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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】硬化性フイルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20221110BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221110BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221110BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221110BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20221110BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C08J5/06 CFC
C08L63/00
C08K3/00
C08L1/02
H01L23/30 B
H01L23/12 501P
H01L21/56 R
H05K3/28 F
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019012596
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117671
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘人
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065892(JP,A)
【文献】特開2018-142611(JP,A)
【文献】特開2017-204558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
H01L 21/56
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージの裏面に貼付した後に硬化させて、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムであって、熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなるシート状多孔性支持体の孔内が硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下である硬化性フイルム。
【請求項2】
前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が100℃以下である、請求項1に記載の硬化性フイルム。
【請求項3】
前記硬化性組成物が、硬化性化合物(A)と、硬化剤(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む組成物であって、(A)全量の50重量%以上がエポキシ当量が140~3000g/eqのエポキシ化合物である組成物である、請求項1又は2に記載の硬化性フイルム。
【請求項4】
前記硬化性組成物が、硬化性化合物(A)と硬化剤(B)とを、前記(A)における硬化性基1モルに対して(B)における前記(A)の硬化性基との反応性基が0.8~1.2モルとなる割合で含有する、請求項3に記載の硬化性フイルム。
【請求項5】
前記硬化性組成物が、硬化性化合物(A)と硬化触媒(C)とを、前記(A)100重量部に対して(C)0.1~10重量部の割合で含有する、請求項3又は4に記載の硬化性フイルム。
【請求項6】
前記硬化性組成物に含まれる、全ての硬化性化合物(A)(硬化剤(B)も含有する場合は、全ての硬化性化合物(A)と全ての硬化剤(B))の官能基当たりの分子量の加重平均値が180~1000g/eqである、請求項3~5のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項7】
前記硬化性組成物の硬化物の熱線膨張係数が100ppm/K以上であり、且つ、硬化性フイルムの硬化物のガラス転移温度以上の温度領域での熱線膨張係数(α2)が20ppm/K以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項8】
前記シート状多孔性支持体の厚みが5~500μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項9】
前記シート状多孔性支持体がセルロース繊維の不織布である、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項10】
前記硬化性組成物が、無機フィラー(E)を硬化性組成物(100重量%)に対して0~10重量%含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項11】
反り防止層をファンアウトパッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムである、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性フイルム。
【請求項12】
下記工程を有する反り防止層付き半導体パッケージの製造方法。
工程1:半導体ウェハの裏面に請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性フイルムを貼付する
工程2:硬化性フイルムを硬化させて反り防止層を形成する
【請求項13】
前記半導体ウェハが、配列した複数の半導体チップが封止材により封止されている再構築ウェハである、請求項12記載の反り防止層付き半導体パッケージの製造方法。
【請求項14】
さらに、以下の工程3を有する、請求項13に記載の反り防止層付き半導体パッケージの製造方法。
工程3:再構築ウェハに配線層を形成する
【請求項15】
さらに、以下の工程4を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の反り防止層付き半導体パッケージの製造方法。
工程4:裏面に反り防止層が形成された半導体ウェハを個片化して半導体パッケージを得る
【請求項16】
半導体パッケージの裏面に、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性フイルムの硬化物からなる反り防止層を有する反り防止層付き半導体パッケージ。
【請求項17】
請求項16に記載の反り防止層付き半導体パッケージをリフロー半田付けにより基板に実装する工程を有する電子機器の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の反り防止層付き半導体パッケージを備えた電子機器。
【請求項19】
熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなるシート状多孔性支持体の孔内が硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下である硬化性フイルムの、半導体パッケージの裏面に貼付した後に硬化させて、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ(以後、単に「パッケージ」と称する場合がある)の実装技術は高機能化が進んでおり、同一パッケージ中に多種の半導体チップ(以後、単に「チップ」と称する場合がある)を混載したファンアウトパッケージ(Fan-Out Package)や、パッケージ上に別のパッケージを乗せた3次元的な構造も提案されている。このため、端子数は飛躍的に増えてきており、微細化と同時に、パッケージの裏面側にも3次元的に配線を作製することが必要になってきている。このようなパッケージの高機能化が進むに従って、多種のチップとそれらを3次元的に接続するために複雑に形成される配線との熱膨張率差等によって発生する応力によってパッケージに反りが発生しやすくなり、歩留りが低下するという問題があった。また、電子機器の高性能化に伴い発生する熱量は増大しており、発熱によりパッケージに反りが生じると接続不良などが発生して、電子機器の耐久性や信頼性が低下することも問題になってきている。
【0003】
このようなパッケージの反りの防止を目的として、パッケージに反り防止層を設けることが種々提案されているが、十分な反り低減を実現するため、反り防止層の線膨張係数を小さくする必要があり、線膨張係数が小さな金属酸化物等の無機フィラーが大量に添加されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、反り防止層に大量の無機フィラーが配合されると柔軟性が低下して硬く脆くなるため、ヒートショックに弱くなり、クラックが発生し易くなることが問題であった。さらに、パッケージの裏面側への貫通電極(ビア)を形成する際に、反り防止層に無機フィラーが大量に配合されていると、ビア形成速度が低下したり、ビア形成後に無機フィラーがスカムとして残存して歩留まり低下の原因となることも課題となっている。