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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】米携帯容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/24 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
A47J43/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022038659
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2022-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522064029
【氏名又は名称】株式会社グローバルステップフォーワード
(74)【代理人】
【識別番号】100120813
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴之
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-177591(JP,A)
【文献】特開2011-234800(JP,A)
【文献】特開2002-010928(JP,A)
【文献】特開平09-322864(JP,A)
【文献】実開平06-038836(JP,U)
【文献】実開昭59-148741(JP,U)
【文献】実開昭48-050683(JP,U)
【文献】実開昭57-020941(JP,U)
【文献】実開昭61-018748(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105310545(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1733338(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00-44/02
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖した底に対向する側を開口にしたカップと、前記カップの開口を閉鎖するように装着される閉鎖蓋とを備え、前記カップの内部に米を入れた状態で前記閉鎖蓋を装着して米を持ち運べるようにしてある米携帯容器において、
前記カップの内部に前記底と対向するように配置されると共に、前記底との距離が変わるように前記カップの内部で移動可能にしてある中底部材を備え、
前記中底部材は、中底板部及び前記中底板部から前記カップの開口の方へ延出する棒状の延出部を有しており、
前記カップの内部に配置される前記中底部材の中底板部に、前記カップの内部に入れられる米が載るようにしてあり、
前記閉鎖蓋を外して前記カップの開口を開放した状態で、前記延出部を前記カップの外方へ引っ張ることで、前記中底部材の中底板部を前記カップの底から離反させて、前記カップの内部に入れられた米を取り出すようにしてあることを特徴とする米携帯容器。
【請求項2】
前記カップの内部に入れられた水を排水する排水部を有しており、前記カップの開口を覆うように装着される排水蓋を備え、
前記閉鎖蓋は、前記排水蓋の排水部を閉鎖するように装着されることで、前記カップの開口を閉鎖するようにしてあり、
前記閉鎖蓋を外して前記排水蓋の排水部を開放して、前記カップの内部に入れられた水を前記排水部から排水するようにしてある請求項1に記載の米携帯容器。
【請求項3】
前記カップは、その底に前記中底部材の中底板部を当接配置した状態の前記カップの内部に入れられる所定単位量の米に応じた米炊用の水量の水位を示す印を周壁内面に有しており、
前記延出部は、前記中底部材の中底板部を前記カップの底に当接配置した状態で、前記カップの水位を示す印より前記開口の方へ延出する長さにしてある請求項1又は請求項2に記載の米携帯容器。
【請求項4】
前記延出部は、その延出端が、前記中底部材の中底板部を前記カップの底に当接配置した状態で、前記排水蓋の前記カップの開口を覆う箇所の蓋内面に当接するようにしてある請求項2に記載の米携帯容器。
【請求項5】
前記延出部には係止部が形成してあり、
前記カップの周壁内面には、前記中底部材の中底板部を前記カップの底に当接配置した状態で、前記係止部が係止される被係止部が形成してある請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の米携帯容器。
【請求項6】
前記中底部材は、前記中底板部の中心を前記カップの底の中心と一致させた状態で、前記カップの周壁内面に対して前記中底板部の周囲に0.1mm以上1.3mm以下の範囲で隙間が生じる寸法で形成してある請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の米携帯容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米炊用の水と一緒に米を携帯できるようにすると共に、携帯した米を米炊用の器具へ移し替えるときに米粒が手や容器内に付くのを防ぐようにした米携帯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
キャンプ等の野外で洗米に使用できる洗米容器が、以下の特許文献1に開示される。また、以下の特許文献2では、米や水に手を触れずに洗米できるようにした洗米容器が開示される。さらに、以下の特許文献3では、電動モーターによる撹拌で洗米を行う電動洗米機が開示される。なお、以下の特許文献4には、洗米用ではないが、カップ状の容器の内部に、円板状の押圧部材を配置し、その押圧部材からは棒状のロッドを延出させて、容器の開口を閉鎖するカバー部材から飛び出る構成にしたティーメーカーが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-234800号公報
【文献】実開平06-38836号公報
【文献】実開平07-34936号公報
【文献】実開平07-36956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗米容器は、手に水をつけることなく洗米できるが、米を炊くために、容器内の洗米後の米を飯盒や鍋などの米炊用の器具に移し替えるとき、容器の底や周壁内面などに米が残ってしまう問題がある。容器内に米が残ってしまうと、容器の中に手を入れて、容器から米を掻き出す必要性が生じるので、結局、この段階で、手の甲や指などに米がついてしまい(特に洗米後の米は濡れているので、付着しやすい)、米炊作業(炊飯作業)のスムーズな進行を妨げる要因になる。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の洗米容器は、洗った米を容器内に保持できる携帯性を有するが、その洗った米を炊くのに用いる水を一緒に携帯することまでは出来ないので、野外で米を炊くには、炊飯用の水を別途、確保しなければならないという問題があり、特に、この問題は、水の確保が難しい野外や災害現場等において顕著となる。
