(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】防音カバー
(51)【国際特許分類】
F02B 77/13 20060101AFI20221110BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20221110BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20221110BHJP
H02K 5/24 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
F02B77/13 A
B60R13/08
G10K11/16 120
H02K5/24 A
(21)【出願番号】P 2020203034
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2022-07-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一義
(72)【発明者】
【氏名】藪 晃生
(72)【発明者】
【氏名】大脇 潤己
(72)【発明者】
【氏名】牧村 敏史
(72)【発明者】
【氏名】金田 光稀
(72)【発明者】
【氏名】富山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】宮永 貴志
(72)【発明者】
【氏名】畑中 幸夫
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-38615(JP,U)
【文献】特開2000-230431(JP,A)
【文献】実開平5-72597(JP,U)
【文献】特開2019-86551(JP,A)
【文献】特開2018-70147(JP,A)
【文献】特開2010-126677(JP,A)
【文献】特開2006-257993(JP,A)
【文献】特開2008-289260(JP,A)
【文献】特開2015-37916(JP,A)
【文献】実開昭56-88927(JP,U)
【文献】実開昭57-68141(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
F01N 1/24
F01N 13/00
F02B 77/13
F16L 55/02
G10K 11/16
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆
し、表面に複数の放熱フィンを備える吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備える、防音カバー。
【請求項2】
前記第二補強部は、前記対象物の前記第一被係合部とは異なる第二被係合部に係合する位置に配置される、請求項1に記載の防音カバー。
【請求項3】
前記補強部材は、前記吸音シートに別体に形成され又は一体化され、前記吸音シートの表面上に配置されることにより、前記補強部材と前記対象物との間に前記吸音シートを挟んで配置される、請求項1又は2に記載の防音カバー。
【請求項4】
前記第一補強部及び前記第二補強部は、前記吸音シートの表面上において前記吸音シートの面方向に離れて配置される、請求項3に記載の防音カバー。
【請求項5】
前記第一補強部及び前記第二補強部は、前記吸音シートの表面上において、前記吸音シートの縁部における異なる位置に配置される、請求項4に記載の防音カバー。
【請求項6】
前記第一補強部及び前記第二補強部は、前記吸音シートの表面上において結合されて配置される、請求項3に記載の防音カバー。
【請求項7】
前記補強部材は、前記吸音シートの周面に一体化される、請求項1又は2に記載の防音カバー。
【請求項8】
前記第一補強部は、前記吸音シートの周面のうちの第一位置に一体化され、
前記第二補強部は、前記吸音シートの周面のうち前記第一位置に対向する位置に一体化される、請求項7に記載の防音カバー。
【請求項9】
前記第一補強部は、前記吸音シートの周面のうち第一位置に一体化され、
前記第二補強部は、前記第一補強部に一体化され、前記吸音シートの周面のうち前記第一位置に隣接する位置に一体化される、請求項7に記載の防音カバー。
【請求項10】
前記吸音シートは、別体に形成された複数の分割体を備え、
前記第一補強部及び前記第二補強部の少なくとも一方は、前記複数の分割体に跨って配置される、請求項1-9の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項11】
前記対象物の表面は、外側に凸となる湾曲面を有し、
前記第一補強部及び前記第二補強部の少なくとも一方は、長尺状における一端側から他端側に向かって外側に凸となる湾曲した形状に形成され、前記対象物の前記湾曲面に沿って配置される、請求項1-10の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項12】
前記吸音シートは、発泡樹脂により形成され、
前記補強部材は、前記吸音シートとは異なる発泡樹脂により形成される、請求項1-11の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項13】
前記補強部材の発泡樹脂のアスカーC硬度は、60~99度である、請求項12に記載の防音カバー。
【請求項14】
前記吸音シートの発泡樹脂のアスカーC硬度は、1~60度である、請求項13に記載の防音カバー。
【請求項15】
前記吸音シートは、発泡樹脂により形成され、
前記補強部材は、前記発泡樹脂よりも硬度の高いゴム、樹脂又は金属により形成される、請求項1-11の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項16】
前記吸音シートは、別体に形成され、前記複数の放熱フィンをそれぞれ備える複数の分割体を備え、
隣り合う前記複数の分割体における前記放熱フィンは、連続して配置される、請求項
1-15の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項17】
