(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】測定対象物内の欠陥を検出するTHz測定装置及びTHz測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20221110BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20221110BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01N21/88 Z
G01B11/24 B
(21)【出願番号】P 2021515163
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 DE2019100778
(87)【国際公開番号】W WO2020057689
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102018122965.8
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520404492
【氏名又は名称】イノエックス ゲーエムベーハー イノヴァツィオーネン ウント アウスリュストゥンゲン フュア ディー エクストルジオーンステヒニク
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クローゼ ラルフ
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/215712(WO,A1)
【文献】特開2018-054392(JP,A)
【文献】国際公開第2018/072789(WO,A1)
【文献】特開2014-132437(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016105599(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015122205(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0149429(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物(2)内の欠陥(3)を決定するためのTHz測定装置(1)であって、
光軸(A)に沿ってTHz送信ビーム(15)を放出する少なくとも1つのアクティブなTHz送信機(12)を有するアンテナアレー(4)、
前記THz送信機(12)に対して固定の空間配置で配置され、前記THz送信機と同期され、反射THz放射線(16)を検出し、THz測定信号(S1)を出力する複数のTHz受信機(14)、及び
前記THz測定信号(S1)を受信して、前記測定対象物(2)の通常の境界表面(2a,2b)の外側で生じた反射として欠陥(3)を決定する制御装置(5)、を有
し、
ユーザが把持するためのハンドル領域であって、前記測定対象物(2)の前に又は上に様々な位置で位置決めするためのハンドル領域(8)によって、少なくともそのアンテナアレー(4)と共に携帯可能である、THz測定装置(1)。
【請求項2】
前記THz送信機が、反射THz放射線(16)を検出し及びTHz測定信号(S1)を出力するTHzトランシーバー(12)である、ことを特徴とする請求項1に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記THz受信機(14)が一時的にアクティブにTHz送信ビーム(15)を送信し、
常に、1つのTHz受信機(14)又は前記THzトランシーバー(12)が送信し、他の複数のTHz受信機(14)又は前記THzトランシーバー(12)が受信する、ことを特徴とする請求項2に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項4】
アクティブな送信機能の交互の切り替えによって、複数
の前記THz受信機(14)が一時的に送信し、前記THzトランシーバー(12)が一時的に受動的にのみ反射THz放射線(16)を受信する、ことを特徴とする請求項3に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項5】
前記アンテナアレー(4)が
