(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】無色透明ポリイミド複合膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 17/10 20060101AFI20221110BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221110BHJP
C03B 8/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/34
C03B8/00 B
(21)【出願番号】P 2022519345
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088406
(87)【国際公開番号】W WO2021120496
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】201911313650.0
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522118148
【氏名又は名称】浙江道明光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG DAOMING PHOTOELECTRIC TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.581,Dongwu Road,Yongkang Economic Development Zone,Yongkang City,Jinhua,Zhejiang 321300,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲図▼強
(72)【発明者】
【氏名】徐 鴻
(72)【発明者】
【氏名】李 祥涛
(72)【発明者】
【氏名】王 宏
(72)【発明者】
【氏名】藍 慶東
(72)【発明者】
【氏名】胡 浩亨
(72)【発明者】
【氏名】胡 鋒
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163304(JP,A)
【文献】特開2017-124587(JP,A)
【文献】特開2016-134374(JP,A)
【文献】特表2013-541442(JP,A)
【文献】特開平08-267466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108774333(CN,A)
【文献】中国実用新案第208737340(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド基材層(1)とガラス表面層(3)とを含み、前記ガラス表面層(3)と前記ポリイミド基材層(1)との間に中間構造(2)が存在し、
前記中間構造(2)は、前記ポリイミド基材層(1)と前記ガラス表面層(3)とが互いに浸透して形成された拡散構造であり、前記中間構造(2)の厚さtが、100nm≦t≦50μmである、ことを特徴とする無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項2】
ポリイミド基材層(1)とガラス表面層(3)とを含み、前記ガラス表面層(3)と前記ポリイミド基材層(1)との間に中間構造(2)が存在し、
前記中間構造(2)は、前記ポリイミド基材層(1)と前記ガラス表面層(3)とが互いに交絡して形成された交絡構造であり、前記中間構造(2)の厚さtが、100nm≦t≦50μmである、ことを特徴とする無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項3】
ポリイミド基材層(1)とガラス表面層(3)とを含み、前記ガラス表面層(3)と前記ポリイミド基材層(1)との間に中間構造(2)が存在し、
前記中間構造(2)は、前記ポリイミド基材層(1)と前記ガラス表面層(3)とが互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、前記中間構造(2)の厚さtが、100nm≦t≦50μmである、ことを特徴とする無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項4】
前記ポリイミド基材層(1)の厚さT1が、5μm≦T1≦200μmであり、前記ガラス表面層(3)の厚さT2が、200nm≦T2≦60μmである、ことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項5】
前記ポリイミド基材層(1)にミクロパターンが設けられ、前記ガラス表面層(3)の上面の形状が前記ミクロパターンの表面の形状と一致又は類似している、ことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項6】
前記ポリイミド基材層(1)の厚さに対する前記ミクロパターンの深さの比が0.1~0.9である、ことを特徴とする請求項
5に記載の無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項7】
前記ミクロパターンは波状であり、前記波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離Lが20nm~100μmである、ことを特徴とする請求項
5に記載の無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項8】
