(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/292 20060101AFI20221110BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20221110BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01S7/292
G01S13/931
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2020193004
(22)【出願日】2020-11-20
(62)【分割の表示】P 2020543127の分割
【原出願日】2020-04-01
【審査請求日】2020-11-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019083109
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川路 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐東 将行
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220856(JP,A)
【文献】特開2002-006033(JP,A)
【文献】特開2007-107912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、
を備える電子機器であって、
前記制御部は、前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信
号から探査情報を算出し、
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含み、
前記制御部は、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更する、電子機器。
【請求項2】
電子機器の制御方法であって、
送信波を送信アンテナによって送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出するステップと、
前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信
号から探査情報を算出するステップと、
を含み、
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含み、
前記物体を検出するステップは、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更するステップを含む、方法。
【請求項3】
電子機器に、
送信波を送信アンテナによって送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出するステップと、
前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信
号から探査情報を算出するステップと、
を実行させ、
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含み、
前記物体を検出するステップは、前記電子機器に、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更するステップを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年4月24日に日本国に特許出願された特願2019-83109の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0004】
また、近年、自動車などの車両において、各種情報を外部と通信する技術も提案されている。例えば特許文献1は、自動車が走行したことにより得られた環境データ、及び自動車を操作することにより得られた学習データを、外部サーバに送信することを開示している。最近では、例えばコネクテッドカーのような技術の進展とともに、自動車のような車両において外部と通信する技術の重要性はますます高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
一実施形態に係る電子機器は、送信波を送信する送信アンテナと、前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信号から探査情報を算出する。
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含む。
前記制御部は、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更する。
【0007】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波を送信アンテナによって送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出するステップと、
前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信号から探査情報を算出するステップと、
を含む。
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含む。
前記物体を検出するステップは、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更するステップを含む。
【0008】
一実施形態に係るプログラムは、
電子機器に、
送信波を送信アンテナによって送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出するステップと、
前記電子機器の位置情報に関連する、当該電子機器の位置において送信した前記送信信号及び当該電子機器の位置において受信した前記受信信号から探査情報を算出するステップと、
を実行させる。
前記探査情報は、前記電子機器の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含む。
前記物体を検出するステップは、前記電子機器に、前記探査情報に含まれるノイズレベルに関する情報に基づいて、前記物体を検出する点の電力に関する値と前記ノイズレベルの電力に関する値との差を比較するパラメータの値を変更するステップを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
【
図2】第1実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
【
図4】第1実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係るシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る情報処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】第1実施形態に係る電子機器による物体検出を説明する図である。
【
図10】第1実施形態に係る電子機器による物体検出を説明する図である。
【
図11】第1実施形態に係る電子機器による物体検出を説明する図である。
【
図12】第1実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係る情報処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図14】第2実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図15】第1実施形態に係るデータベースの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、検出の精度を向上させることが望ましい。本開示は、物体を検出する精度の向上に資する電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することに関する。一実施形態によれば、物体を検出する精度の向上に資する電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体を検出することができる。このために、第1実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、第1実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、第1実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、第1実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。第1実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、第1実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、第1実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。第1実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、第1実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。
