(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】充填方法
(51)【国際特許分類】
B67C 3/12 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B67C3/12
(21)【出願番号】P 2020516084
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009339
(87)【国際公開番号】W WO2019207974
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2018084978
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】上田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】水川 憲二
(72)【発明者】
【氏名】可児 倫明
(72)【発明者】
【氏名】安部 貞宏
(72)【発明者】
【氏名】林 柾行
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-003593(JP,A)
【文献】特開2015-199545(JP,A)
【文献】特開昭61-115881(JP,A)
【文献】特開2001-287796(JP,A)
【文献】特開2011-083737(JP,A)
【文献】特開2015-199546(JP,A)
【文献】特開平10-157799(JP,A)
【文献】特開平07-300196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液供給路および充填ノズルを介して貯留槽に貯えられる製品液を容器に充填する方法であって、
前記液供給路を閉じた状態で、前記容器の内部の容器圧力P
Bと前記貯留槽に付加されるカウンタ圧力P
Fとの間に圧力差を設ける差圧形成ステップと、
前記液供給路を開いた状態で、前記圧力差を利用して前記製品液を前記貯留槽から前記容器に
前記充填ノズルを介して充填する充填ステップと、を備え、
前記差圧形成ステップにおいて、
前記容器圧力P
Bが、大気圧以上の正圧であり、かつ、前記貯留槽における前記カウンタ圧力P
Fより低い圧力に保たれ、前記貯留槽の前記カウンタ圧力P
Fとの間に前記圧力差が形成された状態で、前記容器と前記充填ノズルとを密封状態に係合さ
せ、
前記容器圧力P
B
と前記カウンタ圧力P
F
との間に第一圧力差を設ける第一差圧形成ステップと、
前記第一圧力差を利用して前記製品液を前記貯留槽から前記容器に充填する第一充填ステップと、
前記第一充填ステップの後に、前記容器圧力P
B
と前記カウンタ圧力P
F
の間に第二圧力差を設ける第二差圧形成ステップと、
前記第二圧力差を利用して前記製品液を前記貯留槽から前記容器に目標充填量まで充填する第二充填ステップと、を備え、
前記第一充填ステップにおいて、所定の設定量の前記製品液を充填し、
前記第二充填ステップにおいて、前記目標充填量と前記設定量との差分の前記製品液を充填する、
ことを特徴とする充填方法。
【請求項2】
液供給路をおよび充填ノズル介して貯留槽に貯えられる製品液を容器に充填する方法であって、
前記液供給路を閉じた状態で、前記容器の内部の容器圧力P
B
と前記貯留槽に付加されるカウンタ圧力P
F
との間に圧力差を設ける差圧形成ステップと、
前記液供給路を開いた状態で、前記圧力差を利用して前記製品液を前記貯留槽から前記容器に前記充填ノズルを介して充填する充填ステップと、を備え、
前記差圧形成ステップにおいて、
前記容器圧力P
B
が、大気圧以上の正圧であり、かつ、前記貯留槽における前記カウンタ圧力P
F
より低い圧力に保たれ、前記貯留槽の前記カウンタ圧力P
F
との間に前記圧力差が形成された状態で、前記容器と前記充填ノズルとを密封状態に係合させ、
前記差圧形成ステップにおいて、
前記容器の内部と連通させることにより、前記液供給路の空隙からなる補室を前記容器と同じ前記容器圧力P
B
にして、前記カウンタ圧力P
F
との間に前記圧力差を形成し、
前記充填ステップにおいて、
前記液供給路を開くことで、前記製品液が前記補室を通って、目標充填量を満たす前記製品液が前記容器に充填される、
ことを特徴とする充填方法。
【請求項3】
前記充填ステップにおいて、
前記容器圧力P
Bが前記カウンタ圧力P
Fと平衡になるまで、または、前記カウンタ圧力P
F未満の所定の圧力の状態になるまで、前記製品液が充填される、
請求項
2に記載の充填方法。
【請求項4】
前記差圧形成ステップにおいて、
前記容器の内部に前記容器圧力P
Bのガス成分を密閉し、
前記充填ステップにおいて、
前記容器の内部の前記ガス成分を外部に排出することなく、前記容器の内部の前記ガス成分を密閉したままで、前記圧力差により前記製品液を前記容器に充填する、
請求項
2または請求項
3に記載の充填方法。
【請求項5】
前記差圧形成ステップにおいて、
前記容器の内部に前記容器圧力P
Bのガス成分を密閉し、
前記充填ステップにおいて、
前記容器の内部の前記ガス成分の前記容器圧力P
Bが大気圧以上の圧力の場合に、前記ガス成分の一部を前記容器の外部へ排出した後にまたは排出しながら、前記圧力差により前記製品液を前記容器に充填する、
請求項
2~請求項
4のいずれか一項に記載の充填方法。
【請求項6】
前記第二差圧形成ステップにおいて、
前記容器のヘッドスペースに含まれるガス成分を前記容器の外部に排出する、
請求項1に記載の充填方法。
【請求項7】
前記第二差圧形成ステップにおいて、
前記差分に一致する量の前記ガス成分を前記容器の外部に排出する、
請求項6に記載の充填方法。
【請求項8】
前記第二差圧形成ステップにおいて、
所定容積を有する圧力調整室に前記ガス成分を排出することで、前記ガス成分を前記容器の外部に排出する、
請求項7に記載の充填方法。
【請求項9】
前記圧力調整室は、
前記差分に一致する前記所定容積を有し、
前記第二充填ステップにおいて、
前記容器圧力P
Bが前記カウンタ圧力P
Fと平衡になるまで、または、前記容器圧力P
Bが前記設定圧力まで上昇するまで前記製品液を前記容器に充填する、
請求項8に記載の充填方法。
【請求項10】
前記第二充填ステップにおいて、
前記圧力調整室における室内圧力P
Rの上昇に基づいて、前記製品液の前記容器への充填を制御する、
請求項8または請求項9に記載の充填方法。
【請求項11】
前記第二充填ステップにおいて、
前記第二圧力差を設けた後に、前記圧力調整室を通じて前記ガス成分を系外に排出しながら、前記圧力調整室の前記室内圧力P
Rが低下して前記設定圧力に達したならば、前記ガス成分の系外への排出を停止し、
次いで前記目標充填量に対する前記差分の前記製品液を前記容器に充填する、
請求項10に記載の充填方法。
【請求項12】
前記圧力調整室は前記所定容積を任意に変更できる、
請求項8~請求項11のいずれか一項に記載の充填方法。
【請求項13】
前記補室は、
一段階の前記充填ステップにより前記目標充填量を満たす前記製品液を前記容器に充填するのに必要な容積に設定されている、
請求項
2に記載の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の容器に炭酸入りの飲料を充填するのに好適な充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸入りの飲料を容器に充填する方法として、例えば特許文献1に開示されるカウンタープレッシャー方式が一般的であった。
