(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】車輌用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/145 20180101AFI20221111BHJP
F21W 102/19 20180101ALN20221111BHJP
F21W 102/30 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/30 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20221111BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20221111BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20221111BHJP
【FI】
F21S43/145
F21W102:19
F21W102:30
F21W103:10
F21W103:20
F21W103:30
F21W103:35
F21W103:45
F21W103:55
F21Y115:15
(21)【出願番号】P 2018151947
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】志藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 徹
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092146(JP,A)
【文献】国際公開第2005/034586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/145
F21W 102/19
F21W 102/30
F21W 103/10
F21W 103/20
F21W 103/30
F21W 103/35
F21W 103/45
F21W 103/55
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として面状発光体が用いられた車輌用灯具であって、
前記面状発光体は、
発光物質を有する発光層と、
ベース部と前記ベース部から延設され
ライン状に形成された複数のストライプ部
とを有し前記複数のストライプ部が前記発光層に所定の間隔で並んだ状態で積層された陰極層と、
前記発光層を挟んで前記陰極層の反対側において積層された陽極層とを備え、
前記発光層のうち前記複数のストライプ部が積層された部分がそれぞれ発光可能部として設けられ、
前記発光可能部の一部以外における電流の流れを規制する絶縁層が前記発光層を挟んで前記陰極層の反対側において複数の前記ストライプ部に亘った状態又は前記ベース部と少なくとも一つの前記ストライプ部に亘った状態で積層され、
前記陽極層と前記陰極層に電圧が印加されたときに前記発光可能部の一部から光が出射される
車輌用灯具。
【請求項2】
前記発光可能部における光の出射位置が所定の文字又は図形の認識が可能な位置にされた
請求項1に記載の車輌用灯具。
【請求項3】
前記発光層と前記陽極層の間の一部に絶縁層が積層され、
前記複数の発光可能部のうち前記絶縁層が積層されていない部分から光が出射される
請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具。
【請求項4】
厚み方向において前記陽極層と同一の層に前記陽極層に並んで絶縁層が積層され、
前記複数の発光可能部のうち前記絶縁層が積層されていない部分から光が出射される
請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具。
【請求項5】
前記陰極層として複数の第1のストライプ部を有する第1の陰極層と複数の第2のストライプ部を有する第2の陰極層とが設けられ、
前記第1のストライプ部と前記第2のストライプ部が交互に並んで位置された
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車輌用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として面状発光体が用いられた車輌用灯具についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具には光源として有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)等の面状発光体が用いられたものがある。有機ELパネル等の面状発光体は薄型であり屈曲可能であると共に広範囲の光の照射が可能であるため、面状発光体を用いる車輌用灯具の開発が進展している。
