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特許7174690無端駆動装置及び改良された無端駆動装置用の2アーム式張力調整システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】無端駆動装置及び改良された無端駆動装置用の2アーム式張力調整システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20221110BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F02B67/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019507307
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 CA2017050954
(87)【国際公開番号】W WO2018027327
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】62/373,804
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/360,695
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504039362
【氏名又は名称】リテンズ オートモーティヴ パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ライランド ジェフリー ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】フェアウェル ロン
(72)【発明者】
【氏名】ボイズ アンドリュー エム
(72)【発明者】
【氏名】ノイドルフ テルマ
(72)【発明者】
【氏名】デゾウザ-コエーリョ ジェイソン アール
(72)【発明者】
【氏名】アンチャック ジョン
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】保田 亨介
【審判官】平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/061685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン無端駆動装置であって、
クランク軸に結合されたクランク軸プーリーと、
2次駆動装置の軸に結合された2次駆動装置プーリーと、
前記クランク軸プーリー及び前記2次駆動装置プーリーと係合されている無端駆動部材であって、前記無端駆動装置は、前記クランク軸プーリーが前記無端駆動部材を駆動し、前記2次駆動装置プーリーが前記無端駆動部材を駆動せず、前記無端駆動部材の第1の部位の張力が前記無端駆動部材の第2の部位の張力よりも小さい第1のモードと、前記2次駆動装置プーリーが、単独で又は前記クランク軸プーリーと共に前記無端駆動部材を駆動する第2のモードとで作動可能である、無端駆動部材と、
テンショナであって、
第1のアーム枢動軸の周りで枢動可能であり、前記第1のアーム枢動軸から離間する第1のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームであって、前記第1のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の第1の部位と係合するように構成されている、第1のテンショナアームと、
第2のアーム枢動軸の周りで枢動可能であり、前記第2のアーム枢動軸から離間する第2のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームであって、前記第2のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の第2の部位と係合するように構成されている、第2のテンショナアームと、
前記第1及び第2のテンショナアームをそれぞれ第1のフリーアーム方向及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされているテンショナ付勢部材と、
前記第2のフリーアーム方向と反対方向の前記第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパー面と、
を含むテンショナと、
を備え、
前記第2のテンショナアームストッパー面は、使用時、前記第2のテンショナプーリーが前記無端駆動部材と係合するが、前記第2のテンショナアームが、第1の作動条件を通して、前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するように位置決めされており、静的平衡では、前記第2のテンショナアームは、少なくとも前記無端駆動部材によって付与されたトルク及び前記テンショナ付勢部材によって付与されたトルクの組み合わせからなる非ゼロ予負荷トルクを有し、前記予負荷トルクは、前記第2のテンショナアームを前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するように付勢し、約1Nm~約15Nmであり、使用時、前記第2のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材と係合するが、前記第2のテンショナアームは、前記予負荷トルクの反対側に作用する過渡的トルクが前記予負荷トルクの大きさを十分な量だけ超えない限り、前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するようになっており、
第1のテンショナアームストッパーが、前記無端駆動部材の張力が前記第2のテンショナアームを第2のテンショナアームストッパーと係合するように駆動するのに十分である場合に、前記第1のテンショナアームから離間するように位置決めされ、
前記第2のテンショナアームストッパーは、前記無端駆動部材の張力が前記第1のテンショナアームを前記第1のテンショナアームストッパーと係合するように駆動するのに十分である場合に、前記第2のテンショナアームから離間するように位置決めされている、無端駆動装置
【請求項2】
前記無端駆動部材は、約10°~約90°の接触角にわたって前記第1及び第2のテンショナアームプーリーの各々に係合するように構成されている、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項3】
前記テンショナ付勢部材は、圧縮ばねである、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項4】
前記テンショナ付勢部材は、使用時、前記無端駆動部材によって前記第2のテンショナアームに与えられたトルクに対向するトルクを前記第2のテンショナアームに付与するように位置決めされている、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項5】
前記第1のフリーアーム方向と反対方向の前記第1のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第1のテンショナアームストッパー面をさらに備え、
前記第1のテンショナアームストッパー面は、使用時、前記第1のテンショナプーリーが前記無端駆動部材と係合するが、前記第1のテンショナアームが、前記第1の作動条件とは異なる第2の作動条件を通して、前記第1のテンショナアームストッパー面と係合するように位置決めされている、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項6】
前記第1及び第2のテンショナアームストッパーは、使用時、前記第1及び第2のテンショナプーリーが前記無端駆動部材と係合するが、前記第1及び第2のテンショナアームが前記第1及び第2の作動条件とは異なる第3の作動条件を通して前記第1及び第2のテンショナアームストッパー面から離れている、請求項5に記載の無端駆動装置
【請求項7】
前記無端駆動部材を駆動するように位置決めされた2次駆動装置プーリーを含む2次駆動装置があり、
前記無端駆動部材は、前記クランク軸プーリーが前記無端駆動部材を駆動し、前記2次駆動装置が前記無端駆動部材を駆動せず、前記無端駆動部材の第1の部位の張力が前記無端駆動部材の第2の部位の張力よりも小さい第1のモードと、前記2次駆動装置が前記無端駆動部材を駆動する第2のモードとで作動可能な無端駆動装置の一部であり、
前記第1のテンショナプーリーは、前記第1の部位と係合し、前記第2のテンショナプーリーは、前記第2の部位と係合する、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項8】
前記予負荷トルクは、約3Nm~約5Nmである、請求項1に記載の無端駆動装置
