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特許7174835インプリント法における下層膜形成用組成物、キット、パターン製造方法、積層体および半導体素子の製造方法
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  • 特許-インプリント法における下層膜形成用組成物、キット、パターン製造方法、積層体および半導体素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】インプリント法における下層膜形成用組成物、キット、パターン製造方法、積層体および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221110BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
H01L21/30 563
H01L21/30 573
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021511463
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012596
(87)【国際公開番号】W WO2020203387
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019067816
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】袴田 旺弘
(72)【発明者】
【氏名】下重 直也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191118(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170697(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基を有する高分子化合物と、前記重合性官能基と結合可能な架橋性官能基を複数有するモノマーとを含み、
前記高分子化合物のハンセン溶解度パラメータと、前記モノマーのハンセン溶解度パラメータとの差であるハンセン溶解度パラメータ距離が5.0以下であり、
前記複数の架橋性官能基のうち2つの前記架橋性官能基について、各架橋性官能基中の架橋点を互いに連結する最短の原子鎖を構成する原子数が7以上である、インプリント法における下層膜形成用組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物および前記モノマーの少なくとも1種が、環構造を有する、
請求項1に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物および前記モノマーの両方が、環構造を有する、
請求項2に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項4】
前記環構造が、芳香環を含む、
請求項2または3に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項5】
前記ハンセン溶解度パラメータ距離が3以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項6】
前記原子鎖を構成する原子数が20以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項7】
前記重合性官能基および前記架橋性官能基の少なくとも1種が、エチレン性不飽和結合を有する基を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項8】
前記高分子化合物および前記モノマーの少なくとも1種が、水素結合性基を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項9】
さらに、溶剤を含み、
溶剤の含有量が、前記下層膜形成用組成物に対し99質量%以上である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項10】
前記モノマーの分子量が200~1000である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項11】
前記高分子化合物が、アクリル樹脂、ノボラック樹脂およびビニル樹脂の少なくとも1種を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物と、パターン形成用組成物との組み合わせを含む、インプリント用キット。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物を用いて、下層膜を基板上に形成し、
パターン形成用組成物を前記下層膜上に適用し、
モールドを接触させた状態で、前記パターン形成用組成物を硬化させ、
前記パターン形成用組成物から前記モールドを剥離することを含む、パターン製造方法。
【請求項14】
前記基板の純水に対する接触角が、60度以上である、
請求項13に記載のパターン製造方法。
【請求項15】
前記下層膜を形成する際に、前記下層膜形成用組成物をスピンコート法で前記基板上に適用することを含む、
請求項13または14に記載のパターン製造方法。
【請求項16】
前記パターン形成用組成物の前記下層膜上への適用をインクジェット法により行う、
請求項13~15のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
【請求項17】
基板と、請求項1~11のいずれか1項に記載の下層膜形成用組成物から形成された層とを含む、積層体。
【請求項18】
請求項13~16のいずれか1項に記載の製造方法により得られたパターンを利用して、半導体素子を製造する、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント法における下層膜形成用組成物に関し、さらに、この組成物を応用したキット、パターン製造方法、積層体および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法とは、パターンが形成された金型(一般的にモールドまたはスタンパとも呼ばれる。)を押し当てることにより、可塑性材料に微細パターンを転写する技術である。インプリント法を用いることで簡易に精密な微細パターンの作製が可能なことから、近年さまざまな分野での応用が期待されている。特に、ナノオーダーレベルの微細パターンを形成するナノインプリント技術が注目されている。
【0003】
インプリント法は、その転写方法から熱インプリント法および光インプリント法に大別される。熱インプリント法では、ガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある。)以上に加熱した熱可塑性樹脂にモールドを押し当て、冷却後にモールドを離型することにより微細パターンを形成する。この方法では、多様な材料を選択できること等の利点があるが、プレス時に高圧を要すること、および、パターンサイズが微細になるほど、熱収縮等により寸法精度が低下しやすいこと等の問題点もある。一方、光インプリント法では、光硬化性のパターン形成用組成物にモールドを押し当てた状態で光硬化させた後、モールドを離型する。この方法では、高圧付加や高温加熱の必要はなく、硬化前後で寸法変動が小さいため、微細なパターンを精度よく形成できるという利点がある。
【0004】
最近では、熱インプリント法および光インプリント法の両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や、3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
光インプリント法では、基板上にパターン形成用組成物を塗布後、石英等の光透過性素材で作製されたモールドを押し当てる(特許文献1)。モールドを押し当てた状態で光照射によりそのパターン形成用組成物を硬化し、その後モールドを離型することで、目的のパターンが転写された硬化物が作製される。
【0006】
このようなインプリント法においては、モールドをパターン形成用組成物から離型することから、基板とパターン形成用組成物の充分な密着性が必要とされる。そこで、例えば特許文献2~5に示されるように、基板とパターン形成用組成物の間に、これらの密着性を向上させる下層膜を設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2005-533393号公報
【文献】特開2013-093552号公報
【文献】特開2014-093385号公報
【文献】特開2016-146468号公報
【文献】特開2017-206695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記下層膜の密着性を向上させるため、樹脂等の高分子化合物に加えて、低分子化合物からなる架橋剤(例えば、メチロールメラミンなど。特許文献5)を含む組成物を用いて、下層膜を形成することが知られている。
【0009】
しかしながら、下層膜を形成するに際し、上記のように低分子化合物からなる架橋剤と高分子化合物とを含む下層膜形成用組成物を塗布したときに、硬化した下層膜の膜強度が低下する場合があることが分かった。下層膜の膜強度が低いと、下層膜上のパターン形成用組成物からモールドを離型する際、下層膜が凝集破壊しやすくなり、離型性が低下する場合もある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、下層膜形成用組成物が、低分子化合物からなる架橋剤と高分子化合物とを含む場合でも、膜強度に優れた下層膜の形成が可能な下層膜形成用組成物の提供を目的とする。
【0011】
また、本発明は、上記下層膜形成用組成物を含むキット、および上記下層膜形成用組成物を用いたパターン製造方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、上記下層膜形成用組成物から形成された層を含む積層体、および、上記パターン製造方法により得られたパターンを利用して半導体素子を製造する半導体素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、モノマーとして、高分子との相溶性が高くかつ架橋を効率よく形成できる化合物を使用することにより、解決できた。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>以降の手段により、上記課題は解決された。
<1>
重合性官能基を有する高分子化合物と、重合性官能基と結合可能な架橋性官能基を複数有するモノマーとを含み、
高分子化合物のハンセン溶解度パラメータと、モノマーのハンセン溶解度パラメータとの差であるハンセン溶解度パラメータ距離が5.0以下であり、
複数の架橋性官能基のうち2つの架橋性官能基について、各架橋性官能基中の架橋点を互いに連結する最短の原子鎖を構成する原子数が7以上である、インプリント法における下層膜形成用組成物。
<2>
高分子化合物およびモノマーの少なくとも1種が、環構造を有する、
<1>に記載の下層膜形成用組成物。
<3>
高分子化合物およびモノマーの両方が、環構造を有する、
<2>に記載の下層膜形成用組成物。
<4>
環構造が、芳香環を含む、
<2>または<3>に記載の下層膜形成用組成物。
<5>
ハンセン溶解度パラメータ距離が3以下である、
<1>~<4>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<6>
上記原子鎖を構成する原子数が20以下である、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<7>
重合性官能基および架橋性官能基の少なくとも1種が、エチレン性不飽和結合を有する基を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<8>
高分子化合物およびモノマーの少なくとも1種が、水素結合性基を含む、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<9>
さらに、溶剤を含み、
溶剤の含有量が、下層膜形成用組成物に対し99質量%以上である、
<1>~<8>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<10>
モノマーの分子量が200~1000である、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<11>
高分子化合物が、アクリル樹脂、ノボラック樹脂およびビニル樹脂の少なくとも1種を含む、
<1>~<10>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物。
<12>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物と、パターン形成用組成物との組み合わせを含む、インプリント用キット。
<13>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物を用いて、下層膜を基板上に形成し、
パターン形成用組成物を下層膜上に適用し、
モールドを接触させた状態で、パターン形成用組成物を硬化させ、
パターン形成用組成物からモールドを剥離することを含む、パターン製造方法。
<14>
基板の純水に対する接触角が、60度以上である、
<13>に記載のパターン製造方法。
<15>
下層膜を形成する際に、下層膜形成用組成物をスピンコート法で基板上に適用することを含む、
<13>または<14>に記載のパターン製造方法。
<16>
パターン形成用組成物の下層膜上への適用をインクジェット法により行う、
<13>~<15>のいずれか1つに記載のパターン製造方法。
<17>
基板と、<1>~<11>のいずれか1つに記載の下層膜形成用組成物から形成された層とを含む、積層体。
<18>
<13>~<16>のいずれか1つに記載の製造方法により得られたパターンを利用して、半導体素子を製造する、半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の下層膜形成用組成物により、下層膜形成用組成物が、低分子化合物からなる架橋剤と高分子化合物とを含む場合でも、膜強度に優れた下層膜が得られる。そして、本発明の下層膜形成用組成物により、本発明のキット、パターン製造方法、積層体および半導体素子の製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インプリントの工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明する。各構成要素は、便宜上、この代表的な実施形態に基づいて説明されるが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
【0018】
