IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローズマウント インコーポレイテッドの特許一覧

特許7174766バイオリアクター適用のための使い捨てpHセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】バイオリアクター適用のための使い捨てpHセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20221110BHJP
   G01N 27/36 20060101ALI20221110BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20221110BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01N27/416 353Z
G01N27/36 Z
G01N27/28 301A
G01N27/30 311Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020545096
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019019810
(87)【国際公開番号】W WO2019168966
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】62/636,334
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/277,169
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジンポー
(72)【発明者】
【氏名】ダーカー,アンドリュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】サムラル,リック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ボウルズ,ライアン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ラッチ,タイレル・エル
(72)【発明者】
【氏名】シモン,ジョン・ダブリュー
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0312170(US,A1)
【文献】実開昭61-135257(JP,U)
【文献】特開平09-021777(JP,A)
【文献】実開昭63-157655(JP,U)
【文献】特開2017-215313(JP,A)
【文献】特開平04-213052(JP,A)
【文献】特開2002-005872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178153(US,A1)
【文献】特開2001-242134(JP,A)
【文献】特開2004-157015(JP,A)
【文献】特開2017-117482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て容器用のpHセンサであって、
前記使い捨て容器のフランジへ結合するように構成されたプランジャスリーブ、
前記プランジャスリーブ内で貯蔵位置と動作位置との間を軸方向に移動可能なプランジャ、
前記プランジャに結合されたpH感知素子であって、前記貯蔵位置において貯蔵チャンバ内に配設され、且つ前記動作位置において前記使い捨て容器の内部に露出されるように構成されている前記pH感知素子、及び
前記プランジャに結合されるロック部材であって、ロック位置及びロック解除位置を有し、前記ロック位置にあるとき、前記プランジャの移動を阻止し、前記ロック部材が、前記プランジャの軸方向と垂直方向に移動させることにより、前記ロック位置及び前記ロック解除位置の間を移動可能である、ように構成されている前記ロック部材、
を備えている、
上記pHセンサ。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間をスライドするように構成されている、請求項1に記載のpHセンサ。
【請求項3】
前記ロック部材は、異なる直径を有する複数の相互接続された穴を含んでいる、請求項2に記載のpHセンサ。
【請求項4】
前記相互接続された穴の1つは、前記プランジャが前記ロック部材を通して軸方向に移動を可能にするように、サイズが決められた直径を有する、請求項3に記載のpHセンサ。
【請求項5】
前記相互接続された穴の別の1つは、それを通して前記プランジャの軸方向の移動を阻止するように、サイズが決められた直径を有する、請求項4に記載のpHセンサ。
【請求項6】
使い捨て容器用のpHセンサであって、
前記使い捨て容器のフランジへ結合するように構成されたプランジャスリーブ、