カウンタープレッシャー方式は充填に要する時間が長くかかることから、近年、特許文献2、特許文献3に開示されるように、あらかじめ内部を負圧にしている容器に、貯留槽において加圧されている炭酸入りの製品液を一気に注入させる方法が提案されている。この充填は、炭酸入りの製品液を容器に噴出させながら、容器の内部の圧力上昇の継時変化を監視することで充填量を制御する。
【0003】
特許文献2,3によるプリエバキュエーション方式による充填は、容器と貯留層の間の圧力差を利用して製品液を充填するので、カウンタープレッシャー方式に比べて極めて高速で製品液を充填することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭59-23758号公報
【文献】特開2015-199545号公報
【文献】特開2015-199546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、特許文献2,3による充填は、炭酸入りの製品液を短時間で容器に充填することができるが、対象となる容器に制限がある。つまり、プリエバキュエーション方式は、製品液の充填に先立って容器の内部を負圧にすることが必要であることから、ガラスびんのように剛性を有する容器にしか適用できない。例えば、可撓性を有するプラスチック製容器に特許文献2,3によるプリエバキュエーション方式を適用すると、プラスチック製容器は負圧に耐えられずに潰れてしまう。
【0006】
そこで本発明は、可撓性の容器であってもその形状を維持したままで炭酸入りの製品液を高速で充填できる充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
はじめに、
図1を参照して、本発明の充填装置における基本的な原理を説明する。
図1(a)に示すように、容器の内部の圧力(容器圧力)P
Bと貯留槽に付加される圧力(カウンタ)P
Fとの間に予め圧力P
B3に相当する圧力差が形成されているものとする。当初の容器圧力P
Bは例えば大気圧であり、カウンタ圧力P
Fは取り扱う製品液に必要な大気圧より高い圧力である。
図1(a)において、容器圧力P
Bが所定の設定圧力P
B1になるまで製品液を充填するとQ
11だけの量を容器に充填できる。この設定圧力P
B1は圧力P
B3と平衡になる圧力未満の圧力である。同様に、容器圧力P
Bが貯留槽と平衡になる圧力P
B3になるまで製品液を充填するとQ
13だけの量を容器に充填できる。この充填量Q
13は、それぞれ一回の差圧形成と充填、つまり一段充填により容器に充填できる最大の量(Qmax)である。
一方で、容器が可撓性を有していても、容器圧力P
Bが大気圧以上の正圧であれば、容器がつぶれることはない。
【0008】
以上が本発明の原理であるが、容器の容積、容器圧力P
Bおよびカウンタ圧力P
Fなどの条件によっては、一段充填で、目標とする量の製品液を充填できないことがある。このような場合には、差圧形成と充填を複数回繰り返せばよい。
図1(b)は、差圧形成、充填を二回繰り返す二段充填の例を示している。
予め圧力差が形成されている状態(第一差圧形成)から、容器圧力P
Bがカウンタ圧力P
Fと平衡になるまで製品液の充填(第一充填)を行うとQ
21の量だけ充填される。しかし、これでは目標充填量Q(=Q
21+Q
22)には達しない。そこで、また容器と貯留槽の間に圧力差(第二差圧形成)を設けてから、目標充填量Qとの差分(Q
22)だけ製品液の充填(第二充填)を行う。
第二差圧は、容器圧力P
Bを大気圧まで下げて行うことができるし、大気圧を超える圧力まで下げて行うこともできる。
【0009】
以上の原理に基づく本発明の充填方法は、液供給路を介して貯留槽に貯えられる製品液を容器に充填する方法であって、液供給路を閉じた状態で、容器の内部の容器圧力PBと貯留槽に付加されるカウンタ圧力PFとの間に圧力差を設ける差圧形成ステップと、液供給路を開いた状態で、圧力差を利用して製品液を貯留槽から容器に充填する充填ステップと、を備える。
本発明の差圧形成ステップにおいて、容器圧力PBが、大気圧以上の正圧であり、かつ、貯留槽におけるカウンタ圧力PFより低い圧力に保たれ、貯留槽のカウンタ圧力PFとの間に圧力差が形成された状態で、容器と充填ノズルとを密封状態に係合させる、ことを特徴とする。
本発明の充填ステップにおいて、好ましくは、容器圧力PBがカウンタ圧力PFと平衡になるまで、または、容器圧力PBがカウンタ圧力PF未満の所定の圧力になるまで、製品液が充填される。
【0010】
本発明の充填方法において、好ましくは、差圧形成ステップにおいて、容器圧力PBのガス成分を密閉し、充填ステップにおいて、容器の内部のガス成分を外部に排出することなく、容器の内部のガス成分を密閉したままで、圧力差により製品液を容器に充填する。
本発明の差圧形成ステップにおいて、好ましくは、容器圧力PBのガス成分を密閉し、充填ステップにおいて、容器の内部のガス成分の容器圧力PBが大気圧以上の圧力場合に、ガス成分の一部を容器の外部へ排出した後にまたは排出しながら、圧力差により製品液を容器に充填する。
【0011】
本発明の充填方法において、一回の差圧形成ステップと充填ステップで目標充填量を満たす製品液を容器に充填することができるが、差圧形成ステップと充填ステップを複数回、例えば二回、三回と繰り返すことで、目標充填量を満たす製品液を容器に充填することもできる。
【0012】
本発明の充填方法は、好ましくは、差圧形成ステップと充填ステップを二回繰り返すことで目標充填量を満たす製品液を容器に充填する。
この充填方法は、容器圧力PBとカウンタ圧力PFとの間に第一圧力差を設ける第一差圧形成ステップと、第一圧力差を利用して製品液を貯留槽から容器に充填する第一充填ステップと、第一充填ステップの後に、容器圧力PBとカウンタ圧力PFの間に第二圧力差を設ける第二差圧形成ステップと、第二圧力差を利用して製品液を貯留槽から容器に充填する第二充填ステップと、を備える。
この第一充填ステップにおいて、所定の設定量の製品液を充填し、第二充填ステップにおいて、目標充填量と設定量との差分の製品液を充填する。
【0013】
また、本発明の第一充填ステップにおいて、容器圧力PBとカウンタ圧力PFとが平衡になるまで製品液が容器に充填できるが、これが容器に充填できる最大の液量である。
この第一充填ステップは、二回以上に分割して行うこともできる。次の第二充填ステップも同様である。
【0014】
本発明の第二差圧形成ステップにおいて、容器のヘッドスペースに含まれるガス成分を容器の外部に排出することにより、第二圧力差を設けることができる。
この第二差圧形成ステップにおいて、差分に対応する量のガス成分を容器の外部に排出できる。
この第二差圧形成ステップにおいて、所定容積を有する圧力調整室にガス成分を排出することで、ガス成分を容器の外部に排出できる。
【0015】
本発明における圧力調整室は、差分に対応する所定容積を有することで、第二充填ステップにおいて、容器圧力PBが設定圧力まで上昇またはカウンタ圧力PFと平衡になるまで、または、前記容器圧力PBが設定圧力まで上昇するまで製品液を容器に充填できる。この圧力調整室は所定容積を任意に変更できることが好ましい。
【0016】
本発明の第二充填ステップにおいて、圧力調整室における室内圧力PRの上昇に基づいて、製品液の容器への充填を制御することができる。また、本発明の第二充填ステップにおいて、室内圧力PRが上昇して、設定圧力に達したならば、製品液の容器への充填を終了することができる。
