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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】PRLR陽性乳癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221110BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZMD
A61K39/395 E ZNA
A61K31/537
A61K31/5383
A61K31/565
A61K47/68
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2019528685
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017063476
(87)【国際公開番号】W WO2018102304
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】62/427,534
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254806
【氏名又は名称】レゲネロン ファーマシューティカルス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーカス ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ アール. カーシュナー
(72)【発明者】
【氏名】ガビン サーストン
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0056222(US,A1)
【文献】岩瀬 弘敬 Hirotaka IWASE Hirotaka IWASE,乳癌ホルモン療法のUpdate 2012 Current and future aspects of endocrine therapy for breast cancer,医学のあゆみ(別冊) 乳癌診療Update 1月 ,大畑 秀穂 医歯薬出版株式会社
【文献】Mol. Cancer Ther.,2013年,Vol.12, Issue 3,p. 295-305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含む、PRLR陽性乳癌を治療するための医薬組成物であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合し、かつ、該抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号404のアミノ酸72~94;(ii)配列番号404のアミノ酸72~95;(iii)配列番号404のアミノ酸96~101;(iv)配列番号404のアミノ酸96~102;及び(v)配列番号405のアミノ酸配列からなる群から選択されるPRLRアミノ酸配列と相互作用し、かつ、該医薬組成物は、該ADCがフルベストラントと共投与されるように用いられることを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.3nM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.2nM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.0nM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約900pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約800pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約600pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約400pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約200pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約100pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約80pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約60pM未満のIC50で遮断するか、又は、
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約40pM未満のIC50で遮断する、
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
プロラクチン受容体(PRLR)と結合する前記抗体又はその抗原結合断片が、水素/重水素交換により決定されるように、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン(配列番号404のアミノ酸27~128)内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用するか、又は、
前記抗体又はその抗原結合断片が、水素/重水素交換により決定されるように、配列番号405内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用する、
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号405内に含有される少なくとも10個のアミノ酸と相互作用するか、又は、
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号405内に含有される少なくとも20個のアミノ酸と相互作用する、
請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記メイタンシノイドがDM4であるか、又は、
前記メイタンシノイドがDM1であるか、又は、
前記メイタンシノイドが、切断可能なリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされているか、又は、
前記メイタンシノイドが、切断不可能なリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされているか、又は、
前記メイタンシノイドが、4-[-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、SPDB、mc-val-cit、及びmc-val-cit-PABからなる群から選択されるリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされているか、又は、
前記メイタンシノイドが、リンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされており、ここで、該リンカーは4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)である、
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ADCがプロラクチン媒介性STAT5活性を阻害するか、又は、
前記ADCがPRLRを発現する細胞において有糸分裂停止を誘導するか、又は、
前記ADCがPRLRを発現する細胞の成長を阻害するか、又は、
前記医薬組成物で治療される患者が、以前、エストロゲン受容体阻害剤を用いて治療されていたか、又は、
前記医薬組成物の有効量が、癌の進行を遅延させる又は阻害するのに十分であるか、又は、
前記ADCが、静脈経路で投与されるか、又は、
前記乳癌におけるPRLRの発現が、治療後に実質的に低減されないか、又は、
前記ADCが、バックグラウンドの30倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷するか、又は、
前記ADCが、バックグラウンドの20倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷するか、又は、
前記ADCが、バックグラウンドの12倍を超えるがバックグラウンドの30倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する、
請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体又は抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;又は370/378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)対の、HCVRアミノ酸配列内に3つの重鎖相補性決定領域(CDR)を、LCVRアミノ酸配列内に3つの軽鎖相補性決定領域を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号28、配列番号30、及び配列番号32の配列を有するCDRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号18/26からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号76、配列番号78、及び配列番号80の配列を有するCDRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号66/74からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号284、配列番号286、及び配列番号288の配列を有するCDRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号274/282からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号300、配列番号302、及び配列番号304の配列を有するCDRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号290/298からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号372、配列番号374、配列番号376、配列番号380、配列番号382、及び配列番号384の配列を有するCDRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号370/378からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;及び370/378からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、PRLRへの結合に関して競合する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項19】
MCCリンカーを介してDM1にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含む、PRLR陽性乳癌を治療するための医薬組成物であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;又は370/378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)対の、HCVRアミノ酸配列内に3つの重鎖相補性決定領域(CDR)を、LCVRアミノ酸配列内に3つの軽鎖相補性決定領域を含み、かつ、該医薬組成物は、該ADCがフルベストラントと共投与されるように用いられることを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項20】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号300、配列番号302、及び配列番号304の配列を有するCDRを含む、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗体又は抗原結合断片が、配列番号290の配列を有するHCVR及び配列番号298の配列を有するLCVRを含む、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
腫瘍細胞が細胞当たり100万コピー未満のPRLRを発現するPRLR陽性乳癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含み、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合し、かつ、該抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号404のアミノ酸72~94;(ii)配列番号404のアミノ酸72~95;(iii)配列番号404のアミノ酸96~101;(iv)配列番号404のアミノ酸96~102;及び(v)配列番号405のアミノ酸配列からなる群から選択されるPRLRアミノ酸配列と相互作用し、かつ、該医薬組成物は、該ADCがフルベストラントと共投与されるように用いられることを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項23】
前記腫瘍細胞が、細胞当たり3000~500,000コピーのPRLRを発現する、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号300、配列番号302、及び配列番号304の配列を有するCDRを含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗体又は抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;又は370/378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)対の、HCVRアミノ酸配列内に3つの重鎖相補性決定領域(CDR)を、LCVRアミノ酸配列内に3つの軽鎖相補性決定領域を含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記メイタンシノイドがDM1であるか、又は、
前記抗体又はその抗原結合断片が、リンカーを介してDM1にコンジュゲートされており、ここで、該リンカーが4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)である、
請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記フルベストラントが所定の時点で前記ADCよりも前に投与されるか;又は、前記ADCが所定の時点で前記フルベストラントよりも前に投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが同じ時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが異なる時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが所定の間隔によって隔てられた異なる日に投与される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記フルベストラントが所定の時点で前記ADCよりも前に投与されるか;又は、前記ADCが所定の時点で前記フルベストラントよりも前に投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが同じ時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが異なる時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが所定の間隔によって隔てられた異なる日に投与される、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記フルベストラントが所定の時点で前記ADCよりも前に投与されるか;又は、前記ADCが所定の時点で前記フルベストラントよりも前に投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが同じ時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが異なる時点で投与されるか;又は、前記ADC及び前記フルベストラントが所定の間隔によって隔てられた異なる日に投与される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記フルベストラントが、150mg/kg~250mg/kgの量で投与される、請求項1~29のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項31】
メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の、PRLR陽性乳癌の治療のための医薬の製造における使用であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合し、かつ、該抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号404のアミノ酸72~94;(ii)配列番号404のアミノ酸72~95;(iii)配列番号404のアミノ酸96~101;(iv)配列番号404のアミノ酸96~102;及び(v)配列番号405のアミノ酸配列からなる群から選択されるPRLRアミノ酸配列と相互作用し、該治療は、フルベストラントとの組み合わせにおけるものである、前記使用。
【請求項32】
前記抗体又は抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;又は370/378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)対の、HCVRアミノ酸配列内に3つの重鎖相補性決定領域(CDR)を、LCVRアミノ酸配列内に3つの軽鎖相補性決定領域を含む、請求項31記載の使用。
【請求項33】
前記メイタンシノイドがDM1であるか、又は、
前記抗体又はその抗原結合断片が、リンカーを介してDM1にコンジュゲートされており、ここで、該リンカーが4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)である、
請求項31記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本開示は、(a)細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗PRLR抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート、及び(b)フルベストラントを使用する、PRLR陽性乳癌の治療方法に関する。
【0002】
(配列表)
配列表の正式な写しは、2016年11月29日の作成日で約144KBのサイズの「10314P1-US_SeqListing.txt」というファイル名を有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して本明細書と同時に電気的に提出される。このASCIIフォーマットの書類に含有される該配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書中に取り込まれている。
【背景技術】
【0003】
(背景)
プロラクチンは、プロラクチン受容体(PRLR)と相互作用することによってその活性を発揮するポリペプチド成長ホルモンである。PRLRは、クラス1サイトカイン受容体スーパーファミリーに属する1回膜貫通受容体である。PRLRへのプロラクチンの結合は、受容体二量体化及び細胞内シグナル伝達を引き起こす。PRLRを介するシグナル伝達は、乳腺の発達、泌乳、生殖、及び免疫調節などの様々な過程と関連している。さらに、高レベルのPRLR発現は、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、及び他の腫瘍型で検出されている。
【0004】
PRLRシグナル伝達の遮断は、乳癌及び前立腺癌の治療手段として提案されている。(例えば、Damiano及びWassermanの文献、Apr. 2013, Clin. Cancer Res. 19(7):1644-1650を参照されたい)。抗PRLR抗体は、例えば、米国特許第9,302,015号、第7,867,493号及び第7,422,899号で言及されている。それにもかかわらず、PRLR発現及び/又はシグナル伝達と関連する癌及び他の障害の新規な治療方法が当技術分野で必要とされている。
【0005】
本開示は、上で論じた1以上の問題を克服することに向けられている。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本明細書において提供されるのは、細胞毒性剤にコンジュゲートされた完全なヒトモノクローナル抗PRLR抗体、及びその抗原結合断片を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。該ADCは、PRLR陽性乳癌の治療に有用であることができ、フルベストラントを用いる併用療法として使用される場合に特に有用である。
【0007】
一態様において、治療有効量の:(a)細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又は抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、及び(b)フルベストラントを患者に共投与することを含む、PRLR陽性乳癌の治療方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施態様において、該細胞毒性剤はメイタンシノイドである。
【0009】
別の態様において、治療有効量の:(a)メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、及び(b)フルベストラントを患者に共投与することを含む、患者のPRLR陽性乳癌の治療方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施態様において、該メイタンシノイドはDM1又はDM4である。
【0011】
いくつかの実施態様において、該ADCは、バックグラウンドの30倍未満の発現レベルで、例えば、バックグラウンドの20倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する。いくつかの実施態様において、該ADCは、バックグラウンドの12倍超であるがバックグラウンドの30倍未満である発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する。
【0012】
別の態様において、治療有効量の:(a)MCCリンカーを介してDM1にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、及び(b)フルベストラントを患者に共投与することを含む、患者のPRLR陽性乳癌の治療方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施態様において、該患者は、以前にエストロゲン受容体阻害剤で治療された。
【0014】
本明細書に記載されるADCを用いるPRLR陽性乳癌の治療は、以下の効果、中でも特に:ADCはプロラクチン媒介性STAT5活性を阻害することができる;ADCはPRLRを発現する細胞の有糸分裂停止を誘導することができる;及び/又はADCはPRLRを発現する細胞の成長を阻害することができる、の1以上を有することができる。
【0015】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、低レベルのPRLRを発現する腫瘍細胞を殺傷する方法であって、細胞を、(a)細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、及び(b)フルベストラントと接触させることを含む方法である。いくつかの実施態様において、該腫瘍細胞は、細胞当たり100万コピー未満のPRLRを発現する。いくつかの実施態様において、該腫瘍細胞は、細胞当たり300~500,000コピーのPRLRを発現する。
【0016】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、低レベルのPRLRを発現する腫瘍細胞を殺傷する方法であって、細胞を、(a)メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、及び(b)フルベストラントと接触させることを含む方法である。
【0017】
本明細書において提供される方法に従った有用な抗体は、完全長(例えば、IgG1もしくは及びIgG4抗体)であることができるか、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab')2、もしくはscFv断片)のみを含んでいてもよく、かつ機能に影響を及ぼすように、例えば、残存するエフェクター機能を消失させるように、修飾することができる(Reddyらの文献、(2000), J. Immunol. 164:1925-1933)。
【0018】
本明細書において提供されるのは、ヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する抗体及びその抗原結合断片を含むADCの使用方法である。該ADCは、とりわけ、PRLRを発現する腫瘍細胞を標的化するのに有用である。
【0019】
本明細書において有用な例示的な抗PRLR抗体は、表1及び2に掲載されている。表1は、例示的な抗PRLR抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、並びに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)のアミノ酸配列識別子を規定している。表2は、例示的な抗PRLR抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の核酸配列識別子を規定している。
【0020】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されているHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含むHCVRを含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0021】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されているLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含むLCVRを含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0022】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたLCVRアミノ酸配列のいずれかと対になる表1に掲載されたHCVRアミノ酸配列のいずれかを含むHCVR及びLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。ある実施態様によれば、本明細書において有用なADCは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体又はその抗原結合断片を含む。ある実施態様において、該HCVR/LCVRアミノ酸配列対は: 18/26; 66/74; 274/282; 290/298;及び370/378からなる群から選択される。
【0023】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0024】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0025】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0026】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0027】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0028】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0029】
本明細書において有用なADCは、表1に記載されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対になる表1に記載されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3及びLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。ある実施態様によれば、本明細書において有用なADCは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗体又はその抗原結合断片を含む。ある実施態様において、該HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は: 24/32; 72/80; 280/288; 296/304;及び376/384からなる群から選択される。
【0030】
本明細書において有用なADCは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。ある実施態様において、該HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは: 20-22-24-28-30-32; 68-70-72-76-78-80; 276-278-280-284-286-288; 292-294-296-300-302-304;及び372-374-376-380-382-384からなる群から選択される。
