(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】冷却機器
(51)【国際特許分類】
F25D 19/00 20060101AFI20221110BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20221110BHJP
F25B 47/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F25D19/00 560C
F25D19/00 550C
F25D19/00 560B
F25D19/00 560Z
F25D11/00 101B
F25B47/00 A
(21)【出願番号】P 2018221523
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】淺野 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】原 輝道
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅司
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一
(72)【発明者】
【氏名】土江 秀樹
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-115679(JP,A)
【文献】特開2001-343181(JP,A)
【文献】特開2001-116434(JP,A)
【文献】特開平11-230665(JP,A)
【文献】特開2004-360069(JP,A)
【文献】特開平06-209986(JP,A)
【文献】特開2004-252534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/00
F25D 11/00
F25B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(10)の内部に、収納室(11)と機械室(13)とが上下の関係で画成され、該機械室(13)に、圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)
が配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
三次元構造の基材に、硫化水素ガスを吸着可能な吸着剤を付着した硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を
、前記機械室(13)の内側または該機械室(13)の吸気口(20a)に配置した
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項2】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、前記機械室(13)の吸気口(20a)に設けたエアフィルタ(25)に近接して、該機械室(13)の外側に配置されている請求項1記載の冷却機器。
【請求項3】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、前記機械室(13)の吸気口(20a)に設けたエアフィルタ(25)に近接して、該機械室(13)の内側に配置されている請求項1記載の冷却機器。
【請求項4】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、前記機械室(13)の内面で、かつ前記冷却ファン(17)による風が通過する帯域に配置されている請求項1記載の冷却機器。
【請求項5】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、前記機械室(13)の排気口(21a)の内側または外側に配置されている請求項1記載の冷却機器。
【請求項6】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、前記機械室(13)の内部に設けた前記銅配管(19)または該銅配管(19)を被覆する断熱被覆(35)に巻付けられている請求項1記載の冷却機器。
【請求項7】
前記硫化水素ガスの除去フィルタ(26)は、ガス透過性の袋体(36)に収納されており、該袋体(36)は前記機械室(13)に配置されている請求項1記載の冷却機器。
【請求項8】
本体(10)の内部に、収納室(11)と機械室(13)とが上下の関係で画成され、該機械室(13)に、圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)
が配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを分解する触媒および分解した硫化物を吸着する吸着剤を有するガス除去剤を
、前記機械室(13)に付帯させた
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項9】
前記ガス除去剤は、前記冷却ファン(17)や該冷却ファン(17)のシュラウド(24)に付帯されている請求項8記載の冷却機器。
【請求項10】
前記ガス除去剤は、前記機械室(13)の内壁面に付帯されている請求項8記載の冷却機器。
【請求項11】
前記ガス除去剤は、前記機械室(13)の内部に存在する前記銅配管(19)の断熱被覆(35)に付帯されている請求項8記載の冷却機器。
【請求項12】
前記ガス除去剤は、前記機械室(13)の吸気口(20a)に設けたエアフィルタ(25)に付帯されている請求項8記載の冷却機器。
【請求項13】
前記ガス除去剤を別体部材(38)に付帯させ、該別体部材(38)が前記機械室(13)の内部に配置されている請求項8記載の冷却機器。
【請求項14】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を前記機械室(13)の近傍に配置し、
前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても、予め設定した時間が到来すると一定時間だけ該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項15】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を前記機械室(13)の近傍に配置し、
前記機械室(13)の銅配管(19)に水分が付着していることを検出する水分計(39)を備え、該水分計(39)が水分を検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項16】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を前記機械室(13)の近傍に配置し、
湿度検出器(40)が前記機械室(13)に配設され、該機械室(13)における湿度が予め設定した数値以上となっていることを該湿度検出器(40)が検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項17】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を前記機械室(13)の近傍に配置し、
硫化水素ガスの濃度検出器(41)が前記機械室(13)に配設され、該機械室(13)における硫化水素ガスの濃度が予め設定した数値以上となっていることを該濃度検出器(41)が検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項18】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタ(26)を前記機械室(13)の近傍に配置し、
前記機械室(13)の排気口(21a)に常には該排気口(21a)を開放するダンパ(42)が配設され、前記冷却ファン(17)の停止中は該ダンパ(42)が閉じて該排気口(21a)を閉成するよう構成した
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項19】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室(13)に付帯させ、
前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても、予め設定した時間が到来すると一定時間だけ該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項20】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室(13)に付帯させ、
前記機械室(13)の銅配管(19)に水分が付着していることを検出する水分計(39)を備え、該水分計(39)が水分を検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項21】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室(13)に付帯させ、
湿度検出器(40)が前記機械室(13)に配設され、該機械室(13)における湿度が予め設定した数値以上となっていることを該湿度検出器(40)が検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項22】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室(13)に付帯させ、
硫化水素ガスの濃度検出器(41)が前記機械室(13)に配設され、該機械室(13)における硫化水素ガスの濃度が予め設定した数値以上となっていることを該濃度検出器(41)が検出している間は、前記冷却ファン(17)の停止条件が解除されていなくても該冷却ファン(17)を回転させる制御が行われる
