(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】充填シート、および関連する充填パックアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F28F 25/08 20060101AFI20221110BHJP
F28C 1/06 20060101ALI20221110BHJP
B01J 19/32 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F28F25/08 A
F28C1/06
B01J19/32
(21)【出願番号】P 2021529796
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 US2019063692
(87)【国際公開番号】W WO2020113064
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520417263
【氏名又は名称】ブレントウッド・インダストリーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BRENTWOOD INDUSTRIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】バート、アディティア
(72)【発明者】
【氏名】キューリック,フランク エム,ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】リングル,ルーク
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特公昭62-043120(JP,B2)
【文献】実公昭58-054161(JP,Y2)
【文献】特開平03-004934(JP,A)
【文献】特公平03-038520(JP,B2)
【文献】特公昭52-045667(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 25/08
B01J 19/30 - 19/32
F28D 1/00 - 13/00
F28C 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填パックであって、冷却塔に挿入されて前記充填パックを流れる冷却媒体を冷却するように用いられ、
前記充填パックは、
吸気縁、排気縁、および、前記吸気縁と前記排気縁との間において延びた気流軸を規定する第1充填シートであって、前記第1充填シートが、第1入口端および第1出口端を有する第1みぞ区間を規定し、前記第1みぞ区間が、前記第1入口端と前記第1出口端との間において延びた、第1山部、第1谷部、および第2谷部をさらに有する、前記第1充填シートと、
第2入口端、第2出口端、および前記第2入口端と前記第2出口端との間において延びた第2山部を規定する第2充填シートであって、前記第2山部が、前記第1山部に向いて、前記第1谷部および前記第2谷部によって規定された谷部平面を越えて、前記第1みぞ区間に延びており、前記第1入口端が前記第2入口端に近接して配置されており、前記第1出口端が前記第2出口端に近接して配置されており、前記第1山部、前記第2山部、前記第1谷部、および前記第2谷部が第1みぞ気流部を規定し、前記第2山部が前記第1山部に対して横方向に移動することによって、前記第1みぞ気流部の断面形状が前記第1みぞ気流部に沿って連続的に修正され、空気が第1入口端と第2入口端と第1出口端と第2出口端との間において気流方向に流れるときの前記第1みぞ気流部の流動性(flow property)も前記第1みぞ気流部に沿って連続的に修正される、前記第2充填シートと、
を備える、
充填パック。
【請求項2】
前記第1山部は前記気流軸と実質的に平行して延びており、前記第2山部は前記第1山部に対して第1みぞ部角度をなして延びている、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項3】
前記第1みぞ部角度は約2度から5度である、
請求項2に記載の充填パック。
【請求項4】
前記第1みぞ気流部は、前記第1入口端と前記第2入口端と前記第1出口端と前記第2出口端との間において弧状に延びている、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項5】
前記第1入口端に配置された第1スペーサと、
前記第1出口端に配置された第2スペーサであって、前記第1スペーサおよび前記第2スペーサが第1平坦部および第2平坦部の上に配置されており、前記第1平坦部および前記第2平坦部がシート平面を規定し、前記第1山部の少なくとも一部が前記シート平面からのオフセット距離を規定する、前記第2スペーサと、
をさらに備える、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項6】
前記第1みぞ区間は第1みぞ区間長さを有し、前記第1みぞ空間長さは約4インチから8インチである、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項7】
前記第2山部は、前記第1山部において前記第1入口端および前記第2入口端に近接した第1側に配置されており、前記第1山部において前記第1出口端および前記第2出口端に近接した第2側に配置されている、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項8】
前記第1充填シートおよび第2充填シートは第1みぞを規定し、前記第1みぞは第1みぞ部を含む、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項9】
前記第1みぞは、第2みぞ部および第3みぞ部を含む、
請求項5に記載の充填パック。
【請求項10】
前記第1みぞは、第4みぞ部、第5みぞ部および第6みぞ部を含む、
請求項9に記載の充填パック。
【請求項11】
前記第1充填シートおよび第2充填シートは、第1みぞおよび第2みぞを規定する、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項12】
前記第1充填シートおよび第2充填シートは、第3みぞ、第4みぞ、第5みぞ、および第6みぞを規定する、
請求項1に記載の充填パック。
【請求項13】
充填シートであって、冷却塔に挿入されて前記充填シートの上を流れる冷却媒体を冷却するように用いられ、
前記充填シートは、
吸気縁と、
前記吸気縁に対向して配置された排気縁と、
前記吸気縁から前記排気縁へ延びた複数のみぞであって、気流軸が前記吸気縁と前記排気縁との間において延びており、横軸が前記気流軸と実質的に垂直して延びており、前記充填シートは、空気が前記吸気縁から前記排気縁へ複数のみぞを沿って流れ、水が前記排気縁から前記吸気縁へ流れるように、方向づけられ、前記複数のみぞが第1みぞ区間を含み、前記第1みぞ区間が、第1山部、第1入口端および第1出口端を有し、第1みぞベクトルを規定し、前記みぞベクトルは、前記第1山部の接線に沿って延びた線によって構成されており、前記第1入口端と前記第1出口端との間において連続的に変化する、前記複数のみぞと、
前記複数のみぞ上に形成された微細構造であって、前記微細構造が、前記横軸に対する微細構造角度を規定し、前記微細構造角度が、前記第1みぞ区間において前記複数のみぞの移動方向または通路方向から独立しており、前記微細構造が、前記第1入口端と前記第1出口端との間において前記第1みぞ区間にある前記第1山部にわたって延びており、前記微細構造は、前記微細構造の微細波形構造の方向にある水流を生成することによって、水が前記複数のみぞの内部におよびその間において再分配されるために提供され、前記微細構造角度が前記第1みぞベクトルから独立した、前記微細構造と、
を備える、
充填シート。
【請求項14】
平坦部は前記吸気縁と前記排気縁との間に規定され、前記平坦部はシート平面を規定し、前記平坦部および微細構造山部はオフセット距離を規定する、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項15】
前記微細構造角度は約15度から45度である、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項16】
前記第1みぞは、前記第1入口端と前記第1出口端との間において弧状をなしている、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項17】
前記オフセット距離は約0.025インチから0.5インチである、
請求項14に記載の充填シート。
【請求項18】
前記微細構造は微細構造高さを規定し、前記微細構造高さは約0.04インチから0.1インチである、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項19】
前記複数のみぞは、第1シートみぞ、第2シートみぞ、第3シートみぞ、第4シートみぞ、第5シートみぞ、および第6シートみぞを含む、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項20】
前記吸気縁、前記排気縁、前記複数のみぞ、および前記微細構造は、高分子材料で一体的に形成されたように構成されている、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項21】