前記プランジャスリーブ内で充填位置、貯蔵位置、及び動作位置の間を軸方向に移動可能なプランジャ、
前記プランジャに結合されたpH感知素子であって、前記貯蔵位置において貯蔵チャンバ内に配設され、且つ前記動作位置において前記使い捨て容器の内部に露出されるように構成されている前記pH感知素子、
前記プランジャに結合されるロック部材であって、ロック位置及びロック解除位置を有し、前記ロック位置にあるとき、前記プランジャの移動を阻止し、前記ロック部材が、前記プランジャの軸方向と垂直方向に移動させることにより、前記ロック位置及び前記ロック解除位置の間を移動可能である、ように構成されている前記ロック部材、
を備え、且つ
前記プランジャは、前記プランジャが前記充填位置にあるときに参照電極用充填材チャンバへのアクセスを可能にする少なくとも1つの充填材チャネルを含む、
上記pHセンサ。
【請求項7】
前記プランジャの周りに配設された封止部をさらに含み、且つ前記封止部は、前記プランジャが前記貯蔵位置にあるときには前記少なくとも1つの充填材チャネルの第1の側にあるように、且つ前記プランジャが前記充填位置にあるときには前記少なくとも1つの充填材チャネルの反対側にあるように配置されている、請求項6に記載のpHセンサ。
【請求項8】
前記プランジャは、貯蔵溶液充填材腔部に流体的に結合されている貯蔵溶液充填材チャネルを備える端部を有している、請求項6に記載のpHセンサ。
【請求項9】
前記貯蔵溶液充填材チャネルを封止するために、前記プランジャの前記端部に封止的に結合された充填材キャップをさらに含む、請求項8に記載のpHセンサ。
【請求項10】
前記充填材キャップは、前記充填材キャップを前記プランジャの前記端部にロックするための機械的ロック用形状部を含む、請求項9に記載のpHセンサ。
【請求項11】
前記参照電極用充填材チャンバ内に少なくとも部分的に配設された参照電極をさらに含む、請求項6記載のpHセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
pHの決定は、今日最も一般的なプロセス化学測定の1つである。pHは、水溶液中の水素イオンと水酸化物イオンの相対量の尺度である。発酵及び細胞培養において、最も重要なプロセスの課題の1つは、最適なpHレベルを維持することである。発酵プロセスは、生きている生物(例えば、酵母、細菌、又は真菌株)を利用して有効成分を生成する。発酵プロセスは通常比較的短い期間(2~7日)である。細胞培養は、その培養において哺乳類の細胞を成長させて有効成分を生成するというプロセスである。細胞培養プロセスには通常、少し長い時間(2~8週間)がかかる。
【背景技術】
【0002】
発酵及び細胞培養の分野におけるpH測定についての1つの重要な課題は、発酵槽又はバイオリアクターに関連する洗浄プロセスである。具体的には、クロスバッチ汚染又は不要な増殖を防ぐために、発酵槽又はバイオリアクターをプロセスの開始前に滅菌する必要がある。さらに、pHセンサは通常、緩衝液を用いて2点較正を行う。残りの緩衝液の化学物質は、発酵又は培養バッチの開始前に除去される必要がある。そのような洗浄は、pHセンサ、及び発酵槽又はバイオリアクターを水蒸気で蒸すことを含みうる。高温、水蒸気、及び急激な熱衝撃に曝されることは、センサの寿命に大きな影響を与える可能性がある。
【0003】
ライフサイエンス産業は、大規模な定置洗浄(CIP:clean in place)設備を備えたステンレス鋼で作られた大規模な資本集約的施設から、使い捨てバイオリアクターとして機能するポリマーベースのバッグ又は容器を利用する、より小規模な施設へ向かっている。使い捨てのバイオリアクターバッグは、一度使用すれば廃棄できる。使い捨てバイオリアクターを使用すると、プラントに必要な資本コストを大幅に削減できる。たとえば、ステンレス鋼のCIP設備を用いる既存の施設では、蒸気洗浄サイクルに耐えるように設計されたハイエンド機器を含み、運用コストの最大90%がCIP設備に関連している場合がある。使い捨ての1回使用バイオリアクターバッグに移行することで、資本コストのCIP部分を除くことができ、設備を柔軟ではるかに小さくできる。このことは、例えばよりターゲットを絞った薬剤療法及び他の小規模アプリケーションに必要とされる、より小さなバッチ生産を可能にする。
【0004】
使い捨てpHセンサは、米国特許第8,900,855号に記載されている。この特許に記載されているセンサは、バイオリアクターに適した使い捨てpHセンサである。このセンサは、ガラスpH電極に基づく使い捨てのpHセンサを収容するように構成されているコンパートメントによって、使い捨てのバイオリアクターバッグの壁に取り付けることができる。貯蔵中、このガラス電極は、貯蔵緩衝溶液内に浸される。作動すると、このpHセンサは、この貯蔵緩衝溶液の既知のpH値に対して1点較正され、次いでスライド機構を介して或る操作位置までバイオリアクターバッグ内へ押し込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記米国特許第8,900,855号に記載されたセンサを超える多くの改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