【0013】
まず、第1実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、第1実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、第1実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、第1実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば
図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体を検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。第1実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200を検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、第1実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、第1実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、第1実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。
【0025】
図2に示すように、第1実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。第1実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、第1実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A~30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、到来角推定部13、物体検出部14、検出範囲決定部15、及びパラメータ設定部16を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0028】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
第1実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。第1実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
第1実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。このようなパラメータについては、さらに後述する。
【0033】
第1実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、第1実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0034】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10(パラメータ設定部16)から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0035】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0036】
第1実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2など、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。第1実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、第1実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、第1実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。第1実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。第1実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号生成部21は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号生成部21は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0043】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。例えば、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、パラメータ設定部16によって選択された周波数としてよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、第1実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、第1実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、第1実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。第1実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、
図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0049】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものである。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0050】
第1実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0052】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0053】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0054】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0055】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0056】
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0057】
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、定誤差確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0058】
このように、第1実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200を検出することができる。
【0059】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部12に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
【0060】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0061】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部12は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、到来角推定部13に供給されてよい。また、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
【0062】
到来角推定部13は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部13は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0063】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部13によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部14に供給されてよい。
【0064】
物体検出部14は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部14は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、検出範囲決定部15に供給されてよい。また、物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、ECU50に供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0065】
検出範囲決定部15は、送信信号及び受信信号によって送信波Tを反射する物体を検出する範囲(以下、「物体検出範囲」とも記す)を決定する。ここで、検出範囲決定部15は、例えば電子機器1が搭載された移動体100の運転者などによる操作に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、検出範囲決定部15は、移動体100の運転者などによって駐車支援ボタンが操作された場合、駐車支援に適切な複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えばECU50からの指示に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、移動体100が後進しようとしているとECU50によって判定された場合、検出範囲決定部15は、ECU50からの指示に基づいて、移動体100が後進する際に適切な複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えば移動体100におけるステアリング、アクセル、又はギアなどの操作状態の変化に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。さらに、検出範囲決定部15は、物体検出部14によって物体を検出した結果に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。
【0066】
パラメータ設定部16は、送信波Tを反射波Rとして反射する物体を検出する送信信号及び受信信号を規定する各種のパラメータを設定する。すなわち、パラメータ設定部16は、送信アンテナ25から送信波Tを送信するための各種のパラメータ、及び受信アンテナ31から反射波Rを受信するための各種のパラメータを設定する。
【0067】
特に、第1実施形態において、パラメータ設定部16は、上述の物体検出範囲において物体の検出を行うために、送信波Tの送信及び反射波Rの受信に係る各種のパラメータを設定してよい。例えば、パラメータ設定部16は、反射波Rを受信して物体検出範囲における物体を検出するために、反射波Rを受信したい範囲などを規定してもよい。また、例えば、パラメータ設定部16は、複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信して物体検出範囲における物体を検出するために、送信波Tのビームを向けたい範囲などを規定してもよい。その他、パラメータ設定部16は、送信波Tの送信及び反射波Rの受信を行うための種々のパラメータを設定してよい。
【0068】
パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、信号生成部21に供給されてよい。これにより、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて、送信波Tとして送信される送信信号を生成することができる。パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、物体検出部14に供給されてもよい。これにより、物体検出部14は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて決定される物体検出範囲において、物体を検出する処理を行うことができる。
【0069】
第1実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。第1実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0070】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、第1実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0071】
次に、第1実施形態に係る電子機器1が自動車のような移動体100に設置される場合の構成について説明する。
【0072】
図4は、第1実施形態に係る電子機器1が自動車のような移動体100に設置される場合の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2に示した電子機器1は、センサ5と、ECU50とを備えている。
図4に示すセンサ5と、ECU50とは、それぞれ、
図2に示したセンサ5と、ECU50と同じとしてよい。また、
図4に示すように、電子機器1は、自動車のような移動体100に設置される場合、
図2に示したセンサ5及びECU50の他に、さらに、位置取得部60、及び通信部70を備えてよい。
【0073】
図4に示すセンサ5及びECU50については、
図2において説明したとおりである。
【0074】
位置取得部60は、位置取得部60が存在する位置に関する情報を取得する。位置取得部60が存在する位置とは、例えば、センサ5、電子機器1、又は自動車のような移動体100の位置としてもよい。位置取得部60は、GNSS(Global Navigation Satellite System)技術等に基づいて、位置情報を取得するものとしてよい。GNSS技術は、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo、及び準天頂衛星(QZSS)等のいずれか衛星測位システムを含んでよい。位置取得部60は、例えばGPSモジュールなどの位置情報所得デバイスとしてよい。位置取得部60は、GPSモジュールなどに限定されず、位置に関する情報を取得可能な任意のデバイスによって構成してもよい。
【0075】
位置取得部60が取得する位置情報は、例えば、緯度情報、経度情報、及び高度情報の少なくともいずれかの情報を含んでよい。位置取得部60が取得する位置情報は、ECU50に供給される。位置取得部60から供給される位置情報に基づいて、ECU50は、電子機器1(又はセンサ5若しくは移動体100)の現在位置などを把握することができる。
【0076】
通信部70は、有線又は無線により通信するためのインタフェースである。第1実施形態の通信部70によって行われる通信方式は無線通信規格としてよい。例えば、無線通信規格は2G、3G、4G、及び5G等のセルラーフォンの通信規格を含む。例えばセルラーフォンの通信規格は、LTE(Long Term Evolution)、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、PDC(Personal Digital Cellular)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)、及びPHS(Personal Handy-phone System)等を含む。例えば、無線通信規格は、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、及びNFC(Near Field Communication)等を含む。通信部70は、上記の通信規格の1つ又は複数をサポートすることができる。
【0077】
通信部70は、例えば外部のサーバのような情報処理装置と有線通信及び/又は無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。ここで、通信部70が行う通信とは、各種データの送信及び受信の少なくとも一方としてよい。通信部70は、例えば、位置取得部60が取得した電子機器1の位置を、例えば外部のサーバのような情報処理装置に送信することができる。また、通信部70は、例えば、センサ5が検出した各種の情報の少なくともいずれかを、例えば外部のサーバのような情報処理装置に送信することができる。また、通信部70は、例えば、外部のサーバのような情報処理装置が各種の情報を受信することができる。
【0078】
次に、第1実施形態に係る電子機器1を含むシステムの構成例について説明する。
【0079】
図5は、第1実施形態に係る電子機器1を含むシステムの構成の一例を概略的に示す図である。
図5に示すように、第1実施形態に係るシステムは、電子機器1と、情報処理装置80と、を含んで構成される。
【0080】
図5に示すように、移動体100Aには、センサ5Aを含む電子機器1Aが設置されている。移動体100Bには、センサ5Bを含む電子機器1Bが設置されている。移動体100Cには、センサ5Cを含む電子機器1Cが設置されている。以下、移動体100Aと、移動体100Bと、移動体100Cとをそれぞれ区別しない場合、単に「移動体100」と記す。また、センサ5Aと、センサ5Bと、センサ5Cとをそれぞれ区別しない場合、単に「センサ5」と記す。また、電子機器1Aと、電子機器1Bと、電子機器1Cとをそれぞれ区別しない場合、単に「電子機器1」と記す。電子機器1は、