前記ポリイミド基材層(1)、前記ガラス表面層(3)、前記中間構造(2)は外力の作用により曲がり変形する、ことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の無色透明ポリイミド複合膜。
【請求項9】
請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の無色透明ポリイミド複合膜の製造方法であって、
剛性基板上にポリアミド酸前駆体を堆積し、150~250℃の環境下で5s~5minの光硬化又は0.5~5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層(1)を得るステップS1と、
半硬化ポリイミド基材層(1)の表面上に、SiO
2前駆体、Al
2O
3前駆体、Na
2O前駆体、B
2O
3前駆体を含む多成分ガラス前駆体を堆積し、多成分ガラス前駆体と半硬化ポリイミド基材層(1)との間に中間構造(2)を形成するとともに、250~350℃の環境下で5s~5minの光硬化又は0.5~5hの熱硬化を行い、多成分ガラス前駆体を半硬化させて、半硬化ガラス表面層(3)を得るステップS2と、
剛性基板を600~700℃に加熱し、5s~5minの光硬化又は0.5h~5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層(1)及び半硬化ガラス表面層(3)を完全に硬化させてポリイミド基材層(1)及びガラス表面層(3)を形成し、離型すると、無色透明ポリイミド複合膜を得るステップS3とを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記多成分ガラス前駆体はガラス又はタルクを20%~80%含有する、ことを特徴とする請求項
9に記載の無色透明ポリイミド複合膜の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS2において、半硬化ポリイミド基材層(1)の表面に精密プレス又はフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを形成する、ことを特徴とする請求項
9に記載の無色透明ポリイミド複合膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの技術分野に関し、特に無色透明ポリイミド複合膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは優れた光電特性、機械特性、水・ガスバリア性などの特性を有し、現在、電工絶縁材料、フレキシブル銅張積層板(FCCL)及びフレキシブルOLEDディスプレイ、窓フィルム、新エネルギーなどのハイテク産業分野に広く応用されており、無色透明ポリイミド(CPI)は主にフレキシブル携帯電話、タブレット、テレビ及び未来のその他のスマートディスプレイ設備に応用されており、未来のフレキシブル電子製品に欠かせない重要な材料である。フレキシブルOLEDディスプレイ分野の応用では、CPIフィルムの透明性と柔軟性は基本的に実用上の要件を満たすが、CPIフィルムの表面硬度と水・ガスバリア性は実用上の要件を満たすことができず、現在、硬度の欠陥を解決する方法は2つあり、1つは、CPIフィルムの上に有機硬質層を塗布することであり、この方法は、CPIフィルムに対する高水・ガスバリア性の要件を根本的に解決することができず、もう1つは、CPIフィルムの上に無機ガラス材料を塗布することで、高透光性、高遮水性、高硬度を実現することであり、ただし、ガラス層の脆性がCPI-ガラス複合膜の柔軟性に大きく影響するため、CPI-ガラス複合膜の折り畳み性や曲げ性は実用上の要件を満たすことができず、製造中にCPIとガラスの熱膨張係数の差が大きく、CPIとガラスの製造温度が少なくとも300℃の差を有するため、熱応力がある場合、CPI-ガラス複合膜では、層間剥離が生じ、このため、CPIフィルムの上にガラスを直接溶融塗布することは不可能である。
【0003】
上記の問題に基づいて、フレキシブルOLEDディスプレイ及びその他の分野への応用において、現在市販されているCPIフィルムの現状を改善することは非常に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポリイミドフィルムのバリア性や硬度が実用上の要件を満たさない等、従来技術の欠陥に対して、新規な無色透明ポリイミド複合膜及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって達成される。
ポリイミド基材層と、ガラス表面層とを含み、前記ガラス表面層と前記ポリイミド基材層との間に中間構造が形成される無色透明ポリイミド複合膜である。
【0006】
上記無色透明ポリイミド複合膜において、中間構造は微細構造を有する緩衝層であり、3次元ポリイミド-ガラス複合構造を効果的に形成することができ、しかも中間構造はガラス材質の特性を保持し、無色透明ポリイミド複合膜全体に水バリア、酸素バリア、曲げ抵抗性や高硬度等の優れた特性を付与することができる。
【0007】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記ポリイミド基材層の厚さT1が、5μm≦T1≦200μmであり、前記ガラス表面層の厚さT2が、200nm≦T2≦60μmである。
【0008】
ポリイミド基材層及びガラス表面層の厚さを広い範囲で制御することができ、表面層の硬度要件を満たすことに基づいて、無色透明ポリイミド複合膜に最適な柔軟性、折り畳み性や強度を付与できるとともに、ポリイミド基材層とガラス表面層の厚さを調整することによって無色透明ポリイミド複合膜の総合性能を調整することができ、それにより、様々な応用分野の膜厚要件を満たす。
【0009】
