(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】親水性ドメインおよび疎水性ドメインならびに処置剤との接着剤マトリックス
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20221110BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K31/445
A61K47/32
(21)【出願番号】P 2018566938
(86)(22)【出願日】2017-06-23
(86)【国際出願番号】 US2017038934
(87)【国際公開番号】W WO2017223402
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リ, ウン ス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, アミット ケー.
(72)【発明者】
【氏名】シン, パーミンダー
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508750(JP,A)
【文献】特表平09-511987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 31/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤マトリックスであって、
ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む親水性ドメインと、
アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー、ならびにポリイソブチレンおよびポリブテンの組合せを含む疎水性ドメインであって、ここで、前記ポリイソブチレンおよびポリブテンの組合せが、前記接着剤マトリックスの総重量に基づいて約7~15wt%の量で存在し、そして前記アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーが、前記接着剤マトリックスの総重量に基づいて約50~60wt%の量で存在する、疎水性ドメインと、
前記接着剤マトリックスの総重量に基づいて約15~25wt%の量で存在するドネペジルであって、そしてここで、ドネペジルが前記疎水性ドメイン中におけるその飽和濃度を上回る濃度で前記疎水性ドメイン中に存在する、ドネペジルと
を含み、そして
ここで、前記親水性ドメインおよび前記疎水性ドメインが、溶媒系に共溶解性であり、いずれかのドメイン単独に溶解性である前記ドネペジルの量よりも多い量の前記ドネペジルを可溶化するために、前記接着剤マトリックス中に互いに比例して存在する、
接着剤マトリックス。
【請求項2】
10~25wt%の間の親水性ドメインを含む、請求項1に記載の接着剤マトリックス。
【請求項3】
約
57~80wt%の間の疎水性ドメインを含む、請求項1または請求項2に記載の接着剤マトリックス。
【請求項4】
約15~25wt%のドネペジル、約50~60wt%のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー、約7~15wt%のポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物、ならびに約10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス。
【請求項5】
ドネペジルの経皮投与のためのデバイスであって、請求項1から4のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス層を含む、デバイス。
【請求項6】
約10~25wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、
約35~75wt%のポリイソブチレンおよびポリブテンの組合せ、および/または約40~64wt%のアクリレート系接着剤から構成される疎水性ドメイン、ならびに
約5~50wt%のドネペジルを、
前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ならびにポリイソブチレンおよびポリブテンの前記組合せが溶解性である有機溶媒から構成される溶媒系中に含む、接着剤マトリックスの調製のための調合物であって、
前記ドネペジルが、(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられ、前記調合物は、前記ドネペジルが前記疎水性ドメイン中におけるその飽和濃度を上回る濃度である接着剤マトリックスをもたらす、調合物。
【請求項7】
接着剤マトリックスの製造のための方法であって、
(i)ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと、
(ii)ポリイソブチレンおよびポリブテンを第2の溶媒中に可溶化するステップと、
(iii)均質溶液を形成するために、(i)および(ii)を混合するステップと、
(iv)接着剤溶液を形成するために、前記均質溶液に第3の溶媒中に可溶化したアクリレート系接着剤を添加するステップと、
(v)前記接着剤溶液に、ドネペジルを添加するステップと、
(vi)前記ドネペジルを用いて、前記接着剤溶液から、約35~80wt%のアクリレート系接着剤、約0.01~30wt%の間のポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ならびに約5~50wt%の間のドネペジルを含む接着剤マトリックスを形成するステップであって、前記アクリレート、ポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物が、前記ドネペジルがその飽和濃度を上回る濃度である疎水性ドメインを形成する、ステップと
を含む、方法。
【請求項8】
