(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】通信管理装置、通信管理システム、通信管理方法、および通信管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20221110BHJP
H04W 76/50 20180101ALI20221110BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20221110BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221110BHJP
B64D 25/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W76/50
H04W84/00 110
B64C39/02
B64D25/00
(21)【出願番号】P 2019064903
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】318002806
【氏名又は名称】HAPSモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】筒井 竜志
(72)【発明者】
【氏名】蔡 叔達
(72)【発明者】
【氏名】木村 潔
(72)【発明者】
【氏名】乾 千乗
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-78069(JP,A)
【文献】特開2019-9675(JP,A)
【文献】特開2006-82774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
B64C 39/02
B64D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局を管理する基地局管理装置と通信する飛行体に備えられる通信管理装置であって、
前記基地局管理装置との間で、前記飛行体の機体の制御信号または前記飛行体の飛行情報を送受信する第1通信部と、
前記基地局として複数の無線端末同士の通信を提供する第2通信部と、
前記第1通信部の異常、または、前記飛行体の飛行状態の異常が発生したことを示す異常情報を取得する取得部と、
前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記第2通信部を介して前記異常情報を前記基地局管理装置に送信する異常報告部と、
を備えることを特徴とする通信管理装置。
【請求項2】
前記第1通信部により受信した前記制御信号に従って前記飛行体の機体を制御する機体制御部、
をさらに備え、
前記機体制御部は、前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記制御信号による機体の制御をオフにし、前記異常情報が取得された場合の飛行モードとしてあらかじめ定められた制御である自律飛行モードにより前記機体を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の通信管理装置。
【請求項3】
前記第1通信部と、前記第2通信部と、前記取得部と、前記機体制御部とは、内部ネットワークで相互に接続されており、
前記異常報告部は、前記内部ネットワークの外部に備えられており、
前記取得部は、前記異常情報を取得した場合に、緊急時用の回線を用いて前記異常報告部に前記異常情報を送信し、
前記異常報告部は、前記取得部から前記異常情報を受信した場合に、前記緊急時用の回線を用いて、前記第2通信部を介して前記異常情報を前記基地局管理装置に送信すること、
を特徴とする請求項2に記載の通信管理装置。
【請求項4】
前記第1通信部による通信の異常を検知する検知部と、
前記飛行状態を診断する診断部と、
をさらに備え、
前記取得部は、
前記検知部により前記第1通信部による通信の異常が検知された場合、または、前記診断部により前記飛行状態が異常であると診断された場合に、前記検知部または前記診断部から前記異常情報を取得すること、
を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の通信管理装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記基地局管理装置により前記第1通信部による通信の異常が検知された場合、または、前記診断部により前記飛行状態が異常であると診断された場合に、前記基地局管理装置から前記異常情報を取得すること、
を特徴とする請求項4に記載の通信管理装置。
【請求項6】
前記機体制御部は、前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記機体制御部による機体の制御をオフにし、前記自律飛行モードとして、前記機体の飛行高度を上昇する制御、前記機体を所定の安全空域に移動する制御、前記機体を所定の空港に帰還させる制御、前記機体を地上に着地させる制御、前記機体を海上に着水させる制御のうちいずれか1つを行うこと、
を特徴とする請求項2または3に記載の通信管理装置。
【請求項7】
前記自律飛行モードとして実行する複数の制御の順序をランク付けする制御条件を記憶する記憶部、
をさらに備え、
前記機体制御部は、前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記制御条件が示す順序に従って前記機体を制御すること、
を特徴とする請求項2~3のいずれか1つに記載の通信管理装置。
【請求項8】
前記記憶部は、実行する順序として、前記機体の飛行高度を上昇する制御、前記機体を所定の安全空域に移動する制御、前記機体を所定の空港に帰還させる制御、前記機体を地上に着地させる制御、前記機体を海上に着水させる制御の順に定めた制御条件を記憶し、
前記機体制御部は、前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記制御条件が示す順序に従って前記機体を制御すること、
を特徴とする請求項7に記載の通信管理装置。
【請求項9】
複数の基地局を管理する基地局管理装置と、飛行体に備えられる通信管理装置とを含む通信管理システムであって、
前記通信管理装置は、
前記基地局管理装置との間で、前記飛行体の機体の制御信号または前記飛行体の飛行情報を送受信する第1通信部と、
前記基地局として複数の無線端末同士の通信を提供する第2通信部と、
前記第1通信部の異常、または、前記飛行体の飛行状態の異常が発生したことを示す異常情報を取得する取得部と、