このような背景から、無機フィラーの含有量を低減した柔軟で低線膨張の反り防止層を形成する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-53181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、半導体パッケージの裏面に反り防止層を形成するための硬化性フイルムであって、無機フィラーの含有量が少なくても線膨張係数が低い硬化物を形成することができ、ビアを効率的に形成できると共に、ビア形成後にスカムが生じにくい反り防止層を形成することができる硬化性フイルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、裏面に反り防止層が形成された半導体パッケージであって、ビアを効率的に形成できると共に、ビア形成後にスカムが生じにくい低線膨張の反り防止層を有する半導体パッケージの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、裏面に反り防止層が形成された半導体パッケージであって、ビアを効率的に形成できると共に、ビア形成後にスカムが生じにくい低線膨張の反り防止層を有する半導体パッケージを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記反り防止層を裏面に有する半導体パッケージを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、熱線膨張係数が低い素材からなるシート状多孔性支持体に、硬化性組成物を充填した構成を有し、特定のガラス転移温度の硬化物を形成する硬化性フイルムが、無機フィラーの含有量が少なくても線膨張係数が低い硬化物を形成することができ、半導体パッケージの裏面に反り防止層を成形するための材料として有用であることを見出した。また、当該硬化性フイルムを使用して反り防止層を裏面に形成させた半導体パッケージは、ビアを効率的に形成できると共に、ビア形成後にスカムが生じにくいため不良率が低減し、歩留りを向上させることできることも見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムであって、熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなるシート状多孔性支持体の孔内が硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下である硬化性フイルムを提供する。
【0008】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度は100℃以下であってもよい。
【0009】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物は、硬化性化合物(A)と、硬化剤(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む組成物であって、(A)全量の50重量%以上がエポキシ当量が140~3000g/eqのエポキシ化合物である組成物であってもよい。
【0010】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物は、硬化性化合物(A)と硬化剤(B)とを、前記(A)における硬化性基1モルに対して(B)における前記(A)の硬化性基との反応性基が0.8~1.2モルとなる割合で含有していてもよい。
【0011】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物は、硬化性化合物(A)と硬化触媒(C)とを、前記(A)100重量部に対して(C)0.1~10重量部の割合で含有していてもよい。
【0012】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物に含まれる、全ての硬化性化合物(A)(硬化剤(B)も含有する場合は、全ての硬化性化合物(A)と全ての硬化剤(B))の官能基当たりの分子量の加重平均値は180~1000g/eqであってもよい。
【0013】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物の硬化物の熱線膨張係数は100ppm/K以上であり、且つ、硬化性フイルムの硬化物のガラス転移温度以上の温度領域での熱線膨張係数(α2)は20ppm/K以下であってもよい。
【0014】
前記硬化性フイルムにおいて、前記シート状多孔性支持体の厚みは5~500μmであってもよい。
【0015】
前記硬化性フイルムにおいて、前記シート状多孔性支持体はセルロース繊維の不織布であってもよい。
【0016】
前記硬化性フイルムにおいて、前記硬化性組成物は、無機フィラー(E)を硬化性組成物(100重量%)に対して0~10重量%含有していてもよい。
【0017】
前記硬化性フイルムは、反り防止層をファンアウトパッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムであってもよい。
【0018】
また、本発明は、下記工程を有する反り防止層付き半導体パッケージの製造方法を提供する。
工程1:半導体ウェハの裏面に前記硬化性フイルムを貼付する
工程2:硬化性フイルムを硬化させて反り防止層を形成する
【0019】
前記反り防止層付き半導体パッケージの製造方法において、前記半導体ウェハは、配列した複数の半導体チップが封止材により封止されている再構築ウェハであってもよい。
【0020】
前記反り防止層付き半導体パッケージの製造方法は、さらに、以下の工程3を有していてもよい。
工程3:再構築ウェハに配線層を形成する
【0021】
前記反り防止層付き半導体パッケージの製造方法は、さらに、以下の工程4を有していてもよい。
工程4:裏面に反り防止層が形成された半導体ウェハを個片化して半導体パッケージを得る
【0022】
また、本発明は、半導体パッケージの裏面に、前記硬化性フイルムの硬化物からなる反り防止層を有する反り防止層付き半導体パッケージを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記反り防止層付き半導体パッケージをリフロー半田付けにより基板に実装する工程を有する電子機器の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記反り防止層付き半導体パッケージを備えた電子機器を提供する。
【0025】
また、本発明は、熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなるシート状多孔性支持体の孔内が硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下である硬化性フイルムの、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための使用を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の硬化性フイルムは、金属酸化物等の無機フィラーの含有量が少なくても線膨張係数が低い硬化物を形成することができ、半導体パッケージの裏面に反り防止層を形成するための材料として有用である。また、大量の無機フィラーを配合する必要がないため、本発明の硬化性フイルムを用いて、反り防止層を裏面に形成させた半導体パッケージは、ビアを効率的に形成できると共に、ビア形成後にスカムが生じにくいため、不良率が低減し、歩留りを向上させることができる。さらに、本発明の硬化性フイルムを半導体パッケージの裏面に積層(ラミネート)して、硬化させることにより簡便に反り防止層を形成することができ、塗布などの煩雑な工程が不要であるため、製造効率に優れる。
そのため、本発明の硬化性フイルムの硬化物からなる反り防止層を裏面に有する半導体パッケージを有する電子機器は、耐久性、信頼性に優れ、歩留まり良く効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)の一例を示す模式図(断面図)である。(a)は、反り防止層を有しないファンアウトパッケージ、(b)は、裏面に反り防止層が形成されたファンアウトパッケージである。
図2図2は、半導体ウェハ(再構築ウェハ)の一例を示す模式図である。(a)は下面図、(b)は、A-A’における断面図を示す。
図3図3は、反り防止層付きパッケージの製造方法の一例の模式図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の硬化性フイルムは、半導体パッケージの反りを防止する反り防止層を半導体パッケージの裏面に形成するための硬化性フイルムであって、熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなるシート状多孔性支持体の孔内が下記硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下である硬化性フイルムである。
【0029】
[半導体パッケージ]
本発明の硬化性フイルムにより反り防止層を裏面に形成する半導体パッケージ(以下、「本発明の半導体パッケージ」と称する場合がある)としては、特に限定されないが、例えば、基本構成として、配線層が形成された半導体チップが封止材により封止された半導体パッケージが挙げられる。特に、複数の半導体チップが同一パッケージ内に搭載されたファンアウトパッケージが好ましい。図1(a)に、反り防止層を有しない半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)の一例の模式図(断面図)を示す。図1(a)において、10aは反り防止層を有しない半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)、11は封止材、12は半導体チップ、13は配線層(再配線層)を示す。ファンアウトパッケージ10aにおいて、配列された複数の半導体チップ12が封止材11により封止されており、半導体チップ12の封止されていない面に配線層13が形成されている。本発明の半導体パッケージは、半導体チップ、封止材、配線層以外の構成、例えば、はんだボール、貫通電極(ビア)、センサー、メモリ、PMIC、通信デバイス、アンテナなどを有していてもよい。
【0030】
