(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/10 20060101AFI20221110BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B22F3/10 A
B22F3/02 S
(21)【出願番号】P 2020557787
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046413
(87)【国際公開番号】W WO2020111136
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018223976
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 真也
(72)【発明者】
【氏名】野村 嘉道
(72)【発明者】
【氏名】岡田 竜太朗
(72)【発明者】
【氏名】藤光 利茂
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141192(JP,A)
【文献】特開2017-186613(JP,A)
【文献】特開昭63-069902(JP,A)
【文献】特開平11-117004(JP,A)
【文献】特開平08-134582(JP,A)
【文献】特開昭62-227703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/02
B22F 3/10
B29C 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末とバインダーとの混練物を射出成形し、オーバーハング部を有する未焼結体を得る工程;
前記オーバーハング部が鉛直方向以外の方向に突出する状態で前記未焼結体を加熱して
前記オーバーハング部が重力方向に垂れ変形した中間焼結体を生成する工程;
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程;及び
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を加熱して
前記オーバーハング部の垂れ変形を相殺するとともに前記粉末の焼結を完了する工程を含む、焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、
前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする、請求項1に記載の焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、
前記中間焼結体の生成後も前記中間焼結体を加熱し、前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする、請求項1に記載の焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程の開始時又は工程中において、
前記未焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面に接する、請求項2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、
前記未焼結体のオーバーハング部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面から離れることにより前記オーバーハング部に変形を生じさせる力がかかる、請求項2に記載の焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、
前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にした状態を継続する、請求項1に記載の焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記加力面は、前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において設けられているものであり、
前記加力面は曲面を有し、
前記加力面の形状が、前記中間焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である、請求項3又は6に記載の焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記支持面は、前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において設けられているものであり、
前記支持面は曲面を有し、
前記支持面の形状が、前記未焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である、請求項4または5に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密部品の製造技術として、粉末射出成形(Powder Injection Molding:PIM)が用いられる。粉末射出成形は、金属各種粉末とバインダーとの混練物を射出成形して得られた成形体(グリーン体、と言い換えることができる)から、加熱等によりバインダーを除去し(脱脂、と言い換えることができる)、さらに高温で加熱して粉末を焼結することにより焼結体を製造する技術である。
【0003】
これに関連する焼結体の製造方法として、例えば、特許文献1には、金属粉末射出成形(MIM法(Metal Injection Molding法)により寸法精度の高い焼結品を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末射出成形を用いることにより、高い寸法精度を有し、三次元的な複雑な形状を有する焼結体が容易に製造できる。しかしながら、目的とする焼結体の形状によっては、脱脂過程及び焼結過程において生じた変形が焼結体に残ることがある。例えば、オーバーハング部を有する焼結体を得ようとする場合、その製造過程において、オーバーハング部の重さを受けて生じた変形が焼結体に残ることがある。特に優れた寸法精度が求められる製品を得るため、粉末射出成形において、更なる寸法精度の向上が必要である。
【0006】
本開示は、オーバーハング部を有し、かつ高い寸法精度を有する焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、粉末とバインダーとの混練物を射出成形し、オーバーハング部を有する未焼結体を得る工程;前記オーバーハング部が鉛直方向以外の方向に突出する状態で前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程;前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程;及び前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を加熱して前記粉末の焼結を完了する工程を含む、焼結体の製造方法に関する。この構成によれば、オーバーハング部を有し、かつ高い寸法精度を有する焼結体を製造することができる。
【0008】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にしてよい。この構成によれば、中間焼結体を上下方向に反転するという簡単な方法で、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にすることができる。
【0009】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体の生成後も前記中間焼結体を加熱し、前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にしてよい。この構成によれば、中間焼結体の生成時から加熱を継続するだけで、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にすることができる。
【0010】
前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程の開始時又は工程中において、前記未焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面に接してよい。
【0011】
前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、前記未焼結体のオーバーハング部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面から離れることにより前記オーバーハング部に変形を生じさせる力がかかってよい。
【0012】
