IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 三和テッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図1
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図2
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図3
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図4
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図5
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図6
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図7
  • 特許-山形鋼材の研磨装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】山形鋼材の研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/10 20060101AFI20221110BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20221110BHJP
   B24B 29/06 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B24B7/10 Z
B24B27/00 P
B24B29/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019033270
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020138242
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 雅人
(72)【発明者】
【氏名】上原 勇希
(72)【発明者】
【氏名】黒川 剛士
(72)【発明者】
【氏名】島田 喜明
(72)【発明者】
【氏名】新貝 昌大
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122371(JP,A)
【文献】特開昭63-068353(JP,A)
【文献】特開平04-343656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/10
B24B 27/00
B24B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
稜部で互いに直角に接する第1及び第2の山側面を有する山形鋼材の当該山側面を長手方向に移動しつつ研磨するための装置であって、
前記山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在の走行体と、当該走行体に結合され前記第1及び第2の山側面を研磨する本体とを具備し、
前記走行体は、前記第1及び第2の山側面にそれぞれ吸着する磁石車輪を具備し、当該磁石車輪を転動させることによって前記山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在に構成され、
前記本体は、前記走行体に結合される支持枠と、前記第1及び第2の山側面にそれぞれ接するように前記支持枠に一対ずつ支持される回転研磨ブラシと、前記支持枠に支持される駆動装置と、当該駆動装置の回転を前記回転研磨ブラシに伝えるように前記支持枠に支持される伝動機構とを具備することを特徴とする山形鋼材の研磨装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、作業者が握って前記本体を前記走行体と共に山形鋼材の長手方向に移動させるためのハンドルを具備することを特徴とする請求項1に記載の山形鋼材の研磨装置。
【請求項3】
前記支持枠は、前記山形鋼材の第1の山側面に沿う第1の支持部と、第2の山側面に沿う第2の支持部とを具備し、
前記回転研磨ブラシは、ブラシ毛の先端が前記第1又は第2の山側面に接するように、その回転軸を前記第1又は第2の山側面に垂直に向けて、それぞれ前記第1又は第2の支持部に回転自在に支持されることを特徴とする請求項1に記載の山形鋼材の研磨装置。
【請求項4】
前記各一対の前記回転研磨ブラシは、ブラシ毛の先端を前記第1又は第2の山側面に当接させつつ相互の間隔を前記山形鋼材の延長方向に対して直交方向に弾性的に変更可能にそれぞれ前記第1又は第2の支持部に支持され、
