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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】デファレンシャル装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/30 20120101AFI20221110BHJP
   F16H 48/38 20120101ALI20221110BHJP
   B60W 10/12 20120101ALI20221110BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20221110BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20221110BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F16H48/30
F16H48/38
B60W10/12
B60W10/18
B60W10/06
B60W10/00 150
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018241103
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020101260
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】川田 和隆
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-016432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/30
F16H 48/38
B60W 10/12
B60W 10/18
B60W 10/06
B60W 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配置された入力部材と、前記入力部材の回転により公転すると共に自転可能に前記入力部材に組付けられた差動部材と、前記差動部材と噛み合い相対回転可能に配置された一対の出力部材とを有する差動機構と、前記入力部材と一対の前記出力部材のうちいずれか一方の前記出力部材との間に設けられた断続部材とからなるデファレンシャル装置と、前記入力部材又は一対の前記出力部材のうち少なくとも1つの回転を制動させて前記断続部材の作動を助長する制御手段とを備え
前記入力部材又は一対の前記出力部材のうち少なくとも1つと直接又は間接的に連結したブレーキを備え、
前記制御手段は、前記ブレーキを制動させ前記入力部材又は一対の前記出力部材の回転を遅らせ、
前記ブレーキは、一対の前記出力部材のそれぞれに対して設けられ、
前記制御手段は、それぞれの前記ブレーキを交互に制動させることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【請求項2】
回転可能に配置された入力部材と、前記入力部材の回転により公転すると共に自転可能に前記入力部材に組付けられた差動部材と、前記差動部材と噛み合い相対回転可能に配置された一対の出力部材とを有する差動機構と、前記入力部材と一対の前記出力部材のうちいずれか一方の前記出力部材との間に設けられた断続部材とからなるデファレンシャル装置と、前記入力部材又は一対の前記出力部材のうち少なくとも1つの回転を制動させて前記断続部材の作動を助長する制御手段とを備え、
前記入力部材又は一対の前記出力部材のうち少なくとも1つと直接又は間接的に連結したブレーキを備え、
前記制御手段は、前記ブレーキを制動させ前記入力部材又は一対の前記出力部材の回転を遅らせ
前記制御手段による前記ブレーキの制動は、車両走行時の車体振動数と共振しない間隔で断続制御されることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【請求項3】
請求項記載のデファレンシャル装置の制御装置であって、
前記制御手段による前記ブレーキの制動は、車両走行時の車体振動数と共振しない間隔で断続制御されることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のデファレンシャル装置の制御装置であって、
前記制御手段は、前記入力部材へ入力される駆動力を一時的に低減させることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【請求項5】
請求項記載のデファレンシャル装置の制御装置であって、
前記制御手段は、原動機の出力を低減させることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【請求項6】
請求項記載のデファレンシャル装置の制御装置であって、
前記制御手段は、原動機と前記入力部材との間に配置されたクラッチの出力を低減させることを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるデファレンシャル装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デファレンシャル装置としては、回転可能に配置された入力部材としてのデフケースと、デフケースの回転により公転すると共に自転可能にデフケースに組付けられた差動部材としてのピニオンと、ピニオンと噛み合い相対回転可能に配置された一対の出力部材としてのサイドギヤを有する差動機構と、デフケースと一方のサイドギヤとの間に設けられた断続部材としての移動部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このデファレンシャル装置では、移動部材が、デフケースに対して軸方向移動可能で一体回転可能に係合され、移動部材と一方のサイドギヤとの軸方向間にドグクラッチが設けられている。
【0004】
