(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】抗VEGF-Aおよび抗ANG2抗体ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221110BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221110BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221110BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221110BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221110BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221110BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221110BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221110BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221110BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221110BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20221110BHJP
A61K 9/08 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P27/02
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2019510931
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017071104
(87)【国際公開番号】W WO2018037000
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-19
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオウ,チン チン
(72)【発明者】
【氏名】ディマシ,ナッザレノ
(72)【発明者】
【氏名】コフマン,カレン
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チャンショウ
(72)【発明者】
【氏名】セペダ,マリオ,エー
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ ミッテルマン,エイドリアン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0063847(KR,A)
【文献】特表2008-523841(JP,A)
【文献】特表2012-504943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0215045(US,A1)
【文献】特表2013-526848(JP,A)
【文献】Applied Biochemistry and Biotechnology,2008年01月,Vol 144, No. 1,p. 15-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)並びに軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、VEGF-Aに特異的に結合する第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2及びHCDR3並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、ANG-2に特異的に結合する第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2及びHCDR3並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3が各々、配列番号23~28を含
み、第1の結合ドメインが、配列番号3及び9を各々含む重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、且つ第2の結合ドメインが、配列番号5及び11を各々含む重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、前記二重特異性抗体。
【請求項2】
重鎖アミノ酸配列が配列番号1を含み、且つ軽鎖アミノ酸配列が配列番号7を含む、請求項1記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
部分VH-CH1-H-CH2-CH3、VL-CL、及び1つ以上のscFv、L1、又は任意選択的にはL2を有する式(式中、各部分は、VH=重鎖可変ドメイン;CH1=重鎖定常領域ドメイン1;H=ヒンジ領域;CH2=重鎖定常領域ドメイン2;CH3=重鎖定常領域ドメイン3;VL=可変軽鎖ドメイン;CL=軽鎖定常ドメイン;L1=リンカー;及びL2=L1と独立したリンカーである)であって、
a.VH-CH1-CH2-CH3及びscFv-L1-VL-CL;
b.scFv-L1-VH-CH1-CH2-CH3及びVL-CL;
c.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv及びVL-CL;
d.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv-L2及びVL-CL(式中、L1及びL2はCH3に共有結合される);
e.VH-CH1-L1-scFv-L2-CH2-CH3及びVL-CL(重鎖は、ヒンジ領域を有し得る、又はヒンジレスであり得る)
であり得る、前記式を含む、請求項1記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
式VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv及びVL-CLを含む、
請求項3記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
scFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、
請求項4記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
請求項1記載の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸。
【請求項7】
請求項6記載の
核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項7記載のベクターを含む細胞。
【請求項9】
請求項1記載の二重特異性抗体を作製する方法であって、
請求項8記載のベクターを含む細胞を培養するステップを含む、前記方法。
【請求項10】
請求項1記載の二重特異性抗体の有効量を含む、対象における血管新生の低減において使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)およびアンジオポエチン(ANG)に対する活性を有する二重特異性抗体、ならびにかかる抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、既存の脈管構造からの新たな血管の形成であり、実質的にすべての臓器の形成および生理学的機能に必要とされる複雑な生物学的プロセスである。それは、胚形成、正常な生理学的増殖、修復、および腫瘍拡大などの病理学的プロセスに必須の要素である。通常、血管新生は、内皮細胞による血管出芽、分岐、および細管形成を含む多段階プロセス(内皮細胞(EC)の活性化、血管の脱安定化、分解酵素の合成および放出、EC遊走、EC増殖、EC組織化および分化、ならびに血管成熟などのプロセスを含む)において、血管新生因子と血管新生抑制因子の局所的平衡により密に調節される。
【0003】
成体では、生理学的血管新生は、創傷治癒ならびに雌の生殖機能および胚発生の幾つかの要素に主に限定される。任意の異常な、望ましくないまたは病理学的な血管新生を含む疾患関連性の血管新生では、血管新生因子と血管新生抑制因子との間の局所的平衡が調節不全になり、不適切な、および/または構造的に異常な血管形成をもたらす。病理学的血管新生は、糖尿病性網膜症、乾癬、がん、関節リウマチ、アテローマ、カポジ肉腫、および血管腫を含む病態と関連づけられている(Fan et al,1995,Trends Pharmacology.Science.16:57-66;Folkman,1995,Nature Medicine 1:27-31)。がんでは、原発性および続発性腫瘍の1~2mm3を上回る増殖には血管新生が必要とされる(Folkman,J.New England Journal of Medicine 1995;33,1757-1763)。
【0004】
VEGFは、強力な広範に分布する血管増殖因子である。内皮細胞のための分泌マイトジェンとしてのVEGFの役割の同定に先立ち、それは血管透過性因子として同定された、増殖、遊走、特殊化、および生存を含む、内皮細胞挙動の多くの異なる側面を制御するVEGFの能力が強調された(Ruhrberg,2003 BioEssays 25:1052-1060)。VEGFファミリーは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤増殖因子(PIGF)、および内分泌腺由来VEGF(EG-VEGF)を含む。VEGFの活性型は、ホモ二量体または他のVEGFファミリーメンバーとのヘテロ二量体のいずれかとして合成される。VEGF-Aは、選択的スプライシングにより産生される6つのアイソフォーム:VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF183、VEGF189、およびVEGF206で存在する。これらのアイソフォームは、主にそのバイオアベイラビリティにおいて異なり、VEGF165が主要なアイソフォームである(Podar,et al.2005 Blood 105(4):1383-1395)。様々なアイソフォームの段階および組織に特異的な比をもたらす胚形成の間でのスプライシングの調節により、VEGFに応答しての内皮細胞の異なる状況依存的な挙動に向けての豊かな潜在性が創出される。
【0005】
VEGFは、正常と疾患関連性双方の血管新生(Jakeman,et al.1993 Endocrinology:133,848-859;Kolch,et al.1995 Breast Cancer Research and Treatment:36,139-155)および血管透過性(Connolly,et al.1989 J.Biol.Chem:264,20017-20024)の重要な刺激因子であると考えられる。抗体を用いたVEGFの隔離によるVEGF作用の拮抗は、腫瘍増殖における低下をもたらし得る(Kim,et al.1993 Nature:362,841-844)。VEGF遺伝子のヘテロ接合性破壊は、脈管形成における致命的欠損をもたらした(Carmeliet,et al.1996 Nature380:435-439;Ferrara,et al.1996 Nature 380:439-442)。
【0006】