、前記少なくとも1つのTHz送信機(12)及び前記複数のTHz受信機(14)から作られた線形装置として、少なくとも1つのセンサーストリップ(4a,4b)を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項6】
2つの交差したセンサーストリップ(4a,4b)又はTHz受信機(14)の2次元マトリックス装置として、THz受信機(14)の2つの平行でない装
置を有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項7】
3つの空間方向における及び/又は1又は複数の回転方向における加速度を測定するために、前記THz測定装置(1)の加速度を測定し、加速度測定信号(S3)を出力するための加速度計手段(18)をさらに有し、
前記制御装置(5)は、前記加速度測定信号(S3)を受信し、前記THz放射線(15,16)の送信及び受信時に2度実行される時間積分によって前記THz測定装置(1)の空間位置を決定する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項8】
前記制御装置(5)は、前記THz測定信号(S1)から、前記測定対象物(2)の境界表面(2a,2b)及び前記測定対象物(2)における前記欠陥(3)の相対位置、並び
に前記欠陥(3)の境界表面(3a)の3次元配置を決定する、ことを特徴とする請求項7に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項9】
前記制御装置(5)は、前記THz測定信号(S1)の振幅(S)の高さ(ΔS)を評価し、前記振幅(S)の高さ(ΔS)か
ら前記欠陥(3)の大きさ又は把握される表面(A)を決定する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項10】
前記測定対象物(2)に接触し、前記測定対象物(2)への定められた位置決めを行うための接触輪郭(11)を有する、ことを特徴とする請求項
1~9のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項11】
前記測定対象物(2)及び決定された前記欠陥(3)の3次元画像を出力する光学出力手段(7)をさらに有し、当該光学出力手段(7)が携帯可能な又は固定の部分に設けられている、ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項12】
前記測定対象物(2)を把握し、画像信号(S2)を前記制御装置(5)に出力するための光学カメ
ラをさらに有し、
前記制御装置(5)は、前記画像信号(S2)及び前記THz測定信号(S1)から、前記測定対象物(2)内の前記欠陥(3)の示された位置、延伸及び/又は形状を有する前記測定対象物(2)の3次元描写を生成する、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載のTHz測定装置(1)。
【請求項13】
測定対象物(2)内の欠陥(3)を決定するTHz測定方法であって、
少なくとも1つのTHz送信機(12)及び複数のTHz受信機(14)を有するアンテナアレー(4)を有するTHz測定装置(1)が、前記測定対象物(2)に向かってTHz送信ビーム(15)を放出し、前記複数のTHz受信機(14)は前記測定対象物(2)から反射したTHz放射線(16)を受信し、これによりTHz測定信号(S1)を生成し、
前記THz測定信号(S1)から、少なくとも一部の受信した反射THz放射線(16)が前記測定対象物(2)の通常の境界表面(2a,2b)の外側で反射されたかどうか決定し、
前記測定対象物(2)内の付加的に決定される境界表面(3a)を欠陥(3)に関連付け
、
-前記アンテナアレー(4)を有する前記THz測定装置(1)の少なくとも携帯可能な部分が、固定の測定対象物(2)に対してユーザにより調節され、
-調節移動が、3つの空間方向において、加速度を測定することで決定され、
-前記固定の測定対象物(2)に対する前記THz測定装置(1)の相対位置が、2度実行される時間積分によって決定され、及び
-前記測定対象物(2)内の検出された欠陥(3)の位置及び延伸が決定され、光学的に表示される、THz測定方法。
【請求項14】
複数の方向に反射されたTHz放射線(16)が