好ましくは、前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記中間構造は前記ポリイミド基材層と前記ガラス表面層とが互いに浸透して形成された拡散構造であり、前記中間構造の厚さがt、100nm≦t≦50μmである。
【0010】
上記中間構造は拡散構造であり、無色透明ポリイミド複合膜に高い層間結合力を持たせることができ、且つ層間剥離を発生させにくく、拡散構造は無色透明ポリイミド複合膜の柔軟性を高めることができる。上記中間構造の厚さは、ポリイミド基材層とガラス表面層との間の間隔を測定することにより得られ、中間構造の厚さを広い範囲に制御し、膜層構造の最適化空間をより大きくする。
【0011】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記中間構造は前記ポリイミド基材層と前記ガラス表面層とが交絡して形成された交絡構造であり、前記中間構造の厚さがt、100nm≦t≦50μmである。
【0012】
上記中間構造は交絡構造であるため、無色透明ポリイミド複合膜が3次元ポリイミド-
ガラス複合構造を形成することができ、それにより、複合特性を高め、層間接触面積を増大し、無色透明ポリイミド複合膜の界面結合力、柔軟性及び曲げ抵抗性を向上させる。上記中間構造の厚さは、ポリイミド基材層とガラス表面層との間の間隔を測定することにより得られ、中間構造の厚さを広い範囲に制御し、膜層構造の最適化空間をより大きくする。
【0013】
好ましくは、前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記中間構造は前記ポリイミド基材層と前記ガラス表面層とが互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、前記中間構造の厚さtが、100nm≦t≦50μmである。
【0014】
上記中間構造は、互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、無色透明ポリイミド複合膜に拡散構造と交絡構造の複合特性を持たせ、層間接触面積と層間結合力を効果的に増加させることができるとともに、複合構造は、無色透明ポリイミド複合膜の表面応力をより良く緩衝、吸収することができ、これにより、無色透明ポリイミド複合膜全体により良い水バリア、酸素バリア、曲げ抵抗性や高硬度などの優れた特性を持たせることができる。
【0015】
上記中間構造の厚さは、ポリイミド基材層とガラス表面層との間の間隔を測定することにより得られ、中間構造の厚さを広い範囲に制御し、膜層構造の最適化空間をより大きくする。
【0016】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記ポリイミド基材層にミクロパターンが設けられ、前記ガラス表面層の上面の形状が前記ミクロパターンの表面の形状と一致又は類似している。
【0017】
上記ミクロパターンは、中間構造の輪郭を定義し、上記ガラス表面層の上面は、ミクロパターンと一致又は類似した形状を有しており、無色透明ポリイミド複合膜構造の内部応力分布をより均一にすることができ、これにより、無色透明ポリイミド複合膜の変形に耐える能力を向上させ、無色透明ポリイミド複合膜の柔軟性及び折り畳み性を効果的に向上させる。
【0018】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記ポリイミド基材層の厚さに対する前記ミクロパターンの深さの比が0.1~0.9である。
【0019】
ポリイミド基材層の厚さに対するミクロパターンの深さの比は広い範囲で制御され、様々な応用要件を満たすことに基づいて、常に最適な構造及び性能を維持し、膜層構造の最適化空間をより大きくする。
【0020】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記ミクロパターンは波状であり、前記波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離Lが20nm~100μmである。
【0021】
上記波状ミクロパターンは、横型パターン及び縦型パターンの少なくとも一方を含み、ミクロパターンとして波状パターンを採用することにより、無色透明ポリイミド複合膜の横方向及び縦方向の曲げ抵抗性を向上させることができ、膜層の接触面積を増加させ、膜層の連続性を向上させるだけでなく、無色透明ポリイミド複合膜全体の厚さを減らすことができる。波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離を広い範囲で制御することにより、膜層構造の最適化空間をより大きくする。
【0022】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜において、前記ポリイミド基材層、前記ガラス表面層、前記中間構造は外力の作用により曲がり変形する。
【0023】
ポリイミド基材層、ガラス表面層及び中間構造は共に3次元ポリイミド-ガラス複合構造を形成し、曲げ変形による内部応力を効果的に緩和することができ、無色透明ポリイミド複合膜が耐え得る最大変形強度を向上させ、これにより、無色透明ポリイミド複合膜の曲げ疲労による永久変形やクラック等の状況を効果的に回避することができる。
【0024】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜の製造方法であって、
剛性基板上にポリアミド酸前駆体を堆積し、150~250℃の環境下で5s~5minの光硬化又は0.5~5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層を得るステップS1と、