前記アクリレートが、メタクリレートコポリマーではない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンとアクリル酸エチルヘキシルではない酢酸ビニルとのコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの線状ランダムコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記コポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンおよび酢酸ビニルの60:40コポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクリレート系接着剤が、メタクリル酸/酢酸ビニルコポリマーを除くアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーが、架橋剤を含まないものであり、25℃で測定した場合に約2000~8000mPa-sの間の粘度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶媒が、ポリビニルピロリドンホモポリマーが不溶性であるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶媒が、トルエンを含む、請求項7または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶媒が、トルエンとイソ-プロピルアルコールとの混合物を含む、請求項7または請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、9部のトルエンと1部のイソ-プロピルアルコールとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒と同じである、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の溶媒が、トルエンを含む混合物であり、前記第2の溶媒が、トルエンである、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の溶媒が、酢酸エチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
接着剤マトリックスを形成するステップが、前記ドネペジルを含む前記接着剤溶液を基材上に塗布するステップと、50~100℃の間の温度で乾燥させるステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
前記接着剤マトリックスが、15~25wt%のドネペジル、50~60wt%のアクリレート系接着剤、7~15wt%のポリイソブチレンとポリブテンとの混合物、ならびに10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーは、メタクリレートコポリマーではない、請求項1に記載の接着剤マトリックス。
【請求項24】
前記接着剤マトリックスは、前記アクリルポリマーのための架橋剤として作用する任意の成分を含有しない、請求項1に記載の接着剤マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本明細書中にその全体が援用される、2016年6月23日に出願された米国仮出願番号第62/353,891号の利益を主張している。
【0002】
技術分野
本明細書において記述されている主題は、局所および全身送達の両方のための薬物の経皮投与、ならびにそのような方法において使用するための調合物(formulation)に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
皮膚を通しての薬物の送達は、多くの利点を提供し、主として、そのような送達手段は、薬物を投与する快適、便利かつ非侵襲的な手法である。経口処置において遭遇する吸収および代謝の変動率は回避され、他の固有の不便さ、例えば、胃腸刺激等も排除される。経皮薬物送達はまた、任意の特定の薬物の血中濃度に対する高度の制御も可能にする。
【0004】
皮膚は、人体の最大の器官である。皮膚は、簡単にアクセスでき、優れた血液供給を有し、処置剤を投与するための理想的な場所を提示する。しかしながら、皮膚の主な機能は、体内への分子および不要な化合物の浸透を阻害する選択透過性(permoselective)障壁として作用することであり、それにより、皮膚を介する薬物送達を困難にしている。皮膚の障壁特性を克服するために設計された戦略は、化学的浸透増強剤の使用、過飽和、および例えば電気泳動またはイオントフォレーシスによって皮膚の整合性を変化させることを含む。化学的浸透増強剤は、皮膚における薬物の溶解度を増大させ、分配およびそれ故、透過を増強することによって働く。経皮システムにおける処置剤の過飽和は、作用物質の熱力学的活性を増大させて、それにより、透過度を増強する。薬物がビヒクル中で飽和している場合、熱力学的活量は、1(すなわち、単位元(unity))に等しい。薬物熱力学的活量は、薬物透過度に比例するため、熱力学的活量を増大させれば透過度は増大するはずである。しかしながら、過飽和調合物は、物理的に不安定であり、時間とともに、過飽和溶液中の薬物は沈殿し、溶液からのこの薬物の損失は、最終的に、より安定な飽和状態への逆戻りをもたらす。したがって、これまでのところ、このアプローチは、実際には限られた適用性を見出している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単な要旨
下記の態様および以下で記述し例証するそれらの実施形態は、範囲の限定ではなく、例示的かつ例証的であることを意味する。
【0006】
一態様では、親水性ドメインおよび疎水性ドメイン、ならびに過飽和条件でその中に含有される処置活性剤から構成される、接着剤マトリックスが提供される。親水性ドメインは、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーから構成され、疎水性ドメインは、ポリイソブチレンおよびアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーの一方または両方を含む。活性剤は、(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられる。親水性ドメインおよび疎水性ドメインは、溶媒系に共溶解性(co-soluble)であり、親水性ドメインおよび疎水性ドメインの比率は、マトリックスへの活性剤の溶解度を最適化または最大化するように選択される。一実施形態では、マトリックスは、いずれかのドメイン単独に溶解性である活性剤の量よりも多い量の活性剤を含む。別の実施形態では、マトリックスは、疎水性ドメイン単独に溶解性である活性剤の量よりも多い量の活性剤を含む。別の実施形態では、マトリックスは、親水性ドメイン単独に溶解性である活性剤の量よりも多い量の活性剤を含む。
【0007】
一実施形態では、疎水性ドメインは、ポリイソブチレンとポリブテンとの組合せを含む。別の実施形態では、疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0008】
別の実施形態では、接着剤マトリックスは、約10~25wt%の間の親水性ドメインを含む。また別の実施形態では、接着剤マトリックスは、約35~80wt%の間の疎水性ドメインを含む。
【0009】
