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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/69 20060101AFI20221110BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20221110BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20221110BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221110BHJP
   H05K 1/03 20060101ALN20221110BHJP
   H01L 23/29 20060101ALN20221110BHJP
   H01L 23/31 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
C08G18/69
C08G18/62 004
C08G18/62 016
C08G18/40 063
C09K3/10 D
H05K1/03 610H
H01L23/30 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022071017
(22)【出願日】2022-04-22
【審査請求日】2022-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】範國 正拓
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特許第6916404(JP,B2)
【文献】特開2012-214703(JP,A)
【文献】特開2020-132745(JP,A)
【文献】特開平07-025973(JP,A)
【文献】特表2016-526064(JP,A)
【文献】特開2019-099598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022666(WO,A1)
【文献】特開昭61-183312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、
ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含み、
前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを50質量%以上含み、
前記ポリオールは、さらに重量平均分子量が1000~5000の(メタ)アクリルポリオールを5~40質量%含み、
前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して3~60質量部である、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオールは、さらに炭素数が7以上9以下のアルキレンポリオールを4~15質量%含む、請求項1に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
電気電子部品封止用である、請求項1または2に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【請求項5】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるポリオール組成物であって、
ポリオールおよびテルペン樹脂を含み、
前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを50質量%以上含み、
前記ポリオールは、さらに重量平均分子量が1000~5000の(メタ)アクリルポリオールを5~40質量%含み、
前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して3~60質量部である、ポリオール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物、およびそれを用いた電気電子部品、ならびに、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のためのポリオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子回路基板や電子部品は、外的要因から保護するためにポリウレタン樹脂組成物を用いて封止することが行われており、ポリウレタン樹脂組成物のポリオールとしてポリブタジエンポリオールを用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリオールを含む第1成分とポリイソシアネートを含む第2成分を含む二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物において、ポリオールとしてポリブタジエンポリオールが用いられ、さらにひまし油系ポリオールが添加されてもよいことが記載されている。特許文献1には、また、上記第1成分においてポリブタジエンポリオールとともにテルペン樹脂が用いられており、それにより第1成分の相溶性が改善されるとともに、基板との密着性が高く誘電率の低いポリウレタン樹脂が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6916404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物をさらに検討したところ、耐湿熱性の点で十分とはいえないことが判明した。そして、耐湿熱性を改善するために、ポリブタジエンポリオールと併用するポリオールを変更等して検討していくなかで、配合によっては硬化物の引張伸びが大きく低減する場合があることが判明した。