VEGFファミリーに加えて、アンジオポエチンは、血管発生および生後血管新生に関与すると考えられる。アンジオポエチンは、天然に存在するアゴニスト、アンジオポエチン-1(ANG-1)とともに、天然に存在するアンタゴニスト、アンジオポエチン-2(ANG-2)を含む。ANG-1の役割は、成体において保存されると考えられ、そこでそれは、広範かつ構成的に発現される(Hanahan,Science,277:48-50(1997);Zagzag,et al.,Exp Neurology,159:391-400(1999))。それに対し、ANG-2の発現は、主に血管再構築の部位に限定され、そこでそれは、ANG-1の構成的安定化または成熟化機能を遮断し、血管が発芽シグナルに対してより応答性であり得る塑性状態に戻り、その状態を維持することを可能にすると考えられる(Hanahan,1997;Holash et al.,Oncogene 18:5356-62(1999);Maisonpierre,1997)。疾患関連血管新生におけるANG-2発現に関する試験により、多数の腫瘍タイプが血管ANG-2発現を示すことが見出されている(Maisonpierre et al.,Science 277:55-60(1997))。機能的試験によると、ANG-2が腫瘍血管新生に関与することが示唆され、ANG-2の過剰発現がマウス異種移植片モデルにおける腫瘍増殖の増加と関連づけられる(Ahmad,et al.,Cancer Res.,61:1255-1259(2001))。他の試験では、ANG-2の過剰発現が腫瘍血管過多と関連づけられている(Etoh,et al.,Cancer Res.61:2145-53(2001);Tanaka et al.,Cancer Res.62:7124-29(2002))。
【0007】
相同性に基づくクローニング手法を用いて、Valenzuela et al.(Proc Natl Acad Sci USA.1999 Mar 2;96(5):1904-9)は、2つの新規なアンジオポエチン:マウスにおけるアンジオポエチン-3(ANG-3)およびヒトにおけるアンジオポエチン-4(ANG-4)を同定した。ANG-3およびANG-4は、ANG-1およびANG-2のマウスおよびヒトバージョンよりも互いに構造的に異なるが、それらは、マウスおよびヒトの同じ遺伝子座の対応物を表すように思われる。アンジオポエチンファミリーのこれらメンバーの生物学についてはほとんど知られていない。例えば、ANG-4は、肺に限って高レベルで発現される(Tsigkos,et al.,Expert Opin.Investig.Drugs 12(6):933-941(2003);Valenzuela,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.96:1904-1909(1999))。ANG-4の発現レベルは、低酸素状態に応答して増加することが知られており、内皮細胞増殖因子は、神経膠芽腫細胞系および内皮細胞においてANG-4発現のレベル上昇をもたらす。しかし、発現調節の機構、および生理学的な疾患関連血管新生に対して得られる効果については未知である(Lee,et al.,FASEB J.18:1200-1208(2004))。
【0008】
アンジオポエチンは、血管内皮内で選択的に発現されるTie受容体チロシンキナーゼファミリーに対するリガンドとして最初に発見された(Yancopoulos et al.,Nature 407:242-48(2000))。ANG-1、ANG-2、ANG-3およびANG-4は、主にTie-2受容体に結合することから、Tie-2リガンドとしても公知である。ANG-1のTie-2への結合は、該受容体の自己リン酸化を介したチロシンリン酸化とその後のシグナル伝達を介したそのシグナル伝達経路の活性化を誘導する(Maisonpierre,P.et al.1997 Science:277,55-60)。ANG-2は、Tie-2受容体のANG-1誘発性キナーゼ活性化の競合阻害を通じて作用する、ANG-1に対する天然に存在するアンタゴニストである(Hanahan,1997;Davis et al.,Cell 87:1161-69(1996);Maisonpierre et al.,Science 277:55-60(1997))。
【0009】
Tie-2およびANG-1のノックアウトマウス試験は、類似の表現型を示し、ANG-1刺激性のTie-2リン酸化が、発生中の血管の再構築および安定化、血管新生の間での血管成熟の促進、ならびに内皮細胞-支持細胞接着の維持を媒介することを示唆する(Dumont et al.,Genes&Development,8:1897-1909(1994);Sato,Nature,376:70-74(1995);Thurston,G.et al.,2000 Nature Medicine:6,460-463)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、ANG-1、ANG-2および/またはTie-2は、有望な抗がん治療標的として提起されている(例えば、米国特許第6,166,185号明細書、米国特許第5,650,490号明細書および米国特許第5,814,464号明細書(各々、抗Tie-2リガンドおよび受容体抗体を開示する)を参照)。可溶性Tie-2を用いる試験では、齧歯類における腫瘍の数およびサイズが低減されることが報告されている。また、幾つかのグループが、ANG-2に結合する抗体(例えば、米国特許第6,166,185号明細書および米国特許出願公開第2003/0124129号明細書を参照)およびVEGF-Aに結合する抗体(例えば、米国特許第8,216,571号明細書を参照)の使用について報告している。加えて、VEGF-AおよびANG-2を標的化する例が存在する(例えば、国際公開第200197850号パンフレット、国際公開第2007089445号パンフレット、および米国特許第8,268,314号明細書を参照)。しかし、より許容可能または有効なVEGF-AおよびANG-2を標的化する二重特異性抗体における医術については満たされない需要がある。より詳細には、それが少なくともVEGF-Aの標的化に関連する毒性(例えば、血栓塞栓症、腎毒性など)に関することから、安全性の改善に関して満たされない需要がある。このため、本明細書で開示されるVEGF-AおよびANG-2を標的化する二重特異性抗体は、例えば血栓塞栓症および/または腎毒性に関連した毒性における低下とともに、血管調節不全および腫瘍増殖を低下させるのに有効である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、VEGFおよびANGに結合する二重特異性抗体に関する。本発明はまた、VEGFおよびANGに結合し、かつVEGFおよびANGの少なくとも1つの生物学的活性といった活性を低減する二重特異性抗体に関する。本発明はさらに、VEGFおよびANGに結合し、かつ腫瘍増殖を低下および/または腫瘍体積を減少させる二重特異性抗体を、それを必要とする対象に提供することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】5つの異なる二重特異性抗体(BiS)骨格BiS1、BiS2、BiS3、BiS4、およびBiS5の一般的構造フォーマットの模式図を表す。scFvは暗灰色で表され、IgG Fvは淡灰色で表される。
【
図2】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の概略図を表す。
【
図3】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の軽鎖におけるDNAおよびタンパク質配列を表す。
【
図4】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の重鎖のDNA配列を表す。
【
図5】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の重鎖のタンパク質配列を表す。
【
図6】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2における溶出特性についての代表的データである。
【
図7】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2における精製特性についての代表的データである。
【
図8】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2における代表的なSDS-PAGEゲルである。BsAb-インタクトBiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2;Ab-抗VEGF mAb;BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2のH-BsAb-重鎖;抗VEGF mAbのH-Ab-重鎖;BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2および抗VEGFのL-軽鎖。
【
図9】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2に対するフォーカシング後の代表的データである。
【
図10】二重特異性抗体BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2における転移温度についての代表的データである。
【
図11】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2のVEGF-165およびANG-2への同時結合についての代表的データである。
【
図12】
図12A:ELISAに基づくアッセイを用いての二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2のVEGF-165およびANG-2への同時結合についての代表的データである。
図12B:ELISAに基づくアッセイを用いての二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2のVEGF-165およびANG-2への同時結合についての代表的データである。
【
図13】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2によるVEGF121への結合の欠如を示す代表的データである。
【
図14】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2によるVEGF189への結合の欠如を示す代表的データである。
【
図15】786-0腎細胞がんモデルにおける二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での腫瘍体積の減少を示す代表的データである。
【
図16】BxPC3膵がんモデルにおける二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での腫瘍体積の減少を示す代表的データである。
【
図17】
図17A:二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の不在下での脈管形成を示す代表的データである。
図17B:二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での脈管形成を示す代表的データである。
【
図18】二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での網膜の末梢(破線)の方への血管遊走(矢印)の低下を示す代表的データである(4倍の拡大率)。
【
図19】BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での血管分岐の低下を示す代表的データである(20倍の拡大率)。
【
図20A-B】
図20A:抗VEGF抗体および二重特異性抗体BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の不在下での腎臓病理を示す代表的データである。