前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にした状態を継続してよい。
【0013】
前記加力面は、前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において設けられているものであり、前記加力面は曲面を有し、前記加力面の形状が、前記中間焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状であってよい。この構成によれば、例えば同じ炉内で、中間焼結体を生成する工程と中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程とを連続して行うことができる。しかも、中間焼結体のオーバーハング部が加力面に接した後は、オーバーハング部の下面を加力面で全面的に支持することができる。
【0014】
前記支持面は、前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において設けられているものであり、前記支持面は曲面を有し、前記支持面の形状が、前記未焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状であってよい。この構成によれば、未焼結体のオーバーハング部が支持面に接している間は、オーバーハング部の下面を支持面で全面的に支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、オーバーハング部を有し、かつ高い寸法精度を有する焼結体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1A~1Dは、第1実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図2】
図2A~2Cは、第2実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図3】
図3A~3Dは、第3実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図4】
図4A~4Eは、第4実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図5】
図5A~5Dは、第5実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図6】
図6A~6Eは、第6実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【
図7】
図7A~7Eは、第7実施形態に係る焼結体の製造方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態における焼結体の製造方法は、オーバーハング部を有する未焼結体を得る工程、前記オーバーハング部が鉛直方向以外の方向に突出する状態で前記未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程、及び前記中間焼結体を加熱して焼結を完了する工程を含む。
【0018】
また、第1実施形態における焼結体の製造方法においては、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする。以下、
図1A~1Dを参照して第1実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0019】
(1)未焼結体を得る工程
図1Aは、支持面101上に設置した未焼結体11を示す。未焼結体11は、ニッケル基合金粉末とバインダーとの混練物を射出成形して得られたグリーン体である。また、支持面101は、水平面であり、未焼結体11、中間焼結体12、又は焼結体13を支えている。
【0020】
未焼結体11は、本体11aとオーバーハング部11bとを有する。本体11a及びオーバーハング部11bの上面及び下面の形状は、支持面101と平行又は略平行な平面形状である。ただし、本体11a及びオーバーハング部11bの上面及び下面の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0021】
本開示において、支持面とは、未焼結体、中間焼結体、及び焼結体と接することにより、それらの一部又は全体を支える面である。
【0022】
支持面101の形状は、未焼結体の本体11aの下面、上下方向に反転した後の中間焼結体12の本体12aの下面、及び焼結体の本体13aの下面等、支持面101と対向し得る面と同一形状であるが、同一形状に限られない。
【0023】
支持面101の形状は、例えば、未焼結体11、中間焼結体12、又は焼結体13の形状に対応するよう設計してよく、支持面101の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0024】
本開示において、円弧形状は、ある点からの距離が等しい点の集合によりできる曲線からなる形状、及び楕円弧形状も含む。
【0025】
支持面101を構成する材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、及びこれらの複合酸化物等の各種セラミックス材料が挙げられる。
【0026】
本開示において、上下方向とは鉛直方向であってよく、
図1を参照すれば、XY平面上に未焼結体11を設置した場合におけるZ軸の方向である。また、上下方向が鉛直方向であれば、上下方向に反転するとは、水平軸を中心に反転させることとも言い換えることができる。
【0027】
また、本開示において、上面とは、その設置状態において、上方を向く面をいう。
図1A~1Dを参照すれば、XY平面上に未焼結体11を設置した場合における+Zの向きの面である。一方、本開示において下面とは、その設置状態において、下方を向く面をいう。
図1を参照すれば、XY平面上に未焼結体11を設置した場合における-Zの向きの面である。
【0028】
未焼結体のオーバーハング部11bは、本体11aから水平方向(XY平面と平行な方向)に突出し、未焼結体のオーバーハング部11bの下面は、支持面101から離れている。つまり、本実施形態の未焼結体のオーバーハング部11bの下面は支持面101に接していない。ただし、未焼結体のオーバーハング部11bの形状は、後述する未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)する形状である限り特に限定されるものではない。未焼結体のオーバーハング部11bの突出方向も水平方向(XY平面と平行な方向)に限られない。
【0029】
また、
図1Aは、一箇所のオーバーハング部11bを有する未焼結体11を図示したものであるが、未焼結体11は一箇所又は二箇所以上のオーバーハング部を有してもよい。
【0030】
本開示において、オーバーハング部とは、未焼結体又は中間焼結体を加熱する際のいずれかの設置状態において、その本体から鉛直方向以外の方向に突出する部分である。未焼結体の設置状態と中間焼結体の設置状態が異なる場合には、それぞれの設置状態においてオーバーハング部を有するかどうか、あらかじめ想定する必要がある。
【0031】
未焼結体11は、ニッケル基合金粉末を含むものであるが、未焼結体に含まれる粉末は、特に限定されるものではない。金属やセラミックス等、従来公知の粉末を幅広く適用できる。金属粉末としては、鉄、コバルト、チタン及びニッケル等の純金属の粉末、並びにこれら金属の各種合金の粉末を挙げることができる。セラミックス粉末としては、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭化タングステン、炭化ケイ素、これらセラミックスの複合酸化物、及びこれらセラミックスの複合炭化物等の粉末が挙げられる。
【0032】
また、ニッケル基合金粉末は、その組成中でニッケルの含有量が最も多い合金粉末をいい、ニッケル以外の成分は、特に限定されない。
【0033】
ニッケル基合金粉末として、例えば、Hastelloy X、Inconel 600、Inconel 625、Inconel 718、Inconel 713、MarM247、CM247LC、並びにInconel 738及びB1900等が挙げられる。なお、「HASTELLOY」、及び「INCONEL」は登録商標である。
【0034】
未焼結体を構成するバインダーも、特に限定されるものではない。従来、粉末射出成形に用いられるものを採用できる。ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、カルナウバワックス(CW)、パラフィンワックス(PW)、ステアリン酸(St)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