また、本発明の第二充填ステップにおいて、第二圧力差を設けた後に、圧力調整室を通じてガス成分を系外に排出しながら、圧力調整室の室内圧力PFが低下して設定圧力に達したならば、ガス成分の系外への排出を停止し、次いで目標充填量に対する差分の製品液を容器に充填することもできる。
【0017】
本発明の充填方法の差圧形成ステップにおいて、好ましくは、容器の内部と連通させることにより、液供給路の空隙からなる補室を容器と同じ容器圧力PBにして、カウンタ圧力PFとの間に圧力差を形成し、充填ステップにおいて、液供給路を開くことで、製品液が補室を通って、目標充填量を満たす製品液が容器に充填される。
この充填方法における補室は、好ましくは、一段階の充填ステップにより目標充填量を満たす製品液を容器に充填するのに必要な容積に設定される。
【0018】
本発明の充填方法において、充填ステップを終了したときに容器の内部の圧力PBを維持したままで封緘できる。
本発明の充填方法において、差圧形成ステップの前に、製品液の特性維持に必要なガス成分で容器の内部を置換できる。このガス成分による置換は、ガス置換が既になされた容器を差圧形成ステップが行われる位置に供給する形態、及び、差圧形成ステップが行われる位置においてガス置換を行う形態の両者を包含する。
本発明の充填方法において、製品液は、炭酸入りの飲料に限るものではなく、炭酸を含まない飲料にも適用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の充填装置によれば、差圧形成ステップで容器圧力PBとカウンタ圧力PFの間に差圧(圧力PB<圧力PF)が形成されている状態で、容器に製品液が充填されるので、高速な充填が実現される。しかも、製品液の充填前における差圧形成ステップにおける容器圧力PBおよびカウンタ圧力PFのいずれもが大気圧以上の正圧であるから、差圧形成ステップおよび充填ステップを通じて容器が潰れることがなくその形状を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の原理を示す図であり、(a)は一回の差圧形成ステップと充填ステップで充填を完了する一段充填の例を示し、(b)は二回の差圧形成ステップと充填ステップで充填を完了する二段充填の例を示している。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る充填装置を実施する充填装置の主要な構成を示す図である。
【
図3】
図2の充填装置の充填動作の開始時を示す図である。
【
図4】
図3に引き続き、(a)は第一充填の開始時を示し、(b)は第一充填の終了時を示す。
【
図5】
図4に引き続き、(a)は第二充填Aの開始時を示し、(b)は第二充填Aの終了時を示す。
【
図6】変形例に係る補室を使用する第二充填Bを示し、(a)は補室の容積を大きくした様子を示し、(b)は補室の容積を小さくした様子を示す。
【
図7】第1実施形態に係る充填方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る充填装置の充填部分の一例を示す図である。
【
図9】
図8の充填装置を用いて製品液を充填する動作を示しており、(a)は製品液を充填する前を示し、(b)は炭酸ガスを気密な密閉室に供給する様子を示し、(c)は製品液の充填中を示し、(d)はキャップを装着する様子を示す。
【
図10】
図4に引き続き、(a)は第二充填Cの開始時を示し、(b)は第二充填Cの終了間際を示し、(c)は第二充填Cの終了時を示す。
【
図11】
図4に引き続き、(a)は第二充填Dの開始時を示し、(b)は第二充填Dにおける容器内と圧力調整室内の炭酸ガスの系外への排出状態を示し、(c)は第二充填Dの終了間際を示す。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る充填方法を実施する充填装置の主要な構成を示す図である。
【
図13】
図12の充填装置の動作を示し、(a)は差圧形成ステップであり、(b)は充填ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、
図2~
図11を参照して本発明の第1実施形態に係る充填方法を説明する。
第1実施形態に係る充填装置は、製品液Lが貯えられている貯留槽3と製品液Lが充填される容器100との間の圧力差を利用することで、二段充填により容器100に目標充填量だけ製品液Lを高速で充填する。この製品液Lは本発明の一例として炭酸飲料が適用される。第1実施形態の充填装置は、充填を開始する時点で、容器100の内部は大気圧以上の正圧とされているために、プラスチック製の容器100であってもその形状を維持したままで製品液Lの充填を終えることができる。この高速充填のことを、以下では第一機能という。
また、第1実施形態に係る充填装置は、高速で製品液Lが充填された容器100の位置を実質的に変えることなく、即座にキャップ103を装着して封緘する。この充填位置におけるキャップ103の装着のことを、以下では第二機能という。
【0022】
[第一機能の構成要素]
図2~
図6を参照して、第1実施形態に係る第一機能を説明する。
図2は充填装置1Aの中で第一機能に関る最小単位の構成を示している。
充填装置1Aは、
図2に示すように、製品液Lが貯えられている貯留槽3と、貯留槽3に貯えられている製品液Lを容器100に導く液供給路7と、を備える。貯留槽3の製品液Lよりも上方の空間であるガス相3Sには炭酸ガスCGが貯えられている。ガス相3Sにおける炭酸ガスCGの圧力P
Fは充填する製品液Lの特性に対応した大気圧を超える一定の圧力になるように制御されている。この圧力P
Fを制御するために第二圧力センサ17が設けられている。また、製品液Lは、容器100に充填される分が補充され、貯留槽3における液面が定位置になるように制御される。圧力P
Fを以下ではカウンタ圧力と称する。
液供給路7の一端側は貯留槽3の下端部に接続され、液供給路7の他端側は容器100の口部101に対峙するように設けられている。液供給路7は、製品液Lが流れる流路を開閉する液弁VLを備える。
なお、製品液Lを充填する際には、液供給路7の他端側は容器100の口部とは気密に封止される。第一ガス排出路11も同様である。また、
図2は、一つの貯留槽3から一つの容器100に製品液Lが充填される例を示しているが、これはあくまで充填装置1Aの最小単位を示しているにすぎない。実際の生産に用いる充填装置においては、一つの貯留槽3から複数の容器100に製品液Lが充填される。
【0023】
充填装置1Aは、
図2に示すように、製品液Lを容器100に充填している過程で容器100の内部のガス成分が排出される補室槽5と、補室槽5と容器100を接続する第一ガス排出路11と、を備える。補室槽5は、容器100の容器を補完するものであって、内部の空隙が圧力調整室6をなしており、後述する第二充填Aにおいて容器100のヘッドスペース105の炭酸ガスCGがこの圧力調整室6に排出される。この圧力調整室6の容積V
Rは、第二充填Aにおいて容器100に充填される量に対応した所定容積にされている。なお、第一ガス排出路11が本発明の下流流路に該当する。
【0024】
圧力調整室6は、同等の容積を有する第一ガス排出路11および第二ガス排出路13の一方または双方で代替できる。つまり、本発明における圧力調整室は、第一ガス排出路11および第二ガス排出路13のように所定の容積を有する配管を包含する概念を有している。
【0025】
第一ガス排出路11は、一端側が補室槽5に接続されるとともに、他端側が容器100に対峙するように設けられている。第一ガス排出路11は、容器100から炭酸ガスCGが流れる流路を開閉する第一ガス弁VG1を備える。また、第一ガス排出路11には、第一ガス弁VG1と補室槽5の間に絞りを設けてもよい。