前記吸音シートは、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成され、
前記熱伝導材は、前記吸音シートの裏面から前記放熱フィンの先端において、前記吸音シートの面法線方向に連続して延在されている、請求項
1-16の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項18】
前記放熱フィンは、前記吸音シートの面方向に延在し、
前記吸音シートは、第二熱伝導材を含む発泡樹脂により形成され、
前記第二熱伝導材は、前記吸音シートの前記放熱フィンの先端側において、当該放熱フィンの延在方向に沿って延在されている、請求項
1-17の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項19】
対象物を被覆する防音カバーであって、
発泡樹脂により形成され、吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記吸音シートとは異なる発泡樹脂により形成され、前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備え
、
前記吸音シートの表層は、発泡樹脂のセルが閉じたクローズドセル状態とされる、防音カバー。
【請求項20】
前記吸音シートの裏層は、発泡樹脂のセルが開いたオープンセル状態とされる、請求項19に記載の防音カバー。
【請求項21】
前記補強部材の発泡樹脂のアスカーC硬度は、60~99度である、請求項19又は20に記載の防音カバー。
【請求項22】
前記吸音シートの発泡樹脂のアスカーC硬度は、1~60度である、請求項21に記載の防音カバー。
【請求項23】
対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
前記補強部材に固定され、前記吸音シートの表面に沿って対向して配置され、前記吸音シートの表面との間において流体の流通をガイドする通風ガイドと、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備える、防音カバー。
【請求項24】
前記通風ガイドは、前記補強部材と同一材料により形成される、請求項
23に記載の防音カバー。
【請求項25】
前記通風ガイドは、前記補強部材とは剛性の異なる材料により形成される、請求項
23に記載の防音カバー。
【請求項26】
前記対象物は、車両の動力源であり、
前記通風ガイドは、前記対象物における前記車両の前後方向の後方面に対向して配置され、前記車両の前方から後方に向かって流通する流体を前記対象物における前記後方面へガイドする、請求項
23-25の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項27】
対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備え
、
前記吸音シートは、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成され、
前記熱伝導材は、熱伝導フィラーであり、前記吸音シートの裏面から表面に向かって配列されており、
前記熱伝導材の充填量は、前記吸音シートの位置によって異なる、防音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-4に記載されているように、車両の駆動源に防音カバーを取り付けることが知られている。これらの防音カバーにおいては、高剛性のカバー本体に、吸音材を取り付けている。また、特許文献5には、樹脂又はエラストマーからなる母材に、磁性フィラーが配向された防音カバーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-151788号公報
【文献】特開2006-183571号公報
【文献】特開2012-40912号公報
【文献】特開2019-43498号公報
【文献】特開2017-181968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防音カバーが高剛性のカバー本体を有することにより、防音カバー全体の質量が大きくなってしまう。カバー本体を設けない構成とすることにより、防音カバーの軽量化を図ることが考えられる。しかし、カバー本体を設けないと、吸音材を対象物に確実に位置決めすることができない場合がある。
【0005】
本発明は、軽量化を図ると共に、吸音材を対象物に確実に位置決めすることができる防音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆し、表面に複数の放熱フィンを備える吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備える、防音カバーにある。
本発明の他の態様は、対象物を被覆する防音カバーであって、
発泡樹脂により形成され、吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記吸音シートとは異なる発泡樹脂により形成され、前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備え、
前記吸音シートの表層は、発泡樹脂のセルが閉じたクローズドセル状態とされる、防音カバー。
前記吸音シートは、発泡樹脂により形成され、
前記補強部材は、前記吸音シートとは異なる発泡樹脂により形成される、防音カバーにある。
本発明の他の態様は、対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
前記補強部材に固定され、前記吸音シートの表面に沿って対向して配置され、前記吸音シートの表面との間において流体の流通をガイドする通風ガイドと、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備える、防音カバーにある。
本発明の他の態様は、対象物を被覆する防音カバーであって、
