(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】燃料電池スタック及び燃料電池スタックの組立方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20221110BHJP
H01M 8/2404 20160101ALI20221110BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221110BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/2404
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021027899
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀晴
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126748(JP,A)
【文献】特開2013-196849(JP,A)
【文献】特開2013-219028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電セルが積層されて構成された積層体と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレートと、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピンと、を備えた燃料電池スタックであって、
前記位置決めピンの一端部には、前記第1エンドプレートに螺合する第1ねじ部が設けられており、
前記位置決めピンの他端部には、延長ピンが螺合するための第2ねじ部が設けられており、
前記第2ねじ部のねじ締付方向は、前記第1ねじ部のねじ締付方向と逆である、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、
前記第1ねじ部は雄ねじであり、前記第2ねじ部は雌ねじである、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池スタックにおいて、
前記第1エンドプレートは、金属製のエンドプレート本体と、前記エンドプレート本体に固定された樹脂製のカラー部材とを有し、
前記第1ねじ部は、前記カラー部材に設けられた雌ねじに螺合している、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池スタックにおいて、
前記第1エンドプレートは、前記カラー部材に対する前記位置決めピンのねじ締付方向に沿った前記カラー部材の前記エンドプレート本体に対する回転を規制する回転規制機構を有する、燃料電池スタック。
【請求項5】
複数の発電セルが積層されて構成された積層体と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレートと、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピンと、を備えた燃料電池スタックの組立方法であって、
前記位置決めピンの一端部には第1ねじ部が設けられ、前記位置決めピンの他端部にはねじ締付方向が前記第1ねじ部と逆の第2ねじ部が設けられており、
前記組立方法は、
前記位置決めピンの前記第2ねじ部に螺合により延長ピンが接続されて位置決めシャフトが構成されるとともに、前記第1エンドプレートに前記位置決めピンの前記第1ねじ部が螺合する状態を提供するピン配置工程と、
前記ピン配置工程の後で、前記位置決め孔に前記位置決めシャフトを挿通させながら、前記複数の発電セルを積層する積層工程と、
前記積層工程の後で、前記複数の発電セルに前記積層方向の締付荷重を付与して前記積層体を前記積層方向に圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程の後で、前記位置決めピンから前記延長ピンを取り外すシャフト取外し工程と、を有する、燃料電池スタックの組立方法。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池スタックの組立方法において、
前記第1ねじ部は雄ねじであり、前記第2ねじ部は雌ねじである、燃料電池スタックの組立方法。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池スタックの組立方法において、
前記ピン配置工程では、前記第1ねじ部が前記位置決めピンの下端部に位置し、前記第2ねじ部が前記位置決めピンの上端部に位置する、燃料電池スタックの組立方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の燃料電池スタックの組立方法において、
前記位置決めピンは、位置決めピン本体と、前記位置決めピン本体よりも小径の前記第2ねじ部とを有し、
前記延長ピンは、延長ピン本体と、前記延長ピン本体よりも小径であり前記第2ねじ部と螺合可能な第3ねじ部とを有し、
前記位置決めシャフトにおいて、前記延長ピン本体の前記位置決めピン本体に隣接する端面の外径は、前記位置決めピン本体の前記延長ピン本体に隣接する端面の外径よりも大きい、燃料電池スタックの組立方法。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池スタックの組立方法において、
前記延長ピン本体は、前記延長ピン本体の前記端面に向かって外径が小さくなるテーパ部を有する、燃料電池スタックの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック及び燃料電池スタックの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の発電セル(単位セル)が互いに積層された積層体と、積層体の積層方向の両端に配設されたエンドプレートとを備えた燃料電池スタックが開示されている。各発電セルには、位置決めピン(ノックピン)が挿通可能な位置決め孔が形成されている。燃料電池スタックの組立てにおいては、複数の発電セルの各々の位置決め孔に位置決めピンを挿通させながら所定枚数の発電セルを積層して積層体を構成し、積層体に積層方向の締付荷重を付与する。これにより、燃料電池スタックを組み立てることができる。