上記ファンアウトパッケージは、ファンアウトウェハレベルパッケージ(FOWLP)又はファンアウトパネルレベルパッケージ(FOPLP)であってもよい。FOWLPは、直径300mm程度のウェハ上に複数の半導体チップが配列して製造されるものであり、FOPLPは、ウェハより大きい、一辺が300mm以上の四角いパネル上に半導体チップを配列して製造されるものである。
【0031】
半導体パッケージの裏面とは、半導体パッケージ内の半導体チップ上に配線層(電極)が形成された面又は形成される面とは反対側の面を意味する。「配線層が形成された面」とは、既に配線層が形成された面を言う。「配線層が形成される面」とは、未だ配線層が形成されていないが、配線層が形成される予定の面を言う。図1(b)に、裏面に反り防止層が形成された半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)の一例の模式図(断面図)を示す。図1(b)において、10bは裏面に反り防止層を有する半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)、11は封止材、12は半導体チップ、13は配線層(再販配線層)、14は反り防止層を示す。ファンアウトパッケージ10bにおいて、配列された複数の半導体チップ12が封止材11により封止されており、半導体チップ12の封止されていない面に配線層13が形成され、半導体チップ12上の配線層13が形成された面とは反対側の面(裏面)に反り防止層14が形成されている。
【0032】
半導体パッケージの裏面は、半導体チップ上の配線層が形成された又は配線層が形成される面の反対側の面である限り特に限定されず、裏面全面が封止材で形成されていても良く、一部に半導体チップが露出していてもよい。また、半導体パッケージの裏面には、はんだボール、貫通電極(ビア)、センサー、メモリ、PMIC、通信デバイス、アンテナなどが形成されていてもよい。
【0033】
[シート状多孔性支持体]
上記シート状多孔性支持体(以後、「多孔性支持体」と略称する場合がある)は、熱線膨張係数[例えば-20℃~300℃(好ましくは-10~300℃、特に好ましくは0~300℃、最も好ましくは0~250℃)における熱線膨張係数]が20ppm/K以下(好ましくは10ppm/K以下、特に好ましくは7ppm/K以下)である素材からなる。本発明の硬化性フイルムに熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材からなる多孔性支持体を使用するため硬化収縮率及び熱線膨張係数を小さく抑制することができ、熱衝撃付与による反りを抑制することができると共にクラックの発生を抑制することができる。
【0034】
熱線膨張係数が20ppm/K以下である素材としては、例えば、紙、セルロース、ガラス繊維、液晶材料等が挙げられる。本発明においては、なかでも、紙、セルロース、ガラス繊維が好ましく、特に軽量であり入手が容易な点でセルロースが好ましい。
【0035】
多孔性支持体の空隙率は、例えば90~10vol%、好ましくは80~30vol%、特に好ましくは70~30vol%、最も好ましくは70~50vol%である。空隙率が上記範囲を下回ると、硬化性組成物の十分量を含浸することが困難となり、表面平滑性が得られにくくなる傾向がある。一方、空隙率が上記範囲を上回ると、多孔性支持体による補強効果が十分に得られず、硬化収縮率及び熱線膨張係数を小さく抑制することが困難となる傾向がある。
【0036】
尚、本明細書における「空隙率」とは、多孔性支持体中における空隙の体積率を示す。多孔性支持体の空隙率は、10cm×10cmのサンプルについて、その表面の面積、厚み、及び質量を測定し、下記式から算出することができる。ここで、Arは多孔性支持体の面積(cm2)、tは厚み(cm)、Wは多孔性支持体の質量(g)、Mは多孔性支持体の素材の密度である。多孔性支持体の厚み(t)は、膜厚計(PEACOK社製PDN-20)を用いて、多孔性支持体の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
空隙率(vol%)={1-W/(M×Ar×t)}×100
【0037】
多孔性支持体の厚みは、例えば5~500μmである。下限は、好ましくは10μm、特に好ましくは15μm、最も好ましくは20μmである。また、上限は、好ましくは300μm、より好ましくは200μm、特に好ましくは100μm、最も好ましくは75μmである。多孔性支持体の厚みは上記範囲において適宜調整することができ、例えば硬化性組成物単独の硬化物のTgが低めの場合は多孔性支持体を薄くすることで、硬化収縮率を小さく抑制することができる。硬化性組成物単独の硬化物のTgが高めの場合は多孔性支持体を厚くすることで、熱線膨張係数を小さく抑制することができる。多孔性支持体の厚みが上記範囲を上回ると、電子機器の小型化、軽量化の要求に対応することが困難となる傾向がある。一方、厚みが上記範囲を下回ると、十分な強靱性を得ることが困難になる傾向がある。
【0038】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性フイルムを構成する硬化性組成物(以下、「本発明の硬化性組成物」称する場合がある)としては、特に限定されないが、例えば、硬化性化合物(A)と、硬化剤(B)及び/又は硬化触媒(C)とを含む組成物が挙げられる。
【0039】
(硬化性化合物(A))
硬化性化合物(A)は、特に限定されないが、少なくともエポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を含有するものが好ましい。硬化性化合物(A)がエポキシ化合物を含む場合、特に限定されが、例えば、エポキシ当量(g/eq)が140~3000(好ましくは170~1000、より好ましくは180~1000、特に好ましくは180~500)のエポキシ化合物を硬化性化合物(A)全量の50重量%以上(好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である)含むことが好ましい。エポキシ当量が上記範囲を外れる化合物を過剰に含有すると、硬化性組成物単独の硬化物の柔軟性が低下し、耐クラック性が低下するため好ましくない。
【0040】
上記エポキシ化合物には、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、及び脂肪族エポキシ化合物等が含まれる。
【0041】
<脂環式エポキシ化合物>
上記脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する公知乃至慣用の化合物が含まれるが、以下の化合物等が好ましい。
(1)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物
(2)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)
【0042】
上述の(1)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(i)で表される化合物等が挙げられる。
【化1】
【0043】
式(i)中、R”は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R”(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、nは1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの[ ]内(外側の角括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記式(i)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0044】
上述の(2)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン等のビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン等のビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物を水素化した化合物等が挙げられる。
【0045】
<芳香族エポキシ化合物>
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;後述の変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接又はアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物等が挙げられる。
【0046】
前記変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R1~R4は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。kは1以上の整数を示す。L1は低極性結合基を示し、L2は柔軟性骨格を示す。
【化2】
【0047】
前記炭化水素には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。
【0048】
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1~20(好ましくは1~10、特に好ましくは1~3)程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルキニル基等を挙げることができる。
【0049】
脂環式炭化水素基としては、3~10員の脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3~8員(好ましくは5~8員)程度のシクロアルキル基等を挙げることができる。
【0050】
芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14(好ましくは6~10)の芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基等を挙げることができる。
【0051】
前記R1~R4としては、なかでも、脂肪族炭化水素基(特に、アルキル基)が好ましい。
【0052】
前記L1は低極性結合基を示し、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基等の、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を挙げることができる。
【0053】
前記L2は柔軟性骨格を示し、例えば、炭素数2~4のオキシアルキレン基を挙げることができる。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。
【0054】
変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は上記構成を有するため、硬化性組成物に添加すると耐クラック性を向上する効果が得られる。
【0055】
前記変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、下記式(ii-1)で表される化合物を好適に使用することができる。本発明においては、例えば、商品名「EPICLON EXA-4850-1000」(エポキシ当量:350、DIC社製)や、商品名「EPICLON EXA-4850-150」(エポキシ当量:433、DIC社製)等の市販品を使用することができる。
【化3】
【0056】
<脂肪族エポキシ化合物>
上記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル;一価又は多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等が挙げられる。尚、上記q価の環状構造を有しないアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール等の一価のアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。また、q価のアルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等であってもよい。
【0057】
(硬化剤(B))
本発明の硬化性組成物を構成する硬化剤(B)は、エポキシ化合物を硬化させる役割を担う化合物である。
【0058】
硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。例えば、酸無水物、ジカルボン酸、アミン、ポリアミド樹脂、イミダゾール、ポリメルカプタン、フェノール、ポリカルボン酸、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジド等が挙げられる。本発明においては、なかでも信頼性に優れる点で、酸無水物(b-1)、ジカルボン酸(b-2)、アミン(b-3)、及びフェノール(b-4)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0059】
硬化剤(B)の官能基当たりの分子量は、例えば10~10000g/eq(好ましくは20~8000g/eq、より好ましくは20~7000g/eq、更に好ましくは20~5000g/eq、特に好ましくは20~2000g/eq、最も好ましくは20~1000g/eq)である。
【0060】
酸無水物(b-1)としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。酸無水物系硬化剤としては、耐クラック性に特に優れる点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
【0061】
酸無水物(b-1)としては、例えば、商品名「リカシッドMH700F」(新日本理化(株)製)、商品名「HN-5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0062】
ジカルボン酸(b-2)としては、例えば、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、2,2'-ビフェニルジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族系ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸;酸無水物とポリオール化合物とを反応させて得られるエステル型ジカルボン酸;等が挙げられる。これらの中でも、酸無水物とポリオール化合物とを反応させて得られるエステル型ジカルボン酸が好ましい。
【0063】
前記エステル型ジカルボン酸の合成に用いる酸無水物としては、脂環族酸無水物が好ましく、なかでも4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0064】
ポリオール化合物としては、2価又は3価の脂肪族アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロパン、ポリC1-5アルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)の等の2価の脂肪族アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、2価の脂肪族アルコールが好ましく、特にポリC1-5アルキレングリコールがより好ましい。前記ポリC1-5アルキレングリコールの重量平均分子量は、例えば500~2000、好ましくは600~1600である。
【0066】
酸無水物とポリオール化合物とを反応させて得られるエステル型ジカルボン酸としては、下記式(b-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化4】
【0067】
式(b-2-1)中、R5、R6は同一又は異なって炭素数1~5のアルキル基を示し、なかでもメチル基又はエチル基が好ましい。m1、m2は同一又は異なって0~4の整数を示す。Lはポリオール化合物から2つの水酸基を除いた基(2価の基)であり、なかでも、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから2つの水酸基を除いた基が好ましい。
【0068】
ジカルボン酸(b-2)としては、例えば、商品名「リカシッドHF-08」(新日本理化(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0069】
アミン(b-3)としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0070】
フェノール(b-4)としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、p-キシリレン変性フェノール樹脂、p-キシリレン・m-キシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
【0071】
(硬化触媒(C))
本発明の硬化性組成物は、上述の硬化剤(B)の代わりに若しくは上述の硬化剤(B)と共に、硬化触媒(C)を含んでいてもよい。硬化触媒(C)を用いることにより、エポキシ化合物の硬化反応を進行させ、硬化物を得ることができる。上記硬化触媒(C)としては、特に限定されないが、例えば、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させることができるカチオン触媒(カチオン重合開始剤)を1種又は2種以上使用することができる。
【0072】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン触媒(光カチオン重合開始剤)としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩等が挙げられる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、商品名「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国サートマー製)、商品名「イルガキュア264」(チバ・ジャパン(株)製)、商品名「CIT-1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0073】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン触媒(熱カチオン重合開始剤)としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体等が挙げられる。上記カチオン触媒としては、例えば、商品名「PP-33」、「CP-66」、「CP-77」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「FC-509」(スリーエム製)、商品名「UVE1014」(G.E.製)、商品名「サンエイド SI-60L」、「サンエイド SI-80L」、「サンエイド SI-100L」、「サンエイド SI-110L」、「サンエイド SI-150L」(以上、三新化学工業(株)製)、商品名「CG-24-61」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を使用することができる。上記カチオン触媒としては、さらに、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物等を用いることもできる。
