(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】平面型固体電解質酸素セパレータ
(51)【国際特許分類】
C25B 1/02 20060101AFI20221111BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20221111BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20221111BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20221111BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20221111BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20221111BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20221111BHJP
C25B 11/053 20210101ALI20221111BHJP
C25B 11/093 20210101ALI20221111BHJP
C25B 11/091 20210101ALI20221111BHJP
【FI】
C25B1/02
C25B13/07
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B9/77
C25B15/08 302
C25B13/02 302
C25B11/053
C25B11/093
C25B11/091
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021077670
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513197703
【氏名又は名称】國立臺北科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】王 錫福
(72)【発明者】
【氏名】蔡 政廷
(72)【発明者】
【氏名】盧 錫全
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-180031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素アウトレット(10)が形成されている第1の端部プレート(1)と、
前記第1の端部プレート(1)とは間隔を空けている第2の端部プレート(2)と、
前記第1の端部プレート(1)と前記第2の端部プレート(2)との間に配置された少なくとも2つの固体電解質セル(3)であって、それぞれが、
2つの電極層(31)と、
前記電極層(31)同士の間に配置され、且つ、中心部分(321)と、前記中心部分(321)を囲む周囲部分(322)とを有し、前記中心部分(321)が前記2つの電極層(31)に挟まれている、金属酸化物系電解質層(32)と、
前記電極層(31)および前記金属酸化物系電解質層(32)を貫通し、前記酸素アウトレット(10)と位置が合う貫通孔(30)と、を有する少なくとも2つの固体電解質セル(3)と、
それぞれ前記少なくとも2つの固体電解質セル(3)のうちの2つの間に配置されている少なくとも1つの平面型相互コネクタ(4)と、を具え、
各前記平面型相互コネクタ(4)は、上側部分(41)と、下側部分(42)と、接続通路(40)とを有し、
前記上側部分(41)は、前記第1の端部プレート(1)に面する上面(41´)を有し、且つ、前記上側部分(41)は、
酸素含有流体を前記平面型相互コネクタ(4)に導入するための前側インレット領域(411)であって、前記上面(41´)から内側に凹んでいる前側インレット領域(411)と、
酸素欠乏流体を前記平面型相互コネクタ(4)から排出するための後側アウトレット領域(412)であって、前記前側インレット領域(411)とは反対側にあり、前記上面(41´)から内側に凹んでいる後側アウトレット領域(412)と、
前記前側インレット領域(411)と前記後側アウトレット領域(412)との間に配置され、1つの前記固体電解質セル(3)の前記電極層(31)と位置が合うように該電極層(31)の下方に位置する上側メイン領域(413)と、
前記上面(41´)から内側に凹むように前記上側部分(41)の前記上側メイン領域(413)に形成された複数の上側メイン流路(414)であって、それぞれが、前記前側インレット領域(411)と前記後側アウトレット領域(412)とに流体的に接続されている複数の上側メイン流路(414)と、
前記上側メイン領域(413)に位置し、その中に上側通路(410)が形成されている隆起構造(415)であって、前記上側通路(410)が、前記上側メイン流路(414)から流体的に仕切られている一方で前記1つの前記固体電解質セル(3)の前記貫通孔(30)と流体的に接続されている、隆起構造(415)と、を有し、