前記複数のみぞはみぞサイクルを規定し、前記みぞサイクルは約1.5インチから4インチである、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項22】
接合部は前記平坦部から延びている、
請求項14に記載の充填シート。
【請求項23】
前記第1山部は弧状である、
請求項13に記載の充填シート。
【請求項24】
充填シートであって、冷却塔に挿入されて前記充填シートの上を流れる冷却媒体を冷却するように用いられ、
前記充填シートは、
吸気縁と、
前記吸気縁に対向して配置された排気縁と、
前記吸気縁から前記排気縁へ延びた複数のみぞであって、気流軸が前記吸気縁および前記排気縁を通って延びており、横軸が前記気流軸と実質的に垂直して延びており、前記複数のみぞが第1みぞ区間を含み、前記第1みぞ区間が第1吸気縁と第1排気縁との間において延びており、前記第1みぞ区間が第1弧部および第2弧部を含み、前記第1弧部が前記気流軸の第1側において延びており、前記第2弧部が前記気流軸と対向の第2側において延びている、前記複数のみぞと、
第1スペーサ列および第2スペーサ列を含む複数のスペーサ列であって、前記第1スペーサ列が前記第2スペーサ列よりも前記吸気縁に近い位置に配置されている、前記複数のスペーサ列と、
前記複数のみぞ上に形成されており、前記横軸に対する微細構造角度を規定
し、前記微細構造角度が、前記第1みぞ区間において前記複数のみぞの移動方向または通路方向から独立した、微細構造と、
を備える、
充填シート。
【請求項25】
前記複数のスペーサ列は排気スペーサ列を含み、前記排気スペーサ列は前記排気縁に配置されている、
請求項
24に記載の充填シート。
【請求項26】
前記複数のスペーサ列は複数の平坦部および複数の接合部を規定する、
請求項
24に記載の充填シート。
【請求項27】
前記第1スペーサ列は吸気スペーサ列からなり、前記第2スペーサ列は中間スペーサ列からなる、
請求項
24に記載の充填シート。
【請求項28】
前記第1スペーサ列は中間スペーサ列からなり、前記第2スペーサ列は排気スペーサ列からなる、
請求項
24に記載の充填シート。
【請求項29】
前記第1スペーサ列は中間スペーサ列からなり、前記第2スペーサ列は別の中間スペーサ列からなる、
請求項
24に記載の充填シート。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2018年11月27日に出願されて名称が「Fill Sheets and Related Fill Pack Assemblies」である米国仮出願第62/771858号に基づく優先権を主張する。この出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
冷却塔のマーケットは、効率も費用効果もよい充填媒体へ着々と移している。充填媒体、充填材、充填パック、またはバッフルは一般的には、流路またはみぞを有する高分子シートのアセンブリから構成されている。当該流路またはみぞは、接合されたシートまたは略平行に配置されたシートの間に形成されており、空気または水がそれらを通って冷却塔内を流れる。充填媒体によって、冷却塔の流れる水および空気に露出する表面積が増加し、よって、冷却塔内の空気および水の間の重要な接触および相互作用が促進され、よって熱交換が促進される。この相互作用によって、主には空気および水の間の物質移動によって、水の冷却効果が達成されるが、ある程度の顕熱移動も生じ得る。充填媒体が冷却塔の重要な部品であるため、企業は、冷却塔および充填材のマーケットで競争力を維持するために、高い冷却塔性能を有して費用効果がよい製品を目指す。
【0003】
一般的には、充填媒体のコストは、特定の冷却塔応用に対して充分な熱性能を有する、かつ、充填媒体アセンブリを構成するための少量で個別のシートからなる充填媒体の製品を作ることによって低減され得る。単位充填量当たりのシートの低減により、材料の節約、および、より少ない充填パックの形成時間および組み立て時間が可能となり、よって、全体的な製品コストを低減することができる。
【0004】
冷却塔の性能は一般的には、塔が特定の設計条件下で特定の動作温度に冷却できる水の量によって測られる。このような冷却の大半は、充填媒体において、充填媒体を通って流れる水と充填媒体を通って流れる空気とが混合する場所で行われる。水から周囲空気への熱交換の主な形式は蒸発を介して行われる。塔内の大量の水から、少量の水が蒸発する。この量の水の蒸発によって、大量の水から、蒸発熱に等しいエネルギーが持っていかれて、残りの水が冷却される。充填媒体内の表面積が大きいほど、蒸発速度が増加することが一般的に理解されている。したがって、単位体積あたりの表面積が大きい充填材は一般的には、単位体積あたりの表面積が小さい充填媒体または充填パックよりも、充填媒体または充填パックを通って流れる水を冷却するのにより効果的である。
【0005】
水から空気への蒸発は、空気が保有できる水蒸気の量によって制限されている。空気が水蒸気で飽和に近づくほど、蒸発速度が低下する。すなわち、高い蒸発速度を維持するために、塔を通って質量流量が高い空気および充填媒体が必要となる。冷却塔において、蒸発速度の維持は一般的には、ファンの助力、または空気を充填媒体もしくは充填パックに通らせることによって達成される。自然通風システム(natural draft system)は、塔内外の空気密度の差によって生じた電流に基づくものである。従来の塔においてファンによって駆動される空気は、充填媒体または充填パック内の空間または流路を通って流れる強制空気の作用による抵抗に直面する。当該抵抗は、充填媒体の入口側から充填媒体の出口側までの気流として、充填媒体をわたって生じる圧力低下によって特定できる。充填媒体において比較的に大きい圧力低下を克服するために、一般的には、比較的に低い圧力低下の克服よりも、高出力を有するファンの利用を必要とする。効果的な充填パックは、出来る限りに小さい圧力低下で特定の冷却効果を達成することに対して役に立つ。言い換えると、好ましいパックは、空気の入口側と空気の出口側との間において高い熱性能および低い圧力低下値を有するものである。
【0006】
一般的に、充填媒体または充填パックは波状シートのアセンブリから構成され、当該波状シートは接合され充填媒体または充填パックを形成する。波状シートにおいて大きくて主要な波状構造(corrugation)は「みぞ」(flute)またはマクロ構造(macrostructure)と呼ばれている。シート内のみぞによって、シートの表面積が増加し、シート上の水は薄膜を形成し、よって、波状構造またはみぞを通って流れる空気に露出する水の表面積が増加する。また、みぞによって、充填媒体または充填パックの吸気端から排気端までのみぞに沿って充填パックを通って流れる空気のための流路が形成する。例えば、吸気端と排気端との間の直線的な流れ方向から30度をなしたみぞによって、空気は、みぞとほぼ同じ方向に流れ、または、みぞに案内され、概ねみぞに沿って通って流れる。当該直線的な流れ方向は、一般的には直交流式みぞ(cross-fluted)の充填パックにおいて、充填媒体または充填パックの垂直方向/垂直軸であってもよい。すなわち、みぞ幾何構造は、パックを通って流れる空気に作用する。このみぞの特性は、必要なところへ空気を送ることにも、一対のみぞ内および充填パック内の気流の混合を増加させることにも用いられる。よって、飽和が回避される、または、空気が流通される。
【0007】
一般的に、微細構造(microstructure、ミクロ構造)はみぞに加えて、充填媒体または充填パックの表面積をさらに増加させる。充填媒体または充填パック上に、水が薄膜を形成してみぞを通って流れる空気と相互作用する。また、みぞにある微細構造によって、一定の流量である状態または変化する状態でみぞを流れる水の薄膜を維持するため、流れる空気に近く露出する水の薄膜は連続的に変化して熱交換を促進する。微細構造によって生じる水膜での絶えない混合は、熱いコーヒーを混ぜると混ぜない場合よりも早く冷却できることと同様に、液膜の冷却速度を増加させる。また、微細構造は、表面上の水の分配の維持のために提供され、みぞおよびマクロ構造の幾何構造によって提供された利用可能な表面積のすべてに有利である。
【0008】
しかしながら、充填パックのみぞとみぞにおける微細構造とを一体化するのは、気流の抵抗が増加することを原因として、充填パックの入口端または吸気端と出口端または排気端との間の圧力低下が増加するという望ましい効果をもたらし得る。冷却塔の一般的な運転条件の下で熱効果を促進し圧力低下を制限するような、充填パックに組み立てられる充填シートの設計、開発および配置が望ましい。本発明の好ましい実施例は、充填パックを通って流れる空気とみぞに沿って流れる空気との間の熱交換を促進するように、充填パックにおいて充填シートを互いに対して配置するによって、従来の充填シート及び関連する充填パックアセンブリの欠点を改善する。
【発明の概要】
【0009】