【0003】
このような面状発光体は、例えば、ランプハウジングとカバーによって形成された内部空間である灯室に配置されて用いられたり、透明体である車輌のウインドウ等に取り付けられて用いられる。
【0004】
また、面状発光体には、例えば、ハイマウントストップランプやテールランプ等の車輌用標識灯として用いられ、ライン状の複数の陰極がストライプ状に並んで設けられたタイプがある(例えば、特許文献1参照)。このようなタイプの面状発光体は、例えば、車輌のリアウインドウに貼り付けられて用いられ、陰極は透過性を有しないが、隣り合う陰極間の部分は透過性を有するため、運転者等の車輌の搭乗者において陰極間から後方の視認が可能になり、後方の良好な視認性が確保される。
【0005】
上記のような面状発光体にあっては、陽極層と陰極層に電圧が印加されると発光層において電流が流れ、発光層で電子と正孔が結合し、結合時のエネルギーが発光層に含まれる発光物質を励起させることにより発光が行われる。
【0006】
従って、ライン状の複数の陰極がストライプ状に並んで設けられたタイプの面状発光体においては、発光層のうち複数の陰極層が積層された各部分の全体から光が出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、面状発光体を有する車輌用灯具の開発が一層進展しており、様々な機能を備えた多様な種類の車輌用灯具が望まれている。例えば、面状発光体から出射される光によって他の車輌の搭乗者や歩行者等に標識の種類や内容を視覚的かつ直感的に認識させることができれば、他の車輌の搭乗者や歩行者等に標識の種類や内容をより迅速かつ的確に伝達することが可能になり、このような機能を有する車輌用灯具の開発が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、機能性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1に、本発明に係る車輌用灯具は、光源として面状発光体が用いられた車輌用灯具であって、前記面状発光体は、発光物質を有する発光層と、ベース部とベース部から延設されライン状に形成された複数のストライプ部とを有し前記複数のストライプ部が前記発光層に所定の間隔で並んだ状態で積層された陰極層と、前記発光層を挟んで前記陰極層の反対側において積層された陽極層とを備え、前記発光層のうち前記複数のストライプ部が積層された部分がそれぞれ発光可能部として設けられ、前記発光可能部の一部以外における電流の流れを規制する絶縁層が前記発光層を挟んで前記陰極層の反対側において複数の前記ストライプ部に亘った状態又は前記ベース部と少なくとも一つの前記ストライプ部に亘った状態で積層され、前記陽極層と前記陰極層に電圧が印加されたときに前記発光可能部の一部から光が出射されるものである。
【0011】
これにより、複数の発光可能部のうちの一部から光が出射されるため、光の出射部分を任意に設定することにより、出射される光によって任意の表示を形成することが可能になる。
【0012】
第2に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記発光可能部における光の出射位置が所定の文字又は図形の認識が可能な位置にされることが望ましい。
【0013】
これにより、発光可能部の各位置から出射される光によって他の車輌の搭乗者や歩行者等への注意喚起や現在の運転状況の周知等が行われる。
【0014】
第3に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記発光層と前記陽極層の間の一部に絶縁層が積層され、前記複数の発光可能部のうち前記絶縁層が積層されていない部分から光が出射されることが望ましい。
【0015】
これにより、電圧が印加されたときに絶縁層によって発光可能部の一部以外における電流の流れが規制されて発光可能部の一部から光が出射される。
【0016】
第4に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、厚み方向において前記陽極層と同一の層に前記陽極層に並んで絶縁層が積層され、前記複数の発光可能部のうち前記絶縁層が積層されていない部分から光が出射されることが望ましい。
【0017】
これにより、電圧が印加されたときに絶縁層によって発光可能部の電流の流れが規制されて発光可能部の一部から光が出射される。
【0018】
第5に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記陰極層として複数の第1のストライプ部を有する第1の陰極層と複数の第2のストライプ部を有する第2の陰極層とが設けられ、記第1のストライプ部と前記第2のストライプ部が交互に並んで位置されることが望ましい。
【0019】