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項23】
圧縮機(18)、凝縮器(16)および該凝縮器(16)の冷却ファン(17)が機械室(13)に配置され、前記圧縮機(18)と凝縮器(16)および蒸発器(15)とが銅配管(19)で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置(14)を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室(13)に付帯させ、
前記機械室(13)の排気口(21a)に常には該排気口(21a)を開放するダンパ(42)が配設され、前記冷却ファン(17)の停止中は該ダンパ(42)が閉じて該排気口(21a)を閉成するよう構成した
ことを特徴とする冷却機器。
【請求項24】
硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着可能な吸着剤を備えている請求項1または8記載の冷却機器。
【請求項25】
前記冷却ファン(17)は、冷却運転時に前記凝縮器(16)を冷却するため回転させる制御とは別に、回転させる制御が行われる請求項1または8記載の冷却機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫や製氷機等の冷却機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喫茶店やレストラン等の厨房施設で好適に使用される冷蔵庫や製氷機等の冷却機器は、食材等を収納する収納室や氷塊の製氷部を配設した製氷部収納室と、圧縮機や凝縮器等からなる冷凍装置を配設する機械室とが、筐体内部に画成されている。そして、前記圧縮機から供給される高圧気体冷媒を、前記凝縮器で冷却(熱交換)して凝縮液化させ、この凝縮液化した冷媒を前記収納室内に配設された冷却器や製氷部の冷却器で膨張気化させて、収納室や製氷部を冷却するようになっている。また、前記凝縮器に近接した位置には、凝縮器用の冷却ファンが配設されており、該冷却ファンを運転することで外部空気を機械室に取入れて凝縮器を空冷することで、効率的に冷媒が凝縮液化されるよう構成されている。
【0003】
前記冷凍装置では、冷媒を循環させる冷凍系の配管として銅配管が用いられているが、該銅配管は硫化水素ガスに接触すると経時的に腐食(硫化腐食)し、該銅配管のろう付け接合部付近から冷媒が漏出したり、動作不良を招く問題がある。すなわち、硫化水素ガスは、温泉地や火山付近の野外環境に発生したり、排水溝のドブや排水管に溜まった野菜屑等が腐食して発生したりする。このため、冷却機器の設置環境によって、該冷却機器の周りに硫化水素ガスが存在していると、前記冷却ファンの運転によって外部空気と共に硫化水素ガスを機械室に吸い込んでしまい、銅配管が腐食する問題を招いていた。殊に、硫化水素ガスは、空気より比重が大きいために床面付近に滞留することから、バーチカルタイプ(縦型)の製氷機や、機械室が収納室の下にある冷蔵庫では、床面に近い部位に配設されている銅配管が腐食を受け易い傾向にある。また、機械室が冷却室の上にあるスタックオン式の製氷機であっても、前記冷却ファンの運転により外部空気を強制的に機械室に取入れるので、機器上部に銅配管が存在していても前記硫化水素ガスにより腐食する可能性は避けられない。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、冷凍装置が配置される機械室に腐食性物質分解装置を配置し、該腐食性物質分解装置によって腐食性物質を分解除去することで、金属腐食を抑制するように構成した冷却システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の冷却システムでは、機械室に腐食性物質分解装置を設置するスペースを確保する必要があることから、機械室が大型化する問題がある。すなわち、小型の冷却機器に採用するのには不向きである。また、腐食性物質分解装置は、分解装置用ファンや、水を循環するポンプ等を備えており、高価であると共に、腐食性物質を分解除去するために該腐食性物質分解装置を稼働することによってランニングコストが嵩む問題も指摘される。
【0007】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、硫化水素ガスによる腐食を有効に抑制することができる冷却機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る冷却機器は、
本体の内部に、収納室と機械室とが上下の関係で画成され、該機械室に、圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
三次元構造の基材に、硫化水素ガスを吸着可能な吸着剤を付着した硫化水素ガスの除去フィルタを、前記機械室の内側または該機械室の吸気口に配置したことを要旨とする。
請求項1の発明によれば、硫化水素ガスの除去フィルタを機械室の内側または吸気口に配置したので、機械室の内部に広いスペースを確保することなく硫化水素ガスを除去して、銅配管の腐食を抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、前記機械室の吸気口に設けたエアフィルタに近接して、該機械室の外側に配置されていることを要旨とする。
請求項2の発明によれば、エアフィルタに近接する機械室の外側に除去フィルタを配置したので、該除去フィルタの交換等のメンテナンスが容易となる。
【0010】
請求項3の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、前記機械室の吸気口に設けたエアフィルタに近接して、該機械室の内側に配置されていることを要旨とする。
請求項3の発明によれば、エアフィルタの内側に除去フィルタを配置したので、外部空気に含まれるホコリ等はエアフィルタで先に取り除かれ、除去フィルタが汚れたり目詰りするを抑制することができ、該除去フィルタの洗浄が不要または洗浄回数を低減できる。
【0011】
請求項4の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、前記機械室の内面で、かつ前記冷却ファンによる風が通過する帯域に配置されていることを要旨とする。
請求項4の発明では、冷却ファンによる風が通過する帯域に除去フィルタを配置したので、除去フィルタに硫化水素ガスを効率的に接触させることができ、機械室へ侵入した硫化水素ガスの除去効果が大きい。
【0012】
請求項5の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、前記機械室の排気口の内側または外側に配置されていることを要旨とする。
請求項5の発明では、排気口の内側または外側に除去フィルタを配置したので、冷却ファンの停止時において、排気口を介して侵入する硫化水素ガスを除去することができる。
【0013】
請求項6の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、前記機械室の内部に設けた前記銅配管または該銅配管を被覆する断熱被覆に巻付けられていることを要旨とする。
請求項6の発明では、除去フィルタを、銅配管に直接または断熱被覆を介して巻付けてあるので、硫化水素ガスを銅配管に接する前に除去することができる。
【0014】
請求項7の発明では、前記硫化水素ガスの除去フィルタは、ガス透過性の袋体に収納されており、該袋体は前記機械室に配置されていることを要旨とする。
請求項7の発明では、ガス透過性の袋体に除去フィルタを収納しているので、該除去フィルタが備える触媒や吸着剤等の成分が使用中に脱落して拡散するのを防止することができ、周囲を汚すのを防止し得る。
【0015】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項8の別の発明に係る冷却機器は、
本体の内部に、収納室と機械室とが上下の関係で画成され、該機械室に、圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを分解する触媒および分解した硫化物を吸着する吸着剤を有するガス除去剤を、前記機械室に付帯させたことを要旨とする。
請求項8の発明では、ガス除去剤を機械室に付帯させたので、機械室の内部に広いスペースを確保することなく硫化水素ガスを除去して、銅配管の腐食を抑制することができる。
【0016】
請求項9の発明では、前記ガス除去剤は、前記冷却ファンや該冷却ファンのシュラウドに付帯されていることを要旨とする。
請求項9の発明では、冷却ファンの回転による風が接触し易い該冷却ファンやシュラウドにガス除去剤を付帯させたので、硫化水素ガスをガス除去剤に効果的に接触させて除去することができる。
【0017】
請求項10の発明では、前記ガス除去剤は、前記機械室の内壁面に付帯されていることを要旨とする。
請求項10の発明では、機械室に侵入した硫化水素ガスとガス除去剤との接触面積を大きくすることができ、硫化水素ガスを効率的に除去することができる。
【0018】
請求項11の発明では、前記ガス除去剤は、前記機械室の内部に存在する前記銅配管の断熱被覆に付帯されていることを要旨とする。
請求項11の発明では、銅配管の断熱被覆にガス除去剤を付帯させたので、硫化水素ガスを銅配管に接する前に除去することができる。
【0019】
請求項12の発明では、前記ガス除去剤は、前記機械室の吸気口に設けたエアフィルタに付帯されていることを要旨とする。
請求項12の発明では、エアフィルタにガス除去剤を付帯させたので、硫化水素ガスを機械室に侵入する前に除去することができる。
【0020】
請求項13の発明では、前記ガス除去剤を別体部材に付帯させ、該別体部材が前記機械室の内部に配置されていることを要旨とする。
請求項13の発明では、別体部材にガス除去剤を付帯させたので、ガス除去剤の交換が容易である。