図20B:抗VEGF抗体の存在下での腎臓病理データを示す代表的データである。
【
図20C】二重特異性BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の存在下での腎臓病理における低減を示す代表的データである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
定義
本発明を詳述する前に、本発明が特定の組成物またはプロセスステップに限定されず、それ故に変更可能であるがことは理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲にて用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上特に明示されない限り、複数の参照対象を含む。用語「a」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書中で交換可能に用いることができる。さらに、態様が用語「含む(comprising)」とともに本明細書に記載される場合は常に、「~からなる(consisting of)」および/または「本質的に~からなる(consisting essentially of)」の観点で記載される他の類似する態様もまた提供されることが理解される。
【0014】
相補性決定領域(CDR)は、抗体であってその抗原に結合するものに関与する。CDRは、(Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991));Chothia(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));IMGT(ImMunoGeneTics)(Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003));および他の方法を含む)当該技術分野における幾つかの方法により決定される。具体的なCDR配列が本明細書中に記載され、請求されるが、本発明はまた、当該技術分野で公知の任意の方法によって定義されるCDR配列を包含する。
【0015】
本明細書中で用いられるように、用語「対象」は、脊索動物亜門の任意のメンバーを指す。例えば限定はされないが、ヒトおよび他の霊長類、例えば非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ;家畜哺乳類、例えば、イヌおよびネコ;実験動物、例えば齧歯類、例えば、マウス、ラットおよびモルモット;鳥類、例えば、飼育、野生および狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽、アヒル、ガチョウなどもまた非限定例である。
【0016】
二重特異性抗体
本発明の好適な二重特異性抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはアロタイプ(例えばGm、例えば、G1m(f、z、aまたはx)、G2m(n)、G3m(g、b、またはc)、Am、Em、およびKm(1、2または3))であり得る、またはそれに由来する。かかる抗体は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づくλ鎖またはκ鎖のいずれかとして分類される軽鎖を含み得る。
図1は、5つの異なる二重特異性骨格(BiS)の配向性の模式図を示す(例えば、PCT特許出願の国際出願PCT/US2016/035026号明細書および国際出願PCT/US2015/025232号明細書を参照)。scFv内部の特定リンカーおよびscFvを本発明の二重特異性抗体の特定部分に連結するリンカー(例えば、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)が記載される。しかし、scFv内部の、またはscFvを本発明の二重特異性抗体の任意の特定部分に連結する任意の好適なリンカーが用いられてもよい(例えば、PCT特許出願の国際出願PCT/US2016/035026号明細書および国際出願PCT/US2015/025232号明細書を参照)。
【0017】
結合分子の産生
本明細書に記載の二重特異性抗体について作製し、スクリーニングするための組換えDNA法は当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,816,567号明細書)。本発明の二重特異性抗体を得るため、二重特異性抗体をコードするDNA、例えば、VHドメイン、VLドメイン、一本鎖可変断片(scFv)、またはそれらの組み合わせをコードするDNAが、好適な発現ベクターに挿入され得、次に通常は抗体を産生することがない、好適な宿主細胞、例えば、大腸菌(E.Coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞にトランスフェクトされ得る。
【0018】
好適な発現ベクターは、当該技術分野で公知である。発現ベクターは、プロモーターに連結された二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含み得る。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、米国特許第5,981,216号明細書;米国特許第5,591,639号明細書;米国特許第5,658,759号明細書および米国特許第5,122,464号明細書を参照)、該抗体の可変ドメインは、全重鎖(scFv部分を含む)、全軽鎖、または全重鎖および全軽鎖の双方の発現を意図したようなベクターにクローン化されてもよい。二重特異性抗体を産生するため、発現ベクターは、通常の技術により宿主細胞に導入され得、トランスフェクト細胞は、通常の技術により培養され得る。
【0019】
組換え抗体の発現用宿主として好適な哺乳動物細胞株は、当該技術分野で公知であり、限定はされないが、CHO細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞のがん細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、および幾つかの他の細胞株を含む、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から入手可能な多数の不死化細胞株を含む。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴および特定の機構を有する。二重特異性抗体の正確な修飾およびプロセシングを保証するため、適切な細胞株または宿主系が選択され得る。このため、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられてもよい。かかる哺乳類宿主細胞は、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(機能的免疫グロブリン鎖を全く内因性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3OおよびHsS78Bst細胞を含む。モノクローナル抗体を組換え的に産生するため、ヒトリンパ球を不死化することにより発生されるヒト細胞株を用いることができる。モノクローナル抗体を組換え的に産生するため、ヒト細胞株PER.C6(登録商標)(Crucell,Netherlands)を用いることができる。組換え抗体の発現用宿主として用いられてもよいさらなる細胞株は、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5b1-4)、または酵母細胞(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、ピキア(Pichia)、米国特許第7326681号明細書など)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号明細書)、またはニワトリ細胞(国際公開第2008142124号パンフレット)を含む。
【0020】
二重特異性抗体は、当該技術分野で公知の方法を用いて細胞株で安定発現され得る。組換えタンパク質の長期にわたる高収率産生のため、安定発現を用いることができる。安定発現のため、宿主細胞は、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択可能マーカー遺伝子を含む適切に設計されたベクターを用いて形質転換され得る。外来DNAの導入後、細胞は、濃縮培地中で1~2日間、増殖が許容され、次に選択培地に交換される。組換えプラスミドにおける選択可能マーカーは、選択に対して耐性を付与し、プラスミドを自らの染色体に安定に組み込んでいる細胞が増殖し、フォーカスを形成することを可能にし、次にそのフォーカスは細胞株にクローン化および拡大され得る。安定細胞株を高収率で作製するための方法は当該技術分野で公知であり、試薬は一般に市販されている。一過性発現もまた、当該技術分野で公知の方法を用いることにより実施することができる。一過性遺伝子導入は、細胞に導入される核酸がその細胞のゲノムまたは染色体DNAに組み込まれることがなく、細胞における染色体外因子として(例えばエピソームとして)維持される場合のプロセスである。
【0021】
二重特異性抗体を発現する細胞株は、安定にまたは一過性のいずれかでトランスフェクトされるものであり、二重特異性抗体の発現および産生をもたらす、当該技術分野で公知の細胞培地および条件で維持され得る。細胞培地は、例えばDMEMまたはハムF12を含む市販の培地製剤に基づき得る。さらに、細胞培地は、細胞増殖および生物学的タンパク質発現の双方における増強を支持するため、修飾され得る。本明細書で用いられるとき、用語「細胞培地」、「培地」および「培地製剤」は、多細胞生物または組織以外の人工的インビトロ環境下での細胞の維持、成長、増殖、または拡大のための栄養液を指す。細胞培地は、細胞増殖を促進するために配合される細胞培養増殖培地または組換えタンパク質産生を促進するために配合される細胞培養産生培地を含む、特定の細胞培養用途のため、最適化されてもよい。栄養素、原料、および成分という用語は、細胞培地を構成する成分を指すように本明細書で交換可能に用いられる。細胞株は、流加培養法を用いて維持され得る。本明細書で用いられるとき、「流加培養法」は、細胞培養物が最初に基礎培地とともにインキュベートされてから追加的な栄養分の供給を受けるための方法を指す。例えば、流加培養法は、所与の期間内の決められた供給スケジュールに従って補充培地を添加することを含んでもよい。したがって、「流加細胞培養」は、培養終結前の周期的な細胞および/または生成物の収集の有無にかかわらず、細胞(典型的には哺乳類)、および培地が培養中の血管に最初に供給され、追加的な培養栄養分が培養中の培養物に継続的にまたは不連続増分で供給されるような細胞培養を指す。
【0022】
細胞培地およびそれに含有される栄養分は、当該技術分野で公知である。細胞培地は、基礎培地と、修飾基礎培地をもたらす、少なくとも1つの加水分解物、例えば、大豆に基づく加水分解物、酵母に基づく加水分解物、または2種の加水分解物の組み合わせとを含んでもよい。追加的な栄養分は、専ら基礎培地、例えば濃縮基礎培地を含んでもよい、または専ら加水分解物、もしくは濃縮加水分解物を含んでもよい。好適な基礎培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、基礎培地イーグル(BME)、RPMI1640、F-10、F-12、α-最小必須培地(α-MEM)、グラスゴー最少必須培地(G-MEM)、PF CHO(例えば、CHOタンパク質不含培地(Sigma)またはEX-CELL(商標)325 PF CHO Serum-Free Medium for CHO Cells Protein-Free(SAFC Bioscience)参照、およびイスコフ改変ダルベッコ培地を含む。用いてもよい基礎培地の他の例として、BME基礎培地(Gibco-Invitrogen;Eagle,H(1965)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.89,36も参照);ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、粉末)(Gibco-Invitrogen(#31600);Dulbecco and Freeman(1959)Virology.8:396;Smith et al.(1960)Virology 12:185.Tissue Culture Standards Committee,In Vitro 6:2,93も参照);CMRL 1066培地(Gibco-Invitrogen(#11530);Parker et al.(1957)Special Publications,N.Y.Academy of Sciences,5:303も参照)が挙げられる。