これにより、第1の陰極層と第2の陰極層への各別の電圧の印加により発光状態を変化させることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の発光可能部のうちの一部から光が出射されるため、光の出射部分を任意に設定することにより、出射される光によって任意の表示を形成することが可能になり、機能性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図2乃至
図12と共に本発明車輌用灯具の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具が車体に配置された状態を示す背面図である。
【
図3】点灯回路と共に陽極層と陰極層を示す概念図である。
【
図4】面状発光体における点灯状態を示す概念図である。
【
図7】二つの陰極層が設けられた面状発光体における点灯状態を示す概念図である。
【
図8】二つの陰極層が設けられた面状発光体における別の点灯状態を示す概念図である。
【
図10】微反射層を有する面状発光体の断面図である。
【
図11】波長と出射角度の関係を示す概念図である。
【
図12】面状発光体における光の強度分布を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明車輌用灯具を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
以下に示した実施の形態は、本発明車輌用灯具を車輌のリアウインドウの内面側に配置されたテールランプ等の車輌用灯具に適用したものである。尚、本発明は、クリアランスランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプ、ハザードランプ、ポジションランプ、バックランプ、フォグランプ又はこれらの組み合わせであるコンビネーションランプ等の各種の車輌用灯具に広く適用することができる。また、本発明車輌用灯具は、車輌のリアウインドウの内面側に配置された灯具に限られることはなく、光源として面状発光体が用いられた車輌用灯具に広く適用することが可能であり、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に光源として面状発光体が配置された車輌用灯具にも適用することができる。
【0024】
以下の説明にあっては、車輌用灯具からの光の出射方向が後方にされた状態で前後上下左右の方向を示すものとする。但し、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0025】
<車輌用灯具の全体構成>
先ず、車輌用灯具1の全体構成について説明する(
図1参照)。
【0026】
車輌用灯具1は、例えば、車輌100におけるリアウインドウ101の内面側に配置されている。車輌用灯具1は、リアウインドウ101の内面に取り付けられていてもよく、リアウインドウ101の内面と一定の間隔を有した状態で配置されていてもよい。車輌用灯具1は、例えば、リアウインドウ101の中央部に対応して位置されている。また、車輌用灯具1は、リアウインドウ101の外面側に配置されていてもよい。
【0027】
<面状発光体の構成及び動作>
次に、面状発光体の構成及び動作について説明する。
【0028】
車輌用灯具1は光源として機能する面状発光体2を有している(
図2及び
図3参照)。
【0029】
面状発光体2は、例えば、有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)であり、例えば、横長の略矩形状に形成されている。面状発光体2は透明基板3と陽極層4と発光層5と陰極層6が積層され、陽極層4と発光層5と陰極層6が封止樹脂7によって封止されている。
【0030】
面状発光体2には陽極層4と陰極層6に電圧を印加するための図示しない取出電極が設けられており、取出電極が点灯回路50に接続されている。従って、陽極層4と陰極層6には点灯回路50から取出電極を介して電圧が印加される。
【0031】
透明基板3はガラスや樹脂等の透明材料によって形成され、面状発光体2において最も後側に位置されている。透明基板3は、例えば、外周部が図示しない粘着テープ等によりリアウインドウ101の内面に固定されている。
【0032】
陽極層4は透明基板3の前面に積層されている。陽極層4としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide))等の透明電極が用いられている。
【0033】
発光層5は陽極層4の前面に積層された有機物層(有機EL層)であり、透明に形成されている。
【0034】
