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特許7174724触媒、ならびにヒドロシリル化および脱水素シリル化を伴う関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】触媒、ならびにヒドロシリル化および脱水素シリル化を伴う関連方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/24 20060101AFI20221110BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20221110BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20221110BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20221110BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
B01J31/24 Z
B01J37/16
C07F7/08 C
C07F7/08 X
C07F7/18 B
C07F7/18 C
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019571309
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 US2018042421
(87)【国際公開番号】W WO2019018357
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】62/533,217
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】503060525
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バッシュ、デバシス
(72)【発明者】
【氏名】ダッシュ、アスウィーニ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラウチフス トーマス ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン、ライアン ギルバート
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/171881(WO,A1)
【文献】特表2012-532885(JP,A)
【文献】特開2015-231965(JP,A)
【文献】Inorganic Chemistry,2015年,54,5596-5603,DOI: 10.1021/acs.inorgchem.5b00692
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07F 7/08
C07F 7/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する触媒であって、
【化1】
式中、各Rが、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基であり、[M]が、式M’Xを有し、式中、M’が、Fe、Co、およびNiから選択される金属であり、各Xが独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミド基、アルキル基、シリル基、またはHであり、各Lが独立して、オレフィン、アゴスティックC-H、アゴスティックSi-H、エーテル、ニトリル、またはNであり、nが0、1、または2であり、mが0、1、または2である、触媒。
【請求項2】
(i)各Rが独立して、イソプロピル基もしくはC基であるか、(ii)M’がFeもしくはCoであるか、(iii)nが1であるか、(iv)mが1であるか、(v)各Xが独立して、ClもしくはBrであるか、または(vi)(i)~(v)の任意の組み合わせである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の触媒と、活性化化合物と、を含む、触媒混合物。
【請求項4】
請求項3に記載の触媒混合物から形成された、触媒反応生成物。
【請求項5】
触媒反応生成物を調製する方法であって、請求項1または2に記載の触媒を活性化化合物で還元的に活性化して、前記触媒反応生成物を調製することを含む、方法。
【請求項6】
前記活性化化合物が、i)水素化ホウ素化合物、(ii)水素化アルミニウム化合物、(iii)オルガノリチウム化合物、(iv)オルガノマグネシウム化合物、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の触媒を調製する方法であって、
金属化合物をリガンドと錯体化して、前記触媒を得ることを含み、
前記金属化合物が、式M’Xを有し、式中、M’が、Fe、Co、およびNiから選択される金属であり、各Xが独立して、ハロゲン原子であり、
前記リガンドが以下の構造を有し、
【化2】
式中、各Rが、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基である、方法。
【請求項8】
前記リガンドを調製することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
組成物であって、
(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または
(2)前記組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含むこと、のうちの少なくとも1つに従う、(A)不飽和化合物と、
(C)請求項1または2に記載の触媒と、を含む、組成物。
【請求項10】
条件(2)が真であり、その結果、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む前記水素化ケイ素化合物をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(i)前記(A)不飽和化合物が、1分子あたり少なくとも2つの不飽和基を含むか、(ii)前記(B)水素化ケイ素化合物が、1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含むか、または(iii)(i)および(ii)の両方である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法であって、
(C’)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、前記ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含み、
前記脂肪族不飽和基が、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C’)ヒドロシリル化触媒が、請求項1または2に記載の触媒を含む、方法。
【請求項13】
脱水素シリル化反応生成物を調製する方法であって、
(C’’)シリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、前記脱水素シリル化反応生成物を調製することを含み、
前記脂肪族不飽和基が、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C’’)シリル化触媒が、請求項1または2に記載の触媒を含む、方法。
【請求項14】
条件(2)が真であり、その結果、組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む前記水素化ケイ素化合をさらに含み、前記脱水素シリル化反応生成物が、アルケニル官能性化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記(A)不飽和化合物が、エチレンを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月17日に出願された米国仮特許出願第62/533,217号に対する優先権および全ての利点を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に触媒に関し、より具体的には、ヒドロシリル化および/または脱水素シリル化のための触媒、ならびに関連する方法、ならびに触媒を調製する方法およびそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロシリル化反応は、一般に、当技術分野で知られており、ケイ素結合水素と脂肪族不飽和との間の付加反応を伴う。ヒドロシリル化反応は、様々な用途で利用されている。例えば、硬化性組成物は、硬化性組成物の成分を硬化または架橋させる目的でヒドロシリル化反応に依存し得る。ヒドロシリル化反応を利用して、個別の成分または化合物、例えば、硬化性組成物に含めるための成分を調製することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒドロシリル化反応は、典型的には、白金金属である触媒の存在下で実行され、それは、その優れた触媒活性に起因する。白金金属は、一般に、触媒活性がより低い他の金属よりもはるかに高価である。一般に、非白金触媒は、周囲条件に曝露されると不安定になり、例えば、非白金触媒は、周囲の酸素および水との望ましくない副反応を起こし易い可能性があり、それにより、その使用および潜在的な最終用途が制限される。
【0005】
脱水素シリル化反応も当技術分野で知られており、同様に、ケイ素結合水素と脂肪族不飽和との間の反応を伴う。しかし、脱水素シリル化では、付加反応はなく、代わりに脂肪族不飽和がケイ素に結合する。脱水素シルエイ化反応を利用して、ヒドロシリル化反応をさらに受け得る不飽和化合物(例えば、オレフィン官能性化合物)を調製することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構造を有する触媒を提供し、
【化1】
式中、各Rが、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基であり、[M]が、式M’Xを有し、式中、M’が、Fe、Co、およびNiから選択される金属であり、各Xが独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミド基、アルキル基、シリル基、またはHであり、各Lが独立して、オレフィン、アゴスティックC-H、アゴスティックSi-H、エーテル、ニトリル、またはNであり、nが0、1、または2であり、mが0、1、または2である。
【0007】
本発明はまた、触媒を調製する方法も提供する。本方法は、金属化合物をリガンドと錯体化して、触媒を得ることを含む。金属化合物は、式M’Xを有し、式中、M’は、Fe、Co、およびNiから選択される金属であり、各Xは独立して、ハロゲン原子である。リガンドは、以下の構造を有し、
【化2】
式中、各Rは、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基である。
【0008】
触媒反応生成物を調製する方法も提供される。触媒反応生成物を調製する方法は、触媒を活性化化合物で還元的に活性化して、触媒反応生成物を調製することを含む。触媒反応生成物、および触媒と活性化化合物との触媒混合物も提供される。
【0009】
本発明は、組成物をさらに提供する。本組成物は、(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含むこと、のうちの少なくとも1つに従う。本組成物は、(C)触媒をさらに含む。
【0010】
さらに、ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法が、本方法に従って形成されるヒドロシリル化反応生成物とともに提供される。本方法は、(C’)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含む。脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)ケイ素結合水素原子が(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用される。(C’)ヒドロシリル化触媒は、上記の触媒を含む。
【0011】