【0003】
位置決めピンに関連して、特許文献2には、本体部(位置決めピン)と延長部(延長ピン)とを有する位置決めシャフトを用い、複数の発電セルを積層方向に圧縮する圧縮工程の後に、本体部から延長部を取り外すことが開示されている。このような燃料電池スタックの組立方法によれば、位置決めシャフトの不要な突出がない燃料電池スタックを簡単に形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-132558号公報
【文献】特開2013-196849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来技術に関連したなされたものであり、位置決めピンから延長ピンを効率的に取り外すことができる燃料電池スタック及び燃料電池スタックの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、複数の発電セルが積層されて構成された積層体と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレートと、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピンと、を備えた燃料電池スタックであって、前記位置決めピンの一端部には、前記第1エンドプレートに螺合する第1ねじ部が設けられており、前記位置決めピンの他端部には、延長ピンが螺合するための第2ねじ部が設けられており、前記第2ねじ部のねじ締付方向は、前記第1ねじ部のねじ締付方向と逆(第1ねじ部と第2ねじ部とは互いに逆ねじの関係)である、燃料電池スタックである。
【0007】
本発明の第2の態様は、複数の発電セルが積層されて構成された積層体と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレートと、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピンと、を備えた燃料電池スタックの組立方法であって、前記位置決めピンの一端部には第1ねじ部が設けられ、前記位置決めピンの他端部にはねじ締付方向が前記第1ねじ部と逆の第2ねじ部が設けられており、前記組立方法は、前記位置決めピンの前記第2ねじ部に螺合により延長ピンが接続されて位置決めシャフトが構成されるとともに、前記第1エンドプレートに前記位置決めピンの前記第1ねじ部が螺合する状態を提供するピン配置工程と、前記ピン配置工程の後で、前記位置決め孔に前記位置決めシャフトを挿通させながら、前記複数の発電セルを積層する積層工程と、前記積層工程の後で、前記複数の発電セルに前記積層方向の締付荷重を付与して前記積層体を前記積層方向に圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程の後で、前記位置決めピンから前記延長ピンを取り外すシャフト取外し工程と、を有する、燃料電池スタックの組立方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置決めピンの他端部に設けられた第2ねじ部のねじ締付方向が第1ねじ部のねじ締付方向と逆である。このため、燃料電池スタックの組立工程において、位置決めピンから延長ピンを取り外す際に、位置決めピンが延長ピンと一緒に回ることを防止することができる。すなわち、第1エンドプレートに対する位置決めピンの締結が緩んで、延長ピンが位置決めピンから外れなくなることを防止することができる。従って、延長ピンを位置決めピンから効率的に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの一部分解斜視図である。
【
図2】
図1の燃料電池スタックの一部省略縦断面図である。
【
図4】
図4Aは、回転規制機構を説明するための一部省略分解斜視図であり、
図4Bは、
図4Aの回転規制機構を説明するための横断面図である。
【
図5】燃料電池スタックの組立方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12(単位セル)が互いに積層されて構成された積層体14を備える。燃料電池スタック10は、図示しない燃料電池自動車に搭載される。ただし、燃料電池スタック10は、定置型としても用いることができる。
【0011】
図1及び
図2において、積層体14の積層方向(矢印A方向)の一端には、ターミナルプレート16a、インシュレータ18a及びエンドプレート20a(第1エンドプレート)が、外方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向の他端には、ターミナルプレート16b、インシュレータ18b及びエンドプレート20b(第2エンドプレート)が、外方に向かって、順次、配設される。
【0012】
つまり、一組のエンドプレート20a、20bは、複数の積層体14の積層方向の両端に位置している。エンドプレート20aの略中央部には、ターミナルプレート16aに接続されるとともに積層方向外方に延出した出力端子22aが設けられている。エンドプレート20bの略中央部には、ターミナルプレート16bに接続されるとともに積層方向外方に延出した出力端子22bが設けられている。
【0013】