半硬化ポリイミド基材層の表面上に、SiO2前駆体、Al2O3前駆体、Na2O前駆体、B2O3前駆体を含む多成分ガラス前駆体を堆積し、多成分ガラス前駆体と半硬化ポリイミド基材層との間に中間構造を形成するとともに、250~350℃の環境下で5s~5minの光硬化又は0.5~5hの熱硬化を行い、多成分ガラス前駆体を半硬化させて、半硬化ガラス表面層を得るステップS2と、
剛性基板を600~700℃に加熱し、5s~5minの光硬化又は0.5h~5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層及び半硬化ガラス表面層を完全に硬化させてポリイミド基材層及びガラス表面層を形成し、離型すると、無色透明ポリイミド複合膜を得るステップS3とを含む。
【0025】
上記ステップS1において、ポリアミド酸前駆体を加熱して半硬化ポリイミド基材層を形成することにより、精密プレスやフォトリソグラフィー等の物理的加工をより良好に行うことができ、膜層自体の構造に影響を与えずに安定した加工形状の形成に有利であり、
上記ステップS2において、多成分ガラス前駆体を加熱して半硬化ガラス表面層を形成することにより、粒径が小さく分布が均一である膜層の形成に有利であり、ガラス表面層の緻密性及び均一性を向上させ、
上記ステップS1~S3において、勾配加熱硬化ステップにより、無色透明ポリイミド複合膜を十分に硬化させることができ、成膜均一性を向上させ、表面欠陥率を低減し、また3次元ポリイミド-ガラス複合構造の形成にもより有利である。
【0026】
上記ポリイミド基材層はポリアミック酸前駆体を硬化させたものであり、上記ガラス表面層は、多成分ガラス前駆体を硬化させたものであり、このようにして、粒径が小さく、分布が均一で、且つ成分が均一な膜層構造の製造に有利であり、膜層の緻密性及び均一性を向上させ、且つゾルゲル法による成形プロセスが簡便であり、製造プロセスのコストを効果的に削減する。
【0027】
ここで、ポリアミック酸前駆体は、多成分二無水物と多成分ジアミンとを極性有機溶媒にて重合することにより形成することができる。上記多成分二無水物は、ベンゾフェノン二無水物、ビフェニル二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、トリフェニルジエーテル二無水物、ヘキサフルオロ二無水物、ジフェニルエーテル二無水物、ジフェニレンスルフィド二無水物、ハイドロキノンジエーテル二無水物、レゾルシンジエーテル二無水物、ビスフェノールA型ジエーテル二無水物、及びピロメリット酸二無水物の1種以上を含み、上記多成分ジアミンは、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ジフェニルメタンジアミン、ハイドロキノンジエーテルジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビスフェノールA型ジエーテルジアミン、及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンの1種以上を含み、上記極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメタノールジメチルエーテル、及びN-メチルピロリドンの1種以上を含む。
【0028】
多成分ガラス前駆体はSi(OR)4、Al(OR)3、B(OR)3及びNaORの1種以上を含んでもよく、ここで、Rは、-CH3、-C2H5、-C3H7及びC4H9の1種以上を含む。
【0029】
好ましくは、上記の前記無色透明ポリイミド複合膜の製造方法において、前記多成分ガラス前駆体は20%~80%のガラス又はタルクを含有する。
【0030】
多成分ガラス前駆体では、ガラス又はタルクを加えることにより、硬化中の膜層の収縮率の最適化に有利であり、ガラス又はタルクの含有量を調整することにより、硬化中の無色透明ポリイミド複合膜の層間剥離、クラックや反り等の状況の発生を回避する。
【0031】
好ましくは、前記無色透明ポリイミド複合膜の製造方法において、前記ステップS2において、半硬化ポリイミド基材層の表面に精密プレス又はフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを形成する。
【0032】
精密プレスやフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを加工することにより、ミクロパターンの精度及び深さを確保することができ、大規模な生産や加工に有利である。
【発明の効果】
【0033】
従来技術と比べて、本発明は優れた有益な効果を有する。まず、本発明によって製造された無色透明ポリイミド複合膜はガラス材質に近い優れた表面硬度及び耐摩耗性を有し、外物による衝突や摩耗を受けた場合に損傷を効果的に低減することができ、次に、無色透明ポリイミド複合膜はガラス材質に近い優れた水・ガスバリア性能を有し、製品の耐用年数を延ばすことができ、最後に、無色透明ポリイミド複合膜はPIフィルムの優れた柔軟性、折り畳み性を保持し、より広く活用される将来性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の中間構造が拡散構造である場合の横断面構造又は縦断面構造の模式図である。
【
図2】本発明の中間構造が交絡構造である場合の横断面構造又は縦断面構造の模式図である。
【
図3】本発明の中間構造が複合構造である場合の横断面構造又は縦断面構造の模式図である。
【
図4】本発明の中間構造が交絡構造であり、ガラス表面層の上面の形状がミクロパターンの形状に類似している場合の横断面構造又は縦断面構造の模式図である。
【