本開示において、未焼結体を得る工程における、粉末とバインダーとの混練物は、従来の粉末射出成形で用いられる方法により得られる。混練条件は、粉末の組成及び粒径、バインダーの種類及び組成、並びにこれらの配合量等の諸条件により適宜調整すればよい。
【0036】
また、混練物中のバインダーの含有量は、従来の粉末射出成形で用いられる条件を採用でき、成形条件や形状等に応じて適宜調整すればよい。
【0037】
得られた混練物の射出成形は、射出成形機を用いて行うことができる。射出成形の条件は、従来の射出成形で用いられる条件を採用でき、粉末の組成や粒径、バインダーの種類及び組成、並びに混練物中のバインダーの含有量等に応じて適宜調整すればよい。
【0038】
射出成形後、必要に応じてバインダーの一部を取り除いてもよい。混練物を射出成形した後、一部のバインダーを取り除く(言い換えれば、一次脱脂)方法としては、従来公知の方法を採用することができ、特に限定されないが、バインダーを加熱すること、及びバインダーを溶媒(例えば、水や有機溶剤等)に溶解すること等が挙げられる。ただし、一次脱脂ではバインダーの全てを取り除かず、バインダーの一部を残存させる。また、一次脱脂は必ずしも実施する必要はない。
【0039】
本開示において、粉末とバインダーとの混練物を射出成形して得られ、一次脱脂を行っていないものをグリーン体といい、グリーン体に対して一次脱脂を行ったものをブラウン体という。グリーン体とブラウン体はいずれも未焼結体である。
【0040】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図1Bは、中間焼結体12を示す。なお、
図1B中の破線は、未焼結体11の形状を示す(後述する図においても同様)。中間焼結体12は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、例えば、支持面101上で、未焼結体11を3~72時間かけて、200~800℃程度まで徐々に加熱することによりバインダーを取り除いた後、続けて最高温度1000~1300℃において0~12時間加熱することにより得られる。このように、未焼結体11に含まれるバインダーを加熱により除去(脱脂)した後、連続して加熱することで中間焼結体12を生成してよい。
【0041】
本開示において、未焼結体を加熱して中間体を生成する工程の加熱条件は、粉末の組成、粉末の粒度等に応じて適宜調整すればよい。
【0042】
本開示において、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程の処理雰囲気は、大気;水素、及び一酸化炭素等の還元性ガス;窒素、ヘリウム、及びアルゴン(Ar)等の不活性ガス;もしくはこれらの混合ガス等を含む雰囲気、又は真空雰囲気であってよい。
【0043】
中間焼結体12は、未焼結体11の加熱により焼結が進行し収縮したものである。
図1A及び1Bに示すように、未焼結体のオーバーハング部11b及び中間焼結体のオーバーハング部12bには、重力方向の力112bが作用するため、中間焼結体のオーバーハング部12bは、未焼結体のオーバーハング部11bであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0044】
本開示において、中間焼結体とは、下記関係式(1)を満たすものである。下記関係式(1)で定められた範囲にあるものを中間焼結体とする。
0.3≦(a-c)/(a-b)≦0.7 (1)
aは未焼結体の所定箇所の長さ、bは焼結体の前記所定箇所の長さ、cは中間焼結体の前記所定箇所の長さを示す。
【0045】
aは、未焼結体の所定箇所の長さを示すところ、未焼結体の所定箇所の長さとは、例えば、未焼結体の表面上の任意の二点間の距離であり、未焼結体が辺を有する場合には、任意の辺の長さを所定箇所の長さとしてもよい。
【0046】
また、bは、焼結体の前記所定箇所の長さを示す。焼結体の前記所定箇所の長さとは、未焼結体の表面上の任意の二点に相当する焼結体上の二点間の距離であり、未焼結体が辺を有する場合には、未焼結体の任意の辺に相当する焼結体の任意の辺の長さを所定箇所の長さとしてもよい。
【0047】
さらに、cは、中間焼結体の前記所定箇所の長さを示す。中間焼結体の前記所定箇所の長さとは、未焼結体の表面上の任意の二点に相当する中間焼結体上の二点間の距離であり、中間焼結体が辺を有する場合には、未焼結体の任意の辺に相当する中間焼結体の任意の辺の長さを所定箇所の長さとしてもよい。
【0048】
また、前記関係式(1)は、0.4≦(a-c)/(a-b)≦0.6であってよく、(a-c)/(a-b)=0.5であってよい。
【0049】
未焼結体の所定箇所の長さa、焼結体の前記所定箇所の長さb、及び中間焼結体の前記所定箇所の長さcは、それぞれ未焼結体、焼結体、及び中間焼結体の代表的な辺の長さや、代表的な厚みを測定すればよい。代表的には、ノギス、マイクロメータ、ハイトゲージ、ホールゲージ、又は測定顕微鏡等を用いて測定する。なお、a,b,cのそれぞれは製造上の誤差を含むため、複数の測定箇所の寸法を測定して、それらの平均値を採用してもよい。また、bに関し、測定の対象となる焼結体は、必ずしも本実施形態の製造方法により製造した焼結体である必要はなく、その製造方法の加熱条件(時間及び温度など)と同様の加熱条件で熱処理した実験体(例えば、本実施形態の製造方法のうちの中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程を省略して製造した焼結体)であってもよい。
【0050】
また、測定箇所は曲面を有さず、直線である方が好ましい。さらに、オーバーハング部のような変形を生じやすい箇所ではなく、支持面等に常に触れて垂れ変形及び反り変形が生じにくく、安定的に相似形状への焼結収縮が起こる箇所が好ましい。測定箇所が曲面を有する場合には、任意の二点間の直線距離を測定する。
【0051】
さらに、測定箇所は、1箇所又は2箇所以上であってよく、2箇所以上測定する場合には、測定値の平均値を採用することができる。
【0052】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図1Cは、
図1Bに示す中間焼結体12を上下方向に反転して、支持面101に設置した中間焼結体12を示す。上記関係式(1)を満たす状況で、つまり中間焼結体の生成後に、上下方向に反転することにより、中間焼結体のオーバーハング部12bにかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする。
【0053】
本開示において、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にすると述べるとき、その向きは中間焼結体から見た向きである。
【0054】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図1Dは、
図1Cに示す中間焼結体12を加熱して粉末の焼結が完了した焼結体13を示す。
【0055】
第1実施形態における中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程において、例えば、最高温度1100~1400℃において30分~12時間加熱することにより粉末の焼結を完了することができる。
【0056】
本開示において、中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程の加熱条件は、粉末の組成、粉末の粒度等に応じて適宜調整すればよい。また、収縮により所望の寸法に到達した時点を焼結の完了とすればよい。
【0057】
本開示において、中間焼結体を加熱して前記粉末の焼結を完了する工程の処理雰囲気は、大気;水素、及び一酸化炭素等の還元性ガス;窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガス;並びにこれらの混合ガス等を含む雰囲気、又は真空雰囲気であってよい。
【0058】
以上の工程により、垂れ変形した中間焼結体のオーバーハング部12bに対し、力112bと逆向きの力113bを与えることとなり、オーバーハング部12bの変形を相殺することができる。その結果、
図1Dに示すように、変形、特に焼結体のオーバーハング部13bの垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体13が得られる。
【0059】
(5)任意工程
第1実施形態における焼結体の製造方法において、例えば、焼結を完了した後、熱間等方加圧加工(HIP)、溶体化処理、時効処理、機械加工及びプレス矯正等、従来公知の任意工程を含んでもよい。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態における焼結体の製造方法は、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体の生成後も前記中間焼結体を加熱し、前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする。以下、