要するに、充填パックは第1充填シートを含み、第1充填シートは、吸気縁(air intake edge)、排気縁(air exit edge)、および、吸気縁と排気縁との間において延びた気流軸を規定する。第1充填シートは、第1入口端および第1出口端を有する第1みぞ区間(first flute section)を規定する。第1みぞ区間は、第1入口端と第1出口端との間において延びた、第1山部、第1谷部、および第2谷部をさらに有する。第2充填シートは、第2入口端、第2出口端、および第2入口端と第2出口端との間において延びた第2山部を規定する。第1入口端は第2入口端に近接して配置されており、第1出口端は第2出口端に近接して配置されている。第1山部、第2山部、第1谷部、および第2谷部は第1みぞ気流部(first flute airflow portion)を規定する。第1みぞ気流部の断面形状は第1みぞ気流部に沿って連続的に変化する。任意の特定みぞに対して、第1みぞ気流部の断面形状は原則的には、気流軸と実質的に垂直して画定された平面の領域からなる。当該気流軸は隣接するまたは積み重ねた一対の充填シートの間にある。当該一対の充填シートは、第1シートみぞの波状のマクロ構造、および、2つのみぞ谷部を接合するみぞラインによって囲まれている。好ましい実施例において、第2充填シートの山部は、近隣のみぞ気流部まで延びており、第2充填シートの山部の長さ方向に沿って第1充填シートの山部に対する相対位置が連続的に変化し、みぞ区間の入口端および出口端でスペーサ列または接合部の列の間のみぞ気流部において、第2充填シートの山部の断面形状が連続的に変化する。第1山部は第2山部に対して延びており、よって、第1みぞ部は、第1入口端と第2入口端と第1出口端と第2出口端との間において連続的に変化して、または、みぞの通路をわたって位置する接合部もしくはスペーサの間のすべてのみぞ区間にわたって連続的に変化する。
【0010】
別の態様において、本発明の好ましい実施例は、シート上に流れる媒体を冷却するための充填シートに対するものである。充填シートは上縁と複数の突起とを含む。当該複数の突起は、上縁に近接する第1山部突起を含み、上縁は第1ベースを有する。上平坦部は第1ベースに隣接して規定される。上平坦部は上シート平面を規定する。複数のみぞは、充填シートの上縁から底縁へ延びている。縦軸は上縁および底縁を通って延びており、横軸は、縦軸と実質的に垂直して延びており、かつ、上シート平面と実質的に平行して延びている。複数のみぞは第1みぞを含み、第1みぞは、第1山部突起と近接する第1上方みぞ端を有する。帯状に構成された微細構造はみぞ上に形成されている。微細構造は、第1みぞ上に、上縁と底縁との間において微細構造山部を規定する。上平坦部および微細構造山部は上オフセット距離を規定する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明の好ましい実施例は、冷却塔に挿入されてシート上に流れる冷却媒体を冷却するための充填シートに対するものである。充填シートは、吸気縁と、吸気縁に対向して配置された排気縁と、複数のみぞとを含み、複数のみぞは吸気縁から排気縁へ延びている。気流軸は上縁および底縁を通って延びており、横軸は気流軸と実施的に垂直して延びている。複数のみぞは第1みぞ区間を含む。第1みぞ区間は、気流軸の第1側において延びた第1弧部と、気流軸の対向の第2側において延びた第2弧部とを含む。充填シートは複数のスペーサ列をさらに含む。スペーサ列は吸気スペーサ列と中間スペーサ列とを含む。吸気スペーサ列は吸気縁に配置されており、中間スペーサ列は第1弧部と第2弧部との間に配置されている。充填シートは、複数のみぞ上に形成された微細構造をさらに含む。微細構造は横軸に対する微細構造角度を規定する。
【0012】
前述した概要、および後述する発明についての詳細説明は、添付図面に合わせて読むことによってよりよく理解される。発明の例示という目的のために、現に好ましい実施例は図面に示されている。しかしながら、本発明は示された配置及び手段そのものに限られないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施例に係る充填シートの正面立体図
【
図2】本発明の第2の好ましい実施例に係る充填シートの正面立体図
【
図3】
図2における充填区間または充填パックの平面図
【
図3A】
図3における充填区間または充填パックの側面図
【
図3B】
図2内の領域3Bから切り取った、2つの充填シート、充填区間、または充填パックにおいて近隣するみぞ山部ペアの形状を表す正面立体図
【
図3C】
図3B内の2つの充填シート、充填区間、または充填パックにおける単一のみぞ山部ペアの形状を表す正面立体図
【
図4】
図2の第2の好ましい実施例において2つの充填シートを含む充填パックの正面立体図
【
図4A】
図4の充填パックの第1充填シートと第2充填シートとの間に規定される第1みぞ気流領域を表す、
図4における線4Aに沿った断面図
【
図4B】
図4の充填パックの第1充填シートと第2充填シートとの間に規定される第1みぞ気流領域を表す、
図4における線4Bに沿った断面図
【
図4C】
図9の充填パックの第1充填シートと第2充填シートとの間に規定される第1みぞ気流領域を表す、
図4における線4Cに沿った断面図
【
図5】本発明の第3の好ましい実施例に係る、2つのシート充填パックの正面立体図
【
図6】本発明の第3の好ましい実施例に係る、9つのシート充填パックの正面立体図
【
図7】
図5の第3の好ましい実施例の充填シートに係る充填パックの正面立体図
【
図7A】
図7内の領域7Aから切り取った、
図7の充填パックの第1充填シートおよび第2充填シートの山部の方向を表す正面立体図
【
図7B】
図7内の領域7Bから切り取った、
図7の充填パックの第1充填シートおよび第2充填シートの山部の方向を表す正面立体図
【
図7E】
図7の充填パックの第1充填シートの第2みぞを表す拡大正面立体図
【
図8】
図5の第3の好ましい実施例の充填パックの平面立体図の一部
【
図8A】
図8内の領域8Aから切り取った、
図8の充填パックの一部の拡大平面立体図
【
図9】
図5の第3の好ましい実施例の充填パックの平面立体図の別の一部
【
図9A】
図9内の領域9Aから切り取った、
図9の充填パックの一部の拡大平面立体図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において特定の用語は、便宜上のためにだけ使われ、制限のために使われることはない。特に明言する場合を除いて、「一」、「1つ」、「前記」は、1つの要素に制限されず、代わりに「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。「右」、「左」、「下」、および「上」という用語は、参照される図面内の方向を示す。 「内向き」または「遠位」、および「外向き」または「近接」という用語は、装置、器具およびそれらの関連部品の、幾何学的中心または方向に向く方向、当該および当該幾何学的中心または方向から離れる方向を、それぞれに指す。用語は、上述した単語、その派生語、および同様の意味の単語を含む。
【0015】
理解されるべきなのは、発明の要素の寸法または特性を参照するときに本明細書で使用される「約」、「略」、「ほぼ」、「実質的に」および類似な用語は、説明された寸法/特性について厳密な限界またはパラメータを指すことではなく、当業者に理解されるように、当該寸法/特性からなる機能的に同一または類似な小さい変化を排除するものではない。最低限には、数値パラメータを含むこのような参照は、本技術分野において容認されている数理および産業的原則(例えば、丸め(rounding)、測定誤差または他の系統誤差、製造公差)を用いて、最下位桁(least significant digit)を変化させない変化を含む。
【0016】
図1、
図1A、
図3および
図3Aを参照すると、本発明の第1の好ましい実施例は、原則的に参照番号10で指す充填シートに対するものである。当該充填シートは、比較的に薄い高分子材料で構成され、冷却塔の充填媒体または充填パックに組み立てるためのものである。当該充填媒体または充填パックは原則的に参照番号50’で指す。充填媒体または充填パックに組み立てられた第1の好ましい充填シート10は図面に示されていないが、第1の好ましい充填シート10は原則的に、第2の好ましい充填媒体または充填パック50’と同じ充填媒体または充填パックに組み立てられることが、本開示を検討した当業者にとっては明らかであろう。充填シート10は好ましくは複数のみぞまたは波状構造12を規定する。当該複数のみぞまたは波状構造12は、第1の好ましい充填シート10のマクロ構造の一部を備え、第1シートみぞ12a、第2シートみぞ12b、第3シートみぞ12c、第4シートみぞ12d、第5シートみぞ12e、および第6シートみぞ12fを含み、これらのシートみぞは好ましくは充填シート10の排気縁14から吸気縁16へ延びている。第1の好ましい実施例において、シートみぞ12はスペーサ列17によって中断される。スペーサ列17は、充填シート10を横断して延びており、排気縁14と吸気縁16との間において延びた気流軸34に対して略平行である。スペーサ列17は平坦部19を提供する。平坦部19では、以下により詳細に説明するように、組み立てられて組み込まれた構成において、近隣の充填シート10が互いに対して接続するまたは分離される。
【0017】
シートみぞ12a、12b、12c、12d、12e、12fは、充填媒体または充填パックにおいて原則的に同じまたは類似な構成を有し、本開示では原則的にみぞ12として説明される。好ましくは、第1の好ましい実施例において、充填シート10の各側に1フィート当たりに6つのシートみぞ12が配置されているが、充填シート10はこのような場合に限らない。充填シート10は、6つのシートみぞ12を含むことに限られず、充填シート10の好ましいサイズおよび形状、冷却塔のサイズ、設計者の好み、また他の関連する因子に基づいて、6つよりも多いまたは少ないシートみぞ12を含んでもよい。第1の好ましい充填シート10と、組み立てられたまたは組み込まれた複数の充填シート10から構成された充填媒体または充填パックとは、逆流式冷却塔(counterflow cooling tower)の用途のために構成されて設計される。逆流式冷却塔において、空気は、シートみぞ12に沿って吸気縁16から排気縁14へ気流方向30に流れ、水は、重力で排気縁14から吸気縁16へ水流方向32に流下する。充填シート10および充填パック、ならびに本開示で説明される、これらが含む特徴は、逆流式冷却塔に利用されるまたは逆流式技術に利用されることに限られず、直交流式冷却塔(crossflow cooling tower)または他の関連する流れ応用(flow application)にも適用され得る。