吸音材により面状に形成され、前記対象物の表面を被覆する吸音シートと、
前記対象物の被係合部に係合する位置に配置され、前記吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で前記吸音シートを前記対象物に対して位置決めする補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、
長尺状部材であり、前記対象物の第一被係合部に係合する位置に配置される第一補強部と、
長尺状部材であり、前記第一補強部とは異なる位置に配置される第二補強部と、
を備え、
前記吸音シートは、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成され、
前記熱伝導材は、熱伝導フィラーであり、前記吸音シートの裏面から表面に向かって配列されており、
前記熱伝導材の充填量は、前記吸音シートの位置によって異なる、防音カバーにある。
【0007】
上記防音カバーを構成する吸音シートは、吸音材により面状に形成されており、対象物の表面を被覆する。従って、吸音シートによって、防音効果を得ることができる。ここで、吸音シートは、補強部材によって、対象物に位置決めされている。従って、吸音シートが十分に剛性を有しない吸音材により形成されているとしても、補強部材によって吸音シートを確実に対象物に位置決めすることができる。
【0008】
ここで、補強部材は、吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態としている。つまり、補強部材は、吸音シートの全面を被覆していない。従って、補強部材の領域が防音カバーの一部領域に限られるため、防音カバーの軽量化を図ることができる。
【0009】
そして、補強部材は、少なくとも、長尺状部材である第一補強部と長尺状部材である第二補強部とを備える。このように、第一補強部及び第二補強部を長尺状部材とすることにより、上記のように、吸音シートの全面を被覆する構成とはならず、吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で、吸音シートを対象物に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】対象物に防音カバーを取り付けた状態の側面図である。
【
図2】防音カバーを平面状に展開した状態の平面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII切断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.防音カバー1の基本構成)
防音カバー1の基本構成について、
図1を参照して説明する。防音カバー1は、対象物2を被覆して、対象物2にて発生する音が外部へ伝達することを抑制する機能を有する。さらに、防音カバー1は、追加機能として、対象物2の熱を外部へ放熱する機能を有する。対象物2は、例えば、車両の動力源とする。動力源としては、車両の駆動用モータ、車両の駆動用エンジン等である。
【0012】
ここで、
図1においては、対象物2は、車両の駆動用モータである場合を示す。また、
図1の駆動用モータは、円筒外周面を有する場合を例示している。ただし、駆動用モータの外周面は、円筒面に限られるものではなく、適宜凹凸状に形成されるようにしても良い。また、例えば、駆動用モータの回転軸線が車両の左右方向に一致するように配置され、
図1の左側が車両前方であり、右側が車両後方である。一般に、車両前方面は、車両走行によって、空気流を直接受けることが可能な領域となり、車両後方面は、当該空気流を直接受けない領域となる。
【0013】
防音カバー1は、対象物2の表面を被覆しており、例えば、
図1に示すように、対象物2が駆動用モータの場合には駆動用モータの外周面を被覆する。防音カバー1は、対象物2の外周面を全周に亘って被覆しているが、一部に被覆しない部位を有するようにしても良い。
【0014】
防音カバー1は、吸音シート3、補強部材4、通風ガイド5を備える。吸音シート3は、吸音材により面状に形成され、対象物2の表面を被覆する。従って、吸音シート3によって、防音効果を得ることができる。吸音シート3は、予め対象物2の表面形状に対応した形状に形成するようにしても良い。また、吸音シート3は、変形可能な材料により平面状に形成し、変形させながら対象物2の表面に取り付けるようにしても良い。吸音シート3は、吸音性能に加えて、放熱性能を有する。
【0015】
吸音シート3は、吸音性能に優れた材料、例えば、発泡樹脂により形成するのが好適である。発泡樹脂の例として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等が適用される。そして、吸音シート3の発泡樹脂のアスカーC硬度は、1~60度である。なお、吸音シート3は、吸音性能を有する非発泡樹脂により形成するようにしても良いし、金属により形成するようにしても良い。非発泡樹脂の例として、ポリアミド樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、炭素繊維プラスチック(FRP、CFRP)等が適用される。また、金属の例として、鉄、アルミニウム、SUS、銅、及びその合金が適用される。ただし、吸音性能としては優れている発泡樹脂が好適である。
【0016】
さらに、吸音シート3が放熱性能を有するようにするために、吸音シート3は、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成されると良い。熱伝導材は、吸音シート3の裏面から表面に向かって延在されるようにすると良い。例えば、熱伝導材が熱伝導フィラーである場合には、熱伝導フィラーが、吸音シート3の裏面から表面に向かって配列される。さらには、熱伝導材の充填量が、吸音シート3の位置によって異なるようにしても良い。例えば、車両前方面より車両後方面の方が冷却されにくいため、車両前方面よりも車両後方面における熱伝導材の充填量を多くすると良い。なお、ここでの充填量とは、吸音シート3の面方向における単位面積当たりの充填量を意味する。また、熱伝導材が金属板である場合には、吸音シート3の裏面から表面に向かって延在するようにインサート成形されるようにすると良い。
