(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】顆粒の製造方法及び顆粒
(51)【国際特許分類】
C13B 30/02 20110101AFI20221110BHJP
C13B 40/00 20110101ALI20221110BHJP
C13B 50/00 20110101ALI20221110BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20221110BHJP
【FI】
C13B30/02
C13B40/00
C13B50/00
A23L29/30
(21)【出願番号】P 2022013031
(22)【出願日】2022-01-31
(62)【分割の表示】P 2020185142の分割
【原出願日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019239272
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】DM三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】村田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】桐澤 文恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 克嗣
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-180640(JP,A)
【文献】特開2004-002620(JP,A)
【文献】特表2014-515597(JP,A)
【文献】国際公開第2003/068007(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00056174(EP,A1)
【文献】米国特許第08939388(US,B1)
【文献】特開2013-005790(JP,A)
【文献】特開平07-048300(JP,A)
【文献】特開平09-108000(JP,A)
【文献】特開平09-121900(JP,A)
【文献】特開平09-157285(JP,A)
【文献】特開平09-110891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13B 5/00-50/02
A23L 2/00-35/00
C13K 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒の製造方法であって、
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコール(但し、β-マルトース及び下記式(1)で表される環状四糖を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む糖懸濁液と、香料とを含有し、前記糖及び/又は前記糖アルコールの一部が結晶状態で含まれる混合懸濁液を得る工程と、
前記混合懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備え、
前記結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの晶出率が、前記糖懸濁液全量基準で、20質量%以上であり、
前記顆粒は、前記糖及び前記糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、前記香料とを含有し、前記糖及び/又は前記糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態であり、前記結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に、前記非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、前記香料とが保持されている、前記製造方法。
【化1】
【請求項2】
前記糖及び前記糖アルコールが、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記噴霧乾燥が、入口空気温度0~60℃の条件で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径が1~80μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコール(但し、β-マルトース及び下記式(1)で表される環状四糖を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、香料とを含有し、
前記糖及び/又は前記糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態であり、
前記結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に、前記非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、前記香料とが保持されている、顆粒。
【化2】
【請求項6】
前記糖及び前記糖アルコールが、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項5に記載の顆粒。
【請求項7】
前記結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径が1~80μmである、請求項5又は6に記載の顆粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒の製造方法及び顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素、酵母、香料等は、熱、酸といった環境変化の影響を受けやすい低安定性の機能材料である。このような成分を食品、医薬品の用途で使用する場合、温度、湿度等の環境変化を想定して、安定性を維持することが重要である。例えば、特許文献1には、タンパク質、酵素等の生体活性材料と他の成分とを水性溶媒中で混合して粘着質のスラリーを形成し、液体窒素中でこのスラリーを瞬間凍結し、更にこれを真空下で乾燥することにより、生体活性材料の乾燥安定化組成物を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような乾燥状態の組成物は、粉末状又は顆粒状の形態で用いられることがある。食品、医薬品において粉末状の材料を使用する場合には、ダマの防止、ラインでの詰まり防止の観点から、優れた流動性が求められる。
【0005】
本発明の一側面は、機能材料が保持された流動性に優れる顆粒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態で存在する糖の懸濁液を用いて、これを機能材料と共に低温条件で噴霧乾燥することにより、機能材料を含む顆粒が流動性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、一側面において、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、機能材料とを含有し、糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態で含まれる混合懸濁液を得る工程と、混合懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備える、顆粒の製造方法を提供する。好ましくは、噴霧乾燥が、入口空気温度0~60℃の条件で行われる。