図2及び
図4において説明したものと同じとしてよい。
【0081】
図5に示すシステムは、それぞれ電子機器1を設置した移動体100を3つ含む例を示している。しかしながら、第1実施形態に係るシステムは、電子機器1を設置した移動体100を少なくとも1つ含んで構成してよい。
図5に示すように、それぞれの移動体100に設置された電子機器1は、情報処理装置80と無線による通信を行うことができる。このような通信により、電子機器1と、情報処理装置80とは、各種のデータをやり取りすることができる。
【0082】
情報処理装置80は、後述するように、各種のサーバ又はクラウドサーバ等のような任意の情報処理装置(例えばコンピュータ)として構成してよい。電子機器1と、情報処理装置80とは、例えばネットワークを介して接続されてもよい。
図5に示すシステムは、情報処理装置80を1つのみ含む例を示している。しかしながら、第1実施形態に係るシステムにおいて、情報処理装置80を2つ以上含んでもよい。この場合、例えば複数の情報処理装置80同士は、有線及び/又は無線によって互いに通信可能に構成してもよい。
【0083】
図6は、第1実施形態に係る情報処理装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図6は、
図5に示した情報処理装置80の一例の構成を、より詳細に示している。
【0084】
図6に示すように、情報処理装置80は、制御部82と、受信部84と、送信部86と、記憶部88とを備えている。
【0085】
制御部82は、情報処理装置80の各機能ブロックをはじめとして、情報処理装置80の全体を制御及び/又は管理する少なくとも1つのプロセッサを含む。制御部82は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU等の少なくとも1つのプロセッサを含んで構成され、その機能を実現する。このようなプログラムは、例えば記憶部88、又は情報処理装置80に接続された外部の記憶媒体等に格納される。
【0086】
受信部84は、有線及び/又は無線によって他の装置から各種の情報を受信可能に構成してよい。例えば、受信部84は、
図4に示した電子機器1の通信部70から、電子機器1のセンサ5による検出結果に基づく情報を受信してよい。また、受信部84は、情報処理装置80以外の他の情報処理装置等から各種の情報を受信してもよい。
【0087】
送信部86は、有線及び/又は無線によって他の装置に各種の情報を送信可能に構成してよい。例えば、送信部86は、制御部82による処理の結果に基づく情報、及び/又は、記憶部88から読み出した情報などを、
図4に示した電子機器1の通信部70に送信してよい。また、送信部86は、情報処理装置80以外の他の情報処理装置等に各種の情報を送信してもよい。
【0088】
受信部84及び/又は送信部86は、有線又は無線により通信するためのインタフェースである。第1実施形態の受信部84及び/又は送信部86によって行われる通信方式は無線通信規格としてよい。例えば、無線通信規格は2G、3G、4G、及び5G等のセルラーフォンの通信規格を含む。例えばセルラーフォンの通信規格は、LTE(Long Term Evolution)、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、PDC(Personal Digital Cellular)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)、及びPHS(Personal Handy-phone System)等を含む。例えば、無線通信規格は、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、及びNFC(Near Field Communication)等を含む。受信部84及び/又は送信部86は、上記の通信規格の1つ又は複数をサポートすることができる。
【0089】
記憶部88は、制御部82において実行されるプログラム、及び、制御部82において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部88は、制御部82のワークメモリとして機能してよい。記憶部88は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部88は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部88は、上述のように、制御部82として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0090】
次に、第1実施形態に係るシステムにおける電子機器1及び情報処理装置80の動作について説明する。
【0091】
図5に示すように、第1実施形態に係る電子機器1は、各地を走行する移動体100のそれぞれに設置されたセンサ5による検出結果に基づく情報を、情報処理装置80に送信する。すなわち、第1実施形態に係るシステムにおいて、様々な場所において電子機器1のセンサ5によって検出された結果に基づく情報は、情報処理装置80に集約される。
図5に示す移動体100のそれぞれの位置は模式的に例示したものである。複数の移動体100は、それぞれ、任意の位置にあるものとしてよく、互いに近くに存在してもよいし、違いに遠隔に存在してもよい。情報処理装置80は、集約した情報を統計処理した結果に基づいて、電子機器1が物体検出の判定に用いられるパラメータを生成する。そして、情報処理装置80は、このようにして生成されたパラメータを、それぞれの移動体100に搭載された電子機器1に送信する。このようにして、電子機器1は、生成されたパラメータに基づいて、物体を検出したか否かを判定することができる。以下、このような動作について、より詳細に説明する。また、
図5において、移動体1及びセンサ5の数は3つであるが、本開示において移動体1及びセンサ5の数は任意でよい。
【0092】
図7は、第1実施形態に係るシステムにおいて、電子機器1が行う動作を説明するフローチャートである。
図7は、電子機器1が、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を、情報処理装置80に送信するまでの動作について説明する。
図7に示す動作が開始する際、電子機器1は移動体100に搭載され、移動体100は例えば車道を走行中であるものとする。また、
図7は、
図5に示したような複数の移動体100のいずれかに搭載された電子機器1が行う動作を示すものとしてよい。
【0093】
図7に示す動作が開始すると、電子機器1の制御部10は、送信アンテナ25から送信波を送信する(ステップS1)。ステップS1において電子機器1が送信する送信波は、例えば
図3に示したようなチャープ信号としてよい。
【0094】
ステップS1において送信波が送信されたら、制御部10は、送信波が例えば物体によって反射された反射波を受信アンテナ31から受信する(ステップS2)。上述のように、電子機器1において、送信信号及び受信信号に基づいてビート信号を生成することができる。また、制御部10は、ビート信号に距離FFT処理などを行うことで、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断することができる。このように、電子機器1は、送信波として送信される送信信号及び前記送信波が反射された反射波として受信される受信信号に基づいて、送信波を反射する物体を検出することができる。
【0095】
ここで、制御部10は、送信信号及び受信信号に基づいて、検出された物体の数を判定してもよい。この場合に判定される「検出された物体の数」は、その時点で電子機器1の位置において検出された物体の数を表している。また、制御部10は、送信信号及び受信信号に基づく信号のノイズレベル又は検出物体SNR(信号帯雑音比、信号品質)等、すなわち物体を検出する際のノイズレベルを判定してもよい。この場合に判定される「ノイズレベル又は検出物体SNR等」は、その時点で電子機器1の位置におけるノイズレベル又は検出物体SNR等を表している。このようにして判定された、検出された物体の数、及び/又は、ノイズレベル若しくは検出物体SNR等の情報は、例えば一時的に記憶部40に記憶してもよい。
【0096】
ステップS2において反射波を受信したら、電子機器1は、位置取得部60から自機器(電子機器1、センサ5、又は移動体100)の位置の情報を取得する(ステップS3)ステップS3において、位置取得部60は、例えばGPS等の衛星測位システムによって位置を取得してよい。
【0097】