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、耐湿熱性と引張伸びを両立することができる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含み、前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを40質量%以上含み、前記ポリオールは、さらに(メタ)アクリルポリオールを5~40質量%含み、前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して3~60質量部である、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[2] 前記ポリオールは、さらに炭素数が7以上9以下のアルキレンポリオールを4~15質量%含む、[1]に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[3] 電気電子部品封止用である、[1]または[2]に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[4] [1]または[2]に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品。
[5] 二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるポリオール組成物であって、ポリオールおよびテルペン樹脂を含み、前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを40質量%以上含み、前記ポリオールは、さらに(メタ)アクリルポリオールを5~40質量%含み、前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して3~60質量部である、ポリオール組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、耐湿熱性と引張伸びを両立することができる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール(A)およびテルペン樹脂(B)を含む第1成分と、ポリイソシアネート(C)を含む第2成分と、を含む。ポリオール(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)と、(メタ)アクリルポリオール(A2)とを含む。
【0010】
<第1成分>
[ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)]
第1成分に含まれるポリオール(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)(以下、両者をまとめて「PBポリオール(A1)」ということがある。)を含む。
【0011】
ポリブタジエンポリオール(A1-1)としては、分子中に1,4-結合型、1,2-結合型またはそれらが混在したポリブタジエン構造と少なくとも2つのヒドロキシ基を有するものが好ましく、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれヒドロキシ基を有するものがより好ましい。
【0012】
ポリブタジエンポリオール(A1-1)の水酸基価は、例えば10~200mgKOH/gでもよく、15~150mgKOH/gでもよく、20~120mgKOH/gでもよい。密着性および相溶性を観点から、ポリブタジエンポリオール(A1-1)の水酸基価は25~100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは40~90mgKOH/gである。本明細書において、水酸基価はJIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される。
【0013】
水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)は、ポリブタジエンポリオール(A1-1)に対して水素添加した構造を持つものであり、ポリブタジエンポリオールに含まれている不飽和二重結合の一部又は全てが水添されている。水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)の水添の度合いは特に限定されず、例えばヨウ素価が50g/100g以下でもよく、30g/100g以下でもよい。本明細書において、ヨウ素価はJIS K0070:1992に準じて測定される。
【0014】
水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)の水酸基価は、例えば10~200mgKOH/gでもよく、15~150mgKOH/gでもよく、20~120mgKOH/gでもよく、25~100mgKOH/gでもよく、40~90mgKOH/gでもよい。
【0015】
PBポリオール(A1)としては、引張強度の観点からポリブタジエンポリオール(A1-1)を用いることがより好ましい。
【0016】
[(メタ)アクリルポリオール(A2)]
第1成分に含まれるポリオール(A)は、PBポリオール(A1)とともに(メタ)アクリルポリオール(A2)を含む。(メタ)アクリルポリオール(A2)を添加することにより、良好な引張伸びを維持しながら耐湿熱性を改善することができる。
【0017】
(メタ)アクリルポリオール(A2)は、複数のヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーである。(メタ)アクリルポリオール(A2)としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーの単独重合体や共重合体、またはヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに重合性不飽和結合を有する他のモノマーを共重合させたものが例示される。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリルポリオール」は、アクリルポリオールおよび/またはメタクリルポリオールを意味する。「(メタ)アクリルモノマー」は、アクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを意味する。