【0008】
本発明の他の一側面は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、機能材料とを含有し、糖及び/又は糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態である、顆粒を提供する。
【0009】
顆粒においては、好ましくは、結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、機能材料とが保持されている。
【0010】
上記の顆粒又はその製造方法において、糖及び糖アルコールは、好ましくは、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである。結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、1~80μmであってよい。機能材料は酵素、微生物又は香料であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、機能材料が保持された流動性に優れる顆粒の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】糖懸濁液A及び糖懸濁液Bのデジタルマイクロスコープによる観察結果である。
【
図2】実施例1~3に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図3】糖懸濁液Dのデジタルマイクロスコープによる観察結果である。
【
図4】実施例4に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図5】実施例5、及び比較例1~2に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図6】実施例6、及び比較例3に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図7】実施例7に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図8】実施例8に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【
図9】実施例9に係る顆粒粒子における、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<顆粒の製造方法>
本発明の一実施形態は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、機能材料とを含有し、糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態で含まれる混合懸濁液を得る工程(混合工程)と、混合懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程(噴霧乾燥工程)と、を備える、顆粒の製造方法である。
【0015】
まず、混合工程について説明する。混合工程では、一実施形態において、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む溶液を結晶化させる工程(結晶化工程)と、機能材料を添加する工程(添加工程)を備える。
【0016】
結晶化工程では、まず、結晶性の糖及び/又は結晶性の糖アルコールを含む溶液(糖液)を用意する。溶液は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、溶媒とを含有してよい。溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール等の有機溶剤、水等である。
【0017】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールは、混合工程での操作性を高める観点から、好ましくは、単糖、二糖、三糖、及びこれらの糖アルコールである。
【0018】
単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アロース、アルロース等が挙げられる。二糖としては、イソマルツロース、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖としては、ニゲロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。なお、イソマルツロースは、「パラチノース」として三井製糖(株)が商標登録している二糖である。
【0019】
糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、α-グルコピラノシル-1,1-マンニトール、α-グルコピラノシル-1,6-ソルビトール等が挙げられる。
【0020】
上述した結晶性の糖及び糖アルコールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0021】
糖液中の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、後述する結晶化工程において結晶が形成される濃度であれば特に制限されない。糖液中に含まれる結晶性の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、結晶化工程において効率的に結晶化を行う観点からは、糖液全量基準で、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。結晶性の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、混合工程及び噴霧乾燥工程で良好な操作性を保つ観点からは、糖液全量基準で、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。糖及び/又は糖アルコールの含有量は、飽和溶解度以上の濃度となる含有量であってもよい。すなわち、糖液は過飽和溶液であってもよい。
【0022】
糖液のブリックス値(Bx)は、結晶化工程で効率的に結晶化を行う観点から、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは65以上であり、混合工程及び噴霧乾燥工程で良好な操作性を保つ観点から、好ましくは85以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは75以下である。本明細書におけるブリックス値(Bx)は、糖液の屈折率から算出されるレフブリックス値を意味し、ブリックス計(例えば、デジタル屈折計(RX-5000)、株式会社アタゴ製)により測定することができる。
【0023】
糖液を調製する場合には、溶媒を加熱してから結晶性の糖及び/又は糖アルコールを添加し、溶解させてもよい。この場合、溶媒の温度は特に制限されないが、例えば70℃以上である。溶媒の温度は、100℃以下であってもよい。
【0024】
糖液には、結晶性の糖及び/又は糖アルコール以外の成分を含有してよい。例えば、糖液は非結晶性の糖、非結晶性の糖アルコールを含有してもよい。好ましくは、糖液は結晶性の糖及び/又は糖アルコールのみを含有する。
【0025】
結晶化工程では、例えば、糖液を冷却すること(冷却晶析法)により結晶性の糖及び/又は糖アルコールの一部を結晶化させてよく、反応晶析法により結晶化させてもよい。これにより、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールとを含有する懸濁液(糖懸濁液)を得ることができる。本発明において、「結晶状態の糖及び/又は糖アルコール」とは、構成原子が三次元的に規則正しい繰り返しからなる固体状の糖及び/又は糖アルコールを意味し、「非結晶状態の糖及び/又は糖アルコール」とは、そのような規則正しい繰り返しを有さない固体状の、又は液体状の糖及び/又は糖アルコールをいう。