本明細書における基(原子団)の表記について、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に、置換基を有するものをも包含する意味である。例えば、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)、および、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)の両方を包含する意味である。また、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、鎖状でも環状でもよく、鎖状の場合には、直鎖でも分岐でもよい意味である。
【0019】
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた描画のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む意味である。描画に用いられるエネルギー線としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)およびX線などの活性光線、ならびに、電子線およびイオン線などの粒子線が挙げられる。
【0020】
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長を含む光(複合光)でもよい。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の両方、または、いずれかを意味する。
【0022】
本明細書において、組成物中の固形分は、溶剤を除く他の成分を意味し、組成物中の固形分の含有量(濃度)は、その組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率によって表される。
【0023】
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101325Pa(1気圧)である。
【0024】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として示される。この重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。また、特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、特に述べない限り、GPC測定における検出には、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0025】
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」または「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側または下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、さらに第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、または、感光層がある場合には、基材から感光層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
【0026】
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm~10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm~100μmのサイズのパターン転写(ナノインプリント)をいう。
【0027】
<下層膜形成用組成物>
本発明のインプリント法における下層膜形成用組成物は、重合性官能基(以下、「重合性基」ともいう。)を有する高分子化合物と、上記重合性官能基と結合可能な架橋性官能基(以下、「架橋性基」ともいう。)を複数有するモノマー(以下、「架橋性モノマー」ともいう。)とを含む。そして、本発明の下層膜形成用組成物において、上記高分子化合物のハンセン溶解度パラメータと、上記架橋性モノマーのハンセン溶解度パラメータとの差であるハンセン溶解度パラメータ距離(ΔHSP)は5.0以下であり、上記複数の架橋性基のうち2つの架橋性基について、各架橋性基中の架橋点を互いに連結する最短の原子鎖を構成する原子数(以下、「架橋点間距離」ともいう。)は7以上である。
【0028】
本発明の下層膜形成用組成物により、下層膜形成用組成物が、低分子化合物からなる架橋剤と高分子化合物とを含む場合でも、膜強度に優れた下層膜が得られる。この理由は定かではないが、次のとおりと推定される。
【0029】
本発明の下層膜形成用組成物は、上記ΔHSPが5.0以下でありかつ上記架橋点間距離が7以上である架橋性モノマーを含んでいる。上記ΔHSPが5.0以下であることにより、上記組成物中の高分子化合物と架橋性モノマーの相溶性が増し、下層膜中における架橋性モノマーの分布の偏り(バラツキ)が抑制されると考えられる。これにより、架橋性モノマーが下層膜中で均一かつ効率よく架橋を形成するようになる。そして、下層膜の凝集破壊の起点になるような膜強度が相対的に低い場所が発生しにくくなることで、下層膜全体としての膜強度が向上すると推定される。また、架橋性モノマーが、7以上という充分な長さの架橋点間距離を有することにより、架橋性モノマーが高分子間で効率よく架橋を形成でき、個々の地点での膜強度自体も向上すると推定される。
【0030】
上記のように、本発明の下層膜形成用組成物を使用した場合には、膜強度が相対的に低い部分の発生が抑制されて全体としての膜強度(巨視的な強度)が向上する作用と、個々の地点での膜強度(微視的な強度)が向上する作用との相乗作用によって、膜強度に優れた下層膜が得られると考えられる。そして、膜強度に優れた下層膜を形成できることによりパターン形成用組成物からモールドを剥離する際、基板とパターン形成用組成物の充分な密着性を確保でき、インプリント法における離型性が向上する。その結果、微細なパターンでも効率よく形成することが可能となる。
【0031】
以下、本発明の下層膜形成用組成物の各成分について、詳しく説明する。
【0032】
<<重合性基を有する高分子化合物>>
本発明の下層膜形成用組成物において、重合性基を有する高分子化合物は、通常、固形文中で最も含有量が多い成分であり、高分子化合物としての種類は、特段制限されず、公知の高分子化合物を広く用いることができる。
【0033】
高分子化合物は、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂が例示され、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびノボラック樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
本発明において、高分子化合物の重量平均分子量は2000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、6000以上であることがさらに好ましく、10000以上であることが特に好ましい。上限としては、70000以下であることが好ましく、50000以下であってもよい。分子量の測定方法は、上述したとおりである。この重量平均分子量が4000以上であると、加熱処理時の膜安定性が向上し、下層膜形成時の面状の改善につながる。また、重量平均分子量が70000以下であると、溶剤への溶解性が向上し、スピンコート塗布等が容易となる。
【0035】
上記高分子化合物が有する重合性基は、特段制限されないが、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基およびメチロール基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基および環状エーテル基から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を含むことがさらに好ましい。また、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0036】
上記高分子化合物が有する重合性基に関して、エチレン性不飽和結合を有する基は、ビニル基またはエチニル基を有する基であることが好ましく、ビニル基を有する基であることがより好ましい。ビニル基を有する基としては、例えば、ビニルオキシ基(-O-CH=CH)、ビニルカルボニル基(アクリロイル基)(-CO-CH=CH)、ビニルアミノ基(-NR-CH=CH)、ビニルスルフィド基(-S-CH=CH)、ビニルスルホニル基(-SO-CH=CH)、ビニルフェニル(Ph)基(-Ph-CH=CH)、アクリロイルオキシ基(-O-CO-CH=CH)またはアクリロイルアミノ基(-NR-CO-CH=CH)などが挙げられ、ビニルオキシ基、アクリロイル基、ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基またはアクリロイルアミノ基であることがより好ましく、ビニルオキシ基またはアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。上記「-NR-」において、Rは水素原子または置換基を表す。これらの基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する上記重合性基の例としては、メタクリロイル基やメタクリロイルオキシ基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、特に、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0037】
上記重合性基に関して、環状エーテル基は、炭素数2~6で環状のアルキレンオキシ基であることが好ましく、炭素数2~4で環状のアルキレンオキシ基であることがより好ましく、エポキシ基またはオキセタン基であることがさらに好ましく、エポキシ基であることが特に好ましい。したがって、環状エーテル基を含む上記重合性基は、例えば、エポキシ基またはオキセタン基そのものや、グリシジル基またはグリシジルエーテル基などであることが好ましく、エポキシ基であることがより好ましい。
【0038】
高分子化合物中に上記重合性基が複数ある場合には、それらは互いに同種の官能基であってもよく、異種の官能基であってもよい。
【0039】
なお、本明細書において「置換基」は、特に述べない限り、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭化水素基、複素環基、-ORt、-CORt、-COORt、-OCORt、-NRtRt、-NHCORt、-CONRtRt、-NHCONRtRt、-NHCOORt、-SRt、-SORt、-SOORt、-NHSORtおよび-SONRtRtから選択される1種の置換基Tを含む。ここで、RtおよびRtは、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基または複素環基を表す。RtとRtが炭化水素基である場合には、これらが互いに結合して環を形成してもよい。
【0040】
上記置換基Tについて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~5がより好ましく、2または3が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。アルキニル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~5がより好ましい。アルキニル基は直鎖および分岐のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。アリール基の炭素数は、6~10が好ましく、6~8がより好ましく、6~7がさらに好ましい。複素環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。複素環基は、単環または環数が2~4の多環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~10が好ましく、3~8がより好ましく、3~5がより好ましい。
【0041】
置換基Tとしての炭化水素基および複素環基は、さらに別の置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。ここでの更なる置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。
【0042】
高分子化合物は、基板との密着性を強固にするため、水素結合性基(極性を持つ官能基)を有することが好ましい。具体的には、水素結合性基としては、水酸基、カルボキシ基、アミド基、イミド基、ウレア基、ウレタン基、シアノ基、エーテル基(好ましくはポリアルキレンオキシ基)、環状エーテル基、ラクトン基、スルホニル基、スルホ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基、リン酸基、リン酸エステル基、ニトリル基などが挙げられる。この中でも特に、水素結合性基は、スルホニル基、スルホ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基、リン酸基、リン酸エステル基、ニトリル基、カルボキシ基、アミノ基および水酸基が好ましく、カルボキシ基および水酸基が好ましい。
【0043】
高分子化合物は、下記の式(1)~(4)の少なくとも1つの構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。
【0044】
【化1】
【0045】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R21およびRはそれぞれ独立に上述した置換基Tである。n2は0~4の整数である。n3は0~3の整数である。
【0046】
、L、LおよびLはそれぞれ独立に、単結合または後述する連結基Lである。中でも、L、L、LおよびLはそれぞれ、単結合、または、連結基Lで規定されるアルキレン基、カルボニル基、アリーレン基および(オリゴ)アルキレンオキシ基から選択される1種もしくは2種以上の組み合わせであることが好ましい。ただし、(オリゴ)アルキレンオキシ基の末端の酸素原子はその先の基の構造により、その有無が調整されればよい。本明細書において、「(オリゴ)アルキレンオキシ基」は、構成単位である「アルキレンオキシ」を1以上有する2価の連結基を意味する。構成単位中のアルキレン鎖の炭素数は、構成単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
は高分子化合物の官能基であり、官能基Qとしては、それぞれ独立して上記重合性基の例が挙げられる。
【0048】