【0019】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンの(メタ)アクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸モノエステル等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等が挙げられる。これらはいずれか1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0020】
重合性不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルおよび/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルなどの(メタ)アクリル酸エステルが好ましく用いられる。
【0021】
(メタ)アクリルポリオール(A2)の水酸基価は、例えば10~200mgKOH/gでもよく、20~180mgKOH/gでもよく、50~150mgKOH/gでもよく、80~130mgKOH/gでもよい。
【0022】
(メタ)アクリルポリオール(A2)の重量平均分子量(Mw)は、例えば1000~30000でもよく、1200~10000でもよく、1500~5000でもよく、1800~3000でもよい。本明細書において、重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPC装置により行い、ポリスチレン換算値として求められる。具体的な測定条件は、下記のとおりである。
・カラム:昭和電工社製のポリスチレンゲルカラム(SHODEX GPC KF-601+SHODEX GPC KF-602+SHODEX GPC KF-603+SHODEX GPC KF-604をこの順で直列に接続)
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率検出器(昭和電工社製のRI-504)
・流速:0.6mL/分。
・試料注入量:10μL
・試料濃度:0.2質量%THF溶液
【0023】
(メタ)アクリルポリオール(A2)としては、公知の重合方法により合成してもよく、また市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製「ARUFON UH-2000、UH-2032、UH-2041、UH-2190」等が挙げられる。
【0024】
[アルキレンポリオール(A3)]
第1成分に含まれるポリオール(A)は、PBポリオール(A1)および(メタ)アクリルポリオール(A2)とともに、炭素数7~9のアルキレンポリオール(A3)をさらに含んでもよい。アルキレンポリオール(A3)を添加することにより、引張強度を向上することができる。
【0025】
炭素数7~9のアルキレンポリオール(A3)は、1分子中にヒドロキシ基を2つ有するジオールでもよく、ヒドロキシ基を3つ以上有するものでもよいが、好ましくはジオールである。炭素数7~9のアルキレンポリオール(A3)の具体例としては、1,7-ヘプタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、5-メチル-2,4-ヘキサンジオール、2-メチル-2,5-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ペンタンジオールなどのヘプタンジオール; 1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2-メチル-1,2-ヘプタンジオール、2-メチル-1,3-ヘプタンジオール、2-メチル-2,3-ヘプタンジオール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、3,4-ジメチル-3,4-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3,4-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-プロピル-1,2-ペンタンジオールなどのオクタンジオール; 1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,4-ヘプタンジオール、2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオール、2,6-ジメチル-2,6-ヘプタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどのノナンジオールが挙げられる。これらはいずれか1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
アルキレンポリオール(A3)としては、分岐アルキレンジオールが好ましい。分岐アルキレンジオールとは、分子内に第三級炭素原子および/または第四級炭素原子を有するアルキレンジオールである。より好ましくは、分子内に第三級炭素原子を有するとともに、第一級炭素原子に結合したヒドロキシ基と、第一級炭素原子または第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有するジオールを用いることである。そのようなジオールとして、例えば、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,4-ヘプタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。これらはいずれか1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)は、PBポリオール(A1)および(メタ)アクリルポリオール(A2)のみで構成されてもよく、PBポリオール(A1)、(メタ)アクリルポリオール(A2)およびアルキレンポリオール(A3)のみで構成されてもよく、また、これらに加えてさらに他のポリオール(A4)を含有してもよい。ポリオール(A)は、2官能のもののみで構成されてもよく、3官能以上のものを含んでもよいが、ポリイソシアネート(C)が2官能のもののみで構成される場合、ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化性にするべく3官能以上のポリオールを含むことが好ましい。
【0028】