図2A~2Cを参照し、第1実施形態と異なる点を抽出して第2実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0061】
(1)未焼結体を得る工程
図2Aは、支持面101上に設置した未焼結体21を示す。未焼結体21は、未焼結体11と同様、ニッケル基合金粉末(Hastelloy-X)とバインダー(PP,POM,PW)との混練物を射出成形して得られたグリーン体である。未焼結体21は、本体21aとオーバーハング部21bとからなる。本体21aの上面及び下面並びにオーバーハング部21bの上面の形状は、平面形状、及び円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0062】
未焼結体のオーバーハング部21bは、本体21aから水平方向(XY平面と平行な方向)に突出し、未焼結体のオーバーハング部21bの下面は、その下方にある加力面201から離れている。つまり、未焼結体のオーバーハング部21bの下面は加力面201に接していない。
【0063】
未焼結体のオーバーハング部21bの下面の形状は、加力面201と平行又は略平行な平面形状である。ただし、未焼結体のオーバーハング部21bの下面の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0064】
本開示において、加力面とは、中間焼結体が接することにより、未焼結体又は中間焼結体にかかった力と逆向きの力をかけることで、一部又は全体に生じた変形を低減又は相殺する面をいう。加力面は、中間焼結体が接するように予め未焼結体の近くに設けられていてよい。
【0065】
第2実施形態において、加力面201は、中間焼結体のオーバーハング部22bが接することにより、未焼結体のオーバーハング部21b又は中間焼結体のオーバーハング部22bにかかった力121bと逆向きの力122bをかける。
【0066】
加力面201の形状は、未焼結体のオーバーハング部21bの下面、又は中間焼結体のオーバーハング部22bの下面等、加力面201と対向し得る面と同一形状であるが、同一に限られない。
【0067】
加力面201の形状は、未焼結体のオーバーハング部21bの下面、中間焼結体のオーバーハング部22bの下面、又は焼結体のオーバーハング部23bの下面の形状等に対応するよう設計してよく、平面形状、及び円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0068】
加力面201を構成する材料としては、支持面101と同じであってよい。支持面101及び加力面201を一つの部材によって構成してよく、それぞれ別の部材によって構成してよい。支持面101と加力面201とが別の部材で構成される場合に、支持面101を構成する部材上に、加力面201を構成する部材を設置してよい。その場合、加力面201を構成する部材として、一般にセッターと呼ばれる治具を採用できる。
【0069】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図2Bは、中間焼結体22を示す。中間焼結体22は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、支持面101上で、未焼結体21を1000~5000Pa程度の窒素雰囲気下、15.5時間かけて500℃まで徐々に加熱することによりバインダーを取り除いた後、Ar雰囲気下、2時間51分かけて1240℃まで徐々に加熱することにより得られる。この加熱と、後述する(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程における加熱、及び同じく後述する(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程における加熱は連続して行ってもよい。なお、粉末の材質によっては、中間焼結体の生成条件が第1実施形態と同じであってもよい。
【0070】
中間焼結体22は、未焼結体21の加熱により焼結が進行し収縮したものである。焼結の進行により、未焼結体の本体21aは中間焼結体の本体22aに、未焼結体のオーバーハング部21bは中間焼結体のオーバーハング部22bになる。
図2Aに示すように、未焼結体のオーバーハング部21bには、重力方向の力121bが作用するため、中間焼結体のオーバーハング部22bは、未焼結体のオーバーハング部21bであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0071】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図2Bに示すように、中間焼結体22の生成後の加熱によって、中間焼結体のオーバーハング部22bが、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)すると、中間焼結体のオーバーハング部22bの少なくとも一部がその下方にある加力面201に接する。また、中間焼結体22の少なくとも一部(本実施形態では、本体22aの下面)は支持面101から離れる。これにより、加力面201が、中間焼結体のオーバーハング部22bを下方から支えることとなり、中間焼結体のオーバーハング部22bには、力121bに対する逆向きの力122bが作用する。なお、中間焼結体22が支持面101から離れるとは、中間焼結体22が支持面101に接した状態から、それらの間隔が開いた状態になることをいう。
【0072】
加力面201の高さ(支持面101と加力面201との距離とも言い換えることができる)は、中間焼結体の本体22aの少なくとも一部が、上記(a-c)/(a-b)の値が0.50で支持面101から離れるよう調整されている。ただし、中間焼結体の本体22aの少なくとも一部が、上記関係式(1)を満たす範囲で、支持面101から離れるよう加力面201の高さを調整してよい。
【0073】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図2Cは、
図2Bに示す中間焼結体22をAr雰囲気下で、最高温度1300℃において3時間加熱して粉末の焼結が完了した焼結体23を示す。焼結の完了により、中間焼結体の本体22aは焼結体の本体23aに、中間焼結体のオーバーハング部22bは焼結体のオーバーハング部23bになる。
【0074】
以上の工程により、垂れ変形したオーバーハング部22bに対し、力121bに対する逆向きの力122bを与えることとなり、オーバーハング部22bの変形を相殺することができる。その結果、
図2Cに示すように、変形、特に焼結体のオーバーハング部23bの垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体23が得られる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態における焼結体の製造方法は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程の開始時において、前記未焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面に接する。また、未焼結体を加熱して中間焼結体とする工程において、前記未焼結体のオーバーハング部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面から離れることにより前記オーバーハング部に変形を生じさせる力がかかる。以下、
図3A~3Dを参照し、第1実施形態と異なる点を抽出して第3実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0076】
(1)未焼結体を得る工程
図3Aは、支持面101上に設置した未焼結体31を示す。未焼結体31は、未焼結体11と同様、ニッケル基合金粉末(Inconel 713)とバインダー(PP,POM,PW)との混練物を射出成形して得られたグリーン体である。
【0077】
未焼結体31は、本体31aと第一のオーバーハング部31bと第二のオーバーハング部31cとからなる。
図3Aでは、本体31aが、鉛直部と、鉛直部の上端に接続された水平部を含む。第一のオーバーハング部31bは、その上面が本体31aの上面と面一となるように、本体31Aの鉛直部の上端から水平方向(水平部と反対側)に突出している。また、第二のオーバーハング部31cは、その下面が本体31aの下面と面一となるように、本体31aの鉛直部の下端から水平方向に突出している。
【0078】