前記取得部により前記異常情報が取得された場合に、前記第2通信部を介して前記異常情報を前記基地局管理装置に送信する異常報告部と、
を備えることを特徴とする通信管理システム。
【請求項10】
複数の基地局を管理する基地局管理装置と通信する飛行体に備えられる通信管理装置で実行される通信管理方法であって、
前記基地局管理装置との間で、前記飛行体の機体の制御信号または前記飛行体の飛行情報を送受信する第1通信ステップと、
前記基地局として複数の無線端末同士の通信を提供する第2通信ステップと、
前記第1通信ステップの異常、または、前記飛行体の飛行状態の異常が発生したことを示す異常情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより前記異常情報が取得された場合に、前記第2通信ステップを介して前記異常情報を前記基地局管理装置に送信する異常報告ステップと、
を含むことを特徴とする通信管理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の基地局を管理する基地局管理装置との間で、前記基地局管理装置と通信する飛行体の機体の制御信号または前記飛行体の飛行情報を送受信する第1通信機能と、
前記基地局として複数の無線端末同士の通信を提供する第2通信機能と、
前記第1通信機能の異常、または、前記飛行体の飛行状態の異常が発生したことを示す異常情報を取得する取得機能と、
前記取得機能により前記異常情報が取得された場合に、前記第2通信機能を介して前記異常情報を前記基地局管理装置に送信する異常報告機能、
として実行することを特徴とする通信管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信管理装置、通信管理システム、通信管理方法、および通信管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信の基地局を高高度に配することにより、基地局の通信エリアは広くなることから、高高度に滞空する航空機に無線局を搭載する高高度プラットフォームとして知られるHAPS(High Altitude Platform System)を用いた通信システムが開発されている。
【0003】
例えば、HAPSの一例となる無人飛行機は、衛星や地上基地局から送信されるGPS(Global Positioning System)などの制御信号より制御されることが多いが、GPS信号の詐称や、無人飛行機を管理するコンピュータへのハッキング(Hacking)などにより、無人飛行機が乗っ取られて不正に操作される事態も想定される。
【0004】
そこで、無人飛行機の乗っ取りによる不正な操作を防止するために、無人飛行機のコントロール元と無人飛行機との間で、極力解読することが不可能な暗号技術に基づいて無線通信を行う方法が開発されている。例えば、少なくとも計算量的安全性を満たす暗号技術を適用することにより情報セキュリティ性の向上を図ることを目的として、複数の無人航空機の間で、情報理論的安全性を保証することが可能な共通の暗号鍵を共有させる方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、乗っ取りなどにより不正に操作されるケース以外にも、無人飛行機と衛星や地上基地局との間の通信に何らかの障害が発生し、無人飛行機を制御できなくなるケースも想定される。
【0007】
そこで、本発明は、不正アクセスによる基地局機能を有するHAPSの機体の乗っ取りや、当該機体の不具合により基地局管理装置から機体制御が不能となった場合に、基地局管理装置において異常の発生を確実に把握することが可能な通信管理装置、通信管理システム、通信管理方法、および通信管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信管理装置は、複数の基地局を管理する基地局管理装置と通信する飛行体に備えられる通信管理装置であって、基地局管理装置との間で、飛行体の機体の制御信号または飛行体の飛行情報を送受信する第1通信部と、基地局として複数の無線端末同士の通信を提供する第2通信部と、第1通信部の異常、または、飛行体の飛行状態の異常が発生したことを示す異常情報を取得する取得部と、取得部により異常情報が取得された場合に、第2通信部を介して異常情報を基地局管理装置に送信する異常報告部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異常が発生した場合に、通信管理装置は、機体の制御信号を送信する第1通信部とは異なる通信部を用いて、基地局管理装置に異常情報を送信するので、基地局管理装置において異常の発生を確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の通信管理システムの構成を示すシステム図である。
【
図2】実施形態1における大型航空機に搭載される通信管理装置を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1における制御条件の一例を示す図である。
【
図4】実施形態1における異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】機体制御部による自律飛行モードへの切替において実行する制御を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る通信システム2の全体構成を示すシステム図である。
【
図7】実施形態2における大型航空機に搭載される通信制御装置を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】実施形態2における小型航空機に搭載される通信制御装置を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態2における異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施形態2における大型航空機による小型航空機の管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施形態2における大型航空機による小型航空機からの管理依頼受信処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】実施形態1および実施形態2における通信管理装置を実現可能なコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の通信管理システムの構成を示すシステム図である。