また別の実施形態では、接着剤マトリックスは、約15~25wt%の活性剤、約50~60wt%のアクリレート系接着剤、約7~15wt%のポリイソブチレンとポリブテンとの混合物、ならびに約10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0010】
さらに別の実施形態では、活性剤は、ドネペジル、ロピニロール(ropinrole)、リドカインおよびオキシブチニンからなる薬物の群から選択される。
【0011】
別の態様では、活性剤の経皮投与のためのデバイスが提供され、ここで、デバイスは、本明細書において記述されている通りの接着剤マトリックス層を含む。
【0012】
また別の態様では、接着剤マトリックスの調製のための調合物が提供される。調合物は、一実施形態では、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーおよび約40~64wt%の間のアクリレート系接着剤、ならびに約5~50wt%の活性剤を、溶媒系中に含む。溶媒系は、一実施形態では、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが溶解性であり、ポリビニルピロリドンホモポリマーが不溶性である、有機溶媒を含む。
【0013】
一実施形態では、調合物は、追加で、約35~75wt%のポリイソブチレンおよびポリブテンを含む。この実施形態では、溶媒系は、ポリイソブチレンおよびポリブテンならびにポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが溶解性である、溶媒を含む。
【0014】
別の態様では、接着剤マトリックスの製造のための方法が提供される。一実施形態では、方法は、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと;ポリイソブチレンおよびポリブテンを第2の溶媒中に可溶化するステップと;均質溶液を形成するために、上記2つを混合するステップと;接着剤溶液を形成するために、均質溶液に、第3の溶媒中に可溶化したアクリレート系接着剤を添加するステップと;接着剤溶液に活性剤を添加するステップと;活性剤を含む接着剤溶液から接着剤マトリックスを形成するステップとを含む。
【0015】
別の実施形態では、方法は、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと;アクリレート系接着剤を第2の溶媒中に可溶化するステップと;接着剤溶液を形成するために、上記2つを混合するステップと;接着剤溶液に活性剤を添加するステップと;活性剤を含む接着剤溶液から接着剤マトリックスを形成するステップとを含む。
【0016】
一実施形態では、アクリレート系接着剤は、メタクリレートコポリマーではない。
【0017】
別の実施形態では、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、n-ビニル-2-ピロリドンと、アクリル酸エチルヘキシルではない酢酸ビニルとのコポリマーである。すなわち、アクリレートは、アクリル酸2-エチルヘキシル-ビニルピロリドンコポリマーではない。
【0018】
一実施形態では、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、n-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの線状ランダムコポリマーである。一実施形態では、コポリマーは、n-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの60:40コポリマーである。また別の実施形態では、アクリレート系接着剤は、メタクリル酸/酢酸ビニルコポリマーを除くアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーである。
【0019】
さらに別の実施形態では、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーは、架橋剤を含まないものであり、25℃で測定した場合に約2000~8000mPa-sの間の粘度を有する。
【0020】
一実施形態では、第1の溶媒は、ポリビニルピロリドンホモポリマーが不溶性であるものである。例えば、一実施形態では、第1の溶媒は、トルエンを含む。別の実施形態では、第1の溶媒は、トルエンとイソ-プロピルアルコールとの混合物を含む。一実施形態では、混合物は、9重量部のトルエンおよび1重量部のイソ-プロピルアルコールを含む。別の実施形態では、混合物は、9体積部のトルエンおよび1体積部のイソ-プロピルアルコールを含む。
【0021】
別の実施形態では、第2の溶媒は、第1の溶媒と同じである。また別の実施形態では、第1の溶媒は、トルエンを含む混合物であり、第2の溶媒は、トルエンである。
【0022】
一実施形態では、時に第2の溶媒または第3の溶媒と称されるアクリレート系接着剤のための溶媒は、酢酸エチルである。
【0023】
一実施形態では、接着剤マトリックスを形成するステップは、活性剤を含む接着剤溶液を基材上に塗布するステップと、50~100℃の間の温度で乾燥させるステップとを含む。
【0024】
別の実施形態では、接着剤マトリックスは、15~25wt%の活性剤、50~60wt%のアクリレート系接着剤、7~15wt%のポリイソブチレンとポリブテンとの混合物、ならびに10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0025】
マトリックス、調合物および方法は、活性剤として、ドネペジル、ロピニロール、リドカインおよびオキシブチニンからなる群から選択される薬物を含み得る。
【0026】
実施例の参照により、および下記の記述の研究により、上述した例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態が明らかになる。
【0027】
本発明の方法および組成物等の付加的な実施形態が、下記の記述、実施例および請求項から明らかである。上記および下記の記述から理解できるように、本明細書において記述されているありとあらゆる特色およびそのような特色の2つまたはそれよりも多くのありとあらゆる組合せは、そのような組合せに含まれる特色が相互に矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。加えて、任意の特色または特色の組合せは、本発明の任意の実施形態から具体的に除外されてよい。本発明の付加的な態様および利点は、特に添付の実施例と併せて考慮した場合、下記の記述および請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
I.定義