前記下側部分(42)は、前記上側部分(41)に接続されていて、前記上面(41´)とは反対側にあって前記第2の端部プレート(2)に面する下面(42´)を有し、且つ、
他の1つの前記固体電解質セル(3)の前記電極層(3
1)と位置が合うように該電極層(3
1)の上方に位置する下側メイン領域(423)と、
前記下側メイン領域(423)を囲む周囲領域(422)と、
前記下面(42´)から内側に凹むように前記下側部分(42)の前記下側メイン領域(423)に形成された複数の下側流路(424)と、を有し、
前記接続通路(40)は、前記上側部分(41)の前記隆起構造(415)の前記上側通路(410)と、前記下側部分(42)の前記下側流路(424)とに流体的に接続されて
おり、
前記平面型相互コネクタ(4)の前記上側部分(41)は、
前記1つの前記固体電解質セル(3)の前記金属酸化物系電解質層(32)の前記周囲部分(322)と位置が合う左側辺縁領域(417)と、
前記左側辺縁領域(417)とは反対側に配置されていて、前記1つの前記固体電解質セル(3)の前記金属酸化物系電解質層(32)の前記周囲部分(322)と位置が合う右側辺縁領域(418)と、を更に有する、
平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項2】
前記第1の端部プレート(1)は、前記第2の端部プレート(2)に面する下側プレート面(12´)を有する下側プレート部分(12)を有し、
前記下側プレート部分(12)は、
前記1つの前記固体電解質セル(3)の前記電極層(31)と位置が合うように該電極層(31)の下方に位置する下側メインゾーン(123)と、
前記下側メインゾーン(123)を囲む周囲ゾーン(122)と、
前記下側メインゾーン(123)に形成されていて、前記下側プレート面(12´)に対して窪んでいて、前記酸素アウトレット(10)と流体的に接続されている複数の下側流路(124)と、を有する、
請求項1に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項3】
アノード側密閉部材(5)を更に具え、前記アノード側密閉部材(5)は、前記平面型相互コネクタ(4)の前記下側部分(42)の前記周囲領域(422)と前記他の1つの前記固体電解質セル(3)の前記金属酸化物系電解質層(32)の前記周囲部分(322)との間、または、前記第1の端部プレート(1)の前記下側プレート部分(12)の前記周囲ゾーン(122)と前記1つの前記固体電解質セル(3)の前記金属酸化物系電解質層(32)の前記周囲部分(322)との間に配置されている、
請求項
2に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項4】
前記アノード側密閉部材(5)は、ガラスセラミック材料からなるものである、
請求項3に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項5】
前記第2の端部プレート(2)は、前記第1の端部プレート(1)に面する上側プレート面(21´)を有する上側プレート部分(21)を有し、
前記上側プレート部分(21)は、
酸素含有流体を前記第2の端部プレート(2)に導入するための前側インレットゾーン(211)であって、前記上側プレート面(21´)から凹んでいる前側インレットゾーン(211)と、
酸素欠乏流体を前記第2の端部プレート(2)から排出するための後側アウトレットゾーン(212)であって、前記前側インレットゾーン(211)とは反対側にあって、前記上側プレート面(21´)から凹んでいる後側アウトレットゾーン(212)と、
前記前側インレットゾーン(211)と前記後側アウトレットゾーン(212)との間に配置されていて、前記他の1つの前記
固体電解質セル(3)の前記電極層(31)と位置が合うように該電極層(31)の下方に位置している上側メインゾーン(213)と、
前記上側プレート面(21´)から内側に凹むように前記上側プレート部分(21)の前記上側メインゾーン(213)に形成されている複数の上側メイン流路(214)であって、それぞれ前記前側インレットゾーン(2
11)と前記後側アウトレットゾーン(212)とに流体的に接続されている複数の上側メイン流路(214)と、
前記上側メインゾーン(213)に配置され、前記他の1つの前記
固体電解質セル(3)の前記貫通孔(30)を前記第2の端部プレート(2)の前記上側メイン流路(214)から流体的に仕切る突起(215)と、を有する、
請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項6】
前記平面型相互コネクタ(4)の前記上側部分(41)は、流路マトリクスを形成するように前記上側部分(41)の前記上側メイン流路(414)と交差している上側補助流路(416)を更に有する、