図1に示す通信管理システム1において、航空の基地局となる大型航空機100は、高高度プラットフォームであるHAPS(High Altitude Platform System)を構成する航空機である。また、大型航空機100は、基地局を管理する基地局管理装置200と無線通信により接続されており、無線端末300aおよび無線端末300b(以下、特に明示する場合を除き無線端末300と総称する。)に対して、基地局として複数の無線端末300同士における無線通信を提供する。基地局管理装置200は、航空の基地局となる大型航空機100および地上の基地局(不図示)を管理する管理装置である。基地局管理装置200は、大型航空機100により無線端末300に提供する通信エリアを割り当て、それに応じて大型航空機100に対して機体を制御したり、大型航空機100から飛行状態や通信の提供状況に関する報告を受信したりする。また、無線端末300は、例えば、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、携帯通信モジュール、IoT(Internet of Things)機器等である。なお、実施形態1において、大型航空機100、基地局管理装置200を1機ずつ、無線端末300を2台図示するが、これに限定されず、さらに複数あってもよい。また、地上の基地局同士は、地上の通信ネットワークを介して互いに接続可能に構成されており、その無線端末300は、その通信網を利用した通信も可能である。
【0012】
大型航空機100は、一定期間、上空を飛行する。例えば、上空は、高度約20kmの高高度であり、一定期間とは、数週間、数か月又は1年等の期間である。大型航空機100は、一例として、ソーラープレーン又はソーラー飛行船等であり、通常の飛行機又は飛行船と比べて長期にわたる飛行が可能になる。大型航空機100が例えば成層圏を飛行する場合、成層圏は気流が安定しているため、大型航空機100は、長期の滞空が可能になる。なお、大型航空機100が飛行する高度は、約20kmに限定されることはなく、20kmよりも高くてもよく低くてもよい。ここで、無線端末300が、従来の地上セルラ方式の携帯端末の場合、基地局と通信可能な技術使用(後述する3GPP)上の距離、例えば、LTEであれば約100kmとなる。この場合には、大型航空機100の高度は、約50km以下になる。
【0013】
また、大型航空機100は、上記の例示(ソーラープレー又はソーラー飛行船)の他に、空中を飛行する機能を有するものであればよく、例えば、飛行機、飛行船、気球、ヘリコプタ及びドローン等である。また、大型航空機100には、各種のセンサ又は各種のカメラを搭載することが可能である。センサの一例としては、これらに限られないが、レーザー測距やドップラーレーダなどによるリモートセンシングを行うことが可能なセンサがある。カメラの一例としては、これらに限られないが、可視光カメラ、赤外線カメラ、地形カメラ(立体視カメラ)がある。大型航空機100は、これらのセンサやカメラの測定結果と、後述する無線端末300の分布を示す情報の取得結果とを基地局管理装置200に送信することにより、基地局管理装置200において大型航空機100に対して適切な通信エリアを割り当てることが可能となる。
【0014】
本実施形態の使用例を以下に示すが、以下の使用例は実施形態2以下で説明する全ての実施形態に共通である。
(1)基地局が設置されていない地域に新たに基地局を設置する場合、後述する通信管理装置110を搭載した大型航空機100を上空に長期滞留させて、無線端末300から無線端末300の位置高度情報を含む通信に関する情報を3次元的に取得する。ここで3次元的に取得するとは、一般的に地上50m以上には地上セルラ方式による通信セルは構築しないところ、地上高50mを超える高度を飛行する無線端末300の通信機能を搭載するドローン、ヘリコプタ、飛行機も検知して、この検知した情報も参考に、基地局設計において、地上基地局だけではなく、HAPSによる地上セルラ方式による3次元セル(地上から一例として高度約1000mまで地上セルラ方式で通信可能な平面だけでなく鉛直方向にも通信カバレッジのあるセル)の構築も検討するためである。これにより、従来、地上基地局ではカバーできていなかった地上高約50m以上の上空であっても、大型航空機100を携帯通信サービス提供のための携帯基地局として常時滞空させることにより、航空用無線を使わずとも地上セルラ方式による無線通信が可能となる。ドローン、ヘリコプタ、飛行機とのIoTを含むデータ通信のみならず、有人飛行であれば、乗員との通話が地上と同等に可能となりえる。また、ドローンであれば、複数のドローンの航空管制や飛行制御にも利用可能となる。
【0015】
(2)大規模地震、津波、大規模土砂崩れ、大規模火山噴火などの広域にわたる大災害が発生して複数の基地局が運用不能な状態になった場合で早期復旧の目途が立たない場合には、早急に臨時基地局の設置が必要となる。この場合、被災者の多い地域など通信環境の回復がいち早く必要なエリアから優先して臨時基地局を設置することが好ましい。臨時基地局としては、衛星回線を基幹ネットワークとのアクセス回線に利用した携帯基地局を可搬できる車両や無線通信装置を備えた係留気球システムなどがある。また、運用可能な携帯基地局からの電波を中継してセルカバレッジを拡大するドローンやエントランス無線装置など各種の方法が考えられる。この場合に、大型航空機100を被災地上空に長期滞留させて、無線端末300から通信に関する情報を取得すると共に、実際のユーザ間の通信にも利用する。また、上記のように大型航空機100にはカメラ等を搭載することが可能であるため、そのカメラで撮影されたリアルタイムを含む画像に基づき、臨時基地局を設置することが可能であるか否か、又はどのようなエリア復旧ソリューションを選択するかなどの判断材料とすることが可能にとなる。例えばカメラ等での画像結果から道路が寸断されているなどの状況がいち早く把握できれば車両は通行できないため、通行可能で基地局が設置可能な別のエリアを探索したり、ドローンやエントランス無線による復旧ソリューションや大型航空機100を主体とした復旧とするかなどいち早く判断したりすることが可能となる。また、図外のデータ処理装置にてカメラで撮影された画像を含む地理情報に無線端末300の位置情報等(無線端末300が通信可能な状態にある。位置情報等には取得した時間も含む)をマッピングすることにより、無線端末300の通信可否の分布状態、その時間的変化から被災状況を、リアルタイムを含む形式で把握することが可能であり、災害対策としても有効な情報になる。
【0016】