充填装置1Aは、補室槽5と系外を繋ぐ第二ガス排出路13を備える。第二ガス排出路13は、補室槽5から炭酸ガスCGが系外に流れる流路を開閉する第二ガス弁VG2を備える。
【0026】
充填装置1Aは、容器100の内部の圧力PBを検知する第一圧力センサ15と、貯留槽3のガス相3Sのカウンタ圧力PFを検知する第二圧力センサ17と、圧力調整室6の圧力PRを検知する第三圧力センサ19と、を備える。容器100の内部の圧力PBは、製品液Lが充填される前の差圧形成時点においては容器100の容積の全体の圧力であり、製品液Lが充填されると製品液Lの液面より上方に生じるヘッドスペース105の圧力である。なお、製品液Lが充填されだすと、圧力PBは上昇する。
第一圧力センサ15は、第一ガス弁VG1と容器100の間の第一ガス排出路11に設けられる。第二圧力センサ17は貯留槽3のガス相3Sに接続される。また、第三圧力センサ19は補室槽5の圧力調整室6に接続される。
【0027】
充填装置1Aにおいて、
図2に示すように、貯留槽3に付加される圧力をP
Fとし、容器内部の圧力をP
B、容器の容積をV
Bとする。また、圧力調整室6の内部の圧力(室内圧力)P
R、容積をV
Rとする。なお、以下では、貯留槽3に付加される圧力をカウンタ圧力P
Fと称し、容器の内部の圧力を容器圧力P
Bと称し、圧力調整室6の圧力を室内圧力P
Rと称する。
【0028】
充填装置1Aは、貯留槽3に付随して製品液の給液並びにガスの給排気を制御する給排機構40を備える。
給排機構40は、ポンプ42および液制御弁48が設けられている液供給路41を備える。液供給路41は、ポンプ42および液制御弁48の動作により図示を省略する供給源から製品液Lを、貯留槽3に補充する。
また、給排機構40は、貯留槽3のガス相3Sに炭酸ガスCGを供給するガス供給路43と、貯留槽3のガス相3Sから炭酸ガスCGを排出するガス排出路45と、を備える。ガス供給路43にはガス弁44が、また、ガス排出路45にはガス弁46が設けられている。
【0029】
充填装置1Aは、液弁VL、第一ガス弁VG1および第二ガス弁VG2の開閉動作を制御する制御器2を備える。
制御器2は、第一圧力センサ15、第二圧力センサ17および第三圧力センサ19で検知された容器圧力P
B,カウンタ圧力P
F,室内圧力P
Rを取得して、液弁VL~第二ガス弁VG2の開閉動作を制御する。また、制御器2は、充填装置1Aが製造する製品液Lに必要な設定条件に基づき、液弁VL~第二ガス弁VG2の開閉動作を制御する。さらに、制御器2は、貯留槽3における製品液Lの液面が定位置になるように、液供給路41のポンプ42および液制御弁48の動作を制御する。さらにまた、制御器2は、カウンタ圧力P
Fが一定になるように、ガス供給路43のガス弁44とガス排出路45のガス弁46の開閉を制御する。
なお、以下で説明する
図3~
図7において、開いている液弁VL~第二ガス弁VG2は白抜きで示し、閉じている液弁VL~第二ガス弁VG2は黒塗りで示す。
【0030】
[飲料充填の手順]
次に、充填装置1Aを用いて容器100に製品液Lを充填する方法を説明する。
第1実施形態による充填方法は、第一充填および第二充填Aからなる。第一充填は、大気圧の炭酸ガスCGで容器100内が置換された状態で閉塞されている容器100へ圧力差により製品液Lを充填するが、目標充填量よりも少ない設定量の製品液Lを充填する。第二充填Aは目標充填量と設定量との差分を補うように製品液Lを容器100に充填する。一連の工程は、
図3に示すように、液弁VL、第一ガス弁VG1および第二ガス弁VG2の全ての弁が閉じられている初期状態からはじまる。初期状態において、容器100および圧力調整室6は、一例として炭酸ガスCGで満たされた大気圧(P
B,P
R=大気圧)の雰囲気とされている。
一方で、貯留槽3の内部において、製品液Lにはガス相3Sから大気圧を超えるカウンタ圧力P
Fが加えられており、容器100の内部と貯留槽3の内部との間には圧力差が形成されている(
図7 第一差圧形成ステップ S101)。
以下、各工程を順に説明する。ガス相3Sは、製品液Lの特性を維持するために必要なガス成分、例えば炭酸ガスからなる。
【0031】
[第一充填(
図4(a)、(b)、
図7)]
第一充填は、
図4(a)に示すように、はじめに液弁VLを開いて、貯留槽3と容器100を連通させる。貯留槽3は大気圧を超えるカウンタ圧力P
Fが印加された加圧環境下であるのに対して、容器圧力P
Bは大気圧とされる。したがって、カウンタ圧力P
Fと容器圧力P
B(大気圧)の圧力差に対応する流量および流速で製品液Lが貯留槽3から容器100に高速で充填され始める(
図7 第一充填ステップ S103)。充填が進むのにつれて容器圧力P
Bは上昇し、容器圧力P
Bに設定圧力を設けておけばこの設定圧力に対応する設定量だけ製品液Lが容器100に充填される。
【0032】
ここで、第一充填の間には、第一圧力センサ15により第一ガス導出路11の圧力が継続的に検知される。第一圧力センサ15により検知される圧力は、容器100のヘッドスペース105における容器圧力P
Bである。第一圧力センサ15が検知する圧力が設定圧力P1に達したならば、
図4(b)に示すように、液弁VLを閉じて製品液Lの充填を停止する。これで第一充填が終了し、設定量の製品液が充填される。この第一充填の間、容器100に収容されていた炭酸ガスCGは、容器100に閉じ込められたままで充填が進行するので、容器圧力P
Bが上昇する。この場合、設定圧力P1の最大限度は貯留槽3に付加されたカウンタ圧力P
Fと容器100が平衡になる圧力である。従って設定圧力P1の最大圧力をカウンタ圧力P
Fとすることができる。ここで、第一充填の終了時には、容器圧力P
Bは大気圧よりも高いカウンタ圧力P
Fまで上昇するのに対して、圧力調整室6の室内圧力P
Rは大気圧のままである。
なお、ここでは圧力の設定圧力P1に基づいて液弁VLを閉じるが、第1実施形態はこれに限らない。例えば、設定圧力P1に達する時間に関する設定時間T1を予め実験的に求めておき、この時間に関する設定時間T1に基づいて液弁VLを閉じることもできる。ただし、設定時間T1は、実験的に求めた値と完全に一致する必要はない。充填時間を短縮することを目的として実験値より短い設定時間T1を設定できるし、製品液Lの状態を安定させることを目的として実験値より長い設定時間T1を設定できる。第二充填Aにおいても同様である。
【0033】
ここで、第一充填における容器100への第一充填量Q1は以下の式(1)により求められる。なお、この第一充填量Q1は容器圧力PBが貯留槽3のカウンタ圧力PFと平衡になることを前提としている。また、第一充填量Q1だけ製品液Lが充填された後の容器100のヘッドスペース105の容積VHは以下の式(2)により求められる。一例として補室槽5の圧力調整室6は、目標充填量Qと第一充填量Q1の差分とその容積VRとが一致するように作製されている。なお、式(1)および式(2)は、ボイルの法則に基づいており、後述する式(3)~式(7)も同様である。また、目標充填量Qと第一充填量Q1の差分は、第二充填ステップにおける第二充填量Q2と一致する。
第一充填量Q1=(1-PB/PF)×VB … 式(1)
ヘッドスペース容積VH1=PB/PF×VB … 式(2)
PB:容器100の圧力
VB:容器100の容積
VH1:第一充填後のヘッドスペース105の容積
PF:ガス相3Sの圧力(一定)
【0034】