【0074】
(有機フィラー(D))
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に有機フィラー(D)を1種又は2種以上含有していてもよい。有機フィラー(D)を含有することにより、硬化収縮率及び熱線膨張係数を一層小さく抑制することができ、反りの抑制効果を向上することができる。また、硬化性組成物が有機フィラー(D)を含有すると、多孔性支持体の孔内に充填された硬化性組成物が孔外へ流出するのを抑制する効果も得られる。さらに、有機フィラー(D)は、硬化性組成物の着色剤としても使用することもできる。
【0075】
前記有機フィラー(D)としては、例えば、セルロースナノファイバー、セルロース(ナノ)クリスタル等のセルロース系粒子、PEEKファイバー、液晶材料、及び金属酸化物等を含まない単層或いは多層カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンブラック、フラーレン、ナノダイアモンド等の炭素材料等が挙げられ、これらを単独、又は、2以上を組み合わせて使用することができる。上記有機フィラーは、中実構造、中空構造、多孔質構造等のいずれの構造を有していてもよい。このうち、黒色着色料としても使用し得る炭素材料が好ましい。
【0076】
有機フィラー(D)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等を挙げることができる。
【0077】
有機フィラー(D)の平均粒子径は、例えば5nm~100μm、好ましくは50nm~50μm、特に好ましくは100nm~30μmである。平均粒子径が上記範囲を下回ると、粘度の上昇が著しく、取り扱いが困難となる傾向がある。一方、平均粒子径が上記範囲を上回ると、耐クラック性が低下する傾向がある。また、上記範囲内のサイズのフィラーを2種以上混合して使用しても良く、それにより粘度と物性をコントロールすることが可能となる。尚、有機フィラー(D)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径(d50)である。
【0078】
(無機フィラー(E))
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に無機フィラー(E)を1種又は2種以上含有していてもよい。しかしながら、多量の無機フィラーが配合されると、ビア作製時に無機フィラーに起因してスカムの発生やビア作製に時間を要するなどの問題が生じやすくなる。従って、無機フィラー(E)の含有量(配合量)は、硬化性組成物(100重量%)に対して、10重量%以下(0~10重量%)が好ましく、5重量%以下(0~5重量%)がより好ましい。無機フィラー(E)の含有量を10重量%以下とすることにより、ビア作製時のスカム発生が抑制され、ビア作製に時間を短縮しやすくなる。また、無機フィラー(E)を配合しないことにより、実質的に無機フィラー(E)を含まないことも好ましい。
【0079】
前記無機フィラー(E)としては、例えば、シリカ(例えば、天然シリカ、合成シリカ等)、酸化アルミニウム(例えば、α-アルミナ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;マイカ、タルク、カオリン、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、フライアッシュ、脱水汚泥、ガラスビーズ、ガラスファイバー、ケイ藻土、ケイ砂、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、水和石膏、ミョウバン、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、シリコンカーバイド、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、燐酸マグネシウム、銅、鉄等が挙げられ、これらを単独、又は、2以上を組み合わせて使用することができる。上記無機フィラーは、中実構造、中空構造、多孔質構造等のいずれの構造を有していてもよい。また、上記無機フィラーは、例えば、オルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物等の周知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。
【0080】
無機フィラー(E)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等を挙げることができる。
【0081】
無機フィラー(E)の平均粒子径は、例えば5nm~100μm、好ましくは50nm~50μm、特に好ましくは100nm~30μmである。平均粒子径が上記範囲を下回ると、粘度の上昇が著しく、取り扱いが困難となる傾向がある。一方、平均粒子径が上記範囲を上回ると、耐クラック性が低下する傾向がある。また、上記範囲内のサイズのフィラーを2種以上混合して使用しても良く、それにより粘度と物性をコントロールすることが可能となる。尚、無機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径(d50)である。
【0082】
(硬化促進剤)
本発明の硬化性組成物は、硬化剤(B)と共に硬化促進剤を含有していても良い。硬化剤(B)と共に硬化促進剤を含有することにより、硬化速度を促進する効果が得られる。硬化促進剤としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;リン酸エステル、トリフェニルホスフィン(TPP)等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩;金属キレート等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
硬化促進剤としては、例えば、商品名「U-CAT SA 506」、「U-CAT SA 102」、「U-CAT 5003」、「U-CAT 18X」、「U-CAT 12XD)」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「TPP-K」、「TPP-MK」(以上、北興化学工業(株)製)、商品名「PX-4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0084】
本発明の硬化性組成物全量における、硬化性化合物(A)の含有量は例えば30~98重量%である。また、上記硬化性組成物全量における、芳香族エポキシ化合物(例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂から選択される化合物)の含有量は、例えば30~98重量%である。更に、上記硬化性組成物全量における、芳香族エポキシ化合物以外のエポキシ化合物の占める割合は、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
【0085】
本発明の硬化性組成物に含まれるエポキシ化合物全量における、芳香族エポキシ化合物(例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂から選択される化合物)の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。従って、上記硬化性組成物に含まれるエポキシ化合物全量における、芳香族エポキシ化合物以外のエポキシ化合物の占める割合は、例えば40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0086】
硬化剤(B)の含有量は、硬化性組成物に含まれる硬化性基(例えば、エポキシ基)1モルに対して(B)における前記(A)の硬化性基との反応性基が例えば0.8~1.2モルとなる割合である。
【0087】
硬化剤(B)の含有量が上記範囲を下回ると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(B)の含有量が上記範囲を上回ると、硬化性組成物単独の硬化物の極性が増大し、水分の影響を受けやすくなり、信頼性の低下に繋がる場合がある。
【0088】
本発明の硬化性組成物(有機フィラー(D)、無機フィラー(E)を除く)全量における、硬化性化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量の占める割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0089】
本発明の硬化性組成物に含まれる、全ての硬化性化合物(A)(硬化剤(B)も含有する場合は、全ての硬化性化合物(A)と全ての硬化剤(B))の官能基当たりの分子量の加重平均値(含有割合を加重)(g/eq)は、例えば180~1000、好ましくは200~700、特に好ましくは200~500、最も好ましくは250~450、とりわけ好ましくは300~450である。本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物(A)(硬化剤(B)も含有する場合は、硬化性化合物(A)と硬化剤(B))を、加重平均値が上記範囲となるように選択して含有することが、架橋点間距離を適度に有することにより、柔軟性を有し、耐クラック性に優れる硬化物が得られる点で好ましい。加重平均値が上記範囲を下回ると、柔軟性が低下し、耐クラック性が低下する傾向がある。一方、加重平均値が上記範囲を上回ると、硬化樹脂の密度が低く、十分な強靭さや耐候性を得ることが困難となる傾向がある。尚、エポキシ化合物の官能基当たりの分子量とはエポキシ当量である。また、硬化剤としての酸無水物(b-1)の官能基当たりの分子量とは酸無水物基当量、ジカルボン酸(b-2)の官能基当たりの分子量とはカルボキシル基当量、アミン(b-3)の官能基当たりの分子量とはアミン当量、フェノール(b-4)の官能基当たりの分子量とは水酸基当量のことである。