図1に示すように、各エンドプレート20a、20b(具体的には、後述するエンドプレート本体20a1、20b1)は、金属製であり、横長の長方形状を有する。エンドプレート20a、20bの各辺間には、連結部材24(連結バー)が配置される。各連結部材24の両端は、ボルト26によりエンドプレート20a、20bの内面20ai、20biに固定されている。これにより、連結部材24は、積層体14に積層方向(矢印A方向)の締め付け荷重を付与する。
【0014】
燃料電池スタック10は、積層体14を積層方向と直交する方向から覆うカバー部28を備えている。カバー部28は、エンドプレート20a、20bの長辺側に設けられた横長プレート形状の一組のサイドパネル30a、30bと、エンドプレート20a、20bの短辺側に設けられた横長プレート形状の一組のサイドパネル30c、30dとを有する。各サイドパネル30a~30dは、ボルト32によりエンドプレート20a、20bの側面に固定されている。カバー部28は、鋳造又は押出材により一体的に成形してもよい。カバー部28は、必要に応じて用いればよく、不要にすることもできる。
【0015】
図3に示すように、発電セル12は、MEA34(電解質膜・電極構造体)と、MEA34を挟持する第1セパレータ36a及び第2セパレータ36bとを備えている。
【0016】
発電セル12の長辺方向である矢印B方向の一端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔38a、冷却媒体入口連通孔40a及び燃料ガス出口連通孔42bが矢印C方向に沿って設けられる。酸化剤ガス入口連通孔38aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。冷却媒体入口連通孔40aは、純水、エチレングリコール、オイル等の冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔42bは、水素含有ガス等の燃料ガスを排出する。
【0017】
各発電セル12に設けられた酸化剤ガス入口連通孔38aは、積層方向(矢印A方向)に互いに連通する。各発電セル12に設けられた冷却媒体入口連通孔40aは、積層方向に互いに連通する。各発電セル12に設けられた燃料ガス出口連通孔42bは、積層方向に互いに連通する。
【0018】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、燃料ガス入口連通孔42a、冷却媒体出口連通孔40b及び酸化剤ガス出口連通孔38bが矢印C方向に沿って設けられる。燃料ガス入口連通孔42aは、燃料ガスを供給する。冷却媒体出口連通孔40bは、冷却媒体を排出する。酸化剤ガス出口連通孔38bは、酸化剤ガスを排出する。
【0019】
各発電セル12に設けられた燃料ガス入口連通孔42aは、積層方向に互いに連通する。各発電セル12に設けられた冷却媒体出口連通孔40bは、積層方向に互いに連通する。各発電セル12に設けられた酸化剤ガス出口連通孔38bは、積層方向に互いに連通する。
【0020】
なお、酸化剤ガス入口連通孔38a及び酸化剤ガス出口連通孔38bと燃料ガス入口連通孔42a及び燃料ガス出口連通孔42bと冷却媒体入口連通孔40a及び冷却媒体出口連通孔40bとのそれぞれは、インシュレータ18a及びエンドプレート20aにも形成されている(
図1参照)。
【0021】
酸化剤ガス入口連通孔38a及び酸化剤ガス出口連通孔38bと燃料ガス入口連通孔42a及び燃料ガス出口連通孔42bと冷却媒体入口連通孔40a及び冷却媒体出口連通孔40bとの配置は、本実施形態に限定されるものではなく、要求される仕様に応じて、適宜設定すればよい。
【0022】
第1セパレータ36aのMEA34に向かう面36aaには、酸化剤ガス入口連通孔38aと酸化剤ガス出口連通孔38bとに連通する酸化剤ガス流路44が設けられる。酸化剤ガス流路44は、矢印B方向に延在する複数の酸化剤ガス流路溝を有する。
【0023】
第2セパレータ36bのMEA34に向かう面36baには、燃料ガス入口連通孔42aと燃料ガス出口連通孔42bとに連通する燃料ガス流路46が設けられる。燃料ガス流路46は、矢印A方向に延在する複数の燃料ガス流路溝を有する。
【0024】
第1セパレータ36aと第2セパレータ36bとは、互いに対向する面36ab、36bb間に冷却媒体流路48を一体的に形成する。冷却媒体流路48は、矢印B方向に延在する複数の冷却媒体流路溝を有する。
【0025】
MEA34は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である電解質膜50(固体高分子電解質膜)と、電解質膜50を挟持するカソード電極52及びアノード電極54とを有する。
【0026】
電解質膜50は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。電解質膜50は、カソード電極52及びアノード電極54よりも大きな平面寸法(外形寸法)を有する。すなわち、電解質膜50は、カソード電極52及びアノード電極54よりも外周側に突出している。
【0027】
カソード電極52は、電解質膜50の一方の面50aに接合されている。アノード電極54は、電解質膜50の他方の面50bに接合されている。カソード電極52及びアノード電極54のそれぞれは、電極触媒層とガス拡散層とを含む。電極触媒層は、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子とイオン導電成分を含むペーストが、ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される。ガス拡散層は、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなる。
【0028】
なお、MEA34は、電解質膜50の平面寸法をカソード電極52及びアノード電極54の平面寸法よりも小さく形成し、カソード電極52の外周縁部とアノード電極54の外周縁部との間に枠形状を有する樹脂フィルム(樹脂枠部材)を挟持するように構成してもよい。
【0029】