ステップS3において位置情報が取得されたら、電子機器1は、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を取得する(ステップS4)。ここで、探査情報とは、上述のステップS2において説明したように、送信信号及び受信信号に基づく信号のノイズレベル、又は検出物体SNR(信号帯雑音比、信号品質)等に関する情報としてよい。また、探査情報とは、上述のステップS2において説明したように、送信信号及び受信信号に基づいて検出された物体の数に関する情報としてよい。探査情報とは、これらの情報の少なくともいずれかを含むものとしてもよい。ステップS4において、電子機器1は、例えば記憶部40に記憶された探査情報を取得してもよい。なお、探査情報として、送信信号及び受信信号の少なくとも一方の情報としてもよい。例えば、電子機器1は、受信信号の強度、及び/又は、受信信号の周波数に関するノイズ分布などを探査情報としてもよい。
【0098】
ステップS4において探査情報を取得したら、電子機器1は、当該探査情報を、ステップS3において取得した位置情報とともに、情報処理装置80に送信する(ステップS5)。ステップS5において、電子機器1は、通信部70から、情報処理装置80の受信部84に送信してよい。
【0099】
このように、第1実施形態において、電子機器1は、電子機器1の位置情報とともに、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を、情報処理装置80に送信する。このように送信を行う制御は、例えば制御部10及び/又はECU50によって実行してよい。ここで、探査情報は、電子機器1の位置における物体を検出する際のノイズレベルに関する情報を含んでもよい。また、探査情報は、電子機器1の位置から検出される物体の数に関する情報を含んでもよい。
【0100】
上述のように、
図7は、
図5に示した複数の移動体100のいずれかに搭載された電子機器1が行う動作を示すものとしてよい。すなわち、
図5に示した複数の移動体100に搭載された電子機器1は、それぞれに
図7に示す動作を行ってよい。このようにして、第1実施形態に係るシステムにおける情報処理装置80は、通信する電子機器1によって、各時点における各位置の探査情報を収集することができる。第1実施形態に係るシステムにおいて、情報処理装置80は、任意の数の電子機器1から探査情報を収集することができる。このため、情報処理装置80は、各時点における様々な位置の探査情報を収集することができる。
【0101】
図8は、第1実施形態に係るシステムにおいて、情報処理装置80が行う動作を説明するフローチャートである。
図8は、情報処理装置80が、電子機器1から情報を受信して処理した結果を、電子機器1に送信するまでの動作について説明する。
図8に示す動作が開始する際、情報処理装置80は、少なくとも1つの電子機器1と通信ができる状態にあるものとする。また、
図8は、
図5に示したような情報処理装置80が行う動作を示すものとしてよい。
【0102】
図8に示す動作が開始すると、情報処理装置80の受信部84は、少なくとも1つの電子機器1から、当該電子機器1の位置情報とともに、探査情報を受信する(ステップS11)。ステップS11において、受信部84が受信する探査情報は、当該少なくとも1つの電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報としてよい。ステップS11において、情報処理装置80は、任意の数の電子機器1から位置情報及び探査情報を受信してよい。例えば、情報処理装置80は、種々の場所を走行中若しくは停止中の移動体100に搭載された多数の電子機器1から、それぞれの位置情報及び探査情報を受信してよい。
【0103】
ステップS11において情報処理装置80(の受信部84)が受信する電子機器1の位置情報及び探査情報は、
図7に示すステップS5において電子機器1(の通信部70)から送信されたものとしてよい。すなわち、ステップS11において受信部84が受信する探査情報とは、電子機器1の位置における物体を検出する際のノイズレベルに関する情報としてよい。また、ステップS11において受信部84が受信する探査情報とは、電子機器1の位置から検出される物体の数に関する情報としてもよい。
【0104】
ステップS11において受信した電子機器1の位置情報及び探査情報は、記憶部88などに記憶させてよい。この場合、制御部82は、電子機器1の位置における探査情報を、電子機器1の位置情報に関連付けて、記憶部88に記憶させてもよい。このようにして、情報処理装置80は、多数の電子機器1から受信するそれぞれの位置情報及び探査情報を所定の期間に渡って蓄積することができる。したがって、情報処理装置80は、各位置における各時点の探査情報のデータベースを構築することができる。
【0105】
例えば、制御部82は、ある地域の地図を仮想的に例えば数メートル四方のメッシュ状に区分し、区分した領域ごとに、当該区分に関連付けられた探査情報を、記憶部88に蓄積してもよい。また、仮想的に区分した領域は、例えば1メートル四方としたり、数キロメートルとしたり、任意の大きさとしてよい。仮想的に区分した領域の形状は、メッシュ状に限定されるものではなく、三角型又はハニカム形状など、任意の形状としてよい。また、制御部82は、当該区分に関連付けられた位置の探査情報を、所定の時間ごとに記憶部88に蓄積してもよい。例えば、制御部82は、位置X1(又は領域X1)において、1分ごと、3分ごと、5分ごと、10分ごと、又は30分ごとなどのように、所定の時間ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。例えば、制御部82は、位置X1(又は領域X1)において、午前6時から午前7時まで、午前7時から午前8時まで、午前8時から午前9時までなどのように、1時間ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。また、例えば、制御部82は、位置X2(又は領域X2)において、位置X3(又は領域X3)においてなどのように、前述同様に1時間ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。
【0106】
また、制御部82は、各位置(又は領域)において、1時間ごとではなく、所定のピークタイムの時間帯、及び/又は、所定のアイドルタイムの時間帯ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。さらに、制御部82は、各位置(又は領域)において、例えば各曜日ごと、各日にちごと、又は各月ごとなどに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。また、制御部82は、各位置(又は領域)において、例えば春、夏、秋、又は冬などの季節ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。さらに、制御部82は、各位置(又は領域)において、天候別(すなわち、晴天時時又は雨天時ごと)に、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。その他、制御部82は、各条件又は状況ごとに、探査情報を記憶部88に蓄積してもよい。
【0107】
ステップS11において電子機器1の位置情報及び探査情報を受信すると、情報処理装置80の制御部82は、当該探査情報に統計処理を行う(ステップS12)。ステップS12において、制御部82が行う探査情報の統計処理とは、例えば平均値を算出する等の処理としてよい。例えば、ステップS12において、制御部82は、上述した各位置(又は領域)において、上述のような時間帯ごとに、探査情報の平均値を算出してよい。ステップS12において、制御部82が探査情報を統計処理されたものを、以下、「統計情報」と記す。例えば、探査情報が、電子機器1の位置において物体を検出する際のノイズレベルに関する情報である場合、統計情報は、その位置におけるその時間帯の平均的なノイズレベルを示す情報となる。また、例えば、探査情報が、電子機器1の位置から検出される物体の数に関する情報である場合、統計情報は、その位置においてその時間帯に検出される物体の平均的な数を示す情報となる。また、制御部82が行う探査情報の統計処理として、平均値を算出する処理以外に、中央値又は最頻値などを算出する処理を用いてもよい。
【0108】
ステップS12において統計情報が生成されたら、制御部82は、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータを、統計情報に応じて生成する(ステップS13)。例えば、ステップS13において、制御部82は、位置X1(又は領域X1)において、1分ごと、3分ごと、5分ごと、10分ごと、又は30分ごとなどのように、所定の時間ごとに、統計情報に応じてパラメータを生成してよい。また、ステップS13において、制御部82は、位置X1(又は領域X1)において、1時間ごと、数時間ごと、1日ごと、又は数日ごとなどのように、所定の時間ごとに、統計情報に応じてパラメータを生成してもよい。
【0109】
ここで、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータの例について説明する。
【0110】
(第1のパラメータ)
