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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体T細胞療法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20221110BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01N33/48 M
A61K35/17 Z
A61P35/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020566556
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019035123
(87)【国際公開番号】W WO2019232510
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/679,755
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/774,157
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボット エイドリアン アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ウィリアム ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン イージョウ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュエ シャオドン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361360(US,A1)
【文献】J Gauthier et al,Factors associated with duration of response after CD19-specific CAR-T cell therapy for refractory/relapsed B-cell non-Hodgkin lymphoma,Journal of Clinical Oncology,2018年05月20日,vol.36,7567
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効を予測するための方法であって、前記被験体について測定されたベースライン時のSPDからSPD範囲を決定することを含み、
前記SPDは、4つの範囲のうちの1つに属することができ、
前記4つの範囲は、以下:
範囲1:100mm(含める)~2000mm(含める)、
範囲2:2000mm(含めない)~3700mm(含める)、
範囲3:3700mm(含めない)~6700mm(含める)、及び、
範囲4:6700mm(含めない)~24000mm(含める)
含み、ここで、SPDが属する範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効の可能性は高くなり、
SPDの範囲3の被検体はCD19 CAR-T治療が行われた後にグレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)が生じる可能性が最も高く、
SPDの範囲2の被検体はCD19 CAR-T治療が行われた後にグレード3以上の神経学的事象が生じる可能性が最も高い、方法。
【請求項2】
前記ベースライン時のSPD値が前記SPDの範囲1~4にある場合に、前記被験体は、引き続きCD19 CAR-T治療で治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体において癌を治療するための、CD19 CAR-T治療薬を含む組成物であって、請求項1又は2に記載の方法において前記被検体のベースライン時のSPD値がSPDの範囲1~4にある場合に用いられる、組成物。
【請求項4】
前記癌は、血液癌又は再燃性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記CD19 CAR-T治療は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19による治療を含む、請求項1、2及び4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記被験体は、65歳以上である、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記被験体は、65歳未満である、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記CD19 CAR-T治療薬は、第一選択療法として投与される、請求項1、2及び4~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記癌は、血液癌又は再燃性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記CD19 CAR-T治療薬は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19を含む、請求項3又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記被験体は、65歳以上である、請求項3、9及び10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記被験体は、65歳未満である、請求項3、9及び10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記CD19 CAR-T治療薬が、第一選択療法として投与される、請求項3、9~12のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、CAR-T癌治療の方法及びそれらの治療に対する臨床転帰を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法癌治療は、患者において癌細胞を標的とし、死滅させるために富化又は改変されたヒトT細胞に頼っている。T細胞が特定の癌細胞を標的とし死滅させる能力を増加するため、特定の標的癌細胞へとT細胞を方向づけるコンストラクトを発現するようT細胞を操作する方法が開発された。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)及び操作されたT細胞受容体(TCR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。CD19発現癌細胞を標的とする養子細胞療法は、優れた臨床転帰を伴う有望な結果を示している。CAR-T療法に対する臨床転帰を予測することが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、CAR-T癌治療の方法及びそれらの治療に対する臨床転帰を予測する方法に関する。潜在的な臨床転帰を予測する方法は、インデックス病変のベースライン時の直径の積の和(SPD)及び/又はベースライン時の前治療ライン数を指標として使用することを含む。
【0004】
本開示は、その適用において、以下の実施の形態、特許請求の範囲、詳細な説明、及び図面に示された詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施の形態が可能であり、他の多くの様式で実行又は実施することが可能である。
【0005】
以下は、本開示の幾つかの例示的な実施の形態である。
【0006】
実施の形態1.癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効を予測する方法であって、前記被験体におけるベースライン時のSPDを測定し、SPD範囲を決定することを含み、ここで、低いSPD範囲は前記CAR-T治療に対する肯定的な奏効の可能性を示す、方法。
【0007】
実施の形態2.前記SPDは、4つの範囲のうちの1つに属することができ、ここで、SPDが属する範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効の可能性は高くなる、実施の形態1の方法。
【0008】
実施の形態3.前記4つの範囲は、以下:
SPDの四分位数1、約100mm(含める)~約2000mm(含める)、約840mmのSPDの中央値、
SPDの四分位数2、約2000mm(含めない)~約3700mm(含める)、約2820mmのSPDの中央値、
SPDの四分位数3、約3700mm(含めない)~約6700mm(含める)、約5100mmのSPDの中央値、及び、
SPDの四分位数4、約6700mm(含めない)~約24000mm(含める)、約9300mmのSPDの中央値、
を含む、実施の形態2の方法。
【0009】
実施の形態4.前記ベースライン時のSPD値が前記SPDの四分位数1~4にある場合に、前記被験体を、引き続きCD19 CAR-T治療薬で治療する、実施の形態1~3のいずれか1つの方法。
【0010】
実施の形態5.治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、ベースライン時のSPD値がSPDの四分位数1~4にある被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法。
【0011】
実施の形態6.癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療後の再燃の可能性を予測する方法であって、前記被験体における前治療ライン数を決定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、前記前治療ライン数が高いほど、前記被験体についてCD19 CAR-T治療後の再燃の可能性が高いと予測される、方法。
【0012】
実施の形態7.癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効持続の可能性を予測する方法であって、前記被験体におけるベースライン時の前治療ライン数を測定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、前記範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効持続の可能性が指摘される、方法。
【0013】
実施の形態8.前記前治療ライン数の範囲は、1~2、3、4又は5以上である、実施の形態6又は7の方法。
【0014】
実施の形態9.前記前治療ライン数が1~2、3、4又は5以上である前記被験体に、引き続きCD19 CAR-T治療薬を投与することを更に含む、実施の形態6~8のいずれか1つの方法。
【0015】
実施の形態10.治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、前記被験体における前治療ライン数が1~2、3、4又は5以上である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法。
【0016】
実施の形態11.前記癌は、血液癌又は再燃性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、実施の形態1~10のいずれか1つの方法。
【0017】
実施の形態12.前記CD19 CAR-T治療は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19による治療を含む、実施の形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
実施の形態13.治療を必要とする患者における抗CD19 CAR-T細胞治療による癌の治療に対する長期奏効持続性を予測する方法であって、治療薬の単回投与の3ヶ月後に無増悪生存期間を評価することを含み、ここで、3ヶ月での完全奏効又は部分奏効の達成が前記患者における長期奏効持続性の予測となる、方法。