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項7】
前記下側流路(424)は、流路マトリクスを形成するように互いに交差している、
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項8】
各前記固体電解質セル(3)の前記電極層 (31) は、金属系電極層およびセラミック電極層のいずれかである、
請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項9】
前記金属系電極層は、シリサイドと、銀、白金、および金から選択される金属とを含む、
請求項
8に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【請求項10】
前記セラミック電極層は、ドープされた金属酸化物と、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物とを含む、
請求項
8に記載の平面型固体電解質酸素セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質酸素セパレータ(solid electrolyte oxygen separator、SEOS)に関し、より詳しくは、金属酸化物ベースの電解質層を含む平面型固体電解質酸素セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料で作られたイオン輸送膜(ITM)や酸素輸送膜(OTM)は、高温で酸素イオンを輸送することができ、複雑な機械を使用せずに標準大気圧下の空気から高純度の酸素を分離することができ、稼働時の騒音を回避することができる。
【0003】
米国特許第8702914号の台湾対応特許出願である台湾特許I453303号は、ハニカム構造の本体を有する従来の酸素発生装置を開示している。ハニカム構造は、酸素イオン導電性材料、例えば、Y2О3とZrО2で二重に安定化された酸化ビスマス(Bi2О3)材料からなり、空気が本体内に滞留する時間を延ばし、その結果、酸素生成率を向上し得る。しかし、従来の酸素発生装置は、複数の壁(例えば流路壁)、複数の貫通孔、酸素回収のための複数の酸素アウトレット、密閉のための複数のガラス部材などを含む構造にする必要があり、構造が複雑である。そして、構造が複雑であることによって、前述の部材を組み立てる際に困難が生じることがある。また、従来の酸素発生装置で用いられていたディップコート法では、流路壁に形成される導電層の厚さが不均一になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本開示の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができる平面型固体電解質酸素セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、以下の平面型固体電解質酸素セパレータが提供される。該平面型固体電解質酸素セパレータは、酸素アウトレットが形成されている第1の端部プレートと、前記第1の端部プレートとは間隔を空けている第2の端部プレートと、前記第1の端部プレートと前記第2の端部プレートとの間に配置された少なくとも2つの固体電解質セルと、少なくとも1つの平面型相互コネクタとを具える。各前記固体電解質セルは、2つの電極層と、前記電極層同士の間に配置されている金属酸化物系電解質層と、前記電極層および前記金属酸化物系電解質層を貫通し、前記酸素アウトレットと位置が合う貫通孔とを有する。
【0006】
前記金属酸化物系電解質層は、中心部分と、前記中心部分を囲む周囲部分を含み、前記中心部分は、前記2つの電極層に挟まれている。
【0007】
前記少なくとも1つの平面型相互コネクタのそれぞれは、前記少なくとも2つの固体電解質セルのうちの2つの間に配置されていて、且つ、上側部分と、下側部分と、接続通路とを有する。
【0008】
前記上側部分は、前記第1の端部プレートに面する上面と、前側インレット領域と、後側アウトレット領域と、上側メイン領域と、複数の上側メイン流路と、隆起構造とを有する。前記前側インレット領域は、酸素含有流体を前記平面型相互コネクタに導入するためのものである。前側インレット領域は、前記上面から内側に凹んでいる。前記後側アウトレット領域は、酸素欠乏流体を前記平面型相互コネクタから排出するためのものである。前記後側アウトレット領域は、前記前側インレット領域とは反対側にあり、前記上面から内側に凹んでいる。前記上側メイン領域は、前記前側インレット領域と前記後側アウトレット領域との間に配置され、1つの前記固体電解質セルの前記電極層と位置が合うように該電極層の下方に位置する。前記複数の上側メイン流路は、前記上面から内側に凹むように前記上側部分の前記上側メイン領域に形成されている。各前記上側メイン流路は、前記前側インレット領域と前記後側アウトレット領域とに流体的に接続されている。前記隆起構造は、前記上側メイン領域上に位置し、その中に上側通路が形成されている。前記上側通路は、前記上側メイン流路から流体的に仕切られている一方で前記1つの前記固体電解質セルの前記貫通孔と流体的に接続されている。