【請求項9】
クランク軸によって駆動されるクランク軸プーリー、モータ/発電機ユニット(MGU)プーリー、並びに前記クランク軸プーリー及び前記MGUプーリーの周りで連行される無端駆動部材を含む、エンジン上の無端駆動装置を張力調整するテンショナであって、前記無端駆動装置は、前記クランク軸プーリーが前記無端駆動部材を駆動し、前記MGUプーリーが前記無端駆動部材を駆動せず、前記無端駆動部材の第1の部位の張力が前記無端駆動部材の第2の部位よりも小さい第1のモードで作動可能であり、前記無端駆動部材は、前記MGUプーリーが、単独で又は前記クランク軸プーリーと共に前記無端駆動部材を駆動する第2のモードで作動可能であり、
前記テンショナは、
第1のアーム枢動軸の周りで枢動可能であり、前記第1のアーム枢動軸から離間する第1のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームであって、前記第1のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の前記第1の部位と係合するように構成されている、第1のテンショナアームと、
第2のアーム枢動軸の周りに枢動可能であり、前記第1のアーム枢動軸から離間している第2のアーム枢動軸から離間する第2のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームであって、前記第2のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の第2の部位と係合するように構成されている、第2のテンショナアームと、
前記第1及び第2のテンショナアームをそれぞれ第1のフリーアーム方向及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされているテンショナ付勢部材であって、前記第1のテンショナプーリーは、前記第1のテンショナアーム枢動軸の第1の側に配置され、前記テンショナ付勢部材は、テンショナ付勢力を前記第1のテンショナアーム枢動軸の第2の側に付与するように位置決めされ、前記第2のテンショナプーリーは、前記第2のテンショナアーム枢動軸の第1の側にあり、前記テンショナ付勢部材は、テンショナ付勢力を前記第2のテンショナアーム枢動軸の第2の側で付与するように位置決めされている、テンショナ付勢部材と、
前記第2のフリーアーム方向と反対方向の前記第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパー面と、
を備え、
静的平衡では、少なくとも前記第1及び第2のテンショナアームの構成、前記第1及び第2のテンショナアーム枢動軸の位置、前記第1及び第2のテンショナプーリーの周りの前記無端駆動部材の巻回、及び前記第2のテンショナアームストッパー面の位置に起因して、前記第2のテンショナアームは、少なくとも前記無端駆動部材及び前記テンショナ付勢部材によって付与されたトルクの組み合わせからの非ゼロ予負荷トルクを有し、前記予負荷トルクは、前記第2のテンショナアームを前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するように付勢し、約1Nm~約15Nmであり、使用時、前記第2のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材と係合するが、前記第2のテンショナアームは、前記予負荷トルクの反対側に作用する過渡的トルクが前記予負荷トルクの大きさを十分な量だけ超えない限り、前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するようになっており、
第1のテンショナアームストッパーが、前記無端駆動部材の張力が前記第2のテンショナアームを第2のテンショナアームストッパーと係合するように駆動するのに十分である場合に、前記第1のテンショナアームから離間するように位置決めされ、
前記第2のテンショナアームストッパーは、前記無端駆動部材の張力が前記第1のテンショナアームを前記第1のテンショナアームストッパーと係合するように駆動するのに十分である場合に、前記第2のテンショナアームから離間するように位置決めされている、テンショナ。
【請求項10】
エンジン用無端駆動装置であって、
クランク軸に結合されたクランク軸プーリーと、
2次駆動装置の軸に結合された2次駆動装置プーリーと、
前記クランク軸プーリー及び前記2次駆動装置プーリーと係合されている無端駆動部材であって、前記無端駆動装置は、前記クランク軸プーリーが前記無端駆動部材を駆動し、前記2次駆動装置プーリーが前記無端駆動部材を駆動せず、前記無端駆動部材の第1の部位の張力が前記無端駆動部材の第2の部位の張力よりも小さい第1のモードと、前記2次駆動装置プーリーが、単独で又は前記クランク軸プーリーと共に前記無端駆動部材を駆動する第2のモードとで作動可能である、無端駆動部材と、
テンショナと、
を備え、前記テンショナは、
回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームであって、前記第1のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の前記第1の部位と係合されており、前記第1のテンショナアームは、第1のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である、第1のテンショナアームと、
回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームであって、前記第2のテンショナプーリーは、前記無端駆動部材の前記第2の部位と係合されており、前記第2のテンショナアームは、前記第1のテンショナアーム枢動軸から離間する第2のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である、第2のテンショナアームと、
前記第1及び第2のテンショナアームをそれぞれの第1及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされているテンショナ付勢部材であって、前記第1のテンショナプーリーは、前記第1のテンショナアーム枢動軸の第1の側に配置され、前記テンショナ付勢部材は、テンショナ付勢力を前記第1のテンショナアーム枢動軸の第2の側で付与するように位置決めされており、前記第2のテンショナプーリーは、前記第2のテンショナアーム枢動軸の第1の側にあり、前記テンショナ付勢部材は、テンショナ付勢力を前記第2のテンショナアーム枢動軸の第2の側で付与するように位置決めされている、テンショナ付勢部材と、
前記第1のフリーアーム方向と反対方向の前記第1のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第1のテンショナアームストッパー面と、
前記第2のフリーアーム方向と反対方向の前記第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパー面と、
を含み、
少なくとも前記第1及び第2のテンショナアームの構成、前記第1及び第2のテンショナアーム枢動軸の位置、前記第1及び第2のテンショナプーリーの周りの前記無端駆動部材の巻回、及び前記第2のテンショナアームストッパー面の位置に起因して、前記第2のテンショナアームは、少なくとも前記無端駆動部材及び前記テンショナ付勢部材によって付与されたトルクの組み合わせからの静的平衝での約1Nm~約15Nmの予負荷トルクを有し、前記予負荷トルクは、前記第2のテンショナアームを前記第2のテンショナアームストッパー面と係合するように付勢し、前記無端駆動装置が前記第1又は第2のモードで作動する場合、前記第2のテンショナアームは、前記第2のテンショナアームストッパー面と係合したままであり、前記第1のテンショナアームは、前記第1のテンショナアームストッパー面から離間したままであり、ここでは前記第2のテンショナアーム上の過渡的トルクは、前記予負荷トルクに抗して作用するが前記予負荷トルク未満であり、前記無端駆動装置が前記第1又は第2のモードで作動する場合、前記第1のテンショナアームは、前記第1のテンショナアームストッパー面と係合したままであり、前記第2のテンショナアームは、前記第2のテンショナアームストッパー面から離間したままであり、ここでは前記第2のテンショナアーム上の過渡的トルクは、前記予負荷トルクに抗して作用しかつ前記予負荷トルクを十分に上回る、エンジン用無端駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年11月23日出願の米国出願第15/360,695号の利益を主張しかつ2016年8月11日出願の米国特許仮出願第62/373,804号の利益を主張し、これらの開示内容全体は、引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、無端駆動装置の分野に関し、より詳細には、エンジン及び2アーム式テンショナに加えてモータ/発電機ユニット又は他の2次駆動ユニットを用いる車両用フロントエンジン補機駆動装置用システムに関する。
