に示されるように、キャップユニット18がワイプロールユニット22の下方に移動する。その後、キャップユニット18の基台66がワイプロールユニット22まで上昇する。
【0041】
ワイプロールユニット22は、図16に示されるように、不織布ロール70を有している。不織布ロール70は、不織布がロール状に巻かれたものである。キャップユニット18の基台66がワイプロールユニット22まで上昇すると、キャップユニット18のガラス板60が、ワイプロールユニット22の不織布ロール70に接する。不織布ロール70は、キャップユニット18のガラス板60上を回転しながら移動する。そのため、ガラス板60上の金属ナノインク116は、不織布ロール70の不織布によるワイピングによって拭き取られる。これにより、ガラス板60上の金属ナノインク116が除去される。
【0042】
尚、ガラス板60上の金属ナノインク116の除去は、着脱ヘッド14によって実行された後に続いて、ワイプロールユニット22によって実行されてもよいし、ワイプロールユニット22によって実行された後に続いて、着脱ヘッド14によって実行されてもよい。
【0043】
また、図15に示されるように、キャップユニット18がワイプロールユニット22の下方に移動した際は、ワイプユニット20がインクジェットヘッド102の下方に移動する。これにより、ワイプユニット20においては、インクジェットヘッド102のノズルプレート106に付着した金属ナノインク116が、ワイピングによって拭き取られる。
【0044】
ワイプロールユニット22とワイプユニット20の双方でワイピングが行われた後は、キャップユニット18の基台66が下降する。更に、キャップユニット18は、その上方に着脱ヘッド14が移動可能な位置(つまり、図1図4図7図10、及び図15に示されたキャップユニット18の位置)に移動する。また、着脱ヘッド14は、キャップユニット18の上方に移動すると共に、キャップユニット18まで下降する。
【0045】
尚、ワイプユニット20におけるワイピング(つまり、インクジェットヘッド102のノズルプレート106に対するワイピング)は、ワイプロールユニット22におけるワイピング(つまり、キャップユニット18のガラス板60に対するワイピング)と同時に行われる必要はない。
【0046】
また、ワイプユニット20におけるワイピング(つまり、インクジェットヘッド102のノズルプレート106に対するワイピング)は、着脱ヘッド14でガラス板60上の金属ナノインク116が除去される以前に行われてもよい。
【0047】
ガラス板の回収処理S20では、先ず、キャップユニット18の負圧供給路67内の負圧がオフされる。これにより、ガラス板60がキャップユニット18の基台66に吸着固定された状態が解除される。続いて、図9に示されるように、着脱ヘッド14が、キャップユニット18のガラス板60を吸着保持し、図8に示されるように、ガラス板60を吸着保持した状態で上昇する。更に、着脱ヘッド14は、ガラス板ユニット24の回収ユニット24Bの上方に移動すると共に、回収ユニット24Bまで下降し、吸着保持中のガラス板60を離脱する。回収ユニット24Bは、上面が開放された箱状のものである。そのため、ガラス板60は、回収ユニット24B内に回収される。尚、ガラス板の回収処理S20は、着脱ヘッド14がガラス板60に接した状態にされることによって、吸引処理S18と同時に行われてもよい。
【0048】
ガラス板の回収処理S20の後において、ガラス板の実装処理S10が再び行われると、ガラス板62が、着脱ヘッド14によって搬送され、キャップユニット18の溝部66Bに嵌められる。これにより、キャップユニット18では、ガラス板60が、ガラス板60とは別個のガラス板62に交換される。以下、同様にして、キャップユニット18では、ガラス板62が、ガラス板62とは別個のガラス板64に交換されることが可能である。
【0049】
以上詳細に説明したように、インクジェットヘッドのメンテナンス装置1は、インクジェットヘッド102が有する複数のノズル114において金属ナノインク116の固化を防止することが可能である。
【0050】
ちなみに、本実施形態において、インクジェットヘッドのメンテナンス装置1は、インクジェットヘッドのキャッピング装置の一例である。着脱ヘッド14は、吸引部、回収部、及び交換部の一例である。ワイプロールユニット22は、ワイプ部の一例である。ストックユニット24Aは、ストック部の一例である。ガラス板60は、キャップ材の一例である。ガラス板62,64は、キャップ材の交換品の一例である。ノズルプレート106とガラス板60の間112は、インクジェットヘッドとキャップ材との間の一例である。所定距離Lは、インクジェットヘッドの複数のノズルから吐出された金属ナノインクの表面張力が働く距離の一例である。
【0051】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
例えば、ガラス板60,62,64の保持は、着脱ヘッド14の吸引に代えて、チャック装置の把持によって行われてもよい。また、ガラス板60,62,64は、後述する不織布のように、金属ナノインク116をはじかない平状のものに代えてもよい。