【0018】
図2~
図4Cを参照すると、第2の好ましい実施例において、充填シート10’および関連する充填媒体または充填パック50’は、第1の好ましい充填シート10および充填パックとは同じ構成および機能を有する。同様な参照番号は同じまたは類似な特徴の識別に利用され、プライム符号「’」は第2の好ましい実施例を第1の好ましい実施例から区別するのに利用される。第2の好ましい充填シート10’と充填媒体または充填パック50’とは、逆流式冷却塔の用途のために構成されて設計されるが、追加的なスペーサ列17を含む。第2の好ましい充填シート10’は、その上に微細構造がないように示されることがあるが、
図2Aに示されているように、第1の好ましい充填シート10と同じように設定されて構成され、その上に微細構造20を含んでもよい。第2の好ましい実施例の充填シート10’および充填媒体または充填パック50’、ならびに本開示で説明される、これらが含む特徴は、逆流式冷却塔に利用されるまたは逆流式技術に利用されることに限られず、直交流式冷却塔または他の関連する流れ応用にも適用され得る。
【0019】
図1~
図4Cを参照すると、第1の好ましい充填シート10および第2の好ましい充填シート10’は、スペーサ列17、17’を互いに近隣するように配置することによって、充填媒体または充填パック50’に組み立てられる。例えば、横並びのシート10、10’を掛け合わせることによって、合わせたスペーサ列17、17’を互いに接合させることによって、近隣の充填シート10、10’のスペーサ列17、17’に沿って接合部18、18’を互いに係合させることによって、近隣の充填シート10、10’を固定して締め合わせるか、あるいは、充填媒体または充填パック50’を規制するように充填シート10、10’を配置する。充填シート10、10’は、適切に共に押しつぶされて充填シート10、10’を互いに連結させる接合部18、18’を含むものに限られない。充填シート10、10’は、充填パック50’を規制するように充填シート10、10’を互いに対して配置可能な、接着剤ボス(glue boss)、スペーサ、位置合わせ部品、スナップフィット接合部、または他のスペーサもしくは接合部を含んでもよい。例えば、充填シート10、10’は鋭い先端がないスペーサ(
図2の平坦部19’を参照)を含んでよい。これらのスペーサは、互いに接合しないものの、充填パック50’の通常構成下で充填シート10、10’を互いに対して分離させ、または、充填媒体または充填パック50’を規定するように接着剤で互いに接着されている。
図3、
図3A、および
図4~
図4Cは、第1充填シート10a’と第2充填シート10b’を有する好ましい充填媒体または充填パック50’を開示している。充填媒体または充填パック50’は、観光可能なサイズを有する充填媒体または充填パック50’を製造するように、ほぼ任意数量の充填シート10、10’によって構成され得る。
【0020】
みぞ12、12’のみぞ幾何構造は、一連の繋がって接する弧部によって形成された通路にしたがって変化する高さを有するみぞ輪郭を含み、それぞれの弧部は、弧部の端からみぞ部分の長さの2分の1よりも短く水平に延びた中心部を有する。みぞ12、12’のみぞ通路に対する弧部の端点のすべては、垂直的に配置されており、近隣の充填シート10、10’の間のスペーサ列17、17’、スペーサおよび/または接合部18、18’に場所を提供する。充填媒体または充填パック50’内の上側/下側の充填シート10、10’において互いに近隣の弧部は、充填シート10、10’が充填媒体または充填パック50’に組み立てられたときに、スペーサ列17、17’または接続部18、18’から相対的な方向に湾曲している。そのため、スペーサ列17、17’または接合部18、18’間のみぞ12、12’の山部36c、36c’の間において分離箇所が生じ、充填シート10、10’のみぞの高さは弧部中心に向いて増加することが許容される。例えば、第1充填シート10a、10a’の第1シートみぞ12a、12a’および第2シートみぞ12b、12b’は、スペーサ列17、17’の間において第1山部36c、36c’および第2山部38c、38c’に沿って増加する高さを有する第1山部36c、36c’および第2山部38c、38c’を含む(
図3Bおよび
図3Cを参照)。
【0021】
上述した、組み立てられた好ましいシートみぞ12、12’の幾何構造によって、みぞ気流部40’内において空気を混合する充填媒体または充填パック50’が形成される。当該みぞ気流部40’は、気流入口端36a、36a’と、気流出口端36b、36b’と、みぞ山部36c、36c’と、みぞ山部36c、36c’に関連して対向する谷部36d、36d’、36e、36e’との間におけるシートみぞ12、12’のそれぞれによって規定される。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、みぞ気流部40’の気流入口端36a、36a’および気流出口端36b、36b’はスペーサ列17、17’に配置されており、充填媒体または充填パック50’内に充填シート12、12’からなるペアのそれぞれは、シートみぞ12、12’のそれぞれに関連する複数のみぞ気流部40’を含む。シートみぞ12、12’の構成、および、みぞ気流部40’を規定するようにシートみぞ12、12’で組み立てられた充填媒体または充填パック50’で、みぞ気流部40’内の断面形状が連続的に変化することによって、および、充填シート10、10’上の水膜とみぞ気流部40’を通って流れる空気との相互作用によって、流れる空気と冷却流体(好ましくは水)とが混合される。また、シートみぞ12、12’の弧部の小さくて交互の平行オフセットによって、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例のスペーサ列17、17’および接合部18、18’の近くの弧部の端から離れた山部36c、36c’、38c、38c’でのみぞの高さを増加させる。シートみぞ12、12’の弧部のオフセットによれば、充填シート10、10’の表面積および熱性能を増加させるとともに、シートみぞ12、12’は、低汚れ充填設計(low fouling fill design)に望ましい、最小接触点を有する略垂直構造を維持することができる。物質移動は、みぞ気流部40’およびシートみぞ12、12’内に発生し、例えば、流体表面領域と接触した空気の間の分圧差および飽和状態を原因にして、充填媒体または充填パック50’の第1シートみぞ12a、12a’と第2シートみぞ12b、12b’との間に発生する。シートみぞ12、12’、充填シート10、10’および充填パック50’の好ましい幾何構造がもたらす結果として、充填シート10、10’上に流体表面領域と接触した空気は、複数のみぞ気流部40’を通って流れる大量の空気からの飽和度が低い空気によってリフレッシュされる。気流方向30、30’にある気流の速度(毎分800フィート)を原因として、シートみぞ12、12’を通って流れる気流は乱流になり得るが、それでも湿り空気の成層(stratification)がみぞ12、12’内に存在できる。
【0022】
通常、空気が充填媒体または充填パック50’において移動する距離およびその速度に基づいて、約0.5秒の間に、充填パック50’内に吸気縁16’と排気縁14’との間にある。組み立てられたシートみぞ12、12’の好ましいみぞ気流部40’の断面形状の連続的な変化と、みぞ部40’に沿った断面とによって、気流に存在し得る、流れる空気の境界層または成層が破壊される。空気がみぞ部40’内に連続的に変化する断面形状を流れるとき、気流の方向にある小さい変化は、境界層をリフレッシュして大量の空気の混合を促進することによって、物質移動に影響を与える。流体が、連続的に変化するみぞ気流部40’を通って充填シート10、10’の表面を下へ移動するとき、みぞ気流部40’を通って流れる空気の少なくとも一部は、みぞ12、12’の山部36c、36c’、38c、38c’を通って、近隣のみぞ気流部40’に流れ込む。
【0023】
図2、
図3B、および
図3C~
図4Cを参照すると、充填パック50’内の第1充填シート10a’および第2充填シート10b’の第1シートみぞ12a’および第2シートみぞ12b’の第1山部36c’および第2山部38c’の形状および構成についての簡略化された表示は、山部36c’、38c’がほぼ気流軸34に沿って重ね合うことを示す。このような構成は、空気が吸気縁16’から排気縁14’までの単一のシートみぞ12’を流通させること、また、空気が山部36c’、38c’を越えて近隣のシートみぞ12’またはみぞ部40’に流れ込ませることを容易にすることによって、前述した、シートみぞ12’およびみぞ部40’内の空気の混合を促進する。したがって、このような構成は充填媒体または充填パック50’内の充填シート10’の表面における空気の混合をさらに促進する。
【0024】
図1~