【0017】
図1においては、吸音シート3は、別体に形成された複数の分割体10,20(第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20)により構成される。それぞれの分割体10,20により、対象物2の外周面の概ね半分程度を被覆する。対象物2の外周面において周方向に隣り合う分割体10,20は、対象物2の外周面の周方向に突き合わせて配置されている。
【0018】
補強部材4は、吸音シート3を対象物2に対して位置決めする。補強部材4は、吸音シート3とは別体に形成され、吸音シート3の表面上に配置されることにより、補強部材4と対象物2との間に吸音シート3を挟んで配置されるようにしても良い。また、補強部材4は、吸音シート3に一体化され、吸音シート3の表面上に配置されることにより、補強部材4と対象物2との間に吸音シート3を挟んで配置されるようにしても良い。また、補強部材4は、吸音シート3の周面に一体化されるようにしても良い。
【0019】
また、補強部材4は、対象物2への固定方法として、例えば、
図1に示すように、係合部材6a,6b,6c,6dにより対象物2に係合するようにしても良い。つまり、補強部材4は、対象物2の被係合部に係合する位置に配置された状態で、係合部材6a-6dにより対象物2に係合されることで、補強部材4が対象物に固定された状態となる。係合部材6a-6dには、例えば、ボルト等の締結部材や爪等の係止部材等が適用される。
【0020】
補強部材4は、吸音シート3よりも剛性の高い材料により形成されている。剛性の高い材料とは、比較対象である吸音シート3及び補強部材4を同一形状に形成した場合に剛性(曲げにくさを表す指標)が高い材料を意味する。吸音シート3は例えば発泡樹脂により面状に形成されている。このように、吸音シート3が十分に剛性を有しない吸音材により形成されている場合、吸音シート3のみでは対象物2への位置決め効果が低い。このような場合であっても、補強部材4によって、吸音シート3を対象物2に対して確実に位置決めすることができる。
【0021】
さらに、補強部材4は、吸音シート3よりも単位体積当たりの質量(以下、「単位質量」と称する)が大きな材料により形成される。上述したように、補強部材4が補強機能を発揮できるようにするために、結果として、補強部材4が、吸音シート3よりも単位質量が大きな材料により形成される。
【0022】
補強部材4は、軽量化を図るために、発泡樹脂により形成されると良い。ただし、補強部材4に適用される発泡樹脂は、吸音シート3に適用される発泡樹脂とは異なる。例えば、補強部材4に適用される発泡樹脂の例として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等が適用される。そして、補強部材4の発泡樹脂のアスカーC硬度は、60~99度である。なお、吸音シート3及び補強部材4に、ウレタンフォームを適用したとしても、両者のウレタンフォームは異なる種類である。
【0023】
また、補強部材4は、発泡樹脂の他に、発泡ゴム、非発泡樹脂、又は、金属等を適用することもできる。発泡ゴムの例として、発泡EPDM、発泡CR、発泡NBR/PVC、発泡ACM等が適用される。また、非発泡樹脂の例として、ポリアミド樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、炭素繊維プラスチック(FRP、CFRP)等が適用される。また、金属の例として、鉄、アルミニウム、SUS、銅、及びその合金等が適用される。これらの場合の補強部材は、発泡樹脂よりも硬度の高いゴム、樹脂又は金属により形成される。ただし、軽量化の観点から発泡樹脂が好適である。
【0024】
また、補強部材4は、吸音シート3の表面を全面に亘って被覆するように配置されておらず、吸音シート3の少なくとも一部を露出させた状態で配置されている。吸音シート3は、上述したように、吸音性能に加えて、放熱性能を有する。従って、吸音シート3が露出されることによって、吸音シート3による放熱性能を効果的に発揮させることができる。
【0025】
補強部材4は、吸音シート3の一部を露出させるように配置されるということは、対象物2の外周面の一部のみに対向するように配置されているということになる。従って、対象物2の外周面の大きさに比べて、補強部材4自身の大きさを小さくすることができる。補強部材4が吸音シート3よりも単位質量が大きいとしても、補強部材4の領域が防音カバー1の一部に限られるため、防音カバー1全体としての質量増加への影響を小さくできる。つまり、防音カバー1の軽量化を図ることができる。
【0026】
補強部材4は、別体に形成された複数の分割体30,50(第一分割補強部材30及び第二分割補強部材50)により構成される。第一分割補強部材30は、主として第一分割吸音シート10を位置決めし、第二分割補強部材50は、主として第二分割吸音シート20を位置決めする。また、第一分割補強部材30と第二分割補強部材50とは、係合部材6bにより、相互に固定されている。
【0027】
なお、後述するが、補強部材4は、長尺状部材であるにより形成している。補強部材4を長尺状部材とすることにより、上記のように、吸音シート3の全面を被覆する構成とはならず、吸音シート3の少なくとも一部を露出させた状態で、吸音シート3を対象物2に位置決めすることができる。
【0028】
通風ガイド5は、吸音シート3の表面の少なくとも一部に沿って対向して配置されている。通風ガイド5は、吸音シート3の表面との間に空間を有している。そして、通風ガイド5は、吸音シート3の表面との間において流体の流通をガイドする。つまり、通風ガイド5は、吸音シート3の冷却効果を高める機能を有する。
【0029】
通風ガイド5は、
図1に示すように、例えば、板状部材によりL字に形成されており、係合部材6b,6cにより補強部材4に固定される。通風ガイド5は、例えば、補強部材4と同一材料により形成されるようにしても良いし、補強部材4とは異なる材料により形成しても良い。ただし、通風ガイド5は、補強部材4と同程度の剛性を有すると良い。