他のポリオール(A4)は、分子内に複数のヒドロキシ基を持つ化合物であって、PBポリオール(A1)、(メタ)アクリルポリオール(A2)およびアルキレンポリオール(A2)以外の各種ポリオールが挙げられる。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマー酸ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。また、一般に架橋剤として用いられている低分子量ポリオール、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等の芳香族アルコールが挙げられる。
【0029】
ポリオール(A)100質量%中におけるPBポリオール(A1)の含有量は、40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。PBポリオール(A1)の含有量が40質量%以上であることにより、電子回路基板等との密着性を向上することができ、また誘電率を低下させることができる。PBポリオール(A1)の含有量は、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、80質量%以下でもよい。
【0030】
ポリオール(A)100質量%中における(メタ)アクリルポリオール(A2)の含有量は、5~40質量%である。(メタ)アクリルポリオール(A2)の含有量が5質量%以上であることにより、耐湿熱性と引張伸びを改善することができ、また40質量%以下であることにより、第1成分の相溶性の低下を抑えることができる。(メタ)アクリルポリオール(A2)の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは12質量%以上である。(メタ)アクリルポリオール(A2)の含有量は、35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、25質量%以下でもよい。
【0031】
ポリオール(A)にアルキレンポリオール(A3)を含有させる場合、ポリオール(A)100質量%中におけるアルキレンポリオール(A3)の含有量は、4~15質量%であることが好ましい。アルキレンポリオール(A3)の含有量が4質量%以上であることにより引張強度を改善することができ、また15質量%以下であることにより、第1成分の相溶性の低下を抑えることができる。アルキレンポリオール(A3)の含有量は、5質量%以上でもよく、また、12質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0032】
[テルペン樹脂(B)]
第1成分には、PBポリオール(A1)および(メタ)アクリルポリオール(A2)とともにテルペン樹脂(B)が配合される。テルペン樹脂(B)はPBポリオール(A1)との相溶性に優れるため、第1成分の分離や濁りを抑制することができる。また、PBポリオール(A1)および(メタ)アクリルポリオール(A2)とともにテルペン樹脂(B)を配合することにより、耐湿熱性と引張伸びを両立することができる。また、電子回路基板等との密着性を向上することができ、低誘電特性の維持ないし向上にも繋がる。
【0033】
テルペン樹脂(B)は、テルペンを構成モノマーとして含む重合体である。テルペン(テルペンモノマーともいう。)としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(ラセミ体のジペンテンも含む。)、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、およびサビネン等のモノテルペンが挙げられ、これらをいずれか1種または2種以上併用することができる。これらの中でも、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン、およびγ-テルピネン等の単環式のモノテルペンが好ましく、より好ましくはα-ピネン、β-ピネン、およびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0034】
テルペン樹脂(B)としては、例えば、下記(B1)~(B3)が挙げられる。
・構成モノマーがテルペンモノマーのみからなる単独重合体または共重合体であるポリテルペン樹脂(B1)
・テルペンモノマーと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂(B2)
・テルペンモノマーとフェノール系モノマーとの共重合体であるテルペンフェノール樹脂(B3)
これら(B1)~(B3)は、いずれか1種用いても、2種以上併用してもよい。
【0035】
芳香族変性テルペン樹脂(B2)を構成する芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等が挙げられる。
【0036】
テルペンフェノール樹脂(B3)を構成するフェノール系モノマーとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0037】
テルペン樹脂(B)の好適な例としては、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種の単独重合体または共重合体であるポリテルペン樹脂(B1)、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種のテルペンモノマーとスチレンとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂(B2)、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種のテルペンモノマーとフェノールとの共重合体であるテルペンフェノール樹脂(B3)が挙げられる。
【0038】
テルペン樹脂(B)の含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して3~60質量部である。テルペン樹脂(B)の含有量が60質量部以下であることにより、ポリウレタン樹脂の硬化後におけるテルペン樹脂(B)のブリードを抑制することができる。テルペン樹脂(B)の含有量は、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは12質量部以上であり、15質量部以上でもよい。テルペン樹脂(B)の含有量は、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0039】