図2において説明したように、電子機器1において、送信アンテナ25から送信信号が送信される。また、電子機器1において、送信信号が物体に反射した反射波の少なくとも一部は、受信アンテナ31から受信信号として受信されるものとする。この受信信号は、LNA32などにおいて増幅処理され、AD変換部35を経ることにより、デジタル信号となる。このデジタル信号は、距離FFT処理部11において、距離FFT処理される。このようにして、物体検出部14(制御部10)は、物体までの距離を推定することができる。
【0111】
ここで、距離FFT処理部11において距離FFT処理された後のデジタル信号は、例えば
図9に示すようになる。電子機器1の物体検出部14は、例えば
図9に示すような信号を用いて、物体の有無を判定することができる。
図9は、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例を示す図である。
図9の横軸は距離を表し、縦軸は信号の電力を示す。例えば、
図9において電力がピークとなる点P1に対応する距離に、送信波を反射した物体が存在し得ると判定することができる。
【0112】
このような判定を行う際、例えば
図9の範囲W1及び範囲W2によって示すように、物体を検出したか否かを判定するポイントの両サイドにおいて、ノイズ電力を見積もる範囲(以下、「ノイズ電力見積もり範囲」とも記す)を設ける。そして、これらの範囲W1及び範囲W2のようなノイズ電力見積もり範囲における電力を平均化し、これをノイズ電力Pnとする。次に、物体を検出したか否かを判定するポイント(例えばピークとなる点P1)の電力Pdと、ノイズ電力Pnとを比較する(その差は
図9においてΔPとして示す)。これらを比較した差ΔPが所定のパラメータ値x[dB]より大きい場合、電子機器1は、そのポイントにおいて(そのポイントに対応する距離の地点に)物体を検出したと判定することができる。一方、差ΔPがパラメータ値x[dB]より大きくない場合、電子機器1は、そのポイントにおいて(そのポイントに対応する距離の地点に)物体を検出していないと判定することができる。したがって、本例の場合、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータは、差ΔPと大きさが比較されるパラメータ値xとすることができる。
【0113】
しかしながら、電子機器1が動作する周辺環境によっては、上述のようなパラメータを用いて物体を検出したか否かを適切に判定できない場合も想定される。例えば、電子機器1と同じ周波数帯を使用する他のレーダが周辺に存在するような環境においては、上述のようなパラメータによって物体を検出したか否かを適切に判定できないことが想定される。また、例えば、周辺環境が見通しの悪い環境(狭い道又は周辺に建物が多い路地など)においても、上述のようなパラメータによって物体を検出したか否かを適切に判定できないことが想定される。
【0114】
このような環境において、上述のように距離FFT処理された後のデジタル信号は、本来であれば
図10において実線で示すグラフV1のようになるはずが、ノイズが多くなるため
図10において破線で示すグラフV2のようになる。
図10は、
図9と同様に、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例を示す図である。
図10の横軸は距離を表し、縦軸は信号の電力を示す。
図10において、実線のグラフV1は、周辺に電子機器1と同じ周波数種を使用する他のレーダなどが存在しないか、又は、周辺環境の見通しが良い場合に、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例を示す。一方、
図10において、破線のグラフV2は、周辺に電子機器1と同じ周波数種を使用する他のレーダなどが存在するか、及び/又は、周辺環境の見通しが良くない場合に、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例を示す。
【0115】
図10に示すV2のようにノイズの多い環境においては、
図9において説明した差ΔPと大きさが比較されるパラメータ値xをそのまま用いると、実際には大きなピークを有しているにも関わらず、物体を検出していないと判定してしまうおそれがある。したがって、この場合、電子機器1において適切に物体を検出できるように、情報処理装置80の制御部82は、例えばパラメータ値xを小さくする。
図8に示したステップS12において、探査情報が統計処理(例えば平均化)されて統計情報が生成される。第1実施形態において、情報処理装置80の制御部82は、例えば、統計処理された探査情報(統計情報)のノイズレベルが高くなるにつれて、パラメータ値xを小さくしてもよい。統計処理された探査情報のノイズレベルの高さと、パラメータ値xを小さくする度合いとの関係は、例えば試験などに基づいて予め定めたものを記憶部88に記憶してもよい。また、制御部82は、統計処理された探査情報(統計情報)のノイズレベルが高くない場合、パラメータ値xを小さくしなくてもよい。逆に、制御部82は、統計処理された探査情報(統計情報)のノイズレベルが低い場合、パラメータ値xを大きくしてもよい。
【0116】
図8に示すステップS13においては、上述のように、統計情報に応じて、電子機器1が物体を検出したか否かを判定する際のパラメータを生成する。制御部82は、電子機器1の種々の位置(又は領域)において、上述した種々の時間帯ごとに、電子機器1が物体を検出したか否かを判定する際のパラメータを生成してよい。
【0117】
ステップS13においてパラメータが生成されたら、情報処理装置80の送信部86は、当該生成されたパラメータを、電子機器1に送信する(ステップS14)。ステップS14において、情報処理装置80の送信部86は、生成されたパラメータを、電子機器1の通信部70に送信してよい。ステップS14において、情報処理装置80は、ある位置又はある領域を走行中又は停止中の移動体100に設置された電子機器1からパラメータの要求があった場合、当該位置又は当該地域に対応する生成されたパラメータを送信してよい。また、ステップS14において、情報処理装置80は、ある位置又はある領域を走行中又は停止中の移動体100に設置された電子機器1からパラメータの要求があった場合、種々の位置又は種々の地域に対応する生成されたパラメータを送信してもよい。
【0118】
上述のステップS14において、情報処理装置80は、例えば生成されたパラメータ値xのような、生成されたパラメータを電子機器1に送信した。ここで、情報処理装置80は、生成されたパラメータを直接電子機器1に送信するのではなく、パラメータ値xを生成するための補正値を電子機器1に送信してもよい。ステップS14においてパラメータが電子機器1に送信されたら、制御部82は、
図8に示す動作を終了してよい。
【0119】
このように、第1実施形態において、情報処理装置80は、電子機器1と通信する。情報処理装置80の受信部84は、電子機器1の位置情報とともに、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を、電子機器1から受信する。そして、情報処理装置80の制御部82は、電子機器1の位置における探査情報を統計処理して統計情報を生成し、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータを統計情報に応じて生成する。また、情報処理装置80の送信部86は、制御部82によって生成されたパラメータを、電子機器1に送信する。
【0120】
次に、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータの他の例について説明する。
【0121】
(第2のパラメータ)
上述のように、電子機器1が物体を検出したか否かの判定を行う際、例えば
図9の範囲W1及び範囲W2によって示すようなノイズ電力見積もり範囲を設ける。また、上述のように、範囲W1及び範囲W2のようなノイズ電力見積もり範囲は、物体を検出したか否かを判定するポイントの両サイドにおいて設けられる。電子機器1において、これらの範囲W1及び範囲W2のようなノイズ電力見積もり範囲を適切に設けることで、例えば
図9において点P1によって示すような電力のピークを検出することができる。
【0122】
しかしながら、電子機器1において、これらの範囲W1及び範囲W2のようなノイズ電力見積もり範囲を適切に設けないと、例えば
図9において点P1によって示すような電力のピークを適切に検出することができないことが想定される。特に、周辺環境が見通しの悪い環境(狭い道又は周辺に建物が多い路地など)においては、範囲W1及び範囲W2のようなノイズ電力見積もり範囲を適切に設けないと、電子機器1において、物体を検出したか否かを適切に判定できないことが想定される。
【0123】
例えば、電子機器1において距離FFT処理部11がビート信号に距離FFT処理を行った結果、
図11に示すように、複数のピークが含まれていたとする。
図11は、
図9及び
図10と同様に、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例を示す図である。
図11の横軸は距離を表し、縦軸は信号の電力を示す。
図11において、点P1によって示す電力のピークの左右の近傍に、点P2によって示す電力のピーク、及び点P3によって示す電力のピークが存在する。点P1によって示す電力のピークの近傍に他の電力のピークが存在する場合に、例えば