それによって、前記各一対の研磨ブラシが、前記山形鋼材の第1又は第2の山側面からの突出物を回避しつつ前記第1又は第2の山側面を研磨可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の山形鋼材の研磨装置。
【請求項5】
前記各一対の回転研磨ブラシは、前記第1又は第2の支持部にそれぞれ一対の揺動部材を介して支持され、
前記一対の揺動部材は、先端側の相互間隔を弾性的に変更できるように、基端側において前記第1又は第2の山側面に垂直な回転軸により前記支持部に所定角度揺動自在に枢支され、
前記各一対の回転研磨ブラシは、それぞれ前記揺動部材の先端側に軸支され、それによって相互の間隔を弾性的に変更可能に構成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の山形鋼材の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装前のケレン等の目的で、山形鋼材の山側面をその長手方向に移動しながら研磨する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ドリルドライバ型の本体にカップ型ブラシを装着したケレン機として、特許文献1に記載されたものが知られている。
一方、大波パネルで構成された大型建物の壁面を塗装前に清掃するケレン装置のキャリッジとして、壁面に吸着するマグネットローラを備えたものが特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-231058号公報
【文献】特開昭62-298474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載されたものは、いずれも山形鋼材の研磨を効率的に行うことができる装置ではない。
したがって、本発明は、山形鋼材の山側面をその長手方向に移動しながら比較的小さな力で効率的に研磨することができる装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の研磨装置1は、走行体2と、これに支持される本体3とを具備する。走行体2は、山形鋼材51の第1及び第2の山側面53,54にそれぞれ吸着する磁石車輪11,12,19を具備し、この磁石車輪11,19を転動させることによって山形鋼材51の山側面53,54に沿って長手方向に移動自在である。本体3は、走行体2に結合される支持枠28と、第1及び第2の山側面53,54にそれぞれ接するように支持枠28に支持される少なくとも一対の回転研磨ブラシ23,24,25,26と、支持枠28に支持される駆動装置27と、この駆動装置27の回転をブラシ23,24,25,26に伝えるように支持枠28に支持される伝動機構とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の研磨装置によれは、山形鋼材51の2つ山側面53,54に磁石車輪11,19を吸着させ、ブラシ23,24,25,26を2つの山側面53,54に圧接させながら、山形鋼材51の長手方向に移動させて2つの山側面53,54を同時に効率的に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る研磨装置の側面図である。
図2図1の研磨装置における走行体の側面図である。
図3図2の走行体の平面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5図1の研磨装置における本体の側面図である。
図6図5の本体の反対側面図である。
図7図5の本体の平面図である。
図8図1の研磨装置の使用状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
研磨装置1による研磨対象である図1に示す山形鋼材51は、例えば鉄道線路の架線柱として建てられたトラス支柱の4つの主柱材を構成する山形鋼材である。
【0009】
山形鋼材51は、稜部52で互いに直角に接する第1及び第2の山側面53,54を有する。研磨装置1は、山形鋼材51の山側面53,54に沿って長手方向(以下、この方向を上下方向、その直交方向を水平方向あるいは左右方向、山側を後方、谷側を前方として説明するが、使用状況に応じ、これらの方向に限定されるものではない。)に移動しつつ、左右2つの山側面53,54を同時に研磨する装置である。
【0010】
図1に示すように、研磨装置1は、山形鋼材51の山側面53,54に沿って長手方向に移動自在の走行体2と、この走行体2に支持される本体3とを具備する。
【0011】
図2ないし図4によく示すように、走行体2は、上下2つの枠体4,5と、両枠体4,5間を上下に連結する一対の連結板6と、上部枠体4に連繋して下方へ延びるブラケット7と、下部枠体5に固着されるクランプ金具8とを具備する。
【0012】