【0090】
硬化触媒(C)の含有量は、特に限定されないが、硬化性組成物中に含まれる硬化性化合物(A)100重量部に対して、例えば0.1~10重量部の割合で含有することが好ましく、硬化性組成物中に含まれるエポキシ化合物の全量(100重量部)に対して、例えば0.01~15重量部、好ましくは0.01~12重量部、さらに好ましくは0.05~10重量部、特に好ましくは0.1~10重量部である。硬化触媒(C)を上記範囲内で使用することにより、耐熱性、耐候性に優れた硬化物を得ることができる。
【0091】
有機フィラー(D)の含有量は、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(2種以上含有する場合はその総量)100重量部に対して、例えば50重量部以下(例えば、1~50重量部)、好ましくは45重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。有機フィラー(D)の含有量が過剰となると、硬化性組成物単独の硬化物のTgが高くなり、柔軟性が低下して、耐クラック性が低下する傾向がある。
【0092】
硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、硬化性組成物中に含まれるエポキシ化合物100重量部に対して、例えば3重量部以下(例えば0.1~3重量部)、好ましくは0.2~3重量部、特に好ましくは0.25~2.5重量部である。
【0093】
(その他の成分)
本発明の硬化性組成物は上記成分以外にも、必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含有していても良い。
【0094】
本発明の硬化性組成物はエポキシ化合物以外の硬化性化合物を含有していても良く、例えば、オキセタン化合物等のカチオン硬化性化合物、(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート等のラジカル硬化性化合物を含有することができる。
【0095】
本発明の硬化性組成物は、更に、例えば、希釈剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、界面活性剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、イオン吸着体、蛍光体等を含有することができる。
【0096】
また、硬化剤(B)として酸無水物を使用する場合は、酸無水物と共に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の水酸基含有化合物を使用することが、硬化反応を促進する効果が得られる点で好ましい。水酸基含有化合物の含有量は、酸無水物100重量部に対して、例えば、0.1~15重量部、好ましくは0.5~10重量部である。
【0097】
本発明の硬化性組成物は上記成分を混合することにより調製できる。混合には、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用することができる。また、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0098】
本発明の硬化性組成物単独の硬化物(多孔性支持体を含まない)の、ガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、例えば100℃以下(例えば、-60~100℃)が好ましい。Tgの上限は、好ましくは50℃、特に好ましくは40℃、最も好ましくは25℃である。Tgの下限は、好ましくは-40℃、より好ましくは-30℃、更に好ましくは-20℃、更に好ましくは-10℃、特に好ましくは0℃、最も好ましくは5℃、とりわけ好ましくは10℃である)である。硬化物のTgが100℃以下の硬化性組成物を使用することにより、本発明の硬化性フイルムの硬化物のTgも100℃以下に制御しやすくなる。すなわち、本発明の硬化性フイルムの硬化物のTgは、硬化性組成物単独の硬化物のTgと相関する傾向がある。前記ガラス転移温度以上の温度(例えば-10~220℃、好ましくは0~220℃、特に好ましくは10~200℃、最も好ましくは20~220℃、とりわけ好ましくは50~220℃)の範囲の少なくとも1点における、本発明の硬化性組成物単独の硬化物(多孔性支持体を含まない)の熱線膨張係数は、例えば100ppm/K以上(例えば100~700ppm/K、好ましくは200~500ppm/K、特に好ましくは300~500ppm/K)であることが好ましい。
【0099】
[硬化性フイルム]
本発明の硬化性フイルムは、コア材として上記多孔性支持体の孔内が上記硬化性組成物で充填された構成を有し、硬化物のガラス転移温度が100℃以下を示すものである。本発明において使用する硬化性フイルムの硬化物は上述の通りガラス転移温度が低く柔らかいため、耐クラック性に優れる。また、前記の柔らかい(特に100℃以上の高温領域において柔らかい)硬化物を形成する硬化性フイルムは、多孔性支持体の孔内に硬化性組成物が充填された構成を有するが、前記硬化性組成物が多孔性支持体を押しのけて膨張することができない為か、結果的に熱線膨張係数を小さく抑制することができ、反りの発生を防止することができる。
【0100】
本発明の硬化性フイルムは、例えば、上記硬化性組成物を溶剤(例えば、2-ブタノン等)で希釈したものを上記多孔性支持体に含浸させ、その後、乾燥させて溶剤を除去し、さらに必要に応じて半硬化(硬化性化合物の一部を硬化)させることにより製造することができる。
【0101】
硬化性組成物を含浸させる方法としては特に制限がなく、例えば、硬化性組成物中に多孔性支持体を浸漬する方法等を挙げることができる。浸漬時温度は、例えば25~60℃程度である。浸漬時間は、例えば30秒~30分程度である。浸漬は減圧又は加圧環境下で行うことが、起泡の残存を抑制し、硬化性組成物の充填を促進する効果が得られる点で好ましい。
【0102】
含浸後の乾燥、及び半硬化の条件は使用する硬化剤の種類によって適宜変更して行うことが好ましい。例えば、硬化剤として酸無水物、又はフェノールを使用する場合、100℃未満(例えば25℃以上、100℃未満)の温度で、1分~1時間程度加熱することにより行うことができる。硬化剤としてアミンを使用する場合は、より低温で行うことが好ましい。加熱温度や加熱時間が上記範囲を上回ると、多孔性支持体に充填された硬化性組成物の硬化反応が進行し過ぎることにより、反り防止層としての使用が困難となる場合がある。
【0103】
本発明の硬化性フイルム全体積における、多孔性支持体の占める割合は、例えば10~90vol%、好ましくは20~70vol%、特に好ましくは30~70vol%、最も好ましくは30~50vol%である。すなわち、本発明の硬化性フイルム全体積における、硬化性組成物の占める割合は、例えば10~90vol%、好ましくは30~80vol%、特に好ましくは30~70vol%、最も好ましくは50~70vol%である。多孔性支持体の占める割合が上記範囲を上回ると、上記硬化性組成物の十分量を含浸することが困難となり、表面平滑性が得られにくく成る傾向がある。一方、硬化性組成物が上記範囲を上回ると、多孔性支持体による補強効果が十分に得られず、硬化収縮率及び熱線膨張係数を小さく抑制することが困難となる傾向がある。
【0104】
本発明の硬化性フイルムは、加熱処理を施すことにより硬化物を形成する。加熱処理条件は、特に限定されないが、加熱温度は40~300℃が好ましく、より好ましくは60~250℃である。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜調節可能であり、特に限定されないが、1~10時間が好ましく、より好ましくは1~5時間である。上記加熱処理において、加熱温度は一定とすることもできるし、連続的又は段階的に変更することもできる。
【0105】
本発明の硬化性フイルムの硬化物のガラス転移温度(Tg)は、上記の通り、100℃以下(例えば、-60~100℃)であり、好ましくは0~90℃、より好ましくは5~80℃、更に好ましくは10~75℃、特に好ましくは10~60℃、最も好ましくは10~50℃、更に好ましくは10~40℃、とりわけ好ましくは15~40℃である。本発明の硬化性フイルムの硬化物は上記Tgを有する場合、適度な柔軟性を有し、耐クラック性に優れる反り防止層を形成することができる。尚、硬化物のガラス転移温度は実施例に記載の方法で求められる。
【0106】
本発明の硬化性フイルムの硬化物の熱線膨張係数α2[硬化物のTg以上の温度領域、例えば100~300℃における熱線膨張係数]は、特に限定されないが、例えば20ppm/K以下(例えば、-1~20ppm/K)、好ましくは15ppm/K以下、より好ましくは12ppm/K以下、更に好ましくは10ppm/K以下である。そのため、硬化性組成物の硬化物のTgより高い温度における膨張及び収縮が抑制され、例えば、半導体パッケージをリフロー半田付けにより基板に実装する際の反りの発生を抑制することができ、製造歩留りを向上させることができる。
【0107】
本発明の硬化性フイルムの硬化物の熱線膨張係数α1[硬化物のTg以下の温度領域、例えば-20℃~100℃、好ましくは-10~100℃、特に好ましくは0~100℃における熱線膨張係数]は、例えば55ppm/K以下(例えば、-1~55ppm/K)、好ましくは50ppm/K以下、より好ましくは45ppm/K以下、更に好ましくは25ppm/K以下、特に好ましくは20ppm/K以下である。そのため、硬化性組成物の硬化物のTgより低い温度における膨張及び収縮が抑制され、例えば、電子機器の発熱による反りの発生を抑制することができ、耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0108】