【0019】
実施の形態14.前記抗CD19 CAR-T治療は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19による治療を含む、実施の形態13の方法。
【0020】
実施の形態15.前記癌は、血液癌である、実施の形態13又は14の方法。
【0021】
実施の形態16.前記癌は、再燃性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、実施の形態15の方法。
【0022】
実施の形態17.長期奏効持続性は、9ヶ月より長く、12ヶ月より長く、18ヶ月より長く、又は24ヶ月より長く続く完全奏効又は部分奏効を含む、実施の形態13~16のいずれか1つの方法。
【0023】
実施の形態18.前記被験体は、65歳以上である、実施の形態1~17のいずれか1つの方法。
【0024】
実施の形態19.前記被験体は、65歳未満である、実施の形態1~17のいずれか1つの方法。
【0025】
実施の形態20.前記CD19 CAR-T治療薬は、第一選択療法として投与される、実施の形態1~19のいずれか1つの方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】SPDの四分位数による患者の転帰を示す図である。AUC0-28(0日目から28日目までの曲線下面積)、CRS(サイトカイン放出症候群)、ORR(客観的奏効率)、Q(四分位数)。
図2】アキシカブタゲン・シロロイセル後3ヶ月での奏効状態による施設判定での無増悪生存の事後分析を示す図である。第2相の3ヶ月目に持続している完全奏効、部分奏効、又は病勢安定を有する60人の患者が示されている。x軸はキメラ抗原受容体T細胞の注入からの時間を示している。3ヶ月で部分奏効を示した8人の患者のうち4人及び病勢安定を示した9人の患者のうち4人は、後に完全奏効に切り替わった。NR=未到達。NE=推定不可。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別段の規定がない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」という用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。本明細書において使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解される。
【0029】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限10に部分的に依存する。例えば、「約」又は「で本質的に構成される」は、当該技術分野における1回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「で本質的に構成される」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の15任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用語は、或る値の最大10倍(up to an order of magnitude)又は最大5倍を意味する場合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「で本質的に構成される」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0030】
「投与すること、投与する(administering)」という用語は、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する作用物質の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤に対する例示的な投与経路として、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口的な(parenteral:腸管外)投与経路、例えば注射又は注入による投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節腔内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節腔下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び注入、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。幾つかの実施形態では、投与は注入によるものである。例えば、CD19指向性遺伝子改変自家T細胞免疫療法薬の注入バッグは、およそ68mLのキメラ抗原受容体(CAR)陽性T細胞の懸濁液を含む。標的用量は、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞であり、最大2×10個のCAR陽性生存T細胞であり得る。幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自家T細胞免疫療法薬は、Axi-cel(商標)(YESCARTA(商標)、アキシカブタゲン・シロロイセル)である。
【0031】
本明細書で使用される「リンパ球」という用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO、CCR7、CD45RA、CD62L(L-セレクチン)、CD27、CD28及びIL-7Rαであるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1も発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はL-セレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4CD25制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作製し、抗原提示細胞(APC)の役割を行い、抗原の相互作用による活性化の後、メモリーB細胞となる。哺乳動物では、未成熟B細胞は、その名前が由来する骨髄で形成される。
【0032】
本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)等の疾患又は病態に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」という用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0033】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは緩和することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自己細胞療法、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種T細胞移植を含み得る。当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。その他の非限定的な例は、米国特許第9,855,298号、米国特許出願公開第20190151361号、同第20190144515号、同第20190093101号、同第20190032011号、同第20190092818号、同第20180369283号、同第20180296601号、同第20180280437号、同第20180230224号、同第20180086846号、同第20180016620号に見出すことができる。当該技術分野で使用されるT細胞療法の例示的なレビューは、Jafferji MS, Yang JC, Adoptive T-Cell Therapy for Solid Malignancies, Surg Oncol Clin N Am. 2019 Jul;28(3):465-479. doi: 10.1016/j.soc.2019.02.012. Epub 2019 Apr 12、Minutolo NG, Hollander EE, Powell DJ Jr.. The Emergence of Universal Immune Receptor T Cell Therapy for Cancer, Front Oncol. 2019 Mar 26;9:176. doi: 10.3389/fonc.2019.00176. eCollection 2019、Strati P, Neelapu SS., Chimeric Antigen Receptor-Engineered T Cell Therapy in Lymphoma, Curr Oncol Rep. 2019 Mar 27;21(5):38. doi: 10.1007/s11912-019-0789-zを含む。
【0034】
「自家」という用語は、同じ個体に由来する任意の材料が後に同じ個体に再導入されることを指す。例えば、本明細書に記載される自家細胞療法(ACT)法は、患者由来のリンパ球を収集した後に、該リンパ球を、例えばCARコンストラクトを発現するように操作し、その後に同じ患者に投与し戻すことを含む。「ACT」と略記することができ、養子細胞移植としても知られる「自己細胞療法」という用語は、患者自身のT細胞を収集し、その後、1つ以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1つ以上の抗原を認識し、標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。
【0035】
「治療的に有効」とは、患者の癌を治療するためにCD19 CAR-Tを使用することで、治療なし(適切な場合)又は既知の標準的治療と比較して何らかの実証された臨床的便益がもたらされることを意味する。患者集団における臨床的便益は、当業者に知られる任意の方法によって評価され得る。一実施形態では、臨床的便益は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、1年での奏効持続、及び/又は全生存期間(OS)に基づいて評価され得る。客観的奏効率(ORR)は、完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)に達した参加者の割合として定義される。
【0036】
幾つかの実施形態では、完全奏効は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、部分奏効は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、病勢安定は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、全生存期間の増加は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、治療的に有効とは、疾患進行までの時間の改善及び/又は症状若しくは生活の質の向上を構成し得る。他の実施形態では、治療的便益は病勢抑制の期間の増加に言い換えることができず、それよりむしろ、症状負担の著しい低下が生活の質の向上をもたらす。
【0037】
キメラ抗原受容体(CAR)
本開示のキメラ抗原受容体(CAR又はCAR-T)及びT細胞受容体(TCR)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で知られている技術によってT細胞を含む免疫細胞に容易に挿入され得て、その細胞により発現され得る。CARでは、特定の抗原を認識するとともに、その抗原に結合した場合に免疫細胞を活性化させてその抗原を保有する又は発現する細胞を攻撃して破壊するよう、単一の受容体がプログラム化され得る。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、該腫瘍細胞を標的とし、死滅させることができる。