【0030】
特に、通風ガイド5は、対象物2における車両の前後方向の後方面に対向して配置され、車両の前方から後方に向かって流通する流体を対象物2における後方面へガイドする。つまり、通風ガイド5は、対象物2の後方面における冷却効果を効果的に発揮する。
【0031】
(2.防音カバー1の詳細構成)
防音カバー1の詳細構成について、
図2-
図17を参照して説明する。防音カバー1は、
図1に示したように、対象物2の表面形状に応じた形状に形成される。ただし、説明を容易にするために、
図2-
図17には、防音カバー1を平面状に展開した状態の図を示しており、以下には、当該図を用いて説明する。
【0032】
防音カバー1は、上述したように、吸音シート3、補強部材4、通風ガイド5を備える。以下においては、吸音シート3及び補強部材4について、詳細に説明する。吸音シート3は、本例では、別体に形成された2つの分割体(第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20)により構成される。なお、吸音シート3は、3以上の分割体により構成されるようにしても良いし、1つのシートのみにより構成されるようにしても良い。
【0033】
第一分割吸音シート10は、第一シート本体11、及び、複数の放熱フィン12を備える。第一シート本体11と放熱フィン12とが一体化されている。第一シート本体11は、面状に形成され、第一シート本体11の裏面が、対象物2の表面のうちの一部、例えば半周分程度の範囲に接触する。
【0034】
放熱フィン12は、第一分割吸音シート10の表面に、第一分割吸音シート10の面方向に延在するように設けられる。すなわち、放熱フィン12は、第一シート本体11の表面から外側に突出するように設けられる。複数の放熱フィン12は、例えば、対象物2の外周面の周方向に延在する突条に形成され、対象物2の外周面の軸方向に距離を隔てて配列されている。ただし、放熱フィン12の形状は、波状としても良いし、対象物2の外周面の軸方向に延在するように形成しても良いし、対象物2の外周面の周方向及び軸方向に対して傾斜する方向に延在するように形成しても良い。
【0035】
第一分割吸音シート10は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材が、第一シート本体11の裏面から放熱フィン12の先端において、第一シート本体11の面法線方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、対象物2の表面から放熱フィン12の先端に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、導電性フィラーが好適である。
【0036】
第一分割吸音シート10は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材(第二熱伝導材)が、放熱フィン12の先端側において、放熱フィン12の延在方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、放熱フィン12の延在方向の一端側から他端側に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、面方向においても高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、銅、ステンレス、鋼、アルミニウム等の金属箔、アルミ蒸着フィルム等の金属フィルム、導電性フィラー、熱伝導性樹脂フィルム等を用いることができる。また、金属箔や金属フィルムと樹脂フィルムとを積層させても良い。なお、熱伝導材は、複数の放熱フィンにおける特定の領域や、特定の放熱フィンのみに設けても良く、また、放熱フィンの先端側又は側面の外表面に配置しても良い。
【0037】
第二分割吸音シート20は、
図2や
図3等に示すように、第二シート本体21、及び、複数の放熱フィン22,23を備える。第二シート本体21と放熱フィン22,23とが一体化されている。第二シート本体21は、面状に形成され、第二シート本体21の裏面が、対象物2の表面のうちの一部、例えば半周分程度の範囲に接触する。第二シート本体21は、第一シート本体11に対して、対象物2の周方向において突き合わせて配置されている。つまり、第一シート本体11と第二シート本体21とは、対象物2の周方向において連続して配置されている。
【0038】
放熱フィン22,23は、第二分割吸音シート20の表面に、第二分割吸音シート20の面方向に延在するように設けられる。すなわち、放熱フィン22,23は、第二シート本体21の表面から外側に突出するように設けられる。複数の放熱フィン22,23は、例えば、対象物2の外周面の周方向に延在する突条に形成され、対象物2の外周面の軸方向に距離を隔てて配列されている。ただし、放熱フィン22,23の形状は、波状としても良いし、対象物2の外周面の軸方向に延在するように形成しても良いし、対象物2の外周面の周方向及び軸方向に対して傾斜する方向に延在するように形成しても良い。
【0039】
また、第二分割吸音シート20の放熱フィン23は、第一分割吸音シート10の放熱フィン12と、対象物2の周方向において連続して配置されている。つまり、第一分割吸音シート10の放熱フィン12の端と第二分割吸音シート20の放熱フィン23の端とが、突き合わせて配置されている。
【0040】
第二分割吸音シート20は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材が、第二シート本体21の裏面から放熱フィン22,23の先端において、第二シート本体21の面法線方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、対象物2の表面から放熱フィン22,23の先端に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、導電性フィラーが好適である。