【0009】
前記下側部分は、前記上側部分に接続されていて、前記上面とは反対側にあって前記第2の端部プレートに面する下面を有する。前記下面は、下側メイン領域と、前記下側メイン領域を囲む周囲領域と、複数の下側流路とを有する。前記下側メイン領域は、他の1つの前記固体電解質セルの前記電極層と位置が合うように該電極層の上方に位置する。前記複数の下側流路は、前記下面から内側に凹むように前記下側部分の前記下側メイン領域に形成されている。
【0010】
前記接続通路は、前記上側部分の前記隆起構造の前記上側通路と、前記下側部分の前記下側流路とに流体的に接続されている。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示による平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の線II-IIに沿って切った平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる固体電解質セルを示す概略上面図である。
【
図4】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる固体電解質セルを示す概略底面図である。
【
図5】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる平面型相互コネクタを示す概略上面図である。
【
図6】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる平面型相互コネクタを示す概略底面図である。
【
図7】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる第1の端部プレートの概略底面図である。
【
図8】平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態に含まれる第2の端部プレートの概略上面図である。
【
図9】本開示による平面型固体電解質酸素セパレータの第2の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示をより詳細に説明する前に、適切と考えられる場合において、符号又は符号の末端部は、同様の特性を有し得る対応の又は類似の要素を示すために各図面間で繰り返し用いられることに留意されたい。
【0014】
更に、本開示の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」、「上方」、「下方」、「縦」、「横」という用語は、本開示の構成要素間の相対的な位置を表すに過ぎず、実際の実施における各構成要素間の実際の位置を規定することを意図したものではない。
【0015】
図1および
図2を参照すると、本開示による平面型固体電解質酸素セパレータの第1の実施形態は、第1の端部プレート1と、第2の端部プレート2と、少なくとも2つの固体電解質セル3と、少なくとも1つの平面型相互コネクタ4とを含む。第1の端部プレート1には、第1の端部プレート1を貫通する酸素アウトレット10が形成されている。第2の端部プレート2は、第1の端部プレート1から所定の方向(V)において間隔を空けている。上記少なくとも2つの固体電解質セル3は、第1の端部プレート1と第2の端部プレート2の間に配置されている。上記少なくとも1つの平面型相互コネクタ4のそれぞれは、上記少なくとも2つの固体電解質セル3のうちの2つの間に配置されている。実施形態によっては、酸素が漏れるのを防ぐために、平面型固体電解質酸素セパレータは、少なくとも1つのアノード側密閉部材5と、少なくとも1つの密閉リング7とを更に含む。本実施形態において、平面型固体電解質酸素セパレータは、3つの固体電解質セル3(それぞれ、第1の端部プレート1から第2の端部プレート2に向かう方向に沿って、第1、第2、第3の固体電解質セル3と呼ぶ)、2つの平面型相互コネクタ4(それぞれ第1、第2の平面型相互コネクタ4と呼ぶ)、3つのアノード側密閉部材5、および3つの密閉リング7を備えている。具体的には、第1の平面型相互コネクタ4は、第1と第2の固体電解質セル3の間に配置され、第2の平面型相互コネクタ4は、第2と第3の固体電解質セル3の間に配置されている。
【0016】
図2、
図3および