【0031】
関連する実施態様において、本明細書において有用なADCは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかにより定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。例えば、PRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、18/26; 66/74; 274/282; 290/298;及び370/378からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む。HCVR及びLCVRアミノ酸配列中のCDRを同定する方法及び技術は当技術分野で周知であり、本明細書に開示される特定のHCVR及び/又はLCVRアミノ酸配列中のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することができる例示的な慣例としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、及びAbM定義が挙げられる。一般に、Kabat定義は、配列のばらつきに基づくものであり、Chothia定義は、構造上のループ領域の位置に基づくものであり、AbM定義は、Kabat法とChothia法の折衷案である。例えば、Kabatの文献、「免疫学的対象となるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991); Al-Lazikaniらの文献、J. Mol. Biol. 273:927-948(1997);及びMartinらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公的データベースも利用可能である。
【0032】
本明細書において記載される方法において有用な抗PRLR抗体又はその部分をコードする核酸分子も提供される。例えば、表1に掲載されたHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子が提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。別の実施例において、表1に記載されたLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0033】
表1に掲載されたHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたHCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0034】
表1に掲載されたHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたHCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0035】
表1に掲載されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたHCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0036】
表1に掲載されたLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたLCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0037】
表1に掲載されたLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたLCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0038】
表1に掲載されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も本明細書において提供され;ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたLCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。
【0039】
HCVRをコードする核酸分子も本明細書において提供され、ここで、該HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、ここで、該HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかにより定義されているとおりである。
【0040】
LCVRをコードする核酸分子も本明細書において提供され、ここで、該LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、ここで、該LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に掲載された例示的な抗PRLR抗体のいずれかにより定義されているとおりである。
【0041】
HCVRとLCVRの両方をコードする核酸分子も本明細書において提供され、ここで、該HCVRは、表1に掲載されたHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ該LCVRは、表1に掲載されたLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、該核酸分子は、表2に掲載されたHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列、及び表2に掲載されたLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれに対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を含む。ある実施態様において、該核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードし、ここで、該HCVR及びLCVRはどちらも、表1に掲載された同じ抗PRLR抗体に由来するものである。
【0042】
抗PRLR抗体の重鎖又は軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターも本明細書において提供される。例えば、該組換え発現ベクターは、上記の核酸分子、すなわち、表1に規定されるHCVR、LCVR、及び/又はCDR配列のいずれかをコードする核酸分子、のいずれかを含むことができる。同様に本明細書において提供されるのは、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、並びに該宿主細胞を抗体又は抗体断片の産生を可能にする条件下で培養することによって抗体又はその部分を生産する方法、並びにそのように生産された抗体及び抗体断片を回収する方法である。
【0043】
いくつかの実施態様において、本明細書において有用なADCは、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗PRLR抗体を含む。いくつかの態様において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾が有用である場合があり、すなわち、ある抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠いている(Shieldらの文献(2002) JBC 277:26733を参照されたい)。他の応用において、補体依存性細胞傷害性(CDC)を修飾するために、ガラクトシル化の修飾を行うことができる。
【0044】
別の態様において、本開示は、ADCを含む医薬組成物を提供し、ここで、該ADCは、細胞毒性剤にコンジュゲートされたPRLRに特異的に結合する組換えヒト抗体又はその断片、及び医薬として許容し得る担体を含む。関連する態様において、該組成物は、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗PRLR抗体、及び第2の治療剤の組合せを含むADCである。一実施態様において、第2の治療剤は、抗PRLR抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤、例えば、フルベストラントである。ADCは、細胞毒性剤、例えば、メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗PRLR抗体を含むことができる。いくつかの実施態様において、該メイタンシノイドはDM1又はDM4である。本明細書において提供される方法において有用な抗PRLR抗体を包含する例示的な併用療法、共製剤、及びADCは、本開示の別所に開示されている。
【0045】
また別の態様において、本明細書において提供される抗PRLR抗体又は抗体の抗原結合部分を使用する、腫瘍細胞を殺傷するか、又は腫瘍細胞成長を阻害しもしくは減弱させるための治療方法が提供される。該治療方法は、本明細書において記載されるADCを含む治療有効量の医薬組成物を、フルベストラントを用いる治療に加えて、PRLR陽性乳癌を有する対象に投与することを含む。
【0046】
本明細書において有用なADCは、配列
【化1】
(配列番号405、配列番号404のアミノ酸72~102に相当する)内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用する抗PRLR抗体を含む。
【0047】
本明細書において提供されるのは、配列番号404のアミノ酸配列の102アミノ酸以下を有する断片のそれと同じであるアミノ酸配列を含むペプチドである。関連する態様において、該断片は、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン内にある(配列番号404のアミノ酸27~128)。配列番号404のアミノ酸配列の102アミノ酸以下を有する断片のそれと同じであるアミノ酸配列から本質的になるペプチドも提供される。関連する態様において、該断片は、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン内にある(配列番号404のアミノ酸 27~128)。さらに、配列番号404のアミノ酸配列の102アミノ酸以下を有する断片のそれと同じであるアミノ酸配列からなるペプチドも提供される。関連する態様において、該断片は、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン内にある(配列番号404のアミノ酸27~128)。別の関連する態様において、該断片は、(a)配列番号404のアミノ酸72~94;(b)配列番号404のアミノ酸72~95;(c)配列番号404のアミノ酸96~101;及び(d)配列番号404のアミノ酸96~102からなる群から選択される。該ペプチドは、合成により製造するか、又は単離することができる。
【0048】
同様に本明細書において提供されるのは、配列番号404のアミノ酸配列の102アミノ酸以下を有する断片のそれと同じであるアミノ酸配列を含むペプチドを含む組成物である。関連する態様において、該断片は、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン内にある(配列番号404のアミノ酸27~128)。同様に本明細書において提供されるのは、試料中のペプチドに対して特異的な抗体の存在及び/又は量を検出する方法であって、該組成物を該試料と接触させること、及び該組成物に結合した特異的抗体の存在を検出し及び/又は量を測定することを含む方法である。関連する態様において、該ペプチドは、固体支持体に結合している。別の関連する態様において、該ペプチドは、酵素、蛍光、ビオチン、又は放射性標識などを用いて標識されている。
【0049】
同様に本明細書において提供されるのは、配列番号404のアミノ酸配列の102個以下のアミノ酸を有する断片のそれと同じアミノ酸配列をコードする核酸配列である。関連する態様において、該断片は、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン(配列番号404のアミノ酸27~128)内にある。
【0050】
同様に本明細書において提供されるのは、配列番号405のアミノ酸配列を含むペプチドである。同様に提供されるのは、配列番号405のアミノ酸配列から本質的になるペプチドである。さらに提供されるのは、配列番号405のアミノ酸配列からなるペプチドである。該ペプチドは、合成により製造するか、又は単離することができる。
【0051】
他の実施態様は、次の詳細な説明を概観することにより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A-1B】図1A及び1Bは、H1H6958N2及びH1H6958N2-DM1がプロラクチン(PRL)に対するPRLRの結合を遮断することを実証する。ヒト(A)又はサル(B)のPRLRは、それぞれ4.9nM及び5.7nMのEC50値で捕捉されたPRLに結合した(A及びBにおいて挿入図内の黒四角)。H1H6958N2-DM1(黒丸)及びH1H6958N2(白丸)は、ヒト及びサルPRLRのPRLに対する結合を遮断した。具体的に、H1H6958N2-DM1及びH1H6958N2は、それぞれ4.4nM及び5.0nMのIC50値でPRLに対する10nM ヒトPRLRの結合を遮断した(A)。同様に、H1H6958N2-DM1及びH1H6958N2は、それぞれ4.2nM及び5.8nMのIC50値でPRLに対する10nM サルPRLRの結合を遮断した(B)。対照ADC(黒三角)及び対照mAb(白三角)の両方が、同一のアッセイ条件下で遮断を呈さなかった(A、B)。モル濃度は、ADC及びmAbについての抗体濃度を示す。エラーバーはSDを表す。
【0053】
図1C図1Cは、増大する濃度のPRL(星)で処理されたHEK293/PRLR/STAT5-Luc細胞が蛍光の増大(RLUとしてプロットされる)をもたらすことを示し、ルシフェラーゼ発現のPRLRシグナル伝達媒介性誘導の表示である(C)。2nMの一定濃度のPRLの存在下で、増大する濃度(3.3pM~200nM)のH1H6958N2-DM1(黒丸)又はH1H6958N2(白丸)は、両抗体について0.4nMのIC50値でPRLR駆動性ルシフェラーゼ発現を遮断した。非結合性対照ADC(黒三角)及びコンジュゲートされていない対照mAb(灰色、白三角)は、同一のアッセイ条件下でPRL媒介性PRLRシグナル伝達を遮断しなかった。平均及びSDデータを示す。RLU:相対光単位。x軸は、PRLのモル濃度が示されているPRL用量応答曲線以外では、ADC又はmAbのモル濃度を示す。
【0054】
図2図2A、2B、2C、及び2Dは、H1H6958N2-DM1がMCF7腫瘍及びMCF7/PRLR腫瘍に対してインビボで活性であることを実証する。確立されたMCF7又はMCF7/PRLR腫瘍を担持するNCrヌードマウスを、H1H6958N2-DM1及び対照で処理した。線グラフは、経時的な、群当たりの平均腫瘍体積±SEMを描いている。矢印は、投薬の日を示す。MCF7単一用量研究の結果(A)、及びMCF7複数用量(q7dx3)研究の結果(B)。MCF7/PRLR 単一用量研究の結果(C)、及びMCF7/PRLR複数用量(q7dx3)研究の結果(D)。
【0055】
図3図3A、3B、及び3Cは、H1H6958N2-DM1がT47Dv11腫瘍に対して有効であること、及びフルベストラントと組み合わせた活性を有することを実証する。確立されたT47Dv11腫瘍を担持するSCIDマウスを、H1H6958N2-DM1及び対照で処理した。T47Dv11は、インビボでの継代を通じて生成された、親のT47D細胞の腫瘍原性変異体である。線グラフは、経時的な、群当たりの平均腫瘍体積±SEMを描いている。単一用量研究の結果(A)、及び複数用量(q7dx3)研究の結果(B)。単一用量のH1H6958N2-DM1及びフルベストラント併用研究の結果(C)。
【0056】
図4図4は、T47DvII異種移植片の毎週フルベストラント処理の活性を提供する。
【0057】
図5図5は、H1H6958N2-DM1がT47Dv11腫瘍において有糸分裂停止を媒介することを実証する。ホスホヒストンH3(PHH3)についてのIHCを、有糸分裂状態に蓄積する細胞のマーカーとして使用した。PHH3陽性核のパーセントを各処理について定量した。
【0058】
図6図6A及び6Bは、H1H6958N2-DM1がTM00107 PDX(Jackson Labs)腫瘍において活性であることを実証する。確立されたTM00107腫瘍を担持するNSGマウスを、PRLR ADC及び対照で処理した。線グラフは、経時的な、群当たりの平均腫瘍体積±SEMを描いている。矢印は投薬の日を示す。複数用量(q7dx4)研究の結果(A)、及び複数用量研究における第30日の腫瘍体積の変化(B)。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(詳細な説明)
本発明の組成物及び方法を説明する前に、そのような方法、組成物及び条件は変わり得るので、本開示は特定の組成物及び方法、並びに記載された実験条件に限定されないことを理解すべきである。また、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施態様を説明するためのものでしかなく、限定を意図するものではないことを理解すべきである。
【0060】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、この開示が属する技術分野の専門家によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用されるように、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が列挙された値と1%以下だけ異なり得ることを意味する。例えば、本明細書で使用されるように、「約100」という表現は、99及び101並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0061】
本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本開示にかかる主題の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び材料をこれから記載する。
【0062】
(定義)
本明細書で使用される、プロラクチン受容体、「PRLR」などの表現は、配列番号404に規定されるアミノ酸配列を含むヒトプロラクチン受容体を指す。「PRLR」という表現は、単量体PRLR分子と多量体PRLR分子の両方を含む。本明細書で使用されるように、「単量体ヒトPRLR」という表現は、多量体化ドメインを含有することも保有することもなく、通常の条件下で、別のPRLR分子と直接物理的に接続することなく、単一のPRLR分子として存在する、PRLRタンパク質又はその部分を意味する。例示的な単量体PRLR分子は、配列番号401のアミノ酸配列を含む、本明細書において「hPRLR.mmh」と呼ばれる分子である(例えば、本明細書の実施例3を参照されたい)。本明細書で使用されるように、「二量体ヒトPRLR」という表現は、リンカー、共有結合、非共有結合を介して、又は多量体化ドメイン、例えば、抗体のFcドメインを介して互いに接続された2つのPRLR分子を含む構築物を意味する。例示的な二量体PRLR分子は、配列番号402のアミノ酸配列を含む、本明細書において「hPRLR.mFc」と呼ばれる分子である(例えば、本明細書の実施例3を参照されたい)。
【0063】
本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質断片に対する言及は全て、非ヒト種に由来するものであると明示的に特定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質断片のヒト型を指すことが意図される。したがって、「PRLR」という表現は、非ヒト種に由来するもの、例えば、「マウスPRLR」、「サルPRLR」などであると特定されない限り、ヒトPRLRを意味する。
【0064】
本明細書で使用されるように、「細胞表面発現PRLR」という表現は、インビトロ又はインビボで細胞の表面に発現され、その結果、PRLRタンパク質の少なくとも一部が細胞膜の細胞外側に露出し、抗体の抗原結合部分に接近可能である、1以上のPRLRタンパク質、又はその細胞外ドメインを意味する。「細胞表面発現PRLR」は、PRLRタンパク質を通常発現する細胞の表面に発現されたPRLRタンパク質を含むことができ、又は該タンパク質からなることができる。或いは、「細胞表面発現PRLR」は、通常はその表面にヒトPRLRを発現しないが、その表面にPRLRを発現するように人為的に改変されている細胞の表面に発現されたPRLRタンパク質を含むことができ、又は該タンパク質からなることができる。
【0065】
本明細書で使用されるように、「抗PRLR抗体」という表現は、単一の特異性を有する一価抗体並びにPRLRに結合する第1のアーム及び第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含む二重特異性抗体の両方を含み、ここで、抗PRLRアームは、本明細書の表1に規定されるHCVR/LCVR又はCDR配列のいずれかを含む。「抗PRLR抗体」という表現は、薬物又は毒素(すなわち、細胞毒性剤)にコンジュゲートされた抗PRLR抗体又はその抗原結合部分を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も含む。「抗PRLR抗体」という表現は、放射性核種にコンジュゲートされた抗PRLR抗体又はその抗原結合部分を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)も含む。
【0066】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、PRLR)に特異的に結合し又は該抗原と特異的に相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に接続された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、及びその多量体(例えば、IgM)を含む。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細かく分けることができる。各々のVH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、以下の順序: FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。異なる実施態様において、抗PRLR抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、又は自然にもしくは人為的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2以上のCDRの対比分析に基づいて定義することができる。
【0067】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、完全な抗体分子の抗原結合断片も含む。本明細書で使用される、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に取得可能な、合成された、又は遺伝子改変された、任意のポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、任意の好適な標準的技術、例えば、タンパク分解的消化又は抗体可変ドメイン及び任意に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を伴う組換え遺伝子工学技術を用いて完全な抗体分子から得ることができる。そのようなDNAは公知であり、及び/又は例えば、商業的な供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。化学的に又は分子生物学的技術を用いることによってDNAをシークエンシング及び操作して、例えば、1以上の可変及び/もしくは定常ドメインを好適な配置に配置すること、又はコドンを導入し、システイン残基を創出し、アミノ酸を修飾し、付加し、もしくは欠失させること、などができる。
【0068】
抗原結合断片の非限定的な例としては:(i)Fab断片;(ii)F(ab')2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;及び(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、又は拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。他の改変分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価のナノボディ、二価のナノボディなど)、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0069】
抗体の抗原結合断片は、通常、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズ又はアミノ酸組成であってもよく、一般に、1以上のフレームワーク配列に隣接しているか、又はそれとインフレームになっている少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片において、VHドメインとVLドメインは、互いに対して任意の好適な配置にあってもよい。例えば、可変領域は二量体であり、かつVH-VH、VH-VL、又はVL-VL二量体を含有していてもよい。或いは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVH又はVLドメインを含有していてもよい。
【0070】
ある実施態様において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有していてもよい。抗体の抗原結合断片内に見出し得る可変及び定常ドメインの非限定的で例示的な配置としては: (i) VH-CH1; (ii) VH-CH2; (iii) VH-CH3; (iv) VH-CH1-CH2; (v) VH-CH1-CH2-CH3; (vi) VH-CH2-CH3; (vii) VH-CL; (viii) VL-CH1; (ix) VL-CH2; (x) VL-CH3; (xi) VL-CH1-CH2; (xii) VL-CH1-CH2-CH3; (xiii) VL-CH2-CH3; 及び (xiv) VL-CLが挙げられる。上記の例示的な配置のいずれかを含む、可変ドメインと定常ドメインの任意の配置において、可変ドメインと定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、又は完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメイン間に柔軟な又は半ば柔軟な連結を生じさせる少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個、又はそれより多く)のアミノ酸からなっていてもよい。さらに、本明細書において提供される抗体の抗原結合断片は、互いに及び/又は1以上の単量体のVHドメインもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合的に会合した上記の可変及び定常ドメイン配置のうちのいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでいてもよい。
【0071】
完全な抗体分子と同様、抗原結合断片は、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで、各々の可変ドメインは、別個の抗原に又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む、任意の多重特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能なルーチンの技術を用いて、本開示の抗体の抗原結合断片と関連した使用に適合させることができる。
【0072】
本明細書において有用な抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能することができる。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下での抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合抗体を認識し、それにより、標的細胞の溶解をもたらす細胞媒介性反応を指す。CDC及びADCCは、当技術分野で周知かつ利用可能なアッセイを用いて測定することができる。(例えば、米国特許第5,500,362号及び第5,821,337号、並びにClynesらの文献(1998) Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 95:652-656を参照されたい)。抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択することができる。
【0073】
ある実施態様において、本明細書において提供される抗PRLR抗体は、ヒト抗体である。本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。該ヒト抗体は、例えば、CDR、特に、CDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムなもしくは部位特異的な突然変異誘発によるか、又はインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含んでいてもよい。しかし、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図されない。
【0074】