【0038】
本発明の一態様は、(i)抗原結合分子、(ii)共刺激ドメイン、及び(iii)活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体である。共刺激ドメインは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み得る。幾つかの実施形態では、細胞外ドメインは、ヒンジドメイン又は短縮ヒンジドメインを含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、由来する抗体の抗原結合部分(例えば、CDR)を含む分子である。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗原結合分子の例には、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、線状抗体、scFv抗体、並びに抗原結合分子から形成される多重特異性抗体が含まれる。ペプチボディ(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、適切な抗原結合分子のもう1つの例である。一実施形態では、CD19 CARコンストラクトは、抗CD19一本鎖FVを含む。「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体結合フラグメントは、抗体の可変重(V)ドメイン及び可変軽(V)ドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これによりscFvは抗原結合のための所望の構造を形成することが可能となる。本明細書で使用される全ての抗体に関連する用語は、当該技術分野における慣用の意味を取り、当業者によって十分に理解されている。
【0040】
幾つかの実施形態では、CARは1つ以上の共刺激ドメインを含む。幾つかの実施形態では、共刺激ドメインは、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンドのシグナル伝達領域、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0041】
幾つかの実施形態では、細胞内ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、免疫グロブリン様タンパク質、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6のシグナル伝達領域、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、CARは、膜貫通ドメインと結合分子との間にヒンジ領域を含む。幾つかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM、CD28、又はCD8アルファのヒンジ領域である。
【0042】
幾つかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、4-1BB/CD137、T細胞受容体のα鎖、T細胞受容体のβ鎖、CD3イプシロン、CD4、CD5、CD8アルファ、CD9、CD16、CD19、CD22、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154若しくはT細胞受容体のζ鎖の膜貫通ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施形態では、活性化ドメインは、例えば、あらゆる形態のCD3ゼータに由来し得る。幾つかの実施形態では、活性化ドメインは、DAP10、DAP12、又は他のTCR型活性化シグナル伝達分子に由来する。
【0043】
一態様では、本出願は、CD19 CAR T細胞療法に関する。一実施形態では、CD19 CARコンストラクトは、抗CD19 scFvドメイン、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び活性化ドメインを含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、4-1BB/CD137、CD8アルファの膜貫通ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせに由来する。一実施形態では、共刺激ドメインは、CD8、CD28 OX40、4-1BB/CD137、又はそれらの組み合わせに由来する。一実施形態では、活性化ドメインは、CD3ゼータに由来する。一実施形態では、CD19 CARコンストラクトは、4-1BB共刺激ドメインを含む。一実施形態では、CD19 CARコンストラクトは、CD28共刺激ドメインを含む。一実施形態では、CD19 CARコンストラクトは、抗CD19 scFv、CD28由来のヒンジ/膜貫通ドメイン及び共刺激ドメイン、並びにCD3ゼータ由来の活性化ドメインを含む。一実施形態では、CARは、アキシカブタゲン・シロロイセルで発現されるCARである。一実施形態では、CARは、Kymriah(商標)で発現されるCARである。本開示の方法で使用することができる更なるCD19指向性CARには、限定されるものではないが、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)及びUCART19(Cellectis社)が含まれる。Sadelain et al. Nature Rev. Cancer Vol. 3 (2003)、Ruella et al., Curr Hematol Malig Rep., Springer, NY (2016)、及びSadelain et al. Cancer Discovery (Apr 2013)を参照のこと。
【0044】
CAR-T細胞
免疫療法のT細胞は、上記のCAR又はその他のいずれかを発現するように操作されていてもよく、CAR-T細胞と称される。CAR-T細胞は、他の分子を発現するように操作されていてもよく、当該技術分野で利用可能な以下の例示的な型又はその他のいずれか1つであり得る:第一世代、第二世代、第三世代、第四世代、第五世代(等)のCAR-T細胞、武装化CAR-T細胞、運動性CAR-T細胞、TRUCK T細胞、スイッチ受容体CAR-T細胞、遺伝子編集されたCAR T細胞、デュアル受容体CAR T細胞、自殺CAR T細胞、薬物誘導性CAR-T細胞、synNotch誘導性CAR T細胞、及び抑制性CAR T細胞。
【0045】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野で知られている任意の起源に由来し得る。例えば、T細胞をin vitroで造血幹細胞集団から分化させることができる、又はT細胞を被験体から得ることができる。T細胞を、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野で利用可能な1つ以上のT細胞系統に由来し得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られている任意の数の技術を使用して、被験体から収集された血液の単位から得ることもできる。T細胞療法のためにT細胞を分離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示されている。他の非限定的な例は、国際出願PCT/US2015/014520号(国際公開第2015/120096号として公開)及び国際出願PCT/US2016/057983号(国際公開第2017/070395号として公開)に見出すことができ、これらの全ては、引用することにより全体としてこれらの方法の説明の目的でこれらの全体が本明細書の一部をなす。
【0046】
一実施形態では、T細胞は自家T細胞である。一実施形態では、T細胞は自家幹細胞(自家幹細胞療法又はASCT用)である。一実施形態では、T細胞は非自家T細胞である。幾つかの実施形態では、T細胞はドナー被験体から得られる。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に罹患しているヒト患者である。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に罹患していないヒト患者である。幾つかの実施形態では、T細胞療法で使用されるドナーT細胞は、患者から得られる(例えば、自家T細胞療法用)。他の実施形態では、T細胞療法で使用されるドナーT細胞は、患者ではない被験体から得られる。
【0047】
CD19 CAR-T細胞は、限定されるものではないが、国際出願PCT/US2015/014520号(国際公開第2015/120096号として公開)及び国際出願PCT/US2016/057983号(国際公開第2017/070395号として公開)(これらは両方とも、引用することによりこれらの方法の説明の目的でこれらの全体が本明細書の一部をなす)に記載される方法、アキシカブタゲン・シロロイセル又はYescarta(商標)の作製に使用されるあらゆる全ての方法、チサゲンレクロイセル/Kymriah(商標)の作製に使用されるあらゆる全ての方法、免疫療法のための「既製品の」T細胞の作製に使用されるあらゆる全ての方法、及びヒトに投与するためのリンパ球を作製するあらゆる他の方法を含む、免疫療法のためのT細胞を作製する任意の製造方法によって作製することができる。
【0048】
一実施形態において、T細胞は、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られてもよい。さらに、T細胞は、当該技術分野で利用可能な1つ以上のT細胞系統に由来し得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られている任意の数の技術を使用して、被験体から収集された血液の単位から得ることもできる。幾つかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後の処理に適切なバッファー又は培地に入れる。幾つかの実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。理解されるように、洗浄工程は、例えばCobe(商標)2991細胞処理装置、Baxter CytoMate(商標)等の半自動フロースルー遠心分離機等を使用することによって使用され得る。幾つかの実施形態では、洗浄された細胞を1つ以上の生体適合性のバッファー、又はバッファーを含む若しくは含まない他の生理食塩水溶液に再懸濁する。幾つかの実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去される。T細胞療法用にT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0049】
幾つかの実施形態では、T細胞は、赤血球の溶解及び例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離を使用することによる単球の枯渇によってPBMCから単離される。幾つかの実施形態では、CD4、CD8、CD28、CD45RA及びCD45ROのT細胞等のT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野において知られている正又は負の選択技術によって更に単離される。例えば、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって遂行され得る。幾つかの実施形態では、負に選択される細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択を使用することができる。例えば、負の選択によってCD4細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20及びHLA-DRに対する抗体を含む。幾つかの実施形態では、フローサイトメトリー及び細胞選別は、本開示における使用に対する目的の細胞集団を単離するために使用される。
【0050】