第1セパレータ36a及び第2セパレータ36bは、反応ガスの流通方向が長辺側になるように長方形状(四角形状)に形成されている。第1セパレータ36a及び第2セパレータ36bは、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1セパレータ36aと第2セパレータ36bとは、面36abと面36bbを対向させた状態で外周を溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合される。
【0030】
第1セパレータ36aには、第1シールライン58aがMEA34に向かって膨出成形されている。第1シールライン58aは、第1セパレータ36aの外周部を周回することにより、第1セパレータ36aとMEA34との間から流体(燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体)が外部に漏出することを防止する。すなわち、第1シールライン58aは、その突出端面が電解質膜50に直接接触して弾性変形することによりシールするメタルビードシールとして構成されている。ただし、第1シールライン58aは、弾性を有するゴムシール部材で形成されていてもよい。
【0031】
第2セパレータ36bには、第2シールライン58bがMEA34に向かって膨出成形されている。第2シールライン58bは、第2セパレータ36bの外周部を周回することにより、第2セパレータ36bとMEA34との間から流体(燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体)が漏出することを防止する。すなわち、第2シールライン58bは、その突出端面が電解質膜50の面50bに直接接触して弾性変形することによりシールするメタルビードシールとして構成されている。ただし、第2シールライン58bは、弾性を有するゴムシール部材で形成されていてもよい。
【0032】
第1セパレータ36aには、第1セパレータ36aの外周部から外方に突出する2つの凸部60a、60bが設けられている。凸部60aは、第1セパレータ36aの矢印C方向の一方の外縁部における矢印B方向の一端側(酸化剤ガス入口連通孔38a側)に位置する。凸部60bは、第1セパレータ36aの矢印C方向の他方の外縁部における矢印B方向の他端側(酸化剤ガス出口連通孔38b側)に位置する。
【0033】
凸部60aの略中央部には、後述する位置決めピン70(
図1及び
図2参照)が挿通する位置決め孔62が形成されている。なお、
図3では、位置決めピン70の図示を省略している。
【0034】
図2及び
図3に示すように、凸部60aは、板状に形成された支持部64と、支持部64を被覆する絶縁部66とを有する。支持部64は、金属材料、例えば、第1セパレータ36aと同じ材料によって形成される。支持部64は、第1セパレータ36aに対して溶接されている。ただし、支持部64は、第1セパレータ36aに対して一体成形されていてもよい。支持部64を被覆する絶縁部66には、位置決め孔62が形成されている。
【0035】
絶縁部66は、樹脂等の電気的絶縁材料によって構成されている。絶縁部66は、支持部64のうち第1セパレータ36aから突出している部分を被覆する。位置決め孔62を形成する壁部は、絶縁部66(絶縁材料)によって構成されている。
【0036】
凸部60bは、凸部60aと同様に構成されている。そのため、凸部60bの詳細な構成の説明については省略する。第2セパレータ36bには、第1セパレータ36aと同様に、2つの凸部60a、60bが設けられている。つまり、各発電セル12は、2つの凸部60aと、2つの凸部60bとを有する。
【0037】
図2に示す燃料電池スタック10は、複数の発電セル12を互いに位置決めするための2本の位置決めピン70(ノックピン)を備える。位置決めピン70は、各発電セル12の凸部60a、60bの位置決め孔62に挿通している。
図2の例では、位置決めピン70は、インシュレータ18a、18bの外側に位置している(インシュレータ18a、18bを貫通していない)が、インシュレータ18a、18bを貫通していてもよい。
【0038】
位置決めピン70は、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、マグネシウム等の金属材料により円柱状又は円筒状に形成されている。位置決めピン70の一端部には、エンドプレート20aに設けられた後述するカラー部材88に螺合する第1ねじ部70aが設けられている。位置決めピン70の他端部には、後述する延長ピン110(
図6、
図7参照)が螺合するための第2ねじ部70bが設けられている。従って、位置決めピン70は、位置決め孔62に挿通された位置決めピン本体71と、位置決めピン本体71よりも小径の第1ねじ部70aと、位置決めピン本体71よりも小径の第2ねじ部70bとを有する。
【0039】
本実施形態では、第1ねじ部70aは雄ねじ70a1である。他の態様において、第1ねじ部70aは雌ねじであってもよい。エンドプレート20aは、金属製のエンドプレート本体20a1と、エンドプレート本体20a1に固定された樹脂製のカラー部材88とを有する。上述した連通孔(
図1及び
図2に示す酸化剤ガス入口連通孔38a等)は、エンドプレート本体20a1に形成されている。
【0040】
エンドプレート20bは、エンドプレート本体20b1と、エンドプレート本体20b1に固定された第1支持部材72及び第2支持部材74とを有する。上述した連通孔(
図1及び
図2に示す酸化剤ガス入口連通孔38a等)は、エンドプレート本体20b1に形成されている。位置決めピン70の他端部は、第1支持部材72及び第2支持部材74に支持されている。本実施形態では、第2ねじ部70bは雌ねじ70b1である。他の態様において、第2ねじ部70bは雄ねじであってもよい。
【0041】