ここで、以後、種々の態様についてより十分に記述する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書において記載されている実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全となり、その範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0029】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上下限間の各介在値ならびにその定められた範囲内にある任意の他の定められたまたは介在値は、本開示に包含されることが意図されている。例えば、1μmから8μmの範囲が定められていれば、2μm、3μm、4μm、5μm、6μmおよび7μm、ならびに1μmより大きいまたはそれに等しい値の範囲および8μm未満またはそれに等しい値の範囲も明示的に開示されることが意図されている。
【0030】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の指示対象を含む。故に、例えば、「ポリマー」への言及は、単一のポリマーおよび2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるポリマーを含み、「賦形剤」への言及は、単一の賦形剤および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なる賦形剤を含む等である。
II.接着剤調合物および接着剤マトリックス
【0031】
本明細書において記述されている接着剤マトリックスは、親水性ドメインおよび疎水性ドメイン、ならびに過飽和安定条件でマトリックス中に含有される処置活性剤から構成される。親水性ドメインおよび疎水性ドメインは、溶媒系に共溶解性であり、活性剤が可溶化される均質ブレンドを提供する。親水性ドメインおよび疎水性ドメインの比率は、マトリックスへの活性剤の溶解度を最適化または最大化するように選択される。例えば、一実施形態では、マトリックスは、疎水性ドメイン単独に、または別の実施形態では、親水性ドメイン単独に、またはさらに別の実施形態では両方のドメイン単独に溶解性である活性剤の量よりも多い量の活性剤を含む。一実施形態では、マトリックス中における活性剤の量は、疎水性ドメイン単独中、または別の実施形態では、親水性ドメイン単独、またはさらに別の実施形態では、両方のドメイン単独中における活性剤の約飽和濃度である。
【0032】
親水性ドメインは、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーから構成され、疎水性ドメインは、ポリイソブチレンおよびアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーの一方または両方を含む。
【0033】
ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、モノマーN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)と酢酸ビニル(VA)とのフリーラジカル重合によって生成される線状ランダムコポリマーである。各モノマーの量は、70/30から30/70の酢酸ビニル対ビニルピロリドンまで変動する比を持つ生成物コポリマーに変動し得る。一実施形態では、コポリマーは、30%のビニルピロリドンを含み、別の実施形態では、コポリマーは、50%のビニルピロリドン含有量を含み、別の実施形態では、コポリマーは、60%のビニルピロリドン含有量を含み、別の実施形態では、コポリマーは、70%のビニルピロリドン含有量を含む。一実施形態では、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、n-ビニル-2-ピロリドンモノマーと、アクリル酸エチルヘキシルではない酢酸ビニルモノマーとの重合から生じる。
【0034】
ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの分子量は変動してよく、所定範囲の分子量のコポリマーが市販されている。一実施形態では、分子量(重量平均)を持つポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、40,000~60,000ダルトンの間であり、別の実施形態では、約25,000~200,000ダルトンの間である。
【0035】
以下に記載されている実施形態では、60%のビニルピロリドン含有量および47,000ダルトンの重量平均分子量から構成されるポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを使用した。
【0036】
接着剤マトリックス中の疎水性ドメインは、ポリイソブチレンおよびアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーの一方または両方を含む。別の実施形態では、接着剤マトリックス中の疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー、および任意選択でポリイソブチレンを含む。
【0037】
一実施形態では、ポリイソブチレンは、高分子量ポリイソブチレンおよび中間分子量ポリイソブチレンのブレンドまたは混合物である。用語「高分子量ポリイソブチレン」は、約450,000から約2,100,000ダルトン、好ましくは約500,000から約1,500,000ダルトンまでの範囲内の平均分子量を有するポリイソブチレンを指す。用語「中間分子量ポリイソブチレン」は、約10,000から約450,000ダルトン、好ましくは約25,000から約100,000ダルトンまでの範囲内の平均分子量を有するポリイソブチレンを指す。
【0038】
以下に記載されている実施形態では、1,000,000ダルトンの高分子量ポリイソブチレンおよび約50,000ダルトンの中間分子量ポリイソブチレンを、1:5の比でブレンドした。別の言い方をすれば、100重量基準で、マトリックスは、17:83の高分子量ポリイソブチレン対中間分子量ポリイソブチレンの比を含んでいた。他の実施形態では、接着剤マトリックスは、約5~40:95~60の間、または約10~25:90~75の間、または約10~20:90~80の間の高分子量ポリイソブチレン対中間分子量ポリイソブチレン比を含有する。
【0039】
別の実施形態では、疎水性ドメイン中のポリイソブチレン(ポリイソブチレン(polyisobutylenen)ブレンドとも称される)は、ポリブテンをさらに含む。ポリブテンは、1-および2-ブテンと少量のイソブチレンとの共重合によって調製される、粘性非乾燥液体ポリマーである。ポリブテンは、一実施形態では、約750~6000ダルトンの間、好ましくは約900~4000ダルトンの間、好ましくは約900~3000ダルトンの間の分子量を有する。以下の実施形態では、疎水性ドメインの一部の実施形態は、ポリイソブチレンブレンド中に40重量パーセントで存在する2500ダルトン分子量のポリブテンを含んでいた。より一般的には、ポリブテンは、20~50重量パーセントの間、または25~45重量パーセントの間の量で疎水性ドメインのポリイソブチレンブレンド中に存在する。