このようなデファレンシャル装置では、双方の間に設けられたドグクラッチ歯を係合させることにより、デフケースと一方のサイドギヤとが接続され、差動機構での差動がロック状態、いわゆるデフロック状態となって、デフケースに入力された駆動力が一対のサイドギヤから均等に出力される。
【0005】
このデファレンシャル装置には、エンジンからの出力を制御するエンジン出力制御部と、差動機構の状態と車速に応じてエンジン出力制御部を制御する出力低減要求制御部とが設けられている。
【0006】
このような制御部を有するデファレンシャル装置は、所定の車速を下回り、差動機構がロック状態であるとき、エンジンの出力の立ち上がり度合を緩やかになるように制御し、急発進時における車両の直進性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-169159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1のようなデフロック機能を有するデファレンシャル装置では、移動部材を作動させて、差動機構の差動をロック状態、或いはロック解除状態とさせている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のようなデファレンシャル装置では、差動機構をロック状態からロック解除状態、或いはロック解除状態からロック状態へ移行させるときに、断続させる対象である一対の回転部材間に作用する伝達トルクの影響によって、移動部材の作動に遅れを生じることがあった。
【0010】
そこで、この発明は、断続部材をスムーズに作動させることができるデファレンシャル装置の制御装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転可能に配置された入力部材と、前記入力部材の回転により公転すると共に自転可能に前記入力部材に組付けられた差動部材と、前記差動部材と噛み合い相対回転可能に配置された一対の出力部材とを有する差動機構と、前記入力部材と一対の前記出力部材のうちいずれか一方の前記出力部材との間に設けられた断続部材とからなるデファレンシャル装置と、前記入力部材又は一対の前記出力部材のうち少なくとも1つの回転を制動させて前記断続部材の作動を助長する制御手段とを備えたことを特徴とするデファレンシャル装置の制御装置である。
【0012】
このデファレンシャル装置の制御装置では、入力部材又は一対の出力部材のうち少なくとも1つの回転を制動させて断続部材の作動を助長する制御手段を備えているので、差動機構をロック状態からロック解除状態、或いはロック解除状態からロック状態へ移行させるときに、断続させる対象である回転部材の回転を制動することで、断続部材の作動抵抗を抑制させることができる。
【0013】
従って、このようなデファレンシャル装置の制御装置では、制御手段によって、断続部材をスムーズに作動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断続部材をスムーズに作動させることができるデファレンシャル装置の制御装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置が適用される車両の動力系を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置のデファレンシャル装置の断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置の制御手段のブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置の制御手段によるブレーキ制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置の制御手段による駆動力入力制御のフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置の制御手段によるデフロック制御とブレーキ制御と駆動力入力制御とを組合せたときのフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置の制御手段による原動機の出力制御とクラッチ制御とブレーキ制御とを組合せたときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図7を用いて本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置について説明する。
【0017】
本実施の形態に係るデファレンシャル装置15は、図示しないキャリアハウジングに収容され、回転可能に配置された入力部材としてのデフケース3と、デフケース3の回転により公転すると共に自転可能にデフケース3に組付けられた差動部材としてのピニオン5と、ピニオン5と噛み合い相対回転可能に配置された一対の出力部材としてのサイドギヤ7,9とを有する差動機構11と、デフケース3と一方のサイドギヤ9との間に設けられた断続部材13とからなる。
【0018】
また、キャリアハウジング内には、所定量の潤滑オイルが封入され、図示外の駆動ギヤ組やデファレンシャル装置の駆動回転によって潤滑オイルが攪拌されて、キャリアハウジング内の回転部材や摺動部材の潤滑と冷却が行われている。
【0019】
そして、このデファレンシャル装置15の制御装置1は、デフケース3又は一対のサイドギヤ7,9のうち少なくとも1つの回転を制動させて断続部材13の作動を助長する制御手段17を備えている。
【0020】
また、図1においての制御装置1は、一対のサイドギヤ7,9のうち両方のサイドギヤ7,9と間接的に連結する車軸31,31側と車体側との間に設けられたブレーキ19,19を備えている。
【0021】
しかしながら、ブレーキの配置箇所については、これに限られるものではなく、デフケース3又は一対のサイドギヤ7,9のうち少なくとも1つと直接又は間接的に連結したブレーキ19を備えていればよく、配置箇所や形状など、適宜有用に設定される。
【0022】