、アンテナアレー(4)の交差したセンサーストリップ(4a,4b)によって検出される、ことを特徴とする請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記THz受信機(14)が一時的にアクティブにTHz送信ビーム(15)を送信し、次いでトランシーバー(12)としての前記THz送信機(12)がTHz放射線を受動的にのみ検出し、
前記THz送信ビーム(15)の交互の切り替えが行われ、アクティブでないTHz受信機(14)又はアクティブでないTHzトランシーバー(12)がそれぞれ前記THz送信ビーム(15)を受動的に検出する、ことを特徴とする請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項16】
前記THz測定信号(S1)の信号振幅(S)の高さ(ΔS)が評価され、信号振幅(S)の高さ(ΔS)か
ら前記欠陥(3)の大きさ又は検出される表面(A)が決定される、ことを特徴とする請求項
13~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記THz測定装置(1)が前記測定対象物(2)の光学画像を把握し、画像信号(S2)を生成し、前記THz測定信号(S1)と前記画像信号(S2)の3次元の関連付けが、前記画像信号(S2)、前記THz測定信号(S1)及
び加速度測定信号(S3)を評価することで実行され、及び
決定された前記欠陥(3)の位置、大きさ及び延伸の3次元描写を有する前記測定対象物(2)の3次元描写が出力される、ことを特徴とする請求項
13~
16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物内の欠陥を検出するTHz測定装置(テラヘルツ測定装置)及びTHz測定方法(テラヘルツ測定方法)に関する。このような測定対象物は、特にプラスチック材料から作られ得るが、一般にTHz放射線を透過させるセラミック、コンクリート又は紙などの別な材料から作られてもよい。欠陥は、特に、空洞(キャビティ)、すなわち製造時に形成される空の穴であってもよいが、やはり亀裂、空隙及び他の材料の含有物、例えば金属破片であってもよい。
【背景技術】
【0002】
測定対象物を測定するTHzでは、測定対象物に向かってTHzトランシーバーから放出されるTHz放射線、特に0.01~10THzの周波数範囲における電磁放射線が利用される。よって、放出される電磁放射線は、特にマイクロ波範囲にあってもよい。測定対象物に発されるTHz放射線は、測定対象物の境界表面で、すなわち異なる屈折率の媒体間での移行の際に部分的に反射される。こうして、部分反射のために、層厚さが決定でき、例えばそれらの境界表面でのエアーポケット(空気溜まり)が検出され得、金属破片がTHz放射線の完全反射によって検出され得る。
【0003】
原則として、THzトランシーバーは、例えば放出されたTHz送信ビーム及び反射されたTHz放射線の直接的な走行時間測定によって光学的に設計されてもよい。さらに、完全に電子的なTHz測定装置が知られており、ダイポールアンテナがトランシーバーとしてTHz放射線を生成し、反射したTHz放射線を受信する。これにより、特に周波数変調が利用されてもよく又はパルスTHz放射線が放出されてもよい。
【0004】
パルスアレー測定装置では、別なTHzレシーバー、例えば受動THzダイポールアンテナが、アクティブ送信THzトランシーバーに接続しており、それによりTHzトランシーバーに対して垂直でなく反射したTHz放射線も検出される。したがって、THzトランシーバーとTHz受信機が互いに同期され、走行時間測定又は周波数変調として距離測定のための送信時間の整合が可能になる。
【0005】
測定対象物が、固定のTHz測定装置、例えば測定管を過ぎて案内される点で、欠陥の決定は、特に、プラスチック管又はプラスチックシートの作成直後に行われる。しかしながら、このような固定のTHz測定装置を用いて固定の測定対象物において、一般に、例えば素材疲労や切り傷を含む欠陥を決定することは殆ど可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、比較的少ない費用で確実な検出を可能とする、測定対象物内の欠陥を検出するTHz測定装置及びTHz測定方法を創出する目的を基礎とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に従うTHz測定装置及びTHz測定方法によって解決される。好ましい更なる発展形態が従属請求項に記載される。THz測定方法は、特にTHz測定装置を用いて実行されるべきである。THz測定装置は、特にTHz測定方法を実行するために提供される。