図5】本発明の中間構造が複合構造であり、ガラス表面層の上面の形状がミクロパターンの形状に類似している場合の横断面構造又は縦断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面1~5及び具体的な実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
図1~
図5に示すように、ポリイミド基材層1と、ガラス表面層3とを含み、前記ガラス表面層3と前記ポリイミド基材層1との間に中間構造2が形成される無色透明ポリイミド複合膜である。
【0037】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さT1が200μmであり、前記ガラス表面層3の厚さT2が60μmである。
【0038】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに浸透して形成された拡散構造であり、前記中間構造2の厚さtが、50μmである。
【0039】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに交絡して形成された交絡構造であり、前記中間構造2の厚さtが、50μmである。
【0040】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、前記中間構造2の厚さtが、50μmである。
【0041】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1にミクロパターンが設けられ、前記ガラス表面層3の上面の形状は前記ミクロパターンの表面の形状と一致又は類似している。
【0042】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さに対する前記ミクロパターンの深さの比が0.9である。
【0043】
好ましくは、前記ミクロパターンは波状であり、前記波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離Lが100μmである。
【0044】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1、前記ガラス表面層3、前記中間構造2は外力の作用により曲がり変形する。
【0045】
好ましくは、
剛性基板上にポリアミド酸前駆体を堆積し、250℃の環境下で5minの光硬化又は5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1を得るステップS1と、
半硬化ポリイミド基材層1の表面上に、SiO2前駆体、Al2O3前駆体、Na2O前駆体、B2O3前駆体を含む多成分ガラス前駆体を堆積し、多成分ガラス前駆体と半硬化ポリイミド基材層1との間に中間構造2を形成するとともに、350℃の環境下で5minの光硬化又は5hの熱硬化を行い、多成分ガラス前駆体を半硬化させて、半硬化ガラス表面層3を得るステップS2と、
剛性基板を700℃に加熱し、5minの光硬化又は5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1及び半硬化ガラス表面層3を完全に硬化させてポリイミド基材層1及びガラス表面層3を形成し、離型すると、無色透明ポリイミド複合膜を得るステップS3とを含む。
【0046】
好ましくは、前記多成分ガラス前駆体は、ガラス又はタルクを80%含有する。
【0047】
好ましくは、前記ステップS2において、半硬化ポリイミド基板1の表面に精密プレス又はフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを形成する。
【実施例2】
【0048】
図1~
図5に示すように、ポリイミド基材層1と、ガラス表面層3とを含み、前記ガラス表面層3と前記ポリイミド基材層1との間に中間構造2が形成される無色透明ポリイミド複合膜である。
【0049】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さT1が5μmであり、前記ガラス表面層3の厚さT2が200nmである。
【0050】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに浸透して形成された拡散構造であり、前記中間構造2の厚さtが、100nmである。
【0051】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに交絡して形成された交絡構造であり、前記中間構造2の厚さtが、100nmである。
【0052】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、前記中間構造2の厚さtが、100nmである。
【0053】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1にミクロパターンが設けられ、前記ガラス表面層3の上面の形状がミクロパターンの表面の形状と一致又は類似している。
【0054】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さに対する前記ミクロパターンの深さの比が0.1である。
【0055】
好ましくは、前記ミクロパターンは波状であり、前記波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離Lが20nmである。
【0056】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1、前記ガラス表面層3、前記中間構造2は外力の作用により曲がり変形する。
【0057】