例えば、ガス相3Sのカウンタ圧力PFを5気圧(正圧)、容器圧力PBを1気圧(大気圧)とする。そうすると、第一充填量Q1およびヘッドスペース容積VH1は以下の通りであり、製品液Lは第一充填において容器100の容積VBの4/5に相当する量だけ充填されるので、残りのQ-4/5×VBに相当する量を第二充填Aにおいて充填する必要がある。この残りのQ-4/5×VBに相当する量が、容器100に予定されている目標充填量にするために必要な差分である第二充填量Q2に該当する。
第一充填量Q1=4/5・VB
ヘッドスペース容積VH1=1/5・VB
ここで、第一充填の過程において、容器圧力PBは容器100の耐圧力未満であることが必要である。これは、第二充填A~第二充填Dおよび第2実施形態の一段充填においても同様である。
容器100の耐圧力をPPとし、製品液Lの第一充填後の容器圧力PBとすると、以下の式(3)を満たす必要がある。ガス相3Sのカウンタ圧力PFが5気圧(正圧)、容器100の当初の容器圧力PBが1気圧(大気圧)とすると、容器100の第一充填の終了後の容器圧力PBはカウンタ圧力PFと平衡となる5気圧である。したがって、この第一充填に対して要求される容器100の耐圧力PPは5気圧である。
PP>PB=VB/(VB-Q1) … 式(3)
【0035】
[第二充填A(
図5(a)、(b)、
図7)]
第一充填の後には第二充填Aが行われる。第二充填Aは目標充填量Qと第一充填量Q
1の差分の量だけ製品液Lの充填を行う。
第二充填Aは、
図5(a)に示すように、第一ガス弁VG1を開く。なお、第一ガス弁VG1および液弁VLを同時に開いてもよいし、第一ガス弁VG1を先行して開いてもよい。
【0036】
第一ガス弁VG1を開くと、容器100のヘッドスペース105と補室槽5の圧力調整室6が連通するが、ヘッドスペース105における容器圧力P
Bが圧力調整室6の室内圧力P
Rより高い。したがって、ヘッドスペース105を満たしている炭酸ガスCGの一部は補室槽5の圧力調整室6に排出される。これにより、容器圧力P
Bは貯留槽3のガス相3Sのカウンタ圧力P
Fよりも低くなり、容器圧力P
Bとカウンタ圧力P
Fには圧力差(第二差圧)が生じる(
図7 第二差圧形成ステップ S105)。
圧力調整室6は、ヘッドスペース105を満たしている炭酸ガスCGの排出を受けるが、これにより容器100の容積が圧力調整室6の分だけ増えたものとみなすことができる。つまり、圧力調整室6は、第二差圧を形成するという観点からすると、容器100の一部として機能する補室を構成している。
【0037】
この圧力差が生じている状態で液弁VLが開いていれば、貯留槽3から容器100に圧力差に対応する流量および流速で製品液Lが充填される(
図7 第二充填ステップ S107)。このときに充填される量が差分に該当する。第二充填Aを終えて充填された製品液Lの量、つまり目標充填量Qは、下記の式(4)により求められる。また、目標充填量Qを満たす製品液Lが充填された後の容器100のヘッドスペース105のヘッドスペース容積V
H2は以下の式(5)により求められる。
目標充填量Q=(1-P
B/P
F)×(V
B+V
R) … 式(4)
ヘッドスペース容積V
H2=P
B/P
F×(V
B+V
R)-V
R … 式(5)
【0038】
式(4)と式(1)の比較、式(5)と式(2)の比較より、第二充填Aにおいて、圧力調整室6の容積VRの分だけ貯留槽3から容器100に製品液Lが充填されることがわかる。換言すれば、第二充填Aにおいて充填したい量、つまり目標充填量Qと第一充填量Q1の差分である第二充填量Q2に一致するように補室槽5の容積VRが定められる。
【0039】
第二充填Aにおいても、第一圧力センサ15により第一ガス排出路11の圧力を継続的に検知する。第一圧力センサ15が検知する圧力が設定圧力P1に達したならば、
図5(b)に示すように、液弁VLおよび第一ガス弁VG1を閉じる。これで第二充填Aが終了し、容器100に目標充填量Qを満たす製品液Lが充填される。設定圧力P1は、差分を充填するのに必要な圧力となる。
【0040】
以上では、圧力調整室6の容積が固定された例を示したが、第1実施形態は補室槽5の容積を任意に変えることもできる。例えば容積が異なる複数種類の容器100を充填の対象とするときには、容器100の種類に応じて第二充填Aで充填する製品液Lの量を変える必要がある。そこで、補室槽5の内容積を任意に可変とすることにより、容器100の種類に応じた充填量を実現できる。
【0041】
例えば
図6(a),(b)に示すように、ピストン-シリンダ機構からなる補室槽5とすればよい。つまり、この補室槽5は、ピストン5Aとピストン5Aが進退するシリンダ5Bとから構成される。この補室槽5を用いて行う第二充填を第二充填Bと称する。
第二充填Bにおける第二充填量Q
2が多いときは
図6(a)に示すように、ピストン5Aを後退させることでピストン5Aとシリンダ5Bで形成される容積V
Aを大きくする。第二充填Bにおける充填量Q
2が少ないときには
図6(b)に示すように、ピストン5Aを前進させることでピストン5Aとシリンダ5Bで形成される容積V
Aを小さくする。このように、シリンダ5Bに対するピストン5Aの相対的な位置を変えることにより補室槽5の容積を任意に変更できる。
【0042】
なお、容積が固定された補室槽5を用いる場合でも、容器100の種類に応じた容積の異なる複数種類の補室槽5を用意しておき、容器100の種類に応じて使用する補室槽5を交換することもできる。ただし、内容積が可変の補室槽5を用いる方が、補室槽5を交換するのに比べて格段に作業負担が小さい。
【0043】
[第一機能の効果]
以上説明した第1実施形態の第一機能に関する奏する効果を説明する。
第1実施形態は、製品液Lの第一充填および第二充填Aを開始するときに、容器圧力PBが大気圧である。よって、第1実施形態によれば、樹脂製で可撓性を有する容器100を充填の対象としたとしても、容器100が潰れることなくその形状を維持できる。
【0044】
しかも、第1実施形態は、製品液Lの第一充填および第二充填A,Bを開始するときに、貯留槽3のカウンタ圧力PFが容器圧力PBよりも高く設定されている。よって、第1実施形態によれば、この圧力差を利用して製品液Lが容器100に送出されるので、製品液Lを高速で容器100に充填することができる。
【0045】
さらに、第1実施形態は、第一充填と第二充填A,Bからなる二段充填を行うので、目標充填量Qを満たす量の製品液Lを容器100に確実に充填できる。
【0046】
さらに、第1実施形態の第一充填および第二充填A,Bにおいて容器100に充填された直後には瞬間的に圧力が開放されるために炭酸ガスCGが泡となって現れる。ところが、この泡は微細であるのに加えて充填終了時に容器圧力PBはカウンタ圧力PFであるから、泡はすぐに製品液に再溶解して消失する。よって、第1実施形態によれば、第一充填および第二充填A,Bを経た後に、封緘材103を容器100に装着する作業を迅速に始めることができる。これは、第1実施形態の第二機能として実現される。
【0047】
第1実施形態において、第一充填に先立って容器100の内部が所定濃度の炭酸ガスCGで置換されている。これにより、第1実施形態は、製品液Lに酸素が混入するのを避けつつ製品液Lに含まれる炭酸ガスの濃度を所定の値に保つことができる。
【0048】
[第二機能]
以下、第1実施形態に係る第二機能を
図8および
図9を参照して説明する。
充填装置1Aは、
図8に示すように、外部に対して気密に保持される密閉室21を有する密閉チャンバ20を備える。