【0040】
接着剤マトリックスの疎水性ドメインは、アクリルポリマー感圧接着剤を含む。アクリルポリマー感圧接着剤は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択されるモノマー(1つまたは複数)のポリマーまたはコポリマーである、ポリアクリレート系接着剤を意味する。アクリル酸および酢酸ビニル等の他のモノマーが存在してよい。一実施形態では、アクリレート系接着剤は、メタクリレートコポリマーではない、すなわち、ポリアクリレート系接着剤は、メタクリル酸モノマー単位を除く。好ましくは、アクリルポリマー感圧接着剤は、ポリマー鎖に結合しているペンダント(pendent)カルボキシル(-COOH)またはヒドロキシル(-OH)官能基を有する。
【0041】
一実施形態では、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーは、架橋剤を含まないものである。エステル化、エステル交換、酸化および付加等のいくつかの化学反応の触媒として作用する、金属を含有する架橋剤、特に遷移金属架橋剤の除外により、マトリックス中における活性剤との化学的相互作用の可能性ならびに効力を失う可能性、不純物形成および安定性の問題を回避する。好ましくは、接着剤マトリックス層は、アクリルポリマーのための架橋剤として作用する成分を含有しない。
【0042】
一実施形態では、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーは、25℃で測定した場合に約2000~8000mPa-sの間の粘度を有する。
【0043】
接着剤マトリックスは、当該技術分野において一般的であるような添加剤および賦形剤を含み得る。例として、マトリックスは、6~20の炭素数を有する脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステルまたはエーテルまたはアミド、芳香族有機酸、芳香族アルコール、芳香族有機酸エステルまたはエーテル(飽和または不飽和、および環式、直鎖または分枝鎖状のいずれか)、さらに、乳酸エステル、酢酸エステル、モノテルペン化合物、セスキテルペン化合物、アゾン、アゾン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO)、ショ糖脂肪酸エステル等の浸透増強剤を含み得る。8またはそれよりも多い炭素数を有する脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等)、および脂肪族アルコール(オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等)が企図されている。増強剤の量は、活性成分の皮膚への十分な浸透性および接着パッチ剤としての皮膚刺激を考慮して、接着剤マトリックスの重量に対し、約1~10wt%、または約2~8wt%、およびまたは約3~6wt%の間である。
【0044】
酸化防止剤、充填剤、保存剤および紫外線吸収剤等の添加剤を、接着剤マトリックス中にブレンドしてよい。酸化防止剤としては、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸-ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアイアレチン(nordihydroguaretic)酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が好ましい。充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリケート(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が好ましい。保存剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル等が好ましい。紫外線吸収剤としては、p-アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が好ましい。これらの添加剤は、接着剤マトリックス中に、好ましくは10wt%またはそれ未満、より好ましくは5wt%またはそれ未満、とりわけ好ましくは2wt%またはそれ未満の量で存在してよい。
【0045】
接着剤マトリックスはまた、処置活性剤も含む。活性剤は、(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられる。活性剤の例は、以下の表に記載されており、ドネペジル、ロピニロール、リドカインおよびオキシブチニンを含む。
【表1】
【0046】
上述した概念を例証するために、接着剤調合物およびマトリックスを調製した。実施例1~10は、活性剤ドネペジル(donezepil)を、その塩基形態でモデル薬物として使用して、例示的な調合物および得られた接着剤マトリックスを記載するものである。
【0047】
実施例1において、66wt%の疎水性ドメインおよび14%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に20wt%で存在していた。活性剤は、親水性ドメインの存在に起因して、疎水性ドメイン単独中におけるその飽和濃度を上回る濃度で存在し、これは、活性剤のための疎水性ドメインの溶解度(solublity)を低下させた。したがって、活性剤は、接着剤マトリックス中に過飽和濃度で存在して、それにより、皮膚を横切る作用物質の透過のための最大駆動力を提供するための単位元よりも大きい熱力学的活性を提供した。実施例1の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと、高分子量ポリイソブチレン、中間分子量ポリイソブチレンおよびポリブテンのポリイソブチレン混合物との均質ブレンドから構成されていた。ブレンドは、86部のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーおよび14部のポリイソブチレン混合物を有していた。
【0048】