(3)山岳事故又は海難事故等が発生した場合、大型航空機100を上空に長期滞留又は周回等させて、遭難者が所有する通信可能な状態にある無線端末300から通信に関する情報及び位置情報等(時間情報含む)を取得する。滑落や雪崩などに遭遇した遭難者は、身動きがとれない可能性が高い(海難事故の場合も同様である)。この場合でも、無線端末300の電源が入っており通信可能な状態になってさえいれば、既存の地上の携帯基地局のエリアカバレッジの圏外であっても、大型航空機100を上空に滞留させることにより、通信管理装置110は、遭難者が所有する無線端末300からの通信に関する情報や位置情報等(時間情報含む)を受信することにより、遭難者を発見することが可能になる。また、大型航空機100に搭載されたカメラで撮影された画像、既存の航空写真、デジタルマップを含む地理情報に、無線端末300の位置情報等をマッピングすることが可能であり、遭難箇所の周囲の状況の把握が容易である。通信管理装置110が有する後述の通信部は通信範囲(一例として、半径約100km)が広いため、捜索ヘリコプタ等で遭難者を捜索する前に上記のマッピング等を行うことにより、捜索範囲を絞り込むことが可能であり、より早期に遭難者を救出することが可能になる。
【0017】
次に、大型航空機100に搭載される通信管理装置110の機能構成について説明する。
図2は、実施形態1における大型航空機100に搭載される通信管理装置110を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。大型航空機100は、通信管理装置110と、コントロールリンクアンテナ140と、フィーダリンクアンテナ150と、サービスリンクアンテナ160と、異常報告部(緊急用UE(User Equipment))170とを備える。
図2に示すように、通信管理装置110は、大型航空機100に備えられる装置であって、制御部120と、記憶部130とを備える。
【0018】
記憶部130は、制御条件データベース131を記憶する。制御条件データベース131には、制御条件が格納されている。ここで、制御条件とは、大型航空機100に異常が発生した場合に、自律飛行モードとして機体を制御する順位を定めた条件である。また、自律飛行モードとは、大型航空機100に異常が発生していない通常の場合に、基地局管理装置200からの指示により制御されていた大型航空機100の機体を、緊急時用に自律飛行する制御としてあらかじめ設定されたプログラムにより制御するモードのことである。
【0019】
図3は、実施形態1における制御条件の一例を示す図である。
図3では、機体を制御する順序としてランク1~ランク5までを定められている。ここで、ランク1~ランク5は、機体の不具合の内容によって機体制御に影響を与える大きさにより高い数値が付与されている。例えば、機体の不具合は、異常情報が示す機体の各種のセンサのセンシングデータ、機器の動作状況、制御の可否を示す情報などに基づいてランクが定められてもよい。また、それぞれ、ランク1には、飛行高度を所定値の飛行高度まで上昇する制御を示す「飛行高度を上昇する」制御が、ランク2には、予め定められた安全空域に移動する制御を示す「安全空域に移動する」制御が、ランク3には、緊急時に着陸地域として予め定められた地上に着地させる制御を示す「地上に着地させる」制御が、ランク5には、緊急時に着水地域として予め定められた海上に着水させる制御を示す「海上に着水させる」制御がそれぞれ対応付けられている。なお、ランク1~ランク5は、大型航空機100の機体制御が容易な順序であってもよいし、緊急事態のランクであってもよい。また、着陸地域や着水地域は複数定められていて、異常が発生した大型航空機100の飛行位置から最も近い着陸地域や着水地域が選択されることとしてもよい。
【0020】
制御部120は、大型航空機100に搭載されたコントロールリンクアンテナ140と、フィーダリンクアンテナ150と、サービスリンクアンテナ160と、異常情報報告部(緊急用UE)170に接続されている。また、制御部120は、第1通信部121と、第3通信部423と、機体制御部124と、管理部125とを備える。
【0021】
第1通信部121は、コントロールリンクアンテナ140を介して、基地局管理装置600とコントロールリンク通信し、大型航空機100の機体に関する情報を送受信する。ここで、コントロールリンクアンテナ140とは、大型航空機100の機体に備えられるアンテナであって、基地局管理装置200との機体に関する情報の通信に使用されるアンテナである。また、コントロールリンク通信とは、基地局管理装置600と大型航空機100との間においてなされる、大型航空機100の制御に係る通信のことであり、大型航空機100にとって、コントロールリンクアンテナ140を用いた通信になる。また、機体に関する情報とは、例えば、基地局管理装置200から大型航空機100に対して送信される機体の制御信号や、大型航空機100から基地局管理装置600に送信される大型航空機100の状態信号などである。また、機体の制御信号とは、機体の操縦制御を示す信号であり、状態信号とは、機体の飛行状態を示す信号であり、それぞれ空中の機体の現在座標、速度、進行方位、機体の傾斜レベルの他、機体の各部の状態や周囲の状況を検知するための各種のセンサによりセンシングされたセンシングデータなどが含まれる。
【0022】
第2通信部122は、フィーダリンクアンテナ150を介して、地上の基地局(不図示)とフィーダリンク通信をしたり、サービスリンクアンテナ160を介して、無線端末300に対してサービスリンク通信を提供したりする。ここで、フィーダリンク通信とは、大型航空機100の機体に備えられるフィーダリンクアンテナ150を用いて、地上の基地局装置(不図示)との間で行われる通信のことである。また、サービスリンク通信とは、大型航空機100に備えられたサービスリンクアンテナ160を用いて、無線端末300に対して複数の無線端末300同士の通信を提供する通信のことである。
【0023】
また、第2通信部122は、外部からの不正アクセスなどによる第1通信部121の通信エラーや故障など異常事態が発生した場合に、異常が発生したことを示す異常情報を基地局管理装置200に送信する。なお、異常情報には、機体の状態を示す状態情報が含まれてもよい。すなわち、第2通信部122は、取得部126により異常情報が取得された場合に、フィーダリンク通信、または、サービスリンク通信を用いて、基地局管理装置200に異常情報を送信する。なお、異常情報は、大型航空機100の状態を示す情報であり、異常が発生していない通常時には、大型航空機100の状態信号は第1通信部121により基地局管理装置200に送信されるものであるが、第1通信部121に異常が発生している場合には、第2通信部122が用いられることで、基地局管理装置200に異常事態を報知することが可能となる。