幾つかの実施形態では、PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CAR等)により遺伝子改変に直接使用される。幾つかの実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球を更に単離し、遺伝子改変及び/又は拡大の前又は後のいずれかに、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターのT細胞亜集団へと選別する。
【0051】
幾つかの実施形態では、CD8細胞は、これら各種のCD8細胞と関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞へと更に選別される。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CCR7、CD3、CD28、CD45RO、CD62L、及びCD127の発現を含み、グランザイムBに対して陰性である。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD8、CD45RO及びCD62LのT細胞である。幾つかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CCR7、CD28、CD62L及びCD127に対して陰性であり、グランザイムB及びパーフォリンに対して陽性である。幾つかの実施形態では、CD4T細胞は亜集団へと更に選別される。例えば、CD4ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクター細胞へと選別され得る。
【0052】
T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分に連結された特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外一本鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作されている。CAR scFvは、全ての正常なB細胞並びに限定されるものではないが、NHL、CLL及び非T細胞ALLを含むB細胞悪性腫瘍を含むB細胞系譜における細胞によって発現される膜貫通タンパク質である、例えば、CD19を標的とするように設計され得る。幾つかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインが別個のポリペプチド鎖として発現されるように操作される。例示的なCART細胞療法及びコンストラクトは、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載されており、これらの参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。幾つかの実施形態では、免疫療法は自家幹細胞療法であり、これは、実施例の方法を含む当該技術分野に記載されている方法に従って行うことができる。CD19 CARの構成要素のいずれかは、CAR-Tコンストラクト及び/又は該コンストラクトを発現する細胞の特性を変える改変及び/又は突然変異、例えば、腫瘍認識、T細胞サイトカイン産生、T細胞増殖、T細胞活性化、T細胞複製、T細胞疲弊、T細胞生存に影響を及ぼす改変及び/又は突然変異を含み得る。CD19を標的とするCARコンストラクトの幾つかの例は、米国特許出願公開第20170281766号に記載されている。一実施形態では、CD19 CARは、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta(商標))で発現されるコンストラクトである。一実施形態では、CD19 CARは、Kymriah(商標)で発現されるコンストラクトである。本開示の方法で使用することができる更なるCD19指向性CAR療法薬には、限定されるものではないが、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)及びUCART19(Cellectis社)が含まれる。Sadelain et al. Nature Rev. Cancer Vol. 3 (2003)、Ruella et al., Curr Hematol Malig Rep., Springer, NY (2016)、及びSadelain et al. Cancer Discovery (Apr 2013)を参照のこと。
【0053】
一実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自家T細胞免疫療法薬を調製するために、患者自身のT細胞が採取され、レトロウイルス形質導入(例えば、ガンマレトロウイルス形質導入)によりCD28及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結されたマウス抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにex vivoで遺伝子改変され得る。幾つかの実施形態では、CARは、4-1BB及びCD3ゼータの共刺激ドメインに連結されたマウス抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。抗CD19 CAR T細胞は増殖されて患者に注入し直され得る。その際、それらのT細胞は、CD19を発現する標的細胞を認識して排除し得る。幾つかの実施形態では、抗CD19 CAR T細胞療法は、そのようなCD19指向性遺伝子改変自家T細胞免疫療法薬の1つの例であるYESCARTA(商標)(Axi-cel(商標)、アキシカブタゲン・シロロイセル)を用いた療法を含む。Kochenderfer, et al., (J Immunother 2009;32:689 702)を参照のこと。
【0054】
T細胞は治療的に有効な量で投与され得る。例えば、T細胞の治療的に有効な量は、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞であり得る。別の実施形態では、T細胞の治療的に有効な量は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、又は約10個の細胞である。幾つかの実施形態では、CAR T細胞の治療的に有効な量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/kg、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、又は約9×10細胞/kgである。幾つかの実施形態では、治療的に有効な量のCAR陽性生存T細胞は、体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までである。幾つかの実施形態では、治療的に有効な量のCAR陽性生存T細胞は、体重1kg当たり約1×10個又は約2×10個のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までである。約という用語を伴わない同じ用量もまた本開示の範囲内である。
【0055】
幾つかの実施形態では、治療的に有効な量のCAR陽性生存T細胞は、約0.4×10個から約2×10個の間のCAR陽性生存T細胞である。幾つかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療的に有効な量は、約0.4×10個、約0.5×10個、約0.6×10個、約0.7×10個、約0.8×10個、約0.9×10個、約1.0×10個、約1.1×10個、約1.2×10個、約1.3×10個、約1.4×10個、約1.5×10個、約1.6×10個、約1.7×10個、約1.8×10個、約1.9×10個又は約2.0×10個のCAR陽性生存T細胞である。「生存T細胞」という用語は、当該技術分野で慣用の意味を有する。
【0056】
幾つかの実施形態では、T細胞組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又はアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、組成物は添加剤(excipient)を含む。T細胞組成物の成分は、当業者によって容易に決定される。
【0057】
CD19 CAR-T治療に対する奏効を予測する方法
本明細書に示されるデータは、被験体におけるインデックス病変のベースライン時の直径の積の和(SPD)が、CD19 CAR-T治療に対する肯定的な奏効の程度と相関することを裏付けている。したがって、一実施形態では、本開示は、癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効を予測する方法であって、上記被験体におけるインデックス病変のベースライン時の直径の積の和(SPD)を測定し、SPD範囲を決定することを含み、ここで、低いSPD範囲はCAR-T治療に対する肯定的な奏効の可能性を示す、方法を提供する。
【0058】
一実施形態では、或る特定の値のSPDは、CAR-T治療に対する奏効の可能性を示すのに有用であり得る。一実施形態では、SPDは、少なくとも4つの範囲又は四分位数のうちの1つに属することができ、その際、SPDが属する範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対するより高い奏効の可能性に相関することとなる。一実施形態では、4つの範囲は以下を含む:SPDの四分位数1、約100mm(含める)~約2000mm(含める)、約840mmのSPDの中央値、SPDの四分位数2、約2000mm(含めない)~約3700mm(含める)、約2820mmのSPDの中央値、SPDの四分位数3、約3700mm(含めない)~約6700mm(含める)、約5100mmのSPDの中央値、及びSPDの四分位数4、約6700mm(含めない)~約24000mm(含める)、約9300mmのSPDの中央値。一実施形態では、ベースライン時のSPDは、施設判定によってCheson 2007の基準(Neelapu SS and Locke FL, et al. Blood. 2016;128:LBA-6)により測定される。
【0059】
臨床奏効は、CR、すなわち完全奏効、ORR、すなわち客観的奏効率、PR、すなわち部分奏効、及びORR、すなわち奏効持続率を含む、癌治療技術で知られている任意のパラメーターによって測定され得る。一実施形態では、奏効は、少なくとも1年間のCD19 CAR-T治療で評価された奏効持続率として測定される。
【0060】
一実施形態では、本出願によるCD-19 CAR-T治療に対して奏効があると予測される被験体は、引き続き、CD19 CAR-T治療薬で治療される。ここで、上記被験体はCAR-T治療ではなく、少なくとも1つの前治療を受けており、上記被験体のSPD値は、上記に挙げられたSPDの四分位数のいずれかである。一実施形態では、被験体がSPDの四分位数1に属する場合に、該被験体は、更に又は引き続きCD19 CAR-T治療薬で治療される。一実施形態では、被験体がSPDの四分位数2に属する場合に、該被験体は、更に又は引き続きCD19 CAR-T治療薬で治療される。一実施形態では、奏効は、1年間の治療薬治療での奏効持続であり、癌は再燃性/難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫であり、治療は、ZUMA試験(実施例を参照)に記載されるYescartaのASCTである。
【0061】
例示的な癌