【0023】
基礎培地は無血清であってもよく、これは、培地が血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、または当業者に公知の任意の他の動物由来血清)を含有しないこと、または動物タンパク質不含培地または合成培地であることを意味する。
【0024】
基礎培地は、標準の基礎培地中に見出される特定の非栄養成分、例えば様々な無機および有機緩衝液、界面活性剤、および塩化ナトリウムを除去するため、修飾されてもよい。かかる成分を基本細胞培地から除去することは、残存する栄養成分の濃度増加を可能にし、全体的な細胞増殖およびタンパク質発現を改善することがある。さらに、除去された成分は、細胞培養条件の要求に従って修飾された基本細胞培地を含有する細胞培地に再び添加されてもよい。細胞培地は、修飾された基本細胞培地と、以下の栄養分、鉄供給源、組換え増殖因子;緩衝液;界面活性剤;容積モル浸透圧濃度調節剤;エネルギー源;および非動物加水分解物の少なくとも1つとを含有してもよい。さらに、修飾された基本細胞培地は、任意選択的には、アミノ酸、ビタミン、またはアミノ酸とビタミン双方の組み合わせを含有してもよい。修飾された基礎培地は、グルタミン、例えばL-グルタミン、および/またはメトトレキサートをさらに含有してもよい。
【0025】
精製および単離
一旦二重特異性抗体が作製されていると、それは、免疫グロブリン分子を精製するための当該技術分野で公知の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性(特に特異抗原プロテインAまたはプロテインGに対する親和性によるもの)、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差次的溶解度により、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準的技術により精製されてもよい。さらに、本発明の二重特異性抗体は、精製を容易にするため、異種ポリペプチド配列(本明細書中で「タグ」と称される)と融合されてもよい。
【0026】
使用
本発明の二重特異性抗体は、幾つかの方法で用いることができる。例えば、本発明の二重特異性抗体は、VEGF、ANG、またはこれらのタンパク質の任意の組み合わせに結合させ、それによりVEGF、ANGの少なくとも1つの生物学的活性、またはこれらの活性の任意の組み合わせを低減するため、用いることができる。より詳細には、本発明の二重特異性抗体は、VEGF-165、ANG-2、またはこれらのタンパク質の任意の組み合わせに結合させ、それにより、それら各々の受容体の活性化もしくはリン酸化における低下および/または細胞調節不全に関連した血管新生における低下を含んでもよい、VEGF-165、ANG-2の少なくとも1つの生物学的活性、またはこれらの活性の任意の組み合わせを低減するため、用いることができる。
【0027】
例示的実施形態
本発明の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体の重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0028】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体はVEGF165に結合する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0029】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、VEGF165にVEGF121と比べてより高い親和性で結合する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0030】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、VEGF165にVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0031】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、VEGF165にVEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性で結合する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0032】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、ヒトVEGFR2リン酸化、マウスVEGFR2リン酸化、またはヒトおよびマウス双方のVEGFR2リン酸化を低減する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0033】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、ヒトTie2受容体リン酸化を低減する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0034】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、血管新生を低下させる。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0035】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、腫瘍を有する対象に提供されている結果として、腫瘍増殖を低下させる、腫瘍体積を減少させる、または腫瘍増殖を低下させかつ腫瘍体積を減少させる。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0036】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、ANG-2に、第2の結合ドメインを作製するために用いられる親ANG-2抗体よりも高い親和性で結合する。より特定の実施形態では、第2の結合ドメインのANG-2に対する結合親和性は、約1倍~約20倍増加する。さらにより特定の実施形態では、第2の結合ドメインのANG-2に対する結合親和性は、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、または約20倍増加する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0037】
別の実施形態は、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、本明細書に記載の二重特異性抗体のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで第1の結合ドメインはVEGF-Aに結合し、かつ第2の結合ドメインはANG-2に結合し、またここで二重特異性抗体は、VEGF165に結合すること、VEGF121と比べてより高い親和性でVEGF165に結合すること、VEGF189と比べてより高い親和性でVEGF165に結合すること、VEGF121およびVEGF189と比べてより高い親和性でVEGF165に結合すること、ヒトVEGFR2リン酸化を低減すること、マウスVEGFR2リン酸化を低減すること、ヒトおよびマウスVEGFR2リン酸化を低減すること、ヒトTie2受容体リン酸化を低減すること、血管新生を低下させること、腫瘍増殖を低下させること、腫瘍体積を減少させること、腫瘍増殖を低下させかつ腫瘍体積を減少させること、および第2の結合ドメインを通じてANG-2に対する親和性を、第2の結合ドメインを作製するために用いられる親ANG-2抗体と比べて増加させることを含む、本明細書に記載の特徴の1つ以上または任意の組み合わせを有する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0038】
別の実施形態は、式VH-CH1-H-CH2-CH3(式中、VHは重鎖可変ドメイン、CH1は重鎖定常領域ドメイン1、Hはヒンジ領域、CH2は重鎖定常領域ドメイン2、かつCH3は重鎖定常領域ドメイン3である)を有する抗体重鎖を含む二重特異性抗体に関する。別のさらなる実施形態では、二重特異性抗体は、式VL-CL(式中、VLは可変軽鎖ドメインであり、かつCLは軽鎖定常ドメインである)を有する抗体軽鎖を含む。別のさらなる実施形態では、二重特異性抗体は、式VH-CH1-H-CH2-CH3およびVL-CLを有する。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0039】
別の実施形態は、式VH-CH1-H-CH2-CH3およびVL-CLを含む二重特異性抗体に関し、ここで1つ以上のscFv分子は、抗体重鎖または抗体軽鎖の1つ以上のN末端部分に共有結合される。別のさらなる実施形態では、1つ以上のscFv分子は、二重特異性抗体の1つ以上のVLのN末端ドメインに共有結合される。より特定の実施形態では、二重特異性抗体は、式VH-CH1-H-CH2-CH3およびscFv-L1-VL-CLを含み、ここでL1はリンカーであり、他の様々な部分は前述の通りである。別のより特定の実施形態では、二重特異性抗体は、式scFv-L1-VH-CH1-CH2-CH3およびVL-CLを含む。
【0040】
別の実施形態は、式VH-CH1-H-CH2-CH3およびVL-CLを含む二重特異性抗体に関し、ここで1つ以上のscFv分子は、抗体重鎖の1つ以上のC末端部分に共有結合される。より特定の実施形態では、二重特異性抗体は、式VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFvおよびVL-CLを含む。別のより特定の実施形態では、二重特異性抗体は、式VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv-L2およびVL-CLを含み、ここでL2は、リンカーであり、L1とは独立し、またここでL1およびL2は、CH3に共有結合され、他の様々な部分は前述の通りである。別のさらにより特定の実施形態では、二重特異性抗体は、式VH-CH1-L1-scFv-L2-CH2-CH3およびVL-CLを含み、ここでL1およびL2は独立したリンカーであり、またここで重鎖は、ヒンジ領域を有し得る、またはヒンジレスであり得る。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2である。
【0041】
具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体が存在する。
【0042】
別の具体的な実施形態では、第1の結合ドメインが、配列番号3および9を各々を含む重鎖および軽鎖を含み、かつ第2の結合ドメインが、配列番号5および11を各々含む重鎖および軽鎖を含む、二重特異性抗体が存在する。
【0043】