[その他の成分]
第1成分には、上記した各成分の他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0040】
触媒としては、例えば、有機スズ触媒、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒などの金属触媒、アミン触媒などの各種ウレタン重合触媒を用いることができる。
【0041】
可塑剤としては、特に限定されず、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤などが挙げられる。可塑剤としてはアクリル系可塑剤を用いることが好ましく、第1成分の粘度を低減することができる。可塑剤の含有量は、特に限定されず、例えば、ポリオール(A)100質量部に対して30質量部以下でもよく、5~20質量部でもよい。
【0042】
<第2成分>
[ポリイソシアネート(C)]
第2成分に含まれるポリイソシアネート(C)としては、特に限定されず、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する種々のポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート(C)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート(C1)、脂肪族ポリイソシアネート(C2)、および、脂環式ポリイソシアネート(C3)が挙げられ、これらをいずれか1種用いても2種以上併用してもよい。
【0043】
芳香族ポリイソシアネート(C1)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI、例えば2,4-TDI、2,6-TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、例えば2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、並びにこれらの変性体および多核体が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネート(C2)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、並びにこれらの変性体および多核体が挙げられる。
【0045】
脂環式ポリイソシアネート(C3)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、並びにこれらの変性体および多核体が挙げられる。
【0046】
上記変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0047】
一実施形態において、ポリイソシアネート(C)は、芳香族ポリイソシアネート(C1)を含むことが好ましい。芳香族ポリイソシアネート(C1)を用いることにより、引張特性の改善効果を高めることができる。より好ましくは、ポリイソシアネート(C)として、ジフェニルメタンジイソシアネート、並びにその変性体および多核体からなる群から選択される少なくとも1種を用いることである。
【0048】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物におけるポリイソシアネート(C)の含有量は、特に限定されず、例えば、ポリオール(A)100質量部に対して、1~70質量部でもよく、3~50質量部でもよく、5~40質量部でもよい。
【0049】
ポリイソシアネート(C)は、2官能のもののみで構成されてもよく、3官能以上のものを含んでもよいが、ポリオール(A)が2官能のもののみで構成される場合、ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化性にするべく3官能以上のポリイソシアネートを含むことが好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート(C)とポリオール(A)との比は、特に限定されず、例えば、NCO/OH(インデックス)が、0.6~1.5でもよく、0.7~1.4でもよく、0.8~1.3でもよく、0.9~1.2でもよい。ここで、NCO/OHは、ポリオール(A)に含まれるヒドロキシ基に対する、ポリイソシアネート(C)に含まれるイソシアネート基のモル比である。NCO/OHは、ポリオール(A)の水酸基価とポリイソシアネート(C)のイソシアネート価を用いて算出される。イソシアネート価は、JIS K1603-1:2007のA法に準拠して測定されるイソシアネート含有率を用いて、イソシアネート価={(イソシアネート含有率)×56110}/(42.02×100)により算出される。
【0051】
[その他の成分]
第2成分はポリイソシアネート(C)のみで構成してもよく、また、ポリイソシアネート(C)の他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えてもよい。
【0052】
<二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物>
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、通常は、第1成分としての第1液と第2成分としての第2液とで構成されるが、第1成分および第2成分の他に、任意成分としての上記その他の成分を含む第3成分を第3液として備えてもよい。
【0053】
該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、第1成分と第2成分をそれぞれ調製することにより製造することができ、すなわち、第1成分と第2成分はそれぞれ別の容器に充填されたものでもよい。別々の容器に充填された第1成分と第2成分は、使用時に混合されることによりポリオール(A)とポリイソシアネート(C)が反応してポリウレタン樹脂が形成され、硬化してもよい。その際、加熱により硬化させてもよい。実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、第1成分と第2成分を混合して得られたものであってもよく、硬化前の液状でもよく、硬化していてもよい。