さらに、脱水素シリル化反応生成物を調製する方法が、本方法に従って形成される脱水素シリル化反応生成物とともに提供される。本方法は、(C’’)シリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、脱水素シリル化反応生成物を調製することを含む。脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)ケイ素結合水素原子が(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用される。(C’’)シリル化触媒は、上記の触媒を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、触媒を提供する。触媒は優れた物理的特性を有し、少なくともヒドロシリル化反応および/または脱水素シリル化反応に利用され得る。触媒を調製する方法も、触媒を含む組成物とともに開示される。触媒およびその触媒活性の多様な最終用途を以って、触媒を用いてヒドロシリル化反応生成物を調製する方法および脱水素シリル化反応生成物を調製する方法も開示される。ヒドロシリル化反応生成物および脱水素シリル化反応生成物は、以下により詳細に記載されるように、多様な最終用途において利用され得る。
【0013】
触媒は、以下の構造を有し、
【化3】
式中、各Rが、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基であり、[M]が、式M’Xを有し、式中、M’が、Fe、Co、およびNiから選択される金属であり、各Xが独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミド基、アルキル基、シリル基、またはHであり、各Lが独立して、オレフィン、アゴスティックC-H、アゴスティックSi-H、エーテル、ニトリル、またはNであり、nが0、1、または2であり、mが0、1、または2である。下付き文字nおよびmは、一般に、M’金属、ならびにXおよびLにより表される特定のリガンドの酸化状態に対応する。XおよびLは、互いに結合または錯体化し得る。
【0014】
任意にXおよびLにより表されるハロゲン原子は限定されず、独立して選択される。ある特定の実施形態では、ハロゲン原子は、ClおよびBrから選択される。
【0015】
ある特定の実施形態では、M’の酸化状態に応じて、nは2であり、mは0であり、その結果、[M]は式M’Xを有する。以下に記載されるように、触媒の初期調製時には、各Xは、典型的には、ハロゲン原子である。例えば、[M]は、FeCl、FeBr、FeBrCl、CoCl、CoBr、CoBrCl、NiCl、FeBr、FeBrClなどであり得る。典型的には、各ハロゲン原子は、[M]と同じである。[M]が式M’Xを有する実施形態では、触媒は、以下の構造を有し、
【化4】
式中、M’RおよびXは、上記で定義される。
【0016】
独立して選択される各Rは、線状、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、ならびに飽和または非共役環状基を包含する。アリール基は、単環式でも多環式でもよい。線状および分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和または不飽和であり得る。線状および環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。
【0017】
置換ヒドロカルビル基は、例えば、塩素、フッ素、臭素、もしくはヨウ素などのハロゲン原子、酸素原子、アクリル、メタクリル、アルコキシ、もしくはカルボキシル基などの酸素原子含有基、窒素原子、アミノ、アミド、もしくはシアノ基などの窒素原子含有基、硫黄原子、またはメルカプト基などの硫黄原子含有基などの、別の原子または置換基(すなわち、基)で置き換えられた(すなわち、置換された)1つ以上の原子(例えば、Cおよび/またはH)を有するヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロ-およびアルコキシ-フェニル基、ベータ-(ペルフルオロブチル)エチル基、クロロシクロヘキシル基、ならびにピリジニル基などのヘテロアリールなどの、塩素またはフッ素で置換されたプロピル基が含まれる。
【0018】
ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、または類似のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、または類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、または類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、または類似のアラルキル基;および3-クロロプロピル、2-ブロモエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、または類似の置換(ハロゲン化)アルキル基により例示され得る。
【0019】
ある特定の実施形態では、各Rは独立して、立体障害、電子機器(例えば、電子供与効果、誘導効果、または引き込み効果)など、またはそれらの組み合わせなどの要因に基づいて選択される。Rは、キラリティーを付与するか、または触媒に対称性を付与するために選択され得る。これらまたは他の実施形態では、Rは独立して、反マルコフニコフ選択性などの反応性位置選択性を実施するために選択され得る。
【0020】
ある特定の実施形態では、各Rは独立して、非線状、例えば、分岐状または環状(例えば、アリール)である。例えば、Rは、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、他の分岐アルキルであり得る。あるいは、Rは、置換アリール、例えば、ペンタフルオロフェニルであり得る。特定の実施形態では、触媒中の各Rは、同じである。2つの具体的な例として、各Rはイソプロピルであるか、または各Rはペンタフルオロフェニルである。
【0021】
nが2であり、mが0であり、その結果、[M]が式M’Xを有する場合、かつ各Rが同じである場合の触媒の具体的な例が以下に記載され、
【化5】
式中、iPrはイソプロピルを意味し、M’およびXは上記で定義される。M’の酸化状態に応じて、XまたはLにより表される追加のリガンドは、触媒中に存在し得、上記の例は、単なる代表的な例である。
【0022】
さらに、nが2であり、mが0であり、その結果、[M]が式M’Xを有する場合、各Rが同じである場合、かつ各Xが各分子で同じである場合の触媒の具体的な例が以下に記載される。
【化6】
【0023】
触媒は、固体担体の中または上にあり得る。担体の例には、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト、および他の無機粉末/粒子(例えば、硫酸ナトリウムなど)などが含まれる。触媒はまた、ビヒクル、例えば、触媒を可溶化する溶剤、あるいは触媒を単に担持または分散するが、可溶化しないビヒクルに配置され得る。そのようなビヒクルは、当技術分野で知られている。様々な選択に応じて、触媒がビヒクルまたは溶媒に配置される場合、ビヒクルもしくは溶媒、またはその部分は、M’金属と錯体化し、XまたはLにより表されるリガンドになり得る。
【0024】
好適なビヒクルには、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン、および他のポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0025】
あるいは、ビヒクルは、有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、もしくはn-プロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、もしくはメチルイソブチルケトンなどのケトン;ベンゼン、トルエン、もしくはキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、もしくはオクタンなどの脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、もしくはエチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、もしくはメチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル;テトラヒドロフラン;ペトロール;ミネラルスピリット;ナフサ;n-メチルピロリドン;またはそれらの組み合わせであり得る。
【0026】
典型的には、形成時の触媒の[M]は、式M’Xのものであり、式中、各Xは、典型的には、ハロゲン原子である。しかしながら、M’金属は、触媒とともに存在する場合、ビヒクルもしくは溶媒、またはその部分と錯体化し得る。さらに、以下に記載されるように、反応を触媒する場合、Xおよび/またはLは、ハロゲン原子以外のものであり得る。さらに、以下に記載されるように、触媒は、それにより触媒される任意の反応の前および/またはその間に活性化され得る。
【0027】
触媒混合物も提供される。触媒混合物は、触媒および活性化化合物を含む。ある特定の実施形態では、活性化化合物は、触媒の触媒活性に影響を及ぼすか、または改変する。具体的には、活性化剤は、M’金属とリガンドXおよびLとの錯体に影響を及ぼし得る(例えば、触媒中に存在し、M’金属と錯体化される場合、リガンドXおよび/またはLを分解し得る)。これは、一般に、反応を触媒しながらM’金属が他のリガンドと錯体化するのを可能にすることにより、触媒の触媒活性を増加する。活性化化合物は、典型的には、触媒を還元的に活性化する。触媒を還元的に活性化することは、一般に、M’金属の形式的な酸化状態を低減させることを含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、活性化化合物は、(i)水素化ホウ素化合物、(ii)水素化アルミニウム化合物、(iii)オルガノリチウム化合物、(iv)オルガノマグネシウム化合物、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせである。水素化ホウ素化合物は、例えば、トリエチル水素化ホウ素ナトリウム(NaEtBH)、トリエチル水素化ホウ素リチウム(LiEtBH)、または水素化ホウ素ナトリウムなどの金属ホウ素水素化物であり得る。好適な活性化化合物の追加例には、アルカリ金属アマルガム;水素;ナフタレニドナトリウムなどの金属水素化物;シリル水素化物などが含まれる。好適な還元剤には、Chem.Rev.1996,96,877-910に記載されているものが含まれる。
【0029】
触媒および活性化化合物の相対量は、例えば、M’金属およびその酸化状態、Xおよび/またはLにより表されるリガンド、活性化化合物内に存在する水素原子の数などを含む触媒の選択に応じて変化し得る。当業者は、これらの選択の観点において適切なモル比を決定する方法を容易に理解する。
【0030】
触媒混合物は、典型的には、活性化化合物が触媒を還元的に活性化すると反応生成物を形成する。触媒混合物から形成される触媒反応生成物も提供される。触媒混合物および/または触媒反応生成物は、典型的には、反応を触媒するときに利用され、反応を触媒する前またはそれと同時に形成され得る(例えば、その場で形成される)。触媒混合物および/または触媒反応生成物は、触媒混合物および/または触媒反応生成物により触媒される成分の存在下でその場で形成され得る。
【0031】
触媒反応生成物を調製する方法も提供される。本方法は、触媒を活性化化合物で還元的に活性化して、触媒反応生成物を調製することを含む。典型的には、本方法は、触媒と活性化化合物とを組み合わせることを含み、これらは、活性化化合物を介して反応して、触媒を還元的に活性化する。したがって、触媒を還元的に活性化することは、典型的には、触媒がさらなる開始ステップなしで活性化化合物の存在下にあるときに起こる。触媒および活性化化合物は、任意にビヒクルまたは他の成分中に配置され、かつ任意に剪断または混合下で、任意の機器を用いて任意の様式で組み合わせられ得る。
【0032】
触媒を調製する方法も提供される。本方法は、金属化合物をリガンドと錯体化して、触媒を得ることを含む。
【0033】
金属化合物は、式M’Xを有し、式中、M’およびXは上記で定義される。
【0034】
リガンドは、以下の構造を有し、