図4を更に参照すると、本開示における固体電解質セル3のそれぞれは、2つの電極層31と、金属酸化物系電解質層32と、貫通孔30とを含む。金属酸化物系電解質層32は、2つの電極層31の間に配置されている。一部の実施形態において、金属酸化物系電解質層32は、中心部分321と、中心部分321を囲む周囲部分322とを含む。一部の実施形態において、固体電解質セル3のそれぞれにおいて、金属酸化物系電解質層32の中央部分321は、2つの電極層31の間に挟まれている。言い換えると、周囲部分322は、上記2つの電極層31に覆われていない。貫通孔30は、電極層31および金属酸化物系電解質層32を貫通していると共に、酸素アウトレット10と位置が合わせられていて、これにより貫通孔30が酸素アウトレット10に流体的に接続されるようになっている。一部の実施形態において、貫通孔30は、金属酸化物系電解質層32の中央部分321に形成されている。一部の実施形態において、貫通孔30の軸は、電極層31の幾何学的中心と一致する。
【0017】
いくつかの実施形態では、金属酸化物系電解質層32は、酸化ビスマス系材料、酸化ジルコニウム系材料、酸化セリウム系材料、および酸化ランタン系材料のうちの少なくとも1つから作られる。
【0018】
本実施形態では、金属酸化物系電解質層32は、酸化ビスマス系材料から作られている。酸化ビスマス系電解質層32を製造する方法は、以下のステップを含む。即ち、(a)Bi2O3、Y2O3、ZrO2から固相合成によって、(Bi1.50Y0.50)0.98Zr0.04O3.02(BYO)を調製するステップと、(b)BYOをトルエン、エタノール、バインダー、および分散剤と混合して、50vоl%~60vоl%の範囲の固形分を有する電解質混合物を得るステップと、(c)電解質混合物をボールミルで粉砕し、脱泡して電解質スラリーを得るステップと、(d)電解質スラリーをテープキャストして、20μm~60μmの範囲の厚さを有する電解質テープを得るステップと、(e)60℃から80℃の範囲の温度で、複数の電解質テープを積層して、平面状の素地を得るステップと、(f)平面状の素地を、カッターを用いて矩形に切断するステップと、(g)矩形の素地に対し、550℃で4時間バインダー除去を行うステップと、(h)ステップ(g)の後、1000℃で2時間、矩形の素地に対して焼結を行い、それぞれ寸法が10cm×10cmであり厚さが0.3mm~0.8mmである複数の酸化ビスマス系電解質層32を得るステップと、(i)各酸化ビスマス系電解質層32の中心部分に貫通孔30を形成するステップと、を含む。
【0019】
一部の実施形態において、電極層31は、金属系電極層およびセラミック電極層のいずれかである。
【0020】
一部の実施形態において、金属系電極層は、シリサイドと、銀、白金、および金から選択される金属とを含む。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態に従った、銀系電極層31および酸化ビスマス系電解質層32を含む固体電解質セル3の製造方法を、以下に示す。まず、Bi2О3、Nb2О3、およびBaCО3から固相合成によってBi1.71Nb0.25Ba0.04O3.23(BBNO)を調製し、続いて、BBNOを酸化ビスマス系電解質層32の中心部分の両面にスクリーン印刷し、950℃で2時間、BBNOを液相焼結する。酸化ビスマス系電解質層32の中心部分は、約9cm×9cmの面積を有するように画成された部分である。なお、BBNOは、酸化ビスマス系電解質層32の貫通孔を覆っていない。次に、BBNO上に銀ペースト(台湾のEPI Material Technology社から購入)を塗布する。この銀ペーストは、5wt%のシランと3wt%の耐熱ガラスを含む。その後、BBNOと銀ペーストが塗布された酸化ビスマス系電解質層32を760℃で2時間加熱することで、銀系電極層31と酸化ビスマス系電解質層32とを有する固体電解質セル3が得られる。銀系電極層31のそれぞれは、約10μmの厚さを有する。
【0022】
一部の実施形態において、セラミック電極層は、ドープされた金属酸化物と、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物とを含む。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態に従った、セラミック電極層および酸化ビスマス系電解質層32を含む固体電解質セル3の製造方法を、以下に示す。まず、BYOとLa0.8Sr0.2MnО3(LSM)とを1:1の重量比で混合してスラリーを得て、続いて、このスラリーを酸化ビスマス系電解質層32の中心部分の両面にスクリーン印刷する。酸化ビスマス系電解質層32の中心部分は、約9cm×9cmの面積を有するように画成された部分である。なお、BBNOは、ビスマス系電解質層32の貫通孔を覆っていない。次に、スラリーを有した酸化ビスマス系電解質層32に対して400℃で2時間バインダー除去を行う。その後、900℃で2時間焼成することで、セラミック電極層と酸化ビスマス系電解質層32を有する固体電解質セル3が得られる。セラミック電極層のそれぞれは、約20μmの厚さを有する。
【0024】
酸化ビスマス系電解質層32の形成にテープキャスティング法を用い、電極層31の形成にスクリーン印刷法を用いることで、酸化ビスマス系電解質層32と電極層31の厚みを均一に制御することができる。