使い捨て容器用のpHセンサは、上記使い捨て容器のフランジへ結合するように構成されたプランジャスリーブを含んでいる。プランジャは、上記プランジャスリーブ内で貯蔵位置と動作位置との間を軸方向に移動可能である。pH感知素子が上記プランジャに結合され、上記pH感知素子は、上記貯蔵位置において貯蔵チャンバ内に設けられ、上記動作位置において上記使い捨て容器の内部に露出されるように構成されている。一例として、温度感知素子が上記pHセンサ内に配置され、上記pH感知素子の近くの温度を感知するように構成されている。別の例において、ロック部材が上記プランジャに結合され、上記ロック部材はロック位置及びロック解除位置を有し、上記ロック部材は、ロック位置にあるとき、上記プランジャの移動を阻止するように構成されている。さらに別の例では、上記プランジャは、上記プランジャが充填位置にあるとき、参照電極用充填材チャンバへのアクセスを可能にする少なくとも1つの充填材チャネルを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本発明の1実施形態による、バイオリアクターバッグフランジに結合されたpHセンサの概略図である。
図1B】本発明の1実施形態によるpHセンサの概略図である。
図2】本発明の1実施形態による、pHセンサのスライドロック部の概略図である。
図3A】本発明の1実施形態による、貯蔵位置にロックされたpHセンサを示す概略図である。
図3B】本発明の1実施形態による、ロック解除された貯蔵位置にあるpHセンサを示す概略図である。
図3C】本発明の1実施形態による、ロック解除された動作位置にあるpHセンサを示す概略図である。
図3D】本発明の1実施形態による、動作位置にロックされたpHセンサを示す概略図である。
図4A】バイオリアクターフランジへの取付け具が有る場合の、動作位置でのpHセンサを示す図である。
図4B】バイオリアクターフランジへの取付け具がない場合の、動作位置でのpHセンサを示す図である。
図5A】動作位置におけるpHセンサの断面図である。
図5B】貯蔵位置におけるpHセンサの断面図である。
図6A】本発明の1実施形態による、プランジャが引き上げられた状態でのpHセンサの参照電極用充填材腔部を充填することを示す概略図である。
図6B】本発明の1実施形態による、プランジャが引き下げられた状態でのpHセンサの参照電極用充填材腔部を充填することを示す概略図である。
図7A】本発明の1実施形態による、充填材キャップが取り去られて、充填材チャネルを介してpHセンサの貯蔵充填材腔部を充填することを示す概略図である。
図7B】本発明の1実施形態による、充填材チャネルを介してpHセンサの貯蔵充填材腔部を充填するときの、充填材キャップがpHセンサに結合されたことを示す概略図である。
図7C】本発明の実施形態による、pHセンサに取り付けることができる貯蔵キャップの斜視図である。
図8】本発明の別の実施形態による、充填材キャップの別の設計の概略断面図である。
図9】本発明の別の実施形態による、別のセンサとバッグのインターフェースの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
温度は、重要なパラメータであり、これは、pH感知ガラス電極の理論的な応答を変化させることによって、pH測定に影響を与える。較正操作中、pHセンサは未だ貯蔵位置にあり、ガラス電極はバイオリアクターの外側にある。バッグ内のプロセス温度は普通は或る一定の温度(例えば36.5℃)に制御されるが、取り付けられたpHセンサは、簡潔な制御メカニズムを持たず室温(通常は20~25℃)にさらされる。このことは、pHセンサ全体に温度勾配が生じさせ、その結果、較正用緩衝液の温度は不明になり且つ予測不能になる。このことは、センサの較正においてエラーを発生させる可能性がある。
【0009】
センサ動作中、ガラス電極は、バイオリアクタープロセス内に押し込まれる。しかし、このガラス電極の近くの局所温度とバイオリアクター温度計の温度とは異なる場合がある。従って、正確な温度補償を確実に行うために、ガラス電極の温度測定が好ましい。これは、ガラス球が、バイオリアクターバッグの壁に近いとき、バッグの中心とは異なる温度になる可能性があるため特に重要である。従って、本発明の少なくとも1つの態様は、温度感知素子をpHセンサセンブリ内に、好ましくはガラス球に近接して、提供する。温度感知素子は、温度とともに変化する電気的特性を有する何らかの適切なデバイスでありうる。実施例には、抵抗温度デバイス(RTD)、熱電対、サーミスタなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