実施例2において、62wt%の疎水性ドメインおよび13%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に20wt%で存在していた。活性剤は、親水性ドメインの存在に起因して、疎水性ドメイン単独中におけるその飽和濃度を上回る濃度で存在し、これは、活性剤のための疎水性ドメインの溶解度を低下させた。したがって、活性剤は、接着剤マトリックス中に過飽和濃度で存在して、それにより、皮膚を横切る作用物質の透過のための最大駆動力を提供するための単位元(unity)よりも大きい熱力学的活量を提供した。実施例2の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと、高分子量ポリイソブチレン、中間分子量ポリイソブチレンおよびポリブテンのポリイソブチレン混合物との均質ブレンドから構成されていた。ブレンドは、93部のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと7部のポリイソブチレンとの混合物を有していた。接着剤マトリックスは、浸透増強剤を追加で含んでいた。
【0049】
実施例3において、62wt%の疎水性ドメインおよび13%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に20wt%で存在していた。実施例3の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと、高分子量ポリイソブチレン、中間分子量ポリイソブチレンおよびポリブテンのポリイソブチレン混合物との均質ブレンドから構成されていた。ブレンドは、85部のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーおよび15部のポリイソブチレン混合物を有していた。接着剤マトリックスは、浸透増強剤を追加で含んでいた。
【0050】
実施例4において、62wt%の疎水性ドメインおよび5wt%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に20wt%で存在していた。実施例4の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと、高分子量ポリイソブチレン、中間分子量ポリイソブチレンおよびポリブテンのポリイソブチレン混合物との均質ブレンドから構成されていた。ブレンドは、79部のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと21部のポリイソブチレンとの混合物を有していた。接着剤マトリックスは、浸透増強剤を追加で含んでいた。
【0051】
実施例5において、57wt%の疎水性ドメインおよび13wt%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に20wt%で存在していた。実施例5の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーと、高分子量ポリイソブチレン、中間分子量ポリイソブチレンおよびポリブテンのポリイソブチレン混合物との均質ブレンドから構成されていた。ブレンドは、77部のアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(44/57)と22部(13/57)のポリイソブチレンとの混合物を有していた。接着剤マトリックスは、浸透増強剤を追加で含んでいた。
【0052】
実施例6において、45wt%の疎水性ドメインおよび15wt%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に40wt%で存在していた。実施例6の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーから構成されていた。
【0053】
実施例7において、42wt%の疎水性ドメインおよび14wt%の親水性ドメインを含む接着剤マトリックスを調製し、活性剤はマトリックス中に40wt%で存在していた。実施例7の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメインは、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーから構成されていた。接着剤マトリックスは、浸透増強剤を追加で含んでいた。
【0054】
実施例8~10において、ポリビニルピロリドンホモポリマーの疎水性ドメインおよび親水性ドメインから構成される接着剤マトリックスが記載されている。
【0055】
以下の表は、実施例1~10の例示的な接着剤マトリックス中における疎水性ドメイン対親水性ドメインの重量比をまとめるものであり、薬物対疎水性ドメインの比も示す。
【表2】
接着剤マトリックスおよび経皮デバイスの調製
【0056】
別の態様では、接着剤マトリックスの調製のための調合物が提供される。調合物は、一実施形態では、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーおよび約40~64wt%のアクリレート系接着剤ならびに約5~50wt%の活性剤を、溶媒系中に含む。一実施形態では、溶媒系は、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが溶解性であり、ポリビニルピロリドンホモポリマーが不溶性である、有機溶媒から構成されている。一実施形態では、溶媒系は、有機溶媒の二成分混合物であり、別の実施形態では、三成分混合物である。
【0057】
接着剤マトリックスの製造のための方法も提供される。実施例1を参照すると、方法は、(i)ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと、(ii)ポリイソブチレンおよびポリブテン(調合物中に存在する場合)を第2の溶媒中に可溶化するステップと、(iii)均質溶液を形成するために、(i)および(ii)を混合するステップと、(iv)接着剤溶液を形成するために、均質溶液に第3の溶媒中に可溶化したアクリレート系接着剤を添加するステップと、(v)接着剤溶液に、本明細書において記述されているような活性剤を添加するステップと、(v)活性剤を含む、接着剤溶液から、約35~80wt%の間のアクリレート、約0.01~30wt%の間のポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ならびに約5~50wt%の間の活性剤を含む接着剤マトリックスを形成するステップとを含む。
【0058】
別の実施形態では、方法は、(i)ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと、(ii)アクリレート系接着剤を第2の溶媒中に可溶化するステップと、(iii)均質溶液を形成するために、(i)および(ii)を混合するステップと、(iv)均質溶液に、本明細書において記述されている通りの活性剤を添加するステップと、(v)(iv)の溶液から接着剤マトリックスを形成するステップとを含む。一実施形態では、溶液から形成された接着剤マトリックスは、約35~80wt%の間のアクリレート、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、および約5~50wt%の間の活性剤を含む。