【0024】
機体制御部124は、第1通信部121により基地局管理装置200から受信した機体の制御信号に従って、大型航空機100の機体を制御する。例えば、機体制御部124は、機体の制御信号が示す座標や速度に従って、進行方向や飛行速度を制御する。また、機体制御部124は、取得部126により大型航空機100に異常が発生したことを示す異常情報が取得された場合、自律飛行モードに切り替えて大型航空機100を制御する。なお、機体制御部124は、自律飛行モードへの切替による制御が実行不能な場合には、異常報告部180にエラーを送信することとしてもよい。
【0025】
管理部125は、大型航空機100により無線端末300に提供されるサービスリンク通信を管理する。例えば、管理部125は、無線端末300との間における通信に関する情報に基づいて、地上の無線端末300の数および位置を取得し、取得した無線端末300の数や位置情報や、通信品質を示す情報などを、第1通信部121を介して基地局管理装置200に送信する。
【0026】
検知部127は、第1通信部121の異常を検知する。例えば、検知部127は、第1通信部121が基地局管理装置200との間で所定の間隔で情報が送受信されているか否かを監視し、所定の間隔で情報が送受信されていないと判定した場合に、異常を検知する。検知部127は、異常を検知した場合、異常情報を取得部126に通知する。
【0027】
診断部128は、大型航空機100の飛行状態を診断する。例えば、診断部128は、所定の間隔で、機体制御部124から飛行情報を取得し、取得した飛行情報を、大型航空機100が、第1通信部121により基地局管理装置200から受信した制御信号と比較する。診断部128は、比較結果が一致する場合は、大型航空機100の飛行状態が正常であると診断し、比較結果が一致しない場合は、大型航空機100の飛行状態に異常があると診断する。診断部128は、大型航空機100の飛行状態に異常があると診断した場合、異常情報を取得部126に通知する。
【0028】
取得部126は、検知部127から第1通信部121の異常情報、または、診断部128から大型航空機100の飛行状態の異常情報の通知を受信することにより、異常情報を取得する。取得部126は、異常情報を取得した場合、取得した異常情報を異常報告部180に送信する。
【0029】
異常報告部180は、大型航空機100に備えられる緊急用UEであって、例えば、スマートフォンなどの端末である。異常報告部180は、制御部120の内部ネットワークから独立しており、通常時は制御部120から情報を受信しないが、制御部120に異常が発生した場合などの緊急時に一部のリカバリーコマンドなどを受け付け可能とすることができる。リカバリーコマンドとは、大型航空機100に発生した異常を復旧するためコマンドであり、上記異常情報が含まれる。具体的には、異常報告部180は、取得部126から、異常情報を受信した場合、受信した異常情報を第3通信部423(
図7を参照。)または第2通信部122を介して、基地局管理装置200に送信する。また、異常報告部180は、機体制御部124による自律飛行モードの実行にエラーが発生した場合にも、基地局管理装置200に異常を送信する。
【0030】
図4は、実施形態1における異常検知処理の流れを示すフローチャートである。検知部127または診断部128は、大型航空機100の異常を検知または診断する(ステップS1)。具体的には、検知部127は、第1通信部121の異常を検知し、検知した異常を示す異常情報を取得部126に送信する。または、診断部128は、大型航空機100の飛行状態の異常を診断し、診断した異常を示す異常情報を取得部126に送信する。
【0031】
取得部126は、異常情報を取得する(ステップS2)。具体的には、取得部126は、検知部127または診断部128から異常情報を受信することにより、異常情報を取得する。取得部126は、ステップS2において取得した異常情報を異常報告部180に送信する(ステップS3)。異常報告部180は、ステップS3において受信した異常情報を第3通信部423または第2通信部122を介して基地局管理装置200に送信する(ステップS4)。機体制御部124は、基地局管理装置200による指令により制御していた機体制御を、自律飛行モードに切り替える(ステップS5)。
【0032】
図5は、機体制御部124による自律飛行モードへの切替において実行する制御を選択する処理の流れを示すフローチャートである。機体制御部124は、取得部126から異常情報を取得する(ステップS11)。機体制御部124は、制御条件データベース131に格納されている制御条件に従って、ステップS12~ステップS15を判定する。例えば、制御条件として、
図3に示すランク1~ランク5が実行順序として定められている場合、機体制御部124は、ランク1が示す最初の制御「飛行高度を上昇する」を実行可能であるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、機体制御部124は、異常情報が示す機体の各種のセンサのセンシングデータ、機器の動作状況、制御の可否を示す情報などから、どのランク1~ランク4のいずれに該当するかを判定し、該当するランクに対応付けられている制御を行う。機体制御部124は、ランク1を実行可能であると判定した場合は(ステップS12:Yes)、大型航空機100の飛行高度を上昇する制御を実行する(ステップS16)。機体制御部124は、ランク1を実行不可であると判定した場合は(ステップS12:No)、ランク2が示す2番目の制御「安全空域に移動する」を実行可能であるか否かを判定する(ステップS13)。機体制御部124は、ランク2を実行可能であると判定した場合は(ステップS13:Yes)、大型航空機100を安全空域に移動する制御を実行する(ステップS17)。機体制御部124は、ランク2を実行不可であると判定した場合は(ステップS13:No)、ランク3が示す3番目の制御「空港に帰還させる」を実行可能であるか否かを判定する(ステップS14)。機体制御部124は、ランク3を実行可能であると判定した場合は(ステップS14:Yes)、大型航空機100を空港に帰還させる制御を実行する(ステップS17)。機体制御部124は、ランク2を実行不可であると判定した場合は(ステップS14:No)、ランク4が示す4番目の制御「地上に着地させる」を実行可能であるか否かを判定する(ステップS15)。機体制御部124は、ランク4を実行可能であると判定した場合は(ステップS15:Yes)、大型航空機100を地上に着地させる制御を実行する(ステップS19)。一方、機体制御部124は、ランク4を実行不可であると判定した場合は(ステップS15:No)、異常報告部180にエラーを通知する(ステップS20)。なお、異常報告部180は、ステップS20において、機体制御部124からエラーを受信した場合、基地局管理装置200に大型航空機100における自律飛行モードによる制御が不能であることを示す情報を送信する。