21が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。本明細書において連結とは結合して連続する態様のほか、一部の原子を失って縮合(縮環)する態様も含む意味である。また特に断らない限り、連結に際しては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子(アミノ基)を介在していてもよい。形成される環状構造としては、脂肪族炭化水素環(これを環Cfと称する)(例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等)、芳香族炭化水素環(これを環Crと称する)(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等)、含窒素複素環(これを環Cnと称する)(例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)、含酸素複素環(これを環Coと称する)(フラン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環等)、含硫黄複素環(これを環Csと称する)(チオフェン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環等)などが挙げられる。
【0049】
が複数あるとき、それらは、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csなどが挙げられる。
【0050】
本発明の下層膜形成用組成物において、重合性基を有する高分子化合物が重合体である場合には、高分子化合物中の全構成単位数に対する、重合性基を有する構成単位数の割合は、20~100モル%であることが好ましい。この数値範囲の下限は、30モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。この数値範囲の上限は、100モル%以下でもよく、80モル%以下でもよい。重合性基を有する構成単位が複数種ある場合には、それらの合計量が上記範囲内となることが好ましい。
【0051】
好ましい重合性基を含む繰り返し単位の具体例としては、以下の構造が挙げられる。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示の化学式中、Rは、各々独立に水素原子またはメチル基を表す。
【0052】
【化2】
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
高分子化合物は、上記式(1)~(4)の構成単位以外の他の構成単位を有する共重合体であってもよい。他の構成単位としては、下記の(11)、(21)および(31)が挙げられる。高分子化合物中で、構成単位(11)が構成単位(1)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(21)が構成単位(2)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(31)が構成単位(3)と組み合わせられることが好ましい。
【0056】
【化5】
【0057】
式中、R11およびR22は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R31は上述した置換基Tであり、n31は0~3の整数である。R31が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
【0058】
17は式中のカルボニルオキシ基とエステル構造を形成する有機基または水素原子である。この有機基としては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい;鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい;アルキル基部分は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい)、式中の酸素原子が炭素原子に結合している芳香族複素環からなる基(環状構造で示すと、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、カルバゾール環等)、式中の酸素原子が炭素原子に結合している脂肪族複素環からなる基(環状構造で示すと、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環)である。
【0059】
17は本発明の効果を奏する範囲でさらに置換基Tを有していてもよい。
【0060】
27は上述した置換基Tであり、n21は0~5の整数である。R27が複数あるとき、それらは、互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
【0061】
各置換基に含まれるアルキル部位およびアルケニル部位は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。上記置換基Tが置換基を取りうる基である場合にはさらに置換基Tを有してもよい。例えば、アルキル基に水酸基が置換したヒドロキシアルキル基になっていてもよい。
【0062】
連結基Lとしては、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、(オリゴ)アルキレンオキシ基(1つの構成単位中のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;繰り返し数は1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、-NR-、およびそれらの組み合わせにかかる連結基が挙げられる。Rは水素原子、置換基Tのアルキル基、置換基Tのアルケニル基、置換基Tのアリール基、置換基Tのアリールアルキル基、または置換基Tの複素環基である。アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基は上記置換基Tを有していてもよい。例えば、アルキレン基が水酸基を有していてもよい。
【0063】
連結基Lの連結鎖長は、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい。連結鎖長は連結に関与する原子団のうち最短の道程に位置する原子数を意味する。例えば、-CH-C(=O)-O-であると3となる。
【0064】
なお、連結基Lとしてのアルキレン基、アルケニレン基、(オリゴ)アルキレンオキシ基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。
【0065】
連結基Lを構成する原子としては、炭素原子と水素原子、必要によりヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種等)を含むものであることが好ましい。連結基中の炭素原子の数は1~24個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~6個がさらに好ましい。水素原子の数は炭素原子等の数に応じて定められればよい。ヘテロ原子の数は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のそれぞれについて、0~12個が好ましく、0~6個がより好ましく、0~3個がさらに好ましい。
【0066】
高分子化合物の合成は常法によればよい。例えば、式(1)の構成単位を有する重合体は、オレフィンの付加重合に係る公知の方法によって適宜合成することができる。例えば、式(2)の構成単位を有する重合体は、スチレンの付加重合に係る公知の方法によって適宜合成することができる。例えば、式(3)の構成単位を有する重合体は、フェノール樹脂の合成に係る公知の方法によって適宜合成することができる。例えば、式(4)の構成単位を有する重合体は、ビニルエーテル樹脂の合成に係る公知の方法によって適宜合成することができる。
【0067】
高分子化合物の配合量は特に限定されないが、下層膜形成用組成物において、固形分中では過半を占めることが好ましく、固形分中で70質量%以上であることがより好ましく、固形分中で80質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、99.0質量%以下であることが実際的である。
【0068】
高分子化合物の下層膜形成用組成物中(溶剤を含む)における含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%未満であることが一層好ましい。
【0069】
上記の重合体は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はそれらの合計量が上記の範囲となる。
【0070】
<<架橋性モノマー>>
本発明の下層膜形成用組成物は、架橋性基を複数有する架橋性モノマーを含む。これにより、高分子間に架橋が形成され、下層膜の膜強度が向上すると推定される。架橋性モノマーが1分子中に有する架橋性基の数は、6つ以下であることが好ましく、5つ以下であることがより好ましく、4つでも3つでもよい。
【0071】
本発明における架橋性モノマーの分子量は、2000未満であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが一層好ましく、800以下であってもよい。下限値は、100以上であることが好ましい。
【0072】
架橋性モノマーが有する複数の架橋性基は、上記高分子化合物が有する重合性基と結合可能な官能基であれば、特段制限されないが、複数の架橋性基は、それぞれ独立して、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基およびフェノール性水酸基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基および環状エーテル基から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を含むことがさらに好ましい。また、これらの基は置換基を有していてもよい。上記複数の架橋性基は、互いに同種の官能基であってもよく、異種の官能基であってもよい。
【0073】
上記架橋性モノマーが有する複数の架橋性基に関して、エチレン性不飽和結合を有する基は、ビニル基またはエチニル基を有する基であることが好ましく、ビニル基を有する基であることがより好ましい。ビニル基を有する基としては、上記高分子化合物が有する重合性基について説明したものと同様の官能基が挙げられ、それらのなかでも、ビニルオキシ基、アクリロイル基、ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基またはアクリロイルアミノ基であることがより好ましく、ビニルオキシ基またはアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する上記架橋性基の例としては、メタクリロイル基やメタクリロイルオキシ基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、特に、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0074】
上記架橋性基に関して、環状エーテル基は、上記高分子化合物が有する重合性基について説明したものと同様の官能基が挙げられ、それらのなかでも、エポキシ基またはオキセタン基であることが好ましく、エポキシ基であることがさらに好ましい。したがって、環状エーテル基を含む上記架橋性基は、例えば、エポキシ基またはオキセタン基そのものや、グリシジル基またはグリシジルエーテル基などであることが好ましく、エポキシ基であることがより好ましい。
【0075】
そして、上記架橋性モノマーが有する複数の架橋性基としては、上記架橋性基の中から、上記高分子化合物が有する重合性基と結合可能な官能基が適宜採用される。特に、重合性基および架橋性基の少なくとも1種が、エチレン性不飽和結合を有する基を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を含むことがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことがさらに好ましい。特に、重合性基および架橋性基の両方が、エチレン性不飽和結合を有する基を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を含むことがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことがさらに好ましい。
【0076】
重合性基および架橋性基の好ましい組み合わせは、例えば、下記のとおりである。1分子中に重合性基および架橋性基がそれぞれ複数ある等の場合には、重合性基および架橋性基の態様は、下記の組み合わせの複数に該当してもよい。
・重合性基および架橋性基の両方とも(メタ)アクリロイル基である組み合わせ。
・その一方が(メタ)アクリロイル基であり、他方が(メタ)アクリロイルオキシ基である組み合わせ。
・その両方とも(メタ)アクリロイルオキシ基である組み合わせ。
・その一方が(メタ)アクリロイル基を含み、他方がエポキシ基を含む組み合わせ。
・その両方ともエポキシ基を含む組み合わせ。
・その一方がエポキシ基を含み、他方がカルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基またはフェノール性水酸基を含む組み合わせ。
【0077】
また、本発明において、架橋性モノマーは、後述するパターン形成用組成物中の重合性化合物とも結合可能な架橋性基を有することも好ましい。これにより、下層膜とその上に塗布したパターン形成用組成物との界面においては、架橋性モノマーが、下層膜中の高分子化合物とパターン形成用組成物中の重合性化合物とを架橋する場合もあり、下層膜と上記パターン形成用組成物の間の密着性がより向上する。
【0078】
上記重合性基および上記架橋性基を結合させる方法は、特段制限されず、上記重合性基および上記架橋性基の種類に応じて、適宜公知の方法を採用でき、光エネルギーおよび熱エネルギーの少なくとも1つを付与することが好ましい。上記重合性基および上記架橋性基を結合させるタイミングは、下層膜形成用組成物を基板上に適用してから、パターン形成用組成物からモールドを剥離するまでの間であれば、特段制限されない。上記重合性基および上記架橋性基を結合させる態様の例としては、下層膜形成用組成物を基板上に適用し、その後、下層膜形成用組成物上にパターン形成用組成物を適用する前に、下層膜形成用組成物に光照射および加熱などによって両者の結合反応を促進する方法(第1の方法)がある。また、別の態様としては、下層膜形成用組成物を基板上に適用し、必要に応じて下層膜形成用組成物を乾燥させてから、下層膜形成用組成物上にパターン形成用組成物を適用し、モールドをパターン形成用組成物に押し当て、その後、パターン形成用組成物を硬化する際に、一緒に光照射および加熱などを行って両者の結合反応を促進する方法(第2の方法)もある。上記重合性基および上記架橋性基を結合させる態様としては、上記第1の態様が好ましい。
【0079】
本発明の下層膜形成用組成物に含まれる上記架橋性モノマーについて、上記高分子化合物のハンセン溶解度パラメータと、上記架橋性モノマーのハンセン溶解度パラメータとの差であるハンセン溶解度パラメータ距離は5.0以下である。ハンセン溶解度パラメータ距離(ΔHSP)は下記数式(1)により導かれる。