本体31aの上面及び第一のオーバーハング部31bの上面の形状は、支持面101と平行又は略平行な平面形状である。ただし、本体31aの上面及び第一のオーバーハング部31bの上面の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。また、本体31aの下面及び第二のオーバーハング部31bの下面の形状は、支持面101と平行又は略平行な平面形状である。ただし、本体31aの下面及び第二のオーバーハング部31cの下面の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0079】
支持面101の形状は、未焼結体の本体31aの下面及び第二のオーバーハング部31cの下面;上下方向に反転した後の中間焼結体32の本体32aの下面及び第一のオーバーハング部32bの下面;並びに焼結体の本体33aの下面及び第一のオーバーハング部33bの下面等、支持面101と対向し得る面と同一形状であってよい。
【0080】
未焼結体の第一のオーバーハング部31bは、上述したように本体31aから水平方向(XY平面と平行な方向)に突出し、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面の少なくとも一部は、その下方にある支持面102に接している。未焼結体の第二のオーバーハング部31cの下面の少なくとも一部は支持面101に接している。
【0081】
未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面の形状は、支持面102と平行又は略平行な平面形状である。ただし、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面の形状は、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0082】
支持面102の形状は平面である。支持面102の形状は、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面、及び中間焼結体の第一のオーバーハング部32bの下面等、支持面102と対向し得る面と同一形状であるが、同一形状に限られない。
【0083】
支持面102の形状は、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面、又は上下方向に反転する前の中間焼結体の第一のオーバーハング部32bの下面の形状等に対応するよう設計してよく、平面形状の他、円弧形状等の曲面を有する形状であってよい。
【0084】
部材によって支持面101及び102を構成する場合、支持面101及び支持面102を一つの部材で構成してよく、それぞれ別の部材で構成してよい。支持面101と支持面102とが別部材で構成される場合に、支持面101を構成する部材上に、支持面102を構成する部材を設置してよい。その場合、支持面102を構成する部材として、一般にセッターと呼ばれる治具を採用できる。
【0085】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図3Bは、中間焼結体32を示す。中間焼結体32は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、支持面101,102上で、未焼結体31を1000~5000Pa程度の窒素雰囲気下、62時間かけて500℃まで徐々に加熱することによりバインダーを取り除いた後、真空雰囲気下、最高温度1200℃又は1250℃において3時間加熱することにより得られる。
【0086】
中間焼結体32は、未焼結体31の加熱により焼結が進行し収縮したものである。焼結の進行により、未焼結体の本体31aは中間焼結体の本体32aに、未焼結体の第一のオーバーハング部31bは中間焼結体の第一のオーバーハング部32bに、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは中間焼結体の第二のオーバーハング部32cになる。未焼結体の第一のオーバーハング部31b及び中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、その少なくとも一部が支持面102に接しているため、後述するように未焼結体の第二のオーバーハング部31cが支持面101から離れると同時に、支持面102から受ける力132bが生じ、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、未焼結体の第一のオーバーハング部31bであった時に比べ、反り変形(+Z方向の変形)している。
【0087】
また、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは、焼結の進行に伴い支持面101から離れる。支持面101から離れることにより重力方向の力132cが作用するため、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、未焼結体の第二のオーバーハング部31cであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0088】
なお、未焼結体の第二のオーバーハング部31cが支持面101から離れるとは、未焼結体の第二のオーバーハング部31cの少なくとも一部が支持面101に接した状態から、それらの間隔が開いた状態になることをいう。
【0089】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図3Cは、
図3Bに示す中間焼結体32を上下方向に反転して、支持面101に設置した中間焼結体32を示す。この反転により、第一のオーバーハング部32bには力132bに対する逆向きの力133bが作用し、第二のオーバーハング部32cには力132cに対する逆向きの力133cが作用する。
【0090】
15箇所の長さを測定した結果、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1200℃である場合、上記(a-c)/(a-b)の値が0.39~0.47を示し、その平均値は0.42であった。また、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1250℃である場合、上記(a-c)/(a-b)の値が0.57~0.63を示し、その平均値は0.59であった。
【0091】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図3Dは、
図3Cに示す中間焼結体32を加熱して前記粉末の焼結が完了した焼結体33を示す。
【0092】
中間焼結体32を上下方向に反転することにより、中間焼結体の第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング部32cにかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にした後、中間焼結体を加熱して前記粉末の焼結を完了する工程においては、中間焼結体32を真空雰囲気下で、3時間加熱する。この時の温度条件は、例えば、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1200℃である場合、最高温度1280℃であり、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1250℃である場合、最高温度1290℃である。
【0093】
焼結の完了により、中間焼結体の本体32aは焼結体の本体33aに、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは焼結体の第一のオーバーハング部33bに、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは焼結体の第二のオーバーハング部33cになる。
【0094】
以上の工程により、反り変形した第一のオーバーハング部32b、及び垂れ変形した第二のオーバーハング部32cに対し、それぞれ逆向きの力133b、及び逆向きの力133cを与えることとなり、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。その結果、
図3Dに示すように、変形、特に各オーバーハング部(第一のオーバーハング部33b及び第二のオーバーハング部33c)の垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体33が得られる。
【0095】
(第4実施形態)
第4実施形態における焼結体の製造方法は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、2つの支持面が設けられており、前記支持面は曲面を有し、前記支持面の形状が、前記未焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である。