図4Cを参照すると、好ましくは、充填シート10、10’はその上に一体化された微細構造20、20’をさらに含み、当該微細構造20、20’は、主には、水膜が充填パック50’を通って流れるときにその水膜を分配するとともに、シートみぞ12、12’およびみぞ気流部40’において充填シート10、10’上の水も分配するのに用いられ、また、微細構造20、20’上の水の薄膜が、充填パック50’を通って流れる空気に対して露出する総表面積を増加するのに用いられる。第2の好ましい実施例に関連する
図2~
図4Cの充填シート10、10’および充填媒体または充填パック50’は、
図2Aを除いて、充填シート10、10’の表面にある微細構造20、20’を示していないが、第1の好ましい充填シート10および第2の好ましい充填シート10’は微細構造20、20’を含み、当該微細構造20、20’は簡潔性のために図面に示されていない。微細構造20、20’の最も一般的な種類は、帯状構造(band)または小さい波状構造として表現でき、当該帯状構造(band)または小さい波状構造は、充填シート10、10’およびシートみぞ12、12’(またはマクロ構造)から比較的大きいサイクルから切り取られたものである。好ましい充填媒体および充填パック50’において、好ましくは、微細構造20、20’は、方向に形成された、弧状、台形、または正弦形状の帯状の微細構造20、20’を含み、当該方向は、
図1および
図1Aに特に示されたマクロ構造のシートみぞ12、12’の通路または方向から独立した角度をなす方向である。好ましい微細構造20、20’は、原則的には、好ましい充填シート10、10’のマクロ構造、波状構造、またはシートみぞ12、12’のから独立して設計され構成される。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の当該微細構造20、20’において、好ましい微細構造20、20’は、シートみぞ12、12’に対する微細構造角度Δをなした山形状(chevron)またはへリングボーン形状(herringone)を有する。それに対して、従来技術の微細構造は、充填シートのみぞに略垂直して延びているまたは気流軸34に略垂直して延びている。
【0025】
第1の好ましい充填シート10および第2の好ましい充填シート10’の微細構造20、20’は、シートみぞ12、12’または充填シート10、10’に微細構造角度Δで形成された波形帯状構造を含む。好ましくは、微細構造角度Δは、吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間における移動方向または通路方向から独立している。そのため、微細構造20、20’の微細波形構造の方向にある水流を生成することによって、水膜はシートみぞ12、12’の内部におよびその間において再分配される。このような微細構造20、20’の構成は、好ましい充填シート10、10’にわたって水を分配するに対して比較的に積極的でない(比較的に短い)微細構造が求められ、比較的に少ない圧力低下および比較的によい耐汚染性をもたらすため、既有の微細構造方向よりも利益をもたらす。好ましい第1微細構造20および好ましい第2微細構造20’は、充填シート10、10’の上部11a、11a’と下部11b、11b’との間において山形状またはへリングボーン形状の設計を実質的に規定される。好ましい実施例において微細構造角度Δは約30度であるが、これに限らない。微細構造角度Δは30度より大きくてもよく小さくてもよく、例えば、設計の好み、需要、および他の因子に基づいて、15度~45度までの間内の角度であってもよい。好ましくは、微細構造角度Δは、上部11a、11a’および下部11b、11b’において規定された横軸22、22’と、微細構造20、20’の縦軸方向の通路との間において測定される。好ましくは、横軸22、22’は気流軸34に対して垂直である。
【0026】
第1の好ましい充填シート10および第2の好ましい充填シート10’はシート平面24、24’を規定する。好ましくは、シート平面24、24’は平坦部19、19’によって定義される。突起18、18’は、原則的にはスペーサ列17、17’において、平坦部19、19’から延びていてもよく、平坦部19、19’から延ばしていなくてもよい。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施において、近隣のスペーサ列17’の間のシートみぞ12、12’の少なくとも一部は、オフセット距離D、D’で充填シート10、10’の中心部から離れるシートみぞ12、12’の山部36c、36c’、38c、38c’においてシート平面24、24’を越えて弧状になる。好ましくは、シートみぞ12、12’は、約1.5インチ~4インチまたは3.8センチ~10センチであるみぞサイクルCF、CF’をさらに有する。ただし、みぞサイクルCF、CF’は、これらの具体的な態様に限られず、他のサイズまたは構成であり得る。好ましくは、微細構造20、20’は、約400分の1インチ~10分の1インチまたは1mm~2.5mmである微細構造高さHM、HM’を有する。ただし、微細構造高さHM、HM’は、このように限られず、他のサイズまたは構成であり得る。好ましくは、充填パック50’内の充填シート10、10’は、分離しており、または、約4分の3インチ~1.2インチもしくは1.9センチ~3センチであるシート間隔(sheet spacing)HS’を規定する。ただし、シート間隔HS’は、このように限られず、他のサイズまたは構成であり得る。
【0027】
図5~
図9Aを参照すると、第3の好ましい実施例において、充填シート10”および関連するパック50’は、第1および第2の好ましい充填シート10、10’ならびに充填パック50’と類似な構成および機能を有する。同様な参照番号は同じまたは類似な特徴の識別に利用され、ダブルプライム符号「”」は第3の好ましい実施例を第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例から区別するのに利用される。第3の好ましい充填シート10”と充填媒体または充填パック50”とは、直交流式冷却塔の用途のために構成されて設計される。直交流式冷却塔において、空気は、吸気縁16”から排気縁14”へ気流方向30”にシートみぞ12”に沿って流れてみぞ気流部40”に流れ込む。直交流式冷却塔において、水は、重力で水流方向32”に充填シート10”の上縁60から流下して充填シート10”の底縁62へ流れて流出する。第3の好ましい実施例の充填シート10”、充填媒体または充填パック50”、およびこれらに関して本開示で説明される特徴は、直交流式冷却塔の用途または通常の直交流式用途に限られず、逆流式冷却塔または他の関連する流れ応用にも適用され得る。
【0028】
図1~
図9Aを参照すると、第3の好ましい実施例の充填媒体または充填パック50”は、冷却塔に挿入されて、充填パック50”を通って流れる冷却媒体(好ましくは水)を冷却するためのものである。第3の好ましい充填パック50”は、気流方向30”と略垂直する水流方向32”を有するように設計されている。一方、第2の好ましい実施例の充填パック50’は、同様に冷却塔に挿入されるためのものであるが、気流方向30’と略平行する、かつ、気流方向30’と逆となる水流方向32’を有するように設計されている。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、第1充填シート10a、10a’は、弧状、蛇行する通路に沿って気流方向30、30’ に略平行して延びた、第1みぞ12a、12a’、第2みぞ12b、12b’、第3みぞ12c、12c’、第4みぞ12d、12d’、第5みぞ12e、12e’、および第6みぞ12f、12f’を規定する。第3の好ましい実施例において、第1充填シート10a”は、第1みぞ12a”、第2みぞ12b”、第3みぞ12c”、第4みぞ12d”、第5みぞ12e”、および第6みぞ12f”、第7みぞ12g”、第8みぞ12h”、第9みぞ12i”、第10みぞ12j”、第11みぞ12k”、および第12みぞを規定する。第1の好ましい実施例、第2の好ましい実施および第3の好ましい実施例のシートみぞ12、12’、12”の数は限られていないが、充填シート10、10’、10”は、サイズ、構成、応用、設計者の好みおよび関連する因子に基づいて、様々な数のシートみぞ12、12’、12”を含んでもよい。シートみぞ12、12’、12”に沿うみぞ気流部40’、40”の断面形状の連続的な変化によって、みぞ気流部40’、40”内の空気が混合され続けて熱性能へ貢献する。
【0029】
図5、
図5および
図7~
図9Aの第3の好ましい充填パック50”は、第1充填シート10a”および第2充填シート10b”を含むが、
図6に示されたように、第3充填シート10c”、第4充填シート10d”、第5充填シート10e”、第6充填シート10f”、第7充填シート10g”、第8充填シート10h”、および第9充填シート10i”などの追加的な充填シートをさらに含んでもよい。ただし、充填パック50”は、第1充填シート10a”および第2充填シート10b”と同様に少ない充填シートを含んでもよく、
図6の第3充填シート10c”、第4充填シート10d”、第5充填シート10e”、第6充填シート10f”、第7充填シート10g”、第8充填シート10h”、および第9充填シート10i”よりも少ないまたは多い充填シートを含んでもよい。第1充填シート10a”は、吸気縁16”、排気縁14”、および、吸気縁16”と排気縁14”との間において延びた気流軸34”を規定する。第1充填シート10a”は第1みぞ区間36”を規定し、当該第1みぞ区間36”は、第1入口端36a” と第1出口端36b” と第1入口端36a”と第1出口端36b”との間において延びた第1山部36c”を有する。第1の好ましい実施例において、第1山部36c”は、気流軸34”と実質的に平行して延びているが、これに限らない。第1山部36c”は、気流軸34”に対して角度をなすように、または曲線状となるように、または弧状となるように延びていてもよい。