抗体は、いくつかの実施態様において、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書で使用される「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製され、発現され、創出され、又は単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(以下でさらに記載する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体(以下でさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorらの文献(1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295参照)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを包含する任意の他の手段によって調製され、発現され、創出され、もしくは単離される抗体を含むことが意図される。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。しかし、ある実施態様において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロでの突然変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合、インビボでの体細胞突然変異誘発)を受け、したがって、該組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、かつそれに関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい配列である。
【0075】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性と関連する2つの形態で存在することができる。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって結合している、約150~160kDaの安定な4鎖構築物を含む。第2の形態では、二量体が鎖間ジスルフィド結合によって連結されず、共有結合した軽鎖及び重鎖(半分の抗体)から構成された、約75~80kDaの分子が形成される。これらの形態は、親和性精製後でさえも、分離するのが極めて難しい。
【0076】
様々なインタクトのIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、限定されないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプと関連する構造上の違いによるものである。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルにまで第2の形態の出現を有意に低減させることができる(Angalらの文献(1993) Molecular Immunology 30:105)。本開示は、ヒンジ、CH2、又はCH3領域中に1以上の突然変異を有する抗体を提供し、これは、例えば、生産において、所望の抗体形態の収率を改善するために望ましい場合がある。
【0077】
本明細書で提供される抗体は、単離された抗体であってもよい。本明細書で使用される「単離された抗体」は、同定され、かつその天然環境の少なくとも1つの構成要素から分離及び/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物体の少なくとも1つの構成要素から、又は抗体が天然に存在しもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離又は除去された抗体は、本開示の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製又は単離工程にかけられた抗体である。ある実施態様によれば、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0078】
本明細書に開示される方法において有用な抗PRLR抗体は、抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域中に1以上のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を含んでいてもよい。そのような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公的な抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本開示は、1以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1以上のアミノ酸が、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に突然変異している(そのような配列変化は、本明細書において「生殖系列突然変異」と総称される)、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体及びその抗原結合断片を含む。当業者は、本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から出発して、1以上の個々の生殖系列突然変異又はその組合せを含む多くの抗体及び抗原結合断片を簡便に生産することができる。ある実施態様において、VH及び/又はVLドメイン内の全てのフレームワーク及び/又はCDR残基を突然変異させて、抗体が由来したもとの生殖系列配列中に見出される残基に戻す。他の実施態様において、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8つのアミノ酸もしくはFR4の最後の8つのアミノ酸に見出される突然変異残基のみ、又はCDR1、CDR2、もしくはCDR3に見出される突然変異残基のみを突然変異させて、もとの生殖系列配列に戻す。他の実施態様において、1以上の該フレームワーク及び/又はCDR残基を、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体がもともと由来した生殖系列配列と異なる生殖系列配列)の対応する残基に突然変異させる。さらに、本開示の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2以上の生殖系列突然変異の任意の組合せを含有していてもよく、ここで、例えば、特定の個々の残基が特定の生殖系列配列の対応する残基に突然変異している一方で、もとの生殖系列配列と異なる特定の他の残基が維持され、又は異なる生殖系列配列の対応する残基に突然変異している。ひとたび得られれば、1以上の生殖系列突然変異を含有する抗体及び抗原結合断片を、例えば、改善された結合特異性、増大した結合親和性、改善又は増強された拮抗的又は作動的生体特性(場合による)、低減した免疫原性などの1以上の所望の特性について簡便に試験することができる。この一般的な方法で得られる抗体及び抗原結合断片は、本開示に包含される。
【0079】
同様に本明細書において提供されるのは、抗PRLR抗体を含むADCを使用する治療方法であって、ここで、該抗体は1以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む。例えば、抗PRLR抗体は、本明細書の表1に示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有することができる。
【0080】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が複数のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体が抗原上の異なる領域に結合してもよく、異なる生物学的効果を有してもよい。エピトープは、立体構造的であっても、線状であってもよい。立体構造的エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントに由来する空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある状況において、エピトープは、抗原上に、糖質、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含んでいてもよい。
【0081】
核酸又はその断片に言及する場合の「実質的同一性」又は「実質的に同一の」という用語は、適当なヌクレオチド挿入又は欠失を伴って別の核酸(又はその相補鎖)と最適に整列させたとき、任意の周知の配列同一性のアルゴリズム、例えば、以下で論じられるFASTA、BLAST、又はGapによって測定したときに、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%、又は99%においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子に対して実質的同一性を有する核酸分子は、ある場合において、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じ又は実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0082】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的類似性」又は「実質的に類似した」という用語は、例えば、デフォルトのギャップ荷重を用いてプログラムGAP又はBESTFITによって、最適に整列させたときに、2つのペプチド配列が、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは、少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)の側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的には変化させない。2以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性又は類似性の程度を上方調整して、置換の保存的性質について補正することができる。この調整を行う手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書にとり込まれる、Pearsonの文献(1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたい。類似した化学的性質の側鎖を有するアミノ酸のグループの例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに(7)システイン及びメチオニンである硫黄含有側鎖が挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換グループは:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。或いは、保存的置換は、Gonnetらの文献(1992) Science 256: 1443-1445に開示されているPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有する任意の変化である。
【0083】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性とも呼ばれており、典型的には、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、及び他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を用いて、類似した配列をマッチングさせる。例えば、GCGソフトウェアは、Gap及びBestfitなどのプログラムを含み、このプログラムをデフォルトパラメータとともに用いて、異なる生物種由来の又は野生型タンパク質とそのムテインとの間の相同ポリペプチドなどの、密接に関連するポリペプチド間の配列相同性又は配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1の1つのプログラムである、デフォルト又は推奨パラメータを用いるFASTAを用いて比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー配列と検索配列の間の最も良好に重複する領域のアラインメント及びパーセント配列同一性を提供する(Pearsonの文献(2000)、前出)。配列を様々な生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較するときの別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを用いる、コンピュータプログラムBLAST、特に、BLASTP又はTBLASTNである。例えば、各々、参照により本明細書にとり込まれる、Altschulらの文献(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410、及びAltschulらの文献(1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-402を参照されたい。
【0084】
(pH依存的結合)
本明細書において提供されるのは、pH依存的結合特徴を有する抗PRLR抗体である。例えば、本明細書に記載される抗PRLR抗体は、中性pHと比較したとき酸性pHでPRLRへの結合の低減を示し得る。或いは、抗PRLR抗体は、中性pHと比較したとき酸性pHでPRLRへの結合の増強を示し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、又はそれ未満のpH値を含む。本明細書で使用されるように、「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpH値を含む。
【0085】
ある例において、「中性pHと比較したときの酸性pHでのPRLRへの結合の低減」は、中性pHでのPRLRへの抗体結合のKD値に対する酸性pHでのPRLRへの抗体結合のKD値の比(又はその逆)に関して表される。例えば、抗体又はその抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片が約3.0以上の酸性/中性KD比を示す場合、本開示の目的のために、「中性pHと比較したときの酸性pHでのPRLRへの結合の低減」を示すものとみなしてもよい。ある例示的な実施態様において、本開示の抗体又は抗原結合断片の酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0. 25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、又はそれを上回ることができる。
【0086】
pH依存的結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較したときの酸性pHでの特定の抗原への結合の低減(又は増強)について抗体の集団をスクリーニングすることにより得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を生じさせることができる。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1以上のアミノ酸をヒスチジン残基と置換することにより、中性pHと比べて酸性pHでの抗原結合が低減した抗体を得ることができる。
【0087】
(Fc変異体を含む抗PRLR抗体)
本開示のある実施態様によれば、例えば、中性pHと比較したときの酸性pHでの、FcRn受容体への抗体結合を増強又は低減させる1以上の突然変異を含むFcドメインを含む抗PRLR抗体が提供される。例えば、本明細書において有用な抗体は、FcドメインのCH2又はCH3領域中に突然変異を含む抗PRLR抗体であり、ここで、該突然変異(複数可)は、酸性環境での(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲であるエンドソームでの)FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。そのような突然変異は、動物に投与したときの、抗体の血清半減期の増大をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例としては、例えば、位置250(例えば、EもしくはQ); 250及び428(例えば、LもしくはF); 252(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254(例えば、SもしくはT)、及び256(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)での修飾;或いは位置428及び/又は433(例えば、H/L/R/S/P/QもしくはK)及び/又は434(例えば、H/FもしくはY)での修飾;或いは位置250及び/又は428での修飾;或いは位置307又は308(例えば、308F、V308F)、及び434での修飾が挙げられる。一実施態様において、該修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)修飾; 428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)修飾; 433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)修飾; 252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)修飾; 250Q及び428L修飾(例えば、T250Q及びM428L);並びに307及び/又は308修飾(例えば、308Fもしくは308P)を含む。
【0088】
例えば、本発明において有用な抗体は、250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L); 252Y、254T、及び256E(例えば、M252Y、S254T、及びT256E); 428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);並びに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F):からなる群から選択される突然変異の1以上の対又は群を含むFcドメインを含む抗PRLR抗体を含む。前述のFcドメイン突然変異と本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の突然変異の全ての可能な組合せが、本開示の範囲内で企図される。
【0089】
(抗体の生物学的特徴)
本明細書において提供される方法に有用なのは、高い親和性で単量体ヒトPRLRに結合する抗体及びその抗原結合断片を含むADCである。例えば、これらの抗体は、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式を用いて又は実質的に類似したアッセイによって、25℃もしくは37℃での表面プラズモン共鳴により測定したとき、約4.0nM未満のKDで単量体ヒトPRLR(例えば、hPRLR.mmh)に結合する抗PRLR抗体を含む。ある実施態様によれば、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式を用いて、又は実質的に類似したアッセイによって、表面プラズモン共鳴により測定したとき、37℃で、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、又は約300pM未満のKDで単量体ヒトPRLRに結合する抗PRLR抗体が提供される。
【0090】
同様に本明細書において有用なのは、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式を用いて又は実質的に類似したアッセイによって、25℃もしくは37℃での表面プラズモン共鳴により測定したとき、約5分超の解離半減期(t1/2)で単量体ヒトPRLR(例えば、hPRLR.mmh)に結合する抗体及びその抗原結合断片である。ある実施態様によれば、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴によって測定したとき、37℃で、約5分超、約6分超、約8分超、約10分超、約12分超、約14分超、約16分超、約18分超、約20分超、約30分超、約40分超、又はそれよりも長いt1/2で単量体ヒトPRLRに結合する抗PRLR抗体が提供される。
【0091】
また本明細書において有用なのは、高い親和性で二量体ヒトPRLR(例えば、hPRLR.mFc)に結合する抗体及びその抗原結合断片である。例えば、そのような抗PRLR抗体は、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、25℃もしくは37℃で表面プラズモン共鳴によって測定したとき、約250pM未満のKDで二量体ヒトPRLRに結合することができる。ある実施態様によれば、例えば、本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴によって測定したとき、37℃で、約250pM未満、約200pM未満、約180pM未満、約160pM未満、約140pM未満、約120pM未満、約100pM未満、約80pM未満、約70pM未満、又は約60pM未満のKDで二量体ヒトPRLRに結合する抗PRLR抗体が提供される。
【0092】
同様に本明細書において有用なのは、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、25℃もしくは37℃での表面プラズモン共鳴によって測定したとき、約55分超の解離半減期(t1/2)で二量体ヒトPRLR(例えば、hPRLR.mFc)に結合する抗体及びその抗原結合断片である。ある実施態様によれば、例えば本明細書の実施例3で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴によって測定したとき、37℃で、約55分超、約60分超、約65分超、約70分超、約75分超、約80分超、約85分超、約90分超、約95分超、約100分超、約120分超、約140分超、約160分超、又はそれよりも長いt1/2で二量体ヒトPRLRに結合する抗PRLR抗体が提供される。
【0093】
同様に本明細書において有用なのは、PRLRに結合し、かつヒトPRLRを発現する細胞でのプロラクチン媒介性シグナル伝達を遮断する抗体及びその抗原結合断片である。例えば、そのような抗体は、例えば本明細書の実施例5で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、プロラクチンシグナル伝達遮断アッセイによって測定したとき、約1.3nM未満のIC50で、ヒトPRLRを発現する細胞でのプロラクチン媒介性シグナル伝達を遮断する抗PRLR抗体を含む。ある実施態様によれば、例えば、本明細書の実施例5で規定されるアッセイ形式、又は実質的に類似したアッセイを用いて、プロラクチンシグナル伝達遮断アッセイを用いて測定したとき、約1.3nM未満、約1.2nM未満、約1.0nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約600pM未満、約400pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約80pM未満、約60pM未満、約40pM未満、約20pM未満のIC50で、ヒトPRLRを発現する細胞でのプロラクチン媒介性シグナル伝達を遮断する抗PRLR抗体が提供される。
【0094】
同様に本明細書において有用なのは、PRLRに結合するが、ヒトPRLRを発現する細胞でのプロラクチン媒介性シグナル伝達を遮断しない抗体及びその抗原結合断片である。本明細書で使用されるように、抗体又はその抗原結合断片は、プロラクチンシグナル伝達遮断アッセイ、例えば、本明細書の実施例5で規定されるアッセイ又は実質的に類似したアッセイで試験したとき、該抗体が、全く又は無視できる程度しか遮断活性を示さない場合、プロラクチン媒介性シグナル伝達を「遮断しない」。ある実施態様によれば、抗体又は抗原結合断片は、プロラクチンシグナル伝達遮断アッセイ、例えば、本明細書の実施例5で規定されるアッセイ又は実質的に類似したアッセイで試験したとき、該抗体が、約10nM超、又は約100nM超のIC50値を示す場合、プロラクチン媒介性シグナル伝達を「遮断しない」。
【0095】
本明細書において有用な抗体は、上述の生物学的特徴のうちの1つもしくは複数、又はその任意の組合せを保有することができる。本開示の抗体の生物学的特徴の前述のリストは、網羅的であることを意図するものではない。本開示の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書の作業実施例を含む本開示を概観することにより、当業者に明白となるであろう。
【0096】
(抗体-薬物コンジュゲート(ADC))
本明細書において提供される方法に関して有用なのは、細胞毒性剤、化学療法薬、又は放射性同位体などの治療部分にコンジュゲートされた抗PRLR抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0097】
細胞毒性剤は、細胞の成長、生存、又は増殖に有害である任意の薬剤を含む。本開示のこの態様に従って抗PRLR抗体にコンジュゲートすることができる好適な細胞毒性剤及び化学療法剤の例としては、例えば、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジド、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-13-オン、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、9-アミノカンプトテシン、アクチノマイシンD、アマニチン、アミノプテリン、アングイジン、アントラサイクリン、アントラマイシン(AMC)、オーリスタチン、ブレオマイシン、ブスルファン、酪酸、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルミノマイシン、カルムスチン、セマドチン、シスプラチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン(decarbazine)、ジアセトキシペンチルドキソルビシン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ジソラゾール、ドラスタチン(例えば、ドラスタチン10)、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、エキノマイシン、エロイテロビン、エメチン、エポチロン、エスペラマイシン、エストラムスチン、臭化エチジウム、エトポシド、フルオロウラシル、ゲルダナマイシン、グラミシジンD、グルココルチコイド、イリノテカン、キネシンスピンドルタンパク質(KSP)阻害剤、レプトマイシン、ロイロシン、リドカイン、ロムスチン(CCNU)、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトプテリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、N8-アセチルスペルミジン、ポドフィロトキシン、プロカイン、プロプラノロール、プテリジン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、リゾキシン、ストレプトゾトシン、タリソマイシン、タキソール、テノポシド(tenoposide)、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、トメイマイシン、トポテカン、チューブリシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及び前述のもののいずれかの誘導体が挙げられる。さらなる細胞毒性剤は、トメイマイシン誘導体又はドラスタチン誘導体を含む。ある実施態様によれば、抗PRLR抗体にコンジュゲートされる細胞毒性剤は、オーリスタチン、例えば、MMAE、MMAF、又はこれらの誘導体である。当技術分野で公知の他の細胞毒性剤が本発明の範囲内で企図され、これには、例えば、タンパク質毒素、例えば、リシン、C.ディフィシル(C.difficile)毒素、緑膿菌外毒素、リシン、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、ブリオジン、サポリン、ヨウシュヤマゴボウ毒素(すなわち、フィトラッカトキシン及びフィトラッキゲニン(phytolaccigenin))、並びにその他のもの、例えば、Sapraらの文献、Pharmacol. & Therapeutics, 2013, 138:452-469に記載されているものが含まれる。
【0098】
(メイタンシノイド)
ある実施態様によれば、抗PRLR抗体にコンジュゲートされる細胞毒性剤はメイタンシノイドである。
【0099】
メイタンシノイドは、有糸分裂停止を誘導する微小管を標的とする強力な化合物であるメイタンシンの類似体である。本明細書において記載されるコンジュゲートのために好適なメイタンシノイドとしては、DM1及びDM4が挙げられるが、これらに限定されない。好適なメイタンシノイドは、式(I)の構造を有するものをも含むが、これらに限定されない:
【化2】

(式中、Aはアリーレン又はヘテロアリーレンである。)
【0100】
好適なメイタンシノイドは、式(II)の構造を有するものをも含むが、これらに限定されない:
【化3】

(式中:A3aはアミノ酸、2~20個のアミノ酸を有するペプチド、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-CR5R6-, -O-, -C(=O)-, -O-C(=O)-, -C(=O)-O-, -O-C(=O)-O-, -C(=O)-(CHx)p1-,-C(=O)-O-(CHx)p1-, -(CHx)p1-C(=O)-, -(CHx)p1-C(=O)-O-, -(O-(CH2)p2-)p3-,-((CH2)p2-O-)p3-, -C(=S)-, -C(=S)-S-, -C(=S)-NH-, -S-C(=S)-, -S-C(=S)-S-, -S-, -SO-, -SO2-, -NR4-,-N(R4)-C(=O)-N(R8)-, -N(R4)-C(=O)O-, -N(R4)-C(=O)-, -C(=O)-N(R4)-, -C(=O)-N(R4)-C(=O)-,又は-O-C(=O)-NR4-であり、ここで、アルキル、アルキニル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びシクロシクリルは任意に置換されている;及び