陰極層6は左右に延びるベース部6aと上下に延びるライン状に形成されたストライプ部6b、6b、・・・とを有し、発光層5の前面に積層されている。陰極層6としては有色、例えば、黒色の電極が用いられ、陰極層6は、ベース部6aが、例えば、面状発光体4における上端部に位置され、ストライプ部6b、6b、・・・が左右に等間隔に並んで位置されている。
【0035】
面状発光体2においては、上記したように、陽極層4と陰極層6に点灯回路50から取出電極を介して電圧が印加される。陽極層4と陰極層6に電圧が印加されると、発光層5のうち陽極層4と陰極層6の間に位置する各部分において電流が流れて電子と正孔が結合し、結合時のエネルギーが発光層5に含まれる発光物質を励起させることにより発光が行われる。従って、発光層5のうち発光が行われるのは陽極層4と陰極層6の間に位置する各部分であり、これらの各部分が発光可能部5a、5a、・・・とされている。
【0036】
尚、発光層5は発光可能部5a、5a、・・・とされた部分のみにおいて陽極層4の前面に積層されていてもよい。
【0037】
陽極層4の一部と発光層5の一部との間には絶縁層8が積層されている。絶縁層8は、例えば、透明にされ、発光可能部5a、5a、・・・の各一部と陽極層4の間において積層されている。絶縁層8が積層された部分においては発光可能部5a、5a、・・・に電流が流れず、発光が行われない状態にされる。
【0038】
封止樹脂7は透明基板3の反対側から陽極層4と発光層5と陰極層6を封止している。封止樹脂7は透明に形成されている。
【0039】
上記のように構成された車輌用灯具1において、陽極層4と陰極層6に電圧が印加されると、発光可能部5a、5a、・・・において絶縁層8が積層されていない部分から光が出射され、出射された光が陽極層4と透明基板3とリアウインドウ101を透過されて後方へ向けて照射される。
【0040】
このとき面状発光体2からは所定の文字又は図形が認識されるような部分から光が後方へ向けて出射される(
図4参照)。例えば、「×」が認識されるような光が出射される。
図4には、光が出射される部分に梨子地を付して示している。
【0041】
尚、面状発光体2から出射される光は「×」が認識されるような光である必要はなく、任意の文字や図形が認識されるような光であればよく、特に、標識として有用な文字や図形、例えば、ストップランプとしての標識である「STOP」、追突注意やブレーキをかけたことを認識させるような文字や図形、後進する場合の「BACK」等の様々な光であってもよい。
【0042】
このように発光可能部5a、5a、・・・における光の出射位置が所定の文字又は図形の認識が可能な位置にされることにより、発光可能部5a、5a、・・・の各位置から出射される光によって他の車輌の搭乗者や歩行者等への注意喚起や現在の運転状況の周知等が行われ、車輌用灯具1の機能性の向上を図ることができる。
【0043】
また、発光層5と陽極層6の間の一部に絶縁層8が積層され、発光可能部5a、5a、・・・のうち絶縁層8が積層されていない部分から光が出射される。
【0044】
従って、電圧が印加されたときに絶縁層8によって発光可能部5a、5a、・・・の一部以外における電流の流れが規制されて発光可能部5a、5a、・・・の一部から光が出射されるため、簡素な構造によって発光可能部5a、5a、・・・の一部から光を出射させることができる。
【0045】
尚、上記には、絶縁層8が陽極層4と発光層5の間に積層されて発光可能部5a、5a、・・・において発光が行われない部分が形成される例を示したが、例えば、絶縁層8が面状発光体2の厚み方向において陽極層4と同一の層に陽極層4に並んで積層されて発光可能部5a、5a、・・・において発光が行われない部分が形成されてもよい(
図5参照)。
【0046】
このように陽極層4と同一の層に陽極層4に並んで絶縁層8が積層されて発光可能部5a、5a、・・・のうち絶縁層4が積層されていない部分から光が出射されることにより、電圧が印加されたときに絶縁層8によって発光可能部5a、5a、・・・の電流の流れが規制されて発光可能部5a、5a、・・・の一部から光が出射されるため、簡素な構造によって発光可能部5a、5a、・・・の一部から光を出射させることができる。
【0047】
また、面状発光体2においては、例えば、絶縁層8が設けられず、面状発光体2の厚み方向において陽極層4と同一の層に発光層5の部分5bが並んで積層されて発光可能部5a、5a、・・・において発光が行われない部分が形成されてもよい(
図6参照)。この場合には陽極層4と同一の層に積層された発光層5の部分5bが透明基板3の前面に積層され、透明基板3の前面に積層された発光層5の部分5bにおいては発光が行われない。
【0048】
このように陽極層4と同一の層に陽極層4に並んで発光層5の部分5bが積層されて発光可能部5a、5a、・・・の一部から光が出射される構成にすることにより、陽極層4と陰極層6を積層することにより必要な位置からのみ光を出射させることが可能になり、面状発光体2の積層構造を簡素化した上で発光可能部5a、5a、・・・の一部から光を出射させることができる。