【0059】
接着剤マトリックスを形成するステップにおいて、調合物を剥離ライナーフィルム等の適切なフィルムにキャストし、50℃から100℃の間の範囲内の温度(1つまたは複数)で乾燥させて、すべての揮発性化合物を排除する。
【0060】
経皮デバイスを形成するために、次いで、接着剤マトリックスを、適切なフィルムに、概してバッキングフィルムに積層する。バッキングフィルムは、当業界において公知であり、接着剤層に支持を提供し、活性剤に不浸透性または実質的に不浸透性であるものすべてを使用することができる。これは、可撓性であっても非可撓性であってもよい。適切な材料は、当業者に周知であり、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、種々のナイロン、ポリプロピレン、金属化ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデンおよびアルミニウム箔を含む。他の実施形態では、経皮デバイスは、接着剤マトリックス中に布または結合層を含んでよく、任意の伸縮性または非伸縮性材料が使用され得る。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデンおよびポリエチレン等のポリエステルを含む布および不織布材料が使用され得る。
III.実施例
【実施例】
【0061】
下記の例は、本質的に例証的なものであり、何ら限定を意図していない。
(実施例1)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0062】
親水性ドメインの調合物は、ポリビニルピロリドン酢酸ビニルコポリマー(プラスドンS-630)を、トルエンとイソプロピルアルコールとの9:1の混合物に溶解して、35wt%のポリビニルピロリドン酢酸ビニルコポリマーを含む溶液を得ることによって調製した。疎水性ドメインの調合物は、高分子量ポリイソブチレンホモポリマー(オパノールB-100;1,000,000ダルトン分子量)および中間分子(moleculear)量ポリイソブチレンホモポリマー(オパノールB-12;50,000ダルトン分子量)とポリブテン(インドポールH-1900)とのブレンドを、トルエン中1:5:4の比で溶解することによって調製し、ここで、ポリイソブチレンブレンドは、60wt%の濃度であった。
【0063】
アクリレート系接着剤溶液は、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(デュロタック87-2015)を酢酸エチルに51.5wt%の濃度で溶解することによって調製した。
【0064】
接着剤調合物は、次の通りに調製した。2.017gの親水性ドメイン調合物を、0.784gの疎水性ドメイン調合物と、均質溶液が形成されるまで混合した。追加で2.49gのトルエンおよび0.72gのイソプロピルアルコールを添加し、溶液をよく混合した。次に、5.483gのアクリレート系接着剤溶液を、均質になるまで混合しながら添加した。次いで、1.00gのドネペジル塩基を添加し、ボルテックスしながら溶解した。
【0065】
接着剤マトリックスは、接着剤調合物をシリコンコーティングされた剥離ライナーに20ミルの湿潤厚さでコーティングし、次いで、70℃で20分間にわたって乾燥させることによって調製した。接着剤マトリックスは、次の通りの最終組成を有していた。
【表3】
【0066】
次いで、バッキング層(スコッチパック9732)をマトリックスに積層し、10cm2の経皮デバイスを積層体から打ち抜き加工した。
(実施例2)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0067】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表4】
(実施例3)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0068】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表5】
(実施例4)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0069】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表6】
(実施例5)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0070】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表7】
(実施例6)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0071】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表8】
(実施例7)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0072】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表9】
(実施例8)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0073】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表10】
(実施例9)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0074】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表11】
(実施例10)
ドネペジルを含む、接着剤調合物、接着剤マトリックスおよび経皮デバイス
【0075】
接着剤調合物を、実施例1に記述されている通りに調製して、下記の組成を持つ接着剤マトリックスを得た。
【表12】
【0076】
若干数の例示的な態様および実施形態について上記で論じてきたが、当業者ならば、それらのある特定の修正、置換、追加および部分的組合せを認識し得る。したがって、下記の添付の請求項および今後導入される請求項は、すべてのそのような修正、置換、追加および部分的組合せを、それらの真の趣旨および範囲内にあるとして含むと解釈されることが意図されている。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む親水性ドメインと、
ポリイソブチレンおよびアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーの一方または両方を含む疎水性ドメインと、
(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられる活性剤と