p1, p2 及びp3は、各々独立して0、又は1~100の整数であり;
xは0、1又は2であり;
R4, R5,R6 及びR8 は、各々独立してH、又は置換されたもしくは置換されていない:アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;及び
R4a は、置換されている又は置換されていない:アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルである。)
【0101】
他の好適なメイタンシノイドとしては、WO 2014/145090、WO 2016/160615、及びWO 2015/031396において提供されているものが挙げられ、参照によりそれらの全体が本明細書に取り込まれる。
【0102】
いくつかの実施態様において、本明細書において提供される方法において有用なADCは、式M-[L-D]nを含み、ここで、Mはヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、Lはリンカーであり、Dは細胞毒性剤であり、かつnは1~20の整数である。ある実施態様において、Lは4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)であり、かつDはDM1である。ある実施態様において、nは2~5の整数である。ある実施態様において、nは3又は4である。
【0103】
(放射性核種コンジュゲート)
同様に本明細書において提供されるのは、1以上の放射性核種、例えば、キレート部分にコンジュゲートされた抗PRLR抗体を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)である。本開示のこの態様との関連で使用することができる例示的な放射性核種としては、例えば、225Ac、212Bi、213Bi、131I、186Re、227Th、222Rn、223Ra、224Ra、及び90Yが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
(リンカー)
ある実施態様において、本明細書において有用なADCは、リンカー分子を介して細胞毒性剤(例えば、上で開示されている細胞毒性剤のいずれか)にコンジュゲートされた抗PRLRを含む。本明細書で使用する場合、「リンカー」という語句は、抗体、又はその抗原結合断片を、本明細書において規定するペイロード化合物(例えば、細胞毒性剤)と連結、接続又は結合する任意の二価の基又は部分を指す。一般に、本明細書において記載される抗体コンジュゲートのために好適なリンカーは、抗体の循環半減期を活用するのに十分に安定であり、同時に、該コンジュゲートが抗原媒介性内在化された後にそのペイロードを放出することができるものである。リンカーは、切断可能であることもでき、切断不可能であることもできる。切断可能なリンカーは、内在化後に細胞内代謝、例えば、加水分解、還元、又は酵素反応を介する切断によって切断されるリンカーである。切断不可能なリンカーは、内在化後に抗体のライソソームによる分解を介して、付着したペイロードを放出するリンカーである。
【0105】
好適なリンカーとしては、酸不安定性リンカー、加水分解不安定性リンカー、酵素的切断可能リンカー、カテプシン切断可能リンカー、還元不安定性リンカー、自己崩壊性(self-immolative)リンカー、及びβ-グルコヌライド(gluconuride)リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。好適なリンカーとしては、これらに限定されないが、グルクロニド、スクシンイミド-チオエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)単位、ヒドラゾン、異常カプロイル(mal-caproyl)(mc)単位、ジスルフィド単位(例えば、-S-S-, -S-C(R1R2)、式中、R1及びR2は独立して水素又はヒドロカルビルである)、カルバメート単位、パラアミノベンジル単位(PAB;例えば、p-アミノベンジルアルコール由来のもの)、リン酸単位、例えば、モノ、ビス又はトリス-リン酸単位、及びペプチド単位、例えば、Val-Cit及びPhe-Lys単位を含むがそれらに限定されない2、3 4、5、6、7、8、又はそれより多いアミノ酸を含有するペプチド単位であるもの、又はそれらを含むものも挙げられる。好適なリンカーはまた、MCC (4-[-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、SPDB、mc-val-cit、及びmc-val-cit-PABをも含む。
【0106】
リンカーは、抗体又は抗原結合断片の任意の好適なアミノ酸を介して該抗体又はその抗原結合断片に結合させることができる。そのようなアミノ酸としては、リジン、システイン、セレノシステイン、非天然アミノ酸、及び酸性アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、トランスグルタミナーゼベースの化学-酵素コンジュゲーションを介してグルタミンにコンジュゲートすることもできる(例えば、Dennlerらの文献、Bioconjugate Chem. 2014, 25, 569-578を参照されたい)。リンカーは、例えば、好適な反応性部分、例えば、マレイミド基を含有するリンカーと抗体を反応させることによって、システイン残基にカップリングすることができる。リンカーは、例えば、活性化エステル又は酸ハライド基を含有するリンカーと抗体を反応させることによって、リジン残基にカップリングすることができる。
【0107】
抗体は、クリックケミストリー反応を介してコンジュゲート化することもできる。該クリックケミストリー反応のいくつかの実施態様において、リンカーは、反応性基、例えば、アジ化物との1,3付加環化反応を行うことができるアルキンを含む。このような好適な反応基としては、歪み(strained)アルキン、例えば、歪み促進型アルキン-アジ化物付加環化(SPAAC)に好適なもの、シクロアルキン、例えば、シクロオクチン、芳香環化(benzannulated)アルキン、及び銅触媒の非存在下でアジ化物との1,3付加環化反応を行うことができるアルキンが挙げられるが、それらに限定されない。好適なアルキンはまた、DIBAC、DIBO、BARAC、DIFO、置換、例えば、フッ化アルキン、アザ-シクロアルキン、BCN、及びそれらの誘導体も含むが、それらに限定されない。そのような反応基を含むリンカーは、アジド基を用いて官能化されている抗体のコンジュゲート化のために有用である。そのような官能化された抗体は、アジド-ポリエチレングリコール基で官能化された抗体を含む。ある実施態様において、そのような官能化された抗体は、少なくとも1個のグルタミン残基、例えば、重鎖Q295を含む抗体を、式H2N-LL-N3(式中、LLは二価ポリエチレングリコール基である)に従う化合物と、酵素トランスグルタミナーゼの存在下で反応させることによって誘導される。
【0108】
化学的部分をペプチド、ポリペプチド、又は他の巨大分子にコンジュゲートするための当技術分野で公知の任意の方法を本開示との関連で用いて、本明細書に記載の抗PRLR ADCを作製することができる。リンカーを介した抗体-薬物コンジュゲーションの例示的な方法は、本明細書の実施例6に規定されている。この例示的な方法に対するバリエーションは当業者によって理解され、本開示の範囲内で企図される。
【0109】
(低レベルのPRLRを発現する細胞へのADCの標的化)
驚くべきことに、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗PRLR抗体を含むADCが、比較的低レベルの細胞表面PRLRを発現する細胞を特異的に標的化し、殺傷することができることが本発明者らにより発見された。例えば、本明細書の実施例7において、DM1にコンジュゲートされた抗PRLR抗体H1H6953Nを含むADCがT47D細胞(バックグラウンドのわずか12倍のPRLRを発現する)の成長を1.3nMのIC50で阻害することができ、78%の殺傷を示したことが示されている。対照的に、ErbB2などの他の腫瘍関連抗原に対するADCは、典型的に、同程度の殺傷効力に、はるかに高い発現レベルの細胞上の標的抗原を必要とする。例えば、ナノモル濃度未満のIC50範囲での細胞殺傷は、バックグラウンドの約200倍~約400倍超のレベルでErbB2を発現する細胞を用いた場合にのみ、抗ErbB2-DM1 ADCで得られた(例えば、本明細書の表14~17を参照されたい)。比較的低レベルのPRLRなどの腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞を殺傷する能力は、本開示の抗PRLR ADCが、ErbB2などの他の腫瘍抗原を標的化するADCに必要とされるよりも少ない用量及び/又は低頻度の投薬で顕著な治療的利益をもたらすことができることを意味する。
【0110】
したがって、本開示は、細胞毒性剤にコンジュゲートされた、ヒトPRLRに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供し、ここで、該ADCは、低レベルのPRLRを発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)を効果的に殺傷する。関連する実施態様において、本開示は、低レベルのPRLRを発現する細胞を効果的に殺傷する方法を含む。本開示のこの態様による方法は、(1)細胞を、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗PRLR抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と接触させること、及び(2)該細胞を、フルベストラントと接触させることを含む。「細胞を接触させること」は、インビトロ、又はインビボで、例えば、抗PRLR ADCを、それを必要としている対象に投与することにより実施することができ、ここで、該投与は、ADC及びフルベストラントがPRLRを発現する細胞と接触するようにさせる。
【0111】
本開示の範囲内で想定されるある状況によれば、「低レベルのPRLR」は、バックグラウンドの約30倍未満の発現レベルを意味する。ある実施態様によれば、バックグラウンドの約30倍、25倍、20倍、18倍、16倍、14倍、12倍、10倍、8倍未満、又はそれを下回る発現レベルでPRLRを発現する細胞を効果的に殺傷する抗PRLR ADCが提供される。本明細書で使用されるように、「バックグラウンド」という用語は、細胞をアイソタイプ対照抗体(すなわち、PRLRに特異的でないもの)で処理したときに産生される(非特異的な)シグナルを意味する。
【0112】
ある他の状況において、「低レベルのPRLR」は、細胞当たりのPRLR分子の数に関して表すことができる。例えば、本明細書で使用されるように、「低レベル」のPRLRを発現する細胞は、細胞当たり約100万コピー未満のPRLRを発現する。具体的な実施態様において、「低レベル」のPRLRは、細胞当たり約900,000コピー未満、約800,000コピー未満、約700,000コピー未満、約600,000コピー未満、約500,000コピー未満、約400,000コピー未満、約300,000コピー未満、約200,000コピー未満、約100,000コピー未満、約90,000コピー未満、約80,000コピー未満、約70,000コピー未満、約60,000コピー未満、約50,000コピー未満、約40,000コピー未満、約30,000コピー未満、約20,000コピー未満、細胞当たり約10,000コピー未満のPRLR、細胞当たり約5,000コピー未満のPRLR、細胞当たり約3,000コピー未満のPRLR、又は細胞当たり約1,000コピー未満のPRLRを意味する。例えば、本明細書において作業実施例に示されるように、本開示の抗PRLR ADCは、MCF7細胞を効果的に殺傷することが示され、この細胞は、細胞当たり約3,000コピーのPRLRしか発現しない。
【0113】
本明細書で使用されるように、「効果的に殺傷する」とは、ADCが、腫瘍細胞殺傷アッセイ、例えば、本明細書の実施例7で定義されるアッセイ、又は実質的に類似したアッセイで、約20nM未満、又は約1nM未満(例えば、約0.9nM未満、約0.8nM未満、約0.7nM未満、約0.6nM未満、約0.5nM未満、約0.4nM未満、もしくは約0.3nM未満)のIC50を呈することを意味する。本開示のこの態様によれば、ADCの抗PRLR抗体成分は、任意の抗PRLR抗体であることができ、これには、本明細書の表1に規定されるCDR又はHCVR/LCVRアミノ酸配列のいずれかを含む抗PRLR抗体が含まれる。さらに、ADCの細胞毒性剤成分は、任意の細胞毒性剤、例えば、DM1、又は本明細書に言及される任意の他の細胞毒性剤であることができる。
【0114】
本開示の方法において有用なADCは、PRLR+腫瘍を担持する動物において、腫瘍成長を阻害し及び/又は腫瘍サイズを低減させることができる。例えば、本明細書の実施例8に示されるように、抗PRLR-DM1 ADCは、PRLR+乳癌異種移植片を担持するマウスで腫瘍を検出不可能なレベルにまで低減させることが示された。したがって、本明細書において提供されるのは、抗PRLR抗体及びそのような抗体を含むADCを使用する方法であって、ここで、該抗体又はADCは、PRLR+腫瘍を担持する動物に(例えば、週に約1回の頻度、及び約1~15mg/kgの用量で)フルベストラントとの組み合わせで投与されたとき、投与後52日又はそれより前までに、腫瘍成長を阻害し及び/又は腫瘍サイズを低減させる(例えば、100%以上の腫瘍成長阻害)。
【0115】
(クラスIサイトカイン受容体の標的化)
PRLRは、クラスIサイトカイン受容体ファミリーに属する。上で説明したように、及び本明細書の作業実施例で実証されるように、抗PRLR抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、低レベルのPRLRを発現する細胞を効果的に標的化し、殺傷できることが予想外に発見された(本明細書の実施例7を参照されたい)。さらに、他のクラスIサイトカイン受容体(IL-4及びIL-6R)に対するADCが、比較的低レベルの標的抗原を発現する細胞株を強力に殺傷することができることも示された(本明細書の実施例9を参照されたい)。この性質は、効果的な細胞殺傷に高い標的発現を必要とする、ErbB2などの他の細胞表面発現タンパク質に対するADCとは対照的である。さらに、驚くべきことに、抗PRLR抗体が腫瘍細胞(例えば、T47D腫瘍細胞)上の抗Her2抗体よりも実質的に速く内在化されること、並びにこの性質が、細胞表面Her2と比較してより速い細胞表面PRLRの内在化及び分解と相関することも発見された。
【0116】
驚くべきことに、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)であるフルベストラントを用いるPRLR陽性腫瘍細胞の処理が、PRLR発現を低下させないことも発見された。これは、エストロゲン受容体へのエストロゲンの結合を遮断するタモキシフェンを用いる処理が、処理の7日後にPRLR mRNAの低下を引き起こしたという以前の知見と対照的である。Swaminathanらの文献、2008, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia, 13(1): 81-91。
【0117】
本明細書に規定される結果を考慮して、本発明者らは、低レベルの細胞表面抗原を発現する細胞を標的化し、殺傷する能力が、一般のクラスIサイトカイン受容体、特に、速やかに内在化されるクラスIサイトカイン受容体に対するADCによって共有される共通の性質であり得ると考えた。したがって、本開示は、クラスIサイトカイン受容体(例えば、速やかに内在化するクラスIサイトカイン受容体)を標的化する方法、及びクラスIサイトカイン受容体を発現する細胞、例えば、低レベルのクラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を殺傷する方法を含む。
【0118】
本開示のこの態様による方法は、クラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を、該クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含むADCと接触させることを含む。ある実施態様によれば、標的化されることになる細胞は、低レベル(その表現は本明細書の別所に定義されているとおり)のクラスIサイトカイン受容体、及び/又は速やかに内在化され、分解される(例えば、Her2などの参照細胞表面分子よりも速やかに内在化される)クラスIサイトカイン受容体を発現する。同様に本開示に含まれるのは、細胞毒性剤にコンジュゲートされた、クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含むADCである。本明細書の別所に記載の細胞毒性剤、リンカー、及び/又はADC関連技術のいずれかを、本開示のこの態様との関連において使用することができる。
【0119】
本明細書で使用されるように、「クラスIサイトカイン受容体」(「タイプIサイトカイン受容体」と呼ばれることもある)は、サイトカインを認識し、それに応答する細胞の表面に発現される、4本のαヘリックス鎖を有する膜貫通受容体を意味する。以下で説明されるように、クラスIサイトカイン受容体は、ヘテロ二量体又はホモ二量体であることができる。本明細書で使用されるように、「クラスIサイトカイン受容体」という用語は、ヘテロ二量体受容体とホモ二量体受容体の両方を含む。
【0120】
ヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体は、サイトカイン特異的鎖及び「共通鎖」からなる。したがって、そのようなヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体は、シグナル伝達のために該受容体によって使用される共通鎖のタイプに基づいて分類することができる。ヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体の例示的なカテゴリーとしては:(i)共通γ鎖含有ヘテロ二量体受容体、例えば、IL-2R、IL-4R、IL-7R、IL-9R、IL-13R、及びIL-15R;(ii)共通β鎖含有ヘテロ二量体受容体、例えば、GM-CSF受容体、IL-3R、及びIL-5R;並びに(iii)gp130含有ヘテロ二量体受容体、例えば、IL-6R、IL-11R、CNTF受容体、白血病抑制因子(LIF)受容体、オンコスタチンM(OSM)受容体、及びIL-12受容体が挙げられる。
【0121】
ホモ二量体クラスIサイトカイン受容体としては、成長ホルモン(GH)受容体、エリスロポエチン(EPO)受容体、G-CSF受容体、レプチン受容体、及びPRLRが挙げられる。
【0122】
本開示のこの態様のある実施態様において、ADCは、ヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。本開示のこの態様の他の実施態様によれば、ADCは、ホモ二量体クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0123】
本開示は、低レベルのヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を殺傷する方法を含む。本開示のこの態様による方法は、低レベルのヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を、ヘテロ二量体クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含むADCと接触させることを含む。
【0124】
或いは、本開示は、低レベルのホモ二量体クラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を殺傷する方法を含む。本開示のこの態様による方法は、低レベルのホモ二量体クラスIサイトカイン受容体を発現する細胞を、ホモ二量体クラスIサイトカイン受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含むADCと接触させることを含む。
【0125】
(エピトープマッピング及び関連技術)
本開示の抗体が結合するエピトープは、PRLRタンパク質の3個以上(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又はそれより多く)のアミノ酸の単一の連続配列からなっていてもよい。或いは、該エピトープは、PRLRの複数の非連続アミノ酸(又はアミノ酸配列)からなっていてもよい。いくつかの実施態様において、該エピトープは、PRLRのプロラクチン結合ドメイン上又はその近くに位置する。他の実施態様において、該エピトープは、PRLRのプロラクチン結合ドメインの外側、例えば、抗体が、そのようなエピトープに結合したときに、PRLRへのプロラクチン結合を妨害しないPRLRの表面上の場所に位置する。
【0126】
PRLR細胞外ドメインは、本明細書において「ドメイン1」及び「ドメイン2」と呼ばれる2つのフィブロネクチン様III型ドメインからなる。ドメイン1は、配列番号404のアミノ酸27から128によって表されるアミノ酸の配列であり;ドメイン2は、配列番号404のアミノ酸129から229によって表されるアミノ酸の配列である。本開示は、PRLRの細胞外ドメインのドメイン1内に見出される1以上のエピトープと相互作用する抗PRLR抗体を含む。該エピトープ(複数可)は、PRLRのドメイン1内に位置する3個以上(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又はそれより多く)のアミノ酸の1以上の連続配列からなっていてもよい。或いは、該エピトープは、PRLRのドメイン1内に位置する複数の非連続アミノ酸(又はアミノ酸配列)からなっていてもよい。本明細書の実施例10において示されるように、本開示の例示的な抗体HIH6958N2と相互作用するPRLRのエピトープは、アミノ酸配列
【化4】
(配列番号405)によって定義され、これは、配列番号404のアミノ酸 72~102に相当する。したがって、本開示は、配列番号404のアミノ酸72~102からなるドメイン1 アミノ酸セグメント(すなわち、配列
【化5】
(配列番号405))内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用する抗PRLR抗体を含む。
【0127】
当業者に公知の様々な技術を用いて、抗体がポリペプチド又はタンパク質中の「1以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。例示的な技術としては、例えば、ルーチンの交差遮断アッセイ、例えば、Harlow及びLaneの文献、Antibodies(抗体)(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されているもの、アラニンスキャニンング突然変異解析、ペプチドブロット解析(Reinekeの文献、2004, Methods Mol Biol 248:443-463)、及びペプチド切断解析が挙げられる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出、及び抗原の化学修飾などの方法を利用することができる(Tomerの文献、2000, Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド中のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般に、水素/重水素交換法は、対象となるタンパク質を重水素標識し、次いで、抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護された残基(これは重水素標識されたままである)を除く全ての残基で水素-重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析にかけ、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehringの文献(1999) Analytical Biochemistry 267(2):252-259; Engen及びSmithの文献(2001) Anal. Chem. 73:256A-265Aを参照されたい。
【0128】
本明細書において提供されるのは、本明細書に記載の具体的で例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に規定されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと同じエピトープに結合する抗PRLR抗体である。同様に、PRLRへの結合について、本明細書に記載の具体的で例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に規定されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと競合する抗PRLR抗体も提供される。
【0129】
当技術分野で公知の及び本明細書で例示されるルーチンの方法を使用することにより、抗体が、参照抗PRLR抗体と同じエピトープに結合するかどうか、又は参照抗PRLR抗体と結合について競合するかどうかを簡便に決定することができる。例えば、試験抗体が、本開示の参照抗PRLR抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を、PRLRタンパク質に結合させる。次に、PRLR分子に結合する試験抗体の能力を評価する。参照抗PRLR抗体による飽和結合の後に、試験抗体がPRLRに結合することができる場合、試験抗体は参照抗PRLR抗体と異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、参照抗PRLR抗体による飽和結合の後に、試験抗体がPRLR分子に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗PRLR抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。そこで、さらなるルーチン実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合解析)を実施して、試験抗体の結合が観察されなかったことが、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるかどうか、又は立体障害(もしくは別の現象)が、結合が観察されなかったことの原因であるかどうかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを用いて実施することができる。本開示のある実施態様によれば、競合的結合アッセイで測定したとき、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍、又は100倍過剰の一方の抗体が、もう一方の結合を少なくとも50%、しかし、好ましくは75%、90%、又はさらには99%阻害する場合、2つの抗体は、同じ(又は重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghansらの文献、Cancer Res. 1990:50:1495-1502を参照されたい)。或いは、一方の抗体の結合を低減又は消失させる抗原中の本質的に全てのアミノ酸突然変異がもう一方の結合を低減又は消失させる場合、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。一方の抗体の結合を低減又は消失させるアミノ酸突然変異のサブセットのみがもう一方の結合を低減又は消失させる場合、2つの抗体は「重複するエピトープ」を有するとみなされる。
【0130】
抗体が結合について参照抗PRLR抗体と競合するか(又は結合について交差競合するか)どうかを決定するために、上記の結合方法を2つの方針で実施する:第1の方針では、参照抗体を飽和条件下でPRLRタンパク質に結合させた後、試験抗体のPRLR分子への結合を評価する。第2の方針では、試験抗体を飽和条件下でPRLR分子に結合させた後、参照抗体のPRLR分子への結合を評価する。どちらの方針でも、最初の(飽和している)抗体のみがPRLR分子に結合することができる場合、試験抗体と参照抗体は、PRLRへの結合について競合すると結論付けられる。当業者によって理解されるように、結合について参照抗体と競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しておらず、重複又は隣接するエピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的に妨害する可能性がある。
【0131】
(ヒト抗体の調製)
本開示の抗PRLR抗体は、完全ヒト抗体であることができる。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成する方法は、当技術分野で公知である。任意のそのような公知の方法を本開示との関連で用いて、ヒトPRLRに特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0132】
例えば、VELOCIMMUNE(商標)技術、又は完全ヒトモノクローナル抗体を生成するための任意の他の同様の公知の方法を用いて、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、PRLRに対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。下記の実験の節に見られるように、抗体を、親和性、リガンド遮断活性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けし、選択する。必要な場合、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば、野生型又は修飾されたIgG1又はIgG4と交換して、完全ヒト抗PRLR抗体を生成する。選択される定常領域は具体的な用途に応じて異なり得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。場合によっては、完全ヒト抗PRLR抗体を抗原陽性B細胞から直接単離する。