そして、制御手段17は、ブレーキ19を制動させデフケース3又は一対のサイドギヤ7,9の回転を遅らせる。
【0023】
さらに、ブレーキ19は、一対のサイドギヤ7,9のそれぞれに対して設けられ、制御手段17は、それぞれのブレーキ19,19を交互に制動させる。
【0024】
また、制御手段17によるブレーキ19の制動は、車両走行時の車体振動数と共振しない間隔で断続制御される。
【0025】
さらに、制御手段17は、デフケース3へ入力される駆動力を一時的に低減させる。
【0026】
また、制御手段17は、原動機としてのエンジン21又は電動モータ23との出力を低減させる。
【0027】
さらに、制御手段17は、エンジン21及び電動モータ23とデフケース3との間に配置されたクラッチ25の出力を低減させる。
【0028】
まず、図1を用いて本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置15の制御装置1が適用される車両の動力系の一例について説明する。
【0029】
図1に示すように、車両の動力系は、原動機としてのエンジン21と電動モータ23と、原動機からの駆動力を前輪側と後輪側とに伝達するトランスファ27と、後輪側プロペラシャフト29と、後輪側の左右輪の差動を許容するリヤデフとしてのデファレンシャル装置15と、後車軸31,31と、後輪33,33と、前輪側プロペラシャフト35と、前輪側の左右輪の差動を許容するフロントデフ37と、前車軸39,39と、前輪41,41などを備えている。
【0030】
この車両の動力系では、エンジン21及び電動モータ23からの駆動力がトランスファ27に伝達され、常時、後輪側プロペラシャフト29を介してデファレンシャル装置15に伝達され、後車軸31,31を介して後輪33,33に駆動力が配分される。
【0031】
一方、トランスファ27に伝達された駆動力は、前輪側プロペラシャフト35を介してフロントデフ37に伝達され、フロントデフ37に適用された動力伝達を断続する断続機構が接続状態であると、前車軸39,39を介して前輪41,41に駆動力が配分され、車両が前後輪駆動の四輪駆動状態となる。
【0032】
これに対して、フロントデフ37に適用された断続機構が接続解除状態であると、前輪側プロペラシャフト35からフロントデフ37への動力伝達が遮断され、前輪41,41側に駆動力が伝達されず、車両が後輪駆動の二輪駆動状態となる。
【0033】
なお、フロントデフ37側への駆動力の断続は、トランスファ27に適用された動力伝達を断続する断続機構の断続によって行ってもよい。
【0034】
以下、図1図2を用いてデファレンシャル装置15について説明するが、トランスファ27に内蔵された場合のセンターデフ、又は図1に記載のようなフロントデフ37に対しても、同様の構成を適用することができる。
【0035】
図1図2に示すように、デファレンシャル装置15は、差動機構11と、断続機構43とを備えている。
【0036】
差動機構11は、デフケース3と、ピニオンシャフト45,47と、ピニオン5と、一対のサイドギヤ7,9とを備えている。
【0037】
デフケース3は、軸方向の両側に設けられたボス部49,51の外周でそれぞれベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。
【0038】
このデフケース3には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部53が設けられ、リングギヤが後輪側プロペラシャフト29側に接続された伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、デフケース3に原動機からの駆動力が伝達される。
【0039】
このようなデフケース3には、ピニオンシャフト45,47と、ピニオン5と、一対のサイドギヤ7,9とが収容され、デフケース3に入力された駆動力が伝達される。
【0040】
ピニオンシャフト45,47は、2つの短尺のピニオンシャフト45と長尺の1つのピニオンシャフト47とからなる。
【0041】
2つの短尺のピニオンシャフト45は、外端部をデフケース3に係合してピン55で抜け止め及び回り止めされ、デフケース3と一体に回転駆動される。
【0042】
長尺の1つのピニオンシャフト47は、中間に設けられた孔に2つの短尺のピニオンシャフト45の内端部が係合されて抜け止め及び回り止めがなされ、デフケース3と一体に回転駆動される。
【0043】
このようなピニオンシャフト45,47のそれぞれの外端側には、複数のピニオン5がそれぞれ支承されている。
【0044】
複数のピニオン5は、デフケース3の周方向等間隔に4つ配置される4ピニオンタイプとなっており、それぞれ短尺の2つのピニオンシャフト45の外端側と長尺のピニオンシャフト47の両端側に支承されてデフケース3の回転によって公転する。
【0045】
このピニオン5の背面側とデフケース3との径方向間には、ピニオン5の公転時に発生する径方向への移動を受ける球面ワッシャ57が配置されている。
【0046】
このようなピニオン5は、一対のサイドギヤ7,9に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ7,9に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト45,47に自転可能に支持されている。
【0047】
一対のサイドギヤ7,9は、それぞれに形成されたボス部でデフケース3に相対回転可能に支持され、ピニオン5と噛み合っている。
【0048】
この一対のサイドギヤ7,9とデフケース3との軸方向間には、ピニオン5との噛み合い反力による一対のサイドギヤ7,9の軸方向への移動を受けるスラストワッシャ59,61がそれぞれ配置されている。
【0049】
このような一対のサイドギヤ7,9は、内周側にスプライン形状の連結部63,65がそれぞれ設けられ、後車軸31,31に接続される駆動軸(不図示)がそれぞれサイドギヤ7,9と一体回転可能に連結され、デフケース3に入力された駆動力を後輪33,33側に出力する。