【0025】
図1、
図2、
図5および
図6を更に参照すると、本開示の第1の実施形態において、平面型相互コネクタ4のそれぞれは、上側部分41と、上側部分41に接続され、方向(V)において上側部分41と反対側にある下側部分42と、接続通路40とを備える。上側部分41は、第1の端部プレート1に面する上面41´を有する。下側部分42は、方向(V)において上面41´と反対側に位置し且つ第2の端部プレート2に面する下面42´を有する。本実施形態において、各平面型相互コネクタ4は、JIS SUS316のステンレス鋼からなっている。
【0026】
平面型相互コネクタ4の上側部分41は、前側インレット領域411と、後側アウトレット領域412と、上側メイン領域413と、複数の上側メイン流路414と、隆起構造415とを含む。
【0027】
前側インレット領域411は、酸素含有流体(例えば空気)を平面型相互コネクタ4に導入するための部分であり、上面41´から内側に凹んでいる。後側アウトレット領域412は、方向(V)と交差(例えば直交)する縦方向(L)において前側インレット領域411とは反対側にあり、平面型相互コネクタ4の内部から酸素欠乏流体を排出するための部分であり、上面41´から内側に凹んでいる。上側メイン領域413は、前側インレット領域411と後側アウトレット領域412との間に位置し、その上に配置された固体電解質セル3の1つの電極層31と位置が合うように該1つの電極層31の下方に位置している。前側インレット領域411および後側アウトレット領域412は、その上に配置された1つの固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322と位置が合わせられている。複数の上側メイン流路414は、上面41´から内側に凹むように、上側部分41の上側メイン領域413に形成されている。上側メイン流路414のそれぞれは、前側インレット領域411および後側アウトレット領域412に流体的に接続されていて、前側インレット領域411と後側アウトレット領域412との間の流体通路として機能する。隆起構造415は、上側メイン領域413に位置し、その中に上側通路410が形成されている。上側通路410は、上側メイン流路414から流体的に仕切られている一方で貫通孔30に流体的に接続されている。一部の実施形態において、隆起構造415は円環形状である。
【0028】
本開示の第1の実施形態によれば 平面型相互コネクタ4のそれぞれの上側部分41は、流路マトリクスを形成するように上側メイン流路414と交差する上側補助流路416を更に含む。
【0029】
一部の実施形態において、各平面型相互コネクタ4の上側部分41は、左側辺縁領域417と、方向(V)と縦方向(L)とに交差する方向である方向(T)において左側辺縁領域417と反対側に配置されている右側辺縁領域418を更に含む。左側辺縁領域417および右側辺縁領域418は、対応する1つの固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322と位置が合わせられている。左側辺縁領域417および右側辺縁領域418は、前側インレット領域411および後側アウトレット領域412に対して突出している。上側メイン領域413は、前側インレット領域411、後側アウトレット領域412、左側辺縁領域417、右側辺縁領域418によって囲まれている。
【0030】
各平面型相互コネクタ4の下側部分42は、その下に配置された固体電解質セル3の電極層32と位置が合うように電極層32の上方に位置する下側メイン領域423と、下側メイン領域423を囲む周囲領域422と、複数の下側流路424とを備えている。複数の下側流路424は、下面42´から内側に凹むように下側メイン領域423に形成されている。
【0031】
接続通路40は、上側部分41の隆起構造415の上側通路410および下側部分42の下側流路424に流体的に接続されている。一部の実施形態において、複数の下側流路424は、流路マトリクスを形成するように互いに交差している。
【0032】
図2および
図7を参照すると、本開示の第1の実施形態によれば、第1の端部プレート1は、第2の端部プレート2に面すると共に下側プレート面12´を有する下側プレート部分12を含む。下側プレート部分12は、下側メインゾーン123と、下側メインゾーン123を囲む周囲ゾーン122と、複数の下側流路124とを含む。下側メインゾーン123は、第1の固体電解質セル3の電極層31と位置が合うように電極層31の上方に位置している。酸素アウトレット10は、下側メインゾーン123に流体的に接続されている。複数の下側流路124は、下側メインゾーン123に形成されており、下側プレート面12´に対して窪んでおり、酸素アウトレット10に流体的に接続されている。
【0033】