本発明の硬化性フイルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5~500μmである。下限は、好ましくは10μm、特に好ましくは15μm、最も好ましくは20μmである。また、上限は、好ましくは400μm、より好ましくは300μm、特に好ましくは250μm、最も好ましくは200μmである。本発明の硬化性フイルムの厚みが上記範囲を上回ると、電子機器の小型化、軽量化の要求に対応することが困難となる傾向がある。一方、厚みが上記範囲を下回ると、十分な強靱性を得ることが困難になる傾向がある。
【0109】
本発明の硬化性フイルムは、少なくとも一方の面に、さらに、金属箔、絶縁層、放熱シート、電磁波シールド膜などが積層されていてもよい。
【0110】
[反り防止層付き半導体パッケージ]
本発明の反り防止層付き半導体パッケージ(以後、「反り防止層付きパッケージ」と称する場合がある)は、半導体パッケージの裏面に本発明の硬化性フイルムの硬化物からなる反り防止層(以後、「本発明の反り防止層」と称する場合がある)を少なくとも1層有する。本発明の反り防止層は、熱線膨張係数低いため、半導体パッケージを構成する、半導体チップ、配線層(電極)、封止材などの熱膨張率の差に由来する応力によって引き起こされる反りやクラックを抑制することができる。半導体パッケージの反りの大きさは、半導体パッケージを構成する半導体チップ、封止材、配線層等の組み合わせやその厚み、構造に依存する。そのため、本発明の反り防止層の組成や厚みは、半導体パッケージの構成に応じて適宜調整することが好ましい。
【0111】
本発明の反り防止層の厚みは、例えば、5~500μmである。下限は、好ましくは10μm、特に好ましくは15μm、最も好ましくは20μmである。また、上限は、好ましくは400μm、より好ましくは300μm、特に好ましくは250μm、最も好ましくは200μmである。反り防止層の厚みが上記範囲を上回ると、電子機器の小型化、軽量化の要求に対応することが困難となる傾向がある。一方、厚みが上記範囲を下回ると、十分な強靱性を得ることが困難になる傾向がある。
【0112】
本発明の反り防止層は、プリント配線基板、ガラスフイルムの補強材などとして機能するものであってもよい。
【0113】
[反り防止層付き半導体パッケージの製造方法]
本発明の反り防止層付きパッケージは、下記工程を経て製造することが好ましい。
工程1:半導体ウェハの裏面に本発明の硬化性フイルムを貼付する
工程2:硬化性フイルムを硬化させて反り防止層を形成する
【0114】
工程1における、半導体ウェハとしては、複数の半導体チップを含む公知、常用の半導体ウェハを特に限定するすることなく使用することができ、例えば、ファンアウトパッケージを製造する場合には、配列した複数の半導体チップが封止材により封止されている再構築ウェハが好ましい。図2に、半導体ウェハ(再構築ウェハ)の一例の模式図(断面図)を示し、(a)は下面図、(b)は、A-A’における断面図を示す。図2において、20は再構築ウェハ、11は封止材、12は半導体チップを示す。再構築ウェハ20において、配列された複数の半導体チップ12が封止材11により封止されている。
【0115】
再構築ウェハは公知、常用の方法により製造することができ、例えば、以下の工程I~IIIを含む方法により製造することができる。
工程I:基板(ウェハ又はパネル)に仮止めテープをはりつけ、前記仮止めテープを介して基板に半導体チップを貼付する
工程II:基板に貼付された半導体チップを封止して、基板上に仮止めされた再構築ウェハを得る
工程III:基板を剥離して、再構築ウェハを得る
【0116】
前記工程Iにおいて、基板としては、直径300mm程度のウェハ又は一辺300mm以上の四角形のパネルであってもよい。
前記工程IIにおいて、半導体チップを封止する方法としては、例えば、基板上に貼付された半導体チップに、封止剤(樹脂)を塗布するか、シート状プリプレグを貼り合わせ、加熱処理を施すことにより行うことができる。加熱処理としては、例えば、上述の本発明の硬化性フイルムの硬化物を得るための加熱条件と同様に行うことができる。
【0117】
工程1において使用する半導体ウェハは、裏面と反対側の面(おもて面)が基板に仮止めされた半導体ウェハであってもよい。おもて面が基板に仮止めされた半導体ウェハとしては、例えば、上記工程IIで得られる基板上に仮止めされた再構築ウェハを使用することができる。おもて面が基板に仮止めされた半導体ウェハを使用した場合は、工程2で裏面に反り防止層した後に、工程IIIを行い、基板を剥離することができる。
【0118】
工程1において、半導体ウェハの裏面に本発明の硬化性フイルムを貼付する方法は、例えば、半導体ウェハの裏面に本発明の硬化性フイルムを貼り合わせ、表面平坦化用基板等を用いて圧縮(例えば0.1~5MPaで押圧)することにより行うことができる。
【0119】
工程2における硬化性フイルムの硬化方法としては、例えば、硬化性フイルムを構成する硬化性組成物が光カチオン重合開始剤を含有する場合は光照射を施すことが好ましい。また、硬化性フイルムを構成する硬化性組成物が硬化剤又は熱カチオン重合開始剤を含有する場合は加熱処理を施すことが好ましい。また、硬化性フイルムの硬化は、表面平坦化用基板等を用いて圧縮(例えば0.1~5MPaで押圧)しながら行うことができる。
【0120】
前記光照射は、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源、LED光源等を使用し、積算照射量が例えば500~5000mJ/cm2となる範囲で照射することが好ましい。光源としては、なかでも、UV-LED(波長:350~450nm)が好ましい。
前記加熱処理としては、例えば、上述の本発明の硬化性フイルムの硬化物を得るための加熱条件と同様に行うことができる。
【0121】
半導体ウェハが再構築ウェハである場合は、本発明の反り防止層付き半導体パッケージの製造方法は、さらに、以下の工程を有することが好ましい。
工程3:再構築ウェハに配線層を形成する
【0122】
配線層(電極)の形成は、周知慣用の方法で行うことができる。工程3は、工程1の前に行ってもよく、工程1と2の間に行ってもよく、工程2の後に行ってもよく、特に限定されないが、工程2の硬化条件などによる配線層が損傷を避けるために、工程2の後に行うことが好ましい。
【0123】
本発明の反り防止層付き半導体パッケージの製造方法は、さらに、以下の工程を有することが好ましい。
工程4:裏面に反り防止層が形成された半導体ウェハを個片化して半導体パッケージを得る
【0124】
工程4における半導体ウェハの個片化は、ダイシングソー等の周知慣用の切断装置を使用して行うことができる。また、半導体ウェハが基板に仮止めされている場合は、個片化する前に基板から剥離することが好ましく、剥離後に糊残りがある場合は、洗浄等を施して糊残りを除去することが好ましい。
工程4は、特に限定されないが、工程2(工程3行う場合は、工程3)の後に行うことが効率的である。
【0125】
図3に、本発明の反り防止層付きパッケージの製造方法の一例の模式図(断面図)を示す。図3(a)において、基板31(ウェハ又はパネル)に仮止めテープ32をはりつけ、前記仮止めテープ32を介して基板31に半導体チップ12を貼付する(工程I)。次に、図3(b)において、基板31に貼付された半導体チップ12を封止材11で封止して、基板上に仮止めされた再構築ウェハを得る(工程II)。次に、図3(c)、(d)において、再構築ウェハの封止材11(裏面)に硬化性フイルム33を貼付し(工程1)、硬化性フイルム33を硬化させて反り防止層14を形成する(工程2)。硬化性フイルム33を貼付及び硬化は、表面平坦化用基板34を用いて圧縮しながら行ってもよい。次に、図3(e)において、基板31を剥離して、裏面に反り防止層14を有する再構築ウェハ30を得る(工程III)。最後に、図3(f)において、反り防止層14とは反対側の面(おもて面)に配線層13を設けて、裏面に反り防止層14を有する半導体パッケージ10b(ファンアウトパッケージ)を得る(工程3)。半導体パッケージ10bは、さらに、ダイシングにより個片化してもよい(工程4)。
【0126】
[電子機器]
本発明の電子機器は、本発明の反り防止層付きパッケージを備えることを特徴とする。本発明の電子機器は、本発明の反り防止層付きパッケージを備えるため、半導体パッケージの発熱による反りやクラック発生を抑制することができるので、耐久性、信頼性に優れる。本発明の電子機器には、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末、電子辞書等の携帯型電子機器が含まれる。
【0127】
本発明の電子機器は、上記方法により得られた反り防止層付きパッケージをリフロー半田付け(特に、鉛フリー半田を用いたリフロー半田付け)により基板に実装する工程を経て製造することができる。本発明の反り防止層付きパッケージの反り防止層は、リフロー半田付け(特に、鉛フリー半田を用いたリフロー半田付け)を行う高温環境下(例えば150~250℃)においても、優れた反り防止効果を発揮することができる。そのため、前記製造方法によれば、高性能の電子機器を、優れた作業性で、歩留まり良く製造することができる。
【実施例
【0128】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0129】
調製例1:支持体の調製(セルロース不織布の調製)
微小繊維セリッシュKY110N((株)ダイセル製)のスラリーを0.2重量%に希釈し、減圧装置付き抄紙マシーン(東洋精機製作所(株)製、標準角型マシン)を用いて、No.5C濾紙を濾布として抄紙して、湿潤状態のセルロース不織布を得た。