ΔHSP=[4.0×(ΔD+ΔP+ΔH)]0.5 数式(1)
【0080】
数式(1)において、ΔD、ΔPおよびΔHはそれぞれ次のとおりである。
ΔD:下層膜形成用組成物中の高分子化合物を構成するモノマー単位のハンセン溶解度パラメータベクトルの分散項成分(d成分1)と、下層膜形成用組成物中に含まれる架橋性モノマーのハンセン溶解度パラメータベクトルの分散項成分(d成分2)との差(d成分1-d成分2)。
ΔP:下層膜形成用組成物中の高分子化合物を構成するモノマー単位のハンセン溶解度パラメータベクトルの極性項成分(p成分1)と、下層膜形成用組成物中に含まれる架橋性モノマーのハンセン溶解度パラメータベクトルの極性項成分(p成分2)との差(p成分1-p成分2)。
ΔH:下層膜形成用組成物中の高分子化合物を構成するモノマー単位のハンセン溶解度パラメータベクトルの水素結合項成分(h成分1)と、下層膜形成用組成物中に含まれる架橋性モノマーのハンセン溶解度パラメータベクトルの水素結合項成分(h成分2)との差(h成分1-h成分2)。
【0081】
ここで、下層膜形成用組成物中の高分子化合物が複数種のモノマー単位から構成される共重合体である場合には、高分子化合物の各成分値として、モノマー単位ごとに算出したHSP成分値を重量比とモル比で加重平均した値を採用する。例えば、HSPのd成分の成分値がda、式量がAかつ高分子化合物中のモル比(モノマー単位の存在比)がaであるモノマー単位と、成分値がdb、式量がBかつモル比がbであるモノマー単位と、成分値がdc、式量がCかつモル比がcであるモノマー単位とから構成される高分子化合物(a+b+c=1)の場合には、高分子化合物の上記d成分1は、下記数式(2)に基づいて算出される。上記p成分1およびh成分1についても同様である。
【0082】
数式(2):
【数1】
【0083】
本発明において、上記ΔHSPが5.0以下であることにより、高分子と架橋性モノマーの相溶性が増し、下層膜中における架橋性モノマーの分布の偏り(バラツキ)が抑制されると考えられる。上記ΔHSPは、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。上記ΔHSPの下限は、特段制限されないが、0.5以上が実際的であり、1.0以上でもよい。
【0084】
本発明において、上記高分子化合物および上記架橋性モノマーの少なくとも1種が環構造を有することが好ましく、これらの両方が環構造を有することがより好ましい。これにより、上記高分子化合物および上記架橋性モノマーの相溶性がより向上する。環構造は、脂肪族環、芳香族環および複素環(芳香族性および非芳香族性を含む。)のいずれでもよく、芳香族環であることが好ましい。環構造は、単環であっても多環であってもよい。環構造が多環である場合には、環の数は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましく、3でも2でもよい。
【0085】
上記環構造としての脂肪族環は、炭素数4~20のシクロアルカンまたはシクロアルケンであることが好ましい。このとき、炭素数は、5~10がより好ましく、5~7がさらに好ましい。脂肪族環の例としては、シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどが挙げられる。環構造が芳香族環である場合には、炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。芳香族環の例としては、ベンゼンおよびナフタレンなどが挙げられる。一方、複素環は、窒素原子を含むことが好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環およびトリアジン環などの骨格を有することがより好ましく、トリアジン環を有することがさらに好ましい。
【0086】
本発明の下層膜形成用組成物に含まれる上記架橋性モノマーにおいて、架橋点間距離は7以上である。このように架橋点間距離が充分に長いことにより、架橋性モノマーが高分子間で効率よく架橋を形成でき、個々の地点での膜強度自体も向上すると考えられる。架橋点間距離の上限は20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。架橋点間距離の下限は8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。
【0087】
ここで、架橋点間距離の導出方法について説明する。架橋点間距離は、1つの架橋性モノマーが有する2つの架橋性基のそれぞれから架橋点を認定し、この2つの架橋点を連結する最短の原子鎖の原子数を計数することにより導出する。ここで、「架橋点」は、架橋性基のうち、上記架橋性基が上記重合性基に結合する架橋反応の前後において、結合状態が変化する原子団を意味する。この「結合状態の変化」には、不飽和結合が飽和結合に変化すること、開環すること、結合相手の原子数が増減すること、結合相手の原子種が変わること、一部の原子が小分子(例えば水)となって取り除かれることなどを含む。例えば、下記式(L-1)に示すように、架橋性モノマーがアクリロイルオキシ基を有すると把握できる場合においては、架橋反応の前後において結合状態が変化するビニル基に相当する部分を架橋点として認定する。そして、同式に示すように、対象としている2つの架橋点AおよびBの間の最短の原子鎖(式中、位置XからYまでの太線の部分)について、構成原子数を計数する。式(L-1)の場合には、架橋点間距離は11である。
【0088】
式(L-1):
【化6】
【0089】
下記式(L-2)に、代表的な架橋性基と架橋点の関係を示す。化学式中の点線で囲んだ原子団が架橋点である。なお、アミノ基中、Rは水素原子または置換基である。
【0090】
式(L-2):
【化7】
【0091】
架橋性モノマーが3以上の架橋性基を有する場合には、任意の2つの架橋性基の組み合わせについて架橋点間距離を導出し、少なくとも1つの組み合わせについて、架橋点間距離が7以上であればよく、8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。また、架橋性モノマーが3以上の架橋性基を有する場合には、任意の架橋性基の組み合わせについて、架橋点間距離が20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。架橋性モノマーが上記要件を満たすことにより、下層膜の膜強度がより向上する。
【0092】
本発明の下層膜形成用組成物は、上記架橋性モノマーとして、下記式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。このような架橋性モノマーを用いることにより、インプリントにおいて密着性、離型性および経時安定性のバランスがよくなり、下層膜形成用組成物が総合的により優れる傾向にある。
【0093】
【化8】
【0094】
式中、R21はq価の有機基であり、R22は水素原子またはメチル基であり、qは2以上の整数である。qは2以上7以下の整数が好ましく、2以上4以下の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が一層好ましい。
【0095】
21は、2~7価の有機基であることが好ましく、2~4価の有機基であることがより好ましく、2または3価の有機基であることがさらに好ましく、2価の有機基であることが一層好ましい。R21は直鎖、分岐および環状の少なくとも1つの構造を有する炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
【0096】
21が2価の有機基であるとき、R21は下記式(1-2)で表される有機基であることが好ましい。
【0097】
【化9】
【0098】
式中、ZおよびZはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-Alk-、または-Alk-O-であることが好ましい。Alkはアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)を表し、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば前述した置換基Tが挙げられる。本明細書において、化学式中のアスタリスクは結合手を表す。
【0099】
は、単結合または2価の連結基である。この連結基は、下記の式(9-1)~(9-10)から選ばれる連結基またはその組み合わせが好ましい。中でも、式(9-1)~(9-3)、(9-7)、および(9-8)から選ばれる連結基であることが好ましい。
【0100】
【化10】
【0101】
101~R117は任意の置換基である。中でも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、チエニル基、フリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(アルキル基は炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が好ましい。R101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108、R109とR110、複数あるときのR111、複数あるときのR112、複数あるときのR113、複数あるときのR114、複数あるときのR115、複数あるときのR116、複数あるときのR117は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0102】
Arはアリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であり、具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。
【0103】
hCyはヘテロ環基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい)であり、5員環または6員環がより好ましい。hCyを構成するヘテロ環の具体例としては、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、インドール環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ピロール環、ピリジン環、トリアジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロリドン環、モルホリン環が挙げられ、中でも、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環が好ましい。
【0104】
は単結合または連結基である。連結基としては、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子が置換してもよいアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が挙げられる。
【0105】
nおよびmは100以下の自然数であり、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
【0106】
pは0以上で、各環に置換可能な最大数以下の整数である。上限値は、それぞれの場合で独立に、置換可能最大数の半分以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
【0107】
架橋性モノマーは、下記式(2-1)で表されることが好ましい。
【0108】
【化11】
【0109】
式(2-1)中、Rは水素原子またはメチル基である。また、R、ZおよびZは、それぞれ、式(1-2)におけるR、ZおよびZと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0110】
本発明で用いる架橋性モノマーを構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0111】
本発明で好ましく用いられる架橋性モノマーとしては、下記化合物が挙げられる。また、特開2014-170949号公報に記載の重合性化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に含まれる。
【0112】
【化12】
【0113】
【化13】
【0114】
【化14】
【0115】
【化15】
【0116】
【化16】
【0117】
本発明において、架橋性モノマーの下層膜形成用組成物中(溶剤を含む)における含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%未満であることが一層好ましい。本発明の下層膜形成用組成物において、架橋性モノマーの高分子化合物に対する割合は、質量比で、0.1~1.5であることが好ましい。この数値範囲の上限は、1.2以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。また、この数値範囲の下限は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。下層膜形成用組成物は、架橋性モノマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0118】
<<溶剤>>
下層膜形成用組成物は、溶剤(以下、「下層膜用溶剤」ということがある)を含む。溶剤は例えば、23℃で液体であって沸点が250℃以下の化合物が好ましい。通常、溶剤以外の固形分が最終的に下層膜を形成する。下層膜形成用組成物は、下層膜用溶剤を99.0質量%以上含むことが好ましく、99.5質量%以上含むことがより好ましく、99.6質量%以上であってもよい。溶剤の割合を上記の範囲とすることで、膜形成時の膜厚を薄く保ち、エッチング加工時のパターン形成性向上につながる。
【0119】
溶剤は、下層膜形成用組成物に、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0120】
下層膜用溶剤の沸点は、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、160℃以下であることが一層好ましく、130℃以下であることがより一層好ましい。下限値は23℃であることが実際的であるが、60℃以上であることがより実際的である。沸点を上記の範囲とすることにより、下層膜から溶剤を容易に除去でき好ましい。
【0121】
下層膜用溶剤は、有機溶剤が好ましい。溶剤は、好ましくはアルキルカルボニル基、カルボニル基、水酸基およびエーテル基のいずれか1つ以上を有する溶剤である。なかでも、非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。
【0122】
具体例としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが選択される。
【0123】