【化7】
式中、各Rは、独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基である。
【0035】
触媒は、上記のビヒクルのいずれかなどのビヒクルで調製され得る。例えば、触媒は、その使用中に触媒が配置されるビヒクルで調製され得る。ある特定の実施形態では、触媒は、テトラヒドロフランの存在下で調製される。
【0036】
リガンドは、提供、取得、または調製され得る。ある特定の実施形態では、触媒を調製する方法は、金属化合物とリガンドとの錯体化の前および/またはそれと同時に、リガンドを調製することをさらに含む。当技術分野で理解されるように、リガンドは、多数の経路または技法を介して調製または合成され得る。
【0037】
特定の実施形態では、リガンドは、以下に記載される反応スキームに従って調製され得、
【化8】
式中、Rは上記で定義され、py-2-SnBu3は2-(トリブチルスタンニル)ピリジンであり、Rは上記で定義される。この反応スキームに関連する初期ステップのいくつかは、当業者に知られており、例えば、“Visible Light-driven Hydrogen Evolution from Water Catalyzed by A Molecular Cobalt Complex,”Tong,L.;Zong,R.;Thummel,R.P.J.Am.Chem.Soc.2014,136,4881-4884、および/または“Iron Complexes of Square Planar Tetradentate Polypyridyl-type Ligands as Catalysts for Water Oxidation”,Wickramasinghe,L.D.;Zhou,R.;Zong,R.;Vo,P.;Gagnon,K.;Thummel,R.P.J.Am.Chem.Soc.2015,137,13260-13263に開示されている。
【0038】
上記で紹介されるように、本発明は、組成物も提供する。本組成物は、(A)不飽和化合物を含む。(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含み、これは、あるいは、エチレン性不飽和とも呼ばれ得る。(A)不飽和化合物は限定されず、少なくとも1つの脂肪族不飽和基を有する任意の不飽和化合物であり得る。ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、有機化合物を含む。他の実施形態では、(A)不飽和化合物は、シロキサンを含む。さらに他の実施形態では、(A)不飽和化合物は、シリコーン-有機ハイブリッド、またはオルガノケイ素化合物を含む。(A)不飽和化合物の様々な実施形態および例は、以下に開示される。
【0039】
ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも平均2つの脂肪族不飽和基を含む。そのような実施形態では、(A)不飽和化合物は、重合可能である。(A)不飽和化合物の脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物の末端、ペンダント、または両方の位置にあり得る。
【0040】
例えば、脂肪族不飽和基は、アルケニル基および/またはアルキニル基であり得る。「アルケニル基」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環式の分岐または非分岐の一価の炭化水素基を意味する。アルケニル基は、2~30個の炭素原子、あるいは2~24個の炭素原子、あるいは2~20個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルケニル基は、ビニル、アリル、プロペニル、およびヘキセニルにより例示されるが、これらに限定されない。「アルキニル基」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環式の分岐または非分岐の一価の炭化水素基を意味する。アルキニル基は、2~30個の炭素原子、あるいは2~24個の炭素原子、あるいは2~20個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルキニルは、エチニル、プロピニル、およびブチニルにより例示されるが、これらに限定されない。
【0041】
特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、式R-Z’-Rを有し、式中、Z’は、二価の連結基であり、これは、二価の炭化水素、ポリオキシアルキレン、ポリアルキレン、ポリイソアルキレン、炭化水素-シリコーンコポリマー、シロキサン、またはそれらの混合物であり得る。Z’は、線状でも分岐状でもよい。これらの特定の実施形態では、Rは独立して選択され、脂肪族不飽和を含み、すなわち、Rは独立して、アルケニル基およびアルキニル基から選択される。
【0042】
これらの特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、Rにより表される2つの脂肪族不飽和基を含む。
【0043】
(A)不飽和化合物の一実施形態では、Z’は、二価の炭化水素である。二価の炭化水素Z’は、脂肪族または芳香族構造のいずれかとして1~30個の炭素を含有し得、分岐または非分岐であり得る。あるいは、連結基Z’は、1~12個の炭素を含有するアルキレン基であり得る。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、α,ω-不飽和炭化水素から選択され得る。あるいは、α,ω-不飽和炭化水素は、オレフィンと呼ばれ得る。
【0044】
例えば、(A)不飽和化合物は、任意のジエン、ジイン、またはエンイン化合物であり得る。上記の式を参照すると、これらの実施形態では、Rは独立して、例えば、CH=CH-、CH=CHCH-、CH=CH(CH-、CH=C(CH)CH-、またはならびにHC=C(CH)-、およびHC=C(CH)-などの類似の置換不飽和基から選択され得る。そのような実施形態では、(A)不飽和化合物は、α,ω-不飽和炭化水素と呼ばれ得る。α,ω-不飽和炭化水素は、例えば、式CH=CH(CHCH=CHのα,ω-ジエン、式CH≡C(CHC≡CHのα,ω-ジイン、式CH=CH(CHC≡CHのα,ω-エン-イン、またはそれらの混合物であり得、式中、bは独立して、0~20である。
【0045】
好適なジエン、ジイン、またはエン-イン化合物の具体的な例には、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、および1,19-エイコサジエン、1,3-ブタジイン、1,5-ヘキサジイン(ジプロパルギル)、および1-ヘキセン-5-インが含まれる。
【0046】
しかしながら、(A)不飽和化合物は、代替的に、式R-Z’’を有し得、式中、Rは上記で定義され、Z’’は一価の炭化水素基である。これらの特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、Rにより表される1つの脂肪族不飽和基を含む。
【0047】
特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、エチレン、またはCH=CHを含む。エチレンは、脂肪族不飽和基を1つだけ含み、二価または一価の連結基を一切含まない。エチレンは、(A)不飽和化合物として気体の形態で利用され得る。これらの実施形態では、本組成物は、典型的には、容器内で形成され、任意にエチレンで加圧され得る。例えば、容器は、大気圧よりも高い圧力でエチレンで加圧され得、これにより、反応はさらに促進され得る。容器内の温度も上昇され得る。
【0048】
(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和基を1つだけ含む場合、(A)不飽和化合物は、不飽和炭化水素と呼ばれ得、任意の-エンまたは-イン化合物であり得る。そのような実施形態では、(A)不飽和化合物は、非環式アルケンおよび/または非環式アルキンであり得る。しかしながら、(A)不飽和化合物は、任意のアリール基から独立した少なくとも1つの脂肪族不飽和基も含む限り、アリール基を含み得る。
【0049】
別の実施形態では、(A)不飽和化合物は、ポリエーテルを含むか、あるいはポリエーテルである。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、式(C2aO)を有するポリオキシアルキレン基を含み、式中、aは、2~4である。上記の一般式を参照すると、Z’は、ポリオキシアルキレン基である。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、ポリオキシアルキレンと呼ばれ得る。
【0050】
ポリオキシアルキレンは、オキシエチレン単位(CO)、オキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレンもしくはオキシテトラメチレン単位(CO)、またはそれらの混合物を含み得、これは、(A)不飽和化合物中でブロック形態にあるか、またはランダム化され得る。
【0051】
例えば、ポリオキシアルキレンとしての(A)不飽和化合物は、以下の一般式を有し得、
O-[(CO)(CO)(CO)]-R
式中、各Rは独立して選択および上記で定義され、cは0~200であり、dは0~200であり、eは0~200であるが、但し、c、d、およびeが同時に0ではないことを条件とする。特定の実施形態では、cは0~50、あるいは0~10、あるいは0~2である。これらまたは他の実施形態では、dは0~100、あるいは1~100、あるいは5~50である。これらまたは他の実施形態では、eは0~100、あるいは0~50、あるいは0~30である。様々な実施形態では、(d+e)/(c+d+e)の比は、0.5超、あるいは0.8超、あるいは0.95超である。
【0052】
このポリオキシアルキレンは、各分子鎖末端(すなわち、アルファおよびオメガ位置)でRで終端されており、Rは独立して選択および上述される。Rの追加例には、HC=C(CH)CH-HC=CHCHCH-、HC=CHCHCHCH-、およびHC=CHCHCHCHCH-、HC≡C-、HC≡CCH-、HC≡CCH(CH)-、HC≡CC(CH-、HC≡CC(CHCH-が含まれる。しかしながら、上記のポリオキシアルキレンは、好適なポリオキシアルキレンの単に1つの代表的な例である。
【0053】
特定の実施形態では、ポリオキシアルキレン基は、オキシプロピレン単位(CO)のみを含む。ポリオキシプロピレン含有ポリオキシアルキレンの代表的な非限定的な例には、HC=CHCH[CO]CHCH=CH、HC=CH[CO]CH=CH、HC=C(CH)CH[CO]CHC(CH)=CH、HC≡CCH[CO]CHC=CH、およびHC≡CC(CH[CO]C(CHC≡CHが含まれ、式中、dは、上記で定義された通りである。
【0054】
ポリオキシアルキレンを含有するポリオキシブチレンまたはポリ(オキシテトラメチレン)の代表的な非限定的な例には、HC=CHCH[CO]CHCH=CH、HC=CH[CO]CH=CH、HC=C(CH)CH[CO]CHC(CH)=CH、HC≡CCH[CO]CH2C≡CH、およびHC≡CC(CH[CO]C(CHC≡CHが含まれ、式中、eは、上記で定義された通りである。
【0055】
(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンの例には、2つの脂肪族不飽和基が含まれる。しかしながら、(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンは、脂肪族不飽和基を1つだけ含み得る。例えば、(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンは、代替的に、以下の一般式を有し得、
O-[(CO)(CO)(CO)]-R
式中、R、c、d、およびeは上記で定義され、RはHまたはCHなどのアルキル基である。また、いずれの上記の説明または例も、この実施形態にも適用される。当業者は、2つの脂肪族不飽和基を有する上記ポリオキシアルキレンの例が、脂肪族不飽和基を代替的に1つしか含み得ない方法を容易に理解するであろう。
【0056】