【0041】
第二分割吸音シート20は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材(第二熱伝導材)が、放熱フィン22,23の先端側において、放熱フィン22,23の延在方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、放熱フィン22,23の延在方向の一端側から他端側に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、面方向においても高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、銅、ステンレス、鋼、アルミニウム等の金属箔、アルミ蒸着フィルム等の金属フィルム、導電性フィラー、熱伝導性樹脂フィルム等を用いることができる。また、金属箔や金属フィルムと樹脂フィルムとを積層させても良い。なお、熱伝導材は、複数の放熱フィンにおける特定の領域や、特定の放熱フィンのみに設けても良く、また、放熱フィンの先端側又は側面の外表面に配置しても良い。
【0042】
また、第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20が発泡樹脂により形成されている場合には、以下のようにすると良い。第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20の表層は、発泡樹脂のセルが閉じたクローズドセル状態とされ、裏層は、発泡樹脂のセルが開いたオープンセル状態とされると良い。表層をクローズドセル状態とすることで、流体が流通する際の圧損を抑制できるため、放熱性能を高くすることができる。一方、裏層をオープンセル状態とすることで、吸音性能を高くすることができる。つまり、上記構成により、吸音性能及び放熱性能を良好とすることができる。
【0043】
補強部材4は、本例では、別体に形成された2つの分割体(第一分割補強部材30及び第二分割補強部材50)により構成される。なお、補強部材4は、3以上の分割体により構成されるようにしても良いし、1つの部材のみにより構成されるようにしても良い。
【0044】
補強部材4は、
図13に示すように、長尺状部材により形成されており、全体としては、矩形枠部材(31-33,51-53)、矩形枠部材(31-33,51-53)の枠内に位置する補助部材(54)を備える。矩形枠部材(31-33,51-53)は、対象物2の周方向に延在する部位(31,32,51,52)と、対象物2の軸方向に延在する部位(33,53)とを備える。つまり、矩形枠部材(31-33,51-53)のそれぞれが、矩形のそれぞれの一辺を形成する。部材31,51(第一補強部)、部材32,52(第二補強部)、部材33(第三補強部)、及び、部材53(第四補強部)が、矩形のそれぞれの一辺を形成する。また、補助部材(54)は、対象物2の軸方向に延在する。
【0045】
対象物2の表面は、例えば、円筒外周面等のように、外側に凸となる湾曲面を有している。そこで、矩形枠部材(31-33,51-53)のうち、対象物2の周方向に延在する部位(31,32,51,52)は、長尺状の一端側から他端側に向かって外側に凸となる湾曲した形状に形成され、対象物2の湾曲面に沿って配置される。一方、矩形枠部材(31-33,51-53)のうち、対象物2の軸方向に延在する部位(33,53)及び補助部材(54)は、長尺状の一端側から他端側に向かって例えば直線状に形成され、対象物2の外周面の軸方向に沿って配置される。ただし、当該部位(33,53,54)は、直線状に限られるのではなく、対象物2の外周面の軸方向の形状に応じた形状に形成される。
【0046】
そして、矩形枠部材(31-33,51-53)は、
図2に示すように、吸音シート3の外周縁に対応する位置に位置する。つまり、本例においては、矩形枠部材(31-33,51-53)は、
図2に示すように、吸音シート3の表面上における外周縁全周に亘って配置されており、
図3-
図12に示すように、矩形枠部材(31-33,51-53)と対象物2との間に吸音シート3を挟んで配置される。
【0047】
以下に、補強部材4を構成する第一分割補強部材30及び第二分割補強部材50のそれぞれについて説明する。第一分割補強部材30については、
図14及び
図15を参照して説明する。第一分割補強部材30は、周方向部材31,32と軸方向部材33を備える。
【0048】
周方向部材31,32は、長尺状部材によりそれぞれ形成されており、対象物2の周方向に延在する。つまり、周方向部材31,32は、対象物2の外周面における外側凸状の周方向面に沿った形状に形成されている。周方向部材31,32は、対象物2の軸方向に離間している。
【0049】
第一分割補強部材30の周方向部材31は、吸音シート3を構成する第一分割吸音シート10の縁部の一部に沿って配置される。詳細には、周方向部材31は、第一分割吸音シート10の第一シート本体11の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。もう1つの周方向部材32は、第一分割吸音シート10の縁部のうち、周方向部材31が配置される第一分割吸音シート10の縁部に対向する縁部に配置される。つまり、周方向部材31,32は、第一分割吸音シート10の縁部において、対象物2の軸方向に対向する異なる位置に配置される。このように、周方向部材31,32は、第一分割吸音シート10の面方向に離れて配置される。そして、周方向部材32は、第一分割吸音シート10の第一シート本体11の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。
【0050】
第一分割補強部材30の軸方向部材33は、長尺状部材により形成されており、周方向部材31,32の一端同士を接続する。軸方向部材33は、対象物2の軸方向に延在する。つまり、軸方向部材33は、周方向部材31,32のそれぞれに対して結合されて配置されている。このように、軸方向部材33は、第一分割吸音シート10の縁部の一部に沿って配置される。詳細には、軸方向部材33は、第一分割吸音シート10の第一シート本体11の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。なお、軸方向部材33と周方向部材31,32のそれぞれとは、端部同士が結合されているが、十字状等のように交差するように配置しても良い。