「癌」とは、体内の異常な細胞の制御不能の成長を特徴とする様々な疾患の幅広い群を指す。調節不能な細胞分裂及び成長は、隣接する組織に侵入する悪性腫瘍の形成をもたらし、リンパ系又は血流を介して体の離れた部分に転移することもある。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含み得る。本開示の方法によって治療され得る癌の例には、限定されるものではないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球悪性腫瘍を含む免疫系の癌が含まれる。幾つかの実施形態では、本開示の方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性白血病又は急性白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小児期固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮細胞癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘発される癌を含む環境により誘発される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少させるために使用され得る。特定の一実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。一実施形態では、本出願の方法は、化学療法若しくは放射線療法に奏効を示す癌、化学療法若しくは放射線療法に耐性であり得る癌、又は難治性若しくは再燃性の癌に適している。一実施形態では、難治性癌は、外科的介入を施すことができない癌を指し、その癌は、最初は化学療法若しくは放射線療法に奏効を示さないか、又はその癌は、時間とともに奏効を示さなくなる。
【0062】
別の実施形態では、難治性(耐性)疾患は、新たな病変の発生の不存在下で治療による病変サイズの50パーセント未満の減少によって示唆される。それに対して、病態進行は通常、新しい病変の出現、以前に特定された病変の最長径の50%の増加、又は骨髄での新たな/再発性の病変として現れる。幾つかの実施形態では、再燃性疾患は、最初の完全寛解に達した後の何らかの新たな病変の出現を表している。幾つかの実施形態では、難治性又は進行性の疾患は、治療後の奏効評価の間に特定される。再燃は通常は症候性であり、定型的な画像診断のみに基づいて特定されることはめったにない。進行又は再燃は、全身性のB症状(すなわち、発熱、寝汗、体重減少)、細胞減少症、リンパ節外腫瘤の発症を伴って、又はリンパ節、肝臓、若しくは脾臓の症候性若しくは無症候性の肥大として現れる場合がある。
【0063】
幾つかの実施形態では、癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性骨髄白血病(AML)、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄腫性白血病(CML)、慢性骨髄白血病、慢性白血病若しくは急性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、有毛細胞性白血病、ホジキン病、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、脊髄形成異常及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性障害(無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)を含む)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、形質細胞腫(形質細胞異常増殖症、孤立性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫及び多発性形質細胞腫を含む)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病及びPEP症候群としても知られる)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞若しくは大細胞濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、T細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫若しくはワルデンストレームマクログロブリン血症、又はそれらの組み合わせである。
【0064】
幾つかの実施形態では、癌は血液癌である。一実施形態では、癌は、DLBCL、すなわちびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、PMBCL、すなわち原発性縦隔B細胞リンパ腫、又はTFL、すなわち形質転換後濾胞性リンパ腫である。一実施形態では、癌は再燃性又は難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫(DLBCL)である。1つの態様では、本発明は、患者における2ライン以上の全身療法後の特定不能の再燃性若しくは難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に起因するDLBCLを治療する方法であって、治療を必要とする患者にCD19指向性遺伝子改変自家T細胞懸濁液を静脈内注入によって体重1kg当たり約1×10個と約2×10個との間のCAR陽性生存T細胞から約1×10個のCAR陽性生存T細胞の最大用量までの用量で投与することを含む、方法を提供する。
【0065】
癌被験体の亜集団を治療する方法
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、被験体の癌を治療し、腫瘍のサイズを減少させ、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞増殖を防ぎ、腫瘍成長を防ぎ、患者から腫瘍を排除し、腫瘍の再燃を防ぎ、腫瘍転移を防ぎ、患者の寛解を誘導し、又はそれらの任意の組み合わせを行うために使用され得る。或る特定の実施形態では、上記方法は完全奏効を誘発する。他の実施形態では、上記方法は部分奏効を誘発する。
【0066】
本明細書に示されるデータは、被験体におけるインデックス病変のベースライン時のSPD、すなわち直径の積の和が、CD19 CAR-T治療に対する肯定的な奏効の程度と相関することを指摘している。したがって、別の実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、ベースライン時のSPD値がSPDの四分位数1である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、ベースライン時のSPD値がSPDの四分位数2である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法を提供する。癌は、上記に挙げられた癌のいずれか1つであり得る。CD19 CAR-T治療薬は、上記に挙げられたCD19 CAR-T治療薬のいずれか1つであり得る。一実施形態では、ベースライン時のSPDは、上記の方法のいずれかによって測定される。
【0067】
SPDの四分位数が高いほど、奏効は低くなる。奏効と治療的便益とは相関している。幾つかの実施形態では、完全奏効は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、部分奏効は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、病勢安定は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、全生存期間の増加は治療的便益を示す。幾つかの実施形態では、治療的に有効とは、疾患進行までの時間の改善及び/又は症状若しくは生活の質の向上を構成し得る。他の実施形態では、治療的便益は病勢抑制の期間の増加に言い換えることができず、それよりむしろ、症状負担の著しい低下が生活の質の向上をもたらす。
【0068】
別の実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、前治療ライン数が1~2、3、4又は5以上である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、前治療ライン数が1~2である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法を提供する。癌は、上記に挙げられた癌のいずれか1つであり得る。CD19 CAR-T治療薬は、上記に挙げられたCD19 CAR-T治療薬のいずれか1つであり得る。幾つかの実施形態では、CD19 CAR-T治療薬は、第一選択治療として使用される。
【0069】
前治療ラインは、限定されるものではないが、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1抗体、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、セミプリマブ(リブタヨ)、ニボルマブ(オプジーボ)、抗PD-L1抗体、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、デュルバルマブ(イミフィンジ)、抗CTLA-4抗体、イピリムマブ(ヤーボイ)、抗CD19抗体(例えば、ブリナツモマブ)、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)、同種幹細胞移植、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、リツキシマブを伴う又は伴わない全身化学療法、リツキシマブ、アントラサイクリン、xxxxxxxxxを含む任意の前抗癌療法であり得る。前治療はまた、本開示のCD19 CAR T療法と組み合わせて使用され得る。一実施形態では、適格な患者は、殆どの最新の療法に対して難治性の疾患を有し得る又は自家造血幹細胞移植(HSCT/ASCT)後1年以内に再燃し得る。幾つかの実施形態では、難治性疾患は、難治性大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫)又は再燃性/難治性CLLである。別の実施形態では、適格な患者は、2つ以上の前全身療法を伴う再燃性又は難治性LBCLを有する。別の実施形態では、患者は急性リンパ芽球性白血病(ALL)を患っている。
【0070】
一実施形態では、本開示は、抗CD19 CAR-Tを用いたT細胞免疫療法が65歳以上の患者について扱いやすい安全性プロファイルを伴って高い割合の持続的奏効を誘発し得ることを提供する。別の実施形態では、本開示は、抗CD19 CAR-Tを用いたT細胞免疫療法が65歳未満の患者について扱いやすい安全性プロファイルを伴って高い割合の持続的奏効を誘発し得ることを提供する。別の実施形態では、本開示は、axi-cel/Yescartaを用いた抗CD19 CAR-T治療が65歳以上の患者について扱いやすい安全性プロファイルを伴って高い割合の持続的奏効を誘発し得ることを提供する。別の実施形態では、本開示は、axi-cel/Yescartaを用いた抗CD19 CAR-T治療が65歳未満の患者について扱いやすい安全性プロファイルを伴って高い割合の持続的奏効を誘発し得ることを提供する。
【0071】
一実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、65歳以上の被験体に治療的に有効なCD19 CAR T療法を施すことを含む、方法を提供する。一実施形態では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、65歳未満の被験体に治療的に有効なCD19 CAR T療法を施すことを含む、方法を提供する。一実施形態では、「CD19 CAR T療法」は、投与されるCAR T細胞の数を指す。一実施形態では、「CD19 CAR T療法」は、プレコンディショニングを伴う又は伴わないCAR T細胞の量並びに投与の回数及びタイミングを含む投与計画を指す。
【0072】
これらの方法の範囲内に含まれるCAR T細胞の量、投与計画、投与方法、被験体、癌は、単独に又は別の化学療法剤と組み合わせて、プレコンディショニングを伴って又は伴わずに、本明細書の他の箇所に記載される患者のいずれかに対して、本開示の他の箇所に記載される。
【0073】