密閉チャンバ20には、図示しないガス供給源とガス供給路28が接続されるとともに、ガス排出路29が接続されている。ガス供給路28からのガス成分の供給およびガス排出路29からのガス成分の排出を制御することにより、充填ステップの最中に、密閉チャンバ20の内部が容器圧力P
Bにほぼ等しいガス成分と圧力に加圧、保持される。
図8および
図9において、ガス供給路28とガス排出路29は、弁が白抜きであれば開いており、弁が黒塗りであれば閉じられている。
【0049】
また、密閉チャンバ20には、液供給路7と第一ガス排出路11が同期して進退可能に接続されている。液供給路7と第一ガス導出路11は、内側に液供給路7が設けられ、外側に第一ガス導出路11が設けられる、二重管構造22に組み込まれている。二重管構造22は、
図9(d)に示す待機位置と
図9(a)~(c)に示す動作位置との間を往復移動する。また、二重管構造22の先端にはノズル25が設けられている。ノズル25は、製品液Lの充填の際に、
図9(b),(c)に示すように、容器100の口部101に押し付けられる。押し付けられた部分は口部101に密着されて、容器100の内外を封止する。ノズル25は、
図8に実線で示す待機位置と仮想線で示す動作位置の間で昇降可能に設けられている。
【0050】
第一充填、第二充填において、液弁VLを開くと、貯留槽3の製品液Lが液供給路7を通って密閉チャンパ20まで引き込まれ、容器100に充填される。
また、第二充填において、第一ガス弁VG1を開くと、容器100のヘッドスペース105の炭酸ガスCGが第一ガス排出路11を通って補室槽5に向かう。
【0051】
また、密閉チャンバ20は、
図8に示すように、容器100に製品液Lを充填するときに、容器100の口部101が挿入される容器保持開口27を備える。容器保持開口27は、密閉チャンバ20を貫通し、密閉室21と外部を連通する。
容器保持開口27は、口部101に取り付けられる封緘材103の外径よりも大きな開口径を有する。容器100の口部101に封緘材103を取り付けるときにも、容器100の口部101は容器保持開口27に保持されている。
口部101が容器保持開口27に保持されている間に、密閉室21が外部に対して気密な状態を保つために、容器保持開口27の周りに図示を省略するシール部材が設けられる。
【0052】
次に、密閉チャンバ20には、
図8に示すように、封緘機としての封緘ヘッド30が昇降可能に設けられている。
封緘ヘッド330は、先端(図中の下端)で封緘材103を保持しながら、待機位置(
図8、
図9(a))と動作位置(
図9(d))の間を昇降する。封緘ヘッド30は、口部101に封緘材103を装着した後には、新たな封緘材103が補充、保持されてから、動作位置から待機位置に移動する。
【0053】
次に、密閉チャンバ20、封緘ヘッド30の動作を説明する。
[充填前準備]
はじめに、
図9(a)に示すように、容器100が容器保持開口27の下方で位置合わせされる。二重管構造22は動作位置まで移動するが、ノズル25は待機位置に留まっている。
その後、
図9(b)に示すように、容器100の口部101が容器保持開口27に挿入されかつ容器保持開口27の内側に保持される。また、ノズル25は前進しかつ容器100の口部101まで下降する。そうすると、密閉室21及び容器100が外部に対して気密に封止される。この後、ガス供給路28からガス成分としての炭酸ガスを密閉室21へ供給しつつ排気して密閉室のガス成分を炭酸ガスに置換する。この時置換された密閉室の炭酸ガスの圧力は、貯留槽3に付加されるカウンタ圧力P
F(容器圧力P
B)と一致するように供給される。
なお、ガス供給路28から加えられるガス成分としての炭酸ガスは、貯留槽3以外のガス供給源から供給されるものであってもよい。
図示を省略するが、容器100はグリッパと称される把持具により口部101で支持されており、グリッパに密閉チャンバ20に向けて負荷を加えることにより、口部101を密閉チャンパ20に気密に押し付けることができる。
【0054】
[第一充填および第二充填A]
第一充填および第二充填Aは、
図9(c)に示すように、容器100の口部101が容器保持開口27に保持されるのを維持したままで、かつ、ノズル25が動作位置に移動して行われる。封緘ヘッド30は待機位置に置かれている。
【0055】
前述した第一充填の手順に従って液弁VLを開く。そうすると、液供給路7を通って充填量Q1だけ製品液Lが容器100の内部に充填される。その後、第一ガス弁VG1を開くと、容器100のヘッドスペース105を満たす炭酸ガスCGは第一ガス排出路11を通って補室槽5に向けて排出される。
第一充填を終えると、前述した手順で第二差圧形成を行った後に、第二充填Aが行われる。
また、第二充填Aにおいても、二重管構造22は第一充填のままの状態として、前述した第二充填Aの手順に従って液弁VLおよび第一ガス弁VG1を開く。そうすると、液供給路7を通って製品液Lが容器100の内部に充填され、目標充填量Qを満たす量の製品液Lが100に充填される。このとき、ヘッドスペース105を満たす炭酸ガスCGは第一ガス導出路11を通って補室槽5に向かう。
【0056】
[封緘]
第二充填Aを終えると、
図9(d)に示すように、二重管構造22およびノズル25が待機位置に後退した後に、封緘ヘッド30が動作位置まで前進する。封緘ヘッド30を動作させることにより、キャップ103を口部101に装着する(
図7 キャッピングステップ S109)。封緘材103を装着するまで、容器100の口部101が容器保持開口27に保持されている。これにより、容器圧力P
Bを維持したままで、封緘材103を装着できる。
封緘材103の装着後には、封緘ヘッド30が待機位置まで後退する。また、封緘材103が装着された容器100は容器保持開口27から離脱するとともに、さらに下流の工程に向けて搬送される。さらに、後続の製品液Lの充填対象となる容器100に装着される封緘材103が容器保持開口27に装填され、待ち受けている封緘ヘッド30に補充される。封緘材103が補充された封緘ヘッド30は、次の充填作業のために、待機位置まで後退する。
【0057】
[第二機能の効果]
以上説明した第1実施形態の第二機能に関する奏する効果を説明する。
第1実施形態は、製品液Lを充填する密閉チャンバ20に封緘ヘッド30が組み込まれており、製品液Lが充填された容器100の移動を伴うことなく封緘材103を容器100に装着できる。したがって、製品液Lが充填された容器100に迅速に封緘材103を装着できるので、高速で行われる充填と相まって、飲料製品を短時間で製造することができる。
【0058】
[第1実施形態の変形例]
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、第1実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に置き換えたりすることができる。
はじめに、第1実施形態は圧力調整室6の容積を第二充填Aで差分の充填量に整合させる容積制御方式を採用しているが、これに限らず、第二充填Aで差分の充填量を充填できる他の方式を採用できる。その一例として、圧力の変動に基づいて充填を制御する圧力制御方式がある。圧力制御方式は、第二充填Cと第二充填Dの二形態があり、いずれも補室槽5を用いるものの、圧力調整室6の容積を第二充填において容器100に充填される量に予め特定する必要がない。
以下、
図10及び
図11を参照して第二充填C、第二充填Dの順に説明する。なお、第一充填は、第二充填Aと同じ手順で行われ、また、ガス置換が始まる前の容器圧力P
Bおよび補室内圧力P
Rは大気圧とする。
【0059】
[第二充填C]