ポリオキシアルキレンは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタンス、および/またはシクロヘキセンオキシドもしくはエクソ-2,3-エポキシノルボランなどの環状エポキシドの重合により調製され得る。ポリオキシアルキレンのポリオキシアルキレン部分は、オキシエチレン単位(CO)、オキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレン単位(CO)、またはそれらの混合物を含み得る。典型的には、ポリオキシアルキレン基は、モル基準で定義され、上記式で下付き文字c、d、およびeにより示されるように、オキシプロピレンまたはオキシブチレン単位の大部分を含む。
【0057】
別の実施形態では、一般式R-Z’-RのZ’または(A)不飽和化合物の式R-Z’’のZ’’は、ポリアルキレン基を含む。ポリアルキレン基は、C~Cアルキレン単位またはそれらの異性体を含み得る。1つの具体的な例は、ポリイソブチレン基であり、これは、イソブチレン単位を含むポリマーである。例えば、(A)不飽和化合物は、ジアリル末端ポリイソブチレンまたはアリル末端ポリイソブチレンであり得る。ポリイソブチレン基の分子量は変化し得るが、典型的には、100~10,000g/モルの範囲である。
【0058】
ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサンは限定されず、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合脂肪族不飽和基を含む任意のオルガノポリシロキサンであり得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、線状、分岐状、部分分岐状、環状、樹脂状(すなわち、三次元ネットワークを有する)であり得るか、または異なる構造の組み合わせを含み得る。(A)不飽和化合物がオルガノポリシロキサンを含む場合、脂肪族不飽和基は、ケイ素結合している(例えば、ケイ素結合アルケニルおよび/またはケイ素結合アルキニルとして)。
【0059】
ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物がオルガノポリシロキサンを含む場合、オルガノポリシロキサンは以下の平均式を有し、
SiO(4-f)/2
式中、各Rは独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基であり、但し、各分子では、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのR基が脂肪族不飽和基であることを条件とし、fは0<f≦3.2となるように選択される。
【0060】
オルガノポリシロキサンの上記の平均式は、代替的に、(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2と書くこともでき、式中、Rおよびその条件は上記で定義され、w、x、y、およびzは独立して、≧0~≦1であるが、但し、w+x+y+z=1を条件とする。当業者は、そのようなM、D、T、およびQ単位ならびにそれらのモル画分が上記の平均式の下付き文字fにどのように影響を及ぼすかを理解する。下付き文字yおよびzにより示されるTおよびQ単位は、典型的には、シリコーン樹脂中に存在するのに対し、下付き文字xにより示されるD単位は、典型的には、シリコーンポリマー中に存在する(かつ、シリコーン樹脂中にも存在し得る)。
【0061】
上記で紹介されるように、各Rは独立して選択され、線状、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、ならびに飽和または非共役環状基を包含する。アリール基は、単環式でも多環式でもよい。線状および分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和または不飽和であり得る。線状と環状ヒドロカルビル基との組み合わせの一例は、アラルキル基である。置換および非置換ヒドロカルビル基の例は、Rに関して上記で紹介される。脂肪族不飽和基(複数可)の例も上記で紹介される。
【0062】
ある特定の実施形態では、オルガノポリシロキサンは、実質的に線状であるか、あるいは線状である。これらの実施形態では、実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
f′SiO(4-f′)/2
式中、各Rおよびその条件は上記で定義され、f’は1.9≦f’≦2.2となるように選択される。
【0063】
これらの実施形態では、25℃の温度で、実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、典型的には、流動性液体であるか、未硬化ゴムの形態である。一般に、実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、25℃で10~30,000,000mPa・s、あるいは10~10,000mPa・s、あるいは100~1,000,000mPa・s、あるいは100~100,000mPa・sの粘度を有する。当技術分野で理解されるように、粘度は、ブルックフィールドLV DV-E粘度計を介して25℃で測定され得る。
【0064】
オルガノポリシロキサンが実質的に線状または線状である特定の実施形態では、オルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
(R SiO1/2m′(R SiO2/2n′(RSiO3/2
式中、各Rは独立して選択および上記で定義され(各分子では、少なくとも1つのRが脂肪族不飽和基であるという条件を含む)、m’≧2、n’≧0、およびo≧2である。特定の実施形態では、m’は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。これらまたは他の実施形態では、n’は、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。これらまたは他の実施形態では、oは、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
【0065】
オルガノポリシロキサンが実質的に線状であるか、あるいは線状である場合、ケイ素結合脂肪族不飽和基(複数可)は、ペンダント、末端、またはペンダントおよび末端の両方の位置にあり得る。ペンダントケイ素結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンの具体的な例として、オルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
(CHSiO[(CHSiO]n′[(CH)ViSiO]m′Si(CH
式中、n’およびm’は上記で定義され、Viはビニル基を示す。この平均式に関して、当業者は、1分子あたり2つの脂肪族不飽和基が存在する限り、任意のメチル基がビニル、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基で置き換えられ得、任意のビニル基が任意のエチレン性不飽和基で置き換えられ得ることを知っている。あるいは、末端ケイ素結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンの具体的な例として、オルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
Vi(CHSiO[(CHSiO]n′Si(CHVi
式中、n’およびViは上記で定義される。ケイ素結合ビニル基で終端されたジメチルポリシロキサンは、単独で、または直前に上記で開示されるジメチル、メチルビニルポリシロキサンと組み合わせて利用され得る。この平均式に関して、当業者は、1分子あたり2つの脂肪族不飽和基が存在する限り、任意のメチル基がビニル、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基で置き換えられ得、任意のビニル基が任意のエチレン性不飽和基で置き換えられ得ることを知っている。少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基はペンダントおよび末端の両方であり得るため、(A)オルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
Vi(CHSiO[(CHSiO]n′[(CH)ViSiO]m′SiVi(CH
式中、n’、m’、およびViは上記で定義される。
【0066】
実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンおよびメチルフェニルシロキサンのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンおよびジフェニルシロキサンのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、およびジメチルシロキサンのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンおよびメチルフェニルシロキサンのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンおよびジフェニルシロキサンのコポリマー、ならびに両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、およびジメチルシロキサンのコポリマーにより例示され得る。
【0067】
これらまたは他の実施形態では、(A)オルガノポリシロキサンは、樹脂状オルガノポリシロキサンであり得る。これらの実施形態では、樹脂状オルガノポリシロキサンは、平均式を有し得、
f′′SiO(4-f′′)/2
式中、各Rおよびその条件は上記で定義され、f’’は0.5≦f’’≦1.7となるように選択される。
【0068】
樹脂状オルガノポリシロキサンは、分岐状または三次元ネットワーク分子構造を有する。25℃で、樹脂状オルガノポリシロキサンは液体または固体形態であり得、任意に担体に分散され、樹脂状オルガノポリシロキサンをそこで可溶化および/または分散し得る。
【0069】
特定の実施形態では、樹脂状オルガノポリシロキサンは、T単位のみを含むオルガノポリシロキサン、他のシロキシ単位(例えば、M、D、および/またはQシロキシ単位)と組み合わせてT単位を含むオルガノポリシロキサン、または他のシロキシ単位(すなわち、M、D、および/またはTシロキシ単位)と組み合わせてQ単位を含むオルガノポリシロキサンにより例示され得る。典型的には、樹脂状オルガノポリシロキサンは、Tおよび/またはQ単位を含む。樹脂状オルガノポリシロキサンの具体的な例は、ビニル末端シルセスキオキサンである。
【0070】
オルガノポリシロキサンは、異なる構造のものを含む異なるオルガノポリシロキサンの組み合わせまたは混合物を含み得る。
【0071】
あるいは、(A)不飽和化合物は、シリコーン-有機ハイブリッドであり得る。例えば、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサン(または、1つ以上のオルガノポリシロキサンと1つ以上の有機化合物)のヒドロシリル化反応生成物を含み得、この場合、(A)不飽和化合物の主鎖は、有機二価の連結基を含み得る。別の例として、オルガノ水素シロキサンを他のオルガノポリシロキサンまたは有機化合物と反応させて、(A)不飽和化合物を得ることができる。
【0072】
例えば、(A)不飽和化合物は、(a1)少なくとも1つのSi-H化合物と(b1)エチレン性不飽和を有する少なくとも1つの化合物との反応生成物であり得る。これらの実施形態では、(b1)化合物のエチレン性不飽和基の余剰分子は、(a1)Si-H化合物のSi-H基と比較して利用され、その結果、(A)不飽和化合物が少なくとも1つ、あるいは少なくとも平均2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を含む。
【0073】
(a1)Si-H化合物とエチレン性不飽和を有する(b1)化合物との反応生成物は、(AB)n型コポリマーと呼ばれ得、(a1)Si-H化合物は単位Aを形成し、(b1)化合物は、エチレン性不飽和形成単位Bを有する。異なる(a1)Si-H化合物の組み合わせが利用され得、かつエチレン性不飽和を有する異なる(b1)化合物の組み合わせも利用され得、その結果、得られる(b)架橋剤は、異なる単位を含むが、(AB)n型コポリマーではない場合がある。個別の単位は、ランダム化でもブロック化の形態でもよい。
【0074】