【0133】
(生物学的同等物)
本明細書において記載される抗PRLR抗体及び抗体断片は、記載された抗体のものとは異なるが、ヒトPRLRに結合する能力を保持する、アミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのような変異体抗体及び抗体断片は、親配列と比較したときに、アミノ酸の1以上の付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体のものと本質的に同等である生物活性を呈する。同様に、本開示の抗PRLR抗体をコードするDNA配列は、開示された配列と比較したときに、ヌクレオチドの1以上の付加、欠失、又は置換を含むが、本開示の抗PRLR抗体又は抗体断片と本質的に生物学的に同等である抗PRLR抗体又は抗体断片をコードする、配列を包含する。そのような変異体アミノ酸及びDNA配列の例は、上で論じられている。
【0134】
2つの抗原結合タンパク質又は抗体は、例えば、それらが、単一用量又は複数用量のどちらかで、同様の実験条件下、同じモル用量で投与されたときに、その吸収の速度及び程度が有意差を示さない医薬同等物又は医薬代替物である場合、生物学的に同等であると考えられる。いくつかの抗体は、その吸収の程度が同等であるが、その吸収の速度が同等ではない場合、同等物又は医薬代替物と考えられるであろうし、生物学的に同等であると考えてもよい。なぜなら、吸収速度のそのような違いは意図的で、かつ標識に反映されるものであり、例えば、慢性使用時の、有効体内薬物濃度の達成に不可欠なものではなく、検討された特定の医薬品にとって医学的に重要なものではないと考えられるからである。
【0135】
一実施態様において、2つの抗原結合タンパク質は、その安全性、純度、及び効力において臨床的に意義のある違いがない場合、生物学的に同等である。
【0136】
一実施態様において、2つの抗原結合タンパク質は、患者が参照製剤と生物学的製剤との間を1回以上切り替えることができ、そのような切り替えを伴わない連続した療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化、又は有効性の減少を含む、有害作用のリスクの予想される増大がない場合、生物学的に同等である。
【0137】
一実施態様において、2つの抗原結合タンパク質は、それらがどちらも、1つ又は複数の使用条件に対する共通の1つ又は複数の作用機構によって、そのような機構が知られている範囲内で作用する場合、生物学的に同等である。
【0138】
生物学的同等性は、インビボ及びインビトロの方法によって実証することができる。生物学的同等性の尺度としては、例えば、(a)抗体又はその代謝産物の濃度を、血液、血漿、血清、又は他の生体液中で、時間の関数として測定するヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;(b)ヒトのインビボ生物学的利用能データと相関しており、それを合理的に予測するインビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適当な急性薬理作用を時間の関数として測定するヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;及び(d)抗体の安全性、有効性、又は生物学的利用能もしくは生物学的同等性を立証する十分に管理された臨床試験が挙げられる。
【0139】
本開示の抗PRLR抗体の生物学的に同等な変異体は、例えば、残基もしくは配列の様々な置換を行うか、又は生物活性に必要でない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失させることによって構築することができる。例えば、生物活性に必須でないシステイン残基を欠失させるか、又は他のアミノ酸と交換して、復元時の不必要な又は間違った分子内ジスルフィド架橋の形成を防ぐことができる。他の状況において、生物学的に同等な抗体には、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を消失させるか又は除去する突然変異を含む抗PRLR抗体変異体も含まれ得る。
【0140】
(種選択性及び種交差反応性)
本明細書において提供される方法は、ある実施態様によれば、ヒトPRLRに結合するが、他の種由来のPRLRには結合しない抗PRLR抗体を利用する。本開示は、ヒトPRLRに結合し、かつ1以上の非ヒト種由来のPRLRに結合する抗PRLR抗体も含む。例えば、本開示の抗PRLR抗体は、ヒトPRLRに結合してもよく、かつ場合により、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、もしくはチンパンジーのPRLRのうちの1つもしくは複数に結合することができてもよく、又はこれらに結合することができなくてもよい。本開示のある例示的な実施態様によれば、ヒトPRLR及びカニクイザル(例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis))のPRLRに特異的に結合する抗PRLR抗体が提供される。本開示の他の抗PRLR抗体は、ヒトPRLRに結合するが、カニクイザルPRLRには結合しないか、又は弱くしか結合しない。
【0141】
(多重特異性抗体)
本開示の方法において有用な抗体は、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってもよく、又は複数の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有していてもよい。例えば、Tuttらの文献、1991, J. Immunol. 147:60-69; Kuferらの文献、2004, Trends Biotechnol. 22:238-244を参照されたい。本開示の抗PRLR抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドもしくはタンパク質に連結させるか、又はこれらと共発現させることができる。例えば、抗体又はその断片を、1以上の他の分子実体、例えば、別の抗体又は抗体断片に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合、又はその他によって)機能的に連結させて、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を生産することができる。
【0142】
同様に本明細書において提供されるのは、免疫グロブリンの一方のアームがヒトPRLRに結合し、免疫グロブリンのもう一方のアームが第2の抗原に特異的である二重特異性抗体である。PRLR結合アームは、本明細書の表1に規定されるHCVR/LCVR又はCDRアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。ある実施態様において、PRLR結合アームは、ヒトPRLRに結合し、かつPRLRへのプロラクチン結合を遮断する。他の実施態様において、PRLR結合アームは、ヒトPRLRに結合するが、PRLRへのプロラクチン結合を遮断しない。
【0143】
本開示との関連で使用することができる例示的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig) CH3ドメイン及び第2のIg CH3ドメインの使用を包含し、ここで、第1のIg CH3ドメインと第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸によって互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の違いは、そのアミノ酸の違いを欠く二重特異性抗体と比較した場合、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を低減させる。一実施態様において、第1のIg CH3ドメインはプロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、プロテインA結合を低減又は消失させる突然変異、例えば、H95R修飾(IMGTエキソン付番による; EU付番によるH435R)を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによる; EUによるY436F)をさらに含んでいてもよい。第2のCH3中に見出され得るさらなる修飾としては: IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる; EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I); IgG2抗体の場合、N44S、K52N、及びV82I(IMGT; EUによるN384S、K392N、及びV422I);並びにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる; EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)が挙げられる。上記の二重特異性抗体フォーマットに対するバリエーションが、本開示の範囲内で企図される。
【0144】
本開示との関連で使用することができる他の例示的な二重特異性フォーマットとしては、限定するものではないが、例えば、scFvベース又はダイアボディ二重特異性のフォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クァドローマ(Quadroma)、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及びMab2二重特異性フォーマットが挙げられる(前述のフォーマットの総説については、例えば、Kleinらの文献、2012, mAbs 4:6, 1-11、及びその中で引用されている参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体は、例えば、直交する化学反応性を有する非天然アミノ酸を用いて、後に定義された組成、結合価、及び形状を有する多量体複合体へと自己組織化する部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成させるペプチド/核酸コンジュゲーションを用いて構築することもできる。(例えば、Kazaneらの文献、J. Am. Chem. Soc.[Epub: 2012年12月4日]を参照されたい)。
【0145】
(治療製剤及び投与)
本開示は、本開示において有用な抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、及び改善された転移、送達、忍容性などをもたらす他の薬剤とともに製剤化される。多くの適当な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方集:レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Company, Easton, PAに見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)を含有する小胞(例えばLIPOFECTIN(商標)、Life Technologies, Carlsbad, CA)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、並びにカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellらの文献、「非経口製剤用の賦形剤の概要(Compendium of excipients for parenteral formulations)」、PDA(1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0146】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて異なり得る。好ましい用量は、典型的には、体重又は体表面積により算出される。成人患者では、本開示の抗体を、通常、約0.01~約20mg/kg体重、より好ましくは、約0.02~約7、約0.03~約5、又は約0.05~約3mg/kg体重の単一用量で静脈内投与することが有利である場合がある。状態の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。抗PRLR抗体を投与するための有効な投薬量及びスケジュールを経験的に決定してもよく;例えば、患者の経過を定期的評価によってモニタリングし、用量をそれに応じて調整することができる。さらに、投薬量の種間スケーリングを、当技術分野で周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordentiらの文献、1991, Pharmaceut. Res. 8:1351)。
【0147】
様々な送達系、例えば、リポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセル、突然変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが公知であり、本明細書において提供される医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wuらの文献、1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通した吸収によって投与してもよく、他の生物活性剤とともに投与してもよい。投与は、全身性又は局所性であることができる。
【0148】
本開示の医薬組成物は、標準的な針及びシリンジを用いて、皮下又は静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン型送達デバイスは、再利用可能又は使い捨てであることができる。再利用可能なペン型送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを使用する。カートリッジ内の医薬組成物を全て投与して、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に捨てて、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。このペン型送達デバイスは、その後、再利用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジがない。むしろ、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に保持される医薬組成物が予め充填された状態で提供される。リザーバから医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。
【0149】
多くの再利用可能なペン及び自己注射器型送達デバイスは、本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、ほんの少し例を挙げれば、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford社、Woodstock, UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems, Bergdorf, Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co., Indianapolis, IN)、NOVOPEN(商標) I、II、及びIII(Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、並びにOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis, Frankfurt, Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てのペン型送達デバイスの例としては、ほんの少し例を挙げれば、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen, Thousand Oaks, CA)、PENLET(商標)(Haselmeier, Stuttgart, Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.)、並びにHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs, Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
ある状況では、医薬組成物を制御放出系で送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用してもよい(Langerの文献、前出; Seftonの文献、1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201を参照されたい)。別の実施態様において、ポリマー材料を使用することができる;制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、Langer及びWise(編), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Floridaを参照されたい。また別の実施態様において、制御放出系を組成物の標的の近くに配置することができ、そのため、全身用量の一部しか必要としない(例えば、制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)、前出、第2巻、115~138頁におけるGoodsonの文献、1984を参照されたい)。他の制御放出系は、Langerによる総説、1990, Science 249:1527-1533に論じられている。
【0151】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内、及び筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含むことができる。これらの注射用調製物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、注射用調製物は、抗体又はその塩を、従来注射に使用されている滅菌水性媒体又は油性媒体に、例えば、溶解、懸濁、又は乳化させることによって製造することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤を含有する等張溶液などがあり、これらを、適当な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが利用され、これらを、可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用することができる。このように調製された注射剤は、適当なアンプルに充填されるのが好ましい。
【0152】
上記の経口又は非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量を適合させるのに適した単位用量の剤形に製造することが有利である。単位用量のそのような剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含まれる前述の抗体の量は、一般に、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり;特に、注射剤の形態では、前述の抗体が約5~約100mgで含まれ、他の剤形については、約10~約250mgで含まれることが好ましい。
【0153】
(抗体の治療的使用)
本開示は、それを必要としている対象に、抗PRLR抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(例えば、本明細書の表1に規定されるHCVR/LCVR又はCDR配列のいずれかを含むADC)を含む治療組成物を投与すること、及び同じ対象にフルベストラントを共投与することを含む、方法を含む。該治療組成物は、本明細書に開示される抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート、又はその抗原結合断片、又はADCのいずれか、及び医薬として許容し得る担体又は希釈剤を含むことができる。
【0154】
本明細書において提供される方法において有用なADCは、とりわけ、PRLR発現又は活性と関連し又はそれによって媒介される任意の疾患又は障害、或いはPRLRとプロラクチンとの相互作用を遮断し、又は別の形でPRLR活性及び/もしくはシグナル伝達を阻害すること、及び/又は受容体内在化を促進すること、及び/又は細胞表面受容体数を減少させることによって治療可能な任意の疾患又は障害の、治療、予防、及び/又は改善に用いることができる。例えば、本開示のADCは、PRLRを発現し、及び/又はプロラクチン媒介性シグナル伝達に応答する腫瘍、例えば、乳房腫瘍の治療に有用である。本明細書において提供されるADCは、脳及び髄膜、中咽頭、肺、及び気管支樹、消化管、男性及び女性生殖器系、筋肉、骨、皮膚及び付属器、結合組織、脾臓、免疫系、造血細胞及び骨髄、肝臓及び尿路、並びに眼などの特殊な感覚器官に生じる原発性及び/又は転移性腫瘍を治療するために使用することもできる。ある実施態様において、ADCは、以下の癌:腎細胞癌、膵癌、頭頸部癌、前立腺癌、悪性神経膠腫、骨肉腫、結腸直腸癌、胃癌(例えば、MET増幅を有する胃癌)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、滑膜肉腫、甲状腺癌、乳癌、又は黒色腫のうちの1以上を治療するために使用される。いくつかの実施態様において、この癌はPRLR陽性乳癌である。
【0155】
本開示の抗PRLR抗体はまた、子宮内膜症、腺筋症、非ホルモン女性避妊、良性乳房疾患及び乳房痛、泌乳阻害、良性前立腺過形成、類線維腫、高及び正常プロラクチン血性脱毛からなる群から選択される1以上の疾患又は障害の治療又は予防に、並びに乳腺上皮細胞増殖を阻害するためのホルモン療法の一部として有用である。
【0156】
本明細書に記載の治療方法との関連において、抗PRLR抗体は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)又は1以上の追加の治療剤(この例は、本明細書の別所に記載されている)と組み合わせて投与することができる。1つの特に有用な例はフルベストラントである。
【0157】
本開示は、患者の1以上の組織、例えば、腫瘍組織における高レベルのPRLR発現についてアッセイすることによって、本開示のADCで治療可能な患者を特定する方法を含む。関連する実施態様において、本開示は、PRLRの高レベル発現を特徴とする癌を治療する方法を含む。例えば、本開示は、本開示の抗PRLR抗体、又はそのADC(例えば、本明細書の別所に記載の抗PRLR ADCのいずれか)を、腫瘍を有する対象に投与することを含む治療方法を含み、ここで、該腫瘍は、高レベルのPRLRを発現することが同定されている。ある実施態様において、該腫瘍は、生検試料の免疫組織化学検査又は例えば、免疫-PETイメージングなどの他のイメージング技術などによって、高レベルのPRLRを発現することが同定される。
【0158】
(併用療法及び製剤)
本開示は、本明細書において提供される方法において有用な組成物及び治療製剤、ここで、該組成物及び治療製剤は本明細書に記載の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートのいずれかを1以上の追加の治療活性成分との組合せで含む組成物及び治療製剤、並びにそれを必要としている対象にそのような組合せを投与することを含む治療方法を含む。
【0159】
本明細書に記載の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートは、治療有効量のフルベストラントと共製剤化してもよく、及び/又はそれとの組み合わせで投与してもよい。抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及びフルベストラントの両方を用いる治療は「共投与」と名付けられる。
【0160】
本開示の抗PRLR抗体は、EGFRアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体[例えば、セツキシマブもしくはパニツムマブ]又はEGFRの低分子阻害剤[例えば、ゲフィチニブもしくはエルロチニブ])、別のEGFRファミリーメンバー、例えば、Her2/ErbB2、ErbB3、もしくはErbB4のアンタゴニスト(例えば、抗ErbB2[例えば、トラスツズマブもしくはT-DM1{KADCYLA(登録商標)}]、抗ErbB3もしくは抗ErbB4抗体、又はErbB2、ErbB3、もしくはErbB4活性の低分子阻害剤)、EGFRvIIIのアンタゴニスト(例えば、EGFRvIIIに特異的に結合する抗体)、cMETアンタゴニスト(例えば、抗cMET抗体)、IGF1Rアンタゴニスト(例えば、抗IGF1R抗体)、B-raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX-4720)、PDGFR-α阻害剤(例えば、抗PDGFR-α抗体)、PDGFR-β阻害剤(例えば、抗PDGFR-β抗体又は例えば、メシル酸イマチニブもしくはリンゴ酸スニチニブなどの低分子キナーゼ阻害剤)、PDGFリガンド阻害剤(例えば、抗PDGF-A、-B、-C、又は-D抗体、アプタマー、siRNAなど)、VEGFアンタゴニスト(例えば、VEGF-Trap、例えば、アフリベルセプト、例えば、US 7,087,411号を参照のこと(本明細書では「VEGF阻害性融合タンパク質」とも呼ばれる)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の低分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ又はパゾパニブ))、DLL4アンタゴニスト(例えば、US 2009/0142354号に開示されている抗DLL4抗体、例えば、REGN421)、Ang2アンタゴニスト(例えば、US 2011/0027286号に開示されている抗Ang2抗体、例えばH1H685P)、FOLH1アンタゴニスト(例えば、抗FOLH1抗体)、STEAP1又はSTEAP2アンタゴニスト(例えば、抗STEAP1抗体又は抗STEAP2抗体)、TMPRSS2アンタゴニスト(例えば、抗TMPRSS2抗体)、MSLNアンタゴニスト(例えば、抗MSLN抗体)、CA9アンタゴニスト(例えば、抗CA9抗体)、ウロプラキンアンタゴニスト(例えば、抗ウロプラキン[例えば、抗UPK3A]抗体)、MUC16アンタゴニスト(例えば、抗MUC16抗体)、Tn抗原アンタゴニスト(例えば、抗Tn抗体)、CLEC12Aアンタゴニスト(例えば、抗CLEC12A抗体)、TNFRSF17アンタゴニスト(例えば、抗TNFRSF17抗体)、LGR5アンタゴニスト(例えば、抗LGR5抗体)、一価CD20アンタゴニスト(例えば、一価抗CD20抗体、例えば、リツキシマブ)など:からなる群から選択される1以上の追加の治療活性成分と共製剤化し、及び/又は該治療活性成分と組み合わせて投与することができる。本明細書に記載のADCと組み合わせて有利に投与し得る他の薬剤としては、例えば、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、及びサイトカイン阻害剤が挙げられ、これには、低分子サイトカイン阻害剤、及びIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18などのサイトカイン又はそのそれぞれの受容体に結合する抗体が含まれる。
【0161】
本明細書に記載の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートのいずれかを含む組成物及び治療製剤は、1以上の化学療法剤との組み合わせで投与する(共投与する)ことができる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド(Cytoxan(商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン、並びにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むメチルアメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド;プロカルバジン; PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(Taxol(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドセタキセル(Taxotere(商標); Aventis Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート; CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;及び上記のもののいずれかの医薬として許容し得る塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0162】
本開示の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートは、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイド、ステロイド、酸素、抗酸化剤、COX阻害剤、心臓保護剤、金属キレート剤、IFN-γ、及び/又はNSAIDと組み合わせて投与し、及び/又は共製剤化することもできる。
【0163】
追加の治療活性成分(複数可)、例えば、上記の薬剤のいずれか又はその誘導体は、本開示の抗PRLR抗体の投与の直前、それと同時、又はその直後に投与することができる;(本開示の目的のために、そのような投与レジメンは、追加の治療活性成分「と組み合わせた」、すなわち、「共投与」された抗PRLR抗体の投与とみなされる)。本開示は、本開示の抗PRLR抗体が本明細書の別所に記載の1以上の追加の治療活性成分と共製剤化される医薬組成物を含む。