【0021】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項14の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタを前記機械室の近傍に配置し、
前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても、予め設定した時間が到来すると一定時間だけ該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項19の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室に付帯させ、
前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても、予め設定した時間が到来すると一定時間だけ該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
請求項14または請求項19の発明では、冷却ファンを停止する条件が満たされていても、該冷却ファンを強制的に回転する制御が行われるので、除去フィルタまたはガス除去剤に硫化水素ガスを効率的に接触させて除去でき、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くすることができる。
【0022】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項15の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタを前記機械室の近傍に配置し、
前記機械室の銅配管に水分が付着していることを検出する水分計を備え、該水分計が水分を検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項20の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室に付帯させ、
前記機械室の銅配管に水分が付着していることを検出する水分計を備え、該水分計が水分を検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
請求項15または請求項20の発明では、銅配管に水分が付着している間は、冷却ファンを回転する制御が行われるので、除去フィルタまたはガス除去剤に硫化水素ガスを効率的に接触させて除去でき、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くして、硫化水素ガスが水分に溶け込むことで銅配管が腐食するのを抑制することができる。
【0023】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項16の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタを前記機械室の近傍に配置し、
湿度検出器が前記機械室に配設され、該機械室における湿度が予め設定した数値以上となっていることを該湿度検出器が検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項21の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室に付帯させ、
湿度検出器が前記機械室に配設され、該機械室における湿度が予め設定した数値以上となっていることを該湿度検出器が検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
請求項16または請求項21の発明では、機械室の湿度が予め設定した数値以上となっている間は、冷却ファンを回転する制御が行われるので、除去フィルタまたはガス除去剤に硫化水素ガスを効率的に接触させて除去でき、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くすることができる。
【0024】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項17の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタを前記機械室の近傍に配置し、
硫化水素ガスの濃度検出器が前記機械室に配設され、該機械室における硫化水素ガスの濃度が予め設定した数値以上となっていることを該濃度検出器が検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項22の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室に付帯させ、
硫化水素ガスの濃度検出器が前記機械室に配設され、該機械室における硫化水素ガスの濃度が予め設定した数値以上となっていることを該濃度検出器が検出している間は、前記冷却ファンの停止条件が解除されていなくても該冷却ファンを回転させる制御が行われることを要旨とする。
請求項17または請求項22の発明では、機械室内の硫化水素ガス濃度が予め設定した数値以上となっている間は、冷却ファンを回転する制御が行われるので、除去フィルタまたはガス除去剤に硫化水素ガスを効率的に接触させて除去でき、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くすることができる。
【0025】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項18の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスの除去フィルタを前記機械室の近傍に配置し、
前記機械室の排気口に常には該排気口を開放するダンパが配設され、前記冷却ファンの停止中は該ダンパが閉じて該排気口を閉成するよう構成したことを要旨とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項23の別の発明に係る冷却機器は、
圧縮機、凝縮器および該凝縮器の冷却ファンが機械室に配置され、前記圧縮機と凝縮器および蒸発器とが銅配管で接続されて冷媒を循環させる冷凍装置を備えた冷却機器において、
硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を前記機械室に付帯させ、
前記機械室の排気口に常には該排気口を開放するダンパが配設され、前記冷却ファンの停止中は該ダンパが閉じて該排気口を閉成するよう構成したことを要旨とする。
請求項18または請求項23の発明では、冷却ファンの停止中に硫化水素ガスが排気口から機械室に侵入するのを防ぐことができ、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くすることができる。
【0026】
請求項24の発明では、硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着可能な吸着剤を備えていることを要旨とする。
請求項24の発明では、空気中に含まれる硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着剤で吸着して除去することができるので、冷却機器を脱臭装置として機能させることができる。
【0027】
請求項25の発明では、前記冷却ファンは、冷却運転時に前記凝縮器を冷却するため回転させる制御とは別に、回転させる制御が行われることを要旨とする。
請求項25の発明では、冷却運転時に回転させる制御とは別に冷却ファンを回転する制御が行われるので、除去フィルタまたはガス除去剤に硫化水素ガスを効率的に接触させて除去でき、機械室内の硫化水素ガスの濃度を低くすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る冷却機器によれば、硫化水素ガスによる銅配管の腐食を、大きなスペースを確保することなく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1に係る冷蔵庫を一部破断して示す概略側面図である。
【
図2】冷蔵庫の制御構成の要部を示すブロック図である。
【
図4】変形例1の除去フィルタを示す概略斜視図である。
【
図5】実施例1に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例2を示す概略斜視図である。
【
図6】実施例1に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例3を示す概略斜視図である。
【
図7】実施例2に係る冷蔵庫の要部を示す概略斜視図である。
【
図8】実施例2に係る冷蔵庫の要部を示す概略斜視図である。
【
図9】実施例2に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例4を示す概略斜視図である。
【
図10】実施例3に係る冷蔵庫を一部破断して示す要部概略側面図である。
【
図11】実施例3に係る冷蔵庫の機械室を後側から見た概略図である。
【
図12】実施例3に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例5を示す概略図である。
【
図13】実施例4に係る冷蔵庫を一部破断して示す要部概略側面図である。
【
図14】実施例4に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例6を示す概略斜視図である。
【
図15】実施例4に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例7を示す概略斜視図である。
【
図16】実施例5に係る冷蔵庫に採用される冷媒管と除去フィルタとの関係を示す説明図である。
【
図17】実施例5に係る冷蔵庫の除去フィルタの取付構造の変形例8を示す説明図である。
【
図18】除去フィルタの別実施例を示す説明図である。
【