【0026】
冷却晶析法により結晶化が行われる場合、冷却による糖液の温度(冷却温度)は、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの種類により設定してよく、例えば、60℃以下、50℃以下、又は45℃以下である。冷却温度は、5℃以上、10℃以上、15℃以上、又は20℃以上であってもよい。
【0027】
結晶化工程では、結晶の平均粒径を調整するために結晶の成長を制御する手段が行われてもよい。当該手段はいわゆるビルドアップ法によって行われてよく、例えば、超音波照射を行いながら結晶化を行う方法であってよい。すなわち、結晶化工程は、超音波照射を行う工程(超音波照射工程)を更に備えてもよい。超音波照射は、例えば、上述した糖液の冷却による結晶化の操作において、得られる糖懸濁液に対して超音波照射装置(例えば株式会社エスエムテー製のULTRA SONIC HOMOGENIZER UH-500)等により行うことができる。超音波照射条件(超音波照射の周波数、糖懸濁液の温度、超音波照射時間)は、目的とする結晶の平均粒径に応じて適宜調整してよい。超音波照射工程が行われる場合、超音波照射後の液を糖懸濁液として用いることができる。
【0028】
結晶化工程による晶出率は、流動性に優れる顆粒を得やすくする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。晶出率は、噴霧乾燥工程において良好な操作性を保つ観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。本明細書における晶出率は、糖懸濁液を1.5ml容エッペンドルフチューブに1g入れ、遠心分離機(例えば(株)佐久間製作所製のM150IV)により16000rpmで1分間遠心分離を行い、上清を捨てて残った結晶の残存量を、糖懸濁液の質量で除することにより算出される。
【0029】
晶出率は、例えば、フィルターろ過、遠心分離、重力沈降、加水/加温による溶解、化学反応に伴う結晶成分の消費調整等、結晶を物理的又は化学的に加除する操作を行うことにより調整することができる。あるいは、晶析操作(冷却晶析、蒸発晶析、非溶媒晶析、反応晶析、塩析)、結晶成分の投入及び混合等、結晶を増やす操作によっても調整することができる。
【0030】
糖懸濁液は結晶核を含有していればよく、結晶核の大きさは、糖懸濁液中で安定に存在できる大きさ以上であれば特に制限されない。結晶核の大きさは、例えば臨界結晶核以上の大きさであってもよい。
【0031】
結晶化工程により得られる、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、顆粒の流動性を保つ観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、顆粒の崩壊を防ぐ観点から、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは60μm以下である。すなわち、結晶状態の糖及び糖アルコールの平均粒径は、1~80μmであってよく、5~80μmであってもよい。結晶の平均粒径は、溶媒又は溶質の加除、溶媒温度や溶解時間、撹拌時間の変更、撹拌機又は粉砕機による破砕、濾過等による分画、糖の加水分解等による晶析により調整することができる。
【0032】
本明細書における平均粒径は、デジタルマイクロスコープにより測定できる。測定のために、例えば斉藤光学株式会社製のSKM-S31B-PCを用いることができる。デジタルマイクロスコープで、任意の10個以上の顆粒又は晶析粒に対し、それらを構成する10個以上の結晶性の糖及び/又は糖アルコールの長径を測定し、測定した長径の平均値を算出したものを「平均粒径」という。
【0033】
結晶化工程では、結晶の平均粒径を調整するために、晶出した結晶をせん断する工程(せん断工程)を更に備えていてもよい。せん断工程は、糖液に含まれる結晶に物理的衝撃を与えて結晶を破砕することにより平均粒径を調整する、いわゆるブレークダウン法によって行われてよい。この場合、せん断工程は、例えば、上述した糖液の冷却による結晶化の後に、得られた糖懸濁液に対して高圧ホモゲナイザー(例えば株式会社イズミフードマシナリ製のHV-0A1-1.5S)等により行うことができる。せん断条件(糖懸濁液の温度、ホモゲナイザーの負荷圧力、及びホモゲナイズの条件)は、結晶の平均粒径に応じて適宜調整してよい。せん断工程が行われる場合、せん断後の液を糖懸濁液として用いることができる。
【0034】
添加工程では、一実施形態において、糖懸濁液に、機能材料を添加する。糖懸濁液と機能材料とを撹拌、混合することにより、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、機能材料とを含有する混合懸濁液を得ることができる。
【0035】
機能材料とは、他の材料と組み合わせて得られる組成物(例えば食品、医薬品等)において、何らかの機能を発揮する材料、あるいは成分であれば限られない。機能材料は、水分、熱、光、酸、酸素、分子運動、紫外線、電気的相互作用、物理刺激といった周囲環境に影響を受ける材料であってもよく、加熱により機能を失う材料であってもよい。機能材料としては、より具体的には、アミノ酸、ペプチド(ホルモンを含む)、タンパク質(酵素及び抗体を含む)、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、微生物(例えば、乳酸菌、酪酸菌、納豆菌、ビフィズス菌及び放線菌などの細菌、カビ・酵母)、ペプチド以外のホルモン、香料、ファージ、ペプチド以外の抗生物質等が挙げられる。
【0036】
機能材料の添加量は、上述した糖懸濁液100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上、又は0.1質量部以上であってよく、5質量部以下、3質量部以下、又は1質量部以下であってよい。機能材料の添加量は、機能材料の種類によって適宜調整することができる。
【0037】
以上説明した混合工程は、他の実施形態において、結晶性の糖及び/又は糖アルコールと、機能材料とを含有する溶液を用意してから、上述した結晶化工程を実施することにより、混合懸濁液を得る工程であってもよい。また、混合工程は、他の実施形態において、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールと、機能材料とを含有する混合懸濁液を用意する工程であってもよい。
【0038】
続いて、噴霧乾燥工程を説明する。噴霧乾燥工程は、上述した混合懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程である。
【0039】
噴霧乾燥は、一実施形態において、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行うことができる。噴霧乾燥機としては、例えば、大川原化工機株式会社製のOC-16を用いることができる。
【0040】