別の具体的な実施形態では、配列番号1を含む重鎖アミノ酸配列および配列番号7を含む軽鎖アミノ酸配列を含む二重特異性抗体が存在する。
【0044】
別の具体的な実施形態では、部分VH-CH1-H-CH2-CH3、VL-CL、および1つ以上のscFv、L1、または任意選択的にはL2を有する式であって、
a.VH-CH1-CH2-CH3およびscFv-L1-VL-CL;
b.scFv-L1-VH-CH1-CH2-CH3およびVL-CL;
c.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFvおよびVL-CL;
d.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv-L2およびVL-CL(式中、L1およびL2はCH3に共有結合される);
e.VH-CH1-L1-scFv-L2-CH2-CH3およびVL-CL(重鎖は、ヒンジ領域を有し得る、またはヒンジレスであり得る)
であり得る、式を含む二重特異性抗体が存在する。
【0045】
別の具体的な実施形態では、式VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFvおよびVL-CLを有する二重特異性抗体が存在する。
【0046】
別の具体的な実施形態では、配列番号13のアミノ酸配列を含むscFvを含む二重特異性抗体が存在する。
【0047】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸配列が存在する。
【0048】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが存在する。
【0049】
別の具体的な実施形態では、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞が存在する。
【0050】
別の具体的な実施形態では、二重特異性抗体を作製する方法であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞を培養することを含む、方法が存在する。
【0051】
別の具体的な実施形態では、二重特異性抗体を対象に提供することを含む、血管新生を低減する方法であって、ここで二重特異性抗体が、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含み、ここで第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、方法が存在する。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【実施例】
【0057】
本明細書に記載の実験においては、必要に応じての単一特異性または二重特異性抗体として、MEDI3617(Int J Oncol.2012 May;40(5):1321-30)、Avastin(登録商標)(Ferrara,N et al.Biochem Biophys Res Comm,333:328-335,2005)、G6-31(Liang,WC et al.J Biol Chem,281:951-961,2006)、B20-4.1(Liang,WC et al.J Biol Chem,281:951-961,2006)、およびR347と名付けたアイソタイプ対照を含む様々な抗体を用いた。一部の結合および機能試験において、マウスと交差反応性がないすべてのVEGFアイソフォームに結合する能力がある抗VEGF IgG1抗体を陽性対照として用いることができる。マウスVEGFに対する交差反応が必要である場合、抗体G6-31およびB20-4.1を陽性対照として用いることができる。
【0058】
実施例1-BS3AB-VEGF H1RK-ANG2のフォーマットおよび配列
BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2は、VEGF-AおよびANG-2の1つ以上の生物学的活性を、それら各々の受容体VEGFRおよびTie2への結合を低下させることによって同時に低減するように設計した。
図2は、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の模式図である。二重特異性二価抗体は、Dimasiet.al.(J Mol Biol.2009)により先に記載された通り、各重鎖のC末端に連結されたscFvを有する完全長IgG分子からなる。Fab領域の結合特異性は抗VEGF-A(第1の結合ドメイン)であり、scFvは抗ANG-2(第2の結合ドメイン)である。第1の結合ドメインの軽鎖をコードする全ヌクレオチド配列を
図3に示す。翻訳されたアミノ酸配列および軽鎖可変領域アミノ酸配列もまた
図3に示す。抗VEGF軽鎖は、107位でトレオニンをリジンに変異させることにより訂正された生殖系列であった。生殖系列が訂正された抗VEGF配列をH1RKと称する。重鎖の完全ヌクレオチド配列を
図4に示し、対応するアミノ酸配列を
図5に示す。重鎖配列のアミノ酸配列は、第1の結合ドメインの重鎖可変領域、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常領域、接続するグリシンセリンリンカー、第2の結合ドメインの可変軽鎖、scFvグリシンセリンリンカー、ならびに第2の結合ドメインの可変重鎖領域にさらに分割され得る。
【0059】
実施例2-一過性トランスフェクション
BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2および親抗体の一過性トランスフェクションを、120rpm、37℃および8%CO2でのFreeStyle(商標)無血清培地(Invitrogen)中で培養したHEK293F懸濁細胞において実施した。トランスフェクションに1日前、細胞を0.7×106に分割した。293fectin(商標)トランスフェクション試薬(Invitrogen)300μLおよび200μgのDNAを5mLのOpti-MEM(登録商標)I Reduced Serum Medium(Invitrogen)に別々に希釈し、室温で5分間インキュベートした。DNAおよび293fectin(商標)混合物を結合させ、さらに30分間インキュベートし、次に300mLの1×106のHEK293F細胞/mLに添加した。トランスフェクトした培養物の体積を、FreeStyle(商標)無血清培地を用いて3日ごとに2倍にした。培養物を11日目に1500×gで10分間の遠心分離により収集し、0.2mMで濾過した(エッペンドルフ)。
【0060】
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2および親抗体の発現を、プロテインA結合法を用いて監視した。培地の一定分量を0.2μmで濾過し(エッペンドルフ)、HPLCシステム(Agilent 1100 Capillary LC)を用いてプロテインAカラム(POROS(登録商標)Aの20μmカラム、4.6×50mm、0.8mL)上に負荷した。カラムを1倍PBS(pH7.2)で洗浄し、抗体を0.1%リン酸(pH1.8)で溶出させた。A280nmのUVシグナルを取り込むことによって決定される溶出ピーク下面積を測定し、発現レベルを既知のIgG標準と比較することによって計算するために用いた。表1は、親抗体およびBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の発現レベルを示す。
【0061】
【0062】
実施例3-タンパク質の精製および濃度測定
抗体を標準のプロテインA親和性クロマトグラフィー法により精製した。条件培地1リットルを1500×gで10分間遠心分離し、0.2μM真空濾過した(Nalgene)。濾過した上清を、Akta Explorer(GE)を用いるmAbselect(商標)プロテインAカラム(GE)上に負荷した。プロテインAカラムを20カラム体積の1倍PBS(pH7.2)で平衡化し、5mL/分の流速を用いて濾過した培地を負荷した。結合していない材料を、20カラム体積の1倍PBS(pH7.2)を用いることにより除去した。10カラム体積の0.1Mグリシン、150mM塩化ナトリウム(pH3.2)を用いて抗体溶出を実施した。280nmの吸光度を用いて溶出を監視した。プロテインA溶出抗体は、1/10の体積/画分の1Mトリス-HCl(pH7.0)を用いることにより、直ぐに中和した。次に、0.22μMのシリンジフィルター(Nalgene)を用いて抗体を濾過した。精製抗体の濃度は、NanoDrop(NanoDrop)を用いて280nmでの吸光度を読み取ることおよび1.4M-1cm-1の消衰係数により判定した。
【0063】
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の発現中に生成される凝集体は、Ceramic Hydroxyapatite Type II(GE)精製により効率的に除去することができる。CHTカラムを5カラム体積の1M水酸化ナトリウムで予め条件化し、5mL/分での1倍PBS(pH7.2)でpH7.2に中和した。カラムを使用前に平衡化するため、20カラム体積の緩衝液A(20%の1倍PBS、pH7.2、滅菌水中)を用いた。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2プロテインA溶出液をCHTカラム上に直接的に負荷し、20カラム体積の緩衝液Aで洗浄した。単量体画分を、15%緩衝液Aおよび85%緩衝液B(5倍PBS、pH7.2)で15カラム体積にわたり溶出させた。100%緩衝液Bを用いて凝集体を溶出させた。代表的な溶出特性を
図6に示す。単量体画分を1倍PBS(pH7.2)で一晩透析した。
【0064】
凝集体レベルを判定するため、また磨くステップが必要である場合、プロテインA精製後、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の単量体含量を測定した。TSK GEL G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience)を備えるAgilent 1100 HPLC(Agilent)を用いて、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を実施した。250μgの二重特異性抗体をその分析用に用いた。用いた移動相は、0.1M硫酸ナトリウム、0.1Mリン酸ナトリウム、pH6.8であり、280nmの吸収性を用いて抗体を監視した。Chemstationソフトウェア(Agilent)をその分析用に用い、Prism5ソフトウェア(GraphPad)を用いて図面を準備した。タンパク質精製後およびセラミックハイドロキシアパタイト精製後の代表的な単量体含量を
図7に示す。BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2における凝集体の少なくとも12%は、セラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより効率的に除去され得る。
【0065】
実施例4-BISAB-VEGF H1RK-ANG-2の分析的特徴づけ
SDS-PAGEの還元および非還元により、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2を分析した。2μgのタンパク質、抗VEGFまたはBiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2は、1×NuPAGE還元剤(Invitrogen)の存在下および不在下で、15μLの1倍PBS(pH7.2)中でLDS-PAGE負荷緩衝液5μLと混合した。Novex Sharp Pre-Stained Protein Standard(Invitrogen)10μLをタンパク質ラダーとして用いた。試料を、70℃で10分間加熱し、ベンチトップ遠心機を用いて13,500rpmで遠心沈殿させ、4~12%Nupageゲル(Invitrogen)上に負荷した。電気泳動は、MOPS緩衝液中、200ボルトで1時間実施した。SDS-PAGEゲルを、SimplyBlue(商標)SafeStain(Invitrogen)で染色し、水で一晩脱染色した。代表的なSDS-PAGEゲルを