【0003】
一般的に、車両用エンジンは、フロントエンジン補機駆動装置を使用して、動力をオルタネータ、エアコン圧縮機、ウォーターポンプ、及び様々な他の補機など1又は2以上の補機に伝達する。一部の車両は、ハイブリッド式であり、電動駆動装置及び内燃機関の両方を使用する。このような車両には多くの可能な構成がある。例えば、一部の構成において、電動機は、エンジンが車両を駆動するのを助けるために使用される(すなわち、電動機は、車両の被駆動輪に送られる動力量を一時的に増大するために使用される)。一部の構成において、電動機は、それ自体で車両の被駆動輪を駆動するために使用され、エンジンは、バッテリが十分なレベルに消耗した後にはじめて車両駆動機能を引き受けるために作動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車は燃費向上の観点から好都合であるが、その動作は、フロントエンジン補機駆動装置からのベルトなどの特定の構成要素のより高い応力及び種々の応力につながる可能性があり、これは、これらの構成要素の耐用年数の低下をもたらす可能性がある。ハイブリッド車におけるフロントエンジン補機駆動装置の構成要素の長い耐用年数をもたらすことは好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、エンジン上の無端駆動部材を張力調整するテンショナが提供される。テンショナは、第1のアーム枢動軸の周りで枢動可能であり、第1のアーム枢動軸から離間する第1のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームを含む。第1のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第1のスパンと係合するように構成されている。テンショナは、第2のアーム枢動軸の周りで枢動可能であり、第2のアーム枢動軸から離間する第2のテンショナプーリー軸の周りで回転するように回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームをさらに含む。第2のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第2のスパンと係合するように構成されている。テンショナは、第1及び第2のテンショナアームをそれぞれ第1のフリーアーム方向及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされているテンショナ付勢部材をさらに含む。テンショナは、第2のフリーアーム方向と反対方向の第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパー面をさらに含む。第2のテンショナアームストッパー面は、使用時、第2のテンショナプーリーが無端駆動部材と係合するが、第2のテンショナアームが、作動状態の第1の選択された範囲を通して、第2のテンショナアームストッパー面と係合するように位置決めされている。静的平衡では、第2のテンショナアームは、少なくとも無端駆動部材及びテンショナ付勢部材からの予負荷トルクを有し、予負荷トルクは、第2のテンショナアームを第2のテンショナアームストッパー面と係合するように約1Nm~約15Nmで付勢する。
【0006】
別の態様において、無端駆動装置が提供され、無端駆動装置は、クランク軸、2次駆動装置、クランク軸及び2次駆動装置を接続する無端駆動部材、及びテンショナを含む。テンショナは、回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームを含む。第1のテンショナプーリーは、2次駆動装置の第1の側で無端駆動部材の第1のスパンと係合されている。第1のテンショナアームは、第1のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。テンショナは、回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームをさらに含む。第2のテンショナプーリーは、2次駆動装置の第2の側で無端駆動部材の第1のスパンと係合されている。第2のテンショナアームは、第2のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。テンショナは、第1及び第2のテンショナアームをそれぞれの第1及び第2のフリーアーム方向に付勢するためにテンショナ付勢力を付与するように位置決めされているテンショナ付勢部材と、第2のフリーアーム方向と反対方向の第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパーとをさらに含む。第2のテンショナアームストッパーは、使用時、第2のテンショナテンショナプーリーが無端駆動部材と係合するが、第2のテンショナアームが作動状態の選択された範囲を通して第2のテンショナアームストッパーと係合するように位置決めされている。このテンショナは、
TR/TL>hF2/hF1
であり、式中
TR=TR2-TR3、
=TR4-TR5
TR2=無端駆動部材の第2のスパンの第1の部分によって第2のテンショナプーリーに与えられた力T2の第2のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、
TR3=無端駆動部材の第2のスパンの第2の部分によって第2のテンショナプーリーに与えられた力T3の第2のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、
TR4=無端駆動部材の第1のスパンの第1の部分によって第1のテンショナプーリーに与えられた力T4の第1のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、
TR5=無端駆動部材の第1のスパンの第2の部分によって第1のテンショナプーリーに与えられた力T5の第2のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、
hF1=テンショナ付勢部材によって第1のテンショナアームに与えられた力FLの第1のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、及び
hF2=テンショナ付勢部材によって第2のテンショナアームに与えられた力FLの第2のテンショナアーム枢動軸に対するモーメントアーム、
である。
【0007】
さらに別の態様において、エンジン用無端駆動装置が提供され、無端駆動装置は、クランク軸に結合されたクランク軸プーリー、2次駆動装置のシャフトに結合された2次駆動装置プーリー、並びにクランク軸プーリー及び2次駆動装置プーリーと係合する無端駆動部材を含む。無端駆動装置は、クランク軸プーリーが無端駆動部材を駆動し、2次駆動装置が無端駆動部材を駆動せず、無端駆動部材の第1のスパンの張力が無端駆動部材の第2のスパンの張力よりも小さい第1のモードと、2次駆動装置が無端駆動部材を駆動する第2のモードとで作動可能である。無端駆動装置は、回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する第1のテンショナアームをさらに含む。第1のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第1のスパンと係合されている。第1のテンショナアームは、第1のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。テンショナは、回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する第2のテンショナアームをさらに含む。第2のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第2のスパンと係合されている。第2のテンショナアームは、第2のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。テンショナは、第1及び第2のテンショナアームをそれぞれの第1及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされているテンショナ付勢部材をさらに含む。テンショナは、第1のフリーアーム方向と反対方向の第1のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第1のテンショナアームストッパー面をさらに含む。テンショナは、第2のフリーアーム方向と反対方向の第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第2のテンショナアームストッパー面をさらに含む。第1及び第2のテンショナアームストッパー面は、使用時、無端駆動装置が第1のモードで作動する時間の少なくとも一部で、第2のテンショナアームが第2のテンショナアームストッパー面と係合しかつ第1のテンショナアームが第1のテンショナアームストッパー面から離間しており、無端駆動装置が第2のモードで作動する時間の少なくとも一部で、第2のテンショナアームが第2のテンショナアームストッパー面から離間しかつ第1のテンショナアームが第1のテンショナアームストッパー面と係合するように位置決めされている。