【0006】
また、特許文献2に記載の洗米容器は、上部の蓋及び下部の蓋を合わせて構成する容器の内部に、笊のような網状の水切りを配置して、水切りの中に米と水を入れて容器を振ることで、手を水に浸けずに洗米することを可能にするが、洗米した米を米炊用の釜や鍋に取り出すには、釜や鍋の底に3度ほど、伏せた状態の水切りを叩き付けることになる。しかし、このように水切りを叩き付けるには、水切りの外形寸法に比べて、ある程度、大きいサイズの釜や鍋といった米炊用の器具が必要となり、キャンプなどの野外で用いる飯盒や小型の鍋などの米炊用の器具では水切りに対して寸法が小さいため、水切りを適切に叩き付けることができず、容器から手際よく米(洗米済みの米)を取り出せないという問題がある。さらに、特許文献2に記載の洗米容器は、特許文献1に記載の洗米容器と同様に、米を炊くのに用いる水を米と一緒に携帯できない。
【0007】
さらにまた、特許文献3に記載の電動洗米機は、電動で米を研ぐに留まり、洗米後の米を取り出すのに、電動洗米機の中に米が残らないようにする工夫や、洗った米を取り出す際に米が手に付かないようにする工夫などは存在しない。なお、特許文献4に記載のティーメーカーは、あくまで茶葉を絞るものなので、そのままの構成で洗米や米を携帯することに用いることは出来ない。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、米を米炊用の器具へ移し替えるときに米粒が手や容器内に付着するのを防止して野外や災害現場等でも好適に使用できると共に、米炊用の水も米と一緒に持ち運べるようにした米携帯容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、閉鎖した底に対向する側を開口にしたカップと、前記カップの開口を閉鎖するように装着される閉鎖蓋とを備え、前記カップの内部に米を入れた状態で前記閉鎖蓋を装着して米を持ち運べるようにしてある米携帯容器において、前記カップの内部に前記底と対向するように配置されると共に、前記底との距離が変わるように前記カップの内部で移動可能にしてある中底部材を備え、前記中底部材は、前記カップの開口の方へ延出する延出部を有しており、前記閉鎖蓋を外して前記カップの開口を開放した状態で、前記延出部を前記カップの外方へ引っ張ることで、前記中底部材を前記カップの底から離反させて、前記カップの内部に入れられた米を取り出すようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る米携帯容器は、カップの内部に、延出部を有する中底部材を配置して、カップの開口を閉鎖蓋で閉鎖するものなので、カップの内部に米を入れると共に、その米を炊くのに必要な水も入れて、こぼすこと無く持ち運べるようになる。また、野外等で米炊きを行う際に、米を飯盒や鍋などの米炊用容器へ移し替えるには、蓋(閉鎖蓋)を取り外した状態で、中底部材の延出部を把持して外方へ引っ張り出すようにすれば、中底部材でカップ内部の米を取り出せるので、カップから米を取り出す際にも、手に米が付着しなくなり、米炊作業をスムーズに進められる。
【0011】
また、本発明にあっては、前記カップの内部に入れられた水を排水する排水部を有しており、前記カップの開口を覆うように装着される排水蓋を備え、前記閉鎖蓋は、前記排水蓋の排水部を閉鎖するように装着されることで、前記カップの開口を閉鎖するようにしてあり、前記閉鎖蓋を外して前記排水蓋の排水部を開放して、前記カップの内部に入れられた水を前記排水部から排水するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る米携帯容器は、排水部を有する排水蓋を介在して、閉鎖蓋でカップの開口を閉鎖するようにしたので、閉鎖蓋を外せば排水蓋の排水部が開放されて、カップの内部に入れた水を排水部から排水できるようになる。そのため、カップの内部に米及び水を入れて、排水蓋及び閉鎖蓋を装着した状態で、容器全体を複数回、振ることで洗米し、洗米に用いた水は閉鎖蓋を外して排水部から排出すれば、本発明に係る米携帯容器にて、ユーザは水に触れることなく洗米も可能となり、有用性が増す。
【0013】
さらに、本発明にあっては、前記カップが、その底に前記中底部材を当接配置した状態の前記カップの内部に入れられる所定単位量の米に応じた米炊用の水量の水位を示す印を周壁内面に有しており、前記延出部は、前記中底部材を前記カップの底に当接配置した状態で、前記カップの水位を示す印より前記開口の方へ延出する長さにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る米携帯容器は、カップの周壁内面に、米炊き用の水を入れる量を示す印(水位を示す印)を有すると共に、中底部材の延出部の長さを、中底部材がカップの底に付いた状態で、カップの水位を示す印よりカップの開口の側へ延出する寸法にしたので、カップ内部において、米炊き用の水から延出部が飛び出るようになる。そのため、ユーザは、米炊き用の水の中に手を入れることなく延出部を把持できるようになり、米炊き用の水に手を浸けること無くカップ内部の米を取り出せて、野外や災害時等において米を炊くのに衛生的にも好適となる。
【0015】
本発明に係る米携帯容器は、前記延出部は、その延出端が、前記中底部材を前記カップの底に当接配置した状態で、前記排水蓋の前記カップの開口を覆う箇所の蓋内面に当接するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、延出部の延出端が、カップに装着された蓋(例えば、排水蓋)の内面に当接するように、延出部の長さを設定するので、携帯の際、中底部材が、カップの底に対する距離が変わるように動くのが防止されて、中底部材をカップの底に当接した状態に維持できるようになり、中底部材がカップの内部で動いてカタコトといった音が発生するような状況の発生を防止し、米携帯容器を安定して持ち運べるようになる。
【0017】