【0033】
このように、実施形態1の通信管理システム1によれば、異常報告部180は、取得部126から異常情報を受信した場合、第3通信部423または第2通信部122を介して基地局管理装置200に異常情報を送信するので、第1通信部121に異常が発生した場合であっても、基地局管理装置200は大型航空機100の異常を把握することができる。
【0034】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る通信システム2の全体構成を示すシステム図である。
図6に示す通信システム2は、大型航空機400aおよび大型航空機400bと、小型航空機500a~小型航空機500cと、無線端末300a~無線端末300dと、基地局管理装置600とを含む(以下、特に明示する場合を除き、大型航空機400aおよび400bを大型航空機400と総称し、小型航空機500a~小型航空機500cを小型航空機500と総称し、無線端末300a~無線端末300cを無線端末300と総称する。)。また、大型航空機400は、基地局管理装置600との間で双方向通信し、小型航空機500は、無線端末300に、複数の無線端末300同士での通信を可能とする通信を提供する。大型航空機400は、小型航空機500を無線端末300に提供する通信の中継機として、機体の制御や通信の制御を管理する。
【0035】
図7は、実施形態2における大型航空機400に搭載される通信管理装置410を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。
図7に示すように、大型航空機400は、通信管理装置410と、コントロールリンクアンテナ140と、フィーダリンクアンテナ150と、サービスリンクアンテナ160と、レーザー通信機能部170と、異常報告部(緊急用UE)180とを備える。また、通信管理装置410は、制御部420と、記憶部130とを備える。制御部420は、第1通信部421と、第2通信部122と、第3通信部423と、機体制御部124と、管理部425と、取得部426とを備える。なお、実施形態1と同様の機能および構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
第1通信部421は、コントロールリンクアンテナ140を介して、基地局管理装置600とコントロールリンク通信し、大型航空機400の機体に関する情報を送受信する。また、機体に関する情報には基地局管理装置600から大型航空機100に対して送信される機体の制御信号や、大型航空機400から基地局管理装置600に送信される大型航空機400の状態信号に加えて、小型航空機500の状態信号も含まれる。
【0037】
第2通信部422は、フィーダリンクアンテナ150を介して、地上の基地局(不図示)とフィーダリンク通信をしたり、サービスリンクアンテナ160を介して、無線端末300に対してサービスリンク通信を提供したりする。なお、実施形態2においては、
図6に示すように、サービスリンク通信は大型航空機400を中継する小型航空機500により無線端末300に提供される構成を示すが、この場合にあっても、大型航空機400に通信の障害が発生した場合などは、第2通信部422が無線端末300に直接サービスリンク通信することが可能である。
【0038】
第3通信部423は、レーザー通信機能部170を用いて、他の大型航空機400や、小型航空機500と双方向に通信する。例えば、第3通信部423は、小型航空機500との間で小型航空機500の機体に関する情報および通信管理に関する情報を送受信する。ここで、レーザー通信機能部170は、高周波数により広帯域において電波通信よりも高速かつ大容量の通信が可能なレーザー通信を送受信する機能部である。第3通信部423は、例えば、小型航空機500の機体に関する情報として、小型航空機500に小型航空機500に対する機体の制御信号を送信し、小型航空機500から小型航空機500の状態信号を受信する。
【0039】
また、第3通信部423は、他の大型航空機400と所定間隔でレーザー通信機能部170を介して通信する。具体的には、第3通信部423は、所定間隔で送信する信号に対する他の大型航空機400からの応答を受信する。第3通信部423は、他の大型航空機400から当該応答を所定時間以上受信しなかった場合、当該他の大型航空機400に異常が発生したと判定し、大型航空機400の異常を検知する。また、第3通信部423は、他の大型航空機400に異常が発生した場合に、管理部425からの指示に応じて、異常が発生した大型航空機400が管理していた小型航空機500に対して、自機が管理元として小型航空機500を管理する通知を送信してもよい。または、第3通信部423は、異常が発生した大型航空機400が管理していた小型航空機500から管理依頼を受信することとしてもよい。ここで、管理依頼とは、小型航空機500の管理元として小型航空機500を管理する依頼である。
【0040】
管理部425は、小型航空機500の機体の飛行位置や、小型航空機500により無線端末300に提供されるサービスリンク通信などを管理する。例えば、管理部425は、無線端末300の地上における分布情報を取得し、取得結果に基づいて小型航空機500がそれぞれ管轄するサービスリンク通信の提供エリアを割り当て、航空上の配置を決定したり、小型航空機500の飛行位置や旋回エリアを決定したりし、第2通信部422を介して小型航空機500に指示する。具体的には、管理部425は、小型航空機500により無線端末300との間で通信された通信に関する情報に基づいて、地上の無線端末300の数および位置を取得する。また、管理部425は、取得した無線端末300の数および位置に基づいて、無線端末300の分布を取得する。通信に関する情報は、通信品質情報と位置情報とが各無線端末300に対応付けられている。このため、管理部425は、小型航空機500を介して、複数の無線端末300から通信に関する情報を取得することにより、無線端末300の分布を取得することが可能になる。
【0041】