【0008】
さらに別の態様において、エンジン用無端駆動装置が提供され、エンジン用無端駆動装置は、クランク軸に結合されたクランク軸プーリー、2次駆動装置のシャフトに結合された2次駆動装置プーリー、クランク軸プーリー、及び2次駆動装置プーリーと係合されている無端駆動部材を含む。無端駆動装置は、クランク軸プーリーが無端駆動部材を駆動し、2次駆動装置が無端駆動部材を駆動せず、無端駆動部材の第1のスパンの張力が無端駆動部材の第2のスパンの張力よりも小さい第1のモードと、2次駆動装置が無端駆動部材を駆動する第2のモードとで作動可能である。テンショナは、第1のテンショナアーム、第2のテンショナアーム、及びテンショナ付勢部材を含む。第1のテンショナアームは、回転可能に取り付けられた第1のテンショナプーリーを有する。第1のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第1のスパンと係合されている。第1のテンショナアームは、第1のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。第2のテンショナアームは、回転可能に取り付けられた第2のテンショナプーリーを有する。第2のテンショナプーリーは、無端駆動部材の第2のスパンと係合されている。第2のテンショナアームは、第2のテンショナアーム枢動軸の周りで枢動可能である。テンショナ付勢部材は、第1及び第2のアームをそれぞれの第1及び第2のフリーアーム方向に付勢するように位置決めされている。テンショナは、第1のフリーアーム方向と反対方向の第1のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている第1のテンショナアームストッパー面をさらに含む。第2のテンショナアームストッパーは、第2のフリーアーム方向と反対方向の第2のテンショナアームの移動を制限するように位置決めされている。第2のテンショナアームは、少なくとも無端駆動部材及びテンショナ付勢部材によって付与されたトルクの組み合わせからの非ゼロ予負荷トルクを有し、予負荷トルクは、第2のテンショナアーム32を第2のテンショナアームストッパー面66と係合するように付勢し、無端駆動装置が第1のモードで作動する場合、第2のテンショナアームは、第2のテンショナアームストッパー面と係合したままであり、第1のテンショナアームは、エンジンの作動を通して第1のテンショナアームストッパー面から離間したままであり、ここでは第2のテンショナアーム上の過渡的トルクは、予負荷トルクに抗して作用するが予負荷トルク未満であり、無端駆動装置が第2のモードで作動する場合、第1のテンショナアームは、第1のテンショナアームストッパー面と係合したままであり、第2のテンショナアームは、エンジンの作動を通して第2のテンショナアームストッパー面から離間したままであり、ここでは第2のテンショナアーム上の過渡的トルクは、予負荷トルクに抗してかつ予負荷トルクを十分に上回る。
【0009】
本発明の以上の及び他の態様は、添付図面を参照することでより良く理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態による、テンショナを含む無端駆動装置の平面図である。
図2図1に示す無端駆動装置の変形例の平面図である。
図3図1に示す無端駆動装置の要素の斜視図である。
図4】第1のモードで作動する図1に示す無端駆動装置の平面図である。
図5A】第1のモードで作動する図1に示す無端駆動装置の概略図であり、テンショナの一部であるテンショナアームに作用する力を示す。
図5B】第1のモードで作動する図1に示す無端駆動装置の概略図であり、テンショナアームとの関連で力及びモーメントアームをさらに示す。
図5C】第2のモードで作動する図1に示す無端駆動装置の概略図であり、テンショナアームに作用する力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、12で示す破線の長方形によって概略的に表されたエンジンのための無端駆動装置10を示す。エンジン12が車両に取り付けられる実施形態において、無端駆動装置10は、フロントエンジン補機駆動装置とすることができる。エンジン12は、その上に取り付けられたクランク軸プーリー16を有するクランク軸14を含む。クランク軸プーリー16は、エンジン12のクランク軸14によって駆動可能であり、プーリー自体は、ベルトなどの無端駆動部材20を介して1又は2以上の車両補機18を駆動する。便宜上、無端駆動部材20は、ベルト20と呼ぶが、何らかの他の形式の無端駆動部材とすることができることを理解されたい。補機18は、モータ/発電機ユニット(MGU)18a、エアコン圧縮機18b、ウォーターポンプ(図示せず)、パワーステアリングポンプ(図示せず)、及び/又は何らかの他の適切な補機を含むことができる。
【0012】
図1において、2つの補機18が示されているが、より多数の又はより少数の補機が存在し得る。被駆動補機の各々は、駆動軸22及びプーリー24を有する。MGU18aは、MGU駆動軸22a及びMGUプーリー24aを有する。
【0013】
図1から分かるように、ベルト20は、クランク軸プーリー16及び24aで示すMGUプーリー(及び、他の補機プーリー24)に係合する。通常の作動状態では、無端駆動装置10は、無端駆動装置10をエンジン12によって駆動することができる第1のモードで作動可能であり、結果的に、補機18のプーリー24を駆動する。第1のモードにおいて、第1のベルトスパン20aにおける張力は、第2のベルトスパン20bにおける張力よりも小さい。MGU18aは、車両のバッテリ(図示せず)を充電するために、第1のモードでオルタネータとして作動可能である。
【0014】
また、MGU18aは、モータとしても作動可能であり、MGUプーリー24aを駆動し、結果的にベルト20を駆動する。MGU18aがモータとして作動するこの事象中には、無端駆動装置10は、第2のモードで作動できると考えることができ、この場合、第2のベルトスパン20bの張力は、第1のベルトスパン20aの張力よりも小さい。これは、エンジンが車両の車輪を駆動しているが、ベルト20を介して動力をエンジンのクランク軸14に伝達することによって間接的に追加動力を車輪に供給することが望まれるときの「ブースト」事象中とすることができる。MGU18aがモータとして作動する別の状況としては、BAS(ベルト-オルタネータ始動)事象を挙げることができ、BAS事象において、MGU18aは、クランク軸14の回転を引き起こし、それによってエンジン12を始動するためにベルト20を駆動する。MGU18aがモータとして作動するさらに別の状況は、ISAF(アイドル/ストップ補機機能)事象であり、そのとき、MGU18aは、エンジン停止時に、1又は2以上の補機を駆動する目的でベルト20を駆動するために使用される(例えば、一部のハイブリッド車において、車両が信号停車中である又はそうでなければ短時間停車する場合にエンジンが自動的に停止する)。
【0015】
本開示において、ベルト20のスパン20aは、ベルトスパン20aと呼ぶことができ、ベルト20のスパン20bは、ベルトスパン20bと呼ぶことができる。
【0016】
MGU18aは、上述のMGU18aに関する何らかの目的のためにベルト20を駆動するためのモータとして使用することができる2次駆動装置の一例にすぎないことに留意されたい。他の実施例において、補機18aは、一般的なオルタネータとすることができ、車両の加速を増大させることが望まれる場合に、BAS作動において、及び/又はISAF作動において、ベルト20を駆動する別個の電動機をオルタネータの近くに設けることができる(ベルト20上でオルタネータの上流側又は下流側に)。
【0017】
図1には無端駆動装置10用のテンショナ25が示されている。第1のテンショナプーリー26は、第1のアームプーリー軸APA1(図4)の周りのプーリーの回転運動のための第1のテンショナアーム30上に回転自在に取り付けられている。第2のテンショナプーリー28は、第1のアームプーリー軸APA2の周りのプーリーの回転運動のための第2のテンショナアーム32上に回転自在に取り付けられている。各テンショナアーム30及び32への回転可能な取り付けは、段付きボルト52によって行うことができ、段付きボルト52は、各テンショナアーム30及び32の開口を貫通し、さらに基部48のねじ付き開口に入る。