一実施形態では、癌は、上記の癌のいずれかである。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、上記のCD19 CAR-T治療のいずれかである。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、Yescarta治療を含む。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、ZUMA-1試験(実施例を参照)に記載される治療又はプロトコルを含む。一実施形態では、奏効は、1年間の治療での奏効持続であり、癌は再燃性/難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫であり、治療薬は、ZUMA試験(実施例を参照)に記載されるYescarta(商標)のASCTである。
【0074】
一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、上記のCD19 CAR-T治療のいずれかである。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、Yescarta治療を含む。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、ZUMA-1試験(実施例を参照)に記載される治療又はプロトコルを含む。一実施形態では、奏効は、1年間の治療での奏効持続であり、癌は再燃性/難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫であり、治療薬は、ZUMA-1試験(実施例を参照)に記載されるYescarta(商標)のASCTである。
【0075】
一実施形態では、癌は、難治性DLBCL、すなわちびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)又は形質転換後濾胞性リンパ腫(TFL)であり、任意にまた(i)最後の化学療法に対して奏効を示さず、又はASCT後12ヶ月以内に再燃し、(ii)抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリンの前に、被験体に500mg/mのシクロホスファミド及び30mg/mのフルダラビンのコンディショニングレジメンを3日間施した後に、2×10個のCAR+細胞/kgのAxi-celが投与される。
【0076】
幾つかの実施形態では、上記方法は化学療法剤又は追加の療法剤を投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ枯渇(lymphodepleting)(プレコンディショニング)化学療法剤である。有益なプレコンディショニング治療のレジメンは、相関的な有益なバイオマーカーと共に、米国仮特許出願第62/262,143号及び同第62/167,750号に記載され、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。これらは、例えば、指定される有益な用量のシクロホスファミド(200mg/m/日~2000mg/m/日)及び指定される用量のフルダラビン(20mg/m/日~900mg/m/日)を患者に投与することを含むT細胞療法を必要とする患者をコンディショニングする方法を記載する。或る一つのかかる投薬レジメンは、治療的に有効な量の操作されたT細胞の患者への投与の前に、約500mg/m/日のシクロホスファミド及び約60mg/m/日のフルダラビンを3日間毎日患者に投与することを含む、患者を治療することを含む。プレコンディショニング投与計画の他の例は、例えば、米国特許第9,855,298号に見出すことができる。
【0077】
様々な追加の療法剤を、本明細書に記載される組成物と組み合わせて使用することができる。例えば、潜在的に有用な追加の療法剤には、ニボルマブ(オプジーボ(商標))、ペムブロリズマブ(キイトルーダ(商標))、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ(CureTech社)及びアテゾリズマブ(Roche社)等のPD-1阻害剤が含まれる。本明細書に開示される組成物及び方法と組み合わせて使用するのに適した追加の療法剤には、限定されるものではないが、イブルチニブ(イムブルビカ(商標))、オファツムマブ(アーゼラ(商標))、リツキシマブ(リツキサン(商標))、ベバシズマブ(アバスチン(商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(商標))、トラスツズマブ・エムタンシン(カドサイラ(商標))、イマチニブ(グリベック(商標))、セツキシマブ(アービタックス(商標))、パニツムマブ(ベクティビックス(商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セディラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキン・ディフティトックス、エベロリムス及びテムシロリムス等のmTOR阻害剤、ソニデジブ及びビスモデギブ等のヘッジホッグ阻害剤、CDK阻害剤(パルボシクリブ)等のCDK阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1抗体、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、セミプリマブ(リブタヨ)、ニボルマブ(オプジーボ)、抗PD-L1抗体、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、デュルバルマブ(イムフィンジ)、抗CTLA-4抗体、イピリムマブ(ヤーボイ)、抗CD19抗体(例えば、ブリナツモマブ)、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)、同種幹細胞移植、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、リツキシマブを伴う又は伴わない全身化学療法、リツキシマブ、アントラサイクリン、サイトカイン、他の抗炎症剤等が含まれる。前治療はまた、本開示のCD19 CAR T療法と組み合わせて使用され得る。
【0078】
本開示の抗CD19治療とともに使用され得る他の化学療法剤の例として、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、及びトリメチロールメラミンのレジメ(resume)を含む、エチレンイミン及びメチルメラミン;クロラムブチル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimustine)等のニトロソウレア;アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン(zorubicin)等の抗生物質;メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸類縁体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン等のプリン類縁体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU等のピリミジン類縁体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキウレア;レンティナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシッド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer);クロラムブチル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類縁体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)等のレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び/又はTCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、腫瘍に対するホルモンの作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体と併せて投与され得る。また適切な場合には、限定されないが、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(Oncovin(商標))及びプレドニゾンを含む化学療法剤の組み合わせが投与される。
【0079】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子(例えば、上記に挙げられた抗体)、形質導入された(又は他の方法で操作された)細胞(例えば、CAR)及び化学療法剤は、それぞれ、被験体の疾患又は状態を治療するのに有効な量で、単独で又は本明細書に記載される他の作用物質及び治療薬と組み合わせて投与される。
【0080】
再燃の可能性を予測する方法
本明細書に示されるデータは、被験体における前治療ライン数が、CD19 CAR-T治療後の再燃の程度又は可能性と相関することを指摘している。したがって、一実施形態では、本開示は、癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療後の再燃の可能性を予測する方法であって、前記被験体における前治療ライン数を決定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、前記前治療ライン数が高いほど、前記被験体について治療後の再燃の可能性が高いと予測される、方法を提供する。
【0081】
一実施形態では、前治療ライン数の4つの範囲は、1~2、3、4及び5以上である。一実施形態では、前治療ラインは、先行する抗CD20モノクローナル抗体、アントラサイクリン、適切な標準治療の任意の1つ以上、及びそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、予測方法は、上記の範囲のいずれかの前治療ライン数を有する被験体にCD19 CAR-T治療薬を投与することを更に含む。一実施形態では、治療薬は、1~2ラインの前治療を受けた被験体に投与される。一実施形態では、再燃の程度は治療後12ヶ月以内に測定され、癌は再燃性/難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫であり、治療薬は、ZUMA試験(実施例を参照)に記載されるYescartaのASCTである。
【0082】
癌を有する被験体におけるCAR-T治療に対する奏効の可能性を予測する方法
本明細書に示されるデータはまた、被験体における前治療ライン数が、CD19 CAR-T治療に対する肯定的な奏効の程度と相関することを指摘している。したがって、本開示は、癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効の可能性を予測する方法であって、前記被験体におけるベースライン時の前治療ライン数を測定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、被験体が属する範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効持続の可能性が高くなる、方法も提供する。
【0083】
一実施形態では、前治療ライン数の4つの範囲は、1~2、3、4及び5以上である。一実施形態では、前治療ラインは、先行する抗CD20モノクローナル抗体、アントラサイクリン、シクロホスファミド、フルダラビン、適切な標準治療の任意の1つ以上、及びそれらの組み合わせを含む。
【0084】
一実施形態では、癌は、上記に挙げられた癌のいずれかである。一実施形態では、CD19 CAR-T治療は、先に開示された治療のいずれかを含む。
【0085】