図19】実施例7に係る冷蔵庫に採用される冷媒管とガス除去剤との関係を示す説明図である。
【
図20】実施例8に係る冷蔵庫を一部破断して示す要部概略側面図である。
【
図21】実施例9に係る冷蔵庫の運転制御を示すタイミングチャート図である。
【
図22】実施例13に係る冷蔵庫を一部破断して示す要部概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る冷却機器につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本発明は、冷蔵庫、冷凍庫(ショーケースやネタケース等)、製氷機、飲料機等の冷凍装置を備えた各種の冷却機器を対象とするが、実施例では冷蔵庫を例に挙げて説明する。
【実施例1】
【0031】
図1に示す冷蔵庫は、断熱箱体等からなる本体10の内部に、食品や飲料品等の冷蔵品を収納する収納室11が画成されて、この本体10の前側に開設した取出口としての開口部(図示せず)を、断熱扉12によって開閉可能に閉成するよう構成されている。また、本体10には、収納室11の下に、前側に開口する機械室13が画成され、この機械室13に冷凍装置14が収納されている。なお、前記機械室13内には、前記収納室11と連通して蒸発器(冷却器)15および庫内ファン(図示せず)が収納された冷却室(図示せず)を画成した収納部(図示せず)が設けられ、庫内ファンを運転することで、蒸発器15で冷却された冷気を前記収納室11に循環させて冷却するようになっている。
【0032】
前記機械室13の底板13a上に配設される前記冷凍装置14は、凝縮器16、凝縮器用の冷却ファン17および圧縮機18等から構成され、該機械室13の前側からこの順で配設されている。そして、前記圧縮機18から導出した銅を材質とする冷媒管(銅配管)19が前記凝縮器16に接続され、該凝縮器16から導出した冷媒管19が、図示しないキャピラリーチューブ等を介して前記蒸発器15に接続されると共に、該蒸発器15から導出された冷媒管19が圧縮機18に接続される。なお、本体10における機械室13の前側に設けられた開口は、本体10に着脱自在に配設されたフロントパネル20により、開閉可能に閉成されるようになっている。また、前記フロントパネル20には、前記機械室13と外部とを連通する多数の吸気口20aが開設されており、前記冷却ファン17を回転させた際に、該吸気口20aを介して外部空気を機械室13内に吸込んで、前記凝縮器16および圧縮機18を空冷するようになっている。そして、前記凝縮器16および圧縮機18と熱交換して温度上昇した空気は、前記本体10における機械室13の後側を画成するリアパネル21に多数開設した排気口21aを介して外部に排出される。すなわち、前記冷却ファン17を回転(運転)すると、前側から後側に空気が流通するよう構成される。
【0033】
ここで、実施例1の冷蔵庫は、
図2に示す如く、前記圧縮機18および冷却ファン17が接続する制御手段22に、前記収納室11の温度を検出する温度検出手段23が接続されている。そして、温度検出手段23が、予め設定された設定温度以下であることを検出すると、前記圧縮機18および冷却ファン17の運転を停止(冷却運転を停止)するように、該圧縮機18および冷却ファン17が制御手段22により制御される。また、冷却運転の停止により、収納室11の温度が上昇し、温度検出手段23が設定温度より高い温度を検出すると、圧縮機18および冷却ファン17の運転を再開するように、該圧縮機18および冷却ファン17が制御手段22により制御される。すなわち、冷凍装置14は、温度検出手段23の検出温度に応じて運転・停止を反復するよう制御手段22により制御されることで、収納室11の温度を所定温度範囲内に維持するように構成されている。本例では、温度検出手段23が設定温度以下の温度を検出している状態(冷却運転の停止状態)を、待機状態と指称する。
【0034】
前記冷却ファン17は、ファンと、該ファンを回転駆動する駆動モータとを備え、駆動モータを支持するモータブラケットを介して当該冷却ファン17が前記凝縮器16の後側に配置されている。また、機械室13の底板13aには、冷却ファン17の回転によって生ずる風を整流して凝縮器16を効率よく空冷するためのシュラウド(風洞)24が設けられており、該シュラウド24は、凝縮器16を囲繞すると共に前後方向に開口するよう構成される。また、前記フロントパネル20の後面には、前記複数の吸気口20aの形成領域を覆い得る寸法のエアフィルタ25が配設されて、吸気口20aから吸込まれる外部空気に含まれるホコリ等を除去し得るよう構成される。
【0035】
前記フロントパネル20の前側に、前記複数の吸気口20aの形成領域を覆い得る寸法の硫化水素ガスの除去フィルタ26が着脱自在に配設されている。この除去フィルタ26は、
図3に示す如く、矩形状で前後方向に開口する枠部材27に、該枠部材27の開口を塞ぐようにフィルタ部材28を配設して構成されると共に、前記枠部材27の後面側には、取付手段としての磁石29が複数箇所に設けられている。すなわち、実施例1に係る除去フィルタ26は、枠部材27に設けた複数の磁石29を、前記フロントパネル20の前面に吸着させることで、複数の吸気口20aの形成領域をフィルタ部材28で覆うように取り付けられる。言い替えると、実施例1の冷蔵庫では、硫化水素ガスの除去フィルタ26が、前記機械室13の近傍であって、該機械室13の外側に配置される。より具体的に、実施例1の冷蔵庫では、硫化水素ガスの除去フィルタ26は、機械室13に外部空気を吸込むための前記吸気口20aを覆っている前記エアフィルタ25に近接して、該機械室13の外側に配置される。
【0036】
前記フィルタ部材28は、ウレタン、不織布、金属メッシュ等からなる3次元構造の基材に、硫化水素ガスを吸着可能な吸着剤を付着したものである。なお、吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、遷移金属酸化物等、各種のものを単一または複数を組み合わせて採用することができる。また、フィルタ部材28の厚みは、硫化水素ガスの除去能力と、前記冷却ファン17を運転した際の風量(冷却ファン17の能力)に応じて設定すればよいが、5~20mm程度に設定することで、硫化水素ガスを充分に除去し得ると共に、フロントパネル20からの突出寸法も抑えられて好適である。なお、フィルタ部材28における気体の透過性を示すメッシュサイズとしては、例えば8~13個/2.5cm程度とすることで、前記凝縮器16での凝縮能力を低下させない外部空気の吸込み量を確保しつつ、硫化水素ガスの充分な除去能力を発揮することができて好適である。
【0037】
実施例1の冷蔵庫では、除去フィルタ26を、前記冷却ファン17を運転した際の空気の流れ方向の上流側であるフロントパネル20の前側に配設したので、硫化水素ガスが前記凝縮器16を通過する前に該硫化水素ガスを吸着除去することができるので、硫化水素ガスが機械室13に取り込まれることで冷媒管19が腐食するのを好適に抑制することができる。すなわち、冷媒管19のろう付け接合部等からの冷媒の漏出や動作不良を防止することができる。また、実施例1の冷蔵庫では、除去フィルタ26をフロントパネル20に取り付けるだけの構成であって、除去フィルタ26によって硫化水素ガスを除去するための空気の流れは、冷凍装置14を構成する冷却ファン17を利用しているので、従来技術のように複雑で大型となる腐食性物質分解装置を配置するためのスペースを機械室13の内部に確保する必要はなく、冷蔵庫を小型化することができると共に、イニシャルコストおよびランニングコストを低廉に抑えることができる。また、実施例1の構成であれば、小型の冷蔵庫であっても採用することができ、汎用性が高い。
【0038】
実施例1の冷蔵庫では、前記除去フィルタ26を、前記機械室13の外側であるフロントパネル20の前側に配設しているので、該除去フィルタ26の交換や清掃等のメンテナンスは容易であり、ユーザーの負担を軽減することができる。また、外部空気と共に機械室13に吸込まれるホコリ等は、フロントパネル20の後側に配設したエアフィルタ25によって捕集し得るので、フロントパネル20の前側に配設した除去フィルタ26におけるメッシュサイズを大きめに設定して、該除去フィルタ26がホコリ等により目詰まりするのを抑制することができる。
【0039】
(実施例1の変形例)
図4~
図6は、実施例1における前記フロントパネル20に対する除去フィルタ26の取付構造の変形例を示している。
図4に示す変形例1では、後側に開口する箱状のケース部材30と、該ケース部材30に着脱自在に収納されるフィルタ部材28とから除去フィルタ26が構成される。ケース部材30の前壁には、横長の吸込口30aが上下方向に離間して複数開設されており、該前壁の後側に、複数の吸込口30aの形成領域を覆う寸法に設定されたフィルタ部材28が、前壁の後側に画成した収納部30bに収納可能に構成される。また、ケース部材30の後面には、複数箇所に取付手段としての磁石29が設けられている。そして、変形例1に係る除去フィルタ26は、収納部30bにフィルタ部材28を収納したケース部材30に設けた複数の磁石29を、前記フロントパネル20の前面に吸着させることで、複数の吸気口20aの形成領域をフィルタ部材28で覆うように取り付けることができる。
【0040】
実施例1や変形例1における除去フィルタ26の取付手段としては、磁石29に代えて、フックを採用することができる。なお、取付手段をフックとした場合は、フロントパネル20の対応箇所にフックが係脱可能な係合部を設ければよい。
【0041】
図5に示す変形例2では、前記フロントパネル20の前面における前記複数の吸気口20aの形成領域を囲う位置に、上側に開口するコ字状の第1の受部材31が設けられて、該第1の受部材31に上側からフィルタ部材28を挿脱可能に挿入し得るよう構成される。すなわち、変形例2では、フィルタ部材28のみから除去フィルタ26が構成されており、フロントパネル20の前面に設けた第1の受部材31にフィルタ部材28を挿入することで、複数の吸気口20aの形成領域がフィルタ部材28で覆われる。