本発明に係る米携帯容器は、前記延出部には係止部が形成してあり、前記カップの周壁内面には、前記中底部材を前記カップの底に当接配置した状態で、前記係止部が係止される被係止部が形成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、延出部の係止部を、カップの周壁内面に形成した被係止部に係止するようにしたので、蓋(閉鎖蓋又は排水蓋)を装着しなくても中底部材がカップの底に対する距離が変わるように動くのが規制され、中底部材のカップ内部での配置が安定し、カップの内部に米や水を入れやすくなると共に、持ち運びの際にも中底部材がガタガタと動くような事態の発生を防止できる。
【0019】
本発明に係る米携帯容器は、前記中底部材が、その中心を前記カップの底の中心と一致させた状態で、前記カップの周壁内面に対して周囲に0.1mm以上1.3mm以下の範囲で隙間が生じる寸法で形成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、中底部材について、その中心をカップの底の中心と一致させた状態で、カップの周壁内面に対して周囲に0.1mm以上1.3mm以下の範囲で隙間が生じる寸法で形成したので、中底部材の周囲と、カップの周壁内面との間に米粒が入り込まないほどの隙間を確保しながら、カップの周壁内面に付着したような米粒を、中底部材の周囲で掻き出せるようなり、カップ内部に米粒が残ることを防止した上で、カップの周壁内面に対して適切な隙間を維持して、中底部材をスムーズに動かす状況が確保される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、カップの内部に米と、その米を炊くのに必要な水も入れて、それらをこぼすこと無く、野外等へ持ち運ぶことができ、また、野外等で米炊きを行うため、米を飯盒や鍋などの米炊用容器へ移し替えるには、蓋を取り外して、延出部を把持して中底部材を引っ張り出せば、手の甲や指などに米が付着することなく、カップ内部の米を取り出すことができ、スムーズに米炊き作業を行える。
【0022】
また、本発明では、排水部を有する排水蓋を介在して、閉鎖蓋でカップの開口を閉鎖するので、カップの内部に米及び水を入れて、排水蓋及び閉鎖蓋を装着した状態で、容器全体を複数回、振ることで洗米を行うことができ、洗米に用いた水は閉鎖蓋を外して排水部から排出でいるので、水に触れることなく一連の洗米作業を行える。
【0023】
さらに、本発明では、カップ内部において、米炊き用の水から延出部が飛び出るので、米炊き用の水の中に手を入れることなく延出部を把持でき、米炊き用の水に手を浸けること無くカップ内部の米を取り出せて、野外や災害時等において米炊作業を衛生的に進められる。
【0024】
さらにまた、本発明では、延出部の延出端を、カップに装着された蓋の内面に当接するようにしたので、カップ内部に配置される中底部材にガタつきが生じるのを防止でき、中底部材を安定させた状態にして米携帯容器を携帯できる。
【0025】
また、本発明では、延出部に設けた係止部を、カップの周壁内面に形成した被係止部に係止する構成にしたので、蓋を装着しない状態でも、中底部材がカップ内部に安定した状態で配置でき、中底部材を配置したカップの中へ米や水を入れやすくなる。
【0026】
また、本発明では、中底部材とカップの周壁内面との間に、米粒が擦り抜けない程度の適度な隙間を確保したので、中底部材をスムーズに動かすことができると共に、カップの周壁内面に付着した米粒にも中底部材が触れて掻き出すことができ、カップ内部に米を残すことなく、米炊用の器具へ移し替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る米携帯容器の分解状態を示す概略斜視図である。
図2】米携帯容器の外観を示す正面図である。
図3】中底部材をカップ内部に配置して第一蓋及び第二蓋を装着した状態の米携帯容器の断面図である。
図4】第一蓋の要部及び延出部の先端箇所を示す要部拡大断面図である。
図5】(a)はカップ内部に米及び水を入れる状況を示す概略断面図であり、(b)はカップ内部から洗米済みの米を取り出す状況を示す概略断面図である。
図6】変形例の第一蓋などを示す要部拡大断面図である。
図7】(a)は変形例の中底部材を示す概略斜視図であり、(b)は別の変形例の中底部材を示す概略斜視図である。
図8】(a)は更に別の変形例の中底部材を示す概略斜視図であり、(b)は変形例のカップを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1-3は、本発明の実施形態に係る米携帯容器1の全体を概略的に示す。本発明の米携帯容器1は、ユーザが手を水に浸すことなく洗米でき、洗米済みの米を、その米を炊くのに必要な量の水と一緒に持ち運べると共に、手に米粒が付着することなく米炊用の器具へ移し替えられるにしたものである。そのため、米携帯容器1は、キャンプ等の野外や、災害等で水を利用できる場所が制限されるときなどに、好適に利用可能である。以下、実施形態に係る米携帯容器1を詳しく説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の米携帯容器1は、カップ10、そのカップ10の内部10aに配置される中底部材20、カップ10に装着される第一蓋30、及び、その第一蓋30に装着される第二蓋40といった計四つの部材を組み合わせて構成されている。なお、図1中に示すX軸は、カップ10の底12と平行な方向を示し、Y軸は、X軸と同一平面上で直交する方向を示し、Z軸は、X軸及びY軸の両方に直交する方向を示す(他の図でも同様)。
【0030】
米携帯容器1を構成する四つの部材の中のカップ10は、その内部10aに米及び水を入れるものであり、円板状の閉鎖した底12の周囲から円筒状の周壁11が立設するように一体的に成形された合成樹脂製の容器になっている。カップ10は、周壁11のZ軸方向(カップ10の長手方向に応じた方向)に沿った一端11aの側を底12にする一方、その底12に対向する他端11bの側を開口13にしている。
【0031】
また、カップ10は、周壁11の外面(周壁外面11c)の他端11b寄りの箇所に、螺旋状の凸部からなる雄ネジ部15を形成し、その雄ネジ部15から一端11aの側(図1における下方側)に張り出した鍔部14を形成している。カップ10の寸法は、何合の米に対応させるかにより適宜変更されることになるが、本実施形態は、一合(所定単位量に相当)の米用のものであり、Z軸方向に沿った高さ(底12に応じた一端11aから開口13に応じた他端11bまでの寸法)を120mm、周壁11の外径(雄ネジ部15及び鍔部14を除いた箇所の外周の直径)を70mm、内径D1(周壁11の内周の直径)を65mmにしている。なお、内径D1は、底12の側(周壁11の一端11aの側)から開口13の側(周壁11の他端11bの側)まで同じ寸法にしてある。
【0032】