【0050】
このような差動機構11における一対のサイドギヤ7,9の差動は、断続機構43の接続によってロック状態とされ、一対のサイドギヤ7,9に伝達された駆動力が左右の後輪33,33に均一に出力される。
【0051】
このように差動機構11の差動を断続する断続機構43を有するデファレンシャル装置15は、いわゆるデフロック機能を有するデファレンシャル装置となっている。
【0052】
断続機構43は、断続部材13と、断続部67と、可動部材69と、電磁石71とを備えている。
【0053】
断続部材13は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部73がデフケース3の壁部75とサイドギヤ9の背面側との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
【0054】
この断続部材13のデフケース3の壁部75側には、デフケース3と一体回転可能に係合する係合部77が設けられ、断続部材13のサイドギヤ9の背面側には、断続部67が設けられている。
【0055】
係合部77は、断続部材13の基部73に周方向等間隔に設けられた複数の凸部79と、デフケース3の壁部75に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔部81とからなる。
【0056】
この凸部79と孔部81とが回転方向に係合することにより、断続部材13がデフケース3に回り止めされ、断続部材13とデフケース3とが一体回転可能となる。
【0057】
この係合部77には、断続部材13を断続部67の接続方向に移動させるカムが設けられている。
【0058】
詳細には、凸部79と孔部81との周方向両側の対向面には、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。
【0059】
このため、断続部材13が断続部67の接続方向に移動され、断続部67に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、デフケース3の回転によってそれぞれのカム面が係合することにより、断続部材13をさらに断続部67の噛み合い方向に移動させ、断続部67の接続を強化させる。
【0060】
断続部67は、断続部材13の基部73の係合部77と軸方向反対側の側面で断続部材13とサイドギヤ9の背面側との軸方向間に設けられ、断続部材13とサイドギヤ9とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0061】
この断続部67は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、断続部材13とサイドギヤ9とが一体可能に接続、すなわちデフケース3とサイドギヤ9とが一体回転可能に接続され、差動機構11の差動がロック状態となる。
【0062】
一方、断続部材13とサイドギヤ9の背面側との軸方向間で断続部67の径方向内側には、付勢部材83が設けられ、断続部材13を断続部67の接続解除方向に付勢している。
【0063】
この付勢部材83によって、断続部材13が断続部67の接続解除方向に移動され、断続部67の接続が解除され、差動機構11の差動がアンロック状態となる。
【0064】
この断続部67の断続状態は、可動部材69と電磁石71とからなるアクチュエータによって制御される。
【0065】
可動部材69は、電磁石71の内径側でデフケース3のボス部51の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ85と、リング部材87とを備えている。
【0066】
プランジャ85は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石71の内径側に配置されている。
【0067】
リング部材87は、非磁性材料から形成され、プランジャ85の内径側に一体に固定され、プランジャ85の内周側からデフケース3側へ磁束が漏れることを防止している。
【0068】
このリング部材87は、デフケース3のボス部51の外周に軸方向移動可能に配置され、デフケース3のボス部51の外周に圧入固定された非磁性材料からなる規制部材89によって軸方向外側への移動規制がなされている。
【0069】
このようなリング部材87は、断続部材13側の軸方向の端面に、断続部材13の凸部79と当接可能な押圧部91が設けられている。
【0070】
この押圧部91は、電磁石71によって作動される可動部材69による軸方向の移動操作力を押圧部91を介して断続部材13に伝達し、断続部材13を断続部67の接続方向に押圧操作する。
【0071】
電磁石71は、デフケース3のボス部51の外周側でデフケース3の壁部75に対して軸方向に隣接配置されると共に、キャリアなどの静止系部材に回り止めされ、電磁コイル93と、コア95とを備えている。
【0072】
電磁コイル93は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。
【0073】
この電磁コイル93には、外部に引き出されるリード線(不図示)が接続され、このリード線を介して通電を制御する制御手段17のデフロックECU105に接続されている。
【0074】
コア95は、電磁コイル93への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。
【0075】
このコア95は、電磁コイル93の内外周面及び電磁コイル93のデフケース3の壁部75と反対側に位置する軸方向一側端面を環状に覆っている。
【0076】
このようなコア95の外径側には、デフケース3の壁部75から軸方向に延設された延設部97が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置されていると共に、延設部97の軸方向端面によって電磁石71の軸方向内側への位置決めがなされている。
【0077】