【0049】
また、面状発光体2には、二組の陰極層が設けられていてもよい(
図7及び
図8参照)。二組の陰極層としては、第1の陰極層6Aと第2の陰極層6Bが設けられ、第1の陰極層6Aは第1のベース部6cと第1のストライプ部6d、6d、・・・を有し、第2の陰極層6Bは第2のベース部6eと第2のストライプ部6f、6f、・・・を有している。第1の陰極層6Aは第1のベース部6cが面状発光体4における上端部に位置され、第2の陰極層6Bは第2のベース部6eが面状発光体4における下端部に位置され、第1のストライプ部6d、6d、・・・と第2のストライプ部6f、6f、・・・が左右に離隔した状態で交互に位置されている。
【0050】
このような構成において、陽極層4と第1の陰極層6Aに電圧が印加されると、第1のストライプ部6d、6d、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「○」が認識されるような光が出射され、陽極層4と第2の陰極層6Bに電圧が印加されると、第2のストライプ部6f、6f、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「×」が認識されるような光が出射される。
【0051】
また、陽極層4と第1の陰極層6Aと第2の陰極層6Bに電圧が印加されると、第1のストライプ部6d、6d、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「○」が認識されるような光が出射されると共に第2のストライプ部6f、6f、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「×」が認識されるような光が出射される。
【0052】
尚、第1の陰極層6Aと第2の陰極層6Bが設けられた構成においては、一方の陰極層における発光可能部の全体から光が出射され、他方の陰極層における発光可能部の一部から光が出射されてもよい(
図8参照)。例えば、陽極層4と第1の陰極層6Aに電圧が印加されると、第1のストライプ部6d、6d、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の全体から光が出射され、陽極層4と第2の陰極層6Bに電圧が印加されると、第2のストライプ部6f、6f、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「×」が認識されるような光が出射される。また、例えば、陽極層4と第1の陰極層6Aと第2の陰極層6Bに電圧が印加されると、第1のストライプ部6d、6d、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の全体から光が出射されると共に第2のストライプ部6f、6f、・・・が積層されている発光可能部5a、5a、・・・の一部から、例えば、「×」が認識されるような光が出射される。
【0053】
このように第1のストライプ部6d、6d、・・・を有する第1の陰極層6Aと第2のストライプ部6f、6fを有する第2の陰極層6Bとが設けられ、第1のストライプ部6d、6d、・・・と第2のストライプ部6f、6f、・・・が交互に並んで位置される構成にすることにより、第1の陰極層6Aと第2の陰極層6Bへの各別の電圧の印加により発光状態を変化させることが可能になり、車輌用灯具1の機能性の向上を図ることができる。
【0054】
尚、上記には、面状発光体2に二組の陰極層が設けられた例を示したが、面状発光体2に三つ以上の陰極層が設けられてもよい。
【0055】
以上に記載した通り、車輌用灯具1にあっては、面状発光体2において、発光層5に発光可能部5a、5a、・・・が設けられ、陽極層4と陰極層6(6A、6B)に電圧が印加されたときに発光可能部5a、5a、・・・の一部から光が出射される。
【0056】
従って、発光可能部5a、5a、・・・のうちの一部から光が出射されるため、光の出射部分を任意に設定することにより、出射される光によって任意の表示を形成することが可能になり、機能性の向上を図ることができる。
【0057】
<面状発光体の別の構成及び動作>
以下に、面状発光体2とは層構成の異なる面状発光体2Xについて説明する(
図9乃至
図12参照)。
【0058】
一般に、面状発光体において、発光層の各部から光が後方へ向けて出射されたときに、多くの光は透明基板を透過されて後方へ照射されるが、一部の光は、例えば、透明基板で内面反射され隣り合う陰極層間(ストライプ部間)から車室において前方へ向かう。このとき内面反射されて前方へ向かった光が車室に存在するルームミラーに入射されると、運転者がルームミラーによって後方の状況を確認したときに、透明基板で内面反射された光がルームミラーで反射されて運転者の視野に入り後方の状況を確認し難くなる。