低温条件とは、従来の噴霧乾燥で行われていた温度(例えば60℃より高温)よりも低温条件(例えば60℃以下)であることを意味する。低温条件は、機能材料が有する機能が失われない程度の温度条件であってもよい。糖液を噴霧液として噴霧乾燥を行う場合には、顆粒を得るために従来の温度条件のように高温で噴霧乾燥を行う必要があるが、本実施形態では、糖液の一部を結晶状態にし、これに機能材料を加えた混合懸濁液を噴霧液として用いるため、従来よりも低温条件で噴霧乾燥を行っても、好適な顆粒を得ることができる。これにより、例えば、機能材料が酵素である場合、高温条件での噴霧乾燥による酵素の失活が抑制される。また、機能材料が香料である場合、高温条件での噴霧乾燥による香料の揮発が抑制される。低温条件で噴霧乾燥が行われていることは、噴霧乾燥機における入口空気温度(入口温度)が上述したような温度条件で行われていることをいう。
【0041】
一実施形態において、噴霧乾燥工程における入口空気温度は、好ましくは、60℃以下、55℃以下、50℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は15℃以下である。入口空気温度は、例えば、0℃以上、5℃以上、又は10℃以上であってもよい。すなわち、噴霧乾燥工程における入口空気温度は、0~60℃であってよく、0~50℃であってもよい。
【0042】
噴霧乾燥機における出口空気温度(排風温度)は、例えば、50℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は15℃以下であってよく、0℃以上、5℃以上、又は10℃以上であってよい。
【0043】
噴霧乾燥工程における混合懸濁液の液温は、例えば、60℃以下、50℃以下、又は45℃以下であってよく、10℃以上、15℃以上、又は20℃以上であってよい。
【0044】
噴霧乾燥において、混合懸濁液の供給量、雰囲気温度、雰囲気湿度等の他の条件は、それぞれ適宜調整されてよい。
【0045】
例えば、噴霧乾燥におけるアトマイザ回転数は、3000rpm以上、5000rpm以上、又は10000rpm以上であってよく、25000rpm以下、20000rpm以下、又は18000rpm以下であってよい。
【0046】
噴霧乾燥工程では、例えば顆粒の水分量を調整することを目的として、更なる後乾燥工程を備えてもよい。後乾燥工程は、例えば、噴霧乾燥機における缶壁に付着した顆粒に対して所定時間送風を行い、顆粒の水分を更に揮発させることであってよい。あるいは、噴霧乾燥により得られた顆粒を、シリカゲルを入れたデシケーター内に所定時間保管することであってもよい。
【0047】
<顆粒>
本発明の一実施形態は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、機能材料とを含有し、結晶性の糖及び/又は糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態である、顆粒である。結晶性の糖、結晶性の糖アルコール、及び機能材料の詳細な態様は、上述したものと同様であるため説明を省略する。なお、本発明における「顆粒」は、粒子の集合体であり、顆粒を構成する粒子(顆粒粒子)が、結晶性の糖及び糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種と、機能材料とを含有する。
【0048】
一実施形態に係る顆粒は、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態であり、この結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が凝集した顆粒粒子から構成されている。この場合、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの他の一部(他部)は非結晶状態であり、凝集した結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に保持されていることが好ましい。機能材料もまた、結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に保持されていることが好ましい。
【0049】
結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が凝集していることは、走査型電子顕微鏡(SEM)又はデジタルマイクロスコープにより顆粒粒子の外観、あるいは顆粒粒子の破断面を形態観察することにより確認できる。また、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコール、並びに機能材料が上記間隙に保持されていることは、下記の方法により確認することができる。
(1)示差走査熱量計(DSC、例えば日立ハイテクサイエンス株式会社製のリアルビューDSC(TA7000))で昇温中の顆粒を形態観察する。これにより、非結晶状態の糖、糖アルコールが昇温によってガラス転移することが視認できる。
(2)偏光顕微鏡(例えばメイジテクノ株式会社製の偏光顕微鏡(MT9200L))で、結晶状態と非結晶状態の偏光性の違いを視認する。
【0050】
顆粒粒子に含まれる結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの数(結晶の数)は、例えば10個以上であり、50個以上、又は100個以上であってもよい。結晶の数は、1000個以下であってもよい。結晶の数は、走査型電子顕微鏡により観察して目視により測定できる。
【0051】
顆粒粒子のメディアン径は、顆粒の流動性を保つ観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、顆粒の崩壊を防ぐ観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは200μm以下である。顆粒粒子のメディアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製のSALD-2000J)により測定できる。
【0052】
顆粒粒子の形状は、流動性により優れる観点から、略球状であってよい。顆粒粒子は、流動性により優れる観点から、その表面に凹凸を有していてもよい。
【0053】
本実施形態に係る顆粒は、例えば、上述した製造方法により得ることができる。
【0054】
上述した実施形態に係る顆粒は、流動性に優れている。そのため、この顆粒は操作性に優れている。この理由は定かではないが、本発明者らは、一因として、本実施形態の顆粒粒子が結晶状態の糖及び/又は糖アルコールを含有するために、顆粒粒子表面に凹凸が形成され、顆粒粒子同士の接触面が小さくなることに起因すると考えている。また、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールは非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールよりも安定で、吸湿性及び粘着性が低いため、顆粒粒子同士の付着が抑制されているためであるとも考えられる。さらに、本実施形態の顆粒は低温条件で噴霧乾燥されることにより得られるため、糖及び/又は糖アルコールが結晶状態のまま維持されやすく、結果として、噴霧乾燥後であっても流動性に優れた顆粒とすることができる。
【0055】
また、上述した実施形態に係る顆粒は、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールを含有するため、物理的又は機械的な刺激によって顆粒粒子が劣化又は破損しにくく、粒子構造の安定性及び保存性にも優れている。
【0056】
また、上述した実施形態に係る顆粒は間隙を有する。すなわち、顆粒を構成する粒子内に間隙が形成されている。当該間隙によって、顆粒内部に溶媒が浸透しやすくなるため、本発明の顆粒は即溶解性、即崩壊性にも優れている。
【0057】