アルコキシアルコールとしては、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール(例えば、1-メトキシ-2-プロパノール)、エトキシプロパノール(例えば、1-エトキシ-2-プロパノール)、プロポキシプロパノール(例えば、1-プロポキシ-2-プロパノール)、メトキシブタノール(例えば、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-3-ブタノール)、エトキシブタノール(例えば、1-エトキシ-2-ブタノール、1-エトキシ-3-ブタノール)、メチルペンタノール(例えば、4-メチル-2-ペンタノール)などが挙げられる。
【0124】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、および、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であることが特に好ましい。
【0125】
また、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0126】
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、または乳酸プロピルが好ましい。
【0127】
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、または酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
【0128】
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、または、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
【0129】
鎖状ケトンとしては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトンまたはメチルアミルケトンが好ましい。
【0130】
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロンまたはシクロヘキサノンが好ましい。
【0131】
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン(γBL)が好ましい。
【0132】
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0133】
上記成分の他、炭素数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
【0134】
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミルを用いることが特に好ましい。
【0135】
下層膜用溶剤として中でも好ましい溶剤としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0136】
<<その他の成分>>
下層膜形成用組成物は、上記の他、アルキレングリコール化合物、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、界面活性剤等を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0137】
<<<アルキレングリコール化合物>>>
下層膜形成用組成物は、アルキレングリコール化合物を含んでいてもよい。アルキレングリコール化合物は、アルキレングリコール構成単位を3~1000個有していることが好ましく、4~500個有していることがより好ましく、5~100個有していることがさらに好ましく、5~50個有していることが一層好ましい。アルキレングリコール化合物の重量平均分子量(Mw)は150~10000が好ましく、200~5000がより好ましく、300~3000がさらに好ましく、300~1000が一層好ましい。
【0138】
アルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジノニルエーテル、モノまたはジデシルエーテル、モノステアリン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノアジピン酸エステル、モノコハク酸エステルが例示され、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。
【0139】
アルキレングリコール化合物の23℃における表面張力は、38.0mN/m以上であることが好ましく、40.0mN/m以上であることがより好ましい。表面張力の上限は特に定めるものではないが、例えば48.0mN/m以下である。このような化合物を配合することにより、下層膜の直上に設けるパターン形成用組成物の濡れ性をより向上させることができる。
【0140】
表面張力は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で測定する。単位は、mN/mで示す。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0141】
アルキレングリコール化合物の含有量は、全固形分量の40質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、1~15質量%であることがさらに好ましい。アルキレングリコール化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合には、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0142】
<<<重合開始剤>>>
下層膜形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、熱重合開始剤および光重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。重合開始剤を含むことにより、下層膜形成用組成物に含まれる重合性基の反応が促進し、密着性が向上する傾向にある。パターン形成用組成物との架橋反応性を向上させる観点から光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0143】
熱重合開始剤については、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の各成分を用いることができる。含有量等についても、上記公報の記載を参酌できる。
【0144】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0145】
アシルホスフィン化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE1173、IRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF製)を用いることができる。
【0146】
上記下層膜形成用組成物に用いられる光重合開始剤の含有量は、配合する場合、全固形分中、例えば、0.0001~5質量%であり、好ましくは0.0005~3質量%であり、さらに好ましくは0.01~1質量%である。2種以上の光重合開始剤を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となる。
【0147】
<下層膜形成用組成物の製造方法>
本発明の下層膜形成用組成物は、原料を所定の割合となるように配合して調製される。原料とは、下層膜形成用組成物に積極的に配合される成分をいい、不純物等の意図せずに含まれる成分は除く趣旨である。具体的には、硬化性成分や溶剤が例示される。ここで、原料は市販品であっても、合成品であってもよい。いずれの原料も、金属粒子などの不純物を含むことがある。
【0148】
本発明の下層膜形成用組成物の製造方法の好ましい一実施形態として、下層膜形成用組成物に含まれる原料の少なくとも1種を、フィルターを用いて濾過処理を行うことを含む製造方法が挙げられる。また、2種以上の原料を混合した後、フィルターを用いて濾過し、他の原料(濾過していてもよいし、濾過していなくてもよい)と混合することも好ましい。より好ましい一実施形態としては、下層膜形成用組成物に含まれる原料(好ましくはすべての原料)を混合した後、フィルターを用いて濾過処理を行う実施形態が例示される。
【0149】
濾過は1段階のフィルターによる濾過でも効果を発揮するが、2段階以上のフィルターによる濾過がより好ましい。2段階以上のフィルターによる濾過とは、2つ以上のフィルターを直列に配置して濾過することをいう。本発明では、1~5段階のフィルターによる濾過が好ましく、1~4段階のフィルターによる濾過がより好ましく、2~4段階のフィルターによる濾過がさらに好ましい。
【0150】
本発明の下層膜形成用組成物の製造方法は、下層膜形成用組成物の原料を混合した後、2種以上のフィルターを用いて濾過することを含み、上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、孔径が互いに異なることが好ましい。このような構成とすることにより、より効果的に不純物の除去を行うことが可能になる。また、上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、材質が互いに異なることが好ましい。このような構成とすることにより、より多種類の不純物の除去を行うことが可能になる。さらに、上記2種以上のフィルターのうち、フィルターの孔径の大きいものから順に、下層膜形成用組成物を通過させて濾過することが好ましい。すなわち、濾過装置の上流から下流に向かい、孔径が小さくなるようにフィルターを配置することが、不純物除去能の観点で好ましい。
【0151】
2種の孔径の異なるフィルターを用いる場合、1段階目の濾過は、孔径が0.5~15nmのフィルター(好ましくは孔径が1~10nmのフィルター)を用い、2段階目の濾過は、孔径が3~100nmのフィルター(好ましくは孔径が5~50nmのフィルター)を用いることができる。
【0152】
フィルターの材料を構成する成分(材料成分)は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては特に制限されず、フィルターの材料として公知のものが使用できる。具体的には、6-ポリアミド、6,6-ポリアミド等のポリアミド、ポリエチレン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、および、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。なかでも、より優れた耐溶剤性を有し、より優れた欠陥抑制性能を有する点で、ポリエチレン(超高分子量のもの、グラフト化されたものを含む)およびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種が一層好ましく、ポリアミドからなるものがより一層好ましい。これらの重合体は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0153】
<下層膜の表面自由エネルギー>
本発明の下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面自由エネルギーが30mN/m以上であることが好ましく、40mN/m以上であることがより好ましく、50mN/m以上であることがさらに好ましい。上限としては、200mN/m以上であることが好ましく、150mN/m以上であることがより好ましく、100mN/m以上であることがさらに好ましい。表面自由エネルギーの測定は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で行うことができる。
【0154】
<パターン形成用組成物>
本発明の下層膜形成用組成物は、通常、パターン形成用組成物用の下層膜を形成するための組成物として用いられる。パターン形成用組成物の組成等は、特に定めるものではないが、重合性化合物を含むことが好ましい。
【0155】
<<重合性化合物>>
パターン形成用組成物は重合性化合物を含むことが好ましく、この重合性化合物が最大量成分を構成することがより好ましい。重合性化合物は、一分子中に重合性基を1つ有していても、2つ以上有していてもよい。パターン形成用組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、重合性基を一分子中に2~5つ含むことが好ましく、2~4つ含むことがより好ましく、2または3つ含むことがさらに好ましく、3つ含むことが一層好ましい。パターン形成用組成物中の重合性化合物は、下層膜形成用組成物中の高分子化合物が有する重合性基と同種の重合性基を有することが好ましい。これにより、架橋性モノマーがパターン形成用組成物中の重合性化合物と結合可能となり、組成物間の界面をまたがる結合により上記界面での密着性がより向上するという効果が得られる。
【0156】
パターン形成用組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、環状構造を有することが好ましい。この環状構造の例としては脂肪族炭化水素環Cfおよび芳香族炭化水素環Crが挙げられる。なかでも、重合性化合物は芳香族炭化水素環Crを有することが好ましく、ベンゼン環を有することがより好ましい。
【0157】
重合性化合物の分子量は100~900が好ましい。
【0158】
上記重合性化合物の少なくとも1種は、下記式(I-1)で表されることが好ましい。
【0159】
【化17】
【0160】
20は、1+q2価の連結基であり、例えば環状構造の連結基が挙げられる。環状構造としては、上記環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
21およびR22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
21およびL22はそれぞれ独立に単結合または上記連結基Lを表す。L20とL21またはL22は連結基Lを介してまたは介さずに結合して環を形成していてもよい。L20、L21およびL22は上記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数が結合して環を形成してもよい。置換基Tが複数あるとき互いに同じでも異なっていてもよい。
q2は0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0または1がさらに好ましい。
【0161】
重合性化合物の例としては下記実施例で用いた化合物、特開2014-090133号公報の段落0017~0024および実施例に記載の化合物、特開2015-009171号公報の段落0024~0089に記載の化合物、特開2015-070145号公報の段落0023~0037に記載の化合物、国際公開第2016/152597号の段落0012~0039に記載の化合物を挙げることができるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0162】