一実施形態では、予測方法は、上記の範囲のいずれかの前治療ライン数を有する被験体にCD19 CAR-T治療薬を投与することを更に含む。一実施形態では、治療薬は、1~2ラインの前治療を受けた被験体に投与される。一実施形態では、奏効は、1年間の治療での奏効持続であり、癌は再燃性/難治性大細胞型びまん性B細胞リンパ腫であり、治療は、ZUMA試験(実施例を参照)に記載されるYescartaのASCTである。
【0086】
臨床奏効は、CR、すなわち完全奏効、ORR、すなわち客観的奏効率、PR、すなわち部分奏効、及びORR、すなわち奏効持続率を含む、癌治療技術で知られている任意のパラメーターによって測定され得る。一実施形態では、奏効は、1年間のCD19 CAR-T治療で評価された奏効持続として測定される。
【0087】
以下の非限定的な実施例及びデータは、本開示の細胞及び療法の方法及び使用に関連する様々な態様及び特徴を示している。幾つかの実施形態では、本方法及び化合物の使用は、驚くべき予想外の意外な結果及びデータをもたらす。共に使用することができる幾つかの細胞又は化合物の使用を通じて本開示の方法の有用性が示されるが、当業者であれば、本開示の範囲に見合うように、他の様々な細胞又は化合物を用いて同等の結果を得ることができると理解するであろう。
【0088】
これらの実施例の文脈では、ASCTは、自家幹細胞移植を意味し、DLBCLは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を意味し、ECOGは、米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスを意味し、IPIは、国際予後指標を意味し、PDは、病態進行を意味し、PMBCLは、原発性縦隔B細胞リンパ腫を意味し、SPDは、直径の積の和を意味し、TFLは、形質転換後濾胞性リンパ腫を意味する。
【実施例
【0089】
実施例1
難治性大細胞型B細胞リンパ腫を伴う患者におけるアキシカブタゲン・シロロイセルのピボタルな第2相試験での前治療ラインによる転帰
アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)は、CD19発現細胞を認識して排除する自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬である。ピボタルな第1/2相多施設試験(ZUMA-1)では、難治性大細胞型B細胞リンパ腫を伴う108人の患者が治療され(追跡期間の中央値、15.4ヶ月)、58%の完全奏効(CR)を含む82%の客観的奏効率、CRに関する40%を含む42%の奏効持続、13%のグレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)、28%のグレード3以上の神経学的事象を示した。
【0090】
第1相では、被験体(n=7)は、難治性DLBCL、すなわちびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBCL)、又は形質転換後濾胞性リンパ腫(TFL)を患っていた。第2相は2つのコホートからなっていた。コホート1(n=77)の被験体は、難治性DLBCLを患っていた。コホート2(n=24)の被験体は、難治性PMBCL/TFLを患っていた。追加の適格な基準には、(i)最後の化学療法に対して奏効なし、又はASCT後12カ月以内の再燃と、(ii)先行する抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリンとが含まれていた。全ての被験体に500mg/mのシクロホスファミド及び30mg/mのフルダラビンのコンディショニングレジメンを3日間施した。全ての患者に2×10個のCAR+細胞/kgのAxi-celを投与した。登録された被験体の99%が製造に成功し、登録された被験体の91%が投与された。
【0091】
治療は、以下の順序で幾つかの工程を含んでいた:スクリーニング、白血球アフェレーシス、及びコンディショニング化学療法に続いて、Axi-cel注入。白血球アフェレーシスとコンディショニング化学療法との間に製造を行った。Axi-Cel注入を0日目に行った。7日目以降に、追跡期間の間に、治療後評価及び長期追跡調査が行われた。最初の腫瘍評価を28日目に行った。ブリッジング化学療法は、研究プロトコルによって許可されなかった。
【0092】
評価及び統計分析のために以下のパラメーターを使用した:安全性及び有効性の結果を、前治療ライン数によって評価した:1~2、3、4又は5以上の前治療ライン;自家幹細胞移植は前治療ラインとみなした;安全性及び有効性の結果を、腫瘍負荷量の四分位数によって評価した;腫瘍負荷量を、施設判定によってCheson 2007の基準(Neelapu SS and Locke FL, et al. Blood. 2016;128:LBA-6)によりインデックス病変の直径の積の和(SPD)として推定した;及び/又はインデックス病変のSPDは、患者の疾患の全体を表していない場合がある。
【0093】
これらの結果により、より多くのラインの前治療を伴う患者がASCT後により再燃する可能性が高いだけでなく、より高い国際予後指標スコア及び病期を有することが示された。これは、より高いSPDと一致している(表1)。
【0094】
【表1】
【0095】
表1:ベースライン特性。ASCTは、自家幹細胞移植であり、DLBCLは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であり、ECOGは、米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスであり、IPIは、国際予後指標であり、PMBCLは、原発性縦隔B細胞リンパ腫であり、SPDは、直径の積の和であり、TFLは、形質転換後濾胞性リンパ腫である。
【0096】
また、製品特性は前治療ラインにわたって類似していた(表2及び表3を参照)。治療ラインは、ZUMA-1への登録前に数えられた。
【0097】
【表2】
【0098】
表2:製品特性。倍加時間は次の計算によって計算された:倍加時間=(ln[2]×期間)/(ln[採取時の総生存細胞/3日目の総生存細胞])。フローサイトメトリーによる抗CD19CAR T細胞の表現型分析には、表面マーカーCD3、CD4、CD8、CCR7、及びCD45RAが含まれていた。CCR7及びCD45RAを使用して、TN(CCR7CD45RA)T細胞と、TCM(CCR7CD45RA)T細胞と、TEM(CCR7CD45RA)T細胞と、TEFF(CCR7CD45RA)T細胞とを区別した。CRは、完全奏効であり、ORRは、客観的奏効率であり、PRは、部分奏効であり、TCMは、セントラルメモリーT細胞であり、TEFFは、エフェクターT細胞であり、TEMは、エフェクターメモリーT細胞であり、TNは、ナイーブT細胞である。
【0099】
【表3】
【0100】
表3:前治療ラインによる奏効率。CRは、完全奏効であり、ORRは、客観的奏効率であり、PRは、部分奏効である。
【0101】
さらに、グレード3以上のCRSの割合は前治療ラインにわたって類似していた(データは示していない)。5つ以上の前治療ラインを伴う患者については、グレード3以上の重篤な有害事象及び神経学的事象の割合が上昇する傾向があった。
【0102】
表4は、前治療ラインによるCAR T細胞の増殖を示す。ZUMA-1への登録前に数が数えられた。
【0103】
【表4】
【0104】
表4:前治療ラインによるCAR T細胞の増殖。AUC0-28は、axi-cel後の最初の28日間の血液1μL当たりのCAR+細胞の累積レベルであり、axi-celは、アキシカブタゲン・シロロイセルであり、CARは、キメラ抗原受容体である。
【0105】
ベースラインの特徴は、より多くのラインの前治療を伴う患者ほど、高いIPI及び病期を有することを示唆している。さらに、指標付きのSPDによる結果の評価を実施した。表5に示される結果は、最低のSPDの四分位数(中央値840mm)にある患者が実質的な疾患を患っていることを示唆している。
【0106】
【表5】
【0107】
表5:四分位数によるSPD。角括弧は包含値を示す。丸括弧は非包含値を示す。1人の患者についてのSPDは得ることができなかった。
【0108】
SPDの四分位数が高くなるほど、奏効持続率は減少する(図1)。また、グレード3以上のCRS及び神経学的事象は、最低のSPDの四分位数内の患者において最も低い頻度で発生した。
【0109】
これらの結果により、axi-celが、前治療ライン数及びSPDにかかわらず、難治性大細胞型B細胞リンパ腫を伴う患者について長期的な臨床的便益を示したことが裏付けられた。また、axi-celは、全ての治療ラインにわたって同様の製品特性で製造された。1~4の前治療ラインを伴う患者にわたって、CARのピーク増殖、曲線下面積、及び範囲は同等である。さらに、この研究により、より低いSPDを伴う患者ほど1年間での高い奏効持続率が観察され、インデックス病変のSPDが最低のSPDの四分位数内にある患者ではより低いCRS及び神経学的事象の割合が観察されることが示された。
【0110】
実施例2
難治性大細胞型B細胞リンパ腫におけるアキシカブタゲン・シロロイセルの長期活性
この研究では、難治性大細胞型B細胞リンパ腫を伴う100人超の患者をアキシカブタゲン・シロロイセルで治療し、それらの癌の進行を単回治療後2年超まで追跡した。これらの結果は、アキシカブタゲン・シロロイセルが持続的奏効及び2年を超える全生存期間の中央値をもたらし得ることを示している。活性化B細胞様リンパ腫、ダブルエクスプレッサーリンパ腫、及び高悪性度B細胞リンパ腫を伴う患者の大部分を含む全ての患者サブグループにわたって結果は類似していた。
【0111】
119人の患者が登録され、108人が治療を受けた。前治療ライン数にわたる患者分布は以下の通りであった:第1相:中央値(IQR)3(3~4);1ライン(0人の患者);2ライン(1人の患者、14%)、3ライン(6人の患者、86%)。第2相:中央値(IQR)3(2~4);1ライン(3人の患者、3%);2ライン(28人の患者、28%)、3ライン(70人の患者、69%)。さらに、第1相では、1人の患者(14%)が原発性難治性疾患の病歴を有し、1人の患者(14%)が2つの連続的なラインに対する耐性歴を有していた。第2相では、26人の患者(26%)が原発性難治性疾患の病歴を有し、54人の患者(53%)が2つの連続的なラインに対する耐性歴を有していた。患者は原発性難治性疾患の後に他の治療を受けた可能性があった。
【0112】
癌特性評価に関して、細胞起源について評価された74人の患者のうち52人(70%)は胚中心B細胞様疾患を有し、18人(24%)は活性化B細胞様疾患を有していた。治療前の腫瘍試料を伴う47人の患者のうち、30人(64%)はダブルエクスプレッサーB細胞リンパ腫を有し、7人(15%)は高悪性度B細胞リンパ腫を有し、その7人には、トリプルヒット高悪性度Bリンパ腫を有する1人(2%)、ダブルヒット高悪性度B細胞リンパ腫を有する4人(9%)、及び非特定型の高悪性度B細胞リンパ腫を有する2人(4%)が含まれる。
【0113】
第2相での活性について評価可能な101人の患者を、27.1ヶ月の中央値にわたり追跡調査した(IQR 25.7~28.8)。施設判定によれば、101人の患者のうち84人(83%)が治療に対して客観的奏効を示し、59人(58%)が完全奏効を示し、25人(25%)が部分奏効を示した。10人(10%)の患者は病勢安定を示し、5人(5%)は最良効果として病態進行を示し、2人(2%)は評価することができなかった。
【0114】
奏効期間の中央値は1ヶ月であった(IQR 1~1)。1ヶ月で部分奏効を示した33人の患者のうち11人及び1ヶ月で病勢安定を示した24人の患者のうち11人は、引き続き完全奏効を達成し、6ヶ月まで多くの切り替わりが起こった。ダブルエクスプレッサーリンパ腫及び高悪性度B細胞リンパ腫を伴う33人の患者のうち、30人(91%)が客観的奏効を示し、23人(70%)が完全奏効を示した。101人の患者全ての奏効期間の中央値は11.1ヶ月であった(95%のCI 4.2~推定不可)。
【0115】