【0054】
<ポリオール組成物>
一実施形態に係るポリオール組成物は、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるものであり、上記第1成分がこれに相当する。そのため、該ポリオール組成物は、ポリオール(A)およびテルペン樹脂(B)を含み、該ポリオール(A)がポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオール(A1)を40質量%以上含み、該ポリオール(A)がさらに(メタ)アクリルポリオール(A2)を5~40質量%含み、テルペン樹脂(B)の含有量がポリオール(A)100質量部に対して3~60質量部である。該ポリオール(A)は、さらに炭素数が7~9のアルキレンポリオール(A2)を4~15質量%含んでもよい。ポリオール(A)、テルペン樹脂(B)およびその他の成分についての詳細は上述したとおりであり、説明は省略する。
【0055】
<二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、電気電子部品の封止のために用いられることが好ましい。電気電子部品としては、例えば、トランスコイル、チョークコイルおよびリアクトルコイルなどの変圧器、機器制御基板、センサ、無線通信部品などが挙げられる。該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、低誘電特性に優れ(すなわち誘電率が低く)電波の影響を受けにくい。そのため、該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、無線通信を行う無線通信部品を外部環境から保護するために当該無線通信部品を樹脂封止、すなわち被覆する封止材として用いられることが好ましい。例えば、検知した情報を無線通信により送信するセンサの封止材として用いてもよい。
【0056】
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品は、例えば、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、自動車、バイクなどに使用することができる。
【実施例
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。
【0058】
実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。
【0059】
[PBポリオール(A1)]
・ポリブタジエンポリオール1:水酸基価47mgKOH/g、製品名:Poly bd R-45HT、出光興産(株)製
・ポリブタジエンポリオール2:水酸基価107mgKOH/g、製品名:Poly bd R-15HT、出光興産(株)製
・水添ポリブタジエンポリオール:水酸基価49mgKOH/g、製品名:KRASOL H-LBH-2000、クレイバレー社製
【0060】
[(メタ)アクリルポリオール(A2)]
・(メタ)アクリルポリオール1:水酸基価120mgKOH/g、重量平均分子量2500、製品名:ARUFON UH-2041、東亜合成(株)製
・(メタ)アクリルポリオール2:水酸基価110mgKOH/g、重量平均分子量2000、製品名:ARUFON UH-2032、東亜合成(株)製
【0061】
[アルキレンポリオール(A3)]
・アルキレンポリオール1:2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、製品名:オクタンジオール、KHネオケム(株)製
・アルキレンポリオール2:2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、製品名:キョーワジオールPD-9、KHネオケム(株)製
【0062】
[その他のポリオール]
・ひまし油系ポリオール:水酸基価160mgKOH/g、製品名:ひまし油、伊藤製油(株)製
・ポリエステルポリオール:水酸基価56mgKOH/g、製品名:クラレポリオール P-2010、クラレ(株)製
【0063】
[テルペン樹脂(B)]
・テルペン樹脂1:リモネン・スチレン共重合体、有効成分50質量%、製品名:YSレジンLP、ヤスハラケミカル(株)製
・テルペン樹脂2:ピネン・ジペンテン共重合体、有効成分80質量%、製品名:ダイマロン、ヤスハラケミカル(株)製
・テルペン樹脂3:フェノール・α-ピネン共重合体、有効成分100質量%、製品名:YS POLYSTER T80、ヤスハラケミカル(株)製
【0064】
[ポリイソシアネート(C)]
・芳香族ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、製品名:ミリオネートMR-200、東ソー(株)製
【0065】
[その他の成分]
・アクリル系可塑剤:アクリル系ポリマー、重量平均分子量1600、製品名:ARUFON UP-1021、東亜合成(株)製
【0066】
[実施例1~16及び比較例1~6]
下記表1~3に示す配合(質量部)に従い、各実施例及び各比較例の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1~3に示す第1成分を所定量秤量し、適宜熱をかけて溶かし込みながら攪拌混合を行い、混合後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整した第2成分(ポリイソシアネート(C))を表1~3に記載のとおりに加えて攪拌混合し、脱泡した。
【0067】
なお、表1~3において、テルペン樹脂1およびテルペン樹脂2の配合の括弧内の値は、有効成分としての配合量を示す。
【0068】
各二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物について、引張強度、引張伸び、誘電率、密着性、相溶性、および耐湿熱性を測定・評価した。測定・評価方法は以下のとおりである。
【0069】
[引張強度、引張伸び]