重合性化合物は、パターン形成用組成物中、30質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が一層好ましく、60質量%以上であってもよく、さらに70質量%以上であってもよい。また、上限値は、99質量%未満であることが好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、97質量%以下とすることもできる。
【0163】
重合性化合物の沸点は、上述した下層膜形成用組成物に含まれる高分子化合物との関係で設定され配合設計されることが好ましい。重合性化合物の沸点は、500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましい。下限値としては200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。
【0164】
<<その他の成分>>
パターン形成用組成物は、重合性化合物以外の添加剤を含有してもよい。他の添加剤として、重合開始剤、溶剤、界面活性剤、増感剤、離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。
【0165】
本発明では、パターン形成用組成物における溶剤の含有量は、パターン形成用組成物の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0166】
パターン形成用組成物は、ポリマー(好ましくは、重量平均分子量が1000を超える、より好ましくは重量平均分子量が2000を超える)を実質的に含有しない態様とすることもできる。ポリマーを実質的に含有しないとは、例えば、ポリマーの含有量がパターン形成用組成物の0.01質量%以下であることをいい、0.005質量%以下が好ましく、全く含有しないことがより好ましい。
【0167】
その他、本発明の下層膜形成用組成物と共に用いることができるパターン形成用組成物の具体例としては、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の組成物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、パターン形成用組成物の調製、パターンの製造方法についても、上記公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0168】
<物性値等>
パターン形成用組成物の粘度は、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましく、11.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、9.0mPa・s以下であることが一層好ましい。上記粘度の下限値としては、特に限定されるものではないが、例えば、5.0mPa・s以上とすることができる。粘度は、下記の方法に従って測定される。
【0169】
粘度は、東機産業(株)製のE型回転粘度計RE85L、標準コーン・ロータ(1°34’×R24)を用い、サンプルカップを23℃に温度調節して測定する。単位は、mPa・sで示す。測定に関するその他の詳細はJISZ8803:2011に準拠する。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0170】
パターン形成用組成物の表面張力(γResist)は28.0mN/m以上であることが好ましく、30.0mN/m以上であることがより好ましく、32.0mN/m以上であってもよい。表面張力の高いパターン形成用組成物を用いることで毛細管力が上昇し、モールドパターンへのパターン形成用組成物の高速な充填が可能となる。上記表面張力の上限値としては、特に限定されるものではないが、下層膜との関係およびインクジェット適性を付与するという観点では、40.0mN/m以下であることが好ましく、38.0mN/m以下であることがより好ましく、36.0mN/m以下であってもよい。
パターン形成用組成物の表面張力は、上記アルキレングリコール化合物における測定方法と同じ方法に従って測定される。
【0171】
パターン形成用組成物の大西パラメータは、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.7以下であることがさらに好ましい。パターン形成用組成物の大西パラメータの下限値は、特に定めるものではないが、例えば、1.0以上、さらには、2.0以上であってもよい。パターン形成用組成物の大西パラメータは、パターン形成用組成物中の固形分について、全構成成分の炭素原子、水素原子および酸素原子の数を下記式に代入して求めることができる。
大西パラメータ=炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和/(炭素原子の数-酸素原子の数)
【0172】
<収容容器>
本発明で用いる下層膜形成用組成物およびパターン形成用組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0173】
<インプリント用キット>
本発明のキットは、インプリント法によりパターン(パターン転写された硬化膜)を形成するための上記パターン形成用組成物と、下層膜を形成するための下層膜形成用組成物との組み合わせを含む。例えば、パターン形成用組成物および下層膜形成用組成物は、それぞれ別個の収容容器に収容され、組み合わされる。本発明のキットを使用することにより、膜強度に優れた下層膜を形成でき、その結果として、モールドの損傷を抑制できるインプリントを実施することが可能となる。
【0174】
<パターン製造方法>
本発明の好ましい実施形態にかかるパターン(パターン転写された硬化膜)の製造方法は、基板表面に、本発明の下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)、上記下層膜上(好ましくは、下層膜の表面)にパターン形成用組成物を適用してパターン形成用組成物層を形成する工程(パターン形成用組成物層形成工程)、上記パターン形成用組成物層にモールドを接触させる工程、上記モールドを接触させた状態で上記パターン形成用組成物層を露光する工程、および上記モールドを、上記露光したパターン形成用組成物層から剥離する工程を含む。
【0175】
本発明のパターン製造方法において、下層膜形成用組成物を、基板上への適用の前に、10~40℃で保存することが好ましい。この数値範囲の上限は、35℃以下であることがより好ましく、33℃以下であることがさらに好ましい。さらに、この数値範囲の下限は、15℃以上であることがより好ましく、18℃以上であることがさらに好ましい。これにより、キレート剤の活性を充分に発揮させることができる。
【0176】
温度以外の具体的な保存方法は、特段制限されない。例えば、大気下で保存することもでき、窒素等の置換ガス雰囲気下で保存することもでき、大気下で保存することが好ましい。また、遮光窓付きの保管庫内で保存することもでき、インプリント装置等の機器に装着した状態で保存してもよい。
【0177】
以下、パターン製造方法について、図1に従って説明する。本発明の構成が図面により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0178】
<<下層膜形成工程>>
下層膜形成工程では、図1(1)(2)に示す様に、基板1の表面に、下層膜2を形成する。下層膜は、下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用して形成することが好ましい。基板1は、単層からなる場合の他、下塗り層や密着層を有していてもよい。
【0179】
基板の表面への下層膜形成用組成物の適用方法としては、特に定めるものではなく、一般によく知られた適用方法を採用できる。具体的には、適用方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法が例示され、スピンコート法が好ましい。
【0180】
また、基板上に下層膜形成用組成物を層状に適用した後、好ましくは、熱によって溶剤を揮発(乾燥)させて、薄膜である下層膜を形成する。
【0181】
下層膜2の厚さは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、4nm以上であることがさらに好ましい。また、下層膜の厚さは、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、7nm以下であることがさらに好ましい。膜厚を上記下限値以上とすることにより、パターン形成用組成物の下層膜上での拡張性(濡れ性)が向上し、インプリント後の均一な残膜形成が可能となる。膜厚を上記上限値以下とすることにより、インプリント後の残膜が薄くなり、膜厚ムラが発生しにくくなり、残膜均一性が向上する傾向にある。
【0182】
基板の材質としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報の段落0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)基板、窒化ガリウム基板、アルミニウム基板、アモルファス酸化アルミニウム基板、多結晶酸化アルミニウム基板、SOC(スピンオンカーボン)、SOG(スピンオングラス)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ならびに、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGa、InP、または、ZnOから構成される基板が挙げられる。なお、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。本発明では、シリコン基板およびSOC(スピンオンカーボン)を塗布した基板が好ましい。
【0183】
シリコン基板は適宜表面修飾したものを用いることができ、基板の表面から10nmの厚さ(より好ましくは100nmの厚さ)までの領域の炭素含有量を70質量%以上(好ましくは、80~100質量%)としたものを用いてもよい。例えば、シリコン基板に各種のスピンオンカーボン膜をスピンコート法で塗布し、240℃で60秒間ベークを行って得られる膜厚200nmのSOC(Spin on Carbon)膜を有する基板が挙げられる。近年はこうした多様なSOC基板表面であっても安定したモールドパターニングが求められており、本発明によれば、このような基板とパターン形成用組成物から形成される層との良好な密着性を確保することができ、基板剥がれの生じない安定したモールドパターニングが実現される。
【0184】
本発明においては、有機層を最表層として有する基板を用いることが好ましい。
基板の有機層としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)で形成されるアモルファスカーボン膜や、高炭素材料を有機溶剤に溶解させ、スピンコートで形成されるスピンオンカーボン膜が挙げられる。スピンオンカーボン膜としては、ノルトリシクレン共重合体、水素添加ナフトールノボラック樹脂、ナフトールジシクロペンタジエン共重合体、フェノールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報に記載されるフルオレンビスフェノールノボラック、特開2005-250434号公報に記載のアセナフチレン共重合、インデン共重合体、特開2006-227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、ビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、ジビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、アダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、ヒドロキシビニルナフタレン共重合体、特開2007-199653号公報に記載のビスナフトール化合物およびこのノボラック樹脂、ROMP、トリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物が挙げられる。
SOCの例としては特開2011-164345号公報の段落0126の記載を参照することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0185】
基板表面の水に対する接触角としては、20°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、60°以上であることがさらに好ましい。上限としては、90°以下であることが実際的である。接触角は、後述する実施例で記載の方法に従って測定される。
【0186】
本発明においては、塩基性の層を最表層として有する基板(以下、塩基性基板という)を用いることが好ましい。塩基性基板の例としては、塩基性有機化合物(例えば、アミン系化合物やアンモニウム系化合物など)を含む基板や窒素原子を含有する無機基板が挙げられる。
【0187】
<<パターン形成用組成物層形成工程>>
この工程では、例えば、図1(3)に示すように、上記下層膜2の表面に、パターン形成用組成物3を適用する。
【0188】
パターン形成用組成物の適用方法としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報(対応US出願の公開番号は、US2011/183127)の段落0102の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。上記パターン形成用組成物は、インクジェット法により、上記下層膜の表面に適用することが好ましい。また、パターン形成用組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより下層膜の表面に液滴を配置する方法において、液滴の量は1~20pL程度が好ましく、液滴間隔をあけて下層膜表面に配置することが好ましい。液滴間隔としては、10~1000μmの間隔が好ましい。液滴間隔は、インクジェット法の場合は、インクジェットのノズルの配置間隔とする。
【0189】
さらに、下層膜2と、下層膜上に適用した膜状のパターン形成用組成物3の体積比は、1:1~500であることが好ましく、1:10~300であることがより好ましく、1:50~200であることがさらに好ましい。
【0190】
また、積層体の製造方法は、本発明の上記キットを用いて製造する方法であって、上記下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面に、パターン形成用組成物を適用することを含む。さらに、積層体の製造方法は、上記下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、上記層状に適用した下層膜形成用組成物を、好ましくは100~300℃で、より好ましくは130~260℃で、さらに好ましくは150~230℃で、加熱(ベーク)することを含むことが好ましい。加熱時間は、好ましくは30秒~5分である。