【0018】
第1及び第2のテンショナアーム30及び32は、それぞれ、第1及び第2のテンショナアーム枢動軸AP1及びAP2の周りで枢動するように基部48に枢動可能に取り付けられている。基部48への枢動可能に取り付けは、段付きボルト57によって行うことができ、段付きボルト57は、テンショナアーム30及び32の各々の開口を貫通し、さらに基部48のねじ付き口に入る。
【0019】
基部48は、MGU18a又は何らかの他の適切な固定部材のハウジングに固定的に取り付けられる。
【0020】
第1及び第2のテンショナプーリー26及び28は、第1及び第2のフリーアーム方向に付勢される(図1にそれぞれDFA1及びDFA2として示す)。より具体的には、テンショナ付勢部材41は、テンショナ付勢力Fを第1及び第2のテンショナアーム30及び32に、それぞれの第1及び第2のフリーアーム方向DFA1及びDFA2で付与することができる。
【0021】
テンショナ付勢部材41は、例えば、第1及び第2のテンショナアーム30及び32の間に延びる線形圧縮コイルばねなどの何らかの適切な構造体を有することができる。図2に示す他の実施形態において、テンショナ付勢部材41は、例えば、第1及び第2のアーム30及び32上の第1及び第2の駆動面43及び45に当接して、アーム30及び32を、第1及び第2のテンショナプーリー26(図2に部分的に示す)及び28(図2には示されていない)をベルト20に至らせるために付勢することができる捩りばねとすることができる。
【0022】
図1及び2に示す実施形態において、第1のテンショナプーリー26は、テンショナプーリー26が、使用時に、モーメントを第1のテンショナアーム30上に枢動軸AP1の周りで第1の回転方向に付与するように配置される意味で、第1のテンショナアーム枢動軸AP1の第1の側にある。テンショナ付勢部材41は、テンショナ付勢部材41が、使用時に、モーメントを第1のテンショナアーム30上に枢動軸AP1の周りで第2の回転方向(第1の回転方向の反対方向)に付与するように配置される意味で、テンショナ付勢力Fを第1のテンショナアーム枢動軸AP1の第2の側に付与するように配置される。
【0023】
同様に、第2のテンショナプーリー28は、テンショナプーリー28が、使用時に、モーメントを第2のテンショナアーム32上に枢動軸AP2の周りで第1の回転方向に付与するように配置される意味で、第2のテンショナアーム枢動軸AP2の第1の側にあり、テンショナ付勢部材41は、テンショナ付勢部材41が、使用時に、モーメントを第2のテンショナアーム32上に枢動軸AP2の周りで第2の回転方向(第1の回転方向の反対方向)に付与するように配置される意味で、テンショナ付勢力Fを第2のテンショナアーム枢動軸AP2の第2の側に付与するように配置される。
【0024】
テンショナ25のいくつかの特徴部が好都合であり以下でさらに説明する。
【0025】
一実施形態において、テンショナ25の基部48は、図3に示すように略C字形とすることができる。図3に示す実施形態において、基部48は、基部本体47と、基部本体47の円周端に近接した第1及び第2の取付け開口49及び51とを有し、第1及び第2の開口49及び51は、基部28をMGU18a又は別の適切な部材のハウジングに取り付けるように構成されている。また、取付け開口49及び51は、第1及び第2のテンショナアーム30及び32の枢動を支持するピン(図1及び図2で53で示す)を受け入れるために使用することもでき、従って、第1及び第2の枢動軸AP1及びAP2を規定することができる。さらに、基部48のC字形によって規定される開口部は、軸方向に障害物がない。その結果、テンショナ25は、MGU18aの放熱を促進するように構成されている。
【0026】
図4に示す実施形態において、テンショナ25は、第1のフリーアーム方向の反対方向の第1のテンショナアーム30の移動を制限するように配置されている第1のテンショナアームストッパー60を含む。第1のフリーアーム方向の反対方向は、第1の負荷停止方向と呼ぶことができる。テンショナ25は、第2のフリーアーム方向の反対方向(すなわち、第2の負荷停止方向)の第2のテンショナアーム32の移動を制限するように配置されている第2のテンショナアームストッパー62を含む。テンショナアームストッパー60及び62は、それぞれ、基部に取り付けられた第1及び第2のストッパー面64及び66を有し、基部に取り付けられた第1及び第2のストッパー面64及び66は、それぞれ、第1及び第2のテンショナアーム30及び32上でアームに取り付けられた第1及び第2のストッパー面68及び70と係合可能である。
【0027】
テンショナ25は、使用時、第2のテンショナアーム32が作動条件の第1の選択された範囲を通して第2のテンショナアームストッパー62と係合するように構成される。
【0028】
随意的に、テンショナ25は、使用時、第1のテンショナアーム30が作動条件の第1の範囲と異なる作動条件の第2の選択された範囲を通して第1のテンショナアームストッパー60と係合するように構成される。
【0029】
別の選択肢として、テンショナ25は、使用時、第1及び第2のテンショナアーム30及び32が作動条件の第1及び第2の範囲と異なる作動条件の第3の選択された範囲を通して第1及び第2のテンショナアームストッパー60及び62と係合するように構成される。
【0030】
図5a-5cを参照すると、これらはテンショナ25の概略図であり、テンショナ25に作用する力及びモーメントを示す。図5a-5cにおいて、これらの図における視覚的混乱を避けるために、テンショナアーム30及び32、ベルト20、及び付勢部材41は単線で表されており、プーリー24a、26、及び28は輪郭だけが示されている。
【0031】
テンショナ25に作用する力は、テンショナアーム30及び32が何らかの方法で揺動するよう促すモーメントを生成することになる、ベルト20によってテンショナアーム30及び32に付与された力と付勢部材41によってテンショナアーム30及び32に付与された力を含む。図5aはこれらの力を示す。ベルトスパン20-2のベルト張力は、T2で示されており、ベルトスパン20-3のベルト張力はT3で示されており、ベルトスパン20-4のベルト張力はT4で示されており、ベルトスパン20-5のベルト張力はT5で示されており、付勢部材41の力はFLで示されている。理解できるように、付勢部材41は、一端において力FLを第1のテンショナアーム30上に付与し、他端において力FLを第2のテンショナアーム32に付与する。静的平衡の下で、ベルト張力は、いずれの場所でも(すなわち、スパン20-2、20-3、20-4及び20-5のあらゆる場所で)実質的に等しいと考えられる。従って、目下の数学的導出の目的で、T2=T3=T4=T5である。これらの張力は、それぞれ第1及び第2のテンショナアーム32及び30上のHL23及びHL45で示すハブ負荷につながる。ハブ負荷HL23及びHL45は、それぞれプーリー28及び26の回転中心(すなわち軸APA2及びAPA1)においてテンショナアーム32及び30に作用する。当業者であれば理解できるように、ハブ負荷の方向は、プーリー26及び28上のベルト20のそれぞれの接触角に依存する。
【0032】
ハブ負荷HL23は、ベルトスパン20-2に平行なベクトル成分HLVC2と、ベルトスパン20-3に平行なベクトル成分HLVC3に分割することができる。HLVC2及びHLVC3の大きさは、張力T2及びT3と同じであるがアーム32に作用し、一方で、張力T2及びT3はプーリー28に作用する。同様に、ハブ負荷HL45は、ベルトスパン20-4に平行なベクトル成分HLVC4と、ベルトスパン20-5に平行なベクトル成分HLVC5とに分割することができる。HLVC4及びHLVC5の大きさは張力T4及びT5と同じであるがアーム30に作用し、一方で張力T4及びT5はプーリー26に作用する。
【0033】
換言すれば、軸APA2の周りで回転可能なプーリー28の表面に作用するベルト張力T2及びT3は、プーリー28の回転中心で(すなわち、軸APA2に沿って)テンショナアーム32に伝達され、結果的に力HLVC2及びHLVC3になる。
【0034】
図5bは、ハブ負荷力成分HLVC2、HLVC3、HLVC4、及びHLVC5の各々に関連するモーメントアームを示す(すなわち、各々の力の作用線と動軸AP1及びAP2の垂直距離)。枢動軸AP2に対する力T2及びT3に関連するモーメントアームは、それぞれTR2及びTR3で示されている。同様に、図5bにはプーリー26の軸APA1を通って作用する力T4及びT5が示されており、枢動軸AP1に対する力T4及びT5に関連するモーメントアームは、それぞれTR4及びTR5で示されている。さらに、各テンショナアーム30及び32に作用する力HLのモーメントアームは、それぞれHF1及びHF2で示されている。
【0035】