また、この顆粒は低温条件で噴霧乾燥することにより得られるため、包含される機能材料の機能が熱により失われにくい。すなわち、この顆粒は、乾燥工程を経てもなお機能材料の機能が良好に保持されている。通常、噴霧乾燥により顆粒を得る場合には、より高温の条件で噴霧乾燥をしなければ好適な顆粒を得ることが困難である。しかし、本実施形態に係る顆粒は、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールを含有する混合懸濁液を噴霧乾燥の噴霧液として用いているため、低温条件であっても好適な顆粒を容易に得ることができる。
【0058】
また、上述した実施形態に係る顆粒の製造方法は、真空凍結により乾燥を行う工程、又は混合懸濁液を噴霧乾燥前に加温する工程を省略することができるため、従来の方法よりも簡便な方法により機能材料を含む顆粒を製造することが可能である。
【0059】
上述した実施形態に係る顆粒は、例えば、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、医薬部外品又は医薬品、動物飼料、肥料、香料、抗生物質、土壌改良剤等に添加されるための材料として用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
水にイソマルツロース酵素反応液(三井製糖株式会社製)を加え、湯せんで80℃に加温しながら溶解し、溶液全量基準で65質量%のイソマルツロース溶液(糖液)を5kg得た。このイソマルツロース溶液5kgを金属製容器に入れて、糖液を30℃になるまで急冷した後、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ製、「HV-0A1-1.5S」)で、20MPaの圧力下、60Hzで2時間処理した。処理後の溶液(糖懸濁液Aともいう)についてデジタルマイクロスコープ(斉藤光学株式会社製、「SKM-S31B-PC」、倍率:500倍)で観察したところ、粒径が20~80μmのイソマルツロースの結晶が糖懸濁液A中に含まれていた。糖懸濁液Aのデジタルマイクロスコープによる観察結果を、
図1(a)に示す。糖懸濁液Aの晶出率は40%であった。
【0062】
糖懸濁液Aに、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(オリエンタル酵母株式会社製、「酵母由来アルコールデヒドロゲナーゼ」、酵母由来、分子量:141~151kDa)と、牛血清アルブミン(BSA)(富士フィルム和光純薬株式会社製、「ウシ血清アルブミン」)とを、固形分全量基準で0.1質量%となる量で添加することにより、混合懸濁液(混合懸濁液Aともいう)を得た。このとき、ADHとBSAの質量比を、ADH:BSA=1:2とした。
【0063】
<実施例2>
水にイソマルツロース(三井製糖株式会社製)を加え、湯せんで80℃に加温しながら溶解し、溶液全量基準で57.5質量%のイソマルツロース溶液(糖液)を5kg得た。このイソマルツロース溶液5kgを金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷した。35℃以下の温度を維持しながら、高圧ホモゲナイザーを用いて、実施例1と同様の条件で処理した。処理後の溶液(糖懸濁液Bともいう)についてデジタルマイクロスコープ(倍率:500倍)で観察したところ、20~80μmのイソマルツロースの結晶が糖懸濁液B中に含まれていた。糖懸濁液Bのデジタルマイクロスコープによる観察結果を、
図1(b)に示す。糖懸濁液Bの晶出率は40%であった。
【0064】
糖懸濁液Bに、糖懸濁液Bの固形分量とトレハロースの含有量の合計を基準として5質量%となる量のトレハロース(株式会社林原製、「結晶トレハロース」)を加えて溶解させた。さらに、ADH及びBSAを実施例1と同様の添加量で添加して、混合懸濁液(混合懸濁液Bともいう)を得た。
【0065】
<実施例3>
実施例2において、トレハロースの添加量を10質量%になる量に変更した以外は、実施例2と同様の方法により混合懸濁液(混合懸濁液Cともいう)を得た。
【0066】
[噴霧乾燥]
混合懸濁液A、B及びCを、噴霧乾燥機(大川原化工機株式会社製、「OC-16」)を用いて、表1に示す条件によりそれぞれ噴霧乾燥した。60分間の噴霧後、噴霧乾燥機の缶壁の半面に付着した顆粒を採取した。その後、混合懸濁液B及び混合懸濁液Cに関しては、更に30~40分間送風を行い、噴霧乾燥機の缶壁の他の半面に付着した顆粒を採取した。以下、60分間の噴霧直後に採取した顆粒を「一次乾燥顆粒」と呼び、送風後に採取した顆粒を「二次乾燥顆粒」と呼ぶ。
【0067】
【0068】
[外観観察]
各混合懸濁液から作製した一次乾燥顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による顆粒粒子の外観観察を行った。観察結果を
図2に示す。なお、
図2(a)は混合懸濁液Aから得られた一次乾燥顆粒、
図2(b)は混合懸濁液Bから得られた一次乾燥顆粒、
図2(c)は混合懸濁液Cから得られた一次乾燥顆粒のSEM像(倍率:250倍)である。各像に示すように、得られた顆粒は、結晶状態の糖(イソマルツロース)が凝集して形成されていることが分かる。また、顆粒粒子の外観、断面を観察したところ、結晶状態の糖同士が形成する間隙に、非結晶状態の糖及び機能材料による非定型の固相(塊)が観察された。
【0069】
[顆粒の水分量]
各顆粒に含まれる自由水を、近赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、「NIR moisture meter KJT-230」)を用いて測定した。
また、各顆粒に含まれる全水分量を次の方法で測定した。顆粒約5gを電子天秤(METTLER TOLEDO製、「ME204」)を用いて測定し、更に全体が約25gになるまで蒸留水を加え、その時の重量を測定した。顆粒を完全に溶解した後、レフブリックス計(株式会社アタゴ製、「RX-5000α」)を用いて測定した屈折率から、顆粒溶液中の総固形分を算出した。初めに測定した顆粒重量と、顆粒溶液の総固形分の重量差を、顆粒に含まれる全水分量として算出した。結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
[流動性の評価]
各実施例に係る一次乾燥顆粒について、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。評価基準については下記のとおりとした。その結果、実施例1~3の全ての顆粒において、流動性の評価が〇であった。
〇:さらさらしている
△:さらさらだが押すと固まる
×:べたつく、又は固まりがある
【0072】
さらに、各実施例に係る一次乾燥顆粒については、R.L.Carrにより提案された「流動性指数」及び「噴流性指数」を算出した(Carr,R.L.「Evaluating flow properties of solids.」Chem.Eng.(1965)72(163-168))。各実施例の一次乾燥顆粒について、多機能型粉体物性測定器(株式会社セイシン企業製、「マルチテスターMT-02」)を用いて、顆粒の安息角(°)、スパチュラ角(°)を求めた。実施例3の一次乾燥顆粒については、更に圧縮度(%)及び均一度(-)を求め、Carrの理論に基づき、各測定値に対応する指数を得た。各測定値の指数を合算することにより、流動性指数を得、表3に記載のCarrの評価基準に基づき、流動性を評価した。以上の結果を表4に示す。
【0073】
また、上記装置を用いて、各実施例に係る一次乾燥顆粒の崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。実施例3の一次乾燥顆粒については、更に分散度(%)を求め、Carrの理論に基づき得られた各測定値に対応する指数と、流動性指数に基づく指数を足し合わせることにより、噴流性指数を得た。表3に記載のCarrの評価基準に基づき、実施例3に係る一次乾燥顆粒の噴流性を評価した。以上の結果を表4に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