【0042】
図6に示す変形例3では、前記フロントパネル20の前面における前記複数の吸気口20aの形成領域を覆う位置に、上側および後側に開口する箱状の第2の受部材32が設けられて、該第2の受部材32に上側からフィルタ部材28が挿脱可能に挿入し得るよう構成される。また、第2の受部材32におけるフロントパネル20と対向する壁部32aには、横長の開口部32bが上下方向に離間して複数開設されており、前記フィルタ部材28は、複数の開口部32bの形成領域を覆い得る寸法に形成されている。すなわち、変形例3では、フィルタ部材28のみから除去フィルタ26が構成されており、フロントパネル20の前面に設けた第2の受部材32にフィルタ部材28を挿入することで、複数の吸気口20aの形成領域および複数の開口部32bの形成領域の間にフィルタ部材28が位置する。
【0043】
変形例2、3のように、フロントパネル20の前面に設けた受部材31,32によってフィルタ部材28を取り付ける構造では、各受部材31,32に、実施例1や変形例1のように構成した除去フィルタ26を挿脱可能とする構成を採用することができる。
【0044】
図7~
図22は、実施例2~実施例13に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、これら各実施例2~実施例13については、実施例1と異なる部分についてのみ説明し、同一部材には同じ符号を付して詳細説明は省略する。また、各実施例2~実施例13の作用効果についても、実施例1と異なる作用効果について主に説明する。
【実施例2】
【0045】
図7、
図8は、実施例2に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例2の冷蔵庫は、前記フロントパネル20の前面(外面)に、前記複数の吸気口20aの形成領域を覆い得る寸法のエアフィルタ25が配設されると共に、該フロントパネル20の後側に、前記複数の吸気口20aの形成領域を覆い得る寸法の硫化水素ガスの除去フィルタ26が着脱自在に配設される。すなわち、実施例2では、エアフィルタ25の後側に除去フィルタ26が配置されて、エアフィルタ25によってホコリ等が除去された外部空気が除去フィルタ26を通過するよう構成される。除去フィルタ26の構成自体は、実施例1と同一のものであって、実施例2の冷蔵庫では、除去フィルタ26は、枠部材27に設けた複数の磁石29を、前記フロントパネル20の後面に吸着させることで、複数の吸気口20aの形成領域をフィルタ部材28で覆うように取り付けられる。言い替えると、実施例2の冷蔵庫では、硫化水素ガスの除去フィルタ26が、前記機械室13の近傍であって、該機械室13の内側に配置される。より具体的に、実施例2の冷蔵庫では、硫化水素ガスの除去フィルタ26は、機械室13に外部空気を吸込むための前記吸気口20aを覆っている前記エアフィルタ25に近接する位置であって、該機械室13の内側に配置される。
【0046】
実施例2の冷蔵庫は、除去フィルタ26を、機械室13の内側であるフロントパネル20の後側に配設しているので、該除去フィルタ26には、前記エアフィルタ25によりホコリ等が除去された外部空気が通過するから、該除去フィルタ26がホコリ等により目詰まりするのを抑制することができる。従って、除去フィルタ26を掃除したり交換する頻度を少なくすることができる。
【0047】
(実施例2の変形例)
図9は、実施例2における前記フロントパネル20に対する除去フィルタ26の取付構造の変形例を示している。
図9に示す変形例4では、前記フロントパネル20の後面における前記複数の吸気口20aの形成領域を囲う位置に、一側方に開口するコ字状の第3の受部材33が設けられて、該第3の受部材33に一側方からフィルタ部材28を挿脱可能に挿入し得るよう構成される。すなわち、変形例4では、フィルタ部材28のみから除去フィルタ26が構成されており、フロントパネル20の後面に設けた第3の受部材33にフィルタ部材28を挿入することで、複数の吸気口20aの形成領域がフィルタ部材28で覆われる。なお、実施例2における除去フィルタ26の取付構造としては、実施例1の前記変形例3の第2の受部材32を横向きに配設する構成を採用することができると共に、除去フィルタ26の構造として前記変形例1の構成を採用することができる。
【0048】
ここで、実施例2では、除去フィルタ26を、フロントパネル20の後面に配設したが、該除去フィルタ26を、前記凝縮器16の前面に配設することで、該除去フィルタ26を前記エアフィルタ25の後側に位置させる構成を採用することができる。この場合は、除去フィルタ26の外形寸法を、凝縮器16の開口(空気の吸込領域)に合わせたサイズに形成し、該除去フィルタ26を、前述した磁石やフック、あるいは凝縮器16の前面に設けた受部材等の取付手段によって該凝縮器16の前面に着脱自在に配設するようにすればよい。
【0049】
なお、実施例1のように、前記フロントパネル20の後面にエアフィルタ25を配設する構成において、該エアフィルタ25の後側に重なるように除去フィルタ26を、フロントパネル20の裏面や凝縮器16の前面に配設する構成を採用することができる。フロントパネル20の後面にエアフィルタ25が配設される構成では、フロントパネル20に除去フィルタ26を配設すると、両フィルタ25,26の後方への突出寸法が大きくなることから、除去フィルタ26を凝縮器16の前面に配設する構成が好ましい。
【実施例3】
【0050】
図10、
図11は、実施例3に係る冷蔵庫を示すものであって、該実施例3の冷蔵庫は、前記除去フィルタ26が、前記機械室13を画成する壁の内面で、かつ前記冷却ファン17の運転によって前記凝縮器16を通過した風(外部空気や硫化水素ガス)が通過する帯域に設けられている。実施例3では、除去フィルタ26は、
図11に示す如く、機械室13を画成する天面、左右側面および底面に設けられており、各除去フィルタ26に接触した硫化水素ガスを吸着するよう構成される。なお、機械室13の内面に設ける除去フィルタ26の構成は、前記実施例1の構成や、フィルタ部材28のみからなる構成を採用することができる。なお、実施例3の冷蔵庫において、除去フィルタ26を機械室13の内面に設ける構成は、硫化水素ガスの除去フィルタ26が、機械室13の近傍に配置されているといえる。
【0051】
実施例3の冷蔵庫では、前記凝縮器16を通過した硫化水素ガスを除去フィルタ26によって直ちに吸着することができるので、機械室13に硫化水素ガスが充満する前に該硫化水素ガスを除去することができ、前記冷媒管19が腐食するのを好適に抑制することができる。また、機械室13の内面に除去フィルタ26を設けているので、前記冷却ファン17の停止状態であっても、機械室内に流入した硫化水素ガスを除去フィルタ26で吸着して除去することができ、冷媒管19の腐食を好適に抑えることができる。なお、除去フィルタ26の配設位置は、凝縮器16を通過した風が通過する帯域であればよいが、冷媒管19に近接する位置であることがより好ましい。
【0052】
(実施例3の変形例)
図12は、実施例3における前記機械室13に対する除去フィルタ26の取付構造の変形例を示している。
図12に示す変形例5では、機械室13の各内面に、機械室中央側および前方に開口するコ字状の第4の受部材34を配設し、該第4の受部材34に対して機械室13の前開口側から除去フィルタ26を挿脱可能に挿入し得るよう構成される。すなわち、変形例5では、前記フロントパネル20を本体10から取り外すことで、除去フィルタ26を簡単に機械室13から取り出すことができるので、清掃や交換等のメンテナンスが容易となる。なお、実施例3では、機械室13の複数の内面に除去フィルタ26を配設するので、硫化水素ガスとの接触面積が広くなって有利であるが、変形例5の第4の受部材34を、除去フィルタ26の交換が容易な箇所にのみ配設するようにしてもよい。また、実施例3において、凝縮器16とフロントパネル20との間であって、該フロントパネル20の後面に配設したエアフィルタ25に近接する機械室内面に除去フィルタ26を配設するようにしてもよい。
【実施例4】
【0053】
図13は、実施例4に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例4の冷蔵庫は、前記機械室13の後側を画成する前記リアパネル21の後側に、前記複数の排気口21aの形成領域を覆い得る寸法の硫化水素ガスの除去フィルタ26が着脱自在に配設される。除去フィルタ26の構成自体は、実施例1と同一のものであって、実施例4の冷蔵庫では、除去フィルタ26は、枠部材27に設けた複数の磁石29を、前記リアパネル21の後面に吸着させることで、複数の排気口21aの形成領域をフィルタ部材28で覆うように取り付けられる。言い替えると、実施例4の冷蔵庫では、硫化水素ガスの除去フィルタ26が、前記機械室13の近傍であって、該機械室13の外側(排気口21aの外側)に配置される。
【0054】
実施例4の冷蔵庫は、機械室13の外側において、排気口21aを覆うように除去フィルタ26を配設しているので、前記冷却ファン17の停止状態において、排気口21aから侵入しようとする空気中の硫化水素ガスを、機械室13に侵入する前に吸着して除去することができる。すなわち、冷却ファン17の停止状態においても、機械室13への硫化水素ガスの侵入を防止し得るので、機械室内の冷媒管19の腐食を好適に防ぐことができる。また、除去フィルタ26を、前記機械室13の外側であるリアパネル21の後側に配設しているので、該除去フィルタ26の交換や清掃等のメンテナンスは容易であり、ユーザーの負担を軽減することができる。
【0055】
(実施例4の変形例)
図14、
図15は、実施例4における前記リアパネル21に対する除去フィルタ26の取付構造の変形例を示している。なお、実施例4の変形例における除去フィルタ26の構成としては、前記実施例1の構成、フィルタ部材28のみからなる構成、前記変形例1の構成を採用することができる。