図8に示す。
【0066】
BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の画像化キャピラリー等電点電気泳動を、iCE2アナライザー(ProteinSimple)を用いて実施した。pH3~10および8~10.5のファルマライトをSigmaから入手した。陽極液(0.1%メチルセルロース中、80mMリン酸)、陰極液(0.1%%メチルセルロース中、100mM水酸化ナトリウム)、0.5%メチルセルロース、ヘモグロビンおよび両性電解質およびpIマーカー(0.35%メチルセルロース中)を含む、iCE3アナライザーの性能評価のためのFCカートリッジChemical Testing Kitは、ProteinSimpleから購入した。5.85および9.46pIマーカーは、ProteinSimpleから入手した。用いるFCカートリッジ分離は、ProteinSimpleから購入した。BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2は、脱イオン水中、1mg/mLで調製した。1mg/mlのBs3Ab-VEGF-Ang2溶液50μl、5.85pIマーカー2μl、9.46pIマーカー2μl、0.5%メチルセルロース140μl、3~10のファルマライト2μlおよび8~10.5のファルマライト6μlを結合させ、45秒間ボルテックスし、10,000rpmで3分間遠心分離した。オートサンプラー(ProteinSimple)を用いて、試料をキャピラリーに導入した。試料分離を、1000kVで1分/秒、その後の3000kVで7分/秒のプレフォーカスにより実施した。検出は、280nmでのジュウテリウムランプ検出器を用いて実施した。データを分析し、iCE280アナライザーソフトウェアを用いて図面を準備した。BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の代表的なフォーカシングを
図9に示し、タンパク質のpIを示す。
【0067】
BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2を、VP-DSC(Microcal)を用いる示差走査熱量測定分析に先立ち、25mMヒスチジン(pH6.0)で一晩3回透析した。最終透析緩衝液を参照スキャン用に用い、参照サブトラクションにおける安定なベースラインを得た。試薬を最低で2分間脱気し、タンパク質を参照緩衝液で1mg/mLに希釈し、16秒のフィルター期間を用いて20℃から110℃にかけて1℃/分で走査した。BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2における代表的な転移温度を
図10に示す。
【0068】
実施例5-BIS3AB-VEGF H1RK-ANG-2のANG-2に対する結合親和性
BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2のANG-2に対する結合親和性を判定した。平衡結合定数(KD)は、KinExA 3000および3200機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)でなされた測定から得られた。ヒトANG-2(huAng2)タンパク質を、コーティング緩衝液(50mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH9)中、5mg/mLおよび30mg/mLの濃度でUltraLink(登録商標)Biosupportビーズ(PIERCE,Rockford,IL)上にコーティングした。次に、コーティングされたビーズを未反応のhuAng2タンパク質溶液から分離し(穏やかなパルススピン)、室温、BSAを10mg/mLで含有する)1Mトリス(pH8)で約15分間ブロッキングした。この後、ブロッキング溶液を除去するため、ビーズスラリーを回転させ、次にブロッキングステップを、新しいブロッキング緩衝液を用いて約2時間反復し、使用まで4℃で貯蔵した。使用前にhuAng2でコーティングされたビーズをビーズバイアルに移し、約27mLの機器緩衝液(HBS-P緩衝液(pH7.4)は、10mMヘペス、0.15M NaCl、0.005%P20+0.02%NaN3を含有する)に再懸濁し、KinExA機器にかけた。つまり、BiS3Ab-VEGF H1RK-ANG-2の溶液を、機器緩衝液(HBS-P緩衝液)中、4pM、40pMおよび400pMで調製し、次に3つの別々の一連の13チューブに分注した。二重特異性抗体のこれらの濃度は、受容体およびKDの双方が制御される条件下で測定できるように選択し、それにより試薬の活性および親和性各々のより厳密な推定が可能になった。次に、huAng2タンパク質の2倍連続希釈物を、二重特異性抗体溶液を含有するチューブの9つを通じて、その後10倍希釈物を、さらなる2つのチューブを通じて滴定し、1つのチューブを二重特異性のみの「ゼロ」対照として残した。そのように行うことで、これにより、huAng2タンパク質の39fM~2nM(4pMの二重特異性実験)、156pM~8nM(40pMおよび400pMの二重特異性実験)を範囲とする一連の濃度が得られた。ソフトウェアベンダー(Sapidyne Instruments,Boise,Idaho)を通じて利用可能な理論曲線のシミュレーションに基づき、混合物を室温で1~3日インキュベートし、結合を平衡に到達できた。この期間の終了時、各測定セットにおける適切な稼動条件を決定するため、シグナル試験の実験を行った。BSAを1mg/mLで含有する機器緩衝液中、0.75mg/mLまたは1.0mg/mLで用いる種特異的な二次抗体試薬(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-DyLight649、パート番号109-495-088、Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、遊離抗体の検出が可能になった。次に、表2に報告のような平衡結合定数(KD)を得るため、すべての測定セットから得られるデータを、該ソフトウェアのn曲線分析の特徴を用いて1サイト結合モデルに同時にフィッティングした。
【0069】
【0070】
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2のVEGFに対する結合親和性を判定した。抗hu-ANG2の測定と同様、平衡結合定数(KD)の測定をKinExA 3000および3200機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)で実施した。ヒトVEGF(huVEGF)タンパク質を、コーティング緩衝液(50mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH9)中、3mg/mL、30mg/mLおよび50mg/mLの濃度でUltraLink(登録商標)Biosupportビーズ(PIERCE,Rockford,IL)上にコーティングした。次に、コーティングされたビーズを、未反応のhuVEGFタンパク質溶液から分離し(穏やかなパルススピン)、室温、BSAを10mg/mLで含有する)1Mトリス(pH8)で約15分間ブロッキングした。この後、ブロッキング溶液を除去するため、ビーズスラリーを回転させ、次にブロッキングステップを、新しいブロッキング緩衝液を用いて約2時間反復し、使用まで4℃で貯蔵した。使用前にhuAng2でコーティングされたビーズをビーズバイアルに移し、約27mLの機器緩衝液(10mMヘペス+300mM NaCl+5mM CaCl2+0.05%P20+0.02%NaN3、pH8)に再懸濁し、KinExA機器にかけた。つまり、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の溶液を、機器緩衝液中、10pM、100pMおよび2.5nMで調製し、次に3つの別々の一連の13チューブに分注した。二重特異性抗体のこれらの濃度は、受容体およびKDの双方が制御される条件下で測定できるように選択し、それにより試薬の活性および親和性各々のより厳密な推定が可能になった。次に、huVEGFタンパク質の2倍連続希釈物を、二重特異性抗体溶液を含有するチューブの9つを通じて、その後10倍希釈物を、さらなる2つのチューブを通じて滴定し、1つのチューブを二重特異性のみの「ゼロ」対照として残した。そのように行うことで、これにより、huVEGFタンパク質の78fM~4nM(10pMの二重特異性実験)、488fM~25nM(100pMの二重特異性実験)、および3.91pM~200nM(2.5nMの二重特異性実験)を範囲とする一連の濃度が得られた。ソフトウェアベンダー(Sapidyne Instruments,Boise,Idaho)を通じて利用可能な理論曲線のシミュレーションに基づき、混合物を室温で1~4日インキュベートし、結合を平衡に到達できた。この期間の終了時、各測定セットにおける適切な稼動条件を決定するため、シグナル試験の実験を行った。BSAを1mg/mLで含有する機器緩衝液中、0.75mg/mL、1.0mg/mLまたは2mg/mLで用いる種特異的な二次抗体試薬(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-DyLight649、パート番号109-495-088、Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、遊離抗体の検出が可能になった。次に、上の表2に報告のような平衡結合定数(KD)を得るため、すべての測定セットから得られるデータを、該ソフトウェアのn曲線分析の特徴を用いて1サイト結合モデルに同時にフィッティングした。
【0071】
実施例6-BIS3AB-VEGF H1RK-ANG-2によるANG-2およびVEGF165への同時結合
25℃、Biacore3000(GE Healthcare)で、製造業者(GE Healthcare)によって提供される標準のアミンカップリングプロトコルを用い、10mM酢酸塩(pH5)中でCM5センサーチップ表面上に固定化した10nMのVEGF165、100nMのAng2および10nMのBs3Ab-VEGF-Ang2を用いて、同時結合実験を実施した。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2溶液の固定化チップ、100nMのVEGF、および100nMのVEGFと500nMのANG-2との混合物をHBS緩衝液(GE Healthcare)中で調製した。VEGF溶液を30mL/分の流速で500秒間注射した。初回注射後のVEGFまたはVEGF/ANG-2混合物の追加的な注射は、250秒間注射した。500nMのANG-2の初回注射、その後のVEGF/ANG-2混合物のさらなるANG-2注射により、同様の実験を実施した。同時結合をさらに確認するため、VEGFおよびANG-2でコーティングされたチップを用いた。VEGF165の表面においては、50nMのBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2が30mL/分で600秒間流れ、その後、50nMのBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2および500nMのANG-2の2回目注射を行った。同様の実験のため、ANG-2の表面を用いた。30mL/分で500秒間の初回注射用に、50nMのBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を用いた。2回目注射は、50nMのBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2またはBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2と100nMのVEGF165との混合物のいずれかを用いて行った。データはBIAevaluation(GE Healthcare)を用いて分析し、図面はPrism5(Graph Pad)を用いて準備したが、代表的結果を