あるいはさらに、(A)不飽和化合物は、オルガノケイ素化合物を含み得るが、オルガノポリシロキサンは含まない。例えば、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサンを構成しないが、シラン、ジシラン、またはシロキサン(例えば、ジシロキサン)を含み得る。
【0075】
好適なシランの一例は、式R z′′SiR 4-z′′のシランであり、式中、各Rは独立して、脂肪族不飽和基であり、Rは独立して、置換または非置換ヒドロカルビル基であり、1≦z’’≦4である。シロキサンの一例は、テトラメチルジビニルジシロキサンである。当業者は、(A)不飽和化合物として使用するためのそのような化合物を調製または取得する方法を理解する。
【0076】
(A)不飽和化合物は、単一の不飽和化合物、または2つ以上の異なる水素化ケイ素化合物を含む組み合わせであり得る。
【0077】
本組成物および(A)不飽和化合物は、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含むこと、のうちの少なくとも1つに従う。
【0078】
第1の実施形態では、条件(1)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含む。第2の実施形態では、条件(2)は真であり、その結果、本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。最後に、第3の実施形態では、条件(1)および条件(2)の両方は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。
【0079】
第1の実施形態では、条件(1)は真であり、(A)不飽和化合物は、脂肪族不飽和基に加えて、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、少なくとも1つのケイ素結合水素原子および少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む任意の化合物であり得る。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、典型的には、オルガノケイ素化合物および/またはオルガノポリシロキサンである。
【0080】
当業者は、そのような不飽和化合物を調製または取得する方法を容易に理解する。例えば、脂肪族不飽和水素およびケイ素結合水素の両方を含むオルガノケイ素化合物は、上記に開示される不飽和有機化合物から調製され得る。単に一例として、式CH=CH(CHCH=CHのα,ω-ジエンは、ヒドロシリル化触媒の存在下で式HSi(CHのシランと反応して、1つの脂肪族不飽和基および1つのケイ素結合水素原子を含む、式CH=CH(CHCHCHSi(CHHの不飽和化合物を得ることができる。オルガノケイ素化合物は、シラン、ジシラン、シロキサンなどであり得る。例えば、オルガノケイ素化合物は、式R b’c’SiR 4-b’-c’であり得、式中、RおよびRは独立して選択および上記で定義され、b’は1、2、または3であり、c’は1、2、または3であるが、但し、2≦(b’+c’)≦4であることを条件とする。
【0081】
(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和およびケイ素結合水素の両方を有するオルガノポリシロキサンを含む場合、オルガノポリシロキサンは、式R d′e′SiO(4-d′-e′)/2を有し得、式中、Rは独立して選択および上記で定義され(但し、少なくとも1つのRが脂肪族不飽和基である条件に従う)、e’およびf’は各々、0<(d’+e’)≦3.2であるように0より大きい。
【0082】
あるいは、(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和およびケイ素結合水素の両方を有するオルガノポリシロキサンを含む場合、ケイ素結合脂肪族不飽和基(複数可)およびケイ素結合水素原子(複数可)は、オルガノポリシロキサン中に存在する任意のM、D、および/またはTシロキシ単位中に存在し得、同じケイ素原子に結合し得る(Mおよび/またはDシロキシ単位の場合)。オルガノポリシロキサンは、例えば、Mシロキシ単位として、(R SiO1/2)、(R HSiO1/2)、(RSiO1/2)、および/または(HSiO1/2)を含み得る。オルガノポリシロキサンは、例えば、Dシロキシ単位として、(R SiO2/2)、(RHSiO2/2)、および/または(HSiO2/2)を含み得る。オルガノポリシロキサンは、例えば、Tシロキシ単位として、(RSiO3/2)および/または(HSiO3/2)を含み得る。そのようなシロキシ単位は、任意の様式で、任意にQシロキシ単位と組み合わされて、Rにより表される少なくとも1つのケイ素結合脂肪族不飽和基および少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0083】
例えば、オルガノポリシロキサンは、以下の式、(R HSiO1/2w′(R SiO2/2x′(RSiO3/2y′(SiO4/2z′、(RSiO1/2w′(R SiO2/2x′(RSiO3/2y′(SiO4/2z′
(R SiO1/2w′(RHSiO2/2x′(RSiO3/2y′(SiO4/2z′、(RSiO1/2w′(RHSiO2/2x′(RSiO3/2y′(SiO4/2z′
(R SiO1/2w′(R SiO2/2x′(HSiO3/2y′(SiO4/2z′、(R SiO1/2w′(RHSiO2/2x′(RSiO3/2y′(SiO4/2z′、および/または(RSiO1/2w′(RHSiO2/2x′(HSiO3/2y′(SiO4/2z′などのうちのいずれか1つを有し得、式中、各Rは独立して選択および上記で定義され(少なくとも1つのRは脂肪族不飽和基である)、w’、x’、y’、およびz’は独立して≧0~≦1であるが、但し、w’+x’+y’+z’’=1であることを条件とする。
【0084】
第2の実施形態では、条件(2)は真であり、本組成物は、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む任意の化合物であり得る。(B)水素化ケイ素化合物の構造に応じて、(B)水素化ケイ素化合物は、シラン化合物、オルガノケイ素化合物、オルガノ水素シラン、オルガノ水素シロキサンなどであり得る。
【0085】
(B)水素化ケイ素化合物は、線状、分岐状、環状、樹脂状、またはそのような構造の組み合わせを有し得る。非環式ポリシランおよびポリシロキサンでは、ケイ素結合水素原子(複数可)は、末端、ペンダント、または末端およびペンダントの両方の位置に配置され得る。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3~12個のケイ素原子、あるいは3~10個のケイ素原子、あるいは3~4個のケイ素原子を有する。
【0086】
ある特定の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、式R 4-sSiHであり、式中、Rは独立して選択され、任意のケイ素結合基であり得、sは1≦s≦4であるように選択される。典型的には、sは、1、2、または3、あるいは1または2である。各Rは、典型的には独立して、置換または非置換ヒドロカルビル基である。しかしながら、(B)水素化ケイ素がそのケイ素結合水素原子を介してヒドロシリル化を受けることができる限り、Rは、任意のケイ素結合基であり得る。例えば、Rは、ハロゲンであり得る。(B)水素化ケイ素がシラン化合物である場合、(B)水素化ケイ素は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであり得る。
【0087】
これらまたは他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、式Hg′ 3-g′Si-R10-SiR Hのオルガノケイ素化合物であり得、式中、各Rは独立して選択された置換または非置換ヒドロカルビル基であり、g’は0または1であり、R10は二価の連結基である。R10は、シロキサン鎖(例えば、-R SiO-、-RHSiO-、および/または-HSiO-Dシロキシ単位を含む)であり得るか、または二価の炭化水素基であり得る。典型的には、二価の炭化水素基は、脂肪族不飽和を含まない。二価の炭化水素基は、線状、環状、分岐状、芳香族などであり得るか、またはそのような構造の組み合わせを有し得る。
【0088】
g’が1である場合、かつR10が二価の炭化水素基である場合、(B)水素化ケイ素化合物の具体的な例には:
【化9】
が含まれる。
【0089】
これらまたは他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、オルガノ水素シロキサンを含み、これは、ジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであり得る。(B)水素化ケイ素化合物としての使用に好適なオルガノ水素シロキサンの例には、以下の式を有するシロキサンが含まれるが、これらに限定されず、PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、およびPhSi(OSiMeH)、式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである。(B)水素化ケイ素化合物の目的に好適であるオルガノ水素シロキサンの追加例には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、およびジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)が含まれる。
【0090】
(B)水素化ケイ素化合物がオルガノ水素シロキサンを含む場合、(B)水素化ケイ素化合物は、(B)水素化ケイ素化合物が少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む限り、M、D、T、および/またはQシリオキシ単位の任意の組み合わせを含み得る。これらのシロキシ単位は、様々な様式で組み合わされて、環状、線状、分岐状、および/または樹脂状(三次元ネットワーク)構造が形成され得る。(B)水素化ケイ素化合物は、M、D、T、および/またはQ単位の選択に応じて、モノマー、ポリマー、オリゴマー、線状、分岐状、環状、および/または樹脂状であり得る。
【0091】
(B)水素化ケイ素化合物は、上記のシロキシ単位に関して少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含むため、(B)水素化ケイ素化合物は、任意に、一切のケイ素結合水素を含まないシロキシ単位と組み合わせてケイ素結合水素原子を含む以下のシロキシ単位のいずれかを含み得、((R HSiO1/2)、(RSiO1/2)、(HSiO1/2)、(RHSiO2/2)、(HSiO2/2)、および/または(HSiO3/2)、式中、Rは独立して選択および上記で定義される。
【0092】
特定の実施形態では、例えば、(B)水素化ケイ素化合物が線状である場合、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式を有し得、
(R11 SiO1/2e′′(R SiO2/2f′′′(RHSiO2/2g′′
式中、各R11は独立して水素またはRであり、各Rは独立して選択および上記で定義され、e’’≧2、f’’’≧0、およびg’’≧2である。特定の実施形態では、e’’は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。これらまたは他の実施形態では、f’’’は、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。これらまたは他の実施形態では、g’’は、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
【0093】
一実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、線状であり、1つ以上のペンダントケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式を有するジメチル、メチル水素ポリシロキサンであり得、
(CHSiO[(CHSiO]f′′′[(CH)HSiO]g′′Si(CH
式中、f’’’およびg’’は上記で定義される。
【0094】