【0056】
図14に示す変形例6では、前記リアパネル21の後面における前記複数の排気口21aの形成領域を囲う位置に、前記第1の受部材31が設けられて、該第1の受部材31に上側から除去フィルタ26を挿脱可能に挿入し得るよう構成される。すなわち、変形例6では、前記変形例2と同様に、リアパネル21の後面に設けた第1の受部材31に除去フィルタ26を挿入することで、複数の排気口21aの形成領域がフィルタ部材28で覆われる。
【0057】
図15に示す変形例7では、前記リアパネル21の後面における前記複数の排気口21aの形成領域を覆う位置に、前記第2の受部材32が設けられて、該第2の受部材32に上側から除去フィルタ26が挿脱可能に挿入し得るよう構成される。すなわち、変形例7では、前記変形例3と同様に、リアパネル21の後面に設けた第2の受部材32に除去フィルタ26を挿入することで、複数の排気口21aの形成領域および複数の開口部32bの形成領域の間にフィルタ部材28が位置する。
【0058】
なお、実施例4では、リアパネル21の排気口21aの外側に除去フィルタ26を配設したが、リアパネル21の排気口21aの内側、すなわち機械室側に除去フィルタ26を、前記実施例2や変形例4の構成によって配設する構成を採用することができる。また、リアパネル21の内外の両側に除去フィルタ26を配設するようにしてもよい。
【実施例5】
【0059】
図16は、実施例5に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例5の冷蔵庫では、前記冷媒管19の外側に除去フィルタ26が巻付けられている。なお、実施例5の除去フィルタ26は、前記フィルタ部材28のみからなる構成を採用している。
【0060】
ここで、冷蔵庫で用いられる冷媒管19は、低温となる配管では結露防止のために冷媒管19が断熱被覆(断熱チューブ)35で被覆される一方で、高温となる配管では断熱被覆で被覆されていない。そこで、実施例5の冷蔵庫では、
図16(a)に示す如く、断熱被覆35で被覆されている冷媒管19は、該断熱被覆35を覆うように除去フィルタ26を巻付けている。また、
図16(b)に示す如く、断熱被覆35で被覆されていない冷媒管19は、該冷媒管19を直接覆うように除去フィルタ26を巻付けている。なお、除去フィルタ26は、機械室13に臨む冷媒管19の全長に亘って巻付けられる。すなわち、実施例5の冷蔵庫において、除去フィルタ26を機械室13に臨む冷媒管19に巻付ける構成は、硫化水素ガスの除去フィルタ26が、機械室13の近傍に配置されているといえる。
【0061】
実施例5の冷蔵庫では、前記実施例3と同様に、冷媒管19に巻付けられている除去フィルタ26は、前記冷却ファン17の運転によって前記凝縮器16を通過した風(外部空気や硫化水素ガス)が通過する帯域に位置するので、実施例3と同様の作用効果を奏する。また、実施例5の冷蔵庫は、機械室13に臨む冷媒管19を除去フィルタ26で被覆しているので、該冷媒管19に硫化水素ガスが接触する前に該硫化水素ガスを除去することができ、冷媒管19の腐食をより好適に防ぐことができる。なお、冷媒管19に除去フィルタ26を巻付ける構成では、実施例1等のように除去フィルタ26における空気の流通を考慮する必要は少ないので、該除去フィルタ26(フィルタ部材28)における気体の透過性を示すメッシュサイズとしては、例えば13~20個/2.5cm程度と小さくすることで、硫化水素ガスの除去能力を高めることができる。
【0062】
(実施例5の変形例)
図17は、実施例5の変形例を示すものであって、
図17に示す変形例8では、冷媒管19に除去フィルタ26を巻付けるのではなく、該冷媒管19に沿うように配設される。すなわち、
図17(a)に示す如く、断熱被覆35で被覆されている冷媒管19の場合は、断熱被覆35の外側に沿って除去フィルタ26を配設する。また、
図17(b)に示す如く、断熱被覆35で被覆されていない冷媒管19の場合は、冷媒管19の外側に沿って除去フィルタ26を配設する。変形例8のように、除去フィルタ26を冷媒管19に沿うように配設する構成においても、冷媒管19の周囲の硫化水素ガスを除去フィルタ26で吸着除去することができるので、冷媒管19の腐食を抑制することができる。また、変形例8の構成は、冷媒管19に対する除去フィルタ26の巻付けが困難な部位で採用すればよく、除去フィルタ26を冷媒管19に巻付ける箇所と、沿わせる箇所とを併用することができる。
【0063】
(除去フィルタの別実施例)
ここで、前述したように、ウレタン、不織布、金属メッシュ等からなる3次元構造の基材に、硫化水素ガスを吸着可能な吸着剤を付着してフィルタ部材28を構成した場合、該フィルタ部材28の変形や摩耗等によって吸着剤が脱落して周囲を汚す可能性がある。そこで、
図18に示すように、フィルタ部材28を、ガス透過性の袋体36に収納し、袋体36に収納された別実施例のフィルタ部材28を、機械室13にそのまま配置したり、または前記各実施例や変形例のフィルタ部材28(除去フィルタ)として用いることができる。そして、別実施例のフィルタ部材28を用いることで、除去フィルタ26の交換等のメンテナンス時に吸着剤が脱落しても周囲を汚すのを防ぐことができる。なお、袋体36としては、例えば、フィルタ部材28のメッシュサイズより小さいメッシュサイズの不織布を用いることができるが、気体(空気)の通過が可能で、かつ吸着剤は通過不能な材料であれば、その他の材料を採用することができる。
【実施例6】
【0064】
前記実施例1~実施例5では、硫化水素ガスの除去機能を有する除去フィルタ26を、機械室13の近傍に配置するよう構成したが、実施例6の冷蔵庫では、硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を機械室13に付帯するよう構成される。具体的に、実施例6の冷蔵庫では、機械室13を画成する底板13aにおける機械室13に臨む面に、硫化水素ガスを吸着捕集するガス除去剤を含むガス捕集塗料を塗布している。ガス除去剤としては、マンガン系の触媒と、活性炭等の吸着剤とを組み合わせたものが好適であるが、マンガン系触媒や活性炭を単独で用いることができる。触媒と吸着剤とを組み合わせたガス除去剤では、硫化水素ガスを触媒によって分解し、分解した硫化物を吸着剤で吸着することで、硫化水素ガスを吸着捕集する。
【0065】
実施例6の冷蔵庫では、前記冷却ファン17の運転によって機械室13に吸込まれた硫化水素ガス、あいるい冷却ファン17の停止状態において吸気口20aや排気口21aから侵入する硫化水素ガスを、前記底板13aに塗布したガス捕集塗料のガス除去剤によって吸着捕集することができ、機械室内の冷媒管19の腐食を好適に防ぐことができる。また、硫化水素ガスは、空気より重たい気体であるので、機械室13に侵入した硫化水素ガスは、機械室13の下部に移動するため、底板13aに塗布したガス捕集塗料のガス除去剤によって硫化水素ガスを効率的に吸着捕集することができる。また、ガス捕集塗料を底板13aに塗布するだけであるので、硫化水素ガスを除去するための手段を設置するためのスペースを必要とせず、冷蔵庫の大型化を防止することができる。更には、冷却ファン17の運転による外部空気の吸込み量に影響を与えることもないので、凝縮器16での凝縮能力が低下して冷凍装置14の冷凍能力が低下することもない。
【0066】
実施例6では、機械室13の底板13aにガス捕集塗料を塗布したが、該機械室13を画成する各壁やパネル20,21における機械室側の面(内壁面)にガス捕集塗料を夫々塗布してもよい。また、ガス捕集塗料を、前記エアフィルタ25、前記シュラウド24、前記冷却ファン17に塗布することができ、これらの構成によっても実施例6と同様の作用効果が得られる。また、ガス捕集塗料を塗布するのに代えて、ガス除去剤を付着させたフィルム等を壁やパネル20,21、エアフィルタ25、シュラウド24、冷却ファン17に貼付することができる。すなわち、機械室13の内部に位置する装置や、機械室13の内側に臨む部材に、塗料やフィルム等を介してガス除去剤を付帯させることで、機械室13に侵入した硫化水素ガスを効果的に吸着捕集して、冷媒管19の腐食を防止することができる。
【実施例7】
【0067】
図19は、実施例7に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例7の冷蔵庫では、前記冷媒管19を被覆している前記断熱被覆35に、前記ガス除去剤が付帯されている。実施例7では、
図19に示す如く、断熱被覆35の内側および外側に、前記ガス捕集塗料37を塗布することでガス除去剤を付帯させているが、ガス除去剤を付着させたフィルム等を断熱被覆35の内側および外側に貼付してもよい。
【0068】
実施例7の構成によれば、機械室13に臨む冷媒管19を被覆する断熱被覆35にガス除去剤を付帯させているので、該冷媒管19に硫化水素ガスが接触する前に該硫化水素ガスを除去することができ、冷媒管19の腐食を好適に防ぐことができる。
【0069】
ここで、冷媒管19を断熱被覆35で被覆していても、該断熱被覆35における長手方向にあるスリット(合わせ目)から冷気が侵入して結露する可能性がある。このため、機械室13に侵入した硫化水素ガスが前記スリットを介して冷媒管19に接触すると、該硫化水素ガスが結露水に溶け込んで硫化腐食を生ずる。しかるに、実施例7の構成によれば、断熱被覆35の内側にもガス除去剤が付帯されているので、硫化水素ガスを、結露水に溶け込む前に吸着捕集することができ、冷媒管19の腐食を効果的に防止し得る。また、断熱被覆35にガス除去剤を付帯させているので、ガス除去剤の機能が低下したり喪失した場合は、断熱被覆35を交換するだけで簡単に機能を回復させることができる。なお、断熱被覆35にガス除去剤を付帯させる構成において、該断熱被覆35の内側にのみガス除去剤を付帯させる構成を採用することができる。
【実施例8】
【0070】