第二充填Cは、
図10(a)に示すように、はじめに第一ガス弁VG1を開く。そうすると、容器100のヘッドスペース105に充填されている炭酸ガスCGが補室槽5に導出されるので、ヘッドスペース105とガス相3Sとの間に圧力差が生じる。第一ガス弁VG1を開くと、容器圧力P
Bと室内圧力P
Rは容器ヘッドスペースと補室容量の合計による平均圧力になる。その結果、カウンタ圧力P
Fと圧力差が形成される。なお、第三圧力センサ19は圧力調整室6の室内圧力P
Rを継続して検知している。
【0060】
その後、
図10(b)に示すように、液弁VLを開く。そうすると、貯留槽3から容器100に製品液Lが充填されるが、充填量が増えて入身線が上昇するのに伴って容器100のヘッドスペース105を満たしていた炭酸ガスCGが次第に補室槽5に導出される。これにより、圧力調整室6の室内圧力P
Rが上昇する。
【0061】
制御器2は、第一圧力センサ15または第三圧力センサ19が検知した室内圧力P
Rを取得するとともに予め定められた設定圧力P
B’と比較する。制御器2は、室内圧力P
Rが設定圧力P
B’まで上昇したならば、第一充填で不足した製品液Lの充填が終了したものと認定し、
図10(c)に示すように、先に第一ガス弁VG1を閉じてからその後に液弁VLを閉じる。これで圧力差に対応する製品液Lが目標充填量まで充填され、第二充填が終了する。
【0062】
第二充填Cで充填される製品液Lの量は以下の式(6)および式(7)で特定される。
第二充填量Q2=VH1×(1-PR/PBB’)+VR×(1-PR/PBB’) … 式(6)
目標充填量Q=Q1+Q2 … 式(7)
【0063】
[第二充填D]
第二充填Dは、
図11(a)に示すように、はじめに第一ガス弁VG1を開く。そうすると、容器100のヘッドスペース105に充填されている炭酸ガスCGが補室槽5に導出される。第三圧力センサ19は、圧力調整室6の室内圧力P
Rを継続して検知している。なお、ここまでは第二充填Cと同じである。
【0064】
その後、
図11(b)に示すように、第一ガス弁VG1を開いたままで第二ガス弁VG2を開く。そうすると、補室槽5を満たしている炭酸ガスCGが第二ガス導出路13を通って系外に導出されるので、室内圧力P
Rが低下する。なお、第二ガス弁VG2は、流路を全て開くのではなく部分的に開くことで、微量の炭酸ガスCGが導出されるようにする。絞りを介し一定流量で炭酸ガスCGを導出することで、容器100のヘッドスペース105、補室槽5の室内圧力Prを一定に保持しながら目標量との差分が充填される時間まで継続した後に、液弁VLと第2ガス弁GV2を閉止する。
【0065】
第二ガス弁VG2を開いたままで、制御器2は、第三圧力センサ19が検知した室内圧力P
Rを取得するとともに予め定められた設定圧力P
B’と比較する。制御器2は、室内圧力P
Rが設定圧力P
B’まで低下したならば、
図11(c)に示すように、まず、第二ガス弁VG2を閉じる。これで、貯留槽3のガス相3Sと容器100のヘッドスペース105の間に圧力差を設けることができる。
次いで、
図11(c)に示すように、液弁VLを開く。これで圧力差に対応する製品液Lが目標充填量Qまで充填され、第二充填Dが終了する。第二充填Dにおける製品液Lの充填量は、系外へ排出される炭酸ガスCGを加味することを除けば、第二充填Cと同様に算出できる。
【0066】
以上の通りであり、第二充填Cおよび第二充填Dは、圧力調整室6で検知される圧力に基づいて、差分の充填量を補うので、圧力調整室6の容積を予め特定する必要がない。ただし、圧力調整室6は差分の充填量を超える容積を有している必要はある。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、一回の充填サイクルにより目標充填量Qを満たす量の充填をする一段充填に関する。一段充填は、一度の圧力差の形成および製品液Lの充填により、容器100に目標充填量の製品液Lを満たす。以下、
図12~
図13を参照して、第2実施形態を説明する。なお、以下では第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0068】
第2実施形態の充填装置1Bは、
図12に示すように、第1実施形態の充填装置1Aが備えていた第一ガス排出路11~第二ガス排出路13の代替として、第三ガス排出路14を備えている。第三ガス排出路14は、容器100に対して気密に接続されている。第三ガス排出路14には第三ガス弁VG3が設けられており、第1実施形態における第一ガス排出路11から補室槽5(圧力調整室6)を除いた構成を有しているとみなすことができる。第三ガス排出路14として、例えば飲料充填装置が備えるCIP(Cleaning In Place:定置洗浄)装置における洗浄液の戻り配管回路を用いることができる。
ただし、第一ガス排出路11~第二ガス弁VG2を備える充填装置1Aで一段充填を実施することもできる。この場合、第一ガス排出路11~第二ガス弁VG2の機能を使用しないことになるが、この充填装置1Aは一段充填と複数段充填の兼用の装置である。
【0069】
充填装置1Bは、容器100と第三ガス弁VG3を繋ぐ第三ガス排出路14の内部の空隙を容器100の容積の一部としての機能を積極的に持たせる。つまり、
図12において、第三ガス弁VG3を閉じると、容器100よりも第三ガス弁VG3の側、つまり容器100よりも下流側の第三ガス排出路14の内部は補室容積V
B3を有する空隙となる。この空隙が、以下説明するように、本発明における第一補室容積に該当する。
【0070】
ここで容器100の容積をVB1とおくと、連通したときの両者の合計の容積はVB1+VB3(=VB)となり、容器100の容積が見掛け上は増えることになる。したがって、下記の式(1a),(1b)に示すように、補室容積VB3を備える場合(式(1b))と補室容積VB3を備えない場合(式(1a))を比較すれば、前者による製品液Lの充填量が補室容積VB3の分だけ増える。
充填量Q1=(1-PB/PF)×VB1 … 式(1a)
充填量Q1=(1-PB/PF)×(VB1+VB3) … 式(1b)
【0071】
下記式(1c)に示すように、充填量Q1が目標充填量Qに一致するように容器100と第三ガス弁VG3との間の第三ガス排出路14の補室容積VB3を設定すれば、一段充填だけで製品液Lを容器100に目標充填量Qだけ充填できることになる。さらに、下記式(1c)に示すように、充填量Q1が目標充填量Qを超えるように補室容積VB3を設定して、液弁VLの開閉を制御することによっても、一段充填だけで容器100に目標充填量Qを満たす製品液Lを充填できる。
目標充填量Q=充填量Q1=(1-PB/PF)×(VB1+VB3) … 式(1c)
【0072】
[差圧形成ステップ]
第2実施形態においても、
図13(a)に示すように、液弁VLを閉じることで、充填装置1Bは貯留槽3と容器100の間にカウンタ圧力P
Fが容器圧力P
Bよりも大きい圧力差を形成する。カウンタ圧力P
Fおよび容器圧力P
Bがともに大気圧以上の正圧であることは第1実施形態と同じである。容器100の内部には例えば大気圧の炭酸ガスCGが充填されている。この差圧形成ステップおよび次の充填ステップを通じて、第三ガス弁VG3は閉じられている。
【0073】
[充填ステップ]
次に、
図13(b)に示すように、液弁VLを開くと、貯留槽3に貯えられている製品液Lは液供給路7を通って容器100に充填される。この充填は、容器100液供給路7との接続部分を除く部分は密閉して、炭酸ガスCGを容器100の外部に逃がすことなく閉じ込めたままで圧力差により製品液Lを充填する。