図5~7によく示すように、本体3は、山形鋼材51の各山側面53,54を研磨する各一対の研磨ブラシ23・24、25,26と、それの駆動装置27と、両者を結合する支持枠28とを具備する。
【0013】
図1ないし図4を参照して走行体2についてさらに詳しく説明する。走行体2を構成する上部枠体4は、図3によく示すように、一対のアーム部9と、これらアーム部9の基端間を接続する連結部10とを有する。一対のアーム部9は、それぞれ山形鋼材51の山側面53,54に沿うように互いに直交方向に延びる。連結部10は、山形鋼材51の稜部52に対向する。
【0014】
アーム部9の先端部には、磁石車輪11が、山形鋼材51の山側面53,54に上下方向に転動できるように支持される。連結部10の内側には、山形鋼材51の稜部52の両縁に沿って上下方向に転動できるように、双輪の磁石車輪12が支持される。いずれの磁石車輪11,12も吸着力の入り切り操作が可能である。
【0015】
連結部10の外側に、ブラケット7の上端部が、相互に前後方向に接近離反自在に接続される。連結部10とブラケット7との間は、連結軸13により相互に接近離反自在に接続され、圧縮ばね14により互いに接近する方向に付勢される。ばね14の圧力は、ノブ15aを備えた調整ねじ15により調整可能である。アーム部9の基端側に固着された一対のガイド板16がブラケット7を摺動させて、その相対移動方向を規制する。
【0016】
図4によく示すように、走行体2を構成する下部枠体5は、上部枠体4と概略同構造で、それぞれ山形鋼材51の山側面53,54に沿うように互いに直交方向に延びる一対のアーム部17と、これらアーム部17の基端間を接続する連結部18とを有する。連結部18は、山形鋼材51の稜部52に対向する。
【0017】
アーム部17の先端部には、磁石車輪19が、山形鋼材51の山側面53,54に上下方向に転動できるように支持される。磁石車輪19は吸着力の入り切り操作が可能である。
【0018】
上部枠体4と下部枠体5とは、アーム部9,17の先端において連結板6で結合される。連結部18の外側に、駆動装置27のハンドル部27aを抱持するクランプ金具8が取り付けられる。
【0019】
ブラケット7は、後部にハンドル21を具備し、下端には、本体3に結合される脚部22を具備する。したがって、走行体2は、ブラケット7と、クランプ金具8とで本体3に接続される。
【0020】
次に図1図5~7を参照して、本体3を説明する。図7によく示すように、本体3は、山形鋼材51の第1の山側面53に接する一対の研磨ブラシ23,24と、第2の山側面54に接する一対の研磨ブラシ25,26と、これらの研磨ブラシ23,24,25,26の駆動装置27と、この駆動装置27と研磨ブラシ23,24,25,26とを結合する支持枠28とを具備する。
【0021】
図示の実施形態において、駆動装置27は、市販のコードレスディスクグラインダを適用したものであるが、これに限定されるものではない。駆動装置27は、図7によく示すように、上下方向に延びるハンドル部27a、その上部のヘッド部27b、ヘッド部27bから前後方向に突出する出力軸であるスピンドル27c(図7)を有する。図4に示すように、駆動装置7は、ハンドル部27aにおいてスペーサ20を介してクランプ金具8により走行体2に接続される。
【0022】
本体3は、スペーサ20を支点として前後方向に揺動できるように走行体2に結合されている。したがって、調整ねじ15を締めてばね14を圧縮すると、本体3の上部が前方へ揺動し、ブラシ23・24、25,26が山側面53,54に接触する圧力が増大し、緩めるとその圧力が減少する。
【0023】
図5図7によく示すように、第1の山側面53を研磨するための研磨ブラシ23,24は、カップ型ブラシで、先端を第1の山側面53に向け、揺動部材29,30を介して支持枠28に支持される。図6図7によく示すように、同様に、第2の山側面54を研磨するための研磨ブラシ25,26は、揺動部材31,32を介して支持枠28に支持される。
【0024】
図7に示すように、支持枠28は、山形鋼材51の第1、第2の山側面53,54に沿うように概略90°に屈曲した外側軸受板33と、これと同様に概略90°に屈曲し、外側軸受板33と前後に平行に対向するように配置される内側軸受板34とを具備する。
【0025】
外側軸受板33は、山形鋼材51の第1、第2の山側面53,54に沿う一対の支持板部33a,33bと、これらの後端部間を接続する接続板部33cを具備する。
【0026】
内側軸受板34は、山側面53,54に沿う一対の支持板部34a,34bと両者の後端部間を接続する接続板部34cとを具備する。
【0027】
外側軸受板33と内側軸受板34は、接続板部33c,34cの間に駆動装置27の頭部を挟む状態で、一体に駆動装置27に固着される。
【0028】