一般的に、テンショナ25が静的平衡にある場合、ストッパー62は、テンショナアーム32の正味モーメントがゼロであるように、ベルト20及び付勢部材41によって付与されたモーメントを補正するための力、従ってモーメントを付与する。ストッパー62によって付与されたモーメントは、Mstop2で示されている。同様に、ストッパー60は、テンショナアーム30の正味モーメントがゼロであるように、ベルト20及び付勢部材41によって付与されたモーメントを補正するための力、従ってモーメントを付与する。ストッパー60によって付与されたモーメントは、Mstop1で示されている。第1のアーム30が第1のストッパー60と接触しない何らかの平衡位置において、モーメントMstop1はゼロであり、同様に、第2のアーム32が第2のストッパー62と接触しない何らかの平衡位置において、モーメントMstop2はゼロであることを理解できる。静的平衡状態に関係する数式は、以下の通りである。
HLVC4・TR4-HLVC5・TR5+FL・HF1+Mstop1=0
HLVC2・TR2-HLVC3・TR3-FL・HF2-Mstop2=0

HLVC2=T2、HLVC3=T3、HLVC4=T4、及びHLVC5=T5なので、これらの上記2つ数式は以下のように表すことができる、
T4・TR4-T5・TR5+FL・HF1+Mstop1=0
T2・TR2-T3・TR3+FL・HF2+Mstop2=0
【0036】
上記の2つの数式において、反時計回りのモーメントは正、時計回りのモーメントは負と想定した。張力の値は全て互いに等しいので、T2、T3、T4、及びT5は、単一の項T0によって全て表すことができる。図5a及び図5bに示すようにテンショナ25が静的平衡状態にある場合、第1のストッパー60によって付与されたモーメントは、上述のように第1のストッパー60が第1のテンショナアーム30と接触していないのでゼロである。この状況ではMstop1=0である。
【0037】
従って、この状況では上記の数式は以下のように書き換えることができる。
T0・TR4-T0・TR5+FL・HF1=0
T0・TR2-T0・TR3-FL・HF2-Mstop2=0
【0038】
上記の最初の数式をFLについて解いてこの数式を2番目の数式に代入することによって、結果は以下のようになる。
T0・TR2・T0・TR3-(T0・TR5-T0・TR4)・HF2/HF1-Mstop2=0
従って、
T0(TR2-TR3-HF1/HF2・(TR5-TR4))=Mstop2
【0039】
T0の負の値はベルト20が0未満の張力を有することを示すので、T0は常に正であることが理解される。さらに、ストッパー62がモーメントを選択された方向にテンショナアーム32に付与することが望まれるので、Mstop2は、図5a及び図5bに示す平衡位置に関して少なくとも上記の数式との関連において正であることが理解される。Mstosp2及びT0の両方は正である必要があるので、以下の数式を容易に理解することができる。
TR2-TR3-HF1/HF2・(TR5-TR4)>0
値TRがTR2-TR3を表すために使用され、TがTR5-TR4を表すために使用される場合、上記の数式は以下のように書き換えることができる。
TR-HF1/HF2・TL>0
の値がゼロよりも大きい場合、この数式は以下のように書き換えることができる。
TR/TL>HF2/HF1
の値がゼロよりも大きいか否かを判定するために、上述の数式を検討することができる。
T0・TR4-T0・TR5+FL・HF1=0
これは、以下のように書き換えることができ、
T0(TR5-TR4)=FL・HF1
従って、
T0・T=FL・HF1
【0040】
付勢部材41によって付与されたモーメントは正であり、上述したように、張力T0は正であるので、図5a及び図5bに示す状況においてTの値は正である必要がある。
【0041】
その結果、上記の数式は適用可能である。すなわち、
TR/TL>HF2/HF1
である。
【0042】
上述した関係を満たすことによって、テンショナ25は、無端駆動装置が静的平衡にある場合、基部に取り付けられた第2のストッパー面66に対して安定した状態を保つ。エンジン停止時に静的平衡に到達することに留意されたい。換言すると、少なくとも一部の実施形態において、第2のテンショナアーム32は、エンジン停止時に第2のアームストッパー62に当接することが望ましい。
【0043】
上述の関係を満たすには、基部に取り付けられた第2のストッパー面66に対して第2のテンショナアーム32を付勢するある程度の予負荷トルクが必要である。この予負荷トルクは、以下にさらに説明する特定の作動条件中に(上述の第1の作動条件のセット)、第2のテンショナアーム32をストッパー面66に当接したままにさせるように選択することができる。テンショナ25の予負荷トルクは、作動中に発生する特定の過渡的事象がストッパー62から離れるテンショナアーム32の動き引き起こさないように十分に大きく設定することが重要である。上述したように、このような動きは、限定されるものではないが、NVH(騒音、振動、及びハーシュネス)、エネルギー浪費(例えば、テンショナアームの動き及びねじり振動に関連するテンショナアームの移動方向の急速な変化を引き起こすのに関連するエネルギー)、及び構成要素の摩耗及びこのような移動時のテンショナ構成要素の加減速に関連する動的応力に起因するテンショナの耐用年数の短縮に寄与することを含むいくつかの有害な結果につながる。
【0044】
第2のアーム32がストッパー面66に当接するのを維持する別の利点は、第2のアーム32に関連してテンショナ25に設けられる何らかの減衰構造の摩耗量が減少することである。さらに、ストッパー面と繰り返し衝撃がある状況と比較すると、基部上のストッパー面66(及び第2のアーム32の対応する表面70)の摩耗量が減少する。
【0045】
しかしながら、予負荷トルクは、全ての作動状態の下でテンショナアーム32が常にストッパー62と係合した状態を維持するほど高くないことが望ましい。予負荷トルクがテンショナアーム32とストッパー62との間の係合を常に維持するほど高い場合、結果的に得られるベルト20の張力は、大きな寄生損失が生じるほど高いことになり、その結果、エンジンの有効出力の低下及び燃費の低下が発生することになる。従って、予負荷トルクは、特定の作動状態の下で、予負荷トルクがストッパー62とのテンショナアーム32の係合を維持するように十分に高く、さらに、第2のテンショナアーム32が特定の他の運転状態の下でストッパー62から離れるのを可能にすることが望ましい。例えば、第2のテンショナアーム32上のトルクの約1Nmから約15Nmの予負荷トルクにより、ストッパー62から離れるテンショナアーム32の動きは、このようなストッパーを組み込んでいないテンショナの動きを引き起こす可能性のある大部分の事象中で防止される。このような事象は、エンジン及び例えばエアコン圧縮機又はウォーターポンプである一般に利用可能な(最新のハイブリッド車で利用可能な)補機の作動の副作用であり、これはベルト20に張力をほとんど加えず、従ってベルトの高張力に関連する寄生損失をほとんど加えない。MGU18aなどの要素とは対照的に、車両の一部であるが車両の原動力の生成に直接貢献しない要素がある。上述の第2のテンショナアーム32上の予負荷の範囲(約1Nmから約15Nm)は、構成要素の耐用年数を延ばし、ベルト高張力に関連する寄生損失を低減すると同時に、エンジンの作動中にテンショナアームを動かすのに費やされたエネルギーに起因するエネルギー損失を低減する観点から特に望ましことが分かっている。
【0046】
第1のアームストッパー60を備える実施形態において、テンショナ25は、図5cに示す位置まで移動することが望ましい場合があり、第1のテンショナアーム30は、エンジンが第2のモードで作動する場合の特定の状態などの特定の状態の下で第1のアームストッパー60に当接する。
【0047】
以下に、テンショナアーム32をストッパー62から離れる方向に付勢するトルクを生成することができる状態セットをもたらす事象の一部を説明する。理解できるように、一部の事象は、第2のテンショナアーム32がストッパー62から離れない程度に低いトルクをもたらす。一部の事象は、第2のテンショナアーム32をストッパー62から離すのに十分に高いトルクをもたらすことができる。
【0048】
1つの事象は、圧縮機18b(図1)の作動を開始させるエアコンクラッチの起動である。エアコン圧縮機18bのローターの慣性及びその時の圧縮機18bの中にある何らかの冷媒ガスの圧縮に起因する運動に対する抵抗は、直ちにベルトスパン20-2及び20-3のベルト張力の瞬間的な低下につながる過渡的事象を引き起こす可能性がある。一部の実施形態において、テンショナアーム32は十分に予負荷されることになり、テンショナアーム32がこの過渡的事象中にストッパー62に当接した状態を維持することを保証するようになっている。しかしながら、一部の実施形態において、アーム32上の予負荷は、エアコン係合事象中にアーム3トッパー62から瞬間的に離れるように設定することができる。