【0051】
さらに、第一分割補強部材30を構成する周方向部材31は、軸方向部材33と結合する部位、すなわち長尺方向の一端に、係合部41を備える。係合部41は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部41は、係合部材6a(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6aによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。なお、係合部41は、対象物2の被係合部に対して、爪等により直接係止される構成を有しても良い。
【0052】
さらに、周方向部材31は、長尺方向の他端に、係合部42を備える。係合部42は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部42は、係合部材6b(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6bによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。係合部42は、周方向部材31の中央部分に対して高さが異なる。係合部42は、第一分割吸音シート10から面法線方向に離れて位置する。
【0053】
第一分割補強部材30を構成する周方向部材32は、軸方向部材33と結合する部位に、係合部43を備える。係合部43は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部43は、係合部材6e(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6eによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。対象物2において、係合部41,42が係合される被係合部と係合部43が係合される被係合部とは異なる位置に形成されている。
【0054】
さらに、周方向部材32は、長尺方向の他端に、係合部44を備える。係合部44は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部44は、係合部材6f(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6fによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。係合部44は、周方向部材32の中央部分に対して高さが異なる。係合部44は、第一分割吸音シート10から面法線方向に離れて位置する。
【0055】
なお、本例では、係合部41,43は、周方向部材31,32の長尺方向の端部に形成したが、周方向部材31,32の長尺方向の中間部に形成しても良い。また、周方向部材31,32に係合部41,43を形成せずに、軸方向部材33に係合部を形成しても良い。
【0056】
第二分割補強部材50については、
図16及び
図17を参照して説明する。第二分割補強部材50は、周方向部材51,52と軸方向部材53,54を備える。周方向部材51,52は、長尺状部材によりそれぞれ形成されており、対象物2の周方向に延在する。つまり、周方向部材51,52は、対象物2の外周面における外側凸状の周方向面に沿った形状に形成されている。周方向部材51,52は、対象物2の軸方向に離間している。
【0057】
第二分割補強部材50の周方向部材51は、吸音シート3を構成する第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20に跨って、両者の縁部の一部に沿って配置される。詳細には、周方向部材51は、第一分割吸音シート10の第一シート本体11の表面上の縁部の一部、及び、第二分割吸音シート20の第二シート本体21の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。
【0058】
もう1つの周方向部材52は、第一分割吸音シート10の縁部のうち、周方向部材51が配置される第一分割吸音シート10の縁部に対向する縁部、及び、第二分割吸音シート20の縁部のうち、周方向部材51が配置される第二分割吸音シート20の縁部に対向する縁部に配置される。つまり、周方向部材52も、吸音シート3を構成する第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20に跨って、両者の縁部の一部に沿って配置される。
【0059】
周方向部材51,52は、第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20の縁部において、対象物2の軸方向に対向する異なる位置に配置される。このように、周方向部材51,52は、第一分割吸音シート10及び第二分割吸音シート20の面方向に離れて配置される。そして、周方向部材52は、第一分割吸音シート10の第一シート本体11の表面上の縁部の一部、及び、第二分割吸音シート20の第二シート本体21の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。
【0060】
第二分割補強部材50の軸方向部材53は、長尺状部材により形成されており、周方向部材51,52の一端同士を接続する。軸方向部材53は、対象物2の軸方向に延在する。つまり、軸方向部材53は、周方向部材51,52のそれぞれに対して結合されて配置されている。このように、軸方向部材53は、第二分割吸音シート20の縁部の一部に沿って配置される。詳細には、軸方向部材53は、第二分割吸音シート20の第二シート本体21の表面上の縁部の一部に重ねて配置される。なお、軸方向部材53と周方向部材51,52のそれぞれとは、端部同士が結合されているが、十字状等のように交差するように配置しても良い。