さらに、図3に示すように、カップ10は、周壁11の内面(周壁内面11d)に、中底部材20を配置した状態でカップ10の内部10aに入れる所定単位量の米(本実施形態では一合の米)を炊くのに用いる水の量を示す印である水位線16(底12に平行な線)を付している。
【0033】
米携帯容器1を構成する四つの部材の中の中底部材20は、上述したカップ10の内部10aに底12と対向するように配置されると共に、その底12との距離が変わるようにカップ10の内部10aで移動可能になっている。本実施形態の中底部材20は、フラットな円板状の中底板部21及び棒状の延出部22を有するように一体的に成形された合成樹脂製の部材になっている。中底板部21は所要の剛性を確保するために、その厚み(板厚)は約2~10mm程度の範囲に設定することが考えられ、本実施形態では、剛性の確保と、扱いやすさ(カップ10の内部での動かしやすさ)のバランスを考慮して5mmの厚さにしている。
【0034】
また、中底板部21の外径D2(図1参照)は、上述したカップ10の周壁11の内径D1に比べて、米粒の寸法より小さめの隙間が生じる程度の寸法に設定して、カップ10の周壁内面11dとの間に米粒が入り込まないようにしながら、周壁内面11dに付着したような米粒を、中底板部21の外周縁21cで掻き出せるようにしている。
【0035】
中底板部21の外径D2と、カップ10の内径D1との具体的な寸法関係としては、中底板部21の中心21dを、カップ10の底12の中心12bに一致させた状態で、中底板部21の周囲である外周縁21cと、カップ10の周壁内面11dとの間に0.1mm以上1.3mm以下の範囲で隙間が生じるように、外径D2を内径D1より小さく設定する。隙間に米が入り込まないようにすること、米の掻き出しやすさ、カップ10の内部10aでの動かしやすさ、及び中底板部21の径方向でのガタ付き抑制等のバランスを考慮すると、上述した0.1mm以上1.3mm以下の隙間範囲の中で、特に、0.2mm以上0.8mm以下の範囲が好適である。
【0036】
本実施形態では、特に、隙間に米が入り込まないようにすること、及び、米の掻き出しやすさを重視して、上記の隙間の寸法が0.2mmから0.3mm程度となるように、外径D2の寸法を設定する(隙間の寸法を0.3mmにした場合、中底板部の外径D2では、0.3mmの倍となる0.6mmだけ、カップ10の内径D1より小さくなる)。
【0037】
さらに、中底部材20は、中底板部21の上面21bにおける中心21dからは、中底板部21と鉛直する方向(中底部材20がカップ10の内部10aに配置された状態では、カップ10の開口13へ向かう方向に相当)へ延出する延出部22を設けている。丸棒状の延出部22は、所要の剛性を確保するために約4mmから10mm程度の範囲で、太さ(直径)の寸法を設定することが好適であり、本実施形態では、延出部22の直径を5mmにしている。なお、延出部22の延出長さは、後述するように、第一蓋30をカップ10に装着した場合で、その第一蓋30の蓋内面に届いて当接する寸法にされている(中底板部21の下面21aがカップ10の底内面12aに当接するように中底部材21がカップ10の内部に配置された状態で、カップ10の水位線16を開口13の方へ超えて延出する寸法を延出部22は有する)。また、延出部22の根元側の剛性を高めるため、本実施形態では中底板部21の上面21bに十字状のリブ部21eを設けている。
【0038】
米携帯容器1を構成する四つの部材の中の第一蓋30は排水蓋に相当し、カップ10の開口を覆うようにカップ10に装着される部材であり、カップ10の内部10aに入れられる水を排水可能にする排水部30aを有する。本実施形態の第一蓋30は、外形的に段差のある形状となっており、カップ10に装着される側の円筒状の周壁部材31、カップ10に装着された状態で天面側となる雄ネジ蓋部材35、及び円形シート状の網部材36というパーツを組み合わせて構成される。
【0039】
図2に示すように、第一蓋30を構成するパーツの周壁部材31は合成樹脂製であり、外観から見える蓋外周壁部31aを、上述したカップ10の鍔部14と同寸法の外径にしており、それにより、第一蓋30がカップ10に装着された状態で、米携帯容器1としてデザイン的にすっきりした形状を作り出している。また、周壁部材31は、蓋外周壁部31aの内壁面に、上述したカップ10の雄ネジ部15に螺合するように、螺旋状の溝形状(凹形状)からなる雌ネジ部32を形成している(図3参照)。なお、この雌ネジ部32が、カップ10の雄ネジ部15に、最後の螺旋状の部分まで螺合するように締め付けられると、雄ネジ部15及び雌ネジ部32の螺合箇所でシール性(止水性)が確保されるようになり、カップ10の内部10aに入れられた水が、この雄ネジ部15及び雌ネジ部32の螺合箇所から漏れないようにされている。
【0040】
さらに、図3に示すように、周壁部材31は、蓋外周壁部31aから立設するように内壁部31bを立ち上げており、その内壁部31bの天面側にはリング状の縁となる天縁部31cを設けて、天縁部31cの内側に円状の第一開口31dを形成すると共に、その第一開口31dを架橋するように十字状のフレーム部33を設けている。フレーム部33は、第一蓋30をカップ10に装着した状態で、カップ10の開口13を覆う箇所に位置するようになり(図1、3参照)、フレーム部33のフレーム内面33aにおける中心箇所33bに、凸部34を立設している(図4参照)。
【0041】
図4に示すように、凸部34は、突出端34aに開口する円柱状の係入穴34bを形成する。係入穴34bは、その穴径D4(穴の内径)を、上述した中底部材20の延出部22の外径D3(丸棒状の外径)より少し大きくして(例えば、0.5mm~1.5mm程度)、第一蓋30が、カップ10に装着されると、延出部22の延出端である先端22aが、第一蓋30の係入穴34bに入り込んで、延出部22の先端22aが係入され、延出部22の先端22aが振れないように位置決めされる。
【0042】
また、第一蓋30を、カップ10の雄ネジ部15に、周壁部材31の雌ネジ部36を最後まで螺合するように締め付けて装着すると、カップ10の内部10aに配置された中底部材20(カップ10の底内面12aに当接配置された状態の中底部材20)の延出部22における先端面22bが、係入穴34bの穴底面34cに当接するように、係入穴34bの穴深さの寸法が設定されている。このように係入穴34bの穴深さの寸法を設定することで、カップ10の内部10aに配置される中底部材20が、米携帯容器1の持ち運び時などにも、Z軸方向(延出部22の延出方向)へズレ無くなり、中底部材20を安定した姿勢に維持できる。なお、第一蓋30の係入穴34bの穴底面34cは、第一蓋30において、カップ10の開口13を覆う箇所の蓋内面に相当する。なお、図4では、係止穴