【0008】
したがって、少なくとも1つのアクティブなTHz送信機及び複数の少なくとも一時的に受動的な(パッシブな)THz受信機を含むTHz測定装置が提供される。これによって、THz送信機及びTHz受信機は、完全に電子的に、すなわちダイポールアンテナとして設計され、よってアンテナアレーを形成する。
【0009】
THz送信機は、特にTHzトランシーバーであってもよく、すなわち組み合わされた送信機及び受信機装置として設計されてもよい。
【0010】
コントローラ装置は、THz測定信号を受信し、測定対象物の通常の境界表面の外側で生じる反射として欠陥を決定する。これは、コントローラ装置がTHz測定信号を受信し、測定対象物の通常の境界表面の外側で生じた反射を決定し、これらを欠陥として評価することを意味する。
【0011】
ゆえに、例えばアンテナアレーの中央に配置されたTHz送信機は、光軸に沿って、特に光軸を取り囲む放出円錐によって、THz送信ビームを放出する。THz放射線は欠陥にて反射され、少なくとも一部はアンテナアレーの方向に反射され、それによりTHzトランシーバー自体として設計されるTHz送信機又はTHz受信機の1つが反射した放射線を受ける。
【0012】
これにより、THz送信機の測定信号は最初に、測定対象物の層厚さ測定を実行するよう機能してもよい。受信機による反射した放射線の入射の様々な時間は、空間内の反射源の角度を決定し、それによりその距離及び位置を決定するために利用され得る。したがって、例えばエアーポケットの場合に存在するであろう欠陥の湾曲表面が、THz送信ビームを波面としてアンテナアレーに向かって反射し、複数のTHz受信機及び場合によってはTHzトランシーバー自体がそれぞれ反射ピークを受信し、それで欠陥の表面の位置及び形状が、走行時間から又は互いに関する相対的な一時的シフトからそれぞれ高精度に既に決定され又は見積もられ得る。このようにして、アンテナアレーは最初に線形センサーストリップとして設計されてもよく、それによりその延伸又は横幅がそれぞれ、検出可能な反射したTHz放射線の角度を決定する。
【0013】
これは、特に複数の隣接するTHz受信機が多数の反射ピークからの概算又は三角測量を可能にするため、欠陥の曲線が非常に上手く再現されるという、付加的な利点をもたらす。
【0014】
別な発展形態によれば、THz受信機は、少なくとも一時的に、送信機としても、すなわち特に一時的にTHzトランシーバーとして機能する。よって、複数のTHzトランシーバーが例えばセンサーストリップとして一緒に並べられたアンテナアレーが形成される。各々のTHzトランシーバーは、その光軸に沿って、好ましくはセンサーストリップと垂直に測定対象物に向かってTHz送信ビームを一時的に放出し、その際、他のTHzトランシーバーはTHz受信機として受動的に機能する。それゆえに、THzアレーは、特にTHzトランシーバーの交互アクティブ操作と交互に操作されてもよい。
【0015】
このようにして、非常に多数の測定信号が得られる、と言うのも、放出円錐をそれぞれ有する、特に平行に放出される異なるTHz送信ビームが測定対象物に向かって送信され、それにより、非常に多数の測定が把握されるからである。それゆえに、湾曲表面は3次元的に空間内に位置してもよい。これにより、別なダイポールアンテナをアクティブなTHzトランシーバーとして一時的に操作するためのハードウェアの観点から付加的な費用が比較的少ない。
【0016】
更なる有利な実施形態が、アンテナアレーの2次元設計によって実現される。これにより、例えばセンサーストリップとセンサーストリップの間に90°の角度を有する、例えば2つの互いに交差したセンサーストリップが利用できる。ここで再び、例えば、中央のダイポールアンテナだけがアクティブなTHzトランシーバーとして使用でき、別なダイポールアンテナが受動的なTHzトランシーバーとして設計され得る。しかしながら、有利には、全てのダイポールアンテナが再び一時的にアクティブなTHzトランシーバーであり、対応的に一時的に受動的なだけである。
【0017】
このような実施形態だけで、欠陥の深さ画像を検出することができる。したがって、例えば一例を挙げると測定対象物をその外側境界面で確実に把握し、測定すること、さらに例えば測定対象物内の空洞などの欠陥の位置、向き及び延伸を把握し、それを例えばディスプレイに、特に接続した計算装置の外部ディスプレイ装置に視覚化することも可能である。したがって、材料内の空洞の位置だけでなく、ボリューム(体積)をも求めることができる。