【0164】
(投与レジメン)
本明細書において使用される「共投与」は、フルベストラントとの組み合わせでのPRLR 抗体-薬物コンジュゲートの投与を指す。本開示のある実施態様によれば、抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート(又は抗PRLR抗体-薬物の組合せを含む医薬組成物)及びフルベストラントは、対象に、同時に又は異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、定義された時間経過にわたる、数時間、数日、数週間、又は数カ月)を空けた異なる日に、投与してもよい。本開示のこの態様による方法は、単一用量又は複数用量の本開示の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート、及び単一用量又は複数用量のフルベストラントを、対象に順次投与することを含む。さらに、抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートは、フルベストラントの投与前又は投与後に投与することもできる。
【0165】
本開示のある実施態様によれば、フルベストラントの投与に加えて、複数用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート(又は抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートと本明細書に言及される追加の治療活性剤のいずれかの組合せを含む医薬組成物)を規定の時間経過にわたって対象に投与することができる。本開示のこの態様による方法は、対象に、複数用量の本開示の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートを順次投与すること、及び/又は対象に、複数用量のフルベストラントを順次投与することを含む。本明細書で使用されるように、「順次投与する」とは、各々の用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び/又はフルベストラントが、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週、又は数カ月)を空けた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本開示は、患者に、単一の初回用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート、その後、1以上の二次用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート、任意にその後、1以上の三次用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートを順次投与することを含む方法を含む。本開示は、さらに、患者に、単一の初回用量のフルベストラント、その後、1以上の二次用量のフルベストラント、任意にその後、1以上の三次用量のフルベストラントを順次投与することを含む方法を含む。
【0166】
「初回用量」、「二次用量」、及び「三次用量」という用語は、本明細書において提供される治療剤の抗PRLR抗体の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり;「二次用量」は、初回用量後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量後に投与される用量である。初回、二次、及び三次用量は全て、同量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート又は同量のフルベストラントを含有し得るが、一般に、投与の頻度に関して互いに異なり得る。しかし、ある実施態様において、初回、二次、及び/又は三次用量に含有される抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートの量は、治療経過中、互いに変化する(例えば、適宜、上方調整又は下方調整される)。ある実施態様において、2以上の(例えば、2、3、4、又は5)用量が、治療レジメンの開始時に「ローディング用量」として投与され、その後、より低い頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0167】
本発明のある例示的な実施態様において、各々の二次及び/又は三次用量は、直前の用量から1~26週間(例えば、(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2週間、又はそれより長い期間)後に投与される。本明細書で使用される「直前の用量」という語句は、一連の複数回の投与において、介入用量のない順序で、そのまさに次の用量の投与前に患者に投与される抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート、又はフルベストラントの用量を意味する。
【0168】
本開示のこの態様による方法は、患者に、任意の数の二次及び/又は三次用量の抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート又はフルベストラントを投与することを含み得る。例えば、ある実施態様において、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施態様において、2以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれより多く)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある実施態様において、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施態様において、2以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれより多く)の三次用量が患者に投与される。投与レジメンは、特定の対象の生涯にわたって無期限に、又はそのような治療がもはや治療的に必要でなくなるかもしくは有利でなくなるまで実施することができる。
【0169】
複数の二次用量を含む実施態様において、各々の二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各々の二次用量は、患者に、直前の用量から1~2週間後又は1~2カ月後に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を含む実施態様において、各々の三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各々の三次用量は、患者に、直前の用量から2~12週間後に投与されてもよい。本開示のある実施態様において、二次及び/又は三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変わり得る。投与の頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師により、治療経過中に調整されてもよい。
【0170】
本開示は、2~6回のローディング用量が、第一の頻度(例えば、週に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、月に1回、2カ月毎に1回など)で患者に投与され、次いで、2以上の維持用量がより低い頻度で患者に投与される投与レジメンを含む。例えば、本開示のこの態様によれば、ローディング用量が月に1回の頻度で投与される場合、維持用量は、6週間毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回などで、患者に投与されてもよい。
【0171】
本開示は、多数の実施態様を参照して具体的に示され、記載されるが、当業者には、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に開示される様々な実施態様に形態及び細部の変更を行ってもよいこと、及び本明細書に開示される様々な実施態様は特許請求の範囲に対する限定として作用することを意図しないことは理解されるであろう。
【0172】
(実施例)
以下の実施例は、当業者に、本明細書において提供される方法及び組成物をどのように作製及び使用するかについての完全な開示及び説明を提供するために記載されており、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しては、正確さを確保するように努めたが、ある程度の実験的な誤差及び偏差が考慮されるべきである。別途指示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又はその付近である。
【0173】
(実施例1.抗PRLR抗体の生成)
抗PRLR抗体を、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖及びカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む改変マウス)をヒトPRLRの可溶性二量体細胞外ドメインを含む免疫原で免疫することにより得た。抗体免疫応答をPRLR特異的免疫アッセイによりモニタリングした。所望の免疫応答が達成されたら、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、その生存を保持し、ハイブリドーマ細胞株を形成させた。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、PRLR特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技術を用いて、いくつかの抗PRLRキメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びマウス定常ドメインを保有する抗体)を得た。さらに、いくつかの完全ヒト抗PRLR抗体を、US 2007/0280945A1号に記載のとおりに、骨髄腫細胞への融合なしで、抗原陽性B細胞から直接単離した。
【0174】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗PRLR抗体の特定の生物学的特性を下記の実施例で詳細に記載する。
【0175】
(実施例2.重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸及び核酸配列)
表1は、選択された本明細書において記載される抗PRLR抗体の重鎖及び軽鎖可変領域並びにCDRのアミノ酸配列識別子を規定している。対応する核酸配列識別子を表2に規定している。
表1:アミノ酸配列識別子
【表1】
表2:核酸配列識別子
【表2】
【0176】
抗体は、典型的に、本明細書において、表1及び2に示すように、以下の命名法: Fc接頭辞(例えば、「H1H」、「H1M」、「H2M」など)、次に、数値的識別子(例えば、「6762」、「6953」、「6958」など)、次に、「P」又は「N」という接尾辞、に従って呼ばれる。したがって、この命名法によれば、抗体は、本明細書において、例えば、「H1H6762P」、「H1M6953N」、「H2M6958N」などと呼ぶことができる。本明細書で使用される抗体表記におけるH1H、H1M、及びH2Mという接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1H」抗体はヒトIgG1 Fcを有し、「H1M」抗体はマウスIgG1 Fcを有し、「H2M」抗体はマウスIgG2 Fcを有する(抗体表記中の最初の「H」によって表されているように、可変領域は全て、完全にヒトのものである)。当業者によって理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体を、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができるが(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)、どの事象においても、可変ドメイン(CDRを含む)-これは、表1及び2に示される数値的識別子によって示される-は同じままであり、結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず、同一であるか又は実質的に類似していると考えられる。
【0177】
(以下の実施例で使用される対照構築物)
比較目的で、対照構築物を以下の実験に含めた:対照I: WO2008/02295A2号に規定されている「he.06.642-2」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変ドメインを有するヒト抗PRLR抗体;並びに対照II: Carterらの文献、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289に規定されている「4D5v8」の対応するドメインのアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖可変ドメインを有するヒト抗ErbB2抗体。
【0178】
(実施例3.表面プラズモン共鳴から導出されるヒトモノクローナル抗PRLR抗体の結合親和性及び動力学定数)
ヒトモノクローナル抗PRLR抗体の結合親和性及び動力学定数を25℃及び37℃での表面プラズモン共鳴によって決定した。ヒトIgG1 Fc(すなわち、「H1H」という表記)と表される抗体を抗ヒトFcセンサー表面(mAb-捕捉フォーマット)上で捕捉し、可溶性単量体PRLRタンパク質(hPRLR.mmh;配列番号401、もしくはカニクイザル(mf)PRLR.mmh;配列番号403)又は二量体PRLRタンパク質(hPRLR.mFc;配列番号402)をセンサー表面の全体にわたって注入した。測定は、T200 Biacore装置で実施した。動力学的会合速度定数(ka)及び解離速度定数(kd)は、Scrubber 2.0曲線適合ソフトウェアを用いて、データを処理し、それを1:1結合モデルに適合させることによって決定した。結合解離平衡定数(KD)及び解離半減期(t1/2)は、以下のような動力学的速度定数: KD(M)=kd/ka;及びt1/2(分)=(In2/(60*kd)から算出した。結果を表3及び4にまとめる。
表3: 25℃でのヒトFc mAbのBiacore結合親和性
【表3】
NB=使用した条件下で結合は観察されず

表4: 37℃でのヒトFc mAbのBiacore結合親和性
【表4】
NB=使用した条件下で結合は観察されず
【0179】
表3及び4に示したように、本明細書に記載のいくつかの抗体は、ヒト及びサルPRLRタンパク質に対するナノモル濃度未満の親和性を示し、比較器(comparator)の抗PRLR抗体(対照I)よりも高い親和性を呈した。例えば、37℃で、抗PRLR抗体の多くは、4nM未満のKD値及び5分超のT1/2時間で単量体ヒトPRLRに結合し; 250pM未満のKD値及び60分超のT1/2時間で二量体ヒトPRLRに結合した。これらの結合特徴は、同じ実験条件下で対照I抗体を用いて観察されたものよりも実質的に優れている。
【0180】
(実施例4A.抗PRLR抗体は内在性及び過剰発現PRLR細胞株に結合する)
次に、PRLR発現細胞株に選択的に結合する抗PRLR抗体の能力を決定した。HAタグを有するヒト、サル(カニクイザル)、及びマウスPRLR構築物を、Lipofectamine 2000媒介トランスフェクション法により、HEK293細胞に安定に導入した。トランスフェクト体(HEK293/hPRLR、HEK293/mfPRLR、及びHEK293/mPRLR)を完全成長培地+G418中で少なくとも2週間選択した。
【0181】
293/hPRLR細胞上でのPRLRの細胞表面発現をFACS解析により評価した。簡潔に述べると、1×105個の細胞を、10μg/mlの対照抗体I、又はアイソタイプ対照とともに、抗体希釈バッファー中、氷上で30分間インキュベートした。抗体希釈バッファーで2回洗浄した後、細胞を、10μg/mlのPEコンジュゲート抗ヒト二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。さらに2回洗浄した後、試料をHypercyt(登録商標)サイトメーターにかけ、ForeCyt(商標)(IntelliCyt, Albuquerque, NM)で解析した。平均蛍光強度(MFI)を、アイソタイプ対照レベル(バックグラウンド)を上回る倍数変化として表した。FACS結合により、対照Iが、バックグラウンド(アイソタイプ対照)レベルの30倍のMFI及び親細胞上での2倍未満の結合で293/hPRLR発現細胞に選択的に結合することが確認された。
【0182】
PRLRの細胞表面コピー数もT47D、MCF7、及びMCF7/hPRLR過剰発現細胞株で定量的に決定した。簡潔に述べると、1×105個の細胞を、100nMの抗PRLR抗体H1H6953N-Alexa647とともに、抗体希釈バッファー中、氷上で30分間インキュベートした。抗体希釈バッファーで2回洗浄した後、試料をHypercyt(登録商標)サイトメーター(IntelliCyt, Albuquerque, NM)にかけ、平均蛍光強度(MFI)をForeCyt(商標)(IntelliCyt, Albuquerque, NM)で決定した。その後、各々の細胞株についてのMFIを、製造業者の指示書(Bangs Laboratories社, Fishers, IN)に従って、Quantum Alexa Fluor 647 MESFキットにより、等価可溶性蛍光(MESF)のAlexa647分子に変換した。H1H6953N-A647タンパク質当たりのフルオロフォアの平均数(F/P比)を、製造業者の指示書(Bangs Laboratories社, Fishers, IN)に従って、Simply Cellular抗ヒトIgGキットにより決定した。MESF値をF/P比で割って、各々の細胞株でのPRLR細胞表面コピー数又はH1H6953N抗原結合能を決定した。この方法を用いて、様々な細胞株でのPRLRのおおよその細胞表面コピー数が次のとおりであることが決定された: T47D=27,000; MCF7=3,000;及びMCF7/hPRLR=190,000。
【0183】
次に、抗PRLR抗体を、PRLRを過剰発現する改変HEK293細胞株、並びに非発現HEK293細胞及び天然のPRLR発現細胞株(T47D)に対する選択的結合について、FACSにより試験した。結果を表5に示す。
表5:抗PRLR抗体のFACS細胞表面結合
【表5】
*は、HEK293/hPRLR、HEK293/mfPRLR及びT47Dでの、HEK293親細胞の2倍未満の特異的結合を有する抗体を示す。
【0184】
表5に示したように、大多数の抗ヒトPRLR抗体は、バックグラウンドレベルの25倍超でHEK293/PRLR細胞に特異的に結合し、親細胞への結合は無視できる程度であった。ヒトPRLRに結合する抗体は、HEK293/mfPRLR細胞上のサル(カニクイザル)PRLRに結合することが同様に示された。HEK293/hPRLR細胞に対する強いバインダーであることが同定されている抗体は、天然のPRLR発現T47D細胞に対する強力なバインダーであることが同様に示された。齧歯類PRLRに対する交差反応性は観察されなかった。
【0185】
まとめると、抗体は、改変細胞株上のヒト及びサルPRLR、並びに内在性に発現されるPRLRに対する強い結合を示した。
【0186】
(実施例4B.抗PRLR抗体はインビトロでPRLR発現細胞により内在化される)
この実施例では、PRLR発現細胞(T47D)による抗PRLR抗体の内在化を評価した。簡潔に述べると、20,000個のT47D細胞をコラーゲンコートされた96ウェルプレートに播種した。翌日、細胞を抗ヒトPRLR抗体(10μg/ml)とともに氷上で30分間インキュベートし、その後、PBSで2回洗浄した。その後、細胞をalexa488コンジュゲート抗hFc Fab二次抗体とともに氷上で30分間インキュベートし、その後、PBSでさらに2回洗浄した。抗体を、内在化バッファー(PBS+2%FBS)中、37℃で1時間内在化させるか、又は4℃で放置した。細胞を4%ホルムアルデヒド中で固定し、核をDRAQ5(Cell signaling)で染色し、ImageXpress micro XL(Molecular Devices)で画像を取得した。37℃での全細胞alexa488強度(結合)及び37℃での細胞内小胞内のalexa488強度(内在化)をColumbus画像解析ソフトウェア(PerkinElmer)により決定した。強度を、最も強い内在化抗体であるH1H6975Nのパーセンテージとして表し、表6にまとめる。
表6
【表6】
【0187】
H1H6959N2を除いて、試験した全ての抗体がT47Dに結合し、結合した全てのmAbの100%近くが1時間以内に内在化した。ほとんどの抗体の全内在化抗体強度は、抗ヒトPRLR対照抗体(対照I)よりも大きかった。
【0188】
(実施例5.抗PRLR抗体はヒトPRLRを発現する細胞でのPRL媒介性受容体活性化を阻害する)
プロラクチン(PRL)媒介性受容体活性化を遮断する抗PRLR抗体の能力をルシフェラーゼに基づくレポーターアッセイで調べた。内分泌ホルモンPRLは、その同族受容体PRLRの細胞外ドメインに結合し、速やかなホモ二量体化を誘発し、いくつかの下流シグナル伝達カスケードを活性化する。
【0189】
この実施例では、改変細胞株を用いて、PRLR受容体のリガンド活性化を遮断する抗PRLR抗体の能力を決定した。簡潔に述べると、ヒトPRLR発現カセット及びSTAT5依存的ルシフェラーゼレポーターが安定に取り込まれたHEK293/hPRLR/STAT5-Luc細胞株を連続的なLipofectamine(登録商標)2000媒介トランスフェクション(LifeTechnologies, Carlsbad, CA)により生成した。細胞を、500μg/mLのG418(hPRLR)及び100μg/mLのハイグロマイシンB(STAT5-Luc)の存在下で、少なくとも2週間選択した。STAT5-Lucアッセイは、完全成長培地中でPDLコートされた96ウェルプレート上に播種し、37℃、5%CO2で一晩成長させた2×105個のHEK293/hPRLR/STAT5-Luc細胞を利用した。抗体阻害曲線を作成するために、細胞を、5nMの一定のPRLの存在下、連続希釈した抗ヒトPRLR抗体(100nM~24pM)とともにインキュベートし(37℃で6時間)、その後、シグナルを記録した。連続希釈したPRL(100nM~24pM)を細胞に添加し、抗体の非存在下で6時間(37℃)インキュベートした後、シグナルを記録することにより、PRL用量応答曲線を作成した。リガンドの非存在下でPRLRを活性化する抗体の能力も評価した。
【0190】
ルシフェラーゼ活性を、ONE-Glo(商標)試薬(Promega, Madison, WI)を用いて測定した。相対光単位(RLU)をVictorルミノメーター(Perkin Elmer, Shelton, CT)で測定した。EC50/IC50値を、GraphPad Prismを用いた8点応答曲線に対する4パラメータロジスティック方程式から決定した。パーセント遮断及びパーセント活性化を最大の抗体用量について報告する。結果を表7に示す。
表7:抗PRLR抗体によるPRL媒介性シグナル伝達のIC50及びパーセント遮断
【表7】
NB: 遮断されず; ND: 不完全遮断により決定されず
【0191】
表7にまとめたように、本発明の抗体の大多数がSTAT5レポーターの活性化を22pM~8nMの範囲のIC50値で阻害した。阻害性抗体は全て、活性化をベースラインレベル(100パーセント遮断)にまで遮断した。さらに、このアッセイで試験された抗体は、PRLリガンドの非存在下では、STAT5を活性化させなかった。
【0192】
まとめると、この実施例のデータは、抗PRLR抗体の大多数がPRL媒介性受容体活性化を遮断することを示している。さらに、該抗体の大多数は、抗PRLR対照I抗体よりも強く受容体活性化を阻害する。例えば、いくつかの抗PRLR抗体は、プロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.3nM未満のIC50値で遮断した。他方、ある抗PRLR抗体は、PRLRに結合することができるにもかかわらず、プロラクチン遮断活性を示さなかった。そのような非遮断性抗PRLR抗体は、正常なプロラクチン媒介性シグナル伝達を妨害しないPRLR標的化が望まれる様々な治療状況において用途を見出し得る。
【0193】
(実施例6.抗PRLR抗体薬物コンジュゲートの調製及び特徴付け)
選択された抗PRLR抗体を、参照によりそれらの全体が本明細書に取り込まれる米国特許第5,208,020号及び米国特許出願公開第2010/0129314号に記載されているものと同様の方法を用いて、SMCCリンカーを介してメイタンシノイドDM1にコンジュゲートした。該コンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、滅菌濾過した。別途注記しない限り、出発材料及び溶媒は全て、市販のものを購入し、精製することなく使用した。
【0194】
タンパク質及びリンカー/ペイロード濃度は、UVスペクトル分析及びMALDI-TOF質量分析により決定した。サイズ排除HPLCにより、使用した全てのコンジュゲートが>95%単量体であることが確定され、RP-HPLCにより、コンジュゲートされていないリンカーペイロードが<0.5%であることが確定された。収率は、タンパク質に基づいて、表8及び9に報告されている。全てのコンジュゲート抗体を、Hamblettらの文献、2004, Clinical Cancer Research 10(20):7063-7070に従って、リンカーペイロード積載値について、UVにより、及びネイティブ体とコンジュゲート体の質量差により分析した。
表8:抗PRLR非コンジュゲート抗体のタンパク質濃度
【表8】
表9:抗PRLR-SMCC-DM1コンジュゲートについての抗体リンカー/ペイロード濃度
【表9】
ND: 決定されず
【0195】
この実施例は、SMCCリンカーを介した抗PRLR抗体とDM1とのコンジュゲーションを示している。この実施例のコンジュゲート抗体について、ペイロード:抗体モル比は、約2.3~約3.8であると算出された。抗体のパーセント収率は、およそ50%~70%の範囲であった。
【0196】
(実施例7.抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートは、PRLR発現レベルが高い細胞だけでなく、PRLR発現レベルが低~中程度の細胞も効果的に殺傷する)
類似の抗ErbB2 ADCと比較した抗PRLR ADCの相対的な細胞殺傷効力を決定するために、細胞殺傷アッセイを、PRLRか、ErbB2か、又は両方の受容体の組合せかのいずれかを発現する複数の細胞株に対して実施した。
【0197】
細胞生存を低減させる抗PRLRコンジュゲート抗体の能力を評価するために、HEK293、PC3、MCF7、及びNCI-N87を含むPRLR過剰発現細胞を生成した。比較目的のために、ErbB2を過剰発現するPC3及びT47D細胞、並びにhPRLRとhErbB2の両方を過剰発現するMCF7細胞株も生成した。簡潔に述べると、Lipofectamine(登録商標)2000媒介トランスフェクション法を利用して、ヒトPRLRを発現するHEK293細胞(HEK293/hPRLR)又はヒトErbB2を発現するHEK293細胞(HEK293/hErbB2)を生成した。Lipofectamine LTXをPlus Reagentとともに用いて、ヒトPRLRを発現するPC3細胞(PC3/hPRLR)又はヒトErbB2を発現するPC3細胞(PC3/hErbB2)を生成した。レンチウイルス媒介性形質導入を利用して、ヒトPRLRを発現するMCF7細胞(MCF7/hPRLR)、ヒトPRLRを発現するNCI-N87細胞(NCI-N87/hPRLR)、ヒトErbB2を過剰発現するT47D細胞(T47D/hErbB2)、及びヒトPRLRとヒトErbB2の両方を発現するMCF7細胞(MCF7/hPRLR/hErbB2)を生成した。全ての株を、適当な選択試薬を加えた完全成長培地中で、少なくとも2週間選択した。安定に発現する集団を、PRLR発現について、抗PRLR抗体対照Iを用いるFACSにより濃縮した。
【0198】
PRLR及びErbB2の細胞表面発現を、それぞれ、対照Iの抗PRLR抗体又は対照IIの抗HER2抗体のどちらかを用いるFACSにより解析した。さらに、より侵襲性の高いインビボ腫瘍成長について選択されたT47D株の変異体であるT47D#11細胞株での内在性PRLR細胞表面発現も決定した。約1×106個の細胞を、10μg/mlの抗PRLR対照抗体(対照I)、抗ErbB2対照抗体(対照II)、又はアイソタイプ対照とともに、抗体希釈バッファー中、氷上で30分間インキュベートした。抗体希釈バッファーで2回洗浄した後、細胞を、10μg/mlのPEコンジュゲート抗ヒト二次抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。さらに2回洗浄した後、試料をAccuri C6(BD)サイトメーターにかけ、FlowJoソフトウェア(Tree Star社, Ashland, OR)で解析した。相対発現レベルの結果を表10に示す。
表10:ヒトPRLR細胞表面発現(改変株及び内在性株)
【表10】
【0199】
一般に、外因性PRLR表面発現は、バックグラウンドと比べて6倍~55倍の範囲であり、ほとんどの改変細胞は、バックグラウンドと比べて12倍~18倍のPRLR発現を呈した。内在性PRLR発現は、MCF7細胞では、バックグラウンドと比べて3倍であったが、親のHEK293、PC3、及びNCI-N87株では検出されなかった。内在性PRLR発現は、T47D細胞株では、バックグラウンドと比べて12倍であり、T47D#11変異体細胞株では、バックグラウンドと比べて10倍であった。ErbB2発現は、全てのPRLR発現細胞株で検出され、バックグラウンドの18倍~1400倍の範囲であった。
【0200】