主要なベースライン及び臨床的共変量にわたって奏効持続は一貫していた。無増悪生存期間の中央値は5.9ヶ月であった(95%のCI 3.3~15)。24ヶ月で無増悪生存を伴う患者の推定割合は、3ヶ月で完全奏効を示した患者のうち72%(95%のCI 56.0~83.0)、3ヶ月で部分奏効を示した患者のうち75%(31.5~93.1)、及び3ヶ月で病勢安定を示した患者のうち22.2%(3.4~51.3)であった。全生存期間の中央値には達しておらず(95%のCI 12.8~推定不可)、推定された24ヶ月の生存割合は50.5%(95%のCI 40.2~59.7)であった。追跡調査不能となった患者はいなかった。
【0116】
24ヶ月での奏効持続は、注入後の最初の28日間でのより高いCAR T細胞のピーク濃度及び曲線下面積と関連していた。24ヶ月までに、32人の評価可能な患者のうち11人(34%)が奏効持続を維持し、もはや検出可能な操作されたT細胞を有しなかった。注入2年後の安全性プロファイルは、より短いタイムラインの安全性プロファイルと同様であった。
【0117】
3ヶ月での奏効による無増悪生存期間の分析により、3ヶ月での完全奏効又は部分奏効の達成が長期奏効持続性の予測となり得ることが示唆される(図2)。注入の3ヶ月後に、奏効持続を示す35人の評価可能な患者のうち6人(17%)が末梢血に検出可能なB細胞を有していた。9ヶ月で、33人の評価可能な患者のうち20人(61%)が検出可能なB細胞を有しており、24ヶ月で、32人の評価可能な患者のうち24人(75%)が検出可能なB細胞を有していた。
【0118】
これらの結果は、アキシカブタゲン・シロロイセルの単回注入で治療された難治性大細胞型B細胞リンパ腫を伴う患者が2年より長く続く持続的な奏効を示し、更なる地固め療法を必要としないことを示唆している。活性化B細胞様リンパ腫、ダブルエクスプレッサーリンパ腫、及び高悪性度B細胞リンパ腫を伴う患者の大部分を含む、幾つかの治療ラインに対して治療抵抗性の患者のこの集団において、全ての患者亜集団にわたって、結果は類似していた。2年間で全生存期間の中央値には達しておらず、推定された24ヶ月の生存割合は50.5%(95%のCI 40.2~59.7)であった。それに対して、従来の療法による予測される全生存期間の中央値はおよそ6ヶ月であり、2年の全生存はおよそ20%である。
【0119】
CD19を標的とし、B細胞無形成症の誘発が予想されるにもかかわらず、遅発型のグレード3又はそれより悪い重篤な感染症の頻度は低かった。奏効持続を示す評価可能な患者のうちの75%は24ヶ月までB細胞の回復のエビデンスを示し、9ヶ月で一部の患者にB細胞の回復の開始が認められた。奏効持続を示すこれらの患者がB細胞を回復したことは、リンパ腫を伴う成人における持続的奏効が機能的なCAR T細胞の長期残存を必要としない可能性を示唆している。
【0120】
実施例3
難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)におけるアキシカブタゲン・シロロイセル(Axi-Cel)の第1/2相試験での65歳以上の患者の有効性及び安全性の結果
難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の適格な患者は、白血球アフェレーシスを受け、500mg/m(静脈内)のシクロホスファミド及び30mg/m(静脈内)のフルダラビンが投与され、ここで、両者は、静脈内注入を介して2×10個のCAR陽性生存T細胞/kgの用量でアキシカブタゲン・シロロイセルを投与(0日目)する前の5日目、4日目及び3日目に投与された。108人の患者を治療した。65歳以上の患者(n=27)対65歳未満の患者(n=81)は、それぞれ69歳対55歳(y)の中央値年齢を有し、男性は81%対63%であり、70%対36%がIPIスコア3~4を有し、59%対57%がECOG 1を有し、81%対84%は病期III/IVであり、67%対72%は3つ以上の前治療を有し、そしてSPDによる腫瘍負荷量の中央値(範囲)は3790(600~16764)mm対3574(171~23297)mmであった。ピークレベルまでのCAR T細胞増殖(43細胞/μl対35細胞/μl)又は曲線下面積(562日×細胞/μl対448日×細胞/μl)は、65歳(y)以上の患者対65歳未満の患者でそれぞれ類似していた。疾患型に関しては、74%対79%がDLBCLを有し、0%対10%がPMBCLを有し、そして26%対11%がTFLを有していた。19%対30%は先行するASCTを有した。登録前の難治性サブグループは以下のように分類された:4%対2%は一次治療に抵抗性であり、78%対73%は第二選択療法又はそれ以降の選択療法に抵抗性であり、そして19%対25%はASCT後に再燃した。
【0121】
追跡期間の中央値は、第2相患者(n=101)について27.1ヶ月であった。年齢群別の有効性は以下のように分類された:65歳以上の患者(n=24)及び65歳未満の患者(n=77)についてのORRは、それぞれ92%及び81%(CR率75%及び53%;PR 17%対27%)であり、患者の42%及び38%において奏効持続が見られた(CRの持続 42%及び35%)。24カ月のOS率は65歳以上の患者で54%であり、65歳未満の患者で49%であった。65歳以上の患者の100%及び65歳未満の患者の98%において、グレード3以上のAEが観察された。65歳以上の患者対65歳未満の患者のそれぞれ44%対28%及び7%対12%において、グレード3以上の神経学的事象及びサイトカイン放出症候群が発生した。グレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)及び神経学的事象(NE)の割合は、年齢群にわたって類似していた。CRSには、発熱、低血圧及び低酸素症が含まれる。NEには、脳症、錯乱状態、失語症、不穏、及びせん妄が含まれる。任意のグレード及びグレード3以上の血球減少症(血球減少症、血小板減少症、好中球減少症、貧血)は、年齢群にわたって一貫していた。65歳以上の年齢の患者及び65歳未満の年齢の患者のそれぞれ26%及び32%が静脈内免疫グロブリン療法を受けた。
【0122】
65歳未満の患者と比較して、65歳以上の患者は、最後の前治療に対する最良効果として病態進行を示し、IPIスコアは3~4であった(60歳以上の年齢はIPIスコアの構成要素である)。Axi-celは、65歳以上の患者及び65歳未満の患者について扱いやすい安全性プロファイルを伴って高い割合の持続的な奏効を誘発し得る。難治性LBCLの高齢患者には、一般的に治療の選択肢が限られている。2年間の分析の結果により、治療有効性(83%の客観的奏効率、58%の完全奏効率、39%の奏効持続、N=101、追跡期間の中央値27.1ヶ月)及び安全性(遅発型の有害事象は主として扱いやすい感染症であり、サイトカイン放出症候群、神経学的事象又は死亡の遅発型のaxi-cel関連の発症はなかった;N=108)が示された。
項1.
癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効を予測する方法であって、前記被験体におけるベースライン時のSPDを測定し、SPD範囲を決定することを含み、ここで、低いSPD範囲は前記CAR-T治療に対する肯定的な奏効の可能性を示す、方法。
項2.
前記SPDは、4つの範囲のうちの1つに属することができ、ここで、SPDが属する範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効の可能性は高くなる、項1に記載の方法。
項3.
前記4つの範囲は、以下:
SPDの四分位数1、約100mm (含める)~約2000mm (含める)、約840のSPDの中央値、
SPDの四分位数2、約2000mm (含めない)~約3700mm (含める)、約2820mm のSPDの中央値、
SPDの四分位数3、約3700mm (含めない)~約6700mm (含める)、約5100mm のSPDの中央値、及び、
SPDの四分位数4、約6700mm (含めない)~約24000mm (含める)、約9300mm のSPDの中央値、
を含む、項2に記載の方法。
項4.
前記ベースライン時のSPD値が前記SPDの四分位数1~4にある場合に、前記被験体は、引き続きCD19 CAR-T治療で治療される、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
項5.
治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、ベースライン時のSPD値がSPDの四分位数1~4にある被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法。
項6.
癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療後の再発の可能性を予測する方法であって、前記被験体における前治療ライン数を決定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、前記前治療ライン数が高いほど、前記被験体についてCD19 CAR-T治療後の再発の可能性が高いと予測される、方法。
項7.
癌を有する被験体におけるCD19 CAR-T治療に対する奏効持続の可能性を予測する方法であって、前記被験体におけるベースライン時の前治療ライン数を測定し、前記数が4つの範囲のうちのどの1つに属するかを決定することを含み、ここで、前記範囲が低いほど、CD19 CAR-T治療に対する奏効持続の可能性を示す、方法。
項8.
前記前治療ライン数の範囲は、1~2、3、4又は5以上である、項6又は7に記載の方法。
項9.
前記前治療ライン数が1~2、3、4又は5以上である前記被験体に、引き続きCD19 CAR-T治療薬を投与することを更に含む、項6~8のいずれか一項に記載の方法。
項10.
治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、前記被験体における前治療ライン数が1~2、3、4又は5以上である被験体に治療的に有効な量のCD19 CAR-T治療薬を投与することを含む、方法。
項11.
前記癌は、血液癌又は再燃性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
項12.
前記CD19 CAR-T治療は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19による治療を含む、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
項13.
治療を必要とする患者における抗CD19 CAR-T細胞治療による癌の治療に対する長期奏効持続性を予測する方法であって、治療薬の単回投与の3ヶ月後に無増悪生存期間を評価することを含み、ここで、3ヶ月での完全奏効又は部分奏効の達成が前記患者における長期奏効持続性の予測となる、方法。
項14.
前記抗CD19 CAR-T治療は、アキシカブタゲン・シロロイセル(Yescarta)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、JCAR017、JCAR015、JCAR014、ウプサラ大学の抗CD19 CAR(NCT02132624)又はUCART19による治療を含む、項13に記載の方法。
項15.
前記癌は、血液癌である、項13又は14に記載の方法。
項16.
前記癌は、再発性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、項15に記載の方法。
項17.
長期奏効持続性は、9ヶ月より長く、12ヶ月より長く、18ヶ月より長く、又は24ヶ月より長く続く完全奏効又は部分奏効を含む、項13~16のいずれか一項に記載の方法。
項18.
前記被験体は、65歳以上である、項1~17のいずれか一項に記載の方法。
項19.
前記被験体は、65歳未満である、項1~17のいずれか一項に記載の方法。
項20.
前記CD19 CAR-T治療薬は、第一選択療法として投与される、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2