【0096】
また、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程において、支持面が設けられており、前記支持面は曲面を有し、前記支持面の形状が、焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である。以下、
図4A~4Eを参照し、第3実施形態と異なる点を抽出して第4実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0097】
(1)未焼結体を得る工程
図4A及び4Bは、支持面101a上に設置した未焼結体31を示す。第4実施形態では、
図4A~4Eに示すように、支持面101a、101b及び102は曲面により構成される。支持面101a、101b及び102は、全体が曲面でなくとも、少なくとも一部が曲面を有してよい。
【0098】
第3実施形態における焼結体の製造方法は、
図3A~3Dに示すように、支持面101及び102が平面であるのに対し、第4実施形態における焼結体の製造方法は、
図4A~4Eに示すように、支持面101a、101b及び102が曲面形状である点で異なる。そして、
図4Aは、
図3Aに示す断面指示線IVA-IVAに沿った断面図に相当し、
図4Bは、
図3Aに示す断面指示線IVB-IVBに沿った断面図に相当する。
【0099】
図4A及び4Bに示すように、支持面102及び101aは、それぞれ未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面及び未焼結体の第二のオーバーハング部31cの下面と同一形状(凹状の曲面形状)である。そして、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面及び未焼結体の第二のオーバーハング部31cの下面は、それぞれ全体が支持面102及び支持面101aに接している。
【0100】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図4Cは、中間焼結体32を示す。
図4Cは、
図3Bに示す断面指示線IVC-IVCに沿った断面図に相当する。本工程の加熱条件は、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。
【0101】
図3Bと同様に、未焼結体の第一のオーバーハング部31b及び中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、その少なくとも一部が支持面102に接しているため、後述するように未焼結体の第二のオーバーハング部31cが支持面101aから離れると同時に、支持面102から受ける力132b(
図3B参照)が生じ、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、未焼結体の第一のオーバーハング部31bであった時に比べ、反り変形(+Z方向の変形)している。
【0102】
また、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは、その少なくとも一部が焼結の進行に伴い支持面101aから離れる。支持面101から離れることにより重力方向の力132c(
図3B参照)が作用するため、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、その少なくとも一部が未焼結体の第二のオーバーハング部31cであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0103】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図4Dは、
図4Cに示す中間焼結体32を上下方向に反転して、支持面101bに設置した中間焼結体32を示す。支持面101bは、凸状の曲面形状である。また、支持面101bの形状は、焼結体の第一のオーバーハング部33bの下面と同一形状である。この反転により、第一のオーバーハング部32bには力132bに対する逆向きの力133b(
図3C参照)が作用し、第二のオーバーハング部32cには力132cに対する逆向きの力133c(
図3C参照)が作用する。
【0104】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図4Eは、
図4Dに示す中間焼結体32を加熱して前記粉末の焼結が完了した焼結体33を示す。本工程の加熱条件は、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。
【0105】
以上の工程により、反り変形した第一のオーバーハング部32b、及び垂れ変形した第二のオーバーハング部32cに対し、それぞれ逆向きの力133b(
図3C参照)、及び逆向きの力133c(
図3C参照)を与えることとなり、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。その結果、
図4Eに示すように、変形、特に各オーバーハング部(第一のオーバーハング部33b及び第二のオーバーハング部33c)の垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体33が得られる。
【0106】
(第5実施形態)
第5実施形態における焼結体の製造方法は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程中において、前記未焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面に接する。また、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、前記未焼結体のオーバーハング部が、前記未焼結体のオーバーハング部の下方にある支持面から離れる。以下、
図5A~5Dを参照し、第3実施形態と異なる点を抽出して第5実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0107】
(1)未焼結体を得る工程
図5Aは、支持面101上に設置した未焼結体31を示す。
図5Aに示すように、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面はその下方にある支持面102から離れており、狭い隙間105aがある点で第3実施形態と異なる。なお、狭い隙間105aとは、未焼結体31の加熱により、未焼結体31が中間焼結体32になる前(すなわち、中間焼結体32が生成される前)に未焼結体の第一のオーバーハング部31bの少なくとも一部がその下方にある支持面102に接することとなり、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bに反り変形(+Z方向の変形)が生じる程度の隙間である。
【0108】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図5Bは、中間焼結体32を示す。本工程の加熱条件は、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。
【0109】
中間焼結体32は、未焼結体31の加熱により焼結が進行し収縮したものである。焼結の進行により、未焼結体の本体31aは中間焼結体の本体32aに、未焼結体の第一のオーバーハング部31bは中間焼結体の第一のオーバーハング部32bに、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは中間焼結体の第二のオーバーハング部32cになる。未焼結体の第一のオーバーハング部31bは、焼結の進行によって、その少なくとも一部が下方にある支持面102に接する。そして、未焼結体の第一のオーバーハング部31bには、支持面102から受ける力132bが生じ、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、未焼結体の第一のオーバーハング部31bであった時に比べ、反り変形(+Z方向の変形)している。
【0110】
また、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは、焼結の進行に伴い支持面101から離れる。支持面101から離れることにより重力方向の力132cが作用するため、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、未焼結体の第二のオーバーハング部31cであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0111】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図5Cは、