【0030】
第3の好ましい充填パック50”は第2充填シート10b”をさらに含み、当該第2充填シート10b”は第2みぞ区間38”を規定する。当該第2みぞ区間38”は、第2入口端38a”、第2出口端38b”、および、第2入口端38a”と第2出口端38b”との間において延びた第2山部38c”を有する。第1山部36c”は第2山部38c”に対して延びている。よって、第1みぞ気流部40”は、第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”によって規定され、第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”は、第1入口端36a” と第2入口端38aと第1出口端36b” と第2出口端38b” との間に連続的に変化する断面形状を有する。第3の好ましい実施例において、第2山部38c”は、
図7Aに示されるように、第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”内において気流方向30”に対して角度をなして第1山部36c”を交差するように延びている。第1みぞ気流部40”の断面形状の連続的な変化または修正によって、第1充填シート10a”および第2充填シート10b”の表面に沿って流れる水と、第1みぞ気流部40”を通って流れる空気との間の境界混合(boundary mixing)が増加される。断面形状の変化は、混合を促進し、または、空気が第1みぞ気流部40”を通って流れるときの空気の表面露出を促進する。第3の好ましい実施例において、第1入口端36a” と第2入口端38a” と第1出口端36b” と第2出口端38b” とは、それぞれに、気流軸34”に沿って配置されており、第1みぞ部長さL
1”を規定する。第3の好ましい実施例において、第1みぞ部長さL
1”は、約4インチ~6インチまたは10センチ~15センチであるが、これに限らず、設計者および構成の目的に基づいてこれより長くてもよく短くてもよい。第1山部36c”および第2山部38c”は、第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”内に直線的に延びているに限らず、第1山部36c”および第2山部38c”の延伸が、充填パック50”の第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”において第1充填シート10a”と第2充填シート10b”との間のみぞ部40”の断面形状に連続的な変化をもたらせればよい。
【0031】
第3の好ましい実施例において、第2山部38c”は、第1山部36c”に対して第1みぞ部角度θをなして延びており(
図7A)、よって、第1みぞ部40”の断面形状は、第1入口端36a”と第2入口端38a”と第1出口端36b”と第2出口端38b”との間において変化する。第3の好ましい実施例において、第1みぞ部角度θは約2度~5度であるが、これに限らず、これより大きくてもよく小さくてもよい。第1みぞ部角度θは、湾曲形状、起伏のある形状、または、第1みぞ部40”の断面形状の変更を容易にする他の形状などの異なる構成を有してもよい。好ましくは、断面は、第1みぞ部40”において第1入口端36a”と第2入口端38a”と第1出口端36b”と第2出口端38b”との間に徐々に連続的に変化するが、このように限らない。断面は様々な形式で変化してもよい。例えば、動作時に空気と水との境界混合を促進し、充填パック50”において空気と水との間の熱交換を完全するように、断面は、非連続的に変化してもよく、気流方向30”に沿って様々な程度で変化してもよい。
【0032】
図1~
図4Cを参照すると、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、第1シート10a、10a’の第1みぞ12a、12a’の第1山部36c、36c’と、第2山部38c’と、下側の山部38c’とは、吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間において弧状に延びている。弧状の第1山部36c、36c’、第2山部38c、38c’および下側の山部38c’は同様に、好ましい実施例の吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間の第1みぞ部40’の長さにそって連続的に変化する断面形状をもたらす。みぞ部40’内の連続的な変化は、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の充填媒体または充填パック50’内の水と空気との間の境界混合および熱交換の増加を促進する。第1の好ましい充填シート10によって、吸気縁16と排気縁14との間においてスペーサ列17によって分離された2つの背中合わせた(back-to-back)みぞ部を有する充填媒体が構成される。特に、第1の好ましい実施例の充填媒体内の第1充填シート10のみぞ12のそれぞれは、吸気スペーサ列17aと中間スペーサ列17bとの間のみぞ部40、および、中間スペーサ列17bと排気スペーサ列17cとの間の他のみぞ部40を規定する。同様に、第2の好ましい充填シート10’によって、吸気縁16’と排気縁14’との間においてスペーサ列17’によって分離された4つの背中合わせたみぞ部40’を有する充填媒体50’が構成される。特に、第2の好ましい実施例の充填媒体50’内の第1充填シート10’のみぞ12’のそれぞれは、吸気スペーサ列17a’と第1の中間スペーサ列17b’との間のみぞ部40’、第1の中間スペーサ列17b’と第2または中央の中間スペーサ列17b’との間のみぞ部40’、第2または中央の中間スペーサ列17b’と第3の中間スペーサ列17b’との間のみぞ部40’、および、第3の中間スペーサ列17b’と排気スペーサ列17cとの間のみぞ部を規定する。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の充填パック50は、吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間において連続する背中合わせたみぞ部40を含む態様に限らない。当該充填パック50は、充填媒体50’においてほぼ任意の箇所に配置された単一のみぞ部40’と同様に少ないみぞ部40’を含んでもよく、吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間において、または、スペーサ列17、17’の間に充填媒体50’をほぼ完全に覆う充填媒体50’において、完全に延びていない複数のみぞ部40’を含んでもよい。
【0033】
図7~
図7Bを参照すると、第3の好ましい実施例の第2充填シート10b”の第2山部38c”は、第1充填シート10a”の第1山部36c”において第1入口端36a”および第2入口端38a”に近接する第1側に配置されており、第2山部38c'''は、第1山部36c”において第1出口端36b'''および第2出口端38b”に近接する第2側に配置されている。したがって、第2山部38c”は、第1みぞ部40”の第2入口端38a”から第2出口端38b”に延びている時に第1山部36c”と交差し、第1みぞ部40”の断面形状の連続的な変化を容易にする。
【0034】
図5~
図9Aを参照すると、第3の好ましい実施例において、第1充填シート10a”の第1みぞ区間36”および第2充填シート10b”の第2みぞ区間38”は、第1充填シート10a”と第2充填シート10b”との間に配置された第1みぞ気流部40”を規定する。第1みぞ気流部40”の一例は、クロスハッチングされた
図5A、
図7Cおよび
図7Dに示されている。第3の好ましい実施例の第1みぞ12a”は、吸気縁16”から排気縁14”に延びた、第2みぞ気流部42a”、第3みぞ気流部42b”、第4みぞ気流部42c”、第5みぞ気流部42d”、第6みぞ気流部42e”にも関連する。好ましくは、複数のみぞ部40”、42a”、42b”、42c”、42d”、42e”は、交互の山部36c”、38c”を含む。山部36c”、38c”は、気流軸34”と実質的に平行して延びており、第1みぞ部角度θで気流軸34”に対して角度をなしている。よって、第1充填シート10a”と第2充填シート10b”との間の特定の区間におけるみぞ部40”の断面形状は、吸気縁16”と排気縁14”との間において連続的に変化する。これらのみぞ部40”は、連続的で一致した変化する断面を有する6つのみぞ部40”、42a”、42b”、42c”、42d”、42e”を有するのに限らない。これらのみぞ部40”は、変化しない断面、または、特定の好ましい機能のために一致せずに色々変化する断面を有する部分を含んでもよい。
【0035】
図5、
図5A、および
図7~