本開示の第1の実施形態によれば、1つ目のアノード側密閉部材5は、第1の端部プレート1の下側プレート表面12´の周囲ゾーン122と、第1の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、それらとの間に流体的な密封を形成する。2つ目のアノード側密閉部材5は、第1の平面型相互コネクタ4の下側部分42の周囲領域422と、第2の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、それらとの間に流体的な密封を形成する。3つ目のアノード側密閉部材5は、第2の平面型相互コネクタ4の下側部分42の周囲領域422と、第3の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、それらとの間に流体的な密封を形成する。平面型固体電解質酸素セパレータを製造する際には、第1の端部プレート1と第1の固体電解質セル3との間、第1の平面型相互コネクタ4と第2の固体電解質セル3との間、第2の平面型相互コネクタ4と第3の固体電解質セル3との間で、それぞれアノード側密閉部材5の材料を軟化・圧縮することによりアノード側密閉部材5を形成する。いくつかの実施形態では、アノード側密閉部材5は、例えばZnO-Al2O3-nSiO2(ZAS)系のガラスセラミック材料から作られてもよいが、これに限定されない。アノード側密閉部材5は、第1の端部プレート1と第1の固体電解質セル3との間、および、平面型相互コネクタ4と第2および第3の固体電解質セル3との間の熱膨張応力を低減することができる。
【0034】
図2および
図8を参照すると、本開示の第1の実施形態によれば、第2の端部プレート2は、第1の端部プレート1に面すると共に上側プレート面12´を有する上側プレート部分21を含む。上側プレート部分21は、酸素含有流体を第2の端部プレート2に導入するための前側インレットゾーン211と、酸素欠乏流体を第2の端部プレート2から排出するための後側アウトレットゾーン212と、上側メインゾーン213と、複数の上側メイン流路214と、突起215とを含む。前側インレットゾーン211は上側プレート面21´から内側に凹んでいる。後側アウトレットゾーン212は、縦方向(L)において前側インレットゾーン211とは反対側にあり、上側プレート面21´から内側に凹んでいる。上側メインゾーン213は、前側インレットゾーン211と後側アウトレットゾーン212との間に配置されていて、第3の固体電解質セル3の電極層31と位置が合うように該電極層31の下方に位置している。複数の上側メイン流路214は、上側プレート面21´から内側に凹む(例えば相対的に窪む)ように上側プレート部分21の上側メインゾーン213に形成されている。各上側メイン流路214は、前側インレットゾーン2と後側アウトレットゾーン212とに流体的に接続されている。突起215は上側メインゾーン213に配置され、第3の固体電解質セル3の貫通孔30と第2の端部プレート2の上側メイン流路214とを流体的に仕切っている。
【0035】
一部の実施形態において、第2の端部プレート2の上側プレート部分21の上側メインゾーン213は、第2の端部プレート2の上側プレート部分21の上側メイン流路214と交差して流路マトリクスを形成する上側補助流路216を更に有する。
【0036】
一部の実施形態において、第2の端部プレートの上側プレート面21は、左側周辺ゾーン217と、方向(T)において左側周辺ゾーン217とは反対側にある右側周辺ゾーン218とを更に有する。左側周辺ゾーン217および右側周辺ゾーン218は、固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322の下方に位置し、前側インレットゾーン211および後側アウトレットゾーン212に対して突出している。上側メインゾーン213は前側インレットゾーン211と後側アウトレットゾーン212と左側周辺ゾーン217と右側周辺ゾーン218とに囲まれている。
【0037】
図2を再び参照すると、本開示の第1の実施形態によれば、密閉リング7の1つは、第2の端部プレート2の突起215と第3の固体電解質セル3との間に配置されて、それらとの間に流体的な密封を形成する。密閉リング7の他の2つは、平面型相互コネクタ4の隆起構造415と固体電解質セル3との間に配置され、上側通路410と貫通孔30を流れる酸素が漏れることを防いでいる。平面型固体電解質酸素セパレータを製造する際には、第1の固体電解質セル3と第1の平面型相互コネクタ4との間、第2の固体電解質セル3と第2の平面型相互コネクタ4との間、第3の固体電解質セル3と第2の端部プレート2との間で、それぞれ密閉リング7の材料を軟化・圧縮することにより密閉リング7を形成する。なお、各密閉リング7は、アノード側密閉部材5と同一の材料で構成することができる。
【0038】