第2ねじ部70bのねじ締付方向は、第1ねじ部70aのねじ締付方向と逆である。すなわち、第2ねじ部70bのねじ切り方向(螺旋方向)は、第1ねじ部70aのねじ切り方向(螺旋方向)と逆である。具体的に、本実施形態では、第1ねじ部70aは右ねじであり、第2ねじ部70bは左ねじである。なお、他の態様において、第1ねじ部70aは左ねじであり、第2ねじ部70bは右ねじであってもよい。
【0042】
第1支持部材72及び第2支持部材74は、エンドプレート20bに形成された貫通孔76に挿入されている。貫通孔76は、段付き孔であって、小径孔76aと大径孔76bとを含む。小径孔76aは、エンドプレート20bの外面20boに開口する。大径孔76bは、小径孔76aに連通するとともにエンドプレート20bの内面20biに開口する。
【0043】
第1支持部材72は、筒状に形成されている。つまり、第1支持部材72は、位置決めピン70の他端部が挿通される内孔72aを有する。第1支持部材72は、小径孔76aの一端側に挿入された円筒状の第1支持本体78と、第1支持本体78に設けられて大径孔76bに挿入された第1環状部80とを含む。第1環状部80は、第1支持本体78の軸方向の端部(積層体14が位置する側の端部)から径方向外方に延出している。
【0044】
第2支持部材74は、有底筒状に形成されている。つまり、第2支持部材74は、位置決めピン70の他端部が挿入される凹部74aを有する。第2支持部材74は、小径孔76aの他端側に挿入された円筒状の第2支持本体82と、第2支持本体82に設けられた第2環状部84とを含む。第2支持本体82の一端面は、第1支持本体78の端面に近接している。第2支持本体82の他端側(底部側)は、エンドプレート20bの外側に位置して位置決めピン70の他端を覆っている。第2環状部84は、第2支持本体82の軸方向の略中央部から径方向外方に延出している。第2環状部84は、エンドプレート20bの外面20boに接触している。
【0045】
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、燃料電池スタック10は、エンドプレート20aに形成された貫通孔86に挿入されたカラー部材88と、回転規制機構90とを備える。
【0046】
貫通孔86は、段付き孔であって、小径の挿入孔86aと大径のフランジ孔86bとを含む。挿入孔86aは、エンドプレート20aの外面20aoに開口する。フランジ孔86bは、挿入孔86aに連通するとともにエンドプレート20aの内面20aiに開口する。カラー部材88は、絶縁材料(電気的絶縁性を有する材料)により構成されている。カラー部材88は、円柱状のカラー本体92と、カラー本体92に設けられたフランジ部94とを有する。
【0047】
カラー本体92は、挿入孔86aに挿入されている。カラー本体92の端面92aは、エンドプレート20aの外面20aoに対して面一である(
図2参照)。ただし、カラー本体92の端面92aは、エンドプレート20aの外面20aoよりも積層体14の積層方向内側に位置していてもよいし、エンドプレート20aの外面20aoよりも積層体14の積層方向外側に位置していてもよい。カラー本体92の外径は、挿入孔86aの内径(孔径)と略一致する。カラー本体92は、円筒状に形成されていてもよい。
【0048】
フランジ部94は、フランジ孔86bに挿入されている。フランジ部94は、カラー本体92の軸方向の端部(積層体14が位置する側の端部)から径方向外方に突出するとともに円環状に延在している。フランジ部94の外面94aの略中央には、位置決めピン70の第1ねじ部70aが螺合する雌ねじ96(ねじ穴)が形成されている。他の態様において第1ねじ部70aが雌ねじである場合、カラー部材88には雄ねじが設けられる。
【0049】
回転規制機構90は、位置決めピン70のねじ締付方向(
図4Bの矢印の方向)に沿ったカラー部材88のエンドプレート20aに対する回転を規制する。回転規制機構90は、カラー本体92の外周面から径方向外方に突出した突起98と、挿入孔86aを形成する壁面に形成された溝100とを含む。
【0050】
突起98のカラー本体92からの突出長は、フランジ部94のカラー本体92からの突出長よりも短い。突起98の突出長は、任意に設定可能である。突起98は、直方体形状に形成されており、フランジ部94からカラー本体92の端面92aに向かって延びている。
【0051】
すなわち、
図4Bにおいて、突起98の横断面は、四角形状に形成されている。突起98は、雌ねじ96の径方向外方に位置している(
図2参照)。突起98のうち位置決めピン70のねじ締付方向に位置する部位には、第1当接面102が形成されている。第1当接面102は、平坦に形成されている。
【0052】
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、溝100は、カラー本体92の軸線方向に沿って延在するとともに突起98が挿入されている。溝100は、突起98の形状に対応した形状(直方体形状)を有する。
図4Bにおいて、溝100を形成する壁部には、第1当接面102に当接した第2当接面104が形成されている。第2当接面104は、平坦に形成され、第1当接面102と平行に延在している。
【0053】
突起98及び溝100の形状は、任意に設定可能である。突起98の横断面は、三角形状又は多角形状(四角形状以外)であってもよい。また、溝100は、突起98が挿入可能であれば(カラー本体92の回転を規制できれば)、突起98に対応した形状に形成されていなくてもよい。さらに、突起98が溝100に挿入可能であれば、突起98及び溝100のカラー本体92の周方向の位相は特に限定されない。
【0054】
回転規制機構90は、例えば、下記のように他の態様を採用してもよい。
【0055】