一方、コア95の軸方向外側の端面は、可動部材69の軸方向外側への移動を規制するデフケース3のボス部51に圧入固定された規制部材89によって、可動部材69と共に電磁石71の軸方向外側への位置決めがなされている。
【0078】
なお、規制部材89は、最終的にデフケース3を回転支持するためにデフケース3のボス部51に圧入固定されたベアリングのインナレースの端面と当接し、軸方向外側への移動が規制されている。
【0079】
このように構成されたデファレンシャル装置15では、電磁石71の励磁によりコア95とプランジャ85とデフケース3の壁部75とを透過する磁束で形成される最短の磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ85が断続部材13側に移動操作され、リング部材87が押圧部91を介して断続部材13を押圧する。
【0080】
この可動部材69による断続部材13の押圧操作により、断続部材13が付勢部材83の付勢力に抗して断続部67の接続方向に移動され、断続部67が接続される。
【0081】
この断続部67の接続により、サイドギヤ9と断続部材13とが一体回転可能に接続され、サイドギヤ9とデフケース3とが接続されて差動機構11がロック状態となる。
【0082】
一方、断続部67の接続解除では、電磁石71への通電を停止することにより、断続部材13が付勢部材83の付勢力によって断続部67の接続解除方向に移動され、断続部67の接続が解除される。
【0083】
この断続部67の接続解除により、サイドギヤ9と断続部材13とが相対回転可能となり、サイドギヤ9とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構11のロック状態が解除される。
【0084】
ここで、断続部材13の凸部79の軸方向の端面には、ボルトを介して断続部材13と軸方向に一体移動可能に連動部材99が固定されている。
【0085】
この連動部材99は、デフケース3の壁部75に設けられた孔部81に対して径方向に貫通して設けられた径方向孔101に配置され、径方向の端部がデフケース3の外周面から露出して配置される操作部103となっている。
【0086】
このような連動部材99の操作部103は、キャリアなどの静止系部材に固定されたポジションスイッチ(不図示)のスイッチ部に係合され、断続部材13の軸方向移動によってスイッチ部を断続操作する。
【0087】
このポジションスイッチは、制御手段17のデフロックECU105に接続され、連動部材99によるポジションスイッチの断続を検出することにより、断続部材13の位置、すなわち断続機構43が接続状態であるか否かを検出することができ、デファレンシャル装置15がロック状態であるか否かを検出することができる。
【0088】
このようなデフロック機能を有するデファレンシャル装置15において、車両が走行中であるとき、すなわちデファレンシャル装置15が駆動状態のとき、差動機構11が駆動力を受けた状態(差動機構に内部循環トルクが発生している状況を含む)で回転していると、断続部材13を作動させて、断続部67の断続状態の切り換えタイミングに遅れが生じることがあった。
【0089】
また、断続部材13がデフケース3へ回転方向に係合している状態で、その係合部に生じている摩擦力や介在する潤滑オイルによる粘着力によっても、断続部67の断続状態の切り換えタイミングに遅れを生じることがあった。
【0090】
さらに、断続部67におけるそれぞれの噛み合い歯は、所定角度をもって形成されているので、互いの噛み合い位相が回転方向において一致していないと、断続部67の接続タイミングに遅れを生じることがあった。
【0091】
例えば、差動機構11をロック状態からロック解除状態に移行するときには、デフケース3が回転していると、デフケース3と断続部材13との係合部77に形成されたカムによって、断続部材13が断続部67の接続方向に移動され、断続部67の噛み合いが強化されており、付勢部材83の付勢力では断続部材13を断続部67の接続解除方向に移動させることができないことがあった。
【0092】
一方、差動機構11をロック解除状態からロック状態に移行するときには、デフケース3とサイドギヤ9との差回転によって、断続部67における互いの噛み合い歯が噛み合い位置に位置することが難しく、断続部材13を断続部67の接続方向に移動させることができないことがあった。
【0093】
特に、車両の走行時や旋回時において、差動機構11のロック状態からロック解除状態への移行における断続部材13の作動に対する影響が大きく、差動機構11をスムーズにロック解除状態とすることができないと、車両の旋回性能が低下してしまう。
【0094】
このような差動機構11の断続状態を切り換える断続部材13の作動に対しては、差動機構11における回転部材の回転に影響を与えることで、断続部材13の作動を助長することができる。
【0095】
そこで、デファレンシャル装置15には、差動機構11におけるデフケース3や一対のサイドギヤ7,9を制動して、断続部材13の作動を助長する制御装置1が適用されている。
【0096】
なお、以下では、差動機構11のロック状態からロック解除状態への移行について説明するが、差動機構11のロック解除状態からロック状態への移行においても、差動機構11における回転部材を制動することで、断続部材13の作動を助長することができる。
【0097】
図1図3に示すように、制御装置1は、ブレーキ19と、クラッチ25と、制御手段17とを備えている。
【0098】
ブレーキ19は、一対のサイドギヤ7,9に連結された後車軸31,31と後輪33,33との間にそれぞれ設けられている。
【0099】
このブレーキ19,19は、制御手段17のブレーキECU109に接続され、ブレーキECU109のブレーキ制御によって交互に作動され、一対のサイドギヤ7,9の回転を交互に遅らせるように制動する。
【0100】
なお、制動は、一度でもよく、間隔をあけて数度の場合であってもよい。
【0101】