図9に示したノイズ電力見積もり範囲W1及びW2を設けてしまうと、点P1のポイントにおいて物体を検出したと判定できないおそれがある。したがって、この場合、電子機器1において適切に物体を検出できるように、例えばノイズ電力見積もり範囲W1及び/又はW2の範囲を小さくする。本例の場合、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータは、ノイズ電力見積もり範囲W1及び/又はW2の範囲(幅)を示すパラメータ値とすることができる。
【0124】
図11に示したような電力のピーク(P1乃至P3)の数は、電子機器1によって検出される物体の数が多くなるにつれて増える傾向にある。このため、電子機器1において検出される物体の数が多くなるにつれて、例えばノイズ電力見積もり範囲W1及び/又はW2の範囲を小さく(幅を狭く)してよい。上述のように、
図8に示したステップS12において、探査情報が統計処理(例えば平均化)されて統計情報が生成される。第1実施形態において、情報処理装置80の制御部82は、例えば、統計処理された探査情報(統計情報)の検出される物体の数が多くなるにつれて、パラメータ値を小さくしてもよい。統計処理された探査情報の検出される物体の数の多さ、パラメータ値を小さくする度合いとの関係は、例えば試験などに基づいて予め定めたものを記憶部88に記憶してもよい。また、制御部82は、統計処理された探査情報(統計情報)の検出される物体の数が多くない場合、パラメータ値を小さくしなくてもよい。逆に、制御部82は、統計処理された探査情報(統計情報)の検出される物体の数が少ない場合、パラメータ値を大きくしてもよい。
【0125】
上述の例と同様に、ステップS14において、情報処理装置80は、生成されたパラメータを直接電子機器1に送信するのではなく、パラメータ値を生成するための補正値を電子機器1に送信してもよい。
【0126】
図12は、第1実施形態に係るシステムにおいて、電子機器1が行う動作を説明するフローチャートである。
図12は、第1実施形態に係るシステムにおいて、情報処理装置80が
図8に示した動作を行った後に、電子機器1が行う動作を説明するフローチャートとしてよい。
図12は、電子機器1が、生成されたパラメータを情報処理装置80から受信して、当該生成されたパラメータに基づいて、物体を検出する動作について説明する。
図12は、
図5に示したような移動体100に搭載された電子機器1が行う動作を示すものとしてよい。また、
図12に示す動作が開始する際、少なくとも1つの電子機器1は、情報処理装置80と通信ができる状態にあるものとする。
【0127】
図12に示す動作が開始すると、電子機器1の通信部70は、情報処理装置80の送信部86から、生成されたパラメータを受信する(ステップS21)。ステップS21において、通信部70が受信する生成されたパラメータは、
図8に示すステップS14において情報処理装置80から送信されたパラメータとしてよい。ステップS21において、電子機器1は、電子機器1の位置(又は領域)に対応して生成されたパラメータを受信してよい。また、ステップS21において、電子機器1は、現在の時刻を含む時間帯に対応して生成されたパラメータを受信してよい。
【0128】
ステップS21において生成されたパラメータを受信すると、電子機器1の制御部10は、送信アンテナ25から送信波を送信する(ステップS22)。ステップS22に示す動作は、
図7に示したステップS1の動作と同様に実行してよい。
【0129】
ステップS22において送信波が送信されたら、制御部10は、送信波が例えば物体によって反射された反射波を受信アンテナ31から受信する(ステップS23)。ステップS23に示す動作は、
図7に示したステップS2の動作と同様に実行してよい。
【0130】
ステップS23において反射波が受信されたら、制御部10(物体検出部14)は、送信信号及び受信信号に基づいて、送信波を反射する物体を検出する(ステップS24)。ステップS24において、制御部10(物体検出部14)は、ステップS21において受信した生成されたパラメータに基づいて、送信波を反射する物体を検出する。
【0131】
このように、第1実施形態に係る電子機器1において、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータは、情報処理装置80から供給される。また、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータは、電子機器1の位置における探査情報が情報処理装置80によって統計処理された統計情報に応じて生成されたパラメータとしてよい。ここで、情報処理装置80は、電子機器1以外の機器としてよい。
【0132】
一般的に、レーダの検出判定処理において、同じ周波数帯を使用する他のレーダが周囲に存在するか否かは考慮されていない。このため、例えば以下のような課題が想定される。すなわち、例えば、周囲に同じ周波数帯を使用する他のレーダが存在すると、その周波数帯の信号レベル又はノイズレベルが上昇し得る。この場合、検出したい物体からの反射信号レベルとノイズレベルの差が小さくなり得るため、検出したい物体を見逃してしまうリスクが懸念される。また、周囲に他のレーダが複数同時に存在する場合、その周波数帯の信号レベル又はノイズレベルの上昇は顕著なものとなる。この場合、検出したい物体を見逃してしまうリスクが一層懸念される。一方、同じ周波数帯を使用するレーダが周囲に存在しない場合、その周波数帯の信号レベル又はノイズレベルは低く安定する。このような場合、検出したい物体を精度よく検出できることが想定される。しかしながら、ノイズレベルが低いあまり、検出しなくてよい物体、例えば、微小なもの等まで検出してしまう、すなわち過敏に検出してしまうリスクも想定される。
【0133】
また、一般的に、レーダの検出判定処理において、レーダが動作している周辺環境、例えば反射物体の多寡などは考慮されていない。このため、例えば以下のような課題が想定される。すなわち、例えば、レーダを動作させる周辺環境において見通しが悪い場合、例えば狭い道、又は周辺に建物が多い路地など、反射波の電力の強さの平均値は高くなる。また、レーダを動作させる周辺環境において見通しが悪い場合、反射波の数も多くなると想定される。この場合、検出したい物体からの反射波を選別することが困難となり得るため、検出したい物体を見逃してしまうリスクが懸念される。一方、レーダを動作させる周辺環境において見通しが良い場合、例えば複数車線で他車がいない環境、又は草原の中の道路など、反射波の電力の強さの平均値は低くなる。また、レーダを動作させる周辺環境において見通しが良い場合、反射波の数も少なくなると想定される。このような場合、検出したい物体を精度よく検出できることが想定される。しかしながら、やはり検出しなくてよい物体、例えば、微小なもの等まで検出してしまうリスクも想定される。
【0134】
第1実施形態に係る電子機器1は、レーダ処理の演算結果を探査情報として情報処理装置80、例えばサーバに送信する。また、第1実施形態によれば、探査情報としてノイズ電力値を用い、物体検出に用いるパラメータ、例えば電力閾値、を可変することができる。また、第1実施形態によれば、探査情報として検出物体数を用い、物体検出に用いるパラメータ、例えばノイズ電力見積り範囲、を可変することができる。
【0135】
また、第1実施形態によれば、電子機器1からの探査情報を基に、情報処理装置80、例えばサーバ、にてレーダ処理に用いるパラメータを生成し、再度レーダに配信する。ここで、情報処理装置80は、管理する電子機器1からの探査情報に統計処理を実施し、区分された領域ごとにパラメータを生成する。
【0136】
さらに、第1実施形態によれば、電子機器1は、情報処理装置80から受信する生成されたパラメータを用いて物体検出を行う。したがって、第1実施形態に係る電子機器1によれば、生成されたパラメータを用いて、検出対象物を感度よく検知できるのみならず、不必要な対象物の誤検知を低減することを可能とする。第1実施形態に係る電子機器1によれば、高信頼性かつ高精度に、物体を検出することができるため、物体を検出する精度の向上に資する。
【0137】
ここで、センサ5の記憶部40及び情報処理装置80の記憶部88の少なくとも一方に記憶されるデータベースについて、
図15を参照して説明する。
図15は、センサ5の記憶部40及び情報処理装置80の記憶部88の少なくとも一方に記憶されるデータベースの概念図である。
【0138】
図15に示されるように、データベースDB1501には、位置D1、時間帯D2、時期D3、探査情報D4、及びパラメータ調整値D5が格納されている。
【0139】
位置情報D1は、所定の位置範囲を含む情報である。位置情報D1は、センサ5から送信された位置情報やあらかじめ設定された位置情報などを含む。位置情報D1は、緯度経度の情報、方位情報、地域、国、県、郡、及び/又は州などの情報を含んでもよい。位置情報D1は、前述のように、ある地域の地図を仮想的に例えば数メートル四方のメッシュ状に区分し、区分した領域を示す情報としてもよい。また、仮想的に区分した領域は、例えば1メートル四方としたり、数キロメートルとしたり、任意の大きさとしてよい。仮想的に区分した領域の形状は、メッシュ状に限定されるものではなく、三角型又はハニカム形状など、任意の形状としてよい。