図9には、本開示による平面型固体電解質酸素セパレータの第2の実施形態が示されている。第2の実施形態は、少なくとも1つのカソード側密閉部材6を更に含むことを除いて、第1の実施形態と同様である。本実施形態において、平面型固体電解質酸素セパレータは、3つのカソード側密閉部材6(すなわち、第1、第2、第3のカソード側密閉部材6)を具え、これらカソード側密閉部材6は、それぞれ2つのカソード側密閉ストリップを有する。第1のカソード側密閉部材6は、第1の平面型相互コネクタ4と第1の固体酸化物電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置されていて、それらとの間に流体的な密封を形成する。具体的には、第1のカソード側密閉部材6の1つのカソード側密閉ストリップは、第1の平面型相互コネクタ4の左側辺縁領域417と第1の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、第1のカソード側密閉部材6のもう1つのカソード側密閉ストリップは、第1の平面型相互コネクタ4の右辺縁領域418と第1の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置されている。
【0039】
第2のカソード側密閉部材6は、第2の平面型相互コネクタ4と第2の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、それらとの間に流体的な密封を形成する。第2のカソード側密閉部材6の2つのカソード側密閉ストリップと、第2の固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との位置関係は、第1のカソード側密閉部材6と第1の固体電解質セル3との位置関係と同様である。
【0040】
第3のカソード側密閉部材6は、第2の端部プレート2と固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置され、それらとの間に流体的な密封を形成する。具体的には、第3のカソード側密閉部材6のカソード側密閉ストリップは、上側プレート部分21の左側周辺ゾーン217/右側周辺ゾーン218と、固体電解質セル3の金属酸化物系電解質層32の周囲部分322との間に配置されている。平面型固体電解質酸素セパレータを製造する際には、第1の固体電解質セル3と第1の平面型相互コネクタ4との間、第2の固体電解質セル3と第2の平面型相互コネクタ4との間、第3の固体電解質セル3と第2の端部プレート2との間で、それぞれカソード側密閉部材6の材料を軟化・圧縮することにより、カソード側密閉部材6を形成する。なお、カソード側密閉部材6は、アノード側密閉部材5と同じ材料で構成することができる。
【0041】
第1の平面型相互コネクタ4においては、酸素含有流体が上側部分41の前側インレット領域411を通過する際に、酸素含有流体に含まれる酸素分子が上側部分41に面する電極層31と接触し、酸素イオンに還元される。酸素イオンは、金属酸化物系電解質層32を介して、上側部分41とは反対側にある他方の電極層31に移動し、そこで酸素イオンは酸化されて酸素分子になる。その後、酸素分子は、第1の端部プレート1の下側プレート部分12の下側流路124を流れ、酸素アウトレット10を通して平面型固体電解質酸素セパレータから排出される。
【0042】
第2の平面型相互コネクタ4においては、酸素含有流体が上側部分41の前側インレット領域411を通過する際に、酸素含有流体に含まれる酸素分子が上側部分41に面する電極層31と接触し、酸素イオンに還元される。酸素イオンは、金属酸化物系電解質層32を介して、上側部分41とは反対側にある他方の電極層31に移動し、そこで酸素イオンは酸化されて酸素分子になる。その後、酸素分子は、第1の平面型相互コネクタ2の下側部分42の下側流路424、第1の平面型相互コネクタ4の接続通路40、第1の平面型相互コネクタ4の上側通路410を流れ、酸素アウトレット10を通して平面型固体電解質酸素セパレータから排出される。
【0043】
第2の端部プレート2においては、酸素含有流体が前側インレットゾーン211を通過する際に、酸素分子が上側プレート部分21に面する電極層31に接触し、酸素イオンに還元される。酸素イオンは、金属酸化物系電解質層32を介して、上側プレート部分21とは反対側にある他方の電極層31に移動し、そこで酸素イオンは酸化されて酸素分子になる。その後、酸素分子は、第2の平面型相互コネクタ4の下側部分42の下側流路424、第1および第2の平面型相互コネクタ4の接続通路40、第1および第2の平面型相互コネクタ4の上側流路410を流れ、酸素アウトレット10を通して平面型固体電解質酸素セパレータから排出される。
【0044】
上記においては、本発明の全体的な理解を促すべく、多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一種以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾及び均等な構成を包含するものとする。