これらまたは他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は線状であり、末端ケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式を有するSiH末端ジメチルポリシロキサンであり得、
H(CHSiO[(CHSiO]f′′′Si(CH
式中、f’’’は上記で定義した通りである。SiH末端ジメチルポリシロキサンは、単独で、または直前に上記で開示されるジメチル、メチル水素ポリシロキサンと組み合わせて利用され得る。さらに、SiH末端ジメチルポリシロキサンは、ケイ素結合水素原子を1つだけ有し得るように1つのトリメチルシロキシ末端を有し得る。あるいはさらに、(B)オルガノ水素シロキサンは、ペンダントおよび末端ケイ素結合水素原子の両方を含み得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、以下の平均式のうちの1つを有し得:
(R11 SiO1/2e′′(R SiO2/2f′′′(RHSiO2/2g′′(RSiO3/2
(R11 SiO1/2e′′(R SiO2/2f′′′(RHSiO2/2(SiO4/2
(R11 SiO1/2e′′(R SiO2/2f′′′(RHSiO2/2g′′(RSiO3/2(SiO4/2
式中、各R11およびRは独立して選択および上記で定義され、e’’、f’’’、およびg’’は上記で定義され、h≧0であり、iは≧0である。上記の平均式の各々では、下付き文字の合計は1である。
【0096】
(B)水素化ケイ素化合物の上記の平均式の一部は、(B)水素化ケイ素化合物がTシロキシ単位(下付き文字hにより示される)および/またはQシロキシ単位(下付き文字iにより示される)を含む場合、樹脂状である。(B)水素化ケイ素化合物が樹脂状である場合、(B)水素化ケイ素化合物は、典型的には、Mシロキシ単位および/またはDシロキシ単位と組み合わせて、Tシロキシ単位および/またはQシロキシ単位を含むコポリマーである。例えば、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であり得る。
【0097】
(B)水素化ケイ素化合物が樹脂状であるか、またはオルガノポリシロキサン樹脂を含む様々な実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、典型的には、式:
(R12 SiO1/2j′(R12 SiO2/2k′(R12SiO3/2l′(SiO4/2m″(IV)
を有し、
式中、各R12は独立してH、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基であるが、但し、1分子中、少なくとも1つのR12がHであることを条件とし、0≦j’≦1、0≦k’≦1、0≦l’≦1、および0≦m’’≦1であるが、但し、j’+k’+l’+m’’=1であることを条件とする。
【0098】
ある特定の実施形態では、水素化ケイ素化合物(B)は、一般に式(R12 SiO)r’(R12HSiO)s’により表されるアルキル水素シクロシロキサンまたはアルキル水素ジアルキルシクロシロキサンコポリマーを含み得、式中、R12は独立して選択および上記で定義され、r’は0~7の整数であり、s’は3~10の整数である。このタイプの好適なオルガノ水素シロキサンの具体的な例には、(OSiMeH)、(OSiMeH)(OSiMeC13)、(OSiMeH)(OSiMeC13、および(OSiMeH)(OSiMeC13が含まれ、式中、Meはメチル(-CH)を表す。
【0099】
(B)水素化ケイ素化合物は、単一の水素化ケイ素化合物、または2つ以上の異なる水素化ケイ素化合物を含む組み合わせであり得る。
【0100】
最後に、第3の実施形態では、条件(1)および条件(2)の両方は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。この第3の実施形態に好適な不飽和化合物および水素化ケイ素化合物の例は上記に示される。
【0101】
(A)不飽和化合物、ならびに(B)水素化ケイ素化合物は、本組成物中に存在する場合、担体ビヒクルに配置され得る。担体ビヒクルの例について記載する。
【0102】
本組成物は、(A)不飽和化合物および(B)水素化ケイ素化合物を、存在する場合、本組成物の所望の特性または最終用途に応じて様々な量または比率で含み得る。本組成物が成分(A)および(B)を含む様々な実施形態では、本組成物は、0.3~5、あるいは0.6~3のケイ素結合水素原子の脂肪族不飽和基に対するモル比を提供するような量の成分(A)および(B)を含む。
【0103】
本組成物は、(C)触媒をさらに含む。触媒は、上記に示される。本組成物の成分の選択に応じて、触媒は、以下に記載されるように、ヒドロシリル化反応触媒および/または脱水素シリル化反応触媒として機能し得る。
【0104】
異なるヒドロシリル化反応触媒の組み合わせが利用され得る。例えば、本組成物は、(C)触媒と組み合わせて、1つ以上の補助触媒をさらに含み得る。
【0105】
利用される場合、補助触媒は、典型的には、グループ8~グループ11の遷移金属を含む。グループ8~グループ11の遷移金属は、最新のIUPAC命名法を指す。グループ8の遷移金属は、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、およびハッシウム(Hs)であり、グループ9の遷移金属は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、およびイリジウム(Ir)であり、グループ10の遷移金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、および白金(Pt)であり、グループ11の遷移金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、および金(Au)である。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、オルガノ金属錯体)、およびそのような金属の他の形態は、補助触媒として利用され得る。
【0106】
補助触媒に好適な触媒の追加例には、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、グループ4の遷移金属(すなわち、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、および/またはハフニウム(Hf))、ランタニド、アクチニド、ならびにグループ1および2の金属錯体(例えば、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ストロンチウム(Sr)などを含むもの)が含まれる。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、オルガノ金属錯体)、およびそのような金属の他の形態は、補助触媒として利用され得る。
【0107】
補助触媒は、任意の好適な形態であり得る。例えば、補助触媒は固体であり得、その例には、白金系触媒、パラジウム系触媒、および同様の貴金属系触媒、ならびにニッケル系触媒も含まれる。それらの具体的な例には、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、および同様の元素、ならびに白金-パラジウム、ニッケル-銅-クロム、ニッケル-銅-亜鉛、ニッケル-タングステン、ニッケル-モリブデン、および複数の金属の組み合わせを含む類似の触媒が含まれる。固体触媒の追加例には、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Si、Cu-Fe-Al、Cu-Zn-Ti、および同様の銅含有触媒などが含まれる。
【0108】
特定の実施形態では、補助触媒は白金を含む。これらの実施形態では、補助触媒は、例えば、白金黒、化合物、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、塩化白金、およびそのような化合物とオレフィンまたはオルガノポリシロキサンとの錯体、ならびにマトリックスまたはコアシェル型化合物にマイクロカプセル化された白金化合物により例示される。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびそれらの調製方法もまた、米国特許第4,766,176号および同第5,017,654号に例示されているように、当技術分野で知られており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
補助触媒としての使用に好適な白金とオルガノポリシロキサンとの錯体には、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体が含まれる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化され得る。あるいは、補助触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含み得る。補助触媒は、塩化白金酸を、ジビニルテトラメチルジシロキサンまたはアルケン-白金-シリル錯体などの脂肪族的不飽和オルガノケイ素化合物と反応させることを含む方法により調製され得る。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを0.045モルのCODおよび0.0612モルのHMeSiClと混合することにより調製され得る。
【0110】
補助触媒は、さらに、または代替的に、光活性化可能なヒドロシリル化触媒でもあり得、これは照射および/または熱により硬化を開始してもよい。光活性化可能なヒドロシリル化触媒は、特に150~800ナノメートル(nm)の波長を有する放射線への曝露時にヒドロシリル化反応を触媒することができる任意のヒドロシリル化触媒であり得る。
【0111】
しかしながら、典型的には、本組成物は(C)触媒を含むが、補助触媒を含まない。
【0112】
(C)触媒は、触媒量、すなわち、所望の条件でその反応または硬化を促進するのに十分な量または分量で本組成物中に存在する。(C)触媒の触媒量は、0.01ppm超であり得、1,000ppm超であり得る(例えば、10,000ppm以上まで)。ある特定の実施形態では、(C)触媒の典型的な触媒量は、5,000ppm未満、あるいは2,000ppm未満、あるいは1,000ppm未満(しかし、いずれの場合も0ppm超)である。特定の実施形態では、(C)触媒の触媒量は、本組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~100ppm、あるいは0.01~50ppmの範囲の金属であり得る。範囲は、(C)触媒内の金属含有量のみ、または(C)触媒全体(そのリガンドを含む)に関する場合がある。ある特定の実施形態では、これらの範囲は、(C)触媒内の金属含有量のみに関する。
【0113】
本組成物は、接着促進剤、担体ビヒクル、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、流動制御添加剤、殺生物剤、充填剤(増量および補強充填剤を含む)、界面活性剤、チキソトロープ剤、水、担体ビヒクルまたは溶媒、pH緩衝剤などを含む1つ以上の任意の成分をさらに含み得る。本組成物は、任意の形態であり得、例えば、組成物の成分としてさらなる組成物に組み込まれ得る。例えば、本組成物は、エマルジョンの形態であってもよく、またはエマルジョンに組み込まれてもよい。エマルジョンは、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン、油中シリコーンエマルジョンなどであり得る。本組成物自体は、そのようなエマルジョンの連続相または不連続相であり得る。
【0114】
好適な担体ビヒクルには、線状および環状の両方のシリコーン、有機油、有機溶媒、ならびにこれらの混合物が含まれる。溶媒の具体的な例は、米国特許第6,200,581号に見ることができ、これは、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる。好適な有機担体ビヒクルの例は、触媒に関して上記に示される。
【0115】