図20は、実施例8に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例8の冷蔵庫では、前記ガス除去剤を付帯させた別体部材38が、前記機械室13の内部に配置されている。実施例8では、別体部材38の表面に、前記ガス捕集塗料を塗布することでガス除去剤を付帯させているが、ガス除去剤を付着させたフィルム等を別体部材38に貼付したり、あるいは通気性を有する別体部材38に、ガス除去剤を含浸させたりする構成を採用することができる。
【0071】
実施例8の構成において、別体部材38を配置する位置は、機械室13の下部側であれば、空気より重い硫化水素ガスを効果的に吸着捕集することができて好適であるが、前記冷却ファン17の運転による風が通過する帯域に配置するのがより好ましい。また別体部材38を、機械室13を画成する側壁、天壁等に磁石やフック等の取付手段によって着脱自在に取り付ける構成を採用することができる。そして、別体部材38を機械室13の内部に配置する構成であれば、ガス除去剤の機能が低下したり喪失した場合の交換も簡単である。
【0072】
次に、冷蔵庫における冷凍装置14の運転制御の別の実施例について説明する。以下に示す別の実施例は、前記除去フィルタ26やガス除去剤を備えた実施例1~実施例8の冷蔵庫に採用可能である。
【実施例9】
【0073】
実施例9に係る冷蔵庫は、前記温度検出手段23の検出温度に基づいて制御される前記冷凍装置14の待機状態において、前記冷却ファン17を一定時間だけ回転させる制御を行うよう構成される。具体的に、実施例9の冷蔵庫は、前記制御手段22に接続するタイマ(図示せず)を備え、温度検出手段23が、前記収納室11の温度が設定温度以下であることを検出すると、制御手段22は、冷凍装置14による冷却運転を停止する待機状態に移行するよう前記圧縮機18および冷却ファン17を停止するように制御すると共に、前記タイマによる計時を開始させる。そして、
図21に示す如く、制御手段22は、タイマが予め設定された設定時間Tを計時したときに、温度検出手段23が設定温度より高い温度を検出しておらず、冷却運転を再開する条件が満たされていない場合(すなわち、待機状態の冷却ファン17の停止条件が解除されていない場合)であっても、該冷却ファン17を運転(回転)するよう制御する。また、制御手段22は、冷却ファン17の運転を再開してから計時を開始したタイマが、予め設定されたガス除去運転時間Kを計時したときに、該冷却ファン17の運転を停止するように制御する。なお、ガス除去運転時間Kが経過したときに、冷却運転を再開する条件が満たされていない場合は、設定時間Tが経過する毎に冷却ファン17の運転をガス除去運転時間Kだけ実行する運転を繰り返す。すなわち、待機状態が開始されてから冷却運転を再開するまでの間、設定時間T毎にガス除去運転時間Kだけ冷却ファン17を運転するガス除去運転を反復する。言い替えると、実施例9に係る冷蔵庫では、冷却ファン17を、冷却運転において回転する制御とは別に、定期的に回転する制御が行われる。なお、タイマが設定時間Tを計時する前であっても、前記温度検出手段23が設定温度より高い温度を検出した場合(冷却運転を再開する条件が満たされた場合)は、ガス除去運転に優先して冷却運転を再開する。
【0074】
実施例9に係る冷蔵庫では、待機状態においても冷却ファン17を一定時間だけ回転する制御を行うので、前記吸気口20aや排気口21aから機械室13に侵入する硫化水素ガスを、冷却ファン17の回転による風によって前記除去フィルタ26やガス除去剤に積極的に接触させることができるので、機械室内の硫化水素ガス濃度を常に低く抑えることができ、冷媒管19の腐食の防止に寄与し得る。
【0075】
ここで、実施例9の運転制御を、前記実施例1、実施例2のように、前記フロントパネル20の吸気口20aに近接して除去フィルタ26を配置した冷蔵庫で採用する場合、前記ガス除去運転時間Kは、機械室内の全ての空気が、冷却ファン17の回転によって除去フィルタ26を通過した空気と入れ替わるのに要する時間に設定することが好ましい。すなわち、ガス除去運転時間Kは、機械室13の大きさ、冷却ファン17の能力、排気口21aの位置や開口面積等によって算出可能であり、この算出した値をガス除去運転時間Kとして設定する。なお、ガス除去運転時間Kについては、安全を見込んで算出値より長く設定することが好ましく、またガス除去運転時間Kを、冷蔵庫の設置状況に応じて設定変更可能に構成されることが好ましい。
【実施例10】
【0076】
ここで、前記フロントパネル20の吸気口20aおよび前記リアパネル21の排気口21aの一方のみが除去フィルタ26で覆われる構成の前記実施例1、実施例2、実施例4等では、前記冷凍装置14が待機状態で前記冷却ファン17が停止していると、除去フィルタ26で覆われていない吸気口20aまたは排気口21aから機械室13に硫化水素ガスが侵入する。そして、冷媒管19に水分が付着(結露)していると、機械室13に侵入した硫化水素ガスが水分に溶け込み、硫化水素ガスは金属イオンを含む水溶液に反応して金属硫化物の沈殿を生ずる。すなわち、冷媒管19には銅硫化物が発生し、該冷媒管19を構成する銅を減少させる。このため、経時的に冷媒管19の腐食が進行して冷媒ガスを漏出させる問題を招くおそれがある。
【0077】
そこで、実施例10に係る冷蔵庫は、前記機械室13に臨む前記冷媒管19に水分が付着したのを検出する水分計39(
図2参照)を備えると共に、該水分計39を前記制御手段22を接続し、水分計39により冷媒管19に水分が付着していることを検出している間は、前記冷却ファン17を回転させるように制御手段22で該冷却ファン17を制御するよう構成している。すなわち、制御手段22は、水分計39が水分を検出している間は冷却ファン17を回転し、水分計が水分を検出しなくなると冷却ファン17を停止する制御を行うようになっている。なお、実施例10の冷蔵庫では、前記温度検出手段23の検出温度に基づく運転制御を基本としており、該温度検出手段23の検出温度に基づき待機状態に移行する場合に、前記水分計39が水分を検出している場合、制御手段22は、前記冷却ファン17の回転を継続しつつ前記圧縮機18の運転を停止する制御を行う。また、水分計39が水分を検出しなくなっても、温度検出手段23の検出温度に基づき冷却運転を再開する条件が満たされた場合は、冷却ファン17を回転する制御を行うようになっている。なお、水分計39としては、例えば、電極間の抵抗値の変化によって水分を検出する方式等、各種の公知の方式を採用することができる。
【0078】
実施例10に係る冷蔵庫では、前記水分計39により冷媒管19に水分が付着していることを検出している間は、待機状態であっても冷却ファン17を回転する制御を行うので、前記吸気口20aや排気口21aから機械室13に侵入する硫化水素ガスを、冷却ファン17の回転による風によって前記除去フィルタ26やガス除去剤に積極的に接触させることができるので、機械室内の硫化水素ガス濃度を常に低く抑えることができ、冷媒管19に付着した水分に硫化水素ガスが溶け込むのを抑えることができ、腐食の防止に寄与し得る。
【0079】
また、実施例10の運転制御を、前記実施例1、実施例2のように、前記フロントパネル20の吸気口20aに近接して除去フィルタ26を配置した冷蔵庫で採用すれば、硫化水素ガスを機械室13に侵入する前に吸着捕集し得るので、冷媒管19に付着した水分に硫化水素ガスが溶け込むのをより抑えることができて好適である。
【実施例11】
【0080】
実施例11に係る冷蔵庫は、前記機械室13の内部に湿度検出器40(
図2参照)が配設されると共に、該湿度検出器40を前記制御手段22に接続し、該機械室13における湿度が予め設定した数値(湿度上限値)以上となっていることを該湿度検出器40が検出している間は、前記冷却ファン17を回転させるように制御手段22で該冷却ファン17を制御するよう構成している。すなわち、制御手段22は、湿度検出器40が湿度上限値以上の湿度を検出している間は冷却ファン17を回転し、湿度検出器40が湿度上限値未満の湿度を検出すると冷却ファン17を停止する制御を行うようになっている。なお、実施例11の冷蔵庫では、前記温度検出手段23の検出温度に基づく運転制御を基本としており、該温度検出手段23の検出温度に基づき待機状態に移行する場合に、前記湿度検出器40が湿度上限値以上の湿度を検出している場合、制御手段22は、前記冷却ファン17の回転を継続しつつ前記圧縮機18の運転を停止する制御を行う。また、湿度検出器40が湿度上限値未満の湿度を検出していても、温度検出手段23の検出温度に基づき冷却運転を再開する条件が満たされた場合は、冷却ファン17を回転する制御を行うようになっている。なお、湿度検出器40の配設位置は、前記冷媒管19に近接する位置が好ましい。
【0081】
実施例11に係る冷蔵庫では、前記湿度検出器40が湿度上限値以上の湿度を検出している間は、待機状態であっても冷却ファン17を回転する制御を行うので、前記吸気口20aや排気口21aから機械室13に侵入する硫化水素ガスを、冷却ファン17の回転による風によって前記除去フィルタ26やガス除去剤に積極的に接触させることができるので、機械室内の硫化水素ガス濃度を常に低く抑えることができ、腐食の防止に寄与し得る。
【0082】
ここで、実施例11における湿度上限値については、JEITA IT-1004A「産業用情報処理・制御機器設置環境基準」に定める腐食性ガス環境のクラス分けにおいて、「湿度が比較的低くガスが少ない一般的な環境」であるクラスBの環境に保つことができる値に設定すればよい。ちなみに、クラスBを満たす前記基準に定める合計評価点は、10~25の範囲である。例えば、硫化水素ガスの濃度が3~10ppbであるとすると、夏場の厨房では温度が30℃以上、湿度が75%以上と想定され、汚損度に関わらず、前記基準では「湿度、温度が高くガスが若干ある環境」であるクラスS2となり、腐食が発生し易い環境である。そこで、湿度上限値を60%に設定すれば、温度、湿度、ガス濃度の合計評価点が24となり、前記クラスBの範囲を満たす。
【実施例12】
【0083】