回転規制機構90の他の態様(第1変形例)において、カラー部材88はカラー本体92の外周面に形成された雄ねじを有し、エンドプレート本体20a1の貫通孔86を形成する内面は当該雄ねじに螺合する雌ねじを有する。回転規制機構90のさらに他の態様(第2変形例)において、カラー部材88は非円形(例えば長円形、多角形)のフランジ部を有し、エンドプレート本体20a1は当該フランジ部が嵌合(係合)する非円形の溝を有する。回転規制機構90のさらに他の態様(第3変形例)において、カラー部材88はフランジ部94から軸方向に突出した突出ピンを有し、エンドプレート本体20a1は当該突出ピンが挿入される孔を有する。回転規制機構90のさらに他の態様(第4変形例)において、カラー部材88はエンドプレート本体20a1にインサート成形されている。回転規制機構90のさらに他の態様(第5変形例)において、カラー部材88はカラー本体92の外周面から径方向外方に突出した複数の突出部を有し、当該複数の突出部は、貫通孔86を形成する内壁面に食い込んでいる。
【0056】
次に、燃料電池スタック10の組立方法について説明する。
【0057】
図5に示すように、燃料電池スタック10の組立方法は、ピン配置工程S1と、積層工程S2と、圧縮工程S3と、締結工程S4と、延長ピン取外し工程S5とを有する。
【0058】
ピン配置工程S1では、
図6に示すように、位置決めピン70の第2ねじ部70bに螺合により延長ピン110が接続されて位置決めシャフト112が構成されるとともに、エンドプレート20aに位置決めピン70の第1ねじ部70aが螺合する状態を提供する。ピン配置工程S1では、第1ねじ部70aが位置決めピン70の下端部に位置し、第2ねじ部70bが位置決めピン70の上端部に位置する。すなわち、位置決めピン70は鉛直方向に沿って配置される。
【0059】
図7に示すように、位置決めシャフト112は、位置決めピン70と、位置決めピン70に螺合可能な延長ピン110とを有する。位置決めピン70の他端部(第2ねじ部70bが設けられた側の端部)に延長ピン110が接続されることにより、位置決めピン70よりも全長が長い位置決めシャフト112が形成される。位置決めピン70及び延長ピン110はいずれも、軸方向に垂直な断面において円形である。
【0060】
位置決めピン本体71は、全長に亘って外径が一定である。従って、位置決めピン本体71の外径は、全長に亘って、後述する延長ピン本体114の端面114eの外径D2と同じである。
【0061】
延長ピン110は、延長ピン本体114と、延長ピン本体114よりも小径であり第2ねじ部70bと螺合可能な第3ねじ部116とを有する。位置決めシャフト112において、延長ピン本体114の位置決めピン本体71に隣接する端面114eの外径D2は、位置決めピン本体71の延長ピン本体114に隣接する端面71eの外径D1よりも大きい。延長ピン本体114の端面114eの外径D2と位置決めピン本体71の端面71eの外径D1との差(D2-D1)は、例えば、20~100μm程度である。
【0062】
延長ピン本体114は、延長ピン本体114の端面114eに向かって外径が小さくなるテーパ部118を有する。延長ピン110の軸線に対するテーパ部118の傾斜角度は、例えば、0.4~1.0度に設定される。
【0063】
本実施形態では、第3ねじ部116は雄ねじ116aである。上記のように他の態様において第2ねじ部70bが雄ねじとされる場合、第3ねじ部116は雌ねじとされる必要がある。
【0064】
図6において、スタック組立装置120の基台122上にエンドプレート20aが不図示のボルト等の適宜の固定部品により固定されている。この際、エンドプレート20aの内面20aiは、上方(基台122とは反対方向)を向く。そして、エンドプレート20aのカラー部材88の雌ねじ96に、位置決めピン70の第1ねじ部70aを螺合することにより、位置決めピン70をカラー部材88に接続する。この場合、下記の第1の方法と第2の方法のいずれを採用してもよい。第1の方法では、位置決めピン70に延長ピン110が接続された状態の位置決めシャフト112をカラー部材88に接続する。第2の方法では、まず、延長ピン110が接続されてない位置決めピン70をカラー部材88に接続し、次に、位置決めピン70に延長ピン110を接続する。
【0065】
このようにピン配置工程S1では、位置決めピン70の第1ねじ部70aをカラー部材88の雌ねじ96に螺合する。この際、カラー部材88には、
図4Bに示す矢印の方向のねじ締付力が作用する。しかしながら、カラー部材88は、回転規制機構90によって位置決めピン70のねじ締付方向に沿って回転が規制されている。カラー部材88は、突起98の第1当接面102が溝100の第2当接面104に当接しているため、位置決めピン70のねじ締付方向に回らない。従って、作業者(ユーザ)は、位置決めピン70をカラー部材88に効率的に取り付けることができる。
【0066】
図8に示すように、積層工程S2では、発電セル12の位置決め孔62に位置決めシャフト112を挿通させながら、複数の発電セル12を積層する。具体的には、位置決めシャフト112に沿って発電セル12をエンドプレート20a側(鉛直下方)に移動させ、エンドプレート20aの内面20aiに重ねられたインシュレータ18a及びターミナルプレート16aに対して複数の発電セル12を積層する。そして、所定枚数の発電セル12を積層した後、積層体14の他端側(上端部)にターミナルプレート16b及びインシュレータ18bを重ねる。なお、
図8において、スタック組立装置120の加圧プレート124の下面には、他方のエンドプレート20bが不図示のボルト等の適宜の固定部品により固定されている。エンドプレート20bに設けられた貫通孔76は、加圧プレート124に設けられた孔部125と連通している。
【0067】
積層工程S2の後、圧縮工程S3を実施する(
図5参照)。
図9に示すように、圧縮工程S3では、複数の発電セル12に積層方向の締付荷重を付与して積層体14を積層方向に圧縮する。具体的には、スタック組立装置120のシリンダ機構126のロッド128を伸ばすことにより加圧プレート124を下降させて、一対のエンドプレート20a、20b間に積層体14を挟み込み、積層体14に積層方向の締付荷重を付与する。この締付荷重により、一対のエンドプレート20a、20b間の距離が、所定距離に設定される。締付荷重を調整するため、エンドプレート20bとインシュレータ18bとの間に図示しないシムプレートを介装してもよい。