担体ビヒクルは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、エキサデアメチルヘプタシロキサン(exadeamethylheptasiloxane)、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3、ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサンペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、ならびにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、およびそれらの任意の混合物など、25℃で1~1,000mm/秒の範囲の粘度を有する低粘度オルガノポリシロキサンまたは揮発性メチルシロキサンまたは揮発性エチルシロキサンまたは揮発性メチルエチルシロキサンでもあり得る。
【0116】
本組成物は、成分(A)~(C)を、任意の成分とともに、任意の添加順序で、任意にマスターバッチで、かつ任意に剪断下で組み合わせることにより調製され得る。
【0117】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法も提供される。ヒドロシリル化反応生成物は、本組成物から形成され、本組成物中の成分のセクションに応じて様々な形態をとり得る。
【0118】
本方法は、(C’)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含む。(C’)ヒドロシリル化触媒は、上記の(C)触媒である。ヒドロシリル化反応生成物は、ケイ素結合水素原子と脂肪族不飽和基との間の付加反応により形成される。当技術分野で理解されるように、ヒドロシリル化反応は、一般に、二重結合の場合および(C’)ヒドロシリル化触媒の存在下では、-Si-H+C=C-→--Si-CH-CH-と表され得る。(C’)ヒドロシリル化触媒および本発明の方法は、例えば、従来のヒドロシリル化触媒の代わりに、またはそれに加えて、任意のヒドロシリル化反応に利用され得る。(C’)ヒドロシリル化触媒は、一般に、白金をベースとする従来のヒドロシリル化触媒よりも安価であるが、優れた触媒活性を有している。
【0119】
脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在する。以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)ケイ素結合水素原子が(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用される。第1の実施形態では、条件(1)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含む。第2の実施形態では、条件(2)は真であり、その結果、本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。最後に、第3の実施形態では、条件(1)および条件(2)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。これらの実施形態は、本組成物自体に関して上で詳細に記載される。
【0120】
脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子は、(C’)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で反応する。(A)不飽和化合物および/もしくは(B)水素化ケイ素化合物、ならびに/またはその部分は、(C’)ヒドロシリル化触媒と相互作用し得るため、上記で定義されるXまたはLになる。あるいは、またはさらに、(A)不飽和化合物および/または(B)水素化ケイ素化合物は、XまたはLを置き換えることにより(C’)ヒドロシリル化触媒と相互作用し得るため、置換により上記で定義されるXまたはLになる。
【0121】
本方法を介して調製されるヒドロシリル化反応生成物は限定されず、一般に、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物の機能である。例えば、ヒドロシリル化反応生成物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、樹脂などであり得る。ヒドロシリル化反応生成物は、流体、油、ゲル、エラストマー、ゴム、樹脂などを含み得る。ヒドロシリル化反応生成物は、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物の選択に基づいて、当技術分野で理解される任意の形態をとり得る。
【0122】
例としてのみ、以下は、本発明の方法を介して利用され得る2つの反応メカニズムである。これらの2つの反応メカニズムでは、本方法は、(A)不飽和化合物として1-オクテン、および2つの異なる(B)水素化ケイ素化合物を利用する。触媒は、(C’)ヒドロシリル化触媒である。
【化10】
【0123】
上記の反応メカニズムでは、Phはフェニルであり、Meはメチルである。当業者は、ヒドロシリル化反応生成物の所望の標的種に基づいて、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物がどのように選択され得るかを理解する。
【0124】
本方法を利用して、官能化、例えば、オレフィン官能化、シラン、またはシロキサンの形態のヒドロシリル化反応生成物を調製することができる。そのような官能化シランまたはシロキサンは、他の最終用途で、例えば、硬化性組成物、パーソナルケア組成物、または化粧品組成物などを含む別の組成物の別個の成分として利用され得る。
【0125】
ヒドロシリル化反応生成物は、ヒドロシリル化反応を介して形成される様々な副産物も含み得る。例えば、ヒドロシリル化反応生成物は、典型的には、標的種および様々な副産物を含む。ヒドロシリル化反応生成物は、他の成分、例えば、担体または溶媒も含み得るが、これは、本方法および反応がそこで実行される場合、ならびに/または本組成物がそのような成分を含む場合である。本方法は、例えば、任意の好適な精製方法を介して標的種を単離することをさらに含み得る。
【0126】
脱水素シリル化反応生成物を調製する方法も提供される。脱水素シリル化反応生成物は、本組成物から形成され、本組成物中の成分のセクションに応じて様々な形態をとり得る。
【0127】
本方法は、(C’’)シリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基およびケイ素結合水素原子を反応させて、脱水素シリル化反応生成物を得ることを含む。(C’’)シリル化触媒は、上記の(C)触媒である。脱水素シリル化反応生成物は、ケイ素結合水素原子と脂肪族不飽和基との間の脱水素シリル化反応により形成される。当技術分野で理解されるように、脱水素シリル化反応は、一般に、二重結合の場合および(C’’)シリル化触媒の存在下では、-Si-H+C=C-→-Si-C=C-+Hと表され得る。水素ガス(H)は、一般に、脱水素シリル化反応の副産物である。水素ガス(H)の遊離は、水素ガス(H)と脂肪族不飽和基との間のさらなる副反応をもたらし得、それはその場で脂肪族不飽和基を水素化し得る。ヒドロシリル化の付加反応とは異なり、脱水素シリル化は、脂肪族不飽和基の飽和を伴わない。したがって、脱水素シリル化反応は、例えば、エチレン性不飽和を付与するために、シランまたはシロキサンの官能化に特に望ましい。
【0128】
(C’’)シリル化触媒および本発明の方法は、例えば、従来のシリル化触媒の代わりに、またはそれに加えて、任意の脱水素シリル化反応に利用され得る。(C’’)シリル化触媒は、一般に、白金をベースとする従来のシリル化触媒よりも安価であるが、優れた触媒活性を有している。
【0129】
脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在する。以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、および/または(2)ケイ素結合水素原子が(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用される。第1の実施形態では、条件(1)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含む。第2の実施形態では、条件(2)は真であり、その結果、本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。最後に、第3の実施形態では、条件(1)および条件(2)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物をさらに含む。これらの実施形態は、本組成物自体に関して上で詳細に記載される。
【0130】
本方法を介して調製される脱水素シリル化反応生成物は限定されず、一般に、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物の機能である。例えば、脱水素シリル化反応生成物は、モノマー(例えば、シラン)、オリゴマー、ポリマー、樹脂などであり得る。脱水素シリル化反応生成物は、流体、油、ゲル、エラストマー、ゴム、樹脂などを含み得る。ヒドロシリル化反応生成物は、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物の選択に基づいて、当技術分野で理解される任意の形態をとり得る。一般に、脱水素シリル化反応生成物は、(A)不飽和化合物に起因する、1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む。
【0131】
一例として、(A)不飽和化合物がエチレンを含む場合、かつ(B)水素化ケイ素化合物が存在し、PhSiHである場合、脱水素シリル化反応生成物はPhSiCH=CHであり、Phはフェニルである。エチレンは広く入手可能で安価であるため、この発明の方法は、従来の技法と比較して低コストで、ビニル官能性シラン、ビニル官能性シロキサン、ビニル官能性オルガノポリシロキサン、ビニル官能性オルガノケイ素化合物などの調製を可能にする。当業者は、ヒドロシリル化反応生成物の所望の標的種に基づいて、(A)不飽和化合物、および利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物がどのように選択され得るかを理解する。例えば、(B)水素化ケイ素は、ポリマーまたは樹脂であり得、その結果、本方法を利用して、そのようなポリマーまたは樹脂にエチレン性不飽和を付与することができる。ある特定の実施形態では、脱水素シリル化反応生成物は、アルケニル官能性化合物を含む。これは、典型的には、(B)水素化ケイ素化合物が(A)不飽和化合物とは別に利用される場合である。アルケニル官能性化合物のアルケニル基は不飽和化合物から形成され、これは、脱水素シリル化反応生成物の脱水素シリル化を介してケイ素に結合する。
【0132】
したがって、本方法を利用して、官能化、例えば、オレフィン官能化、シラン、またはシロキサンの形態の脱水素シリル化生成物を調製することができる。そのような官能化シランまたはシロキサンは、他の最終用途で、例えば、硬化性組成物、パーソナルケア組成物、または化粧品組成物などを含む別の組成物の別個の成分として利用され得る。脱水素シリル化反応生成物は、1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含むため、脱水素シリル化反応生成物は、さらなる反応、例えば、ヒドロシリル化反応で利用され得る。例えば、脱水素シリル化反応生成物は、ヒドロシリル化硬化性組成物の成分であり得る。
【0133】
脱水素シリル化反応生成物は、脱水素シリル化反応を介して形成される様々な副産物も含み得る。例えば、脱水素シリル化反応生成物は、典型的には、標的種および様々な副産物を含む。脱水素シリル化反応生成物は、他の成分、例えば、担体または溶媒も含み得るが、これは、本方法および反応がそこで実行される場合、ならびに/または本組成物がそのような成分を含む場合である。本方法は、例えば、任意の好適な精製方法を介して標的種を単離することをさらに含み得る。
【0134】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」の表現、およびそこに記載される特定の化合物、組成物、または方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、他の全てのマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/または予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、または組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。