好ましくは、
剛性基板上にポリアミド酸前駆体を堆積し、150℃の環境下で5sの光硬化又は0.5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1を得るステップS1と、
半硬化ポリイミド基材層1の表面上に、SiO2前駆体、Al2O3前駆体、Na2O前駆体、B2O3前駆体を含む多成分ガラス前駆体を堆積し、多成分ガラス前駆体と半硬化ポリイミド基材層1との間に中間構造2を形成するとともに、250℃の環境下で5sの光硬化又は0.5hの熱硬化を行い、多成分ガラス前駆体を半硬化させて、半硬化ガラス表面層3を得るステップS2と、
剛性基板を600℃に加熱し、5sの光硬化又は0.5hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1及び半硬化ガラス表面層3を完全に硬化させてポリイミド基材層1及びガラス表面層3を形成し、離型すると、無色透明ポリイミド複合膜を得るステップS3とを含む。
【0058】
好ましくは、前記多成分ガラス前駆体はガラス又はタルクを20%含有する。
【0059】
好ましくは、前記ステップS2において、半硬化ポリイミド基板1の表面に精密プレス又はフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを形成する。
【実施例3】
【0060】
図1~
図5に示すように、ポリイミド基材層1と、ガラス表面層3とを含み、前記ガラス表面層3と前記ポリイミド基材層1との間に中間構造2が形成される無色透明ポリイミド複合膜である。
【0061】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さT1が50μmであり、前記ガラス表面層3の厚さT2が2μmである。
【0062】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに浸透して形成された拡散構造であり、前記中間構造2の厚さtが、5μmである。
【0063】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに交絡して形成された交絡構造であり、前記中間構造2の厚さtが、20μmである。
【0064】
好ましくは、前記中間構造2は、前記ポリイミド基材層1と前記ガラス表面層3とが互いに拡散、交絡して形成された複合構造であり、前記中間構造2の厚さtが、20μmである。
【0065】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1にミクロパターンが設けられ、前記ガラス表面層3の上面の形状が前記ミクロパターンの表面の形状と一致又は類似している。
【0066】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1の厚さに対する前記ミクロパターンの深さの比が0.5である。
【0067】
好ましくは、前記ミクロパターンは波状であり、前記波状ミクロパターンにおける隣接するピークとトラフの距離Lが50μmである。
【0068】
好ましくは、前記ポリイミド基材層1、前記ガラス表面層3、前記中間構造2は外力の作用により曲がり変形する。
【0069】
好ましくは、
剛性基板上にポリアミド酸前駆体を堆積し、200℃の環境下で2minの光硬化又は3hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1を得るステップS1と、
半硬化ポリイミド基材層1の表面上に、SiO2前駆体、Al2O3前駆体、Na2O前駆体、B2O3前駆体を含む多成分ガラス前駆体を堆積し、多成分ガラス前駆体と半硬化ポリイミド基材層1との間に中間構造2を形成するとともに、300℃の環境下で2minの光硬化又は3hの熱硬化を行い、多成分ガラス前駆体を半硬化させて、半硬化ガラス表面層3を得るステップS2と、
剛性基板を650℃に加熱し、2minの光硬化又は3hの熱硬化を行い、半硬化ポリイミド基材層1及び半硬化ガラス表面層3を完全に硬化させてポリイミド基材層1及びガラス表面層3を形成し、離型すると、無色透明ポリイミド複合膜を得るステップS3とを含む。
【0070】
好ましくは、前記多成分ガラス前駆体はガラス又はタルクを50%含有する。
【0071】
好ましくは、前記ステップS2において、半硬化ポリイミド基材層1の表面に精密プレス又はフォトリソグラフィー法を用いてミクロパターンを形成する。
【実施例4】
【0072】
上記実施例3で得られた無色透明ポリイミド複合膜を用いて、既存の台湾永捷創新科技有限公司製ポリイミド複合膜、KOLON工業株式会社製PIフィルム、米国コーニング株式会社製フレキシブルガラスを比較例として、鉛筆硬度、曲げ抵抗性の両性能を以下のようにテストした。
一、鉛筆硬度のテスト:鉛筆硬度計を用いてGB/T 6739『ペイント及びワニスの鉛筆法による塗膜硬度測定』の方法で鉛筆硬度をテストした。
二、曲げ抵抗性のテスト:ヒンジ曲げ試験機を用いて、5mmの曲げ半径、0~180°の角度及び20rpm/minの速度で繰り返して曲げた。
【0073】
本発明の各実施例で得られる無色透明ポリイミド複合膜及び比較例の性能パラメータは、表1及び表2に示される。
【表1】
このうち、比較例1は台湾永捷創新科技有限公司製ポリイミド複合膜、比較例2はKOLON工業株式会社製PIフィルムである。
【0074】
【表2】
このうち、比較例3は米国コーニング株式会社製フレキシブルガラスである。
【0075】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の特許出願の範囲に基づいて行われる均等な変更及び修飾は全て本発明の範囲内に含まれるべきである。