図11に示す。
【0072】
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2抗体はまた、二重結合ELISAにおいて、VEGFおよびANG-2への同時結合についてスクリーニングした。マキシソーププレート(Nunc、カタログ番号439454)を、Ca++またはMg++の不在下、PBSで希釈した1.0μg/mLのヒトまたはマウスVEGF(Peprotech)100μlでコーティングし、一晩冷蔵した。プレートをデカントし、次にプレートシェーカー上、200μlの3%BSAを含有するブロッキング緩衝液(Sigma、カタログ番号A-3059)および1倍PBS中0.1%ツイーン20で1.5時間ブロッキングした。プレートを、0.1%ツイーン20を含有する1倍PBSで3回洗浄した。ブロッキング緩衝液中、50μlの60nMおよび連続希釈物のBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2二重特異性抗体、ANG-2抗体、またはr347アイソタイプ対照群を有する二重特異性抗体(BS3Ab-r347-ANG2)を二通りに添加し、プレートシェーカー上で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次にブロッキング緩衝液中、50μlの1μg/mlのヒトまたはマウスAng2-ビオチン(R&D Systems)を各ウェルに添加し、プレートシェーカー上、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次に50μlの1:15,000のストレプトアビジンHRP(Pierce)を、プレートシェーカー上、室温で1時間添加した。プレートを洗浄し、次に50μlのTMB溶液(KPL)を各ウェルに添加することにより展開し、次に反応を50μlの1Mリン酸で停止させた。マイクロプレートリーダーを用いて、プレートを450nmで読み取った。GraphPad Prism、バージョン5.01(San Diego,CA)における非線形回帰分析(ログ用量反応、4パラメータフィット曲線)を用いて、EC50値を判定した。代表的結果を
図12A(ヒト)および
図12B(マウス)に示す。ヒトおよびマウスのVEGFおよびANG-2に対する強力な同時結合が、VEGFおよびANG-2に同時に結合できないことを意味する、このアッセイにおける弱い結合を示すAng2抗体(MEDI3617)単独およびBS3Ab-r347-ANG2と比べて、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2により示された(EC50は各々、10.8pMおよび103.8pM)。
【0073】
実施例7-BISAB-VEGF H1RK-ANG-2のVEGF121への結合低下についてのスクリーニング
ELISAフォーマットで、抗体のVEGF121への結合についてスクリーニングした。96ウェルハーフウェルのマキシソーププレートを、Ca++またはMg++の不在下、PBSで希釈した2μg/mLのヒトVEGF(Peprotech)25μlでコーティングし、一晩冷蔵した。プレートをデカントし、次に180μlの3%BSAを含有するブロッキング緩衝液(Sigma、カタログ番号A-3059)および1倍PBS中0.1%ツイーン20で、37℃で1.5時間ブロッキングした。プレートを、0.1%ツイーン20を含有する1倍PBSで3回洗浄した。ブロッキング緩衝液中、50μlの連続希釈物の抗VEGF抗体、Avastin(登録商標)(陽性対照;抗VEGF抗体)およびr347(陰性対照)を二通りに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次に50μlの1:5000のヤギ抗ヒトHRP IgG H+L(Jackson Immunoresearch)を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを50μlのTMB溶液(KPL)を各ウェルに添加することにより展開し、次に反応を50μlの1Mリン酸で停止させた。マイクロプレートリーダーを用いて、プレートを450nmで読み取った。代表的結果を
図13に示す。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、陽性対照B20-4.1と比べて、VEGF121への結合が欠けていた。
【0074】
実施例8-BISAB-VEGF H1RK-ANG-2のVEGF189への結合低下についてのスクリーニング
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を、ELISAフォーマットでVEGF189への結合についてスクリーニングした。96ウェルハーフウェルのマキシソーププレートを、Ca++またはMg++の不在下、PBSで希釈した2μg/mLのヒトVEGF189(R&D Systems)25μlでコーティングし、一晩冷蔵した。プレートをデカントし、次に180μlの3%BSAを含有するブロッキング緩衝液(Sigma、カタログ番号A-3059)および1倍PBS中0.1%ツイーン20で、37℃で1.5時間ブロッキングした。プレートを、0.1%ツイーン20を含有する1倍PBSで3回洗浄した。ブロッキング緩衝液中、50μlの6.7nMおよび連続希釈物のBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2、G6-31(陽性対照)およびBS3Ab-r347-ANG2(陰性対照)を二通りに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次に50μlの1:5000のヤギ抗ヒトHRP IgG H+L(Jackson Immunoresearch)を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを50μlのTMB溶液(KPL)を各ウェルに添加することにより展開し、次に反応を50μlの1Mリン酸で停止させた。マイクロプレートリーダーを用いて、プレートを450nmで読み取った。
図14は、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2における代表的結果を示す。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、陽性対照G6-31と比べて、VEGF189への5倍低い結合を示した(EC50は0.057nM対0.0096nM)。
【0075】
実施例9-VEGF-ANG2二重特異性抗体の力価を判定するための機能的アッセイ
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を、ヒト、マウスおよびカニクイザル(cyno)受容体の場合に細胞株中のpVEGFR2およびpTie2を低下させる能力について判定するため、機能的バイオアッセイでスクリーニングした。Ad293-HuVEGFR2(Cl.E2)、Hek293-Tie2、Ad293-muVEGFR2-muAng2細胞(Cl.D10)、Ad293-cynoVEGFR2-cynoAng2細胞(Cl.SB5)およびAd293-cynoTie2細胞(Cl.D12)を安定なトランスフェクションから作製した。細胞を、100μlのDMEM+10%FBS(Life Tecknologies,Carlsbad,CA)を有する96ウェルのポリ-D-リジン組織培養プレート(Costar,Tewksbury,MA)にサブコンフルエント状態で播種し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、培地を吸引し、50μlの飢餓培地(DMEM+0.2%FBS+0.1%BSA)と交換し、細胞をインキュベーターに一晩戻した。24時間後、培地を吸引し、2660nM(2倍濃度)の抗体、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2およびBS3Ab-HPV-r347陰性対照を血清不含DMEM+0.1%BSAで連続希釈し、37℃で30分間、プレートに二通りに添加した。次に、50μlの12μg/mlのヒト、マウス(R&D Systems)またはカニクイザルAng2(自家調製)+20nMのヒト、マウス(Peprotech,Rocky Hill,NJ)、またはカニクイザル(自家調製)VEGF(4倍)(1:1に混合)をウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。次にプレートを37℃でさらに7分間インキュベートした。プレートをデカントし、ウェルをプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Life Tecknologies,Carlsbad,CA)を含有する氷冷RIPA溶解緩衝液(Boston BioProducts,Boston,MA)55μlで溶解した。ヒト、カニクイザルおよびマウスpVEGFR2を、pVEGFR2全細胞ライセートキット(Meso Scale Diagnostics,Rockville,MD)を用いて検出した。
【0076】
ヒトおよびカニクイザルpTie2については、Meso Scale Diagnostics(MSD)プラットフォームを用いて開発されたプロトコルを用いて判定した。MSD high bindプレートを、2μg/mlのTie2抗体クローン16(Abcam,Cambridge,MA)で一晩コーティングした。翌日、プレートをトリス緩衝生理食塩水(TBS)のみで洗浄し、TBS中、3%MSD Blocker A+0.05%ツイーン20(Sigma,St Louis,MO)で回転振盪下、室温で1時間ブロッキングした。プレートをTBS+0.05%ツイーン20で洗浄し、ライセートをプレートに添加し、次に回転振盪下、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1μg/mlの抗ヒトTie2抗体(AF2720,R&D Systems,Minneapolis,MN)を回転振盪下、室温で1時間添加した。プレートを洗浄し、次に1μg/mlのスルホタグヤギ抗ウサギ二次抗体(MSD,Rockville,MD)をプレートに回転振盪下、室温で1時間添加した。プレートを洗浄し、Read Buffer T(MSD,Rockville,MD)を添加し、次にプレートを、Sector Imager 6000(MSD,Rockville,MD)を用いて直ぐに読み取った。
【0077】
マウスpTie2については、Meso Scale Diagnostics(MSD)プラットフォームを用いて開発されたプロトコルを用いて判定した。MSDストレプトアビジンプレートを、TBS中、3%MSD Blocker A+0.05%ツイーン20(Sigma,St Louis,MO)で回転振盪下、室温で1時間ブロッキングした。プレートをTBS+0.05%ツイーン20で洗浄し、次にブロッキング緩衝液中、25μl/ウェル、2μg/mlのビオチン抗マウスTie2抗体(Biolegend#124006)を回転振盪下、室温で1時間インキュベートした。プレートをデカントし、3回洗浄した。次に、25μl/ウェルのライセートをウェル毎に二通りに添加し、プレートシェーカー上、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次にスルホタグPY20(MSD)25μlをウェル毎に添加し、プレートシェーカー上、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次に150μlの2×MSD Read Buffer Tを添加し、Sector Imager 6000(MSD,Rockville,MD)を用いてプレートを直ぐに読み取った。