を含む接着剤マトリックスであって、
前記親水性ドメインおよび前記疎水性ドメインが、溶媒系に共溶解性であり、いずれかのドメイン単独に溶解性である活性剤の量よりも多い量の活性剤を可溶化するために、前記接着剤マトリックス中に互いに比例して存在する、
接着剤マトリックス。
(項目2)
前記疎水性ドメインが、ポリイソブチレンおよびポリブテンの組合せを含む、項目1に記載の接着剤マトリックス。
(項目3)
前記疎水性ドメインが、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーを含む、項目2に記載の接着剤マトリックス。
(項目4)
10~25wt%の間の親水性ドメインを含む、項目1から3のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス。
(項目5)
約35~80wt%の間の疎水性ドメインを含む、項目1から4のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス。
(項目6)
約15~25wt%の活性剤、約50~60wt%のアクリレート系接着剤、約7~15wt%のポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物、ならびに約10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、項目1から5のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス。
(項目7)
前記活性剤が、ドネペジル、ロピニロール、リドカインおよびオキシブチニンからなる薬物の群から選択される、項目1から6のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス。
(項目8)
活性剤の経皮投与のためのデバイスであって、項目1から6のいずれか一項に記載の接着剤マトリックス層を含む、デバイス。
(項目9)
約10~25wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、約35~75wt%のポリイソブチレンおよびポリブテン、約40~64wt%のアクリレート系接着剤、ならびに約5~50wt%の活性剤を、前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、前記ポリイソブチレンおよびポリブテンが溶解性である有機溶媒から構成される溶媒系中に含む、接着剤マトリックスの調製のための調合物であって、前記活性剤が、(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられる、調合物。
(項目10)
接着剤マトリックスの製造のための方法であって、
(i)ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを第1の溶媒中に可溶化するステップと、
(ii)ポリイソブチレンおよびポリブテンを第2の溶媒中に可溶化するステップと、
(iii)均質溶液を形成するために、(i)および(ii)を混合するステップと、
(iv)接着剤溶液を形成するために、前記均質溶液に第3の溶媒中に可溶化したアクリレート系接着剤を添加するステップと、
(v)前記接着剤溶液に、(a)約250℃未満の融点または(b)約500mg/L未満の水への溶解度または(c)約2.1から約5の間の油/水分配係数によって特徴付けられる活性剤を添加するステップと、
(v)前記活性剤を用いて、前記接着剤溶液から、約35~80wt%のアクリレート、約0.01~30wt%の間のポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物、約10~25wt%の間のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ならびに約5~50wt%の間の活性剤を含む接着剤マトリックスを形成するステップと
を含む、方法。
(項目11)
前記アクリレート系接着剤が、メタクリレートコポリマーではない、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンとアクリル酸エチルヘキシルではない酢酸ビニルとのコポリマーである、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの線状ランダムコポリマーである、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記コポリマーが、n-ビニル-2-ピロリドンおよび酢酸ビニルの60:40コポリマーである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記アクリレート系接着剤が、メタクリル酸/酢酸ビニルコポリマーを除くアクリル酸/酢酸ビニルコポリマーである、項目10に記載の方法。
(項目16)
前記アクリル酸/酢酸ビニルコポリマーが、架橋剤を含まないものであり、25℃で測定した場合に約2000~8000mPa-sの間の粘度を有する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記第1の溶媒が、ポリビニルピロリドンホモポリマーが不溶性であるものである、項目10に記載の方法。
(項目18)
前記第1の溶媒が、トルエンを含む、項目10または項目17に記載の方法。
(項目19)
前記第1の溶媒が、トルエンとイソ-プロピルアルコールとの混合物を含む、項目10または項目17に記載の方法。
(項目20)
前記混合物が、9部のトルエンと1部のイソ-プロピルアルコールとを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記第2の溶媒が、前記第1の溶媒と同じである、項目10に記載の方法。
(項目22)
前記第1の溶媒が、トルエンを含む混合物であり、前記第2の溶媒が、トルエンである、項目10に記載の方法。
(項目23)
前記第3の溶媒が、酢酸エチルである、項目10に記載の方法。
(項目24)
接着剤マトリックスを形成するステップが、前記活性剤を含む前記接着剤溶液を基材上に塗布するステップと、50~100℃の間の温度で乾燥させるステップとを含む、項目10に記載の方法。
(項目25)
前記接着剤マトリックスが、15~25wt%の活性剤、50~60wt%のアクリレート系接着剤、7~15wt%のポリイソブチレンとポリブテンとの混合物、ならびに10~20wt%のポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記活性剤が、ドネペジル、ロピニロール、リドカインおよびオキシブチニンからなる薬物の群から選択される、項目10から25のいずれか一項に記載の方法。