【0191】
パターン形成用組成物を下層膜に適用するに当たり、基板上に液膜を形成する形態としてもよい。液膜の形成は常法によればよい。例えば、23℃で液体の架橋性モノマー(重合性化合物の例が挙げられる)などを含有する組成物を基板上に適用することにより形成してもよい。
【0192】
<<モールド接触工程>>
モールド接触工程では、例えば、図1(4)に示すように、上記パターン形成用組成物3とパターン形状を転写するためのパターンを有するモールド4とを接触させる。このような工程を経ることにより、所望のパターン(インプリントパターン)が得られる。
【0193】
具体的には、膜状のパターン形成用組成物に所望のパターンを転写するために、膜状のパターン形成用組成物3の表面にモールド4を押接する。
【0194】
モールドは、光透過性のモールドであってもよいし、光非透過性のモールドであってもよい。光透過性のモールドを用いる場合は、モールド側からパターン形成用組成物3に光を照射することが好ましい。本発明では、光透過性モールドを用い、モールド側から光を照射することがより好ましい。
【0195】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドである。上記モールドが有するパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じて形成できるが、本発明では、モールドパターンの形成方法は特に制限されない。また、本発明の好ましい実施形態に係るパターンの製造方法によって形成したパターンをモールドとして用いることもできる。
【0196】
本発明において用いられる光透過性モールドを構成する材料は、特に限定されないが、ガラス、石英、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート樹脂などの光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示され、石英が好ましい。
【0197】
本発明において光透過性の基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。
【0198】
基板の表面は適宜常法により処理してもよく、例えば、UVオゾン処理等により基板の表面にOH基を形成して、基板表面の極性を高めることで、より密着性が向上する態様してもよい。
【0199】
上記パターンの製造方法では、パターン形成用組成物を用いてインプリントリソグラフィを行うに際し、モールド圧力を10気圧以下とするのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、圧力が小さいため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部にあたるパターン形成用組成物の残膜が少なくなる一方で、モールド転写の均一性が確保できる範囲から選択することが好ましい。
また、パターン形成用組成物とモールドとの接触を、ヘリウムガスまたは凝縮性ガス、あるいはヘリウムガスと凝縮性ガスの両方を含む雰囲気下で行うことも好ましい。
【0200】
<<光照射工程>>
光照射工程では、上記パターン形成用組成物に光を照射することにより露光を実施して、硬化物を形成する。光照射工程における光照射の照射量は、硬化に必要な最小限の照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、パターン形成用組成物の不飽和結合の消費量などを調べて適宜決定される。照射する光の種類は特に定めるものではないが、紫外光が例示される。
【0201】
また、本発明に適用されるインプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温とするが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとパターン形成用組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、上記パターンの製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0202】
露光に際しては、露光照度を1~500mW/cmの範囲にすることが好ましく、10~400mW/cmの範囲にすることがより好ましい。露光の時間は特に限定されないが、0.01~10秒であることが好ましく、0.5~1秒であることがより好ましい。露光量は、5~1000mJ/cmの範囲にすることが好ましく、10~500mJ/cmの範囲にすることがより好ましい。
【0203】
上記パターンの製造方法においては、光照射により膜状のパターン形成用組成物(パターン形成層)を硬化させた後、必要に応じて、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後にパターン形成用組成物を加熱硬化させるための温度としては、150~280℃が好ましく、200~250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5~60分間が好ましく、15~45分間がさらに好ましい。
【0204】
本発明の下層膜形成用組成物を使用した場合には、上述した光照射や加熱に起因して、下層膜中の高分子化合物が有する重合性基と、架橋性モノマーが有する架橋性基との架橋反応が促進される。また、架橋性モノマーが有する架橋性基の一部は、下層膜上にあるパターン形成用組成物中の重合性化合物とも架橋反応を行う場合もあり、本発明は下層膜の膜強度の向上という効果に加えて、組成物間の界面をまたがる結合により上記界面での密着性がより向上するという効果も得られる。インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温とするが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとパターン形成用組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、上記パターンの製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0205】
<<離型工程>>
離型工程では、上記硬化物と上記モールドとを引き離す(図1(5))。得られたパターンは後述する通り各種用途に利用できる。すなわち、本発明では、上記下層膜の表面に、さらに、パターン形成用組成物から形成されるパターンを有する、積層体が開示される。また、本発明で用いるパターン形成用組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.01μm~30μm程度である。さらに、後述するとおり、エッチング等を行うこともできる。
【0206】
<パターンとその応用>
上記パターンの製造方法によって形成されたパターンは、液晶表示装置(LCD)などに用いられる永久膜や、半導体素子製造用のエッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)として使用することができる。特に、本明細書では、本発明の好ましい実施形態に係るパターンの製造方法によりパターンを得る工程を含む、半導体デバイス(回路基板)の製造方法を開示する。さらに、本発明の好ましい実施形態に係る半導体デバイスの製造方法では、上記パターンの製造方法により得られたパターンをマスクとして基板にエッチングまたはイオン注入を行う工程と、電子部材を形成する工程と、を有していてもよい。上記半導体デバイスは、半導体素子であることが好ましい。すなわち、本明細書では、上記パターン製造方法を含む半導体デバイスの製造方法を開示する。さらに、本明細書では、上記半導体デバイスの製造方法により半導体デバイスを得る工程と、上記半導体デバイスと上記半導体デバイスを制御する制御機構とを接続する工程と、を有する電子機器の製造方法を開示する。
【0207】
また、上記パターンの製造方法によって形成されたパターンを利用して液晶表示装置のガラス基板にグリッドパターンを形成し、反射や吸収が少なく、大画面サイズ(例えば55インチ、60インチ、(1インチは2.54センチメートルである))の偏光板を安価に製造することが可能である。例えば、特開2015-132825号公報や国際公開第2011/132649号に記載の偏光板が製造できる。
【0208】
本発明で形成されたパターンは、図1(6)(7)に示す通り、エッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)としても有用である。パターンをエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基板上に上記パターンの製造方法によって、例えば、ナノまたはミクロンオーダーの微細なパターンを形成する。本発明では特にナノオーダーの微細パターンを形成でき、さらにはサイズが50nm以下、特には30nm以下のパターンも形成できる点で有益である。上記パターンの製造方法で形成するパターンのサイズの下限値については特に定めるものでは無いが、例えば、1nm以上とすることができる。
【0209】
また、本発明のパターン製造方法は、インプリント用モールドの製造方法に応用することもできる。このインプリント用モールドの製造方法は、例えば、モールドの素材となる基板(例えば、石英などの透明材料からなる基板)上に、上述したパターンの製造方法によりパターンを製造する工程と、このパターンを用いて上記基板にエッチングを行う工程とを有する。
【0210】
エッチング法としてウェットエッチングを使用する場合にはフッ化水素等のエッチング液、ドライエッチングを使用する場合にはCF等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基板上に所望のパターンを形成することができる。パターンは、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。すなわち、上記パターンの製造方法によって形成されたパターンは、リソグラフィ用マスクとして好ましく用いられる。
【0211】
本発明で形成されたパターンは、具体的には、磁気ディスク等の記録媒体、固体撮像素子等の受光素子、LED(light emitting diode)や有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)等の発光素子、液晶表示装置(LCD)等の光デバイス、回折格子、レリーフホログラム、光導波路、光学フィルタ、マイクロレンズアレイ等の光学部品、薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、反射防止膜、偏光板、偏光素子、光学フィルム、柱材等のフラットパネルディスプレイ用部材、ナノバイオデバイス、免疫分析チップ、デオキシリボ核酸(DNA)分離チップ、マイクロリアクター、フォトニック液晶、ブロックコポリマーの自己組織化を用いた微細パターン形成(directed self-assembly、DSA)のためのガイドパターン等の作製に好ましく用いることができる。
【実施例
【0212】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。実施例において、特に述べない限り、「部」および「%」は質量基準であり、各工程の環境温度(室温)は23℃である。
【0213】
<下層膜形成用組成物の調製>
下記表に示す化合物を、下記表に示す配合割合(質量部)で配合し、混合した。混合後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、0.3質量%の溶液を作製した。これを孔径0.02μmのナイロンフィルタおよび孔径0.001μmの超高分子量ポリエチレン(UPE)フィルタで濾過して、実施例および比較例に示す下層膜形成用組成物を調製した。
【0214】
そして、カールフィッシャー法を用いて、実施例および比較例の各下層膜形成用組成物の含水率を測定した。いずれの組成物についても、含水率は組成物の全量に対して0.1質量%未満であった。
【0215】
【表1】
【0216】
上記表1中の架橋点間距離の欄について、モノマーB-1では、架橋点間距離がそれぞれ9および17となる複数の重合性基および架橋性基の組み合わせが存在することを示す。
【0217】
各原料の具体的な仕様は、下記のとおりである。
<下層膜形成用組成物の原料>
<<高分子化合物>>
A-1:下記構造を有する化合物(Mw=20000)。
A-2:下記構造を有する化合物(Mw=20000、Mw/Mn=1.9)。
A-3:下記構造を有する化合物(Mw=20000、Mw/Mn=1.8)。
A-4:下記構造を有する化合物(Mw=3000)。
A-5:下記構造を有する化合物(EBECRYL3605、ダイセルオルネクス社製、Mw=20,000)。
A-6:下記構造を有する化合物(PVEEA、日本触媒社製、Mw=21000、Mw/Mn=2.2)。
A-7:下記構造を有する化合物(EAオリゴ7420、新中村化学社製、Mw=3500)。
A-8:下記構造を有する化合物(Mw=21000、Mw/Mn=2.0)。
A-9:下記構造を有する化合物(Mw=21000、Mw/Mn=2.0)。各繰り返し単位に付した数値は、繰り返し単位のモル比を表す。
【0218】
【化18】
【0219】
【化19】
【0220】
<<<高分子化合物の合成方法>>>
・A-1:
高分子化合物A-9の下記合成方法にならって合成した。得られた高分子化合物A-1について、Mw=20000であった。
【0221】
・A-2:
フラスコに、溶剤として100gのPGMEAを入れ、窒素雰囲気下でPGMEAを90℃に昇温した。その溶剤に、GMA(メタクリル酸グリシジル、28.4g、0.2モル)、アゾ系重合開始剤(V-601、富士フイルム和光純薬社製、2.8g、12ミリモル)およびPGMEA(50g)の混合液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、上記混合液を90℃で4時間撹拌した。その後、上記容器に、アクリル酸(19.0g、0.26モル、GMAに対して1.1当量、富士フイルム和光純薬社製)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB、2.1g)、および、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-HO-TEMPO、50mg)を順に加え、90℃で8時間撹拌しながら反応させた。グリシジル基が反応で消失したことはH-NMR測定により確認した。以上の手順により、高分子化合物A-2のPGMEA溶液を得た。得られた高分子化合物A-2について、Mw=20000、分散度(Mw/Mn)=1.9であった。
【0222】
・A-3:
フラスコに、溶剤として100gのPGMEAを入れ、窒素雰囲気下でPGMEAを90℃に昇温した。その溶剤に、GMA(メタクリル酸グリシジル、28.4g、0.2モル)、アゾ系重合開始剤(V-601、富士フイルム和光純薬社製、2.8g、12ミリモル)およびPGMEA(50g)の混合液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、上記混合液を90℃で4時間撹拌した。以上の手順により、高分子化合物A-3のPGMEA溶液を得た。得られた高分子化合物A-3について、Mw=20000、分散度(Mw/Mn)=1.8であった。
【0223】
・A-4:
11gのEPON Resin 164と、100mLのジメチルエーテル(DME)とを室温で混合して第1の溶液を調製し、-20℃まで冷却した。次に、50mmolのエチルマグネシウムブロマイド(EtMgBr)を50mLのDMEに溶解して第2の溶液を調製し、第2の溶液を第1の溶液に添加した後、6時間撹拌した。その後、5mLの水を第1の溶液に添加することによって反応を停止させた。そして、第1の溶液の温度を室温に戻し、水を除去した後、アクリル酸クロライド(450mg、5mmol)及びトリメチルアミン(10mmol)を第1の溶液に添加し、反応混合物を2時間撹拌した。固形物を濾過により取り除いた後、濾液を真空乾燥した。生成物を200mlのジエチルエーテルに再溶解させ、炭酸カリウム固体(10g)をこの溶液に添加して、4時間撹拌しながら、残る酸を吸収させた。その後、固形物を濾過により取り除き、濾液を真空乾燥することによって、高分子化合物A-4が得られた。得られた高分子化合物A-4について、Mw=3000であった。
【0224】
・A-8:
高分子化合物A-9の下記合成方法にならって、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを重合させて合成した。得られた高分子化合物A-8について、Mw=21000、Mw/Mn=2.0であった。
【0225】
・A-9:
フローしている三口フラスコにPGME(45.38g)を加え、90℃に加温した。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製、13.01g、100.0mmol)、グリシジルメタクリレート(日油(株)製、14.22g、100.0mmol)、および光ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬(株)製、V-601、0.92g、4.0mmol)を別途PGME(45.38g)に溶解し、得られた混合物を、上記フラスコの内温が95℃を超えない温度で2時間かけて上記フラスコ内に滴下し、さらに90℃で4時間熟成を行った。その後、上記フラスコを25℃まで冷却して、反応液を得た。別の三口フラスコにジイソプロピルエーテル(435.5g)とヘキサン(186.6g)を加えて混合し、この混合溶液を0℃に冷却し撹拌した。そして、上記反応液を、5℃を超えない温度で30分間かけてこの混合溶液に滴下し、さらに1時間撹拌した。その後、この混合溶液を1時間静置し、減圧濾過を行った。得られた濾過物を減圧乾燥することで、目的の化合物(中間体G-1A)を得た。
【0226】
フローしている三口フラスコにPGME(45.38g)、上記中間体G-1A(13.61g、100.0mmol)、およびトリエチルアミン(東京化成工業(株)製、7.59g、75.0mmol)を加え、これを0℃に冷却した。PGME(45.38g)とアクリロイルクロライド(5.43g、60.0mmol)を混合した溶液を、上記フラスコの内温が10℃を超えない温度で2時間かけて上記フラスコ内に滴下し、さらに20℃で4時間熟成を行った。その後、上記フラスコを0℃まで冷却して、反応液を得た。別の三口フラスコにジイソプロピルエーテル(435.5g)とヘキサン(186.6g)を加えて混合し、この混合溶液を0℃に冷却し撹拌した。そして、上記反応液を、5℃を超えない温度で30分間かけてこの混合溶液に滴下し、さらに1時間撹拌した。その後、この混合溶液を1時間静置し、減圧濾過を行った。得られた濾過物を水洗し、減圧乾燥することで、目的の化合物(中間体G-1B)を得た。
【0227】
フローしている三口フラスコにPGMEA(45.38g)、フタル酸(東京化成工業(株)製、16.61g、100.0mmol)、グリシジルアクリレート(日油(株)製、2.56g、20.0mmol)、テトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業(株)製、0.21g、1.0mmol)、および4-OH-TEMPO(東京化成工業(株)製、1.72mg、0.01mmol)を加え、90℃で8時間熟成を行った。その後、酢酸エチル(800mL)および蒸留水(500mL)を上記フラスコに加え、分液を行った。この分液後の水層を除去し、1%NaHCO水溶液(500mL)を加え、さらに分液を行った。また、この分液後の水層を除去し、蒸留水500mLを加え、さらに分液を行った。次いで、この分液後の有機層を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィによる精製を行って、目的の化合物(中間体G-1C)を得た。
【0228】
フローしている三口フラスコにPGMEA(45.38g)、中間体G-1B、中間体G-1C、テトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業(株)製、0.21g、1.0mmol)、および4-OH-TEMPO(東京化成工業(株)製、1.72mg、0.01mmol)を加え、90℃で8時間熟成を行った。その後、これを25℃まで冷却して、反応液を得た。別の三口フラスコにジイソプロピルエーテル(435.5g)とヘキサン(186.6g)を加えて混合し、この混合溶液を0℃に冷却し撹拌した。そして、上記反応液を、5℃を超えない温度で30分間かけてこの混合溶液に滴下し、さらに1時間撹拌した。その後、この混合溶液を1時間静置し、減圧濾過を行った。得られた濾過物を減圧乾燥することで、最終生成物の高分子化合物A-9を得た。得られた高分子化合物A-9について、Mw=21000、Mw/Mn=2.0であった。
【0229】
<<架橋性モノマー>>
B-1:下記構造を有する化合物(架橋点間距離:9または17)。
B-2:下記構造を有する化合物(ADCP、新中村化学社製。架橋点間距離:11)。
B-3:下記構造を有する化合物(A-BPE-4、新中村化学社製。架橋点間距離:25)。
B-4:下記構造を有する化合物(A-200、新中村化学社製。架橋点間距離:30)。
B-5:下記構造を有する化合物(4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジグリシジル、東京化成工業社製。架橋点間距離:8)。
B-6:下記構造を有する化合物(架橋点間距離:16)。
B-7:下記構造を有する化合物(架橋点間距離:6)。
【0230】
【化20】
【0231】
<<溶剤>>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0232】
<パターン形成用組成物の調製>
下記表2に示す化合物を、下記表に示す配合割合(質量部)で配合し、さらに重合禁止剤として4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性化合物(表2中のNo.1~3)の合計量に対して200質量ppm(0.02質量%)となるように加えて調製した。これを孔径0.02μmのナイロンフィルタおよび孔径0.001μmのUPEフィルタで濾過して、パターン形成用組成物V1およびV2を調製した。表中、k+m+n=10である。
【0233】
【表2】
【0234】
<ハンセン溶解度パラメータ距離(ΔHSP)の算出>
実施例および比較例に係る高分子化合物および架橋性モノマーの各化合物について、ハンセン溶解度パラメータおよび沸点をHSP計算ソフトHSPiPにて計算した。具体的には、高分子化合物の場合には、その高分子化合物を構成するモノマー単位の構造式をSMILES形式にて上記ソフトに入力することで、ハンセン溶解度パラメータベクトルの各成分(d成分、p成分、h成分)を算出した。高分子化合物が複数のモノマー単位を有する共重合体である場合には、上記数式(2)を用いた算出方法により各成分を算出した。一方、架橋性モノマーの場合には、その架橋性モノマーの分子式をSMILES形式にて上記ソフトに入力することで、ハンセン溶解度パラメータベクトルの各成分を算出した。ハンセン溶解度パラメータ距離(ΔHSP)については、該当する成分のハンセン溶解度パラメータの各成分(d成分、p成分、h成分)からそれぞれΔD、ΔP、ΔHを求め、上記した数式(1)にあてはめることで算出した。また、同ソフトにより計算した沸点を考慮して、下層膜形成の際の温度条件を設定した。
【0235】
<下層膜の形成および膜厚の測定>
シリコンウェハ上に、各実施例および比較例の下層膜形成用組成物をスピンコートし、上記表1に記載のベーク温度条件でホットプレートを用いて加熱し、シリコンウェハ上に下層膜を形成した。下層膜の膜厚はエリプソメータにより測定した。
【0236】
<評価>
上記で得た実施例および比較例の各下層膜形成用組成物について、下記項目の評価を行った。
【0237】
<<膜強度の評価>>
下層膜が凝集破壊する際の密着力の大きさで、下層膜の膜強度を評価した。具体的には次のとおりである。上記で得られた下層膜表面に、各実施例および比較例に応じて、25℃に温度調整した上記表に記載のパターン形成用組成物(V1またはV2)を、富士フイルムダイマティックス製インクジェットプリンターDMP-2831を用いて、ノズルあたり6plの液滴量で吐出して、下層膜上に液滴が約100μm間隔の正方配列となるように塗布し、パターン形成層とした。次に、パターン形成層に、特開2014-024322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートした石英ウェハをHe雰囲気下(置換率90%以上)で押し当て、パターン形成用組成物を押印した。押印後10秒が経過した時点で、石英ウェハ側から高圧水銀ランプを用い、150mJ/cmの条件で露光した。そして、露光後の積層体が分離する際に必要な力を測定し、下層膜の密着力Fとした。なお、このときの分離は、いずれも、下層膜の内部での凝集破壊に起因するものであった。そして、このFの値を下記の基準で評価した。A~Cの評価が実用に適したレベルである。
・A:30N≦F
・B:25N≦F<30N
・C:20N≦F<25N
・D:F<20N
【0238】
<<塗布欠陥の評価>>
直径300mmのシリコンウェハを準備し、ウェハ表面上欠陥検出装置(KLA Tencor社製SP-5)で上記ウェハ上に存在する直径50nm以上のパーティクルを検出した。これを初期値とする。次に、上記シリコンウェハ上に各実施例および比較例の下層膜形成用組成物をスピンコートし、上記表に記載の温度条件でホットプレートを用いて加熱し、シリコンウェハ上に下層膜を形成した。次に、同様の方法で欠陥数を計測した。これを計測値とする。そして、初期値と計測値の差(計測値-初期値)を計算し、その結果を下記の基準に基づいて評価した。A~Cの評価が実用に適したレベルである。
・A:初期値と計測値の差が20個以下だった。
・B:初期値と計測値の差が21~100個だった。
・C:初期値と計測値の差が101~500個だった。
・D:初期値と計測値の差が501個以上だった。
【0239】
<<離型性の評価>>
前述した下層膜の形成方法に従って、シリコンウェハ上に下層膜を形成した。この下層膜表面に、各実施例および比較例に応じて、25℃に温度調整した上記表に記載の上記パターン形成用組成物(V1またはV2)を、富士フイルムダイマティックス製インクジェットプリンターDMP-2831を用いて、ノズルあたり6plの液滴量で吐出して、下層膜上に液滴が約100μm間隔の正方配列となるように塗布し、パターン形成層とした。次に、He雰囲気下(置換率90%以上)で、パターン形成層にモールドを押し当て、パターン形成用組成物をモールドのパターンに充填した。使用したモールドは、線幅20nm、深さ55nmおよびピッチ60nmのライン/スペースパターンを有する石英モールドである。押印後10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、100mJ/cmの条件で露光した後、モールドを剥離することでパターン形成層にパターンを転写した。
【0240】
このパターン転写において、モールドを離型する際に必要な力(離型力F、単位:N)を測定した。離型力は、特開2011-206977号公報の段落番号0102~0107に記載の比較例の方法に準じて測定を行い、その結果を下記の基準に基づき評価した。A~Cの評価が実用に適したレベルである。
・A:F≦15N
・B:15N<F≦18N
・C:18N<F≦20N
・D:20N<F
【0241】
<<剥れ欠陥の評価>>
前述した下層膜の形成方法に従って、シリコンウェハ上に下層膜を形成した。この下層膜表面に、各実施例および比較例に応じて、25℃に温度調整した上記表に記載の上記パターン形成用組成物(V1またはV2)を、富士フイルムダイマティックス製インクジェットプリンターDMP-2831を用いて、ノズルあたり6plの液滴量で吐出して、下層膜上に液滴が約100μm間隔の正方配列となるように塗布し、パターン形成層とした。次に、He雰囲気下(置換率90%以上)で、パターン形成層にモールドを押し当て、パターン形成用組成物をモールドのパターンに充填した。使用したモールドは、線幅28nm、深さ60nmおよびピッチ60nmのライン/スペースパターンを有する石英モールドである。押印後10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、150mJ/cmの条件で露光した後、モールドを剥離することでパターン形成層にパターンを転写した。
【0242】
転写したパターンの剥れ有無を光学顕微鏡観察(マクロ観察)および走査型電子顕微鏡観察(ミクロ観察)にて確認し、その結果を下記の基準に基づき評価した。A~Cの評価が実用に適したレベルである。
・A:パターン剥れが確認されなかった。
・B:マクロ観察ではパターンの剥れは確認されなかったが、ミクロ観察にてパターンの剥れが確認された。
・C:マクロ観察にて一部領域(離型終端部)に剥れが確認された。
・D:上記A~Cのいずれにも該当しなかった。
【0243】
<評価結果>
各実施例および比較例の評価結果を上記表1に示す。この結果から、本発明の下層膜形成用組成物を用いることにより、高分子成分とモノマー成分とが混合された場合でも、膜強度に優れた下層膜を形成できることがわかった。さらに、本発明によれば、下層膜形成用組成物の塗布後のパーティクルの低減および塗布面状の向上に寄与することも分かった。
【0244】
また、各実施例に係る下層膜形成用組成物を用いて下層膜をシリコンウェハ上に形成し、この下層膜付シリコンウェハ上に、各実施例に係るパターン形成用組成物を用いて、半導体回路に対応する所定のパターンを形成した。そして、このパターンをエッチングマスクとして、シリコンウェハをそれぞれエッチングし、そのシリコンウェハを用いて半導体素子をそれぞれ作製した。いずれの半導体素子も、性能に問題はなかった。
【符号の説明】
【0245】
1 基板
2 下層膜
3 パターン形成用組成物
4 モールド
図1