上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を厚み3mmの金型に流し、80℃にて16時間(一晩)養生し、3mm厚の樹脂シートを作製した。該樹脂シートをダンベル状3号型に打ち抜き、測定用サンプルとした。測定は、(株)島津製作所製の装置(本体の型式:AG-X Plus、名称:島津精密万能試験機 オートグラフ)を用いて、引張速度を500mm/min、チャック間距離40mmに設定して3回実施し、引張強度(破断応力)・引張伸び(破断時の伸び率)の平均値を計算し、下記基準により評価した。
【0070】
(引張強度の評価基準)
A:引張強度が3.0MPa以上
B:引張強度が2.5MPa以上で3.0MPa未満
C:引張強度が2.0MPa以上で2.5MPa未満
D:引張強度が1.5MPa以上で2.0MPa未満
E:引張強度が1.5MPa未満
【0071】
(引張伸びの評価基準)
A:伸び率が130%以上
B:伸び率が110%以上で130%未満
C:伸び率が90%以上で110%未満
D:伸び率が70%以上で90%未満
E:伸び率が70%未満
【0072】
[誘電率]
上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を厚み3mmの金型に流し、80℃にて16時間(一晩)養生し、3mm厚の樹脂シートを作製した。該樹脂シートを50mm×50mm×3mmのシートに切り分け、測定用サンプルとした。測定は、アジレント・テクノロジー(株)製の装置(本体の型式:E4980A、名称:Precision LCR Meter。電極部分の型式:16451B、名称:DIELECTRIC TEST FIXTURE)を用いて実施し、周波数1MHz時の誘電率(比誘電率)の値を測定し、下記基準により評価した。
A:誘電率が2.8以下
B:誘電率が2.8より大きく3.0以下
C:誘電率が3.0より大きく3.2以下
D:誘電率が3.2より大きく3.4以下
E:誘電率が3.4より大きい
【0073】
[密着性]
市販されているFR-4エポキシ基板上に、上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を直径1cmほど垂らし、80℃にて16時間(一晩)養生し、硬化させた。硬化後のポリウレタン樹脂とエポキシ基板上の境目を狙い、カッターナイフにて樹脂を斫り、基板上に残ったポリウレタン樹脂を目視によって確認した。評価は、凝集破壊をポリウレタン樹脂部分が基板上に残っている状態、界面剥離を基板上からポリウレタン樹脂が剥がれてしまう状態とし、両状態が混在している際は、その面積割合に応じて下記基準により評価を行った。
A:凝集破壊100%
B:凝集破壊が75%以上100%未満、界面剥離が0%超25%以下
C:凝集破壊が50%以上75%未満、界面剥離が25%超50%以下
D:凝集破壊が25%以上50%未満、界面剥離が50%超75%以下
E:凝集破壊が25%未満、界面剥離が75%以上
【0074】
[相溶性]
第1成分を混合した後の液の様子を確認して、第1成分の相溶性を、下記基準により評価した。DおよびEの場合は分離するためその他の評価は不実施とした。
A:透明
B:若干の濁りあり
C:濁りあり
D:30分以上経過後に分離発生
E:30分未満で分離発生
【0075】
[耐湿熱性]
上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を厚み3mmの金型に流し、80℃にて16時間(一晩)養生し、3mm厚の樹脂シートを作製した。該樹脂シートを30mm×30mm×3mmのシートに切り分け、測定用サンプルとした。測定は、エスペック(株)製の装置(本体の型式:EHS-212M、名称:高度加速寿命試験装置)を用いて実施し、温度121℃、湿度85%の耐久性試験の前後におけるサンプルの重量を測定し、以下の式によって重量減少率を算出し、下記基準により評価した。
重量減少率[%]=-(M2-M1)÷M1×100
M1:耐久試験開始前のサンプル重量
M2:耐久試験200時間後のサンプル重量
A:重量減少率が4%以下
B:重量減少率が4%より大きく5%以下
C:重量減少率が5%より大きく6%以下
D:重量減少率が6%より大きく7%以下
E:重量減少率が7%より大きい、もしくは樹脂溶融
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
結果は表1~表3に示すとおりである。比較例1では、PBポリオール(A1)とテルペン樹脂(B)を併用したことにより、相溶性に優れ、低誘電特性と基板との密着性にも優れていたが、(メタ)アクリルポリオール(A2)を配合していないため、引張強度および耐湿熱性に劣っていた。比較例2では、テルペン樹脂(B)を配合していないため、引張伸び及び密着性に劣っていた。比較例3では、PBポリオール(A1)の配合量が少ないため、引張伸びに劣っていた。比較例4では、第1成分の相溶性に劣り、分離したため、その他の評価は実施できなかった。比較例5および比較例6では、(メタ)アクリルポリオール(A2)の代わりに、ひまし油系ポリオールやポリエステルポリオールを用いたため、耐湿熱性に劣っていた。
【0080】
これに対し、PBポリオール(A1)と(メタ)アクリルポリオール(A2)とテルペン樹脂(B)を併用した実施例1~16であると、比較例1に対して、引張伸びの大幅な低下を抑えながら、耐湿熱性が改善されており、耐湿熱性と引張伸びを両立することができた。また、密着性、低誘電特性、引張強度、および第1成分の相溶性についても、実用可能なレベル以上の結果が得られた。アルキレンポリオール(A3)をさらに添加した実施例1~12および16であると、アルキレンポリオール(A3)を配合していない実施例13~15と比べて、引張強度の改善効果が認められた。
【0081】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0082】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】耐湿熱性と引張伸びを両立する。
【解決手段】実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含む。前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを40質量%以上含み、さらに(メタ)アクリルポリオールを5~40質量%含む。前記テルペン樹脂の含有量は、前記ポリオール100質量部に対して3~60質量部である。
【選択図】なし