【0135】
さらに、本発明の様々な実施形態の説明に依拠する任意の範囲および部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範疇に独立してかつ集合的に含まれ、そのような値が本明細書に明示的に書かれていない場合であっても、それらの全体および/または小数値を含む全ての範囲を説明および企図すると理解される。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が本発明の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、かつそのような範囲および部分範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、および上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに詳しく説明され得、これは、個別および集合的に添付の特許請求の範囲の範疇にあり、個別および/または集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。さらに、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または変更する言語に関して、そのような言語は部分範囲、および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲には、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などが本質的に含まれ、各部分範囲は、個別および/または集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。最後に、開示された範囲内の個別の数字は、依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。例えば、「1~9」という範囲には、3などの様々な個別の整数、ならびに4.1などの小数点(または小数)を含む個別の数値が含まれ、これは、依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に適切なサポートを提供する。
【0136】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0137】
調製実施例1:リガンド1:iPrPQpy
8-ブロモ-2-(ピリド-2’-イル)キノリン(1.50g、5.26mmol)をTHF(100mL)に溶解して溶液を得る。溶液を-95℃に冷却し、ヘキサン中のBuLiの混合物(1.6M、3.6mL、5.76mmol)を15分の間にわたって滴下すると、淡赤色に変化し、ヘキサン中のBuLiの混合物の添加が完了すると暗くなる。フラスコを-78℃に温め、-78℃で20分間撹拌する。フラックの内容物を、カニューレを介して、-95℃で撹拌したTHF(100mL)中のPrPCl(806mg、5.28mmol)の溶液に10分間かけて添加する。添加が完了したら、得られた溶液を-95℃で20分間撹拌して、暗緑色の溶液を得て、それをゆっくりと室温に温めると、赤色に変化する。この溶液を室温で48時間撹拌した後、全ての揮発物を減圧下で除去して、暗赤色の残留物を得る。残留物をトルエン(100mL)に溶解し、これを塩基性アルミナのプラグでろ過して、黄色の溶液を得る。揮発物を減圧下で除去すると、リガンド1がオレンジ色の濃い油として得られ、放置すると固体化した。リガンド1は、以下の構造を有し、
【化11】
式中、各Rは、イソプロピル基である。
【0138】
調製実施例2:リガンド2:ArFPQpy
8-ブロモ-2-(ピリド-2’-イル)キノリン(500mg、1.75mmol)をTHF(10mL)に溶解して、溶液を得る。溶液を十分に冷えたグローブボックスで凍結させた後、ヘキサン中のBuLiの混合物(1.6M、1.15mL、1.84mmol)を5分の間にわたって滴下し、溶液が解凍すると混合物が得られて、赤色に変化する。混合物を3分間撹拌し、十分に冷えたグローブボックスで再凍結させる。溶液を十分に冷えたグローブボックスから取り出し、解凍しながら、解凍THF(10mL)中のビス(ペンタフルオロフェニルホスフィン)臭化物(783mg、1.76mmol)の撹拌溶液に5分の間にわたって滴下し、これをまた、十分に冷えたグローブボックスで凍結させる。滴下が完了すると、得られた溶液を室温までゆっくり温めながら撹拌する。この溶液を室温で16時間撹拌した後、全ての揮発物を減圧下で除去して、淡い残留物を得た。淡い残留物をCHCl(2×30mL)で抽出し、その画分を合わせ、全ての揮発物を除去して、淡黄色の残留物を得、これを冷えたペンタン(2×10mL)で洗浄および収集して、オフホワイトの固体としてのリガンド2を得る(890mg、MW570.32、1.56mmol、89%収率)。リガンド2は、以下の構造を有し、
【化12】
式中、各Rは、テトラフルオロフェニル基である。
【0139】
調製実施例1:錯体1:FeBriPrPQpy)
THF中の無水FeBr(0.216g、1mmol)を、20mLのTHF中のリガンド1(0.322g、1mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌して、反応混合物を得る。反応混合物をペンタンで希釈して、錯体1として固体の緑色の錯体の沈殿を引き起こす。錯体1のX線品質の結晶は、ペンタンの蒸気拡散から得られる。錯体1は、以下の構造を有する。
【化13】
【0140】
調製実施例2:錯体2:FeBrArFPQpy)
THF中の無水FeBr(0.216g、1mmol)を、20mLのTHF中のリガンド2(0.322g、1mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌して、反応混合物を得る。反応混合物をペンタンで希釈して、錯体2として固体のレフ錯体の沈殿を引き起こす。錯体2のX線品質の結晶は、ペンタンの蒸気拡散から得られる。錯体2は、以下の構造を有する。
【化14】
【0141】
調製例3:錯体3:CoCliPrPQpy)
THF中の無水CoCl(0.130g、1mmol)を、20mLのTHF中のリガンド1(0.322g、1mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌して、反応混合物を得る。反応混合物をペンタンで希釈して、錯体3として固体の灰緑色の錯体の沈殿を引き起こす。錯体3のX線品質の結晶は、ペンタンの蒸気拡散から得られる。錯体3は、以下の構造を有する。
【化15】
【0142】
調製例4:錯体4:CoBriPrPQpy)
THF中の無水CoBr(0.219g、1mmol)を、20mLのTHF中のリガンド1(0.322g、1mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌して、反応混合物を得る。反応混合物をペンタンで希釈して、錯体4として固体の灰緑色の錯体の沈殿を引き起こす。錯体4のX線品質の結晶は、ペンタンの蒸気拡散から得られる。錯体4は、以下の構造を有する。
【化16】
【0143】
調製例5:錯体5:CoClArFPQpy)
THF中の無水CoCl(0.130g、1mmol)を、20mLのTHF中のリガンド2(0.570g、1mmol)の溶液に添加し、室温で1時間撹拌して、反応混合物を得る。反応混合物をペンタンで希釈して、錯体5として固体の緑色の錯体の沈殿を引き起こす。錯体5のX線品質の結晶は、ペンタンの蒸気拡散から得られる。錯体5は、以下の構造を有する。
【化17】
【0144】
実施例1~7:
実施例1~7では、(C’’)シリル化触媒の存在下で(A)不飽和化合物を(B)水素化ケイ素化合物と反応させて、脱水素シリル化反応生成物を得る。(C’’)シリル化触媒は、錯体1~5に関連する調製実施例1~5で作製されたある特定の錯体に対応するが、それらの活性化された形態では、その場で活性化剤と反応する。これらの実施例1~7の各々では、(A)不飽和化合物は、エチレンを含む。以下の表1は、実施例1~7の各々で利用される特定の(B)水素化ケイ素および(C’’)シリル化触媒を示す。また、表1には、その全体的な変換に関して、脱水素シリル化(-CH=CH)またはヒドロシリル化(-CH-CH)を受けた脱水素シリル化反応生成物の相対量を含む全体的な変換も含まれる。
【表1】
【0145】
水素化ケイ素化合物1は、トリフェニルシランである。
【0146】
水素化ケイ素化合物2は、トリエトキシシランである。
【0147】
水素化ケイ素化合物3は、ヘプタメチルトリシロキサンである。
【0148】
活性化錯体1は、活性化剤として2.2当量のNaBEtHとその場で反応した、上記で調製した錯体1である。
【0149】
活性化錯体5は、活性化剤として2.2当量のNaBEtHとその場で反応した、上記で調製した錯体5である。
【0150】
活性化された錯体3は、活性化剤として2.2当量のNaBEtHとその場で反応した、上記で調製した錯体3である。
【0151】
実施例1~7では、各(C’’)シリル化触媒を、2mol%の量で利用する(全体に基づいて(C’’シリル化触媒、およびその中の金属だけでなく)。各(B)水素化ケイ素化合物を、0.5mmolの量で利用する。各反応を、2atmのエチレンで飽和した85mLのFischer-Porter反応器およびビヒクルとしての2mLのトルエンで実行する。より具体的には、反応器に(B)水素化ケイ素化合物、トルエン、および(C’’)シリル化触媒を満たした後、反応器の内容物を凍結させ、ヘッドスペースを空にする。次いで、反応器のヘッドスペースに2atmのエチレンを充填し、反応器を一定圧力のエチレンで70℃に加熱する。2時間後、反応器の内容物を空気に曝露して、反応を停止し、シリカゲルのプラグでろ過し、真空下で揮発物を除去することにより精製する。
【0152】
上記の表1に例示するように、Coに基づく(C’’)シリル化触媒は、Feに基づく(C’’)シリル化触媒よりも、脱水素シリル化に対する親和性がより高かった(より多くの(-CH=CH)の生成を達成した)。
【0153】
実施例8~12:
実施例8~12では、(C)触媒の存在下で(A)不飽和化合物を(B)水素化ケイ素化合物と反応させて、反応生成物を得る。触媒は、反応生成物の形態に基づいて、(C’)ヒドロシリル化触媒および/または(C’’)シリル化触媒と見なされ得る。(C)触媒は、錯体1~5に関連する調製実施例1~5で作製されたある特定の錯体に対応する。以下の表2は、実施例8~12の各々で利用される特定の(A)不飽和化合物、(B)水素化ケイ素、および(C)触媒を示す。また、表1には、その全体的な変換に関して、ヒドロシリル化(-CHCH-)、脱水素シリル化(-CH=CH-)、または単なる水素化(-CH-CH)を受けた脱水素シリル化反応生成物の相対量を含む、全体的な変換も含まれる。
【0154】
実施例8~12の各々では、(A)不飽和化合物は、以下の構造を有する。
【化18】
【0155】
実施例8~12の各々では、(B)水素化ケイ素化合物は、以下の構造を有する。
【化19】
【表2】
【0156】
上記の表2に例示するように、Coに基づく(C)触媒は、Feに基づく(C)触媒よりも、脱水素シリル化に対する親和性がより高かった(より多くの(-CH=CH-)の生成を達成した)。同じ(C)触媒を利用する実施例間の相違は、典型的には、反応中のパラメーターの違いに起因する。例えば、実施例8は25℃で実行し、実施例9は65℃で実行し、実施例10は-30~25℃で実行し、実施例11は65℃で実行し、実施例12は65℃で実行する。
【0157】
実施例8~9では、各(C)触媒を1mol%の量で利用する(全体に基づいて(C’’シリル化触媒、およびその中の金属だけでなく)。実施例10~12では、各(C)触媒を0.5mol%の量で利用する。
【0158】
本発明を例示的に説明してきたが、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質であることを意図していることを理解されたい。明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。本発明は、具体的に説明された以外の方法で実施され得る。