【0059】
特に、車輌用灯具がテールランプ等の標識灯として用いられている場合には、面状発光体から出射された光が赤色光であり、赤色光が視野に入ると運転者が他の車輌等から発せられた光であると誤認するおそれもある。
【0060】
そこで、このような前方へ向かう反射光の発生が抑制された面状発光体2Xについて説明する。
【0061】
図9において、「角度依存性」に示す円Sは有機ELパネルにおいて出射される理想的なランバーシアン光の分布であり、太線で示すデータが比較測定の結果を示すデータである。
【0062】
図9に示すように、面状発光体Aは「角度依存性」の結果において、裏面側の光に関し、面状発光体Bに対して狭い範囲でかつ少ない光量の分布が得られた。従って、透明基板で内面反射され裏面側に向かう光が狭い範囲でかつ少ない光量であることが確認された。このとき、面状発光体Aは「角度依存性」の結果において、正面側の光に関し、ランバーシアン光に近い光の分布であり面状発光体Bに対して広がりの少ない光の分布であることが確認された。
【0063】
このような「角度依存性」の結果に基づき、透明基板で内面反射されて前方へ向かう反射光の発生を抑制するためには、集光性の高い光の出射状態を得ることが必要であることが確認された。
【0064】
そこで、集光性の高い光の出射状態を確保するために、マイクロキャビティ技術を用いた面状発光体2Xを開発した(
図10参照)。
【0065】
面状発光体2Xは透明基板3と陽極層4と発光層5と陰極層6が積層され、陽極層4と発光層5と陰極層6が封止樹脂7によって封止されている。また、面状発光体2Xには透明基板3と陽極層4の間に微反射層9が積層されている。従って、面状発光体2Xにおいては、発光層5から出射された光の一部が微反射層9で反射され、再度、発光層5に戻り陰極層6で反射されて透明基板3側へ向かう(
図10の光A参照)。また、光の微反射層9での反射と陰極層6で反射は繰り返し複数行われる場合もある。
【0066】
面状発光体2Xにおいては、陽極層4と発光層5の合計の厚みが発光層5から出射される光の主波長の整数倍又は整数倍に近い厚みにされている。例えば、発光層5から出射される光の主波長が620nmである場合には、陽極層4と発光層5の合計の厚みが620nmの整数倍又は整数倍に近い厚みにされている。
【0067】
具体的には、陽極層4と発光層5の合計の厚みを厚みLとし、発光層5から出射される光の主波長を波長λとし、nを自然数とすると、
数式1:n(λ-5)≦L≦n(λ+5)
を満足する構成にされている。
【0068】
数式1に基づいて厚みLを算出すると、主波長が、例えば、620nmの場合には、厚みLが615nmから625nmの範囲の整数倍にされ、例えば、nが2の場合には、厚みLが1230nmから1250nmにされる。
【0069】
数式1における±5(nm)は許容数であり、主波長が620nmである場合に波長が5nm異なると、角度換算したときに光の出射方向において7度の相違を呈する(
図11参照)。
図11には、例として、出射される光の波長が615nmの場合と620nmの場合における光の出射方向の角度の相違を模式的に示している。
【0070】
出射方向が7度以内であれば、高い集光性が確保されるため、数式1における±5を集光性を確保するための許容数とした。
【0071】
このように微反射層9が積層され数式1を満足する構成にされた面状発光体2Xにおいては、陽極層4と発光層5の合計の厚みLが発光層5から出射される光の主波長λの整数倍又は整数倍に近い厚みにされているため、微反射層9で光の一部が反射され、特に、特定波長(主波長)の光が共振により増幅されて主波長付近のピーク波長の強度が高くなる(
図12参照)。
図12において、実線で示すデータは面状発光体2Xにおける光の強度分布を示し、破線で示すデータは微反射層9が設けられていない面状発光体における光の強度分布を示す。
【0072】
上記したように、面状発光体2Xにおいては、微反射層9が積層され、陽極層4と発光層5の合計の厚みLが発光層5から出射される光の主波長λの整数倍又は整数倍に近い厚みにされているため、特定波長の光が増幅されて主波長付近のピーク波長の強度が高くなり、集光性の高い光の出射状態を得ることができる。
【0073】
従って、透明基板3で内面反射され隣り合う陰極層6、6、・・・(ストライプ部6b、6b・・・)間から車室において前方へ向かい運転者が誤認するおそれのある反射光の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…車輌用灯具、2…面状発光体、4…陽極層、5…発光層、5a…発光可能部、6…陰極層、6b…ストライプ部、8…絶縁層、6A…第1の陰極層、6d…第1のストライプ部、6B…第2の陰極層、6f…第2のストライプ部