このようにブレーキ19,19によって、一対のサイドギヤ7,9を制動することにより、差動機構11がロック状態であるときの断続部67において、駆動トルクに変動が生じ、また、差動機構11に生じているロック状態の内部循環トルクを緩和させることができ、また、デフケース3と断続部材13との接触面を互いに離間させ摩擦抵抗を低減させ、或いは潤滑オイルによる粘性抵抗を低減させ、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9との間に差回転が生じて噛み合いを解除し易くなり、付勢部材83によって断続部材13を断続部67の接続解除方向にスムーズに安定して移動させることができる。
【0102】
なお、ブレーキ19は、一対のサイドギヤ7,9のうちいずれか一方のみに設ける、或いは一対のサイドギヤ7,9のうちいずれか一方のみを制動するように連結部材に対して設けてもよく、この場合には、瞬間的に連続してブレーキ19を作動させて一方のサイドギヤの回転を遅らせるように制動すればよい。
【0103】
加えて、ブレーキ19は、後車軸31と後輪33との間に間接的に連結させなくともよく、一対のサイドギヤ7,9に対して直接的に連結させてもよい。
【0104】
クラッチ25は、多板クラッチなどの中間制御可能な摩擦クラッチからなり、原動機としてのエンジン21及び電動モータ23と後輪側プロペラシャフト29との間に設けられている。
【0105】
このクラッチ25は、制御手段17の原動機ECU107に接続され、原動機ECU107の断続制御によって作動され、デフケース3に出力される駆動力を低減し、デフケース3の回転を遅らせるように制動する。
【0106】
このようにクラッチ25によって、デフケース3を制動することにより、差動機構11がロック状態であるときの断続部67において、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9との間に差回転が生じて噛み合いを解除し易くなり、付勢部材83によって断続部材13を断続部67の接続解除方向にスムーズに移動することができる。
【0107】
なお、クラッチ25は、後輪側プロペラシャフト29とデフケース3との動力伝達経路上に設けてもよい。
【0108】
制御手段17は、デフロックECU105と、原動機ECU107と、ブレーキECU109と、メータECU111とを備えている。
【0109】
デフロックECU105は、断続部材13を作動させる電磁石71と、断続部材13の位置を検出し差動機構11の断続状態を検出するポジションスイッチとに接続されている。
【0110】
このデフロックECU105は、電磁石71への通電を制御して断続部材13の作動を制御すると共に、断続部材13の位置を検出して差動機構11の断続状態を検出する。
【0111】
原動機ECU107は、デフロックECU105との間で情報を伝達可能に接続され、原動機としてのエンジン21及び電動モータ23と、原動機からデファレンシャル装置15に伝達される駆動力を断続するクラッチ25とに接続されている。
【0112】
この原動機ECU107は、デフロックECU105からの指令に応じて、エンジン21及び電動モータ23からデファレンシャル装置15に入力される駆動力を制御する駆動力入力制御を行う。
【0113】
詳細には、原動機ECU107がエンジン21の出力制御を行う場合には、デフケース3で必要な回転に応じて、アクセルを制御するアクセル制御、電磁弁を制御する電磁弁制御、燃料の供給量を制御する燃料調整制御などを行う。
【0114】
一方、原動機ECU107が電動モータ23の出力制御を行う場合には、デフケース3で必要な回転に応じて、電動モータ23に供給する電流を制御する電流制御などを行う。
【0115】
このような原動機ECU107は、例えば、差動機構11がロック状態からロック解除状態に移行するときに、断続部材13が作動しないとき、原動機の駆動力入力制御を行い、原動機からデフケース3へ出力される駆動力を一時的に低減させる。
【0116】
この原動機ECU107による駆動力入力制御により、デフケース3の回転が一時的に遅れるように制動され、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9との間に差回転が生じて断続部67で噛み合いを解除し易くなり、付勢部材83によって断続部材13を断続部67の接続解除方向にスムーズに移動することができる。
【0117】
なお、「一時的に低減」とは、瞬時の微少なトルクカットや出力低減を意味しており、「低減」とは、現状から低下させることを意味しており、0にさせることも含んでいる。
【0118】
また、一時的とは、一度(一旦)だけの場合、所定のインターバルを設けた複数度の場合などを含み、インターバルである場合の低減とラグの間隔は適宜設定できる。
【0119】
さらに、エンジン21や電動モータ23によって行われるデファレンシャル装置15に入力される駆動力を制御する駆動力入力制御は、ある状態を起点とする「駆動力の低減」だけではなく、ある状態を起点とした「駆動力の増加からの低減」も含まれる。
【0120】
一方、原動機ECU107は、デフロックECU105からの指令に応じて、原動機とデファレンシャル装置15との間に配置されたクラッチ25のクラッチ制御を行う。
【0121】
この原動機ECU107によるクラッチ25の制御は、例えば、差動機構11がロック状態からロック解除状態に移行するときに、断続部材13が所定時間で作動しないとき、或いはロック解除状態への移行と共に、クラッチ25の接続を解除、或いはクラッチ25の締結力を低減させ、原動機からデフケース3へ出力される駆動力を低減させる。
【0122】
このような原動機ECU107によるクラッチ25の制御により、デフケース3の回転が遅れるように制動され、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9との間に差回転が生じて断続部67で噛み合いを解除し易くなり、付勢部材83によって断続部材13を断続部67の接続解除方向にスムーズに移動することができる。
【0123】