【0049】
別の事象は、エアコン圧縮機18bの係合解除であり、テンショナアーム32に係合する各スパンのベルト張力が増大することになり、その結果、アーム32をストッパー62に付勢するトルク量が増大する。従って、テンショナアーム32は、このような事象中にストッパー62からら離れないことになる。
【0050】
キースタート事象中(すなわち、エンジン12が何らかの最新の非ハイブリッド式エンジンに設けられている電気スターターによって始動される場合)、ベルト20で駆動されることになる構成要素の慣性は、燃焼がエンジン12のシリンダ内で始まる際の急激なトルクの発生と相まって、ストッパー62からテンショナアーム32を離すことにつながり、テンショナアーム30は、キースタート事象中にストッパー面64に係合する。
【0051】
MGUスタート事象中(すなわち、エンジン12がモータとしてのMGU18aの作動によってベルト20を介して始動される場合)、MGU18aは、エンジンの形式及び用途の具体的詳細に応じて変わるトルクを生成する。換言すると、MGU18aの起動速度は、用途に基づいて変わり、MGUスタート事象中に変わり得る。少なくとも一部の実施形態において、MGUスタート事象中にMGU18aによって付与されたトルクは、テンショナアーム32上の予負荷に十分に打ち勝つようにベルト張力を変更し、その結果、アーム32をストッパー62から離し(すなわち、アーム32をストッパー面66から持ち上げて離し)、第1のテンショナアーム30をストッパー60と係合させる(すなわち、ストッパー面64に係合させる)。
【0052】
ブースト事象中(すなわち、エンジン12が作動しているがモータとしてのMGU18aの作動によってベルト20を介してアシストされる場合)、MGU18aは、特に運転者のアクセルペダルの踏み込みによってどれくらいの増加が必要とされるかに基づいて、様々な増加トルクを生成することができる。少なくとも一部の実施形態において、MGUトルクが約10Nm未満である場合、ベルト張力の変更は必要がなく(すなわち、ベルト20全体のベルト張力は、アーム30がストッパー60と係合しなくても十分であり)、一方、MGUトルクが約10Nmよりも大きい場合、テンショナアーム30がストッパー60に当接するようにテンショナアーム30及び32を移動させることが好ましいことが分かっている。テンショナアーム32上の予負荷トルクを約10Nm未満(例えば、約3から約5Nm)に設定することによって、アーム30及び32は、約10Nm以下のMGUトルクでは図5cに示す位置に確実に切り替わる。
【0053】
ねじり振動の観点から、無端駆動装置10の何らかのねじり振動が、約1500ラジアン/s2を超えるプーリー(従って、ベルト20)の加速につながらないことを保証することが好都合であることが分かっている。一部の実施形態において、ねじり振動がこの値(又は、何らかの他の任意の値)を超える可能性がある場合、何らかのねじり振動の重大度を低減するために防振装置をMGUプーリー24a上に設けることが望ましいであろう。さらに、テンショナアーム30及び32を動かないようにする減衰は、ねじり振動を低減するために行うことができる。
【0054】
上述したように、非ゼロの予負荷トルクを供給することは、過渡的トルク事象が予負荷トルクよりも十分に高くなるまで(この時点でテンショナ25がストッパー60に当接するように第1のアーム30が移動する)、テンショナ25は、第2のテンショナアーム32がストッパー62に当接した位置のままであるという意味で、一種のフィルタリング構造と考えることができる。例えば、一部の実施形態において、第2のテンショナアーム32上のトルクが予負荷トルクよりも1Nm以上大きい場合、テンショナ25は、第1のアーム30がストッパー60に当接するように(及び、第2のアーム32がストッパー62から離れるように)動くことができる。一部の他の実施形態において、第2のアーム32上のトルクは、第1のテンショナアーム30をストッパー60に当接させるために2Nmだけ、又は何らかの他の値だけ予負荷トルクを超える必要がある場合がある。完全であるために、過渡的事象中にトルクが予負荷トルクよりも大きいが、第1のテンショナアーム30をストッパー60に当接させるほどは高くない場合、これは狭いウィンドウに対応し(上述では作動状態の第3の範囲と特定される)、テンショナアーム30及び32は、ストッパー60及び62のどちらにも当接していないことに留意されたい。このテンショナ25のフィルタリング態様は、以下のように説明することができる。すなわち、第2のテンショナアーム32は、少なくとも無端駆動部材20及びテンショナ付勢部材41から付与されたトルクの組み合わせからの非ゼロ予負荷トルクを有し、予負荷トルクは、第2のテンショナアーム32を第2のテンショナアームストッパー面と係合するように付勢し、無端駆動装置10が第1のモードで作動する場合、第2のテンショナアーム32は、第2のテンショナアームストッパー面66と係合した状態を維持し、かつ第1のテンショナアーム30は、エンジン12の作動を通して第1のテンショナアームストッパー面60から離間した状態を維持するようになっており、第2のテンショナアーム32上の過渡的トルクは、予負荷トルクに対して作用するが予負荷トルク未満であり、無端駆動装置10が第1のモードで作動する場合、第1のテンショナアーム30は、第1のテンショナアームストッパー面60と係合した状態を維持し、第2のテンショナアーム32は、エンジン12の作動を通して第2のテンショナアームストッパー面66から離間した状態を維持し、第2のテンショナアーム32上の過渡的トルクは、予負荷トルクに対して作用し予負荷トルクよりも相当大きい。第1のモードは、一部の実施形態において、エンジン12がアイドル時の一定のRPMにある場合を含むことができる。
【0055】
ストッパー62及び随意的に設けられたストッパー60は、摩耗及び破断に耐性のある適切な材料から作製することができる。適切な材料は、例えば、E.I.Dupont de Nemours製のHytrel(商標)とすることができる。この材料は、約25ショアD~約75ショアDの範囲の硬度を有することができる。ストッパー62(及び随意的なストッパー60)は、使用中、第2のテンショナアーム32がストッパー62と係合している間に、エンジンの作動状態に起因してハブ負荷(すなわち、プーリー28に作用するT2及びT3の組み合わせ)が変動するので僅かな変位があるという意味で、作動時にある程度のコンプライアインスを有することに留意されたい。その結果として、ストッパー62に存在するコンプライアインスに起因して、場合によっては、テンショナアーム32は、ストッパー62又は60に対して付与された最大約3000Nの負荷に関して約0.15mmから約2.25mmの範囲の変位を受ける可能性がある。有効であることが明らかな例示的なばね定数は、約4000N/mm~約10000N/mmの範囲である。ストッパー62に対する場合の第2のテンショナアーム32の変位(及び、同様に、ストッパー60に対する場合のアーム30の変位)は非常に小さいので、アームの移動から失われるエネルギーの観点から無視できると考えられる。加えて、このような変位は非常に小さいので、この動きから生じた何らかの音は車両内の搭乗者には聞こえない。従って、テンショナアーム32は、実質的に停止していると言える。対照的に、ストッパーを組み込んでいない一部の従来技術のテンショナの一部のテンショナアームによって起こる移動は、20mm~30mm(約20°~約30°の移動角距離に対応する)であるか又は、一部の実例において、それ以上である可能性があり、その結果、有意なエネルギー量がこれらのテンショナアームの移動で費やされ、一部の実例において車両搭乗者に聞こえる音が生成される。さらに、特定の従来技術のテンショナのテンショナアームに起こる大きな加速度によって、車両搭乗者が感じることができる振動が生じるのに対して、全体的な移動が約2.25mm未満に維持される場合の加速では、このような振動は車両搭乗者が検出できないほど小さい。テンショナの移動に関連した音及び振動は、車両搭乗者による車両の品質の認識に影響を与える可能性があるので検出不可能であることが重要である。さらに、テンショナアーム32(又は30)がストッパー62(又は60)に当接している間に全体的な移動を約2.25mm未満に抑制することによって、アーム32(又は30)及び関連した構成要素における加速度、従って対応する応力は、テンショナの寿命に悪影響を与えないように低減されている。対照的に、一部の従来技術のテンショナに見られる加速度は、テンショナの各要素が疲労する、従って早期故障が発生するレベルに達している。
【0056】