また、管理部425は、第2通信部422を介して、小型航空機500から、小型航空機500によるサービスリンク通信の障害、または、小型航空機500の機体の障害が発生したことを示す情報を受信した場合には、障害が発生した小型航空機500が管轄していたサービスリンクの通信エリアを、大型航空機400が管理する他の小型航空機500に分散して管轄させる。または、管理部425は、複数の小型航空機500にサービスリンク通信エリアを再配分するまでの間、大型航空機400自身が当該サービスリンク通信エリアの通信を管轄することとしてもよい。
【0042】
また、管理部425は、第3通信部423により他の大型航空機400の通信の異常が検知された場合に、異常が発生した大型航空機400により管理されていた小型航空機500を探索し、当該小型航空機500に自機が小型航空機500を管理する通知を、第3通信部423を介して送信する。
【0043】
取得部426は、基地局管理装置600から第1通信部421の異常情報、または、大型航空機400の飛行状態の異常情報の通知を受信することにより、異常情報を取得する。具体的には、基地局管理装置600において、大型航空機400の第1通信部421の異常を検知する機能、または、大型航空機400の飛行状態を診断する機能が備えられており、基地局管理装置600により、第1通信部421の異常が検知、または、大型航空機400の飛行状態の異常が診断された場合には、取得部426は、基地局管理装置600から異常情報を取得する。なお、ここで、基地局管理装置600からの異常情報は第2通信部422、または、第3通信部423を介して受信することとなる。取得部426は、異常情報を取得した場合、取得した異常情報を異常報告部180に送信する。
【0044】
図8は、実施形態2における小型航空機500に搭載される通信制御装置510を含む搭載物の機能構成を示すブロック図である。
図8に示すように、小型航空機500は、通信制御装置510と、レーザー通信機能部530と、サービスリンクアンテナ540とを備える。また、通信制御装置510は、制御部520を備える。
【0045】
第4通信部521は、レーザー通信機能部530を介して、大型航空機400との間で小型航空機500に対する機体の制御信号や、小型航空機500の状態を示す状態信号や、第5通信部222により無線端末300との間で通信された通信に関する情報などを大型航空機400との間で送受信する。また、第4通信部521は、大型航空機400の第2通信部422から、大型航空機400の機体に異常が発生したことを示す異常情報を受信することも可能である。例えば、小型航空機500aを管理する大型航空機400aに異常が発生した場合、第4通信部521は、他の大型航空機400である大型航空機400bから大型航空機400aの異常情報や、大型航空機400bが小型航空機500aを管理する通知などを受信してもよい。または、第4通信部521は、異常が発生した大型航空機400aの近傍を飛行する大型航空機400bに、自機を中継機として管理する依頼を送信することとしてもよい。
【0046】
第5通信部222は、サービスリンクアンテナ540を介して、基地局中継機として複数の無線端末300同士の通信を提供する。例えば、第5通信部522は、無線端末300aから無線端末300bを宛先とする情報を受信し、受信した情報を無線端末300bに送信する。
【0047】
機体制御部523は、第4通信部521により大型航空機400から受信した機体の制御信号に従って、小型航空機500の機体を制御する。例えば、機体制御部523は、機体の制御信号が示す座標や速度に従って、進行方向や飛行速度を制御する。
【0048】
管理部524は、第5通信部522により無線端末300に提供されるサービスリンク通信を管理する。例えば、管理部524は、無線端末300との間で通信された通信に関する情報に基づいて、自機が管轄するサービスリンク通信エリアにおける地上の無線端末300の数および位置を取得し、取得した無線端末300の数および位置を示す情報や、通信品質を示す情報などを、第4通信部521を介して、大型航空機400に送信する。
【0049】
図9は、実施形態2における異常検知処理の流れを示すフローチャートである。取得部426は、大型航空機400の異常情報を取得する(ステップS21)。具体的には、取得部426は、第2通信部422または第3通信部423を介して基地局管理装置600から異常情報を受信することにより、異常情報を取得する。なお、ステップS22~ステップS24までの処理は、実施形態1において説明した異常検知処理のステップS3~ステップS5までの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
次に、実施形態2における、異常が発生している大型航空機400を検知した大型航空機400による小型航空機500の救済処理の流れを説明する。
図10は、実施形態2における大型航空機400による小型航空機500の管理処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図10に示すフローチャートにおいて、大型航空機400bに異常が発生した場合を例に説明する。
【0051】
大型航空機400aは、他の大型航空機400bの異常を検知する(ステップS21)。例えば、大型航空機400aは、他の大型航空機400bと所定間隔でレーザー通信機能部170を介して通信するところ、所定時間以上通信不能となった場合、大型航空機400bに異常が発生したと判定し、異常を検知する。大型航空機400aは、ステップS21において異常を検知した大型航空機400bにより管理されていた小型航空機500cを探索する(ステップS22)。大型航空機400は、ステップS22において探索した小型航空機500cに対して、大型航空機400bの異常発生により大型航空機400aが小型航空機500cを管理する通知を送信する(ステップS23)。ここで、大型航空機400bは、基地局管理装置600にも併せて当該通知を送信する。
【0052】
大型航空機400aは、これまでに管理していた小型航空機500aおよび小型航空機500bに加えて、新たに管理対象となる小型航空機500cを含む小型航空機500の配置を決定する(ステップS24)。大型航空機400aは、小型航空機500a~小型航空機500cそれぞれに小型航空機500a~小型航空機500cに対する機体の制御信号を送信する(ステップS25)。大型航空機400aは、小型航空機500a~小型航空機500cから状態信号を受信する(ステップS26)。大型航空機400aは、基地局管理装置600に大型航空機400aの状態信号および小型航空機500a~小型航空機500cの状態信号を送信する(ステップS27)。なお、異常が発生した大型航空機400bは、一例として