図7Dを参照すると、好ましくは、第1みぞ区間36”は、気流方向30”および気流軸34”に関連する、第1山部36c'''の第1側にある第1谷部36d”と、第1山部36c”の第2側にある第2谷部36e”とを、さらに含むまたは接合する。同様に、好ましくは、好ましくは、第2みぞ区間38”は、気流方向30”および気流軸34”に関連する、第2山部38c''の第1側にある第3谷部38d”と、第2山部38c”の第2側にある第4谷部38e”とを、さらに含むまたは接合する。第3の好ましい実施例において、第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”は直角の通路形状(right-angle channel shape)を有し、当該直角の通路形状は、曲がっているまたは細い帯状(fillet)を有する第1山部36c”および第2山部38c”を有する。第1みぞ区間36”および第2みぞ区間38”は、このような場合に限らず、代替的な形状、例えば、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の湾曲した第1みぞ区間36、36’および第2みぞ区間38、38’を有してもよい。代替的な形状は、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の第1充填シート10a、10a’および第2充填シート10b、10’の微細構造の高さ方向にある弧状または湾曲状であってもよい。あるいは、代替的な形状は、動作にわたって充填媒体または充填パック50’内の空気と水との境界混合が増加するために、空気が動作にわたって充填パック50’を通って流れるときに、複数のみぞ12、12’およびみぞ気流部40’の断面形状が連続的に変化するように設計され構成され得る。
【0036】
図3、
図3Aおよび
図5を参照すると、第2の充填媒体または充填パック50’および充填シート10’ならびに第3の好ましい充填媒体または充填パック50'''および充填シート10”は、吸気縁16、16’と排気縁14、14’との間において規定された気流長さL
A’、L
A”を有する。好ましい実施例において、気流長さL
A’、L
A”は約24インチ~56インチまたは61センチ~140センチであるが、このような場合に限らない。気流長さL
A’、L
A”は、冷却塔の需要、設計者の好み、需要となる性能、または追加的な設計因子に基づいて、より長くてもよく短くてもよい。また、充填媒体または充填パック50’、50”は互いに積み重ねるまたは隣接に配置されることができる。よって、第1充填パック50’、50”は、その排気縁14’、14”が第2充填パック50’、50”の吸気縁16’、16”に近隣するように配置される。よって、空気は、パック50’、50”をともに気流方向30、30’、30”に通って流れ、水は、パック50’、50”を水流方向32、32’、32”に通って流れる。
【0037】
図1~
図4Cを参照すると、好ましくは、動作中に、第1および第2の好ましい充填パック50’が逆流式冷却塔に挿入される。よって、空気は、吸気縁16、16’から複数のみぞ12、12’に沿って排気縁14、14’に流れ、水または他の冷却流体は、重力で水流方向32、32’に排気縁14、14’から吸気縁16、16’に流れる。複数のみぞ12、12’の湾曲状または弧状、および、充填シート10、10’の間のみぞ気流部40’によって、空気は、方向の変化する複数のみぞ気流部40’を通って流れ、充填媒体または充填パック50’内の複数の充填シート10、10’の表面上の水膜と境界面で混合する。複数のみぞ気流部40’を通って流れる空気の混合によって、水飽和空気(water saturated air)が水膜との接触し続けることが回避される。よって、乾燥空気は、複数のみぞ気流部40’において水膜と直接的に接触して来ずに中央に位置し続けることがなく、水膜に露出する。一方、従来技術の断面が一定であって両端の間に連続的に変化していないみぞ(絵図せず)では、乾燥空気は、複数のみぞ気流部40’において水膜と直接的に接触して来ずに中央に位置し続けることが起こり得る。複数のみぞ気流部40’を通って流れる空気は以下のような典型的な流速範囲を有する。すなわち、約300フィート/分~800フィート/分、または150センチ/秒~400センチ/秒の流速範囲を有する。平均流速は、約700フィート/分、または140インチ/秒、または356センチ/秒である。よって、任意の特定部分が充填パック50’内に滞在する時間は非常に短い。空気と充填パック50’を通って流れる水または冷却媒体との間の熱交換を最大化するために、充填シート10、10’の表面上の水膜に対して比較的に速い形式で空気流の全部が比較的に速く露出することが好ましい。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例の複数のみぞ気流部40’の変化する断面形状によって、複数のみぞ気流部40’を通って流れる空気の混合が促進され、水膜の表面に対して空気の比較的に速い露出が最大化される。
【0038】
図5~
図9Aを参照すると、好ましくは、動作中に、第3の好ましい充填パック50”は直交流式冷却塔に挿入される。よって、空気は、吸気縁16”から複数のみぞ気流部40”に沿って気流方向30”に排気縁14”に流れ、水または他の冷却流体は、重力で水流方向32”に上縁60から底縁62に流れる。第3の好ましい充填パック50”は、直交流式冷却塔の用途または通常の直交流式用途に限られず、逆流式冷却塔または他の関連する流れ応用にも適用され得る。みぞ区間36”、38”の山部36c”、38c”のシフトによって、みぞ気流部40”の断面は連続的に変化し、空気は、方向が変化する充填媒体または充填パック50”を通って流れて、複数のみぞ気流部40”の表面上の水膜と境界面に沿って混合する。複数のみぞ12”およびみぞ気流部40”を通って流れる空気の混合によって、水飽和空気が水膜との接触し続けることが回避される。よって、乾燥空気は、みぞ気流部40”において水膜と直接的に接触して来ずに中央に位置し続けることがなく、水膜に露出する。一方、従来技術の断面が一定であるみぞ(図示せず)では、乾燥空気は、複数のみぞ気流部40’において水膜と直接的に接触して来ずに中央に位置し続けることが起こり得る。
【0039】
第3の好ましい実施例において、山部36c”、38c”は、交互に第1みぞ部角度θで配向され、よって、吸気縁16”へ下方に向けられている。この下方に向けられた山部36c”、38c”は、流れる水または他の冷却媒体を排気縁14”へ推進する力に対抗し、水または他の冷却媒体を吸気縁16”へ推進する。したがって、山部36c”、38”の方向によっても排気縁14”において溜まったまたはせき止めた水または冷却媒体を対抗することは、前述した山部36c”、38c”の方向がなくても、または、他の水もしくは冷却媒体の溜まりに対抗する特徴がなくても、起こり得る。
【0040】
図7を参照すると、第3の好ましい充填シート10”の第4みぞ12d”、第8みぞ12h”および第12みぞ12l”は、山部36c”、38”を含まない見出しみぞ(indexing flute)12d”、12h”、12l”を構成する。当該山部36c”、38”は、互いに対して方向を変化し、見出しみぞ12d”、12h”、12l”の断面形状を変化させる。見出しみぞ12d”、12h”、12l”は、充填シート10”の見出しとなるように利用される。見出しみぞ12d”、12h”、12l”は、連続的な加熱成形プロセスで製造される。よって、第1充填シート10a”および第2充填シート10b”ならびに追加的な充填シート10c”、10d”、10e”、10f”、10g”、10h”、10i”は、充填媒体または充填パック50”に組み立てられるときに、適切に配置される。そのため、複数のみぞ12は、吸気縁16”と排気縁14”との間に連続的で一致して変化する断面形状を有する。特に、好ましくは、充填シート10”は、積み重ねた充填パック50”において充填シート10”のそれぞれに対して充填シート10”を180度回転させ、好ましい充填パック50”において近隣の山部36c”、38”を交互に配向させるように配置することによって組み立てられる。充填シート10”は、見出しみぞ12d”、12h”、12l”を含むように限らないが、ここで説明した理由のため、見出しみぞ12d”、12h”、12l”は好ましい。代替的に、第3の好ましい実施例の山部36c”、38c”の交互配向を容易にするために、見出しみぞ12d”、12h”、12l”なしで、充填シート10”は、充填パック50”アセンブリに追加される充填シート10”のそれぞれに対して異なる構成に設計され得る。この代替的な構成において、充填シートは回転されないが、他の充填シートは相互に積み重ねられて充填媒体を規定する。
【0041】
図1~
図9Aを参照すると、第3の好ましい実施例の充填シート10”は、複数のみぞ12”を規定する比較的に平坦な表面または平面的な表面を示しているが、このように限らない。充填シート10は微細構造を含んでもよい。例えば、第1の好ましい実施例もしくは第2の好ましい実施例の微細構造20、20’、または、水もしくは他の冷却媒体の薄膜の気流に対する露出を追加するために充填シート10、10’、10”の表面積を増加させる他の表面特徴などの微細構造を含んでもよい。また、充填シート10、10’、10”は、ルーバー、ドリフトエリミネータ(drift eliminator)および他の特徴などのエッジ特徴(edge feature)に一体化され得る。エッジ特徴は簡潔性のために図面に示されていないが、充填媒体または充填パック50’、50”の充填シート10、10’、10”に付加され得て、いくつかの実施例において、充填媒体または充填パック50’、50”の充填シート10、10’、10”と一体化され得る。好ましくは、充填シート10、10’、10”も、気流の圧力低下を制限するとともに、充填媒体または充填パック50’、50”を通って流れる空気と、充填媒体または充填パック50’、50”を通って流れる水または冷却媒体との間の熱交換を最大化するように設計される。第3の好ましい実施例において、充填パック50”内の充填シート10”は、分離距離Sで互いに分離されている。分離距離Sは約19mmまたは約4分の3インチであるが、これに限らず、様々な応用、機能および設計者の好みのために、より大きくてもよく、より小さくてもよい。