[酵素活性の評価(1)]
噴霧乾燥を実施するにあたり、混合懸濁液に含まれるADHが時間の経過によりどの程度失活するかを確認した。混合懸濁液を採取し、ADH濃度が0.25U/mLになるように蒸留水で希釈した。希釈後、25℃の雰囲気下でADHの基質と反応させて、反応後の液について、分光光度計(株式会社島津製作所製、「UVmini-1240」)により340nmにおける吸光度を測定した。0.25U/mLに調整したADH試薬の吸光度を100%として、各経過時間における吸光度の比率を活性保持率とした。各混合懸濁液における活性保持率の変化を表5に示す。
【0077】
【0078】
表5から、実施例1~3に係る方法により調製した混合懸濁液を噴霧乾燥に供する間、酵素活性が十分に保持されていることが確認された。
【0079】
[酵素活性の評価(2)]
実施例1~3において得られた顆粒を対象として、[酵素活性の評価(1)]と同様の方法によりADHの活性保持率を測定した。結果を表6に示す。
【0080】
【0081】
[酵素活性の評価(3)]
実施例1に係る一次乾燥顆粒、並びに、実施例2に係る一次乾燥顆粒及び二次乾燥顆粒について、低温保存したときの酵素活性の変化を確認した。各顆粒をチャック付きアルミ袋(株式会社生産日本社製、ラミジップAL-J)に入れ、-20℃の環境下、及び4℃の環境下に所定の日数保存し、上述した方法と同様の方法により、低温保存期間中の各顆粒における活性保持率の変化を測定した。結果を表7に示す。
【0082】
【0083】
<実施例4>
水にトレハロース(株式会社林原製、「結晶トレハロース」)を加え、湯せんで80℃に加温しながら溶解し、ブリックス値(Bx)が62のトレハロース溶液(糖液)を5kg得た。このトレハロース溶液5kgを金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷した。30℃以下の温度を維持しながら、超音波発振器(株式会社エスエムテー製、「ULTRA SONIC HOMOGENIZER UH-500」)を用いて、POWER MONITERレベル5で15分間処理した。処理後の溶液(糖懸濁液Dともいう)についてデジタルマイクロスコープ(倍率:500倍)で観察したところ、20~80μmのトレハロースの結晶が糖懸濁液D中に含まれていた。糖懸濁液Dのデジタルマイクロスコープによる観察結果を、
図3に示す。
【0084】
糖懸濁液D4kgに、Bxが50のスクロース水溶液260gを添加した。さらに、ADH及びBSAを実施例1と同様の添加量で添加して、混合懸濁液(混合懸濁液Dともいう)を得た。
【0085】
[噴霧乾燥]
混合懸濁液Dを、噴霧乾燥機を用いて、以下に示す条件により噴霧乾燥した。60分間の噴霧後、噴霧乾燥機の缶壁の半面に付着した顆粒(一次乾燥顆粒)を採取した。その後、更に30~40分間送風を行い、噴霧乾燥機の缶壁の他の半面に付着した顆粒(二次乾燥顆粒)を採取した。
<噴霧乾燥条件>
雰囲気温度:28.4~28.6℃
雰囲気湿度:33~35%
入口空気温度:30.2℃
出口空気温度:26.1~28.6℃
供給量:40~45mL/分
アドマイザ回転数:15118~17081rpm
送風風量:60Hz
排風風量:37Hz
【0086】
[外観観察]
実施例4に係る一次乾燥顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による顆粒粒子の外観観察を行った(倍率:1000倍)。観察結果を
図4に示す。
図4に示すように、得られた一次乾燥顆粒は、結晶状態の糖(トレハロース)が凝集して形成されていることが分かる。また、顆粒粒子の外観、断面を観察したところ、結晶状態の糖同士が形成する間隙に、非結晶状態の糖及び機能材料による非定型の固相(塊)が観察された。
【0087】
[流動性の評価]
実施例4に係る一次乾燥顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、流動性の評価が〇であった。
【0088】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例4に係る一次乾燥顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)、並びに噴流性の指標となる崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。その結果、安息角が32.5°、スパチュラ角が34.1°、崩壊角が20.5°、差角が12.0°であった。
【0089】
[水分活性の調整]
実施例4に係る顆粒から、水分活性の異なる顆粒を調製した。実施例4に係る二次乾燥顆粒をアルミ箔で包装した顆粒(顆粒X)と、実施例4に係る一次乾燥顆粒を室温(24~27℃)で20分間減圧乾燥してから、シリカゲルで20~30%RHに調湿したデシケーターに入れた顆粒(顆粒Y)とを用意した。顆粒X及び顆粒Yの水分活性を、水分活性測定装置(METER社製、「Dew Point water activity Meter AquaLAb Series4TE」)により測定した。その結果、下記に示す保存試験前の顆粒Xの水分活性(Aw)は0.7561であり、顆粒Yの水分活性(Aw)は0.4141であった。
【0090】
アルミ箔に包装された状態の顆粒X、デシケーターに保管された顆粒Yを、それぞれ二つの系に分けて、一方は室温(24~27℃)で保存し、もう一方は冷蔵室(4~8℃)で保存した。すなわち、顆粒X及び顆粒Yのそれぞれについて、室温で保存した系と、冷蔵保存した系を設けた。
【0091】
[酵素活性の評価(4)]
上述した「酵素活性の評価(2)」における方法と同様の方法により、室温又は冷蔵保存後の顆粒X、顆粒Yについて、340nmにおける吸光度を測定した。一方、混合懸濁液Dにおいて、ADH濃度が0.25U/mLになるように蒸留水で希釈した。希釈後、25℃の雰囲気下でADHの基質と反応させて、反応後の液について、分光光度計により340nmにおける吸光度を測定した。混合懸濁液Dから測定される吸光度を100%として、各顆粒から測定される吸光度を活性保持率とした。保存時間に伴う活性保持率の変化を表8に示す。
【0092】
【0093】
<実施例5、比較例1~2>
温水に糖類(トレハロース)を加え、湯せんで90℃に加温しながら溶解し、ブリックス値が62の糖液を得た。この90℃の糖液を金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷し、4kgの糖懸濁液(糖懸濁液Eともいう)を得た。一方、0.248gの乳酸脱水素酵素(LDH)(オリエンタル酵母株式会社製)、0.322gのBSA、130gのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)、及びトレハロース130gを含有する酵素液を調製した。液温30℃に達した直後の糖懸濁液Eにこの酵素液を加え、混合懸濁液(混合懸濁液Eともいう)を得た。なお、酵素液中のBSA、リン酸緩衝生理食塩水、及びトレハロースは、一般的な保護成分として添加されたものである。
【0094】
混合懸濁液Eを、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥した。実施例5に係る顆粒は、入口空気温度30.0℃、出口空気温度23.5℃の条件で噴霧乾燥することにより得た。一方、比較例1に係る顆粒は、入口空気温度100.0℃、出口空気温度76.7℃の条件で噴霧乾燥し、比較例2に係る顆粒は、入口空気温度165.0℃、出口空気温度121.4℃の条件で噴霧乾燥することにより得た。温度以外の噴霧乾燥の条件は、いずれの実施例及び比較例においても以下の条件に統一した。