センサ動作中、ガラス電極部分は、バッグの内圧によってその動作位置から貯蔵位置に押し戻される可能性がある。これにより、動作中にセンサが不活性になるリスクが発生する。この状況に対処するために、本発明の少なくとも1つの実施形態は、pHセンサが動作位置から動かされるのを防ぐように構成されたロック用機構を提供している。
【0011】
本明細書に開示された少なくともいくつかの実施形態において、製造性の改善されたpHセンサが提供される。このpHセンサセンブリには、一般的に2つの封止された腔部があり、この腔部は、気泡(これは開回路を作ることによってセンサを故障させる可能性がある)が残存していない溶液で満たされる必要がある。いくつかの実施形態は、気泡を生成することなく、これら2つの腔部を充填する方法を提供する。このことは、そのようなpHセンサが大規模に生産されるとき、製造速度と歩留まりを向上させうる。
【0012】
その結果、本発明の実施形態は一般的に、上記の特徴の1又は複数個を含む。デザインは、さまざまな図に関連して示されている。
【0013】
図1Aは、本発明の1実施形態による、バイオリアクターバッグフランジに結合されたpHセンサの概略側面図である。pHセンサ100は、バイオリアクターバッグフランジ102に結合されて図示されており、このフランジ102は、バイオリアクター壁104にインタフェース106で結合されている。バイオリアクターバッグフランジ102は、ホースかかり取付具108を含む。さらに、pHセンサの結合部分110は、好ましくはホースかかり部112を含む。プランジャスリーブ114(図1Bに示される)がホースかかり取付具108に挿入されるとき、結合部分110のホースかかり部112は、バイオリアクターバッグフランジ102のホースかかり部108に隣接して配置される。プラスチック又は高分子の配管116が、ホースかかり部112、108を覆って配置され、pHセンサ100をバイオリアクターバッグフランジ102に固定する。プラスチック配管はまた、pHセンサ100をバイオリアクターバッグフランジ102に対して封止する。プラスチック配管116は、結束バンド(zip ties)又は他の適切な固定具を用いてさらに固定されうる。
【0014】
図1Aに示されるように、pHセンサ100は、プランジャフランジ118を含み、このプランジャフランジ118は、エンドユーザーがpHセンサ100を動作させるために、その動作位置までこのプランジャをバイオリアクタープロセス内に押し込むことを可能にする。pHセンサ100はまた、ロック位置又はロック解除位置を提供するように矢印122の方向に移動可能なスライドロック部120を含む。ロック解除位置にあるとき、pHセンサ100は、バイオリアクターバッグに出入りするように軸方向に移動可能である。逆に、スライドロック部120がロック位置にあるとき、pHセンサは、バッグフランジ102又はバイオリアクターバッグに対し軸方向に移動出来ない。
【0015】
図1Aはまた、プランジャスリーブ114の反対側の端部に電気コネクタ124を含んでいるpHセンサ100を示している。1例として、コネクタ124は、バリオピン(variopin:VP)であり、これはpH信号及び温度信号の同時通信を可能にするマルチピンコネクタである。さらに、VPコネクタ124はまた、接続されていない状態のときでさえ、封止されている。
【0016】
図1Bは、本発明の1実施形態によるpHセンサの概略の斜視図である。図1Bでは、センサ100は、バッグフランジ102(図1Aに示されている)なしで示されている。プランジャスリーブ114は、結合部分110の直径よりも小さい直径を有する実質的に円筒形の形状である。この形状は、プランジャスリーブがホースかかり取付具108に挿入されたときに、肩部124がバッグフランジ102のホースかかり部108に当接することを可能にして確実な軸方向停止を作り出す。このような停止は、バイオリアクターバッグフランジ102に対するpHセンサの反復可能な軸方向位置を作るのに役立つ。
【0017】
図2は、スライドロック部120の概略図であり、貯蔵位置及び動作位置におけるその使用を示している。図2に示されたように、スライドロック部120は、異なる外径を有する1対の相互接続された穴130、132を含む。穴132は、プランジャ134の軸方向の動き(図3A~3Dに示される)を可能にするサイズである。逆に、穴130は、摩擦若しくは締まりばめ、又はプランジャスリーブ114の溝若しくは構造物との協働係合により、プランジャ134の軸方向の動きを防止するサイズである。スライドロック部120のロック/ロック解除の位置は、矢印122の方向にスライド(摺動)することによって切り替えられうる。これは、プランジャ134の動きを貯蔵位置と動作位置の両方でロックするメカニズムを提供し、それにより、pHセンサの望ましくない作動又は非作動を防止する。スライドロック部120は、望ましくないスライドを防ぐために、ロックアウト/タグアウト用の2つの穴136、138を備えている。