34bの穴底面34cと、フレーム内面33aの位置(図4の中で、Z軸方向における高さの位置)を相違させているが、両者の位置を同一にすることで、穴底面34c及びフレーム内面33aの両方を蓋内面に相当する同一面にしてもよい。
【0043】
第一蓋30を構成する雄ネジ蓋部材35も合成樹脂製のパーツであり、外周壁面にカップ10の雄ネジ部15と同様の構成の蓋雄ネジ部35aを形成しており(蓋雄ネジ部35aは、サイズ等もカップ10の雄ネジ部15と同様)、天面側へはリング状の蓋縁部35bを形成し、その蓋縁部35bの内側は、周壁部材31の第一開口31dと対応した円形の蓋開口35cにしている。なお、蓋開口35cには、第一開口31cに架橋される十字状のフレーム部33のようなものは設けていない。
【0044】
第一蓋30の網部材36は、米粒より小さい網目(約1mm~1.5mm以下の網目)で構成される円形シート状の合成樹脂製又は金属製のパーツである。周壁部材31、雄ネジ蓋部材35、及び網部材36を組み合わせて第一蓋30を構成するには、周壁部材31のフレーム部33及び天縁部31cの上面(外面)に網部材36を載置し、その上から、雄ネジ蓋部材35を被せて、接着又は溶着等により、網部材36を挟み込んだ雄ネジ部材35と周壁部材31を一体化して第一蓋30を作り上げる。
【0045】
このような構成の第一蓋30は、周壁部材31の第一開口31d、網部材36の網目、及び雄ネジ蓋部材35の蓋開口35cが連通しており、その連通した箇所を介して、第一蓋30は、内側と外側が通じるようになっている。第一蓋30は、このような第一開口31d、網部材36の網目、及び蓋開口35cによる連通箇所を排水部30aにしている(図1参照)、米携帯容器10は、第一蓋30をカップ10に装着した状態で、この排水部30aを通じて、カップ10の内部10aに入れられる水を排水可能にしている。
【0046】
図1-3等に示す米携帯容器1を構成する四つの部材の中の第二蓋40は閉鎖蓋に相当し、上述した第一蓋30の排水部30aを閉鎖するように第一蓋30に装着されるものであり、一体的に成形された合成樹脂製の部材であり、外周壁部41及び天板部42を有する。外周壁部41は、上述した第一蓋30の周壁部材31の蓋外周壁部31aと同様の構成になっており、カップ10の鍔部14と同寸法の外径にすると共に、その内壁面に、第一蓋30(周壁部材31)の雌ネジ部32と同様の構成の蓋雌ネジ部41aを形成している(蓋雌ネジ部41aは、サイズ等も第一蓋30の雌ネジ部32と同様)。この蓋雌ネジ部41aも、第一蓋30(雄ネジ蓋部材35)の蓋雄ネジ部35aに、最後の螺旋状の部分まで螺合するように締め付けられると、蓋雄ネジ部41a及び蓋雌ネジ部35aの螺合箇所でシール性(止水性)が確保される。
【0047】
また、第二蓋40の天板部42は中実の板状部分であり、上述したように、第二蓋40の蓋雌ネジ部41aが、第一蓋30(雄ネジ蓋部材35)の蓋雄ネジ部35aに最後まで締め付けられて第一蓋30へ装着されると、天板部42が、第一蓋30の排水部30a(第一開口31c、網部材36の網目、及び蓋開口35cによる連通箇所)を閉鎖するようになる。それにより、米携帯容器1(カップ10)の内部に入れられた水は、例えば、米携帯容器1を天地逆(カップ10の底12が上方で、第二蓋40が下方となるような姿勢)にしても、排水部30aから水が漏れることなく、シール性が維持される。
【0048】
次に、図5等に基づき、本発明の米携帯容器1の使い方を説明していく。米携帯容器1の使い方としては主に「洗米時」、「持ち運び時」、「取り出し時」の三つの段階に分けられる。「洗米時」の使い方における手順としては、先ず、図5(a)に示すように、カップ10の内部10aに中底部材20を配置する(カップ10の底12の底内面12aに、中底部材20の中底板部21の下面21aが当接した状態となるように中底部材20を配置)。
【0049】
次に、カップ10aの内部10aに、所定単位量の米(一合の米)及び洗米用の水を入れる。それから、第一蓋30をカップ10へ螺合により止水性を確保できるようにキッチリと装着し、さらに、第二蓋40を第一蓋30へ螺合により止水性を確保できるようにキッチリと装着する。なお、先に第二蓋40を第一蓋30に装着しておき、第一蓋30及び第二蓋40をカップ10へ装着する手順にすることも可能である。また、第一蓋30をカップ10へキッチリと螺合して装着すると、図4に示すように、中底部材20の延出部22の先端22aが第一蓋30の凸部34の係入穴34bに入り込んで、その先端面22bが、係入穴34bの穴底面34cに当接した状態になる。
【0050】
この状態で、米携帯容器1を垂直方向や水平方向などに複数回、振ることで洗米を行う。そして、洗米により白濁した水は、米携帯容器1において、第二蓋40を第一蓋30から外してから、カップ10を傾けるか、又は、第一蓋30が下方になるような姿勢(天地逆の姿勢)にして、排水部30aから外方へ出す(排水する)。この排水の際、第一蓋30の網部材36は、網目を米粒より小さくしているので、米が外方へ流出しない。なお、米の汚れがひどい場合は、上述した洗米の作業を複数回、繰り返す。
【0051】
このように本発明に係る米携帯容器1では、手を水に浸けずに洗米することを可能にしている。また、米携帯容器1を強く振っても、中底部材20は、その延出部22が第一蓋30の係入穴34bに入り込んで、中底部材20の移動規制が維持されるので、中底部材20がガタつくことなく、安定した洗米を行える。
【0052】
次に、「持ち運び時」の使い方における手順として、上述した洗米作業が終了すると、洗米済みの米が内部10aに残るカップ10から第一蓋30を外し、カップ10を水平状態に維持する。なお、この状態では、洗米済みの米は、カップ10の内部10aで、中底部材20の中底板部21の上面21bに載っていると共に、中底板部21の下面21aはカップ10の底内面12aに当接するように中底部材20は配置されている。
【0053】
上記の状態で、米炊用の水を、カップ10の開口13から入れることになり、カップ10の周壁内面11dに示される水位線16まで水を入れる。この水位線16まで水を入れることにより、一合の米(所定単位量の米)を炊くのに適量の水が確保される。水を入れてからは、上述した洗米時のときと同様に、止水性を確保するように第一蓋30を及び第二蓋40をそれぞれ装着する。この状態で、野外等の実際に米を炊く場所へ米携帯容器1を携帯する。
【0054】