ブレーキECU109は、デフロックECU105との間で情報を伝達可能に接続され、一対のサイドギヤ7,9に連結されたブレーキ19,19に接続されている。
【0124】
このブレーキECU109は、デフロックECU105からの指令に応じて、ブレーキ19,19を交互に作動制動させるブレーキ制御を行う。
【0125】
このようなブレーキECU109は、例えば、差動機構11がロック状態からロック解除状態に移行するときに、断続部材13が所定時間で作動しないとき、又は移行初期から、ブレーキ19,19に対してブレーキ制御を行い、一対のサイドギヤ7,9の回転を瞬間的に交互に遅らせる。
【0126】
このブレーキECU109によるブレーキ制御により、一対のサイドギヤ7,9の回転が交互に遅れるように制動され、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9との間に差回転が生じて断続部67で噛み合いを解除し易くなり、付勢部材83によって断続部材13を断続部67の接続解除方向にスムーズに移動することができる。
【0127】
このブレーキECU109によるブレーキ制御において、ブレーキ19,19の制動は、車両走行時の車体振動数と共振しない間隔で断続制御される。
【0128】
すなわち、左右のブレーキのいずれか一方を連続的に断続作動させた場合、或いは左右のブレーキを交互に断続作動させた場合、ブレーキによって生じる車体角速度の変化が車両の走行状態における固有幅と同調すると僅かながら車体共振する可能性がある。
【0129】
この場合には、サスペンションダンパーによる振動吸収で抑えることが可能だが、より過度の共振を伴う場合を考慮すると、ブレーキ制御における左右の制動間隔が、走行状態における車体の固有振動を増幅させないように、車体共振数と共振しないようにブレーキの断続作動を行うように制御の設定がされている。
【0130】
このようにブレーキ制御を設定することにより、車両の走行時における走行姿勢に悪影響を与えることがなく、ドライバや乗員へ車体振動による不快感を与えることがない。
【0131】
なお、この設定において、車両の低速、中速、高速のどの走行域に考慮するか、或いは全域に考慮するかは、差動機構11をロック状態とさせるデフロックの用途に応じてブレーキ制御の制御間隔が設定される。
【0132】
また、車両走行時の車体共振数と共振しない間隔で「断続制御」とは、ブレーキのON/OFFを繰り返すだけでなく、所定範囲の強弱ブレーキの付与を繰り返すことも含まれる。
【0133】
さらに、ブレーキECU109は、車両のブレーキを制御するABS・ECUや車両の旋回姿勢を制御するESC・ECUなどにも接続されており、車両のABS制御やESC制御などと干渉しないようにされているが、このブレーキECU109の機能をABS・ECUやESC・ECUに持たせてもよい。
【0134】
メータECU111は、デフロックECU105との間で情報を伝達可能に接続され、車両に搭載された差動機構11の断続状態を表示する計器に接続されている。
【0135】
このメータECU111は、デフロックECU105からの指令に応じて、差動機構11の断続状態を計器に表示させ、差動機構11の断続状態をドライバへ通知する。
【0136】
但し、メータECU111の制御機能を、デフロックECU105に統合してもよい。
【0137】
このように制御手段17によって、差動機構11がロック状態であるときに、差動機構11の回転部材を制動することにより、差動機構11のロック状態が不必要な車両の走行時や旋回時に、断続部材13を作動させることができ、差動機構11をスムーズかつ安定してロック解除状態とすることができる。
【0138】
このような制御手段17の制御を、図4図7のフローチャートを用いて説明するが、上述したように、ここでは、差動機構11がロック状態であり、差動機構11をロック解除状態にさせるときの制御について説明する。
【0139】
まず、図4のフローチャートを用いて、制御手段17によるブレーキ制御について説明する。
【0140】
図4に示すように、制御手段17は、まず、車両の各機構の演算処理を行う(S1)。
【0141】
次に、差動機構11をロック解除状態とする条件が成立しているか否かを判断する(S2)。
【0142】
差動機構11をロック解除状態とする条件が成立していない場合(NO)には、前回と同様の制御を行い(S3)、差動機構11がロック状態であることをドライバに通知する(S10)。
【0143】
差動機構11をロック解除状態とする条件が成立している場合(YES)には、差動機構11をロック状態とする制御が行われている否かを判断する(S4)。
【0144】
差動機構11をロック状態とする制御が行われていない場合(NO)には、電磁石71への通電がなされていないものと判断し、差動機構11をロック状態とする制御が行われている場合(YES)には、電磁石71への通電を停止させる(S5)。
【0145】
次に、電磁石71への通電が停止された状態で、差動機構11がロック解除状態であるか否かを判断する(S6)。
【0146】
差動機構11がロック解除状態となっている場合(YES)には、差動機構11の状態を示すユニット状態フラグをフリーとする(S9)。
【0147】
差動機構11がロック解除状態となっていない場合(NO)には、ブレーキ19,19を交互に制動させるブレーキ制御を行い(S7)、差動機構11がロック解除状態であるか否かを判断する(S8)。
【0148】
差動機構11がロック解除状態となっていない場合(NO)には、再び、ブレーキ制御を行い(S7)、差動機構11がロック解除状態となっている場合(YES)には、差動機構11の状態を示すユニット状態フラグをフリーとする(S9)。
【0149】
そして、差動機構11がロック解除状態であることをドライバに通知する(S10)。
【0150】
次に、図5のフローチャートを用いて、制御手段17による駆動力入力制御について説明するが、ブレーキ制御と同様の制御には、同様の記号を記し、詳細な説明については省略する。
【0151】