【0061】
第二分割補強部材50の軸方向部材54は、長尺状部材により形成されており、周方向部材51,52の長尺方向の中間部同士を接続する。軸方向部材54は、対象物2の軸方向に延在する。つまり、軸方向部材54は、周方向部材51,52のそれぞれに対して結合されて配置されている。また、軸方向部材54は、第二分割吸音シート20の第二シート本体21の表面上の一部に重ねて配置される。なお、軸方向部材54と周方向部材51,52のそれぞれとは、端部同士が結合されているが、十字状等のように交差するように配置しても良い。
【0062】
さらに、第二分割補強部材50を構成する周方向部材51は、軸方向部材53と結合する部位、すなわち長尺方向の一端に、係合部61を備える。周方向部材51は、軸方向部材54と結合する部位、すなわち長尺方向の中間部に、係合部62を備える。係合部61,62は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部61,62は、係合部材6d,6c(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6d,6cによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。なお、係合部61,62は、対象物2の被係合部に対して、爪等により直接係止される構成を有しても良い。
【0063】
さらに、周方向部材51は、長尺方向の他端に、係合部63を備える。係合部63は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。係合部63は、第一分割補強部材30の係合部42に重ねて配置される。そして、本例では、係合部63は、係合部材6b(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6bによって、係合部42と共に対象物2の被係合部に位置決めされる。
【0064】
第二分割補強部材50を構成する周方向部材52は、軸方向部材53と結合する部位、すなわち長尺方向の一端に、係合部64を備える。周方向部材52は、軸方向部材54と結合する部位、すなわち長尺方向の中間部に、係合部65を備える。係合部64,65は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。本例では、係合部64,65は、係合部材6h,6g(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6h,6gによって、対象物2の被係合部に位置決めされる。なお、係合部64,65は、対象物2の被係合部に対して、爪等により直接係止される構成を有しても良い。
【0065】
さらに、周方向部材52は、長尺方向の他端に、係合部66を備える。係合部66は、例えば、円筒状の座面を形成しており、対象物2の被係合部(ボルト螺合穴)に係合する位置に配置される。係合部66は、第一分割補強部材30の係合部44に重ねて配置される。そして、本例では、係合部66は、係合部材6f(
図2に示す)としてのボルトを挿通する穴を有しており、係合部材6fによって、係合部44と共に対象物2の被係合部に位置決めされる。
【0066】
上述したように、吸音シート3を複数の分割体10,20により構成し、補強部材4を複数の分割体30,50により構成している。これにより、対象物2の全周を被覆する構成とした場合に、防音カバー1を対象物2に容易に取り付けることができる。
【0067】
また、吸音シート3を複数の分割体10,20により構成した場合において、第二分割補強部材50の周方向部材51,52が複数の分割体10,20に跨って配置するようにした。これにより、吸音シート3を構成する複数の分割体10,20を確実に位置決めすることができる。
【0068】
(3.他の例)
上記の例においては、補強部材4が、吸音シート3と別体に形成され、吸音シート3の表面上に配置されることにより、補強部材4と対象物2との間に吸音シート3を挟んで配置されるようにした。
【0069】
この他に、
図18に示すように、補強部材4は、吸音シート3の周面(面方向の端面)に一体化される。この場合、補強部材4は、吸音シート3を介在することなく、対象物2に固定される。補強部材4が対象物2に固定されることにより、補強部材4に一体化されている吸音シート3が対象物2に対して位置決めされる。
【0070】
例えば、第一分割補強部材30を構成する周方向部材31,32及び軸方向部材33が、第一分割吸音シート10の周面のうち隣接する位置に一体化される。第二分割補強部材50を構成する周方向部材51,52及び軸方向部材53が、第二分割吸音シート20の周面のうち隣接する位置に一体化される。
【0071】
また、第二分割補強部材50を構成する軸方向部材54は、第二分割吸音シート20の表面上に一体化されるようにしても良い。この他に、吸音シート3をさらに分割することにより、第二分割補強部材50を構成する軸方向部材54も、分割された吸音シート3の周面に一体化されるようにしても良い。
【0072】
なお、
図18においては、補強部材4を構成するそれぞれの長尺状部材(31,32,33,51,52,53,54)が、吸音シート3の周面に一体化されるようにした。この他に、補強部材4を構成するそれぞれの長尺状部材(31,32,33,51,52,53,54)が、吸音シート3の表面上に一体化されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1:防音カバー、 2:対象物、 3:吸音シート、 4:補強部材、 5:通風ガイド、 6a-6h:係合部材、 10:第一分割吸音シート、 11:第一シート本体、 12:放熱フィン、 20:第二分割吸音シート、 21:第二シート本体、 22,23:放熱フィン、 30:第一分割補強部材、 31,32:周方向部材、 33:軸方向部材、 41-44:係合部、 50:第二分割補強部材、 51,52:周方向部材、 53,54:軸方向部材、 61-66:係合部