【0140】
時間帯D2は、所定の時間範囲を含む。時間範囲は24時間単位としてもよいし、他の時間範囲としてもよい。
【0141】
時期D3は、所定の日範囲を含む。日範囲は1年単位としてもよいし、他の日単位としてもよい。
【0142】
統計情報D4は、センサ5から送信された探査情報を統計処理された後の情報である。
【0143】
パラメータ調整値D5は、統計情報D4に基づいて生成された情報である。
【0144】
パラメータD6は、パラメータ調整値D5を用いて調整された後のパラメータである。
【0145】
図15に示される情報以外の情報も、適宜、データベースDB1501に含むとしてもよい。また、
図15に示される情報は、センサ5から情報が送信されるごとに更新されるとしてよい。また、センサ5の記憶部40及び情報処理装置80の記憶部88の少なくとも一方は、移動体5から送信される探査情報を格納するデータベースを有するとしてもよい。また、適宜、
図15に示される情報を、データベースDB1501から削除してもよい。
【0146】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るシステムについて説明する。
【0147】
第2実施形態は、上述した第1実施形態において、一部の処理を変更するものである。また、第2実施形態に係るシステムは、上述した第1実施形態に係るシステムと同様の構成とすることができる。すなわち、第2実施形態に係るシステムは、少なくとも1つの電子機器1と、情報処理装置80とを含んで構成される。第2実施形態に係る電子機器1は、第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。また、第2実施形態に係る情報処理装置80は、第1実施形態に係る情報処理装置80と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0148】
上述した第1実施形態において、電子機器1から探査情報を受信した情報処理装置80は、探査情報から生成した統計情報に応じてパラメータを生成し、生成されたパラメータを電子機器1に送信した。これに対し、第2実施形態において、電子機器1から探査情報を受信した情報処理装置80は、探査情報から統計情報を生成し、生成された統計情報を電子機器1に送信する。そして、第2実施形態において、電子機器1は、統計情報に応じてパラメータを生成し、生成されたパラメータを用いて物体を検出したか否かを判定する。以下、このような動作について、より詳細に説明する。
【0149】
第2実施形態に係る電子機器1が、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を情報処理装置80に送信するまでの動作は、第1実施形態における動作と同様に行うことができる。すなわち、第2実施形態においても、電子機器1は、
図7に示すのと同様の動作を行ってよい。
【0150】
図13は、第2実施形態に係る情報処理装置80が、電子機器1から情報を受信して処理した結果を、電子機器1に送信するまでの動作を説明するフローチャートである。電子機器1が
図7に示す動作を行った後、第2実施形態に係る情報処理装置80は、
図8に示す動作に代えて、
図13に示す動作を行う。
【0151】
図13に示す動作が開始すると、情報処理装置80の受信部84は、ステップS31に示す動作を行う。ステップS31に示す動作は、
図8に示したステップS11の動作と同様に行うことができる。
【0152】
ステップS31に示す動作が行われると、情報処理装置80の制御部82は、ステップS32に示す動作を行う。ステップS32に示す動作は、
図8に示したステップS12の動作と同様に行うことができる。
【0153】
ステップS32に示す動作が行われると、情報処理装置80の送信部86は、ステップS32において生成された統計情報を、電子機器1に送信する(ステップS33)。
【0154】
このように、第2実施形態に係る情報処理装置80において、受信部84は、第1実施形態と同様に、電子機器1の位置情報とともに、電子機器1の位置における送信信号及び受信信号に基づく探査情報を、電子機器1から受信する。また、第2実施形態において、制御部82は、第1実施形態と同様に、電子機器1の位置における探査情報を統計処理することにより統計情報を生成する。一方、第2実施形態において、送信部86は、制御部82によって生成された統計情報を、電子機器1に送信する。
【0155】
図14は、第2実施形態に係る電子機器1が、情報処理装置80から情報を受信して処理した結果に基づいて物体検出を行うまでの動作を説明するフローチャートである。情報処理装置80が
図13に示す動作を行った後、第2実施形態に係る電子機器1は、
図12に示す動作に代えて、
図14に示す動作を行う。
【0156】
図14に示す動作が開始すると、電子機器1の通信部70は、
図13に示すステップS33において情報処理装置80から送信された統計情報を受信する(ステップS41)。
【0157】
ステップS41において統計情報を受信したら、電子機器1の制御部10は、統計情報に応じてパラメータを生成する(ステップS42)。すなわち、上述した第1実施形態では、
図8におけるステップS13に示したように、統計情報に応じてパラメータを生成する動作は、情報処理装置80が実行した。これに対し、第2実施形態では、
図14におけるステップS42に示すように、統計情報に応じてパラメータを生成する動作は、電子機器1が実行する。このように、
図14のステップS42に示す動作は、
図8のステップS13に示す動作と同様に行うことができる。
【0158】
ステップS42においてパラメータが生成されたら、電子機器1の制御部10は、送信アンテナ25から送信波を送信する(ステップS43)。ステップS43に示す動作は、
図12に示したステップS22の動作又は
図7に示したステップS1の動作と同様に実行してよい。
【0159】
ステップS43において送信波が送信されたら、制御部10は、送信波が例えば物体によって反射された反射波を受信アンテナ31から受信する(ステップS44)。ステップS44に示す動作は、
図12に示したステップS23の動作又は
図7に示したステップS2の動作と同様に実行してよい。
【0160】
ステップS44において反射波が受信されたら、制御部10(物体検出部14)は、送信信号及び受信信号に基づいて、送信波を反射する物体を検出する(ステップS45)。ステップS44において、制御部10(物体検出部14)は、ステップS42において生成したパラメータに基づいて、送信波を反射する物体を検出する。
【0161】
このように、第2実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、電子機器1の位置における探査情報が情報処理装置80によって統計処理された統計情報に応じて、電子機器1が物体を検出したか否かの判定に用いられるパラメータを生成してもよい。ここで、情報処理装置80は、電子機器1以外の機器としてよい。
【0162】
第2実施形態によれば、電子機器1は、情報処理装置80から受信する統計情報に応じて生成したパラメータを用いて物体検出を行う。したがって、第2実施形態に係る電子機器1によっても、生成されたパラメータを用いて、検出対象物を感度よく検知できるのみならず、不必要な対象物の誤検知を低減することを可能とする。第2実施形態に係る電子機器1によっても、高信頼性かつ高精度に、物体を検出することができるため、物体を検出する精度の向上に資する。
【0163】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0164】
例えば、上述した実施形態においては、1つのセンサ5によって、動的に物体検出範囲を切り替える態様について説明した。しかしながら、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲において物体検出を行ってもよい。また、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲に向けてビームフォーミングを行ってもよい。
【0165】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
【0166】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0167】
1 電子機器
5 センサ
10 制御部
11 距離FFT処理部
12 速度FFT処理部
13 到来角推定部
14 物体検出部
15 検出範囲決定部
16 パラメータ設定部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 AD変換部
40 記憶部
50 ECU
60 位置取得部(GPS等)
70 通信部(送信部・受信部)
80 情報処理装置
82 制御部
84 受信部
86 送信部
88 記憶部
100 移動体
200 物体