【0068】
図9のように、加圧プレート124によって積層体14に所定の締付荷重が付与された状態では、エンドプレート20bに設けられた貫通孔76に位置決めピン70の他端部(この状態での上端部)が挿入され、加圧プレート124に設けられた孔部125に延長ピン110が挿入されている。
【0069】
圧縮工程S3の後、締結工程S4を実施する(
図5参照)。締結工程S4では、締付荷重の付与により一対のエンドプレート20a、20b間の距離を上記の所定距離に維持した状態(
図9の状態)で、一対のエンドプレート20a、20bを連結部材24(
図1参照)で連結する。これにより、一対のエンドプレート20a、20b間の距離が拘束され、複数の発電セル12が所定の圧縮状態を維持して保持される。以上により、締結工程S4が終了する。
【0070】
締結工程S4の後、延長ピン取外し工程S5を実施する(
図5参照)。
図10に示すように、延長ピン取外し工程S5では、位置決めピン70から延長ピン110を取り外す。具体的には、スタック組立装置120の加圧プレート124に対するエンドプレート20bの締付荷重を解除する。次に、加圧プレート124を上昇させて、加圧プレート124をエンドプレート20bから離間させ、延長ピン110を露出させる。
【0071】
そして、エンドプレート20bから上方に突出している延長ピン110を位置決めピン70に対して回転させることにより、位置決めピン70の第2ねじ部70bと延長ピン110の第3ねじ部116との螺合(
図7参照)を解除する。このとき、位置決めピン70と延長ピン110との螺合を解除する回転方向は、位置決めピン70のねじ締付方向と同じ方向である。このため、延長ピン110を螺合解除方向に回転させる際には、位置決めピン70の回転はエンドプレート20a(カラー部材88)によって拘束されている。従って、延長ピン110の回転に伴って位置決めピン70が回転して位置決めピン70とカラー部材88との螺合が緩むことはない。
【0072】
延長ピン取外し工程S5の後、
図1に示すようにエンドプレート20a、20bにサイドパネル30a、30b、30c、30dを固定して、燃料電池スタック10の組立が完了する。
【0073】
次に、燃料電池スタック10の動作について説明する。
【0074】
まず、
図1に示すように、酸化剤ガスは、エンドプレート20aの酸化剤ガス入口連通孔38aに供給される。燃料ガスは、エンドプレート20aの燃料ガス入口連通孔42aに供給される。冷却媒体は、エンドプレート20aの冷却媒体入口連通孔40aに供給される。
【0075】
酸化剤ガスは、
図3に示すように、酸化剤ガス入口連通孔38aから第1セパレータ36aの酸化剤ガス流路44に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路44に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体のカソード電極52に供給される。
【0076】
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔42aから第2セパレータ36bの燃料ガス流路46に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路46に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体のアノード電極54に供給される。
【0077】
従って、各MEA34では、カソード電極52に供給される酸化剤ガスと、アノード電極54に供給される燃料ガスとが、電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
【0078】
次いで、カソード電極52に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔38bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極54に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔42bに沿って矢印A方向に排出される。
【0079】
また、冷却媒体入口連通孔40aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ36aと第2セパレータ36bとの間に形成された冷却媒体流路48に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA34を冷却した後、冷却媒体出口連通孔40bから排出される。
【0080】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0081】
図2示すように、位置決めピン70の他端部に設けられた第2ねじ部70bのねじ締付方向が第1ねじ部70aのねじ締付方向と逆である。このため、燃料電池スタック10の組立において、
図10のように位置決めピン70から延長ピン110を取り外す際に、位置決めピン70が延長ピン110と一緒に回ることを防止することができる。すなわち、エンドプレート20a(具体的には、カラー部材88)に対する位置決めピン70の締結が緩んで、延長ピン110が位置決めピン70から外れなくなることを防止することができる。従って、延長ピン110を位置決めピン70から効率的に取り外すことができる。
【0082】
図2に示すように第1ねじ部70aが雄ねじ70a1であるため、エンドプレート20aに対する螺合を容易に行うことができる。第2ねじ部70bが雌ねじ70b1であるため、第2ねじ部70bを設けることによる位置決めピン70の全長の増大を回避することができる。
【0083】
図4A及び