このように水と一緒に洗米済みの米を携帯することで、携帯している間に、洗米済みの米の中心にまで水が浸透し、芯までふっくらとしてご飯を炊くのに米を良好な状態にできる。また、第一蓋30及び第二蓋40はしっかりと装着すれば止水性を確保できるので、持ち運び時に米携帯容器1から水が漏れることも無い。また、持ち運びの際も、中底部材20の延出部22が第一蓋30の係入穴34bに入り込んで、中底部材20の移動が規制され続けるので、中底部材20にガタツキ等は生じない。
【0055】
最後に、「取り出し時」の使い方における手順としては、第一蓋30及び第二蓋40を外してカップ10の開口13を開放した状態にすると共に、カップ10を飯盒や小型の鍋などの米炊用の器具へ向けて傾け、カップ10の内部10aに入れていた水を、開放した状態の開口13から米炊用の器具へ移し替える(なお、この際、米の一部が米炊用の器具へ水と一緒に移し替えられる)。
【0056】
次に、図5(b)に示すように、中底部材20の延出部22を把持して外方へ引っ張り出し、中底部材20の中底板部21を、カップ10の底12から離反させてカップ10の内部10aから外方へ引き出し、内部10aの米を取り出して米炊用の器具へ移し替える。この際、延出部22は、水位線16より長い寸法になっているので、水の中に手に入れることなく、延出部22を引き出すことができる。
【0057】
また、カップ10の周壁内面11dに米が付着していたとしても、中底板部21の外周縁21cで、周壁内面11dに付着した米は掻き出せるので、カップ10の内部10aからキレイに米を取り出すことができる。なお、中底部材20を引き出す際に、中底板部21や延出部22に米が付着した場合は、中底部材20を米炊用の器具へ軽く叩くように当てて、付着した米を振動で米炊用の器具へ落とすようにする。
【0058】
このように、本発明の米携帯容器1は、手を水に浸けることなく洗米できると共に、米炊用の水と一緒に洗米済みの米を持ち運べるので、水を確保しにくい環境(災害時や山中でのキャンプ時など)でも米炊を行いやすく、また、米炊の場面では、手に米が付着することなく米炊用の器具へスムーズに米を移し替えることができ、衛生面においても好適である。
【0059】
なお、本発明に係る米携帯容器1は、上述した形態に限定されるものではなく、様々な変形例や使い方が考えられる。例えば、上述した形態では、米携帯容器1の材質として、合成樹脂を用いるようにしたが、一部の部材又は全ての部材をアルミニウム等の金属を用いることも可能である。
【0060】
図6は、変形例の第一蓋130の要部を示し(要部断面)、図4に示す第一蓋30に比べて、中底部材20延出部22の先端22aが、第一蓋130の係入穴134bに入りやすくしたものになっている。すなわち、変形例の第一蓋130は、上述した第一蓋30と同様に、フレーム部133のフレーム内面133aに凸部134を立設し、その凸部134の突出端134aに開口する係入穴134bを形成するが、この係入穴134bの開口側に円錐状に拡径したテーパー状のザグリ部134dを形成している。
【0061】
このザグリ部134dの突出端134aにおける内径D5は、円柱的な穴形状部分である係入穴134bの内径D4に比べて大きくしているため(例えば、1mm~4mm程度の範囲で大きくする)、外径D3の延出部22の先端22aが、図4に示す場合に比べて、第一蓋130をカップ10へ螺合する際、その姿勢に少しの傾き等が生じても、テーパー状のザグリ部134dに案内されてスムーズに係入穴134bへ入りやすくなり、第一蓋130のカップ10へ螺合が容易になる。
【0062】
図7(a)は、変形例の中底部材120を示す。この中底部材120は、図1等に示す中底部材20とは異なり、延出部122を、中底板部121の上面121bにおいて、中心からではなく、外周縁121cの一箇所121eから延出させていることが特徴になっている。また、延出部122は、丸棒状ではなく、長板帯状の形状にしている。
【0063】
そして、延出部122の延出長さは、中底部材120がカップ10の底12に配置されて(底内面12aに当接配置されて)、第一蓋30をキッチリとカップ10に螺合した状態で、フレーム内面33a(第一蓋30の蓋内面に相当)に先端122aが当接する寸法に設定する。なお、この変形例では、第一蓋30の凸部34は不要なので省略する。
【0064】
このような図7(a)に示す変形例では、延出部122がカップ10のZ軸方向に沿った中心に位置しないので、カップ10の内部10aに米や水を入れやすくなる。また、この変形例の中底部材120も、延出部122が第一蓋30の蓋内面であるフレーム内面33aに当接して、カップ10の内部10aに配置されるので、洗米時や持ち運び時に中底部材121がガタつくことを防止できる。
【0065】
図7(b)は、別の変形例の中底部材220を示し、この別の変形例である中底部材220は、図7(a)に示す中底部材120に比べて剛性を高めたことが特徴となる。すなわち、図7(a)に示す中底部材120は、一本の延出部122を延出する構成であるが、図7(b)の中底部材220は、中底板部221の上面221bにおいて、外周縁221cの第一箇所221eから第一延出部222を延出すると共に、外周縁221cにおいて第一箇所221aと対向する第二箇所221fから第二延出部223を延出し、第一延出部222の延出端である第一先端222a及び第二延出部223の延出端である第二先端223aを、長板状の連結部224で繋ぐ構成になっている。
【0066】
また、第一延出部222及び第二延出部223の延出長さは基本的に、上述した図7(a)に示す中底部材120の延出部122と同様になっている。そのため、中底部材220をカップ10の底内面12aに当接配置して、第一蓋30をキッチリとカップ10に螺合すると、第一蓋30のフレーム内面33a(蓋内面)に、第一先端222a、第二先端223a、及び連結部224の天面224aが当接することになる。なお、図7(b)に示す別の変形例の場合も、第一蓋30の凸部34は不要なので省略することになる。
【0067】
このような図7(b)に示す別の変形例の中底部材220では、延出部が第一延出部222及び第二延出部223の計二本になると共に、それぞれの先端である第一先端222a及び第二先端223aが連結部224で連結される構成であるため、中底板部221から所要の延出長さで飛び出る延出部(第一延出部222及び第二延出部223)の剛性が、図1に示す中底部材20や図7(a)に示す中底部材120に比べて向上する。また、連結部224が存在することにより、連結部224を把持して、カップ10から中底部材220を引っ張り出せるので、洗米済みの米を米炊用の器具へ移し替えるときなどは、連結部224を掴んで、剛性の上がった中底部材220をカップ10から取り出しやすくなり、スムーズ且つ確実に米の移し替えを行える。
【0068】