送風風量:60.0Hz
排風風量:37.0Hz
塔内静圧:微陽圧
アトマイザ回転数:18000rpm
装置形状:湿式
供給量:42~45mL/分
混合懸濁液の液温:26.9~28.0℃
【0095】
[外観観察]
実施例5、及び比較例1~2に係る顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子の外観観察を行った。観察結果(倍率:500、1000倍)を
図5に示す。なお、
図5(a)は実施例5に係る顆粒(顆粒粒子)、
図5(b)は比較例1に係る顆粒、
図5(c)は比較例2に係る顆粒の観察結果である。
図5(a)に示すように、実施例5に係る顆粒では、結晶状態の糖が凝集して形成されていることが分かる。
【0096】
[流動性の評価]
実施例5及び比較例1~2の顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、実施例5に係る顆粒では流動性の評価が〇であったが、比較例1及び比較例2に係る顆粒では、いずれも評価が×であった。
【0097】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例5及び比較例2に係る顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)を求めた。結果を表9に示す。
【0098】
【0099】
[酵素活性の評価]
実施例5及び比較例2の顆粒を対象として、顆粒中のLDH活性が時間の経過によりどの程度保持されるかを確認した。室温(25℃)に所定日数保管した顆粒を採取し、LDH濃度が0.25U/mLになるように顆粒を蒸留水で希釈した。希釈後、25℃の雰囲気下でLDHの基質と反応させて、反応後の液について、分光光度計(株式会社島津製作所製、「UVmini-1240」)により340nmにおける吸光度を測定した。0.25U/mLに調整したLDH試薬の吸光度を100%として、各経過日数における吸光度の比率を活性保持率とし、結果を表10に示す。
【0100】
【0101】
<実施例6、比較例3>
上述した実施例5における方法において、LDHをADHに変更した以外は、実施例5と同様の方法により混合懸濁液(混合懸濁液Fともいう)を得た。
【0102】
混合懸濁液Fを、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥した。実施例6に係る顆粒は、入口空気温度30.0℃、出口空気温度23.5℃の条件で噴霧乾燥することにより得た。一方、比較例3に係る顆粒は、入口空気温度100.0℃、出口空気温度76.7℃の条件で噴霧乾燥した。温度以外の噴霧乾燥の条件は実施例5における条件と同様とした。
【0103】
[外観観察]
実施例6及び比較例3に係る顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による外観観察を行った。観察結果(倍率:500倍)を
図6に示す。なお、
図6(a)は実施例6に係る顆粒、
図6(b)は比較例3に係る顆粒の観察結果である。
図6(a)に示すように、実施例6に係る顆粒では、結晶状態の糖が凝集して形成されていることが分かる。
【0104】
[流動性の評価]
実施例6及び比較例3の顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、実施例6に係る顆粒では流動性の評価が〇であったが、比較例3に係る顆粒では評価が×であった。
【0105】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例6及び比較例3に係る顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)を求めた。結果を表11に示す。
【0106】
【0107】
<実施例7>
乳酸菌Lb.paracasei JCM8130Tを、理研研究所バイオリソース研究センターから購入し、培養して種菌とした。種菌を500mLのMRS液体培地を用いて、37℃で48時間培養した。得られた培養液について660nmにおける吸光度を測定することにより、乳酸菌の培養液が定常状態にあることを確認した。培養後のMRS培地から上清を取り除き、沈殿分画を乳酸菌の濃厚ペレットとして得た。得られた乳酸菌のペレットに、保護剤として、130gのトレハロース、26.1gのスキムミルク、2.61gのアスコルビン酸、及び130gのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)を添加して、これを乳酸菌液とした。乳酸菌液は、後述の糖懸濁液と混合するまで25℃の室温下で撹拌しながら保持した。一方、実施例5における方法と同様の方法により、4kgの糖懸濁液Eを調製した。30℃の糖懸濁液Eに乳酸菌液を添加して混合懸濁液(混合懸濁液Gともいう)を得た。
【0108】
混合懸濁液Gを、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥して、実施例7に係る顆粒を得た。このとき、噴霧乾燥の条件は全て実施例5と同様の条件とした。
【0109】
[外観観察]
実施例7に係る顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による顆粒粒子の外観観察を行った。観察結果(倍率:1000倍)を
図7に示す。
図7に示すように、実施例7に係る顆粒では、結晶状態の糖が凝集して形成されていることが分かる。
【0110】
[流動性の評価]
実施例7の顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、流動性の評価が〇であった。
【0111】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例7に係る顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)、並びに噴流性の指標となる崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。その結果、安息角は32°、スパチュラ角は50.8°、崩壊角は21°、差角は11°であった。
【0112】
[乳酸菌生存率の評価]
実施例7の顆粒を対象として、顆粒中の乳酸菌が時間の経過によりどの程度保持されるかを確認した。4℃、25℃、及び37℃の各環境下に所定日数保管した顆粒について、2.5mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)を用いて100倍の系列希釈を5反復実施した。それぞれの希釈液1mLを、滅菌済みシャーレに滴下した後、50℃に保温したBCP加アガール培地を希釈液の入ったシャーレに20mL注ぎ込んだ。37℃の恒温器で72時間培養した後、シャーレに形成された乳酸菌のコロニー数をカウントした。希釈倍率から、顆粒1gに含まれていた乳酸菌体数(CFU/g)を計算により求めた。経過日数に伴う乳酸菌体数の変化(Log(CFU/g))を表12に示す。
【0113】
【0114】
<実施例8>
アラビアガム330gを温水500gに完全に溶解して、アラビアガム溶液を調製した。アラビアガム溶液を液温60℃に調整して、ここに中鎖脂肪酸油(MCT、日清MCTオイル、日清オイリオ株式会社製)165gを混合してから、実施例4と同様の超音波発振器を用いて、POWER MONITERレベル5で乳化処理した。乳化処理の条件としては、30秒の運転と30秒の休止を3回繰り返した。これにより、MCT乳化液を得た。一方、実施例5における方法と同様の方法により、4kgの糖懸濁液Eを調製した。30℃の糖懸濁液EにMCT乳化液を添加して混合懸濁液(混合懸濁液Hともいう)を得た。