【0042】
図8~
図9Aを参照すると、第3の好ましい充填パック50”は、第1充填シート10a”と第2充填シート10b”とを含む2つの充填シート10”アセンブリとして示されている。第2充填シート10b”は、小さい距離で第1充填シート10a”を越えて延びているように示されており、第1山部36c”および第2山部38c”が互いに対する方向を表す。近隣の充填シート10”は好ましくは、好ましい充填パック50”において、互いに直接的に隣接してまたは近接して境界をなす。この場合、好ましくは、第3の好ましい充填パック50”は、排気縁14”において第1充填シート10a”を越えて延びた第2充填シート10b”を有しないように設計される。
【0043】
図4~
図4Cを参照すると、第2の好ましい充填パック50’は、 逆流式の充填パック50’のように構成されている。空気は、一般的には気流軸34’と平行する気流方向30’に、吸気縁16’から排気縁14’に流れる。水は、重力で、排気縁14’から吸気縁16’に水流方向32’に流れる。第2の好ましい充填パック50’の充填シート10’は接合部18’を含んでもよい。好ましくは、接合部18’は、略平面的な平坦部19’を有するスペーサまたは平坦な接合部18を含み、接合部18は平面的な平坦部19’から延び得る。接合部18’は、充填パック50’を規定するように、結合され得て、互いに固定され粘着され得て、または、近隣に配置され得る。第2の好ましい実施例の充填シート10’は、弧部、波部、または正弦形状のシートみぞ12’を含み、シートみぞ12’は、吸気縁16’と排気縁14’との間において延びており、充填パック50’を通る空気を案内する。
【0044】
図4~
図4Cを参照すると、第1みぞ部36’、第2みぞ部38’、またはみぞ気流部40’に沿う領域という3つの特定の領域における充填パック50’の代表的な断面は、第1充填シート10a’と第2充填シート10b’との間のみぞ気流部40’の少なくとも一部の変化を示す。当該変化により、みぞ気流部40”内の第1充填シート10a’および第2充填シート10b’の表面の近くで流れる空気と水との混合が容易になる。第2みぞ区間38’の第2山部38c’は、第1みぞ区間36’の第1山部36c’に対して横方向に移動する。よって、断面形状が連続的に修正され、空気が第1入口端36a’と第2入口端38’と第1出口端36b’と第2出口端38b’との間において気流方向30’に流れるときのみぞ気流部40’の流動性(flow property)も連続的に修正される。同様に、充填パック50’において近隣のみぞ気流部40’は連続的に変化する断面形状を有し、当該断面形状によって、近隣のみぞ気流部40’の間においてみぞ区間36’、38’の山部36c’、38c’を越えて谷部36d’、36e’、38d’、38e’を流れる空気の流れが促進される。第1みぞ区間36’および第2みぞ区間38’内のみぞ気流部40’の断面形状の変化が
図4A~
図4Cに示されているが、好ましくは、第2の好ましい充填パック50’内の充填シート10’のそれぞれの第1シートみぞ12a’、第2シートみぞ12b’、第3シートみぞ12c’、第4シートみぞ12d’、第5シートみぞ12e’および第6シートみぞ12f’のみぞ気流部40’のそれぞれは、同様にシフトする断面及び構成を有する。
【0045】
図1~
図4Cを参照すると、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、充填シート12、12’は、第1入口端36a、36a’と第1出口端36b、36b’との間において延びており、充填媒体50’に組み立てられたときに第1みぞ気流部40’を規定するみぞ区間36、36’を含む。充填媒体50’は、近隣の充填シート10、10’のシートみぞ12、12’によって規定される複数のみぞ区間36、36’およびみぞ気流部40’を含む。第1みぞ区間36、36’は第1みぞ区間長さL
F、L
F’を規定し、好ましくは、近隣のスペーサ列17、17’の間に規定する。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、第1みぞ区間長さL
F、L
F’は約4インチ~8インチであるが、第1みぞ区間36、36’はこのように限らない。第1みぞ区間長さL
F、L
F’は、充填シート10、10’の設計および機能に基づいて、より長くてもよく、例えば、8インチ~12インチであってもよく、または、より短くてもよく、例えば、1インチ~4インチであってもよい。みぞ区間36、36’は、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例においてスペーサ列17、17’の間において規定され、例えば、吸気スペーサ列17a、17a’と中間スペーサ列17c、17c’との間、排気スペーサ列17b、17b’と中間スペーサ列17c、17c’との間、または、2tの近隣の中間スペーサ列17’の間において規定される。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、みぞ区間36、36’は、弧状であり、スペーサ列17、17’の対向側にある連続するみぞ空間36、36’のそれぞれ内の気流軸34、34’の対向側に延びている。例えば、第1の好ましい実施例において、下部11b内のみぞ区間36は気流軸34の第1側に延びており、上部11a内のみぞ区間36は、気流軸34の対向の第2側において湾曲しているまたは延びている。第2の好ましい実施例において、上部11a’および下部11b’内のみぞ区間36’は第1の好ましい充填シート10と同様に構成されているが、第2の好ましい充填シート10’は中央の中間スペーサ列17c’を含む。近隣のみぞ区間36’または連続するみぞ区間36’は、中央の中間スペーサ列17c’の対向する側において気流軸34’の同じ側に延びている。
図6を参照すると、第1みぞ区間36”も第1みぞ区間長さL
F”を規定する。
【0046】
図1~
図4を参照すると、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、みぞ区間36、36’のシートみぞ12、12’はみぞ山部36c、36c’を有する。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例のみぞ山部36c、36c’は、弧状であり、みぞ山部36c、36c’の接線に沿って延びた線によって構成されたみぞベクトル13、13’を規定する。第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、みぞベクトル13、13’は、みぞ区間36、36’またはみぞ気流部40’の入口端36a、36a’と出口端36b、36b’との間において連続的に変化する。みぞベクトル13、13’は微細構造角度Δ、Δ’から独立しており、この場合、微細構造角度Δ、Δ’はシートみぞ12、12’またはみぞベクトル13、13’の延伸方向と垂直していない。従来技術の充填シートにおいて、微細構造は一般的にはシートのみぞのみぞベクトルと垂直に配置される。また、微細構造角度Δ、Δ’は、みぞベクトル13、13’と平行して延びていないため、好ましい実施例において、微細構造角度Δ、Δ’とみぞベクトル13、13’との間において規定される弧状角度(arcuate angle)は一致している。また、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例において、第1みぞベクトル13、13’は、入口端36a、36a’と出口端36b、36b’との間において連続的に変化し、よって、微細構造角度Δ、Δ’とみぞベクトル13、13’との間の鋭角は、入口端36a、36a’と出口端36b、36b’との間においてみぞ区間36、36&に沿って連続的に変化する。
図5~
図9を参照すると、第3の好ましい実施例において、みぞ区間36”のシートみぞ12”は、みぞ山部36c”に沿って延びた、またはみぞ山部36c”と平行して延びたみぞベクトル13”を有する。したがって、みぞベクトル13”は、交互に、気流軸34”と略平行して延びており、気流軸34”に対してみぞ部角度θ”をなして延びている。充填シート10”の第3の好ましい実施例には、充填シート10”の上に微細構造を表していないが、充填シート10”に配置された微細構造の微細構造角度は、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例と同様に、みぞベクトル13”から独立して配向され得る。充填シート10”の第3の好ましい実施例は、例えば、第1の好ましい実施例および第2の好ましい実施例と実質的に同様に、山形状またはへリングボーン形状の構成を有する微細構造20、20’を含んでもよい。当該山形状またはへリングボーン形状の構成は、スペーサ列17”の間でほぼ中央に配置され、横軸22”と略平行して延びている線にある変曲線(inflection line)を有する。
【0047】
広い発明概念から逸脱することなく、上述した実施例に変更を加えることができることは当業者に理解されたい。よって、本発明は、記載された特定の実施例に限定されず、本開示および添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内の修正を含もうとすることが理解される。