揺動部材29,30は、上部において研磨ブラシ23,24の軸23a、24aを支承し、下部において軸29a,30aで外側軸受け板33の一方の軸受け板部33aに揺動自在に支承される。揺動部材29,30は、上端部においてばね35で接続され、これにより上部同士が接近する方向に回転付勢される。
【0029】
同様に、揺動部材29,30は、上部において研磨ブラシ25,26の軸25a、26aを支承し、下部において軸31a,32aで外側軸受け板33の他方の軸受け板部33bに揺動自在に支承される。揺動部材31,32は、上端部においてばね36で接続され、これにより上部同士が接近する方向に回転付勢される。軸受け板部33bは、軸受け板部33aより高い位置まで延びており、揺動部材31,32は、揺動部材29,30より高い位置において軸受け板部33bに支持されている。このため、稜部側の研磨ブラシ24,26が内側へ揺動しても相互に衝突して動作が妨げられることがない。
【0030】
したがって、各一対のブラシ23・24,25・26が、山形鋼材51上に突出しているボルト・ナット55(図1)などの突出物に到達すると、相互間隔を弾性的に開きながらこれを通過した後再び接近し、これによりボル・ナット55などの突出物の周りを円滑に研磨することができる。大型の1つの研磨ブラシを用いた場合には、突出物の周りをきれいに研磨することができない
【0031】
なお、揺動部材29,30,31,32の揺動範囲は、いずれもストッパ37(図1,5,6)で所定角度に規制される。
【0032】
図1図5において、ブラシ23・24には、駆動装置27の出力軸に固着された傘歯車38、歯車39,40、ベルト41等からなる伝動機構を介して駆動装置27の出力軸の回転が伝えられる。また、ブラシ25,26には、図6において、傘歯車38、歯車42,43、ベルト44等からなる伝動機構を介して駆動装置27の出力軸の回転が伝えられる。なお、各一対のブラシ23・24、25・26は、上部が互いに外向きに回転するように設定される。
【0033】
研磨装置1を用いて、例えば図8に示すように、垂直のトラス支柱Tを構成する山形鋼材51の山側面53,54を研磨する場合には、これを上方からトルクリールRのワイヤに吊り、装置の自重の一部をトルクリールRに負担させて上下動させることにより作業を進めることができる。例えば、一方の手で走行体3のハンドル21を握り、他方の手で駆動装置27のハンドル部27aを握って研磨装置1を山形鋼材51の山側面53,54に向け、磁石車輪11,12,19を山側面53,54又は陵部52の縁に吸着させる。駆動装置27のスイッチを入れ、ブラシ23,24,25,26を回転させ、研磨装置1を手動にて山側面53,54に沿って上下に移動させて研磨する。山側面53,54の途上にボルト・ナット55等が突出している場合、下方から上方へ向けてブラシ23,24,25,26を移動させると、これを支持する揺動部材29・30,31・32の上部が互いに離れる方向へ揺動して各対のブラシ23・24,25・26の相互間隔を弾性的に開きながら、ボルト・ナット55などの突出物の周りを研磨し、これを通過した後再び揺動部材29・30,31・32の上部が接近し、ブラシ23・24,25・26でボルト・ナット55などの突出物の周りを円滑に研磨できる。
【0034】
例えば、トラス支柱の上方に係止したトルクリールから引き出されたワイヤの下端に研磨装置1を吊り、その自重の一部をトルクリールに負担させながら手動にて研磨装置1を移動させれば作業負荷を軽減することもできる。
本発明は、上記実施形態だけでなく、例えば横方向に配設されたビーム等に用いられる山形鋼材への使用など、他の種々の設置形態の山形鋼材に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 研磨装置
2 走行体
3 本体
4 上部枠体
5 下部枠体
6 連結板
7 ブラケット
8 クランプ金具
9 アーム部
10 連結部
11 磁石車輪
12 磁石車輪
13 連結軸
14 圧縮ばね
15 調整ねじ
15a ノブ
16 ガイド板
17 アーム部
18 連結部
19 磁石車輪
20 スペーサ
21 ハンドル
22 脚部
23 ブラシ
23a 軸
24 ブラシ
24a 軸
25 ブラシ
25a 軸
26 ブラシ
26a 軸
27 駆動装置
27a ハンドル部
27b ヘッド部
27c 出力軸
28 支持枠
29 揺動部材
29a 軸
30 揺動部材
30a 軸
31 揺動部材
31a 軸
32 揺動部材
32a 軸
33 外側軸受け板
33a 軸受け板部
33b 軸受け板部
33c 接続板部
34 内側軸受け板
35 ばね
36 ばね
37 ストッパ
38 傘歯車
39 歯車
40 歯車
41 ベルト
42 歯車
43 歯車
51 山形鋼材
52 陵部
53 山側面
54 山側面
55 ボルト・ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8