【0074】
この充填ステップにおいて、貯留槽3に付加されているカウンタ圧力PFに容器100のヘッドスペース105における容器圧力PBが平衡になるまで充填が継続される。
【0075】
ここで、容器100への充填量Q1は、以下に再掲する式(1c)により求められる。
目標充填量Q=充填量Q1=(1-PB/PF)×(VB1+VB3) … 式(1c)
【0076】
カウンタ圧力PFおよび容器圧力PBを、第1実施形態と同様にそれぞれ5気圧(正圧)、1気圧(大気圧)とする。また、容器100の容積VB1を520mlとし、目標充填量Qを500mlとする。
これらを式(1c)に代入して、VB3について解くと以下の通りである。つまり、105(ml)以上の補室容積VB3が確保されれば、容積VB1が520mlの容器100に対して、500mlの目標充填量Qを充填できる。これをケース1とする。
目標充填量Q=500=(1-1/5)×(520+VB3)
VB2=(500-416)×4/5=105(ml)
【0077】
[第2実施形態の変形例]
また、第1実施形態は二段充填行う充填装置1Aを説明し、第2実施形態は一段充填を行う充填装置1Bを説明した。ところが、充填装置1Aは、一段充填と二段充填の兼用の充填装置として用いることができる。
【0078】
ここで、一段充填で目標充填量を充填できるか否かは、容器100の容積および目標充填流量によるところが大きい。そこで、一段充填で目標充填量を充填できる例である前述のケース1に対して二段充填が必要となるケース2を示す。なお、ケース2においても、補室容積VB3はケース1と同じ(105ml)ものとする。
【0079】
ケース1、ケース2について、差圧に基づいて製品液Lを充填した後の容器内の圧力と充填量を求めた。結果は以下の通りであり、容器の容積が500mlと小さいケース1であれば一段充填で目標充填量Qを満たすことができる。これに対して、容器の容量が1000mlと大きいケース2においては一段充填では目標充填量Qを満たすことができない。また、仮に一段充填で目標充填量Qを満たすように充填すると、充填後の容器圧力PBが容器100の耐圧力PPを超えてしまう。したがって、ケース2については、複数段充填、例えば二段充填を採用することが必要である。
【0080】
ケース1:
容器の容積VB1:520ml 補室容積VB3:105ml 目標充填量Q:500ml
カウンタ圧力PF=5気圧
充填前の容器の圧力PB=1気圧
容器の耐圧力PP=7気圧
充填後の容器の圧力PB=(VB1+VB3)/(VB1+VB3-Q)
=625/(625-500)=5気圧
充填量Q1=(1-PB/PF)×(VB1+VB3)=4/5×625=500ml
【0081】
ケース2:
容器の容積VB1:1040ml 補室容積VB3:105ml 目標充填量Q:1000ml
カウンタ圧力PF=5気圧
充填前の容器の圧力PB=1気圧
容器の耐圧力PP=7気圧
充填後の容器の圧力PB=(VB1+VB3)/(VB1+VB3-Q)
=1145/(1145-1000)=7.9気圧
充填量Q1=(1-PB/PF)×(VB1+VB3)=4/5×1145=916ml
【0082】
一段充填を行う専用の充填装置と複数段充填を行う専用の充填装置を揃えることもできる。しかしこれでは、一段充填専用の充填装置を使用しているときに複数段充填専用の充填装置が空いてしまうこともあり得る。したがって、飲料製造者にとって、一段充填と複数段充填を兼用できる充填装置が存在することが好ましい。第1実施形態で示した充填装置1Aに必要な構成を加えれば、一段充填と複数段充填を個別に実現できる。
【0083】
主に制御器2(
図2)が加えることが必要な構成を備える。
制御器2は、生産の対象となる容器の種類を特定する。この種類は、容積を含む概念を有している。
一例として、容器を切り替えて生産する度に、制御器2が充填装置1Aのオペレータに容器の種類を入力するように促す。制御器2は、オペレータの制御器2への入力を受けることで容器の種類を特定する。また他の例として、制御器2に所定の期間、例えば一週間の生産計画が入力される。この生産計画に容器の種類が含まれていれば、制御器2は一週間分の容器の種類を特定できる。
【0084】
また、制御器2は、容器の種類(大きさ)に応じて一段充填と二段充填のいずれを行うかを判断する。そのためには、制御器2は、容器の種類と充填の段数とが対応付けられた容器-充填段数情報を備えることが好ましい。制御器2は、生産の開始にあたって容器の種類を特定すると、この容器-充填段数情報を参照して、一段充填か二段充填のいずれかを選択する。ここでは二段充填までしか説明しないが、三段、四段などのより多い段数の充填を選択できるようにしてもよい。
【0085】
制御器2は、一段充填か二段充填が選択されると、一段充填または二段充填が実現できるように、第一ガス弁VG1、第二ガス弁VG2および液弁VLの動作を制御する。一段充填の動作は第2実施形態で説明した通りであり、二段充填の動作は第1実施形態で説明した通りである。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の変更を加えることができる。
例えば、第1実施形態および第2実施形態においては、製品液として炭酸入りの飲料の例を説明したが、本発明は炭酸が含まれていない飲料、その他の製品液にも適用できる。
また、以上で説明したガス置換は、炭酸入りの飲料を対象としているために、炭酸ガス用いる。ところが、本発明における置換ガスは炭酸ガスに限らず、容器に充填される製品液の特性維持に必要なガス成分、例えば窒素ガスなどの不活性ガスによりガス置換することができる。
また、本実施形態で説明した容器100は樹脂製であるが、本発明において充填の対象は樹脂製の容器に限らず、可撓性を有する他の容器、例えば金属製の缶容器にも適用できる。また、本発明は可撓性を有しない例えばガラス製のびんを充填の対象から排除するものではない。
【0087】
さらに、一段充填は第2実施形態の手法に限るものではない。例えば、容器100の内部と貯留槽3のガス相3Sとの差圧が十分に大きく、かつ、製品液Lが目標充填量に達したときの容器100のヘッドスペース105が大きいという条件を満足すれば、一段充填を実現できる場合がある。
また、貯留槽3と容器100を繋ぐ液供給路7に容器100の容積の一部としての機能を積極的に持たせることによっても一段充填は実現される。つまり、
図12において、液弁VLを閉じると、貯留槽3と液弁VLとの間は製品液Lが満たされるが、液弁VLよりも容器100の側の内部は容積V
B2を有する空隙をなす。この空隙は液弁VLと容器100の間に設けられる、本発明の第二補室容積に該当する。なお、上述した第1実施形態および第2実施形態においては、補室容積V
B2をゼロ、つまり第二補室容積は存在しないものとみなしている。
【符号の説明】
【0088】
1A,1B 充填装置
2 制御器
3 貯留槽
3S ガス相
5 補室槽
6 圧力調整室
5A ピストン
5B シリンダ
7 液供給路
11 第一ガス導出路
13 第二ガス導出路
14 第三ガス排出路
15 第一圧力センサ
17 第二圧力センサ
19 第三圧力センサ
20 密閉チャンバ
21 密閉室
22 二重管構造
23 内管
24 外管
25 ノズル
27 容器保持開口
28 ガス供給路
29 ガス排出路
30 封緘材ヘッド
40 給排機構
41 液供給路
43 ガス供給路
44,46 ガス弁
45 ガス排出路
100 容器
101 口部
103 封緘材
105 ヘッドスペース
VG1 第一ガス弁
VG2 第二ガス弁
VG3 第三ガス弁
VL 液弁