【0078】
pTie2およびpVEGFR2に対するパーセントリン酸化を、式:[平均RLU(試験試料)/平均RLU(抗体なし)]*100により算出した。代表的結果を表3に示す。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、ヒト、マウスおよびカニクイザルのpVEGFR2およびpTie2を強力に減少させ、これは両群が二重特異性形式で機能的であることを示す。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の抗ANG-2活性は、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2のscFV抗ANG-2を作製するために用いられるANG-2抗体(MEDI3617)と比べると、顕著により大きい活性を示した。
【0079】
【0080】
実施例10-BISAB-VEGF H1RK-ANG-2のインビボ活性
BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を、786-0腎細胞がんおよびBxPC3膵がんモデル(腫瘍区画内部の抗血管新生を図示するためのBxPC3腫瘍のキャスティングを含む)における有効性について、インビボで試験した。追加的に、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の活性をさらに実証するため、網膜脈管形成モデルを実施した。さらに、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2で、VEGFのすべてのアイソフォームに結合する抗VEGF陽性対照抗体(G6-31)と比べて毒性低下が生じるか否かを判定するため、マウスにおける血小板減少症のモデルを実施した。最後に、腎臓病理を評価した。
【0081】
786-0腎細胞がんモデルにおいては、ヒト腎がん細胞株786-0からの腫瘍断片を、ヌードマウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍体積が約200mm
3に達した後、投与を開始した。マウスを週に2回、全部で6回用量にわたり治療した(軸上の三角形)。用量を分子量に基づいて正規化した。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、腫瘍増殖を低下させるのに、ANG-2抗体(MEDI3617)またはVEGF抗体(Avastin(登録商標))単独のいずれかと比べてより有効であった。一元配置分散分析Graphpad Prismバージョン5.01(San Diego California)による判定として、P値=0.03である。代表的データを
図15に示す。
【0082】
BxPC3膵がんモデルにおいては、BxPC3腫瘍断片を、雌の重症複合免疫不全マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍体積が約200mm
3に達した後、投与を開始した。マウスに週に2回、全部で6回用量にわたり投与した(軸上の三角形)。用量を分子量に基づいて正規化した。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、腫瘍増殖を低下させるのに、ANG-2抗体(MEDI3617)またはVEGF抗体(Avastin(登録商標))単独のいずれかと比べてより有効であった。一元配置分散分析Graphpad Prismバージョン5.01(San Diego California)による判定として、P値=0.02である。代表的データを
図16に示す。
【0083】
腫瘍体積に加えて、腫瘍脈管構造を、BxPC3膵がんモデル研究から得た腫瘍を用いて評価した。マウスに対し、血液凝固を防止するため、安楽死の15分前にヘパリンを投与した。0.1mMナトリウムニトロプルシドの溶液を、約6mL/分の速度で灌流した。Microfil MV-122を、ラテックス8mL、希釈剤10mLおよび治療剤900uLを混合することにより調製した。混合物が定着後(約1分)、17mLの総体積が投与されるまで、それを2mL/分の速度で灌流した。60~90分後、腫瘍を切断し、10%NBF中に24時間浸漬した。次に、試料を、24時間、エタノール勾配(25%ETOH/PBS、50%ETOH/PBS、75%ETOH/PBS、95%ETOH、そして次に100%ETOH)を通して各勾配レベルに移行させた。最終のインキュベーション後、光学顕微鏡によるイメージング前に脱水した腫瘍試料を清澄化するため、試料をサリチル酸メチルに浸漬した。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を有するマウスにおいて、腫瘍脈管構造が縮小した。代表的データを
図17に示す。
【0084】
上記のモデルに加えて、網膜血管新生モデルにおいてBiSAb-VEGF H1RK-ANG-2を評価した。このモデルを用いて、CD1マウスに対し、出生時、1、3、および5日目に腹腔内に投与した。8日目、マウスに対し、麻酔し、フルオレセイン標識デキストランを注入した。眼を取り除き、フラットマウントの調製前に10%ホルマリンで固定した。フラットマウントを蛍光顕微鏡により試験した。
【0085】
新生児網膜血管新生は、2つのプロセス、すなわち視神経から網膜の縁への血管遊走(
図18のドット矢印)および分岐からなる。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、血管遊走が、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の不在下での遊走の程度と比べて減少することを示した。代表的結果を
図18に示す。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、血管分岐が、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の不在下での分岐の程度と比べて減少することを示した。代表的データを
図19に示す。
【0086】
血小板減少症モデルにおいては、Meyer et al.(J Thromb Haemost 7:171-81,2009)からの方法を採用した。つまり、8~16週齢のFCγ受容体2Aトランスジェニックマウスに対し、予備混合したVEGF165、0.6単位のヘパリン、および抗体を側方尾静脈に注射した。次に、マウスを窮迫の行動徴候について観察し、(-)コーナー間を常に停止および移動、正常な呼吸、(+)嗜眠の徴候、より長い持続時間での停止および移動、浅い呼吸、(++)非常に嗜眠的、移動の停止、ボックスの概ね片側に滞在、深い呼吸、(+++)重度の血栓事象-攣縮およびトワリング(twirling)、(++++)死亡、としてスコア化した。BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2は、抗VEGF対照(G6-31)と比べて血小板減少症を低減していた。代表的データを表4に示す。
【0087】
【0088】
1群あたり動物4匹からの腎臓を、過ヨウ素酸シッフ(PAS)を介した染色により試験した。PAS染色を用いて、治療薬の14回投与後、腎臓病理について試験した。抗VEGF(G6-31)で治療した動物において、BiSAb-VEGF H1RK-ANG-2の場合と比べて、メサンギウムマトリックスの増加およびキャピラリーループの肥厚化(矢印)が認められた。代表的データを表5および
図20A~Cに示す。
【0089】
【0090】
参照による援用
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書中に引用されるすべての参考文献、およびそれらに引用される参考文献は、あらゆる目的でそれらの全体が参照により本明細書中に援用されることがまだなされていないが、ここでなされる。
【0091】
均等物
前述の明細書文書は、当業者が実施形態を実行することを可能にするのに十分であると考えられている。しかし、上文がテキストでいかに詳細に述べられていても、実施形態が多くの方法で実行されてもよく、特許請求の範囲がその任意の均等物を含むことは理解されるべきである。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)重鎖相補性決定領域1~3(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域1~3(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む第1の結合ドメインと、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む第2の結合ドメインとを含む二重特異性抗体であって、ここで前記第1の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号17~22を含み、ここで前記第2の結合ドメインのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3が各々、配列番号23~28を含む、二重特異性抗体。
(2)前記第1の結合ドメインが、配列番号3および9を各々含む重鎖および軽鎖を含み、かつ前記第2の結合ドメインが、配列番号5および11を各々含む重鎖および軽鎖を含む、(1)に記載の二重特異性抗体。
(3)前記重鎖アミノ酸配列が配列番号1を含み、かつ前記軽鎖アミノ酸配列が配列番号7を含む、(1)に記載の二重特異性抗体。
(4)部分VH-CH1-H-CH2-CH3、VL-CL、および1つ以上のscFv、L1、または任意選択的にはL2を有する式(式中、前記各部分は、VH=重鎖可変ドメイン;CH1=重鎖定常領域ドメイン1;H=ヒンジ領域;CH2=重鎖定常領域ドメイン2;CH3=重鎖定常領域ドメイン3;VL=可変軽鎖ドメイン;CL=軽鎖定常ドメイン;L1=リンカー;およびL2=L1と独立したリンカーである)であって、
a.VH-CH1-CH2-CH3およびscFv-L1-VL-CL;
b.scFv-L1-VH-CH1-CH2-CH3およびVL-CL;
c.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFvおよびVL-CL;
d.VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFv-L2およびVL-CL(式中、L1およびL2はCH3に共有結合される);
e.VH-CH1-L1-scFv-L2-CH2-CH3およびVL-CL(前記重鎖は、ヒンジ領域を有し得る、またはヒンジレスであり得る)
であり得る、式を含む、(1)に記載の二重特異性抗体。
(5)前記式VH-CH1-CH2-CH3-L1-scFvおよびVL-CLを含む、(4)に記載の二重特異性抗体。
(6)前記scFvが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、(5)に記載の二重特異性抗体。
(7)(1)に記載の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸配列。
(8)(7)に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
(9)(8)に記載のベクターを含む細胞。
(10)(1)に記載の二重特異性抗体を作製する方法であって、(9)に記載のベクターを含む細胞を培養するステップを含む、方法。
(11)血管新生を低減する方法であって、(1)に記載の二重特異性抗体を対象に提供するステップを含む、方法。
【配列表】