【0018】
図3A~3Dは、本発明の1実施形態によるpHセンサの様々なロック/ロック解除された、貯蔵/動作位置を示す概略図である。図3Aは、貯蔵位置にロックされたpHセンサ100を示す。ロック位置は、最も左側の位置に置かれたスライドロック部120によって識別されうる。さらに、貯蔵位置は、プランジャスリーブ114に当接して配置されている端部140によって特定されうる。図3Bは、ロック解除された貯蔵位置にあるpHセンサ100を示す。見て分かるように、端部140は依然としてプランジャスリーブ114に当接して配置されているが、スライドロック部120は、最も左側の位置(図3Aに示される)から最も右側の位置までスライドされている。したがって、プランジャ134は、図3Bにおいて軸方向に移動可能である。
【0019】
図3Cは、ロック解除された動作位置にあるpHセンサ100を示す。図3Bと比較して、スライドロック部120は依然と同じ位置にある。しかし、プランジャフランジ118は、図3Bにおけるよりも図3Cにおいてスライドロック部120により近い。さらに、プランジャ134は軸方向にバイオリアクターバッグ内へ移動されており、これに起因して端部140がプランジャスリーブ114から離間させられる。これは、バイオリアクターの内容物がpH感知球142に接触し、バイオリアクター内容物のpH値を得ることを可能にする。図3Dは、スライドロック部120が最も左の位置に戻されたときの、動作位置にロックされたpHセンサ100を示す。この位置において、プランジャ134は、軸方向に動くことを妨げられ、その結果、端部140とプランジャスリーブ114との間の間隔を維持する。図3A~3Dは、ロック機構の一例を示すが、当業者は、軸方向の動きを選択的に禁止するために様々な機構を使用できることを認識するであろう。
【0020】
図4A及び4Bは、動作位置での(図4A)、且つバイオリアクターバッグフランジに取り付けられていない(図4B)pHセンサ100を示している。図4A及び4Bは、動作位置にあるpHセンサを示す。この位置で、プランジャ134は、貯蔵溶液と一緒に、プロセス内(即ち、バイオリアクターの内部)に押し出されており、その結果、pHガラス電極142及び参照電極用接合部(図5A及び5Bに示される)はプロセスに曝される。プランジャ134の端部は開いているように設計され、このことはプロセス中の気泡が通り抜けることを可能にし、その結果、気泡がpHガラス電極142又は参照電極用接合部に蓄積するリスクを低減する。
【0021】
図5A及び5Bは、それぞれ、動作位置及び貯蔵位置にあるpHセンサの1実施形態の断面図である。図5Aにおいて、端部140はプランジャスリーブ114から間隔を空けられ、それによりpHセンサ100を動作位置に配置する。この位置で、サンプル流体(例えば、プロセス流体又はバイオリアクターの内容物)は、pHガラス電極142及び参照電極152の参照電極用接合部150と接触する。参照電極用接合部150は、セラミックで形成され得、そして参照電極用充填材腔部154からプロセスへのイオンの流れを支持するのに十分な多孔性を有する。参照電極用充填材腔部154は、適切な液体又はゲル化電解質(例えばKCl又はAg/KCl)で充填される。参照電極用充填材溶液は、1つ以上の参照電極用充填材チャネル156を介して参照電極用充填材腔部154に導入される。参照電極用充填材溶液は、一対の封止要素(例えば、Oリング)158、160を介して、参照電極用充填材腔部154内に実質的に封止される。参照電極用充填材腔部154は、プランジャスリーブ114の端部に位置する2つの参照電極用充填材チャネル156を通して充填され、そしてこの充填動作は、図6A及び6Bに示されている。
【0022】
電極152は、好ましくは、参照電極用接合部162及び参照電極用接合部150を有する二重接合参照電極である。参照電極用接合部162は、参照電極用接合部150と同様に、参照電極用充填材腔部154と電極152の内部との間のイオンの流れを支持するのに十分な多孔性を有する。二重接合参照電極152は、pH測定中にそれを通してイオンが流れる一対の参照電極用接合部150、162のためにそのように呼ばれる。1実施形態において、参照電極用電極152は、ガラス配管及び2つのセラミック参照電極用接合部162、150によって保護されている銀/塩化銀のワイヤ(図示せず)に基づく。1つの参照電極用接合部162は、ガラス配管の端部に配置され、第2の接合部150は、参照電極用充填材腔部154と貯蔵充填材溶液腔部168(図5Bに示される)との間に配置され、これら2つの腔部を分離し、参照電極152がバイオリアクタープロセスによって汚損又は汚染されるのを防ぐ。
【0023】