図8(a)は、更に別の変形例の中底部材320を示し、図8(b)は、この中底部材320に応じた変形例のカップ100を示す。中底部材320は基本的に、上述した図7(a)に示す中底部材120と同様であり、延出部先端の構造が異なることが特徴になっている。すなわち、図8(a)に示す中底部材320は、中底板部321の上面321bにおいて、外周縁321cの一箇所321eから、長板帯状の延出部322を延出するが、この延出部322は、図7(a)に示す延出部122より延出寸法が短くなっており、また、先端322aにおいて、外面322bから外方へ向けて突出する係止部325を形成したことが特徴になっている。
【0069】
延出部322は、中底部材320が、図8(b)に示すカップ100の内部に配置された状態で(中底板部321の下面321aがカップ100の底内面102aに当接するように中底部材321がカップ100の内部100aに配置された状態)で、カップ100の水位線106を開口103の方へ10mm~35mm程度の範囲で超えて延出する寸法に留まる(例えば、20mm)。そのため、この延出部322の先端322aは、カップ100に装着される第一蓋30の蓋内面(フレーム内面33a)に当接(到達)しない。そして、延出部322の先端322aに形成された係止部325は、楔状になっており、先端322aにおける突出量が最も大きくなるような末広がり形状になっている。
【0070】
また、図8(b)に示すカップ100は基本的に、図1-3に示すカップ10と同様の構成であり、底102の周囲から円筒状の周壁101が立設し、その底102に対向する側を開口103にすると共に、周壁内面101dに水位線106を付している。この変形例のカップ100の特徴としては、水位線106から開口103の方へ20mm離れた周壁内面101の一箇所に、凹状の被係止部107を形成したことである。この被係止部107は、上述した中底部材320の延出部322に設けた楔状の係止部325に対応したものになっており、係止部325の楔形状と同じ形状で窪んでおり、係止部325は、被係止部107の中に収まることが可能であると共に、その収まった状態では、係止部325は被係止部107に係止された状況になる。
【0071】
図8(a)に示す中底部材320を、図8(b)に示すカップ100の内部100aに配置する仕方は、中底部材320の延出部322の外面322bが、カップ100の被係止部107と向かい合うような方向にして、中底部材320を、開口103からカップ100の内部100aへ入れていく。この際、延出部322の先端322aが、開口103を超えてカップ100の内部100aへ入ると、突出する係止部325はカップ100の周壁内面101dに接触するため、延出部322はカップ100の中心へ傾いて撓む姿勢になる(例えば、延出部322を含む中底部材320は可撓性を有する合成樹脂で一体的に成形される)。
【0072】
中底板部321の下面321aが、カップ100の底内面102aに当接するまで、中底部材320をカップ100の底102へ進めると、延出部322の係止部325が、被係止部107の中に入り込んで係止された状態になる。この係止により、中底部材320は、カップ100の内部100aで移動が規制されることになる(Z軸方向への規制に加えて、中底板部321の周方向の移動も記載される)。それにより、中底部材320は底102に当接配置された状態が維持され、図8(a)、(b)に示す変形例では、第一蓋30を装着しなくても、中底部材320を位置決めできるメリットがある。
【0073】
また、中底部材320をカップ100から取り出す際は、延出部322の先端322aを把持することになるが、先端322aは、カップ100の水位線106より20mm上方となるため、ユーザはカップ100の内部100aに入れられた米炊用の水に手(指先)が浸かることはない。また、先端322aを把持して、延出部322をカップ100の内方へ傾けると、係止部325が被係止部107から抜け出て係止が解除される。後は、延出部322を引っ張ることで、中底部材320をカップ100の内部100aから引き出せるので、カップ100の内部100aに入っていた洗米済みの米を、米炊用の器具へ容易に移し替えることができる。
【0074】
さらに、図8(a)、(b)に示す変形例においては、中底部材320の係止部325及びカップ100の被係止部107を省略する仕様も想定できる。係止部325及び被係止部107を省略すれば、持ち運びの際などにおいて、中底部材320がカップ100の内部100aでZ軸方向に動くことになるが、この動きが発生したとしても、カップ100の内部100aに入れられた米(洗米済みの米)には実質的な影響は生じないので、中底部材320がZ軸方向に動く仕様も許容できる。
【0075】
このような中底部材320がZ軸方向に動く仕様は、図1等に示す中底部材20、図7(a)に示す変形例の中底部材120、図7(b)に示す別の変形例の中底部材220にも適用可能であり、このような仕様にする場合は、各中底部材20、120、220等の各延出部22、122、222、223等は、第一蓋30の蓋内面(フレーム内面33a)へ当接させることは不要になるので、各延出部22、122、222、223等の延出長さは、図8(a)に示す延出部322と同じ寸法に設定することになり(中底部材20、120、220がカップ10の底12に当接配置された状態で、カップ10の周壁内面11dの水位線16より開口13の方へ延出部22、122、222、223等が延出する長さに設定)、この寸法であれば、ユーザが米炊用の水に手を浸けずに、各延出部22、122、222、223等を把持できる。なお、このような仕様では、中底部材20の把持部20の先端22aは、第一蓋30に設けた凸部34の係止穴34bに届かないので、第一蓋30の凸部34及び係止穴34bは省略する(設けない)。
【0076】
さらにまた、米炊き作業のために、カップ10から米を取り出す際、先に、米炊き用の水を飯盒などの米炊き用の器具へ流し入れるようにして、米だけがカップ10の内部10aに残るような手順にすれば、延出部22、122、222、223の延出長さを、カップ10の水位線16を開口13の方へ超えずに、上記の場合より短く設定することも可能となる。このように延出長さを短く設定する場合は、最低限、把持できる長さを確保すれば良いので、中底板部21、121、221等から延び出る延出部22、122、222、223の長さとしては、0.5cm以上の寸法を確保すれば良い。
【0077】