【0115】
混合懸濁液Hを、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥して、実施例8に係る顆粒を得た。このとき、噴霧乾燥の条件は全て実施例5と同様の条件とした。
【0116】
[外観観察]
実施例8に係る顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による顆粒粒子の外観観察を行った。観察結果(倍率:1000倍)を
図8に示す。
図8に示すように、実施例8に係る顆粒では、結晶状態の糖が凝集して形成されていることが分かる。
【0117】
[流動性の評価]
実施例8の顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、流動性の評価が〇であった。
【0118】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例8に係る顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)、並びに噴流性の指標となる崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。その結果、安息角は38°、スパチュラ角は49.8°、崩壊角は34°、差角は4°であった。
【0119】
<実施例9>
香料(バニリン)40gを、乾熱滅菌器で95℃に温め融液とした後、30℃に急冷した。一方、実施例5における方法と同様の方法により、4kgの糖懸濁液Eを調製した。30℃の糖懸濁液Eに、30℃のバニリン融液40gを混合して、混合懸濁液(混合懸濁液Iともいう)を得た(混合懸濁液Iの固形分中のバニリン濃度:1.59質量%)。
【0120】
混合懸濁液Iを、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥して、実施例9に係る顆粒を得た。このとき、噴霧乾燥の条件は全て実施例5と同様の条件とした。
【0121】
[外観観察]
実施例9に係る顆粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)による顆粒粒子の外観観察を行った。観察結果(倍率:1000倍)を
図9に示す。
図9に示すように、実施例9に係る顆粒では、結晶状態の糖が凝集して形成されていることが分かる。
【0122】
[流動性の評価]
実施例9の顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、流動性の評価が〇であった。
【0123】
さらに、上述した方法と同様の方法により、実施例9に係る顆粒について、流動性の指標となる顆粒の安息角(°)及びスパチュラ角(°)、並びに噴流性の指標となる崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。その結果、安息角は34°、スパチュラ角は44.3°、崩壊角は26.5°、差角は7.5°であった。
【0124】
[官能評価]
実施例9に係る顆粒においては、バニリンの芳香が強く保持されていた。顆粒中のバニリン濃度がどの程度であるかを評価するために、下記の方法で三点識別法での官能評価を実施した。
【0125】
まず、下記の溶液をそれぞれ調製した。
(1)ブランク:温水1Lにトレハロース1240mgを完全溶解した。
(2)顆粒溶液:温水1Lに、実施例9に係る顆粒1260mgを完全溶解した(香気回収率100%であれば、バニリン濃度0.02%となる希釈倍率)。
(3)非顆粒溶液:温水1Lに、バニリン20mg、トレハロース1240mgを完全溶解した(バニリン濃度0.02%となる希釈倍率)。
【0126】
(1)~(3)の各溶液10mLを系列希釈した(最大希釈256倍)。新品のファルコンチューブに系列希釈液を10mLずつ入れ、フィルターろ紙(株式会社アドバンテック製)を短冊切りにした厚紙の先端に希釈液を滴下して、パネル2名がその芳香を評価し、三点識別法に基づく判別を行った。すなわち、それぞれブランク2点に対して、顆粒溶液の希釈液、又は非顆粒溶液の希釈液を判別できるかを確認した。結果を表13に示す。表13では、2名のパネル(パネル1、パネル2)が希釈液の芳香を判別できた場合を〇、判別できなかった場合を×として示す。表13に示す結果から、実施例9に係る顆粒では、噴霧乾燥後にもバニリンの芳香が十分に保持されているといえる。
【0127】
【0128】
<参考例1:噴霧乾燥時における温度条件の影響>
噴霧乾燥における温度条件が、顆粒の流動性にどの程度影響するかを検討した。温水に糖類(トレハロース:スクロース95:5)を加え、湯せんで90℃に加温しながら溶解し、ブリックス値が61の糖液を得た。この90℃の糖液を金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷した。30℃前後の温度を維持しながら、実施例4と同様の超音波発振器を用いて、POWER MONITERレベル5で15分間処理することにより、糖懸濁液を得た。
【0129】
糖懸濁液を、後述の表14に示す温度条件(入口空気温度、出口空気温度)でそれぞれ噴霧乾燥し、顆粒を得た。温度以外の噴霧乾燥の条件は実施例5における条件と同様とした。
【0130】
各顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。結果を表14に示す。
【0131】
【0132】
<参考例2:糖懸濁液の濃度の影響>
糖懸濁液の濃度(ブリックス値)が顆粒の流動性にどの程度影響するかを検討した。温水に糖類(トレハロース:スクロース95:5)を加え、湯せんで90℃に加温しながら溶解し、ブリックス値が50.0、55.0、及び61.0の糖液をそれぞれ調製した。各糖液を金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷し、糖懸濁液を得た。
【0133】
それぞれの糖懸濁液を、上述の噴霧乾燥機を用い噴霧乾燥して顆粒を得た。このとき、噴霧乾燥の条件は全て実施例5と同様の条件とした。
【0134】
各顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、ブリックス値が50.0、55.0、及び61.0の糖液を基に得られた顆粒において、全て流動性評価が〇であった。
【0135】
<参考例3:噴霧乾燥時におけるアトマイザ回転数の影響>
噴霧乾燥におけるアトマイザ回転数が、顆粒の流動性にどの程度影響するかを検討した。温水に糖類(トレハロース:スクロース=95:5)を加え、湯せんで90℃に加温しながら溶解し、ブリックス値が61の糖液を得た。この90℃の糖液を金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷して、糖懸濁液を得た。
【0136】
糖懸濁液を、アトマイザ回転数が5000rpm、10000rpm、及び18000rpmの条件でそれぞれ噴霧乾燥し、顆粒を得た。アトマイザ回転数以外の噴霧乾燥の条件は実施例5における条件と同様とした。
【0137】
各顆粒について、上述の評価基準に基づき、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。その結果、5000rpm、10000rpm、及び18000rpmのアトマイザ回転数で噴霧乾燥された顆粒において、全て流動性評価が〇であった。