図5に示すように、制御手段17は、ブレーキ制御と同様に、S1~S6までの制御を行う。
【0152】
次に、S6の制御において、差動機構11がロック解除状態となっていない場合(NO)には、原動機からデフケース3へ出力される駆動力を低減させる駆動力入力制御を行い(S11)、差動機構11がロック解除状態であるか否かを判断する(S12)。
【0153】
なお、駆動力入力制御は、原動機からの出力を低減してもよいし、クラッチ25を作動させて駆動力を低減してもよい。
【0154】
差動機構11がロック解除状態となっていない場合(NO)には、再び、駆動力入力制御を行い(S11)、差動機構11がロック解除状態となっている場合(YES)には、差動機構11の状態を示すユニット状態フラグをフリーとする(S9)。
【0155】
そして、差動機構11がロック解除状態であることをドライバに通知する(S10)。
【0156】
このような制御手段17によるブレーキ制御や駆動力入力制御は、それぞれ独立して行ってもよいが、図6に示すように、差動機構11の断続状態を制御するデフロック制御を行った(S13)後、ブレーキ制御を行い(S14)、次に、駆動力入力制御を行う(S15)ように、ブレーキ制御と駆動力入力制御とを連動して行ってもよい。
【0157】
また、図7に示すように、クラッチ25を接続解除とする要求がある場合(S16)には、原動機からの出力を低減させる駆動力入力制御を行い(S17)、次に、クラッチ25を接続解除とするクラッチ制御を伴う駆動力入力制御を行い(S18)、次に、ブレーキ制御を行い(S19)、差動機構11がロック解除状態であるか否かを判断し(S20)、差動機構11の状態をドライバに通知する(S21)というように、原動機からデファレンシャル装置15への駆動力の伝達経路に沿って、それぞれの制御を連動して行ってもよい。
【0158】
なお、ブレーキ制御、駆動力入力制御(原動機の出力制御)、駆動力入力制御(クラッチ制御)を行う順番は、どのような組合せであってもよく、効率的に断続部材13を作動できる組合せを適宜選択することができる。
【0159】
このようなデファレンシャル装置15の制御装置1では、デフケース3又は一対のサイドギヤ7,9のうち少なくとも1つの回転を制動させて断続部材13の作動を助長する制御手段17を備えているので、差動機構11をロック状態からロック解除状態、或いはロック解除状態からロック状態へ移行させるときに、断続させる対象である回転部材の回転を制動することで、断続部材13を作動させることができる。
【0160】
従って、このようなデファレンシャル装置15の制御装置1では、制御手段17によって、断続部材13をスムーズに安定して作動することができる。
【0161】
また、制御手段17は、ブレーキ19を制動させデフケース3又は一対のサイドギヤ7,9の回転を遅らせるので、差動機構11の回転部材の回転を遅らせるように制動することで、断続部材13の作動を助長することができ、差動機構11の断続状態の切換をスムーズに安定して行うことができる。
【0162】
さらに、ブレーキ19は、一対のサイドギヤ7,9のそれぞれに対して設けられ、制御手段17は、それぞれのブレーキ19,19を交互に制動させるので、ブレーキ19,19の制動による車両への影響を抑制することができ、差動機構11での回転を効率的に制御することができる。
【0163】
また、制御手段17によるブレーキ19の制動は、車両走行時の車体振動数と共振しない間隔で断続制御されるので、車両の走行時における走行姿勢に悪影響を与えることがなく、車両の走行性能を安定して保持することができる。
【0164】
さらに、制御手段17は、デフケース3へ入力される駆動力を一時的に低減させるので、差動機構11におけるデフケース3の回転を遅らせるように制動することで、断続部材13の作動を助長することができる。
【0165】
また、制御手段17は、原動機としてのエンジン21及び電動モータ23との出力を低減させるので、原動機の出力を低減させるように制御することで、差動機構11におけるデフケース3の回転を遅らせるように制動することができる。
【0166】
さらに、制御手段17は、エンジン21及び電動モータ23とデフケース3との間に配置されたクラッチ25の出力を低減させるので、クラッチ25の出力を低減させるように制御することで、差動機構11におけるデフケース3の回転を遅らせるように制動することができる。
【0167】
なお、本発明の実施の形態に係るデファレンシャル装置の制御装置では、一対のサイドギヤに対してブレーキが設けられているが、これに限らず、デフケースに対してブレーキを設けてもよい。
【0168】
この場合には、直接的にデフケースの回転を遅らせるブレーキであってもよく、原動機からデフケースまでの動力伝達経路上に設けられ間接的にデフケースの回転を遅らせるブレーキであってもよい。
【0169】
また、本実施の形態においては、差動機構がロック状態からロック解除状態へ移行するときの制御を示しているが、差動機構がロック解除状態からロック状態へ移行するときにも、制御手段によって、デフケースや一対のサイドギヤの回転を制動することで、断続部材の作動を助長することができる。
【0170】
さらに、断続部材は、デフケースと一方のサイドギヤとの間を断続するように配置されているが、これに限らず、断続部材を、一対のサイドギヤの間を断続するように配置してもよい。
【0171】
また、断続部材は、デフケース3と一対のサイドギヤ7,9のうちの一方との間を直接連結させる構成ではなく、それぞれの部材3,7,9に直接又は間接的に連結するそれぞれの連結部材間を断続する配置構成であってもよい。
【符号の説明】
【0172】
1…制御装置
3…デフケース(入力部材)
5…ピニオン(差動部材)
7,9…サイドギヤ(出力部材)
11…差動機構
13…断続部材
15…デファレンシャル装置
17…制御手段
19…ブレーキ
21…エンジン(原動機)
23…電動モータ(原動機)
25…クラッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7