移動量を小さく保つことは有益であるが、ストッパー62及び60のある程度のコンプライアインスは望ましい。このようなコンプライアインスによって、1つの状態セットから別の状態セットへの遷移中に第2のテンショナアーム32とストッパー62との間の(又は第1のテンショナアーム30とストッパー60との間の)の衝撃の重大度が低減するのでこのコンプライアインスは重要である。ストッパー62及び60の剛性が高すぎる場合、このような衝撃によって、結果的に、車両搭乗者に聞こえる(場合によっては感じられる)可聴クリック音が発生する可能性があり、これは、車両搭乗者の車両品質の認識を損なうであろう。さらに、このような衝撃によって、結果的にハブ負荷スパイクが発生する可能性があり、コンポーネントの寿命に悪影響を与える可能性がある。上述したようなコンプライアインスレベル(すなわち、上述の剛性及び/又はばね定数)と組み合わせた最大50rad/sの衝撃速度に関して、衝撃応力、衝撃音、及び振動は、構成要素の寿命を損なうことなく、車両搭乗者が検出できないほど低いことが分かっている。ストッパー62との衝撃時のテンショナアーム32の好適な最大速度は、上述のコンプライアインスレベルを有するストッパーに関して約25rad/sである。
【0057】
テンショナを設計するために、テンショナメーカーには、車両メーカーからフロントエンジン補機駆動システムを構成するプーリーの位置、ベルト20を介してエンジンを始動するために必要なトルク、及び様々な他の設計パラメータなどの特定のデータを提供することができる。テンショナメーカーは、エンジンをMGUで始動するためにクランク軸を駆動するのに十分であろう適切なベルト張力を決定することができる。このベルト張力を用いて、選択されたベルト張力を実現するのに十分な力でテンショナプーリー26及び28をベルト20に至らせるために付与することができるばね力を決定することができる。これらの値を用いて、結果的に得られるテンショナアーム30及び32上のトルクをアーム30及び32の様々な位置に基づいて決定することができる。結果的に得られたトルクが、約1Nm~約15Nmの範囲の選択値などの任意の値に近似する場合、ストッパー62は、その時点でテンショナアーム32に当接するように選択的に位置付けることができる。
【0058】
第1及び第2のテンショナアームプーリー26及び28上のベルト20の接触角は、ベルト張力に直接影響を与える。相対的に浅い接触角を選択することによって、結果的に得られたアーム32をストッパー62に付勢するトルク量は、比較的小さく維持されるが、同時にキースタートなどの事象中にベルト鳴きを防止しながら駆動トルクをエンジンから補機まで伝達するのに十分なベルト20の選択された張力を維持する。また、接触角は、エンジン作動中に軸受異音(bearing hoot)が発生するリスクがあるほど小さくないことが好ましい。異音は、プーリー上のベルトの接触角が著しく小さく、動体の回転を引き起こす軸受の転動体(例えばボール)と対応する軸受レースとの間の十分な摩擦係合がない場合に発生する一種の好ましくない雑音である。その代わりに、レース上で転動体の摺動運動がある。接触角の大きさを約10°以上などの十分に大きく保つことで異音を実質的に排除することができる。接触角を約90°などの選択値未満に保つことによって、ストッパー62に対するテンショナアーム32の予負荷を小さく保つことができ、これによりプーリー28に標準的な軸受を使用することができる。一部の実施形態において、プーリー28(及びプーリー26)上のベルト20の接触角は、約25°~約60°である。
【0059】
上記の説明からわかるように、静的平衡では、第2のテンショナアーム32は、少なくとも無端駆動部材20及びテンショナ付勢部材41によって付与されたトルクの組み合わせから結果的に生じる予負荷トルクを有することが記載されており、予負荷トルクは、第2のテンショナアーム32を第2のテンショナアームストッパー面66と係合するように付勢し、約1Nm~約15Nmである。さらに、第2のテンショナプーリー28は、無端駆動部材20と係合するが、第2のテンショナアーム32は、作動状態の第1の選択された範囲を通して、第2のテンショナアームストッパー面66と係合し、作動状態としては、例えば、クランク軸プーリー16が無端駆動部材20を駆動し、2次駆動装置18a(例えば、MGU)が無端駆動部材20を駆動しない状態が挙げられる。一部の実施形態において、予負荷トルクは、約3Nm~約5Nmである。上記の説明からわかるように、一部の実施形態において、テンショナ付勢部材41は、使用時、無端駆動部材20によって(張力T2及びT3による)第2のテンショナアーム32上のトルクとは反対方向のトルクを第2のテンショナアーム32に付与する(力FLによって)ように位置決めすることができる。一部の実施形態において、第1のテンショナアームストッパー64は、第1のフリーアーム方向とは反対方向の第1のテンショナアーム30の移動を制限するように設けられて位置決めされている。第1のテンショナアームストッパー面64は、使用時、第1のテンショナプーリー26が無端駆動部材20と係合するが、第1のテンショナアーム30が作動状態の第1の範囲とは異なる作動状態の第2の選択された範囲を通して、第1のテンショナアームストッパー64と係合するように位置決めされている。例えば、作動状態の第2の選択されたセットにおいて、2次駆動装置プーリー24aは無端駆動部材20を駆動し、クランク軸プーリー16は、随意的に無端駆動部材20を駆動することができ、予負荷トルクに対向する第1のテンショナアーム32上の実質的に何らかの過渡的なトルクは、予負荷トルクよりも大きい。さらに、随意的に、使用時、第1及び第2のテンショナプーリーは無端駆動部材と係合するが、第1及び第2のテンショナアームは作動状態の第1及び第2の範囲とは異なる作動状態の第3の選択された範囲を通して、第1及び第2のテンショナアームストッパー面から離れることが可能である。
【0060】
上述したように、一部の実施形態において、無端駆動装置は、第1のモード(図5a及び図5b)で作動することができ、第1のモードでは、クランク軸プーリー16は、無端駆動部材20を駆動し、(MGUなどの)2次駆動装置18aは、無端駆動部材20を駆動せず、無端駆動部材20の第1のスパン20-3の張力は、無端駆動部材20の第2のスパン20-4の張力よりも小さく、さらに無端駆動装置は、2次駆動装置18aが無端駆動部材20を駆動する第2のモード(図5c)で作動することができる。一部の実例において、第2のモード中(例えば、BAS事象中)、クランク軸プーリー16は、無端駆動部材20を駆動しない。第2のモード(例えば、ブースト事象中)の一部の実例において、クランク軸プーリー16は、2次駆動装置18aと連動して無端駆動部材20を駆動する。第1及び第2のテンショナアームストッパー面64及び66は、使用時、無端駆動装置が第1のモードで作動する時間の少なくとも一部において、第2のテンショナアーム32が第2のテンショナアームストッパー面66と係合し、第1のテンショナアーム30が第1のテンショナアームストッパー面64から離間し、無端駆動装置が第2のモードで作動する時間の少なくとも一部において、第2のテンショナアーム32が第2のテンショナアームストッパー面66から離間し、第1のテンショナアーム30が第1のテンショナアームストッパー面64と係合するように位置決めされている。一部の実施形態において、第1及び第2のテンショナアームストッパー面64及び66は、使用時、無端駆動装置が第1のモードで作動する実質的に全ての時間において、第2のテンショナアーム32が第2のテンショナアームストッパー面66と係合し、第1のテンショナアーム30が第1のテンショナアームストッパー面64から離間するように位置決めされている。一部の実施形態において、第1及び第2のテンショナアームストッパー面は、使用時、無端駆動装置が第2のモードで作動する時間の一部において(例えば、ブースト事象中、2次駆動装置18aによって送給されるトルク量が、第2のテンショナアーム32の予負荷トルク量未満であるトルクを第2のテンショナアーム32で生成できるだけ十分小さい)、第2のテンショナアーム32が第2のテンショナアームストッパー面66と係合し、第1のテンショナアーム30が第1のテンショナアームストッパー面64から離間するように位置決めされている。
【0061】
本明細書に含まれる説明は、本発明の複数の実施形態を構成するが、本発明では、添付の特許請求の範囲の正しい意味から逸脱することなくさらなる修正及び変更が可能であることを理解できるはずである。
【符号の説明】
【0062】
10 無端駆動装置
14 クランク軸
16 クランク軸プーリー
18 補機
18a モータ/発電機ユニット(MGU)
18b エアコン圧縮機
20 無端駆動部材
20a 第1のベルトスパン
20b 第2のベルトスパン
22 駆動軸
22a MGU駆動軸
24 プーリー
24a MGUプーリー
25 テンショナ
26 第1のテンショナプーリー
28 第2のテンショナプーリー
30 第1のテンショナアーム
32 テンショナアーム
41 テンショナ付勢部材
48 基部
53 ピン
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c