図5A及び5B示されているように、pHセンサ100は、pHガラス電極142のガラス管166内に設置された温度感知素子164を含む。温度感知素子は、温度とともに変化する電気特性を有する何らかの適切な構造物でありうる。例として、抵抗温度デバイス(RTD、熱電対、サーミスタなど)が含まれるが、これらに限定されるものではない。温度感知素子164を管166内に配置することは、測定温度が正確にpHガラス電極142の温度であることを保証するのに役立つ。素子164とpHガラス電極142との間のこの密接な熱結合は、較正及びpH測定の精度の改善に役立つ。
【0024】
図5Bは、貯蔵位置にあるpHセンサ100を示す断面図である。図5Bに示されるように、プランジャフランジ118は、図5Aにおけるよりも図5Bにおいてスライドロック部120から一層離されている。さらに、端部140は、プランジャスリーブ114と接触するように押し込まれている。さらに、貯蔵充填材溶液腔部168は、封止要素(例えば、Oリング)160及び170を介してプランジャスリーブ114内に封止されている。この位置で、pHガラス電極142は、貯蔵充填材溶液腔部168内に封止されている。貯蔵充填材溶液は、既知の或るpH値を有するように選択されている。したがって、pHセンサ100を動作位置に配置する前に、pHガラス電極に貯蔵充填材溶液のpHを感知させることにより、較正動作が行われうる。既知のpH値を有する貯蔵充填材溶液は、pHセンサに対してワンポイントの較正の能力を提供し、それにより、pHセンサがその動作位置に配置されるときの(図5Aに示される)エラーを最小化する。
【0025】
図6A及び6Bは、本発明の1実施形態によるpHセンサの参照電極用充填材腔部を充填することの概略図である。図6Aにおいて、プランジャは、Oリング158が参照電極用充填材チャネル156の上方に配置されることを可能にするように十分に持ち上げられ又は引き出されている。この位置で、参照電極用充填材溶液は、参照電極用充填材チャンバ154内に導入されうる。参照電極用充填材チャンバ154の下部は、Oリング160(図5A及び5Bに示されている)によって依然として封止されている。十分な量の参照電極用充填材溶液が参照電極用充填材腔部154内に導入されるとき、Oリング158は参照電極用充填材溶液チャネル156の下方に配置されるまで、プランジャは(図6Bの矢印180によって示された方向に)下げられる。この位置(図6B)において、参照電極用充填材溶液は、Oリング158、160によって参照電極用充填材チャンバ154内に封止される。一例として、プランジャスリーブ114は、ユーザーが充填操作を観察して参照電極用接合部に溜まる気泡がないことを確認できるように透明である。
【0026】
図7A及び7Bは、本発明の1実施形態による、充填材チャネルを通じてpHセンサの貯蔵充填材腔部を充填することを示す概略図である。図7Aにおいて、貯蔵充填材チャネル192を介して貯蔵充填材腔部168へのアクセスを可能にするように、充填材キャップ190(図7Bに示されている)が取り外されている。貯蔵充填材溶液は貯蔵充填材チャネル192を介して貯蔵充填材腔部168内に注入され、次いで、封止要素(例えばOリング)を備えた充填材キャップ190によって封止される。図7Bは、貯蔵充填材腔部168が貯蔵溶液で充填されたときの、pHセンサ100に連結された充填材キャップ190を図示する。図7Cに示されるように、充填材キャップ190は、封止要素(例えば、貯蔵充填材腔部168を封止するためにOリングと結合されるプラグ194など)を含む。図8は、プラグ194が充填材チャネル192を封止するように係合された充填材キャップ190を示す。1実施形態によると、図8はまた、充填材キャップ190のねじ山200に機械的ロック用形状部196を有する充填材キャップ190を示している。これは、ねじ山に切り込みを入れて、充填材キャップ190が自由に回転できるようにするか、又はハウジングではなくキャップにねじ山を持たせるだけで行うことができる。このことは、封止要素(プラグ、又はOリング)が適切に封止することを可能にするように、必要とされる距離が確保された後にのみ生じる。これを行うことは、プロセスに面することになる追加のエポキシ、接着剤などを使用せずに、充填材キャップ190は所定の位置に確実にロックされることを保証する。
【0027】
図9は、本発明の別の実施形態による、バッグに対する代替のセンサインターフェースの概略図である。図示された例において、バッグ製造業者のバイオリアクターバッグフランジと相互作用する機械的形状部302が、pHセンサに追加されている。使用中にバッグは加圧されるので、接続に関する唯一の問題はバッグへの取り付けである。これは、プラスチック製の固定デバイス(結束バンドなど)を不要にし、pHセンサを確実に固定する。
【0028】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限度で、形態及び詳細について変更を加えてもよいことを認識するであろう。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9