実施例12に係る冷蔵庫は、前記機械室13の内部に硫化水素ガスの濃度検出器41(
図2参照)が配設されると共に、該濃度検出器41を前記制御手段22に接続し、該機械室13における硫化水素ガスの濃度が予め設定した数値(濃度上限値)以上となっていることを該濃度検出器41が検出している間は、前記冷却ファン17を回転させるように制御手段22で該冷却ファン17を制御するよう構成している。すなわち、制御手段22は、濃度検出器41が濃度上限値以上の濃度を検出している間は冷却ファン17を回転し、濃度検出器41が濃度上限値未満の濃度を検出すると冷却ファン17を停止する制御を行うようになっている。なお、実施例12の冷蔵庫では、前記温度検出手段23の検出温度に基づく運転制御を基本としており、該温度検出手段23の検出温度に基づき待機状態に移行する場合に、前記濃度検出器41が濃度上限値以上の濃度を検出している場合、制御手段22は、前記冷却ファン17の回転を継続しつつ前記圧縮機18の運転を停止する制御を行う。また、濃度検出器41が濃度上限値未満の濃度を検出していても、温度検出手段23の検出温度に基づき冷却運転を再開する条件が満たされた場合は、冷却ファン17を回転する制御を行うようになっている。なお、濃度検出器41は、機械室13に外部空気を吸込むための吸気口20aまたは機械室13から空気を排出するための排気口21aの近傍における底板13aに配置するのが好ましい。
【0084】
実施例12に係る冷蔵庫では、前記濃度検出器41が濃度上限値以上の濃度を検出している間は、待機状態であっても冷却ファン17を回転する制御を行うので、前記吸気口20aや排気口21aから機械室13に侵入する硫化水素ガスを、冷却ファン17の回転による風によって前記除去フィルタ26やガス除去剤に積極的に接触させることができるので、機械室内の硫化水素ガス濃度を常に低く抑えることができ、腐食の防止に寄与し得る。
【0085】
ここで、前記実施例1、実施例2のように、前記フロントパネル20の吸気口20aに近接して除去フィルタ26を配置した冷蔵庫において、前記冷凍装置14による冷却運転時における濃度検出器41で検出された冷却運転時検出値と、待機状態における濃度検出器41で検出された待機状態時検出値とを比較し、待機状態時検出値が冷却運転時検出値より高い場合は、除去フィルタ26、エアフィルタ25および吸気口20a以外の経路から外部空気(硫化水素ガス)が機械室13に侵入していると判断できる。そこで、前記フロントパネル20の吸気口20aに近接して除去フィルタ26を配置した冷蔵庫に実施例12の運転制御を採用する場合は、冷却運転時検出値の平均値を、前記濃度上限値とすることができる。
【実施例13】
【0086】
図22は、実施例13に係る冷蔵庫の要部を示すものであって、該実施例13の冷蔵庫では、前記機械室13の排気口21aを開閉可能なダンパ42を備えている。このダンパ42は、複数の排気口21aの形成領域を覆い得る寸形、形状に構成されており、前記リアパネル21の外側に上端部が回動自在に支持される。そして、該ダンパ42は、前記冷却ファン17の停止状態では、前記排気口21aを閉成する状態に維持され、冷却ファン17の回転によって機械室13の内圧が高まることで、排気口21aを開放するように揺動する(
図21(a)参照)。そして、前記冷却ファン17の停止によって機械室13の内圧が低下することで閉じるように揺動して排気口21aを閉成するよう構成される(
図21(b)参照)。すなわち、実施例13では、冷却ファン17の回転、回転停止に伴って、ダンパ42が自動的に排気口21aの開放、閉成を行うようになっている。
【0087】
実施例13の冷蔵庫は、前記冷却ファン17の停止状態においては、前記ダンパ42によって排気口21aを閉成しているので、冷却ファン17の停止状態において排気口21aからの硫化水素ガスの侵入を防止することができる。すなわち、冷却ファン17の停止状態における機械室13の硫化水素ガスの濃度を低く抑えることができ、冷媒管19の腐食の防止に寄与する。また、ダンパ42は、冷却ファン17の回転、回転停止によって開閉するので、別途駆動源を必要とせず、構成を簡単にし得ると共にコストを抑えることができる。
【0088】
実施例13の構成において、ダンパ42を駆動するシリンダ等の駆動源を設け、該駆動源を、冷却ファン17の回転、回転停止に応じてダンパ42が開閉するように制御手段22で制御する構成を採用することができる。
【実施例14】
【0089】
次に、実施例14に係る冷蔵庫について説明する。実施例14では、前記機械室13の近傍に除去フィルタ26を配置する実施例1~5または機械室13にガス除去剤を付帯させる実施例6~8において、除去フィルタ26における腐食性ガスである硫化水素ガス用の吸着剤またはガス除去剤とは別に、硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着可能な吸着剤を備える。すなわち、除去フィルタ26を用いる構成では、該除去フィルタ26を構成する基材に、硫化水素ガス用の吸着剤とは別に、硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着可能な脱臭用吸着剤を、所要の割合で配合する。また、ガス除去剤を用いる構成では、ガス除去剤を機械室13に付帯させるためのガス捕集塗料等に、脱臭用吸着剤を、所要の割合で配合する。この構成によれば、空気中に含まれる硫化水素ガス以外の、例えばアンモニアやアミン系の臭気成分を脱臭用吸着剤によって吸着除去することができ、硫化水素ガスに起因する冷媒管19の腐食を防止する機能と、脱臭機能とを備えた冷蔵庫を提供できる。すなわち、冷蔵庫を、脱臭装置として機能させることができる。
【0090】
前記脱臭用吸着剤としては、臭気成分を化学的に吸着するアミン系の吸着剤やリン酸等の化学吸着剤が好適であるが、臭気成分を物理的に吸着するものであってもよい。また、冷蔵庫の設置環境に応じて、脱臭用吸着剤の種類、脱臭用吸着剤同士の配合割合あるいは硫化水素ガス用の吸着剤やガス除去剤と脱臭用吸着剤との配合割合を変えることで、吸着対象とする臭気成分を効率的に除去することができる。例えば、硫化水素ガスが多く発生する設置環境では、脱臭用吸着剤より硫化水素ガス用の吸着剤(ガス除去剤)の配合割合を多くし、硫化水素ガスよりその他の臭気成分の方が多く発生する設置環境では、脱臭用吸着剤を硫化水素ガス用の吸着剤(ガス除去剤)の配合割合より多くする。ここで、硫化水素ガス以外の臭気成分を吸着可能とは、硫化水素ガス以外の臭気成分のみを吸着することのみを意味するものではなく、硫化水素ガスおよびその他の臭気成分の両方を吸着し得ることを含むものである。
【0091】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例や変形例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.実施例等では、機械室が本体の下部側に設けられた冷蔵庫(冷却機器)の場合で説明したが、本体の上部側に機械室が設けられた冷却機器であってもよい。
2.実施例9に係る冷蔵庫では、冷却ファンを待機状態において定期的に回転するよう制御したが、冷却ファンについては冷却運転および待機状態に関係なく、常時回転するように制御する構成を採用することができる。このように冷却ファンを常時回転することで、冷蔵庫に備えられた除去フィルタやガス除去剤によって、周囲の硫化水素ガスを常に吸着捕集することができる。また、実施例14のように、臭気成分を吸着除去可能な臭気用吸着剤を備える構成において、冷却ファンを常時回転することで、冷蔵庫を、悪臭を発する硫化水素ガスやその他の臭気成分を除去する脱臭装置として好適に機能させることができる。なお、冷却ファンの運転制御に関し、冷却運転時にのみ回転する制御状態、冷却運転時に回転すると共に待機状態において定期的に回転する制御状態、冷却運転および待機状態に関係なく常時回転する制御状態の何れかの制御状態に切り替え可能に構成し、冷蔵庫の設置環境に応じて冷却ファンの制御状態を選択し得るようにすることができる。
3.冷蔵庫では、収納室の温度に応じて冷凍装置の冷却運転と待機状態とが制御されるが、製氷機では、製氷された氷塊を貯留するストッカが満杯となっているか否かに応じて冷凍装置の冷却運転と待機状態とが制御される。すなわち、製氷機において冷却ファンの停止条件は、ストッカが満杯か否かを検出する満杯検出手段の満杯検出であり、製氷機において冷却運転を再開する条件は、満杯検出手段がストッカの満杯を検出しなくなったことである。なお、冷蔵庫や製氷機では、収納室の温度やストッカでの氷塊の貯溜状態の他に、除霜運転や除氷運転においても、冷却ファンを停止する制御が行われることから、これらの状態を検出する状態検出手段の検出が、冷却ファンの停止条件となる。
4.実施例や変形例等の各構成については、夫々を組み合わせて構成することができる。
例えば、フロントパネルの外側および内側に除去フィルタを配設する構成、リアパネルの外側および内側に除去フィルタを配設する構成、フロントパネルの外側および内側の一方に除去フィルタを配設すると共に、リアパネルの外側および内側の一方に除去フィルタを配設する構成、フロントパネルまたはリアパネルの一方に近接して除去フィルタを配設すると共に、機械室の内部にガス除去剤を付帯させる構成等、各種の組み合わせを採用することができる。また、複数の除去フィルタを機械室の近傍に配置する構成において、複数の除去フィルタの夫々に臭気用吸着剤を備えたり、一部の除去フィルタにのみ臭気用吸着剤を備える構成を採用し得る。また、除去フィルタおよびガス除去剤を組み合わせる構成において、両方はまたは一方に臭気用吸着剤を備える構成を採用できる。
【符号の説明】
【0092】
14 冷凍装置,15 蒸発器,16 凝縮器,17 冷却ファン,18 圧縮機
19 冷媒管(銅配管),20a 吸気口,21a 排気口,24 シュラウド
25 エアフィルタ,26 除去フィルタ,35 断熱被覆,36 袋体
38 別体部材,39 水分計,40 湿度検出器,41 濃度検出器,42 ダンパ