次に、細胞生存を低減させる抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲート(すなわち、切断不可能なリンカー[SMCC]を介してDM1にコンジュゲートされた抗PRLR抗体)の能力をインビトロでの細胞ベースのアッセイを用いて決定した。細胞を、完全成長培地中、ウェル当たり1500~10000細胞で、PDLコートされた96ウェルプレートに播種し、一晩成長させておいた。細胞生存曲線のために、ADC又は遊離DM1(メチルジスルフィド誘導体DM1-SMeとしてのもの)を500nM~5pMの範囲の最終濃度で細胞に添加し、3日間インキュベートした。293、PC3、及びT47D細胞は、最後の1~3時間、CCK8(Dojindo, Rockville, MD)とともにインキュベートし、450nmでの吸光度(OD450)をFlexstation3(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で決定した。MCF7細胞をHoechst 33342核染料で処理すると同時に、4%ホルムアルデヒドで固定した。画像をImageXpress micro XL(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で取得し、核の数をColumbus画像解析ソフトウェア(Perkin Elmer, Shelton, CT)で決定した。ジギトニン(40nM)処理した細胞のバックグラウンドOD450値(PC3、293、及びT47D)又は核の数(MCF7)を全てのウェルから差し引き、生存を未処理対照のパーセンテージとして表した。IC50値を10点応答曲線(GraphPad Prism)に対する4パラメータロジスティック方程式から決定した。IC50値及び細胞殺傷パーセントを表11及び12に示す。
表11:抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力
【表11】
IC50 値はnMで示す;ND:決定されず
表12:抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力(続き)
【表12】
IC50 値はnMで示す
【0201】
表11及び12にまとめたように、いくつかの抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲートは、複数の細胞バックグラウンドで細胞生存を強く低減させ、IC50値は、わずか100pM程度であった。例示的な抗PRLRコンジュゲート抗体であるH1H6958N2-DM1は、HEK293、PC3、及びMCF7-PRLR発現細胞の細胞生存を100pM~460pMの範囲のサブnMのIC50で低減させ、内在性に発現するT47D細胞を1.3nMのIC50で殺傷した。同じようにコンジュゲートされた抗PRLR対照I抗体(対照I-DM1)は、全ての細胞株にわたって、H1H6958N2-DM1よりも数倍効力が低かった。非結合アイソタイプ対照及び非コンジュゲート抗体は、細胞生存に対して影響がなかった。
【0202】
さらに、T47D細胞でのPRLR-SMCC-DM1細胞殺傷に対するPRLRリガンドのPRLの影響を評価した。T47D細胞をPRL(15nM)及び非遮断性抗PRLR抗体(H1H6782P)又は受容体遮断性抗体(H1H6958N2)のどちらかとともに同時にインキュベートした。結果を表13にまとめる。
表13: PRLRリガンド(PRL)の存在下での抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力
【表13】
【0203】
表13に示したように、PRLの存在は、PRLR ADC媒介性細胞殺傷に対してわずかな影響しかなく、試験したmAbの細胞殺傷効力の2~3倍の低減が観察された。
【0204】
共発現されたErbB2細胞表面標的に対する同じようにコンジュゲートされた抗体と比較した抗PRLRコンジュゲート抗体の効力も評価した。PRLRとErbB2は両方とも大部分の乳癌で発現され、DM1にコンジュゲートされた抗ErbB2抗体は、ErbB2(+)乳癌を標的化する際に臨床的有効性を示した(Hurvitzらの文献; 2013)。ErbB2対照抗体(対照II)がDM1にコンジュゲートされたもの(対照II-DM1)を、上で生成された細胞株におけるインビトロ生存アッセイで試験した。抗ErbB2コンジュゲート抗体と比較したコンジュゲートされた抗PRLR抗体の細胞殺傷能力を表14~17にまとめる。
表14:抗PRLR-DM1及び抗ErbB2-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力
【表14】
IC50 値はnMで示す
表15:抗PRLR-DM1及び抗ErbB2-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力(続き)
【表15】
IC50 値はnMで示す
表16:抗PRLR-DM1及び抗ErbB2-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力(続き)
【表16】
IC50 値はnMで示す
表17:抗PRLR-DM1及び抗ErbB2-DM1抗体-薬物コンジュゲートの細胞殺傷効力(続き)
【表17】
IC50 値はnMで示す
【0205】
抗PRLR-DM1抗体は、比較的低レベルのPRLR発現を有する細胞でさえも効果的に殺傷した。例えば、H1H6953N-DM1(抗PRLR-DM1)は、T47D細胞(バックグラウンドのわずか12倍でPRLRを発現する)の成長を1.3nMのIC50で阻害し、78%の殺傷を示した。この同じ抗体はまた、293/hPRLR細胞(バックグラウンドの18倍でPRLRを発現する)の成長を0.43nMのIC50で阻害し、93%の殺傷を示した。抗ErbB2-DM1抗体(「対照II」)による同等の殺傷は、標的抗原をバックグラウンドの約200倍~約400倍超のレベルで発現する細胞でのみ観察された(例えば、ErbB2をバックグラウンドの238倍で発現するPC3/hErbB2及びErbB2をバックグラウンドの437倍で発現するT47D/hErbB2を参照されたい)。したがって、これらのデータは、抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートが、比較的低レベルのPRLR発現を有する腫瘍細胞を効果的に標的化し、殺傷することができる一方、抗ErbB2抗体薬物コンジュゲートは、非常に高いErbB2発現レベルを有する腫瘍に対してしか効果的でないことを示唆している。
【0206】
最後に、切断不可能なリンカーSMCCを介してDM1にコンジュゲートされた抗PRLR抗体の効力を、切断可能なリンカー: mc-vc-PAB(Concortis, San Diego, CAから入手可能)を介してMMAEにコンジュゲートされた抗PRLR抗体の細胞殺傷効力と比較した。この実験で使用された細胞は、PC3、PC3/hPRLR、MCF7/ATCC、及びMCF7/PRLRであった。結果を表18に示す。
表18:抗PRLR ADC細胞殺傷効力
【表18】
【0207】
表18に示したように、PC3/hPRLR及びMCF7/hPRLR細胞株でのほぼ同等の細胞殺傷が、切断不可能なDM1 ADC(H1H6953-SMCC-DM1、H1H6958N2-SMCC-DM1、及びH1H6765-SMCC-DM1)と切断可能なMMAE ADC(H1H6953-mc-vc-PAB-MMAE、H1H6958N2-mc-VC-PAB-MMAE、及びH1H6765-mc-VC-PAB-MMAE)の両方について観察された。
【0208】
抗PRLR抗体にコンジュゲートされたさらなる毒素(DM4、MeNHC3-May、及びMMD)もT47D及びMCF7/hPRLR細胞株で試験した。結果を表19(293及びT47D細胞殺傷)並びに表20(MCF7/ATCC及びMCF7/PRLR細胞殺傷)にまとめる。(ND=不検出)。
表19:抗PRLR抗体薬物コンジュゲート-細胞殺傷特性(293及びT47D細胞株)
【表19】
表20:抗PRLR抗体薬物コンジュゲート-細胞殺傷特性(MCF/ATCC及びMCF7/PRLR細胞株)
【表20】
【0209】
試験した抗PRLR ADCは全て、利用した毒素及びリンカーにかかわらず、試験した細胞を特異的に殺傷した。T47D細胞生存IC50は、0.6nM~3.4nMの範囲であり、MCF7/hPRLR細胞生存IC50は、0.2nM~0.8nMの範囲であった。
【0210】
(実施例8.抗PRLR抗体-薬物コンジュゲートはインビボでの腫瘍成長を効果的に阻害する)
抗PRLR-DM1抗体-薬物コンジュゲートのインビボ有効性を決定するために、PRLR+乳癌異種移植片を担持する免疫不全マウスで研究を行った。
【0211】
簡潔に述べると、20×106個のMCF7/PRLR細胞(先に記載したとおりに全長hPRLRがトランスフェクトされたATCC HTB-22)を、雌NCrヌードマウスの左乳腺脂肪体に皮下移植した。他の研究では、10×106個のPC3/PRLR(先に記載したとおりに全長hPRLRがトランスフェクトされたATCC CRL-1435)を雄SCIDマウスの左側腹に皮下移植した。さらに、10×106個の親T47D(ATCC HTB-133)又は7.5×1010個のT47D#11細胞(下記のとおりにインビボで連続継代されたATCC HTB-133)を雌CB17 SCIDマウスの左側腹に皮下移植した。マウスは全て、Taconic(Hudson, NY)から入手した。細胞の各々のボーラスに、90日間エストロゲン放出ペレットを補充した(1.7mg/ペレット; Innovative Research America, Sarasota FL)。腫瘍が250mm3の平均体積に達したら、マウスを7つの群に無作為に割り付け、抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート又は対照試薬を投与した。対照試薬には、PBSビヒクル、遊離メチル-ジスルフィドDM1(DM1-SMe)、及びアイソタイプ対照1-DM1が含まれた。
【0212】
複数用量研究では、マウスに、週に1回、合計3週間投与し、腫瘍体積及び体重を、研究の全体を通して、週に2回モニタリングした。複数用量研究では、試験ADCを5及び/又は15mg/kgで投与した。単一用量研究では、マウスに単一用量の試験ADCを投与し、腫瘍体積及び体重を、研究の全体を通して、週に2回モニタリングした。単一用量研究では、試験ADCを1、2.5、5、及び15mg/kgで投与した。平均腫瘍サイズ及びビヒクル処理群と比べた腫瘍成長阻害を各々の群について算出した。ビヒクル群の平均サイズが1000mm3に達するまで、腫瘍を週に2回カリパスで測定した。腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した。腫瘍成長阻害は、次式:(1-((Tfinal-Tinitial)/(Cfinal-Cinitial)))*100(式中、T(処理群)及びC(対照群)は、ビヒクル群が1000mm3に達した日の平均腫瘍質量を表す)に従って算出した。動物を52日目まで観察した。結果を表21~25(複数用量)及び表26(単一用量)にまとめる。(NT=示された特定の実験で試験されなかった)。
表21:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の複数用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-MCF7/PRLR腫瘍(試験#1)
[NCrヌードマウス-52日目に収集したデータ]
【表21】
表22:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の複数用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-MCF7/PRLR腫瘍(試験#2)
[NCrヌードマウス-63日目に収集したデータ]
【表22】
表23:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の複数用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-PC3/PRLR腫瘍(試験#1)
[SCIDマウス-63日目に収集したデータ]
【表23】
表24:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の複数用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-PC3/PRLR腫瘍(試験#2)
[SCIDマウス-55日目に収集したデータ]
【表24】
表25:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の複数用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-T47D#11腫瘍
[SCIDマウス-66日目に収集したデータ]
【表25】
表26:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及び対照の単一用量投与後の腫瘍サイズ及び腫瘍成長阻害-MCF7/PRLR腫瘍
[55日目に収集したデータ]
【表26】
【0213】
(考察)
この実施例では、DM1にコンジュゲートされた5つの例示的な抗PRLR抗体を、MCF7/PRLR及びPC3/PRLR腫瘍体積を低減させる能力について、複数用量研究で最初に評価した。第1の複数用量試験(表21)において、H1H6958N2-DM1、H1H6953N-DM1、及びH1H6975N-DM1抗体は、5mg/kg用量と15mg/kg用量の両方でMCF7/PRLR腫瘍成長を強く阻害した。最大用量では、3つ全てのDM1コンジュゲート抗体が腫瘍を検出不可能なレベルにまで低減させ、腫瘍体積の低減率は約133~135%であった。この知見は、H1H6958N2-DM1を、DM1にコンジュゲートされた2つの追加の例示的な抗PRLR抗体: H1H6782P及びH1H6765Pとともに試験したとき、第2の複数用量試験(表22)で再現された。この第2の試験では、腫瘍成長も、15mg/kgの最大用量で検出不可能なレベルにまで低減し、腫瘍体積の低減率は136~137%であった。コンジュゲートされていない抗PRLR抗体による処理は、ビヒクル群と比較して腫瘍体積の中等度の低減(17~79%)をもたらしたが、腫瘍サイズの最大の阻害は、抗体-薬物コンジュゲートで処理されたコホートで観察された。
【0214】
次に、これらの同じ例示的な抗PRLR-DM1抗体の抗腫瘍効力をPRLR陽性PC3/PRLR異種移植片を担持するマウスにおける複数用量研究で評価した(表23及び24)。腫瘍が21日間成長した後、マウスを処理した。H1H6958N2-DM1、H1H6953N-DM1、及びH1H6975N-DM1は全て、特に15mg/kgの最大用量で、腫瘍成長の阻害を実証した(表23)。抗腫瘍効果は、15日間の腫瘍成長の後にH1H6958N2-DM1をH1H6765P-DM1及びH1H6782P-DM1とともに試験したとき、第2の試験で同様に観察された。投与された最大用量で、試験全体の腫瘍阻害は、38~98%の範囲であった(表24)。それと比較して、DM1にコンジュゲートされたアイソタイプ対照は16%の腫瘍阻害しかもたらさず、最終的な腫瘍体積はビヒクル対照と有意差がなかった。
【0215】
5及び15mg/kgで反復投与される抗PRLR ADCのさらなる評価を、PRLRを内在性に発現するT47D#11異種移植片を担持するマウスで実施した(表25)。他の腫瘍モデルと同様に、腫瘍サイズが平均して200mm3になったときに、投与を開始した。この腫瘍モデルで得られた結果は、初期の結果と一致し、DM1にコンジュゲートされた抗PRLR抗体の抗腫瘍活性を明白に実証した。例えば、H1H6958N2-DM1、H1H6765P-DM1、及びH1H6782P-DM1 ADCは、5mg/kg用量と15mg/kg用量の両方で腫瘍成長を強く阻害した。5mg/kgでは、抗PRLR-DM1コンジュゲート抗体が89~100%の腫瘍阻害を呈したのに対し、15mg/kgでは、DM1コンジュゲート抗体は、106~112%の腫瘍成長阻害をもたらした。重要なことに、コンジュゲートされていない抗PRLR抗体は、この内在性腫瘍モデルで抗腫瘍効力を有することが観察されず、抗腫瘍効力の産生におけるDM1コンジュゲートの役割を示している。また、対照ADCは、腫瘍成長に対して何ら効果がなかったので、抗PRLR ADCの効力は非常に特異的であった。
【0216】
最後の例では、抗PRLR DM1コンジュゲート抗体H1H6958N2を、単一用量研究において、MCF7/PRLR異種移植マウスで評価した(表26)。複数用量研究と同様に、確立された腫瘍を約200mm3にまで成長させた後、単一用量を投与した。ここでは、H1H6958N2-DM1を、1、2.5、5、及び15mg/kgで投与した。表26にまとめたように、用量依存的な抗腫瘍効果が、この研究で使用された広い範囲にわたって見られた。抗腫瘍効果は全ての用量で観察され、1mg/kgで、ビヒクル対照腫瘍と比べた腫瘍体積の有意な低減を引き起こした。さらに、15mg/kgのアイソタイプ対照I-DM1は、ある程度の抗腫瘍効果(~38%の腫瘍成長阻害)を有していたが、2.5mg/kg以上の抗PRLR-DM1の用量は、腫瘍体積を有意に低減させた(1mg/kgを上回る試験した全ての用量で>100%の腫瘍成長阻害)。5及び15mg/kgの単一用量は、同じレベルで反復投与した後に観察される抗腫瘍効力と同程度の抗腫瘍効力を実証し、抗PRLR ADCの効力を示した。
【0217】
まとめると、この実施例は、コンジュゲートされた抗PRLR抗体が腫瘍成長の強力な阻害剤であり、試験した様々な腫瘍モデルで腫瘍サイズを検出不可能なレベルにまで低減させることができることを示している。
【0218】
(実施例9.クラスIサイトカイン受容体に対する抗体-薬物コンジュゲートは低レベルの標的抗原を発現する細胞株を効果的に殺傷する)
本明細書の別所で論じられているように、PRLRに対する抗体-薬物コンジュゲートは、PRLR発現細胞株を効果的に殺傷し、比較的低レベルの標的抗原を発現するものでさえも効果的に殺傷する。先に記載されているように、PRLRは、IL-4R及びIL-6Rを含むクラスIサイトカイン受容体ファミリーに属する。PRLRと同様、IL-4R及びIL-6Rは、1回膜貫通受容体であり; IL-4Rは、IL-4及びIL-13シグナル伝達を媒介し、一方、IL-6Rは、gp130受容体との共複合体を介してIL-6シグナル伝達を媒介する。クラスIサイトカイン受容体に対するADCを用いて、低レベルの標的抗原を発現する細胞を含めた細胞を効果的に殺傷することができるという一般概念をさらに裏付けるために、IL-4R及びIL-6Rに対するADCの細胞殺傷能力を評価した。
【0219】
IL-4R又はIL-6Rを内在性に又は組換えにより発現する細胞での細胞表面抗原レベルを、FACSを用いて最初に確定した。簡潔に述べると、約100万個のKG-1(IL-4R+)、HEK293/IL-4R、及びRamos(IL-6R+)細胞を、例示的な抗IL-4R抗体(H4H083P2、米国特許第7,608,693号を参照)及び抗IL-6R抗体(VV6A9-5、米国特許第7,582,298号を参照)とともに、氷上で30分間インキュベートした。洗浄後、PEコンジュゲート抗ヒト二次抗体(10μg/ml)を30分間添加し、その後、第2の洗浄工程に供し、その後、FlowJoソフトウェア(Tree Star社, Ashland, OR)を用いて、Accuri C6サイトメーターで解析した。相対的なIL-4R及びIL-6R細胞表面発現レベルを、アイソタイプ対照レベルを上回る平均蛍光強度(MFI)として算出した。発現レベルを表27にまとめる。
表27: IL-4R及びIL-6Rを内在性に又は組換えにより発現する細胞株での相対的なIL-4R及びIL-6R細胞表面発現
【表27】
【0220】
表27に示したように、HEK293及びRamos細胞は、それぞれ、バックグラウンドと比べて2倍及び4倍のレベルでIL-4Rを内在性に発現したが、改変されたHEK293/IL-4R細胞株は、バックグラウンドの50倍のレベルでIL-4Rを発現した。IL-4R発現は、KG-1細胞では、バックグラウンドを超える検出はできなかった。IL-6R発現は、KG-1細胞では、バックグラウンドの7倍のレベルで検出されたが、HEK293細胞株でもRamos細胞株でも検出されなかった。
【0221】
次に、例示的な抗IL-4R抗体(H4H083P2)及び抗IL-6R抗体(VV6A9-5)を細胞毒性薬DM1にコンジュゲートし、細胞傷害アッセイにおけるその効力を評価した。簡潔に述べると、HEK293/IL-4R、Ramos、又はKG-1細胞株、及びHEK293親細胞を、PDLコートされた96ウェルプレートに、ウェル当たり1500~10,000細胞で播種した。ADC又は遊離DM1(メチルジスルフィド誘導体DM1-SMeとしてのもの)を300nM~15pMの範囲の最終濃度で細胞に添加し、3日間インキュベートした。細胞を、最後の1~3時間、CCK8(Dojindo, Rockville, MD)とともにインキュベートし、450nmでの吸光度(OD450)をFlexstation3(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で決定した。ジギトニン(40nM)処理した細胞のバックグラウンドOD450値を全てのウェルから差し引き、生存を不処理対照のパーセンテージとして表した。IC50値を、10点応答曲線(GraphPad Prism)に対する4パラメータロジスティック方程式から決定した。結果を表28に示す。
表28: IL4R及びIL-6R発現細胞株に対する抗IL4R及び抗IL6R抗体薬物コンジュゲートの細胞殺傷特性
【表28】
【0222】
表28に示したように、バックグラウンドレベルのわずか4倍のIL-4R表面発現にもかかわらず、抗IL-4R-DM1抗体-薬物コンジュゲートは、Ramos細胞生存を18nMのIC50値で低減させた。IL-4R-DM1 ADCは、IL-4Rを高発現するHEK293/IL-4Rの生存を0.22nMのIC50で低減させた。抗IL-6R-DM1抗体-薬物コンジュゲートは、KG-1細胞(バックグラウンドの7倍のレベルでIL-6Rを発現する)の生存に対して、わずかではあるが、再現性のある影響を有しており、同等にコンジュゲートされたアイソタイプ対照ADCによる100nMのIC50値と比較して、38nMのIC50値であった。
【0223】
まとめると、この実施例は、抗IL-4R及び抗IL-6R抗体薬物コンジュゲートが、わずかな受容体レベルを発現する細胞株に対してさえも強力で再現性のある細胞傷害性を呈したたことを実証している。この結果は、強い細胞殺傷が低レベルのPRLRを発現する細胞でさえも得られた抗PRLR ADCで観察された結果と類似している(例えば、本明細書の実施例7を参照されたい)。したがって、この実施例は、一般に抗クラスIサイトカイン受容体ADCが低レベルでもクラスIサイトカイン受容体を発現する細胞株及び腫瘍に対する有効な治療剤であり得るという発明概念に対する裏付けをさらに提供している。
【0224】
(実施例10.水素/重水素交換によるエピトープマッピング)
H1H6958N2が相互作用するPRLRのアミノ酸残基を決定するために実験を行った。この目的のために、水素/重水素(H/D)交換エピトープマッピングを実施した。H/D交換法の一般的な説明は、例えば、Ehringの文献(1999)、Analytical Biochemistry 267(2):252-259;及びEngenとSmithの文献(2001)、Anal. Chem. 73:256A-265Aに規定されている。
【0225】
H/D交換を介してhPRLR上の抗体H1H6958N2の結合エピトープ(複数可)をマッピングするために、C末端のmyc-myc-6ヒスチジンタグを有するhPRLRの組換え細胞外ドメインを含む構築物(hPRLR-mmH; 配列番号406)を、最終濃度8mg/mLでPBSにバッファー交換し、抗体H1H6958N2を、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)アガロースビーズ(GE Lifescience)に共有結合により付着させた。
【0226】
「オン溶液/オフビーズ」(溶液中でのオン交換の後にビーズ上でのオフ交換)実験において、hPRLRを、D2Oを用いて調製されたPBSバッファー中で5分又は10分、重水素化し、次に2分のインキュベーションを通じてH1H6958N2ビーズに結合させた。該hPRLR結合ビーズを、PBS水性バッファー(H2Oを用いて調製されたもの)で洗浄し、オン交換時間の半分の時間、PBSバッファーでインキュベートした。オフ交換の後、結合したhPRLRを、氷冷した低pHのTFA溶液を用いてビーズから溶出させた。溶出したhPRLRを、次に固定化ペプシン(Thermo Scientific)を用いて5分間消化した。得られたペプチドを、ZipTip(登録商標)クロマトグラフィーピペットチップを使用して脱塩し、UltrafleXtreme マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)-TOF質量分析法(MS)によって直ちに解析した。
【0227】
「オンビーズ/オフビーズ」(ビーズ上でのオン交換の後にビーズ上でのオフ交換)実験において、hPRLRを、最初にH1H6958N2ビーズに結合させ、次にオン交換のためにD2O中で5分又は10分インキュベートした。その後の工程(オフ交換、ペプシン消化、及びMS解析)は、「オン溶液/オフビーズ」手順について記載したとおりに実施した。検出された全てのペプチドの重心値、又は平均質量電荷比(m/z)を算出し、これらの2セットの実験間で比較した。
【0228】
結果を表29にまとめ、この表は、上述のH/D交換及びペプシン消化手順の後に液体クロマトグラフィー及びMSによって同定された全ての検出されたペプチドについての重心m/z値の比較を提供する。本実施例の目的のために、両実験における少なくとも0.20 m/zの正の差(Δ)は、抗体結合によって保護されたアミノ酸を示す。この基準に適合するセグメントは、表29において太字及びアステリスク(*)によって示す。[この実験は、PRLRの短縮形態(すなわち、hPRLR-mmH;配列番号406)を用いて実施したが、表29の左端欄における残基付番は配列番号404に表される全長PRLRタンパク質のアミノ酸配列に対応するように調整されていることに留意されたい。]
表29:hPRLR-mmHに対するH1H6958N2結合
【表29】
【0229】
観察されたペプシンペプチドの大部分がオン溶液/オフビーズ及びオンビーズ/オフビーズプロトコールの両方について同様の重心値を与えた一方、配列番号404のアミノ酸残基72~102に相当する領域は、両実験において0.20m/zを超えるデルタ重心値を有していた。したがって、表29にまとめたH/D交換の結果は、配列番号404のアミノ酸72~102に相当する領域(すなわち、
【化6】
が抗体H1H6958N2と相互作用するPRLRのエピトープを含むことを示す。このエピトープは、PRLRの細胞外ドメインのフィブロネクチン様III型ドメイン1(「ドメイン1」)内に位置する。したがって、本実施例は、本明細書に規定される他の作業実施例と併せて、PRLR細胞外ドメインのドメイン1をPRLR関連疾患及び障害の治療に有用な抗体及びADCのための特に効果的な標的として同定する。
【0230】
(実施例11.細胞株表面上及びヒト乳癌におけるPRLR発現)
ヒト乳癌におけるPRLRの発現を評価するために、乳癌腫瘍の試料を、RNAscope In Situ Hybridization技術(Advanced Cell Diagnostics)を使用して評価した。FFPE包埋試料は、Indivumedから入手したBreast Tumor Micro-Arrays(TMAs)由来であった。腫瘍切片を、特異的RNA Scopeプローブを使用してPRLR RNA発現について評価し、標準的プロトコールに従ってジアミノベンジジン色原性染色を使用して発色させた。画像は、40倍でAperio XT Scan スコープ(Leica Systems)上でスキャンし、PRLR発現を試料中で定性的に評価した。
【0231】
いくつかの腫瘍の間で、PRLR発現は不均一であった(データは示さず)。腫瘍のPRLR発現及びホルモン受容体又はHER2ステータスの間で相関は観察されず、ホルモン受容体陽性腫瘍及びER/PR/HER2「三重陰性」腫瘍の両方においてPRLRが見出された。これらのデータは、公共遺伝子発現データベース由来のヒト乳癌におけるPRLR mRNAレベルの解析と一致している(データは示さず)。
【0232】
(実施例12.抗PRLR ADCは結合及びPRL誘導性STAT5活性を遮断する)
ELISAベースの遮断アッセイを、H1H6958N2及びH1H6958N2-DM1の、ヒト及びカニクイザルPRLRの固定化ヒトPRLへの結合を遮断する能力を決定するために開発した。ヒト又はカニクイザル(Macaca fascicularis)PRLRの二量体形態、及び単量体ヒトPRLをこのアッセイにおいて使用した。当初の用量応答曲線を生成するために、ヒト又はサルのPRLRを、3.38pM~200nMの範囲の濃度で、1μg/mL PRL中で予めコーティングしたプレートに添加した。1時間のインキュベーション後、捕捉されたPRLRを、HRPコンジュゲート化ヤギ抗Fcγ抗体を用いて検出し、450nmでの吸光度を測定することによりTMB発色基質を用いて可視化した。H1H6958N2又はH1H6958N2-DM1によるPRLR結合の阻害を決定するために、10nMのヒト又はサルPRLRを、520pM~30nMの範囲のmAb又はADCと混合し、室温で1時間インキュベートした。混合物を、次に1μg/mL PRLでコーティングしたプレートに添加し、捕捉されたPRLRを、上記で説明したように検出した。データは、GraphPad Prism ソフトウェアで11点応答曲線に対する4パラメータロジスティック方程式を使用して解析し、IC50値を算出した。
【0233】