図9に示すように機体の制御を自律飛行モードに切り替えることで、外部からの制御信号に従わず危険回避することとする。
【0053】
次に、大型航空機400bに異常が発生した場合の、小型航空機500の救済処理の他の例を示す。
図11は、実施形態2における大型航空機400による小型航空機500からの管理依頼受信処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図11に示すフローチャートにおいても
図8に示したフローチャートと同様に、大型航空機400bに異常が発生した場合を例に説明する。
【0054】
大型航空機400aは、異常が発生した大型航空機400bに管理されていた小型航空機500cから管理依頼を受信する(ステップS31)。大型航空機400aは、承諾を示す情報を小型航空機500cに送信する(ステップS32)。ここで、大型航空機400aは、承諾を示す情報を小型航空機500cに送信するとともに、基地局管理装置600にも送信する。大型航空機400aは、基地局管理装置600から大型航空機400aに対する機体の制御信号を受信する(ステップS33)。ここで、機体の制御信号には、大型航空機400bの異常に伴い大型航空機400bが新たに管轄する通信エリアを含む情報が含められる。なお、ステップS34~ステップS37までの処理は、
図10のフローチャートにおけるステップS24~ステップS27までの処理と同様であるため説明を省略する。
【0055】
このように、実施形態2による基地局管理装置600は、実施形態1の基地局管理装置200が大型航空機100の異常を把握することができたのと同様に、大型航空機400の異常を把握することができる。更に、実施形態2においては、大型航空機400の第1通信部421の異常を検知する機能、または、大型航空機400の飛行状態の異常を診断する機能を基地局管理装置600に備えたので、大型航空機400の異常を基地局管理装置600において迅速に把握することも可能となる。
【0056】
また、実施形態2によれば、大型航空機400が中継機として小型航空機500を管理する場合であっても、大型航空機400に異常が発生した場合は、小型航空機500は近傍を飛行する他の大型航空機400に管理依頼を要請するので、異常が発生した大型航空機400に管理されていた小型航空機500が管轄する通信エリアに支障を来すことなく異常事態を処理することができる。
【0057】
図10は、実施形態1および実施形態2における通信管理装置110、410を実現可能なコンピュータ20の一例を示すハードウェア構成図である。
図10に示すように、コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、HDD(Hard Disk Drive)24、通信インターフェース(I/F)25、入出力インターフェース(I/F)26、およびメディアインターフェース(I/F)27を備える。
【0058】
CPU21は、ROM23またはHDD24に格納されたプログラムにより動作し、各部の制御を行う。ROM23は、コンピュータ20の起動時にCPU21によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ20のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0059】
HDD24は、CPU21によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェース25は、通信回線を介して外部機器から受信したデータをCPU21に送り、CPU21が生成したデータを、通信回線を介して外部機器に送信する。
【0060】
CPU21は、入出力インターフェース26を介して入力装置を制御する。CPU21は、入出力インターフェース26を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU21は、生成したデータを、入出力インターフェース26を介して出力装置へ出力する。
【0061】
メディアインターフェース27は、記憶媒体28に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM22を介してCPU21に提供する。CPU21は、当該プログラムを、メディアインターフェース27を介して記憶媒体28からRAM22上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記憶媒体28は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)等の光学記憶媒体、磁気記憶媒体、または半導体メモリ等である。
【0062】
コンピュータ20が本実施形態における通信管理装置110、410として機能する場合、コンピュータ20のCPU21は、RAM22上にロードされたプログラムを実行することにより、第1通信部121、421、第3通信部423、422、第2通信部122、機体制御部124、管理部125、取得部126、426、検知部127、診断部128の各機能を実現する。また、HDD24には、制御条件データベース131内のデータが格納される。
【0063】
通信管理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供される。コンピュータ20のCPU21は、これらのプログラムを、メディアインターフェース27を介して上記の記憶媒体から読み取って実行するが、他の例として、外部装置から、通信回線を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0064】
なお、通信管理プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)、Python、Rubyなどのスクリプト言語、C言語、C++、C#、Objective-C、Swift、Java(登録商標)などのコンパイラ言語などを用いて実装できる。
【符号の説明】
【0065】
1、2 通信システム
100、400 大型航空機
110 通信管理装置
120 制御部
121 第1通信部
122 第2通信部
123 第3通信部
124 機体制御部
125 管理部
130 記憶部
140 コントロールリンクアンテナ
150 フィーダリンクアンテナ
160 サービスリンクアンテナ
170 異常報告部
200、600 基地局管理装置
300 無線端末
500 小型航空機
510 通信制御装置
520 制御部
521 第3通信部
522 第4通信部
523 機体制御部
524 管理部