【0018】
このような2次元アレー装置は、例えば2つの交差したセンサーストリップだけを有してもよい。原則として、アンテナアレーの2次元マトリックスを形成することができる。しかしながら、明らかに、交差したセンサーストリップに比べてフル2次元装置のハードウェアの過度の費用は明瞭な利点を有しない。2つの交差したセンサーストリップだけで、比較的少ない数のダイポールアンテナによる良好な2次元検出が可能になる。
【0019】
別な利点が、加速度計装置、特に加速度の3次元検出のための加速度計との組み合わせにより、すなわち3つの空間方向において、得られる。それで、制御装置は、一方で個々のTHzトランシーバーのTHz測定信号を受信することができ、他方で加速度信号との組み合わせでこれらを評価することができる。よって、加速度信号の時間積分により、空間内の3次元位置が測定信号に割り当てられ得る。
【0020】
特に、ユーザが好ましくは測定装置を操縦し、調節することで、特にそれを測定対象物に沿って案内することで非常に精密な測定を実行できる携帯式THz測定装置を創出することができる。これにより、THz測定装置は少なくともそのアンテナアレーと共に携帯でき、その携帯部分は、ユーザが把持するための、測定対象物の前で様々な位置で位置決めするためのハンドル領域を有する。
【0021】
制御装置は、加速度信号から測定対象物に対するTHz測定装置のそれぞれの3次元位置を決定し、それにより複数の測定信号を地点に関連付けることができる。したがって、THz測定装置があり得る欠陥を検出したとき、ユーザは装置を使用して、疑わしい領域をより徹底的に測定し、例えばTHz測定装置を並進的に調節し又はそれを回転・旋回させ、さらなる測定信号を捕えることができる。ゆえに、空洞は、一旦検出された際、その表面の湾曲(曲率)の正確な検出を含めて次により正確に把握され、それで向き及び体積も正確に把握される。したがって、交差したセンサーストリップから作られた、装置を操縦するのが簡単且つ容易なアレーに、より費用のかかる高価な2次元マトリックス装置のように、適切な数の測定信号を供給させることも可能である。
【0022】
更なる発展形態によれば、光学カメラ、特にRGBカメラが測定装置に付加的に取り付けられてもよく、それにより制御装置により評価され、組み合わされる付加的な画像信号を供給する。したがって、特に接続した表示装置に、画像信号に対応する測定対象物の画像を表示し、またTHz測定信号から集められた補充情報を用いてそれを増大することが可能である。
【0023】
このような画像を用いて、一方の側面からのみ測定対象物を測定したときでも、例えば前側及び後側を表示することができる、というのもこれらの境界面がTHz放射線によって確実に決定できるからであり、またさらにユーザが例えば欠陥の位置及び大きさを示すマーカーをワークピースに配置できるように欠陥の位置及び配置を表示することができる。
【0024】
ゆえに、測定装置の移動は測定不正確を生じず、他の空間位置からの更なる測定として評価され得る、欠陥のより正確な決定のために利用される更なる測定情報をもたらす。
【0025】
さらに、THz測定信号の振幅を評価し、欠陥の測定ピークの振幅の高さを決定し、それを欠陥の大きさ又は面積(表面領域)に割り当てることも可能である。したがって、例えば欠陥の面積を、特にTHz測定装置の複数の旋回向きにおける測定によっても決定することができる。
【0026】
したがって、ワークピースの完全な3Dモデルを、その境界面、形成及びその欠陥の延伸範囲も含めて模倣し、ディスプレイに可視化することもできる。
【0027】
例えば、プラスチック管やプラスチックシートなどのプラスチック商品の押し出し成形での適用に加えて、測定装置は、特に後続の材料試験において利用され得る。したがって、風力エネルギー設備のロータは、携帯式測定装置を用いて静的測定対象物として確実に正確に測定され得る。特に、ヘアークラック及び剥離を欠陥として、例えばヘアークラック及び剥離内のエアーポケットを介して検出し、その大きさを決定することができる。さらには、パイプ破裂を外側から検出できる。また、例えば金属管がプラスチック環境やせっ器環境において把握され得る。
【0028】