さらにまた、上述した図1等に示す中底部材20の中底板部21は、フラットな円板状であり、その厚みは全体で同じ寸法にしたが、中底板部21の部位に応じて厚み寸法を変更して、上面21bをフラット面にするのではなく、斜面や湾曲面にすることも可能である。例えば、中底板部21の中心21dで最も大きい厚み寸法にすると共に、外周縁21cへ行くほど板厚寸法が徐々に薄くなるようにして、中底板部21の上面21bの中心21dが最も高く、その中心21dから外周縁21へ低くなるような斜面や湾曲面(凸状の湾曲面)にしてもよい。このように中心21dを最も高くした場合は、カップ10に入れた米が、中底板部21の外周縁21c寄りに集まりやすくなり、中底部材20でカップ10から米(洗米済みの米)を掻き出す際、カップ10から中底部材20を引き出したときに、中底板部21の外周縁21寄りに載った米を振り落としやすくなり、米炊用の器具へ一段と移しやすくなる。
【0078】
一方、中底板部21の中心21dで最も薄い板厚寸法にすると共に、外周縁21cへ行くほど板厚寸法が徐々に厚くなるようにして、中底板部21の上面21bの中心21dが最も低く、その中心21dから外周縁21へ高くなるような斜面や湾曲面(凹状の湾曲面)にすることも考えられる。このように中心21dを最も低くした場合は、中底板部21の中心21d寄りに米が集まりやすくなり、中底部材20で米を中央にまとめてカップ10から引き出して、一つにまとめた状態で米炊用の器具へ移せるメリットがある。なお、このような中底板部21の部位に応じて厚み寸法を変更する例は、図7(a)(b)や図8(a)に示す中底部材120、220、320のそれぞれにも勿論、適用できる。
してもよい。
【0079】
また、上記の米携帯容器1は、米一合用の例として説明したが、二合用、三合用等のように容器寸法を大きくして、所定単位量として複数合用ものにすることも勿論可能であり、このように、複数合用にする場合は、カップ10、100の周壁内面11d、101dには、それぞれの合数に応じた水位線16、106を複数示すようにする。
【0080】
さらに、上記の米携帯容器1では、図1-3等に示す第一蓋30について、周壁部材31、雄ネジ蓋部材35、及び網部材36という計3つのパーツを組み合わせて構成するようにしたが、網目を合成樹脂で形成する工夫を行うことなどで、第一蓋30の全体を合成樹脂により一体成形してもよい。さらにまた、第一蓋30に形成する排水部30aは網目を主にして構成する以外にも、米粒が通過しない巾のスリット(貫通したスリット)や、米粒が通過しない内径寸法の穴(円形、楕円、多角形の穴)を複数、第一蓋30の天板部に形成して排水部を構成することも可能である。
【0081】
さらにまた、米携帯容器1は、図1、2等に示すように、全体の外観輪郭形状を円柱形状にしていたが、楕円柱形状や多角形の柱形状(外観形状を八角柱形状、六角柱形状、五角柱形状、四角柱形状、三角柱形状等)にすることも可能である。このように全体の輪郭形状を楕円柱形状や多角形の柱形状にする場合は、カップ10、第一蓋30、第二蓋40を、外形及び内部形状も含めて楕円柱形状や多角形の柱形状にすると共に、中底部材20の中底板部21を、それらの形状に合わせた楕円板形状や多角形板形状に形成する。それにより、持ち運び時に、中底部材20が、中底板部21の周方向に回ることなどを防止でき、一段と安定した状態で中底部材20をカップ10の内部10aに配置できる。
【0082】
また、本発明に係る米携帯容器1は、無洗米や洗米済みの米にも適用可能であり、無洗米や洗米済みの米を用いる場合は、上述した米携帯容器1の使い方を説明において、「洗米時」の段階を省略できる。このような場合は、「持ち運び時」及び「取り出し時」の段階で米携帯容器1を使用し、洗米に用いた水の排水が不要となるので、図1において、第一蓋30を省略して米携帯容器1を構成することも可能となる。
【0083】
このような構成の場合、第二蓋40(閉鎖蓋に相当)の装着は、第一蓋30を介在させるのではなく、直接、カップ10に装着して、カップ10の開口13を第二蓋40で閉鎖することになる。なお、カップ10の雄ネジ部15は、第一蓋30の蓋雄ネジ部35aと同じ構成で同じサイズであるため、第二蓋40の蓋雌ネジ部41aをカップ10の雄ネジ部15に螺合して装着し、シール性を維持した状態で、カップ10の内部10aに入れた米(無洗米や洗米済みの米)を、米炊き用の水と一緒に持ち運ぶことができる。また米炊き作業の際は、第二蓋40を外せば、カップ10の開口13が開放されるので、この後は、上述した場合と同様に、米炊き用の水と米(無洗米や洗米済みの米)を米炊き用の器具へ移し替えることになる。
【0084】
なお、第一蓋30を省略して米携帯容器1を構成する場合、中底部材20の延出部22の先端22aを、カップ10に装着した第二蓋40の天板部42の内面(開口13を閉鎖する蓋内面)に当接するように、延出部22の延出長さや、第二蓋40の天板部42の板厚さの寸法を設定すれば、上述したように、中底部材20をカップ10の底12に付かせた状態を維持でき、持ち運び時に中底部材20がカップ10の中でZ軸方向へ動くのを防止できることになり好適である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、米炊用の水を米と一緒に野外等へ持ち運べるようにした上で、米を米炊用の器具へ移し替えるときに米粒が手や容器内に付着するのを防止して、野外で容易且つ衛生的に米炊きを行うことに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 米携帯容器
10、100 カップ
11、101 周壁
12、102 底
13、103 開口
16、106 水位線
20、120、220、320 中底部材
21、121、221、321 中底板部
22、122、222、223、322 延出部
30、130 第一蓋(排水蓋)
30a 排水部
33、133 フレーム部
34、134 凸部
34b、134b 係止穴
34c 穴底面
40 第二蓋(閉鎖蓋)
107 被係止部
325 係止部
【要約】
【課題】キャンプ等の野外にて、米炊用の器具へ米を移し替える際に、米粒が手に付着したり、容器内に残ったりするのを防止する。
【解決手段】米携帯容器1は、カップ10の内部10aに中底部材20を配置すると共に、排水部30aを有する第一蓋30、及び排水部30aを閉鎖する第二蓋40を有する。カップ10に米及び水を入れて米携帯容器1を振ることで洗米を行い、洗米により白濁した水は排水部30aから排水する。洗米が完了すると、洗米済みの米と米炊用の水をカップ10に入れた米携帯容器1を野外等の米を炊く場所へ持ち運ぶ。米を炊く際、米携帯容器1から飯盒などの米炊用の器具へ洗米済みの米を移し替えるには、中底部材20を把持して引き出すことで、米をカップ10の外方へ掻き出す。
【選択図】図1

図1
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図8