図5Bに示す中間焼結体32を上下方向に反転して、支持面101に設置した中間焼結体32を示す。この反転により、第一のオーバーハング部32bには力132bに対する逆向きの力133bが作用し、第二のオーバーハング部32cには力132cに対する逆向きの力133cが作用する。
【0112】
15箇所の長さを測定した結果、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1200℃である場合、上記(a-c)/(a-b)の値が0.38~0.46を示し、その平均値は0.41であった。また、(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程における加熱の最高温度が1250℃である場合、上記(a-c)/(a-b)の値が0.56~0.63を示し、その平均値は0.59であった。
【0113】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図5Dは、
図5Cに示す中間焼結体32を加熱して粉末の焼結が完了した焼結体33を示す。本工程の加熱条件は、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。焼結の完了により、中間焼結体の本体32aは焼結体の本体33aに、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは焼結体の第一のオーバーハング部33bに、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは焼結体の第二のオーバーハング部33cになる。
【0114】
以上の工程により、反り変形した第一のオーバーハング部32b、及び垂れ変形した第二のオーバーハング部32cに対し、それぞれ逆向きの力133b、及び逆向きの力133cを与えることとなり、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。その結果、
図5Dに示すように、変形、特に各オーバーハング部(第一のオーバーハング部33b及び第二のオーバーハング部33c)の垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体33が得られる。
【0115】
(第6実施形態)
第6実施形態における焼結体の製造方法は、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にする工程において、前記中間焼結体のオーバーハング部の少なくとも一部が前記中間焼結体のオーバーハング部の下方にある加力面に接することにより、前記加力面が前記中間焼結体のオーバーハング部を下方から支えて、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを前記中間焼結体の生成時と逆にした後、前記中間焼結体を上下方向に反転することにより、前記中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にした状態を維持する。以下、
図6A~6Eを参照し、第5実施形態と異なる点を抽出して第6実施形態における焼結体の製造方法を説明する。
【0116】
(1)未焼結体を得る工程
図6Aは、支持面101上に設置した未焼結体31を示す。
図6Aに示すように、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下面はその下方にある加力面201から離れており、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの下方には、広い隙間105bがある点で第5実施形態と異なる。なお、広い隙間105bとは、未焼結体を中間焼結体とする工程中(すなわち、中間焼結体が生成される前)には、未焼結体の第一のオーバーハング部31bの少なくとも一部が下方にある加力面201に接することはなく、中間焼結体が生成されたとき又はその後に、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bが重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)を生じる程度の隙間である。
【0117】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図6Bも未焼結体31を示すが、加熱により焼結体の第一のオーバーハング部31bが重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)を開始した状態である。未焼結体の第一のオーバーハング部31bには、
図6Bに示すように、重力方向の力141bが作用するため、焼結による収縮に伴い、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)する。
【0118】
図6Cは、中間焼結体32を示す。中間焼結体32は、未焼結体31の加熱により焼結が進行し収縮したものである。焼結の進行により、未焼結体の本体31aは中間焼結体の本体32aに、未焼結体の第一のオーバーハング部31bは中間焼結体の第一のオーバーハング部32bに、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは中間焼結体の第二のオーバーハング部32cになる。中間焼結体の生成後の加熱により、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、焼結の進行に伴って、その少なくとも一部が、その下方にある加力面201に接する。
【0119】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
(3-1)加力面に接することにより、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にする工程
中間焼結体32の生成後も中間焼結体32を加熱すると、
図6Cに示すように、加力面201が中間焼結体の第一のオーバーハング部32bを下方から支えることにより、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bには、力141bに対する逆向きの力142bが作用する。
【0120】
このとき、中間焼結体32は、後述の(3-2)中間焼結体を上下方向に反転する工程より前に、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bにかかる力の向きが逆になるよう、加力面201の高さが調整されている。
【0121】
一方、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、焼結の進行に伴い支持面101から離れる。支持面101から離れることにより重力方向の力141cが作用するため、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、未焼結体の第二のオーバーハング部31cであった時に比べ、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)している。
【0122】
(3-2)中間焼結体を上下方向に反転することにより中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にした状態を継続する工程
図6Dは、
図6Cに示す中間焼結体32を上下方向に反転して、支持面101に設置した中間焼結体32を示す。中間焼結体32は、上記(a-c)/(a-b)の値が第5実施形態と同様の値である。
【0123】
中間焼結体32を上下方向に反転した後も、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bには、上記の(3-1)加力面に接することにより、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを逆にする工程から継続して、力141bに対する逆向きの力142bが作用したままである。
【0124】
一方、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、中間焼結体32を上下方向に反転することにより、その第二のオーバーハング部32cにかかる力の向きが逆になる。これにより、力141cにより垂れ変形した第二のオーバーハング部32cに対し、力141cに対する逆向きの力142cを与えることとなり、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。
【0125】