本発明を、或る実施形態によって添付の図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】1つの測定平面に表された第1実施形態に従う測定装置を用いた測定対象物の測定を示す図である。
【
図2】実施形態に従うTHz測定装置を用いた測定対象物の3次元測定の斜視図である。
【
図3】付加的なRGBカメラを備えた別な実施形態に従う測定装置を用いた測定対象物の測定の斜視図である。
【
図4】空洞を有する測定すべきいびつな(不規則な)測定対象物の例を示す図である。
【
図5】携帯式測定装置を用いて測定対象物としての壁の測定を示す図である。
【
図6】THz測定信号の信号図表の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1によれば、THz測定装置1が、例えばセラミック材料やせっ器材料で作られた固定の測定対象物2を測定するために提供される。測定対象物2は、境界面2a,2b、例えば前側2a及び後側2bを有する。
図1に示すように、測定対象物2内に、例えば外側から見えない空洞(空スペース)又は亀裂及び空隙として欠陥3が、例えば、前側からユーザに直接見えない後側2bに形成され得る。
【0031】
THz測定装置1はアンテナアレー4を具備し、さらに制御装置5、内部メモリー6及び出力手段7を具備している。出力手段は、例えば、測定対象物2及び欠陥3を視覚化するための光学表示手段7であってもよく、及び/又は例えば欠陥3が検出されると信号を出力する音響ディスプレイであってもよい。
【0032】
さらに、有利には、THz測定装置1は、
図5に示されるユーザが把持するためのハンドル領域8、アクチュエータ手段9、前端領域10、境界面、すなわち測定対象物2の前側2a及び場合によっては後側2bに接触する接触輪郭11又は輪郭線を有する。
【0033】
図1の実施形態によれば、アンテナアレー4が、主として、ダイポールアンテナとして設計され、その光軸Aに沿ってTHz送信ビーム15を放出する中央トランシーバー12を備えた送信機として備えられている。アンテナアレー4はさらに、対応的にダイポールアンテナとして設計された、測定対象物2から反射したTHz放射線16を検出する複数の受信機14を有する。トランシーバー12及び受信機14は互いに又は制御装置5を介してそれぞれ同期され、それで送信時間と受信時間が比較され得る。
【0034】
THzトランシーバー12は、一般に0.01THz~10THzの周波数範囲内で特に周波数変調された又はパルス化されたTHz放射線を放射するが、直接的な走行時間測定も可能である。こうして、THz送信ビーム15は光軸Aに沿って測定対象物2に向かって放出され、境界表面2a,2bにて部分的に反射され、光軸Aが境界表面2a,2bと垂直に位置決めされたとき、距離を、特に互いに関する境界表面2a,2bの距離として測定対象物2の厚さdを測定する。
【0035】
図6は、測定の信号図表を例示的に示す。ここで、信号振幅Sが時間tの関数として描かれており、THz送信ビーム15が前側境界表面2aに入る際に第1の測定ピークP1が決定され、後の時間t4にて、THz放射線が後側境界表面2bを出る際に測定ピークP4が決定される。したがって、時間領域におけるこの測定によって、それ自体公知な方法で、時間差t4~t1を測定対象物2の厚さdに関連付けることが可能である。測定及び評価が周波数変調を用いて同様の方法で実行されてもよい。
【0036】
放射線が光軸Aに対して傾斜して放出されるように、THzトランシーバー12は、光軸Aのまわりの放射線円錐内でTHz送信ビーム15を放出し、それはTHzトランシーバー12自体において境界表面2a,2bでの光軸Aの垂直位置決めに対応する測定信号を生じない。しかしながら、THz送信ビーム15は様々な方向に、例えば欠陥として描かれた空洞3の湾曲表面3aなどの特に不規則な境界表面で反射され、それにより一例を挙げると、THzトランシーバー12自体及びさらに少なくとも1つ又は複数のTHz受信機14も、境界表面2a,2bから反射されなかった反射THz放射線16を受信する。
【0037】
図3では、例えば鋳造工程にて生じる空洞が欠陥3として示されている。例えば
図5によれば、欠陥3が、プラスチック材料内のヘアークラック又は剥離として生じ得、またそれ自体が再び、付加的に形成される境界表面のために、すなわち特にエアーポケットとして検出され得る。
【0038】