図4Bに示すように、カラー部材88に対する位置決めピン70のねじ締付方向に沿ったカラー部材88のエンドプレート本体20a1に対する回転を規制する回転規制機構90が設けられている。このように、回転規制機構90によって、位置決めピン70のねじ締付方向に沿ったカラー部材88のエンドプレート20aに対する回転が規制されている。そのため、位置決めピン70をカラー部材88に螺合する際に、カラー部材88が位置決めピン70と供回りすることを抑えることができる。これにより、位置決めピン70をカラー部材88に対して効率的に取り付けることができる。
【0084】
図7に示すように位置決めピン70は、位置決めピン本体71と、位置決めピン本体71よりも小径の第2ねじ部70bとを有する。延長ピン110は、延長ピン本体114と、延長ピン本体114よりも小径であり第2ねじ部70bと螺合可能な第3ねじ部116とを有する。位置決めシャフト112において、延長ピン本体114の位置決めピン本体71に隣接する端面114eの外径D2は、位置決めピン本体71の延長ピン本体114に隣接する端面71eの外径D1よりも大きい。この構成により、
図8に示した発電セル12の積層時に、位置決めシャフト112における位置決めピン70と延長ピン110との接続部に形成される段差に位置決め孔62が引っかかることが回避される。これにより、発電セル12の積層を効率的に行うことができる。
【0085】
図7に示すように、延長ピン本体114は、延長ピン本体114の端面114eに向かって外径が小さくなるテーパ部118を有する。これにより、
図8に示した発電セル12の積層時に、延長ピン110から位置決めピン70へと位置決め孔62をスムーズに案内することができる。
【0086】
本実施形態をまとめると以下のようになる。
【0087】
本実施形態は、複数の発電セル(12)が積層されて構成された積層体(14)と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレート(20a、20b)と、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔(62)に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピン(70)と、を備えた燃料電池スタック(10)であって、前記位置決めピンの一端部には、前記第1エンドプレートに螺合する第1ねじ部(70a)が設けられており、前記位置決めピンの他端部には、延長ピン(110)が螺合するための第2ねじ部(70b)が設けられており、前記第2ねじ部のねじ締付方向は、前記第1ねじ部のねじ締付方向と逆である、燃料電池スタックを開示している。
【0088】
前記第1ねじ部は雄ねじ(70a1)であり、前記第2ねじ部は雌ねじ(70b1)である。
【0089】
前記第1エンドプレートは、金属製のエンドプレート本体(20a1)と、前記エンドプレート本体に固定された樹脂製のカラー部材(88)とを有し、前記第1ねじ部は、前記カラー部材に設けられた雌ねじ(96)に螺合している。
【0090】
前記第1エンドプレートは、前記カラー部材に対する前記位置決めピンのねじ締付方向に沿った前記カラー部材の前記エンドプレート本体に対する回転を規制する回転規制機構(90)を有する。
【0091】
本実施形態は、複数の発電セル(12)が積層されて構成された積層体(14)と、前記積層体の積層方向の両端に配置された第1及び第2エンドプレート(20a、20b)と、前記複数の発電セルの各々に設けられた位置決め孔(62)に挿通されて前記複数の発電セルを位置決めする位置決めピン(70)と、を備えた燃料電池スタック(10)の組立方法であって、前記位置決めピンの一端部には第1ねじ部(70a)が設けられ、前記位置決めピンの他端部にはねじ締付方向が前記第1ねじ部と逆の第2ねじ部(70b)が設けられており、前記組立方法は、前記位置決めピンの前記第2ねじ部に螺合により延長ピン(110)が接続されて位置決めシャフト(112)が構成されるとともに、前記第1エンドプレートに前記位置決めピンの前記第1ねじ部が螺合する状態を提供するピン配置工程(S1)と、前記ピン配置工程の後で、前記位置決め孔に前記位置決めシャフトを挿通させながら、前記複数の発電セルを積層する積層工程(S2)と、前記積層工程の後で、前記複数の発電セルに前記積層方向の締付荷重を付与して前記積層体を前記積層方向に圧縮する圧縮工程(S3)と、前記圧縮工程の後で、前記位置決めピンから前記延長ピンを取り外すシャフト取外し工程(S5)と、を有する、燃料電池スタックの組立方法を開示している。
【0092】
上記の組立方法において、前記第1ねじ部は雄ねじ(70a1)であり、前記第2ねじ部は雌ねじ(70b1)である。
【0093】
前記ピン配置工程では、前記第1ねじ部が前記位置決めピンの下端部に位置し、前記第2ねじ部が前記位置決めピンの上端部に位置する。
【0094】
上記の組立方法において、前記位置決めピンは、位置決めピン本体(71)と、前記位置決めピン本体よりも小径の前記第2ねじ部とを有し、前記延長ピンは、延長ピン本体(114)と、前記延長ピン本体よりも小径であり前記第2ねじ部と螺合可能な第3ねじ部(116)とを有し、前記位置決めシャフトにおいて、前記延長ピン本体の前記位置決めピン本体に隣接する端面(114e)の外径(D2)は、前記位置決めピン本体の前記延長ピン本体に隣接する端面(71e)の外径(D1)よりも大きい。
【0095】
前記延長ピン本体は、前記延長ピン本体の前記端面に向かって外径が小さくなるテーパ部(118)を有する。
【0096】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10…燃料電池スタック 12…発電セル
14…積層体 20a、20b…エンドプレート
70…位置決めピン 70a…第1ねじ部
70b…第2ねじ部 88…カラー部材
110…延長ピン 112…位置決めシャフト