未焼結体31を加熱して中間焼結体32を生成する、上下方向に反転するまでの加熱条件としては、1000~5000Pa程度の窒素雰囲気下、62時間かけて500℃まで徐々に加熱することにより未焼結体31のバインダーを取り除いた後、真空雰囲気下、最高温度1200℃又は1250℃において3時間加熱すればよい。この加熱条件全体で見れば、第3実施形態における(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程、と同様である。中間焼結体の生成後もこの加熱条件を適用することで、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bの少なくとも一部が、その下方にある加力面201に接し、加力面201が中間焼結体の第一のオーバーハング部32bを下方から支えることにより、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bには、力141bに対する逆向きの力142bが作用する。また、加力面201が第一のオーバーハング部32bを下方から支えた後も上記の加熱条件を適用することで、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは、重力方向に垂れ変形(-Z方向の変形)する。
【0126】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図6Eは、
図6Dに示す中間焼結体32を加熱して粉末の焼結が完了した焼結体33を示す。焼結の完了により、中間焼結体の本体32aは焼結体の本体33aに、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは焼結体の第一のオーバーハング部33b、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cは焼結体の第二のオーバーハング部33cになる。
【0127】
以上の工程により、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。その結果、
図6Eに示すように、焼結体33は、変形、特に各オーバーハング部(第一のオーバーハング部33b及び第二のオーバーハング部33c)の垂れ変形を抑制し、高精度なものとなる。
【0128】
(第7実施形態)
第7実施形態における焼結体の製造方法は、未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程において、加力面又は1つ若しくは2つの支持面が設けられており、前記加力面及び前記支持面が曲面を有し、前記支持面の形状が、未焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状であり、前記加力面の形状が、中間焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である。
【0129】
また、中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にした後、中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程において、支持面が設けられており、前記支持面が曲面を有し、前記支持面の形状が、前記焼結体のオーバーハング部の下面と同一形状である。以下、
図7A~7Eを参照し、第5実施形態と異なる点を抽出して説明する。
【0130】
(1)未焼結体を得る工程
図7A及び7Bは、支持面101a上に設置した未焼結体31を示す。第7実施形態では、
図7A~7Eに示すように、支持面101a、並びに支持面102(又は加力面201)は凹状の曲面により構成され、支持面101bは凸状の曲面により構成される。支持面101a及び101b、並びに支持面102(又は加力面201)は、全体が曲面でなくとも、少なくとも一部が曲面を有してよい。
【0131】
第3、5及び6実施形態における焼結体の製造方法では、支持面101、102及び加力面201が平面であるのに対し、本実施形態では、支持面102(又は加力面201)及び101aが曲面である。
図7Aは、
図3A、
図5A又は
図6A)に示す断面指示線VIIA-VIIAに沿った断面図に相当し、
図7Bは、
図3A、
図5A又は
図6Aに示す断面指示線VIIB-VIIBに沿った断面図に相当する。
【0132】
図7B及び
図7Cに示すように、支持面102(又は加力面201)は、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bの下面、つまり、支持面102(又は加力面201)に対向する面と同一形状である。そのため、
図7Bに示すように、未焼結体の第一のオーバーハング部31bと、支持面102(又は加力面201)との間には、狭い隙間105a及び広い隙間105bが存在する。
【0133】
一方、
図7Aに示すように、支持面101aは、未焼結体の第二のオーバーハング部31cの下面と同一形状である。そのため、未焼結体の第二のオーバーハング部31cは支持面101aに接している。
【0134】
(2)未焼結体を加熱して中間焼結体を生成する工程
図7Cは、中間焼結体32を示す。本工程においては、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。
【0135】
上述したように、支持面102(又は加力面201)は、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bの下面、つまり、支持面102(又は加力面201)に対向する面と同一形状である。そのため、
図7Cに示すように、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bは、支持面102(又は加力面201)に接している。
【0136】
第5実施形態と同様に、未焼結体の第一のオーバーハング部31bには、支持面102から上向きの力132b(
図5B参照)が作用する。また、未焼結体の第二のオーバーハング部31cには、焼結の進行に伴い第二のオーバーハング部31cが支持面101から離れることにより重力方向の力132c(
図5B参照)が作用する。なお、支持面102の代わりに加力面201が採用される場合は、第6実施形態と同様であることは言うまでもない。
【0137】
(3)中間焼結体のオーバーハング部にかかる力の向きを中間焼結体の生成時と逆にする工程
図7Dは、
図7Cに示す中間焼結体32を上下方向に反転して、支持面101bに設置した中間焼結体32を示す。この反転により、第5実施形態と同様に、中間焼結体の第一のオーバーハング部32bには力132bに対する逆向きの力133b(
図5C参照)が作用し、中間焼結体の第二のオーバーハング部32cには力132cに対する逆向きの力133c(
図5C参照)が作用する。
【0138】
(4)中間焼結体を加熱して粉末の焼結を完了する工程
図7Eは、
図7Dに示す中間焼結体32を加熱して粉末の焼結が完了した焼結体33を示す。本工程においては、第3実施形態と同じ処理条件を採用できる。
【0139】
以上の工程により、反り変形した第一のオーバーハング部32b(支持面102の代わりに加力面201が採用される場合は、垂れ変形した第一のオーバーハング部32b)及び垂れ変形した第二のオーバーハング部32cに対し、それぞれ逆向きの力133b(
図5B参照)、及び逆向きの力133c(
図5C参照)を与えることとなり、第一のオーバーハング部32b及び第二のオーバーハング32cの変形を相殺することができる。その結果、
図7Eに示すように、変形、特に各オーバーハング部(第一のオーバーハング部33b及び第二のオーバーハング部33c)の垂れ変形を抑制し、高精度な焼結体33が得られる。
【符号の説明】
【0140】
11,21,31 未焼結体
11a,21a,31a 未焼結体の本体
11b,21b 未焼結体のオーバーハング部
12,22,32 中間焼結体
12a,22a,32a 中間焼結体の本体
12b,22b 中間焼結体のオーバーハング部
13,23,33 焼結体
13a,23a,33a 焼結体の本体
13b,23b 焼結体のオーバーハング部
31b 未焼結体の第一のオーバーハング部
31c 未焼結体の第二のオーバーハング部
32b 中間焼結体の第一のオーバーハング部
32c 中間焼結体の第二のオーバーハング部
33b 焼結体の第一のオーバーハング部
33c 焼結体の第二のオーバーハング部
101,101a,101b,102 支持面
105a 狭い隙間
105b 広い隙間
112b,121b オーバーハング部にかかる力
113b 力112bに対する逆向きの力
122b 力121bに対する逆向きの力
132b,141b 第一のオーバーハング部にかかる力
132c,141c 第二のオーバーハング部にかかる力
133b 力132bに対する逆向きの力
133c 力132cに対する逆向きの力
142b 力141bに対する逆向きの力
142c 力141cに対する逆向きの力
201 加力面