図6では、例として、欠陥3への入射時及びそこからの出射時に生成される測定ピークP2及びP3が、時間t2及びt3にて描かれている。欠陥の厚さ、すなわちTHz送信ビームの方向における延伸は、時間差t3-t2から生じる。測定対象物2における欠陥3の位置が、境界表面2a及び2bまでの距離によって、すなわち時間差t4-t3により並びにt2-t1に従って決定され得る。さらに、好ましくは、信号振幅Sの高さも評価され得、信号振幅の高さΔSは表面延伸又はTHz送信ビームに垂直な欠陥の大きさとして評価できる。
【0039】
最初に、欠陥3のまだ正確でない位置が個々の受信機14の測定信号から決定され、さらに同様にその大きさ及び形状は決定されない。最初に、THz送信ビーム15の及び受信機14に戻る反射THz放射線16の経路としてTHz放射線の全走行時間が決定され、それにより、測定信号の反射ピークのために、反射が生じた位置は一般に楕円内にあり、当該楕円の焦点がTHzトランシーバー12及びTHz受信機14によって決定される。中央トランシーバー12及び複数の隣接するTHz受信機14を備えた線形アンテナアレー4によって、複数の測定信号を捕えることができ、それにより欠陥3の進路・方向が大まかに見積もられる。
【0040】
図1に従うアンテナアレー4は有利には、1つのアクティブなTHzトランシーバー12を有するだけではない。むしろ、それは複数のTHzトランシーバー12を有してもよく、有利にはTHz受信機14は一時的にトランシーバーとして設計されてもよい。したがって、例えば、ダイポールアンテナのうちの1つが常にアクティブとなり、THz送信ビーム15を出力する一方で、他のダイポールアンテナが反射THz放射線16を受動的に受信するように、THzトランシーバー12のアクティブな機能が交互に切り替えられてもよい。したがって、
図1は、例としてTHz送信ビーム15を放出する第2のTHzトランシーバー12を描いている。
【0041】
それゆえに、アクティブなTHzトランシーバー12自体の交互機能を有するアンテナアレー4のこのような設計によって、THz送信ビーム15が様々な方向及び角度から測定対象物2及び欠陥3に対して照射され得、反射放射線16がそれぞれ異なって位置決めされた受動受信機によって対応的に検出され得、それで
図1に示す平面内で、空洞3の境界表面3aのより優れた測定が可能になる。
【0042】
これにより、THzトランシーバー12から出発して空気又は環境を通るTHz送信ビーム15が最初に、第1の境界表面、すなわち前側2aに到達し、ここで例えば2~5%の一部の少ない強度が反射され、大部分が測定対象物2に入り込む。したがって、キャビティが欠陥3として存在するとき、THz送信ビーム15の一部が、例えば含有物としての内側ガス又は空気を取り囲むその境界表面3aで再び反射され、それによりTHz放射線16が反射して戻され、適切に位置決めされたTHz受信機14によって検出され得る。さらに、THz送信ビーム15はまた、空洞に入り込み、空洞の裏側で、すなわち空洞3から測定対象物2の材料への再入射時に部分的に反射され、それでここでもTHz放射線16が反射される。したがって、このような測定により、空洞3の前領域だけでなく、後領域も把握でき(カバーでき)、複数の反射が一般にかなり弱く、それで境界表面が直接検出できる。
【0043】
図2の設計によれば、有利には、アンテナアレー4は線形であるだけでなく、2次元の延伸を有している、すなわち2次元アンテナアレーとして設計されている。そのために、
図2によれば、2つの線形設計、すなわち2つの平行でないセンサーストリップ4a,4bであって、好ましくは互いに対して90°の角度αで指向していてそれにより例えば中央THzトランシーバー12を有する平面を生成するセンサーストリップが備えられてもよい。こうして、中央ダイポールアンテナだけがアクティブなTHzトランシーバー12として設計される場合、別なTHz受信機14が2次元で又は2つの方向で検出でき、それにより対応的に欠陥3の境界表面3aの3次元の把握が既に可能になる。したがって、これが欠陥3の深領域画像を創出する。
【0044】
図2の実施形態でも、有利には、それぞれのセンサーストリップ4a,4bのダイポールアンテナはそれぞれアクティブであってもよく、またそれぞれTHzトランシーバー12としてTHz送信ビーム15を出力し得、またそれぞれ純粋なTHz受信機14として反射放射線16を受動的に受信し得る。したがって、それぞれ、THzトランシーバー12として単一のダイポールアンテナがアクティブに送信でき、また別なダイポールアンテナが受動的な受信機14として機能できる。