【0053】
また、第2昇降装置40は、キャップユニット18に備えられるのではなく、インクジェットヘッド102に備えられてもよい。そのような場合には、キャップユニット18が上下方向に移動することは不可能になるが、インクジェットヘッド102が上下方向に移動することは可能になる。
【0054】
また、図17に示されるように、ガラス板60,62は、第1スライド供給装置80によって、キャップユニット18に供給されてもよい。第1スライド供給装置80は、不図示のスライド機構によって、キャップユニット18に接近及び離間するように移動することが可能である。第1スライド供給装置80は、本体82、ストッパ84、及び押出ロッド86を有している。ストッパ84は、キャップユニット18側の本体82の端において、上方向へ突出した状態で設けられており、不図示の動力源によって、下方向へ移動することが可能である。押出ロッド86は、キャップユニット18に向かう側とは反対側の本
体82の端部において、本体82の上面に載せられており、不図示の動力源によって、キャップユニット18側へ移動することが可能である。本体82の上面には、ストッパ84と押出ロッド86の間において、ガラス板60,62が水平方向で隣接して並んだ状態で載せられている。更に、ガラス板60はストッパ84に隣接し、ガラス板62は押出ロッド86に隣接している。
【0055】
ガラス板60がキャップユニット18に供給される際は、図17及び図18に示されるように、キャップユニット18の溝部66B付近の上方にストッパ84が移動するまで、第1スライド供給装置80がキャップユニット18に接近する。更に、第1スライド供給装置80では、ストッパ84が下方向へ移動することによって、ストッパ84の上面が本体82の上面と面一になり、押出ロッド86がキャップユニット18側へ移動することによって、ガラス板60が本体82からキャップユニット18に向けて押し出される。これにより、ガラス板60は、キャップユニット18の溝部66Bに嵌められる。その後、第1スライド供給装置80は、キャップユニット18から遠ざかる。尚、図17及び図18において、キャップユニット18の断面は、図7の線II-II-キャップユニット18が切断された面である。
【0056】
また、キャップユニット18の溝部66Bには、ガラス板60,62,64に代えて、不織布が使用されてもよい。そのような場合には、図19に示されるように、不織布ロール88の不織布90が、第2スライド供給装置92によって、キャップユニット18に供給される。第2スライド供給装置92は、不図示のスライド機構によって、キャップユニット18に接近又は離間するように移動することが可能である。第2スライド供給装置92は、本体94、スリット96、及びカッター98を有している。本体94は、キャップユニット18側に向かうに連れて下方向へ傾斜している。本体94には、その不織布ロール88側において、スリット96が設けられている。スリット96には、不織布ロール88の不織布90が差し込まれる。これにより、本体94の上面には、不織布ロール88の不織布90が載せられた状態になる。カッター98は、不図示の動力源によって、本体94の上面に当接又は離間することが可能である。
【0057】
不織布ロール88の不織布90がキャップユニット18に供給される際は、キャップユニット18の溝部66B付近の上方に本体94の先端が移動するまで、第2スライド供給装置92がキャップユニット18に接近する。更に、第2スライド供給装置92において、カッター98が本体94の上面に当接及び離間することによって、不織布ロール88の不織布90がガラス板60,62,64と同じ大きさに切断される。このようにして切断された不織布90は、本体94の上面を滑り、本体94からキャップユニット18に向けて落下して、キャップユニット18の溝部66Bに入れられる。その後、第2スライド供給装置92は、キャップユニット18から遠ざかる。また、第2スライド供給装置92では、不図示の回転モータで不織布ロール88が回転することによって、不織布ロール88の不織布90が、スリット96内を通って、本体94の上面に載せられた状態になる。尚、図19において、キャップユニット18の断面は、図7の線II-IIでキャップユニット18が切断された面である。
【0058】
ちなみに、不織布90は、キャップ材の一例である。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェットヘッドのメンテナンス装置
14 着脱ヘッド
18 キャップユニット
22 ワイプロールユニット
24A ストックユニット
60,62,64 ガラス板
66 基台
68 弾性体
100 印刷装置
102 インクジェットヘッド
106 ノズルプレート
110 密閉空間部
112 ノズルプレートとガラス板の間
114 複数のノズル
116 金属ナノインク
L 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19