得られた湿潤状態のセルロース不織布の両面に吸い取り紙を重ね、0.2MPaの圧力で1分間プレスした。次いで、0.2MPaの圧力で1分間プレスし、更に、表面温度が100℃に設定されたドラムドライヤ(熊谷理機工業(株)製)に貼り付けて120秒間乾燥して、セルロース不織布(空隙率:60vol%、坪量9.9g/m2、熱線膨張係数:5ppm/K、厚み25μm)を得た。
【0130】
実施例1~7
(硬化性フイルムの調製)
表1に記載の処方にて硬化性組成物を調製した。
上記で得られた硬化性組成物中に、減圧下、調製例1で得られたセルロース不織布を浸漬した後に、減圧での溶剤除去と再度の硬化性組成物の含浸を経て、硬化性フイルム(硬化性組成物の占める割合:65vol%)を作製した。
得られた硬化性フイルムを表1に示される硬化条件で硬化させて得られた硬化物について、下記方法によりガラス転移温度、及び熱線膨張係数を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
(封止材の作製)
ビスフェノールAグリシジルエーテル(YD128)100g、リカシッドMH-700Fを87g、エチレングリコール2g及び硬化促進剤(U-CAT 12XD)0.5gを加えて、自転・公転真空ミキサー(商品名「あわとり練太郎」、シンキー社製)を使用し、真空状態で2分間混練して封止材を得た。
【0132】
(再構築ウェハの作製)
直径6インチの円形のシリコンウェハ上に、同直径のPET両面粘着フイルムを貼り、10mm角に切ったガラス基板37枚を10mm間隔で全面に並べ、その上に上記で得られた封止材を塗布した後、加圧しながら150℃で10分間硬化させ、図3(b)に示されるシリコンウェハ(基板)上に仮止めされた再構築ウェハ(A)を作製した。
【0133】
(反り防止層付き再構築ウェハの作製)
上記で得られた再構築ウェハ(A)の裏面(仮止めされたシリコンウェハと反対側の面)に、上記で得られた硬化性フイルムを貼り合わせ、再度加圧しながら150℃で2時間硬化させて、反り防止層(硬化物)を形成させた。PETフイルムを介して仮止めさせていたシリコンウェハを取り除き、図3(e)に示される裏面に反り防止層を形成させた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を得た。
【0134】
比較例1
(硬化性組成物の調製)
表2に記載の処方にて硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物を単独で表2に示される硬化条件で硬化させて得られた硬化物について、下記方法によりガラス転移温度、及び熱線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
【0135】
(反り防止層付き再構築ウェハの作製)
上記で得られた再構築ウェハ(A)の裏面(仮止めされたシリコンウェハと反対側の面)に、上記で得られた硬化性組成物を塗布し、150℃で2時間硬化させて、反り防止層(硬化物)を形成させた。PETフイルムを介して仮止めさせていたシリコンウェハを取り除き、図3(e)に示される裏面に反り防止層を形成させた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を得た。
【0136】
比較例2
(硬化性フイルムの調製)
表2に記載の処方にて硬化性組成物を調製した。
上記で得られた硬化性組成物中に、減圧下、ガラスクロスを浸漬した後に、減圧での溶剤除去と再度の硬化性組成物の含浸を経て、硬化性フイルム(硬化性組成物の占める割合:65vol%)を作製した。
得られた硬化性フイルムを表2に示される硬化条件で硬化させて得られた硬化物について、下記方法によりガラス転移温度、及び熱線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
【0137】
(反り防止層付き再構築ウェハの作製)
上記で得られた再構築ウェハ(A)の裏面(仮止めされたシリコンウェハと反対側の面)に、上記で得られた硬化性フイルムを貼り合わせ、再度加圧しながら150℃で2時間硬化させて、反り防止層(硬化物)を形成させた。PETフイルムを介して仮止めさせていたシリコンウェハを取り除き、図3(e)に示される裏面に反り防止層を形成させた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を得た。
【0138】
比較例3、4
表2に記載の処方の硬化性組成物を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、裏面に反り防止層を形成させた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を得た。
【0139】
[評価]
上記実施例、比較例で得られた硬化物、反り防止層付き再構築ウェハ(B)について、以下の評価を行った。
【0140】
(ガラス転移温度(Tg)、Tgより低い温度領域での熱線膨張係数(α1)、Tgより高い温度領域での熱線膨張係数(α2))
上記実施例、比較例で得られた硬化性フイルムの硬化物(比較例1、3、4の場合は硬化性組成物の硬化物)のガラス転移温度、及び熱線膨張係数は、下記条件で測定した。尚、いずれも2nd-heatingでの測定値を採用した。結果を表1、2に示す。
試験片サイズ:初期長さ10mm×幅3.5mm×厚み0.035mm
測定装置:熱機械的分析装置(Exstar TMA/SS7100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)
測定モード:引張、定荷重測定(40mN)
測定雰囲気:窒素
温度条件:1st-heating -60℃から120℃、5℃/min
cooling 120℃から-60℃、20℃/min
2nd-heating -60℃から220℃、5℃/min
【0141】
(反り防止性)
上記実施例、比較例で得られた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を平板上に置いたときの、中心部とエッジ部の平板からの高さの差を「反り」とした。平板の温度を室温(20℃)、100℃、200℃、又は250℃に制御し、それぞれの温度における「反り」を測定した。「反り」の数値が全ての温度において200μm以下のとき、反り防止効果の評価を「○」、いずれかの温度において200~1000μmのとき、反り防止効果の評価を「△」、1000μを超えるとき、反り防止効果の評価を「×」とした。結果を表1、2に示す。
【0142】
(ビア形成)
上記実施例、比較例で得られた反り防止層付き再構築ウェハ(B)を、UV-YAGレーザーを用いたレーザー加工機にて60μmφの開口部を形成した。形成後、ビア底の状態を顕微鏡観察し、スカム等の有無を確認した。スカム等の異物が観察されなかった場合を評価「○」、わずかに異物が観察された場合を「△」、多くの異物が観察された場合を「×」とした。結果を表1、2に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
<エポキシ化合物>
・YD-128:ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(エポキシ当量190、粘度13600mPa・s/25℃)、エポキシ当量188.6、新日鉄住金化学(株)製
・セロキサイド2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量130、(株)ダイセル製
・EXA-4850-150:変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ当量:433、商品名「EPICLON EXA-4850-150」、DIC社製
・EXA-4850-1000:下記式(ii-1)で表される変性エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ当量:350、商品名「EPICLON EXA-4850-1000」、DIC社製
【化5】
<硬化剤>
・リカシッドMH-700F:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、酸無水物基当量164.5、新日本理化(株)製
・リカシッドHF-08:脂環族酸無水物とポリアルキレングリコ-ルとのエステル(ジカルボン酸)、カルボキシル基当量672.7、新日本理化(株)製
・TD2091:フェノールノボラック、水酸基当量104.0、DIC社製
・TETA:トリエチルテトラミン、アミン当量23.4、三井化学ファイン(株)製
・D-400:ポリオキシアルキレンジアミン、アミン当量107.0、三井化学ファイン(株)製
<水酸基含有化合物>
・EG:エチレングリコール、和光純薬工業(株)製
<溶剤>
・2-ブタノン、和光純薬工業(株)製
<硬化促進剤>
・U-CAT 12XD:特殊アミン型触媒、サンアプロ(株)製
・TPP:トリフェニルホスフィン、和光純薬工業(株)製
<フィラー>
・シリカフィラー:粒子径3μm以下、日本電気硝子(株)製
<多孔性支持体>
・ガラスクロス:空隙率:62vol%、坪量24g/m2、熱線膨張係数:3ppm/k、厚み25μm、商品名「1037」、東洋紡(株)製
【符号の説明】
【0146】
10a 反り防止層を有しない半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)
10b 反り防止層を有する半導体パッケージ(ファンアウトパッケージ)
11 封止材
12 半導体チップ
13 配線層(再配線層)
14 反り防止層
20 半導体ウェハ(再構築ウェハ)
30 反り防止層を有する再構築ウェハ
31 基板(ウェハ又はパネル)
32 仮止めテープ
33 硬化性フイルム
34 表面平坦化用基板
図1
図2
図3