【0045】
測定対象物2の3次元画像及び測定対象物2における欠陥3の位置、すなわち欠陥3の相対位置、その延伸及び大きさを生成するために、このようにして得られるTHz測定信号S1が、制御装置5によって対応的に評価される。
【0046】
さらに、
図2によれば、好ましくはどんな加速度も把握するために3つの空間方向における加速度をカバーする加速度計18がさらに設けられてもよい。したがって、ユーザがTHz測定装置1を操縦し、動かすとき、加速度計18は3つの空間方向における加速度を測定でき、それで加速度信号S3が制御装置5において時間的に積分される。加速度計は、並進加速又は回転加速をも測定できる。したがって、THz測定装置1の並進調節及び回転運動又は旋回移動が把握される。
【0047】
したがって、ユーザはTHz測定装置1を操縦し、動かし、測定を連続的に実行でき、それで制御装置5は測定信号1を、THz測定装置の及びそれによりアンテナアレー4の現在位置に常に割り当てることができる。したがって、静止した測定対象物2を想定して、測定の精度がTHz測定装置1を操縦することで増加される、というのも継続した測定が複数の測定位置及び複数の旋回位置から実行されるからである。
【0048】
したがって、測定対象物2の及びその欠陥3の正確な3次元の把握が可能になる。したがって、測定対象物2全体及びその欠陥3は、例えば対応する図式的な3次元描写として出力手段7に表示できる。そのために、出力手段7は携帯式THz測定装置1の外側に設けられてもよい。あり得る欠陥3が出力手段7に表示されたとき、ユーザは対応的にTHz測定装置1を再調節することができ、又はそれをその位置に調節し、例えば適切な領域を走査することで測定データの精度を増加させることができる。
【0049】
図3の実施形態によれば、THz測定装置1は、光学カメラ、例えばRGBカメラであって、対応的に光軸Aの周りでTHz測定装置1の前の環境領域を把握し、信号S2を供給するカメラをさらに有してもよい。したがって、制御装置5はTHz測定信号S1及び画像信号S2を受信し、それらを加速度信号S3と一緒に処理し、また欠陥3のシミュレーションされた又は表示された位置、寸法、延伸及び場合によっては体積と共に、例えば厚さdなどの情報を含めて、測定対象物2のグラフ・描写を出力手段7に表示することができる。
【0050】
したがって、ユーザは欠陥3の位置を測定対象物2の外側表面2aに標示することができる。
【0051】
ユーザは、特に、静止した測定対象物2を外側から走査し、把握することができる。測定対象物2の湾曲した外側表面でさえ、例えば
図4に示されるような及び例えば動翼(ロータブレード)に存在し得る不規則な外面でさえ、THz測定装置1による対応する操縦及び走査によって把握され得る。その際、欠陥3が検出でき、次いでより正確に走査され、評価され、表示され得る。
【0052】
THz測定装置1は、その輪郭線11を用いて外側表面2aに位置決めされ得る。さらに、THz測定装置1は、測定対象物2から距離を置いて保持されてもよく、また欠陥3のより良好な把握を可能にするために旋回されてもよい。
【0053】
図3に示されるように、空洞は欠陥3として検出され得る。さらに、素材疲労により
図5に従って生成される多孔性及び亀裂、特に境界表面におけるヘアークラック又は剥離が欠陥として決定され得る。さらに、例えばTHz放射線15を直接反射する収容された金属破片も検出され得る。
【符号の説明】
【0054】
1 THz測定装置
2 測定対象物
2a 測定対象物2の前側
2b 測定対象物2の後側
3 欠陥、空洞
3a 湾曲表面、空洞3の境界表面
4 アンテナアレー
4a,4b アンテナアレー4のセンサーストリップ
5 制御装置
6 内部メモリー
7 出力手段、例えば表示手段
8 ハンドル領域
9 アクチュエータ手段
10 前端領域
11 接触輪郭又は輪郭線
12 THzトランシーバー
14 THz受信機
15 THz送信ビーム
15a 放出される放射線の円錐
16 反射THz放射線
18 加速度計
20 光学カメラ(RGBカメラ)
A 光軸
d 測定対象物2の厚さ
S THz測定信号S1の振幅
S1 THz測定信号
S2 RGBカメラ20の画像信号
S3 加速度計18の加速度測定信号
t1,t2,t3,t4 時間
P1,P2,P3,P4 測定ピーク