H1H6958N2及びH1H6958N2-DM1の、ヒトPRL誘導性PRLRシグナル伝達を遮断する能力は、ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、PRLRを構成的に発現するよう改変され、かつヒトインターロイキン2受容体α遺伝子のプロモーター由来の5つのタンデムSTAT5結合部位を含むルシフェラーゼレポーター構築物[STAT5 応答エレメント(×5) - ルシフェラーゼ] (John らの文献: The EMBO Journal, 1996, 15(20): 5627-5635)で安定に形質導入されたHEK293細胞株を使用して決定した。STAT5転写因子は、PRLRの下流の細胞内シグナル伝達の公知の媒介因子である(Fangらの文献、BMC Biotechnology, 2008, 8:11)。 用量応答曲線を生成するために、ヒトPRLを、0.8pM~100nMの範囲の濃度でレポーター細胞に添加した。PRLの添加の後、細胞を37℃及び5% CO2 で6時間インキュベートし、次に、室温まで15分平衡化した。ルシフェラーゼ活性は、ONE-Glo基質を使用し、蛍光を測定して測定した。細胞におけるPRL媒介性PRLRシグナル伝達の阻害について試験するために、mAb又はADCを、3.3pM~200nM(モル濃度はADC及びmAbの両方について抗体濃度を示す)の範囲の濃度で添加し、その後、一定濃度の2nM PRLを添加した。プレートは37℃及び5% CO2で5時間インキュベートし、室温まで10分平衡化した。ルシフェラーゼ活性はここでもONE-Glo基質を使用し、蛍光を測定して測定した。
【0234】
H1H6958N2-DM1は、ELISAによりヒト又はサルPRLRの単量体ヒトPRLリガンドへの結合を遮断した(図1)。ここで、ヒト又はサルPRLRは、ヒトPRLに用量依存性の様式で結合し、それぞれ、EC50値は4.9及び5.7nMであった(図1A及び1Bにおける挿入図中の黒の四角形)。H1H6958N2-DM1及びH1H6958N2は固定化ヒトPRLへの10nMのヒトPRLRの結合をそれぞれ4.4nM及び5.0nMのIC50値で遮断した(図1A)。同様にして、H1H6958N2-DM1及びH1H6958N2は、サルPRLRのヒトPRLへの結合を遮断し、IC50 値はそれぞれ4.2nM及び5.8nMであった(図1B)。対照抗体及び対照ADCは、同一のアッセイ条件下で何らの遮断活性も実証しなかった。
【0235】
H1H6958N2-DM1もPRL誘導性STAT5活性を遮断することを確かめるために、HEK293/PRLR/STAT5-Lucレポーター細胞株を生成した。このレポーター株においては、2.1nMのヒトPRLが、最大活性レベルの50%までのヒトPRLRシグナル伝達の刺激に必要な濃度(EC50)であることが決定された(図1C)。H1H6958N2及びH1H6958N2-DM1の両方が、効果的にPLR誘導性ルシフェラーゼ活性を用量依存的に遮断し、2nM PRLの一定濃度の存在下で0.4nMのH1H6958N2及びH1H6958N2-DM1がPRLRシグナル伝達の50%低減(IC50)に必要であった。遮断ELISAアッセイの場合のように、対照mAbと対照ADCのどちらもPRL誘導性PRLR-STAT5シグナル伝達を遮断しなかった。
【0236】
まとめると、DM1の細胞毒性活性に加えて、H1H6958N2-DM1は、効果的にPRLのPRLRへの結合を遮断し、PRL誘導性STAT5シグナル伝達を遮断する。
【0237】
(実施例13.H1H6958N2-DM1はMCF7及びMCF7/PRLR乳癌異種移植片に対する抗腫瘍活性を有する)
内在性及びトランスフェクトされたPRLRの両方を発現するいくつかの乳房腫瘍異種移植片モデルにおけるH1H6958N2-DM1の全体的な抗腫瘍活性を評価するために、さらなる実験を実施した。
【0238】
MCF7又はMCF7/PRLR腫瘍が~150-200mm3の平均体積に到達した後(移植後14~16日)、マウスを無作為に処理群に分け(n=8~9マウス/群)、単一用量又は3回の週1回用量のH1H6958N2-DM1、対照ADC、又はビヒクル対照を尾静脈注射により全身投与した。腫瘍サイズ及び体重を、研究期間中を通して週2回インビボで測定した。
【0239】
低レベルの受容体を発現する腫瘍におけるH1H6958N2-DM1の活性は、確立されたMCF7腫瘍異種移植片を担持するNCrヌードマウスを使用して評価した。この腫瘍細胞株はインビトロでH1H6958N2-DM1によって阻害されなかったが(上記を参照されたい)、5又は10mg/kgのH1H6958N2-DM1の単一用量後に中等度のインビボ抗腫瘍活性が観察された(図2A)。評価した最大用量(15mg/kg)では、H1H6958N2-DM1は対照ADCに対して有意にMCF7腫瘍の成長を阻害した。後続の研究におけるMCF7腫瘍の反復処理は、単一用量研究において観察されたものより顕著な抗腫瘍効果をもたらした。ここでは、ビヒクル対照に対していくらかの抗腫瘍活性が対照ADCによって誘導されたものの、10及び15mg/kgのH1H6958N2-DM1は、対照ADCに対して有意にMCF7腫瘍成長を阻害した(図2B)。
【0240】
高レベルのPRLRを発現するMCF7/PRLR腫瘍異種移植片におけるH1H6958N2-DM1の治療効力を次に評価した。ここでは、2.5~15mg/kgの単一用量のH1H6958N2-DM1を用いる処理が活性であり、全ての用量で有意な抗腫瘍効力が観察された。10及び15mg/kgで増大した活性が観察され、これらの用量は研究の経過中にわたって腫瘍の根絶を引き起こした(図2C)。週1回用量の3回の投与は、さらに有意な抗腫瘍活性を実証し、このモデルにおいては5及び15mg/kgのH1H6958N2-DM1の反復用量は腫瘍根絶に導いた(図2D)。このモデルにおいては対照ADCについては抗腫瘍活性は観察されず、この研究において評価された非コンジュゲート化H1H6958N2もまた、腫瘍成長の阻害を誘導しなかった。
【0241】
MCF7異種移植片は、中等度のレベルのPRLRを発現し、インビトロでADCに非感受性であるにもかかわらず、インビボでH1H6958N2-DM1に対して明確な応答を示した。インビボでのH1H6958N2-DM1に対するより多い曝露、又はインビボでのPRLR発現における相対的な増大は、観察される差次的な応答の原因でありうる。
【0242】
(実施例14: T47DvII 乳癌異種移植片に対するH1H6958N2-DM1抗腫瘍活性及びフルベストラントとの組合せは活性を増大する)
T47Dv11モデルを使用して、有意なレベルの内在性PRLRを有するモデルにおけるH1H6958N2-DM1の活性を評価した。親のT47D細胞は腫瘍原性が低いので、インビボでの継代を利用して、一貫した腫瘍原性を有する変異体を発生させた。最初に、10×106個の親T47D細胞をC.B.-17 SCID雌マウスの左側腹に皮下(SC)移植した(Taconic, Hudson NY)。腫瘍には、90日放出の1.7mgエストロゲンペレット(Innovative Research America)を補充した。T47D腫瘍が観察された場合、それらを切除して3mm断片に切り、その後、別個のC.B.-17 SCID雌マウスの左側腹に移植した。その後の継代を、大きい腫瘍が単一細胞懸濁液に脱凝集されるまで実施した。この腫瘍由来の細胞(T47Dv11と名付けた)を、次にインビトロで培養し、拡大させた。フローサイトメトリーにより、T47DvII細胞の生成が親細胞に対してPRLR発現を変更しなかったことを確認した(データは示さず)。効力の研究のために、マウスに、7.5×106個のT47Dv11細胞を、90日放出の0.72mg/ペレットのエストロゲンペレットを補充したC.B.-17 SCID雌マウスの左側腹に移植した。MCF7及びMCF7/PRLR腫瘍異種移植片については、2×107個のMCF7/PRLR細胞を、90日放出の0.72mg/ペレットのエストロゲンペレットを補充した雌NCrヌードマウス(7~8週齢)の左乳腺脂肪体(mammary fat pad)に皮下移植した。腫瘍は、各研究の期間中、週に2回カリパスで測定した。腫瘍体積は、式TV=(長さ×幅2)/2を使用して算出した。
【0243】
T47Dv11腫瘍が平均体積~150-200mm3(移植後14~16日)に到達した後、マウスを無作為に処理群に分け(n=8~9マウス/群)、単一用量又は3回の週1回用量のH1H6958N2-DM1、対照ADC、又はビヒクル対照を尾静脈注射により全身投与した。選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)であるフルベストラント(Faslodex, Astra Zeneca)は、その推奨されるビヒクル(10% w/v アルコール、10% w/v ベンジルアルコール、及び15% w/v ベンジルベンゾエート、ヒマシ油で100% w/vにする)中で研究の期間中、週1回皮下投与した。腫瘍サイズ及び体重は、研究期間中を通して週2回インビボで測定した。
【0244】
2.5又は5mg/kgのいずれかでH1H6958N2-DM1を用いる単一用量処理は、腫瘍成長を有意に阻害した(図3A)。他のモデルで観察されたように、反復投薬は、より強固な抗腫瘍効力を誘導した;5又は15mg/kgのいずれかのH1H6958N2-DM1の3回の用量は、腫瘍退縮を引き起こした。完全な退縮は、最大用量のADCを受けたいくつかの腫瘍について明らかであった(図3B)。T47Dv11モデルにおいては対照ADCの活性は明らかではなく、非コンジュゲート化H1H6958N2はここでも腫瘍成長に何ら効果を有さなかった。
【0245】
次に、T47Dv11異種移植片モデルにおいてSERDであるフルベストラントとH1H6958N2-DM1の組合せを試験した。ここでは、部分的に効果的である用量でのいずれかの薬物の活性を、それらの薬物の組合せでの活性に対して比較した。最初に、フルベストラントの単一薬物活性を確立するために、フルベストラントの毎週投与の用量滴定研究を実施した(図4)。別個のインビトロ実験により、細胞増殖抑制性濃度のフルベストラント(10又は100nM)を用いるT47DvII細胞の連続的培養はフローサイトメトリー又はウェスタンブロッティングにより評価されるPRLR発現を有意に低減させないことが実証された(データは示さず)。有意な抗腫瘍活性は、2.5mg/kgのH1H6958N2-DM1及び150又は250mg/kgのフルベストラントの個別の処理後に観察された。これらの薬物の組合せは、抗腫瘍活性の有意な増大を引き起こすことが観察され、フルベストラントとのH1H6958N2-DM1の組合せは相加的効力を有するさらなる証拠がER陽性腫瘍(図3C)及び表30において提供される。
表30:抗PRLR抗体-薬物コンジュゲート及びフルベストラントで処理されたSCIDマウスにおける70日目のT47DvII腫瘍成長の阻害
【表30】
【0246】
(腫瘍成長及び阻害の測定)
皮下腫瘍については、平均腫瘍サイズ並びにビヒクル処理群に対する腫瘍成長阻害を、各群について算出した。腫瘍は、ビヒクル処理群の平均サイズが1200mm3に到達するまで週2回カリパスで測定した。腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した。全ての研究について、腫瘍成長阻害は、以下の式:(1-((Tfinal-Tinitial)/(Cfinal-Cinitial)))*100(式中、T(処理群)及びC(対照群)はビヒクル群が1000mm3に到達した日の平均腫瘍質量を表す)に従って算出した。
【0247】
まとめると、細胞増殖抑制性濃度のフルベストラントを用いる細胞の培養はPRLR発現を有意に低減しないことを実証した驚くべき予備的インビトロ実験と組み合わせて、これらのインビボ結果は、フルベストラントとの組合せでのH1H6958N2-DM1が、単独の薬剤に対して優れた抗腫瘍効力を有し、該組合せはPRLR陽性乳癌の治療において有用であることを実証する。
【0248】
(実施例15.インビボでのH1H6958N2-DM1活性の薬物動態学的評価)
微小管活性に対するDM1の活性を確認するために、インビボでのH1H6958N2-DM1を用いるT47DvII腫瘍の処理後の有糸分裂停止の誘導を、ホスホヒストン(phospho-histone)-H3(pHH3) IHCによって評価した。マウスにT47DvII細胞を移植し、腫瘍を15日間成長させ、そこでマウスを腫瘍体積に基づいて無作為に分け、ビヒクル、5又は15mg/kgのH1H6958N2-DM1、又は15mg/kgの対照ADCのいずれかを静脈内に与えた(N=4~5)。処理の24、48又は72時間後に、マウスを安楽死させ、腫瘍を、IHC解析のためにFFPE試料として加工した。腫瘍切片を、次に有糸分裂細胞の尺度として抗ホスホヒストンH3(pHH3)抗体(クローン: Ser10、Cell Signaling Technology # 9701)を用いて染色した。画像を40倍でAperio XT Scanスコープ(Leica Systems)上でスキャンした。PHH3陽性核シグナルは、Halo CytoNuclear Countアルゴリズム(Halo, Indica Labs)を用いて画像化し、定量した。各腫瘍の陽性細胞のパーセントを各群について定量し、各処理条件について平均を算出した。
【0249】
5mg/kgのH1H6958N2-DM1の用量で処理された腫瘍は、明らかなpHH3免疫反応性の誘導を示し、ビヒクル処理された腫瘍に対して有意な増大を示した(図5)。15mg/kgのより高いH1H6958N2-DM1用量では、腫瘍におけるpHH3レベルのさらなる増大が明らかであった(データは示さず)。驚くべきことに、pHH3のレベルは処理後48時間にピークとなり、72時間ではいくらか低く、微小管及び細胞周期停止に対するDM1の最大活性の時が示唆された。重要なことに、15mg/kgの対照ADCで処理された腫瘍はビヒクル処理された腫瘍を上回る有意なpHH3の増大を有さなかったので、腫瘍におけるpHH3の誘導はH1H6958N2-DM1での処理に特異的であった。したがって、5又は15mg/kgのいずれかのH1H6958N2-DM1での処理からもたらされるpHH3発現のレベルは対照ADC処理された腫瘍において観察されたものより有意に高かった。
【0250】
まとめると、H1H6958N2-DM1の特異的内在化後のDM1の標的化された送達は処理された腫瘍におけるpHH3のレベルを増大し、有糸分裂停止の指標となる。
【0251】
(実施例16:TM00107患者由来異種移植片腫瘍に対するH1H6958N2-DM1の抗腫瘍活性)
H1H6958N2-DM1の効力を、患者における応答をよりよく表し得る乳癌の患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいても評価した。TM00107 PDX 乳癌腫瘍の腫瘍断片を担持するNOD SCID gamma (NSG)マウスは、Jackson Laboratoriesから供給を受けた。該TM00107 PDXモデルは、ER+/-/PR-/HER2-転移性乳房腺癌から由来した。PRLR発現は、Jackson Laboratoryから提供された腫瘍試料スライドのマイクロアレイ解析及び免疫組織化学により確認した(データは示さず)。腫瘍が平均体積~400-600mm3(移植後21日)のとき、マウスを無作為に処理群に分け(n=7マウス/群)、H1H6958N2-DM1、対照ADC、又はビヒクル対照を週1回、全4週間にわたって静脈注射により投与した。別個の処理群には、4日ごとに静脈注射によりパクリタキセルを全4用量で投与した。
【0252】
対照腫瘍は急速に成長し、ビヒクル対照を受けたマウスは大きい腫瘍サイズのために移植後30日で安楽死させた。この時点で、20mg/kgのH1H6958N2-DMで処理されたマウスの平均腫瘍体積の、20mg/kgの対照ADCを投与された動物と比較して中等度であるが有意な(p<0.01)低減が観察された(図6A)。ビヒクル対照マウスと比較して、10mg/kgのより低い用量のH1H6958N2-DM1で処理されたマウスにおいて、腫瘍成長の阻害に向かう傾向は観察されたが、平均腫瘍体積における有意な差は観察されなかった。パクリタキセル処理は腫瘍成長に対して効果を有さなかった。
【0253】
これらの実験は、乳癌のPDXモデルにおいてPRLR陽性乳癌の治療におけるH1H6958N2-DM1の有用性を実証する。
【0254】
本開示は、本明細書に記載の具体的な実施態様によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されているものに加えた本発明の様々な修飾が、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾は、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることが意図される。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
PRLR陽性乳癌の治療方法であって、患者に治療有効量の:
(a)メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、前記ADC、及び
(b)フルベストラント
を共投与することを含む方法。
(態様2)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.3nM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様3)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.2nM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様4)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約1.0nM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様5)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約900pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様6)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約800pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様7)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約600pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様8)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約400pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様9)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約200pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様10)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約100pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様11)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約80pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様12)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約60pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様13)
前記抗体が、PRLRを発現する細胞においてプロラクチン媒介性シグナル伝達を約40pM未満のIC50で遮断する、態様1記載の方法。
(態様14)
プロラクチン受容体(PRLR)と結合する前記抗体又はその抗原結合断片が、水素/重水素交換により決定されるように、PRLRの細胞外ドメインの第1のフィブロネクチン様III型ドメイン(配列番号404のアミノ酸27~128)内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用する、態様1記載の方法。
(態様15)
前記抗体又はその抗原結合断片が、水素/重水素交換により決定されるように、配列番号405内に含有される1以上のアミノ酸と相互作用する、態様14記載の方法。
(態様16)
前記抗体又はその抗原結合断片が、(a)配列番号404のアミノ酸72~94;(b)配列番号404のアミノ酸72~95;(c)配列番号404のアミノ酸96~101;及び(d)配列番号404のアミノ酸96~102からなる群から選択されるアミノ酸配列と相互作用する、態様14記載の方法。
(態様17)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号405内に含有される少なくとも10個のアミノ酸と相互作用する、態様15記載の方法。
(態様18)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号405内に含有される少なくとも20個のアミノ酸と相互作用する、態様15記載の方法。
(態様19)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号405のアミノ酸配列と相互作用する、態様14記載の方法。
(態様20)
前記メイタンシノイドがDM4である、態様1記載の方法。
(態様21)
前記メイタンシノイドがDM1である、態様1記載の方法。
(態様22)
前記メイタンシノイドが、切断可能なリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされている、態様1記載の方法。
(態様23)
前記メイタンシノイドが、切断不可能なリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされている、態様1記載の方法。
(態様24)
前記メイタンシノイドが、4-[-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、SPDB、mc-val-cit、及びmc-val-cit-PABからなる群から選択されるリンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされている、態様1記載の方法。
(態様25)
前記メイタンシノイドが、リンカーを介して前記抗体にコンジュゲートされており、ここで、該リンカーは4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)である、態様1記載の方法。
(態様26)
前記ADCがプロラクチン媒介性STAT5活性を阻害する、態様1記載の方法。
(態様27)
前記ADCがPRLRを発現する細胞において有糸分裂停止を誘導する、態様1記載の方法。
(態様28)
前記ADCがPRLRを発現する細胞の成長を阻害する、態様1記載の方法。
(態様29)
前記患者が、以前、エストロゲン受容体阻害剤を用いて治療されていた、態様1記載の方法。
(態様30)
前記有効量が、癌の進行を遅延させる又は阻害するのに十分である、態様1記載の方法。
(態様31)
前記ADCが、静脈経路で投与される、態様1記載の方法。
(態様32)
前記乳癌におけるPRLRの発現が、治療後に実質的に低減されない、態様1記載の方法。
(態様33)
前記ADCが、バックグラウンドの30倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する、態様1記載の方法。
(態様34)
前記ADCが、バックグラウンドの20倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する、態様1記載の方法。
(態様35)
前記ADCが、バックグラウンドの12倍を超えるがバックグラウンドの30倍未満の発現レベルでPRLRを発現する細胞を殺傷する、態様1記載の方法。
(態様36)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;及び370/378からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列対を含む、態様1記載の方法。
(態様37)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号20を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号22を含むHCDR2;配列番号24を含むHCDR3;配列番号28を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号30を含むLCDR2;及び配列番号32を含むLCDR3を含む、態様1記載の方法。
(態様38)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号18を含むHCVR、及び配列番号26を含むLCVRを含む、態様37記載の方法。
(態様39)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号68を含むHCDR1;配列番号70を含むHCDR2;配列番号72を含むHCDR3;配列番号76を含むLCDR1;配列番号78を含むLCDR2;及び配列番号80を含むLCDR3を含む、態様1記載の方法。
(態様40)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号66を含むHCVR、及び配列番号74を含むLCVRを含む、態様39記載の方法。
(態様41)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号276を含むHCDR1;配列番号278を含むHCDR2;配列番号280を含むHCDR3;配列番号284を含むLCDR1;配列番号286を含むLCDR2;及び配列番号288を含むLCDR3を含む、態様1記載の方法。
(態様42)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号274を含むHCVR、及び配列番号282を含むLCVRを含む、態様41記載の方法。
(態様43)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292を含むHCDR1;配列番号294を含むHCDR2;配列番号296を含むHCDR3;配列番号300を含むLCDR1;配列番号302を含むLCDR2;及び配列番号304を含むLCDR3を含む、態様1記載の方法。
(態様44)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号290を含むHCVR、及び配列番号298を含むLCVRを含む、態様43記載の方法。
(態様45)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号372を含むHCDR1;配列番号374を含むHCDR2;配列番号376を含むHCDR3;配列番号380を含むLCDR1;配列番号382を含むLCDR2;及び配列番号384を含むLCDR3を含む、態様1記載の方法。
(態様46)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号370を含むHCVR、及び配列番号378を含むLCVRを含む、態様45記載の方法。
(態様47)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号18/26;66/74;274/282;290/298;及び370/378からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、PRLRへの結合に関して競合する、態様1記載の方法。
(態様48)
患者のPRLR陽性乳癌の治療方法であって、患者に治療有効量の:
(a)MCCリンカーを介してDM1にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、前記ADC、及び
(b)フルベストラント
を共投与することを含む方法。
(態様49)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292を含むHCDR1;配列番号294を含むHCDR2;配列番号296を含むHCDR3;配列番号300を含むLCDR1;配列番号302を含むLCDR2;及び配列番号304を含むLCDR3を含む、態様48記載の方法。
(態様50)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、態様49記載の方法。
(態様51)
低レベルのPRLRを発現する腫瘍細胞を殺傷する方法であって、該細胞を:
(a)メイタンシノイドにコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、該抗体又はその抗原結合断片はヒトプロラクチン受容体(PRLR)に結合する、前記ADC、及び
(b)フルベストラント
と接触させることを含む方法。
(態様52)
前記腫瘍細胞が、細胞当たり100万コピー未満のPRLRを発現する、態様51記載の方法。
(態様53)
前記腫瘍細胞が、細胞当たり3000~500,000コピーのPRLRを発現する、態様52記載の方法。
(態様54)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号292を含むHCDR1;配列番号294を含むHCDR2;配列番号296を含むHCDR3;配列番号300を含むLCDR1;配列番号302を含むLCDR2;及び配列番号304を含むLCDR3を含む、態様51記載の方法。
(態様55)
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、態様54記載の方法。
(態様56)
前記メイタンシノイドがDM1である、態様51記載の方法。
(態様57)
前記抗体又はその抗原結合断片が、リンカーを介してDM1にコンジュゲートされており、ここで、該リンカーが4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC)である、態様56記載の方法。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
【配列表】
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